説明

インクジェット用インク、インクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及びインクジェット用インクの検査方法

【課題】インク保存安定性に優れたインクジェット用インクを提供すること。このインクジェット用インクを利用した、インクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置を提供すること。インク保存安定性に優れるか否かを判定することが可能なインクジェット用インクの検査方法を提供すること。
【解決手段】水、水溶性有機溶媒、顔料、及び前記顔料を分散させるための重量平均分子量800以上の高分子分散剤を含み、且つ、式(1):(遠心処理(遠心処理条件:遠心加速度9000g×30min)後の沈降物を除いたインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)/(前記遠心処理前のインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)で示される特性値が1.0〜1.5であることを特徴とするインクジェット用インク。また、上記式(1)で示される特性値を求めるインク検査工程を、有することを特徴とするインクジェット用インクの検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク、インクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及びインクジェット用インクの検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノズル、スリット、多孔質フィルム等により形成されるインク吐出口からインクを吐出するインクジェット方式は、小型で安価である等の理由から多くのプリンターに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び、熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを吐出する熱インクジェット方式は高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
【0003】
このインクジェット方式に用いられるインクのうち、主に顔料を色材として用いたインクジェットインクの場合、長期保管した場合において、色材の沈降、さらに凝集といったインク変化をひきおこしやすく、インク保存安定性に劣るという問題がある。
【0004】
このような問題を改善するために、特開平10−237368号には、顔料の分散安定性を目的として、水性液体中にカーボンブラック及び樹脂を分散もしくは溶解して分散液を調整し、カーボンブラックに樹脂を吸着させた後、25000〜80000gの遠心加速度による遠心分離を行い,樹脂を吸着させたカーボンブラックを沈降させ、カーボンブラックに吸着していない樹脂を除くことを特徴とするインクジェットインキの製造方法が提案されている。
【0005】
また、特開平11−302586号には、顔料の分散安定性を向上させ、吐出不良を改善する目的で、顔料をスチレン−(メタ)アクリル酸系水溶性樹脂により分散してなる顔料分散液を含有したインクジェットインクにおいて、顔料分散液が、顔料1に対して、水溶性樹脂を0.3部以上含み、遊離した水溶性樹脂の量が、顔料分散液中で4%以下であることを特徴とするインクジェット記録用インクが提案されている。
【0006】
しかしながら、未だ十分ではなく、改善が望まれているのが現状である。
【特許文献1】特開平10−237368
【特許文献2】特開平11−302586号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、インク保存安定性に優れたインクジェット用インクを提供することを目的としている。そして、本発明は、このインクジェット用インクを利用した、インクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置を提供することも目的とする。
【0008】
また、本発明は、インク保存安定性に優れるか否かを判定することが可能なインクジェット用インクの検査方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。
即ち、本発明のインクジェット用インクは、水、水溶性有機溶媒、顔料、及び前記顔料を分散させるための重量平均分子量800以上の高分子分散剤を含み、
且つ、式(1):(遠心処理(遠心処理条件:遠心加速度9000g×30min)後の沈降物を除いたインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)/(前記遠心処理前のインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)で示される特性値が1.0〜1.5であることを特徴としている。
【0010】
本発明のインクジェット用インクにおいて、式(2):(遠心処理(遠心処理条件:遠心加速度9000g×30min)後の沈降物を除いたインク中における固形分比率)/(前記遠心処理前のインク中における固形分比率)で示される特性値が0.8〜1であることが好適である。
【0011】
本発明のインクジェット用インクにおいて、前記顔料の平均体積分散粒径が10〜300nmであることが好適である。
【0012】
本発明のインクジェット用インクにおいて、前記顔料は、カーボンブラック、フタロシアニン、及びキナクリドン顔料から選ばれた少なくとも1種であることが好適である。
【0013】
本発明のインクジェット用インクにおいて、前記高分子分散剤は、疎水基と親水基とを含むことが好適である。また、前記親水基は、ノニオン性官能基を含むことが好適である。
【0014】
本発明のインクジェット用インクにおいて、インクの粘度が5mPa・s以上であり、且つ前記式(1)で示される特性値が1.0〜1.4であることが好適である。
【0015】
また、本発明のインクジェット用インクセットは、
上記本発明のインクジェット用インクと、
前記インクの成分を凝集又は不溶化させる作用を有する凝集剤、水溶性有機溶媒、及び水を含有する処理液と、
を有することを特徴としている。
【0016】
また、本発明のインクジェット用インクタンクは、上記本発明のインクジェット用インク、又は上記本発明のインクジェット用インクセットを収納したことを特徴としている。
【0017】
また、本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明のインクジェット用インク、又は上記本発明のインクジェット用インクセットを用い、各液体を記録媒体に吐出して画像を形成することを特徴としている。
【0018】
本発明のインクジェット記録方法において、前記インクジェット用インク、又は前記インクジェット用インクセットを収納したインクジェット用インクタンクから供給された各液体を、記録媒体上に吐出してもよい。
【0019】
また、本発明のインクジェット記録装置は、上記本発明のインクジェット用インク、又は上記本発明のインクジェット用インクセットを用い、各液体を記録媒体に吐出するための記録ヘッドを備えたことを特徴としている。
【0020】
本発明のインクジェット記録装置において、前記インクジェット用インク、又は前記インクジェット用インクセットを収納し、前記記録ヘッドへ各液体を供給するためのインクジェット用インクタンクを、さらに備えることができる。
【0021】
また、本発明のインクジェット用インクの検査方法は、式(1):(遠心処理(遠心処理条件:遠心加速度9000g×30min)後の沈降物を除いたインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)/(前記遠心処理前のインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)で示される特性値を求めるインク検査工程を、有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、インク保存安定性に優れたインクジェット用インクを提供することができる。そして、このインクジェット用インクを利用した、インクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置を提供することもできる。
【0023】
また、本発明によれば、インク保存安定性に優れるか否かを判定することが可能なインクジェット用インクの検査方法を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
(インクジェット用インク)
本発明のインクジェット用インクは、水、水溶性有機溶媒、顔料、及び前記顔料を分散させるための重量平均分子量800以上の高分子分散剤を含んでいる。また、必要に応じて、その他、添加剤を含んでいてもよい。
【0026】
そして、式(1):(遠心処理(遠心処理条件:遠心加速度9000g×30min)後の沈降物を除いたインク中における顔料に対する高分子分散剤の比率)/(遠心処理前のインク中における顔料に対する高分子分散剤の比率)で示される特性値が1.0〜1.5である。
【0027】
式(1)で示される特性値は、遠心処理前後による、分散している顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)の変化を示し、インク中での顔料分散粒径のバラツキ(顔料粒子の分散状態のバラツキ)、高分子分散剤吸着量のバラツキ、顔料と高分子分散剤との吸着力などの組み合わさった総合的な特性値である。なお、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)は、質量比である。
【0028】
分散している顔料に対する高分子分散剤の比率が遠心処理前後で変わらない、即ち式(1)で示される特性値が1であることが理想的ではあるが、上述のように、顔料分散粒径のバラツキ、高分子分散剤吸着量のバラツキ、顔料と高分子分散剤との吸着力などにより、実際は顔料が高分子分散剤に比べてより多く沈降し、遠心処理後の液中の高分子分散剤比率が高くなる。
