説明

インクジェット記録装置

【課題】フィルタを吐出ヘッドとサブタンクとの間に設けた場合でも、吐出ヘッドへのインク供給開始時に、フィルタでインクの供給が止まることなく、吐出ヘッドにインクを供給することができること。
【解決手段】メインタンクと、吐出ヘッドに静圧方式によりインクの供給を行う供給用サブタンクと、メインタンクから供給用サブタンクに接続される第1の供給配管を含み、メインタンク、供給用サブタンクおよび吐出ヘッドとの間でインクを循環させるインク循環系と、インク循環系の供給用サブタンクと吐出ヘッドとの間において、供給用サブタンクのインクの循環時における気液界面よりも吐出ヘッド側に設置されたフィルタとを有し、フィルタの吐出ヘッド側および気液界面側のいずれか一方の面に第1の供給配管の液流の少なくとも一部を直接的に吐出させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に向けてインクを吐出させて記録を行うインクジェット記録装置に関し、より具体的には、静圧方式で吐出ヘッドにインクを供給し、吐出ヘッドからインクを吐出させて記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に向けてインクを吐出させて記録を行うインクジェット記録装置としては、例えば、インクに静電力を作用させてインク液滴を吐出する静電式のインクジェット記録方式がある。この静電式インクジェット記録方式の1つとしては、色材および樹脂を含み、かつ、荷電した微粒子成分(以下、色材粒子とする)を絶縁性のキャリア液(分散媒)に分散してなるインクを用い、画像データに応じてインクジェットヘッドの吐出電極に電圧(駆動電圧)を印加してインクに静電力を作用させることにより、インクの吐出を制御して、オンデマンドで記録媒体に画像を記録する方式により記録を行うインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
色材粒子を有するインクを用いる静電式のインクジェット記録では、例えば、記録媒体にバイアス電圧を帯電させた上でインクジェットヘッドに対面させた状態で、インクの各吐出部に対応して形成された吐出電極に駆動電圧を印加することにより、吐出部(および吐出部近傍)のインクに静電力を作用させる。
この静電力の作用により、色材粒子が泳動して吐出部に集まり(すなわち、吐出部でインクが濃縮され)、インク液滴として吐出される。
【0004】
このような静電式インクジェットにおいて、各吐出部にインクを供給する方法の一例として、インクを貯留するタンクからインクジェットヘッドにインクを供給し、インクジェットヘッド内において各吐出部と連通する所定のインク流路にインクを流し、吐出されずにインク流路を通過したインクをインクジェットから前記タンクに戻す、所定の循環経路でインクを循環する方法が例示される。
【0005】
例えば、特許文献1には、図6に示されるように、色材粒子を有するインクを静電式のインクジェットヘッド(以下、記録ヘッドとする)200から吐出して、記録媒体Pに画像を記録するインクジェット記録装置において、インクを貯留するタンク202からポンプ204によってタンク206にインクを供給し、タンク206から水頭圧をかけつつ重力落下で記録ヘッド200にインクを供給すると共に、記録ヘッド200から吐出されなかったインクをタンク202に戻す循環系を有するインクジェット記録装置が開示されている。また、このインクジェット記録装置は、劣化したインクを廃棄するタンク210、および新規(未使用)インクを貯留するタンク214を有する。
また、このインクジェット記録装置では、循環しているインクの劣化状態を検出し、その結果に応じて、ポンプ204を停止してタンク206のインクを全てタンク202に回収し、次いで、バルブ208を開いて劣化したインクをタンク210にインクを廃棄し、タンク202が空になったら、バルブ212を開いてタンク214から新規インクをタンク202に供給して、再度、循環を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に開示のインクジェット記録装置は、記録ヘッド(吐出ヘッド)200にインクを供給するタンク206から水頭圧をかけつつ重力落下で記録ヘッド200にインクを供給することで、記録ヘッドに一定圧でインクを供給することができるが、タンク206の内壁面で凝集固形物が形成される可能性、タンク206内のインクが空気と触れるため、気液界面でのインクの蒸発による凝集固形物等の発生の可能性、また、タンク206へゴミが混入する可能性等がある。
このようなゴミや凝集固形物等の異物がインクに混入し、そのインクが記録ヘッド200に供給されると、異物により記録ヘッドの吐出口(ノズル)に目詰まりが発生し、インク液滴の吐出が不可能になることがある。
【0007】
これに対して、本発明者は、このような静圧方式により、記録ヘッドにインクの供給を行うサブタンクを用いるインクジェット記録装置において、記録ヘッドとサブタンクとの間に異物を除去するフィルタを設けることで、記録ヘッドにインクを供給するタンク内で発生した異物も除去することができ、記録ヘッドでも目詰まりを防止できることを見出した。
【0008】
しかしながら、記録ヘッドとサブタンクとの間にフィルタを設けることで、記録ヘッドへの異物の混入は防止できるが、インクジェット記録装置を使用した後に、一旦使用を停止し、インクジェットヘッド等のインク循環系から、インクを抜き取り、メインタンク等に戻した後も、フィルタにインクが残っていると、記録ヘッドにかかる静圧によっては、フィルタ内のインクの表面張力等により、記録ヘッドへのインク供給開始時(循環開始時)にインクがフィルタを通液できず、フィルタでインクの通液が止まることがあった。このようにフィルタでインクの通液が止まると、記録ヘッドにインクが供給できず、画像記録を行うことができなくなり、問題である。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決し、静圧方式により記録ヘッド(インクジェットヘッド)にインクの供給を行うサブタンクを有するインクジェット記録装置であり、そのインクジェットヘッドとサブタンクとの間にフィルタを設けた場合でも、インクジェットヘッドへのインク供給開始時に、フィルタでインクの供給が止まることなく、インクジェットヘッドにインクを供給することができ、かつ、簡単な装置構成のインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、インクを吐出するためのインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置であって、前記インクを貯留するメインタンクと、前記メインタンクから供給されるインクを貯留し、前記インクジェットヘッドに静圧方式によりインクの供給を行う供給用サブタンクと、前記メインタンクから前記供給用サブタンクに接続される第1の供給配管を含み、前記メインタンク、前記供給用サブタンクおよび前記インクジェットヘッドとの間でインクを循環させるインク循環系と、前記インク循環系の前記供給用サブタンクと前記インクジェットヘッドとの間において、前記供給用サブタンクのインクの循環時における気液界面よりも前記インクジェットヘッド側に設置されたフィルタとを有し、前記フィルタの前記インクジェットヘッド側および気液界面側のいずれか一方の面に前記第1の供給配管の液流の少なくとも一部を直接的に吐出させることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0011】
ここで、前記インク循環系は、さらに、前記供給用サブタンクから前記インクジェットヘッドに接続される第2の供給配管を含み、前記フィルタは、前記供給用サブタンクと前記第2の供給配管との間に挿設されることが好ましい。
また、前記インクとして、少なくとも樹脂および色材を含有する微粒子を溶媒に分散してなるインクを用いることが好ましい。
【0012】
さらに、前記第1の供給配管から分岐し、前記フィルタの前記インクジェットヘッド側の面に前記フィルタに前記第1の供給配管から供給されるインクの液流を直接的に吐出させる分岐配管を有することが好ましい。
また、前記供給用サブタンクは、前記フィルタ近傍に開口された前記第1の供給配管との接続口を有し、前記接続口から吐出されるインクの液流を前記フィルタの前記気液界面側の面に直接的に吐出させることが好ましい。
【0013】
また、前記フィルタは、第1のフィルタであり、さらに、前記インク循環系の前記インクタンクと前記供給用サブタンクとの間に、第2のフィルタが設置されることが好ましい。
さらに、前記第1の供給配管を介して前記インクタンクから前記供給用サブタンクにインクを送液する送液手段を有し、前記送液手段は、前記第2のフィルタを通過したインクを前記供給用サブタンクに送液することが好ましい。
【0014】
また、前記供給用サブタンクは、前記インクジェットヘッドよりも高い位置に配置され、オーバーフローによって、インク液面の高さを一定に保ちつつ、前記インクジェットヘッドにインクを供給することが好ましい。
さらに、前記インクジェットヘッドからインクを回収する回収用サブタンクを有し、前記回収用サブタンクは、前記インクジェットヘッドよりも低い位置に配置され、オーバーフローによって、インク液面の高さを一定に保ちつつ、前記インクジェットヘッドからインクを回収することが好ましい。
ここで、前記サブタンクは、最下位置に前記供給配管との接続口を備え、インクの循環の停止時に、前記サブタンクに貯留されているインクは、前記供給配管を通じて前記インクタンクに回収されることが好ましい。
【0015】
さらに、前記インクジェットヘッドに装着され、前記吐出ヘッドのインク吐出部に蓋をするキャッピング手段と、前記サブタンクの少なくとも1つと前記キャッピング手段および前記インクジェットヘッドの少なくとも一方とを接続する連通配管とを有し、前記連通配管は、前記キャッピング手段および前記インクジェットヘッドのキャッピング面に形成された、前記少なくとも1つのインクタンクの空気を外気と連通させる連通口を備え、前記キャッピング手段を前記インクジェットヘッドに装着して、前記連通配管による外気への連通を断ち、前記キャッピング手段を前記インクジェットヘッドから離脱させて、前記連通配管による外気への連通を行うことが好ましい。
さらに、高濃度インクを前記メインタンクに補充する高濃度インク補充部と、希釈液を前記メインタンクに補充する希釈液補充部とを少なくとも備えるインク補充手段を有することが好ましい。
