説明

インクジェットプリントヘッド及びそれに関係する製造工程

【課題】チャンバと連通している供給管に気泡が付着しないインクジェットプリントヘッドおよびその製造方法の提供。
【解決手段】感光性樹脂38の構造層内に作られているチャンバと、それぞれの対応するインク供給管は、タンタルと金の保護層34、36で作られた平坦な底壁36と、少なくとも1つの射出ノズル46を含み、連続する外周線に沿って底壁に連結されている、実質的に凸状の表面で構成された上壁と、によって境界が定められており、各チャンバと各供給管の内側形状は、金属の、制御された非包囲式の金属の成長から得られ、タンタルの層34の上に載っている金の層36の寸法から始めて堆積した犠牲層57の外側形状の相補形の印象なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字及び/又は画像を黒色又はカラーインクで、限定するわけではないが、一般的には紙のシートである印刷媒体に、既知のバブル式インクジェット技術によって形成するのに用いられるプリントヘッドに関しており、具体的には、射出チャンバ、関係する供給管、及び関係する製造工程の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
熱技術に基づくインクジェットプリントヘッドの構造とその作動の方式、具体的には、液滴が作動要素又は抵抗器の表面に対し垂直方向に射出される「トップシューター」と呼ばれる型式は、現在の技術では概ね周知である。
【0003】
従って、現在最新の技術で既知の従来型のこの型式のヘッドの特徴については、本発明をよく理解頂くために、製造工程の最も重要なステップのみを述べるにとどめる。
図1は、従来のインクジェットプリンタ1に関し、本発明を理解するのに最も関係のある部分に絞って、全体的な形態を示しているが:プリンタ1は固定式構造体2を備えており、その上では、キャリッジ4がガイド6上を走査方向「X」に動き、キャリッジ4には4つのインクジェットプリントヘッド8が取り付けられており、その内1つは黒色印刷用、3つはカラー印刷用で、通常は、部分的に印刷ローラー10に巻き付けられている紙のシートである印刷媒体9に印刷するためのプリントヘッドであり;キャリッジ4の走査ストロークは、エンコーダー12で制御されている。
【0004】
図1は、基準軸も示しており、x軸は、水平で、キャリッジ4の走査方向に平行な軸;y軸は、垂直で、媒体9のライン供給の方向に平行な軸;z軸は、x軸とy軸に直角な軸である。
【0005】
図2は、図1のプリンタ1に取り付けられている4つのインクジェットプリントヘッド8の内の1つの作動アッセンブリ15の拡大斜視図であり、特に、第WO 01/03934号で公開されている国際特許出願に記載の既知のプリンとヘッドに関連しており;作動アッセンブリ15は、y軸に平行な2列のノズル18を有する構成体16と、ダイ20とを備えており、ダイ20は、既知のCMOS/LD−MOS技術で作られた駆動超小型回路22のアレイと、超小型回路22とプリンタ1の制御回路(図示せず)の間に電気的接点を作れるようにするはんだ付けパッド23とを備えている。
【0006】
作動アッセンブリ15は、更に、インク供給管とチャネル、及びチャンバとチャンバの内側に金属層の薄い部分の形態として作られている作動要素即ち抵抗器、のアレイ25を備えている。
【0007】
作動器15の製造工程は、複数のダイ20で作られているウェーハ27(図3)上で行われ、各ダイ上で、前記工程の第1部分では、駆動超小型回路22が製作され完成され、前記工程の第2部分では、供給管とチャネル、及びチャンバと抵抗器、のアレイ25が作られ、製造工程の終わりに、個々のダイ20が砥石車を使って分離される。
【0008】
既知の技法に従って製作され、具体的には先に引用した国際特許出願に記載されている、インクの液滴を射出するチャンバと、チャンバに接続されている関係する供給管は、実質的に平行六面体形状、即ち、実質的に平坦で互いに垂直な壁を有するシート状に電着された電気銅の犠牲層を化学的に除去することによって作られ、抵抗器の上方に配置されている金とタンタルの層の上に堆積されたポリマー構造層の内側に製作されている。
【0009】
その結果、射出チャンバと、チャンバと直接連通している関係するインク管の内側形状には、数多くの尖ったエッジと表面の不連続部が存在しており、犠牲層の形状を忠実に再現している。
【0010】
