説明

インクジェット記録用インク

【課題】インクジェット記録方法に適し、複数種の顔料を1インク中に含んだインクであり、記録物の印字品質、特には光沢紙における光沢性及び、記録媒体全般に対しての耐擦過性や耐マーカー性といった画像堅牢性に優れ、保存安定性が良好であり、広範囲な駆動周波数で吐出した際にも良好で安定した応答性を維持できるインクジェット記録用インクを提供すること。
【解決手段】コアとして顔料を有し、シェルとして水性媒体に対して分散機能を有する樹脂を有するマイクロカプセル色材を含有するインクジェット記録用インクにおいて、該コアとしての顔料が複数種の有機顔料を含む顔料混合物であることを特徴とするインクジェット記録用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法に適しており、複数種の顔料を1のインク中に含んだ、以下の特性を有するインクジェット記録用インク(以下「インク」という場合がある)に関するものである。すなわち、記録物の印字品質、特には光沢紙に印字した場合の光沢性、及び、記録媒体全般に対しての耐擦過性や耐マーカー性といった画像堅牢性に優れるインクに関する。さらには、インクの保存安定性が良好であり、広範囲な駆動周波数で吐出した際にも良好で安定した応答性を維持できるインクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、インクの小滴を飛翔させ、紙などの記録媒体に付着させて記録を行うものである。また、インクジェット記録方法の中には、吐出エネルギー供給手段として電気熱変換体を用い、熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させるサーマル方式がある。このサーマル方式によれば、記録ヘッドの高密度マルチノズル化が容易に実現でき、高解像度、高品質の画像を高速で記録できる(特許文献1参照)。
【0003】
近年、インクジェット記録画像の堅牢性に関してより一層の向上が望まれており、それに伴いインク中の色材に顔料を採用することの検討が活発となってきている。顔料をインクジェット用の水性インクの色材として用いる場合には、水性媒体中に顔料を安定して分散させることが肝要である。一般に、顔料を水性媒体中に均一に分散させるためには、分散剤、例えば、水性媒体に対して顔料を安定に分散させるための親水基と、疎水性である顔料表面に物理的に吸着するための疎水部とを有する樹脂分散剤を用いる方法(特許文献2参照)がある。
【0004】
この樹脂分散剤を用いる方法により得られた顔料インクを用いると、インク打ち込み量が少ない場合には、耐擦過性、光沢性の比較的良好な画像が得られる場合もある。しかしながら、イエロー、マゼンタ、シアンの3種のインクにより、2次色であるレッド、グリーン、ブルーを表現する場合などにおいては、これらの性能を十分に達成することが困難であった。このことに関連して、1つのインク中に複数の顔料を含有させた朱色のインクについての提案もされているが(特許文献3参照)、良好なインクの保存安定性やインクの吐出安定性を確保することは難しかった。
【0005】
本発明者らは、上記したような今後の技術トレンドを背景とした課題に対して下記の目的について精力的な検討を行った。具体的には、複数種の顔料を1つのインク中に含有させた構成において、顔料インクの分散安定性や吐出安定性を確保しつつ、記録物の印字品質、特には、光沢紙に印刷した場合の光沢性を優れたものとできるインクの検討を行った。さらには、記録媒体全般に対して、耐擦過性や耐マーカー性といった画像堅牢性に優れた画像の形成ができるインクについての検討を行った。上記した各課題の概要をそれぞれ以下に示す。
【0006】
1.耐擦過性・耐マーカー性
インクを記録媒体に印字し、得られた記録物を蛍光ペンなどのマーカーや指でなぞると、記録物が汚れてしまうことがある。これは、浸透力が強く、かつ、インク中の着色剤が染料のような記録媒体中に吸収されるタイプのインクではあまり問題とならないが、紙などへの浸透力が弱く、かつ、着色剤が顔料のような記録媒体上に留まるタイプのインクでは問題となることが多い。特に、分散樹脂などが使用されていない自己分散型の顔料を用いたインクの場合には、これらの現象は顕著である。また、分散樹脂を用いたインクの場合であっても、減法混色法による2次色の、レッド、グリーン、ブルーを表現する場合に大きな技術的課題となっている。
【0007】
2.光沢性
インクジェット法により写真画質を高いレベルで表現するためには、普通紙ではなく光沢紙を使用する。この際、画像の光沢性は非常に重要な要求性能であり、銀塩写真調の画像を望む場合、不可欠な性能である。染料インクを用いると比較的良好な光沢性が得られる。これに対して、顔料インクを用いた場合は、光沢紙の表面が非常に密となって顔料が紙表層に留まることになるので、最終的に顔料の定着が終了した段階での記録部分の表面の凹凸状態が光沢性を大きく支配することになる。このため、画像の光沢性は劣ったものになる。減法混色法による2次色を2つのインクを用いて表現する場合、この問題は特に顕著である。このため2次色を表現することについては、特別色として単一のインク、すなわち、1つのインクに複数種の顔料を含有させたインクを用いる方法が採用されることもある。
【0008】
3.吐出安定性
