説明

インターフェロンアルファレセプター1抗体及びその使用法

本発明は、IFNAR-1と結合し、さらにI型インターフェロンの生物学的活性を阻害することができる、単離されたヒトモノクローナル抗体を提供する。本発明の抗体を含む、免疫複合体、二重特異性分子及び医薬組成物もまた提供される。本発明はまた、本発明の抗体を用いてI型インターフェロン仲介疾患を阻止する方法を提供する。前記方法には、本発明の抗体を用いる、自己免疫疾患、移植拒絶又は対宿主性移植片病の治療方法が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(背景技術)
I型インターフェロン(IFN)(IFN-α、IFN-β、IFN-ω、IFN-τ)は構造的に関連するサイトカインであり、抗ウイルス、抗腫瘍及び免疫調節作用を有する(Hardy et al. (2001) Blood 97:473;Cutrone and Langer (2001) J. Biol. Chem. 276:17140)。ヒトIFNα遺伝子座は2つのサブファミリーを含む。第一のサブファミリーは14の非対立遺伝子及び4つの少なくとも80%の相同性を有する偽遺伝子から成る。第二のサブファミリー、αII又はオメガ(ω)は、5つの偽遺伝子及び1つの機能的遺伝子(IFNα遺伝子と70%相同性を示す)を含む(Weissman and Weber (1986) Prog. Nucl. Acid Res. Mol. Biol. 33:251-300)。IFNαのサブタイプは種々の比活性を有するが、前記は同じ生物学的スペクトルを有し(Streuli et al. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2848)、さらに同じ細胞レセプターを有する(M. Agnet et al. in "Interferons 5" Ed. I. Gresser p.1-22, Aademic Press, London 1983)。
インターフェロンβ(IFNβ)は、IFNαとほぼ50%の相同性を有する単一の遺伝子によってコードされる。
ガンマインターフェロン(活性化リンパ球によって産生される)は、アルファ/ベータインターフェロンとは全く相同性をもたず、それらのレセプターとも反応しない。
【0002】
全てのヒトI型インターフェロンは細胞表面レセプター(IFNアルファレセプター、IFNAR)と結合し、前記レセプターは2つのトランスメンブレンタンパク質(IFNAR-1及びIFNAR-2)から成る(Uze et al. (1990) Cell 60:225;Novick et al. (1994) Cell 77:391)。IFNAR-1は、IFNAR複合体の高親和性結合及び差別的特異性のために必須である(Cutrone, 2001,上掲書)。I型IFNサブタイプの各々についての機能的相違は未だ同定されてはいないが、各々はIFNARレセプター成分との異なる相互作用を示し、潜在的に多様なシグナル伝達の出現をもたらす可能性があると考えられる(Cook et al. (1996) J. Biol. Chem. 271:13448)。特に、IFNAR1及びIFNAR2の変異形を用いた実験は、アルファ及びベータインターフェロンは、それぞれの鎖と差別的に相互作用することによってレセプターを介して別個にシグナルを発することを示唆した(Lewerenz et al. (1998) J. Mol. Biol. 282:585)。
初期のI型IFN機能実験はウイルス感染に対する生来の防御に照準が合わされた(Haller et al. (1981) J. Exp. Med. 154:199;Lindenmann et al. (1981) Methods Enzymol. 78:181)。しかしながら、より最近の実験は、IFNが適応免疫応答における強力な免疫調節性サイトカインであることを示唆している。特にI型IFNは、Th1経路でナイーブT細胞の分化を促進すること(Brinkmann et al. (1993) J. Exp. Med. 178:1655)、抗体産生を強化すること(Finkelman et al. (1991) J. Exp. Med. 174:1179)、及びメモリーT細胞の機能活性及び生存を促進すること(Santini et al. (2000) J. Exp. Med. 191:1777;Tough et al. (1996) Science 272:1947)が示された。
【0003】
多くのグループによる最近の研究は、IFN-αは樹状細胞(DC)の成熟又は活性化を強化しうることを示唆している(Santini et al. (2000) J. Exp. Med. 191:1777;Luft et al. (1998) J. Immunol. 161:1947;Luft et al. (2002) Int. Immunol. 14:367;Radvanyi et al. (1999) Scand. J. Immunol. 50:499)。さらにまた、I型インターフェロンの発現増加が多数の自己免疫疾患で報告された(Foulis et al. (1987) Lancet 2:1423;Hooks et al. (1982) Arthritis Rheum. 25:396;Hertzog et al. (1988) Clin. Immunol. Immunopathol. 48:192;Hopkins and Meager (1988) Clin. Exp. Immunol. 73:88;Arvin and Miller (1984) Arthritis Rheum. 27:582)。前記のもっともよく研究された例は、インスリン依存真性糖尿病(IDDM)(Foulis (1987) 上掲書)及び全身性紅斑性狼瘡(SLE)(Hooks (1982) 上掲書)(これらはIFN-αのレベル上昇を伴う)、並びに慢性関節リウマチ(RA)(Hertzog (1988), Hopkins and Meager (1988), Arvin and Miller, 上掲書)(前記はIFN-βがより重要な役割を果たす可能性がある)である。
さらにまた、インターフェロンαの投与は、乾癬及び多発性硬化症の患者で根幹の病状を悪化させ、さらに自己免疫疾患の既往歴のない患者でSLE様症状を誘発することが報告された。インターフェロンαはまた、正常なマウスで糸球体腎炎を誘発し、NZB/Wマウスで偶発的自己免疫疾患の開始を加速することが示された。さらに、IFN-α療法は、いくつかの事例では望ましくない副作用(発熱及び神経学的異常を含む)を生じることが示された。したがって、I型IFN活性の阻害が患者にとって有益である病的状況が存在し、I型IFN活性の阻害で有効な物質が要請されている。
【0004】
(発明の概要)
本発明は単離されたヒトモノクローナル抗体を提供する。前記抗体はIFNAR-1と結合し、I型インターフェロン、好ましくは複数のI型インターフェロンの生物学的活性を阻害する。さらにまた、前記抗体は、マウス抗IFNAR-1抗体(64G12)と同じエピトープには結合しない。
ある特徴では、本発明は単離されたヒト抗体又はその抗原結合部分に関し、ここで前記抗体はIFNAR-1と特異的に結合し、さらに1つ又は2つ以上の以下の特性を示す:
a)1x10-7M のKD又はそれより強い親和性でIFNAR-1と結合し;
b)複数のI型インターフェロンの生物学的活性を阻害し;
c)ダウディ(Daudi)細胞増殖アッセイでIFNα2bの活性を阻害し;
d)ダウディ(Daudi)細胞増殖アッセイでIFNオメガの活性を阻害し;
e)IFNα2bによって誘導される末梢血単核細胞によるIP-10分泌を阻害し;
f)IFNオメガによって誘導される末梢血単核細胞によるIP-10分泌を阻害し;
g)全身性紅斑性狼瘡血漿によって仲介される樹状細胞の発生(development)を阻害し;さらに
h)マウスモノクローナル抗体64G12(ECACC寄託番号92022605)とは異なるエピトープと結合する。
本発明の好ましい抗体はヒトインターフェロンアルファレセプター1と特異的に結合し、さらに1x10-8MのKD若しくはそれより強い親和性で、又は1x10-9MのKD若しくはそれより強い親和性で、又は5x10-10MのKD若しくはそれより強い親和性で、又は2x10-10MのKD若しくはそれより強い親和性で結合する。
【0005】
ある特徴では、本発明は、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関し、前記は、ヒトVH4-34又は5-51遺伝子の生成物であるか又は前記遺伝子に由来する重鎖可変領域を含み、ここで前記抗体はヒトインターフェロンアルファレセプター1と特異的に結合する。また別の特徴では、本発明は、単離されたヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関し、前記は、ヒトVkL18又はA27遺伝子の生成物であるか又は前記遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含み、ここで前記抗体はヒトインターフェロンアルファレセプター1と特異的に結合する。さらにまた別の特徴では、本発明は、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関し、前記は、(a)ヒトVH4-34又は5-51遺伝子の生成物であるか又は前記遺伝子に由来する重鎖可変領域;及び(b)ヒトVkL18又はA27遺伝子の生成物であるか又は前記遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含み、ここで前記抗体は、ヒトインターフェロンアルファレセプター1と特異的に結合する。好ましい実施態様では、前記抗体は、ヒトVH4-34遺伝子の重鎖可変領域及びヒトVkL18遺伝子の軽鎖可変領域を含むか、又はヒトVH5-51遺伝子の重鎖可変領域及びヒトVkA27遺伝子の軽鎖可変領域を含む。
また別の特徴では、単離されたヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、前記は、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含むヒト重鎖可変領域、並びにCDR1、CDR2及びCDR3配列を含むヒト軽鎖可変領域を含み、ここで
(a)前記ヒト重鎖可変領域のCDR3配列は、配列番号9、10、11及び12並びにその保存的改変のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)前記ヒト軽鎖可変領域のCDR3配列は、配列番号21、22、23及び24並びにその保存的改変のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)前記抗体は、少なくとも1x10-8M又はそれより強い結合親和性でヒトインターフェロンアルファレセプター1と特異的に結合し;さらに
(d)前記抗体は少なくとも1つのI型インターフェロンの生物学的活性を阻害する。
【0006】
好ましくは、前記ヒト重鎖可変領域CDR2配列は、配列番号5、6、7及び8並びにその保存的改変のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、さらに前記ヒト軽鎖可変領域CDR2配列は、配列番号17、18、19及び20並びにその保存的改変のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記ヒト重鎖可変領域CDR1配列は、配列番号1、2、3及び4並びにその保存的改変のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、さらに前記ヒト軽鎖可変領域CDR1配列は、配列番号13、14、15及び16並びにその保存的改変のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
また別の特徴では、本発明は単離されたヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関し、前記はヒト重鎖可変領域及びヒト軽鎖可変領域以下を含み、ここで
(a)前記ヒト重鎖可変領域は、配列番号25、26、27及び28から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含み;
(b)前記ヒト軽鎖可変領域は、配列番号29、30、31及び32から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含み;
(c)前記抗体は、少なくとも1x10-8M又はそれより強い結合親和性でヒトインターフェロンアルファレセプター1と特異的に結合し;さらに
(d)前記抗体は少なくとも1つのI型インターフェロンの生物学的活性を阻害する。
【0007】
本発明の好ましい抗体は、単離されたヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を含み、前記は、(a)配列番号1、2、3及び4から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域CDR1;(b)配列番号5、6、7及び8から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号9、10、11及び12から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号13、14、15及び16から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域CDR1;(e)配列番号17、18、19及び20から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域CDR2;(f)配列番号21、22、23及び24から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域CDR3を含み、ここで、前記抗体は、少なくとも1x10-8M又はそれより強い結合親和性でヒトインターフェロンアルファレセプター1と特異的に結合する。
CDR領域の好ましい組合せには以下が含まれる:
(a)配列番号1を含むヒト重鎖可変領域CDR1、(b)配列番号5を含むヒト重鎖可変領域CDR2、(c)配列番号9を含むヒト重鎖可変領域CDR3、(d)配列番号13を含むヒト軽鎖可変領域CDR1、(e)配列番号17を含むヒト重鎖可変領域CDR2;及び(f)配列番号21を含むヒト軽鎖可変領域CDR3;
(a)配列番号2を含むヒト重鎖可変領域CDR1、(b)配列番号6を含むヒト重鎖可変領域CDR2、(c)配列番号10を含むヒト重鎖可変領域CDR3、(d)配列番号14を含むヒト軽鎖可変領域CDR1、(e)配列番号18を含むヒト重鎖可変領域CDR2、及び(f)配列番号22を含むヒト軽鎖可変領域CDR3;
(a)配列番号3を含むヒト重鎖可変領域CDR1、(b)配列番号7を含むヒト重鎖可変領域CDR2、(c)配列番号11を含むヒト重鎖可変領域CDR3、(d)配列番号15を含むヒト軽鎖可変領域CDR1、(e)配列番号19を含むヒト重鎖可変領域CDR2、及び(f)配列番号23を含むヒト軽鎖可変領域CDR3;
(a)配列番号4を含むヒト重鎖可変領域CDR1、(b)配列番号8を含むヒト重鎖可変領域CDR2、(c)配列番号12を含むヒト重鎖可変領域CDR3、(d)配列番号16を含むヒト軽鎖可変領域CDR1、(e)配列番号20を含むヒト重鎖可変領域CDR2、及び(f)配列番号24を含むヒト軽鎖可変領域CDR3。
【0008】