従って、チャンバと、チャンバに接続されている管の形状は、プリントヘッドが作動している間に、気泡が成長して上記不連続部に付着するのを促進し、射出泡の形成工程で深刻な問題を発生させ、供給管へのインクの流れを妨げる働きをする。
【特許文献1】国際特許出願第WO 01/03934号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、上に概要した欠点を少なくするのに適した一体式のインクジェットプリントヘッドを製作することである。
本発明の別の目的は、気泡が付着しないように内側表面が形成された、チャンバとチャンバに接続されている供給管を製作することである。
【0012】
本発明の更に別の目的は、気泡の排除と射出泡の展開を促進するように内側表面が形成された、チャンバとチャンバに接続されている供給管を製作することである。
本発明によれば、最適化されたプリントヘッドと、関係する製造工程とが提示されており、各請求項に定義されている方法を特徴としている。
【0013】
以上及びその他の本発明の特徴は、非制約的な例として挙げている、インクジェットプリントヘッドと、関係する製造工程との好適実施形態に関する以下の説明を、添付図面の図を参照しながら読めば、更に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明による最適化されたインクジェットプリントヘッドは、射出チャンバと、関係するインク供給管の製作における改良を特徴としているので、この改良は、ヘッド作動アッセンブリ製造工程の最終部分だけに関係する。従って、本発明による、射出チャンバと、関係するインク供給管の製造を明白且つ完全に理解するのに必要な段階だけを詳細に説明する。
【0015】
従って、前記改良は、液滴が作動要素即ち抵抗器の表面に垂直な方向に射出される、当該技術で既知の異なる種類の「トップシューター」型式のインクジェットプリントヘッドに、具体的には、非制約的な例として、既に引用した国際特許出願第WO 01/03934号に記載されているモノリシック・プリントヘッドに適用することも想定しており、同出願については、製造の最初の段階に関する更に完全な情報のために参照頂きたい。
【0016】
図5は、第1製造段階の終わりにおける、従来型のプリントヘッドに関係するダイ20(図3)の断面を示しており、同段階では、当該断面には無いため図示していないが、熱作動要素即ち抵抗器を駆動するのに適した超小型回路のアレイを製作するために、当技術では既知の何れかの構築工程で、複数の金属と誘電体の層を、結晶質シリコンの層30の上に堆積させ、次に、抵抗器を、シリコンの炭化物と窒化物(Si、SiC)の二重層32で覆う。
【0017】
本発明による、最適化されたプリントヘッドの製造を完了する工程は、上に述べた現在の状態から開始し、図6のフローチャートに示す各段階に従って継続しており、射出チャンバと、射出チャンバに接続されている関連するインク供給管と、射出ノズルを製造することにある。
【0018】
図7は、製造工程の最後に現われる、本発明による最適化されたインクジェットプリントヘッドの、図4のVII−VII線に沿う断面を示しており、
インク用の貯蔵チャンバ48が底部に作られているシリコンの下層30、
それぞれ窒化シリコン(Si)と炭化シリコン(SiC)で作られた、抵抗器(図示せず)を保護するための誘電体層32、
タンタル層34、
タンタルの層の一部の上に設けられている、いわゆる「シード層」即ち、以下に詳細に説明するが、犠牲層の流電気学的成長が始まる層である金の層36、
当技術では既知の型式の構造ポリマー層38、
構造層38の外側表面上に堆積している防湿機能を備えた保護層41、
上部凹形壁44によって境界が定められ、構造層38の厚さの中に作られている射出チャンバ42、
構造層38を横断してチャンバ42と連通しているインク液滴射出用のノズル46、
シリコン層30内のノズル46とは反対側に作られ、層32、34、36を貫通する2つの孔50を通してチャンバ42と連通しているインク供給スロット48、を見ることができる。
【0019】
タンタル層34と金の層36は、チャンバ42の底壁43を形成しており、タンタル層の方が広く、チャンバ42の外郭線52を越えて部分的に構造層38の下に拡がっており、一方、金の層36は、それ程拡がっておらず、チャンバ42の内側に完全に収まっている。
【0020】
