説明

インクジェット装置

【課題】
最低限の時間と洗浄液を使用して記録ヘッドを最適な状態になるようにメンテナンスを行い、安定した液体塗布が可能であるインクジェット装置を提供する。
【解決手段】
インク室内において微小粒子の沈降や堆積の程度を検出する手段と、インク吐出の欠損数や吐出曲がりの吐出状態を検出する手段を有し、その結果に応じて記録ヘッドを回復させるメンテナンス手段を選択するようにして、回復に要する時間と洗浄液の使用量を最小限に抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶媒と微小粒子を混合した液体(インク)を液滴として吐出するインクジェット記録ヘッドおよびその制御手段と、塗布対象である基板とインクジェット記録ヘッドとの相対位置を制御するステージからなり、基板上へのインク塗布を目的としたインクジェット装置に関する。その中でも、特にインクジェット記録ヘッドからの液滴吐出の安定性を維持するための制御装置、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からインクジェット装置は、情報処理システムの出力手段として利用されている。
このインクジェット装置は微小な液滴をノズルから吐出させて文字や図形等の記録を行うもので、高精細な画像が記録できるという特徴がある。多色のインクを使用することによってカラー画像の印刷も可能であり、装置の小型化や画像の高解像度化も容易であることより、パーソナル向けの記録装置として非常に多くのインクジェット装置が市場に出回っている。最近は、各種基板上に金属配線を印刷したり、ディスプレイ用のカラーフィルタを印刷する産業用のインクジェット装置の数も増加している。
【0003】
このような産業用のインクジェット装置においては、インクジェット記録ヘッドの上方にインクボトルを接続し、記録ヘッド内に並ぶ微小なインク室に適切な圧力でインクを供給できるようになっている。適切な圧力とは、インク室内の圧力が大気圧に対して数百Paの負圧であり、その状態で上記インク室内のインクに対して瞬間的な大圧力が印加されることにより、インク室の壁面に開けられた微小な小孔(オリフィス)からインクは記録媒体に向けて吐出する。
【0004】
インク室に適切な圧力を印加する方法としては、特開2004−121942号公報に示されているように、記録ヘッドに接続するインクボトルに負圧発生手段を設け、負圧量を調整する方法が開示されている。
【0005】
上記の方法などによって適切な圧力でインク室にインクが供給されている状態では、インクは常時大気と接しているため、インクを吐出しない状態が長くなると、オリフィス付近のインク溶媒が揮発してインク粘度が上昇することによって、吐出時の速度が低下したり、吐出方向が曲がるようになるために印刷画質が劣化する。
【0006】
印刷画質の低下を防止するためには、定期的にインクを記録媒体以外の位置に吐出させて粘度の増加を抑える方法や、記録ヘッドにキャップを突き当て、キャップ内を負圧にして、粘度が増加したインクをオリフィスから吸い出す方法がある。
【0007】
また、インク中に微小粒子が混合されている場合は、記録ヘッド内の目詰まりによって、インク吐出が停止して印刷画質が劣化する現象が発生する。目詰まりについて具体的に述べると、インク中の微小粒子はインク溶媒の比重よりもわずかに大きいため、時間の経過とともにインク室内において微小粒子が沈降したり、インク流路の屈曲部などのインク流速が小さい場所において微小粒子が堆積する現象が発生して、インクの流れが低下する。微小粒子の沈降や堆積が進むと、やがてオリフィスからのインク吐出が停止するようになる。
【0008】
また、別の画像劣化原因として、印刷中のオリフィス周囲の汚れがある。このメカニズムは、記録ヘッドが記録媒体上を移動しながらインクを吐出していると、記録ヘッドのオリフィス周辺に記録媒体上からの跳ね返りのインクが付着し、この付着インクに後から吐出するインクが引き付けられ、インクの吐出方向が曲がって画質が劣化するということである。
【0009】
上記の問題を防止する方法としては、特開2004−106304号公報に記載されているように、記録ヘッドにキャップを突き当て、キャップ内を負圧にしてインクをオリフィスから吸い出すことに加え、印刷時の駆動電圧よりも高い電圧を印加して強い圧力でインクを吐出させて目詰まりを回復させる方法がある。
【0010】
また、上記特開2004−121942号公報には、非印刷時に加圧によってオリフィスからインクを強制的に噴出させて(フラッシング)、目詰まりを回復させる方法が記載されている。
【0011】
また、記録ヘッドの目詰まりを回復する方法として、特開2004−358667号公報に記載されているように、記録ヘッドを洗浄液に浸して超音波振動を印加することによって、インク流路内を洗浄する方法がある。
【0012】
また、特開2004−209460号公報には、インク吐出状態を観測して、異常を検知した場合にメンテナンスを行うことが記載されている。
【0013】
【特許文献1】特開2004−121942号公報
【特許文献2】特開2004−106304号公報
【特許文献3】特開2004−358667号公報
【特許文献4】特開2004−209460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
インクジェット装置が有する高精細印刷性能により、パーソナル向けの記録装置だけでなく、最近は各種基板上に金属配線を印刷したり、ディスプレイ用のカラーフィルタを印刷する産業用のインクジェット装置など、様々な種類のインクジェット装置が市場に出てきている。これらのインクジェット装置に使用されているインクは、粒子を含まない染料が液体に溶け込んでいるものと、直径0.1〜0.5μm程度の顔料が分散されているものが大部分を占めている。
