説明

インタラクティブシステム、インタラクティブシステムの制御方法、およびプロジェクター

【課題】発信器からの情報を検知できない状態となることを低減するインタラクティブシステムを提供する。
【解決手段】インタラクティブシステム1は、複数のプロジェクター100,200と、コンピューター300と、光信号を発信する発信器(発光ペン400)とを備え、複数のプロジェクターは、それぞれが投写する投写画像を同一の投写領域に重畳させて表示させるように設置される。それぞれのプロジェクターは、投写画像を含む範囲を撮像して光信号に基づく第1の光信号情報を検知する撮像部50を有し、第1の光信号情報と他のプロジェクターが検知した光信号に基づく第2の光信号情報とに基づいて、第3の光信号情報を形成する。プロジェクターは、第3の光信号情報に基づいて、投写する画像に所定の処理を施す。コンピューター300は、第3の光信号情報に基づき、画像信号が表す画像に含まれるオブジェクトを操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インタラクティブシステム、インタラクティブシステムの制御方法、およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パソコンの画像をプロジェクターによってホワイトボードに投写し、赤外線等の発信機能を備えるマーカーで板書すると、その位置をホワイトボードに装備された座標読取装置で検知し、その位置および軌跡をパーソナルコンピューターに取り込ませることができるインタラクティブシステムが知られている。また、このようなインタラクティブシステムでは、マーカーで投写画面上をクリックすると、パーソナルコンピューターに所定の操作を実行させることが可能になっている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、このようなインタラクティブシステムでは、座標読取装置をホワイトボードに装備する必要があり、大掛かりなシステムとなってしまうという問題があった。そこで、プロジェクターにカメラ等の撮像装置を備え、赤外線を発信するマーカーの位置を撮像して検知し、パーソナルコンピューターに通知するインタラクティブシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−233999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プロジェクターに撮像装置を備えたインタラクティブシステムでは、ユーザーが、プロジェクターの投写画面の前でマーカーを用いて文字や図形の情報を入力する際に、ユーザーに遮られてマーカーから発信される情報を撮像装置(カメラ)で撮像できない場合があった。このような場合には、パーソナルコンピューターに、マーカーの位置や軌跡、操作情報等を通知することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るインタラクティブシステムは、複数のプロジェクターと、前記複数のプロジェクターに画像信号を供給するコンピューターと、所定の操作に基づき光信号を発信する発信器と、を備えたインタラクティブシステムであって、前記複数のプロジェクターは、前記複数のプロジェクターがそれぞれ投写する投写画像を、同一の投写領域に重畳させて表示させるように設置され、前記複数のプロジェクターのそれぞれは、光源から射出された光を前記画像信号に応じて変調して、前記投写画像として投写面に投写する画像投写部と、前記投写画像を含む範囲を撮像して前記光信号に基づく第1の光信号情報を検知する撮像部と、前記複数のプロジェクターの少なくとも一つのプロジェクターが検知した前記光信号に基づく第2の光信号情報の入力を行う光信号入力部と、前記第1の光信号情報と前記第2の光信号情報とに基づいて、第3の光信号情報を形成する光信号情報処理部と、前記第3の光信号情報に基づいて、前記画像投写部が投写する画像に所定の処理を施す画像情報処理部と、前記第3の光信号情報を前記コンピューターおよび前記少なくとも一つのプロジェクターに出力する光信号出力部と、を有し、前記コンピューターは、前記第3の光信号情報に基づき、前記画像信号が表す画像に含まれるオブジェクトを操作するオブジェクト操作部を有することを特徴とする。
【0008】
このようなインタラクティブシステムによれば、複数のプロジェクターとコンピューターと発信器とを備えている。複数のプロジェクターは、投写画像を、同一の投写領域に重畳させて表示する。複数のプロジェクターはそれぞれ、画像投写部と撮像部と光信号入力部と光信号情報処理部と画像情報処理部と光信号出力部とを有している。撮像部は、投写画像を含む範囲を撮像して光信号に基づく第1の光信号情報を検知する。光信号情報処理部は、第1の光信号情報と複数のプロジェクターの少なくとも一つのプロジェクターから入力した第2の光信号情報とに基づいて、第3の光信号情報を形成する。例えば、第1の光信号情報と第2の光信号情報のいずれかを用いて第3の光信号情報を形成したり、第1の光信号情報と第2の光信号情報とを合成して第3の光信号情報を形成したりする。画像情報処理部は、第3の光信号情報に基づいて画像に所定の処理を施す。コンピューターは、第3の光信号情報に基づき、画像信号が表す画像に含まれるオブジェクトを操作する。これにより、撮像部は、異なる方向から投写画像を含む範囲を撮像することができるため、ユーザーがプロジェクターの投写領域の前で発信器を用いる際に、ユーザーに遮られて発信器から発信される光信号情報を撮像部で検知できない状態となることを低減することができる。そして、プロジェクターは、画像に所定の処理を施すことが可能になる。また、コンピューターは、オブジェクトを操作することが可能になる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係るインタラクティブシステムにおいて、前記第1の光信号情報、前記第2の光信号情報および前記第3の光信号情報は、前記投写領域において前記光信号が発信された位置情報、前記光信号の発信パターン情報および前記光信号の軌跡情報のうちの少なくとも1つとすることを特徴とする。
【0010】
このようなインタラクティブシステムによれば、光信号情報は、光信号が発信された位置情報、発信パターン情報および軌跡情報のうちの少なくとも1つとする。これにより、コンピューターは、発信器が操作された位置情報や発信パターン、軌跡情報を認識することができる。そして、コンピューターが出力する画像信号が表す画像に含まれるオブジェクトを操作することができる。また、これらの情報により、プロジェクターの画像投写部が投写する画像に所定の処理を施すことができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るインタラクティブシステムにおいて、前記画像情報処理部が施す前記所定の処理は、前記第3の光信号情報における前記軌跡情報に基づいた描画処理であることを特徴とする。
【0012】