本発明の発明人は、所与の成長速度を確立するために、銅の犠牲層57(図16)の自由な電着を、即ち制御された非包囲の方式で実行し、流電気学的浴の化学組成を適切に選択することによって、シード層の所与の寸法から始まる、犠牲層の水平(x軸)方向の自由な成長の垂直(z軸)方向の自由な成長に対する割合を変更できることを発見した。
【0021】
この技法によって、犠牲層の上側外表面58は、凸形、通常はドーム形に成長し、その凸状は、銅の成長の水平方向の拡がりに関係して様々に際立つ。
先に概説したように、銅の犠牲層57は、外郭に拘束を加えることなく、実質的に自由な成長で、即ち制御された非包囲の方式で堆積させており、
−制御された方式では、銅の電着は電解槽を使って実現されるので、当該技術に精通している当業者には既知の電解浴の組成と関連添加剤によって、犠牲層57の、水平(x軸)方向の成長の垂直(y軸)方向の成長に対する割合を制御することができ;
−非包囲方式では、既知の最新技術に記載されている先の製造法とは違い、成長は、フォトポリマー層内に作られ側壁で閉ざされたシートの内側形状で制限されることはない。
【0022】
この技法を使用することによって、犠牲層57が適切な樹脂の構造層38で覆われている場合は、犠牲層57が取り除かれた後に、凸形の上壁44で境界が定められ、即ち様々に際立つドーム形を有しており、犠牲層57の形状の相補的で真の印象を表しているチャンバ42と、関係する供給管56(図4)が、犠牲層の内側に容易に得られる。更に、工程を簡単に変えて、犠牲層の電着を継続することによって、ノズル74に相補的な事前設定された形状の「柱」74(図22)を製作することができるので、柱74に忠実にモデル化された射出ノズル46を構造層内に直接作ることができる。
【0023】
この技法によって、チャンバ42と、対応する抵抗器39とに完全に整列した射出ノズル46を得ることができ、ノズルを製作する際に機知の技法を使用した場合に発生する位置決めエラーを完全に排除することができる。
【0024】
所定の寸法の金の層36の区域に化学エッチングを施し活性化させることによって、銅の均一な堆積を開始させ、前記区域の拡がりから始まって、金の全表面、及びこれを超えてタンタル層上に堆積させることができる。この操作は、ウェーハ27(図3)に属する全てのダイ20に同時に実施される。
【0025】
実際には、銅は、先に境界が定められ活性化された金のシード層36の表面の区域だけに堆積を開始し、その後、金の層を越えてタンタル層34上に、電解浴及び関係する添加剤の組成の選択によって設定される成長割合によって犠牲層57の所望の厚さに比例する水平方向の寸法になるまで、伸張する。
【0026】
実際、本発明の範囲から逸脱することなく、ヘッドが正しく機能する要件によって決まる(水平方向の)事前に設定された寸法の、チャンバと、関連し付帯するヘッド管と、を得るために、犠牲層の堆積が始まる「シード層」の表面区域は、活性化された金の層の上に予備エッチングを施すことによって境界が定められる。所定の時間の後、銅の成長が中断され、その時間の終了時には、銅の犠牲層の厚さが事前に設定されている値に達している。この値に対応して、犠牲層の水平方向の拡がりも、成長割合によって決まり、流電気学的浴とその添加物の組成の選択時に最初に設定された、巧く定められた値になる。
【0027】
従って、金のシード層は、先行技術では必要とされているようにタンタル層で占められている全表面を金で覆うことなく、犠牲層が成長し始める区域、即ち、チャンバと、関係する管が構築されることになる区域内だけに限定される。この方策は、余分な露光−現像処理と追加の金の層のエッチングとを必要とするが、それに見合う量の金を節約できるという利点を提供する。それは、更に、金のシード層がエッチングされるときに、(構造層の下の)サブエッチングに付随する問題、即ち、それが層自体の剥離を開始させるか、不純物を閉じ込めるという問題を回避できることを意味している。
【0028】
更に、チャンバと接続管に不連続部が無いようにするためには、タンタルの層34は、チャンバと、関連する管との底壁の最終的な寸法に対して外側に、或る程度拡がっているのが望ましい。
【0029】
図6のフローチャートを参照しながら、チャンバ、供給管及び射出ノズルを製作するための工程について、以下詳細に説明する。
第1の実施形態:感光性構造層
開始ステップ100では、ウェーハ27(図3)を準備するが、ウェーハでは、本発明に従って、チャンバと、関係する供給管とを製作する後続の工程への準備が、ダイ20に整っている。
