説明

インクジェット記録装置

【課題】 キャリッジの原点位置検知を確実に行うインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 キャリッジの機械的ストッパーへの突き当てと、昇降モータのトルク検出の両方でもってキャリッジの原点位置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関し、特にキャリッジの原点位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置においては、記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドがキャリッジに搭載され、駆動モータによるキャリッジの移動に伴い印字を行う。このキャリッジの移動は予め設定しておいた位置、すなわち原点位置を基準として記録媒体の所定位置にインクを吐出させるように制御される。このキャリッジの原点位置を検出する機構として、従来ではキャリッジに設けられたストッパー部が本体端部に設けられたフレームに突き当たった後、駆動モータの電流値の上昇により検知するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-021280号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、キャリッジの突き当てによる検出方法は、予期せぬ位置にてキャリッジが停止した場合でもその位置を原点位置として誤認識してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為に、本発明のインクジェット記録装置は、被記録媒体に画像を形成する記録ヘッドを搭載して往復移動するキャリッジと、該キャリッジを往復駆動させるためのキャリッジ制御手段と、前記キャリッジの駆動モータの負荷を検出するキャリッジ負荷検出手段と、前記キャリッジに搭載された第1の記録ヘッド昇降部とプリンタのフレームに搭載された第2の記録ヘッド昇降部とが、前記キャリッジが所定位置にある場合に係合し、前記記録ヘッドを昇降させるための昇降手段と、前記記録ヘッドを昇降駆動させるための昇降制御手段と、昇降モータの負荷を検出する昇降負荷検出手段とを備え、前記キャリッジ負荷検出手段と前記昇降負荷検出手段の検出結果に基づいて前記キャリッジの原点位置を決定することを特徴とする。
【0006】
また、前記昇降負荷検出手段は、前記昇降モータをある一定の投入電力で駆動した場合の、回転数の大きさを検出するものでよい。
【0007】
さらに前記昇降モータをある一定の投入電力で駆動し、回転数の大きさが所定値より小さい場合、前記キャリッジが正常に所定位置にあると判断し、該位置を前記キャリッジの原点位置と決定することが望ましい。
【0008】
また、前記昇降負荷検出手段は、前記昇降モータをある一定の回転数で駆動した場合の、投入電力の大きさを検出するものであってもよい。
【0009】
さらに前記昇降モータをある一定の回転数で駆動し、投入電力の大きさが所定値より大きい場合、前記キャリッジが正常に所定位置にあると判断し、該位置を前記キャリッジの原点位置と決定することが望ましい。
【0010】
また、前記昇降負荷検出手段は、前記昇降モータを停止状態からある回転数まで加速した場合の、投入電力の大きさを検出するものであってもよい。
【0011】
さらに前記昇降モータを停止状態からある回転数まで加速し、投入電力の大きさが所定値より大きい場合、前記キャリッジが正常に所定位置にあると判断し、該位置を前記キャリッジの原点位置と決定することが望ましい。
【0012】
また、前記昇降負荷検出手段は、前記昇降モータへの投入電力を停止状態から、ある値へ変化させた場合の、モータの回転数が停止状態から、ある値になるまでの所要時間を検出するものであってもよい。
【0013】
さらに前記昇降モータへの投入電力を停止状態から、ある値へ変化させ、モータの回転数が停止状態から、ある値になるまでの所要時間が所定値より大きい場合、前記キャリッジが正常に所定位置にあると判断し、該位置を前記キャリッジの原点位置と決定することが望ましい。
【0014】
さらに、前記キャリッジの原点位置決定後も前記昇降モータは前記記録ヘッドが所定の昇降位置に設定するように続けて駆動されることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、キャリッジの原点位置決定を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のインクジェット記録装置を上面からみた模式図を示す。
【図2】本発明のインクジェット記録装置を左側面からみた模式図を示す。