【0029】
つまり、インクの遠心処理前後において、顔料に対する高分子分散剤の比率の差が大きいことは、1)顔料粒子に付着している高分子分散剤量の分布が広く、高分子分散剤の付着率が低い顔料粒子ほど、粒子径が大きく沈降しやすい、2)粒子径が同じでも高分子分散剤の少ない分、比重が重いもしくは分散性が悪く沈降しやすい、3)顔料と高分子分散剤との間の吸着力が弱く、遠心力により顔料と高分子分散剤とが離れて、顔料が分散しなくなるため沈降する、ことを示している。
【0030】
本発明の場合、式(1)で示される特性値が1.5以下の場合、顔料分散径のバラツキや高分子分散剤吸着量のバラツキが小さく、かつ顔料と樹脂との吸着力も高いと考えられ、インクの保存安定性に優れる。一方、式(1)で示される特性値が1.5を越える場合、インク中での顔料分散粒径のバラツキ、高分子分散剤吸着量のバラツキ、顔料と高分子分散剤との吸着力が弱いと考えられ、顔料分散状態が外的要因(例えば、温度変化等)に対し変化しやすく、インクの保存安定性が低くなる。
【0031】
上記観点から、式(1)で示される特性値は、1〜1.5であるが、低いほど好ましく、好ましくは1〜1.3、より好ましくは1〜1.2である。特に、インクの粘度が5mPa・s以上(好ましく5〜15mPa・s)と高い場合、前記式(1)で示される特性値が1.0〜1.4であるが好ましい。これは、インク粘度が高い(すなわち溶媒粘度も高い)ほど、粘度因子により、粒子は沈降しにくくなり、前記式(1)で同じ特性値を示した場合、インク粘度の高いインクの方が、インク中での顔料分散粒径のバラツキ、高分子分散剤吸着量のバラツキが大きかったり、顔料と高分子分散剤との吸着力が弱いと推測され、本質的にインクの分散としては不安定にあると推測されるためである。
【0032】
ここで、式(1)で示される特性値を求め方は、以下の通りである。サンプルとなるインクを所定量(1g)採取し、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求める。顔料に対する高分子分散剤の比率は、インクを加熱乾燥(250℃)して液体成分を除去した後、得られた固形分について、熱重量分析を行い、分散剤に相当する揮発(又は分解)温度での重量減少分と、残留顔料に相当する重量分(又は顔料分解温度に相当する温度での重量減少分)により算出する。
【0033】
次に、同じインクから、所定量(250g)採取し、遠心処理条件:遠心加速度9000g×30minで遠心処理を施した後、上澄み液を所定量(230g)採取し、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を、上記同様に算出する。
【0034】
そして、遠心処理前後の顔料に対する高分子分散剤の比率を、式(1)に代入することで、上記特性値が求められる。なお、これら操作は、常温常湿(20℃、40%RH)の環境下で行ったものである。
【0035】
上記式(1)で示される特性値を上記範囲とするには、例えば、次に示す形態が挙げられる。i)高分子分散剤の分子量分布を狭くする。ii)高分子分散剤の疎水基ユニット/
親水基ユニットの配列のバラツキをできるだけ小さくする(すなわち交互共重合体/ブロック共重合体/グラフト共重合体等がランダム共重合体より望ましい)。iii)顔料一次粒子について、分級精度を高める、あるいは顔料合成の際に残留する原料および中間体を極力抑制し、また構造異性体比率をコントロールする、顔料を精製し不純物量を減少させることにより、粒径のバラツキを抑制する。iv)分散液調製の際、顔料と高分子分散剤を良くなじませるために、調製補助剤を用いる(調整補助剤は分散液調整後除去)。v)顔料分散液調製の段階で、遠心分離操作を行い、粒径の大きい分散粒子を前もって除去する。
【0036】
また、インクの保存安定性を向上させるためには、上記式(1)で示される特性値を上記範囲にすると共に、式(2):(遠心処理(遠心処理条件:遠心加速度9000g×30min)後の沈降物を除いたインク中における固形分比率)/(遠心処理前のインク中における固形分比率)で示される特性値を0.8〜1(好ましくは0.9〜1)とすることがよい。
【0037】
上記式(2)で示される特性値は、インク中に分散している顔料の粒径分布が小さく、顔料凝集により発生する粗大粒子が少ないことを示し、これを上記範囲とすることで、よりインクの保存安定性を向上させることができる。
【0038】
ここで、式(2)で示される特性値を求め方は、以下の通りである。サンプルとなるインクを所定量(10g)採取し、固形分比率を求める。固形分比率は、インクを250℃で乾燥させたのち、重量を測定し、[乾燥後の重量/インク重量(10g)]*100により算出する。
【0039】
次に、同じインクから、所定量(250g)採取し、遠心処理条件:遠心加速度9000g×30minで遠心処理を施した後、上澄み液を所定量(230g)採取し、固形分比率を、上記同様に算出する。
【0040】
そして、遠心処理前後の固形分比率を、式(2)に代入することで、上記特性値が求められる。なお、これら操作は、常温常湿(20℃、40%RH)の環境下で行ったものである。
【0041】
上記式(2)で示される特性値を上記範囲とするには、例えば、次に示す形態が挙げられる。i)高分子分散剤の分子量分布を狭くする。ii)高分子分散剤の疎水基ユニット/親水基ユニットの配列のバラツキをできるだけ小さくする(すなわち交互共重合体/ブロック共重合体/グラフト共重合体等がランダム共重合体より望ましい)。ii)分散液調製の際、顔料と高分子分散剤を良くなじませるために、調製補助剤を用いる(調整補助剤は分散液調整後除去)。iv)顔料分散液調製の段階で、遠心分離操作を行い、粒径の大きい分散粒子を前もって除去する。
【0042】
以下、インクの各成分について詳細に説明する。まず、顔料について説明する。
【0043】
顔料は、非自己分散性のものであり、高分子分散剤によりインク中に分散されるものである。顔料は、有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料ではネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用しても良い。また、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。更に、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用することも可能である。
【0044】
例えば、顔料としては、亜鉛華、チタン白、酸化クロム、酸化鉄、アルミナホワイト、カドミウム黄、硫化亜鉛、ジンククロメート、黄鉛、硫酸バリウム、塩基性硫酸鉛、炭酸カルシウム、鉛白、群青、珪酸カルシウム、マンガン紫、コバルト紫、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、マダレーキ、コチニールレーキ、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY、ナフトールエローS、パーマネントレッド4R、ハンザエルー、ベンジジンエロー、リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ボルドー10B、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ、キノリンエローレーキ、ピーコックブルーレーキ、チオインジゴマルーン、アリザリンレーキ、キナクリドンレッド、ベリレンレッド、アニリンブラック、ジオキサジンバイオレット、有機蛍光顔料、イソインドリノンエロー等の有機顔料、酸化コバルト、γ−酸化鉄、金属鉄粉、バリウムフェライト等のマグネタイト、フェライト等の磁性体や超常磁性体、その他プラスチックピグメントや金属光沢顔料等が挙げられる。
【0045】
顔料を商品名及びC.Iピグメント番号で例示すると、以下となる。
黒色顔料の具体例としては、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−177,−184,−202, C.I.Pigment Violet −19等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
黄色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
これらの顔料の中でも、カーボンブラック、フタロシアニン、及びキナクリドン顔料が好適である。これら顔料は、粒径を小さく且つバラツキを小さくコントロールしやすいためである。
【0050】
顔料の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下の範囲である。顔料の含有量が0.1質量%未満の場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、含有量が20質量%よりも多い場合には、液体の噴射特性が不安定となる場合が存在した。
【0051】
なお、必要に応じて後述する処理液に顔料を含有させてもよい。この場合の処理液に含有される顔料の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下である。処理液が顔料を含有することで、画像濃度の向上効果が得られる。また、顔料を含有した処理液をインクジェットプリンターのカラーインクとして使用することで、プリントヘッドの搭載数を減らし、記録装置の製造コスト、プリント時のランニングコストを軽減することができる。
【0052】
顔料の平均体積分散粒径は、10〜300nmであることが好ましく、より好ましくは20〜250nmであり、さらに好ましくは、30〜200nmである。顔料の平均体積分散粒径が10nm未満である場合には、光学濃度が低くなる場合が存在し、一方、300nmを超える場合には、保存安定性が確保できない場合が存在した。
【0053】
