説明

インク供給装置およびインクジェット記録装置

【課題】メインタンクを外して装置を移動させる場合であっても、インク漏洩が生じないインク供給装置を提供する。
【解決手段】着脱可能なインクタンクを用い、インクを吐出して記録媒体記録を行う記録ヘッドにインクを供給するインク供給装置において、インク供給部と、大気連通部と、インクタンクから漏洩するインクを貯留するインク室とを有する。インクタンクが取り外される際、これに先立って記録ヘッドからインクを強制排出させてインクタンク内を負圧にすることで、インク室内のインクをインクタンクに移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク供給装置およびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出口からインクを吐出させて記録紙等の記録媒体上に記録を行うインクジェット記録方式は、低騒音のノンインパクト記録方式で高密度かつ高速の記録動作が可能であるため、近年では広く採用されている。
【0003】
一般的なインクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドを搭載するキャリアを駆動する手段と、記録媒体を搬送する搬送手段と、これらを制御するための制御手段などを備えている。また、インクジェットヘッドの吐出口からインクを吐出するためのエネルギを発生するために、ピエゾ素子などの電気機械変換体を用いてインクに加圧するものやレーザなどの電磁波を照射して発熱させるものがある。さらに、発熱により発泡させるもの、あるいは発熱抵抗体を有する電気熱変換体素子によって液体を加熱させ発泡させるものなどがある。
【0004】
その中でも熱エネルギを利用してインク滴を吐出させる方式のインクジェット記録装置は、ノズルを高密度に配列させることができるため高解像度の記録を行うことができる。特に電気熱変換体素子をエネルギ発生素子として用いたインクジェットヘッドは、小型化が容易である。また、最近の半導体製造分野において技術の進歩と信頼性の向上が著しいIC技術やマイクロ加工技術を応用して、その長所を十分に活用することにより高密度実装化が容易でかつ製造コストを低くできる。
【0005】
このようなインクジェット記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置には、記録ヘッドにインクを供給するためのメインタンクを着脱可能に備えたものがある。このような記録装置では、メインタンクの装着を受容して記録ヘッドにインクを供給するための装着部が設けられている(例えば特許文献1)。メインタンクが密閉構造である場合、インク供給に伴うメインタンク内の負圧の増大を緩和するために、装着部には、供給インク量に見合う分の大気を導入するべく、大気連通用の中空針などの部材がタンク内に突入可能に配設される。また、この部材に関連して、タンク内への突入部分と大気導入部分との間にはインクを貯留可能なインク室が設けられる。これは、環境変化、例えば温度上昇によってメインタンク内に存在する空気が膨張し、その内圧が高まることによって上記部材を介して流出したインクが外部に漏洩するのを防止するバッファとして機能する(以下、この機能からバッファ室と称する)。
【0006】
【特許文献1】特許第2929804号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一旦メインタンクを設置し、記録装置を使用した後に、記録装置を別の場所に移動することが望まれる場合がある。このとき、メインタンク内のインクが装置内部に漏れ出すのを防止するために、一般にはメインタンクを外してから移動作業が行われる。
【0008】
しかしながら、メインタンクを外した場合であっても、バッファ室内へと排出されたインクがここに残留したままとなっていることがある。すると、移動作業時の記録装置の姿勢によっては、当該残留インクが外部に漏洩する恐れがある。また、バッファ室前後の上記部材が狭隘な断面を有するものとしても、環境温度変化によりインクが漏出することがある。
【0009】
