説明

インクジェット記録装置

【課題】インクタンクに基準値以上のインクが貯留されたことを正確に判定することが可能な機構を提供する。
【解決手段】
廃インクトレイ132に開口136〜138が設けられている。フラッシングが行われると、開口136及び開口137に噴出されたインクは、流路136A及び流路137Aを通って右側インク室141に流れ込み、フォーム88に吸収される。右側インク室141に流れ込んだインクはすぐに左側インク室142に移ることなく、下方へ拡がりながら徐々に下層部へ移る。インク量が増えるとインクは隔壁143の連通孔144を通って左側インク室142に移動し、フォーム89の底部に吸収され、毛細管現象によって徐々に上方へ吸い上げられる。フォーム89の上端に到達したインクは、流路138Aのフォーム91に吸収されて、このインクがフォーム91の露出面91Aにたどり着くと、露出面91Aにインクと同じ色が現れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドのノズルからインクを噴出することによりシートに画像を記録するインクジェット記録装置に関し、特に、記録ヘッドのインク噴出性能を回復もしくは維持させるフラッシング機能を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置においては、記録ヘッドのノズルのインク噴出性能を良好に維持するために、全ノズルからインクを噴出させる所謂フラッシングが所定のタイミングで実行される。画像記録領域から外れた位置にフラッシング位置が定められており、そのフラッシング位置に対応するプラテン上にインク受け部が設けられている。記録ヘッドがフラッシング位置に配置されると、ノズルからインクが噴出され、噴出されたインクはインク受け部で受け止められる。インク受け部の下方にはインクを貯留するためのインクタンクが設けられている。インク受け部で受け止められたインクは、インク受け部の底部に設けられたガイド孔を通ってインクタンクに流れ落ち、インクタンクで貯められる。
【0003】
インクタンクがインクで満杯になると、インクがオーバーフローしてインクが外部に漏れる。このようなインク漏れを防止する手段として、従来のインクジェット記録装置には、記録ヘッドから噴出されるインク量を積算し、インク量が基準値を超えた場合に警報を出力する機能が設けられている。また、特許文献1には、装置の使用時間の経過とともに上記基準値を増大させ、変更された基準値と積算されたインク量とを比較し、インク量が基準値を超えた場合に警報を出力する記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−136550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に記載の従来の記録装置では、記録ヘッドから噴出されたインク量は、インクの噴出回数のカウント値に基づいて算出されている。したがって、記録ヘッドのノズルに粘性の高いインクが付着していた場合や、ノズル自体が目詰まりしていた場合は、実際にインク噴出動作が行われてもインクが噴出されない場合がある。そのため、上記カウント値に基づいて算出されたインク量は、実際に噴出されたインク量に比べて多くなる。このため、カウント値に基づいて算出されたインク量を基準にインクタンクのオーバーフローを判定する従来の手法には、インクタンクに十分な貯留容量が残っている場合でも、インクが基準量を超えたことを示す警報やインクタンクを交換する旨のメッセージが出力されるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクタンクに基準値以上のインクが貯留されたことを正確に判定することが可能な機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、プラテンと、記録ヘッドと、キャリッジと、インク受け部と、インクタンクとを備えたインクジェット記録装置として構成されている。プラテンは、第1方向へ搬送される被記録媒体を支持する。記録ヘッドは、上記プラテンの上方に配置されており、複数のノズル孔からなるノズル列からインク滴を噴出可能に構成されている。キャリッジは、上記第1方向に直行し且つ上記プラテンに沿う第2方向へ往復移動可能に上記記録ヘッドを支持する。インク受け部は、上記プラテンにおける被記録媒体の支持領域の外側に設けられている。このインク受け部は、上記記録ヘッドのインク噴出性能を回復させるフラッシング時に上記記録ヘッドから噴出されるインク滴が進入する第1開口を上面に有する。インクタンクは、上記インク受け部の下方に設けられている。インクタンクは、第1液体吸収部材が内部に詰められている。上記インク受け部は、第1案内路と、第2開口と、第2案内路とを有する。第1案内路は、上記記録ヘッドから上記第1開口に噴出されたインクを上記インクタンクへ案内する。第2開口は、インク受け部の上面において上記第1開口から隔てられた位置に設けられている。第2案内路は、上記第1液体吸収部材に保持されたインクを上記第2開口まで吸い上げ可能な第2液体吸収部材が内部に詰められている。
【0008】
この構成では、フラッシングが行われると、インクが第1開口及び第1案内路を通ってインクタンク内に流入する。流入したインクは、第1液体吸収部材に吸収される。インクタンクに流入するインクの量が増加して、第1液体吸収部材の上層部で保持されるインク量が増えると、上層部においてインクを保持しようとする保持力に対してインクの自重が勝り、第1液体吸収部材によるインクの吸収範囲が下方へ拡がりながら徐々に下層部へ移っていく。一方、ある程度のインクが第1液体吸収部材に吸収されると、第1液体吸収部材に保持されたインクは、毛細管現象によって第2案内路の第2液体吸収部材を通って徐々に吸い上げられる。そして、第1液体吸収部材に基準値以上のインクが保持された状態になると、吸い上げられたインクは第2液体吸収部材の上側露出面までたどり着く。このとき、第2液体吸収部材と同じ色であった上側露出面にインクと同じ色が現れる。このように第2液体吸収部材の上側露出面に現れたインク色を上記第2開口からユーザが確認し、あるいはセンサなどによって上側露出面の色濃度を検出させることによって、インクタンクに基準値以上のインクが貯留されたことが正確に判定可能となる。
