説明

インクジェット式記録装置および同装置におけるフラッシング制御方法

【課題】フラッシング動作時において発生するインクミストの量を低減し、且つ、フラッシング動作により特定なインクの固化による滞積を防止し得る記録装置を提供すること。
【解決手段】キャッピング状態でなされる第1フラッシングモードと、キャッピング手段が開放された状態でなされる第2フラッシングモードとが選択的に実行されるように構成され、第1フラッシングモードにおいて、インク滴の吐出量が多いフラッシング動作が実行されるようになされる。また、フラッシングによるインク滴の吐出数を累積して計数するフラッシング量カウンタが具備され、このカウンタによる計数値が予め定められた値に達した時に、インク吸収材からインクの一部を吸引排出させる空吸引動作が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷デ−タに対応してインク滴を吐出する記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置に関し、特に記録ヘッドのノズル形成面を封止するキャッピング手段内にインク滴を空吐出させるフラッシング動作を実行する場合において、フラッシング動作によって生ずる問題点を解消し、また適正なフラッシング量を管理することで、キャッピング手段内におけるインクの固化等を抑制するようにしたフラッシング制御の管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にインクジェット式記録装置は、インクカートリッジからのインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に搬送させる紙送り手段を備え、記録ヘッドを主走査方向に移動させながら印刷データに基づいて記録用紙にインク滴を吐出させることで記録が行われる。前記したインクジェット式記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズル開口からインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行う関係上、ノズル開口からの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズル開口に目詰まりを発生し、印刷不良を起こすという問題を抱えている。
【0003】
このために、この種のインクジェット式記録装置には、非印刷時に記録ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャッピング手段を備えている。このキャッピング手段は、記録ヘッドにおけるノズル開口のインクの乾燥を防止する蓋体として機能するだけでなく、ノズル開口に目詰まりが生じた場合には、キャッピング手段によりノズル形成面を封止し、吸引ポンプからの負圧により、ノズル開口からインクを吸引排出させてノズル開口の目詰まりを解消させるインク滴の吐出能力回復機能をも備えている。
【0004】
記録ヘッドの目詰まり解消のために行う強制的なインクの吸引排出処理は、クリーニング操作と呼ばれ、装置の長時間の休止後に印刷を再開する場合や、ユーザが印刷不良を認識して例えばクリーニングスイッチを操作した場合などに実行され、吸引ポンプによる負圧を加えて記録ヘッドよりキャッピング手段内にインクを吸引排出させた後に、例えばゴム材料等により形成したワイピング部材により、ノズル形成面を払拭する操作が伴われる。
【0005】
また、記録ヘッドに印刷とは関係のない駆動信号を印加してインク滴を吐出させる機能も備えており、これはフラッシング操作と呼ばれ、前記ワイピング部材による払拭操作により、ヘッドのノズル開口近傍に生じた不揃いのメニスカスを回復させたり、また印刷動作中にインク滴の吐出の機会が少ないノズル開口において、インクの増粘による目詰まりを防止する目的で、一定周期ごとに実行されるように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フラッシング操作は、前記したように印刷動作中にインク滴の吐出の機会が少ないノズル開口における目詰まりを防止させるために実行される他、キャッピング手段の内部空間に配置されたインク吸収材をインクにより湿潤状態とさせることで、印刷動作の休止中に記録ヘッドにおけるノズル開口の乾燥を防止させるという目的を達成するためにもなされる。
【0007】
一方、昨今においては印刷の多様化が進み、顔料を用いたインクが使用される趨勢となっている。そして、顔料の記録用紙への定着を速めるために、インク組成に界面活性剤を添加する技術がある。このような顔料を用いたインクにおいては、キャッピング部材内において泡立ちが発生するという問題が生じ、この泡が記録ヘッドのノズル開口に生成されたインクのメニスカスを破壊し、いわゆるドット抜けを発生させるという問題を抱えている。そこで、このようなインクの泡によって受ける記録ヘッドの印字障害を回避するためには、キャッピング手段内においてインクの泡が下底部に沈むように、キャッピング手段の内底部を深く構成する手段が考えられる。
【0008】
このような構成を採用した場合においては、フラッシング動作を実行するに際し、従来に比較して記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段の下底部との距離が大きく形成されているために、ノズル開口から吐出されたインク滴が、その飛翔途中で空気抵抗等を受けてさらに微小なインク滴に別れて霧状(インクミスト)に変化するという現象が発生する。そして、このインクミストが記録ヘッドのノズル形成面と、キャッピング手段との間に形成された空間部から外部に漏出して、機器内を浮遊するという状態が発生する。
【0009】
このように機器内を浮遊するインクミストは、例えばキャリッジを移送させるガイドロッドに付着してこれを汚染し、キャリッジの移送を困難にさせたり、その他のメカニズムを汚染させるなどして、記録装置の正常な動作に障害を与えるという問題を招来させる。また、前記したインクミストは印刷途中における記録用紙も汚染させるという問題も発生させる。
【0010】
一方、前記した顔料インクにおける特定の色のインクにおいては、繰り返されるフラッシング動作によって、キャッピング手段内の特定の位置に固化し易いという問題を抱えており、極端な場合にはこれが山状に滞積して、キャッピング手段によって記録ヘッドを封止した場合において、堆積物がノズル形成面にまで到達するような状態も発生し得る。
【0011】
本発明は、前記したようにフラッシング動作によって発生する各種の問題点を解消しようとするものであり、特にフラッシンク量が大きい場合においてはキャッピング手段によって記録ヘッドのノズル形成面を封止した状態においてフラッシングを実行する動作モードが選択されるように構成されると共に、特定な色のインクの固化による滞積の発生を解消することができるフラッシング制御方法を提供し、この制御方法を利用することにより、長期にわたり高度な印字品質を保証し得るインクジェット式記録装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した目的を達成するためになされた本発明にかかるインクジェット式記録装置は、印刷デ−タに基づいてインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止することができるキャッピング手段とが具備され、前記キャッピング手段の内底部にインク吸収材が収納されたインクジェット式記録装置であって、前記キャッピング手段によって記録ヘッドのノズル形成面を封止した状態において記録ヘッドからキャッピング手段内にインク滴を吐出させる第1フラッシングモードと、記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段とが離間した状態において、記録ヘッドからキャッピング手段内にインク滴を吐出させる第2フラッシングモードとが選択的に実行されるように構成される。
【0013】
この場合、好ましくは前記第1フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出数が、前記第2フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出数に比較して大きくなされるように制御される。換言すれば、インク滴の吐出数が大きなフラッシング動作を実行する場合においては、記録ヘッドのノズル形成面をキャッピング手段によって封止した状態でなされる第1フラッシングモードが選択されるように制御される。
【0014】
