インクジェットプリンタ
【課題】 負圧パージ処理後のノズル面に気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを抑制する。
【解決手段】 シール面11Aの接触部側がノズル面3Aに接触しつつ、シール面11Aの離間部とノズル面3Aまでの距離Aが第1所定距離L1となるように、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させた状態を少なくとも第1所定時間だけ保持した後、シール面11Aの接触部側とノズル面3Aとの距離Bが第2所定距離L2となるようにノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させた状態を少なくとも第2所定時間だけ保持する。これにより、負圧パージ処理後のノズル面に気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを抑制できる。
【解決手段】 シール面11Aの接触部側がノズル面3Aに接触しつつ、シール面11Aの離間部とノズル面3Aまでの距離Aが第1所定距離L1となるように、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させた状態を少なくとも第1所定時間だけ保持した後、シール面11Aの接触部側とノズル面3Aとの距離Bが第2所定距離L2となるようにノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させた状態を少なくとも第2所定時間だけ保持する。これにより、負圧パージ処理後のノズル面に気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル口から微細なインクを記録用紙等の被記録媒体に向けて噴射することにより記録用紙に画像を形成するインクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、記録ヘッドのノズル口からインクを噴射して記録用紙に画像を形成するため、気泡やゴミ等がノズル口に詰まった場合や、ノズル口に存在するインク中の水分が蒸発してインクの粘度が過度に増大してノズル口が詰まった場合等には、ノズル口からインクを正常に噴射することができなくなってしまい、記録用紙に画像を形成することができなくなる。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に記載の発明では、ノズル口をノズルキャップで覆った状態で、ノズルキャップ内の空気を吸引ポンプで吸引することによりノズル口の中のインクを吸引することで、ノズル口に詰まっている気泡やゴミ等を除去する負圧パージ処理を実行している。
【0004】
そして、負圧パージ処理後に、ノズルキャップをノズル面から離間させることにより、ノズル面に残留するインクとノズルキャップに残留するインクとに分離させている(特許文献1の段落0068参照)。
【特許文献1】特開2003−94673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ノズルキャップをノズル面から離間させる際に、インクブリッジ、つまりノズルキャップからノズル面まで橋渡すように繋がったインクが形成される。
このとき、特許文献1に記載の発明のごとく、ノズルキャップを動かしながらインクブリッジを切るようにすると、インクブリッジがノズル面側で切れるかノズルキャップ側で切れるかがコントロールできず、状況によってはノズルキャップ側で切れてしまい、ノズル面に気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、ノズル面に気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、インクを噴射するノズル口を有する記録ヘッドと、ノズル口を覆うとともに、記録ヘッドのうちノズル口が開口したノズル面側に接触するシール面を有するノズルキャップと、ノズル面に対してノズルキャップを離接させるキャップアクチュエータと、キャップアクチュエータの作動を制御する制御手段と、ノズルキャップにてノズル口が覆われているときに、ノズルキャップ内の圧力を低下させる吸引ポンプとを備え、制御手段は、シール面の全体がノズル面に接触した状態から、シール面の一端側がノズル面に接触しつつ、シール面の他端側がノズル面から第1所定距離離間するように、ノズルキャップをノズル面から離間させた状態とするとともに、その状態を第1所定時間保持する第1離間工程と、第1離間工程後、シール面全体が第1離間工程時よりノズル面から離間した状態でシール面の一端側がノズル面から第2所定距離離間するように、ノズルキャップをノズル面から離間させた状態とするとともに、その状態を第2所定時間保持する第2離間工程と、を有するようにキャップアクチュエータの作動を制御することを特徴とする。
【0008】
これにより、請求項1に記載の発明では、先ず、第1離間工程にて、シール面の一端側がノズル面に接触しつつ、シール面の他端側がノズル面から第1所定距離離間するように、ノズルキャップをノズル面から離間させたときに、ノズル面全体に散在するように残留しているインクが集約されてインクブリッジとなり、そのインクブリッジは、シール面の他端側からシール面の一端側に徐々に移動していく。
【0009】
そして、第2離間工程に移る前に、ノズルキャップの動きを停止させてインクブリッジの移動が終わるのを第1所定時間だけ待つので、インクブリッジは最終的にシール面の一端側近傍だけに存在するようになる。
【0010】
次に、第2離間工程にて、シール面の一端側がノズル面から第2所定距離離間するようにノズルキャップをノズル面から離間させたときに、インクブリッジが離間方向に延びる。このとき、請求項1に記載の発明では、ノズルキャップの動きを停止させてインクブリッジが切れるのを第2所定時間だけ待つので、特許文献1に記載の発明のごとく、ノズルキャップを動かしながらインクブリッジを切るのに比較して、インクブリッジを確実にノズル面側で切ることができ、ノズル面に気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを抑制できる。
【0011】
したがって、請求項1に記載の発明では、例えば、ノズル面に残留した気泡やゴミ等を含んだインクがノズル口に逆流し、混色や不吐出といった不具合が発生することを抑制できる。
【0012】
また、例えば、負圧パージ処理後にフラッシング処理(ノズル口からインクを噴射してノズル口の洗浄を行う処理)を行うインクジェットプリンタに適用すると、フラッシング処理時に噴射するインク量を低減できる。
【0013】
また、例えば、負圧パージ処理後にノズル面をワイパ等で拭き取り処理を行うインクジェットプリンタに適用すると、拭き取り処理時に多量のインクが飛散することを抑制できる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、制御手段は、第2離間工程後、シール面の一端側がノズル面から更に離間するように、ノズルキャップをノズル面から離間させた後に停止させる第3離間工程を有するようにキャップアクチュエータの作動を制御することを特徴とする。
【0015】
これにより、万が一、第2離間工程が終了したときにインクブリッジが切れなかった場合にも、確実にインクブリッジを切ることができる。
請求項3に記載の発明では、制御手段は、時間を計時するタイマー手段を有しているとともに、タイマー手段の計時時間に基づいて第1所定時間が経過したか否かを判定することを特徴とし、請求項4に記載の発明では、制御手段は、タイマー手段の計時時間に基づいて第2所定時間が経過したか否かを判定することを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明では、制御手段は、吸引ポンプが停止した後、ノズルキャップ内の圧力が大気圧より低い所定圧力以上となったときに第1離間工程を実行することを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明では、ノズル口から噴射されるインクの温度を検出する温度検出手段を備えており、制御手段は、温度検出手段が検出した検出温度に基づいて、第1所定距離及び前記第1所定時間のうち少なくとも一方を決定することを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明では、ノズル口から噴射されるインクの温度を検出する温度検出手段を備えており、制御手段は、温度検出手段が検出した検出温度に基づいて、第2所定距離及び第2所定時間のうち少なくとも一方を決定することを特徴とする。
【0019】
これにより、請求項6又は請求項7に記載の発明では、インクジェットプリンタが設置される環境条件によらず、ノズル面に気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを安定的に抑制することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明では、第2所定距離は、シール面の一端側からノズル面まで橋渡すように繋がったインクが、ノズルキャップの停止中に切断され得る距離に設定されていることを特徴とする。