また、前記希釈液補充タンクは、さらに前記サブタンクおよび前記インクジェットヘッドに希釈液を循環させる循環系と接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、静圧方式により記録ヘッド(インクジェットヘッド)にインクの供給を行うサブタンクを有するインクジェット記録装置であり、そのインクジェットヘッドとサブタンクとの間にフィルタを設けた場合でも、インク供給開始時(インク循環開始時)に、フィルタでインクの通液が止まることを防止でき、フィルタを通過し、異物が除去されたインクを好適に吐出ヘッドに供給することができ、
インクジェットヘッドの吐出部が異物により目詰まりすることを防止できる。
さらに、本発明によれば、簡単な装置構成とすることができるので、装置コストも低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のインクジェット記録装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0018】
図1に、本発明のインクジェット記録装置の一例を概念的に示す。
図1に示したインクジェット記録装置(以下、記録装置10という)10は、色材および樹脂を含む帯電した微粒子(以下、色材粒子とする)を絶縁性のキャリア液(分散媒)に分散してなるインクQを用い、このインクに静電力を作用させることによりインク液滴を吐出する静電式のインクジェット記録装置である。記録装置10は、図1に示すように、基本的に、吐出ヘッド(インクジェットヘッド)12と、メインタンク16と、インク補充手段22と、インク循環ポンプ25と、異物除去手段26と、インク循環経路30と、洗浄手段53と、連通配管59と、キャッピンク部材60とを有する。
【0019】
記録装置10のインク循環経路30は、主に、メインタンク16のインクQを吐出ヘッド12に供給するインク供給経路と、吐出ヘッド12から吐出されなかったインクQを回収するインク回収経路とから構成される。インク供給経路は、供給サブタンク18、インク循環ポンプ25に接続された共通供給配管32、共通供給配管32と供給サブタンク18とを接続する第1供給配管34、共通供給配管32と回収サブタンク20とを接続する第3供給配管38、供給サブタンク18と吐出ヘッド12とを接続する第2供給配管36、および、供給サブタンク18内のオーバーフロー管18aからオーバーフローしたインクQを回収する第3回収配管44から主に構成される。また、インク回収経路は、回収サブタンク20、吐出ヘッド12と回収サブタンク20とを接続する第1回収配管40、回収サブタンク20内のオーバーフロー管20aからオーバーフローしたインクを回収する第2回収配管42、第2回収配管42および第3回収配管44によって回収したインクをメインタンク16に回収する共通回収配管46から主に構成される。供給配管や回収配管は、例えば、パイプや可撓性を有するチューブなどから構成することができる。
【0020】
なお、図1は、本発明の特徴的な部位を主に示しているが、本発明の記録装置10は、図に示したインク循環系以外にも、例えば、吐出ヘッド12を駆動してインク液滴を吐出させるドライバ、吐出ヘッド12と対面する所定の経路で、後述する吐出口列方向(行方向)と直交する方向に記録媒体Pを搬送(走査搬送)する走査搬送手段、吐出ヘッド12による画像記録に先立って記録媒体Pに所定のバイアス電圧を帯電させる帯電手段(あるいは吐出ヘッド12の制御電極に対する対向電極)、帯電した記録媒体Pを除電する除電手段、所定の経路で記録媒体Pを搬送する搬送手段、搬送される記録媒体Pを検出するセンサ、装置内に滞留するキャリア液等を排出する溶媒排出手段など、公知の静電式のインクジェット記録装置が有する各種の構成要素を有しているのは、もちろんのことである。
【0021】
また、本発明のインクジェット記録装置は、K(黒)のみなどの1色の画像記録を行うモノクロの記録装置であってもよく、また、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびKの4色のインクを用いて、記録媒体にフルカラー画像を描画する記録装置であってもよい。
また、吐出ヘッドは静電式のインクジェットヘッドに限定されず、サーマルインクジェットヘッド、ピエゾ素子やマイクロマシン等によってインク室の振動板振動することによりインクを吐出するタイプのインクジェットヘッド等、各種のインクジェットヘッドを好適に利用可能である。
【0022】
メインタンク16は、記録装置10のインク循環経路30を循環するインクを主に貯留するための密閉型のインクタンクである。
メインタンク16内部には、インク循環経路30にインクを循環させるインク循環ポンプ25と、異物除去手段26のフィルタ27とが配置されている。フィルタ27は、インク循環ポンプ25に接続されている。フィルタ27については後ほど詳述する。
【0023】
インク循環ポンプ25は、一端はフィルタ27と接続し、他端が共通供給配管32と接続している。インク循環ポンプ25は、フィルタ27を介してメインタンク16内のインクを吸引し、共通供給配管32に供給する。インク循環ポンプ25は、稼動時にインクを共通供給配管32に供給し、停止時は、共通供給配管32内のインクを保持することなく重力に応じて、メインタンク16内にインクが回収される非自給式ポンプである。ここで、非自給式ポンプとしては、渦巻きポンプやディフューザポンプ等の遠心ポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプが例示される。また、インク粒子の凝集固着を起こす原因となるポンプ内部の液接部分の回転摺動部が無い点から、インク循環ポンプ25は、渦巻きポンプを用いることが好ましい。
メインタンク16は、さらに、色材粒子の沈降/堆積を防止するための撹拌手段や、インク吐出の安定性を向上するための温度調節手段を有するのが好ましい。
【0024】
上述したように、図1に示した記録装置10は、供給サブタンク18、および回収サブタンク20、ならびに、これらを接続する各配管で構成されるインク循環経路30を有し、このインク循環経路30によってメインタンク16に貯留されているインクQを循環することにより、吐出ヘッド12にインクを供給する静圧式のインクジェット記録装置である。
【0025】
共通供給配管32は、一端がインク循環ポンプ25と接続され、他端は、第1供給配管34および第3供給配管38と接続されている。これにより、インク循環ポンプ25から共通供給配管32に供給されたインクは、第1供給配管34と第3供給配管38とに供給される。
【0026】
供給サブタンク18は、第1供給配管34および第2供給配管36が接続される密閉型のインクタンクであり、鉛直方向において吐出ヘッド12よりも上方に配置される。ここで、供給サブタンク18と第2供給配管36とは、フィルタ29、空隙39を介して接続されている。フィルタ29、空隙39については、後ほど詳細に説明する。また、供給サブタンク18に接続された第2供給配管36の他端は、吐出ヘッド12に接続されている。
この供給サブタンク18は、下面が開放する中空の四角柱の下に、上部(底面)が開放する中空の逆四角錐を設けた形状を有するものである。従って、供給サブタンク18の底面(床面)は、水平部分を有さず、全面が一点(最低部)に向かって傾斜している。この最低部には開口が形成され、開口部は第1供給配管34と接続している。
供給サブタンク18には、共通供給配管32および第1供給配管34を介してメインタンク16から供給されたインクQが貯留され、貯留されたインクQは第2供給配管36を介して吐出ヘッド12に供給される。
【0027】
また、供給サブタンク18内には、第3回収配管44に接続するオーバーフロー管18aが配置され、かつ、第2供給配管36はオーバーフロー管18aの上端よりも下方に接続される。図示例では、第2供給配管36との接続部を供給サブタンク18の底面に設けた構成としている。
【0028】
供給サブタンク18に貯留されたインクは、供給サブタンク18と吐出ヘッド12(又は回収サブタンク20)の高低差(落差)に応じた圧力で、重力落下によって第2供給配管36から吐出ヘッド12に供給される。
また、供給サブタンク18では、インク循環ポンプ25により供給されたインクがオーバーフロー管18aの高さを超えても、オーバーフロー管18aからオーバーフローして排出されるので、タンク内の液面の高さは一定に保たれる。その結果、供給サブタンク18から吐出ヘッド12へのインクQの供給量および供給圧(圧力ヘッド)は一定に保たれ、いわゆる静圧系でのインク供給が行われる。
なお、オーバーフロー管18aから排出されたインクQは、第3回収配管44および共通回収配管46、メインタンク16に戻され、再度、循環に供される。
【0029】
回収サブタンク20は、第1回収配管40、第2回収配管42および第3供給配管38が接続される密閉型のインクタンクであり、吐出ヘッド12よりも鉛直方向において下方に配置される。この回収サブタンク20は、下面が開放する中空の四角柱の下に、上部(底面)が開放する中空の逆四角錐を設けた形状を有するものである。従って、回収サブタンク20の底面(床面)は、水平部分を有さず、全面が一点(最低部)に向かって傾斜している。この最低部には開口が形成され、開口部は第3供給配管38と接続している。
前述のように、第1回収配管40の他端は吐出ヘッド12に、第2回収配管42の他端は共通回収配管46に、それぞれ接続される。
回収サブタンク20には、メインタンク16のインクが第3供給配管38を通じて供給され、吐出ヘッド12から吐出されなかったインクQが第1回収配管40を通じて貯留される。回収サブタンク20に貯留されたインクQは第2回収配管42および共通回収配管46を通じてメインタンク16に戻される。
【0030】
ここで、吐出ヘッド12から吐出されずに吐出ヘッド12から排出されたインクQは、吐出ヘッド12(又は供給サブタンク18)と回収サブタンク20との高低差(落差)に応じた圧力で、重力落下によって第1回収配管40から回収サブタンク20に供給される。回収サブタンク20において、オーバーフロー管20aを超えたインクQは、第2回収配管42を通ってメインタンク16に戻されて、再度、循環に供される。
また、回収サブタンク20のインク液面は、オーバーフロー管20aによって一定に保たれる。これにより、吐出ヘッド12からのインク流入にも、回収サブタンク20の液面の高さに応じた一定の圧量(圧力ヘッド)がかかる。すなわち、吐出ヘッド12に、一定の静圧をかけることができる。
【0031】
記録装置10においては、このように、供給サブタンク18に貯留されているインクの一定の圧力ヘッドで供給サブタンク18から吐出ヘッド12へインク供給するとともに、吐出ヘッド12から回収サブタンク20へのインク供給にも一定の圧力をかける。これにより、吐出ヘッド12の内部に形成されたインク流路に係る圧力、すなわち吐出ヘッド12へのインク供給および排出を完全に静圧にすることができ、後述する吐出ヘッド12の吐出口に形成されるインクQのメニスカス等を安定させることができる。