本発明の他の好ましい抗体には、(a)配列番号25、26、27及び28から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域、及び(b)配列番号29、30、31及び32から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域を含む、単離されたヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合部分が含まれ、ここで前記抗体は、少なくとも1x10-8M又はそれより強い結合親和性でヒトインターフェロンアルファレセプター1と特異的に結合する。
好ましい重鎖及び軽鎖の組合せには以下が含まれる:
(a)配列番号25のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域、及び(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域;(a)配列番号26のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域、及び(b)配列番号30のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域;(a)配列番号27のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域、及び(b)配列番号31のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域;(a)配列番号28のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域、及び(b)配列番号32のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域。
本発明のまた別の特徴は、IFNAR-1との結合について本発明によって提供される参照抗体と競合する抗体に関する。したがって別の実施態様では、本発明は単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、ここで前記抗体は、ヒトインターフェロンアルファレセプター1との結合について参照抗体と交差競合し、ここで前記参照抗体は以下から成る群から選択される:
a)配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号29のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体;
b)配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体;
c)配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体;及び
d)配列番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体。
【0009】
ある種の実施態様では、本発明はヒト抗体又はその抗原結合部分を提供し、ここで前記抗体は、マウスのモノクローナル抗体64G12(ECACC寄託番号92022605)と同じエピトープには結合しない。
本発明の抗体は任意のアイソタイプでありうる。好ましい抗体はIgG1、IgG3、IgG4アイソタイプである。本発明の抗体は、可変領域及び定常領域を含む完全長の抗体でも、その抗原結合フラグメント(例えばFab又はFab'2フラグメント)でもよい。
本発明はまた、治療薬剤(例えば細胞毒又は放射性同位元素)と結合した本発明の抗体又はその抗原結合部分を含む免疫複合体を提供する。本発明はまた、本発明の抗体又はその抗原結合部分とは別個の結合特異性を有する第二の機能的部分と結合した本発明の抗体又はその抗原結合部分を含む二重特異性分子を提供する。
本発明の抗体若しくはその抗原結合部分、又は本発明の免疫複合体又は二重特異性分子及び医薬的に許容される担体を含む組成物もまた提供される。
本発明の抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子もまた、そのような核酸を含む発現ベクター及びそのような発現ベクターを含む宿主細胞と同様に本発明に包含される。さらにまた、本発明は、ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖導入遺伝子を含むトランスジェニックマウス(前記マウスは本発明の抗体を発現する)を、そのようなマウスから調製されるハイブリドーマ(ここで前記ハイブリドーマは本発明の抗体を産生する)と同様に提供する。
【0010】
本発明はまた、本明細書で提供される抗IFNAR-1抗体の配列を土台にした“第二世代”抗IFNAR-1抗体を作成する方法を提供する。例えば、本発明は、以下を含む抗IFNAR-1抗体を調製する方法を提供する:
(a)(i)配列番号1、2、3及び4から成る群から選択されるCDR1配列、配列番号5、6、7及び8から成る群から選択されるCDR2配列、並びに配列番号9、10、11及び12から成る群から選択されるCDR3配列を含む重鎖可変領域抗体配列;又は(ii)配列番号13、14、15及び16から成る群から選択されるCDR1配列、配列番号17、18、19及び20から成る群から選択されるCDR2配列、並びに配列番号21、22、23及び24から成る群から選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域抗体配列を提供し;
(b)前記重鎖可変領域抗体配列及び前記軽鎖可変領域抗体配列から選択される少なくとも1つの可変領域抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を改変して少なくとも1つの改変抗体配列を生成し;さらに
(c)前記改変抗体配列をタンパク質として発現させる。
本発明はまた、インターフェロンアルファレセプター1を発現する細胞でI型インターフェロンの生物学的活性を阻害する方法を提供する。前記方法は、I型インターフェロンの生物学的活性が阻害されるように、本発明の抗体と前記細胞を接触させることを含む。本発明はまた、I型インターフェロン仲介疾患又は異常を治療の必要がある対象者で治療する方法を提供する。前記方法は、前記対象者の前記I型インターフェロン仲介疾患が治療されるように、本発明の抗体又はその抗原結合部分を前記対象者に投与することを含む。前記I型インターフェロン仲介疾患は、例えばインターフェロンアルファ仲介疾患でありうる。
本発明の方法を用いて治療することができる疾患又は異常の例には、全身性紅斑性狼瘡、インスリン依存性真性糖尿病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、自己免疫性甲状腺炎、慢性関節リウマチ、糸球体腎炎、HIV感染、エイズ、移植拒絶、及び対宿主性移植片病が含まれる。
本発明の他の特徴及び利点は以下の詳細な説明及び実施例(前記実施例は限定するものと解されるべきではない)から明白となろう。本出願で引用された全ての参考文献、GenBankへの登録、特許、及び公開された特許出願は、参照により本明細書に含まれる。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、インターフェロンアルファレセプター1(IFNAR-1)と結合し、さらにI型インターフェロンの作用を阻止することができる単離されたモノクローナル抗体に関する。本発明は、単離された抗体、そのような抗体の作成方法、そのような抗体を含む免疫複合体及び二重特異性分子、並びに本発明の抗体、免疫複合体又は二重特異性分子を含む医薬組成物を提供する。本発明はまた、IFNAR-1を発現している細胞でI型インターフェロンとIFNAR-1との結合を阻害する抗体を、例えば免疫介在疾患(自己免疫疾患、移植拒絶及び対宿主性移植片病(GVHD)を含む)の治療において対象者で使用する方法に関する。
本発明のより容易な理解のために、まず初めにある種の用語を規定する。更なる規定は本詳細な説明の中で述べる。
“インターフェロンアルファレセプター-1”、“IFNAR-1”及び“IFNAR-1抗原”という用語は相互に用いられ、ヒトIFNAR-1の変種、アイソフォーム、種間同族体、並びにIFNAR-1に関して少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体が含まれる。したがって、本発明のヒト抗体は、ある種の事例では、ヒト以外の種のIFNAR-1と、又はヒトIFNAR-1と構造的に関連する他のタンパク質(例えばヒトIFNAR-1同族体)と交差反応することができる。他の事例では、前記抗体はヒトIFNAR-1に完全に特異的であり、種間交差反応性又は他のタイプとの交差反応性を示さない。
ヒトIFNAR-1の完全なcDNA配列のGenBankアクセッション番号はNM_000629である。
【0012】
本明細書で用いられる“I型インターフェロン”という用語は、IFNAR-1のリガンドである分子のうちI型インターフェロンファミリーのメンバー(すなわちIFNAR-1と結合することができる分子のうちI型インターフェロンファミリーのメンバー)を指すことを意図する。I型インターフェロンリガンドの例は、インターフェロンアルファ1、2a、2b、4、5、6、7、8、10、14、16、17、21、インターフェロンベータ及びインターフェロンオメガである。
“免疫応答”という用語は、例えばリンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び上記細胞又は肝臓によって産生される可溶性巨大分子の作用を指す(前記可溶性巨大分子は抗体、サイトカイン及び補体を含み、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌細胞、又は自己免疫若しくは病的炎症の事例では正常なヒト細胞若しくは組織の選択的損壊、破壊又は身体からの排除をもたらす)。
“シグナルトランスダクション経路”は、細胞のある部分から細胞のまた別の部分へのシグナルの伝達において役割をもつ多様なシグナルトランスダクション分子間の生化学的関係を指す。本明細書で用いられる、“細胞表面レセプター”という語句は、例えばシグナルを受け取り、そのようなシグナルを細胞の形質膜を通過して伝達することができる分子及び分子の複合体を指す。本発明の“細胞表面レセプター”の例はIFNAR-1レセプターである。
本明細書で用いられる“抗体”という用語には、完全な抗体及び任意の抗原結合フラグメント(すなわち“抗原結合部分”)又はその単一鎖が含まれる。“抗体”は、ジスルフィド結合によって連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖、又はその抗原結合部分を含む糖タンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと省略される)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略される)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL)で構成される。VH及びVL領域はさらに超可変領域に分割することができ、相補性決定領域(CDR)と称され、より保存されたフレームワーク領域(FR)と称される領域が間に介在している。各VH及びVLは3つのCDR及び4つのFRで構成され、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へ並んでいる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと宿主組織又は因子(免疫系の種々の細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第一の区画(C1q)を含む)との結合を仲介しうる。
【0013】
本明細書で用いられる、抗体の“抗原結合部分”(又は単純に“抗体の部分”)は、抗原(例えばIFNAR-1)と特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ又は2つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は完全長の抗体のフラグメントによって発揮されうることが示された。抗体の“抗原結合部分”という用語に包含される結合フラグメントの例には以下が含まれる:(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCHドメインから成る一価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインから成るFdフラグメント;(iv)抗体の単腕のVL及びVHドメインから成るFvフラグメント;(v)dAbフラグメント(Ward et al. (1989) Nature 341:544-546)、前記はVHドメインから成る;及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)。さらにまた、Fvフラグメントの2つのドメイン(VL及びVH)は別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え手法を用い、それらを単一タンパク質鎖として生成させることを可能にする合成リンカーによって結合させることができ、この場合VL及びVH領域対は一価分子(単鎖Fv(scFv)として知られている)を形成する(例えば以下を参照されたい:Bird et al. (1988) Science 242:423-426;Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883)。そのような単鎖抗体もまた抗体の“抗原結合部分”という用語に包含される。これらの抗体フラグメントは当業者に公知の一般的な技術を用いて得られ、それらフラグメントは無傷の抗体と同じ態様で有用性をスクリーニングすることができる。
【0014】
本明細書で用いられる、“単離された抗体”とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えばIFNAR-1と特異的に結合する単離された抗体は、IFNAR-1以外の他の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。IFNAR-1と特異的に結合する単離された抗体は、しかしながら他の抗原(例えば他の種由来のIFNAR-1分子)との交差反応性を有することができる。さらにまた、単離された抗体は他の細胞性物質及び/又は化学物質を実質的に含まない。
本明細書で用いられる、“モノクローナル抗体”又は“モノクローナル抗体組成物”は、単一分子組成の抗体分子調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、個々のエピトープに対しただ1つの結合特異性及び親和性を示す。
本明細書で用いられる、“ヒト抗体”は、可変領域のフレームワーク及びCDR領域の両者がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含む。さらにまた、前記抗体が定常領域を含む場合、前記定常領域もまたヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、in vitroでのランダム若しくは位置特異的変異導入によって、又はin vitroでの体細胞変異によって導入された変異)。しかしながら、本明細書で用いられる、“ヒト抗体”は、別の哺乳動物種(例えばマウス)の生殖細胞系列由来のCDR配列がヒトのフレームワーク配列に移植された抗体は含まない。
【0015】