【0021】
これにより、ノズルキャップをノズル面から離間させている途中でインクブリッジが切れてしまうことや、ノズルキャップを停止させた状態でもインクブリッジが切れないことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタを図面と共に説明する。
図1及び図2は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの要部(プリンタエンジン部1)を示す模式図であり、図3は記録ヘッド3をノズル口3B(噴射口)側から見た図であり、図4〜図8は負圧パージ装置10の作動を示す図であり、図9は制御装置30等の電気構成の概略を示すブロック図であり、図10は負圧パージ処理の作動を示すフローチャートであり、図11はノズルキャップ11内の圧力変動を示すグラフである。
【0023】
1.プリンタエンジン部1の概略構成
インクジェット方式のプリンタエンジン部1は、周知のごとく、微小なインク滴を記録媒体に向けて噴射することにより記録用紙等の被記録媒体(以下、用紙という。)に画像を形成していく画像形成手段である。
【0024】
本実施形態に係るプリンタエンジン部1は、図1に示すように、用紙に向けてインクを噴射する記録ヘッド3、記録ヘッド3が組み付けられたキャリッジ5、このキャリッジ5を主走査方向(紙面左右方向)に往復移動させる走査機構7、及び記録ヘッド3に供給するインクが蓄えられたインクタンク9等から構成されている。因みに、主走査方向とは、用紙の搬送方向と直交する方向であって、用紙の記録面と平行な方向をいう。
【0025】
そして、記録ヘッド3のうち用紙と対向するノズル面3Aには、図3に示すように、インクを微小な液滴として用紙に向けて噴射する多数個のノズル口3Bが開口しており、記録ヘッド3内のうちノズル口3Bよりインク流れ上流側には、ピエゾ素子の変形や発熱抵抗体による気泡の体積変化等を利用してインクを噴射させるインク噴射手段(本実施形態では、ピエゾ素子)が内蔵されている。なお、本実施形態では、ノズル面3A及びノズル口3Bは下方側に面しており、用紙は記録ヘッド3の下方側に搬送されてくる。
【0026】
また、走査機構7は、図1に示すように、主走査方向一端側に設けられた駆動プーリ7A、主走査方向他端側に設けられた従動プーリ7B、及び両プーリ7A、7Bに架け渡された無端ベルト7C等から構成されており、この無端ベルト7Cにキャリッジ5が固定されている。このため、駆動プーリ7Aが回転して無端ベルト7Cが回転すると、キャリッジ5は、無端ベルト7Cと共に主走査方向に移動する。
【0027】
そして、用紙に画像を形成する場合には、キャリッジ5(記録ヘッド3)が、主走査方向の領域のうち印刷領域(図1参照)にて用紙の搬送と連動して往復移動しながら用紙にインクを噴射して画像を形成していく。一方、画像形成を実行していない場合又は後述する負圧パージ処理等のメンテナンス作業が実行される場合には、キャリッジ5は、主走査方向の領域のうちメンテナンス領域(図1参照)で待機する。
【0028】
また、記録ヘッド3とインクタンク9とは、可撓性を有するチューブ9Aを介して接続されており、チューブポンプ等のポンプ手段(図示せず。)にてインクタンク9に蓄えられているインクが記録ヘッド3に送られる。
【0029】
ところで、メンテナンス領域には、負圧パージ処理を実行するための負圧パージ装置10、及び負圧パージ処理が終了した後にノズル面3Aを拭き取るためのワイパ20が設けられている。以下、負圧パージ装置10について説明する。
【0030】
負圧パージ装置10は、図4に示すように、負圧パージ処理時に下方側からノズル面3Aに接触して多数個のノズル口3B全てを覆うノズルキャップ11、ノズル面3Aに対してノズルキャップ11を離接させるキャップアクチュエータ12、ノズルキャップ11内の空気を吸引する吸引ポンプ13、及びキャップアクチュエータ12の作動を制御する制御装置30(図9参照)等を有して構成されている。
【0031】
ノズルキャップ11には、ノズル面3Aから離隔するように窪んだ凹部11Cが設けられている。そして、この凹部11Cの底部には吸引ポンプ13の吸入側に連通する排出口11Bが設けられ、一方、凹部11Cの周囲(縁部)には、ノズル面3Aのうちノズル口3Bが設けられていない部位に液密に接触するシール面11Aが設けられている。
【0032】
なお、本実施形態では、ノズルキャップ11(特に、シール面11A)をブチルゴム等の弾性変形可能な材料で構成することにより、シール面11Aにて確実にインクを封止可能としている。
【0033】
キャップアクチュエータ12は、ノズルキャップ11と一体化されたキャップホルダー12A、キャップホルダー12Aに連結されたホルダ駆動プレート12B、ホルダ駆動プレート12Bを上下動させるようにしてホルダ駆動プレート12Bをノズル面3Aに対して離間又は近接させるリンク機構12C、及びリンク機構12Cを作動させるカム12D等から構成されている。なお、カム12Dは電動モータ12K(図9参照)により回転駆動される。
【0034】
また、キャップホルダー12Aとホルダ駆動プレート12Bとは、キャップホルダー12Aの移動方向と直交する方向一端側、つまりキャップホルダー12Aの水平方向一端側(図4の右側端部)にて揺動可能に連結されており、この揺動可能に連結された連結部12Eは、ノズルキャップ11の移動方向(上下方向)に延びるカム溝12Fに沿って変位することができる。
【0035】
一方、ホルダ駆動プレート12Bのうちキャップホルダー12Aを挟んで連結部12Eと反対側には、キャップホルダー12Aがホルダ駆動プレート12Bに対してノズルキャップ11の移動方向(上下方向)に予め設定された寸法以上に変位してしまうことを防止するストッパ12Gが設けられている。なお、キャップホルダー12Aには、ストッパ12Gと接触する突起部12Hが設けられている。
【0036】
また、キャップホルダー12Aとホルダ駆動プレート12Bとの間には、ノズルキャップ11をノズル面3Aに押し付ける弾性力をキャップホルダー12Aに付与する弾性手段をなすコイルバネ12Jが配設されている。
【0037】
2.制御装置等の電気構成の概略(図9参照)
負圧パージ装置10の作動(電動モータ12K)を制御する制御装置30は、図9に示すように、時間を計時するタイマー30A、RAMやROM等の記憶手段及びCPUからなる周知のマイクロコンピュータにて構成されており、この制御装置30には、プリンタエンジン部1(特に、キャリッジ5)周りの雰囲気温度を検出するサーミスタ等の温度センサ31の出力が入力されている。なお、本実施形態では、温度センサ31はキャリッジ5に搭載されている。
【0038】
そして、本実施形態では、温度センサ31の検出温度に基づいて、記録ヘッド3から噴射されるインクの温度を推定し、この推定されたインクの温度を後述するノズルキャップ離間工程の制御に利用している。
【0039】
3.負圧パージ処理装置の作動(図4〜図8参照)
負圧パージ処理とは、前述したように、負圧を利用してノズル口3Bに詰まっている気泡やゴミ等を除去する処理であり、本実施形態では、例えば、使用者が負圧パージ処理の実行をインクジェットプリンタに対して指令したときに実行される。
【0040】
そして、制御装置30は、ROMに予め記憶されたプログラム及び温度センサ31の検出温度に基づいて推定されたインクの温度(以下、単にインク温度という。)に基づいて、図10に示す制御フローに従って負圧パージ装置10の作動を制御する。
【0041】
すなわち、負圧パージ処理の実行がインクジェットプリンタに対して指令されると、図10に示す負圧パージ処理の制御フローが起動され、先ず、吸引工程が実行される(S10)。次に、ノズルキャップ離間工程として、第1離間工程(S20)、第2離間工程(S30)及び第3離間工程(S40)が順次実行される。その後、ノズルキャップ11内の残留インクを取除く空吸引工程(S50)、ノズル面3Aがワイパ20にて払拭されるワイプ工程(S60)が順次実行された後、負圧パージ処理が終了する。
【0042】
なお、負圧パージ処理が終了したとき及び負圧パージ処理の実行時以外のときは、インクの乾燥防止及びノズル面3Aにゴミ等が付着することを防止のため、印刷を実行する場合を除き、ノズル面3Aはノズルキャップ11にて覆われた状態となる。
【0043】
以下、上記の各工程について説明する。
3.1.吸引工程(図4参照)
制御装置30は、カム12D(電動モータ12K)を回転させてキャップホルダー12Aをノズル面3Aに近接させることにより、シール面11Aをノズル面3Aに接触させた後、吸引ポンプ13を作動させる。
【0044】
これにより、ノズルキャップ11のシール面11Aがノズル面3Aに押圧されて全てのノズル口3Bがノズルキャップ11で覆われた状態でノズルキャップ11内の圧力が負圧(大気圧未満)となるので、ノズル口3B近傍に滞留している気泡やゴミ等がインクと共にノズルキャップ11内に噴出し、ノズル口3Bに詰まっている気泡やゴミ等が除去される。