これにより、キャッピング手段内において発生するインクの泡立ちによる記録ヘッドへの印字障害の発生を避けるために、たとえキャッピング手段の内底部を深く形成させても、特に大量のフラッシング動作によって発生する多量のインクミストは、記録ヘッドとキャッピング手段との間で封止されるので、インクミス
【0015】
一方、本発明にかかる記録装置においては、好ましくは前記第2フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出動作が、インクの種類に応じて記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段内に配置されたインク吸収材との距離が変更されるように構成される。この構成によると、特にインクミストが発生し易いインクによるフラッシング動作において、ミストの発生度合いを極力低減させることができる。
【0016】
また、本発明にかかる記録装置においては、前記第2フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出動作が、異なった種類のインク滴がキャッピング手段内に配置されたインク吸収材のほぼ同一位置に対して、吐出されるように制御される。この場合、キャッピング手段内に配置されたインク吸収材のほぼ同一位置に対してなされるインク滴の吐出動作が、固化し易いインクの吐出動作に続いて固化し難いインクの吐出動作が実行されるように制御される。
【0017】
この構成によると、特に固化し易いインクによるフラッシング位置に、固化し難いインクによるフラッシング動作がなされるため、インクの固化による滞積状態を皆無に、またはその度合いを低減させることに寄与できる。すなわち、特に少量のフラッシング動作がインク吸収材のほぼ同一位置に対して頻繁になされることによる固化および滞積現象をこれにより解消させることが可能となる。
【0018】
一方、本発明にかかる記録装置においては、前記第1フラッシングモードおよび第2フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出数が、インクの種類に応じて異なるように制御される。この構成によって、ノズル開口において増粘し易いインクを積極的に吐出させるように制御することができ、インクの種類にかかわらず、一様の吐出数で管理する記録装置に比較すると、インクのランニングコストを低減させることに寄与できる。
【0019】
さらに、本発明にかかる記録装置においては、前記第1フラッシングモードまたは第2フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出数を累積して計数するフラッシング量カウンタが具備され、前記カウンタによる計数値が予め定められた値に達した時に、キャッピング手段と記録ヘッドのノズル形成面とが離間した状態において、キャッピング手段の内底部を吸引し、キャッピング手段内に配置されたインク吸収材からインクの一部を吸引排出させる空吸引動作が実行されるように構成される。そして、好ましくは前記空吸引動作が実行されると共に、前記フラッシング量カウンタにおける計数値がリセットされるように構成される。
【0020】
この場合、望ましくは所定の第1時間間隔毎に定期的に実行される定期フラッシング動作、前記第1時間間隔よりも長い第2時間間隔毎に定期的に実行される定期まとめ打ちフラッシング動作、電源オフ時に実行される休止時フラッシング動作、および記録用紙を排紙する時に実行される排紙時フラッシング動作において、前記フラッシング量カウンタによる計数値が、予め定められた値に達したか否かが判定され、予め定められた値に達した場合において前記空吸引動作が実行されるように構成される。
【0021】
そして、前記した空吸引動作が実行される記録装置におけるフラッシング制御方法によると、インク滴の吐出数を累積して計数するフラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したか否かを判定するフラッシング量判定ステップと、前記フラッシング量判定ステップにおいて、フラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したと判定した場合に、キャッピング手段と記録ヘッドのノズル形成面とが離間した状態で、キャッピング手段の内底部を吸引することで、キャッピング手段内に配置されたインク吸収材からインクの一部を吸引排出させる空吸引ステップと、前記空吸引ステップの実行に前後して前記フラッシング量カウンタをリセットさせるカウンタ値リセットステップとが実行されるようになされる。
【0022】
この場合、好ましくは所定の第1時間を計時して、前記第1時間に達したか否かを判定する第1経過時間判定ステップと、前記第1経過時間判定ステップにおいて、第1時間に達したと判定した場合に、フラッシング動作を実行する定期フラッシングステップと、前記定期フラッシングステップの実行によって、フラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したか否かを判定する前記フラッシング量判定ステップに移行されるようになされる。
【0023】
また、好ましくは所定の第2時間を計時して、前記第2時間に達したか否かを判定する第2経過時間判定ステップと、前記第2経過時間判定ステップにおいて、第2時間に達したと判定した場合に、フラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したか否かを判定する前記フラッシング量判定ステップに移行されるようになされる。
【0024】
また、好ましくは記録装置の電源スイッチがオフされた場合において、フラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したか否かを判定する前記フラッシング量判定ステップに移行されるようになされる。
【0025】
さらに、好ましくは記録用紙の排紙動作時において、所定の第2時間に達したか否かを判定する第2経過時間判定ステップと、前記第2経過時間判定ステップにおいて、第2時間に達したと判定した場合に、フラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したか否かを判定する前記フラッシング量判定ステップに移行されるようになされる。
【0026】
前記したような制御方法を採用した記録装置によると、キャッピング手段内に吐出されるフラッシング動作によるインク量が、フラッシング量カウンタによって管理され、キャッピング手段内には、その内底部に配置されたインク吸収材を十分に覆う程度のインクが充填される。続いて、キャッピング手段の下底部に形成されたインク排出口を吸引することで、キャッピング手段内に配置されたインク吸収材からインクの一部を吸引排出させるようになされるので、前記インク吸収材は、これをインクにより十分に湿潤した状態にすることができる。
【0027】
したがって、例えば記録装置の休止期間中において、記録ヘッドのノズル形成面を封止した場合、十分に湿潤状態とされたインク吸収材に含浸されたインクの存在によって、ノズル開口からのインク溶媒の揮散を抑制し、ノズル開口の近傍におけるインクの増粘または固化を効果的に抑制することができる。
【0028】
加えて、前記した制御を実行することにより、キャッピング手段内において、特に固化し易いインクに固化しにくいインクが混合されるため、インク吸収材においてインクが固化して滞積するのを防止することができ、キャッピング手段の下底部に形成されたインク排出口からの吸引作用によって、速やかにインク廃液を排出させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明にかかるインクジット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1乃至図3は、本発明が適用されたインクジェット式記録装置における主にキャッピング手段の構成を示したものである。なお、図1は装置の上面から視た状態を示し、また図2および図3は側面から視た状態で示しており、それぞれ非キャッピング状態およびキャッピング状態を示している。
【0030】
図2および図3に示した符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はガイドロッド2に案内されて用紙ガイド板3の長手方向に対向して平行に移動するように構成されている。そしてキャリッジ1は、後述するキャリッジモ−タにより往復動されるタイミングベルトの一部に結合されて、ガイドロッド2に沿って往復移動されるように構成されている。
【0031】