ここで、顔料の平均体積分散粒径とは、顔料そのものの粒子径、又は顔料に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。平均体積分散粒径の測定には、マイクロトラックUPA粒度分析計 9340 ( Leeds&Northrup社製)を用いた。その測定は、インクジェット用インク4mlを測定セルに入れ、所定の測定法に従って行った。なお、測定時に入力するパラメーターとして、粘度にはインクジェット用インクの粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を入力した。
【0054】
次に、高分子分散剤について説明する。高分子分散剤は、顔料をインク中に分散させるためのものである。この顔料の分散剤としては、高分子分散剤と共に、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等を併用してもよい。
【0055】
高分子分散剤は、重量平均分子量800以上のものであり、顔料の分散性及びインク吐出性の両立の観点から、重量平均分子量2000〜50000のものが好ましく、より好ましくは3000〜40000、さらに4000〜30000であるものがより好ましい。
【0056】
高分子分散剤としては、疎水基と親水基とを含むことが好適であり、特に親水基はノニオン性官能基(例えば、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルや多価アルコールなど)を含むことが好ましい。これは、親水基がカルボン酸/スルホン酸等の極性基だけでは、微妙な疎水/親水バランスをコントロールすることが難しく、顔料とのマッチングという点で、非極性であるノニオン性親水基を含むことにより、より適当な分散機能を果たすことが可能となるためである。
【0057】
このような、疎水基と親水基とを含む高分子分散剤としては、親水性基と疎水性基とを有する重合体が好適に用いられる。親水基と疎水基とを有する重合体としては、縮合系重合体と付加重合体とが使用できる。縮合系重合体としては、公知のポリエステル系分散剤が挙げられる。付加重合体としては、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの付加重合体が挙げられる。親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーと疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーを適宜組み合わせて共重合することにより目的の高分子分散剤が得られる。また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独重合体も用いることができる。
【0058】
親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、りん酸基等を有するモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0059】
疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0060】
高分子分散剤として用いられる、好ましい共重合体の例としては、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。また、これらの重合体に、ポリオキシエチレン基、水酸基を有するモノマーを適宜共重合させてもよい。
【0061】
これら高分子分散剤は、単独で用いても、二種類以上を併用しても構わない。高分子分散剤の添加量は、顔料により大きく異なるため一概には言えないが、一般に顔料に対し、合計で0.1〜100質量%、好ましくは1〜70質量%、さらに好ましくは3〜50質量%の割合で添加されることが好ましい。
【0062】
次に、水溶性有機溶媒について説明する。水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0063】
水溶性有機溶媒の具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
【0064】
多価アルコール類誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0065】
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0066】
水溶性有機溶媒としては、その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0067】
水溶性有機溶媒は、少なくとも1種類以上使用することが好ましい。水溶性有機溶媒の含有量としては、1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。インク中の水溶性有機溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、液体の噴射特性が不安定になる場合が存在した。
【0068】
次に、水について説明する。水としては、特に不純物が混入することを防止するため、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することが好ましい。
【0069】
次に、その他の添加剤について説明する。本発明のインクには、界面活性剤を添加することができる。
【0070】
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、好ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
【0071】
以下、界面活性剤の具体例を列挙する。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が使用でき、好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が用いられる。
【0072】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物等が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物が用いられる。
【0073】
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用できる。
【0074】
これらの界面活性剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。また界面活性剤のHLBは、溶解安定性等を考慮すると3〜20の範囲であることが好ましい。
【0075】
これらの界面活性剤の添加量は、0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%が特に好ましい。
【0076】
本発明のインクには、その他、浸透性を調整する目的で浸透剤、インク吐出性改善等の特性制御を目的でポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等や、導電率、pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属類の化合物等、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等も添加することができる。
【0077】
次に、本発明のインクジェット用インクの好適な特性について説明する。まず、本発明のインクの表面張力は、20〜60mN/mであることが好ましく、より好ましくは、20〜50mN/mであり、更に好ましくは、20〜45mN/mである。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面にインクが溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
【0078】
ここで、表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用した。
【0079】
本発明のインクの粘度は、1.0〜30mPa・sであることが好ましく、より好ましくは1.2〜20mPa・s、更に好ましくは1.5〜15mPa・sである。インクの粘度が30.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合が存在した。一方、1.0mPa・sより小さい場合には、噴射性が悪化する場合が存在した。
【0080】
ここで、粘度としては、レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は1400s-1の条件で測定した値を採用した。
【0081】
また、本発明のインクは、インク2μl中に0.5μm以上の粒子数が2×106個未満であるのが好ましく、より好ましくは1.5×106個未満であり、より1.0×106個未満である。0.5μm以上の粒子数の値が大きすぎると、ノズルの目詰まりやインク保管中の顔料沈降が生じる。
【0082】
ここで、インク2μl中の0.5μm以上の粒子数は、Accusizer TM 770 Optical Particle Sizer (Particle Sizing Systems社製)を用いて測定した。また、測定時に入力するパラメーターとして、分散粒子の密度は、色材の密度を入力した。
【0083】
また、本発明のインクのζ電位は、絶対値で10〜100mVであることが好ましく、より好ましくは、10〜90mVであり、更に好ましくは15〜80mVである。ζ電位が絶対値で10mV未満の場合、インク保存安定性が悪化する場合が存在した。一方、ζ電位が絶対値で100mVを超える場合、処理液と併用する場合に顔料凝集が十分進行しにくいケースがある。
【0084】
ここで、ζ電位は、ESA法(Electrokinetic Sonic Amplitude法)により、ESA―8000 (MatecAppliedScience社製 )を測定装置として用いて測定し、以下の計算式を用いてゼータ電位を算出した。