このようなインタラクティブシステムによれば、プロジェクターは、光信号情報の軌跡情報に基づいて、画像投写部が投写する画像に光信号の軌跡を描画することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係るインタラクティブシステムにおいて、前記コンピューターは、前記プロジェクターから入力した前記第3の光信号情報を記憶する情報記憶部をさらに有し、前記情報記憶部に記憶した前記第3の光信号情報に基づいた画像信号を前記複数のプロジェクターに供給することを特徴とする。
【0014】
このようなインタラクティブシステムによれば、コンピューターは、第3の光信号情報を記憶する。これにより、コンピューターは、記憶した第3の光信号情報に基づいた画像信号を複数のプロジェクターに供給することが可能になる。
【0015】
[適用例5]本適用例に係るインタラクティブシステムの制御方法は、光源から射出された光を画像信号に応じて変調して、投写画像として投写面に投写する画像投写部と、前記投写画像を含む範囲を撮像する撮像部とを有する複数のプロジェクターと、前記複数のプロジェクターに前記画像信号を供給するコンピューターと、所定の操作に基づき光信号を発信する発信器と、を備え、前記複数のプロジェクターは、前記複数のプロジェクターがそれぞれ投写する前記投写画像を、同一の投写領域に重畳させて表示させるように設置されているインタラクティブシステムの制御方法であって、前記複数のプロジェクターのそれぞれは、前記撮像部が撮像した前記光信号に基づく第1の光信号情報を検知する撮像ステップと、前記複数のプロジェクターの少なくとも一つのプロジェクターが検知した前記光信号に基づく第2の光信号情報の入力を行う光信号入力ステップと、前記第1の光信号情報と前記第2の光信号情報とに基づいて、第3の光信号情報を形成する光信号情報処理ステップと、前記第3の光信号情報に基づいて、前記画像投写部が投写する画像に所定の処理を施す画像情報処理ステップと、前記第3の光信号情報を前記コンピューターおよび前記少なくとも一つのプロジェクターに出力する光信号出力ステップと、を有し、前記コンピューターは、前記第3の光信号情報に基づき、前記画像信号が表す画像に含まれるオブジェクトを操作するオブジェクト操作ステップを有することを特徴とする。
【0016】
このようなインタラクティブシステムの制御方法によれば、撮像部は、異なる方向から投写画像を含む範囲を撮像することができるため、ユーザーがプロジェクターの投写領域の前で発信器を用いる際に、ユーザーに遮られて発信器から発信される光信号情報を撮像部で検知できない状態となることを低減することができる。そして、プロジェクターは、画像に所定の処理を施すことが可能になる。また、コンピューターは、オブジェクトを操作することが可能になる。
【0017】
[適用例6]本適用例に係るプロジェクターは、画像信号を供給するコンピューターと、所定の操作に基づき光信号を発信する発信器とともにインタラクティブシステムを構成する複数のプロジェクターであって、前記複数のプロジェクターは、前記複数のプロジェクターがそれぞれ投写する投写画像を、同一の投写領域に重畳させて表示させるように設置され、前記複数のプロジェクターのそれぞれは、光源から射出された光を前記画像信号に応じて変調して、前記投写画像として投写面に投写する画像投写部と、前記投写画像を含む範囲を撮像して前記光信号に基づく第1の光信号情報を検知する撮像部と、前記複数のプロジェクターの少なくとも一つのプロジェクターが検知した前記光信号に基づく第2の光信号情報の入力を行う光信号入力部と、前記第1の光信号情報と前記第2の光信号情報とに基づいて、第3の光信号情報を形成する光信号情報処理部と、前記第3の光信号情報に基づいて、前記画像投写部が投写する画像に所定の処理を施す画像情報処理部と、前記第3の光信号情報を前記コンピューターおよび前記少なくとも一つのプロジェクターに出力する光信号出力部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
このようなプロジェクターによれば、撮像部は、異なる方向から投写画像を含む範囲を撮像することができるため、ユーザーがプロジェクターの投写領域の前で発信器を用いる際に、ユーザーに遮られて発信器から発信される光信号情報を撮像部で検知できない状態となることを低減することができる。そして、画像に所定の処理を施すことが可能になる。
【0019】
[適用例7]本適用例に係るインタラクティブシステムは、複数の撮像装置と、プロジェクターと、前記プロジェクターに画像信号を供給するコンピューターと、所定の操作に基づき光信号を発信する発信器と、を備えたインタラクティブシステムであって、前記複数の撮像装置は、前記プロジェクターが投写する投写画像を含む範囲を撮像して前記光信号に基づく光信号情報を検知する撮像部と、前記プロジェクターに対して前記光信号に基づく光信号情報の出力を行う情報出力部と、を有し、前記複数の撮像装置は、異なる方向から前記投写画像を撮像するように設置され、前記プロジェクターは、光源から射出された光を前記画像信号に応じて変調して、前記投写画像として投写面に投写する画像投写部と、前記複数の撮像装置から前記光信号に基づく前記光信号情報の入力を行う情報入力部と、前記複数の撮像装置から入力された複数の前記光信号情報に基づいて、合成光信号情報を形成する光信号情報処理部と、前記合成光信号情報に基づいて、前記画像投写部が投写する画像に所定の処理を施す画像情報処理部と、前記合成光信号情報を前記コンピューターに出力する光信号出力部と、を有し、前記コンピューターは、前記合成光信号情報に基づき、前記画像信号が表す画像に含まれるオブジェクトを操作するオブジェクト操作部を有することを特徴とする。
【0020】
このようなインタラクティブシステムによれば、複数の撮像装置は、異なる方向から投写画像を含む範囲を撮像するため、ユーザーがプロジェクターの投写領域の前で発信器を用いる際に、ユーザーに遮られて発信器から発信される光信号情報を撮像装置で検知できない状態となることを低減することができる。そして、プロジェクターは、画像に所定の処理を施すことが可能になる。また、コンピューターは、オブジェクトを操作することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係るインタラクティブシステムの機器の配置を示す説明図。
【図2】スタック投写を行った場合の投写画像を簡略的に表す図。
【図3】インタラクティブシステムの構成を示すブロック図。
【図4】プロジェクターの位置検出処理のフローチャート。
【図5】第2の実施形態に係るインタラクティブシステムの機器の配置を示す説明図。
【図6】投写領域と撮像領域を簡略的に表す説明図。
【図7】インタラクティブシステムの構成を示すブロック図。
【図8】プロジェクターの位置検出処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態について説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、撮像部を有する複数のプロジェクターを備えたインタラクティブシステムについて説明する。
【0024】
図1は、第1の実施形態に係るインタラクティブシステムの機器の配置を示す説明図である。