【0032】
本実施形態の記録装置10においては、供給サブタンク18および/または回収サブタンク20の高さを、適宜、設定することにより、吐出ヘッドの吐出口に形成されるインクQのメニスカスの高さを、高い自由度で選択することも可能である。従って、前記メニスカスの状態や高さをコントロール可能にするために、供給サブタンク18および/または回収サブタンク20の高さを調節するための高さ調節手段を有することが好ましい。
なお、高さ調節手段は、互いに螺合するネジ軸とナットによる方法、シリンダやアクチュエータを用いる方法、カムを用いる方法等、鉛直方向の高さ調整が可能な各種の方法が利用可能である。
【0033】
ここで、記録装置10の運転時(記録時)のインク循環系の動作について説明する。まず、インク循環ポンプ25によって、メインタンク16から共通供給配管32、第1供給配管34、第3供給配管38を通じて供給サブタンク18およびに回収サブタンク20にインクが送液され、供給サブタンク18および回収サブタンク20にインクが貯留される。供給サブタンク18に貯留されたインクQは、供給サブタンク18と吐出ヘッド12の落差のために、第2供給配管36を通じて吐出ヘッド12に流入される。吐出ヘッド12において吐出に寄与しなかったインクQは、吐出ヘッド12と回収サブタンク20との落差のために、第1回収配管40を通じて回収サブタンク20に供給される。回収サブタンク20をオーバーフローしたインクQは、第2回収配管42、共通回収配管46を通じてメインタンク16に戻される。こうして、メインタンク16、供給サブタンク18、吐出ヘッド12、回収サブタンク20をインクQが循環する。
なお、供給サブタンク18をオーバーフローしたインクQは、第3回収配管42、共通回収配管46を介してメインタンク16に戻される。
【0034】
ここで、第3供給配管38のインクはインク液滴の吐出に直接寄与しないため、第1供給配管34および第3供給配管38の流量は、第1供給配管34の方が多くなるようにすることが好ましい。これにより、効率よく吐出ヘッド12にインクを供給することができる。インク流量の調整方法としては、例えば、第2供給流路36のパイプ径よりも第1供給流路34のパイプ径を太くする、第2供給流路36の途中にオリフィスや調整バルブを配設して流量を調整する等の種々の方法を用いることができる。
【0035】
上述のように、供給サブタンク18および回収サブタンク20の最低部に開口部を設け、それぞれ第1供給配管34および第3供給配管38と接続させ、駆動時は、供給サブタンク18および回収サブタンク20に一定量のインクが供給される。このように一定量のインクを供給することで、本実施形態のように底面に開口がある形状としても液面を一定に保つことができる。
【0036】
記録装置10は記録が終了すると、インク循環ポンプ25を停止する。本実施形態では、供給サブタンク18および回収サブタンク20の最低部に開口部を設け、それぞれ第1供給配管34および第3供給配管38と接続されているので、ポンプから供給配管に作用していた力がなくなると、供給サブタンク18および回収サブタンク20内のインクは、重力に従って第1供給配管34および第3供給配管38を介して、メインタンク16に回収される。また、吐出ヘッド12、第3供給流路38および第1回収流路40内のインクも回収サブタンク20、第2供給流路36、共通供給流路32を介して、メインタンク16に回収される。
これにより、非記録時(ポンプ停止時)は、自動的に吐出ヘッド12、供給サブタンク18および回収サブタンク20およびそれらを接続する配管内のインクがメインタンク16に回収され、吐出ヘッド12および循環経路30内にインクが残留することを防止し、長時間使用しない場合でも、インクの固着等を防止することができる。
また、インクの固着を防止することで、循環経路内の汚れを低減させることができるので、循環経路内の洗浄の回数を減らすこと、または無くすことができる。
なお、共通供給配管32および共通回収配管46は、例えば樹脂等の撓む材質で作製された配管である場合でも、少なくとも非記録時に、重力に従ってインクがメインタンク16に回収されるように、例えば、鉛直、または略鉛直となるように設置することが好ましく、常に重力に従ってインクがメインタンク16に回収されるように設置することがより好ましい。これにより、例えばシリアルタイプのように吐出ヘッドとメインタンクが相対的に移動する構造であっても好適にメインタンクにインクを回収することができる。
【0037】
ここで、供給サブタンクおよび回収サブタンクは、底面が水平部を有さない形状とすることが好ましい。底面が水平部を有さない形状とすることで、ポンプ停止時にインクがタンク内に滞留することを防止することができる。
また、インク循環経路は、図1に示すように、水平部分を備えない、つまり傾斜を有して、または垂直に配置された配管のみで構成されることが好ましい。このようにインク循環経路を傾斜および垂直に配置された配管で構成することで、ポンプ停止時に、インク循環経路内のインクがメインタンク側に流れやすくなり、インク循環経路内にインクが残留することをより確実に防止することができる。
また、インク循環ポンプは、本実施形態のように非自給式ポンプであることが好ましい。非自給式ポンプとすることで、ポンプ停止時にインクを供給流路内に滞留させることなく、メインタンク内に回収させることができる。
【0038】
次に、異物除去手段26について説明する。
異物除去手段26は、インクに混入した異物を除去するものであり、フィルタ27と、フィルタ29とを有する。
【0039】
上述したように、フィルタ27は、インク循環ポンプ25に接続されメインタンク16内のインクに混入している少なくとも吐出ヘッド12およびインク循環経路30内に混入して異物となる可能性のある大きさの物質を除去するものである。ここで、フィルタ27には、メッシュフィルタを用いることが好ましい。このようなメッシュフィルタを用いることで、円滑なインクの循環を妨げることなく、少なくとも吐出ヘッド12およびインク循環経路30内に混入して異物となる可能性のある大きさの物質を好適に除去することができる。特に、目の大きさが30〜70μmのメッシュフィルタを用いることで、インクをより円滑に循環させることができ、異物をより好適に除去することができる。
【0040】
このようにフィルタ27を設けることで、インク循環経路30に、異物が除去されたインクを供給することができる。
ここで、フィルタ27は、メッシュフィルタに限定されず、例えばスポンジフィルタ、不織布等を用いることができる。フィルタ27にスポンジフィルタ、不織布等を用いる場合は、特に、連続気泡タイプのスポンジフィルタ、三次元不織布等の様に三次元タイプでメッシュに粗から密の勾配があるものは、目が詰まりにくく長持ちするので好ましい。
【0041】
フィルタ29は、供給サブタンク18と第2供給配管36との間に挿設される。ここで、フィルタ29と第2供給配管36とは、空隙39を介して接続されている。
フィルタ29は、上記フィルタ27と同様に、吐出ヘッド12(およびインク循環経路30)内に混入して異物となる可能性のある大きさの物質を除去するものである。ここで、フィルタ29は、金属、樹脂等の各種材料を用いることができ、特に、耐薬品性、耐久性、機械強度等の点で焼結金属メッシュを用いることが好ましい。
また、フィルタ29は、目の大きさを5〜200μmとすることが好ましく、20〜100μmとすることがより好ましく、30〜60μmとすることがさらに好ましい。フィルタ29の目の大きさを5μm以上とすることで、インクを円滑に循環させることができ、200μm以下とすることで、吐出ヘッド12(およびインク循環経路30)内に混入して異物となる可能性のある大きさの物質を好適に除去できすることができる。また、目の大きさを20〜100μmとすることでより高い効果を得ることができ、30〜60μmとすることで、さらに高い効果を得ることができる。
【0042】
フィルタ29も、メッシュフィルタに限定されず、例えばスポンジフィルタ、不織布等を用いることができる。フィルタ29にスポンジフィルタ、不織布等を用いる場合は、特に、連続気泡タイプのスポンジフィルタ、三次元不織布等の様に三次元タイプでメッシュに粗から密の勾配があるものは、目が詰まりにくく長持ちするので好ましい。
【0043】
このように、フィルタ29を供給サブタンク18の気液界面よりもインクジェットヘッド12側に設けることで、フィルタ27で除去することのできない、循環経路30内で発生する異物、具体的には、供給サブタンク18の気液界面や供給サブタンク18内で凝集固着物の発生、ゴミの混入等により発生した異物を除去することができる。
これにより、フィルタ29を通過して、供給サブタンク18の気液界面や供給サブタンク18内で発生する凝集固着物、供給サブタンク18に混入したゴミ等も除去されたインクを吐出ヘッド12に供給することができる。
【0044】
ここで、上述したように、静圧式の供給サブタンクとインクジェットヘッドとの間(供給サブタンクの気液界面よりも吐出ヘッド側)にフィルタを設けると、インクジェット記録装置を使用した後に、一旦インク循環を停止(ポンプを停止)し、吐出ヘッド、インク循環経路から、インクを抜き取り、メインタンクに戻した後も、フィルタにインクが残っていると、吐出ヘッドへのインク供給開始時(循環開始時)に、フィルタ内のインクの表面張力により、供給サブタンク内のインクがフィルタを通液できず、吐出ヘッドにインクを供給することができなくなるということが起きることがあった。
【0045】
そこで、本実施形態では吐出ヘッド12へのインク供給開始時(インク循環開始時)に、フィルタ29内のインクの表面張力等により、供給サブタンク内のインクがフィルタを通液できなくなることを防止するために分岐配管37を配置する。
【0046】
分岐配管37は、共通供給配管32から分岐した分岐管であり、先端が空隙39に接続されている。分岐配管37の空隙39との接続部の開口面は、フィルタ29の吐出ヘッド12側の面と対向して配置されている。
【0047】
分岐配管37には、記録装置10のインク循環が開始すると、インクタンク16、共通供給配管32を通じて、インクが供給される。分岐配管37に供給されたインクは、空隙39に吐出される。ここで、分岐配管37の空隙39に接続されている開口部は、上述したように、フィルタ29方向に形成されている。このため、インクは、共通供給配管32から分岐配管37を通過し、フィルタ29の吐出ヘッド12側の表面に直接的に吐出される。これにより、フィルタ29の吐出ヘッド12側の表面がインクに濡れた状態となる。つまり、メインタンク16から供給サブタンク18に供給されるインクの液流の一部が、所定速度以上の流速でフィルタ29に当たり、フィルタ29の吐出ヘッド12側の表面がインクに濡れた状態となる。ここで、本実施形態のように、フィルタ29の吐出ヘッド12側の表面にインクを直接的に吐出させる場合は、フィルタ29の表面が濡れるようにフィルタ29に当たる所定流速を有する液流を、フィルタ29に直接的に吐出させればよい。