式:ζ電位=[ESA×η×G(α)-1]/[ε×c×△ρ×V]
式中、ESAは単位電場当りの圧力を示しており、これは、測定により得られる値である。ηは、溶媒の粘度、G(α)-1は慣性力による補正項、εは誘電率、cは溶媒中の音速、△ρは溶媒と粒子の密度差、Vは粒子の体積分率を示す。尚、本発明においては、温度22.0℃において、所定の測定方法に従い測定を行った。更に、ゼータ電位算出時に使用するパラメータとしては、ηとしてインクの粘度、εとして水の誘電率、cとして水中の音速、△ρとして顔料と水の密度差、Vとして顔料の体積分率を用いた。
【0085】
(インクジェット用インクセット)
本発明のインクジェット用インクセットは、本発明のインクジェット用インクと、処理液と、を有するものである。
【0086】
処理液について説明する。処理液は、少なくとも、インクの成分を凝集又は不溶化させる作用を有する凝集剤、水溶性有機溶媒、及び水を含有する。
【0087】
凝集剤としては、インクとの混合時に、少なくとも色材の粒子径を大きくさせる作用を有する物質、又は、インクの色材成分を溶媒から分離する作用を有する物質などが挙げられる。凝集剤としては、無機電解質、有機酸、無機酸、有機アミンなどが挙げられる。
【0088】
無機電解質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、及び、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
【0089】
具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等のアルカリ金属類の塩、及び、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
【0090】
有機酸としては、具体的にはアルギニン酸、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、システイン、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、マレイン酸、マロン酸、リシン、リンゴ酸、及び、一般式(1)で表される化合物、これら化合物の誘導体などが挙げられる。
【0091】
【化1】

【0092】
ここで、式中、Xは、O、CO、NH、NR1、S、又はSO2を表す。R1はアルキル基を表し、R1として好ましくは、CH2,C25、C24OHである。Rはアルキル基を表し、Rとして好ましくは、CH2,C25、C24OHである。なお、Rは式中に含んでいてもよいし、含んでいなくても構わない。Xとして好ましくは、CO、NH、NR,Oであり、より好ましくは、CO、NH、Oである。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアミン類を表す。Mとして好ましくは、H、Li、Na、K、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等であり、より好ましくは、H、Na,Kであり、更に好ましくは、水素原子である。nは、3〜7の整数である。nとして好ましくは、複素環が6員環又は5員環となる場合であり、より好ましくは、5員環の場合である。mは、1又は2である。一般式(1)で表される化合物は、複素環であれば、飽和環であっても不飽和環であってもよい。lは、1〜5の整数である。
【0093】
一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリドン、ピロン、ピロール、チオフェン、インドール、ピリジン、キノリン構造を有し、更に官能基としてカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、2−ピロリドン−5−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、4−ブタノリド−3−カルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−5−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、チオフェンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−カルボン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸等の化合物が挙げられる。
【0094】
有機酸としては、好ましくは、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、フタル酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。より好ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。さらに好ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、フランカルボン酸、クマリン酸、若しくは、これらの化合物誘導体、又は、これらの塩である。
【0095】
有機アミン化合物としては、1級、2級、3級及び4級アミン及びそれらの塩のいずれであっても構わない。具体例としては、テトラアルキルアンモニウム、アルキルアミン、ベンザルコニウム、アルキルピリジウム、イミダゾリウム、ポリアミン、及び、それらの誘導体、又は、塩等が挙げられる。具体的には、アミルアミン、ブチルアミン、プロパノールアミン、プロピルアミン、エタノールアミン、エチルエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルベンジルアミン、エチレンジアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、シクロオクチルアミン、シクロブチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジ2−エチルヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジプロピルアミン、ジヘキシルアミン、ジペンチルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルエチレンジアミン、ジメチルオクチルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジメチルヘキシルアミン、アミノ−ブタノール、アミノ−プロパノール、アミノ−プロパンジオール、N−アセチルアミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)−エタノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチルアミン、セチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリイソペンチルアミン、トリエタノールアミン、トリオクチルアミン、トリチルアミン、ビス(2−アミノエチル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ビス(トリメチルシリル)アミン、ブチルアミン、ブチルイソプロピルアミン、プロパンジアミン、プロピルジアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、2−メチル−シクロヘキシルアミン、メチル−プロピルアミン、メチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ラウリルアミン、ノニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレシジアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムク口ライド、ステアラミドメチルビリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体等が挙げられる。
より好ましくは、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、エタノールアミン、プロパンジアミン、プロピルアミンなどが使用される。
【0096】
凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、凝集剤の含有量としては、0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.1質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは、1質量%以上15質量%以下である。凝集剤の添加量が0.01質量%未満の場合には、インク接触時において色材の凝集が不充分となり、光学濃度、滲み、色間滲みが悪化する場合が存在し、一方、添加量が30質量%を超える場合には、噴射特性が低下し、液体が正常に噴射しない場合が存在した。
【0097】
処理液は、インクと同様の水溶性有機溶媒を使用することができる。水溶性有機溶媒の含有量は、1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。水溶性有機溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、液体の噴射特性が不安定になる場合が存在した。
その他、インクに用いた高分子分散剤を処理液に添加することも可能である。
【0098】
処理液の表面張力、粘度については、インクど同様な特性であることがよい。
【0099】
ここで、インクと処理液との混合液における5μm以上の粗粒数は、1,000個/μL以上であることが好ましい。より好ましくは2,500個/μL以上であり、更に好ましくは5,000個/μL以上である。インク及び処理液との混合液における5μm以上粗粒数が、1,000個/μL未満の場合には、光学濃度が低下する場合が存在した。