【0045】
3.2.ノズルキャップ離間工程
ノズルキャップ離間工程は、吸引工程が終了した後、ノズルキャップ11をノズル口3Bから離間させる工程であり、本実施形態では、第1離間工程、第2離間工程及び第3離間工程の3つ工程から構成されている。なお、これら3つの工程は、制御装置30によりカム12D(電動モータ12K)が制御されることによって実行される。
【0046】
3.2.1.第1離間工程
第1離間工程は、吸引ポンプ13が停止してノズルキャップ11内の圧力が大気圧より低い所定圧力以上となった時に実行される(図11参照)。
【0047】
そして、制御装置30は、ROMに予め記憶されているインク温度と第1所定距離L1及び第1所定時間との関係を示すマップ又は関係式に基づいて、第1所定距離L1及び第1所定時間を決定する。なお、第1所定距離L1及び第1所定時間は、開発時に試験等にて決定された値である。
【0048】
次に、制御装置30は、カム12D(電動モータ12K)の回転を回転させて、図5に示すように、シール面11A全体がノズル面3Aから接触した状態(図4参照)から、シール面11Aの一端側(図5の左端側)がノズル面3Aと接触しつつ、シール面11Aの他端側(図5の右端側)が接触部よりノズル面3Aから離隔するように、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させる。
【0049】
つまり、制御装置30は、シール面11Aの一端側がノズル面3Aに接触した状態でシール面11Aがノズル面3Aに対して傾斜するようにノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させる。因みに、「シール面11Aの一端側(接触部)がノズル面3Aと接触しながら」とは、接触部がノズル面3Aに接触している場合は勿論、僅かにノズル面3Aと離れて近接している場合も含む意味である。
【0050】
このとき、シール面11Aの一端側(以下、この一端側を接触部という。)は、本実施形態では、ノズル口3Bと接触しないノズル口3Bからずれた部位にてノズル面3Aと接触している。なお、以下、シール面11Aの他端側(図5の右端側)を離間部という。
【0051】
そして、制御装置30は、シール面11Aの離間部とノズル面3Aとの距離Aが第1所定距離L1となった時に、カム12D(電動モータ12K)の回転を少なくとも第1所定時間だけ停止させて、シール面11Aの接触部がノズル面3Aに接触し、かつ、距離Aが第1所定距離L1となった状態を少なくとも第1所定時間だけ保持する。
【0052】
3.2.2.第2離間工程
制御装置30は、第1離間工程が終了したか否か、つまりシール面11Aの接触部がノズル面3Aに接触し、かつ、距離Aが第1所定距離L1となった時から第1所定時間が経過したか否かを判定する。このとき、制御装置30は、第1離間工程において、カム12D(電動モータ12K)の回転を停止させた時からタイマー30Aの計時時間に基づいて第1所定時間が経過したか否かを判定する。
【0053】
そして、第1離間工程が終了したと判定されると、制御装置30は、ROMに予め記憶されているインク温度と第2所定距離L2及び第2所定時間との関係を示すマップ又は関係式に基づいて、第2所定距離L2及び第2所定時間を決定する。なお、第2所定距離L2及び第2所定時間は、開発時に試験等にて決定された値である。
【0054】
次に、制御装置30は、図6に示すように、シール面11A全体が第1離間工程時よりノズル面3Aから離間した状態で、シール面11Aの接触部からノズル面3Aまでの距離Bが第2所定距離L2となるように、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させた状態とするとともに、その状態を少なくとも第2所定時間だけ保持する。
【0055】
3.2.3.第3離間工程
制御装置30は、第2離間工程が終了したか否か、つまりノズル面3Aから離間した状態でシール面11Aの接触部からノズル面3Aまでの距離Bが第2所定距離となり、かつ、シール面11Aの離間部からノズル面3Aまでの距離Aが第1所定距離L1と第2所定距離L2との和になった時から第2所定時間が経過したか否かを判定する。
【0056】
このとき、制御装置30は、第2離間工程において、カム12D(電動モータ12K)の回転を停止させた時からタイマー30Aの計時時間に基づいて第2所定時間が経過したか否かを判定する。
【0057】
そして、第2離間工程が終了したと判定されると、制御装置30は、図8に示すように、シール面11Aの接触部からノズル面3Aまでの距離Bが第2所定距離より大きくなり、かつ、シール面11Aの離間部からノズル面3Aまでの距離Aが第1所定距離L1と第2所定距離L2との和より大きくなるように、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させた後、その状態でノズルキャップ11の離間作動を停止させ、負圧パージ処理を終了させる。
【0058】
4.本実施形態に係るインクジェットプリンタの特徴
第1離間工程にて、シール面11Aの接触部側がノズル面3Aに接触しつつ、シール面11Aの離間部とノズル面3Aまでの距離Aが第1所定距離L1となるようにノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させたときに、ノズル面3A全体に散在するように残留しているインクが、図5に示すように、集約されて1本のインクブリッジとなり、そのインクブリッジは、シール面11Aの離間部からシール面11Aの接触部に徐々に移動していく。
【0059】
そして、第2離間工程に移行する前に、ノズルキャップ11の動きを停止させて、インクブリッジの移動が終了するために必要と想定される時間(第1所定時間)だけその停止時状態を保持するので、インクブリッジは最終的にシール面11Aの接触部近傍に集約されていく。
【0060】
次に、第2離間工程にて、シール面11Aの接触部側とノズル面3Aとの距離Bが第2所定距離L2となるようにノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させると、第1離間工程にて接触部に集約された1本のインクブリッジが離間方向に延びて切断に至る(図7参照)。
【0061】
このとき、本実施形態では、ノズルキャップ11の動きを停止させて、インクブリッジを切断するに必要と想定される時間(第2所定時間)だけその停止時状態を保持するので、特許文献1に記載の発明のごとく、ノズルキャップ11を移動させながらインクブリッジを切断する場合に比較して、インクブリッジを確実にノズル面3A側で切断させることができ、ノズル面3Aに気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを抑制できる。
【0062】
したがって、本実施形態では、例えば、ノズル面3Aに残留した気泡やゴミ等を含んだインクがノズル口3Bに逆流し、混色や不吐出といった不具合が発生することを抑制できる。因みに、インクブリッジがノズルキャップ11側で切断されると、切断部からノズル面3Aまでのインクがノズル面3Aに残留するので、ノズル面3Aに気泡やゴミ等を含んだ多くのインクが残留してしまう。
【0063】
延いては、ワイプ工程(S60)時に多量のインクが飛散することを抑制できる。
ところで、第1所定距離L1が小さいほど、シール面11Aはノズル面3Aに近くづいてシール面11Aがノズル面3Aに対して平行となるので、第1所定距離L1が小さくなるほど、ノズル面3Aとノズルキャップ11との間に形成されたインクブリッジは、ノズル面3A全体に拡がり、シール面11Aの接触部に移動(集約)し難くなる。
【0064】
一方、第1所定距離L1を過度に大きくすると、ノズル面3Aとノズルキャップ11との間に形成されたインクブリッジが接触部に移動(集約)する前に切断されてしまい、ノズル面3A全体にインク滴が散在してしまうおそれが高くなる。
【0065】
このため、第1所定距離L1を適切な距離とする必要があるが、この適切な第1所定距離L1は、インクの物性値やインクの温度(インクの粘度等)によって大きく変動してしまう。
【0066】
そこで、本実施形態では、使用されるインクについてのインク温度と第1所定距離L1及び第1所定時間との関係を予め試験で決定し、その予め決定したインク温度と第1所定距離L1及び第1所定時間との関係を示す情報をROMに記憶させて、このROMに記憶された情報に基づいて、第1所定距離L1及び第1所定時間を決定している。
【0067】
同様に、第2所定距離L2及び第2所定時間もンクの物性値やインクの温度(インクの粘度等)によって大きく変動してしまうので、本実施形態では、試験によって予め決定したインク温度と第2所定距離L2及び第2所定時間との関係を示す情報をROMに記憶させて、このROMに記憶された情報に基づいて、第2所定距離L2及び第2所定時間を決定している。
【0068】