図1では、発表者Hがプレゼンテーションを行っている態様を表している。図1に示すように、本実施形態のインタラクティブシステム1は、プロジェクター100と、プロジェクター200と、コンピューターとしてのパーソナルコンピューター(PC)300と、光信号を発信する発信器としての発光ペン400と、発光ペン400を保持した発表者Hと、ホワイトボード等の投写面Sとが表されている。
【0025】
プロジェクター100は、投写レンズ13とCCD(Charge Coupled Device)カメラ等からなる撮像部50とを有している。投写レンズ13から投写された投写画像は、投写面Sに投写される。撮像部50は、投写画像を含む範囲を撮像する。ここで、投写画像光は破線で表しており、撮像範囲は一点鎖線で表している。同様に、プロジェクター200は、投写レンズ213と撮像部250とを有している。投写レンズ213から投写された投写画像は、投写面Sに投写される。撮像部250は、投写画像を含む範囲を撮像する。ここで、プロジェクター100およびプロジェクター200は、異なる方向から投写面S上の同一の投写領域に重畳させて投写画像を表示、即ちスタック投写させるように設置されている。そして、プロジェクター100およびプロジェクター200は、スタック投写された投写画像を含む範囲を、それぞれ撮像する。
【0026】
プロジェクター100およびプロジェクター200は通信ケーブルC5を介して接続されており、情報の通信を行う。本実施形態では、通信ケーブルC5は、USB(Universal Serial Bus)ケーブルとする。
【0027】
PC300は、画像ケーブルC1および通信ケーブルC3を介してプロジェクター100と接続されている。また、PC300は、画像ケーブルC2および通信ケーブルC4を介してプロジェクター200と接続されている。PC300は、画像ケーブルC1を介してプロジェクター100に画像信号を出力し、画像ケーブルC2を介してプロジェクター200に同一の画像信号を出力する。また、PC300は、通信ケーブルC3を介してプロジェクター100と通信を行い、通信ケーブルC4を介してプロジェクター200と通信を行う。本実施形態では、画像ケーブルC1,C2は、アナログRGBのケーブルとし、通信ケーブルC3,C4は、USBケーブルとする。なお、画像ケーブルおよび通信ケーブルの種類は他の種別のケーブルとしてもよい。
【0028】
ここで、スタック投写について説明する。
図2は、スタック投写を行った場合の投写画像を簡略的に表す図である。
【0029】
図1に示したように2つのプロジェクター100,200を異なる方向から投写面S上の同一の投写領域に重畳させて投写画像を表示させた状態、即ちスタック投写させた状態について説明する。ここで、プロジェクター100とプロジェクター200は、同様の矩形状の画像を投写している。すると、投写面Sに対して斜め方向から投写するため、図2に示すように、プロジェクター100から投写された画像は、投写画像G1のように歪んだ四辺形となる。同様に、プロジェクター200から投写された画像は、投写画像G2のように、投写画像G1と逆方向に歪んだ四辺形となる。また、プロジェクター100の撮像領域P1も歪んだ四辺形となり、プロジェクター200の撮像領域P2も歪んだ四辺形となる。
【0030】
そして、プロジェクター100とプロジェクター200は、互いに連動して、投写画像G1および投写画像G2の重畳されている領域のうちの矩形部分を、重畳画像領域G3として算出する。この処理をスタック投写のキャリブレーション処理という。プロジェクター100およびプロジェクター200は、このスタック投写のキャリブレーション処理によって算出された重畳画像領域G3上に、入力画像に基づく画像が形成されるように、画像の補正処理を行う。
【0031】
さらに、プロジェクター100およびプロジェクター200は、それぞれ撮像領域P1上および撮像領域P2上における座標から重畳画像領域G3上の座標に変換する座標変換式を生成する。そして、この座標変換式を用いることでインタラクティブシステム1は、重畳画像領域G3上で操作された発光ペン400の位置情報(座標)を検出することができる。なお、座標変換式ではなく、座標変換のための変換テーブル(図示せず)を生成してもよい。
【0032】
図3は、第1の実施形態に係るインタラクティブシステム1の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、インタラクティブシステム1は、プロジェクター100と、プロジェクター200と、PC300と、発光ペン400と、投写面Sとを備えて構成されている。
【0033】
プロジェクター100は、画像投写部10、制御部20、操作受付部21、光源制御部22、画像信号入力部31、画像処理部32、OSD(オンスクリーンディスプレイ)処理部33、撮像部50、光信号情報変換部51、光信号情報処理部52、光信号情報記憶部53、通信部54等を備えて構成されている。
【0034】
画像投写部10は、光源11、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ12R,12G,12B、投写光学系としての投写レンズ13、ライトバルブ駆動部14等を含んでいる。画像投写部10は、光源11から射出された光を、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bで変調して画像光を形成し、この画像光を投写レンズ13から投写して投写面S等に表示する。
【0035】
光源11は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源ランプ11aと、光源ランプ11aが放射した光を液晶ライトバルブ12R,12G,12B側に反射するリフレクター11bとを含んで構成されている。光源11から射出された光は、図示しないインテグレーター光学系によって輝度分布が略均一な光に変換され、図示しない色分離光学系によって光の3原色である赤色R、緑色G、青色Bの各色光成分に分離された後、それぞれ液晶ライトバルブ12R,12G,12Bに入射する。
【0036】
液晶ライトバルブ12R,12G,12Bは、一対の透明基板間に液晶が封入された液晶パネル等によって構成される。液晶ライトバルブ12R,12G,12Bには、マトリクス状に配列された複数の画素(図示せず)が形成されており、液晶に対して画素毎に駆動電圧を印加可能になっている。ライトバルブ駆動部14が、入力される画像情報に応じた駆動電圧を各画素に印加すると、各画素は、画像情報に応じた光透過率に設定される。このため、光源11から射出された光は、この液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを透過することによって変調され、画像情報に応じた画像が色光毎に形成される。形成された各色の画像は、図示しない色合成光学系によって画素毎に合成されてカラー画像となった後、投写レンズ13から投写される。
【0037】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、各種データの一時記憶等に用いられるRAM、および、マスクROMやフラッシュメモリー、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリー)等の不揮発性のメモリー等(いずれも図示せず)を備え、コンピューターとして機能するものである。制御部20は、CPUが不揮発性のメモリーに記憶されている制御プログラムに従って動作することにより、プロジェクター100の動作を統括制御する。