【0009】
(2) 本発明のインクジェット記録装置は、上記キャリッジに設けられたセンサと、制御部とを更に備える。センサは、上記第2開口に現れる上記第2液体吸収部材の上側露出面の色濃度の変化に応じた第1検出信号を出力するものである。制御部は、上記センサから出力された上記第1検出信号に基づいて上記インクタンク内のインクの貯留状態を判定する。
【0010】
これにより、制御部によって上記インクタンクに基準値以上のインクが貯留されたことが自動的に判定される。なお、センサの具体例としては、発光素子と受光素子とを備え、発光素子から出射されて検出対象で反射した反射光を受光素子で受光することにより、第1検出信号を出力する反射型の光センサが考えられる。
【0011】
(3) 上記センサは、反射型の光センサである。このセンサは、プラテン上における被記録媒体の有無を検出するためのものでもあり、上記プラテンにおける被記録媒体の有無に応じた第2検出信号を出力する。上記制御部は、上記センサによる上記第2検出信号に基づいてプラテン上に被記録媒体が存在するかどうかを判定する。
【0012】
これにより、センサは、制御部が有する2つの判定機能(貯留状態の判定と被記録媒体の存在の判定)それぞれに兼用されるため、センサの設置数を削減することができる。
【0013】
(4) 上記第2液体吸収部材の上記上側露出面は、上記プラテンによる被記録媒体の支持位置に一致している。
【0014】
反射型の光センサは、発光素子及び受光素子を備えており、その焦点距離(検出対象までの距離)や発光素子の出射角度は、発光素子から出射した光が検出対象から反射した場合に受光素子に入射するように設定されている。上述のように、上記センサからプラテン上面までの距離と上側露出面までの距離とが一致していると、上記上側露出面の色濃度を検出する用途と、プラテン上の被記録媒体の有無を検出する用途とに上記センサを用いた場合に、センサの焦点距離(検出対象までの距離)を変更せずとも、それぞれの検出対象を正確に検出することができる。
【0015】
(5) 上記第1液体吸収部材は、上記第1案内路側の第1吸収部と上記第2案内路側の第2吸収部とを有する。この場合、上記インクタンクの底部側に連通孔を有する仕切り板が上記第1吸収部と上記第2吸収部との間に設けられていることが好ましい。
【0016】
第1吸収部の上層部に吸収されたインクは、毛細管現象によって横方向にも移動する。しかしながら、上記仕切り板があるため、第1吸収部の上層部から直接に第2吸収部の上層部へインクが移動することが妨げられる。つまり、インクは第1吸収部の底部まで行き届いてから底部側の連通孔を経て第2吸収部へ移り、そして底部から徐々に毛細管現象によって第2吸収部全体へインクが吸収されることになる。したがって、第1液体吸収部材がインクで満たされない限り、第2案内路の第2液体吸収部材にはインクがたどりつかない。すなわち、第1液体吸収部材がインクで満たされた場合に第2液体吸収部材の上側露出面にインク色が現れる。これにより、第1液体吸収部材がインクで満たされたことを確実に判定することが可能となる。
【0017】
(6) 上記第1液体吸収部材は、上記第1案内路側の第1吸収部と上記第2案内路側の第2吸収部とを有する。この場合、上記第1吸収部または上記第2吸収部のいずれか一方は、各吸収部の境界面をなす側面に上記第1吸収部から上記第2吸収部へのインクの流入を遅延させるコーティング処理が施されていることが好ましい。
【0018】
これにより、第1吸収部の上層部に吸収されたインクが毛細管現象によって横方向へも移動しても、第2吸収部の上層部へインクが流入し難くなる。その結果、インクタンクに基準値以上のインクが貯留される前に第2液体吸収部材の上側露出面にインク色が現れることが防止される。
【0019】
(7) 上記第1液体吸収部材は、上記第1案内路側の第1吸収部と上記第2案内路側の第2吸収部とを有する。この場合、上記第1吸収部と上記第2吸収部との境界に上記第1吸収部から上記第2吸収部へのインクの流入を遅延させる薄膜シートが設けられていることが好ましい。
【0020】
これにより、第1吸収部の上層部に吸収されたインクが毛細管現象によって横方向へも移動しても、第2吸収部の上層部へインクが流入し難くなる。その結果、インクタンクに基準値以上のインクが貯留される前に第2液体吸収部材の上側露出面にインク色が現れることが防止される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インクタンクに基準値以上のインクが貯留されたことが正確に判定される。これにより、基準値以上のインクの貯留時期や液体吸収部材の交換時期を正確に報知することできる。その結果、インクタンク内の液体吸収部材を無駄なく有効利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、記録部24の周辺機構を模式的に示す平面図である。
【図4】図4は、図3における切断線IV-IVの断面図であり、インクタンク140の構造が詳細に示されている。
【図5】図5は、複合機10が備える制御部100のブロック図である。