このように本実施形態では、インク温度に基づいて第1所定距離及び第1所定時間、並びに第2所定距離及び第2所定時間を決定しているので、インクジェットプリンタが設置される環境条件によらず、ノズル面3Aに気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを安定的に抑制することができる。
【0069】
なお、第2所定距離は、上記説明からも明らかなように、シール面11Aの接触部側からノズル面3Aまで繋がったインクブリッジが、ノズルキャップ11の停止中に切断され得る距離に設定されているので、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させている途中でインクブリッジが切れてしまう、又はノズルキャップ11を停止させた状態でもインクブリッジを切断することができないといったことを未然に防止できる。
【0070】
また、本実施形態では、第2離間工程後、シール面11Aの接触部側がノズル面3Aから更に離間するように、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させた後に停止させる第3離間工程を設けているので、万が一、第2離間工程が終了した時点で、インクブリッジが切断されなかった場合であっても、確実にインクブリッジを切断することができる。
【0071】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、予めROMに記憶された情報に基づいて、第1所定距離L1及び第2所定時間、並びに第2所定距離L2及び第2所定時間を決定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば光学式センサにてインクブリッジの状態を監視し、この監視結果に基づいて第1所定距離L1及び第2所定時間、並びに第2所定距離L2及び第2所定時間を決定する、又は第1所定距離L1及び第2所定時間、並びに第2所定距離L2及び第2所定時間を予め決定された固定値としてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、負圧パージ処理後に、空吸引工程、ワイプ工程が順次実行されるが、例えばワイプ工程を実行する前に、フラッシング処理を実行してもよい。また、空吸引工程とワイプ工程の一方、あるいは両方を廃止してもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、シール面11Aの接触部がノズル口3Bが設けられた部位からずれた位置にてシール面11Aに接触していたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
また、上述の実施形態では、吸引ポンプ13が停止してノズルキャップ11内の圧力が大気圧より低い所定圧力以上となった時に第1離間工程が実行されたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば吸引ポンプ13が停止する前から実行する、又はノズルキャップ11内の圧力が大気圧となったときに実行する等してもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、インクタンク9からチューブ9Aを介して記録ヘッド3にインクを供給するタイプにインクジェットプリンタであったが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
また、上述の実施形態では、インクの温度を雰囲気温度から推定することにより間接的にインク温度を検出していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、インク温度を直接的に検出してもよい。
【0077】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの要部(プリンタエンジン部1)を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの要部(プリンタエンジン部1)を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る記録ヘッド3をノズル口3B(噴射口)側から見た図である。
【図4】本発明の実施形態に係るノズルキャップ11及び負圧パージ装置10の作動を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るノズルキャップ11及び負圧パージ装置10の作動を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るノズルキャップ11及び負圧パージ装置10の作動を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るノズルキャップ11及び負圧パージ装置10の作動を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るノズルキャップ11及び負圧パージ装置10の作動を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る制御装置30等の電気構成の概略を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施形態に係る負圧パージ処理の作動を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係るズルキャップ11内の圧力変動を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
1…プリンタエンジン部、3…記録ヘッド、3A…ノズル面、3B…ノズル口、
5…キャリッジ、7…走査機構、7A…駆動プーリ、7B…従動プーリ、
7C…無端ベルト、9…インクタンク、9A…チューブ、10…負圧パージ装置、
11…ノズルキャップ、11A…シール面、11B…排出口、11C…凹部、
12…キャップアクチュエータ、12A…キャップホルダー、
12B…ホルダ駆動プレート、12C…リンク機構、12D…カム、
12E…連結部、12F…カム溝、12G…ストッパ、12H…突起部、
12J…コイルバネ、12K…電動モータ、13…吸引ポンプ、20…ワイパ、
30…制御装置、30A…タイマー、31…温度センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル口から微細なインクを記録用紙等の被記録媒体に向けて噴射することにより記録用紙に画像を形成するインクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、記録ヘッドのノズル口からインクを噴射して記録用紙に画像を形成するため、気泡やゴミ等がノズル口に詰まった場合や、ノズル口に存在するインク中の水分が蒸発してインクの粘度が過度に増大してノズル口が詰まった場合等には、ノズル口からインクを正常に噴射することができなくなってしまい、記録用紙に画像を形成することができなくなる。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に記載の発明では、ノズル口をノズルキャップで覆った状態で、ノズルキャップ内の空気を吸引ポンプで吸引することによりノズル口の中のインクを吸引することで、ノズル口に詰まっている気泡やゴミ等を除去する負圧パージ処理を実行している。
【0004】
そして、負圧パージ処理後に、ノズルキャップをノズル面から離間させることにより、ノズル面に残留するインクとノズルキャップに残留するインクとに分離させている(特許文献1の段落0068参照)。
【特許文献1】特開2003−94673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ノズルキャップをノズル面から離間させる際に、インクブリッジ、つまりノズルキャップからノズル面まで橋渡すように繋がったインクが形成される。
このとき、特許文献1に記載の発明のごとく、ノズルキャップを動かしながらインクブリッジを切るようにすると、インクブリッジがノズル面側で切れるかノズルキャップ側で切れるかがコントロールできず、状況によってはノズルキャップ側で切れてしまい、ノズル面に気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、ノズル面に気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、インクを噴射するノズル口を有する記録ヘッドと、ノズル口を覆うとともに、記録ヘッドのうちノズル口が開口したノズル面側に接触するシール面を有するノズルキャップと、ノズル面に対してノズルキャップを離接させるキャップアクチュエータと、キャップアクチュエータの作動を制御する制御手段と、ノズルキャップにてノズル口が覆われているときに、ノズルキャップ内の圧力を低下させる吸引ポンプとを備え、制御手段は、シール面の全体がノズル面に接触した状態から、シール面の一端側がノズル面に接触しつつ、シール面の他端側がノズル面から第1所定距離離間するように、ノズルキャップをノズル面から離間させた状態とするとともに、その状態を第1所定時間保持する第1離間工程と、第1離間工程後、シール面全体が第1離間工程時よりノズル面から離間した状態でシール面の一端側がノズル面から第2所定距離離間するように、ノズルキャップをノズル面から離間させた状態とするとともに、その状態を第2所定時間保持する第2離間工程と、を有するようにキャップアクチュエータの作動を制御することを特徴とする。