【図3】本発明のインクジェット記録装置の記録ヘッド昇降を記録装置左側面からみた模式図を示す。
【図4】本発明のキャリッジが原点位置にある場合の記録装置を上面からみた模式図を示す。
【図5】本発明の第二の昇降機構を記録装置右側面からみた模式図を示す。
【図6】本発明の昇降モータの回転数と記録ヘッド昇降量との関係グラフを示す。
【図7】本装置の制御システムの概略構成を示す。
【図8】本発明に関わる主要部の体系図を示す。
【図9】本発明のDSPのブロック図を示す。
【図10】本発明のDCブラシレスモータの構成の一例を示す。
【図11】本発明の第1の実施例の動作フローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施例の動作フローチャートである。
【図13】本発明の第3の実施例の動作フローチャートである。
【図14】本発明の第4の実施例の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例1)
本発明に関わるインクジェット記録装置の実施形態について図を用いて説明する。図1、2に本発明におけるインクジェット記録装置の概略模式図を示す。インクジェット記録装置においては、記録媒体1上にインクを吐出する記録ヘッド2がキャリッジ3に搭載されている。そして、キャリッジ3を記録装置本体に取り付けられたガイドレール4に沿ってタイミングベルト5によって移動させるに伴い記録ヘッド2を記録媒体1に沿って走査させつつ、該記録ヘッド2により記録媒体1上にインクを吐出させる。ここでタイミングベルト5はキャリッジ駆動モータ6の回転軸に設置されたプーリ7に接続されており、キャリッジ駆動モータ6の回転運動が、タイミングベルト5の直線運動に変換されている。それとともに、順次、記録媒体1を搬送ローラ対8a、8bで構成された搬送手段によって図2の矢印方向に搬送されることで印刷を行うようになっている。また記録ヘッド2と対向する位置には搬送される記録媒体1を支持する支持面としてのプラテン9が設けられている。
【0018】
近年では印刷の用途に応じて様々な記録媒体の種類が存在し、厚さや特性など多岐に渡る。そこで記録媒体の厚さや特性に応じて適切な印刷を行う為、記録する記録媒体に応じて記録ヘッド−プラテン間の距離を変化させる必要がある。ここでは本発明における記録ヘッド−プラテン間を変化機構形態を図1、3を用いて説明する。キャリッジ3には第1の昇降機構10が搭載されており、リフト軸10a、リフトカム10bおよび凹形連結部材10cで構成されている。記録ヘッド2はこのリフトカム10bの面に接しており、リフトカム10bの中心はリフト軸10a中心に対してずれた構成になっている。凹形連結部材10cはリフト軸10aの片端部に接合されており、該リフト軸10aはキャリッジ3に係合した状態で設置されている。そして凹形連結部材10cを回転させることでリフト軸10aおよびリフトカム10bが回転し、リフトカム10bと記録ヘッド2の接点の高さが移動し、記録ヘッド2が昇降するようになっている。一方、記録装置本体の右端に設置されたフレーム11には第2の昇降機構12が搭載されており、昇降モータ12a、連結ギア部12bおよび凸型連結部材12cとで構成されている。昇降モータ12aを駆動させることで連結ギア部12bを介し、凸型連結部材12cが回転するようになっている。
【0019】
そして図4に示すようにキャリッジ3が本体右端位置に到達すると、キャリッジ3のストッパー部3aがフレーム11に突き当たり、キャリッジ3はそれ以上移動できない状態になると同時に、凹形連結部材10cと凸型連結部材12cとが連結嵌合する。そして昇降モータ12aを駆動させると双方の連結部材を介し、リフトカム10bが回転することで記録ヘッド2の昇降を行うことが可能となる。
【0020】
ここで昇降モータ12aの回転と記録ヘッド2の昇降量との関係および昇降位置設定方法について図5、図6を用いて説明する。図5は図4において第2の昇降機構12を右側面からみた模式側面図である。透過型のフォトインタラプタであるリフトセンサ12dをフレームに備え、連結ギア部12bに遮断板12eを設ける。昇降モータ12aの回転位置によって遮断板12eによるリフトセンサ12dの遮光−透過状態が切り替わる。図6は昇降モータ12aの回転数と記録ヘッド昇降量との関係グラフの一例を示している。例えば、昇降高さfに設定する場合は昇降モータ12aを回転させ、リフトセンサ12dが遮断板12eにより遮光から透過に切り替わる時を検出する。検出した時点での昇降モータ12aの回転数が700なので、昇降高さfの回転数1300に至るまで、すなわちさらに600回転数昇降モータ12aを回転させ、所望の昇降位置設定を行う。
【0021】