本発明は、このような観点からなされたものであり、メインタンクを外して装置を移動させる場合であっても、インク漏洩が生じないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するため、本発明は、インクタンクから液路を介して供給されるインク吐出する記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置において、前記インクタンクの内部を大気に連通させるための連通路の途中にあって、前記インクタンク内のインクを貯留する貯留部と、前記記録ヘッドからインクを排出させる回復動作を行う回復手段と、前記インクタンクが取り外される前に前記回復動作を行い、前記貯留部に貯留されたインクが前記インクタンクに流入するよう制御する制御手段と、を具えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、着脱可能なインクタンクを用い、インクを吐出して記録媒体記録を行う記録ヘッドにインクを供給するインク供給装置において、前記インクタンクに接続されて前記インクタンクに収容されたインクを前記記録ヘッドにインクを導入するための供給部と、前記インクタンクに接続されて前記インクタンクの内部を大気に連通させるための連通部と、前記連通部の途中に設けられ、前記インクタンクから漏洩するインクを貯留可能な室と、前記インクタンクが取り外される際、これに先立って前記記録ヘッドからインクを強制排出させて前記インクタンク内を負圧にすることで、前記室内のインクを前記インクタンクに移送するための手段と、を具えたことを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、上記インク供給装置を具えたインクジェット記録装置に存する。
【発明の効果】
【0013】
以上の構成によれば、インクタンクを取り外すに先立ち、室に貯留されたインクをインクタンク内に移送することができる。その結果、メインタンクを外して装置を移動させる場合であっても、インク供給装置からインクが漏洩しないこととなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略の構成を示す斜視図である。
【0016】
201は記録ヘッドを、202はキャリッジを、203は搬送ローラを、204はメインタンクを、205はインク供給ユニットを、206はインク供給チューブを、207は回復ユニットを、それぞれ示している。また、Sは記録媒体であり、一般記録紙(普通紙)、特殊紙、OHPフィルム等とすることができる。
【0017】
本実施形態におけるインクジェット記録装置は、キャリッジ202に搭載された記録ヘッド201の移動(主走査)の過程で、その動きと同期させながら記録ヘッド201から、文字や記号、画像等のデータに応じ、選択的にインクを吐出させる。また、そのような主走査後に、搬送ローラ203により記録媒体Sが所定ピッチ搬送(副走査)される。そしてこれらの主走査と副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体Sに文字や記号、画像等が形成される。
【0018】
なお、記録ヘッド201を搭載するキャリッジ202は、主走査方向に延在する2本のガイドレール250に摺動自在に支持され、モータ(不図示)等の駆動手段により往復移動される。また、記録媒体Sは、搬送ローラ203により、記録ヘッド201のインク吐出口が設けられた面(吐出面)と一定距離を維持しながら、キャリッジ202の移動方向(主走査方向)と交差する方向(矢印A方向)に搬送される。
【0019】
ここで、記録ヘッド201は、それぞれ異なる色のインクを吐出するための複数の吐出口列を有する。記録ヘッド201から吐出されるインクの色に対応して、複数の独立したインク供給源としてのインクタンク(以下、メインタンクと言う)204が、インク供給ユニット205に着脱可能に装着される。インク供給ユニット205と記録ヘッド201とは、それぞれインクの色に対応した複数のインク供給チューブ206によって接続さる。メインタンク204はインク供給ユニット205に装着され、メインタンク204内に収納された各色のインクを、記録ヘッド201の各吐出口列に独立して供給することが可能である。
【0020】
記録ヘッド201の往復移動範囲内で、かつ、記録媒体Sの通過範囲外の領域である非記録領域には、回復ユニット207が、記録ヘッド201の吐出面と対向するように配置されている。この回復ユニット207は、例えば昇降可能に支持されたキャップ207aを有し、吐出面との対向時にこれを上昇させることでキャッピングを行うものとすることができる。そして、非記録時に記録装置のキャッピングを行うことで、記録ヘッド201の吐出口からのインク溶剤の蒸発の防止や、記録ヘッドの保護を行うことができる。また、記録ヘッドをキャッピングした状態でキャップ内に負圧を発生させることにより、吐出口内の増粘インクや塵埃、気泡などの吐出口の目詰まり等をもたらす吐出不良要因である異物を排出(吸引)する。このような吐出口内の吐出不良要因である異物を吸引して排出することによって、吐出性能を良好な状態に回復または維持する回復処理を行うことができる。