前記キャリッジ1には、記録ヘッド5が用紙ガイド板3の上面に配置された記録用紙4に対向するようにして搭載されており、記録ヘッド5に対してインクが導入され、印刷デ−タに対応したビットマップデータに基づいて、用紙ガイド板3上の記録用紙4にインク滴を吐出して印刷をすることができるように構成されている。
【0032】
前記記録ヘッド5のノズル形成面を封止することができるキャッピング手段6は、記録装置の端部における非印刷領域(ホームポジション)に配置されており、記録ヘッド5のノズル形成面に密封空間をもって封止できるサイズのキャップ部材7を備え、非印刷時に記録ヘッド5のノズル形成面を封止してノズル開口のインクの乾燥を防止する機能と、クリーニング操作時に図示せぬ吸引ポンプからの負圧を受けて記録ヘッド5からインクを強制的に排出させる機能とを備えている。
【0033】
さらに、前記キャッピング手段6はフラッシング動作時のインク受けとしての機能も備えており、キャッピング手段6によって記録ヘッド5のノズル形成面を封止した状態(図3の状態)において記録ヘッドからキャッピング手段内にインク滴を吐出させる第1フラッシングモードと、記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段とが離間した状態(図2の状態)において、記録ヘッドからキャッピング手段内にインク滴を吐出させる第2フラッシングモードとが選択的に実行できるように構成されている。
【0034】
前記キャッピング手段6に配置されたキャップ部材7の内底部には、図1に示すようにインク排出口7aが形成され、このインク排出口7aには、後述する吸引ポンプを構成するチューブポンプにおけるチュ−ブの一端が接続されている。これにより、非印刷時にはキャップ部材7によって記録ヘッド5のノズル形成面を封止し、またクリ−ニング指令を受けた場合には、吸引ポンプによる負圧がキャッピング手段の内部空間に印加され、記録ヘッド5からインクを強制的に排出させることができる。
【0035】
さらに、後述するようにフラッシング量カウンタが所定の値に達した時に、制御される空吸引動作においても、後述する吸引ポンプが駆動され、キャッピング手段6に形成されたインク排出口7aよりインクが吸引排出されるように作用する。
【0036】
また、前記キャップ部材7の内底部には、後で詳述するようにシート状のインク吸収材8が収容され、クリーニング動作またはインク滴の大量吐出を伴うフラッシング動作によって記録ヘッドから排出されたインクを、これにより保持することができるように構成されている。また、インク吸収シ−ト8は少量の吐出を伴うフラッシング動作によって、記録ヘッドから吐出されたインク滴を捕獲して吸収することができるようにも機能する。
【0037】
また、キャップ部材7は、後で詳述するように方形状のキャップホルダ9に対して一体成形されており、このキャップホルダ9の長手方向の両側壁には、それぞれ平板状のバネ受け部9aがそれぞれ水平方向に形成されている。そして、キャップホルダ9は昇降機構を構成するスライダ10上に搭載され、スライダ10とバネ受け部9aとの間に介装された一対の圧縮バネ11によって、記録ヘッド5側に付勢された状態で取り付けられている。
【0038】
なお、キャップホルダ9の一端部中央および他端部の両側部には、それぞれ係合部9bが形成されており、これら3つの係合部9bは、スライダ10に形成されたそれぞれの係止部材10aによって3点で係止されることにより、キャップホルダ9は上方向、すなわち記録ヘッド5側への所定以上の移動が規制されて、スライダ10上に搭載されている。
【0039】
また、前記スライダ10の下底部には左右に一対の長穴12がほぼ水平方向に形成されており、この各長穴12内にはフレ−ム13に対して回動可能に取り付けられたリンクア−ム14の自由端側に配置された一対の水平軸15が、それぞれ移動可能となるように収容されている。これにより、スライダ10はリンクア−ム14を介してフレ−ム13に対して円弧状軌跡をもって立ち上がることができる。
【0040】
また、前記スライダ10の非印刷領域側の端部両側には、それぞれガイド片10bが形成されていて、この一対のガイド片10bはフレ−ム13に形成された一対の案内溝16によって支持されるように構成されている。この案内溝16は一端部に形成された低所部16aと、他端部に形成された水平な高所部16bと、さらにこれらを接続する傾斜部16cとにより構成されており、これら3つの領域が連通して形成されている。
【0041】
さらに、図1に示すように一方のガイド片10bには、一端がフレ−ム13に固定された引っ張りバネ17の他端が固定されていて、この引っ張りバネ17の作用により、スライダ10は印刷領域方向、かつ記録ヘッド5から離間する方向、すなわちこの実施の形態においては下方に位置するように付勢されている。
【0042】
そして、図2に示すようにキャリッジ1がキャッピング手段6の直上に移動した際、キャリッジ1に配置された係合体1aがスライダ10に直立するように形成された係合部10cに当接することで、図3に示すようにバネ17の引張力に抗しながら、スライダ10はリンクア−ム14を介して立ち上がり、これによりキャップホルダ9に一体に形成されたキャップ部材7が、キャリッジ1に配置された記録ヘッド5のノズル形成面を封止するようになされる。
【0043】
また、キャリッジ1が印刷領域側に移動した場合には、スライダ10に配置された係合部10cに対するキャリッジ1側の係合体1aの当接が解かれ、スライダ10はバネ17の引張力によって図2に示した状態に復帰し、これにより、キャップ部材7による記録ヘッド5のノズル形成面の封止が解除される。
【0044】
なお、図2に示したように、前記キャップ部材7におけるシール面、すなわち記録ヘッド5のノズル形成面に当接する上端面は、記録ヘッド5のノズル形成面に対して非平行状態となるように構成されている。すなわち、キャップ部材7のシール面はホームポジション側(図2における右側)端部に対して印刷領域側に僅かに下降するように傾斜状態になされている。これは、スライダ10に形成された長穴12内の水平軸15の位置と、フレ−ム13に形成された一連の案内溝16内を摺動するガイド片10bの配置位置との関係により構成されている。
【0045】
そして、キャップ部材7は、記録ヘッド5のノズル形成面を封止する状態においては、先ずホームポジション側よりノズル形成面に当接し、スライダ10の上昇にしたがって圧縮バネ11の縮小作用にしたがって、記録ヘッド5のノズル形成面の全面を封止するように作用する。また、キャップ部材7は、記録ヘッド5のノズル形成面の封止を解く場合においては、記録ヘッド5のノズル形成面に対して、先ず印刷領域側の端部から離れ、ノズル形成面に対して非平行状態で離間するように作用する。
【0046】
一方、図1または図3に示すようにキャッピング手段6に隣接する印刷領域側には、キャリッジ1の移動に伴ってキャリッジ1に搭載された前記記録ヘッド5のノズル形成面をワイピングする例えばゴム性のワイピング部材21を備えた保持部材20が配置されている。この保持部材20は水平方向に移動され、ワイピング部材21を記録ヘッド5の移動経路上のワイピング位置に対して進入または退避できるように構成されている。
【0047】
したがって、クリ−ニング操作時において、前記記録ヘッド5はこのワイピング部材21により、そのインクの吸引排出前においてノズル形成面に付着している塵埃や紙粉などが除去され、またインクの吸引排出後においてノズル形成面に付着しているインクの払拭がなされる。
【0048】
以上の構成において、キャリッジモータの駆動によりキャリッジ1がホームポジションに移動すると、図2に示すように、キャリッジ1に配置された係合体1aが、スライダ10に形成された係合部10cに当接する。そして、なおもキャリッジ1が同方向に移動することで、図3に示すようにバネ17の引張力に抗しながら、スライダ10はリンクア−ム14を介して立ち上がる。
【0049】
一方、スライダ10に形成されたガイド片10bは、案内溝16を構成する低所部16aから傾斜部16cに、さらに水平な高所部16bへと移動し、これにより、キャップホルダ9に一体成形されたキャップ部材7がキャリッジ1に配置された記録ヘッド5を封止する。
【0050】
このようにして、キャップ部材7によるノズル形成面の封止が完了した段階で、キャップ部材7は大気との連通が断たれて気密状態となり、ノズル開口からのインクの蒸発を抑制して、記録ヘッドの目詰まりを防止するように作用する。また、この状態でフラッシング動作が実行されることで、記録ヘッドから空吐出されたインク滴を、キャップ部材7の内底部に配置されたシート状のインク吸収材8によって捕獲することができる。さらに、この状態で吸引ポンプを駆動させることで、キャップ部材7の内部空間に負圧を与えることができ、記録ヘッドのノズル開口よりインクを排出させることができる。