図7は本装置の制御システムの概略構成を示す。13は記録装置である。14は記録装置内の各装置を制御する記録装置制御部である。15は記録装置内の各装置へ電力を供給する電源である。16は記録装置内の各部の状況を検知するセンサ類である。17は記録装置制御部の指示によりモータ類を制御するモータ制御部である。18は記録装置内の各装置の動力源であるモータ類である。19は記録装置の動作状況をユーザーに報知する表示部である。20は記録装置とホストコンピューターとの通信を行う通信コントローラである。21は記録装置に印刷するデータを転送するホストコンピューターである。
【0022】
図8は本発明に関わる主要部の体系図を示す。22はDSP、また23a、23bはそれぞれキャリッジ駆動モータ6、昇降モータ12aへの電力を制御するドライバである。DSPはモータからの位置信号により相切り替え制御、記録装置制御部からの制御信号によるモータの始動、停止制御、および記録装置制御部からの速度信号と速度検知手段の出力とを比較し、ドライバを介して速度制御を行う。
【0023】
DSPのブロック図を図9に示す。24はプログラムコントローラ、25aは加減算や論理演算を行うALU、25bは積和演算を行うMAC、26はデータ用メモリ、27はプログラム用メモリ、28はデータメモリバス、29はプログラムメモリバス、30はシリアルポート、31はタイマ、32はI/Oポートである。このように、メモリをデータ用とプログラム用に独立させ、バスもデータバスとプログラムバスに分離し、乗算と加算を1マシンサイクルで実行するMACを持つことで高速な演算を可能としている。
【0024】
キャリッジ駆動モータ6および昇降モータ12aには本実施形態ではDCブラシレスモータを用いる。図10に本発明のDCブラシレスモータの構成の一例を示す。DCブラシレスモータは、U、V、Wの3相のスター結線されたコイル33とロータ34をもつ。ロータの位置検出手段としてロータの磁極を検知する3個のホール素子35を備え、その出力はDSPに接続されている。またロータの外周上に設けられた磁気的パターン36と磁気センサ37からなる回転速度検知手段を持ち、その出力はDSPに接続されている。
【0025】
23はDCブラシレスモータを駆動するドライバであり、ハイ側トランジスタ38とロー側トランジスタ39を各3個備え、それぞれコイル33のU、V、Wに接続されている。40は電流検出抵抗で、モータ駆動電流を電圧に変換する。発生した電圧はDSPのD/Aポートに取り込まれる。
【0026】
DSPはホール素子が発生するロータ位置信号HU〜Wにより、ロータの位置を特定し、相切り替え信号を生成する。相切り替え信号UU〜W、LU〜Wは、ドライバの各トランジスタをオンオフ制御し、励磁する相を順次切り替え、ロータを回転させる。さらにDSPは回転速度目標値と回転速度情報を比較し、PWM信号を生成、出力する。
【0027】
以上の機構により、キャリッジ3が待機中から印刷ジョブを受け取って原点位置設定、および印刷を行うまでの動作フローチャートの1実施例を図11に基づいて説明する。昇降モータ12aを開ループ制御により、一定の投入電力でモータを駆動し、そのときのモータ回転数によりモータ負荷トルクの大きさを検知することで第1の昇降機構10と第2の昇降機構12の連結嵌合を検知する。
【0028】
ホストコンピューター21からの指令により通信コントローラ20を介して記録装置13が印刷ジョブを受け取ると(S1)、モータ制御部17は待機位置から本体右端側へキャリッジ3を移動させるようにキャリッジ駆動モータ6を駆動開始させる(S2)。このとき、キャリッジ3のフレーム11への突き当て時の衝撃を抑えるため、PWM値は通常10%未満となるよう駆動させる。その後キャリッジ3のストッパー部3aがフレーム11に突き当たると、モータの回転を続けさせようとするためPWM値が上昇する。そこでPWM値が設定値以上、設定時間以上経過するかを検知することでキャリッジ3のフレームへの突き当てを検知する(S3)。
【0029】
ここでPWM値上昇の確実な検出のため、設定値はキャリッジ3の通常駆動時のPWM値以上、例えば20%程度に設定し、設定時間はおよそ0.2秒程度にあらかじめ設定る。
【0030】
次にステップ3の検知後、モータ制御部17は、一定の投入電力で昇降モータ12aを駆動するように、PWM値を設定する(S4)。次に、時間計測用カウンタをセットする(S5)。このカウント値は、モータ回転数が平衡状態に達するのに充分な時間としておく。さらに前記PWM値により、昇降モータ12aの駆動を開始し(S6)、カウンタを一定周期ごとに減算する(S7)。カウンタ値が0になった時点で(S8)、モータ回転数を測定する(S9)。測定終了後、検知したモータ回転数と基準となる回転数を比較し(S10)、第1の昇降機構10と第2の昇降機構12の連結状態を判別する。
【0031】