【0030】
ステップ101では、窒化シリコン(Si)の第1層と、次いでその上に設けられる炭化シリコン(SiC)層とで構成される二重の誘電体層32を堆積させるが、その合計厚さは、0.4から0.6μmであるのが望ましく;層32は、断面の外側にあるので図5には示されていない抵抗器39(図18)を保護する働きをする。
【0031】
ステップ102では、フォトレジスト層33(図8)を堆積させ、そのリソグラフィックエッチングを、適切なマスク35を使って、後で供給孔50がエッチングされることになる位置に、施す。
【0032】
ステップ103では、図9に示すように、供給孔50を、シリコンの窒化物及び炭化物の層32と下のシリコンの層30に、望ましくはシリコン内の深さが15から20μmの間、直径が約15μmとなるように、「乾式」エッチングでエッチングする。
【0033】
ステップ104(図10)では、フォトレジスト層33の残留物を除去する。
ステップ105では、図11に図示すように、スパッタリング処理で、望ましくは厚さ0.4から0.6μmのタンタル層34を、シリコンの窒化物と炭化物の層32の上に堆積させる。次に、これを、望ましくは厚さ100から200A°の金の層36で覆い、この工程に続いて、2つの層34と36の金属が、図11で分かるように、孔50のエッジを部分的に覆う。
【0034】
ステップ106では、図12に示すように、金の層36とタンタルの層34の形状を画定するため、ポジ型フォトレジスト45を塗布し、露光し、現像する。
ステップ107では、金の層36とタンタルの層34をエッチングする(図13)。
【0035】
ステップ108では、金の層36の形状を画定するために、ポジ型フォトレジスト45(図14)に、2回目の露光と現像を施す。
ステップ109では、金の層36をエッチングしていわゆる「シード層」37(図4と図15)を製作するが、その寸法は、射出チャンバ42と、関係する供給管56(図4)の底壁の所望の形状と寸法を画定するため、前もって設定したものである。
【0036】
ステップ110では、フォトレジストの残留部分を除去する。
ステップ111では、有機残留物を全て除去するため、金36の表面を、酸素雰囲気でプラズマエッチングを使って洗浄する。同時に、次のステップで述べる銅の電着の開始を促すため、金の層36の表面を化学的に活性化する。
【0037】
ステップ112では、図16に示すように、本発明に従って、チャンバとチャンバに接続されている供給管を製作するのに用いられる電気銅の電着によって、犠牲層57を、金の層36から開始して堆積させる。銅の電着は流電気学的浴を使って行うが、その化学的組成と、関係する添加剤によって、垂直方向(z軸)の成長に対する水平方向(x軸)の成長の割合を制御することができる。この技法によって、犠牲層57は、水平面上に、即ち厚い含有レジストを使用すること無く、自由な成長で堆積させることができ;この処理によって、犠牲層の上外側表面58は、凸状に、通常は様々に強調されたドーム型に成長し;先のステップで述べた金の層36を化学的に活性化させることにより、銅の自由で均一な堆積を金の全表面36から開始させ、更に、銅の成長を、金の層36を越えてタンタルの層34の上へと継続させることができる。前記層34と36は、射出チャンバの底部を構成し;実際にこの実施形態では、限定するわけではないが、チャンバとチャンバに接続されている管の底壁の所定の寸法に対応する犠牲層57の水平(x軸)方向の最終的な寸法は、銅の所定の成長割合に従って、チャンバ42の内側高さに等しい垂直(z軸)方向の対応する寸法によって定められる。
【0038】
犠牲層を製作するのに、銅の代わりにニッケルを使用することもできる。
ステップ113では、図17に示すように、ダイ20の表面61と、犠牲層57の外側表面58とを覆う感光性構造層38を塗布するが;感光性層38は、望ましくは厚さが10から50μmで、ネガ型のエポキシ又はポリアミドのフォトレジストで作られている。
【0039】
ステップ114では、構造層38に、低温で、望ましくは90℃以下でプリベーク処理を施す。
ステップ115では、図18に示すように、ノズル46を、露光と現像によって構造層38を貫通して作る。図17は、図4のXVIII−XVIII線に沿うダイ20の断面を示していて、シリコン層30と保護層32の間の層63を描いており;層63は、当該技術に精通している当業者には周知の方法で層63内に製作された抵抗器39によって得られる、ノズル46を通してインクの液滴の射出を背面駆動する超小型電子機器を構成する一式のフィルムを簡潔に示していることに注目頂きたい。