【0100】
なお、インクと処理液との混合液における5μm以上粗粒数は、二つの液体を質量比で1:1の割合で混合し、撹拌しながら2μLを採取し、Accusizer TM770 Optical Particle Sizer (Particle Sizing Systems社製)を用いて測定した。尚、測定時のパラメーターとして、分散粒子の密度には色材の密度を入力した。この着色微粒子の密度は、インクを加熱、乾燥させることによって得られた粉体を比重計、又は比重ビン等を用いて測定することにより求めることができる。
【0101】
(インクジェット用インクタンク)
本発明のインクジェット用インクタンク(処理液タンク含む)は、上記本発明のインクジェット用インク、又は上記本発明のインクジェット用インクセットの各液体を収納するものであり、例えば、特開2001−138541等に記載のインクタンクに適用することができる。この場合、インクタンクにインクを充填し、記録ヘッドからインク吐出する際においてもインクタンクにおけるける長期保管時のインク特性変化が抑制され、特に長期保管時の記録ヘッドからの噴射性において充分満足できるものとなる。
【0102】
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明のインクジェット用インク、又は上記本発明のインクジェット用インクセットを用い、各液体を記録媒体に吐出して画像を形成する方法である。また、上記本発明のインクジェット用インクセットを用いた場合、インクジェット用インクと処理液とを互いに接触させるように印字するものである。
【0103】
一方、本発明のインクジェット記録装置は、上記本発明のインクジェット用インク、又は上記本発明のインクジェット用インクセットを用い、各液体を記録媒体に吐出する記録ヘッドを備えるものである。これらは、通常のインクジェット記録装置は勿論、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、又は、中間体転写機構を搭載し、中間体に記録材料を印字した後、紙等の記録媒体に転写する記録装置等を適用することができる。
【0104】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、インクジェット用インク及び処理液ともに、1ドロップ当たりの液体質量は0.01ng以上25ng以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5ng以上20ng以下であり、更に好ましくは、0.5ng以上8ng以下である。1ドロップ当たりの液体質量が25ngを超える場合には、滲みが悪化する場合が存在した。これは、インク及び処理液の記録媒体に対する接触角がドロップ量に依存して変化するためであり、ドロップ量が増えるにつれてドロップが紙表面方向に広がりやすい傾向があるためと考えている。1ドロップ当たりの液体質量が0.01ng未満の場合には、噴射安定性が悪化する場合が存在した。
【0105】
但し、一つのノズルから複数の体積のドロップを噴射することが可能であるインクジェット装置において、上記ドロップ量とは、印字可能な最小ドロップのドロップ量を指すこととする。
【0106】
また、インクジェット用インクセットを用いる場合、インクジェット用インクと処理液とは互いに接触するように、記録媒体上に付与されるが、インクジェット用インクと処理液とが互いに接触することで、凝集剤の作用によりインクが凝集し、発色性、ベタ部ムラ、光学濃度、滲み、色間滲み、乾燥時間に優れる記録方法となるからである。接触していれば、互いに隣接するよう付与されても、覆い被さるように付与されても、どちらでもよい。
【0107】
また、記録媒体への付与の順番は、処理液を付与した後、インクジェット用インクを付与する。処理液を先に付与することで、インクジェット用インクの構成成分を効果的に凝集させることが可能となるからである。処理液を付与した後であれば、いかなる時期にインクジェット用インクを付与してもかまわない。好ましくは、処理液を付与してから0.5秒以下である。
【0108】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、1画素を形成するために要するインクジェット用インク付与量と処理液付与量との質量比は、1:20〜20:1であることが好ましい。より好ましくは1:10〜10:1であり、さらに好ましくは、1:5〜5:1である。インクジェット用インク付与量が処理液付与量に対して少なすぎたり、多すぎたり場合には、凝集が不充分となり、光学濃度の低下、滲みの悪化、色間滲みの悪化が生じる場合が存在した。ここで、画素とは、所望の画像を主走査方向、及び、副走査方向に対してインクを付与可能な最小距離で分割した際に構成される格子点であり、夫々の画素に対して適切なインクセットを付与することで、色及び画像濃度が調整され、画像が形成される。
【0109】
本発明のインクジェット記録方法(装置)は、滲み及び色間滲みの改善効果という観点から熱インクジェット記録方式、又は、ピエゾインクジェット記録方式を採用することが好ましい。この原因は明らかとはなっていないが、熱インクジェット記録方式の場合、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果があると考えられる。一方、ピエゾインクジェット方式の場合、高粘度の液体を吐出することが可能であり、高粘度の液体は記録媒体上での紙表面方向への広がりを抑制することが可能となるため、滲み、及び、色間滲みに改善効果があるものと推測している。
【0110】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、インク及び処理液の記録ヘッドへの補給(供給)は、インク及び処理液の各液体が満たされたインクタンク(処理液タンクを含む)から行われることがよい。このインクタンクは、装置に脱着可能なカートリッジ方式であることがよく、このカートリッジ方式のインクタンクを交換することで、インク及び処理液の補給が簡易に行われる。
【0111】
以下、図面を参照しながら本発明のインクジェット記録装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、実質的に同様の機能を有する部材については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0112】
図1は本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。図2は、図1のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する)における内部の基本構成を示す斜視図である。
【0113】
本実施形態の画像形成装置100は、前述の本発明のインクジェット記録方法に基づいて作動し画像を形成する構成を有している。すなわち、図1及び図2に示すように、画像形成装置100は、主として、外部カバー6と、普通紙などの記録媒体1を所定量載置可能なトレイ7と、記録媒体1を画像形成装置100内部に1枚毎に搬送するための搬送ローラ(搬送手段)2と、記録媒体1の面にインク及び処理液を吐出して画像を形成する画像形成部8(画像形成手段)と、画像形成部8のそれぞれのサブインクタンク5へインク及び処理液を補給するメインインクタンク4と、から構成されている。
【0114】
搬送ローラ2は画像形成装置100内に回転可能に配設された一対のローラで構成された紙送り機構であり、トレイ7にセットされた記録媒体1を挟持するとともに、所定量の記録媒体1を所定のタイミングで1枚毎に画像形成装置100内部に搬送する。
【0115】
画像形成部8は記録媒体1の面上にインクによる画像を形成する。画像形成部8は、主として記録ヘッド3と、サブインクタンク5と、給電信号ケーブル9と、キャリッジ10と、ガイドロッド11と、タイミングベルト12と、駆動プーリ13と、メンテナンスユニット14とから構成されている。
【0116】
サブインクタンク5はそれぞれ異なる色のインク及び処理液が記録ヘッドから吐出可能に納められたサブインクタンク51、52、53、54、55を有している。これらには、例えば、第1の液体として、ブラックインク(K)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)が、第2の液体として処理液がメインインクタンク4から補給され納められている。
【0117】
サブインクタンク5には、それぞれ排気孔56と補給孔57とが設けられている。そして、記録ヘッド3が待機位置(もしくは補給位置)に移動したとき、排気孔56及び補給孔57に補給装置15の排気用ピン151及び補給用ピン152がそれぞれ挿入されることで、サブインクタンク5と補給装置15とが連結可能となっている。また、補給装置15はメインインクタンク4と補給管16を介して連結されており、補給装置15によりメインインクタンク4から補給孔57を通じてサブインクタンク5へとインク又は処理液を補給する。
【0118】
ここで、メインインクタンク4も、それぞれ異なる色のインク及び処理液が納めされたメインインクタンク41、42、43、44、45を有している。そして、これらには、例えば、第1の液体として、ブラックインク(K)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)が、第2の液体として処理液が満たされ、それぞれが画像形成装置100に脱着可能に格納されている。
【0119】
さらに、記録ヘッド3には給電信号ケーブル9とサブインクタンク5が接続されており、給電信号ケーブル9から外部の画像記録情報が記録ヘッド3に入力されると、記録ヘッド3はこの画像記録情報に基づき各インクタンクから所定量のインクを吸引して記録媒体の面上に吐出する。なお、給電信号ケーブル9は画像記録情報の他に記録ヘッド3を駆動するために必要な電力を記録ヘッド3に供給する役割も担っている。
【0120】