【図6】図6は、制御部100によって実行される色濃度検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、記録部24の移動位置とフラッシングのタイミングを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0024】
図1に示されるように、複合機10は、薄型の直方体に概ね形成されており、下部にインクジェット記録方式のプリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。なお、プリント機能以外の機能の有無は任意である。従って、本実施形態では、プリント機能以外の機能及びその機能を実現する構成要素についての説明を省略する。
【0025】
[プリンタ部11の構成]
図2に示されるように、プリンタ部11は、各種サイズの記録用紙(本発明の被記録媒体の一例)を載置可能なトレイ20(図2参照)と、トレイ20から記録用紙をピックアップして給送する給送部15と、インクを用いて画像記録を行うインクジェット記録方式の記録部24と、搬送路65とを備えている。プリンタ部11は、正面に開口13が形成されたケーシング14(図1参照)を有しており、トレイ20は、開口13から前後方向8に挿抜可能に設けられている。つまり、トレイ20は、複合機10に装着及び脱抜可能である。なお、本実施形態では、記録部24は、4色のインク、具体的には、顔料系のブラックインク、そして染料系のイエロー、シアン、マゼンタの各インクによりカラー画像を記録するものとして説明する。
【0026】
[給送部15]
図2に示されるように、給送部15は、トレイ20の上方であって記録部24の下方に設けられている。給送部15は、給紙ローラ25、給紙アーム26、及び複数のギヤが噛み合わされてなる駆動伝達機構27とを備えている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端部で軸支されている。給紙アーム26は、その基端部に設けられた支軸28を中心として、矢印29の方向に回動する。これにより、給紙ローラ25はトレイ20に載置された記録用紙に当接することができ、また、トレイ20から離間することができる。給紙ローラ25は、駆動伝達機構27によって給紙用モータ112(図5参照)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、トレイ20上に積載された記録用紙のうち、一番上側の記録用紙に当接された状態で回転することによって、当該記録用紙をその下側にある他の記録用紙から分離して後述の湾曲路65Aに給送する。
【0027】
[搬送路65]
図2に示されるように、プリンタ部11の内部には、トレイ20の先端(後方側の端部)から記録部24を経て排紙保持部79に至る搬送路65が形成されている。搬送路65は、トレイ20の先端から記録部24に至る間に形成された湾曲路65Aと、記録部24から排紙保持部79に至る間に形成された排紙路65Bとに区分される。
【0028】
湾曲路65Aは、トレイ20に設けられた分離傾斜板22の上端付近から記録部24に渡って延設された湾曲状の通路である。湾曲路65Aは、プリンタ部11の内部側を中心とする円弧形状に概ね形成されている。トレイ20から給送される記録用紙は、湾曲路65Aを搬送方向(図2において一点鎖線で示される方向)に沿って第1搬送向き(図2において一点鎖線に付された矢印の向き、本発明の第1方向に相当)に湾曲されて、記録部24の直下へ案内される。湾曲路65Aは、所定間隔を隔てて互いに対向する外側ガイド部材18と内側ガイド部材19によって区画されている。なお、外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19は、いずれも、図2において紙面に垂直な方向(図1の左右方向9)へ延出されている。
【0029】
排紙路65Bは、記録部24の直下から排紙保持部79に渡って延設された直線状の通路である。記録用紙は、排紙路65Bを第1搬送向きに案内される。排紙路65Bは、記録部24が設けられている箇所においては、所定間隔を隔てて互いに対向する記録部24及びプラテン42によって形成されており、記録部24が設けられていない箇所においては、所定間隔を隔てて互いに対向する上側ガイド部材82及び下側ガイド部材83によって区画されている。
【0030】
図2に示されるように、記録部24の第1搬送向きの上流側には駆動ローラ60とピンチローラ61とからなる一対の搬送ローラ対59が設けられている。また、記録部24の第1搬送向きの下流側には、駆動ローラ63とピンチローラ64とからなる一対の排紙ローラ対62が設けられている。給送部15によってトレイ20から給送された記録用紙は、搬送用モータ113(図5参照)の駆動力を受けて回転する搬送ローラ対59や排紙ローラ対62によって搬送路65内を第1搬送向きへ搬送される。
【0031】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、トレイ20の上方に配置されている。記録部24の下方には、第1搬送向きへ搬送される記録用紙を水平に支持するためのプラテン42が設けられている。つまり、記録部24は、プラテン42の上方に配置されている。プラテン42の上面には前後方向8に沿って延びる細幅長尺状の複数のリブ43(図3参照)が設けられている。このため、プラテン42に搬送された記録用紙は、複数のリブ43の上端部によってプラテン42の表面から少し浮かされた位置(図7(A)において波線で示された位置)で水平に支持される。このプラテン42は、白色の記録用紙や後述の白色のフォーム91よりも反射率の低い暗色である。記録部24は、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインク滴を噴出して記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の記録ヘッド38(本発明の記録ヘッドの一例)と、記録ヘッド38を支持するキャリッジ37(本発明のキャリッジの一例)とを備える。