【0021】
図2は、図1に示すインクジェット記録装置の、特にインク系に関する詳細な構成について説明するための図である。本図では、簡潔に説明をするために、複数のインク色のうち1色のみのインク系について説明している。
【0022】
本実施形態における記録ヘッド201の吐出口201gは微細なノズルの一端として形成されている。そして、弁機構を有さずに、毛細管力によりノズルにインクを充填して吐出口にインクのメニスカスを形成する。一方、この吐出口でのメニスカス保持力と平衡する負圧をノズルに作用させることにより、吐出口からのインクの漏れや大気からの空気の進入をなくしている。ノズルの吐出口201g近傍には電気熱変換素子(ヒータ)の形態の吐出エネルギ発生素子が配置される。そして、その駆動によってインクに膜沸騰を生じさせることで吐出口201gからインクを押し出す(吐出する)ことができる。この吐出動作後には、ノズルの毛細管力により、インクは随時メインタンク204からチューブ206を介して移動し、ノズル内に再びインクが充填される。
【0023】
記録ヘッド201の内部には、インク供給系の上流側から吐出口201gに塵埃や気泡等が移動するのを防止するための微細なメッシュ構造のフィルタ201cが配置された流路201fが設けられている。また、フィルタ201cの上流側には、メインタンク204からチューブ206を介して供給されるインクを一定量蓄えるサブタンク201bが配置されている。
【0024】
メインタンク204と供給ベース(供給ユニット)205とは、供給ベース205に固定された2本の中空針205aおよび205bがメインタンク204の底面に設けられた液体コネクタ204aおよび204bにそれぞれ取り付けられることで結合する。中空針205aおよび205bは、それぞれの先端が液体コネクタ204aおよび204bを介してメインタンク204内に突入する。なお、液体コネクタは、例えば中空針の挿通を受容するゴム栓を有するものとすることができる。中空針205aの他端は液路205d、後述の遮断弁210および液路205cを介してチューブ206に接続され、これによって記録ヘッド201へのインク供給が可能である。一方、中空針205bの他端は、供給ベース205の内部に設けられたバッファ室205fに接続され、このバッファ室205fは、大気連通口205gを介して大気に開放されている。
【0025】
記録ヘッド201によるインク吐出に伴ってメインタンク204内のインクが消費されてゆくと、その内部の負圧が高まる。これに応じて、大気連通口205g、バッファ室205fおよび中空針205bを介して、メインタンク204内に記録ヘッド210側に供給したインク量に見合う分の大気が導入される。これにより、メインタンク204内の負圧が解消され、記録ヘッド201への安定したインク供給が確保される。
【0026】
一方、環境変動(例えば環境温度の上昇)が生じた場合、メインタンク204内に存在している空気が膨張すると、メインタンク204内のインクは中空針205bを介してバッファ室205fに流出する。ここで、インクタンク204内に存在するエアの体積をVとすると、環境温度が△t℃上昇した際に膨張する体積△Vは、△V=V×△t/273となる。従って、バッファ室205fには△Vに相当するインクが流れ込むことになる。これにより、メインタンク204内の圧力上昇が緩和されるともに、外部へのインク漏洩を防止することができる。
【0027】
ここで、バッファ室205fは、その底部付近において中空針205bと連通する構造となっている。バッファ室205f内にインクが貯留されている状態でメインタンク204のインクが消費されると、メインタンク204内の負圧により、バッファ室205fのインクがメインタンク204に戻され、バッファ室205fの液面が下がる。中空針205bの下端より下までバッファ室205fの液面が下がると、中空針205bの下端が空気に触れ、中空針205bの下端から空気が取り込まれてメインタンク204内に流入する。空気の過剰な流入あるいは環境変動が生じてメインタンク204の内力が上昇した場合には、再びインクがバッファ室205fへ流出する。すると、バッファ室205f内のインクの液面が上がり、中空針205bの下端が再びインク内に浸かることになる。
【0028】
このような構造により、記録の進捗に伴って徐々にメインタンク204内のインクが消費されてゆく一方、メインタンク204との間の空気およびインクの交換を通じ、バッファ室205fにはある程度のインクが貯留されることになる。
【0029】
