説明

インタンクバルブ

【課題】インタンクバルブおよびタンクの小型・軽量化を図る。
【解決手段】主止弁10は、一部を水素タンク2の内部に挿入され水素タンク2に固定されるボディ11と、ボディ11内に形成され水素タンク2の内部に通じる第1通路15と、ボディ11内に形成され水素タンク2の外部に通じる第2通路17と、水素タンク2の内部から第2通路17に通じるパイロット通路29と、パイロット通路29を開閉する電磁式のパイロットバルブ30と、パイロットバルブ30の開弁による第2通路17内の圧力上昇で得られる推力と第1通路15とパイロット通路29との圧力差で得られる推力とを用いて開弁することで第1通路15と第2通路17とを連通させ、パイロットバルブ30よりも大流量で水素タンク2内の水素ガスを流通させることが可能なメインバルブ18と、を備え、パイロットバルブ30を水素タンク2内の圧力を受圧するようにボディ11に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タンクに直接設置されるインタンクバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、高圧ガスタンクに直接取り付けられ、高圧環境下で作動する電磁弁は、開口径の小さいパイロットバルブと開口径の大きいメインバルブの2つのバルブを備えて構成されており、初めにパイロットバルブを開弁させ、このパイロットバルブの開弁がメインバルブの開弁をアシストすることで、作動性を確保している。
このようにパイロットバルブとメインバルブとを備える電磁弁として、次の2つのタイプの電磁弁が知られている。
【0003】
第1のタイプは、パイロットバルブとメインバルブとを同軸上に直列に配置し、パイロットバルブとメインバルブとを1つのソレノイドで電磁駆動するように構成した電磁弁(以下、インタンク型キックパイロット式電磁弁という)である(例えば、特許文献1参照)。このインタンク型キックパイロット式電磁弁の開弁動作は、初めにソレノイドの電磁的吸引力によりパイロットバルブを開弁することでメインバルブの下流の圧力を上昇させてメインバルブの上流側圧力と下流側圧力の圧力差を小さくし、メインバルブの開弁に必要な推力が小さくなったところでソレノイドの電磁的吸引力によりメインバルブを開弁させる。
【0004】
第2のタイプは、電磁駆動式のパイロットバルブのソレノイドをタンクの外側に設置し、パイロットバルブから離れた位置に差圧駆動式のメインバルブを設置して構成した電磁弁(以下、背圧式電磁弁という)である(例えば、特許文献2参照)。この背圧式電磁弁の開弁動作は、初めにソレノイドの電磁的吸引力によりパイロットバルブを開弁することで、メインバルブの上流側の背圧室のガスをメインバルブの下流側に流してメインバルブの下流の圧力を上昇させるとともに背圧室の圧力を低下させ、メインバルブの上流側圧力と背圧室の圧力との圧力差に基づく推力によりメインバルブを開弁させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−163896号公報
【特許文献2】米国特許第7309113号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記インタンク型キックパイロット式電磁弁においては、同軸上に直列に配置されたパイロットバルブとメインバルブとを同一のソレノイドで駆動し開弁させるので、バルブストロークが長くなり、したがって、ロングストロークに対応したソレノイドが必要となり、必要推力を満たすためにはソレノイドが大型化するという課題がある。
【0007】
また、高圧ガスタンクでは、耐圧性を考慮した場合に、インタンク型キックパイロット式電磁弁の取付部となるタンクの開口部での受圧面積を小さくしたいため、この開口部の内径を小さくしたいという要求があるが、ソレノイドが大型化すると、インタンク型キックパイロット式電磁弁においてタンク内に挿入する部分が大きくなり、したがって、タンクの前記開口部の内径を大きくせざるを得なくなる。その結果、前記開口部での受圧面積が大きくなるため、耐圧性を考慮すると、大きくなった推力を受けても固定状態が維持されるよう高圧ガスタンクの雌ねじと噛み合う雄ねじのねじ長さが長くなり、インタンク型キックパイロット式電磁弁が大型化し、さらに、タンク側の耐圧強度を確保するためにタンク自体の重量増を招くという課題もある。