【0048】
このように、吐出ヘッド12側の表面をインクで濡らすことで、フィルタ29の吐出ヘッド12側の表面で表面張力が発生することなく、フィルタ29にインクを通液させることができる。
フィルタ29が通液されることで、供給サブタンク18に供給されるインクは、フィルタ29、空隙39および第2供給配管36を通過し、吐出ヘッド12に供給される。
【0049】
以上より、分岐配管を設け、共通供給配管から供給されたインクを、フィルタの吐出ヘッド側の面に直接的に吐出することで、インクジェット記録装置を使用した後に、インクの循環を一旦使用を停止し、吐出ヘッド、インク循環経路から、インクを抜き取り、メインタンクに戻した後に、再びインクを循環させる時に、フィルタにインクが残っている場合でも、供給サブタンク内のインクがフィルタを通液することができ、つまり、フィルタでインクの通液が止まることを防止でき、好適に吐出ヘッドにインクを供給することができる。
これにより、フィルタにより異物を好適に除去されたインクを、吐出ヘッドに一定圧力で供給でき、インク循環開始時も、吐出ヘッドにインクを好適に供給することができる。
【0050】
ここで、分岐配管37を配置する場合も、フィルタ29および空隙39を供給サブタンク18の気液界面、つまりオーバーフロー管18aの開口部よりも低く配置することで、インクを循環させて所定時間が経過した後は、フィルタ29、空隙39および分岐配管37内は、インクが満たされた状態となる。また、供給サブタンク18に過剰に供給されたインクはオーバーフロー管18aから回収されるため、分岐配管37、空隙39を有する場合でも、吐出ヘッド12に供給するインクの圧力を、一定に保持することができる。
また、分岐配管37から供給されるインクは、フィルタ27により異物が除去され、その後、異物が混入することなく空隙39に供給されるため、フィルタ29を通過することなく吐出ヘッド12に供給される場合も異物の混入を防止することができる。
【0051】
なお、フィルタ29は、吐出ヘッド12側の表面の一部をインクに濡れた状態とすることで、通液したインクにより吐出ヘッド12側の表面のインクに濡れた部分が拡大していき、最終的にフィルタ29の吐出ヘッド12側の全表面がインクに濡れた状態となる。したがって、本発明は、フィルタ29の少なくとも一部をインクが通液できる状態とすることで、フィルタ29全面をインクが通液できる状態にできる。
【0052】
また、本発明のインクジェット記録装置は、少なくともインクジェット記録装置を使用した後に、一旦インク循環を停止(ポンプを停止)し、吐出ヘッド、インク循環経路から、インクを抜き取り、メインタンクに戻した後に、再び吐出ヘッドへインクを供給する時(循環再開時)に、フィルタにインクが残っている場合に、フィルタが通液した状態となるまで、フィルタの吐出ヘッド側の面にインクを直接的に吐出させればよい。例えば、分岐配管に制御弁、制御弁を制御する制御部を設け、制御部により、循環再開時から所定時間のみ制御弁を開き、分岐配管にインクを供給し、分岐配管からフィルタ表面にインクを直接的に吐出させる。その後、フィルタが通液した状態となり、所定時間経過した後は、制御弁を閉じ、分岐配管からのインクの供給を停止させるように制御してもよい。
【0053】
ここで、図1に示す実施形態では、共通供給配管から分岐管を設け、フィルタの吐出ヘッド側の面から共通供給配管から供給されるインクをフィルタに直接的に吐出することで、フィルタを通液させたが、これに限定されず、例えば、共通供給配管から供給されるインクを気液界面側の面からフィルタに直接的に吐出しても、インクジェット記録装置を使用した後に、一旦インク循環を停止(ポンプを停止)し、吐出ヘッド、インク循環経路から、インクを抜き取り、メインタンクに戻した後に、再び吐出ヘッドへのインク供給開始時(循環開始時)に、フィルタにインクが残っている場合に、インクがフィルタを通液できなくなることを防止することができる。
【0054】
図2に、本発明のインクジェット記録装置の他の一例として、共通供給配管から供給されるインクをフィルタの気液界面側から直接的に吐出するインクジェット記録装置を示す。
ここで、図2に示したインクジェット記録装置100は、第1供給配管、供給サブタンクの形状、および、分岐配管を備えていないことを除いて、図1に示したインクジェット記録装置10と、同じ構成、形状であるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略し、異なる点のみを説明する。
【0055】
図2に示すインクジェット記録装置100の供給サブタンク102は、第1供給配管104および第2供給配管36が接続される密閉型のインクタンクであり、鉛直方向において吐出ヘッド12よりも上方に配置される。ここで、本実施形態の供給サブタンク102は、第1供給配管104と接続される開口部がフィルタ39近傍に形成される。また、この開口部が供給サブタンク102の最下部となるように、供給サブタンク102の底面は、全面が開口部に向かって傾斜している。また、供給サブタンク102には、図1の供給サブタンク18と同様に、オーバーフロー管102aが配置されている。
また、供給サブタンク102と第2供給配管36との間には、フィルタ29が挿設され、また、フィルタ29と第2供給配管36とは、空隙39を介して接続されている。
【0056】
第1供給配管104は、一端が共通供給配管32と接続され、他端が供給サブタンク102に接続されている。ここで、本実施例の第1供給配管104は、供給サブタンク102側の一部がフィルタ29側に所定角度傾斜して、供給サブタンク102と接続されている。つまり、第1供給配管104および供給サブタンク102は、第1供給配管104から供給サブタンク102に供給されるインクの流れ方向が、フィルタ29表面と交差するよう配置されている。
【0057】
このように、供給サブタンク102のフィルタ29の近傍に第1供給配管104との接続口を設け、第1供給配管104から供給タンク102に供給されるインクの流れ方向が、フィルタ29表面と交差するように配置することで、インクタンク16から、共通供給配管32、第1供給配管104を通過して供給サブタンク102に供給されるインクは、フィルタ29に直接的に吐出される。つまり、メインタンク16から供給サブタンク102に供給されるインクの液流を所定速度以上の流速でフィルタ29に当てる。ここで、フィルタ29当てるインクの液流は、フィルタ29の吐出ヘッド12側の表面での表面張力にうちかつような流速を有する液流であればよい。
【0058】
このように、フィルタ29に向けてインクを直接的に吐出させることで、フィルタ29表面のインクの表面張力を崩すことができ、フィルタ29を通液することができる。これにより、供給サブタンク102に供給されるインクは、フィルタ29、空隙39および第2供給配管36を通過し、吐出ヘッド12に供給される。
【0059】
また、フィルタ29および空隙39を供給サブタンク102の気液界面よりも低く配置することで、フィルタ29および空隙39内は、インクが満たされた状態となり、また、供給サブタンク102に過剰に供給されたインクはオーバーフロー管18aから回収されるため、吐出ヘッド12に供給するインクの圧力を、一定に保持することができる。
これにより、供給サブタンク102に供給されたインクは、フィルタ29、空隙39および第2供給配管36を通過し、一定の圧力で吐出ヘッド12に供給することができる。
【0060】
図1および図2に示すように、供給サブタンクの気液界面よりも吐出ヘッド側にフィルタを設けた場合でも、フィルタの吐出ヘッド側および気液界面側のいずれか一方の面から共通供給配管から供給されるインクをフィルタに直接的に吐出(直射)させることで、フィルタの吐出ヘッド側の表面の表面張力のバランスを崩すことができ、インク循環開始時もフィルタでインクの循環が止まることなく、好適にインクを循環させることができ、異物が除去されたインクを吐出ヘッドに供給することができる。
【0061】
ここで、供給サブタンク18(102)、空隙39の形状は、吐出ヘッド12に静圧式でインクを供給することができれば、その限定されず、種々の形状とすることができる。
【0062】
また、上述したように、ポンプ停止時に、自動的にインクタンクにインクを回収することができるため、図1または図2に示したように、供給サブタンクを、オーバーフロー管を備え、最下部に第1供給配管との接続口、タンク側面に第3供給口との接続口が形成された構造とすることが好ましいが、本発明はこれに限定されず、種々の静圧式の循環機構が用いることができる。
【0063】
記録装置10は、好ましい形態として、インク補充手段22、洗浄手段53、連通配管59およびキャッピング部材60を備えている。
インク補充手段22は、消費したインクQをメインタンク16に補充するものであり、基本的に高濃度補充液タンク23と、希釈補充液タンク24と補充用配管48、50、52と、補充制御用バルブ48a、50aとを有する。
【0064】
高濃度補充液タンク23は、コンクインク(高濃度インク=色材粒子の量が多いインク)を充填する密閉型のタンクであり、補充用配管48および52によってメインタンク16と接続される。
他方、希釈補充液タンク24は、インクQを補充する際のインクの希釈液として用いるキャリア液を充填する密閉型のタンクであり、補充用配管50および52によってメインタンク16と接続される。
【0065】
ここで、補充用配管48および50には、それぞれ補充制御用バルブ48aおよび50aが配置され、この補充制御用バルブ48aおよび50aを必要に応じて開閉させることで、所定量のコンクインク、希釈液をメインタンク16に補充する。
このようにコンクインク、希釈液をメインタンクに補充することで、メインタンクを所定濃度かつ所定量とすることができる。
なお、本発明においては、コンクインクの濃度には、特に限定はなく、また、補充用の所定濃度のインクとして前記インクQの目的濃度と同濃度のインクを用いてもよく、さらに、互いに濃度の異なる複数のコンクインクを用いて補充を行ってもよい。
【0066】
ここで、記録装置10は、共通供給配管32と供給サブタンク18との間の第1供給配管34の途中には、濃度センサ28が設けられている。濃度センサ28は、インク循環経路30を循環するインクの濃度を検出するために設けられている。濃度センサ28は、常にインク濃度を監視し、インク濃度が高く又は低くなった場合に、インク補充手段からメインタンク16にインクを補充、つまり、高濃度補充液タンク23や希釈補充液タンク24から、コンクインクや希釈液をメインタンク16に供給してインク濃度を最適にすることにより、常に最高濃度で記録媒体に画像を記録することが可能となる。