顔料インクを、記録ヘッドの微細孔(オリフィス)からエネルギー作用によってインクを飛翔させて記録を行う方式のインクジェット記録装置に使用した場合、以下のような課題があった。すなわち、分散安定性がよくないインクを使用した場合は、インクの吐出安定性に著しい障害を起こし、印字不良を発生するという欠点があった。特に、サーマル方式により、液滴を吐出させて記録を行う際に、従来の水性顔料インクを使用した場合、インクにパルスを印加すると、ある駆動電圧時においては、その熱により薄膜抵抗体上に堆積物ができることがあった。そして、この場合には、インクの発泡が不完全で液滴の吐出が印加パルスに応答できないで不吐出が発生することがあった。中でも複数種の顔料を個々に分散して顔料分散液を得た後、これらをインク中で混合させたタイプのインクでは、このような問題が生ずる場合が多い。
【0009】
【特許文献1】特公昭61−59911号公報
【特許文献2】特開平9−241564号公報
【特許文献3】特開2000−44856公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、インクジェット記録方法に適した、1つのインク中に複数種の顔料を含有する形態のインクでありながら、以下の特性を有するインクジェット記録用インクを提供することにある。すなわち、記録物の印字品質、特には、光沢紙に印刷した場合の光沢性、及び、記録媒体全般に対しての耐擦過性や耐マーカー性といった画像堅牢性に優れるインクジェット記録用インクを提供することにある。さらには、上記のような特性に加えて、インクの保存安定性も良好であり、広範囲な駆動周波数で吐出した際にも良好で安定した応答性を維持できるインクジェット記録用インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、コアとして顔料を有し、シェルとして水性媒体に対して分散機能を有する樹脂を有するマイクロカプセル色材を含有するインクジェット記録用インクにおいて、該コアとしての顔料が複数種の有機顔料を含む顔料混合物であることを特徴とするインクジェット記録用インクを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインクは、含有する複数種の有機顔料からなる顔料混合物を、分散機能を有する樹脂を用いて、マイクロカプセル化させたものであるため、含有する複数種の有機顔料をインク中に個別に分散させている従来のインクと比して、以下の優れた特性を有する。すなわち、本発明によれば、インクジェット記録方法に適し、記録物の印字品質、特には、光沢紙に印刷した場合の光沢性、及び、記録媒体全般に対しての耐擦過性や耐マーカー性といった画像堅牢性を優れたインクジェット記録用インクを提供できる。さらには、インクの保存安定性も良好であり、広範囲な駆動周波数で吐出した際にも良好で安定した応答性を維持できるインクジェット記録用インクを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明のインクは、コアとして顔料を有し、シェルとして水性媒体に対して分散機能を有する樹脂を有するマイクロカプセル色材を含有するインクジェット記録用インクにおいて、該コアとしての顔料が複数種の有機顔料を含む顔料混合物であることを特徴とする。先ず、本発明のインクを構成する各成分について説明する。
【0014】
(顔料)
本発明のインクに含まれるコアを形成する顔料は、複数種の有機顔料が混合された顔料混合物であることが必須である。この顔料混合物を構成する個々の顔料の種類は特に限定されず、例えば、下記のものを挙げることができ、これらの中から2種類以上を予め混合させたものを顔料混合物として使用することができる。
【0015】
先ず、黒色を有する顔料としてはカーボンブラックが好適に使用される。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック顔料などが挙げられる。特に、一次粒子径が15nm以上40nm以下、BET法による比表面積が50m2/g以上300m2/g以下、DBP吸油量が40ml/100g以上150ml/100g以下、揮発分が0.5質量%以上10質量%以下の特性のものが好ましく用いられる。
【0016】
次に、主としてカラーインクに使用される顔料としては有機顔料が好適に使用される。具体的には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッドなどのイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系顔料。チオインジゴ系顔料。縮合アゾ系顔料。チオインジゴ系顔料。ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレットなどの顔料が例示できる。
【0017】
また、有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、以下のものが例示できる。C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、55、74、83、86、93、97、98。109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185。C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71。C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192。202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272。C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50。C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64。C.I.ピグメントグリーン7、36。C.I.ピグメントブラウン23、25、26など。