【0038】
操作受付部21は、ユーザーからの入力操作を受け付けるものであり、ユーザーがプロジェクター100に対して各種指示を行うための複数の操作キーを備えている。操作受付部21が備える操作キーとしては、電源のオン・オフを切り替えるための電源キー、各種設定を行うためのメニュー画面の表示・非表示を切り替えるメニューキー、メニュー画面におけるカーソルの移動等に用いられるカーソルキー、各種設定を決定するための決定キー等がある。ユーザーが操作受付部21の各種操作キーを操作(押下)すると、操作受付部21は、この入力操作を受け付けて、ユーザーの操作内容に応じた操作信号を制御部20に出力する。なお、操作受付部21として、遠隔操作が可能なリモコン(図示せず)を用いた構成としてもよい。この場合、リモコンは、ユーザーの操作内容に応じた赤外線等の操作信号を発信し、図示しないリモコン信号受信部がこれを受信して制御部20に伝達する。
【0039】
光源制御部22は、電源回路(図示せず)で生成された直流電流を交流矩形波電流に変換するインバーター(図示せず)や、光源ランプ11aの電極間の絶縁破壊を行って、光源ランプ11aの始動を促すためのイグナイター(図示せず)等を備えており、制御部20の指示に基づいて光源11の点灯を制御する。具体的には、光源制御部22は、光源11を始動させて所定の電力を供給することにより光源11を点灯させるとともに、電力の供給を停止して光源11を消灯させることができる。また、光源制御部22は、制御部20の指示に基づいて光源11に供給する電力を制御することにより、光源11の輝度(明るさ)を調整することが可能である。
【0040】
画像信号入力部31には、PC300と画像ケーブルC1を介した接続を行うための入力端子(図示せず)が備えられており、PC300から画像信号が入力される。画像信号入力部31は、入力される画像信号を、画像処理部32で処理可能な形式の画像情報に変換して、画像処理部32に出力する。
【0041】
画像処理部32は、画像信号入力部31から入力される画像情報を、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bの各画素の階調を表す画像データに変換する。ここで、変換された画像データは、R,G,Bの色光別になっており、各液晶ライトバルブ12R,12G,12Bのすべての画素に対応する複数の画素値によって構成されている。画素値とは、対応する画素の光透過率を定めるものであり、この画素値によって、各画素から射出する光の強弱(階調)が規定される。また、画像処理部32は、制御部20の指示に基づき、変換した画像データに対して、明るさ、コントラスト、シャープネス、色合い等を調整するための画質調整処理等を行い、処理後の画像データをOSD処理部33に出力する。
【0042】
OSD処理部33は、制御部20の指示に基づいて、メニュー画面やメッセージ画面等のOSD画像を、画像処理部32から入力される画像データに重畳する処理を行う。OSD処理部33は、図示しないOSDメモリーを備えており、OSD画像を形成するための図形やフォント等を表すOSD画像データを記憶している。制御部20が、OSD画像の重畳を指示すると、OSD処理部33は、必要なOSD画像データをOSDメモリーから読み出し、入力画像の所定の位置にOSD画像が重畳されるように、画像処理部32から入力される画像データにこのOSD画像データを合成する。OSD画像データが合成された画像データは、ライトバルブ駆動部14に出力される。なお、制御部20からOSD画像を重畳する旨の指示がない場合には、OSD処理部33は、画像処理部32から出力される画像データを、そのままライトバルブ駆動部14に出力する。
【0043】
また、OSD処理部33は、制御部20の指示に基づいて、発光ペン400の軌跡情報(描画データ)に基づいた文字や図形のOSD描画データを、画像処理部32から入力される画像データに重畳する。
【0044】
ライトバルブ駆動部14が、OSD処理部33から入力される画像データに従って液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを駆動すると、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bは、画像データに応じた画像を形成し、この画像が投写レンズ13から投写される。
【0045】
撮像部50は、CCDセンサー、或いはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー等からなる撮像素子等(図示せず)と、撮像対象から発せられた光を撮像素子上に結像させるための撮像レンズ(図示せず)を備えている。撮像部50は、プロジェクター100の投写レンズ13の近傍に配置され、投写面Sに投写された画像(投写画像)を含む範囲を所定のフレームレートで撮像する。本実施形態では、撮像部50は、赤外光を撮像可能となっている。そして、撮像部50は、撮像した赤外光の画像(撮像画像)を表す光信号画像情報を順次生成し、光信号情報変換部51に出力する。なお、スタック投写のキャリブレーション処理の際には、撮像部50は、可視光を撮像可能とする。
【0046】
光信号情報変換部51は、座標変換情報記憶部51aを有している。座標変換情報記憶部51aには、前述した撮像領域P1上における座標から重畳画像領域G3上の座標に変換する座標変換式が記憶される。光信号情報変換部51は、撮像部50から入力された光信号画像情報を、座標変換情報記憶部51aに記憶された座標変換式に基づいて重畳画像領域G3上の位置情報(座標)に変換する。具体的には、光信号画像情報に基づいて、画像内で発光ペン400が発光したか否かを判別する。そして、発光があった場合には、発光した位置、即ち撮像画像内において押圧操作がなされた位置情報(座標)を検出する。光信号情報変換部51は、発光した位置情報(座標)を検出すると、座標変換式を用いて、撮像画像上の位置情報から重畳画像領域G3上の位置情報(座標)への変換を行う。
【0047】
光信号情報処理部52は、本プロジェクター100の光信号情報変換部51から入力された発光ペン400の位置情報(座標)と、通信部54および制御部20を介してプロジェクター200から入力した発光ペン400の位置情報(座標)とに基づき、発光した位置である光位置情報を形成する。さらに、光信号情報処理部52は、発光ペン400の発信パターンを認識して、発信パターン情報を生成する。また、発光ペン400の光位置情報および発信パターン情報から算出される発光ペン400の軌跡情報を形成する。そして、光信号情報処理部52は、形成した光位置情報(座標)、発信パターン情報、および軌跡情報を光信号情報記憶部53に記憶させる。
【0048】
光信号情報記憶部53は、不揮発性のメモリーからなり、光信号情報処理部52が形成した発光ペン400の光位置情報、発信パターン情報および軌跡情報を記憶する。
【0049】