【0008】
一方、前記背圧式電磁弁においては、ソレノイドをタンクの外側に配置するため、インタンク型キックパイロット式電磁弁のようにタンク内に挿入する部分が大きくなることがないので、タンクの開口部の内径を小さくすることができる。しかしながら、背圧式電磁弁においては、パイロットバルブにおける弁部等はタンク内の圧力(高圧)を受け、ソレノイドを収容する部分は大気圧(低圧)を受けることとなり、ソレノイドの内外で大きな差圧が発生する。したがって、この大きな差圧に耐え得るようにソレノイドの耐圧性能を確保しなければならなくなる。一般的に、耐圧性能を上げるには部材の肉厚を増す必要があるが、ソレノイドを収容する部分の肉厚を増すとコイルとプランジャの離間寸法が大きくなり、プランジャに対する電磁的吸引力(推力)が著しく低下する。そのため、必要な推力を得るためにソレノイドの大型化を招くという課題がある。
【0009】
そこで、この発明は、インタンクバルブ自体の小型・軽量化が可能で、タンクの小型・軽量化をも図ることができるインタンクバルブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るインタンクバルブでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、一部をタンク(例えば、後述する実施例における水素タンク2)の内部に挿入され該タンクに固定されるボディ(例えば、後述する実施例におけるボディ11)と、前記ボディ内に形成され前記タンクの内部に通じる第1通路(例えば、後述する実施例における第1通路15)と、前記ボディ内に形成され前記タンクの外部に通じる第2通路(例えば、後述する実施例における第2通路17)と、前記タンクの内部から前記第2通路に通じるパイロット通路(例えば、後述する実施例におけるパイロット通路29)と、前記パイロット通路上に配置されて該パイロット通路を開閉する電磁式パイロットバルブ(例えば、後述する実施例におけるパイロットバルブ30)と、前記パイロットバルブの開弁による前記第2通路内の圧力上昇で得られる推力と前記第1通路と前記パイロット通路との圧力差で得られる推力とを用いて開弁することで前記第1通路と前記第2通路とを連通させ、前記電磁式パイロットバルブよりも大流量で前記タンク内の流体を流通させることが可能なメインバルブ(例えば、後述する実施例におけるメインバルブ18)と、を備え、前記電磁式パイロットバルブは、前記タンク内の圧力を受圧するように前記ボディに設置されていることを特徴とするインタンクバルブ(例えば、後述する実施例における主止弁10)である。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記電磁式パイロットバルブは、前記ボディにおいて前記タンクの内部を臨む端部に配置され、前記電磁式パイロットバルブの弁部(例えば、後述する実施例における弁体収納部36)を前記ボディの内方に向け、ソレノイドを前記タンクの内方に向けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、ソレノイドはパイロットバルブを作動させるだけであるので、ソレノイドによるバルブストロークを短くすることができ、ソレノイドを小型にすることができる。
また、パイロットバルブがタンク内の圧力を受圧するので、特にソレノイドの内外の差圧を小さくすることができ、ソレノイドの耐圧構造付与に伴う大型化を防ぐことができる。その結果、ソレノイドのプランジャを収容する部分の肉厚を薄くしてコイルとプランジャの離間寸法を小さくすることができ、プランジャに対する電磁的吸引力(推力)を大きくすることができるので、ソレノイドを小型とすることができる。
また、ソレノイドの小型化により、インタンクバルブにおいてタンク内に挿入する部分を小さくすることができるので、インタンクバルブの取付部となるタンクの開口部の内径を小さくすることができる。その結果、前記開口部での受圧面積を小さくすることができ、必要なねじ長さが大きくならずにインタンクバルブの小型・軽量化を図ることができる。また、タンクの開口部の小径化は耐圧強度上も有利であり、タンク自体の軽量化を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、パイロットバルブのボディへの取り付けが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係るインタンクバルブを装着した水素タンクを備える燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】インタンクバルブの断面図である。