【0051】
そして、キャリッジモータの駆動によりキャリッジ1が印刷領域側に移動すると、キャリッジ1に配置された係合体1aは、スライダ10に形成された係合部10cから離れる。したがって前記バネ17の引張力によって、スライダ10はア−ム14を介して、またスライダ10に形成されたガイド片10bが低所部16a側に移動することにより、スライダ10は降下する。これによりキャップ部材7による記録ヘッド5の封止状態が解かれる。
【0052】
キャップ部材7による記録ヘッドのノズル形成面の封止の解除に際しては、前記したようにキャップ部材7は、記録ヘッド5のノズル形成面より、印刷領域側の端部から離れ、ノズル形成面に対して非平行状態で離間するように作用する。このように、キャップ部材7が記録ヘッド5のノズル形成面から非平行状態で離間するようになされるため、記録ヘッドのノズル形成面に残ろうとするインク廃液は、キャップ部材7内に貯留されたインク廃液側に引き戻される作用を受け、このような作用により記録ヘッド5のノズル形成面に残るインクの量を極力低減させることができる。また、記録ヘッド5のノズル形成面に対するキャップ部材7の封止の解除が、一方の端部から進行するため、キャップ部材7内に貯留されたインク廃液が不要に泡立つという現象も低減させることができる。
【0053】
図4は、前記したキャッピング手段を構成するキャップホルダ9とキャップ部材7の形態を平面図によって示したものである。また、図5は図4におけるA−A線から矢印方向に視た状態の断面図で示している。なお、図4および図5において、既に説明した図1乃至図3の各部に相当する部分は、同一符号で示している。
【0054】
まず、図4に示されたように、キャップホルダ9は硬質性の合成樹脂により、ほぼ方形状に形成されて上部が開放された構成とされており、その開口部端面9cは、水平状態に形成された一対のバネ受け部9aの上面とほぼ面一に形成されている。そして、この開口部端面9cは、キャップホルダ9の外周に沿って環状に形成されている。また、キャップホルダ9の内底部からは、上部に向かって立ち上がるように円柱状のリブ部材9gが一体に形成されており、このリブ部材9gは、その各頂部が熱かしめによって押しつぶされ、これによりシート状のインク吸収材8が内底部に保持されている。
【0055】
一方、前記キャップホルダ9内には図5に示されたように、軟質性素材、例えばエラストマーによるキャップ部材7が、キャップホルダ9に対して例えば二色成形法によって一体に成形されている。そして、キャップ部材7の上端縁は断面がほぼ三角形状に成形され、キャップホルダ9における前記開口部端面9cよりも、上部方向に突出された状態に成形されている。この構成により、キャップ部材7の上端縁は記録ヘッドのノズル形成面に対するシール部を構成し、当該シール部における密着度合いを向上させて、キャッピング手段における内部空間の密封状態が良好に保持できるようになされている。
【0056】
この構成により、キャッピング手段によって記録ヘッド5のノズル形成面を封止した場合において、記録ヘッド5のノズル形成面とインク吸収材8の表面との間には、所定の空隙hが形成されるように構成されている。なお、この実施の形態においては、前記空隙hの寸法は、約3mmとなるように形成されている。このように、所定の空隙hを構成することにより、キャッピング手段内に排出されたインク廃液に泡立ちが発生しても、この泡が記録ヘッドのノズル形成面に付着して、ノズル開口に生成されたインクのメニスカスを破壊する程度を低減させることができる。
【0057】
図6は、前記した構成のキャッピング手段を用いて、フラッシング動作等を実行させるための制御回路の一例を示している。なお、図6においては、すでに説明した各部に相当する部分を同一符号で示しており、したがってその説明は省略する。図6に示すように、キャリッジ1にはブラックインクカートリッジ31およびカラーインクカートリッジ32が着脱可能となるように装着されており、これらカートリッジより記録ヘッド5に対して各インクが供給されるように構成されている。また、キャリッジ1はキャリッジモータ33の駆動力を受けて、前記したガイドロッド2の長手方向、すなわち主走査方向に往復移動されるように作用する。
【0058】
そして、キャッピング手段6の内部空間を負圧に吸引することができる吸引ポンプとしてのチューブポンプ34の排出側は、廃液タンク35に接続され、チューブポンプ34から排出されるインク廃液は、前記廃液タンク35内に収納された廃液吸収材36に吸収されて保持されるように構成されている。
【0059】
図6に示す符号40は印刷制御手段であり、この印刷制御手段40は、ホストコンピュータから転送される印刷データを受けてドットパターンデータ(ビットマップデータ)を生成し、このデータに基づいてヘッド駆動手段41により駆動信号を発生させて、記録ヘッド5からインク滴を吐出させる機能を備えている。
【0060】
前記ヘッド駆動手段41は、印刷データに基づく駆動信号の他に、フラッシング制御手段42からのフラッシング指令信号を受けて、フラッシング操作のための駆動信号を記録ヘッド5に出力し、印刷とは関係のないインク滴の空吐出を行なうことができるようにも構成されている。また、符号43はクリーニング制御手段であり、このクリーニング制御手段43は、例えばクリーニング指令検知手段44からの制御信号を受けて、ポンプ駆動手段45を制御し、吸引ポンプ34を駆動させる機能を備えている。
【0061】
さらに、符号46は装置の操作パネル等に配置されたクリーニング指令スイッチを示し、ユーザが例えば印刷不良状態を認識した場合にこれを操作することにより、前記クリーニング指令検知手段44を介してクリーニング制御手段43を動作させて、マニュアル操作によるクリーニング動作が実行されるように構成されている。
【0062】
一方、前記した印刷制御手段40からは、休止タイマ47および累積印字タイマ48に対して制御信号が送出されるように構成されている。前記休止タイマ47は、印刷終了時においてゼロリセットされ、直ちにスタートして経過時間をカウントアップするように作用する。すなわち、休止タイマ47は印刷終了後からの連続キャッピング時間を計時する機能を果たす。
【0063】
また、累積印字タイマ48は、印刷を実施した場合の累積印字時間を計時するようになされ、前記したクリーニング制御手段43がクリーニング動作を実行した場合に、リセット信号が供給されるようになされる。これにより、累積印字タイマ48はクリーニング制御手段43からのリセット信号によって、累積時間がゼロリセットされ、且つ印刷制御手段40からの制御信号によって累積印字時間をカウントアップするように作用する。すなわち、累積印字タイマ48は、記録ヘッド5がキャッピング手段6によりキャッピングされずに印字した累積時間を計時する機能を果たす。
【0064】
そして、前記休止タイマ47および累積印字タイマ48による計時データは、記録装置の動作電源が投入された時に、それぞれの経過時間に対応して記述された図示せぬ回復動作選定テーブルを参照して、クリーニング動作またはフラッシング動作が実行されるようになされる。なお、図6においては休止タイマ47および累積印字タイマ48より、それぞれクリーニング制御手段43に対して制御信号が出力されるように描かれているが、それぞれのタイマ出力に基づいて、前記したフラッシング制御手段42にも制御信号が送出されるようになされる。
【0065】
前記フラッシング制御手段42には、定期フラッシングタイマ49、定期まとめ打ちタイマ50、および休止時まとめ打ちタイマ51によって得られる計時データに基づく制御信号が送出されるように構成されている。前記定期フラッシングタイマ49は、印字中または待機中における所定の第1時間間隔(例えば10秒)を計時する機能を有しており、前記10秒を超えた場合においては、フラッシング制御手段42に制御信号を送出して、定期フラッシングを実行させるように機能する。すなわち、この定期フラッシングタイマ49は、印字中における不使用ノズル(インク滴の吐出の機会がないか、または少ないノズル)における増粘インクを排出させるために利用される。
【0066】
この場合、インクの種類(インクの色)に応じて増粘度合いが異なるため、例えば6色のインクを用いる記録装置における前記定期フラッシングにおいては、イエローインクをY、ブラックインクをK、シアンインクをC、ライト(淡い)シアンインクをLC、マゼンタインクをM、ライト(淡い)マゼンタインクをLMとして表した場合、それぞれに対応するインク滴の吐出数は、次に示す表1のようになされる。
【0067】
【表1】