また、この記録ヘッド3はキャリッジ10上に配置されて保持されており、キャリッジ10はガイドロッド11、駆動プーリ13に接続されたタイミングベルト12が接続されている。このような構成により、記録ヘッド3はガイドロッド11に沿うようにして、記録媒体1の面と平行でありかつ記録媒体1の搬送方向X(副走査方向)に対して垂直な方向Y(主走査方向)にも移動可能となる。
【0121】
画像形成装置100には、画像記録情報に基づいて記録ヘッド3の駆動タイミングとキャリッジ10の駆動タイミングとを調製する制御手段(図示せず)が備えられている。これにより、搬送方向Xにそって、所定の速度で搬送される記録媒体1の面の所定領域に画像記録情報に基づく画像を連続的に形成することができる。
【0122】
メンテナンスユニット14は、チューブを介して減圧装置(図示せず)に接続されている。更にこのメンテナンスユニット14は、記録ヘッド3のノズル部分に接続し、記録ヘッド3のノズル内を減圧状態にすることにより記録ヘッド3のノズルからインクを吸引する機能を有している。このメンテナンスユニット14を設けておくことにより、必要に応じて画像形成装置100が作動中にノズルに付着した余分なインクを除去したり、作動停止状態のときにノズルからのインクの蒸発を抑制することができる。
【0123】
図3は本発明のインクジェット記録装置の好適な他の一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。図4は、図3のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する)における内部の基本構成を示す斜視図である。本実施形態の画像形成装置101は、前述の本発明のインクジェット記録方法に基づいて作動し画像を形成する構成を有している。
【0124】
図3及び図4に示す画像形成装置101は、記録ヘッド3の幅が記録媒体1幅と同じ又はそれ以上であり、キャリッジ機構を持たず、副走査方向(記録媒体1の搬送方向:矢印X方向)の紙送り機構(本実施形態では搬送ローラ2を示しているが、例えばベルト式の紙送り機構でもよい)で構成されている。
【0125】
また、図示しないが、サブインクタンク51〜55を副走査方向(記録媒体1の搬送方向:矢印X方向)に順次配列させるのと同様に、各色(処理液も含む)を吐出するノズル群も副走査方向に配列させている。これ以外の構成は、図1及び2に示す画像形成装置100と同様なので説明を省略する。なお、図中、記録ヘッド3は移動しないので、サブインクタンク5は補給装置15と常時連結した構成を示しているが、インク補給時に補給装置15と連結する構成でもよい。
【0126】
図3及び図4に示す画像形成装置101では、記録媒体1の幅方向(主走査方向)の印字を記録ヘッド3により一括で行うため、キャリッジ機構を持つ方式に比べ、装置の構成が簡易であり、印字速度も速くなる。
【0127】
(インクジェット用インクの検査方法)
本発明のインクジェット用インクの検査方法は、式(1):(遠心処理(遠心処理条件:遠心加速度9000g×30min)後の沈降物を除いたインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)/(前記遠心処理前のインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)で示される特性値を求めるインク検査工程を、有することを特徴としている。
【0128】
上記式(1)で示される特性値の意味、測定方法、特性値の範囲は、上記本発明のインクジェット用インクの説明で述べた通りである。そして、インク検査工程において、式(1)で示される特性値を求め、例えば、上記特性値の範囲を満たすか否かを判定することで、被検査対象であるインクが、インク保存安定性に優れるか否かを検査することができる。
【0129】
また、本発明のインクジェット用インクの検査方法では、式(2):(遠心処理(遠心処理条件:遠心加速度9000g×30min)後の沈降物を除いたインク中における固形分比率)/(遠心処理前のインク中における固形分比率)で示される特性値を求める第2の検査工程を行ってもよい。
【0130】
上記式(2)で示される特性値の意味、測定方法、特性値の範囲は、上記本発明のインクジェット用インクの説明で述べた通りである。そして、インク検査工程において、式(2)で示される特性値を求め、例えば、上記特性値の範囲を満たすか否かを判定することで、被検査対象であるインクが、インク保存安定性に優れるか否かをより精密に検査することができる。
【0131】
これらインク検査工程は、単独工程で実施してもよいが、インクジェット用インクの製造工程に組み込むことで、適宜、製造過程で検査することができ、優れたインク保存安定性を有するインクを歩留りよく製造することが可能となる。
【実施例】
【0132】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0133】
(実施例1)
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを調製した。
【0134】
−インク成分−
・顔料分散液(カーボンブラック濃度:15質量%、高分子分散剤(メタクリル酸メチル−アクリル酸2エチルヘキシル−メタクリル酸ポリエチレングリコール−アクリル酸ポリマー、重量平均分子量20000)濃度:5質量%) :30質量%
・グリセリン :10質量%
・エチレングリコール :5質量%
・2−ピロリドン :5質量%
・オルフィンE1010 :0.5質量%
・水 :残量
【0135】
但し、顔料分散液は次のようにして調整した。まず、前記高分子分散剤について、精密合成を行い、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))=1.15とした。顔料であるカーボンブラックは、精製を行い、揮発分0.3質量%、無機金属不純物15ppmとした。前記高分子分散剤をメチルエチルケトンに溶解させた後、顔料を加え混錬したのち、純水を加えてから、メチルエチルケトンを除去し、ベースの顔料分散液とした。さらにこのベースの顔料分散液を純水により希釈し、8質量%の顔料分散液としたのち、12000g×20min遠心分離操作をして、上澄み液を回収した。上澄み液を濃縮し、2μmフィルターでろ過し、顔料分散液を得た。
【0136】
得られたインクを減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0598であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.334であった。
【0137】
続いて、得られたインクに対し、遠心処理(遠心加速度9000g×30min)を施した後、上澄み液を採取し、減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0539であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.370であった。
【0138】
その結果、上記式(1)で示される特性値は、1.11であった。また、上記式(2)で示される特性値は、0.95であった。
【0139】
また、得られたインクは、粘度が3.2mPa・s、表面張力が33.5mN/m、インク2μl中の0.5μm以上の粒子数が4.8×104個、ζ電位が絶対値で44.6mV、顔料の平均体積分散粒径が69nmであった。
【0140】
(実施例2)
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを調製した。
【0141】
−インク成分−
・顔料分散液(Pigment.Red.122濃度:10質量%、高分子分散剤(スチレン−アクリル酸メチル−アクリル酸テトラエチレングリコール−メタクリル酸ポリマー、重量平均分子量30000)濃度:7.5質量%) :50質量%
・ジエチレングリコール :15質量%
・プロピレングリコール :5質量%
・ブチルカルビトール :4質量%
・オキシエチレンオレイルエーテル :1.0質量%
・水 :残量
【0142】
但し、顔料分散液は次のようにして調整した。まず、前記高分子分散剤について、精密合成を行い、アクリル酸メチル/アクリル酸テトラエチレングリコールの部分については、ブロック重合とし、全体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))=1.12とした。前記高分子分散剤をメチルエチルケトンに溶解させた後、顔料を加え混錬したのち、純水を加えてから、メチルエチルケトンを除去し、ベースの顔料分散液とした。さらにこのベースの顔料分散液を純水により希釈し、7質量%の顔料分散液としたのち、12000g×20min遠心分離操作をして、上澄み液を回収した。上澄み液を濃縮し、2μmフィルターでろ過し、顔料分散液を得た。
【0143】
得られたインクを減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0876であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.749であった。
【0144】
続いて、得られたインクに対し、遠心処理(遠心加速度9000g×30min)を施した後、上澄み液を採取し、減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0815であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.938であった。
【0145】
その結果、上記式(1)で示される特性値は、1.25であった。また、上記式(2)で示される特性値は、0.93であった。
【0146】
また、得られたインクは、粘度が4.4mPa・s、表面張力が36.5mN/m、インク2μl中の0.5μm以上の粒子数が1.5×105個、ζ電位が絶対値で35.7mV、顔料の平均体積分散粒径が93nmであった。
【0147】
(実施例3)
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを調製した。