なお、濃度センサは、第3供給配管38に配置してもよい。上述のように第3供給配管38に供給されるインクは、第1供給配管34を流れるインクと同じインクなので、吐出ヘッド14に供給されるインクの濃度を正確に測定することができる。さらに、第3供給配管38に供給されるインクは回収サブタンク20、第2回収配管を通過し、メインタンク16に回収されるので、インク濃度の測定によるインクの循環への影響をより低減させることができる。
【0067】
記録装置10において、インクQの補充タイミングには、特に限定はない。例えば、所定枚数の描画毎等に自動的に行ってもよく、メインタンク16内のインクQの量を検出して自動的に行ってもよく、描画した画像を観察したオペレータ等の判断による入力指示あるいは仕上がりのインク濃度検出装置の結果に応じて行ってもよく、複数のタイミング決定手段を有し、選択的に行ってもよい。
また、コンクインクおよび希釈液の補充量の決定方法にも、特に限定はない。例えば、インク予想蒸発量に加え、画像データ等から知見した総インク吐出回数、循環しているインクの濃度測定結果、メインタンク16内のインク量などを用いて、インクQの消費量を予測し、メインタンク16内のインクQが所定濃度で所定量となるように、インクの補充量を決定すればよい。
【0068】
洗浄手段53は、洗浄液供給配管54と、洗浄液回収配管56と、三方制御弁54a、56aと、ポンプ58とを有する。
洗浄液供給配管54は、一端が希釈補充液タンク24に接続され、他端が共通供給配管32に設けられた三方制御弁54aに接続されている。また、洗浄液供給配管54には、ポンプ58が設けられている。他方、洗浄液回収配管56は、一端が希釈補充液タンク24に接続され、他端は共通回収配管46に設けられた三方制御弁56aに接続している。
【0069】
ここで、記録装置10の洗浄時の動作について説明する。
まず、ポンプ25を停止させ、インク循環経路30(供給サブタンク18、回収サブタンク20およびそれらを接続する配管)内のインクをメインタンク16に回収した後に、三方制御弁54aをメインタンク16側から洗浄液供給配管54側に切り替え、三方制御弁56aもメインタンク16側から洗浄液回収配管56側に切り替える。
その後、ポンプ58により希釈補充液タンク24内の希釈液を洗浄液供給配管54から供給サブタンク18、吐出ヘッド12、回収サブタンク20、それらを接続する配管を循環させ、三方弁56aを通じて洗浄液回収配管56から回収することで、吐出ヘッド12、インク循環経路30を洗浄することができる。
このように経路内の洗浄を行うことで、より確実にメインタンク以外でのインクの残留を防止することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、インク循環経路内のインクをメインタンクに回収した後に、洗浄を行うため、洗浄に使用した希釈液の汚れが少なくて済み、また、インク濃度もあまり変化しない。このため、洗浄に使用した希釈液も廃液とすることなく、希釈液として使用することができる。これにより、洗浄液を効率よく使用することができ、さらに、廃液タンク、洗浄液タンクを設ける必要がなくなるので、装置構成をより簡単にすることができる。
ここで、上記の効果から、洗浄液に希釈液を用いることで洗浄を行うことが好ましいが、本発明はこれに限定されず、例えば、洗浄液を貯留したタンクを設置し、洗浄液タンクの洗浄液を公知の手段により循環させて、循環経路内を洗浄してもよい。
【0071】
キャッピング部材60は、インクの循環停止時や長時間描画を行わない間に、吐出ヘッド12の吐出口側に装着されて、吐出ヘッド12の全ての吐出口を外気との連通を断った状態にし、吐出口に残存するインクQの蒸発による乾燥固着を防止するものである。図1に示すように、キャッピング部材60の吐出ヘッド12側の面には連通口14aが形成されている。この連通口14aは、後述する連通配管59に接続されている。
このようなキャッピング部材60は、静電式のインクジェット記録装置に限らず、各種のインクジェット記録装置で通常に使用されているものが各種利用可能である。
なお、キャッピング部材60の構成については、後ほど詳述する。
【0072】
また、本実施形態の吐出ヘッド12には、吐出口が形成されている面(後述するキャッピング部材側の面)に連通口12aが形成されている。この連通口12aは、吐出ヘッド12の内部を貫通して配置された後述する連通配管59に接続されている。
ここで、連通口12aは、吐出口が形成されている部分よりも重力方向上方に設けられることが好ましい。これにより、吐出口よりあふれ出したインクで、連通口12aが閉塞されることが防止される。また、連通口12aを吐出口が形成されている面よりも突出した形状とすることも好ましく、さらに、連通口12aの周りに撥インク処理をすることも好ましい。このように構成することで、吐出口よりあふれ出したインクで、連通口12aが閉塞されることをより確実に防止することができる。
【0073】
ここで、記録装置10のインクタンク16、補充サブタンク18、回収サブタンク20、高濃度補充液タンク23、希釈補充液タンク24には、それぞれ開口16a、18b(図5では102b)、20b、23a、24aが設けられている。
連通配管59は、この開口16a、18b、20b、23a、24aと接続しており、連通配管59により、各開口は互いに連通している。連通配管59は、上記各タンクの空気部分を互いに通気させ、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充手段22(高濃度補充液タンク23、希釈補充液タンク24)の空気部分を同一の雰囲気にする。
【0074】
さらに、連通配管59は、吐出ヘッド12に形成された連通口12aと、キャッピング部材60に形成された連通口60aとに接続されている。ここで、吐出ヘッド12およびキャッピング部材60は、外気環境下に配置されているので、連通配管59が、連通口12aおよび60aを介して外気と連通される。これにより、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充手段22の内部は外気と同じ圧力となる。
【0075】
ここで、上述したように、キャッピング部材60は、休止時に、吐出ヘッド12に装着され、これにより吐出口の外気との連通が断たれる。また、キャッピング部材60が吐出ヘッド12に装着されると、キャッピング部材60および吐出ヘッド12に形成された連通口12aおよび60aが塞がれて連通口12aおよび60aの外気との連通が断たれる。これにより、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充手段22の内部も、外気との連通が断たれる。
【0076】
このように、本実施形態のインクジェット記録装置は、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充手段22の外気との通気部となる連通口12a、60aを、キャッピング部材60が吐出ヘッド12に装着されたときに外気との連通を断たれる部分(キャッピング面)に配置している。これにより、キャッピング部材60が吐出ヘッド12から離脱されているとき、すなわち、稼動時は、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充手段22が外気と連通される。一方、キャッピング部材60が吐出ヘッド12に装着されているとき、すなわち、休止時は、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充手段22の外気との連通が断たれる。
【0077】
キャッピング部材60が吐出ヘッド12から離脱されている時は、各インクタンクの液面に常に外気と同じ圧力がかかるため、供給サブタンク18から吐出ヘッド12に安定してインクを供給することが可能となり、吐出ヘッド12から安定したインクの吐出が可能となる。また、キャッピング部材60が吐出ヘッド12に装着されている時は、各インクタンクの外気との連通が断たれるので、インクの蒸発が抑制され、インクの蒸発に起因する、インクの乾燥固着やインク濃度の上昇を防止することができる。これにより、長時間記録を行わない場合でも、メンテナンスを不要もしくは軽微なものにでき、さらに、安定したインクの濃度管理を行うことができる。
【0078】
さらに、キャッピング部材60および吐出ヘッド12にそれぞれ連通口12aおよび60aを設けることにより、吐出ヘッド12へのキャッピング部材60の着脱動作だけで、インクタンクが外気と連通した状態と、外気との連通が断たれた状態に切り替えることができる。このように、特別な装置を設置することなく、簡易な装置構成で、インクが貯留されるタンク内の雰囲気を制御することができる。
さらに、キャッピング部材60が吐出ヘッド12に装着されている間は、吐出ヘッド12とキャッピング部材60との間に形成される空間の雰囲気もインクタンクと同じ、インクの蒸気に満たされた雰囲気になるので、吐出ヘッド12の吐出口の乾燥をより防止することができる。
【0079】
本実施形態では、連通配管59を、メインタンク16、供給サブタンク18、回収サブタンク20およびインク補充手段22と接続させたが、本発明はこれに限定されず、それらのインクタンクのうち少なくとも1つのインクタンクと連通配管59が接続されていればよい。このように、連通配管および少なくとも1つのインクタンク(で形成されるエア循環系)を、キャッピング時に外気から封止された連通空間に形成することで、安定した記録を行うことができる。
ここで、供給サブタンク18を含む複数のインクタンクと連通配管59が接続されていることが好ましい。供給サブタンク18と連通配管59を接続させることで、吐出ヘッド12に安定してインクが供給され、より安定した記録を行うことができる。
【0080】
次に、キャッピング部材60の構造について図3および図4を参照して詳細に説明する。ここで、図3は、図1に示すインクジェット記録装置のキャッピング部材の概略構成を示す斜視図であり、図4(A)は、図3に示すキャッピング部材の正面図、図4(B)は、図4(A)のIVB−IVB線における断面図、図4(C)は、図4(A)のIVC−IVC線における断面図である。
キャッピング部材60は、上述のように、インクの循環停止時や長時間描画を行わない間に、吐出ヘッド12の全ての吐出口を外気との連通を断った状態にすることにより、吐出口に残存するインクQの蒸発による乾燥固着を防止するものである。