“ヒトモノクローナル抗体”という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、ただ1つの結合特異性を示す抗体を指す。ある実施態様では、前記ヒトモノクローナル抗体はハイブリドーマによって産生される。このハイブリドーマは、不死化細胞と融合させた、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物(例えばトランスジェニックマウス)から得られたB細胞を含む。
本明細書で用いられる、“組換えヒト抗体”は、組換え手段によって調製され、発現され、作成され、又は単離された全てのヒト抗体を含む。前記は、例えば(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックであるか又は導入染色体状態にある動物(例えばマウス)から単離された抗体、又は前記動物から調製されたハイブリドーマから単離された抗体(下記でさらに述べる)、(b)ヒト抗体を発現させるために形質転換した宿主細胞(例えばトランスフェクトーマ)から単離された抗体、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作成又は単離された抗体である。そのような組換えヒト抗体は、フレームワーク及びCDR領域がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。ある種の実施態様では、しかしながらそのような組換えヒト抗体は、in vitro変異導入に付され(又はヒトIg配列についてトランスジェニック動物が使用されるときは、in vivo体細胞変異導入に付され)、したがって、前記組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は(ヒト生殖細胞系列のVH及びVL配列に由来及び関連するが)、天然にはin vivoでのヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内には存在しえない。
【0016】
本明細書で用いられる、“アイソタイプ”は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体のクラス(例えばIgM又はIgG)を指す。
本明細書で用いられる、“特異的な結合”は、予め定められた抗原と抗体との結合を指す。典型的には、抗体は10-7M又はそれより低い解離定数(KD)で結合し、さらに予め定められた抗原又は近縁な抗原以外の他の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)との結合のためのKDよりも少なくとも2倍低いKDで予め定められた抗原と結合する。“抗体が抗原を認識する”及び“抗原に特異的な抗体”という語句は、“抗原と特異的に結合する抗体”という用語と互換的に本明細書では用いられる。
本明細書で用いられる、“Kassoc”又は“Ka”という用語は、個々の抗体-抗原相互作用の結合速度を指し、一方、本明細書で用いられる、“Kdis”又は“Kd”という用語は、個々の抗体-抗原相互作用の解離速度を指す。本明細書で用いられる、“KD”という用語は解離定数を指し、前記はKd対Kaの比(すなわちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表現される。抗体のKD値は、当技術分野で確立された方法を用いて決定することができる。抗体のKDを決定する好ましい方法は、表面プラスモン共鳴を用いて、好ましくはバイオセンサー系(例えばビアコア(Biacore(商標))システム)を用いるものである。
本明細書で用いられる、IgG抗体の“高親和性”という用語は、10-8Mまたはそれより低い、好ましくは10-9Mまたはそれより低い、より好ましくは10-10Mまたはそれより低いKDを有する抗体を指す。しかしながら、“高親和性”結合は他の抗体アイソタイプについては変動しうる。例えばIgMアイソタイプの“高親和性”結合は、10-7Mまたはそれより低い、より好ましくは10-8Mまたはそれより低いKDを有する抗体を指す。
本明細書で用いられる、“対象者”という用語には、任意のヒト又は非ヒト動物が含まれる。“非ヒト動物”という用語には全ての脊椎動物、例えば哺乳動物及び非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、乳牛、ニワトリ、両生類、爬虫類などが含まれる。
本発明の種々の特徴が以下の項目でさらに詳細に記載される。
【0017】
抗IFNAR-1抗体
本発明の抗体は、それらの具体的な機能的特徴又は特性によって特徴付けられる。例えば、前記抗体はIFNAR-1、好ましくはヒトIFNAR-1と特異的に結合する。さらにまた、前記抗体は、1つ又は2つ以上の非ヒト霊長類、例えばシノモルガスモンキー(cynomolgus monkey)及び/又はアカゲザル由来のIFNAR-1と交差反応することができる。好ましくは、本発明の抗体は、高親和性で、例えば10-7Mまたはそれより低いKDで、より好ましくは10-8Mまたはそれより低い、又は10-9Mまたはそれより低い、さらには5x10-10Mまたはそれより低い、又は2x10-10Mまたはそれより低いKDでIFNAR-1と結合する。
さらにまた、本発明の抗体は、I型インターフェロンの生物学的活性を阻害することができる。前記抗体は、少なくとも1つのI型インターフェロンの生物学的活性を阻害し、好ましくは複数のI型インターフェロン(すなわち少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は少なくとも6つ、又は少なくとも7つ、又は少なくとも8つ、又は少なくとも9つ、又は少なくとも10、又は少なくとも11、又は少なくとも12、又は少なくとも13、又は少なくとも14、又は少なくとも15の種々のサブタイプのI型インターフェロン)の生物学的活性を阻害する。好ましい実施態様では、前記抗体は以下のI型インターフェロンの生物学的活性を阻害する:α1、α2a、α2b、α4、α5、α6、α7、α8、α10、α14、α16、α17、α21、ベータ及びオメガ。他の好ましい実施態様では、前記抗体は類リンパ芽球IFN及び/又は白血球IFNの活性を阻害する。
【0018】
I型インターフェロンの生物学的活性を阻害する抗体の能力は、当技術分野で確立されている1つ又は2つ以上のアッセイで調べることができる。非限定的な例には、ダウディ(Daudi)細胞増殖のI型IFN仲介阻害の阻害、末梢血単核細胞(PBMC)によるIP-10のI型インターフェロン誘導性発現の阻害、全身性紅斑性狼瘡(SLE)によって仲介される樹状細胞の発生の阻害、及びI型インターフェロンの抗ウイルス活性の阻害が含まれる。非特異的なコントロール抗体と比較したとき、ある抗体が、I型インターフェロンの生物学的活性を少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%阻害するならば、抗体は“I型インターフェロンの生物学的活性を阻害する”。
好ましい実施態様では、前記抗体はダウディ細胞増殖アッセイでIFNα2bの活性を阻害し、ダウディ細胞増殖アッセイでIFNオメガの活性を阻害し、IFNα2b若しくはIFNオメガによって誘導されるPBMCによるIP-10分泌を阻害し、及び/又はSLE血漿によって仲介される樹状細胞の発生を阻害する。
また別の好ましい実施態様では、前記抗体は、マウス抗IFNAR-1抗体、64G12(ECACC寄託番号92022605として寄託)と交差競合しない。
【0019】
抗IFNAR-1抗体の機能的活性を判定するアッセイは実施例でさらに詳細に記載される。本発明の好ましい抗体は、少なくとも1つ、より好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ又はそれより多い下記の特性を示す:
a)IFNAR-1(好ましくはヒトIFNAR-1)と特異的に結合し;
b)強い親和性、例えば1x10-8MのKD又はそれより強い親和性でIFNAR-1と結合し;
c)複数のI型インターフェロンの生物学的活性を阻害し;
d)ダウディ細胞増殖アッセイでIFNα2bの活性を阻害し;
e)ダウディ細胞増殖アッセイでIFNオメガの活性を阻害し;
f)IFNα2bによって誘導される末梢血単核細胞によるIP-10分泌を阻害し;
g)IFNオメガによって誘導される末梢血単核細胞によるIP-10分泌を阻害し;
h)全身性紅斑性狼瘡血漿によって仲介される樹状細胞の発生を阻害し;さらに
i)マウスモノクローナル抗体64G12(ECACC寄託番号92022605)とは異なるエピトープと結合する(すなわち64G12と交差競合しない)。
上記に記載した機能的特徴、及び/又は実施例に記載した機能的特徴の任意の組合せが本発明の抗体によって示されうる。
【0020】
モノクローナル抗体3F11、4G5、11E2及び9D4
本発明の好ましい抗体は、ヒトモノクローナル抗体3F11、4G5、11E2及び9D4であり、前記は実施例に記載されたように単離され、構造的に性状が調べられた。3F11、4G5、11E2及び9D4のVHアミノ酸配列は、配列番号25、26、27及び28でそれぞれ示されている。3F11、4G5、11E2及び9D4のVLアミノ酸配列は、配列番号29、30、31及び32でそれぞれ示されている。
これらの抗体の各々がIFNAR-1と結合することができるとすれば、VH及びVL配列を“混合して組合せ”、本発明のまた別の抗IFNAR-1結合分子を作成することができる。そのような“混合して組合せ”た抗体を、本明細書に記載した結合アッセイ(例えばELISA)を用いるか、及び/又は実施例に記載したI型IFN機能阻害アッセイを用いて試験することができる。好ましくは、VH及びVL鎖を混合して組み合わせたとき、個々のVH/VL対のVH配列が構造的に類似するVH配列と置き換えられる。同様に好ましくは、個々のVH/VL対のVL配列が構造的に類似するVL配列と置き換えられる。例えば、3F11及び4G5のVH及びVL配列は、特に混合及び組合せを実施しやすい。なぜならば、これらの抗体は、同じ生殖細胞系列の配列に由来するVH及びVL配列(VH4-34及びVkL18)を使用し、したがってそれらは構造的類似性を示すからである。さらにまた、11E2及び9D4のVH及びVL配列は、特に混合及び組合せを実施しやすい。なぜならば、これらの抗体は、同じ生殖細胞系列の配列に由来するVH及びVL配列(VH5-51及びVkA27)を使用し、したがってそれらは構造的類似性を示すからである。
【0021】
したがって、ある特徴では、本発明は、(a)配列番号25、26、27及び28から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び(b)配列番号29、30、31及び32から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を提供し、ここで前記抗体はIFNAR-1と特異的に結合する。
好ましい重鎖及び軽鎖の組合せには以下が含まれる:
(a)配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び(b)配列番号29のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は
(a)配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び(b)配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は
(a)配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び(b)配列番号31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は
(a)配列番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び(b)配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0022】
また別の特徴では、本発明は、3F11、4G5、11E2及び9D4の重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又は前記の組合せを含む抗体を提供する。3F11、4G5、11E2及び9D4のVH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号1、2、3及び4に示されている。3F11、4G5、11E2及び9D4のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号5、6、7及び8に示されている。3F11、4G5、11E2及び9D4のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号9、10、11及び12に示されている。3F11、4G5、11E2及び9D4のVk CDR1のアミノ酸配列は、配列番号13、14、15及び16に示されている。3F11、4G5、11E2及び9D4のVk CDR2のアミノ酸配列は、配列番号17、18、19及び20に示されている。3F11、4G5、11E2及び9D4のVk CDR3のアミノ酸配列は、配列番号21、22、23及び24に示されている。前記CDR領域はカバット系を用いて明示されている(E.A. Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, US Dept. of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)。
【0023】
これらの抗体の各々がIFNAR-1と結合し、さらに抗原結合特異性が主としてCDR1、2及び3領域によって提供されうるとすれば、VH CDR1、2及び3配列及びVk CDR1、2及び3配列を“混合して組合せ”、本発明のまた別の抗IFNAR-1結合分子を作成することができる(すなわち、別個の抗体に由来するCDRを混合し組み合わせることができる。ただし各々の抗体はVH CDR1、2及び3並びにVk CDR1、2及び3を含まねばならない)。そのような“混合して組合せ”た抗体のIFNAR-1結合は、上記及び実施例に記載した結合アッセイ(例えばELISA)を用いて試験することができる。好ましくは、VH CDR配列が混合され組み合わされるときは、個々のVH配列のCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列が構造的に類似するCDR配列と置き換えられる。同様に、Vk CDR配列が混合され組み合わされるときは、個々のVk配列のCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列が構造的に類似するCDR配列と置き換えられる。例えば、3F11及び4G5のVH CDR1はいくつかの構造的類似性を共有し、したがって混合及び組合せを実施しやすい。また別の実施例として、11E2及び9D4のVH CDR1はいくつかの構造的類似性を共有し、したがって混合及び組合せを実施しやすい。さらにまた別の実施例として、3F11及び4G5のVk CDR1はいくつかの構造的類似性を共有する。さらにまた別の実施例として、11E2及び9D4のVH CDR1はいくつかの構造的類似性を共有する。モノクローナル抗体3F11、4G5、11E2及び9D4について本明細書で開示したCDR配列由来の構造的に類似する配列で、1つ又は2つ以上のVH及び/又はVL CDR領域の配列を置換することによって、新規なVH及びVL配列を作成することができることは当業者には極めて明白であろう。