【0015】
しかし、通常30〜50μm径のオリフィスに対して1/10程度までの直径の粒子を分散したインクであっても、短期的には塗布が可能であることより、液晶ディスプレイ内の均一な厚さの液晶層を確保するためにガラス基板上に塗布されているスペーサ粒子の塗布も可能である。長期的な塗布を可能とするためには、インク中の粒子は時間とともに沈降しやすいので、染料インクや直径0.1〜0.5μm程度の顔料が分散されているインクよりも高粘度の溶剤に分散するなど、インク自体に工夫が必要である。粒子を分散させるための高粘度の溶剤としては、ジオール系溶剤と水の混合物などがあげられる。しかし、高粘度の溶剤に分散していても数十分から数時間の時間でインク中の粒子の沈降は発生する。この粒子を分散したインクを使用するインクジェット装置においては、以下の2つの問題が発生する。
【0016】
第一番目の問題は、インク中の微小粒子はインク溶媒の比重よりもわずかに大きいため、時間の経過とともにインク室内において微小粒子が沈降したり、インク流路の屈曲部などのインク流速が小さい場所において微小粒子が堆積する現象が発生して、インクの流れが低下する。そして、微小粒子の沈降や堆積が進み、やがてオリフィスからのインク吐出が停止するということである。
【0017】
第二番目の問題は、記録ヘッドが記録媒体上を移動しながらインクを吐出している際に、記録ヘッドのオリフィス周辺に記録媒体上から跳ね返ったインクが付着する。オリフィス周囲にインクが付着すると、そのインクに引き付けられるようにインクが吐出するので、インクの吐出方向が曲がって画質劣化が発生することである。染料インクや微粒径の顔料が分散されているインクを使用する場合は、オリフィス付近のインクを拭き取ることができるが、数μmの粒子を分散したインクを拭き取ることを繰り返していると、やがてオリフィスを傷付けることとなり、記録ヘッドの寿命を短くするということである。上記の問題を防止する方法としては、特開2004−106304号公報に記載されているように、記録ヘッドにキャップを突き当て、キャップ内を負圧にしてインクをオリフィスから吸い出すことに加え、印刷時の駆動電圧よりも高い電圧を印加して強い圧力でインクを吐出させて目詰まりを回復させる方法があるが、微小粒子の沈降や堆積を回復させることは困難である。
【0018】
また、特開2004−358667号公報に記載されているように、記録ヘッドを洗浄液に浸して超音波振動を印加することによって、インク流路内を洗浄する方法があるが、上記公報は実際に記録装置に搭載した場合に考慮すべきである使用する洗浄液量の低減方法や、装置停止時間の低減方法について十分な考慮がされていない。
【0019】
また、特開2004−209460号公報に記載されているように、吐出状態を観察してメンテナンスを行う方法があるが、上記公報も洗浄液量と装置停止時間の低減方法について十分な考慮がされていない。
【0020】
上記2つの問題を解決するためには、記録ヘッドを最適な状態に保つメンテナンスプロセスが必要である。記録ヘッドのメンテナンスプロセスは、その内容によってプロセス時間と洗浄に使用する液体の使用量に差が出てくる。インクジェット装置が停止する時間をなるべく短くし、洗浄に使用する液体の使用量をなるべく少なくすることが重要である。
たとえば、インク吐出に重大な支障をきたしている場合に、始めは軽度な異常を回復するメンテナンス方法を実行し、それでも回復しない場合にはさらに重度な異常を回復する方法に進む方式をとると、軽度な異常を回復するメンテナンス方法を実行する時間と洗浄に要する液体を無駄にすることになる。また、各メンテナンス方法を実行する頻度をあらかじめ決定しておいて実行する方式をとると、本来は多くの時間と洗浄用の液体を必要とする重度な異常用のメンテナンス方法を必要としない場合であっても、上記メンテナンス方法を実行すると、やはり時間と洗浄用の液体を無駄にすることになる。
【0021】
そこで本発明の目的は、数μmの粒子を含むインクを記録媒体上に塗布するインクジェット装置において、効率良く記録ヘッドを最適な状態に保つ方法を有し、安定した液体塗布が可能であるインクジェット装置を提供することである。具体的には、インク室内において微小粒子の沈降や堆積の程度を知るためにインク流量を検出する手段と、インク吐出の欠損数や吐出曲がりの吐出状態を検出する手段を有し、その結果に応じて記録ヘッドを回復させるメンテナンス手段を選択するようにして、回復に要する時間と洗浄液の使用量を最小限に抑えることができる、高効率なインクジェット装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、インクジェット装置を以下の構成とした。
【0023】
粒子が分散されたインクのほかに、粒子を含まない前記インクの溶媒、および前記インクよりも低粘度である洗浄剤を収容する液体ボトルを配置し、すべての液体ボトルから記録ヘッド内に液体を加圧して流入させる加圧手段と、前記インクと洗浄液の記録ヘッドへの流入を切り替える切り替え手段を有する。粒子が分散されたインクを収容するボトルは2つ備え、第一のボトルから記録ヘッドを経由して第二のボトルに流れる流路を形成し、第一のボトルから第二のボトルに圧力勾配をつけて、その間に流れるインク流量を検出する手段を有する。また、非塗布時に記録ヘッドを塗布位置から離れた位置でインクを吐出させて、吐出状態を検出する手段を有する。また、記録ヘッドメンテナンス手段として、記録ヘッドに接触してオリフィス列を覆うキャップと、前記加圧手段によって記録ヘッドに流入させた液体がオリフィスから前記キャップに漏れ出てくる際に、キャップ内に負圧を発生させて液体を吸引する手段と、前記キャップ内に洗浄液を送り、洗浄液によってオリフィス周囲の液体を洗い流す送液手段と、前記送液手段によって送られた洗浄液をキャップに溜めた状態で、オリフィスから記録ヘッド内に洗浄液を吸い込み、別に設ける回収ボトルに洗浄液を送る送液手段を設ける。