【0018】
以上の顔料を混合する組み合わせの例としては、1つは、減法混色法により2次色を表現することを目的とした例がある。この場合、グリーンインクとするにはシアン顔料とイエロー顔料を、ブルーインクとするにはシアン顔料とマゼンタ顔料を、レッドインクとするにはマゼンタ顔料とイエロー顔料を、それぞれ、5/1乃至1/5の範囲で混合することが好ましい。この場合に用いる好適な個々の顔料としては、これらに限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー13、17、55、74、93、97、98、110、128、139、147、150、151、154、155、180、185。シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4。マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド122、202、209、C.I.ピグメントバイオレット19。
【0019】
他の目的で顔料を混合する組み合わせの例としては、ブラックインクの色調調整が挙げられる。すなわち、カーボンブラックを単独で用いたインクであると純黒の色調を得ることが難しく、青味、赤味の色調にややシフトしてしまうことが多い。特に、ブラックインクの濃度が薄い場合に問題となる。このため、純黒の色調が得られるように、ブラックインクの色材には、カーボンブラックを主体として、カラー顔料を混合させる。例えば、カーボンブラックとカラー顔料の比が100/1乃至2/1の範囲となるようにこれらを混合させることが好ましい。
【0020】
その他、機能の異なる同色の顔料を混合する組み合わせも有効である。例えば、発色性と耐光性が共に優れた顔料がない場合には、発色性が優れた顔料と耐光性が優れた顔料を混合して使用することができる。
【0021】
本発明において、インク中の顔料の含有量は、この範囲に限定されるものではないが、インク全量に対して顔料混合物としての合計量で0.1質量%以上15質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以上12質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上10質量%以下である。
【0022】
(水性媒体に対して分散機能を有する樹脂)
シェルを形成する樹脂としては、水性媒体に対して分散機能を有する樹脂であればいずれのものも使用できる。好適な樹脂としては、少なくとも、疎水性モノマー、非イオン性親水性モノマー、イオン性親水性モノマーの3成分を重合してなるブロック構造を有するポリマーが挙げられる。この場合のブロック構造とは、3成分のうち少なくともいずれか1つがブロック構造を形成しているものをいう。さらに、本発明において、上記のポリマーが、繰り返し単位としてポリビニルエーテル構造を有するものであることが特に好適である。また、モノマーを重合し、ポリマーを得るために好ましく用いられる具体的な合成方法としては、以下の方法が挙げられる。すなわち、ポリマーブレタン誌15巻(1986年、417頁)、特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報などに記載されている青島らによるカチオンリビング重合による方法などが挙げられる。
【0023】
本発明に用いる樹脂である、上記のポリマーにおいて、ブロック構造を形成するイオン性親水性モノマーに起因する繰り返し単位としては、これらに限定されるものではないが、下記の一般式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0024】

(上記式(1)中、R0は−X−(COOH)r、−X−(COO−M)rを表す。Xは炭素数1から20までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基。又は−(CH(R5)−CH(R6)−O)p−(CH2m−CH3-r−若しくは−(CH2m−(O)n−(CH2q−CH3-r−。又は、それらのメチレン基の少なくとも1つがカルボニル基又は芳香族基で置換された構造を表す。rは1又は2を表す。pは1から18までの整数を表す。mは0から35までの整数を表す。nは1又は0を表す。qは0から17の整数を表す。Mは1価又は多価のカチオンを表す。R5、R6はアルキル基を表す。また、R5、R6は同じでも異なっていてもよい。)
【0025】
上記一般式(1)で表される好ましい繰り返し単位の具体的な構造を以下に挙げる。
【0026】









(M1は水素、リチウム、ナトリウム又はカリウムを表し、Phはフェニレン基を表す。)
【0027】
本発明に用いる樹脂である、上記のポリマーにおいて、ブロック構造を形成する、疎水性モノマー或いは非イオン性親水性モノマーに起因する繰り返し単位としては、これらに限定されるものではないが、下記の一般式(2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0028】