したがって、別の特徴では、本発明は、(a)配列番号1、2、3及び4から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)配列番号5、6、7及び8から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号9、10、11及び12から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号13、14、15及び16から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(e)配列番号17、18、19及び20から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;及び(f)配列番号21、22、23及び24から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、ここで前記抗体はIFNAR-1と特異的に結合する。
【0024】
好ましい実施態様では、前記抗体は以下を含む:
(a)配列番号1を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号5を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号9を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号13を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号17を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
(f)配列番号21を含む軽鎖可変領域CDR3。
また別の好ましい実施態様では、前記抗体は以下を含む:
(a)配列番号2を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号6を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号10を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号14を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号18を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
(f)配列番号22を含む軽鎖可変領域CDR3。
また別の好ましい実施態様では、前記抗体は以下を含む:
(a)配列番号3を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号7を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号11を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号15を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号19を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
(f)配列番号23を含む軽鎖可変領域CDR3。
また別の好ましい実施態様では、前記抗体は以下を含む:
(a)配列番号4を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号8を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号12を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号16を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号20を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
(f)配列番号24を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0025】
3F11、4G5、11E2及び9D4と同じエピトープに結合する抗体
また別の実施態様では、本発明は、モノクローナル抗体3F11、4G5、11E2又は9D4(それぞれ配列番号25、26、27及び28に示されるVH配列、及びそれぞれ配列番号29、30、31及び32に示されるVL配列を有する)とヒトIFNAR-1上の同じエピトープに結合する抗体を提供する。そのような抗体は、3F11、4G5、11E2又は9D4と交差競合する能力を基準にして標準的なIFNAR-1結合アッセイで同定することができる。3F11、4G5、11E2又は9D4とヒトIFNAR-1との結合を阻害するテスト抗体の能力は、テスト抗体が、ヒトIFNAR-1結合について3F11、4G5、11E2又は9D4と競合し、したがって3F11、4G5、11E2又は9D4とヒトIFNAR-1上の同じエピトープに結合することができることを示す。好ましい実施態様では、3F11、4G5、11E2又は9D4とIFNAR-1上の同じエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。そのようなヒトモノクローナル抗体は、実施例に記載したように調製及び単離することができる。
また別の好ましい実施態様では、前記抗体は、マウスモノクローナル抗体64G12(ECACC寄託番号92022605)とは異なるエピトープに結合する(すなわち64G12とは交差競合しない)。
【0026】
特定の生殖細胞系列の配列を有する抗体
ある種の実施態様では、本発明の抗体は、特定の生殖細胞系列の重鎖免疫グロブリン遺伝子由来の重鎖可変領域及び/又は特定の生殖細胞系列の軽鎖免疫グロブリン遺伝子由来の軽鎖可変領域を含む。
例えば、好ましい実施態様では、本発明は単離された抗IFNAR-1モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、ここで前記抗体は
(a)ヒトVH4-34又は5-51遺伝子の重鎖可変領域を含み;
(b)ヒトVkL18又はA27遺伝子の軽鎖可変領域を含み;さらに
(c)前記抗体は特異的にIFNAR-1と結合する。
VH4-34及びVkL18のVH及びVkを有する抗体の例はそれぞれ3F11及び4G5を含む。VH5-51及びVkA27のVH及びVkを有する抗体の例はそれぞれ11E2及び9D4を含む。
本明細書で用いられるように、もし抗体の可変領域がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子を用いる系から得られるならば、前記ヒト抗体は、特定の生殖細胞系列の配列“で構成される” 重鎖若しくは軽鎖可変領域、又は前記配列“に由来する”重鎖若しくは軽鎖可変領域、又は前記配列“の生成物”を含む。そのような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保持するトランスジェニックマウスを対象とする抗原で免疫するか、又はファージ上でディスプレーされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを対象とする抗原を用いてスクリーニングすることを含む。ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列“で構成される”か、又は前記免疫グロブリン配列“に由来する”か、又は前記免疫グロブリン配列“の生成物である”ヒト抗体は、前記ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖細胞系列の免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、さらに前記ヒト抗体の配列ともっとも近縁な(すなわち最も大きい%同一性の)ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列を選別することによって、そのようなものと同定することができる。特定のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列“で構成される”か、又は前記免疫グロブリン配列“に由来する”か、又は前記免疫グロブリン配列“の生成物である”ヒト抗体は、前記生殖細胞系列の配列と比較したとき、例えば天然に生じる体細胞変異又は意図的な位置特異的変異の導入によるアミノ酸の相違を含むことができる。しかしながら、選択されるヒト抗体は、そのアミノ酸配列がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して典型的には少なくとも90%同一であり、さらに、他の種の生殖細胞系列の免疫グロブリンアミノ酸配列と比較したとき、前記ヒト抗体がヒトのものであることを確認させるアミノ酸残基を含んでいる。ある種の事例では、ヒト抗体は、そのアミノ酸配列がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、97%、98%又は99%同一でありうる。典型的には、特定のヒト生殖細胞系列の配列に由来するヒト抗体では、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と異なるアミノ酸は10個を超えないであろう。ある種の事例では、前記ヒト抗体では、生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と異なるアミノ酸は5個を超えないか、又は4、3、2又は1個を超えないであろう。
【0027】
相同な抗体
さらに別の実施態様では、本発明の抗体は、本明細書に記載の好ましい抗体のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖可変領域を含み、さらに前記抗体は本発明の抗IFNAR-1抗体の所望の機能特性を保持している。例えば、本発明は、重鎖及び軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、ここで
(a)前記重鎖可変領域は、配列番号25、26、27及び28から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含み;
(b)前記軽鎖可変領域は、配列番号29、30、31及び32から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含み;
(c)前記抗体は、IFNAR-1と特異的に結合し、さらに本明細書に記載の機能的特性の少なくとも1つ、好ましくは本明細書に記載の機能的特性のいくつかを示す。
他の実施態様では、VH及び/又はVLアミノ酸配列は、上記に示す配列と85%、90%、95%、97%、98%又は99%相同でありうる。上記に示す配列のVH及びVL領域と高い(すなわち80%以上)相同性を有するVH及びVL領域をもつ抗体は、配列番号33、34、35、36、37、38、39又は40をコードする核酸分子に変異を導入し(例えば位置特異的又はPCR仲介変異導入)、続いて本明細書に記載の機能的アッセイを用いてコードされた変異抗体を維持された機能(すなわち上記の(c)、(d)及び(e)に示された機能)について試験することによって得ることができる。
【0028】
本明細書で用いられる、2つのアミノ酸配列間のパーセント相同性は2つの配列間のパーセント同一性と等価である。2つの配列間のパーセント同一性は、前記配列によって共有される同一の位置の数の関数であり(すなわち%相同性=同一の位置の数/位置の総数x100)、前記では2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップ数及び各ギャップの長さが考慮されている。2つの配列間の配列の比較及びパーセント同一性の決定は、下記の非限定的な例で記載されているように数学的アルゴリズムを用いて実施することができる。
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、E. Meyers and W. Miller(Comput. Appl. Biosci. 4:11-17(1988))のアルゴリズムを用いて決定することができる。前記アルゴリズムはALIGNプログラム(バージョン2.0)に取りこまれてあり、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティー12及びギャップペナルティー4を用いる。さらにまた、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Needleman and Wunschのアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:444-453(1970))を用いて決定することができる。前記アルゴリズムはGCGソフトパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手できる)に取り込まれてあり、ブロッサム62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれか、及びギャップ重量16、14、12、10、8、6又は4、及び長さの重量1、2、3、4、5又は6を用いる。
前記に加えて又は前記とは別に、本発明のタンパク質配列をさらに“クェリー配列”として用いて、例えば関連配列を同定するために公的データベースの検索を実施することができる。そのような検索はXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実施することができる(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10)。BLASTタンパク質検索はXBLASTプログラムを用い、スコア=50、ワード長=3で実施して、本発明の抗体分子に対し相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的でギャップを付与したアラインメントを得るために、Altschulら(Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402(1997))が記載したギャップ付加BLASTを利用することができる。BLAST及びギャップ付加BLASTプログラムを用いるときは、対応するプログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)の規定値パラメータを用いることができる。例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0029】
保存的改変を含む抗体
ある種の実施態様では、本発明の抗体は、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、これらCDR配列の1つ又は2つ以上は、本明細書に記載の好ましい抗体(例えば3F11、4G5、11E2及び9D4)を土台にした特徴的なアミノ酸配列又はその保存的改変を含み、さらに前記抗体は、本発明の抗IFNAR-1抗体の所望の機能的特性を維持する。したがって、本発明は、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、ここで、
(a)前記重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号9、10、11及び12のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列、又はその保存的改変を含み;