通信部54は、所定の通信手段を用い、通信ケーブルC3を介して、PC300との通信を行う。また、通信ケーブルC5を介して、プロジェクター200との通信を行う。具体的には、発光ペン400の光位置情報、発信パターン情報および軌跡情報を送信したり、受信したりする。通信部54は、制御部20の指示に基づいて通信を行い、受信した光位置情報、発信パターン情報および軌跡情報を光信号情報処理部52に伝達する。本実施形態では、通信部54が用いる通信手段は、USBを用いた通信手段とする。なお、通信部54が用いる通信手段は、USBに限定するものではなく、他の通信手段を用いてもよい。
【0050】
発光ペン400は、ペン状の本体の先端部(ペン先)に、押圧スイッチと、赤外光を発する発光ダイオードとを備えている。そして、ユーザーが発光ペン400のペン先を投写面Sに押し付ける操作(押圧操作)を行って、押圧スイッチを押圧すると、発光ダイオードが発光するようになっている。
【0051】
PC300は、ポイント情報記憶部310を備えている。そして、プロジェクター100またはプロジェクター200から受信した発光ペン400の光位置情報、発信パターン情報および軌跡情報(これらの情報を以降、「ポイント情報」と呼ぶ。)をポイント情報記憶部310に記憶する。ポイント情報記憶部310が、情報記憶部に相当する。PC300は、ポイント情報記憶部310に記憶したポイント情報に基づいた画像信号を、プロジェクター100およびプロジェクター200に供給する。
【0052】
また、PC300は記憶装置(図示せず)を備えており、発光ペン400をポインティングデバイスのように利用するためのソフトウェア(デバイスドライバー)が記憶されている。そして、このソフトウェアが起動した状態では、PC300は、プロジェクター100またはプロジェクター200の通信部54から入力される光位置情報、発信パターン情報および軌跡情報に基づいて、投写画像内で発光ペン400が発光した位置、即ち重畳画像領域G3内において押圧操作がなされた位置を認識する。そして、画像に含まれるオブジェクトを操作する。このときのPC300のソフトウェア動作を行うCPU320が、オブジェクト操作部に相当する。PC300は、発光した位置を認識すると、この位置で発信パターンに基づいたポインティングデバイスによるクリック操作がなされた場合と同一の処理を行う。つまり、ユーザーは、重畳画像領域G3内において発光ペン400で押圧操作を行うことにより、PC300に対して、ポインティングデバイスで行う指示と同一の指示を行うことができる。
【0053】
プロジェクター200は、プロジェクター100と同様な構成とする。よって、説明は省略する。
【0054】
次に、インタラクティブシステム1のプロジェクター100が行う発光ペン400の位置検出処理について説明する。
図4はプロジェクター100の位置検出処理のフローチャートである。
【0055】
プロジェクター100の光信号情報変換部51は、撮像部50が撮像した光信号画像情報を座標変換式に基づいて、重畳画像領域G3上の位置情報に変換する(ステップS101)。そして、光信号情報変換部51は、変換された位置情報に、発光ペン400の光信号が検知されたか否かを判断する(ステップS102)。
【0056】
発光ペン400の光信号が検知された場合(ステップS102:YES)、光信号情報処理部52は、変換された位置情報に基づいて、光信号を検知した光位置情報を認識する(ステップS103)。さらに、光信号情報処理部52は、発光ペン400の発信パターン情報を認識する(ステップS104)。さらに、光信号情報処理部52は、発光ペン400の押圧された軌跡情報を形成する(ステップS105)。光信号が検知された場合の光位置情報、発信パターン情報および軌跡情報が、第1の光信号情報に相当する。
【0057】
光信号情報処理部52は、光位置情報、発信パターン情報および軌跡情報(ポイント情報)を、光信号情報記憶部53に記憶させる(ステップS106)。光信号情報記憶部53に記憶させるポイント情報が、第3の光信号情報に相当する。そして、光信号情報処理部52は、ポイント情報を制御部20に通知し、制御部20は、OSD処理部33に指示を出して、入力されている画像信号に基づく画像データに、ポイント情報に基づく軌跡情報のOSD描画データを合成して、画像投写させる(ステップS107)。このときの制御部20およびOSD処理部33が、画像情報処理部に相当する。また、所定の処理は軌跡情報の描画処理を示す。
【0058】
制御部20は、通信部54に指示を出して、ポイント情報をPC300に送信させる(ステップS108)。このとき、ポイント情報を受信したPC300は、ポイント情報をPC300内のポイント情報記憶部310に記憶する。
【0059】
制御部20は、通信部54に指示を出して、ポイント情報をプロジェクター200に送信させる(ステップS109)。ポイント情報をPC300およびプロジェクター200に送信するときの制御部20および通信部54が、光信号出力部に相当する。このとき、ポイント情報を受信したプロジェクター200は、ポイント情報をプロジェクター200内の光信号情報記憶部に記憶し、さらに、OSD描画データとして画像データに合成して画像投写する。
そして、プロジェクター100は、ステップS101に移行して、処理を繰り返す。
【0060】
発光ペン400からの光信号が検知されなかった場合(ステップS102:NO)、光信号情報処理部52は、制御部20に依頼を出して、プロジェクター200からポイント情報を入力する(ステップS110)。このときの制御部20および通信部54が、光信号入力部に相当し、プロジェクター200から入力したポイント情報が第2の光信号情報に相当する。そして、ステップS106に移行して、ポイント情報を光信号情報記憶部53に記憶させる。そして、OSD描画データとして画像データに合成して画像投写する。
【0061】
なお、本実施形態では、ステップS110においてプロジェクター200からポイント情報を入力できない場合、即ちプロジェクター200も発光ペン400の光信号を検知できていない場合には、プロジェクター100は、ポイント情報の記憶処理を行わない。そして、光信号情報記憶部53に記憶されていたポイント情報に基づくOSD描画データを画像データに合成して、画像投写するものとする。
【0062】
上述した第1の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)インタラクティブシステム1において、プロジェクター100の撮像部は、発光ペン400からの光信号に基づいてポイント情報(光位置情報、発信パターン情報および軌跡情報)を検知する。検知できなかった場合は、プロジェクター200からポイント情報を入力する。これにより、発表者Hがプロジェクター100の投写領域の前で発光ペン400を用いる際に、プロジェクター100の撮像画像が遮られても、プロジェクター200の撮像画像を用いて、発光ペン400によるペン入力操作を検知することができる。よって、発表者Hに遮られて発光ペン400から発信される光信号の情報を撮像部で撮像できない状態となることを低減することができる。
【0063】