【0032】
図3に示されるように、記録ヘッド38は、プラテン42に対向するノズル面40(図2参照)に複数のノズル孔からなるノズル列39を有する。キャリッジ37は、ノズル面40を排紙路65Bへ露出した状態で記録ヘッド38を支持している。記録ヘッド38は、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色それぞれに対応する4列のノズル列39K、39Y、39C、39Mを有する。各ノズル列39は、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの順番で、ノズル面40に対して右から左へ配置されている。各ノズル列39は、左右方向9へ所定間隔を隔てられて配置されている。本実施形態では、ノズル列39Y、39C、39Mの各間隔がD1であるのに対して、ノズル列39Kとノズル列39Yとの間隔はD1よりも長いD2に設定されている。
【0033】
キャリッジ37は、図示しないフレームに設けられた左右方向9(本発明の第2方向に相当)へ延びる2本のガイドレール30,31によって移動可能に支持されている。詳細には、キャリッジ37は、第1搬送向きに直行し且つプラテン42の上面に沿う方向、つまり左右方向9へ往復移動可能に支持されている。キャリッジ37が移動することにより、キャリッジ37によって支持された記録ヘッド38も同方向へ移動する。
【0034】
ガイドレール31には、往復移動機構44が設けられている。往復移動機構44は、ガイドレール31の左右方向9の一方端に設けられた駆動プーリ45と、他方端に設けられた従動プーリ46と、それぞれのプーリ間に巻回されたベルト47と、ガイドレール31の下側で駆動プーリに連結されたキャリッジモータ111(図5参照)とを有する。キャリッジ37は、往復移動機構44のキャリッジモータ111の駆動力が駆動プーリ45及びベルト47を経て伝達されることによって左右方向9へ移動される。
【0035】
ガイドレール31には、リニアエンコーダ116(図5参照)のエンコーダストリップ51が設けられている。エンコーダストリップ51は帯状に形成され、左右方向9へ延びる長手方向に沿って透光部と遮光部とが所定ピッチで交互に配置されている。キャリッジ37には、透過型センサである光センサ35が設けられている。光センサ35は、エンコーダストリップ51に対応して配置され、キャリッジ37が往復移動する際にエンコーダストリップ51のパターンを検出する。光センサ35の検出信号は、キャリッジ37に搭載された不図示のヘッド制御基板からパルス信号として制御部100へ出力される。このパルス信号に基づいて制御部100がキャリッジ37の移動方向及び速度を算出して、キャリッジ37の往復移動時の等速制御や加減速制御が正確に行われる。
【0036】
記録部24は、制御部100による移動制御の下で、左右方向9への往復移動過程において、図示しないインクカートリッジから供給された各色のインクをノズル孔から噴出して、プラテン42上を搬送される記録用紙に着弾させる。これにより、搬送路65を搬送される記録用紙に画像が記録される。
【0037】
図3に示されるように、キャリッジ37は、メディアセンサ86(本発明のセンサの一例)を備えている。メディアセンサ86は、プラテン42上の記録用紙の有無を検出するための用途、及び、後述するように開口138からフォーム91の露出面91A(図4参照)の色濃度を検出するための用途として用いられる。メディアセンサ86は、LED等の発光素子及びフォトトランジスタ等の受光素子を備えている。発光素子は、下方に光を発することができる。
【0038】
メディアセンサ86がプラテン42上の記録用紙の有無を検出するための用途として用いられる場合は、発光素子から出射された光は、プラテン42上に搬送された記録用紙に照射される。プラテン42上まで記録用紙が搬送されていない場合は、上記光はプラテン42に照射される。記録用紙又はプラテン42に照射された光は反射されて、上記受光素子に入射する。受光素子は、この反射光を受光して、受光量に応じた電気信号(本発明の第2検出信号に相当)を出力する。上述のようにキャリッジ37が移動されることによって、メディアセンサ86がプラテン42上を走査する。そして、制御部100は、上記電気信号の値の変化に基づいて、記録用紙がプラテン42上に存在するか否かを判定する。具体的には、記録用紙に対してプラテン42の上面の反射率を低くしておき、上記電気信号が所定の閾値よりも小さい場合はプラテン42に記録用紙が無いと判定し、上記電気信号が所定の閾値よりも大きい場合はプラテン42に記録用紙が有ると判定する。なお、メディアセンサ86が露出面91A(図4参照)の色濃度を検出するための用途として用いられる場合の動作については後述する。
【0039】
[パージ機構130]
図3に示されるように、プラテン42に対して左右方向9の一方側(図3における右側)にパージ機構130が設けられている。このパージ機構130は、プラテン42における記録用紙の支持領域の外側、つまり、インク噴出領域の外側に配置されている。具体的には、プラテン42の右端部に設けられている。
【0040】