中空針205aおよび中空針205bにはインクの電気抵抗を測定する回路205hが接続されており、メインタンク204内のインクの有無を検出することができる。この回路205hは、メインタンク204内にインクが存在している状態では、メインタンク204内のインクを介して回路205hに電流が流れるため閉成される。一方、インクが存在しない、またはメインタンク204が装着されていない状態では電流が流れず、開回路すなわち抵抗無限大となることで、それらの状態を検出する。
【0030】
液路205dとチューブ206との間に介挿される遮断弁210は、ゴム等の弾性材からなるダイアフラム210aを有し、このダイアフラム210aを変位させることにより2つの液路205cおよび205dの接続部の開閉を行うことができる。ダイアフラム210aの上面には、押圧ばね210cを内部に保持する筒状のばねホルダ210bが取り付けられている。この押圧ばね210cによりダイアフラム210aを押圧することにより、液路205cおよび205d間の流路が遮断される。
【0031】
ばねホルダ210bは、後述する回復ユニット207のリンク207eにより作動するレバー210dが係合するフランジを有する。そして、レバー210dを作動させることにより、押圧ばね210cのばね力に抗してばねホルダ210bを上昇させる。これにより、液路205cおよび205dが連通状態となる。ここで、遮断弁210は、記録ヘッド201がインクを吐出する状態すなわち記録状態では流路を開き、記録ヘッド201へのインク供給が行われるようにする。一方、インク吐出を行わない待機ないしは休止中、すなわち非記録状態では流路を遮断する。
【0032】
上述のインク供給ユニット205の構成は、レバー210dを除き、メインタンク204ごと、すなわちインクの色ごとに設けられている。レバー210dについては、全色のメインタンクに共通に設けられ、全ての色についての遮断弁210を同時に開閉させるものとすることができる。
【0033】
本実施形態の回復ユニット207は、上記キャッピングおよび回復処理を行うとともに、遮断弁210の開閉制御を行うものであり、これらについて説明する。回復ユニット207は、記録ヘッド201の吐出面をキャッピングする吸引キャップ207aと、遮断弁210のレバー210dを作動させるリンク207eとを有する。回復処理は、上述のように、吐出口の目詰まり等をもたらす吐出不良要因である異物を除去し、吐出性能を良好な状態に回復または維持するための処理である。回復処理に際しては、吸引キャップ207aにより吐出面をキャッピングした状態で、吸引ポンプ207cを作動させて、キャップ207a内に発生した負圧により吐出面に吸引力を作用させることで、吐出口201gからインクを勢いよく強制排出させる。
【0034】
吸引キャップ207aは、少なくとも吐出面と接触する周縁部分がゴム等の弾性部材で構成され、吐出面を密閉する位置と記録ヘッド201から退避した位置との間で移動可能に設けられている。吸引キャップ207aには、チューブポンプ等の吸引ポンプ207cが介挿されたチューブが接続されており、ポンプモータ207dによって吸引ポンプ207cを駆動することで、連続吸引を行うことができる。
【0035】
カム207bは吸引キャップ207aの移動および位置設定を行うものであり、カム制御モータ207gにより、リンク207eを動作させるカム207fと同期して回転駆動される。カム207bの図示の位置a、bおよびcは、それぞれ、カム207fの位置a、bおよびcに対応している。すなわち、カム207bが位置a、bおよびcで吸引キャップ207aと接触しているとき、カム207fがそれぞれ位置a、bおよびcでリンク207eと接触する。より具体的に言えば、位置aでは、カム207bは吸引キャップ207aを記録ヘッド201の吐出面から離間させる一方、カム207fはリンク207eを図の右方向に変位させてレバー210dを押し上げ、遮断弁210を開かせる(以下、位相Aという)。位置bでは、カム207bは吸引キャップ201gを吐出面に密着させる一方、カム207fはリンク207eを図の左方向に変位させ遮断弁210を閉じさせる(以下、位相Bという)。位置cでは、カム207bは吸引キャップ207aを吐出面に密着させる一方、カム207fはリンク207eを図の右方向に変位させて遮断弁210を開かせる(以下、位相Cという)。
【0036】
記録動作の際には、カム207bおよび207fを位相Aに設定することで、吐出口201gからのインクの吐出、およびメインタンク204から記録ヘッド201へのインクの供給を可能とする。待機中および休止中を含む非記録動作時は、カム207b、207fを位相Bに設定することで、キャッピングにより吐出口201gの乾燥を防止するとともに、インク供給経路の閉塞により記録ヘッド201からのインクの流出を防止する。