【図3】メインバルブの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明に係るインタンクバルブの実施例を図1から図3の図面を参照して説明する。
図1は、燃料電池システムの概略構成図であり、この実施例1における燃料電池システムは、燃料電池車両に搭載されて駆動源としてのモータ等に電力を供給する態様である。
図1において符号1は、燃料としての水素と酸化剤としての酸素が供給されて発電をする燃料電池スタック(燃料電池)を示している。燃料電池スタック1は、例えば固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)であり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)をセパレータ(図示しない)で挟持してなる単セルが複数積層されて構成されている。
【0016】
燃料電池スタック1には、高圧の水素を貯蔵する水素タンク2から水素供給流路3を介して所定圧力および所定流量の水素が供給されるとともに、図示しない空気供給装置を介して酸素を含む空気が所定圧力および所定流量で供給される。
水素タンク2は、長手方向の両端が略半球状の筒状をなし、その長手方向の一端が開口し、この開口部2aは主止弁(インタンクバルブ)10が取り付けられることで塞がれている。主止弁10は水素タンク2の内部と水素供給流路3とを連通・遮断する弁であり、主止弁10については後で詳述する。
【0017】
水素供給流路3には、その上流側から、減圧弁5、リリーフ弁6、中圧デバイス7が設けられている。水素タンク2から放出される高圧(例えば、35MPaあるいは70MPa等)の水素は、減圧弁5によって所定の圧力(例えば、1MP以下)に減圧されて中圧デバイス7に供給される。ここで、中圧デバイス7とは、減圧弁5と燃料電池スタック1との間に配置されるデバイスの総称であり、エゼクタ、インジェクタ、加湿器などが含まれる。エゼクタは、燃料電池スタック1から排出される水素オフガスを循環利用するために水素オフガスを再び水素供給流路3に戻すデバイスであり、インジェクタは燃料電池スタック1に供給する水素流量を調整するデバイスであり、加湿器は燃料電池スタック1に供給される水素を加湿するデバイスである。中圧デバイス7としていずれのデバイスが組み込まれるかは燃料電池システムの全体構成により決定される。
水素供給流路3には、減圧弁5よりも上流側と、減圧弁5とリリーフ弁6との間に、それぞれ圧力センサ8,9が設けられている。
【0018】
次に、図2を参照して、主止弁10について詳述する。なお、以下の説明において上下方向は、図2における図中上下方向とする。
主止弁10は、水素タンク2の開口部2aに固定されるボディ11を備え、ボディ11は、水素タンク2の内部に挿入される部分(以下、内装部と称す)12と、水素タンク2の外部に露出する部分(以下、外装部と称す)13とを有している。内装部12は円柱状をなし、水素タンク2の円形の開口部2aに挿入され固定されている。外装部13は内装部12の外径よりも大きい。
【0019】
ボディ11の内部には、水素タンク2の内部に通じる第1通路15と、水素タンク2の外部に通じる第2通路17とが形成されている。詳述すると、第1通路15は、内装部12において水素タンク2の内部中央に向けて配置される端面14に開口している。第2通路17は外装部13の一端面16に開口し、ここに水素供給流路3が接続される。第1通路15と第2通路17との間にこれら通路15,17を連通・遮断するメインバルブ18が設けられている。
【0020】
メインバルブ18は、ボディ11内に形成された円筒状のバルブ室19と、バルブ室19内を上下方向に移動可能に収容された弁体20と、を備えて構成されている。