パージ機構130は、記録ヘッド38のノズル孔からインクを吸引する動作(パージとも称される。)を行うものであり、主としてキャップ133,134と図示しない吸引ポンプとから構成されている。キャップ133,134は、不図示の駆動機構によって、記録ヘッド38のノズル面40に対して接離する方向(上下方向7)へ移動される。本実施形態では、記録ヘッド38と接触しない各キャップ133,134の位置が待機位置と称され、記録ヘッド38と密着可能な各キャップ133,134の位置がメンテナンス位置と称される。つまり、各キャップ133,134は、駆動機構によって上下方向7へ移動されることにより、待機位置又はメンテナンス位置に配置される。
【0041】
キャリッジ37がパージ機構130の上方位置(図3の波線で示される位置)に配置されると、パージ機構130は待機位置からメンテナンス位置に移動する。そして、各キャップ133,134は、ノズル面40に密着して、各ノズル列39を密閉空間で覆う。キャップ133は、カラーインクであるイエロー、シアン、マゼンタの各色インクを噴出するノズル列39Y,39C,39Mを一体に覆う。キャップ134は、ブラックインクを噴出するノズル列39Kを一体に覆う。各キャップ133,134がノズル面40と密着するリップ部分はゴムなどの弾性部材からなり、各キャップ133,134がノズル面40に対して押圧されることによって弾性変形する。このリップ部分の弾性変形によって、リップ部分とノズル面40とが密着されて、各キャップ133,134の内部空間が密閉空間となる。この状態で、吸引ポンプが動作されると、吸引圧によって、記録ヘッド38の各ノズル孔から各色のインクが各キャップ133,134内へそれぞれ吸引される。記録ヘッド38から各色のインクが吸引される際に、記録ヘッド38内に生じた気泡やゴミなどがインクとともに各キャップ133,134内へ吸引される。
【0042】
[廃インクトレイ132・インクタンク140]
図3に示されるように、プラテン42に対して左右方向9の他方側(図3における左側)に廃インクトレイ132(本発明のインク受け部の一例)が設けられている。この廃インクトレイ132は、プラテン42における記録用紙の支持領域の外側、つまり、インク噴出領域の外側に配置されている。具体的には、プラテン42の左端部に設けられている。
【0043】
廃インクトレイ132は、メンテナンス時に記録ヘッド38から噴出されるインク滴を受けるものである。例えば上述のパージが行われた際に、異なる色のインクがノズル列39に混入したり、ノズル孔におけるインクのメニスカスが異常となるおそれがある。このような場合に、記録ヘッド38の全てのノズル列39からインク滴を噴出させると、混入していたインクが排出され、あるいは各ノズル孔のメニスカスが正常な状態に復帰する。このような噴出動作は、インク噴出性能を回復させるための動作であり、フラッシングと称されている。フラッシングが行われる場合は、記録ヘッド38が廃インクトレイ132の上側に移動されて、記録ヘッド38のノズル列39から廃インクトレイ132へ向けてインク滴が噴出される。
【0044】
廃インクトレイ132は、記録ヘッド38のノズル面40に対応するトレイ形状に形成されている。廃インクトレイ132の下方には、廃インクトレイ132に噴出されたインクを貯留するためのインクタンク140(本発明のインクタンクの一例)が設けられている。廃インクトレイ132の上面には開口136(本発明の第1開口の一例)と、開口137(本発明のインクタンクの一例)と、開口138(本発明の第2開口の一例)とが設けられている。最も右側に配置された開口136は、ノズル列39Kから噴出されるブラックインクを受ける部分である。開口136の左側に開口137が配置されている。この開口137は、イエロー、シアン、マゼンタのカラーインクを受ける部分である。本実施形態では、図3に示されるように、開口136と開口137との間隔(中心間距離)は、ノズル列39Kとノズル列39Yとの間隔と同じD2に設定されている。
【0045】
また、開口137よりも左側後方へ隔てられた位置に開口138が配置されている。詳細には、開口138は、キャリッジ37が左右方向9へ移動したときに、キャリッジ37に設けられた光センサ35からの光が照射され得る位置に配置されている。この開口138は、インクタンク140に貯留されたインクが後述するように吸い上げられたときにそのインクを廃インクトレイ132の上面に露出させる部分である。
【0046】
図4に示されるように、インクタンク140は、左右方向に分割された右側インク室141及び左側インク室142を有する。右側インク室141と左側インク室142との間には隔壁143(本発明の仕切り板の一例)が設けられている。右側インク室141には、インクを吸収することができる不織布、スポンジ、もしくは綿などで構成されたフォーム88(本発明の第1吸収部の一例)が設けられている。フォーム88は、その右側の上部が切り欠かれており、後述する流路136Aによって下方へ案内された顔料系のブラックインクが右側インク室141の底部へ直接流れ落ちるようになっている。一方、フォーム88の左側の部分の上部は、後述する流路137Aの下端に当接しており、流路137Aによって下方へ案内された染料系のカラーインクがフォーム88に直接流入するようになっている。
【0047】
左側インク室142には、インクを吸収することができる不織布、スポンジ、もしくは綿などで構成されたフォーム89(本発明の第2吸収部の一例)が設けられている。フォーム89は、左側インク室142の全体に詰め込まれている。フォーム89の上部は、後述する流路138Aの下端に当接している。
【0048】
隔壁143の下端部には連通孔144が形成されている。したがって、右側インク室141に流れ込んだインクがフォーム88を満たすと、連通孔144から左側インク室142に流れ込む。そして、右側インク室141に流入するインク量が増えると、毛細管現象によって、フォーム89の下部から上部へ徐々にインクが吸い上げられる。
【0049】