(b)前記軽鎖可変領域CD3配列は、配列番号21、22、23及び24のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列、又はその保存的改変を含み;さらに
(c)前記抗体はIFNAR-1と特異的に結合し、さらに本明細書に記載の機能的特性の少なくとも1つ、より好ましくは本明細書に記載の機能的特性のいくつかを示す。
さらに別の実施態様では、前記重鎖可変領域CDR2配列は、配列番号5、6、7及び8のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列、又はその保存的改変を含み、さらに前記軽鎖可変領域CD2配列は、配列番号17、18、19及び20のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列、又はその保存的改変を含む。さらにまた別の実施態様では、前記重鎖可変領域CDR1配列は、配列番号1、2、3及び4のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列、又はその保存的改変を含み、さらに前記軽鎖可変領域CD1配列は、配列番号13、14、15及び16のアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列、又はその保存的改変を含む。
本明細書で用いられる、“保存的配列改変”という用語は、前記アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に顕著には影響を与えないか又は変化を与えないアミノ酸の改変を指す。そのような保存的改変にはアミノ酸の置換、付加及び欠失が含まれる。改変は、当業者に公知の標準的技術(例えば位置特異的変異導入及びPCR仲介変異導入)によって本発明の抗体に導入されうる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは当技術分野では明らかにされている。これらのファミリーには、塩基性側鎖をもつアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖をもつアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、荷電を持たない極性側鎖をもつアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖をもつアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ-分枝側鎖をもつアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖をもつアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置換し、本明細書に記載の機能アッセイを用いて改変抗体を維持された機能(すなわち上記の(c)、(d)及び(e)に示す機能)について試験することができる。
【0030】
操作及び改変した抗体
本発明の抗体はさらに、改変抗体の操作のための出発物質として本明細書に開示したVH及び/又はVL配列の1つ又は2つ以上を有する抗体を用いて調製することができる。前記改変抗体は前記出発抗体から変化した特性を有することができる。抗体は、一方又は両方の可変領域(すなわちVH及び/又はVL)内、例えば1つ又は2つ以上のCDR領域内及び/又は1つ又は2つ以上のフレームワーク領域内の1つ又は2つ以上の残基を改変することによって操作することができる。前記に加えて又は前記とは別に、抗体は、例えば前記抗体のエフェクター機能を変化させるために定常領域内の残基を改変することによって操作することができる。
実施することができる可変領域の操作の1つのタイプはCDR移植である。抗体は、もっぱら6つの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)中に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。この理由により、CDR内のアミノ酸配列は、個々の抗体間でCDRの外側の配列よりも多様である。CDR配列はほとんどの抗体-抗原相互作用に必要であるので、CDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特に天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることができる。前記CDR配列は、別個の特性を有する別個の抗体由来のフレームワークに特に天然に存在する抗体が移植されたものから得られる(例えば以下を参照されたい:L. Riechmann et al. (1998) Nature 332:323-327;P. Jones et al. (1986) Nature 321:522-525;C. Queen et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-10033;米国特許5,225,539号(Winter);米国特許5,530,101号、同5,585,089号、同5,693,762号及び同6,180,370号(いずれもQueen et al))。
【0031】
したがって、本発明のまた別の実施態様は、配列番号1、2、3及び4、配列番号5、6、7及び8、並びに配列番号9、10、11及び12から成る群からそれぞれ選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む重鎖可変領域、並びに配列番号13、14、15及び16、配列番号17、18、19及び20、並びに配列番号21、22、23及び24から成る群からそれぞれ選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関する。したがって、そのような抗体は、モノクローナル抗体3F11、4G5、11E2又は9D4のVH及びVLCDR配列を含み、しかもこれら抗体とは異なるフレームワークを含むことができる。
そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列の抗体遺伝子配列を含む公的DNAデータベース又は刊行された文献から入手できる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、“VBase”ヒト生殖細胞系列配列データベース(インターネットwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能)の他に文献(E.A. Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3234;I.M. Tomlinson et al. (1992) “The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segment with Different Hypervariable Loops” J. Mol. Biol. 227:776-798;及びJ. P. Cox et al. (1984) "A Directory of Human Germ-line VH Segments Reveals a Strong Bias in their Usage”Eur. J. Immunol. 24:827-836、前記文献の各々の内容は参照により本明細書に含まれる)で見出すことができる。
【0032】
本発明の抗体で使用される好ましいフレームワーク配列は、本発明の選択された抗体で使用されているフレームワーク配列と構造的に類似するもの、例えば3F11及び4G5モノクローナル抗体で使用されるVH4-34及びVLL18フレームワーク配列と類似するもの、又は11E2及び9D4モノクローナル抗体で使用されるVH5-51及びVLA27フレームワーク配列と類似するものである。配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12のVHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23及び24のVLCDR1、2及び3配列を、そのフレームワーク配列が得られた生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子で見出されるフレームワークと同じ配列を有するフレームワーク領域に移植するか、又は前記CDR配列を、前記生殖細胞系列の配列と比較して1つ又は2つ以上の変異を含むフレームワーク領域に移植することができる。例えば、ある種の事例では、フレームワーク領域内の残基を変異させて、前記抗体の抗原結合能力を維持又は強化することは有益であることが見出された(例えば以下を参照されたい:米国特許5,530,101号、同5,585,089号、同5,693,762号及び同6,180,370号(いずれもQueen et al))。
可変領域改変のまた別のタイプは、VH及び/又はVLCDR1、CDR2及び/又はCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それによって対象とする抗体の1つ又は2つ以上の結合特性(例えば親和性)を改善することである。位置特異的変異導入又はPCR仲介変異導入を実施して、変異及び抗体結合に対する効果又は対象とする他の機能的特性を導入し、本明細書に記載しさらに実施例で提供されるin vitro又はin vivoアッセイで評価することができる。好ましくは保存的改変(上記で考察された)が導入される。前記変異はアミノ酸の置換、付加又は欠失でもよいが、好ましくは置換である。さらにまた、典型的には5つを超えない残基がCDR領域内で変異させられる。
【0033】
したがって、また別の実施態様では、本発明は、単離された抗IFNAR-1モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供し、前記は、(a)配列番号1、2、3及び4から成る群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号1、2、3及び4から成る群から選択されるアミノ酸配列と比較したとき1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVHCDR1領域;(b)配列番号5、6、7及び8から成る群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号5、6、7及び8から成る群から選択されるアミノ酸配列と比較したとき1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVHCDR2領域;(c)配列番号9、10、11及び12から成る群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号 9、10、11及び12から成る群から選択されるアミノ酸配列と比較したとき1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR3領域;(d)配列番号13、14、15及び16から成る群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号13、14、15及び16から成る群から選択されるアミノ酸配列と比較したとき1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVLCDR1領域;(e)配列番号17、18、19及び20から成る群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号 17、18、19及び20から成る群から選択されるアミノ酸配列と比較したとき1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVLCDR2領域;(f)配列番号21、22、23及び24から成る群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号21、22、23及び24から成る群から選択されるアミノ酸配列と比較したとき1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含む。
【0034】
本発明の操作された抗体には、例えば抗体の特性を改善するために、改変がVH及び/又はVL内のフレームワーク残基に対して施されたものが含まれる。典型的には、そのようなフレームワーク改変は、抗体の免疫原性を低下させるために実施される。例えば、あるアプローチは、1つ又は2つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系列の配列に“復帰突然変異” させることである。より具体的には、体細胞変異を施された抗体は、前記抗体が由来した生殖細胞系列の配列とは異なるフレーム残基を含むことができる。そのような残基は、前記抗体が由来した生殖細胞系列の配列と比較することによって同定することができる。例えば、3F11の場合、VHのアミノ酸残基#43(FR2内)はスレオニンであるが、対応するVH4-34生殖細胞系列配列中でのこの残基はアラニンである(図5参照)。フレームワーク領域の配列をそれらの生殖細胞系列の構造に戻すために、例えば位置特異的変異導入又はPCR仲介変異導入によって、体細胞変異を生殖細胞系列配列へ“復帰突然変異”させることができる(例えば3F11のVHの残基#43をスレオニンからアラニンへ“復帰突然変異”させることができる)。また別の例として、4G5の場合、VHのアミノ酸残基#81(FR3内)はアスパラギンであるが、対応するVH4-34生殖細胞系列配列でのこの残基はリシンである(図6参照)。フレームワーク領域配列をそれらの生殖細胞系列の構造に戻すために、体細胞変異をアスパラギンからリシンへ“復帰突然変異”させることができる。また別の例として、11E2及び9D4の場合、VHのアミノ酸残基#28(FR1内)はイソロイシンであるが、対応するVH5-51生殖細胞系列配列でのこの残基はセリンである(図7参照)。フレームワーク領域配列をそれらの生殖細胞系列の構造に戻すために、体細胞変異をイソロイシンからセリンへ“復帰突然変異”させることができる。このような“復帰突然変異”させた抗体もまた本発明に含まれることが意図される。
【0035】
フレームワーク改変のまた別のタイプは、フレームワーク領域内、又は1つ又は2つ以上のCDR領域内の1つ又は2つ以上の残基を変異させ、T細胞エピトープを除去することを必要とし、それによって抗体の潜在的な免疫原性を減少させる。このアプローチはまた、“脱免疫化”と称され、米国特許公開20030153043(Carr et al.)にさらに詳細に記載されている。
フレームワーク内又はCDR領域で実施される改変に加えて、又は前記改変とは別に、Fc領域内に改変を加えるために、典型的には抗体の1つ又は2つ以上の機能的特性(例えば血清半減期、補体結合、Fcレセプター結合及び/又は抗原依存細胞性細胞傷害)を変化させるために本発明の抗体を操作することができる。さらにまたくり返せば、抗体の1つ又は2つ以上の機能的特性を変化させるために、本発明の抗体を化学的に改変する(例えば1つ又は2つ以上の化学的成分を前記抗体に付加する)か、又はそのグリコシル化を変化させることができる。これらの実施態様の各々は下記でさらに詳細に述べる。Fc領域の番号付与はKabatのEUインデックスの番号付与である。