キャッピング部材60は、連通口60aを有し吐出ヘッド12と接触するキャッピング用ゴム部材64と、キャッピング用ゴム部材64を支持するゴム保持部材62と、吐出ヘッド12への押しつけ圧を調整する押しつけ圧調整ばね66と、ケース61と、連通口60aと連通配管59を接続する連通チューブ68とを有する。
【0081】
キャッピング用ゴム部材64は、吐出ヘッド12の吐出口配設面よりも広い矩形面を有する蓋部材であり、吐出ヘッド12に対向する側の矩形面の外周部が、吐出ヘッド12側に凸の構造を有する。キャッピング部材60を吐出ヘッド12に装着したときには、キャッピング用ゴム部材64の外周部のみが、吐出ヘッドの吐出口配設面と接触する。これにより、吐出ヘッド12の吐出口配設面に接触して、吐出口と外気との連通を断つことができる。このように、吐出ヘッド12の吐出口と直接接触することなく、吐出口を外気との連通を断つことができる構造にすることで、吐出口が複雑な形状の場合や、インクガイドを備える場合の吐出ヘッドも本発明のインクジェット記録装置に用いることができる。
キャッピング用ゴム部材64は、吐出口配設面との密着性と耐インク性を有することが好ましく、例えば、柔軟性を有するゴムあるいは発泡部材で形成され、具体的には、硬度60度以下のNMRゴム、フッ素ゴム等が例示される。
また、キャッピング部材60の表面には、連通口60aが形成されている。図示例では、連通口を2箇所に形成したが連通口の数は特に限定されず、いくつ設けてもよい。
【0082】
ゴム保持部材62は、キャッピング用ゴム部材64の吐出ヘッド12との接触面と反対側の面に設けられ、キャッピング用ゴム部材64を保持する。ゴム保持部材62は、剛性と耐インク性のある材料で形成され、具体的には、スレンレス、アルミ等の金属か、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、硬質塩化ビニル等の硬質プラスチックが例示される。
【0083】
押しつけ圧調整ばね66は、ゴム保持部材62とケース61との間に配置され、キャッピング用ゴム部材64の吐出ヘッド12への押しつけ圧を調整する。ここで、押しつけ圧調整ばね66は、図4に示すように、所定間隔毎に複数設け、吐出ヘッド12への押しつけ圧が一定となるようにすることが好ましい。
【0084】
ケース61は、ゴム保持部材62を図4(C)矢印方向に移動可能に収容し保持するためのケースである。ケース61内に収容され、キャッピング用ゴム部材64を保持したゴム保持部材62は、押し付け圧調整ばね56により適切な圧力で吐出ヘッド12の吐出口配設面に押しつける。また、複数の押しつけ圧調整ばね66によりゴム保持部材62を保持しているため、キャッピング用ゴム部材64と吐出ヘッド12の吐出口配置面が斜めに配置されていても、ケース61を吐出ヘッド12の吐出口配置面に向けて前進させて、キャッピング用ゴム部材64を吐出ヘッド12の吐出口配置面に接触させたときに、キャッピング用ゴム部材64が傾いて吐出ヘッド12の吐出口配置面と平行な状態で接触する。これにより、吐出ヘッド12の吐出口配置面がキャッピング用ゴム部材64でしっかりと封止される。ケース61全体は、例えば、モータ機構や圧力機構により吐出ヘッド12に向かって移動させられる構成であればよく、キャッピングを行う際には、吐出ヘッド12の吐出口配設面に当接するように移動させられる。
ここで、ケース61は、剛性と耐インク性のある材料で形成されることが好ましく、具体的には、スレンレス、アルミ等の金属か、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、硬質塩化ビニル等の硬質プラスチックが好ましい。
【0085】
連通チューブ68は、キャッピング用ゴム部材64、ゴム保持部材62およびケース61とを貫通して設けられている。連通チューブ68のキャッピング用ゴム部材64側の端部は連通口60aを形成し、ケース61側の端部は、図示しない連通配管59と接続される。
【0086】
ここで、本発明において、キャッピング部材60の吐出ヘッド12への装着および離脱の制御はどのように行ってもよく、例えば、吐出ヘッド12による記録時(稼動時)以外は、キャッピング部材60を装着させるようにしてもよく、または、所定時間記録が行われなかった場合にキャッピング部材を装着させるようにしてもよい。
【0087】
ここで、本発明においては、キャッピング部材60は、前記キャップ移動手段が非稼動の状態(電源遮断状態)において、本実施形態のように、スプリングや弾性部材等の動力が不要な付勢部材によってキャップ部材を押圧することにより、吐出口を外気との連通が断たれた状態とする構成とするのが好ましい。
上記構成を有することにより、吐出口の外気との連通が断たれた状態中に停電が発生しても、吐出口を外気との連通が断たれた状態に保つことができ、さらにインク循環の停止時における吐出ヘッドおよび各インクタンクの外気との連通が断たれた状態を確実に保つことができる。
【0088】
図5(A)および(B)は、記録装置10における吐出ヘッド12の具体的な構造を説明する模式図であり、図5(A)は、吐出ヘッド12の一部を示す模式的断面図、図5(B)は、図5(A)のVB−VB線における模式的断面図である。記録装置10においては、負の高電圧に帯電(バイアス電圧を帯電)された記録媒体Pを吐出部の配列方向(後述する行方向)と直交する方向に走査搬送しつつ、記録画像すなわち供給された画像データに応じて吐出ヘッド12の各吐出部を変調駆動して吐出をon/offすることにより、インク液滴Rをオンデマンドで吐出して、記録媒体Pに目的とする画像を記録する。
なお、吐出ヘッド12は、複数の吐出口を2次元的に備えるマルチチャンネルヘッドであるが、ここでは、その構成を明確に示すために、2つの吐出部のみを示してある。
【0089】
吐出ヘッド12は、ヘッド基板72と、インクガイド74と、吐出口基板76と、吐出電極を構成する吐出電極78と、浮遊導電板86とを備えている。吐出ヘッド12は、インク滴Rの吐出(飛翔)ポイントとなるインクガイド74の先端が、記録媒体Pと対向するように配置されている。
【0090】
ヘッド基板72および吐出口基板76は、吐出ヘッド12の全吐出口に共通な平板基板であり、絶縁性材料から構成されている。ヘッド基板72および吐出口基板76は、所定の間隔をあけて配置され、その間にインク流路88が形成されている。インク流路88内のインクQは、吐出電極78に印加される電圧と同極性に帯電した色材粒子を含み、記録時には、前記インク循環系によって、所定方向、図5(A)に示す例ではインク流路88内を右側から左側(図中矢印a方向)へ向かって所定の速度(例えば、200mm/sのインク流)で循環される。以下では、インク中の色材粒子が正帯電している場合を例にとって説明する。
【0091】
吐出口基板76には、インクQの吐出口となる吐出口84が穿孔されており、この吐出口84は、所定の間隔で2次元的に複数配置されている。また、吐出口84の中央部には、インクQの吐出(飛翔)ポイントを定めるためのインクガイド74が配置されている。
【0092】
インクガイド74は、突状先端部分74aを持つ所定厚みの絶縁性樹脂製平板からなり、各吐出口84に対応する位置に、ヘッド基板72の上に配置されている。インクガイド74は、同じ列(図5(A)における左右方向、図5(B)における紙面垂直方向)に配列される複数のインクガイド74に共通の基部64bを有しており、この基部64bがヘッド基板72上に、浮遊導電板86を挟んで固定されている。
【0093】
また、インクガイド74の先端部分74aは、吐出ヘッド12の記録媒体P側の最表面から突出するように配置されている。先端部分74aの形状および構成は、インクQ(インク滴R)の吐出ポイントを安定させ、かつ、先端部分74aにおいて、インクQを十分に供給し、インクQ中の色材粒子を好ましい状態に濃縮させることができるように設定される。例えば、先端部分74aを吐出方向に向けて次第に細くした形状のものや、インク案内溝となる切り欠きを図中上下方向に形成したもの、先端部分74aの誘電率を実質的に大きくするために、先端部分74aに金属を蒸着したものなどが好適である。
【0094】
吐出口基板76の記録媒体P側の面(図中、上面)には、各吐出口84を囲むように、吐出電極78が配置されている。また、吐出口基板76の記録媒体P側には、吐出電極78の上方(上面)を覆う絶縁層80aと、吐出電極78の上方に絶縁層80aを介して配置されるシート状のガード電極82と、ガード電極82の上面を覆う絶縁層80bとが設けられている。
【0095】
吐出電極78は、吐出口基板76に開孔された吐出口84の周囲を囲むように、吐出口基板76の図中上側、すなわち記録媒体P側の表面に、吐出部毎にリング状に、すなわち円形電極として配置されている。なお、吐出電極78の電極形状は、円形電極に限定されず、略円形であっても、分割円形電極であっても、平行電極または略平行電極であっても矩形電極であっても良い。
【0096】
画像の記録時には、インクガイド74と対向する位置には、インク中の帯電した色材粒子と極性が反対となる電圧に帯電された記録媒体Pが、図示しない搬送手段に保持されて一定速度で搬送される。記録媒体Pは負の高電圧(例えば、−1500V)に帯電されており、吐出電極78との間に、インクQを吐出させない程度の所定の電界が形成されている。
記録媒体Pが所定の位置に搬送されると、吐出ヘッド12には、記録媒体Pの搬送タイミングおよび画像データに応じて駆動信号が供給され、各吐出ヘッド12は、これに応じて、吐出電極78を変調駆動し、インク吐出を画像データに応じて変調してon/offする。
【0097】
吐出電極78が吐出オフ状態(吐出待機状態)のときは、パルス電圧は0Vまたは低電圧とされる。この状態では、吐出部の電界強度はバイアス電圧(または、バイアス電圧にオフ状態のパルス電圧が重畳された電圧)による電界強度となっており、これはインクQの吐出に必要な強度よりも低く設定されているため、インクQの吐出は行われない。この吐出待機状態では、インクQには、バイアス電圧とインクQの色材粒子(荷電粒子)の荷電とのクーロン引力、色材粒子間のクーロン反発力、キャリア液の粘性、表面張力、誘電分極力等が作用し、これらが連成して、色材粒子やキャリア液が移動し、吐出口84から若干盛り上がったメニスカス状となってバランスが取れている。
また、このクーロン引力等によって、色材粒子は、いわゆる電気泳動でバイアス電圧が帯電された記録媒体Pに向かって移動する。すなわち、吐出口84のメニスカスにおいては、インクQが濃縮された状態となっている。
【0098】
