説明

インジェクタ

【課題】燃料ギャラリーを備えて複数のインジェクタでエンジンの吸気通路に気体燃料を供給する燃料供給装置について、コストアップを伴うことなくスリム化を実現して優れた装着性を確保できるようにする。
【解決手段】燃料連結パイプ50で互いに直列的且つサイドフィード式に連結されてエンジンの吸気通路に気体燃料を噴射・供給するインジェクタ1Aにおいて、その本体ケーシングであるヨーク1a側面対角位置に、燃料連結パイプ50と連結させてこの燃料連結パイプ50内とヨーク1a内部とを接続させる接続構造である連結孔12,13を対で備えており、このヨーク1aが燃料ギャラリーを構成するためのインジェクタハウジングを兼ねたものとされ、このヨーク1a内周面とインジェクタ駆動機構16の外周面との間に形成した燃料通路が、燃料ギャラリーの一部であるギャラリー室10aを兼ねる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに気体燃料を噴射・供給するインジェクタに関し、殊に、各気筒のピッチ寸法に一致するように燃料連結パイプで互いに連結されてなる燃料ギャラリーを介してサイドフィード式に燃料が供給される気体燃料用のインジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃料供給システムにおいて、燃料ボンベ圧により送出され、ベーパライザにより調圧された燃料を各気筒に所定圧力を維持して分配する燃料ギャラリーは、例えば特開平7−332185号公報や特開2006―118410号公報に記載され、図3に示す燃料供給装置のように、エンジンの吸気マニホルドにおけるインジェクタ1B,1B,・・の各ピッチ寸法に正確に合致させる長さを有する複数の燃料連結パイプ50の内側空間と、これらで連結された複数のインジェクタハウジング5の内側空間(ギャラリー室)とで構成されている。
【0003】
そして、このような燃料ギャラリーに配設されるサイドフィード式のインジェクタ1Bは、図2の縦断面図に示すような状態でインジェクタハウジング5内に配設されており、インジェクタ1B上流にあるレギュレータにより調圧された燃料が、燃料連結パイプ50からインジェクタハウジング5内で燃料ギャラリーの一部を構成する空間としてのギャラリー室10b内に導かれる。
【0004】
ギャラリー室10b内部では、燃料がインジェクタ1Bの本体ケーシングであるヨーク1b内の燃料通路10cへと導かれ、電子制御ユニットからの指令による噴射量でインテークマニホルド内に気体燃料が供給される。また、噴射されない他の燃料は、燃料連結パイプ50を通って隣接するインジェクタ1Bを内装したインジェクタハウジング5内部に送られる。
【0005】
しかしながら、このような従来のインジェクタ1Bの燃料供給構造においては、インジェクタ1Bの外周を覆うように燃料ギャラリーの一部であるギャラリー室10bを形成するインジェクタハウジング5があることに加え、インジェクタ1Bのヨーク1a内側にも燃料通路が必要となる。このようにインジェク半径方向に2層の燃料通路が存在することが、吸気通路への燃料供給手段のスリム化を困難なものとしており、装着する車種によっては他部品との干渉が生じたり装着自体が不可能となったりして、その装着性を大きく低下させる原因の一つとなっている。
【特許文献1】特開平7−332185号公報
【特許文献2】特開2006―118410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、燃料ギャラリーを備えて複数のインジェクタでエンジンの吸気通路に気体燃料を供給する燃料供給装置について、コストアップを伴うことなくスリム化を実現して優れた装着性を確保できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、燃料連結パイプにより互いに直列的且つサイドフィード式に連結されてエンジンの吸気通路に気体燃料を噴射・供給するインジェクタにおいて、該インジェクタの本体ケーシング側面対角位置に、前記燃料連結パイプに連結させて該燃料連結パイプ内と前記本体ケーシング内部とを接続させる接続構造を対で備えており、前記本体ケーシングが燃料ギャラリーを構成するためのインジェクタハウジングを兼ねており、前記本体ケーシング内周面とインジェクタ駆動機構の外周面との間に形成した燃料通路が、燃料ギャラリーの一部であるギャラリー室を兼ねていることを特徴とする。
【0008】
インジェクタとインジェクタハウジングとを一体化させて、インジェクタの本体ケーシング内側の燃料通路が燃料ギャラリーの一部を兼ねる構成としたことにより、インジェクタハウジング内側に二重の燃料通路を要していた従来の燃料供給装置と比較して装置全体のスリム化が容易なものとなる。
【0009】
また、この場合、そのギャラリー室の燃料通路面積が、同容量の燃料供給装置でインジェクタハウジング内に形成されるギャラリー室の燃料通路面積と同等以上の大きさを有するものとすれば、装置のスリム化を実現しつつ必要な燃料供給量を確保しやすいものとなる。
【0010】
さらに、上述したインジェクタにおいて、そのギャラリー室を形成する壁体の一部が、インジェクタを駆動させるための磁気回路の一部を構成するものとすれば、インジェクタの弁開閉機能を損なうことなく装置のスリム化が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