弁体20は略円柱状をなし、上面22が球殻の一部をなす凸曲面に形成されている。弁体20の外周部には、バルブ室19の内周面との間をシールするシールリング23が取り付けられており、シールリング23は弁体20と一体となってバルブ室19内を上下方向に移動する。バルブ室19はシールリング23によって上下に区画されており、シールリング23よりも上側は高圧室24、下側は背圧室25となっている。
高圧室24に面するバルブ室19の天井壁部には第2通路17の一端が開口し、この開口の周縁は弁体20の上面が着座離反する弁座26となっている。
【0021】
また、弁体20の上下移動に関わらず常に高圧室24の内周面となるバルブ室19の内周面の上端に、第1通路15の一端が開口している。つまり、第1通路15は水素タンク2の内部とメインバルブ18の高圧室24とを連通しており、弁体20が弁座26から離反したときに第1通路15と第2通路17が連通する。
弁体20は背圧室25内に配置されたスプリング27によって弁座26に接近する方向(換言すると閉弁方向)に付勢されている。
第1通路15と背圧室25は、ボディ11内に設けられた小径のオリフィス通路28によって接続されている。
【0022】
また、ボディ11内には、背圧室25と第2通路17とを接続するパイロット通路29が形成されている。パイロット通路29は小流量の水素ガスが流れれば十分であるので、パイロット通路29の内径は第1通路15および第2通路17の内径よりも小径となっている。さらに、ボディ11には、内装部12の端面14に開口するパイロットバルブ挿入孔50がボディ11の内側に向かって凹設され、パイロット通路29に連なっている。
このパイロットバルブ挿入孔50に、パイロット通路29を開閉する電磁式のパイロットバルブ30が固定されている。つまり、パイロットバルブ30はパイロット通路29上に配置されている。パイロットバルブ30は、ボディ31と、弁体32と、プランジャ33と、コイル34と、スプリング35を主要構成としている。
【0023】
ボディ31は段付き円筒状をなし、上部側は小径の弁体収納部(弁部)36,下部側が大径のソレノイド37となっていて、弁体収納部36がパイロットバルブ挿入孔50に隙間なく挿入され、ソレノイド37が内装部12の端面14から水素タンク2の内部に突出している。つまり、パイロットバルブ30は、主止弁10のボディ11において水素タンク2の内部を臨む内装部12の端部に配置されており、弁体収納部36(弁部)をボディ11の内方(ボディ11の内部構造方向)に向け、ソレノイド37を水素タンク2の内方(水素タンク2の内部空間方向)に向けて配置されている。ソレノイド37は、内装部12の径方向内側に収まるように設定されている。
【0024】
パイロットバルブ30のボディ31には、円筒状の弁室39と、弁室39と同心上にその外側に配置されたリング状のコイル収納部40が形成されている。弁室39とコイル収納部40はいずれも、水素タンク2の内部中央に向けて配置される端面38に開口しているが、弁室39は蓋体45で封止されている。弁室39は弁体収納部36の上端近くまで直線的に延びており、コイル収納部40はソレノイド37の上端近くまで直線的に延びている。弁室39とコイル収納部40は隔壁44によって離隔されている。
【0025】
弁体収納部36には、その外周部に入口孔41が、上部に出口孔42が形成されており、いずれも弁室39に連通している。入口孔41は、パイロットバルブ30よりも上流側のパイロット通路(以下、上流側パイロット通路という)29aを介して背圧室25に接続されており、出口孔42は、パイロットバルブ30よりも下流側のパイロット通路(以下、下流側パイロット通路という)29bを介して第2通路17に接続されている。また、出口孔42の内側周縁は弁座43となっている。
【0026】
弁室39には、直列に連結され一体とされた弁体32とプランジャ33が上下方向に移動可能に収容されており、弁体32の先部が弁座43に対して着座離反可能となっている。弁体32とプランジャ33は、弁室39に収容されたスプリング35によって弁座43に接近する方向(換言すると閉弁方向)に付勢されている。なお、スプリング35は弁室39の蓋体45によって支持されている。
【0027】
ソレノイド37のコイル収納部40にはコイル34が配置されており、コイル34に電流を流すとプランジャ33が電磁的吸引力により下方に引き付けられ、弁体32が弁座43から離反し、パイロットバルブ30は開弁する。