【0008】
これにより、請求項1に記載の発明では、先ず、第1離間工程にて、シール面の一端側がノズル面に接触しつつ、シール面の他端側がノズル面から第1所定距離離間するように、ノズルキャップをノズル面から離間させたときに、ノズル面全体に散在するように残留しているインクが集約されてインクブリッジとなり、そのインクブリッジは、シール面の他端側からシール面の一端側に徐々に移動していく。
【0009】
そして、第2離間工程に移る前に、ノズルキャップの動きを停止させてインクブリッジの移動が終わるのを第1所定時間だけ待つので、インクブリッジは最終的にシール面の一端側近傍だけに存在するようになる。
【0010】
次に、第2離間工程にて、シール面の一端側がノズル面から第2所定距離離間するようにノズルキャップをノズル面から離間させたときに、インクブリッジが離間方向に延びる。このとき、請求項1に記載の発明では、ノズルキャップの動きを停止させてインクブリッジが切れるのを第2所定時間だけ待つので、特許文献1に記載の発明のごとく、ノズルキャップを動かしながらインクブリッジを切るのに比較して、インクブリッジを確実にノズル面側で切ることができ、ノズル面に気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを抑制できる。
【0011】
したがって、請求項1に記載の発明では、例えば、ノズル面に残留した気泡やゴミ等を含んだインクがノズル口に逆流し、混色や不吐出といった不具合が発生することを抑制できる。
【0012】
また、例えば、負圧パージ処理後にフラッシング処理(ノズル口からインクを噴射してノズル口の洗浄を行う処理)を行うインクジェットプリンタに適用すると、フラッシング処理時に噴射するインク量を低減できる。
【0013】
また、例えば、負圧パージ処理後にノズル面をワイパ等で拭き取り処理を行うインクジェットプリンタに適用すると、拭き取り処理時に多量のインクが飛散することを抑制できる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、制御手段は、第2離間工程後、シール面の一端側がノズル面から更に離間するように、ノズルキャップをノズル面から離間させた後に停止させる第3離間工程を有するようにキャップアクチュエータの作動を制御することを特徴とする。
【0015】
これにより、万が一、第2離間工程が終了したときにインクブリッジが切れなかった場合にも、確実にインクブリッジを切ることができる。
請求項3に記載の発明では、制御手段は、時間を計時するタイマー手段を有しているとともに、タイマー手段の計時時間に基づいて第1所定時間が経過したか否かを判定することを特徴とし、請求項4に記載の発明では、制御手段は、タイマー手段の計時時間に基づいて第2所定時間が経過したか否かを判定することを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明では、制御手段は、吸引ポンプが停止した後、ノズルキャップ内の圧力が大気圧より低い所定圧力以上となったときに第1離間工程を実行することを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明では、ノズル口から噴射されるインクの温度を検出する温度検出手段を備えており、制御手段は、温度検出手段が検出した検出温度に基づいて、第1所定距離及び前記第1所定時間のうち少なくとも一方を決定することを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明では、ノズル口から噴射されるインクの温度を検出する温度検出手段を備えており、制御手段は、温度検出手段が検出した検出温度に基づいて、第2所定距離及び第2所定時間のうち少なくとも一方を決定することを特徴とする。
【0019】
これにより、請求項6又は請求項7に記載の発明では、インクジェットプリンタが設置される環境条件によらず、ノズル面に気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを安定的に抑制することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明では、第2所定距離は、シール面の一端側からノズル面まで橋渡すように繋がったインクが、ノズルキャップの停止中に切断され得る距離に設定されていることを特徴とする。
【0021】
これにより、ノズルキャップをノズル面から離間させている途中でインクブリッジが切れてしまうことや、ノズルキャップを停止させた状態でもインクブリッジが切れないことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタを図面と共に説明する。
図1及び図2は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの要部(プリンタエンジン部1)を示す模式図であり、図3は記録ヘッド3をノズル口3B(噴射口)側から見た図であり、図4〜図8は負圧パージ装置10の作動を示す図であり、図9は制御装置30等の電気構成の概略を示すブロック図であり、図10は負圧パージ処理の作動を示すフローチャートであり、図11はノズルキャップ11内の圧力変動を示すグラフである。
【0023】
1.プリンタエンジン部1の概略構成
インクジェット方式のプリンタエンジン部1は、周知のごとく、微小なインク滴を記録媒体に向けて噴射することにより記録用紙等の被記録媒体(以下、用紙という。)に画像を形成していく画像形成手段である。
【0024】
本実施形態に係るプリンタエンジン部1は、図1に示すように、用紙に向けてインクを噴射する記録ヘッド3、記録ヘッド3が組み付けられたキャリッジ5、このキャリッジ5を主走査方向(紙面左右方向)に往復移動させる走査機構7、及び記録ヘッド3に供給するインクが蓄えられたインクタンク9等から構成されている。因みに、主走査方向とは、用紙の搬送方向と直交する方向であって、用紙の記録面と平行な方向をいう。
【0025】
そして、記録ヘッド3のうち用紙と対向するノズル面3Aには、図3に示すように、インクを微小な液滴として用紙に向けて噴射する多数個のノズル口3Bが開口しており、記録ヘッド3内のうちノズル口3Bよりインク流れ上流側には、ピエゾ素子の変形や発熱抵抗体による気泡の体積変化等を利用してインクを噴射させるインク噴射手段(本実施形態では、ピエゾ素子)が内蔵されている。なお、本実施形態では、ノズル面3A及びノズル口3Bは下方側に面しており、用紙は記録ヘッド3の下方側に搬送されてくる。
【0026】
また、走査機構7は、図1に示すように、主走査方向一端側に設けられた駆動プーリ7A、主走査方向他端側に設けられた従動プーリ7B、及び両プーリ7A、7Bに架け渡された無端ベルト7C等から構成されており、この無端ベルト7Cにキャリッジ5が固定されている。このため、駆動プーリ7Aが回転して無端ベルト7Cが回転すると、キャリッジ5は、無端ベルト7Cと共に主走査方向に移動する。
【0027】
そして、用紙に画像を形成する場合には、キャリッジ5(記録ヘッド3)が、主走査方向の領域のうち印刷領域(図1参照)にて用紙の搬送と連動して往復移動しながら用紙にインクを噴射して画像を形成していく。一方、画像形成を実行していない場合又は後述する負圧パージ処理等のメンテナンス作業が実行される場合には、キャリッジ5は、主走査方向の領域のうちメンテナンス領域(図1参照)で待機する。
【0028】
また、記録ヘッド3とインクタンク9とは、可撓性を有するチューブ9Aを介して接続されており、チューブポンプ等のポンプ手段(図示せず。)にてインクタンク9に蓄えられているインクが記録ヘッド3に送られる。
【0029】
ところで、メンテナンス領域には、負圧パージ処理を実行するための負圧パージ装置10、及び負圧パージ処理が終了した後にノズル面3Aを拭き取るためのワイパ20が設けられている。以下、負圧パージ装置10について説明する。
【0030】
負圧パージ装置10は、図4に示すように、負圧パージ処理時に下方側からノズル面3Aに接触して多数個のノズル口3B全てを覆うノズルキャップ11、ノズル面3Aに対してノズルキャップ11を離接させるキャップアクチュエータ12、ノズルキャップ11内の空気を吸引する吸引ポンプ13、及びキャップアクチュエータ12の作動を制御する制御装置30(図9参照)等を有して構成されている。
【0031】
ノズルキャップ11には、ノズル面3Aから離隔するように窪んだ凹部11Cが設けられている。そして、この凹部11Cの底部には吸引ポンプ13の吸入側に連通する排出口11Bが設けられ、一方、凹部11Cの周囲(縁部)には、ノズル面3Aのうちノズル口3Bが設けられていない部位に液密に接触するシール面11Aが設けられている。
【0032】