(上記式(2)中、R1は炭素数1から18までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、−Ph、−Pyr、−Ph−Ph、−Ph−Pyr、−(CH(R5)−CH(R6)−O)p−R7及び−(CH2m−(O)n−R7から選ばれるいずれかの基である。また、これらの基の、芳香環中の水素原子は炭素数1から4の直鎖状又は分岐状のアルキル基と、芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。pは1から18の整数、mは1から36の整数、nは0又は1である。R5、R6はそれぞれ独立に水素原子若しくは−CH3である。R7は水素原子、炭素数1から18までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、−Ph、−Pyr、−Ph−Ph、−Ph−Pyr、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2又は−CH2COOR8である。また、R7が水素原子以外である場合、R7中の炭素原子に結合している水素原子は炭素数1から4の直鎖状又は分岐状のアルキル基又は−F、−Cl、−Brと、また、芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換することができる。R8は水素原子又は炭素数1から5のアルキル基である。Phはフェニル基、Pyrはピリジル基を表わす。)
【0029】
上記一般式(2)で表される疎水性モノマーに起因する繰り返し単位の具体的な構造としては、以下に記載のものが好ましい。
【0030】










(Phはフェニレン基、C108はナフタレン基を表す。)
【0031】
上記一般式(2)で表される非イオン性の親水性モノマーに起因する繰り返し単位の具体的な構造としては、以下に記載したものが好ましい。
【0032】




【0033】
本発明において、インク中の上記の分散機能を有する樹脂の含有量は、インク全量に対して、0.1質量%以上15質量%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上10質量%以下の範囲である。上記の分散機能を有する樹脂の含有量がこの範囲よりも高い場合、所望のインク粘度を維持するのが困難となる場合がある。また、本発明において、インク中における、顔料混合物と上記の分散機能を有する樹脂の含有量比は1:5乃至10:1であることが好ましい。一方、含有量比が、この範囲から外れるとインクの吐出性、とりわけサーマル方式でのインクの吐出性が悪くなるか、画像の耐マーカー性や耐擦過性が悪くなる場合がある。
【0034】
(マイクロカプセル色材)
前記の顔料混合物を、前記の顔料を水性媒体に対して分散させる機能を有する樹脂に内包させてなるマイクロカプセル色材の粒径としては、平均粒径で200nm以下であることが好ましく、より好ましくは、150nm以下である。一方、マイクロカプセル色材の平均粒径が200nmを超えると色材が沈降しやすくなり、また、形成される画像においては、光沢性が不良となる場合がある。平均粒径の測定方法としては、例えば、レーザ光の散乱を利用した、ELS−8000(大塚電子製)、マイクロトラックUPA 150(日機装製)などを使用して測定できる。
【0035】
本発明のインクを構成する上記のマイクロカプセル色材を形成させる方法としては、コア、シェル型のマイクロカプセル構造が得られる方法であれば手段を選ばないが、特に好ましい方法として、転相法が挙げられる。中でも、上記の顔料混合物と上記の分散機能を有する樹脂とを含む混合体を有機溶媒相とし、該有機媒体相に水を注入する方法か、或いは、水中に該有機媒体相を注入する方法が、本発明に用いるマイクロカプセル色材を得る方法として極めて有効である。
【0036】
(水性媒体)
本発明にかかるインクは、水を必須成分とするが、インク中の水の含有量は、インク全質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、また、95質量%以下であることが好ましい。また、水と水溶性溶剤が併用された水性媒体を使用することもできる。水と併用される水溶性溶剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンタノールなどの炭素数1乃至5のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのオキシエチレン又はオキシプロピレン重合体。エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどのアルキレン基が2乃至6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類。1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、ブチル)エーテルなどのグリコールの低級アルキルエーテル類。トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類。モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類。スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、エチレン尿素、ビスヒドロキシエチルスルフォン、ジグリセリン、トリグリセリンなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。特に良好なものとしては、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、エチレン尿素、トリメチロールプロパンが挙げられる。水と併用される水溶性溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全量に対して、例えば、3質量%以上であることが好ましく、また、60質量%以下であることが好ましい。