ここで基準となるモータ回転数は、連結状態を正しく判別するために第2の昇降機構12のみを回転させた場合の回転数より小さく、第1の昇降機構と連結した場合の回転数より大きい値となるようにあらかじめ設定されたものである。
【0032】
検知した回転数が、基準回転数より大きければ負荷トルク小となり、連結不良、すなわち本体右端位置にいないと判断し、昇降モータ12aの回転を止めてエラーを返す(S11)。検知した回転数が基準回転数より小さければ、負荷トルク大となり、連結が充分、すなわち本体右端位置にいると判断し、そこを原点設定する(S12)。
【0033】
判断終了後、印刷ジョブによる記録媒体1の情報に基づき、適切な記録ヘッド−プラテン間となるように昇降モータ12aは駆動を続け、リフトセンサの遮断−透過を検知すると(S13),所定の回転数で回転を行い、所定の記録ヘッド2の昇降位置をセットする(S14)。その後印刷動作、すなわちキャリッジ3の往復動作を開始する(S15)。
【0034】
以上の実施例において、昇降モータの負荷トルクをモータ回転数により検知したが、この方法は、モータの回転数−トルク特性を示す曲線の勾配が大きい特性を持つモータを用いる場合に、検知精度が高まるため特に効果的である。
【0035】
(実施例2)
本発明の第2の実施例を説明する。本装置の記録装置構成、制御システムの概略構成は第1の実施例と同様なので説明を省略する。
【0036】
昇降モータ12aを閉ループで制御し、一定の回転数で駆動したときの、PWM値の大きさにより負荷トルクの大きさを検知することで第1の昇降機構10と第2の昇降機構12の連結嵌合を検知する。
【0037】
図12に本発明の第2の実施例である、キャリッジ3が待機中から印刷ジョブを受け取って原点位置設定、および印刷を行うまでの動作フローチャートを示す。ステップ1から3までは第1の実施例と同様なので説明を省略する。
【0038】
ステップ3の検知後、モータ制御部17は、昇降モータ12aの最終目標回転数をセットする(S4)。次に昇降モータ12aの駆動を開始し(S5)、モータ回転数を検出し(S6)、最終目標回転数でモータが回転するように制御する。モータ回転数が最終目標回転数に達した時点で(S7)、そのときにPWM値を記憶する(S8)。PWM値記憶終了後、記憶したPWM値と基準となるPWM値を比較し(S9)、第1の昇降機構10と第2の昇降機構12の連結状態を判別する。
【0039】
ここで基準となるPWM値は、連結状態を正しく判別するために第2の昇降機構12のみを回転させた場合のPWM値より大きく、第1の昇降機構と連結した場合のPWM値より小さい値となるようにあらかじめ設定される。
【0040】
記憶したPWM値が、基準PWM値より小さければ、負荷トルク小となり、連結不良、すなわち本体右端位置にいないと判断し、昇降モータ12aの回転を止めてエラーを返す(S10)。記憶したPWM値が基準PWM値より大きければ、負荷トルク大となり、連結が充分、すなわち本体右端位置にいると判断し、そこを原点設定する(S11)。判断終了後、印刷ジョブによる記録媒体1の情報に基づき、適切な記録ヘッド−プラテン間となるように昇降モータ12aは駆動を続け、リフトセンサの遮断−透過を検知すると(S12),所定の回転数で回転を行い、所定の記録ヘッド2の昇降位置をセットする(S13)。その後印刷動作、すなわちキャリッジ3の往復動作を開始する(S14)。
【0041】
なお、ここではPWM値により検知した例を挙げたが、PWM値の代わりに駆動電流により検知してもよい。
【0042】
以上の実施例において、昇降モータの負荷トルクをPWM値により検知したが、この方法は、モータの電流−トルク特性を示す曲線の勾配が大きい特性を持つモータを用いる場合に、検知精度が高まるため特に効果的である。
【0043】
(実施例3)
本発明の第3の実施例を説明する。本装置の記録装置構成、制御システムの概略構成は第1の実施例と同様なので説明を省略する。
【0044】
昇降モータ12aをある速度からある速度まで加速したとときのPWM値の大きさから負荷トルクを検知することで第1の昇降機構10と第2の昇降機構12の連結嵌合を検知する。
【0045】
図13に本発明の第3の実施例である、キャリッジ3が待機中から印刷ジョブを受け取って原点位置設定、および印刷を行うまでの動作フローチャートを示す。ステップ1から3までは第1の実施例と同様なので説明を省略する。
【0046】
ステップ3の検知後、モータ制御部17は、昇降モータ12aの最終目標回転数をセットする(S4)。次に、昇降モータ12aの駆動を開始し(S5)、回転数0rpmから最終目標回転数までモータを加速する。モータ加速中、一定周期でPWM値を検知し、PWM値を加算していく(S6)。モータが最終目標回転数に達した時点で(S7)、PWM値の検知および加算処理を停止し、演算したPWM値の総和と基準値を比較し(S8)、第1の昇降機構10と第2の昇降機構12の連結状態を判別する。