【0040】
ステップ116では、構造層38に、望ましくは150から250℃の間の温度でポストベーク処理を施す。
ステップ117では、シリコン層30の下部のスロット48(図19)に、例えばKOH又はTMHAを使用する「湿式」技術で、異方性エッチングを施す。シリコンのエッチングは、孔50の開口まで継続されるので、スロット48に対応する残っているシリコン層30aの厚さは、約10μmである。
【0041】
ステップ118では、犠牲層57を、例えばHCIとHNOの混合溶液で作った強酸性浴を使って化学エッチングによって取り除く。本発明による工程で得られた犠牲層57の上側表面58の特殊な凸形状には、尖った角と死角が無いので、犠牲層57を構成する銅全体を完全に取り除くことができる(図7)。
【0042】
この工程の終了時に、チャンバ42とチャネル56が得られ、その内側形状は、犠牲層57の真の印象を構成し、チャンバとチャンバに接続されている管との上側表面44は、犠牲層57の外側表面58を忠実に再現している。
【0043】
ステップ119では、構造層38の上側表面40を、機械ラッピングと同時にCMP(化学的機械研磨)型の化学処理又は他の同様の処理を施して平坦化する(図4)。
ステップ120では、樹脂を保護するため構造層38の外側表面40に、望ましくは厚さ約1000Åのクロム製の金属層41を、樹脂の構造層38の外側表面に引っ掻き傷や腐食に強い特性を有する撥水性(防湿性)の外側表面を作るため、真空蒸着させる。
【0044】
ステップ121の最終工程では、当該技術に精通している当業者には既知の、以下の処置を行い、即ち、
ウェーハ27を個々のダイ20に切り分け、
図示していない平坦なケーブルを、既知のTAB処理によって、各ダイ20のパッドにはんだ付けし、
関係する平坦なケーブルの付いたダイを、ヘッドのコンテナタンクに取り付け、
タンクをインクで満たし、最終試験を行う。
第2の実施形態:非感光性構造層
以下の第2実施形態は、図20のフローチャートと図21−23を参照しながら説明する。
【0045】
図6bのフローチャートに挙げたステップ112を実行した後、本発明による処理は、以下のステップで説明する工程で継続される。
ステップ122(図21)では、厚いポジ型フォトレジストの層68を、層の緻密度を高めるために、様々なパスで、中間に休止を入れて交互させて堆積させる。ポジ型フォトレジストとして、当該技術に精通している当業者にAZ4562として知られている市販の製品を、望ましくは厚さ25から60μmで使用してもよい。
【0046】
ステップ123では、ポジ型フォトレジスト68の露光と現像を行い、後でノズル46の鋳型とするのに用いる内向きに拡がった孔70を製作する。
ステップ124では、孔70の内側のフォトレジスト68の現像で残ったものを取り除くために、プラズマエッチング式の洗浄を行う。
【0047】
ステップ125では、孔70に対応して被覆されないで残っている銅の犠牲層の区域72(図21)にマイクロエッチングを施すが、次のステップで説明するように、その上に銅が連続して成長して、ノズル46の鋳型となる金属の柱74を形成することになる。
【0048】
ステップ126では、図22に示すように、孔70の内側で犠牲層57上に直接に銅の電気化学的成長を再開させ、柱即ち鋳型74を作る。
ステップ127では、厚いポジ型フォトレジスト68の層を取り除く。
【0049】
ステップ128では、図23に示すように、エポキシ樹脂又は非感光性ポリアミド樹脂の、望ましくは厚さ25から60μmの構造層75を塗布し、ノズル46の鋳型74を含め、犠牲層57を全体的に覆う。この種の樹脂は、インク、特に強いアルカリ性のインクによって作り出される攻撃的な環境に対して大きな耐性を提供するのに用いられる。
【0050】
ステップ129では、構造層75の上側表面76に、機械ラッピングと同時にCMP(化学的機械研磨)式、又は他の同様の処理によって平坦化を施し、銅の鋳型74の上側ドーム74aを露出させる。
【0051】
工程には、図6bのフローチャートに挙げたステップ116とそれに続くステップで既に説明したように、スロット48の異方性エッチングと犠牲層57の除去が続く。
第3の実施形態:非感光性構造層