【0037】
(界面活性剤)
本発明にかかるインクにおいて、よりバランスのよい吐出安定性を得るためには、インク中に界面活性剤を含有させることが好ましい。中でもノニオン系界面活性剤を含有させることが好適である。ノニオン系界面活性剤の中でもポリオキシエチレンアルキルエーテル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が特に好ましい。これらのノニオン系界面活性剤のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は、10以上である。本発明において、界面活性剤の含有量は、インク全量に対して、0.01質量%以上5質量%以下、好ましくは0.05質量%以上4質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。
【0038】
(その他の添加剤)
また、本発明にかかるインクは、所望の物性値を有するインクとするために、上記した成分の他に必要に応じて、添加剤として、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤などを添加することができる。添加剤の選択はインクの表面張力が25mN/m以上、好ましくは28mN/m以上になるようにすることが好ましい。
【0039】
(インクジェット記録装置)
次に、本発明のインクを用いて画像を形成する場合に用いられるインクジェット記録装置について、インクジェットプリンタを具体例として説明する。本具体例で説明するインクジェットプリンタは、サーマル方式のプリンタであるが、本発明のインクは、サーマル方式のプリンタに用いるインクとしてより効果的なものである。サーマル方式の場合、駆動源である発熱ヒータ上にインクの構成成分に起因する不溶物が堆積してインクの不吐出を引き起こすことがある。このような現象は、個々の色材を単独で含有するインクにおいて生じていなくても、これらの色材を混合して複数種の色材を含有するインクとした場合に初めて問題が発生することがある。また、このような現象は、染料インクの場合は、あまり発生しない現象であるが、顔料インクの場合は、問題となることが多い。これに対し、本発明のインクは、コアを形成させる顔料を、予め複数の顔料を集結させた混合物とし、これらを樹脂層により内包させたコア−シェル構造の色材を用いたものである。このため、異種顔料が相互間に作用してヒータ面に不溶物が堆積しやすくなる現象が発生し難くなると思われる。
【0040】
以下、好適に用いられるインクジェットプリンタの概要を図面を用いて詳細に説明する。図1は、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の液体吐出ヘッドとしての液体吐出ヘッド及びこのヘッドを用いる液体吐出装置であるインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。図1において、インクジェットプリンタは、搬送装置1030と、記録部1010と、移動駆動部1006とを含んで構成されている。上記搬送装置1030は、ケーシング1008内に長手方向に沿って設けられる記録媒体としての用紙1028を図中に示す矢印Pで示す方向に間欠的に搬送するものである。上記記録部1010は、搬送装置1030による用紙1028の搬送方向Pに略直交する矢印S方向に、ガイド軸1014に沿って略平行に往復運動せしめられるものである。上記移動駆動部1006は、記録部1010を往復運動させる駆動手段である。
【0041】
また、上記搬送装置1030は、互いに略平行に対向配置されている一対のローラユニット1022a及び1022bと、一対のローラユニット1024a及び1024bと、これらの各ローラユニットを駆動させるための駆動部1020とを備えている。かかる構成により、搬送装置1030の駆動部1020が作動状態とされると、用紙1028が、それぞれのローラユニット1022a及び1022bと、ローラユニット1024a及び1024bにより狭持されて、矢印P方向に間欠送りで搬送されることとなる。また、上記移動駆動部1006は、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されるプーリ1026a及びプーリ1026bに巻きかけられるベルト1016を含んで構成されている。さらに、上記移動駆動部1006は、ローラユニット1022a及びローラユニット1022bに略平行に配置され記録部1010のキャリッジ部材1010aに連結されるベルト1016を順方向及び逆方向に駆動させるモータ1018とを含んで構成されている。
【0042】
モータ1018が作動状態とされてベルト1016が矢印R方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。また、モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図1中に示した矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動されることとなる。さらに、移動駆動部1006の一端部には、キャリッジ部材1010aのホームポジションとなる位置に、記録部1010の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026が記録部1010のインク吐出口配列に対向して設けられている。記録部1010は、インクジェットカートリッジ1012Y、1012M、1012C及び1012Bが、各色、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック毎に、それぞれ、キャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられる。なお、「インクジェットカートリッジ」を、以下、単に「カートリッジ」と記述する場合がある。