一方、前記した定期まとめ打ちタイマ50は、所定の第2時間間隔(例えば2000秒)にわたって印字を行なった場合において、フラッシング制御手段42に制御信号を送出して、定期まとめ打ちフラッシングを実行させるように機能する。そして、この定期まとめ打ちフラッシングは、印字中または記録用紙の排紙時において実行される。この定期まとめ打ちタイマ50は、同様に印字中における不使用ノズルにおける増粘インクを排出させるために利用される。この時に実行されるインクの吐出数は、前記した定期フラッシングの場合に比較して遥かに多くなるように制御され、この時のインク滴の吐出数は、次に示す表2のようになされる。
【0068】
【表2】

さらに、前記した休止時まとめ打ちタイマ51は、記録装置の動作電源がオフされた場合における前回の動作電源のオフ時からの経過時間を計時する機能を備えている。そして、前記経過時間に応じた制御信号をフラッシング制御手段42に送出して、休止時まとめ打ちフラッシングが実行され、このフラッシングが実行された後に、後述するように記録装置の電源がオフされるように制御される。
【0069】
この休止時まとめ打ちフラッシングは、主にキャッピング手段内を保湿させる目的で実行され、これにより記録装置の休止期間中に、記録ヘッドのノズル開口からのインク溶媒の揮散を抑制するようになされる。この時に実行されるインクの吐出数は、次に示す表3のようになされる。
【0070】
【表3】

図6において、フラッシング制御手段42からは、フラッシング量カウンタ52に対してフラッシングの吐出数のデータが送出されるように構成されており、前記カウンタ52は、前記した定期フラッシング、定期まとめ打ちフラッシング、および休止時まとめ打ちフラッシングによってなされるフラッシングの吐出数を順次加算してカウントアップするように動作する。そして、フラッシング量カウンタ52より、しきい値設定手段53に対してカウントアップデータが送出されるように構成されている。
【0071】
前記しきい値設定手段53においては、フラッシング量カウンタ52より送出されるカウントアップデータが、しきい値設定手段53に格納された所定の値に達したか否かを判定し、所定の値に達したと判定した場合においては、空吸引制御手段54に対して制御信号が送出されるように構成されている。これと同時にしきい値設定手段53よりフラッシング量カウンタ52に対して、リセット信号が送出されるように構成されており、これにより、フラッシング量カウンタ52におけるカウントアップデータがゼロリセットされるようになされる。
【0072】
なお、前記したしきい値設定手段53に格納された所定の値は、フラッシング動作によってキャッピング手段6内に吐出されるインク量が、キャッピング手段6の内底部に配置された前記インク吸収材8を十分に覆う程度まで充填される値に設定されている。
【0073】
前記空吸引制御手段54からは、キャリッジ制御手段55に対して制御信号が送出されるように構成されており、これにより、キャリッジ制御手段55によりキヤリッジモータ33が駆動されるように構成されている。このキヤリッジモータ33の駆動によりキャリッジ1は印字領域側に若干移動され、これにより記録ヘッド1のノズル形成面を封止した状態のキャッピング手段6は、ノズル形成面の封止を解除する。
【0074】
一方、前記空吸引制御手段54よりポンプ駆動手段45に対して制御信号が送出されるように構成されており、キャッピング手段6によるノズル形成面の封止が解除された状態において、吸引ポンプ34が所定時間駆動される。これにより、キャッピング手段6よりインクの一部を排出する空吸引動作が実行される。したがって、キャッピング手段6の内底部に配置されたインク吸収材8においては、十分なインク量を吸収保持した状態になされる。それ故、一部の固化し易いインクがインク吸収材8に滞積するのを抑制し、例えばクリーニング操作時のインクの排出動作に障害を発生させるなどの問題が解消される。
【0075】
この実施の形態にかかる記録装置においては、記録装置の動作電源をオフ操作した場合、休止時フラッシングが実行されるようになされる。このために、記録装置の動作電源をオフ操作した後の所定時間経過後に、動作電源のオフ操作がなされるように構成されている。すなわち、図6に示すように商用電源61はリレースイッチにより構成された電源スイッチ62を介して、記録装置に用いられる直流動作電源を生成する電源回路63に供給されるように構成されている。
【0076】
一方、記録装置の操作パネル等に配置された電源操作スイッチ64を介して電源オフタイマ65が駆動されるように構成されており、電源オフタイマ65が所定の時間経過後に、リレースイッチにより構成された電源スイッチ62をオフ操作するように構成されている。したがって、電源オフタイマ65によって設定される時間経過後、換言すれば、休止時フラッシングが実行された後に電源スイッチ62がオフ動作されるようになされる。
【0077】
次に図7乃至図9は、前記した構成の記録装置によってなされるフラッシング動作の各態様を示したものであり、キャッピング手段6は、いずれも図4におけるB−B線を矢印方向に視た状態で示している。図7はキャッピング手段によって記録ヘッドのノズル形成面を封止した状態において、記録ヘッドからキャッピング手段内にインク滴を吐出させる第1フラッシングモードを実行している状態を示している。
【0078】
また、図8は記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段とが離間した状態において、記録ヘッドからキャッピング手段内にインク滴を吐出させる第2フラッシングモードを実行している状態を示している。さらに、図9は前記第2フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出動作が、異なった種類のインク滴がキャッピング手段内に配置されたインク吸収材のほぼ同一位置に対して、吐出されるように制御された状態を示している。
【0079】
これら、図7乃至図9に示した各フラッシング動作は、図1乃至図3に示した構成を利用したキャリッジ1の移動位置と、記録ヘッドの各ノズル列に対応して配置された各アクチェータへの駆動信号の印加タイミングによって実現することができる。まず、図7に示された第1フラッシングモードにおいては、図3に示すように、スライダ10がリンクア−ム14を介して立ち上げられると共に、同じくスライダ10に形成されたガイド片10bが、案内溝16の高所部16bに移動することで、記録ヘッド5のノズル形成面がキャップ部材7によって封止した状態に制御することで実現できる。
【0080】
この第1フラッシングモードは、比較的多量のインク滴を吐出する前記した定期まとめ打ちフラッシング動作、休止時フラッシング動作を実行する場合に好適に利用することができる。なお、図7に示す状態は、前記したK,C,M,Yの各インク滴が吐出されているように描かれているが、この実施の形態においては、他に前記したLCおよびLMの各インク滴も吐出される。そして、このように定期まとめ打ちフラッシング動作、または休止時フラッシング動作を実行する場合における各インク滴の吐出数は、前記した表2または表3に示された数値が採用される。
【0081】
この第1フラッシングモードによると、記録ヘッド5のノズル形成面とインク吸収材8の表面との間には、図5に示されたように所定の空隙h(実施の形態においては、3mm)が形成されているので、記録ヘッド5から吐出されたインク滴がインク吸収材8の表面において跳ね返り、記録ヘッド5のノズル開口に戻って混色を発生させる度合いを低減することができる。また、インク滴の跳ね返りにより、ノズル開口に形成されたメニスカスを破壊するなどの障害の発生度合いも大幅に低減させることができる。
【0082】
そして、第1フラッシングモードによるフラッシング動作においては、前記したように記録ヘッド5のノズル形成面はキャッピング手段6によって封止された状態でなされるため、たとえその空間内でインクミストが発生しても、これが漏洩することはなく、そのほとんどはインク吸収材8の表面に降下して捕獲される。これにより、記録ヘッド5に対するキャッピング手段6の封止が解かれた際に、外部に浮遊するインクミストの量を遥かに低減させることができる。
【0083】
次に図8に示された第2フラッシングモードにおいては、図4に示すように、スライダ10がリンクア−ム14を介して降下されると共に、同じくスライダ10に形成されたガイド片10bが、案内溝16の低所部16aに移動することで、記録ヘッド5のノズル形成面がキャッピング手段6による封止が解除された状態に制御することで実現できる。
【0084】