【0047】
ここで基準となるPWM値の総和は、連結状態を正しく判別するために第2の昇降機構12のみを回転させた場合のPWM値の総和より大きく、第1の昇降機構と連結した場合のPWM値の総和より小さい値となるようにあらかじめ設定される。
【0048】
演算したPWM値の総和が、基準値より小さければ負荷トルク小となり、連結不良、すなわち本体右端位置にいないと判断し、昇降モータ12aの回転を止めてエラーを返す(S9)。演算したPWM値の総和が、基準値より大きければ負荷トルク大となり、連結が充分、すなわち本体右端位置にいると判断し、そこを原点設定する(S10)。判断終了後、印刷ジョブによる記録媒体1の情報に基づき、適切な記録ヘッド−プラテン間となるように昇降モータ12aは駆動を続け、リフトセンサの遮断−透過を検知すると(S11),所定の回転数で回転を行い、所定の記録ヘッド2の昇降位置をセットする(S12)。その後印刷動作、すなわちキャリッジ3の往復動作を開始する(S13)。
【0049】
以上の実施例でのPWM値の総和による検知方法は、モータの電流−トルク特性を示す曲線の勾配が大きい特性を持つモータを用いる場合に、検知精度が高まるため特に効果的である。さらに、モータの加速時におけるPWM変動値を用いることができ、実施例3のようにモータが必ずしも定速回転状態になるまで回転させる必要がなく、検知時間を短縮できる。
【0050】
(実施例4)
本発明の第4の実施例を説明する。本装置の記録装置構成、制御システムの概略構成は第1の実施例と同様なので説明を省略する。
【0051】
昇降モータ12aへの投入電力を0から、ある値に変化させた場合に、モータの回転数が0からある値になるまでの所要時間から、負荷トルクを検知することで第1の昇降機構10と第2の昇降機構12の連結嵌合を検知する。
【0052】
図14に本発明の第4の実施例である、キャリッジ3が待機中から印刷ジョブを受け取って原点位置設定、および印刷を行うまでの動作フローチャートを示す。ステップ1から3までは第1の実施例と同様なので説明を省略する。
【0053】
ステップ3の検知後、モータ制御部17は、昇降モータ12aのPWM値、モータの目標回転数、およびカウンタの設定をする(S4)。さらに前記PWM値により、昇降モータ12aの駆動を開始し(S5)、カウンタを一定周期ごとに加算すると共に(S6)、モータ速度を検知する(S7)。モータ速度が目標回転数に達した時点で(S8)、時間計測用カウンタの値を記憶する(S9)。記憶終了後、記憶したカウンタ値と基準値を比較し(S10)、第1の昇降機構10と第2の昇降機構12の連結状態を判別する。
【0054】
ここで基準となるカウンタ値は、連結状態を正しく判別するために第2の昇降機構12のみを回転させた場合のカウンタ値より大きく、第1の昇降機構と連結した場合の回転数より小さい値となるようにあらかじめ設定される。
【0055】
記憶したカウンタ値が、基準値より小さければ、負荷トルク小となり、連結不良、すなわち本体右端位置にいないと判断し、昇降モータ12aの回転を止めてエラーを返す(S11)。記憶したカウンタ値が、基準値より大きければ、負荷トルク大となり、連結が充分、すなわち本体右端位置にいると判断し、そこを原点設定する(S12)。判断終了後、印刷ジョブによる記録媒体1の情報に基づき、適切な記録ヘッド−プラテン間となるように昇降モータ12aは駆動を続け、リフトセンサの遮断−透過を検知すると(S13),所定の回転数で回転を行い、所定の記録ヘッド2の昇降位置をセットする(S14)。その後印刷動作、すなわちキャリッジ3の往復動作を開始する(S15)。
【0056】
以上の実施例での検知方法は、モータの回転数−トルク特性を示す曲線の勾配が大きい特性を持つモータを用いる場合に、検知精度が高まるため特に効果的である。さらに、実施例1のようにモータが必ずしも定速回転状態になるまで回転させる必要がなく、検知時間を短縮できる。
【0057】
以上の実施例1から4で説明したように、キャリッジの原点位置検知を行うにあたり、キャリッジの機械的ストッパーへの突き当てと、昇降モータのトルク検出の両方でもって設定するので、確実に原点位置検知を行うことができる。
【0058】
さらに本発明は、記録ヘッドの昇降を確実に検知するという効果をもつ。すなわち、記録ヘッドを所定の昇降位置へ設定する過程の中で、昇降モータのトルクおよびリフトセンサの遮断−透過の両方の検知でもって初めて記録ヘッド昇降を設定し、次工程のキャリッジ移動へと進む。これにより、例えばプラテン上に紙厚の厚い記録媒体がセットしてある状態で記録ヘッドが充分に上昇しないままキャリッジが移動し、記録ヘッドが記録媒体と干渉して破損する、といったことを確実に防ぐ、という効果をもつ。
【符号の説明】
【0059】