【0043】
図2は、上述のインクジェット記録装置に搭載可能なインクジェットカートリッジの一例を示す。図2に示した例におけるカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、インクジェット記録ヘッド100と、インクを収容するインクタンク1001とで主要部が構成されている。
【0044】
インクジェット記録ヘッド100には、インクを吐出するための多数の吐出口832が形成されており、インクは、インクタンク1001から図示しないインク供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室(不図示)へと導かれるようになっている。図2に示したカートリッジ1012は、インクジェット記録ヘッド100とインクタンク1001とを一体的に形成し、必要に応じて、インクタンク1001内に液体を補給できるようにしたものである。これ以外にも、インクジェット記録ヘッド100に対し、インクタンク1001を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。なお、インクジェット記録ヘッド100を備えたインクジェットカートリッジ1012が記録ユニットである。
【実施例】
【0045】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の記載で「部」、及び「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
【0046】
<樹脂1の調製>
先ず、下記の表1に示したA、B、Cの各モノマーを原料として、カチオンリビング重合法(特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報記載)により、重合比(A:B:C)=40:20:10のABC型ブロックポリマーを作製した。得られた上記ブロックポリマーの数平均分子量(Mn)は13,600であり、数平均分子量と重量平均分子量の比(Mn/Mw)は1.1であった。次に、得られた上記ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和し、さらに、イオン交換水で希釈して均質なポリマー水溶液を得た。次に、得られたポリマー水溶液を塩酸で中和してC成分がフリーのカルボン酸になったトリブロックポリマーである樹脂1を得た。なお、化合物の同定はNMR及びGPCを用いた。
【0047】
<樹脂2の調製>
樹脂1の調製と同様に、下記の表1に示したA、Cの各モノマーを原料として、カチオンリビング重合法により、重合比A:C=40:20のAC型ブロックポリマーを作製した。得られた上記ブロックポリマーの数平均分子量(Mn)は11,000であり、数平均分子量と重量平均分子量の比(Mn/Mw)は1.1であった。次に、得られた上記ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和し、さらに、イオン交換水で希釈して均質なポリマー水溶液を得た。次に、得られたポリマー水溶液を塩酸で中和してC成分がフリーのカルボン酸になったジブロックポリマーである樹脂2を得た。なお、化合物の同定はNMR及びGPCを用いた。
【0048】

【0049】
<顔料分散液1〜10の転相法による調製>
下記の表2に示した組成で、樹脂と、1種の或いは2種を混合した顔料をテトラヒドロフラン(THF)250gに共溶解し、さらに、蒸留水500gを用いて水相へ変換した後、THFを除去した。次に、得られたそれぞれの顔料の分散液から水分を除去することにより濃度調整を行い、樹脂により顔料が内包されたコア−シェル構造を有する色材を含有してなる、顔料濃度6%の顔料分散液1〜10を得た。なお、顔料分散液1〜5は、樹脂により2種の顔料を混合した顔料混合物が内包されたコア−シェル構造を有する色材を含んだものであり、顔料分散液6〜10は、樹脂により1種の顔料が内包されたコア−シェル構造を有する色材を含んだものである。
【0050】

【0051】
<実施例1〜5のインクの調製>
実施例1〜5のインクの調製は、上記で得た顔料分散液1〜5を使用し、さらに、下記の処方で各成分を加えて所定の濃度(合計100部)にすることにより調製した。具体的には、下記の処方で各成分を十分に混合撹拌し、水酸化カリウムでpHを9.0に調整した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過して得た。
【0052】
〔実施例1のインク〕
・顔料分散液1 60部
・ジグリセリン 15部
・ジエチレングリコール 5部
・エチレン尿素 4部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0053】
〔実施例2のインク〕
・顔料分散液2 60部
・グリセリン 15部
・エチレングリコール 10部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0054】