図4に示されるように、廃インクトレイ132には3つの流路136A,137A,138Aが設けられている。流路136A(本発明の第1案内路の一例)は、開口136から下方へ延びて、その下端は右側インク室141の右側上部のフォーム88が存在しない領域に達している。開口136に噴出されたブラックインクは、流路136Aを通ってインクタンク140の右側インク室141に流入し、右側インク室141の底部でフォーム88に吸収される。
【0050】
流路137A(本発明の第1案内路の一例)は、開口137から下方へ延びて、その下端は右側インク室141の左側上部のフォーム88の上端に達している。流路137Aにはインクを吸収することができる不織布、スポンジ、もしくは綿などで構成されたフォーム90が詰め込まれている。開口137に噴出されたカラーインクは、流路137A内のフォーム90に吸収されつつ、流路137Aを通ってインクタンク140の右側インク室141に流入し、フォーム88に吸収される。
【0051】
流路138A(本発明の第2案内路の一例)は、開口138から下方へ延びて、その下端は左側インク室142に達している。流路138Aにはインクを吸収することができる不織布、スポンジ、もしくは綿などで構成された白色のフォーム91(本発明の第2液体吸収部材の一例)が詰め込まれている。左側インク室142のフォーム89を下部から上部へ吸い上げられたインクがフォーム89の上端にたどり着くと、そのインクはフォーム91の下端部から吸い上げられて、最終的にはフォーム91の上部の露出面91Aに現れる。露出面91Aにインクが現れると、露出面91Aがインク色に染まる。つまり、露出面91の色がフォーム91と同色の白色からインク色となり、露出面91Aの色濃度が変化する。この色濃度及び色濃度の変化は、後述する制御部100による色濃度検出処理によって検出される。
【0052】
なお、本実施形態では、図7に示されるように、フォーム91は、露出面91Aの高さ位置とプラテン42のリブ43で支持される記録用紙の支持位置(図7(A)において波線で示される位置)とが一致するように設けられている。これにより、メディアセンサ86の焦点距離が色濃度検出時と記録用紙検出時とで同じになり、いずれの検出も正確に行われる。
【0053】
次に、図5を参照して、制御部100(本発明の制御部の一例)の構成について説明する。図5に示されるように、制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103を主に有している。CPU101、ROM102、及びRAM103は、バスラインを介して互いに接続されている。制御部100は、入出力ポート105を介して、キャリッジモータ111、給紙用モータ112、搬送用モータ113、キャリッジ37の位置検出を行うリニアエンコーダ116、光センサ35、及びプラテン42上の記録用紙の存在や後述の露出面91A(図4参照)の色濃度を検出するメディアセンサ86に接続されている。
【0054】
CPU101は、ROM102やRAM103に記憶されているデータ値や制御プログラムにしたがって、入出力ポート105に接続された各部を制御することによって、キャリッジ37の移動制御、プラテン42における記録用紙の検出処理、フラッシング制御、図7のフローチャートに示す後述の色濃度検出処理などを行う。ROM102は、複合機10で実行される制御プログラムなどを格納した書き換え不能なメモリである。上記色濃度検出処理を実行するプログラムは、このROM102に格納されている。RAM103は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、複合機10の動作時に要する各種のデータを一時的に記憶したり、上記各処理や制御で使用される閾値データなどを記憶する。
【0055】
以下、図7を参照しながら、CPU101によって実行される図6のフローチャートに示される色濃度検出処理の手順について説明するとともに、キャリッジ37の移動制御及びフラッシング動作について説明する。なお、図7は、記録ヘッド38の移動位置とフラッシングタイミングを説明するための模式図であり、(A)にはキャリッジ37が廃インクトレイ132へ向かって移動している状態が示されており、(B)には開口138の上方にメディアセンサ86が到達した状態が示されており、(C)にはキャリッジ37がプラテン42の左端部に到達した状態が示されており、(D)には開口136の上方にノズル列39Kが到達し開口137の上方にノズル列39Yが到達した状態が示されており、(E)には開口137の上方にノズル列39Cが到達した状態が示されており、(F)には開口137の上方にノズル列39Mが到達した状態が示されている。
【0056】
複合機10が画像記録指示を受付可能な待機状態にある場合は、キャリッジ37はパージ機構130の上方位置(以下「初期位置」と称する。)に配置されている。複合機10に対して記録指示が入力されると(S11)、CPU101は、RAM103内のフラグ設定を初期化する。具体的には、インクタンク140内のインク貯留状態を示す廃液フォームフラグを「0」に設定する(S12)。なお、廃液フォームフラグが「0」の場合は、インクタンク140内のインク量が基準値未満であることを意味し、廃液フォームフラグが「1」の場合は、インクタンク140内のインク量が基準値未満であることを意味している。
【0057】
RAM103内のフラグ設定の初期化が終了すると、CPU101は、初期位置にあるキャリッジ37を移動させる(S13)。キャリッジ37は、初期位置から加速された後に等速制御される。そして、プラテン42に他方端に近づくと減速されて一旦停止し、その後、逆方向へ移動するように制御される。キャリッジ37が初期位置から移動すると、キャリッジ37に設けられた上記光センサ35(図5参照)がエンコーダストリップ51(図3参照)のパターンを検知する。制御部100は、光センサ35の検知に基づくパルス信号数によって、キャリッジ37の移動量を把握するとともに、上記初期位置を基準としたキャリッジ37の移動位置を正確に把握する。