なお、本実施形態では、ノズルキャップ11(特に、シール面11A)をブチルゴム等の弾性変形可能な材料で構成することにより、シール面11Aにて確実にインクを封止可能としている。
【0033】
キャップアクチュエータ12は、ノズルキャップ11と一体化されたキャップホルダー12A、キャップホルダー12Aに連結されたホルダ駆動プレート12B、ホルダ駆動プレート12Bを上下動させるようにしてホルダ駆動プレート12Bをノズル面3Aに対して離間又は近接させるリンク機構12C、及びリンク機構12Cを作動させるカム12D等から構成されている。なお、カム12Dは電動モータ12K(図9参照)により回転駆動される。
【0034】
また、キャップホルダー12Aとホルダ駆動プレート12Bとは、キャップホルダー12Aの移動方向と直交する方向一端側、つまりキャップホルダー12Aの水平方向一端側(図4の右側端部)にて揺動可能に連結されており、この揺動可能に連結された連結部12Eは、ノズルキャップ11の移動方向(上下方向)に延びるカム溝12Fに沿って変位することができる。
【0035】
一方、ホルダ駆動プレート12Bのうちキャップホルダー12Aを挟んで連結部12Eと反対側には、キャップホルダー12Aがホルダ駆動プレート12Bに対してノズルキャップ11の移動方向(上下方向)に予め設定された寸法以上に変位してしまうことを防止するストッパ12Gが設けられている。なお、キャップホルダー12Aには、ストッパ12Gと接触する突起部12Hが設けられている。
【0036】
また、キャップホルダー12Aとホルダ駆動プレート12Bとの間には、ノズルキャップ11をノズル面3Aに押し付ける弾性力をキャップホルダー12Aに付与する弾性手段をなすコイルバネ12Jが配設されている。
【0037】
2.制御装置等の電気構成の概略(図9参照)
負圧パージ装置10の作動(電動モータ12K)を制御する制御装置30は、図9に示すように、時間を計時するタイマー30A、RAMやROM等の記憶手段及びCPUからなる周知のマイクロコンピュータにて構成されており、この制御装置30には、プリンタエンジン部1(特に、キャリッジ5)周りの雰囲気温度を検出するサーミスタ等の温度センサ31の出力が入力されている。なお、本実施形態では、温度センサ31はキャリッジ5に搭載されている。
【0038】
そして、本実施形態では、温度センサ31の検出温度に基づいて、記録ヘッド3から噴射されるインクの温度を推定し、この推定されたインクの温度を後述するノズルキャップ離間工程の制御に利用している。
【0039】
3.負圧パージ処理装置の作動(図4〜図8参照)
負圧パージ処理とは、前述したように、負圧を利用してノズル口3Bに詰まっている気泡やゴミ等を除去する処理であり、本実施形態では、例えば、使用者が負圧パージ処理の実行をインクジェットプリンタに対して指令したときに実行される。
【0040】
そして、制御装置30は、ROMに予め記憶されたプログラム及び温度センサ31の検出温度に基づいて推定されたインクの温度(以下、単にインク温度という。)に基づいて、図10に示す制御フローに従って負圧パージ装置10の作動を制御する。
【0041】
すなわち、負圧パージ処理の実行がインクジェットプリンタに対して指令されると、図10に示す負圧パージ処理の制御フローが起動され、先ず、吸引工程が実行される(S10)。次に、ノズルキャップ離間工程として、第1離間工程(S20)、第2離間工程(S30)及び第3離間工程(S40)が順次実行される。その後、ノズルキャップ11内の残留インクを取除く空吸引工程(S50)、ノズル面3Aがワイパ20にて払拭されるワイプ工程(S60)が順次実行された後、負圧パージ処理が終了する。
【0042】
なお、負圧パージ処理が終了したとき及び負圧パージ処理の実行時以外のときは、インクの乾燥防止及びノズル面3Aにゴミ等が付着することを防止のため、印刷を実行する場合を除き、ノズル面3Aはノズルキャップ11にて覆われた状態となる。
【0043】
以下、上記の各工程について説明する。
3.1.吸引工程(図4参照)
制御装置30は、カム12D(電動モータ12K)を回転させてキャップホルダー12Aをノズル面3Aに近接させることにより、シール面11Aをノズル面3Aに接触させた後、吸引ポンプ13を作動させる。
【0044】
これにより、ノズルキャップ11のシール面11Aがノズル面3Aに押圧されて全てのノズル口3Bがノズルキャップ11で覆われた状態でノズルキャップ11内の圧力が負圧(大気圧未満)となるので、ノズル口3B近傍に滞留している気泡やゴミ等がインクと共にノズルキャップ11内に噴出し、ノズル口3Bに詰まっている気泡やゴミ等が除去される。
【0045】
3.2.ノズルキャップ離間工程
ノズルキャップ離間工程は、吸引工程が終了した後、ノズルキャップ11をノズル口3Bから離間させる工程であり、本実施形態では、第1離間工程、第2離間工程及び第3離間工程の3つ工程から構成されている。なお、これら3つの工程は、制御装置30によりカム12D(電動モータ12K)が制御されることによって実行される。
【0046】
3.2.1.第1離間工程
第1離間工程は、吸引ポンプ13が停止してノズルキャップ11内の圧力が大気圧より低い所定圧力以上となった時に実行される(図11参照)。
【0047】
そして、制御装置30は、ROMに予め記憶されているインク温度と第1所定距離L1及び第1所定時間との関係を示すマップ又は関係式に基づいて、第1所定距離L1及び第1所定時間を決定する。なお、第1所定距離L1及び第1所定時間は、開発時に試験等にて決定された値である。
【0048】
次に、制御装置30は、カム12D(電動モータ12K)の回転を回転させて、図5に示すように、シール面11A全体がノズル面3Aから接触した状態(図4参照)から、シール面11Aの一端側(図5の左端側)がノズル面3Aと接触しつつ、シール面11Aの他端側(図5の右端側)が接触部よりノズル面3Aから離隔するように、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させる。
【0049】
つまり、制御装置30は、シール面11Aの一端側がノズル面3Aに接触した状態でシール面11Aがノズル面3Aに対して傾斜するようにノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させる。因みに、「シール面11Aの一端側(接触部)がノズル面3Aと接触しながら」とは、接触部がノズル面3Aに接触している場合は勿論、僅かにノズル面3Aと離れて近接している場合も含む意味である。
【0050】
このとき、シール面11Aの一端側(以下、この一端側を接触部という。)は、本実施形態では、ノズル口3Bと接触しないノズル口3Bからずれた部位にてノズル面3Aと接触している。なお、以下、シール面11Aの他端側(図5の右端側)を離間部という。
【0051】
そして、制御装置30は、シール面11Aの離間部とノズル面3Aとの距離Aが第1所定距離L1となった時に、カム12D(電動モータ12K)の回転を少なくとも第1所定時間だけ停止させて、シール面11Aの接触部がノズル面3Aに接触し、かつ、距離Aが第1所定距離L1となった状態を少なくとも第1所定時間だけ保持する。
【0052】
3.2.2.第2離間工程
制御装置30は、第1離間工程が終了したか否か、つまりシール面11Aの接触部がノズル面3Aに接触し、かつ、距離Aが第1所定距離L1となった時から第1所定時間が経過したか否かを判定する。このとき、制御装置30は、第1離間工程において、カム12D(電動モータ12K)の回転を停止させた時からタイマー30Aの計時時間に基づいて第1所定時間が経過したか否かを判定する。
【0053】
そして、第1離間工程が終了したと判定されると、制御装置30は、ROMに予め記憶されているインク温度と第2所定距離L2及び第2所定時間との関係を示すマップ又は関係式に基づいて、第2所定距離L2及び第2所定時間を決定する。なお、第2所定距離L2及び第2所定時間は、開発時に試験等にて決定された値である。
【0054】
次に、制御装置30は、図6に示すように、シール面11A全体が第1離間工程時よりノズル面3Aから離間した状態で、シール面11Aの接触部からノズル面3Aまでの距離Bが第2所定距離L2となるように、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させた状態とするとともに、その状態を少なくとも第2所定時間だけ保持する。
【0055】
3.2.3.第3離間工程
制御装置30は、第2離間工程が終了したか否か、つまりノズル面3Aから離間した状態でシール面11Aの接触部からノズル面3Aまでの距離Bが第2所定距離となり、かつ、シール面11Aの離間部からノズル面3Aまでの距離Aが第1所定距離L1と第2所定距離L2との和になった時から第2所定時間が経過したか否かを判定する。
【0056】
このとき、制御装置30は、第2離間工程において、カム12D(電動モータ12K)の回転を停止させた時からタイマー30Aの計時時間に基づいて第2所定時間が経過したか否かを判定する。
【0057】