【0037】
これらに対し、メインタンクの取り外しを伴う作業時に設定されるのが位相Cであり、これが本実施形態の特徴をなすものである。以下、メインタンク取り外しを伴う作業について説明する。
【0038】
メインタンク204内部のインクが減少し、電気抵抗を検出する回路205hが開回路状態を検出すると、その旨がユーザに報知され、ユーザはメインタンクの交換作業を行うことになる。また、インク残量がある場合でも、ユーザが何らかの理由でメインタンクを取り外す場合もある。そして、メインタンクを取り外した状態で、記録装置を別の場所に移動させるべく運搬する作業が行われる場合もある。
【0039】
いずれの場合においても、上記記録装置の構造では、記録の進捗に伴って徐々にメインタンク204内のインクが消費されてゆく一方、メインタンク204との間の空気およびインクの交換を通じ、バッファ室205fにはある程度のインクが貯留されている。
【0040】
図3は、メインタンク204を取り外した状態の例を示す図であり、メインタンク204には斜線で示すようにインクが残っている一方、バッファ室205fに流れ込んだインクがそのまま残留している。この状態で、記録装置を移動させると、記録装置の移動時の姿勢や振動などにより、バッファ室205fに残留していたインクがインク供給針205bおよび大気連通孔205gを通って装置外部へと漏出する恐れがある。
【0041】
本実施形態は、かかる不都合を以下の構成によって未然に防止するものである。
【0042】
図4は本実施形態のインクジェット記録装置の制御回路の構成例を示すブロック図である。図4において、101はプログラマブル・ペリフェラル・インターフェイス(以下PPIとする)を示す。PPIは、ホストコンピュータ100から送られてくる指令信号(コマンド)や記録データを含む記録情報信号を受信してMPU102に転送するとともに、ホストコンピュータ100に対しては必要に応じ記録装置のステータス情報を送出する。また、ユーザが記録装置に対して各種設定を行う設定入力部やユーザに対してメッセージを表示する表示部などを有したコンソール106との間で入出力を行う。さらに、キャリッジ202ないし記録ヘッド201がホームポジションにあることを検出するホームポジションセンサや、キャッピングセンサ、電気抵抗測定回路205hなどを含むセンサ群107よりの信号入力を受容する。
【0043】
MPU(マイクロプロセッシングユニット)102は、制御用ROM105に記憶された図5について後述する処理手順に対応した制御プログラムに従って、記録装置内の各部を制御する。103は受信した信号を格納し、あるいはMPU102のワークエリアとして使用され、また各種データを一時的に記憶するためのRAMである。104はフォント発生用ROMで、コード情報に対応して文字や記録等のパターン情報を記憶しており、入力したコード情報に対応して各種パターン情報を出力する。121はRAM103等に展開された記録データを記憶するためのプリントバッファであって、M行記録分の容量を持つ。制御用ROM105には制御プログラムや制御データ等に対応した固定データを格納しておくことができる。これらの各部は、アドレスバス117およびデータバス118を介して、MPU102により制御される。
【0044】
3は、キャリッジ202を移動させることで記録ヘッド201を主走査させるための主走査モータ、5は搬送ローラ203を駆動することで記録媒体Sを副走査(搬送)させるための副走査モータである。113、114、115および116は、それぞれ、カム制御モータ207g、ポンプモータ207d、主走査モータ3および副走査モータ5をMPU102の制御に応じて駆動するためのモータドライバである。
【0045】
109はシートセンサであり、記録媒体Sの有無、すなわち記録媒体が記録ヘッドによる記録が可能な位置に供給されたか否かを検知する。111は記録情報信号に応じて記録ヘッド201の電気熱変換素子(ヒータ)を駆動するためのドライバを示している。124は上記各部へ電源を供給する電源部であり、駆動電源装置としてACアダプタと電池とを有している。
【0046】
図5は、記録装置を移動させるときに実施されるシーケンスを説明するフローチャートである。このシーケンスは、ユーザがメインタンク204を取り外した状態で記録装置を移動させる(例えば輸送する)ことを望む場合に実行するものであり、例えばホストコンピュータ100からの指示に応じて起動されるものとすることができる。あるいは、記録装置に設けたスイッチ等を利用して起動されるものであってもよい。