この第2フラッシングモードは、比較的少量のインク滴を吐出する前記した定期フラッシング動作を実行する場合に好適に利用することができる。なお、図8に示す状態は、図7に示した場合と同様に、前記したK,C,M,Yの各インク滴が吐出されているように描かれているが、この実施の形態においては、他に前記したLCおよびLMの各インク滴も吐出される。そして、このように定期フラッシング動作を実行する場合における各インク滴の吐出数は、前記した表1に示された数値が採用される。
【0085】
この第2フラッシングモードにおいては、インクの種類に応じて記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段内に配置されたインク吸収材との距離が変更されるように制御することができる。すなわち、図2に示す状態において、キャリッジ1をさらに若干右方向に移動させることで、キャリッジ1に配置された係合体1aがスライダ10に形成された係合部10cに当接し、これにより、スライダ10がリンクア−ム14を介して若干立ち上げられる。
【0086】
そして、同じくスライダ10に形成されたガイド片10bは、案内溝16の傾斜部16cに移動することで、記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段内に配置されたインク吸収材との距離をより少なくさせることができる。すなわち、図2に示すキャリッジ1の右方向への移動距離に応じて、ノズル形成面とキャッピング手段内に配置されたインク吸収材との距離を変更することができる。
【0087】
この第2フラッシングモードにおいては、例えばインクミストが発生し易いマゼンタおよびシアン系のインクの定期フラッシングが実行される場合において、ノズル形成面とキャッピング手段内に配置されたインク吸収材との距離が短くなるように制御することが好ましく、これにより、インクミストの発生度合いを遥かに低減させることに寄与できる。
【0088】
また、同じく第2フラッシングモードを利用する場合においては、図9に示したように記録ヘッドの移動位置に対応して、記録ヘッドから吐出させる各インクを選択することで、異なった種類のインク滴がキャッピング手段内に配置されたインク吸収材のほぼ同一位置に対して吐出されるように制御することができる。すなわち、図9に示すように実線で示した記録ヘッド5の移動位置において、MおよびYのインクをフラッシングした後、記録ヘッド5を仮想線(二点鎖線)で示した位置に移動させた後に、KおよびCのインクをフラッシングするように制御する。
【0089】
このような制御手段を採用することにより、固化し易いマゼンタインク(M)のフラッシング位置に、固化し難いシアンインク(C)が吐出され、結果としてマゼンタインクの固化によるインク吸収材上への滞積を防止させることができる。特に、定期フラッシングのように、比較的少量のインク滴をインク吸収材の同一位置に、間欠的に何度も吐出させた場合においては、前記したようにマゼンタインクによる固化および滞積が甚だしくなるものの、前記した制御手段を実行することにより、その不都合を解消することができる。
【0090】
次に図10乃至図12は、前記した構成の記録装置によってなされるフラッシング制御方法を説明するものであり、これは主にキャッピング手段の内底部に配置されたインク吸収材に十分なインクを保持させて特定なインクの固化を防止させるように作用させるためになされる。以下、図10乃至図12に示した各制御フローを、主に図6に示したブロック図に基づいて説明する。
【0091】
まず、図10は定期フラッシングおよび定期まとめ打ちフラッシングがなされる場合における制御フローを示している。図10におけるステップS11においては、定期フラッシングタイマが所定時間(10秒)を計時したが否かが判定される。そして、所定時間を計時した場合(Yesの場合)には、ステップS12に進み、定期フラッシングが実行される。これは図6に示された定期フラッシングタイマ49より、フラッシング制御手段42に制御信号が送出されることで実行される。この時の各インクの吐出数は、前記した表1に示したように制御される。
【0092】
そして、ステップS13において、定期フラッシングタイマ49の計時は、ゼロリセットされ、スタートされる。続いてステップS14に示すようにフラッシング量カウンタに対して、前記した定期フラッシングによるインクの吐出数が加算される。これは、図6に示すフラッシング制御手段42よりフラッシング量カウンタ52に対して吐出数のデータを送出することによってなされる。そして、ステップS15においては、フラッシング量カウンタ52の計数値(累積値)が所定の値に達したか否かが検証される。
【0093】
これは、図6に示すフラッシング量カウンタ52よりしきい値判定手段53に対してカウンタ52の計数値が送出されることによって判定される。すなわち、しきい値判定手段53には、予め定められたインク滴の吐出数(例えば60000ショット)が格納されており、前記カウンタ52における計数値が前記値に達していない(No)と判定した場合には、リターンされる。一方、ステップS15において、フラッシング量カウンタ52の計数値が、前記した所定の値に達した(Yes)と判定した場合には、ステップS16に移行して、前記した空吸引動作が実行される。
【0094】
この空吸引動作の実行にあたっては、しきい値判定手段53より空吸引制御手段54に対して制御信号が送出され、空吸引制御手段54はキャリッジ駆動手段55に対して制御信号を送出する。これにより、キャリッジ1は若干印字領域側に移動され、記録ヘッド5のノズル形成面を封止していたキャッピング手段6は、その封止を解除する。そして、空吸引制御手段54よりポンプ駆動手段45に対して制御信号が送出され、ポンプ駆動手段45は、吸引ポンプ34を所定時間駆動させる。
【0095】
これにより、キャッピング手段6に貯留されたインク廃液の一部は、吸引ポンプ34を介して廃液タンク35が廃棄され、キャッピング手段6の内底部に配置されたインク吸収材8はインクにより十分に湿潤された状態になされる。したがって、インク吸収材8において固化し易い特定のインクの滞積が防止されるようになされる。
【0096】
一方、ステップS21においては、定期まとめ打ちタイマ50が所定時間(2000秒)を計時したが否かが判定される。ここで、前記所定時間を計時していない(No)と判定された場合においては、リターンされる。一方、定期まとめ打ちタイマ50が前記した所定の時間を計時した(Yes)と判定した場合には、ステップS22に進み、フラッシング量カウンタ52の計数値(累積値)が所定の値に達したか否かが検証される。このステップS22における検証機能は、前記したステップS15と同様である。
【0097】
そして、ステップS22において、カウンタ52の計数値が前記した所定の値に達した(Yes)と判定された場合には、ステップS23およびステップS24を順に実行する。この時のステップS23およびステップS24は、前記したステップS16およびステップS17と同様である。そして、これに続くステップS25に移行して定期まとめ打ちフラッシングが実行される。一方、ステップS22において、カウンタ52の計数値が前記した所定の値に達していない(No)と判定された場合にも、ステップS25に移行して、定期まとめ打ちフラッシングが実行される。
【0098】
ステップS25における定期まとめ打ちフラッシングは、図6に示すしきい値判定手段53より、フラッシング制御手段42に対して制御信号が送出されることで実行される。この時の各ノズルから吐出される各インク滴の数は、前記した表2に示す吐出数となるように管理される。続いて、ステップS25によってなされたインクの吐出数が、ステップS26においてカウンタ値に加算される。これは、図6に示すフラッシング制御手段42よりフラッシング量カウンタ52に対して吐出数のデータを送出することによってなされる。そして、ステップS27において、定期まとめ打ちタイマ50の計時は、ゼロリセットされ、スタートされる。
【0099】
次に図11は、記録装置の動作電源がオフ操作された場合においてなされる休止時フラッシング動作の制御シーケンスを示している。すなわち、図6に示す電源操作スイッチ64を操作すると、電源オフタイマ65が起動する。この時、電源オフタイマ65より、しきい値判定手段53に制御信号が送出され、ステップS31に示すようにフラッシング量カウンタ52における計数値が、所定のカウンタ値に達したか否かが判定される。このステップS31に続くステップS32およびステップS33の動作は、図10において説明したステップS15〜S17、およびステップS22〜S24と同様である。
【0100】