吐出電極78が吐出オン状態のときは、パルス電圧が印加され、バイアス電圧に高電圧のパルス電圧(例えば、400〜600V)が重畳されて、吐出部の電界強度はインクQが吐出するのに十分な強度となり、先の連成に、さらにこの駆動電圧の重畳によって連成された運動が起こり、静電力によって色材粒子およびキャリア液がバイアス電圧(対向電極)側すなわち記録媒体P側に引っ張られ、メニスカスが成長して、その上部から略円錐状のインク液柱いわゆるテーラーコーンが形成される。また、先と同様に、色材粒子は電気泳動によってメニスカスに移動しており、メニスカスのインクQは濃縮され、色材粒子を多数有する、ほぼ均一な高濃度状態となっている。
駆動電圧の印加開始後、さらに有限な時間が経過すると、色材粒子の移動等により、電界強度の高いメニスカスの先端部分で、主に色材粒子に作用する力(クーロン力等)とキャリア液の表面張力とのバランスが崩れ、メニスカスが急激に伸びて曳糸と呼ばれる直径数〜数十μm程度の細長いインク液柱が形成される。
【0099】
さらに有限な時間が経過すると曳糸が成長し、この曳糸の成長、レイリー/ウエーバー不安定性によって発生する振動、メニスカス内における色材粒子の分布不均一、メニスカスにかかる静電界の分布不均一等の相互作用によって曳糸が分断され、インク液滴Rとなって吐出/飛翔し、かつ、バイアス電圧にも引っ張られて、記録媒体Pに着弾する。
曳糸の成長および分断は、さらにはメニスカス(曳糸)への色材粒子の移動は、駆動電圧の印加中は連続して発生する。また、駆動電圧の印加を終了した時点で、バイアス電圧のみが印加されたメニスカスの状態に戻る。
記録媒体P上におけるインクの1ドットは、通常、この1回(1パルス)の駆動電圧の印加によるものであり、従って、1ドットは、この1回の駆動電圧の印加によって曳糸から分断して吐出した複数のインク液滴Rによって形成される。
このインク滴Rのサイズは極めて小さいため、解像度の高い、高画質な画像記録を行うことができる。
【0100】
このように、画像データに応じて、記録媒体Pの全幅に亘って配置された各吐出部の吐出電極78のオン、オフが制御され、所定速度で搬送される記録媒体Pに対して所定のタイミングでインク吐出が行われることにより、記録媒体Pに2次元画像が記録される。
【0101】
ガード電極82は、隣接する吐出部の吐出電極78の間に配置され、隣接する吐出部のインクガイド74の間に生じる電界干渉を抑制するためのものである。ガード電極82は、吐出ヘッド12の全吐出部に共通な金属板などのシート状の電極であり、2次元的に配列されている各吐出口84の周囲に形成された吐出電極78に相当する部分が穿孔されている。ガード電極82を設けることによって、吐出口84を高密度に配置した場合にも、隣接する吐出口84の電界の影響を最小限にし、ドットサイズおよびドットの描画位置を常に安定して保つことができる。
【0102】
ヘッド基板72のインク流路88側の表面には、浮遊導電板86が配置されている。浮遊導電板86は、電気的に絶縁状態(ハイインピーダンス状態)とされており、画像の記録時に、吐出部に印加された電圧値に応じて、誘起された誘導電圧を発生し、インク流路88内のインクQにおいて、その色材粒子を吐出口基板76側へ泳動させる。また、浮遊導電板86の表面には、電気絶縁性である被覆膜(図示せず)が形成されており、インクへの電荷注入等によりインクの物性や成分が不安定化することが防止されている。この絶縁性被覆膜は、インクに対して耐腐食性を有するものが用いられる。
【0103】
浮遊導電板86を設けることにより、インク流路88内のインクQ中の色材粒子を吐出口基板76側へ泳動させて、吐出口基板76の吐出口84を通過するインクQ内の色材粒子の濃度を所定濃度に高めることができ、インクガイド74の先端部分74aに濃縮させて、インク液滴Rとして吐出させるインクQ内の色材粒子の濃度を所定濃度に安定させることができる。
【0104】
なお、図示例においては、吐出電極を単層電極構造としているが、これ以外にも、例えば、列方向に接続された第1吐出電極と、行方向に接続された第2吐出電極とを備える2層電極構造とし、第1吐出電極と第2吐出電極とをマトリクス状に配列してマトリクス駆動を行うものとしてもよい。このようなマトリクス駆動方式によれば、吐出電極の高集積化とドライバ配線の簡素化の両方を同時に実現できる。
【0105】
また、この態様では、インクQ中の色材粒子を正帯電させ、記録媒体側を負の高電圧に帯電させているが、これに限定されず、逆に、インク中の色材粒子を負に帯電させ、記録媒体P側を正の高電圧に帯電させても良い。このように、色材粒子の極性を本態様と逆にする場合には、対向電極、記録媒体Pの帯電ユニット、各々の吐出部の吐出電極78への印加電圧極性等を上記の例と逆にすれば良い。
【0106】
ここで、本発明の記録装置に用いられるインクについて説明する。
インクQは、色材粒子をキャリア液に分散することにより得られる。キャリア液は、高い電気抵抗率(109Ω・cm以上、好ましくは1010Ω・cm以上)を有する誘電性の液体(非水溶媒)であるのが好ましい。キャリア液の電気抵抗が低いと、制御電極に印加される駆動電圧により、キャリア液自身が電荷注入を受けて帯電してしまい、色材粒子の濃縮がおこらない。また、電気抵抗の低いキャリア液は、隣接する制御電極間での電気的導通を生じさせる懸念もあるため不向きである。
【0107】
キャリア液として用いられる誘電性液体の比誘電率は、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、キャリア液中の色材粒子に有効に電界が作用し、泳動が起こりやすくなる。
なお、このようなキャリア液の固有電気抵抗の上限値は1016Ωcm程度であるのが望ましく、比誘電率の下限値は1.9程度であるのが望ましい。キャリア液の電気抵抗が上記範囲であるのが望ましい理由は、電気抵抗が低くなると、低電界下でのインクの吐出が悪くなるからであり、比誘電率が上記範囲であるのが望ましい理由は、誘電率が高くなると溶媒の分極により電界が緩和され、これにより形成されたドットの色が薄くなったり、滲みを生じたりするからである。
【0108】
キャリア液として用いられる誘電性液体としては、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、および、これらの炭化水素のハロゲン置換体がある。例えば、へキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル(例えば、信越シリコーン社製KF−96L)等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0109】
このようなキャリア液に分散される色材粒子は、色材自身を色材粒子としてキャリア液中に分散させてもよいが、好ましくは、定着性を向上させるための分散樹脂粒子を含有させる。分散樹脂粒子を含有させる場合、顔料などは分散樹脂粒子の樹脂材料で被覆して樹脂被覆粒子とする方法などが一般的であり、染料などは分散樹脂粒子を着色して着色粒子とする方法などが一般的である。
【0110】
色材としては、従来か流路クジェットインク組成物、印刷用(油性)インキ組成物、あるいは静電写真用液体現像剤に用いられている顔料および染料であればどれでも使用可能である。
色材として用いる顔料としては、無機顔料、有機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、等の従来公知の顔料を特に限定なく用いることができる。
色材として用いる染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、アニリン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料、等の油溶性染料が好ましく例示される。
【0111】
さらに、分散樹脂粒子としては、例えば、ロジン類、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート等を挙げられる。
これらのうち、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、前記定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点のいずれか1つが40℃〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
【0112】
インクQにおいて、色材粒子の含有量(色材粒子あるいはさらに分散樹脂粒子の合計含有量)は、インク全体に対して0.5〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは1.5〜25重量%、さらに好ましくは3〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。色材粒子の含有量が少なくなると、印刷画像濃度が不足したり、インクQと記録媒体P表面との親和性が得られ難くなって強固な画像が得られなくなったりするなどの問題が生じ易くなり、一方、含有量が多くなると均一な分散液が得られにくくなったり、インクジェットヘッド等でのインクQの目詰まりが生じやすく、安定なインク吐出が得られにくいなどの問題が生じるからである。
【0113】
また、キャリア液に分散された色材粒子の平均粒径は、0.1〜5μmが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5μmであり、更に好ましくは0.4〜1.0μmである。この粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製商品名)により求めたものである。
【0114】
色材粒子をキャリア液に分散させた後(必要に応じて、分散剤を使用しても可)、荷電制御剤をキャリア液に添加することにより色材粒子を荷電して、荷電した色材粒子をキャリア液に分散してなるインクQとする。なお、色材粒子の分散時には、必要に応じて、分散媒を添加してもよい。
荷電制御剤は、一例として、電子写真液体現像剤に用いられている各種のものが利用可能である。また、「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(1977年)等に記載の各種の荷電制御剤も利用可能である。
【0115】
なお、色材粒子は、制御電極に印加される駆動電圧と同極性であれば、正電荷および負電荷のいずれに荷電したものであってもよい。
また、色材粒子の荷電量は、好ましくは5〜200μC/g、より好ましくは10〜150μC/g、さらに好ましくは15〜100μC/gの範囲である。
【0116】
また、荷電制御剤の添加によって誘電性溶媒の電気抵抗が変化することもあるため、下記に定義する分配率Pを、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上とする。
P=100×(σ1−σ2)/σ1