【0058】
続いて、CPU101は、キャリッジ37が色濃度検出可能位置に到達したかどうかを判定する(S14)。具体的には、CPU101は、キャリッジ37の初期位置からの移動量に基づいて、メディアセンサ86が図7(B)に示されるように開口138の上方に到達したかどうかを判定する。キャリッジ37が色濃度検出可能位置に到達したと判定されると、CPU101は、フォーム91の露出面91Aの色濃度の検出を開始する(S15)。具体的には、メディアセンサ86の発光素子から光を出射させてフォーム91の露出面91Aに照射し、露出面91Aから反射した反射光を受光素子で受光する。このときメディアセンサ86から出力された電気信号の数値(以下「センサ出力値」と称する。)はRAM103に記憶される。
【0059】
次に、CPU101は、RAM103に記憶されたセンサ出力値と予め定められた閾値とを比較して、センサ出力値が閾値未満であるかどうかを判定する(S16)。上記閾値は、露出面91Aの色濃度が白色からインク色となったことを識別するための濃度値情報である。センサ出力値が閾値未満であると判定された場合は、露出面91Aが未だ閾値の濃度値に達していないこと、つまり、インクタンク140に基準値以上のインクが貯留されていないことを意味する。また、センサ出力値が閾値以上であると判定された場合は、露出面91Aがインク色に変化したこと、つまり、インクタンク140に基準値以上のインクが貯留されたことを意味する。
【0060】
ステップS16でセンサ出力値が閾値以上であると判定された場合は、廃液フォームフラグを「1」に設定し(S17)、その後、色濃度の検出処理が終了する(S18)。CPU101による色濃度の検出処理(S15)、及びセンサ出力値の比較判定処理(S16)は、センサ出力値が閾値以上となるか、キャリッジ37が色濃度検出可能位置から外れて色濃度を検出できない位置(色濃度検出不能位置)に移動するまで行われる(S19)。なお、センサ出力値が閾値未満であって、且つキャリッジ37が色濃度検出不能位置に到達した場合は、廃液フォームフラグを「1」にせずに色濃度の検出処理が終了する(S18)。
【0061】
次に、CPU101は、キャリッジ37が反転位置に到達したかどうかを判定する(S20)。キャリッジ37が図7(C)に示される反転位置に到達すると、キャリッジ37は一旦停止されて、すぐに反対方向へ向けて移動を開始する(S21)。
【0062】
次に、CPU101は、キャリッジ37が反転方向へ移動している最中にフラッシングを実行する(S22)。具体的には、図7(D)に示されるように、開口136の上方にノズル列39Kが到達し、開口137の上方にノズル列39Yが到達したタイミングで、ノズル列39K及びズル列39Yそれぞれからインクを噴出する。インクの噴出回数は、1回に限られず、複数回行われてもよい。なお、キャリッジ37の移動中にインクを噴出すると移動方向へインク滴が飛ぶため、実際は、キャリッジ37の移動速度や移動位置、廃インクトレイ132とのギャップなどを考慮して、インク滴が開口136,137に着弾するようなタイミングでインクが噴出される。続いて、図7(E)に示されるように、開口137の上方にノズル列39Cが到達したタイミングで、ノズル列39Cからインクを噴出する。また、図7(F)に示されるように、開口137の上方にノズル列39Mが到達したタイミングで、ノズル列39Mからインクを噴出する。
【0063】
フラッシングが終了すると、CPU101はキャリッジ37を再び初期位置に戻してから、画像記録を開始する。画像記録を開始する際に、CPU101は、廃液フォームフラグが「1」に設定されている場合は(S23)、インクタンクの交換を促す交換表示メッセージを出力し、複合機10に設けられた図示しない表示部に表示させる(S24)。なお、画像記録が開始される前に交換表示メッセージを出力してもよいし、また、廃液フォームフラグが「1」に設定されている場合は画像記録を中止するようにしてもよい。
【0064】
[実施形態の作用・効果]
上述の実施形態においては、フラッシングが行われると、流路136A及び流路137Aを通ってインクが右側インク室141に流れ込み、フォーム88に吸収される。しかし、左側インク室142と右側インク室141との間に隔壁143があるので、右側インク室141に流れ込んだインクはすぐに左側インク室142に移ることなく、下方へ拡がりながら徐々に下層部へ移っていく。ある程度のインクがフォーム88に吸収されると、隔壁143の連通孔144を通って左側インク室142に移動し、フォーム89の底部に吸収され、毛細管現象によって徐々に上方へ吸い上げられる。そして、フォーム89の上端に到達したインクは、流路138Aのフォーム91に吸収されて、更に上方へ吸い上げられる。このインクがフォーム91の露出面91Aにたどり着くと、フォーム91と同色であった露出面91Aにインクと同じ色が現れる。露出面91Aまでインクが吸い上げられたとき、インクタンク140は基準値以上のインクが貯留された状態となっている。制御部100は、メディアセンサ86からの電気信号に基づいて露出面91Aの色濃度が変化したと判断すると、インクタンク140の交換表示メッセージを出力する。このため、ユーザは、インクタンク140に基準値以上のインクが貯留されたことや、フォーム88,89の的確な交換タイミングを容易に把握することが可能となる。
【0065】