ある実施態様では、ヒンジ領域内のシステイン残基の数を変化させる(例えば増加又は減少させる)ことができるように、CH1のヒンジ領域が改変される。このアプローチは米国特許5,677,425号(Bodmer et al.)に詳細に記載されている。ヒンジ領域内のシステイン残基の数は、例えば軽鎖及び重鎖のアッセンブリーを促進するために、又は抗体の安定性を強化又は低下させるために変更される。
また別の実施態様では、抗体の生物学的半減期を短縮させるために抗体のFcヒンジ領域を変異させる。より具体的には、1つ又は2つ以上のアミノ酸の変異をFcヒンジフラグメントのCH2-CH3ドメイン境界領域に導入して、それによって天然のFc-ヒンジドメインのブドウ球菌たんぱく質A(SpA)結合に比してSpA結合を低下させる。このアプローチは米国特許6,165,745号(Ward et al.)にさらに詳細に記載されている。
【0036】
また別の実施態様では、その生物学的半減期を延長させるために抗体は改変される。種々のアプローチが可能である。例えば、米国特許6,277,375号(Ward)に記載されているように、T252L、T254S、T256Fの変異の1つ又は2つ以上を導入することができる。また別には、生物学的半減期を延長させるために、米国特許5,869,046号及び同6,121,022号(Presta et al.)に記載されているように、CH1又はCL領域内で抗体を変異させて、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られたサルベージレセプター結合エピトープを保持させることができる。
さらに別の実施態様では、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることによってFc領域を変化させ、抗体のエフェクター機能が改変される。例えば、抗体のエフェクターリガンドに対する親和性は変化するが、親抗体の抗原結合能力は維持されるように、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320及び322から選択される1つ又は2つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。それに対する親和性が変化させられるエフェクターリガンドは、例えばFcレセプター又は補体のC1区画であろう。このアプローチは米国特許5,624,821号及び同5,648,260号(Winter et al.)にさらに詳細に記載されている。
また別の例では、抗体のC1q結合が変化するように、及び/又は補体依存細胞傷害性(CDC)が低下又は消失するように、アミノ酸残基329、331及び322から選択される1つ又は2つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸で置き換えることができる。このアプローチは米国特許6,194,551号(Idusogie et al.)にさらに詳細に記載されている。
また別の例では、アミノ酸231位及び239位内の1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を変異させ、それによって抗体の補体結合能力を変化させる。このアプローチはPCT公開WO94/29351(Bodmer et al.)にさらに詳細に記載されている。
【0037】
さらに別の例では、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を仲介する抗体の能力を高めるために、及び/又はFcγレセプターに対する抗体の親和性を高めるために、以下の位置の1つ又は2つ以上のアミノ酸を変更することによってFc領域が改変される:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438又は439。このアプローチはPCT公開WO00/42072(Presta et al.)にさらに詳細に記載されている。さらにまた、FcγRI、FcγRII、FcγRIII及びFcRnのためのヒトIgG1上の結合部位をマッピングして、結合が改善された変種が記載されている(以下を参照されたい:R.L. Shields et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:6591-6604)。256、290、298、333、334及び339位の特定の変異はFcγRIIIとの結合を改善することが示された。さらにまた、以下の組合せの変異体はFcγRIII結合を改善することが示された:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224A及びS298A/E333A/K334A。
さらにまた別の実施態様では、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、脱グリコシル化抗体(すなわち抗体はグリコシル化を欠く)を作成することができる。例えば抗原に対する抗体の親和性を高めるために、グリコシル化を改変することができる。そのような炭水化物の改変は、例えば抗体配列内の1つ又は2つ以上のグリコシル化部位を変異させることによって達成することができる。例えば、1つ又は2つ以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位の除去をもたらす1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を実施し、それによって前記部位のグリコシル化を排除することができる。そのような脱グリコシル化は抗体の抗原に対する親和性を高めることができる。そのようなアプローチは米国特許5,714,350号及び同6,350,861号(Co et al.)にさらに詳細に記載されている。
【0038】
前記に加えて、又は前記とは別に、改変されたタイプのグリコシル化を有する抗体を、例えばフコシル残基量が低下した低フコシル化抗体、又は二分節化(bisecting)GlcNac構造が増加した抗体を作成することができる。そのような改変グリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが示された。そのような炭水化物の改変は、例えば改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞で抗体を発現させることによって達成することができる。改変グリコシル化機構を有する細胞は既に当技術分野で報告され、本発明の組換え抗体をその中で発現させるための宿主細胞として用い、それによって改変グリコシル化により抗体を生成することができる。例えば、EP1,176,195(Hanai et al.)は機能的に破壊されたFUT8遺伝子(フコシルトランスフェラーゼをコードする)を有する細胞株を記載している。前記のような細胞株で発現された抗体は低フコシル化を示す。PCT公開公報WO03/035835(Presta)は変種CHO細胞株のLec13細胞を開示している。前記は、フコースをAsn(297)-結合炭水化物へ結合させる能力が低下し、前記宿主細胞で発現された抗体の低フコシル化もまたもたらす(以下の文献もまた参照されたい:R.L. Shields et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740)。PCT公開公報WO99/54342(Umana et al.)は、糖タンパク質を改変するグリコシルトランスフェラーゼ(例えばベータ(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)を発現するように操作された細胞株を開示している。前記の操作細胞株で発現された抗体は、抗体のADCC活性を増加させる二分節化GlcNac構造の増加を示す(さらにまた以下の文献を参照されたい:Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-180)。
本発明で意図されるまた別の抗体の改変はPEG化である。抗体は、例えばその生物学的な(例えば血中)半減期を延長させるためにPEG化することができる。抗体をPEG化するために、抗体又はそのフラグメントを典型的にはポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体と、1つ又は2つ以上のPEG基が前記抗体又は抗体フラグメントに結合できる条件下で反応させる。好ましくは、PEG化は、反応性PEG分子(又は反応性水溶性ポリマー類似体)とのアシル化反応又はアルキル化反応を介して実施される。本明細書で用いられる、“ポリエチレングリコール”という用語は、他のタンパク質を誘導するためにこれまでに用いられた任意のPEGの形態、例えばモノ(C1-C10)アルコキシ-又はアリールオキシ-ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドを包含することを意図する。ある種の実施態様では、PEG化されるべき抗体は脱グリコシル化抗体である。タンパク質をPEG化する方法は当技術分野で公知であり、本発明の抗体に適用することができる。例えばEP0154316(Nishimura et al.)及びEP0401384(Ishikawa et al.)を参照されたい。
【0039】
抗体を操作する方法
したがって、本発明のまた別の特徴では、本発明の抗IFNAR-1抗体(例えば3F11、4G5、11E2及び9D4)の構造的特徴を用いて、本発明の抗体の少なくとも1つの機能的特性(例えばIFNAR-1との結合)を維持する、構造的に関連する抗IFNAR-1抗体が作出される。例えば、3F11、4G5、11E2及び9D4の1つ又は2つ以上のCDR領域又はその変種を公知のフレームワーク領域及び/又は他のCDRと組換えにより組み合わせて、さらに別の組換えにより操作された本発明の抗IFNAR-1抗体を上記に考察したように作出することができる。他のタイプの改変には先の項目で述べたようなものが含まれる。前記操作方法のための出発材料は、本明細書で提供される1つ若しくは2つ以上のVH及び/又はVL配列、又は前記の1つ若しくは2つ以上のCDR領域である。操作された抗体を作出するためには、本明細書で提供される1つ若しくは2つ以上のVH及び/又はVL配列、又は前記の1つ若しくは2つ以上のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(すなわちタンパク質として発現させる)ことは必ずしも必要ではない。むしろ、前記配列に含まれた情報が出発物質として用いられ、前記最初の配列に由来する“第二世代”配列が生成され、続いてこの“第二世代”配列が調製され、タンパク質とし発現される。
【0040】
したがってまた別の実施態様では、本発明は、以下を含む抗IFNAR-1抗体を調製する方法を提供する:
(a)(i)配列番号1、2、3及び4から成る群から選択されるCDR1配列、配列番号5、6、7及び8から成る群から選択されるCDR2配列、及び/又は配列番号9、10、11及び12から成る群から選択されるCDR3配列を含む重鎖可変領域抗体配列;及び(ii)配列番号13、14、15及び16から成る群から選択されるCDR1配列、配列番号17、18、19及び20から成る群から選択されるCDR2配列、及び/又は配列番号21、22、23及び24から成る群から選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域抗体配列を提供し;
(b)前記第一の抗体配列及び/又は前記第二の抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を改変して少なくとも1つの改変抗体配列を作成し;
(c)前記改変抗体配列を調製し;さらに
(d)前記改変抗体配列をタンパク質として発現させる。
標準的な分子生物学的技術を用いて、前記改変抗体配列を調製及び発現させることができる。
【0041】
好ましくは、前記改変抗体配列によってコードされる抗体は、本明細書に開示する抗IFNAR-1抗体の1つ、いくつか、又は全ての機能的特性を維持するものであり、前記機能的特性には(i)IFNAR-1との結合;(ii)I型インターフェロンとIFNAR-1との結合の阻害;(iii)ヒトIFNAR-1を発現する生細胞との結合;(iv)10-8M未満(例えば10-9M又は10-10Mまたはそれ未満)のKDでヒトIFNAR-1と結合;(v)IFNAR-1上の固有のエピトープと結合(組み合わせて用いられたときに、相補的な活性を有するモノクローナル抗体が同じエピトープと結合することについて競合する可能性を排除するため)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
前記改変抗体の機能的特性は、当技術分野で利用可能な、及び/又は本明細書に記載の標準的なアッセイを用いて判定することができる。例えばIFNAR-1と結合する抗体の能力は、標準的な結合アッセイ、例えば実施例で説明されるようなもの(例えばELISA)を用いて決定することができる。
本発明の抗体を操作する方法のある種の実施態様では、変異がランダムに又は選択的に抗IFNAR-1抗体コード配列(例えば3F11、4G5、11E2及び9D4コード配列)の全体に又は一部分に導入され、さらに、本明細書に記載するように、得られた改変抗IFNAR-1抗体を結合活性及び/又は他の機能的特性についてスクリーニングすることができる。変異導入方法は当技術分野では既に報告されている。例えば、PCT公開公報WO02/092780(Short)は、飽和変異導入、合成連結アッセンブリー又はその組合せを用いる変異抗体を作出し、これをスクリーニングする方法を記載している。また別には、PCT公開公報WO03/074679(Lazar et al.)は、コンピュータでスクリーニングする方法を用いて、抗体の物理化学的特性を最適化する方法を記載している。
【0042】
本発明の抗体をコードする核酸分子
本発明のまた別の特徴は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。前記核酸は、完全細胞中に、細胞溶解物中に又は部分的に精製若しくは実質的に精製された形態で存在しうる。核酸は、他の細胞性成分又は他の夾雑物(例えば他の細胞性核酸又はタンパク質)から、標準的技術(アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動及び当技術分野で周知の他の技術を含む(以下を参照されたい:F. Ausubel et al. ed. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York))によって精製されたとき、“単離されている”か、又は“実質的に精製されている”。本発明の核酸は例えばDNA又はRNAであり、イントロン配列を含んでいてもいなくてもよい。好ましい実施態様では、前記核酸はcDNA分子である。
本発明の核酸は標準的な分子生物学的な技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(例えば下記でさらに述べるヒト免疫グロブリン遺伝子を保持するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体の場合、前記ハイブリドーマによって生成される抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAが、標準的なPCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得られる。免疫グロブリンライブラリーから(例えばファージディスプレー技術を用いて)得られる抗体の場合、前記抗体をコードする核酸は前記ライブラリーから回収することができる。