そして、インク流量検出手段と吐出状態を検出する手段での検出結果より、記録ヘッドメンテナンス手段のいずれかを実行するように制御する手段を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、インク室内において微小粒子の沈降や堆積の程度を検出する手段と、インク吐出の欠損数や吐出曲がりの吐出状態を検出する手段を有し、その結果に応じて記録ヘッドを回復させる手段を選択するようにして、回復に要する時間と洗浄液の使用量を最小限に抑えることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施例1)
以下、発明の実施形態について図面に従って説明する。
【0026】
図4は本発明の実施例に関するインクジェット装置の構成例の側面図、図5はインクジェット装置の構成例の正面図である。
【0027】
本インクジェット装置は、ステージ101内のx方向移動機構102に吸着されている基板103上に所望のドットパターンを印字する装置である。なお、ドットパターンは、直径2〜5μmの粒子を含んだインクで形成される。
【0028】
y方向移動機構104に固定されている記録ヘッド1は第一インクボトル4,第二インクボトル5と接続しており、図示しないインク塗布コントローラの信号にしたがって、記録ヘッド1が基板103に対向した面に等間隔に並ぶオリフィスよりインクを吐出する。
記録ヘッド1からのインク吐出に合わせて、x方向移動機構102に吸着された基板103が+x方向に搬送されることによって、基板103上に一定幅の帯状のインクドットパターンが形成される。x方向移動機構102による1回の搬送が終わると、記録ヘッド1はy方向移動機構104によって一定の距離だけ移動して、再度x方向移動機構102に吸着された基板103が−x方向に搬送されることによって、基板103上に次のインクドットパターンが形成される。
【0029】
また、x方向移動機構102とy方向移動機構104の変位量は、ステージ内部に存在する図示しないエンコーダ等の検出手段で検出され、コントローラ等に取り込まれている。
【0030】
本インクジェット装置には、第一インクボトル4とは別の複数のインクボトル2,3,6,7と、記録ヘッド1のオリフィス面を覆うことができるように配置されるキャップ8が存在するとともに、記録ヘッド1でのインク吐出が最適となるように、上記ボトルからインクを記録ヘッド1にインクを供給するインク供給系、及び記録ヘッド1の清掃等を行う記録ヘッドメンテナンス系が存在している。また、インクの吐出状態を撮影する撮影装置61が存在する。これらの機構については、別の図を用いて以下説明する。また、本実施例では、記録ヘッド1が1つの例を記載しており、メンテナンス系も1つの記録ヘッドに対応するように記載しているが、実際のインクジェット装置は、複数の記録ヘッド1を搭載し、メンテナンス系も各記録ヘッドごとに存在する。
【0031】
図6は、本発明となるインクジェット装置のインク供給系、及び記録ヘッドメンテナンス系を示す図である。本例ではインクジェット装置の内部には6個のボトルが配置されている。2は洗浄剤ボトル、3はインク溶媒ボトル、4は第一インクボトル、5は第二インクボトル、6は第一回収ボトル、7は第二回収ボトルである。第一インクボトル4と第二インクボトル5の中には、それぞれ磁性体を内包した撹拌子41,51が配置され、内部で磁石が回転する撹拌機42,52によって撹拌子41,51が回転してインクを撹拌する。
【0032】
各ボトルからは、配管が伸びており、エアーポンプ11〜16,ウォーターポンプ17,18,三方弁21〜25によってボトル内部の液体を移動し、記録ヘッド1へのインク供給と保全が行われる。なお、記録ヘッド1には複数のインク導入口が設けられている。
以下、インク供給方法,記録ヘッドメンテナンス方法について順次説明する。
【0033】
まず、インク供給方法について図7を用いて説明する。図7は、図6の配管図において、インク供給に関与する部分の配管を強調して記載し直したものである。
【0034】
記録ヘッド1でのインク塗布を行う前に、まず洗浄剤ボトル2に収容されている洗浄剤を記録ヘッド1に導入する。洗浄剤は粘度や表面張力が低く、粒子を分散させたインクの溶媒と反応しない液体であり、アルコール等が適している。洗浄剤の役割は、記録ヘッド1内部に存在する気泡を取り除くことである。洗浄剤が記録ヘッド1に入るように三方弁21,22,23を操作して、エアーポンプ11で洗浄剤ボトル2内を加圧して洗浄剤を記録ヘッド1に押し込む。この際、三方弁24を操作して洗浄剤が第一回収ボトル6に流れるようにして、記録ヘッド1内から気泡を取り除く。記録ヘッド1のオリフィスからも洗浄剤が噴出するので、キャップ8で洗浄剤を受けてエアーポンプ15で第二回収ボトル7内に吸引する。
【0035】
次に、インク溶媒ボトル3に収容されているインク溶媒を記録ヘッド1に導入する。粒子を分散させたインクを導入する前にインク溶媒だけを導入する理由は、粘度の低い洗浄剤とインクが急に混合すると粒子が沈降しやすくなり、記録ヘッド1の内部に粒子の凝集が発生することがあるので、この凝集の発生を防止するためである。インク溶媒が記録ヘッド1に入るように三方弁21,22,23を操作して、エアーポンプ12でインク溶媒ボトル3内を加圧してインク溶媒を記録ヘッド1に押し込む。この際、三方弁24の状態を変えずにインク溶媒が第一回収ボトル6に流れるようにして、記録ヘッド1内から洗浄剤を取り除く。記録ヘッド1のオリフィスからもインク溶媒が噴出するので、キャップ8でインク溶媒を受けてエアーポンプ15で第二回収ボトル7内に吸引する。