1 記録媒体
2 記録ヘッド
3 キャリッジ
4 ガイドレール
5 タイミングベルト
6 キャリッジ駆動モータ
7 プーリ
8 搬送ローラ対
9 プラテン
10 第1の昇降機構
11 フレーム
12 第2の昇降機構
13 記録装置
14 記録装置制御部
15 電源
16 センサ類
17 モータ制御部
18 モータ類
19 表示部
20 通信コントローラ
21 ホストコンピューター
22 DSP
23 ドライバ
24 プログラムコントローラ
25 算術ユニット
26 データメモリ
27 プログラムメモリ
28 データメモリバス
29 プログラムメモリバス
30 シリアルポート
31 タイマ
32 I/Oポート
33 コイル
34 ロータ
35 ホール素子
36 磁気的パターン
37 磁気センサ
38 ハイ側トランジスタ
39 ロー側トランジスタ
40 電流検出抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に画像を形成する記録ヘッドを搭載し、駆動モータによって往復移動するキャリッジと、該キャリッジの往復駆動を制御するためのキャリッジ制御手段と、前記キャリッジの駆動モータの負荷を検出するキャリッジ負荷検出手段と、前記キャリッジに搭載された第1の記録ヘッド昇降部と記録装置のフレームに搭載された第2の記録ヘッド昇降部とが、前記キャリッジが所定位置にある場合に係合し、前記記録ヘッドを昇降モータにより昇降させるための昇降手段と、前記記録ヘッドの昇降駆動を制御するための昇降制御手段と、前記昇降モータの負荷を検出する昇降負荷検出手段とを備え、前記キャリッジ負荷検出手段と前記昇降負荷検出手段の検出結果に基づいて前記キャリッジの原点位置を決定することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記昇降負荷検出手段は、前記昇降モータをある一定の投入電力で駆動した場合の、回転数の大きさを検出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記昇降モータをある一定の投入電力で駆動し、回転数の大きさが所定値より小さい場合、前記キャリッジが正常に所定位置にあると判断し、該位置を前記キャリッジの原点位置と決定することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記昇降負荷検出手段は、前記昇降モータをある一定の回転数で駆動した場合の、投入電力の大きさを検出することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
前記昇降モータをある一定の回転数で駆動し、投入電力の大きさが所定値より大きい場合、前記キャリッジが正常に所定位置にあると判断し、該位置を前記キャリッジの原点位置と決定することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記昇降負荷検出手段は、前記昇降モータを停止状態からある回転数まで加速した場合の、投入電力の大きさを検出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記昇降モータを停止状態からある回転数まで加速し、投入電力の大きさが所定値より大きい場合、前記キャリッジが正常に所定位置にあると判断し、該位置を前記キャリッジの原点位置と決定することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記昇降負荷検出手段は、前記昇降モータへの投入電力を停止状態から、ある値へ変化させた場合の、モータの回転数が停止状態から、ある値になるまでの所要時間を検出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記昇降モータへの投入電力を停止状態から、ある値へ変化させ、モータの回転数が停止状態から、ある値になるまでの所要時間が所定値より大きい場合、前記キャリッジが正常に所定位置にあると判断し、該位置を前記キャリッジの原点位置と決定することを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記キャリッジの原点位置決定後も前記昇降モータは前記記録ヘッドが所定の昇降位置に設定するように続けて駆動されることを特徴とする請求項1から9に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−110841(P2011−110841A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270029(P2009−270029)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】