【0047】
通常の状態から本シーケンスを開始させると、まず、キャッピングの動作に入る(S1)。このキャッピング動作は、カム制御モータ207gを駆動して、カム207bと207fとを位相Cまで回転させることにより行なう。すなわちこのとき、吸引キャップ207aが吐出面に密着する一方、遮断弁210はインク供給経路を連通させる。
【0048】
次に、ポンプモータ207dを駆動して吸引動作を行う(S2)。このようにキャッピング状態でポンプモータ207dを駆動することにより、流路201f、サブタンク201b、チューブ206およびインク流路205c等を介して、メインタンク209へと吸引圧が伝播する。そして、バッファ室205fのインクがメインタンク204へと吸引される。また、流路201fから吸引されたインクは、ポンプ207cから逐次排出される。
【0049】
図6は、上述したバッファ室205fおよびポンプ201fからインクを排出する状態を示す図である。
【0050】
同図において、カム207bと207fは、位相Cまで回転しており、バッファ室205fのインクがメインタンク204へと吸引され、流路201fから吸引されたインクが、ポンプ207cから排出されている。
【0051】
ここで、ポンプ207cは、所定のインク吸引量が得られるよう適切に(本例のように駆動時間と流量とが比例するチューブポンプであれば一定時間)、駆動される。所定のインク吸引量とは、本例ではメインタンク内のエアが膨張する最大容積分である。すなわち、メインタンク内容積をVとすると、メインタンク内に存在する最大エア量はVとなる。想定する最大の環境温度差を△t℃とすると、タンク内のエアが最大に膨張する体積△Vmaxは、△Vmax=V×△t/273となる。従って、バッファ室205fには最大限、△Vmaxに相当するインクが流れ込み得る。よって、この△Vmaxの量に相当するインクを吸引すれば、どのような場合でもバッファ室205fに残留していたインクは実質的に全て吸引されて、メインタンク204内へと導かれる。なお、想定する環境温度差△tは、装置が設置される地域や使用環境に応じて適宜定め得ることは勿論である。
【0052】
また、記録画像のドットをカウントする等の手段を利用して装置がメインタンク内のインク消費量を記憶している場合には、消費したインク量に従ってメインタンク内に増加するエア量に従い吸引量を調節することで、余分なインクの排出を防ぐことができる。すなわち、メインタンク内に初期に内在するエア量をVとすると、消費したインク量Vに従って増加するメインタンク内の全エア量VはV+Vでとなる。このメインタンク内の全エア量Vは、通常、インクタンク内容積Vよりも少ない。タンク内のエアが膨張する体積△Vは、△V=(V+V)×△t/273となるので、この△V(<△Vmax)に相当する量のインク吸引を行えばよい。この場合、上述した場合よりも少ないポンプ駆動量すなわちインク吸引量で、バッファ室205fのインクを実質的に全てメインタンク204内に移動させることができる。
【0053】
次に、この吸引動作が終了した時点で、メインタンク204の取り外しを許可する(S3)。すなわち、バッファ室205fの残留インクが実質的にない状態で、メインタンク204を取り外すことができる。
【0054】
さらに、インク供給系からインクを全て抜くべく、ポンプモータ207dを駆動して吸引動作を行う(S4)。ここでもポンプモータ207dないしポンプ207cは適切に(例えば一定時間)駆動される。このときの吸引量は、液路201f、サブタンク201b、チューブ206およびインク流路205cの全内容量に相当する量とする。これにより、インク供給系のインクを全て排出することができる。
【0055】
この状態で装置を輸送すると、バッファ室205fを含め、インク供給系からインクは全て排出されているので、輸送時のインク漏洩を防止することができる。なお、バッファ室205fの底面からの中空針205の他端の高さに対応した量のインクはバッファ室205fに残留し得るが、その残留インク量が問題とならないよう、中空針205bの他端の位置を定めておけばよい。
【0056】
なお、以上の実施形態では、記録ヘッドの吐出面に吸引力を作用させることで吐出口からインクを強制排出させ、これに伴いメインタンク内を負圧にすることでバッファ室からインクをメインタンク側へ移動させてバッファ室から残留インクを除去する構成とした。しかしバッファ室からインクをメインタンク側へ適切に移動させることができるものであれば、本発明はそのような吸引力の作用によるものに限られない。例えば、インク供給系を加圧することで吐出口からインクを強制排出させ、これに伴いメインタンク内を負圧にすることでバッファ室からインクをメインタンク側へ移動させる構成を採用することも可能である。