【0036】
最後に第一インクボトル4内に収容されているインクを記録ヘッド1に導入する。上記2種類の液体の導入と同様に、三方弁23を操作してエアーポンプ13で第一インクボトル4内を加圧してインクを記録ヘッド1に押し込む。この際、三方弁24の状態を変えずに、インク溶媒が第一回収ボトル6に流れるようにして、記録ヘッド1内を粒子が分散されたインクで満たす。記録ヘッド1のオリフィスからもインクが噴出するので、キャップ8でインクを受けてエアーポンプ15で第二回収ボトル7内に吸引する。なお、記録ヘッド1から三方弁24の間の配管内がインクに完全に置き換わった場合には、三方弁24を操作してインクを第二インクボトル5に導入してもよい。第二インクボトル5内のインクは、定期的に第一インクボトル4に戻して再利用する。その際、インク中に入った異物を除去するために設けたフィルタ9を通す。
【0037】
この状態では、記録ヘッド1のオリフィス面にインク液滴が付着しているので、この後、キャップ8を記録ヘッド1に密着させてインクをエアーポンプ15で第二回収ボトル7内に吸引する。
【0038】
以上の工程により、記録ヘッド1内にインクを導入することができる。この後、全オリフィスからのインク吐出状態を確認する。
【0039】
図17は、全オリフィスからのインク吐出状態を確認する方法を示す図である。インクの吐出状態を撮影する撮影装置61は、記録ヘッド1からインクを吐出させる駆動信号と同期して点滅する光源401,吐出している液滴を映すカメラ402、及びカメラ402で映された画像を表示する装置から構成される。カメラ402は移動しながら記録ヘッド1から吐出するインク液滴列403を撮影する。光源401は駆動信号と同期して点滅するので、静止したインク液滴列403が撮影される。その際、インクが吐出しない欠損の状態や吐出方向の曲がりが観測できる。全オリフィスからのインク吐出が観測できない場合には、もう一度、インクの加圧導入とキャップ8を記録ヘッド1に密着させたインク吸引を実行する。それでも、全オリフィスからのインク吐出が観測できない場合には、本実施例の課題解決方法に関するので、後で詳細に説明する。
【0040】
次に、通常のインク塗布状態における記録ヘッド1へのインク供給方法について、図8を用いて説明する。図8は、図6の配管図において、インク供給に関与する部分の配管を強調して記載し直したものである。
【0041】
記録ヘッド1によってインク塗布を開始する際には、記録ヘッド1内部の圧力を記録ヘッド1のオリフィスからインクが垂れない程度である数百Pa(数十mmaq)の負圧に設定することが一般的である。そのため、三方弁23を操作して第一インクボトル4と記録ヘッド1を接続し、エアーポンプ13で記録ヘッド1よりも上方に位置する第一インクボトル4内を減圧して、記録ヘッド1内の圧力を所定の圧力に設定する。水頭圧の状態の一例(実験で行った圧力設定の例)を図13に示す。この例の場合、記録ヘッド1と第一インクボトル4の高低差がh(mm)のとき、減圧圧力をh+50(mm)に設定する。記録ヘッド1と第二インクボトルは三方弁24によって非接続の状態となっており、インクの流れがないため、第一インクボトル4と記録ヘッド1の水頭圧は同一である。その後、図4を用いて説明したように、インク塗布コントローラの信号にしたがって、等間隔に並ぶオリフィスより基板103上に向けてインクを吐出させる。記録ヘッド1からのインク吐出に合わせて、x方向移動機構102に吸着された基板103が搬送されることによって、基板103上に一定幅の帯状のインクドットパターンが形成される。このような動作を繰り返している間に、記録ヘッド1内ではインク中の粒子の沈降が始まってくる。粒子の沈降が起こると、一滴中に含まれる粒子数が大きく変化したり、オリフィスの目詰まりが発生するようになる。そのため、記録ヘッド1の目詰まりを防止して、インクの塗布を安定して行う必要があり、いくつかの記録ヘッド1のメンテナンス手段が搭載されている。メンテナンス手段については後で詳細に説明する。
【0042】
次に、本インクジェット装置の終了動作について説明する。
【0043】
インクジェット装置を終了させる場合は、インク中の粒子の沈降を防止するため、インク供給方法とは逆の順番で液体を記録ヘッド1に導入する。つまり、粒子を含まないインク溶媒の加圧導入、次いで洗浄液の加圧導入を行い、洗浄剤が記録ヘッド1に導入された状態でインクジェット装置の稼動を終了させる。
【0044】
以上、大まかにインクジェット装置の立ち上げ時のインク供給方法から終了動作までの一連の動きを説明した。これ以降は、インクジェット装置より安定してインク塗布を継続して行うために重要な、記録ヘッドのメンテナンス方法(清掃方法)について説明する。
以下、いくつか存在する記録ヘッドのメンテナンス方法について順に説明する。
【0045】
まず、記録ヘッドのノズル面の吸引によってオリフィス付近での増粘したインクや固着物を除去する方法(吸引モード)について説明する。
【0046】
インク塗布コントローラの信号にしたがって、基板103上にインクドットパターンを形成する動作を繰り返している間に、記録ヘッド1内ではインク中の粒子の沈降が始まってくる。一枚の基板103全面へのインク塗布が終了すると、次の基板103が搬送されてくるまでの待機時間が存在する。その待機時間内に、記録ヘッド1内での粒子沈降を防止するために、記録ヘッド1をキャップ8が存在する位置に移動させた後、キャップ8に記録ヘッド1を押し当て、オリフィスからインクを吸引する。具体的な動作としては、図8に示すように、キャップ8を記録ヘッド1に押し当て、三方弁25を操作してキャップ8と第二回収ボトル7を連結し、エアーポンプ15で負圧を発生させて、インクを第二回収ボトル7内に吸引する。