〔実施例3のインク〕
・顔料分散液3 60部
・ポリエチレングリコール(平均分子量300) 10部
・グリセリン 10部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0055】
〔実施例4のインク〕
・顔料分散液4 60部
・トリメチロールプロパン 8部
・エチレングリコール 5部
・ジエチレングリコール 5部
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17.5) 0.5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0056】
〔実施例5のインク〕
・顔料分散液5 60部
・ジグリセリン 15部
・ジエチレングリコール 5部
・エチレン尿素 4部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0057】
<比較例1〜5のインクの調製>
比較例のインク1〜5の調製は、上記で得た顔料分散液6〜10を使用し、さらに、下記の処方で各成分を加えて所定の濃度(合計100部)にすることにより調製した。具体的には、下記の処方で各成分を十分に混合撹拌し、水酸化カリウムでpHを9.0に調整した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過して得た。
【0058】
〔比較例1のインク〕
・顔料分散液6 30部
・顔料分散液8 30部
・ジグリセリン 15部
・ジエチレングリコール 5部
・エチレン尿素 4部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0059】
〔比較例2のインク〕
・顔料分散液8 30部
・顔料分散液9 30部
・グリセリン 15部
・エチレングリコール 10部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0060】
〔比較例3のインク〕
・顔料分散液6 30部
・顔料分散液9 30部
・ポリエチレングリコール(平均分子量300) 10部
・グリセリン 10部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0061】
〔比較例4のインク〕
・顔料分散液6 30部
・顔料分散液7 30部
・トリメチロールプロパン 8部
・エチレングリコール 5部
・ジエチレングリコール 5部
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17.5) 0.5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0062】
〔比較例5のインク〕
・顔料分散液9 6部
・顔料分散液10 54部
・ジグリセリン 15部
・ジエチレングリコール 5部
・エチレン尿素 4部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0063】
<参考例1、2のインクの調製>
参考例1、2のインクの調製は、上記で得た顔料分散液8、9を使用し、さらに、下記の処方で各成分を加えて所定の濃度(合計100部)にすることにより調製した。具体的には、下記の処方で各成分を十分に混合撹拌し、水酸化カリウムでpHを9.0に調整した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過して得た。なお、参考例1、2のインクは、2種の顔料を含む、実施例1〜5及び比較例1〜5のインクとは異なり、1種の顔料を含むインクである。
【0064】
〔参考例1のインク〕
・顔料分散液8 60部
・グリセリン 15部
・エチレングリコール 10部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0065】
〔参考例2のインク〕
・顔料分散液9 60部
・グリセリン 15部
・エチレングリコール 10部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製)
0.5部
・水 残部
【0066】
<評価>
得られた実施例1〜5、比較例1〜5、参考例1、2のインクを、それぞれ、下記のようにして評価した。
【0067】
[評価項目]
(1)インクの保存安定性・インクジェット吐出安定性
実施例、比較例及び参考例のインクをそれぞれテフロン(登録商標)製の容器に入れ密封し、60℃で1ヶ月間保存した。このようにして得られた保存後の各インクと、保存前の各インクをキヤノン製BJF900搭載のインクジェット記録用ヘッドを備えたインクジェット記録装置にそれぞれ別々に充填した。次に、駆動周波数0.1kHzで充填した各インクを吐出した後、徐々に周波数を上げてゆき、吐出形状が主滴の存在しない形状の不安定な吐出になった時点で周波数を測定した。評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記表3に示した。
A:保存前後のインクのどちらも10kHz以上
B:保存前後のインクのどちらかが10kHz未満
C:保存前後のインクのどちらも10kHz未満
【0068】
(2)印字物の耐マーカー性
実施例及び比較例のインクをキヤノン(株)製インクジェットプリンタ(商品名:BJF900)にそれぞれ充填した。次に、普通紙モードにて、キヤノン(株)製PPC用紙NSKに文字パターンを印字し、印字から1分後及び1時間後に各印字部をラインマーカーでなぞった。評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記表3に示した。