そして、第2離間工程が終了したと判定されると、制御装置30は、図8に示すように、シール面11Aの接触部からノズル面3Aまでの距離Bが第2所定距離より大きくなり、かつ、シール面11Aの離間部からノズル面3Aまでの距離Aが第1所定距離L1と第2所定距離L2との和より大きくなるように、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させた後、その状態でノズルキャップ11の離間作動を停止させ、負圧パージ処理を終了させる。
【0058】
4.本実施形態に係るインクジェットプリンタの特徴
第1離間工程にて、シール面11Aの接触部側がノズル面3Aに接触しつつ、シール面11Aの離間部とノズル面3Aまでの距離Aが第1所定距離L1となるようにノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させたときに、ノズル面3A全体に散在するように残留しているインクが、図5に示すように、集約されて1本のインクブリッジとなり、そのインクブリッジは、シール面11Aの離間部からシール面11Aの接触部に徐々に移動していく。
【0059】
そして、第2離間工程に移行する前に、ノズルキャップ11の動きを停止させて、インクブリッジの移動が終了するために必要と想定される時間(第1所定時間)だけその停止時状態を保持するので、インクブリッジは最終的にシール面11Aの接触部近傍に集約されていく。
【0060】
次に、第2離間工程にて、シール面11Aの接触部側とノズル面3Aとの距離Bが第2所定距離L2となるようにノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させると、第1離間工程にて接触部に集約された1本のインクブリッジが離間方向に延びて切断に至る(図7参照)。
【0061】
このとき、本実施形態では、ノズルキャップ11の動きを停止させて、インクブリッジを切断するに必要と想定される時間(第2所定時間)だけその停止時状態を保持するので、特許文献1に記載の発明のごとく、ノズルキャップ11を移動させながらインクブリッジを切断する場合に比較して、インクブリッジを確実にノズル面3A側で切断させることができ、ノズル面3Aに気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを抑制できる。
【0062】
したがって、本実施形態では、例えば、ノズル面3Aに残留した気泡やゴミ等を含んだインクがノズル口3Bに逆流し、混色や不吐出といった不具合が発生することを抑制できる。因みに、インクブリッジがノズルキャップ11側で切断されると、切断部からノズル面3Aまでのインクがノズル面3Aに残留するので、ノズル面3Aに気泡やゴミ等を含んだ多くのインクが残留してしまう。
【0063】
延いては、ワイプ工程(S60)時に多量のインクが飛散することを抑制できる。
ところで、第1所定距離L1が小さいほど、シール面11Aはノズル面3Aに近くづいてシール面11Aがノズル面3Aに対して平行となるので、第1所定距離L1が小さくなるほど、ノズル面3Aとノズルキャップ11との間に形成されたインクブリッジは、ノズル面3A全体に拡がり、シール面11Aの接触部に移動(集約)し難くなる。
【0064】
一方、第1所定距離L1を過度に大きくすると、ノズル面3Aとノズルキャップ11との間に形成されたインクブリッジが接触部に移動(集約)する前に切断されてしまい、ノズル面3A全体にインク滴が散在してしまうおそれが高くなる。
【0065】
このため、第1所定距離L1を適切な距離とする必要があるが、この適切な第1所定距離L1は、インクの物性値やインクの温度(インクの粘度等)によって大きく変動してしまう。
【0066】
そこで、本実施形態では、使用されるインクについてのインク温度と第1所定距離L1及び第1所定時間との関係を予め試験で決定し、その予め決定したインク温度と第1所定距離L1及び第1所定時間との関係を示す情報をROMに記憶させて、このROMに記憶された情報に基づいて、第1所定距離L1及び第1所定時間を決定している。
【0067】
同様に、第2所定距離L2及び第2所定時間もンクの物性値やインクの温度(インクの粘度等)によって大きく変動してしまうので、本実施形態では、試験によって予め決定したインク温度と第2所定距離L2及び第2所定時間との関係を示す情報をROMに記憶させて、このROMに記憶された情報に基づいて、第2所定距離L2及び第2所定時間を決定している。
【0068】
このように本実施形態では、インク温度に基づいて第1所定距離及び第1所定時間、並びに第2所定距離及び第2所定時間を決定しているので、インクジェットプリンタが設置される環境条件によらず、ノズル面3Aに気泡やゴミ等を含んだ多量のインクが残留することを安定的に抑制することができる。
【0069】
なお、第2所定距離は、上記説明からも明らかなように、シール面11Aの接触部側からノズル面3Aまで繋がったインクブリッジが、ノズルキャップ11の停止中に切断され得る距離に設定されているので、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させている途中でインクブリッジが切れてしまう、又はノズルキャップ11を停止させた状態でもインクブリッジを切断することができないといったことを未然に防止できる。
【0070】
また、本実施形態では、第2離間工程後、シール面11Aの接触部側がノズル面3Aから更に離間するように、ノズルキャップ11をノズル面3Aから離間させた後に停止させる第3離間工程を設けているので、万が一、第2離間工程が終了した時点で、インクブリッジが切断されなかった場合であっても、確実にインクブリッジを切断することができる。
【0071】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、予めROMに記憶された情報に基づいて、第1所定距離L1及び第2所定時間、並びに第2所定距離L2及び第2所定時間を決定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば光学式センサにてインクブリッジの状態を監視し、この監視結果に基づいて第1所定距離L1及び第2所定時間、並びに第2所定距離L2及び第2所定時間を決定する、又は第1所定距離L1及び第2所定時間、並びに第2所定距離L2及び第2所定時間を予め決定された固定値としてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、負圧パージ処理後に、空吸引工程、ワイプ工程が順次実行されるが、例えばワイプ工程を実行する前に、フラッシング処理を実行してもよい。また、空吸引工程とワイプ工程の一方、あるいは両方を廃止してもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、シール面11Aの接触部がノズル口3Bが設けられた部位からずれた位置にてシール面11Aに接触していたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
また、上述の実施形態では、吸引ポンプ13が停止してノズルキャップ11内の圧力が大気圧より低い所定圧力以上となった時に第1離間工程が実行されたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば吸引ポンプ13が停止する前から実行する、又はノズルキャップ11内の圧力が大気圧となったときに実行する等してもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、インクタンク9からチューブ9Aを介して記録ヘッド3にインクを供給するタイプにインクジェットプリンタであったが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
また、上述の実施形態では、インクの温度を雰囲気温度から推定することにより間接的にインク温度を検出していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、インク温度を直接的に検出してもよい。
【0077】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの要部(プリンタエンジン部1)を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの要部(プリンタエンジン部1)を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る記録ヘッド3をノズル口3B(噴射口)側から見た図である。