【0047】
次に、記録ヘッド1へのインク加圧によるインク強制噴出を行い、オリフィス付近で増粘したインクや固着物を除去する方法(加圧モード)について説明する。
【0048】
このモードも記録ヘッド1をキャップ8が存在する位置に移動させた後で行う。このモードは、図7を用いて説明したインク充填方法と同様に、三方弁23を操作してエアーポンプ13で第一インクボトル4内を加圧してインクを記録ヘッド1に押し込む。この際、三方弁24の状態は、記録ヘッド1からのインク流入が無い状態にして、第一インクボトル4内のインクがオリフィスから噴出するようにする。オリフィスから噴出するインクを受けるために、キャップ8に記録ヘッド1を十分近づけるか、または接触させた後、三方弁25を操作してキャップ8と第二回収ボトル7を連結し、エアーポンプ15で負圧を発生させて、インクを第二回収ボトル7内に吸引する。
【0049】
次に、記録ヘッド1のオリフィス面を洗浄する面洗浄モードについて説明する。
【0050】
洗浄モードが必要な理由は、インクを吐出させながら記録ヘッド1が記録媒体上を移動していると、記録ヘッド1のオリフィス周辺に記録媒体上からの跳ね返りのインクが付着することにより、吐出するインクの方向が曲がるためである。
【0051】
面洗浄モードの動作について、図9を用いて説明する。図9は、図6の配管図において、オリフィス面の清掃に関与する部分の配管を太く記載し直したものである。
【0052】
記録ヘッド1のオリフィス面の洗浄は、洗浄剤ボトル2内に収容されている洗浄剤を使用する。洗浄剤がキャップ8に入るように三方弁21,22を操作して、エアーポンプ11で洗浄剤ボトル2内を加圧して洗浄剤をキャップ8に導入する。記録ヘッド1をキャップ8に接近させて洗浄液によってオリフィス面を洗浄する。面洗浄の方法を図11と図12を用いて説明する。
【0053】
図11は、キャップ8の構造を示している。キャップ8は内側容器8aと外側容器8bとで構成される。配管201は内側容器8aに洗浄剤を導入するための配管、配管202は内側容器8aからオーバーフローした洗浄剤を排出するための配管、配管203は内側容器内のインクを排出するための配管である。
【0054】
図12は、記録ヘッド1のオリフィス面の洗浄方法を示している。オリフィス面を洗浄するためには、まず、記録ヘッド1をキャップ8の内側容器8aに接近させ、配管201を使用して内側容器8aに洗浄剤を流す。内側容器8a容積以上の洗浄剤204は、記録ヘッド1のオリフィス面を洗浄しながらオーバーフローして外側容器8b内に入る。洗浄剤204の流れによって、オリフィス面に付着した粒子は除去される。インク外側容器8b内の洗浄剤は、エアーポンプ15によって吸引されて配管202を通して第二回収ボトル7に移動する。オリフィス面の洗浄が終了した後、内側容器8a内の洗浄液は配管203を通して第二回収ボトル7に移動する。
【0055】
以上のような洗浄を行うことにより、オリフィス面を擦ることなく洗浄できるので、オリフィス面をインク中の粒子で傷つけることが無い。従って、記録ヘッド1の寿命を縮めることなく使用することができる。
【0056】
なお、オリフィス面の洗浄の後は、洗浄剤がオリフィスを通して記録ヘッド1内に進入しているので、粒子が分散されているインクを記録ヘッド1に導入する工程を行う。次に、オリフィス側から記録ヘッド1内に向けて洗浄剤を吸い込み、記録ヘッド1の排出流路から凝集物を排出するモードについて説明する。効果的に凝集物を排出するため、記録ヘッド1を洗浄液に浸し、超音波振動を与えた後で凝集物を粉砕・分散させ、凝集物を排出するので、本メンテナンス方法を超音波洗浄モードと呼ぶ。
【0057】
超音波洗浄モードが必要な場合は、記録ヘッド内で粒子が凝集してインク吐出が不安定になった場合である。超音波洗浄モードの動作について、図10,図15,図16を用いて説明する。
【0058】
図10は、図6の配管図において、本モードに関与する部分の配管を太く記載し直したものである。記録ヘッド1内部の凝集物を排出させるためには、洗浄剤ボトル2内に収容されている洗浄剤を使用する。記録ヘッド1内部の凝集物を排出させるためには、洗浄剤ボトル2内に収容されている洗浄剤を使用する。
【0059】
記録ヘッド1の排出流路から凝集物を排出させる工程は、まず、記録ヘッド1内のインクをインク溶媒に置換することから始める。これは、粘度の高いインクと粘度の低い洗浄剤を混合すると、インク中の粒子の凝集が起こるためである。インク溶媒が記録ヘッド1に入るように三方弁21,22,23を操作して、エアーポンプ12でインク溶媒ボトル3内を加圧してインク溶媒を記録ヘッド1に押し込む。記録ヘッド1のオリフィスからもインク溶媒が噴出するので、キャップ8でインク溶媒を受けてエアーポンプ15で第二回収ボトル7内に吸引する。この後、三方弁21を操作し、エアーポンプ11で洗浄剤ボトル2内を加圧して洗浄剤を記録ヘッド1に押し込む。その後、記録ヘッド1をキャップ8と対向する位置から超音波洗浄槽300に対向する位置に移動させる。
【0060】
図15は、超音波洗浄を行う際の配管の状態を示している。三方弁26はキャップ8と超音波洗浄槽を切り替える弁である。洗浄後の洗浄液はバルブ310を通じて第二回収ボトル7内に回収される。詳細な洗浄方法は、図16を用いて説明する。
【0061】
超音波洗浄槽300は、水を収容する外槽301と、洗浄液を収容する内槽302から構成される。外槽301には水が配管303から入り、配管304から出るように構成されている。内槽302には洗浄液が配管305から入り、配管306から出るように構成されている。記録ヘッド1のオリフィス面を内槽302に接触させて、外槽の下部に配置されている超音波振動子が振動することによって、記録ヘッド1内部の固着物は粉砕され、洗浄液中に分散される。この後、オリフィス側から記録ヘッド1内に向けて洗浄剤を吸い込み、記録ヘッド1の排出流路から凝集物を排出する。この工程を以下に示す。