A:1分後及び1時間後とも印字部にインクの尾引きが見られない
B:1分後の印字部ではインクの尾引きが見られるが、1時間後は見られない
C:1分後及び1時間後とも印字部にインクの尾引きが見られる
【0069】
(3)印字物の耐擦過性
実施例及び比較例のインクをキヤノン(株)製インクジェットプリンタ(商品名:BJF900)にそれぞれ充填した。次に、普通紙モードにて、キヤノン(株)製PPC用紙NSKに文字パターンを印字し、印字から1分後及び1時間後に各印字部を指でなぞった。評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記表3に示した。
A:1分後及び1時間後とも印字部にインクの尾引きが見られない
B:1分後の印字部ではインクの尾引きが見られるが、1時間後は見られない
C:1分後及び1時間後とも印字部にインクの尾引きが見られる
【0070】

【0071】
(4)光沢性
シアン顔料とマゼンタ顔料の含有量と比率が同じである実施例2のインクと比較例2のインクを、それぞれ、キヤノン(株)製インクジェットプリンタ(商品名:BJF900)に充填した。次に、キヤノン(株)製プロフェッショナルフォトペーパーに対応印字モードで200%ベタパターンを印字し、得られた各印字物を3日間放置した後、各印字部の20度光沢度を光沢計GMX−203(村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。また、参考例1、2のインクを、上記と同一のプリンタを用いて、各100%ベタパターンをそれぞれ同一場所に打ち込み、実施例2のインク、比較例2のインクとシアン顔料とマゼンタ顔料の合計付与量が同じくなるよう印字した。得られた印字物を上記と同様に3日間放置した後、印字部の20度光沢度を光沢計GMX−203(村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。測定した光沢度を比較評価したところ、実施例2のインクを用いた場合が、最も光沢度が良好であった。比較例2のインクを用いた場合は、実施例2のインクを用いた場合と比べて、光沢度がやや劣る結果となった。さらに、参考例1と2を用いた印字方法では、実施例2のインクや比較例2のインクを用いた場合と比べて、明らかに光沢度が劣る結果となった。
【0072】
上記表3に示す評価項目(1)〜(3)の評価結果より、本発明のインクである実施例1〜5のインクは、いずれも、良好なインクの保存安定性、インクジェット吐出安定性、耐擦過性及び耐マーカー性を備えたものであることが確認された。また、評価項目(4)の評価結果より、複数種の顔料を用いたインクによる画像形成において、特に、本発明のインクを用いて画像形成した場合に、画像の光沢性が優れたものとなることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】液体吐出ヘッドを搭載可能なインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。
【図2】液体吐出ヘッドを備えたインクジェットカートリッジの一例を示す概略斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとして顔料を有し、シェルとして水性媒体に対して分散機能を有する樹脂を有するマイクロカプセル色材を含有するインクジェット記録用インクにおいて、該コアとしての顔料が、複数種の有機顔料を含む顔料混合物であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項2】
マイクロカプセル色材の平均粒径が、200nm以下である請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項3】
シェルとしての樹脂が、少なくとも、疎水性モノマー、非イオン性親水性モノマー及びイオン性親水性モノマーの3成分を重合してなるブロック構造を有するポリマーである請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項4】
シェルとしての樹脂が、繰り返し単位としてポリビニルエーテル構造を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項5】
顔料混合物を構成する顔料が、シアン顔料とイエロー顔料を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項6】
顔料混合物を構成する顔料が、シアン顔料とマゼンタ顔料を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項7】
顔料混合物を構成する顔料が、マゼンタ顔料とイエロー顔料を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項8】
顔料混合物を構成する顔料が、カーボンブラックを含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−84066(P2010−84066A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256435(P2008−256435)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】