本発明の好ましい核酸分子は、3F11、4G5、11E2及び9D4モノクローナル抗体のVH及びVL配列をコードするものである。3F11のVH及びVL配列をコードするDNA配列は配列番号33及び37にそれぞれ示されている。4G5のVH及びVL配列をコードするDNA配列は配列番号34及び38にそれぞれ示されている。11E2のVH及びVL配列をコードするDNA配列は配列番号35及び39にそれぞれ示されている。9D4のVH及びVL配列をコードするDNA配列は配列番号36及び40にそれぞれ示されている。
【0043】
いったんVH及びVLセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたら、これらのDNAフラグメントをさらに標準的なDNA組換え技術によって操作し、例えば可変領域遺伝子を完全長の抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子、またはscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作で、VH及びVLコードDNAフラグメントは、また別のタンパク質(例えば抗体の定常領域又は可撓性リンカー)をコードする別のDNAフラグメントに機能可能に連結される。この文脈で用いられる“機能可能に連結される”という用語は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がインフレームとして維持されるように、前記2つのDNAフラグメントが結合されることを意味する。
VH領域をコードする単離されたDNAは、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードするまた別のDNA分子に前記VHコードDNAを機能可能に連結することによって完全長の重鎖遺伝子に変換することができる。ヒトの重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野では公知であり(例えば以下を参照されたい:E.A. Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, US Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgDの定常領域でよいが、もっとも好ましくはIgG1又はIgG4の定常領域である。Fabフラグメントの重鎖遺伝子の場合は、VHコードDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に機能可能に連結することができる。
VL領域をコードする単離されたDNAは、軽鎖定常領域、CLをコードするまた別のDNA分子に前記VLコードDNAを機能可能に連結することによって完全長の軽鎖遺伝子(Fab軽鎖遺伝子も同様に)に変換することができる。ヒトの軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野では公知であり(例えば以下を参照されたい:E.A. Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, US Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域はカッパ又はラムダ定常領域でよいが、もっとも好ましくはカッパ定常領域である。
scFv遺伝子を作出するために、VH及びVLコードDNAフラグメントを、可撓性リンカーをコードするまた別のフラグメント(例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする)に機能可能に連結し、それによってVH及びVL領域が可撓性リンカーによって結合された状態で、VH及びVL配列を連続した単一鎖タンパク質として発現させることができる(例えば以下を参照されたい:Bird et al.(1988) Science 242:423-426;Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;McCafferty et al. (1990) Nature 348:552-554)。
【0044】
本発明のモノクローナル抗体の製造
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、多様な技術(通常のモノクローナル抗体技術、例えばケーラーとミルシュタインの標準的体細胞ハイブリダイゼーション技術(Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495)を含む)によって製造することができる。体細胞ハイブリダイゼーション方法が好ましいが、原則として他のモノクローナル抗体製造技術、例えばBリンパ球のウイルス性又は腫瘍原性形質転換も利用することができる。
ハイブリドーマ製造のための好ましい動物系はマウスの系である。マウスでのハイブリダイゼーション製造は非常によく確立された方法である。免疫プロトコル及び融合のための免疫脾細胞の単離技術は当技術分野では公知である。融合パートナー(例えばマウスミエローマ細胞)及び融合の方法もまた公知である。
本発明のキメラ抗体又はヒト化抗体は、上記記載のように調製したマウスのモノクローナル抗体の配列を土台に調製することができる。重鎖及び軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは対象とするマウスハイブリドーマから入手し、さらに標準的な分子生物学的技術を用いて非マウス(例えばヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作することができる。例えば、キメラ抗体を作出するために、当技術分野で公知の方法を用いて(例えば米国特許4,816,567号(Cabilly et al.)を参照されたい)、マウスの可変領域をヒト定常領域に連結することができる。ヒト化抗体を作出するためには、当技術分野で公知の方法を用いて(例えば米国特許5,225,539号(Winter et al.)及び米国特許5,530,101号、同5,585,089号、同5,693,762号、同6,180,370号(いずれもQueen et al.)を参照されたい)、マウスのCDR領域をヒトフレームワークに挿入することができる。
好ましい実施態様では、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。そのようなIFNAR-1に対して作成されたヒトモノクローナルは、マウスの系ではなくてヒト免疫系の部分を保持するトランスジェニックマウス又は導入染色体マウスを用いて生成することができる。これらのトランスジェニック及び導入染色体マウスには、本明細書でそれぞれHuMAbマウス及びKMマウスと称されるマウスが含まれ、さらに包括的に本明細書では“ヒトIgマウス”と称される。
【0045】
HuMAbマウス(商標)(Medarex, Inc.)は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ対立遺伝子座(非再編ヒト重鎖(μ及びγ)及びκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードする)を、内在性μ及びκ鎖の対立遺伝子座を不活化させる標的特定変異とともに含んでいる(例えば以下を参照されたい:Lonberg et al. (1994) Nature 368(6474):856-859)。したがって、前記マウスはマウスIgM又はκの発現低下を示し、さらに免疫に応答して、導入された重鎖及び軽鎖導入遺伝子はクラススィッチング及び体細胞変異を受けて高親和性のヒトIgGκモノクローナル抗体を生成する(N. Lonberg et al. (1994)、上掲書;N. Lonberg (1994) Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101での概論;N. Lonberg and D. Huszar (1995) Intern. Rev. Immunol. 13:65-93;F. Harding and N. Lonberg (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 764:536-546)。HuMabマウスの調製及び使用、並びにそのようなマウスによって運ばれるゲノムの改変は下記文献にさらに記載されている:L. Taylor et al. (1992) Nucleic Acids Research 20:6287-6295;J. Chen et al. (1993) International Immunology 5:647-656;Tuaillon et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3720-3724;Choi et al. (1993) Nature Genetics 4:117-123;J. Chen et al. (1993) EMBO J. 12:821-830;Tuaillon et al. (1994) J. Immunol. 152:2912-2920;L. Taylor et al. (1994) International Immunology 6:579-591;D. Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851、前記文献の全ての内容は参照により本明細書に含まれる。さらにまた以下の特許文献を参照されたい:米国特許5,545,806号、同5,569,825号、同5,625,126号、同5,633,425号、同5,789,650号、同5,877,397号、同5,661,016号、同5,814,318号、同5,874,299号、同5,770,429号(いずれもLonberg and Kay);米国特許5,545,807号(Surani et al);PCT公開公報WO92/03918、WO93/1227、WO94/25585、WO97/13852、WO98/24884及びWO99/45962(いずれもLonberg and Kay);及びPCT公開公報WO01/14424(Korman et al.))。
【0046】
また別の実施態様では、本発明のヒト抗体は、導入遺伝子及び導入染色体上でヒト免疫グロブリン配列を保持するマウス(例えばヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入染色体を保持するマウス)を用いて作成される。そのようなマウス(本明細書では“KMマウス”と称される)は、PCT公開公報WO02/43478(Ishida et al.)に詳細に記載されている。
さらにまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するまた別のトランスジェニック動物が当技術分野で利用可能であり、本発明の抗IFNAR-1抗体の作成に用いることができる。例えば、ゼノマウス(Abgenix, Inc.)と称されるまた別のトランスジェニック系を用いることができる。そのようなマウスは例えば米国特許5,939,598号、同6,075,181号、同6,114,598号、同6,150,584号及び同6,162,963号(いずれもKucherlapati et al.)に記載されている。
さらにまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するまた別の導入染色体動物系が当技術分野では利用可能であり、本発明の抗IFNAR-1抗体の作成に用いることができる。例えば、ヒト重鎖導入染色体及びヒト軽鎖導入染色体の両者を保持するマウス(“TCマウス”と称される)を用いることができる。そのようなマウスは、Tomizukaらの文献(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727)に記載されている。さらにまた、ヒト重鎖及び軽鎖トランスクロモソームを保持する乳牛が当技術分野で報告されており(Kuroiwa et al. (2002) Nature Biotechnology 20:889-894)、本発明の抗IFNAR-1抗体の作成に用いることができる。
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレー方法を用いて調製することができる。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレー方法は当技術分野では確立されている。例えば以下の特許文献を参照されたい:米国特許5,223,409号、5,403,484号、及び5,571,698号(Ladner et al.);米国特許5,427,908号及び5,580,717号(Dower et al.);米国特許5,969,108号及び6,172,197号(McCafferty et al.);米国特許5,885,793号、6,521,404号、6,544,731号、6,555,313号、6,582,915号及び6,593,081号(Griffiths et al.
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト抗体応答が免疫に際して発生しうるようにヒト免疫細胞がその中に再構築されてある、SCIDマウスを用いて調製することができる。そのようなマウスは、例えば米国特許5,476,996号及び5,698,767号(Wilson et al.)に記載されている。
【0047】
ヒトIgマウスの免疫
ヒトIgマウスを用いて本発明のヒト抗体を生成するとき、そのようなマウスは、精製又は濃縮IFNAR-1抗原調製物及び/又はIFNAR-1発現細胞を用いて免疫することができる。前記は以下の文献に記載されている:N. Lonberg et al. (1994) Nature 368(6474):856-859;D. Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851;PCT公開公報WO98/24884及びWO01/14424。好ましくは、前記マウスは最初の輸液時に6〜16週齢であろう。例えば、精製又は濃縮IFNAR-1抗原調製物(5〜50μg)を用いてヒトIgマウスを腹腔注射で免疫することができる。精製又は濃縮IFNAR-1抗原調製物を用いた免疫が抗体を生じない場合にはまた、IFNAR-1発現細胞、例えばヒトT細胞株でマウスを免疫し、免疫応答を促進することができる。
IFNAR-1に対するヒトモノクローナル抗体を充分に生成するための詳細な方法は下記実施例1に記載されている。種々の抗原を用いて積重ねられた経験によって、先ず初めにフロイントの完全アジュバント中の抗原を用いて腹腔内(IP)で免疫し、続いて2週間毎(合計6回まで)にフロイントの不完全アジュバント中の抗原を用いて腹腔内で免疫したときにトランスジェニックマウスは応答することが示された。しかしながら、フロイントアジュバント以外のアジュバントもまた有効であることが判明した。さらにまた、アジュバント非存在下での完全細胞は高度に免疫原性であることが見出された。免疫応答は、免疫プロトコル進行中に後眼窩採血によって得られる血漿サンプルを用いてモニターすることができる。前記血漿は、(下記に記載するように)ELISAによってスクリーニングすることができ、充分な抗IFNAR-1ヒト免疫グロブリン力価をもつマウスを融合に用いることができる。屠殺して脾臓を取り出す3日前に静脈内抗原投与によりマウスを追加免疫する。各免疫について2〜3融合を実施する必要があると予想される。典型的には6から24匹のマウスが各抗原で免疫される。通常はHCo7及びHCo12の両株が用いられる。さらにまた、HCo7及びHCo12の導入遺伝子の両方を一緒に交配して、2つの異なるヒト重鎖導入遺伝子をもつ単一マウス(Hco7/HCo12)を得ることができる。