【0062】
まず、記録ヘッド1を内槽302内の洗浄液とオリフィス面を接触させる。内槽302への洗浄剤供給を継続させながら、三方弁24を操作して記録ヘッド1と第一回収ボトル6をつながるようにし、エアーポンプ14によって第一回収ボトル6内を負圧にして、キャップ8内の洗浄剤を第一回収ボトル6内に吸引する。その際、三方弁23は記録ヘッド1と他のボトルがつながらないように操作しておく。記録ヘッド1内に存在していた固着物は洗浄剤の中に分散して外部に排出される。
【0063】
超音波洗浄モードを実行した後は、インク導入の説明の際に説明したように、洗浄液,粒子を含まないインク溶媒,粒子を含むインクの順に液体を記録ヘッド1に導入する工程を実行し、インク塗布が開始できる状態にする。
【0064】
以上、説明した数々の記録ヘッドのメンテナンスを実行することよって、記録ヘッド1からのインク塗布を安定させることができる。メンテナンスを実施するタイミングとしては、基板又は記録ヘッドを1回走査した後、及び、基板一枚全体にインクを塗布した後があるが、後者の方は、次の基板が搬送されてくるまでの時間があるので、このタイミングでメンテナンスを行うことが一般的である。各メンテナンス方法の実行周期を予め決めて実行する場合、以下の問題が発生する。それは、記録ヘッド1の使用時間が長くなって劣化している場合には、短時間で済むメンテナンス方法では十分な清掃ができずにそのメンテナンス方法を何度も繰り返し、それでも不十分であるために、さらにその後で手間のかかるメンテナンス方法に移行する場合があり、その場合は、メンテナンスに要するトータルの時間が長くなり、メンテナンスに使用する液体(洗浄液,インク溶媒,インク)の使用量も多くなってしまうことである。記録ヘッド1の劣化状態は、使用するインクの粘度,粒子の直径,粒子の含有濃度,単位時間当たりのインク塗布数などによって変わるとともに、記録ヘッド1間にも大きなばらつきが存在する。メンテナンスの実行時間と消費する洗浄に用いる液体の消費量を最低限に抑えるためには、記録ヘッド1の状態(インク流路の目詰まり度,インク吐出が異常であるオリフィス数など)を検知して、その結果に基づいて最適なメンテナンス方法を選択することが有効である。以下、この方法について詳しく説明する。
【0065】
まず、インク流路の目詰まり度の測定方法について、図8を用いて説明する。
【0066】
目詰まり度の測定は、インク塗布を続けていることによる記録ヘッド1内でのインクの沈降を防止するために、基板一枚全体へのインク塗布が終了して、次の基板が搬送されてくるまでの間に、記録ヘッド1内にインクを一定値以上の流速で流す工程を利用して行う。インクの供給元と回収先での圧力差を一定にして、所定の時間に流れたインク量を測定することにより、目詰まり度が測定できる。具体的には、エアーポンプ13,16によって、第一インクボトル4内の圧力と第二インクボトル5内の圧力が図14に示す圧力になるようにした後、三方弁24を記録ヘッド1と第二インクボトル5が接続されるように操作する。この圧力設定は、前記通常のインク塗布の圧力設定値である図13の例を基に、記録ヘッド1での水頭圧をインク塗布時と同等としたものである。記録ヘッド1内の水頭圧はオリフィスからインクが漏れることが無い圧力に設定されるので、第一インクボトルに設けた液面センサ31の出力、又は記録ヘッド1へのインク導入部直前に流量計32を設けることによって、記録ヘッド内部の流路の流量が測定できる。なお、図14の設定値は一例であり、記録ヘッド1のオリフィスからインクが漏れない値であれば他の設定値であってもよい。図14の圧力設定値における流量を測定し、その結果で流路の目詰まり度(異常度)を判定する。実験に用いた記録ヘッド1とインク(粘度11mPa・s)における流量と異常度の関係は、図18(A)のようになる。
【0067】
なお、流量測定を行った後は、定期的に第二インクボトル5のインクをウォーターポンプ17によって、第一インクボトル4に戻す。その際、インク中に入った異物を除去するためのフィルタ9を通す。
【0068】
次に、インク吐出状態の異常度の判定について説明する。インク吐出の異常度の判定は、図17を用いて前述したインク吐出観察で行う。インク吐出観察によって欠損数と吐出曲がり数を観測し、図18(B)に示す基準で異常度を判定する。
【0069】
以上述べたインク流路の目詰まり度(異常度)とインク吐出状態の異常度の判定結果に基づいて、最適なメンテナンス方法を選択する。つまり、異常度が軽度であるほど短時間,少ない液体(洗浄液,インク溶媒,インク)でメンテナンスが済むような方法を選択する。
【0070】
図1は、インク流路の目詰まり度(異常度)とインク吐出状態の異常度の判定結果に基づいて、最適なメンテナンス方法を選択する方法を示している。判定結果の異常度が大きくなるにつれて洗浄時間と洗浄に要する液体(洗浄液,インク溶媒,インク)の量が増加していく。具体的には、2つの判定結果がともに正常の場合はメンテナンス動作を行わない。インク流路の目詰まり度が正常で、インク吐出状態が軽度異常の場合は吸引モードから始める。インク流路の目詰まり度が軽度異常の場合は加圧モードから始める。少なくとも一方の判定結果が中度異常の場合は面洗浄モードから、少なくとも一方の判定結果が重度異常の場合は超音波洗浄モードから始める。各メンテナンス方法を実行してもインク吐出が復旧しない場合は、同一のモードを繰り返すかまたは、上位のメンテナンス方法に移行する。この実行方法のフローチャートを図2,図3に示す。
【0071】