(2)インタラクティブシステム1は、プロジェクター100の撮像画像が遮られてポイント情報を検知できない場合でも、プロジェクター200の撮像画像に基づくポイント情報を入力し、発光ペン400が投写面S上で操作された軌跡情報(軌跡データ)を画像データに合成して、画像投写することができる。これにより、利便性が向上する。
【0064】
(3)インタラクティブシステム1において、プロジェクター100は、発光ペン400が投写面S上で操作されたポイント情報を記憶することができる。そして、PC300に送信したり、プロジェクター200に送信したりすることができる。そして、発光ペン400による光信号を検出できない場合にも、記憶したポイント情報に基づいた描画データを投写することができるため利便性が高い。
【0065】
(4)インタラクティブシステム1は、プロジェクター100の撮像画像が遮られてポイント情報を検知できない場合でも、プロジェクター200の撮像画像に基づいて、発光ペン400が投写面S上で操作されたポイント情報をPC300に送信することができる。よって、PC300の画像に含まれるオブジェクトを操作することが可能となるため、利便性が向上する。
【0066】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、複数の撮像装置をプロジェクターの外部に備えたインタラクティブシステムについて説明する。
【0067】
図5は、第2の実施形態に係るインタラクティブシステムの機器の配置を示す説明図である。
図5では、発表者Hがプレゼンテーションを行っている態様を表している。図5に示すように、本実施形態のインタラクティブシステム2は、プロジェクター500と、撮像装置600と、撮像装置700と、PC300と、発光ペン400と、発光ペン400を保持した発表者Hと投写面Sとが表されている。
【0068】
プロジェクター500は、投写レンズ13を有している。投写レンズ13から投写された投写画像は投写面Sに投写される。撮像装置600および撮像装置700は投写画像を含む範囲を撮像する。ここで、投写画像光は破線で表しており、撮像範囲は一点鎖線で表している。ここで、撮像装置600および撮像装置700は、異なる方向から投写面S上の投写領域を撮像させるように設置されている。なお、プロジェクター500と撮像装置600および撮像装置700とは、それぞれ通信ケーブルC8および通信ケーブルC9を介して接続されており、情報の通信を行う。本実施形態では、通信ケーブルC8および通信ケーブルC9は、USBケーブルとする。
【0069】
PC300は、画像ケーブルC6および通信ケーブルC7を介してプロジェクター500と接続されている。PC300は、画像ケーブルC6を介してプロジェクター500に画像信号を出力する。また、PC300は、通信ケーブルC7を介してプロジェクター500と通信を行う。本実施形態では、画像ケーブルC6は、アナログRGBのケーブルとし、通信ケーブルC7は、USBケーブルとする。
【0070】
ここで、プロジェクター500の投写画像と撮像装置600,700の撮像画像について説明する。
図6は、投写領域と撮像領域を簡略的に表す説明図である。
【0071】
図6では、図5に示したようにプロジェクター500で投写面Sに投写した投写画像を、異なる方向から撮像した状態について説明する。ここで、プロジェクター500は投写面Sに対して正対して設置されている。この場合、撮像装置600が撮像する撮像領域P3は歪んだ四辺形の領域となり、撮像装置700が撮像する撮像領域P4は歪んだ四辺形の領域となる。
【0072】
そして、プロジェクター500は、撮像領域P3および撮像領域P4内の投写画像領域G4を認識する。
【0073】
さらに、プロジェクター500は、撮像装置600および撮像装置700から入力される撮像領域P3上および撮像領域P4上における座標から投写画像領域G4上の座標に変換する座標変換式を生成する。そして、この座標変換式を用いることでインタラクティブシステム2は、投写画像領域G4上で操作された発光ペン400の位置情報(座標)を検出することができる。なお、座標変換式ではなく、座標変換のための変換テーブル(図示せず)を生成してもよい。
【0074】
図7は、第2の実施形態に係るインタラクティブシステム2の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、インタラクティブシステム2は、プロジェクター500と、撮像装置600と、撮像装置700と、PC300と、発光ペン400と、投写面Sとを備えて構成されている。
【0075】
第2の実施形態のプロジェクター500の回路構成では、図3に示した第1の実施形態のプロジェクター100に備わっている撮像部50を備えていない。また、光信号情報変換部51の代わりに光信号情報入力部55を備え、光信号情報処理部56の処理が異なっている。その他の構成部は同様であるため、説明は省略する。
【0076】
光信号情報入力部55は、座標変換情報記憶部55aを有している。座標変換情報記憶部55aには、撮像領域P3上および撮像領域P4上における座標から投写画像領域G4上の座標に変換する座標変換式を記憶する。光信号情報入力部55は、撮像装置600および撮像装置700から光信号画像情報を入力する。そして、光信号情報入力部55は、座標変換情報記憶部55aに記憶された座標変換式に基づいて、それぞれの光信号画像情報を投写画像領域G4上の位置情報に変換する。具体的には、光信号画像情報に基づいて、投写画像領域G4内で発光ペン400が発光したか否かを判別する。そして、発光があった場合には、発光した位置情報(座標)を検出する。光信号情報入力部55は、発光した位置情報を検出すると、座標変換式を用いて、撮像画像上の位置情報から投写画像領域G4上の位置情報への変換を行う。そして、光信号情報入力部55は、変換した位置情報を光信号情報処理部52に通知する。光信号情報入力部55が、情報入力部に相当する。
【0077】
光信号情報処理部56は、光信号情報入力部55から入力された撮像装置600が撮像した光信号画像情報に基づく位置情報と、撮像装置700が撮像した光信号画像情報に基づく位置情報とに基づき、発光ペン400が発光した位置である光位置情報を形成する。さらに、光信号情報処理部52は、発光ペン400の発信パターンを認識して、発信パターン情報を生成する。また、発光ペン400の光位置情報および発信パターン情報から算出される発光ペン400の軌跡情報を形成する。そして、光信号情報処理部52は、形成した光位置情報(座標)、発信パターン情報、および軌跡情報を光信号情報記憶部53に記憶させる。
【0078】
撮像装置600は、撮像部650と通信部660等を備えて構成されている。撮像装置600は、プロジェクター500と通信ケーブルC8を介して接続されている。撮像部650は、CCDセンサー、或いはCMOSセンサー等からなる撮像素子等(図示せず)と、撮像対象から発せられた光を撮像素子上に結像させるための撮像レンズ(図示せず)を備えている。撮像部650は、投写面Sに投写された画像を含む範囲を所定のフレームレートで撮像する。そして、撮像部650は、撮像した画像を表す光信号画像情報を順次生成し、通信部660を介して、プロジェクター500の光信号情報入力部55に出力する。
【0079】