ここで、σ1は、インクQの電気伝導度、σ2は、インクQを遠心分離器にかけた上澄みの電気伝導度である。電気伝導度は、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)および液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数1kHzの条件で測定を行った値である。また遠心分離は、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度14500rpm、温度23℃の条件で30分間行った。
以上のようなインクQを用いることによって、荷電粒子の泳動が起こりやすくなり、濃縮しやすくなる。
【0117】
インクQの電気伝導度は、100〜3000pS/cmが好ましく、より好ましくは150〜2500pS/cm、さらに好ましくは200〜2000pS/cmである。以上のような電気伝導度の範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、隣接する記録電極間での電気的導通を生じさせる懸念もない。
また、インクQの表面張力は、15〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは15.5〜45mN/m、さらに好ましくは16〜40mN/mの範囲である。表面張力をこの範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、ヘッド周りにインクが漏れ広がり汚染することがない。
さらに、インクQの粘度は0.5〜5mPa・secが好ましく、より好ましくは0.6〜3.0mPa・sec、さらに好ましくは0.7〜2.0mPa・secである。
【0118】
このようなインクQは、一例として、色材粒子をキャリア液に分散して粒子化し、かつ、荷電調整剤を分散媒に添加して、色材粒子に荷電を生じさせることで、調製できる。具体的な方法としては、以下の方法が例示される。
(1)色材あるいはさらに分散樹脂粒子をあらかじめ混合(混練)した後、必要に応じて分散剤を用いてキャリア液に分散し、荷電調整剤を加える方法。
(2)色材、あるいはさらに分散樹脂粒子および分散剤を、キャリア液に同時に添加して、分散し、荷電調整剤を加える方法。
(3)色材および荷電調整剤、あるいはさらに分散樹脂粒子および分散剤を、同時にキャリア液に添加して、分散する方法。
【0119】
以上、本発明のインクジェット記録装置ついて詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんのことである。
【0120】
例えば、以上の例は、本発明のインクジェット記録装置を、色材粒子(色材を含む荷電した粒子)をキャリア液に分散してなるインクを用いる濃縮タイプの静電式インクジェット記録装置に利用したものであるが、本発明は、これに限定はされず、荷電粒子を含有するインクを用いない、非濃縮タイプの静電式インクジェット記録装置にも好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の一例の概念図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の他の一例の概念図である。
【図3】図1に示すインクジェット記録装置のキャッピング部材の概略構成を示す斜視図である。
【図4】(A)は、図3に示すキャッピング部材の正面図、(B)は、(A)のIVB−IVB線における断面図、(C)は、(A)のIVC−IVC線における断面図である。
【図5】(A)は、吐出ヘッド12の一部を示す模式的断面図、(B)は、(A)のVB−VB線における模式的断面図である。
【図6】従来のインクジェット記録装置の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0122】
10、100 インクジェット記録装置
12 吐出ヘッド(インクジェットヘッド)
12a、60a 連通口
16 メインタンク
18、102 供給サブタンク
18a、20a オーバーフロー管
18b、20b、23a、24a、102b 開口
20 回収サブタンク
22 インク補充手段
23 高濃度補充液タンク
24 希釈補充液タンク
25 インク循環ポンプ
26 異物除去手段
27、29 フィルタ
28 濃度センサ
30 インク循環経路
32 共通供給配管
34、104 第1供給配管
36 第2供給配管
37 分岐配管
38 第3供給配管
39 空隙
40 第1回収配管
42 第2回収配管
44 第3回収配管
46 共通回収配管
48、50、52 補充用配管
48a、50a 補充制御バルブ
53 洗浄手段
54 洗浄液供給配管
56 洗浄液回収配管
54a、56a 三方制御弁
58 洗浄液循環ポンプ
59 連通配管
60 キャッピング部材
61 ケース
62 ゴム保持部材
64 キャッピング用ゴム部材
66 押しつけ圧調整ばね
68 連通チューブ
72 ヘッド基板
74b 基部
76 吐出口基板
80b 絶縁層
82 ガード電極
84 吐出口
86 浮遊導電板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するためのインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置であって、
前記インクを貯留するメインタンクと、
前記メインタンクから供給されるインクを貯留し、前記インクジェットヘッドに静圧方式によりインクの供給を行う供給用サブタンクと、
前記メインタンクから前記供給用サブタンクに接続される第1の供給配管を含み、前記メインタンク、前記供給用サブタンクおよび前記インクジェットヘッドとの間でインクを循環させるインク循環系と、
前記インク循環系の前記供給用サブタンクと前記インクジェットヘッドとの間において、前記供給用サブタンクのインクの循環時における気液界面よりも前記インクジェットヘッド側に設置されたフィルタとを有し、
前記フィルタの前記インクジェットヘッド側および気液界面側のいずれか一方の面に前記第1の供給配管の液流の少なくとも一部を直接的に吐出させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インク循環系は、さらに、前記供給用サブタンクから前記インクジェットヘッドに接続される第2の供給配管を含み、
前記フィルタは、前記供給用サブタンクと前記第2の供給配管との間に挿設される請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インクとして、少なくとも樹脂および色材を含有する微粒子を溶媒に分散してなるインクを用いる請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
さらに、前記第1の供給配管から分岐し、前記フィルタの前記インクジェットヘッド側の面に前記フィルタに前記第1の供給配管から供給されるインクの液流を直接的に吐出させる分岐配管を有する請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記供給用サブタンクは、前記フィルタ近傍に開口された前記第1の供給配管との接続口を有し、前記接続口から吐出されるインクの液流を前記フィルタの前記気液界面側の面に直接的に吐出させる請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記フィルタは、第1のフィルタであり、さらに、前記インク循環系の前記インクタンクと前記供給用サブタンクとの間に、第2のフィルタが設置される請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
さらに、前記第1の供給配管を介して前記インクタンクから前記供給用サブタンクにインクを送液する送液手段を有し、
前記送液手段は、前記第2のフィルタを通過したインクを前記供給用サブタンクに送液する請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記供給用サブタンクは、前記インクジェットヘッドよりも高い位置に配置され、オーバーフローによって、インク液面の高さを一定に保ちつつ、前記インクジェットヘッドにインクを供給する請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
さらに、前記インクジェットヘッドからインクを回収する回収用サブタンクを有し、
前記回収用サブタンクは、前記インクジェットヘッドよりも低い位置に配置され、オーバーフローによって、インク液面の高さを一定に保ちつつ、前記インクジェットヘッドからインクを回収する請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記サブタンクは、最下位置に前記供給配管との接続口を備え、インクの循環の停止時に、前記サブタンクに貯留されているインクは、前記供給配管を通じて前記インクタンクに回収される請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
さらに、前記インクジェットヘッドに装着され、前記吐出ヘッドのインク吐出部に蓋をするキャッピング手段と、
前記サブタンクの少なくとも1つと、前記キャッピング手段および前記インクジェットヘッドの少なくとも一方とを接続する連通配管とを有し、
前記連通配管は、前記キャッピング手段および前記インクジェットヘッドのキャッピング面に形成された、前記少なくとも1つのインクタンクの空気を外気と連通させる連通口を備え、
前記キャッピング手段を前記インクジェットヘッドに装着して、前記連通配管による外気への連通を断ち、前記キャッピング手段を前記インクジェットヘッドから離脱させて、前記連通配管による外気への連通を行う請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
さらに、高濃度インクを前記メインタンクに補充する高濃度インク補充部と、希釈液を前記メインタンクに補充する希釈液補充部とを少なくとも備えるインク補充手段を有する請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記希釈液補充タンクは、さらに前記サブタンクおよび前記インクジェットヘッドに希釈液を循環させる循環系と接続されている請求項12に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−192638(P2006−192638A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4965(P2005−4965)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】