【0057】
また、以上では所謂シリアルプリンタ形態のインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明した。しかしながら本発明は、記録媒体の幅に対応する範囲にわたって吐出口を整列させてなる所謂ラインプリンタ形態のものにも適用可能であることは言うまでもない。
【0058】
また、用いるインクの色調(色や濃度)の種類数などはあくまでも例示であって、適宜の種類のインクを使用可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置のインク供給系の詳細な構成を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置からメインタンクを外したときの図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の制御回路の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る搬送時の処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の大気連通室からインクを吸引する挙動を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
201 記録ヘッド
201b サブタンク
201g 吐出口
202 キャリッジ
203 搬送ローラ
204 メインタンク
205 供給ベース
205a、205b 中空針
205f バッファ室
206 チューブ
207 回復ユニット
207a 吸引キャップ
207c 吸引ポンプ
207d モータ
210 遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクタンクから液路を介して供給されるインク吐出する記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置において、
前記インクタンクの内部を大気に連通させるための連通路の途中にあって、前記インクタンク内のインクを貯留する貯留部と、
前記記録ヘッドからインクを排出させる回復動作を行う回復手段と、
前記インクタンクが取り外される前に前記回復動作を行い、前記貯留部に貯留されたインクが前記インクタンクに流入するよう制御する制御手段と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
着脱可能なインクタンクを用い、インクを吐出して記録媒体記録を行う記録ヘッドにインクを供給するインク供給装置において、
前記インクタンクに接続されて前記インクタンクに収容されたインクを前記記録ヘッドにインクを導入するための供給部と、
前記インクタンクに接続されて前記インクタンクの内部を大気に連通させるための連通部と、
前記連通部の途中に設けられ、前記インクタンクから漏洩するインクを貯留可能な室と、
前記インクタンクが取り外される際、これに先立って前記記録ヘッドからインクを強制排出させて前記インクタンク内を負圧にすることで、前記室内のインクを前記インクタンクに移送するための手段と、
を具えたことを特徴とするインク供給装置。
【請求項3】
前記強制排出は、前記記録ヘッドのインクを吐出する吐出口から吸引を行う吸引手段を用いて行われることを特徴とする請求項2に記載のインク供給装置。
【請求項4】
前記手段は、前記インクタンクの内容積と環境温度差とに基づき前記強制排出する量を決定することを特徴とする請求項2または3に記載のインク供給装置。
【請求項5】
前記吸引手段は、前記インクタンクの容積と前記インクの使用量と環境温度差とに基づき前記強制排出する量を決定することを特徴とする請求項2または3に記載のインク供給装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれかのインク供給装置を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−105219(P2008−105219A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288739(P2006−288739)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】