【0148】
−インク成分−
・顔料分散液(Pigment.Blue.15:3濃度:12質量%、高分子分散剤(メタクリル酸ブチル−アクリル酸オレイル−メタクリル酸ジエチレングリコール−メタクリル酸ポリマー、重量平均分子量10000)濃度:6質量%) :50質量%
・ジエチレングリコール :7質量%
・ジプロピレングリコール :4質量%
・サーフィノール 440 :1.0質量%
・サーフィノール 485 :1.0質量%
・水 :残量
【0149】
但し、顔料分散液は次のようにして調整した。まず、前記高分子分散剤について、精密合成を行い、全体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))=1.08とした。前記高分子分散剤をメチルエチルケトンに溶解させた後、顔料を加え混錬したのち、純水を加えてから、メチルエチルケトンを除去し、ベースの顔料分散液とした。さらにこのベースの顔料分散液を純水により希釈し、6質量%の顔料分散液としたのち、12000g×20min遠心分離操作をして、上澄み液を回収した。上澄み液を濃縮し、2μmフィルターでろ過し、顔料分散液を得た。
【0150】
得られたインクを減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0900であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.501であった。
【0151】
続いて、得られたインクに対し、遠心処理(遠心加速度9000G×30min)を施した後、上澄み液を採取し、減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0753であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.725であった。
【0152】
その結果、上記式(1)で示される特性値は、1.45であった。また、上記式(2)で示される特性値は、0.84であった。
【0153】
また、得られたインクは、粘度が2.9mPa・s、表面張力が28.7mN/m、インク2μl中の0.5μm以上の粒子数が1.2×105個、ζ電位が絶対値で33.7mV、顔料の平均体積分散粒径が61nmであった。
【0154】
(実施例4)
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを調製した。
【0155】
−インク成分−
・顔料分散液(カーボンブラック濃度:11.5質量%、高分子分散剤(スチレン−メタクリル酸ヘキシル−アクリル酸プロピル−メタクリル酸ポリエチレングリコール−メタクリル酸ポリマー、重量平均分子量8000)濃度:7.2質量%) :35質量%
・グリセリン :10質量%
・N−メチル−2−ピロリドン :5質量%
・1,2−ヘキサンジオール :2質量%
・水 :残量
【0156】
但し、顔料分散液は、次のようにして調整した。高分子分散剤(スチレン−メタクリル酸ヘキシル−アクリル酸プロピル−メタクリル酸ポリエチレングリコール−メタクリル酸ポリマー)水溶液(分散剤濃度10質量%)50質量部に対し、カーボンブラック10質量部を加え、攪拌後、マイクロフルイダイザーにて、分散処理を行い、その後、遠心処理(条件10000g×20min)にて、粗大分をカットし、顔料分散液を得た。
【0157】
得られたインクを減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0650であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.870であった。
【0158】
続いて、得られたインクに対し、遠心処理(遠心加速度9000g×30min)を施した後、上澄み液を採取し、減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0605であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.738であった。
【0159】
その結果、上記式(1)で示される特性値は、1.18であった。また、上記式(2)で示される特性値は、0.93であった。
【0160】
また、得られたインクは、粘度が2.7mPa・s、表面張力が42.5mN/m、インク2μl中の0.5μm以上の粒子数が7.8×104個、ζ電位が絶対値で25.8mV、顔料の平均体積分散粒径が85nmであった。
【0161】
(実施例5)
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを調製した。
【0162】
−インク成分−
・顔料分散液(カーボンブラック濃度:20質量%、高分子分散剤(アクリル酸メチル−アクリル酸ポリエチレングリコール−アクリル酸ポリマー、重量平均分子量15000)濃度:8質量%) :25質量%
・グリセリン :20質量%
・ジエチレングリコール :10質量%
・オルフィンE1010 :1.5質量%
・ブチルカルビトール : 5質量%
・水 :残量
【0163】
但し、顔料分散液は次のようにして調整した。まず、前記高分子分散剤について、精密合成を行い、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))=1.14とした。顔料であるカーボンブラックは、精製を行い、揮発分0.5質量%、無機金属不純物12ppmとした。上記顔料、高分子分散剤、および純水からなる10質量%の顔料分散液を、15000g×20min遠心分離操作をして、上澄み液を回収した。上澄み液を濃縮し、2μmフィルターでろ過し、顔料分散液を得た。
【0164】
得られたインクを減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0697であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.404であった。
【0165】
続いて、得られたインクに対し、遠心処理(遠心加速度9000g×30min)を施した後、上澄み液を採取し、減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0662であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.432であった。
【0166】
その結果、上記式(1)で示される特性値は、1.07であった。また、上記式(2)で示される特性値は、0.95であった。
【0167】
また、得られたインクは、粘度が5.4mPa・s、表面張力が30.4mN/m、インク2μl中の0.5μm以上の粒子数が2.7×105個、ζ電位が絶対値で34.3mV、顔料の平均体積分散粒径が76nmであった。
【0168】
(実施例6)
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを調製した。
【0169】
−インク成分−
・顔料分散液(カーボンブラック濃度:20質量%、高分子分散剤(アクリル酸ブチル−メタクリル酸トリエチレングリコール−アクリル酸ポリマー、重量平均分子量50000)濃度:2質量%) :35質量%
・トリエチレングリコール :13質量%
・N−メチルピロリドン :4質量%
・ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル :1質量%
・オキシエチレンラウリルエーテル :1.5質量%
・水 :残量
【0170】
但し、顔料分散液は次のようにして調整した。まず、前記高分子分散剤について、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))=1.35とした。前記高分子分散剤をメチルエチルケトンに溶解させた後、顔料を加え混錬したのち、純水を加えてから、メチルエチルケトンを除去し、ベースの顔料分散液とした。さらにこのベースの顔料分散液を純水により希釈し、その後2μmフィルターでろ過し、20質量%の顔料分散液を得た。
【0171】
得られたインクを減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0771であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.099であった。
【0172】
続いて、得られたインクに対し、遠心処理(遠心加速度9000g×30min)を施した後、上澄み液を採取し、減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、 0.0600であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.145であった。
【0173】
その結果、上記式(1)で示される特性値は、1.46であった。また、上記式(2)で示される特性値は、0.78であった。
【0174】
また、得られたインクは、粘度が2.8mPa・s、表面張力が34.6mN/m、インク2μl中の0.5μm以上の粒子数が1.7×105個、ζ電位が絶対値で27.5mV、顔料の平均体積分散粒径が105nmであった。
【0175】
(比較例1)
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを調製した。
【0176】
−インク成分−
・顔料分散液(カーボンブラック濃度:15質量%、高分子分散剤(アクリル酸エチル−メタクリル酸ラウリル−アクリル酸ポリマー、重量平均分子量15000)濃度:1.5質量%) :40質量%
・エチレングリコール :5質量%
・プロピレングリコール :3質量%
・ポリエチレングリコール(重量平均分子量300) :5質量%
・ブチルカルビトール :10質量%
・水 :残量
【0177】
但し、顔料分散液は次のようにして調整した。まず、前記高分子分散剤について、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))=1.42の物を使用した。顔料であるカーボンブラックは、揮発分1.8質量%、無機金属不純物450ppmのものを使用した。上記顔料、高分子分散剤、および純水を混錬粉砕した後、分散し、5μmのフィルターでろ過して15質量%の顔料分散液を得た。