撮像装置700は、撮像部750と通信部760等を備えて構成されている。撮像装置600は、プロジェクター500と通信ケーブルC9を介して接続されている。撮像部750は撮像部650と同様な構成となっており、通信部760は通信部660と同様な構成となっている。撮像部750は、撮像した画像を表す光信号画像情報を順次生成し、通信部760を介して、プロジェクター500の光信号情報入力部55に出力する。
【0080】
発光ペン400は、第1の実施形態の発光ペン400と同様とする。よって、説明は省略する。また、PC300も、第1の実施形態のPC300と同様とする、よって、説明は省略する。
【0081】
次に、インタラクティブシステム2のプロジェクター500が行う発光ペン400の位置検出処理について説明する。
図8はプロジェクター500の位置検出処理のフローチャートである。
【0082】
プロジェクター500の光信号情報入力部55は、撮像装置600および撮像装置700が撮像した光信号画像情報を入力する。そして、それぞれの光信号画像情報を座標変換式に基づいて、投写画像領域G4上の位置情報に変換する(ステップS201)。光信号情報処理部56は、変換された2つの位置情報を入力して合成する(ステップS202)。合成された位置情報が、合成光信号情報に相当する。
【0083】
光信号情報処理部56は、合成した位置情報に基づいて、光信号を検知した光位置情報を認識する(ステップS203)。さらに、光信号情報処理部56は、発光ペン400の発信パターン情報を認識する(ステップS204)。さらに、光信号情報処理部56は、発光ペン400の押圧された軌跡情報を形成する(ステップS205)。
【0084】
光信号情報処理部56は、光位置情報と発信パターン情報と軌跡情報とを、ポイント情報として光信号情報記憶部53に記憶させる(ステップS206)。そして、光信号情報処理部52は、ポイント情報を制御部20に通知し、制御部20は、OSD処理部33に指示を出して、入力されている画像信号に基づく画像データに、ポイント情報に基づく軌跡情報のOSD描画データを合成して、画像投写させる(ステップS207)。このときの制御部20およびOSD処理部33が、画像情報処理部に相当する。また、所定の処理は軌跡情報の描画処理を示す。
【0085】
制御部20は、通信部54に指示を出して、ポイント情報をPC300に送信させる(ステップS208)。このときの制御部20および通信部54が、光信号出力部に相当する。このとき、ポイント情報を受信したPC300は、ポイント情報をPC300内のポイント情報記憶部310に記憶する。
そして、プロジェクター500は、ステップS201に移行して、処理を繰り返す。
【0086】
上述した第2の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)インタラクティブシステム2において、撮像装置600および撮像装置700は、異なる方向から投写画像領域G4を撮像し、光信号画像情報をプロジェクター500に出力する。プロジェクター500は、発光ペン400からの光信号に基づいてポイント情報(光位置情報、発信パターン情報、軌跡情報)を検知する。これにより、発表者Hが撮像装置の撮像領域の前で発光ペン400を用いる際に、一方の撮像装置の撮像画像が遮られても、他方の撮像画像を用いて、発光ペン400によるペン入力操作を検知することができる。よって、発表者Hに遮られて発光ペン400から発信される光信号の情報を撮像部で撮像できない状態となることを低減することができる。
【0087】
(2)インタラクティブシステム2では、一方の撮像装置の撮像画像が遮られてポイント情報を検知できない場合でも、プロジェクター500は、他方の撮像装置の撮像画像に基づくポイント情報に基づいて、投写面S上で操作された発光ペン400が軌跡情報(軌跡データ)を画像データに合成して、画像投写することができる。これにより、利便性が向上する。
【0088】
(3)インタラクティブシステム2において、プロジェクター500は、発光ペン400が投写面S上で操作されたポイント情報を記憶することができる。そして、PC300に送信することができる。よって、発光ペン400による光信号を検出できない場合にも、記憶したポイント情報に基づいた描画データを投写することができるため利便性が高い。
【0089】
(4)インタラクティブシステム2は、一方の撮像装置の撮像画像が遮られてポイント情報を検知できない場合でも、他方の撮像装置の撮像画像に基づいて、発光ペン400が投写面S上で操作されたポイント情報をPC300に送信することができる。よって、PC300の画像に含まれるオブジェクトを操作することが可能となるため、利便性が向上する。
【0090】
なお、上述した実施形態に限定されず、種々の変更や改良等を加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
【0091】
(変形例1)上記第1の実施形態では、インタラクティブシステム1は、撮像部を有するプロジェクターを2つ備えるものとしたが、撮像部を有するプロジェクターの数はこれに限定するものではなく、2つ以上としてもよい。
【0092】
(変形例2)上記第2の実施形態では、インタラクティブシステム2は、撮像装置を2つ備えるものとしたが、撮像装置の数はこれに限定するものではなく、2つ以上としてもよい。
【0093】
(変形例3)上記実施形態では、投写画像に対して、赤外光を発光する発光ペン400を用いて操作を行う態様を示したが、この態様に限定されず、例えば、レーザーポインターで操作を行う態様としてもよい。
【0094】
(変形例4)上記実施形態では、プロジェクター100,200,500の光源11は、放電型の光源ランプ11aによって構成されているが、LED(Light Emitting Diode)光源やレーザー等の固体光源や、その他の光源を用いることもできる。
【0095】
(変形例5)上記実施形態では、プロジェクター100,200,500の光変調装置として、透過型の液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを用いているが、反射型の液晶ライトバルブ等、反射型の光変調装置を用いることも可能である。また、入射した光の射出方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源から射出した光を変調する微小ミラーアレイデバイス等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0096】
1,2…インタラクティブシステム、10…画像投写部、11…光源、11a…光源ランプ、11b…反射するリフレクター、12R,12G,12B…液晶ライトバルブ、13…投写レンズ、14…ライトバルブ駆動部、20…制御部、21…操作受付部、22…光源制御部、31…画像信号入力部、32…画像処理部、33…OSD処理部、50…撮像部、51…光信号情報変換部、51a…座標変換情報記憶部、52…光信号情報処理部、53…光信号情報記憶部、54…通信部、55…光信号情報入力部、55a…座標変換情報記憶部、56…光信号情報処理部、100,200,500…プロジェクター、213…投写レンズ、250…撮像部、300…PC、310…ポイント情報記憶部、320…CPU、400…発光ペン、600,700…撮像装置、650,750…撮像部、660,760…通信部、C1,C2,C6…画像ケーブル、C3,C4,C5,C7,C8,C9…通信ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロジェクターと、前記複数のプロジェクターに画像信号を供給するコンピューターと、所定の操作に基づき光信号を発信する発信器と、を備えたインタラクティブシステムであって、