以下の第3の実施形態は、ステップ113とステップ115を、以下のステップ130と131に入れ替えたものである。
【0052】
ステップ130では、非感光性構造層38a(図18)を塗布して、ダイ20の表面61と、犠牲層57の外側表面58を覆うが、非感光性層38aは、望ましくは厚さが10から60μmであり、エポキシ又はポリアミドのネガ型樹脂で作られている。
【0053】
ステップ114では、ノズル46(図18)を、エキシマレーザー技術を使って非感光性構造層38aを貫通して作る。この型式のレーザーは、銅の犠牲層57の上側表面に出会うと自動的にその作用を停止するという利点を有しているので、他の型式のレーザーには必要な、レーザービームの攻撃的な作用を止める方策を何ら必要としない。特に、レーザービームを適切に集中させることによって、ノズル46を、円筒形、又は、犠牲層57の表面と接触している基部の方が大きい円錐台形状に作ることができる。
【0054】
製造工程では、図6bのフローチャートに挙げたステップ115とそれに続くステップで既に説明したように、スロット48の異方性エッチングと犠牲層57の除去が続く。
製造の詳細と実施形態は、説明し図示しているものに対して、本発明の範囲から逸脱することなく、多様に変更できる旨理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来型のインクジェットプリンタの軸測投影図である。
【図2】既知技術によって作られた作動アッセンブリの拡大図である。
【図3】半導体材料のウェーハであり、その上のまだ分離されていないダイを示している。
【図4】図3のダイの区域を射出チャンバの底壁に平行に切った平面断面図である。
【図5】第1製造段階が終わり、本発明による製造工程の実行の準備が整ったダイを断面で示している。
【図6a】本発明による、プリントヘッド製造作業のフローチャートである。
【図6b】本発明による、プリントヘッド製造作業のフローチャートである。
【図7】製造工程の終わりに現れる、本発明による、最適化されたインクジェットプリントヘッドの、図4のVII−VII線に沿う断面である。
【図8】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図9】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図10】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図11】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図12】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図13】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図14】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図15】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図16】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図17】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図18】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図19】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図20】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図21】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図22】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。