また、フォーム91は、露出面91Aの高さ位置とプラテン42のリブ43で支持される記録用紙の支持位置(図7(A)において波線で示される位置)とが一致するように設けられているため、メディアセンサ86の焦点距離が色濃度検出時と記録用紙検出時とで同じになり、いずれの検出も正確に行われる。
【0066】
なお、上述の実施形態では、インクタンク140の左側インク室142と右側インク室141との間に隔壁143を設けることとしたが、この隔壁143に代えて、フォーム88とフォーム89との境界に面するフォーム88の一側面にコーティング処理を施してもよい。このコーティング処理は、フォーム88からフォーム89へインクが流入する速度をフォーム88内で移動する速度よりも遅くさせる処理であり、例えば、フォーム88がウレタンフォームである場合は、一側面を熱処理することで一側面に現れる空隙が小さくなるように組成変形させる方法が考えられる。また、フォーム88の底部を除く一側面にインクの流入を防止する薄膜シートを設けてもよい。このような実施例であっても、フォーム88の上層部からフォーム89の上層部へインクが流入し難くなる。その結果、インクタンク140に基準値以上のインクが貯留される前にフォーム91の露出面91Aにインク色が現れることが防止される。
【0067】
また、インクタンク140は、左側インク室142と右側インク室141との間に隔壁143を設けず、左側インク室142と右側インク室141とを仕切り分けしない構成であってもよい。そもそも、インクの鉛直下方への移動速度に比べて横方向への移動速度は遅いため、仕切り分け構造が採用されなくても、フォームの的確な交換タイミングを把握可能である。
【符号の説明】
【0068】
10:複合機
20:トレイ
24:記録部
37:キャリッジ
38:記録ヘッド
39:ノズル列
40:ノズル面
86:メディアセンサ
88,89,90,91:フォーム
130:パージ機構
132:廃インクトレイ
136,137,138:開口
136A,137A,138A:流路
140:インクタンク
143:隔壁
144:連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向へ搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、
上記プラテンの上方に配置され、複数のノズル孔からなるノズル列からインク滴を噴出可能な記録ヘッドと、
上記第1方向に直行し且つ上記プラテンに沿う第2方向へ往復移動可能に上記記録ヘッドを支持するキャリッジと、
上記プラテンにおける被記録媒体の支持領域の外側に設けられ、上記記録ヘッドのインク噴出性能を回復させるフラッシング時に上記記録ヘッドから噴出されるインク滴が進入する第1開口を上面に有するインク受け部と、
上記インク受け部の下方に設けられ、第1液体吸収部材が内部に詰められたインクタンクと、を備え、
上記インク受け部は、
上記記録ヘッドから上記第1開口に噴出されたインクを上記インクタンクへ案内する第1案内路と、
上記上面において上記第1開口から隔てられた位置に設けられた第2開口と、
上記第1液体吸収部材に保持されたインクを上記第2開口まで吸い上げ可能な第2液体吸収部材が詰められた第2案内路と、を有しているインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記キャリッジに設けられ、上記第2開口に現れる上記第2液体吸収部材の上側露出面の色濃度の変化に応じた第1検出信号を出力するセンサと、
上記センサによる上記第1検出信号に基づいて上記インクタンク内のインク貯留状態を判定する制御部と、を更に備えている請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記センサは、上記プラテンにおける被記録媒体の有無に応じた第2検出信号を出力する反射型の光センサであり、
上記制御部は、上記センサによる上記第2検出信号に基づいてプラテン上に被記録媒体が存在するかどうかを判定するものである請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記第2液体吸収部材の上記上側露出面は、上記プラテンによる被記録媒体の支持位置に一致している請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
上記第1液体吸収部材は、上記第1案内路側の第1吸収部と上記第2案内路側の第2吸収部とを有し、
上記インクタンクの底部側に連通孔を有する仕切り板が上記第1吸収部と上記第2吸収部との間に設けられている請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
上記第1液体吸収部材は、上記第1案内路側の第1吸収部と上記第2案内路側の第2吸収部とを有し、
上記第1吸収部または上記第2吸収部のいずれか一方は、各吸収部の境界面をなす側面に上記第1吸収部から上記第2吸収部へのインクの流入を遅延させるコーティング処理が施されている請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
上記第1液体吸収部材は、上記第1案内路側の第1吸収部と上記第2案内路側の第2吸収部とを有し、
上記第1吸収部と上記第2吸収部との境界に上記第1吸収部から上記第2吸収部へのインクの流入を遅延させる薄膜シートが設けられている請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−139856(P2012−139856A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292789(P2010−292789)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】