図2は、吸引モードから開始する場合のフローチャートである。吸引モードを実行した後は吐出検査を行い、全オリフィスからの吐出状態が正常となった場合は、メンテナンスの内容(日時,実行回数など)をインクジェット装置内のメンテナンス実行記録用のメモリ(図示しない)に記録して、その後、基板上へのインク塗布を開始する。吐出状態が正常で無い場合はもう一度吸引モードを行い、吐出検査を行って正常となれば、前記のようにメンテナンスの内容をメモリに記録してインク塗布を開始する。ここで吐出状態が正常とならない場合は、面洗浄モードに移行する。面洗浄モードが終了すると吐出検査を行い、全オリフィスからの吐出状態が正常となった場合は、メンテナンスの内容をメモリに記録してインク塗布を開始する。吐出状態が正常で無い場合はもう一度面洗浄モードを行う。全オリフィスからの吐出状態が正常となった場合は、メンテナンスの内容をメモリに記録してインク塗布を開始する。それでも吐出状態が正常で無い場合は、次の超音波洗浄モードに移行する。本モードは4回まで繰り返し、それでも正常とならない場合は記録ヘッド交換となり、装置の稼動を停止するとともに、ヘッド交換のメッセージをインクジェット装置に設置してある表示部に表示する。
【0072】
また、超音波モードを連続4回の実行に至らなくても、超音波モードを頻繁に(たとえば1日に2度以上)実行する場合は、記録ヘッドの寿命が近いので、ヘッド交換の準備を促すようなメッセージを表示部に表示するようにする。これは、全オリフィスからの吐出状態が正常となった場合に、メンテナンスの内容(日時,実行回数など)をメンテナンス実行記録用のメモリに記録してあるので、メッセージを表示部に表示することが可能である。また、インクジェット装置の操作者がメンテナンス実行記録を参照することにより、記録ヘッドの寿命を判定することも可能である。なお、記録ヘッド交換の基準を超音波洗浄モード4回としたが、これは1つの目安であり、3回でも5回であってもよい。
【0073】
図3は加圧モードから開始する場合のフローチャートである。加圧モードを実行した後は吐出検査を行い、全オリフィスからの吐出状態が正常となった場合は、インクジェット装置内のメンテナンス実行記録用のメモリにメンテナンスの内容を記録して基板上へのインク塗布を開始する。吐出状態が正常で無い場合はもう一度加圧モードを行い、吐出検査を行って正常となれば、前記のようにメンテナンスの内容をメモリに記録して塗布を開始する。ここで吐出状態が正常とならない場合は、面洗浄モードに移行する。以下、図2を用いて説明した内容と同一である。
【0074】
以上説明したインク導入方法、および記録ヘッドメンテナンス方法を実行することによって、安定した液体塗布が可能であるインクジェット装置を実現することができる。
【0075】
(実施例2)
実施例1の説明では、洗浄剤としてアルコールの例を示したが、記録ヘッド1内の洗浄を強化するために、水に表面活性剤を溶かした液体を有するボトルを別に配置してもよい。
【0076】
水に表面活性剤を溶かした液体(以下、表面活性剤水と記載)は、主に記録ヘッド1内の洗浄目的であるので、オリフィス側から記録ヘッド内に向けて洗浄剤を吸い込んで記録ヘッド1から凝集物を排出する際に使用する。
【0077】
まず、記録ヘッド1をキャップ8の内側容器8aに接近させ、内側容器8aに表面活性剤水を流す。内側容器8a容積以上の表面活性剤水は、記録ヘッド1のオリフィス面を洗浄しながらオーバーフローして外側容器8b内に入る。表面活性剤水の流れによってオリフィス面に付着した粒子は除去される。インク外側容器8b内の表面活性剤水は、エアーポンプ15によって吸引されて配管202を通して第二回収ボトル7に移動する。洗浄が終了した後、内側容器8a内の表面活性剤水は配管203を通して第二回収ボトル7に移動する。
【0078】
この洗浄の後は、実施例1と同じように、第一インクボトル4内に収容されているインクを記録ヘッド1に導入する工程を行い、インク塗布が可能な状態にする。
【0079】
(実施例3)
実施例1の説明では、インク塗布前後のインク導入について、洗浄剤を用いた場合の例について説明した。インク塗布用のインク溶媒の粘度が比較的低粘度(概ね5mPa・s以下)の場合は、必ずしも洗浄剤を使用する必要はなく、インク溶媒からインク導入を始めても気泡を除去したインク導入が可能である。また、本インクジェット装置の終了動作時においても、インク溶媒の充填で終了してもよい。
【0080】
また、記録ヘッド1のメンテナンス時(面洗浄モード,超音波洗浄モード)においても、インク塗布用のインク溶媒の粘度が比較的低粘度の場合は、必ずしも洗浄剤を使用する必要はなく、インク溶媒での面洗浄,超音波洗浄を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施例である記録ヘッドのメンテナンス方法を示す図である。
【図2】本発明の一実施例である記録ヘッドのメンテナンス方法を実行するフローチャートである。
【図3】本発明の一実施例である記録ヘッドのメンテナンス方法を実行するフローチャートである。
【図4】本発明を適用するインクジェット装置の概要を示す側面図である。
【図5】本発明を適用するインクジェット装置の概要を示す正面図である。
【図6】本発明の一実施例であるインク供給手段および記録ヘッドメンテナンス手段を示す図である。
【図7】本発明の一実施例であるインク塗布準備段階における記録ヘッドへのインク供給方法を説明する図である。
【図8】本発明の一実施例であるインク塗布時における記録ヘッドへのインク供給方法を説明する図である。
【図9】本発明の一実施例である記録ヘッドのオリフィス面洗浄時におけるキャップへの洗浄液供給方法を説明する図である。
【図10】本発明の一実施例である記録ヘッドの洗浄手段を示す図である。