そして、ステップS34において休止時まとめ打ちフラッシングが実行される。この時の各ノズルから吐出される各インク滴の数は、前記した表3に示す吐出数となるように管理される。続いて、ステップS34によってなされたインクの吐出数が、ステップS35においてカウンタ値に加算される。これは、図6に示すフラッシング制御手段42よりフラッシング量カウンタ52に対して吐出数のデータを送出することによってなされる。そして、ステップS36において、各タイマの駆動制御がなされる。
【0101】
すなわち、ステップS36に示されたように、休止時まとめ打ちタイマ51はストップされゼロリセットされる。また、累積印字タイマ48はストップされる。さらに、休止タイマ47はゼロリセットされスタートされる。そして、定期フラッシングタイマ49はゼロリセットされストップされる。さらにまた、定期まとめ打ちタイマ50はストップされる。このように各タイマの駆動制御がなされた後、ステップS37に移行して電源オフ動作がなされる。この電源オフ動作は、前記したように電源オフタイマ65が所定の時間を計時した場合に生成される制御信号が、リレースイッチにより構成された電源スイッチ62を開放することでなされる。
【0102】
次に図12は、記録用紙の排紙動作時においてなされる排紙時フラッシング動作の制御シーケンスを示している。この排紙時フラッシング動作においては、まずステップS41に示すように、定期まとめ打ちタイマ51が所定時間(2000秒)を計時したが否かが判定される。ここで、前記所定時間を計時していない(No)と判定された場合においては、ステップS42に進み、定期フラッシングタイマ49が所定時間(10秒)を計時したが否かが判定される。ここで、所定時間を計時した(Yes)と判定された場合には、ステップS43〜S45が実行される。このステップS43〜S45は、図10においてすでに説明したステップS12〜S14と同様のシーケンスが実行され、ステップS46に進む。
【0103】
一方、ステップS42において、定期フラッシングタイマ49が前記した所定の時間を計時していない(No)と判定した場合においては、そのままステップS46に進む。そして、ステップS46〜S48が実行される。このステップS46〜S48においては、図10においてすでに説明したステップS15〜S17と同様のシーケンスが実行される。
【0104】
また、前記ステップS41において、定期まとめ打ちタイマ51が前記した所定の時間を計時した(Yes)と判定された場合においては、ステップS51に進む。このステップS51においては、フラッシング量カウンタ52の計数値(累積値)が所定の値に達したか否かが検証されるが、このステップS51以降ステップS56に至る制御シーケンスは、図10においてすでに説明したステップS22〜S27と同様である。そして、ステップS56の実行後、前記したステップS46以降の各ステップを実行するようになされる。
【0105】
以上説明したように、図10乃至図12に示した各制御シーケンスにおいては、ステップS15、ステップS22、ステップS31、ステップS46、およびステップS51に示すように、フラッシング量カウンタ52における積算計数値が、所定の値に達したか否かが検証され、所定の値に達したことが検証された場合に、空吸引動作が実行される。したがって、キャッピング手段6の内底部に収納されたインク吸収材8には、フラッシング量カウンタ52によって管理される十分な量のインクが蓄積された状態で空吸引が実行されることになり、これによりインク吸収材8に特定のインクが固化して滞積するという問題を回避させることができる。
【0106】
なお、前記した実施の形態における定期まとめ打ちフラッシング動作においては、表2に示したインク滴を吐出させる制御を実行するように説明したが、この定期まとめ打ちフラッシング動作においては、表4として示す演算対応表を用いてインク滴の吐出数を制御することも考えられる。なお、表4に示した「T」は、定期まとめ打ちタイマ50の経時時間(秒)を示している。
【0107】
【表4】

また、他の形態として前記した休止時まとめ打ちフラッシングにおいて実行されるインク滴の吐出数を、一律に50000ショットと設定すれば、前記した休止時まとめ打ちタイマ51を不要にすることができる。この場合、図11に示したステップS36において制御される定期まとめ打ちタイマ51は、ストップされると共にゼロリセットされる。
【0108】
以上の説明で明らかなとおり、本発明にかかるインクジェット式記録装置によると、第1フラッシングモードと、第2フラッシングモードとが選択的に実行されるように構成され、キャッピング状態でなされる第1フラッシングモードにおいて、インク滴の吐出量が多いフラッシング動作が実行されるようになされるので、この時のフラッシング動作によって発生するインクミストの影響を大幅に低減させることができる。
【0109】
また、キャッピング手段が開放された状態でなされる第2フラッシングモードにおいては、吐出されるインクの種類に応じて、記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段との距離を変更できるように構成したので、インクミストの発生し易い特定のインクによるミストの発生度合いを効果的に抑制させることができる。
【0110】
さらに、異なった種類のインク滴がキャッピング手段内に配置されたインク吸収材のほぼ同一位置に対して吐出制御されるように構成したので、特に固化し易いインクによるフラッシング位置に、固化し難いインクによるフラッシング動作を実行することができ、特定のインクの固化による滞積状態を皆無に、またはその度合いを低減させることに寄与できる。
【0111】
また、本発明にかかるフラッシング制御方法を採用した記録装置によると、フラッシングによるインク滴の吐出数を累積して計数するフラッシング量カウンタが具備され、このカウンタによる計数値が予め定められた値に達した時に、キャッピング手段内に配置されたインク吸収材からインクの一部を吸引排出させる空吸引動作が実行されるようになされるので、キャッピング手段の内底部に収納されたインク吸収材には、十分な量のインクが蓄積された状態になされ、これによりインク吸収材に特定のインクが固化して滞積するという問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明が適用されたインクジェット式記録装置における主にキャッピング手段の構成を示す平面図である。
【図2】図1に示すキャッピング手段の構成を示す側面図である。
【図3】図1に示すキャッピング手段によって記録ヘッドをキャッピングした状態を示す側面図である。
【図4】キャッピング手段を構成するキャップホルダにキャップ部材を成形した構成を示す平面図である。
【図5】図4におけるA−A線から矢印方向に視たキャッピング手段の断面図である。
【図6】本発明にかかる記録装置に搭載され、フラッシング動作等を実行させるための制御回路の構成を示したブロック図である。
【図7】キャッピング手段によって記録ヘッドのノズル形成面を封止した状態においてなされる第1フラッシングモードを実行している状態を示した断面図である。
【図8】記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段とが離間した状態においてなされる第2フラッシングモードを実行している状態を示した断面図である。
【図9】異なった種類のインク滴がキャッピング手段内のほぼ同一位置に対して吐出されるように制御される状態を示した断面図である。
【図10】定期フラッシングおよび定期まとめ打ちフラッシングがなされる場合の制御形態を示したフローチャートである。
【図11】記録装置の動作電源がオフ操作された場合においてなされる休止時フラッシング動作の制御形態を示したフローチャートである。
【図12】記録用紙の排紙動作時においてなされる排紙時フラッシング動作の制御形態を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0113】
1…キャリッジ、2…ガイドロッド、3…用紙ガイド板、4…記録用紙、5…記録ヘッド、6…キャッピング手段、7…キャップ部材、7a…インク排出口、8…インク吸収材、9…キャップホルダ、21…ワイピング部材、31…ブラックインクカートリッジ、32…カラーインクカートリッジ、33…キャリッジモータ、34…吸引ポンプ、40…印刷制御手段、41…ヘッド駆動手段、42…フラッシング制御手段、43…クリーニング制御手段、45…ポンプ駆動手段、47…休止タイマ、48…累積印字タイマ、49…定期フラッシングタイマ、50…定期まとめ打ちタイマ、51…休止時まとめ打ちタイマ、52…フラッシンク量カウンタ、53…しきい値判定手段、54…空吸引制御手段、55…キャリッジ駆動手段、61…商用電源、62…電源スイッチ、63…電源回路、64…電源操作スイッチ、65…電源オフタイマ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷デ−タに基づいてインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止することができるキャッピング手段とが具備され、前記キャッピング手段の内底部にインク吸収材が収納されたインクジェット式記録装置であって、