【図23】本発明による、プリントヘッド製造工程の後に続く各段階を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの液滴を印刷媒体上に射出するのに最適化されたインクジェットプリントヘッドであって、シリコンの下層(30)と、前記シリコンの下層(30)上の構造層(38)と、複数の射出チャンバ(42)及び複数の供給管(50、56)とを備えており、各チャンバ(42)は、少なくとも1つの抵抗器(39)を含んでおり、前記構造層(38)には、前記各チャンバ(42)と連通しており、前記各抵抗器(46)に面して配置されている複数の射出器ノズル(46)が設けられているインクジェットプリントヘッドにおいて、前記各チャンバ(42)と、対応する各供給管(56)とは、前記抵抗器(39)の保護層(32、34)で作られている平坦な底壁(43)と、実質的に凸状の表面で作られており、前記各ノズル(46)を含み、連続する外周線(52)に沿って前記底壁に連結されている上壁(44)と、によって境界が画定されているので、各前記抵抗器(39)により加熱生成される前記インクの射出泡の形成と発達の過程が促進されることを特徴とする、インクジェットプリントヘッド。
【請求項2】
前記保護層(32、34)は、タンタルの第1層(34)で作られ、前記チャンバ(42)の内側に面しており、シリコンの炭化物と窒化物の第2分離層(32)の上に堆積し、前記抵抗器(39)と接触して配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項3】
前記タンタルの第1層(34)は、前記チャンバ(42)及び前記チャンバ(42)に接続されている前記管(56)の前記底壁(43)を構成し、前記タンタルの層(34)は、前記周囲線(52)を実質的に越えて拡がっていることを特徴とする、請求項2に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項4】
前記凸状の上壁(44)は、前記供給管(56)、前記底壁(43)及び前記ノズル(46)に切れ目無く連結されていることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項5】
前記各チャンバ(42)と前記各供給管(56)の内側形状は、感光性構造層(38)内に作られた、前記タンタルの層(34)の上の金の層(36)から開始して堆積した制御された非包囲式の金属の成長から得られた犠牲層(57)の相補形の印象であることを特徴とする、上記請求項の何れかに記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項6】
前記構造層(38)は、エポキシ又はポリアミド類のネガ型フォトレジストで作られており、前記犠牲層の上に、それを完全に覆うように塗布されていることを特徴とする、請求項5に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項7】
前記各チャンバ(42)、前記各供給管(56)及び前記各ノズル(46)の内側形状は、感光性構造層(38a)内に作られた、前記タンタルの層(34)の上の金の層(36)から開始して堆積した制御された非包囲式の金属の成長から得られた犠牲層(57)と各鋳型(74)の相補形の印象であることを特徴とする、上記請求項1から4の何れかに記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項8】
前記構造層(38a)は、非感光性のエポキシ又はポリアミド類のネガ型フォトレジストで作られており、前記犠牲層(57)と前記鋳型(74)の上に、それらを完全に覆うように塗布されていることを特徴とする、請求項7に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項9】
前記犠牲層(57)と前記金層(36)が、前記チャンバ(42)と前記チャンバ(42)に接続されている前記供給管(56)を作るため、酸性浴によって取り除かれることを特徴とする、請求項5又は6に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項10】
前記犠牲層(57)は、電気銅で作られていることを特徴とする、請求項5から9の何れかに記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項11】
前記犠牲層は、ニッケルで作られていることを特徴とする、請求項10に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項12】