そして、パイロットバルブ30が開弁したときに、水素タンク2の内部と第2通路17とが、オリフィス通路28、メインバルブ18の背圧室25、パイロットバルブ30の弁室39、パイロット通路29を介して連通する。したがって、パイロット通路29は、水素タンク2の内部から第2通路17に通じる流路と言うことができる。また、オリフィス通路28とパイロット通路29aは、ソレノイド37の内部を水素タンク2の内部と常に連通させる通路である。
【0028】
このように構成された主止弁10の開弁動作を説明する。
閉弁時の主止弁10は、パイロットバルブ30のコイル34に電流が流れていないので、スプリング35によって付勢されたパイロットバルブ30の弁体32が弁座43に着座し、パイロットバルブ30は閉弁している。また、メインバルブ18もスプリング27によって付勢された弁体20が弁座26に着座して閉じている。このとき、水素タンク2内の圧力が、第1通路15を介して高圧室24に導通するとともに、オリフィス通路28を介してメインバルブ18の背圧室25に導通し、さらに上流側パイロット通路29aを介してパイロットバルブ30の弁室39に導通し、これらの領域は水素タンク2内の圧力と同圧となり、高圧となっている。一方、メインバルブ18とパイロットバルブ30が閉弁しているので、下流側パイロット通路29bと第2通路17には水素タンク2内の圧力が印加せず、低圧となっている。
【0029】
この閉弁状態の主止弁10を開弁するときには、パイロットバルブ30のコイル34に電流を流す。すると、コイル34への通電により発生する電磁的吸引力により、プランジャ33とともに弁体32が下方に引き付けられる結果、弁体32が弁座43から離反し、パイロットバルブ30が開弁する。パイロットバルブ30の開弁により、上流側パイロット通路29aと下流側パイロット通路29bが連通し、メインバルブ18の背圧室25の水素ガスがパイロット通路29を通って第2通路17に排出され、第2通路17内の圧力が上昇する。一方、背圧室25内の圧力は第2通路17への水素ガス流出により低下するが、背圧室25はオリフィス通路28を介して第1通路15に連通しているので、水素タンク2に貯留された水素ガスが第1通路15およびオリフィス通路28を通って背圧室25に流れ込み、背圧室25内の圧力を上昇させる。しかしながら、オリフィス通路28は小径であるので、背圧室25の圧力低下分の全てを補充することはできない。その結果、背圧室25内の圧力P2は、圧力室24内の圧力(すなわち、水素タンク2内の圧力)P1よりも小さく、且つ、第2通路17内の圧力P3よりも大きい値となる(P1>P2>P3)。
【0030】
そして、この圧力差と前述の第2通路17内の圧力上昇とに基づきメインバルブ18の弁体20には、弁体20を下方へ押す力が作用し、この力がスプリング27による閉弁方向への付勢力に勝ると、弁体20が弁座26から離反し、メインバルブ18が開弁する。
詳述すると、図3に示すように、メインバルブ18の弁体20の背圧室25側の受圧面積をS1、弁体20の第2通路17内における受圧面積をS2とすると、次の式(1)の不等式が成立したときに、メインバルブ18が開弁する。なお、Fはスプリング27の弾性力である。
(S1−S2)・P1+S2・P3>S1・P2+F ・・・ 式(1)
【0031】
メインバルブ18が開弁すると、水素タンク2内の水素ガスは第1通路15から高圧室24を介して第2通路17へと流れていく。なお、メインバルブ18が開弁したときメインバルブ18を流れる水素ガスの流量は、パイロットバルブ30だけが開弁しているときにパイロットバルブ30を流れる水素ガスの流量よりも極めて大きい。
【0032】
この主止弁10においては、メインバルブ18は差圧駆動式であって電磁駆動式ではないので、ソレノイドが不要である。そして、パイロットバルブ30のソレノイド37に配置されているコイル34はパイロットバルブ30に専用であり、パイロットバルブ30のプランジャ33を作動させるだけであるので、バルブストロークを短くすることができ、ソレノイド37を小型にすることができる。
【0033】