前記キャッピング手段によって記録ヘッドのノズル形成面を封止した状態において、記録ヘッドからキャッピング手段内にインク滴を吐出させる第1フラッシングモードと、記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段とが離間した状態において、記録ヘッドからキャッピング手段内にインク滴を吐出させる第2フラッシングモードとが選択的に実行されるように構成したインクジェット式記録装置。
【請求項2】
前記第1フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出数が、前記第2フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出数に比較して大きくなされる請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項3】
前記第2フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出動作が、インクの種類に応じて記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段内に配置されたインク吸収材との距離が変更されるように構成した請求項1または請求項2に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項4】
前記第2フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出動作が、異なった種類のインク滴がキャッピング手段内に配置されたインク吸収材のほぼ同一位置に対して、吐出されるように制御される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
【請求項5】
キャッピング手段内に配置されたインク吸収材のほぼ同一位置に対してなされるインク滴の吐出動作が、固化し易いインクの吐出動作に続いて固化し難いインクの吐出動作が実行されるように制御される請求項4に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項6】
前記第1フラッシングモードおよび第2フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出数が、インクの種類に応じて異なるように制御される請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
【請求項7】
前記第1フラッシングモードまたは第2フラッシングモードにおいてなされるインク滴の吐出数を累積して計数するフラッシング量カウンタが具備され、前記カウンタによる計数値が予め定められた値に達した時に、キャッピング手段と記録ヘッドのノズル形成面とが離間した状態において、キャッピング手段の内底部を吸引して、キャッピング手段内に配置されたインク吸収材からインクの一部を吸引排出させる空吸引動作が実行されるように構成した請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項8】
前記空吸引動作が実行されると共に、前記フラッシング量カウンタにおける計数値がリセットされるように構成した請求項7に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項9】
所定の第1時間間隔毎に定期的に実行される定期フラッシング動作、前記第1時間間隔よりも長い第2時間間隔毎に定期的に実行される定期まとめ打ちフラッシング動作、電源オフ時に実行される休止時フラッシング動作、および記録用紙を排紙する時に実行される排紙時フラッシング動作において、前記フラッシング量カウンタによる計数値が、予め定められた値に達したか否かが判定され、予め定められた値に達した場合において前記空吸引動作が実行されるように構成した請求項7に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項10】
印刷デ−タに基づいてインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止することができ、且つ内底部にインク吸収材が収納されたキャッピング手段とが具備され、前記キャッピング手段によって記録ヘッドのノズル形成面を封止した状態において記録ヘッドからキャッピング手段内にインク滴を吐出させる第1フラッシングモードと、記録ヘッドのノズル形成面とキャッピング手段とが離間した状態において、記録ヘッドからキャッピング手段内にインク滴を吐出させる第2フラッシングモードとが選択的に実行されるように構成したインクジェット式記録装置におけるフラッシング制御方法であって、
インク滴の吐出数を累積して計数するフラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したか否かを判定するフラッシング量判定ステップと、
前記フラッシング量判定ステップにおいて、フラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したと判定した場合に、キャッピング手段と記録ヘッドのノズル形成面とが離間した状態で、キャッピング手段の内底部を吸引することで、キャッピング手段内に配置されたインク吸収材からインクの一部を吸引排出させる空吸引ステップと、
前記空吸引ステップの実行に前後して前記フラッシング量カウンタをリセットさせるカウンタ値リセットステップと、が実行されるようになされたインクジェット式記録装置におけるフラッシング制御方法。
【請求項11】
所定の第1時間を計時して、前記第1時間に達したか否かを判定する第1経過時間判定ステップと、
前記第1経過時間判定ステップにおいて、第1時間に達したと判定した場合に、フラッシング動作を実行する定期フラッシングステップと、
前記定期フラッシングステップの実行によって、フラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したか否かを判定する前記フラッシング量判定ステップに移行されるようになされた請求項10に記載のインクジェット式記録装置におけるフラッシング制御方法。
【請求項12】
所定の第2時間を計時して、前記第2時間に達したか否かを判定する第2経過時間判定ステップと、
前記第2経過時間判定ステップにおいて、第2時間に達したと判定した場合に、フラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したか否かを判定する前記フラッシング量判定ステップに移行されるようになされた請求項10に記載のインクジェット式記録装置におけるフラッシング制御方法。
【請求項13】
記録装置の電源スイッチがオフされた場合において、フラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したか否かを判定する前記フラッシング量判定ステップに移行されるようになされた請求項10に記載のインクジェット式記録装置におけるフラッシング制御方法。
【請求項14】
記録用紙の排紙動作時において、所定の第2時間に達したか否かを判定する第2経過時間判定ステップと、
前記第2経過時間判定ステップにおいて、第2時間に達したと判定した場合に、フラッシング量カウンタによる計数値が予め定められた値に達したか否かを判定する前記フラッシング量判定ステップに移行されるようになされた請求項10に記載のインクジェット式記録装置におけるフラッシング制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−125900(P2007−125900A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37512(P2007−37512)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【分割の表示】特願2000−173017(P2000−173017)の分割
【原出願日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】