複数のダイ(20)に分割されているウェーハ(27)上に作られるインクジェットプリントヘッドの製造工程であって、前記各ダイは、結晶質シリコンの下層(30)と、前記結晶質シリコンの下層(30)の上に配置されている複数の熱作動要素(39)と、タンタルの層(34)で作られ、その後、金の層(36)で覆われた保護層(34、36)とを備えている、製造工程において、
a)後に続く金属(57)の電着の開始を促すため、流電気学的浴を使って、前記金の層(36)を化学的に活性化させる段階と、
b)前記金の層(36)の上に前記金属(57)を電着させ、前記金の層(36)に平行且つ垂直に、制御された非包囲式の成長によって、犠牲層(57)を作る段階と、
c)前記犠牲層(57)を全体的に覆って感光性構造層(38)を塗布する段階と、
d)フォトエッチング処理を使って、前記構造層(38)を貫通する複数のノズル(46)を作る段階と、
e)前記犠牲層(57)を、高酸性浴の形態の化学エッチングで取り除き、前記インクを排出するための複数のチャンバ(42)と、前記チャンバに接続されている複数の供給管(56)とを製作する段階であって、前記チャンバは、前記タンタルの層(34)と金の層(36)で作られた平坦な底壁(43)と、前記底壁(43)に切れ目無く連結されていて、前記犠牲層(57)の相補形で真の印象である凸状の上側表面(44)とによって内側の境界が定められている、複数のチャンバ(42)と複数の供給管(56)とを作る段階と、から成ることを特徴とする工程。
【請求項13】
前記段階a)の前には、
f)前記射出チャンバ(42)の最終寸法と相関関係にある前記電着の開始領域を画定するため、前記金の層(36)をエッチングする段階、があることを特徴とする、請求項12に記載の工程。
【請求項14】
前記段階c)及びd)が、以下の段階、即ち、
g)厚いポジ型フォトレジスト(68)の層を、前記フォトレジスト(68)の上側表面の平坦性を改良するために、様々なパスで、中間に休止を挟んで交互させて、前記犠牲層(57)の上に塗布する段階、
h)前記厚いポジ型フォトレジストを露光し現像して、内向きに拡がった孔(70)を作る段階、
i)アッシャー法で洗浄作業を行い、前記孔(70)の内側のフォトレジストの残留物の痕跡を除去する段階、
m)マイクロエッチングを実行し、前記孔(70)に対応する前記犠牲層(57)の表面の酸化された部分(72)を活性化させる段階、
n)前記孔(70)の内側の電気銅の電気化学的成長を、直接前記犠牲層(57)上で再活性化させ、前記ノズル(70)の鋳型(74)を作る段階、
o)前記厚いポジ型フォトレジストの層(68)を取り除く段階、
p)非感光性のエポキシ又はポリアミド樹脂(75)の構造層を、前記鋳型(74)を含む前記犠牲層(57)を全体的に覆って塗布する段階、及び
q)前記非感光性構造層(75)の上側表面(76)の平坦化を実行して、銅の前記鋳型(74)の上側ドーム(74a)を露出させる段階と、置き換えられていることを特徴とする、請求項12又は13に記載の工程。
【請求項15】
前記非感光性構造層(75)は、望ましくは25から60μmの厚さで作られることを特徴とする、請求項14に記載の工程。
【請求項16】
前記工程c)及びd)が、以下の段階、即ち、
r)前記犠牲層(57)の外側表面(58)を覆って、望ましくは厚さが10から60μmで、ネガ型のエポキシ又はポリアミド類の樹脂で作られている、非感光性構造層(38a)を塗布する段階、及び、
s)エキシマレーザー技術を使って、前記構造層(38a)を貫通する複数のノズル(46)を作る段階と、置き換えられていることを特徴とする、請求項12に記載の工程。
【請求項17】
実質的に添付図面の図を参照しながら説明したような、最適なインクジェットプリントヘッドと、関係する製造工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−102036(P2011−102036A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−280343(P2010−280343)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【分割の表示】特願2004−561985(P2004−561985)の分割
【原出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【出願人】(503148270)テレコム・イタリア・エッセ・ピー・アー (87)
【Fターム(参考)】