【図4】本発明の実施形態に係るノズルキャップ11及び負圧パージ装置10の作動を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るノズルキャップ11及び負圧パージ装置10の作動を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るノズルキャップ11及び負圧パージ装置10の作動を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るノズルキャップ11及び負圧パージ装置10の作動を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るノズルキャップ11及び負圧パージ装置10の作動を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る制御装置30等の電気構成の概略を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施形態に係る負圧パージ処理の作動を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係るズルキャップ11内の圧力変動を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
1…プリンタエンジン部、3…記録ヘッド、3A…ノズル面、3B…ノズル口、
5…キャリッジ、7…走査機構、7A…駆動プーリ、7B…従動プーリ、
7C…無端ベルト、9…インクタンク、9A…チューブ、10…負圧パージ装置、
11…ノズルキャップ、11A…シール面、11B…排出口、11C…凹部、
12…キャップアクチュエータ、12A…キャップホルダー、
12B…ホルダ駆動プレート、12C…リンク機構、12D…カム、
12E…連結部、12F…カム溝、12G…ストッパ、12H…突起部、
12J…コイルバネ、12K…電動モータ、13…吸引ポンプ、20…ワイパ、
30…制御装置、30A…タイマー、31…温度センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを噴射するノズル口を有する記録ヘッドと、
前記ノズル口を覆うとともに、前記記録ヘッドのうち前記ノズル口が開口したノズル面側に接触するシール面を有するノズルキャップと、
前記ノズル面に対して前記ノズルキャップを離接させるキャップアクチュエータと、
前記キャップアクチュエータの作動を制御する制御手段と、
前記ノズルキャップにて前記ノズル口が覆われているときに、前記ノズルキャップ内の圧力を低下させる吸引ポンプとを備え、
前記制御手段は、
前記シール面の全体が前記ノズル面に接触した状態から、前記シール面の一端側が前記ノズル面に接触しつつ、前記シール面の他端側が前記ノズル面から第1所定距離離間するように、前記ノズルキャップを前記ノズル面から離間させた状態とするとともに、その状態を第1所定時間保持する第1離間工程と、
前記第1離間工程後、前記シール面全体が前記第1離間工程時より前記ノズル面から離間した状態で前記シール面の一端側が前記ノズル面から第2所定距離離間するように、前記ノズルキャップを前記ノズル面から離間させた状態とするとともに、その状態を第2所定時間保持する第2離間工程と、
を有するように前記キャップアクチュエータの作動を制御することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2離間工程後、前記シール面の一端側が前記ノズル面から更に離間するように、前記ノズルキャップを前記ノズル面から離間させた後に停止させる第3離間工程を有するように前記キャップアクチュエータの作動を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記制御手段は、時間を計時するタイマー手段を有しているとともに、前記タイマー手段の計時時間に基づいて第1所定時間が経過したか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記制御手段は、前記タイマー手段の計時時間に基づいて前記第2所定時間が経過したか否かを判定することを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記吸引ポンプが停止した後、前記ノズルキャップ内の圧力が大気圧より低い所定圧力以上となったときに前記第1離間工程を実行することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記ノズル口から噴射されるインクの温度を検出する温度検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記温度検出手段が検出した検出温度に基づいて、前記第1所定距離及び前記第1所定時間のうち少なくとも一方を決定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記ノズル口から噴射されるインクの温度を検出する温度検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記温度検出手段が検出した検出温度に基づいて、前記第2所定距離及び前記第2所定時間のうち少なくとも一方を決定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記第2所定距離は、前記シール面の一端側から前記ノズル面まで橋渡すように繋がったインクが、前記ノズルキャップの停止中に切断され得る距離に設定されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項1】
インクを噴射するノズル口を有する記録ヘッドと、
前記ノズル口を覆うとともに、前記記録ヘッドのうち前記ノズル口が開口したノズル面側に接触するシール面を有するノズルキャップと、
前記ノズル面に対して前記ノズルキャップを離接させるキャップアクチュエータと、
前記キャップアクチュエータの作動を制御する制御手段と、
前記ノズルキャップにて前記ノズル口が覆われているときに、前記ノズルキャップ内の圧力を低下させる吸引ポンプとを備え、
前記制御手段は、
前記シール面の全体が前記ノズル面に接触した状態から、前記シール面の一端側が前記ノズル面に接触しつつ、前記シール面の他端側が前記ノズル面から第1所定距離離間するように、前記ノズルキャップを前記ノズル面から離間させた状態とするとともに、その状態を第1所定時間保持する第1離間工程と、
前記第1離間工程後、前記シール面全体が前記第1離間工程時より前記ノズル面から離間した状態で前記シール面の一端側が前記ノズル面から第2所定距離離間するように、前記ノズルキャップを前記ノズル面から離間させた状態とするとともに、その状態を第2所定時間保持する第2離間工程と、
を有するように前記キャップアクチュエータの作動を制御することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2離間工程後、前記シール面の一端側が前記ノズル面から更に離間するように、前記ノズルキャップを前記ノズル面から離間させた後に停止させる第3離間工程を有するように前記キャップアクチュエータの作動を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記制御手段は、時間を計時するタイマー手段を有しているとともに、前記タイマー手段の計時時間に基づいて第1所定時間が経過したか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記制御手段は、前記タイマー手段の計時時間に基づいて前記第2所定時間が経過したか否かを判定することを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記吸引ポンプが停止した後、前記ノズルキャップ内の圧力が大気圧より低い所定圧力以上となったときに前記第1離間工程を実行することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記ノズル口から噴射されるインクの温度を検出する温度検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記温度検出手段が検出した検出温度に基づいて、前記第1所定距離及び前記第1所定時間のうち少なくとも一方を決定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記ノズル口から噴射されるインクの温度を検出する温度検出手段を備えており、
前記制御手段は、前記温度検出手段が検出した検出温度に基づいて、前記第2所定距離及び前記第2所定時間のうち少なくとも一方を決定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記第2所定距離は、前記シール面の一端側から前記ノズル面まで橋渡すように繋がったインクが、前記ノズルキャップの停止中に切断され得る距離に設定されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−149486(P2008−149486A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337254(P2006−337254)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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