前記複数のプロジェクターは、前記複数のプロジェクターがそれぞれ投写する投写画像を、同一の投写領域に重畳させて表示させるように設置され、
前記複数のプロジェクターのそれぞれは、
光源から射出された光を前記画像信号に応じて変調して、前記投写画像として投写面に投写する画像投写部と、
前記投写画像を含む範囲を撮像して前記光信号に基づく第1の光信号情報を検知する撮像部と、
前記複数のプロジェクターの少なくとも一つのプロジェクターが検知した前記光信号に基づく第2の光信号情報の入力を行う光信号入力部と、
前記第1の光信号情報と前記第2の光信号情報とに基づいて、第3の光信号情報を形成する光信号情報処理部と、
前記第3の光信号情報に基づいて、前記画像投写部が投写する画像に所定の処理を施す画像情報処理部と、
前記第3の光信号情報を前記コンピューターおよび前記少なくとも一つのプロジェクターに出力する光信号出力部と、
を有し、
前記コンピューターは、
前記第3の光信号情報に基づき、前記画像信号が表す画像に含まれるオブジェクトを操作するオブジェクト操作部を有することを特徴とするインタラクティブシステム。
【請求項2】
請求項1記載のインタラクティブシステムであって、
前記第1の光信号情報、前記第2の光信号情報および前記第3の光信号情報は、前記投写領域において前記光信号が発信された位置情報、前記光信号の発信パターン情報および前記光信号の軌跡情報のうちの少なくとも1つとすることを特徴とするインタラクティブシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のインタラクティブシステムであって、
前記画像情報処理部が施す前記所定の処理は、前記第3の光信号情報における前記軌跡情報に基づいた描画処理であることを特徴とするインタラクティブシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインタラクティブシステムであって、
前記コンピューターは、
前記プロジェクターから入力した前記第3の光信号情報を記憶する情報記憶部をさらに有し、
前記情報記憶部に記憶した前記第3の光信号情報に基づいた画像信号を前記複数のプロジェクターに供給することを特徴とするインタラクティブシステム。
【請求項5】
光源から射出された光を画像信号に応じて変調して、投写画像として投写面に投写する画像投写部と、前記投写画像を含む範囲を撮像する撮像部とを有する複数のプロジェクターと、前記複数のプロジェクターに前記画像信号を供給するコンピューターと、所定の操作に基づき光信号を発信する発信器と、を備え、前記複数のプロジェクターは、前記複数のプロジェクターがそれぞれ投写する前記投写画像を、同一の投写領域に重畳させて表示させるように設置されているインタラクティブシステムの制御方法であって、
前記複数のプロジェクターのそれぞれは、
前記撮像部が撮像した前記光信号に基づく第1の光信号情報を検知する撮像ステップと、
前記複数のプロジェクターの少なくとも一つのプロジェクターが検知した前記光信号に基づく第2の光信号情報の入力を行う光信号入力ステップと、
前記第1の光信号情報と前記第2の光信号情報とに基づいて、第3の光信号情報を形成する光信号情報処理ステップと、
前記第3の光信号情報に基づいて、前記画像投写部が投写する画像に所定の処理を施す画像情報処理ステップと、
前記第3の光信号情報を前記コンピューターおよび前記少なくとも一つのプロジェクターに出力する光信号出力ステップと、
を有し、
前記コンピューターは、
前記第3の光信号情報に基づき、前記画像信号が表す画像に含まれるオブジェクトを操作するオブジェクト操作ステップを有することを特徴とするインタラクティブシステムの制御方法。
【請求項6】
画像信号を供給するコンピューターと、所定の操作に基づき光信号を発信する発信器とともにインタラクティブシステムを構成する複数のプロジェクターであって、
前記複数のプロジェクターは、前記複数のプロジェクターがそれぞれ投写する投写画像を、同一の投写領域に重畳させて表示させるように設置され、
前記複数のプロジェクターのそれぞれは、
光源から射出された光を前記画像信号に応じて変調して、前記投写画像として投写面に投写する画像投写部と、
前記投写画像を含む範囲を撮像して前記光信号に基づく第1の光信号情報を検知する撮像部と、
前記複数のプロジェクターの少なくとも一つのプロジェクターが検知した前記光信号に基づく第2の光信号情報の入力を行う光信号入力部と、
前記第1の光信号情報と前記第2の光信号情報とに基づいて、第3の光信号情報を形成する光信号情報処理部と、
前記第3の光信号情報に基づいて、前記画像投写部が投写する画像に所定の処理を施す画像情報処理部と、
前記第3の光信号情報を前記コンピューターおよび前記少なくとも一つのプロジェクターに出力する光信号出力部と、
を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項7】
複数の撮像装置と、プロジェクターと、前記プロジェクターに画像信号を供給するコンピューターと、所定の操作に基づき光信号を発信する発信器と、を備えたインタラクティブシステムであって、
前記複数の撮像装置は、
前記プロジェクターが投写する投写画像を含む範囲を撮像して前記光信号に基づく光信号情報を検知する撮像部と、
前記プロジェクターに対して前記光信号に基づく光信号情報の出力を行う情報出力部と、
を有し、
前記複数の撮像装置は、異なる方向から前記投写画像を撮像するように設置され、
前記プロジェクターは、
光源から射出された光を前記画像信号に応じて変調して、前記投写画像として投写面に投写する画像投写部と、
前記複数の撮像装置から前記光信号に基づく前記光信号情報の入力を行う情報入力部と、
前記複数の撮像装置から入力された複数の前記光信号情報に基づいて、合成光信号情報を形成する光信号情報処理部と、
前記合成光信号情報に基づいて、前記画像投写部が投写する画像に所定の処理を施す画像情報処理部と、
前記合成光信号情報を前記コンピューターに出力する光信号出力部と、
を有し、
前記コンピューターは、
前記合成光信号情報に基づき、前記画像信号が表す画像に含まれるオブジェクトを操作するオブジェクト操作部を有することを特徴とするインタラクティブシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−221445(P2012−221445A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89838(P2011−89838)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】