また、ソレノイド37におけるコイル収納部40は水素タンク2の内部に臨んで開口し、コイル収納部40内に水素タンク2内の圧力が印加されるようになっているので、ソレノイド37の内外、換言すればソレノイド37の全体が水素タンク2内の圧力を受圧する。また、前述したように、パイロットバルブ30の弁室39内には、水素タンク2内の圧力に対し、パイロットバルブ30が閉鎖しているときは等しい圧力が、パイロットバルブ30が開いたときには少し低い圧力が加わっている。その結果、ソレノイド37の内外の差圧を小さくすることができ、ソレノイド37の耐圧構造付与に伴う大型化を防ぐことができる。つまり、ソレノイド37においてコイル収納部40と弁室39とを離隔している隔壁44の肉厚を薄くしてコイル34とプランジャ33との離間寸法を小さくすることができ、プランジャ33に対する電磁的吸引力(推力)を大きくすることができる。したがって、ソレノイド37を小型化することができる。
【0034】
そして、この小型化されたソレノイド37をボディ11における内装部12の端面14に取り付け、内装部12の径方向内側に収まるように設置しているので、主止弁10において水素タンク2内に挿入する部分(すなわち、内装部12とソレノイド37)の径方向寸法を小さくすることができる。その結果、主止弁10の取付部となる水素タンク2の開口部2aの内径を小さくすることができる。これにより、開口部2aでの水素ガスの受圧面積を小さくすることができ、水素タンク2に螺合させるねじ長さが大きくならずに済むこととあわせ、主止弁10の小型・軽量化を図ることができる。また、水素タンク2の開口部2aの小径化は耐圧強度上も有利であり、タンク自体の軽量化を図ることができる。
また、パイロットバルブ30は、主止弁10のボディ11における内装部12の端部に配置されており、弁体収納部36をボディ11の内方に向け、ソレノイド37を水素タンク2の内方に向けて配置し、さらにソレノイド37を内装部12の端面14から水素タンク2の内部に露出させて配置しているので、パイロットバルブ30のボディ11への取り付けが容易である。
【0035】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、燃料電池システムは車両用に限るものではなく、定置用であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
2 水素タンク(タンク)
10 主止弁(インタンクバルブ)
11 ボディ
15 第1通路
17 第2通路
18 メインバルブ
29,29a,29b パイロット通路
30 パイロットバルブ(電磁式パイロットバルブ)
36 弁体収納部(弁部)
37 ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部をタンクの内部に挿入され該タンクに固定されるボディと、
前記ボディ内に形成され前記タンクの内部に通じる第1通路と、
前記ボディ内に形成され前記タンクの外部に通じる第2通路と、
前記タンクの内部から前記第2通路に通じるパイロット通路と、
前記パイロット通路上に配置されて該パイロット通路を開閉する電磁式パイロットバルブと、
前記パイロットバルブの開弁による前記第2通路内の圧力上昇で得られる推力と前記第1通路と前記パイロット通路との圧力差で得られる推力とを用いて開弁することで前記第1通路と前記第2通路とを連通させ、前記電磁式パイロットバルブよりも大流量で前記タンク内の流体を流通させることが可能なメインバルブと、
を備え、前記電磁式パイロットバルブは、前記タンク内の圧力を受圧するように前記ボディに設置されていることを特徴とするインタンクバルブ。
【請求項2】
前記電磁式パイロットバルブは、前記ボディにおいて前記タンクの内部を臨む端部に配置され、前記電磁式パイロットバルブの弁部を前記ボディの内方に向け、ソレノイドを前記タンクの内方に向けていることを特徴とする請求項1に記載のインタンクバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189107(P2012−189107A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51672(P2011−51672)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】