インジェクタとインジェクタハウジングを一体にした本発明によると、コストアップを伴うことなく装置のスリム化が実現できるものとなり、優れた装着性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明における実施の形態のインジェクタ1Aの縦断面図を示しており、本体ボディであるヨーク1aの側面には、燃料連結パイプ50との接続構造である連結孔12,13が対角位置に設けられており、インジェクタハウジングを要することなく隣接するインジェクタ1A,1A同士を直接接続できるようになっている。
【0014】
そして、インジェクタ1Aは、磁気コイル・固定鉄心・可動鉄心等を内装した略円柱状のインジェクタ駆動機構16を中心部に有しており、このインジェクタ駆動機構16の外周面と、ヨーク1aの内周面との間に所定幅の空間が形成されており、この空間が弁構造部11までの燃料通路になり、且つ、連結孔12,13の内側部分とともに燃料ギャラリーの一部を構成するギャラリー室10aを兼ねている点を特徴としている。尚、ギャラリー室10aの内周面を形成するインジェクタ駆動機構16の外周壁は、磁気回路の一部を構成するようになっており、インジェクタ1Aにおける弁構造部11の開閉動作を確保するようになっている。
【0015】
このギャラリー室10aは、図2に示した従来のインジェクタ1Bのヨーク1b外周面とインジェクタハウジング5内周面との間に形成されたギャラリー室10bが有する燃料通路面積と同等以上の大きさを有しており、燃料ギャラリーとして充分な量の燃料を通過させるようになっており、連結孔12,13及び燃料連結パイプ50を介して隣接するインジェクタ1A,1A間の燃料の流通を確保できるようになっている。
【0016】
このインジェクタ1Aの機能は、基本的に従来タイプのインジェクタ1Bと同様であり、上流からの気体燃料が燃料連結パイプ50、連結孔12を介して直接インジェクタ1Aの内側空間であるヨーク1a内部のギャラリー室10aに流入し、下方の弁構造部11から吸気通路内に噴射され、他の気体燃料はインジェクタ駆動機構16の周囲を回って連結孔13、燃料連結パイプ50を介して下流側のインジェクタ1Aに送られる。
【0017】
このように、本実施の形態のインジェクタ1Aは、機能的には従来のインジェクタ1Bと同等であるが、その本体ボディであるヨーク1aが従来例におけるインジェクタハウジング5と一体化されて、連結孔12,13を側面に備えているとともにヨーク1a内部の燃料通路がギャラリー室10aを兼ねている。
【0018】
そのため、従来例においてインジェクタハウジング5にインジェクタ1Bを内装してインジェクタ半径方向に二重の燃料通路を備えて径が大きくなっていたのに対し、インジェクタ1Aは、ヨーク1a内部の燃料通路がギャラリー室10aを兼ねて単層とされ、その径が格段に縮小されて極めてスリムな形状となっており、燃料ギャラリーを含む燃料供給装置全体も小型化(スリム化)されている。
【0019】
また、このように燃料供給装置全体の体積が縮小されたことで、装着先のエンジンルーム内において隣接する他部品と干渉したり装着不能となったりするような問題を最小限に抑えることが可能となった。
【0020】
以上、述べたように、燃料ギャラリーを備えて複数のインジェクタでエンジンの吸気通路に気体燃料を供給する燃料供給装置について、本発明によりコストアップを伴うことなくスリム化が可能となり、その装着性を大きく向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態を示す縦断面図。
【図2】従来例を示す縦断面図。
【図3】従来例のインジェクタを備えた燃料供給装置の正面図。
【符号の説明】
【0022】
1A インジェクタ、1a ヨーク、5 インジェクタハウジング、10a ギャラリー室、11 弁構造部、12,13 連結孔、50 燃料連結パイプ、16 インジェクタ駆動機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料連結パイプにより互いに直列的且つサイドフィード式に連結されてエンジンの吸気通路に気体燃料を噴射・供給するインジェクタにおいて、該インジェクタの本体ケーシング側面対角位置に、前記燃料連結パイプに連結させて該燃料連結パイプ内と前記本体ケーシング内部とを接続させる接続構造を対で備えており、前記本体ケーシングが燃料ギャラリーを構成するためのインジェクタハウジングを兼ねており、前記本体ケーシング内周面とインジェクタ駆動機構の外周面との間に形成した燃料通路が、燃料ギャラリーの一部であるギャラリー室を兼ねていることを特徴とするインジェクタ。
【請求項2】
前記ギャラリー室の燃料通路面積が、同容量の燃料供給装置で前記インジェクタハウジング内に形成される前記ギャラリー室の燃料通路面積と同等以上の大きさを有していることを特徴とする請求項1に記載したインジェクタ。
【請求項3】
前記ギャラリー室を形成する壁体の一部が、前記インジェクタを駆動させるための磁気回路の一部を構成していることを特徴とする請求項1または2に記載したインジェクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−275532(P2009−275532A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125375(P2008−125375)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】