【0178】
得られたインクを減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0662であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.100であった。
【0179】
続いて、得られたインクに対し、遠心処理(遠心加速度9000g×30min)を施した後、上澄み液を採取し、減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0497であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.172であった。
【0180】
その結果、上記式(1)で示される特性値は、1.72であった。また、上記式(2)で示される特性値は、0.75であった。
【0181】
また、得られたインクは、粘度が3.5mPa・s、表面張力が34.5mN/m、インク2μl中の0.5μm以上の粒子数が1.7×106個、ζ電位が絶対値で21.0mV、顔料の平均体積分散粒径が95nmであった。
【0182】
(比較例2)
顔料分散液(カーボンブラック濃度:14.2質量%、高分子分散剤(メタクリル酸ヘキシル−アクリル酸エチル−アクリル酸ポリマー、重量平均分子量55000)濃度:7.8質量%)を28質量%用いる以外は、実施例4と同様にインクを調製した。
【0183】
但し、顔料分散液は次のように調製した。高分子分散剤(メタクリル酸ヘキシル−アクリル酸エチル−アクリル酸ポリマー)水溶液(分散剤濃度10質量%)50質量部に対し、カーボンブラック10質量部を加え、攪拌後、ナノマイザーにて分散処理を行い、その後、遠心処理(条件 4000g×10min)にて、粗大分をカットし、顔料分散液を得た。
【0184】
得られたインクを減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0620であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.548であった。
【0185】
続いて、得られたインクに対し、遠心処理(遠心加速度9000g×30min)を施した後、上澄み液を採取し、減圧乾燥させて固形分比率を求めたところ、0.0446であった。また、顔料に対する高分子分散剤の比率(高分子分散剤/顔料)を求めたところ、0.882であった。
【0186】
その結果、上記式(1)で示される特性値は、1.61であった。また、上記式(2)で示される特性値は、0.72であった。
【0187】
また、得られたインクは、粘度が2.8mPa・s、表面張力が42.3mN/m、インク2μl中の0.5μm以上の粒子数が4.5×105個、ζ電位が絶対値で35.6mV、顔料の平均体積分散粒径が87nmであった。
【0188】
(評価)
上記実施例及び比較例のインクについて、次の評価を行った。得られたインクを室温下(25℃)で6ヶ月保存し、保存後の粘度、顔料の平均体積分散粒径、インク2μl中の0.5μm以上の粒子数(粗大分量と表記)、について調べ、保存前と比べた(インク保存安定性テストA)。
【0189】
また、得られたインクを70℃/−30℃の温度下での保管を2日づつ繰り返し行い、計3週間保存し、保存後の粘度、顔料の平均体積分散粒径、表面張力、インク2μl中の0.5μm以上の粒子数(粗大分量と表記)について調べ、保存前と比べた(インク保存安定性テストB)。
【0190】
なお、評価基準は、「◎」が:粘度及び粒径変化<5%、粗大分増加率<20%、「○」が:粘度及び粒径変化<5%、粗大分増加率20〜50%、「△」が:粘度及び粒径変化5〜10%、粗大分増加率50〜100%、「×」が:粘度及び粒径変化>10%、粗大分増加率>100%とした。
【0191】
結果を表1に示す。
【0192】
【表1】

【0193】
表1の結果から、式(1)で示される特性値、さらには式(2)で示される特性値を満たす本実施例のインクは、非常にインク保存安定性に優れることがわかる。また、高粘度のインクの場合、特に、(請求項7の効果を示す)保存安定性に優れることがわかる。
【0194】
また、式(1)で示される特性値、さらには式(2)で示される特性値を求めることで、インク保存安定性に優れるか否かを判定することもできることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置における内部の基本構成を示す斜視図である。
【図3】本発明のインクジェット記録装置の好適な他の一実施形態の外観構成を示す斜視図である。
【図4】図3のインクジェット記録装置における内部の基本構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0196】
100、101 画像形成装置
1 記録媒体
2 搬送ローラ
3 記録ヘッド
4 メインインクタンク
5 サブインクタンク
6 外部カバー
7 トレイ
8 画像形成部
9 給電信号ケーブル
10 キャリッジ
11 ガイドロッド
12 タイミングベルト
13 駆動プーリ
14 メンテナンスユニット
15 補給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、水溶性有機溶媒、顔料、及び前記顔料を分散させるための重量平均分子量800以上の高分子分散剤を含み、
且つ、式(1):(遠心処理(遠心処理条件:遠心加速度9000g×30min)後の沈降物を除いたインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)/(前記遠心処理前のインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)で示される特性値が1.0〜1.5であることを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項2】
式(2):(遠心処理(遠心処理条件:遠心加速度9000g×30min)後の沈降物を除いたインク中における固形分比率)/(前記遠心処理前のインク中における固形分比率)で示される特性値が0.8〜1であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記顔料の平均体積分散粒径は、10〜300nmであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
前記顔料は、カーボンブラック、フタロシアニン、及びキナクリドン顔料から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
前記高分子分散剤は、疎水基と親水基とを含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
前記親水基は、ノニオン性官能基を含むことを特徴とする請求項5に記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
インクの粘度が5mPa・s以上であり、且つ前記式(1)で示される特性値が1.0〜1.4であることを特徴とする請求項1に記載の水性インクジェット用インク。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット用インクと、
前記インクの成分を凝集又は不溶化させる作用を有する凝集剤、水溶性有機溶媒、及び水を含有する処理液と、
を有することを特徴とするインクジェット用インクセット。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1に記載のインクジェット用インク、又は請求項8に記載のインクジェット用インクセットを収納したことを特徴とするインクジェット用インクタンク。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1に記載のインクジェット用インク、又は請求項8に記載のインクジェット用インクセットを用い、各液体を記録媒体に吐出して画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記インクジェット用インク、又は前記インクジェット用インクセットを収納したインクジェット用インクタンクから供給された各液体を、記録媒体上に吐出することを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1に記載のインクジェット用インク、又は請求項8に記載のインクジェット用インクセットを用い、各液体を記録媒体に吐出するための記録ヘッドを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記インクジェット用インク、又は前記インクジェット用インクセットを収納し、前記記録ヘッドへ各液体を供給するためのインクジェット用インクタンクを、さらに備えることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
式(1):(遠心処理(遠心処理条件:遠心加速度9000g×30min)後の沈降物を除いたインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)/(前記遠心処理前のインク中における前記顔料に対する前記高分子分散剤の比率)で示される特性値を求めるインク検査工程を、有することを特徴とするインクジェット用インクの検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−342201(P2006−342201A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166827(P2005−166827)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】