【図11】本発明の一実施例である記録ヘッドのキャップを説明する図である。
【図12】本発明の一実施例である記録ヘッドのオリフィス面を洗浄する方法を示す図である。
【図13】本発明の一実施例であるインク塗布時における水頭圧の状態を説明する図である。
【図14】本発明の一実施例である記録ヘッドの流量を測定する際の水頭圧の状態を説明する図である。
【図15】本発明の一実施例である記録ヘッドの超音波洗浄時における洗浄液供給方法を説明する図である。
【図16】本発明の一実施例である記録ヘッドの超音波洗浄方法を説明する図である。
【図17】本発明の一実施例であるインクの吐出状態を観察する方法を示す図である。
【図18】本発明の一実施例である記録ヘッドの異常状態を判定する基準を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 記録ヘッド
2 洗浄剤ボトル
3 インク溶媒ボトル
4 第一インクボトル
5 第二インクボトル
6 第一回収ボトル
7 第二回収ボトル
11〜16 エアーポンプ
17,18 ウォーターポンプ
21〜25 三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布媒体を搬送する搬送装置と、粒子が分散されたインクを収容する複数個のインクボトルと、前記インクを被塗布媒体上に塗布する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを移動させるキャリッジを有するインクジェット装置において、
非インク塗布時に前記粒子が分散されたインクを第一のインクボトルから記録ヘッドを経由して第二のインクボトルに向けて圧力を印加してインクを流し、その時のインク流量を検出する手段と、
非インク塗布時にインクの吐出状態を検出する手段と、
前記インク流量の検出結果と前記インク吐出状態の検出結果に応じて、前記記録ヘッドの塗布状態を安定に保つために実行される複数の記録ヘッドメンテナンス方法の中から選択し、実行させる手段とを有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット装置において、
前記第一のインクボトルから前記記録ヘッドを経由して、前記第二のインクボトルに向けて圧力を印加する際に、前記第一及び第二のインクボトルには、前記記録ヘッドからインクが漏れない圧力を設定する手段を有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット装置において、
前記インクの吐出状態を検出する手段は、前記インク吐出状態を欠損数と吐出曲がり数の和で算出することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項4】
請求項1に記載のインクジェット装置において、
前記インク流量の検出結果と前記インク吐出状態の検出結果に応じて、異常度を判定する判定テーブルを有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項5】
請求項1に記載のインクジェット装置において、
複数の記録ヘッドメンテナンス方法は、少なくとも、記録ヘッドにキャップを接触させて記録ヘッド内部の液体を吸引する方法と、記録ヘッドにインクを加圧充填してオリフィスからインクを噴出させる方法と、前記キャップ内に洗浄液を送り、キャップと記録ヘッドを接近させて記録ヘッドのオリフィス面を洗浄する方法と、記録ヘッドのオリフィス面を超音波洗浄槽に浸し、記録ヘッドを超音波洗浄する方法の何れかを含む方法であることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェット装置において、
前記複数の記録ヘッドメンテナンス方法の中から選択し、実行させる手段は、インク流量の検出結果とインク吐出状態の検出結果に応じて判定された異常度が軽度であるほど、短時間で実行可能な記録ヘッドメンテナンス方法を選択することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェット装置において、
記録ヘッドメンテナンスを実行した後でインクの吐出状態を検出し、正常状態に戻らない場合は記録ヘッドメンテナンスを繰り返す手段を有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェット装置において、
同一のメンテナンス方法を複数回繰り返してもインクの吐出状態が正常状態に戻らない場合は、前記メンテナンス方法よりも長い時間を要する記録ヘッドメンテナンス方法に実行する手段を有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項9】
請求項6から8の何れかに記載のインクジェット装置において、
記録ヘッドメンテナンスを実行した後でインクの吐出状態を検出し、正常状態に戻った場合に少なくとも実行した日時,記録ヘッドメンテナンス方法、及び実行回数を記録するメモリを有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項10】
請求項9に記載のインクジェット装置において、
記録ヘッドメンテナンス方法,実行回数の履歴に基づき、記録ヘッド交換時期に関する情報を表示する表示部を有することを特徴とするインクジェット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−269291(P2009−269291A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121767(P2008−121767)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】