【0048】
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作成
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作成するために、免疫マウスの脾細胞及び/又はリンパ節細胞を単離し、適切な不死化細胞株、例えばマウスミエローマ細胞株と融合させることができる。得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングすることができる。例えば、免疫マウスの脾臓リンパ球の単一細胞懸濁物を1/6の数のP3X63-Ag8.653非分泌性マウスミエローマ細胞(ATCC, CRL1580)と50%PEGを用いて融合させることができる。細胞を約2x105で平底マイクロタイタープレートに播種し、続いて、20%の胎児クローン血清、18%の“653”条件付け培養液、5%のオリゲン(IGEN)、4mMのL-グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのHEPES、0.055mMの2-メルカプトエタノール、50ユニット/mLのペニシリン、50mg/mLのストレプトマイシン、50mg/mLのゲンタマイシン及び1xHAT(Sigma; HATは融合後24時間で添加される)を含む選択培地で2週間インキュベートする。約2週間後に、HATをHTで置き換えた培養液で細胞を培養することができる。続いて個々のウェルをヒトモノクローナルIgM及びIgG抗体についてELISAでスクリーニングすることができる。いったん強いハイブリドーマの増殖が惹起されたら、培養液を通常10〜14日後に調べることができる。抗体分泌ハイブリドーマを再播種し、再びスクリーニングし、ヒトIgGについてなお陽性である場合に、前記モノクローナル抗体を限界希釈により少なくとも2回サブクローニングすることができる。続いて安定なサブクローンをin vitroで培養して、特徴付けのために組織培養液中で少量の抗体を産生させることができる。
ヒトモノクローナル抗体の精製のために、選別したハイブリドーマを2リットルのモノクローナル抗体精製用スピンナーフラスコで増殖させることができる。タンパク質A-セファロース(Pharmacia, Piscataway, N.J.)によるアフィニティークロマトグラフィーの前に、上清をろ過し濃縮する。溶出させたIgGをゲル電気泳動及び高速液体クロマトグラフィーによってチェックし、純度を確認することができる。緩衝溶液をPBSに交換し、吸光係数1.43を用いOD280によって濃度を測定することができる。このモノクローナル抗体を適量ずつ小分けし、−80℃で保存することができる。
【0049】
本発明のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの作成
本発明の抗体はまた、例えば当分野で周知の組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション方法の組合せを用いて、宿主細胞トランスフェクトーマで産生させることができる(例えば、S. Morrison (1985) Science 229:1202)。
例えば、抗体又はその抗体フラグメントを発現させるために、標準的な分子生物学の技術(例えば、対象とする抗体を発現するハイブリドーマを用いるPCR増幅又はcDNAクローニング)によって、部分的又は完全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAを入手し、前記DNAを発現ベクターに挿入して前記遺伝子を転写及び翻訳制御配列に機能可能に連結させることができる。この文脈では、“機能可能に連結される”という用語は、抗体がベクターに連結され、前記ベクター内の転写及び翻訳制御配列が、前記抗体遺伝子の転写及び翻訳の調節ついて前記制御配列の意図した機能の発揮に供されうることを意味する。前記発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合しうるように選択される。抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子を別々のベクターに挿入してもよいが、より典型的には両遺伝子は同じ発現ベクターに挿入される。前記抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば抗体遺伝子フラグメント及びベクター上の相補的な制限部位の連結、又は制限部位がない場合は平滑端連結)によって発現ベクターに挿入される。本明細書記載の抗体の軽鎖及び重鎖可変領域遺伝子を用いて、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体を作出することができる。前記は、所望のタイプの重鎖及び軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクターに、ベクター内のCHセグメントにVHセグメントが機能可能に連結されるように、さらにベクター内のCLセグメントにVLセグメントが機能可能に連結されるように本明細書記載の抗体の軽鎖及び重鎖可変領域遺伝子を挿入することによって達成することができる。前記に加えて、又は前記とはまた別に、組換え体発現ベクターは、宿主細胞の抗体鎖分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。前記シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレーム連結されうるように、前記抗体鎖遺伝子をベクター中でクローン化することができる。前記シグナルペプチドは免疫グロブリンのシグナルペプチドでも、異種のシグナルペプチド(すなわち非免疫グロブリンタンパク質のシグナルペプチド)でもよい。
【0050】
前記抗体鎖遺伝子の他に、本発明の組換え体発現ベクターは、宿主細胞内で抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保持する。“調節配列”という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び前記抗体鎖の転写又は翻訳を制御する他の発現制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。そのような調節配列は例えば以下に記載されている:Goeddel, “Gene Expression Technology”, Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)。発現ベクターの設計(調節配列の選択を含む)は、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現レベルなどの要件に左右されうる。哺乳動物宿主細胞での発現に好ましい調節配列には、哺乳動物細胞での高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルス性エレメント、例えばサイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))及びポリオーマ由来のプロモーター及び/又はエンハンサーが含まれる。また別には非ウイルス性調節配列、例えばユビキチンプロモーター又はβ-グロビンプロモーターを用いてもよい。さらにまた、異なる供給源に由来する配列で構成された調節性エレメント、例えばSRαプロモーター系(前記はSV40初期プロモーター及び1型ヒトT細胞白血病ウイルスのロングターミナルリピートを含む)であってもよい(Y. Takebe et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
前記抗体鎖遺伝子及び調節配列の他に、本発明の組換え体発現ベクターはさらに別の配列、例えば宿主細胞内でのベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)及び選別可能マーカー遺伝子を保持することができる。前記選別可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選別を促進する(例えば以下を参照されたい:米国特許4,399,216号、4,634,665号及び5,179,017号(いずれもAxel et al.))。例えば、典型的には前記選別可能マーカー遺伝子は、薬剤(例えばG418、ヒグロマイシン又はメトトレキセート)耐性を、前記ベクターが導入された宿主細胞に付与する。好ましい選別可能マーカー遺伝子には、ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr-宿主細胞でメトトレキセート選別/増幅とともに用いられる)及びneo遺伝子(G418選別のために用いられる)が含まれる。
【0051】
軽鎖及び重鎖発現のために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトする。“トランスフェクション”という用語は、外因性DNAを原核宿主細胞又は真核宿主細胞に導入するために一般的に用いられる広範囲の技術、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することを意図する。本発明の抗体を原核宿主細胞又は真核宿主細胞のどちらかで発現させることは理論的には可能であるが、真核細胞、もっとも好ましくは哺乳動物宿主細胞での抗体の発現が好ましい。なぜならば、そのような真核細胞、特に哺乳動物細胞は、適切に折り畳まれた、免疫学的に活性な抗体をアッセンブリングし分泌する可能性がより高いからである。抗体遺伝子の原核細胞発現は、高収量の活性な抗体の産生には有効でないことが報告された(M.A. Boss and C.R. Wood (1985) Immunology Today 6:12-13)。
本発明の組換え抗体を発現させるために好ましい哺乳動物宿主細胞には以下が含まれる:チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(Urlaub and Chasin(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980)が記載したdhfr-CHO細胞を含む)、R.J. Kaufman and P.A. Sharp(Mol. Biol. 159:601-621, 1982)が記載したようにDHFR選別可能マーカーとともに用いられる;NSOミエローマ細胞、COS細胞及びSP2細胞。特に、NSOミエローマ細胞とともに用いる場合、また別の好ましい発現系は、WO87/04462、WO89/01036及びEP338,841に開示されたGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されるときは、抗体は、宿主細胞内での前記抗体の発現(より好ましくは宿主細胞が増殖している培養液中への抗体の分泌)を可能にするために充分な時間宿主細胞を培養することによって製造される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて、培養液から回収することができる。
【0052】
抗原と結合する抗体の特徴付け
本発明の抗体を、例えば標準的なELISAによってIFNAR-1との結合について試験することができる。簡単に記せば、マイクロタイタープレートを精製IFNAR-1(PBS中で0.25μg/mL)で被覆し、続いてPBS中の5%ウシ血清アルブミンでブロックする。抗体の希釈物(例えばIFNAR-1で免疫したマウスの血漿の希釈物)を各ウェルに添加し、37℃で1〜2時間インキュベートする。プレートをPBS/トゥイーンで洗浄し、続いて二次試薬(例えばヒト抗体の場合、アルカリ性ホスファターゼに結合させたヤギ抗ヒトIgG Fc-特異的ポリクローナル抗体)と37℃で1時間インキュベートする。洗浄後プレートをpNPP基質と(1mg/mL)反応させ、OD405−650で分析する。好ましくは、最高の力価を生じたマウスを融合に用いる。
上記に記載したELISAアッセイはまた、IFNAR-1免疫原と陽性活性を示すハイブリドーマのスクリーニングにも用いることができる。高いアビディティーでIFNAR-1と結合するハイブリドーマをサブクローニングし、さらに性状を決定する。−140℃で保存される5〜10バイアルの細胞バンクの作成及び抗体精製のために、各ハイブリドーマ由来の1つのクローン(前記はELISAによれば親細胞の反応性を保持している)を選別する。
抗IFNAR-1抗体を精製するために、選別したハイブリドーマをモノクローナル抗体精製用2リットルスピンナー-フラスコで増殖させることができる。タンパク質A-セファロース(Pharmacia, Piscataway, N.J.)によるアフィニティークロマトグラフィーの前に、上清をろ過し濃縮することができる。純度を確認するために、溶出させたIgGをゲル電気泳動及び高速液体クロマトグラフィーによってチェックすることができる。緩衝溶液をPBSに交換し、吸光係数1.43を用いOD280によって濃度を測定することができる。このモノクローナル抗体を適量ずつ小分けし、−80℃で保存することができる。
【0053】
選別した抗IFNAR-1モノクローナル抗体が固有のエピトープと結合するか否かを決定するために、市販の試薬(Pierce, Rockford, IL)を用いて、各抗体をビオチニル化することができる。非標識モノクローナル抗体及びビオチニル化モノクローナル抗体を用いた競合実験を、上記記載のIFNAR-1被覆ELISAプレートを用いて実施することができる。ビオチニル化mAbの結合は、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼプローブを用いて検出することができる。
精製抗体のアイソタイプを決定するために、個々のアイソタイプの抗体に特異的な試薬を用いてアイソタイプELISAを実施することができる。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、マイクロタイターのウェルを抗ヒト免疫グロブリン(1μg/mL)で4℃、一晩被覆することができる。1%のBSAでブロックした後、プレートを1μg/mL又はそれ未満のテストモノクローナル抗体又は精製アイソタイプコントロールと周囲温度で1から2時間反応させる。続いてウェルをヒトIgG1-又はヒトIgM-特異的アルカリホスファターゼ結合プローブで反応させることができる。上記のようにプレートをデベロップさせ分析する。
モノクローナル抗体とIFNAR-1発現生細胞との結合を明示させるために、フローサイトメトリーを用いることができる。簡単に記せば、IFNAR-1発現細胞株(標準的な増殖条件下で増殖)を、0.1%BSA及び10%ウシ胎児血清含有PBS中の種々の濃度のモノクローナル抗体と混合し、37℃で1時間インキュベートする。洗浄後、蛍光標識抗ヒトIgG抗体と前記細胞を一次抗体染色と同じ条件下で反応させる。単一細胞のゲートオンのために光とサイドスキャタープロパティを用いてFACScan装置によって前記サンプルを分析することができる。フローサイトメトリーアッセイに加えて、又は前記アッセイに代えて、蛍光顕微鏡を用いるまた別のアッセイを用いてもよい。細胞は上記に記載したように正確に染色することが可能で、蛍光顕微鏡の手段によって調べることができる。前記方法は個々の細胞の可視化を可能にするが、抗原の密度にしたがって感度は低下するかもしれない。
抗IFNAR-1ヒトIgGは、さらにIFNAR-1抗原との反応性についてウェスタンブロッティングによって調べることができる。簡単に記せば、IFNAR-1を発現する細胞由来の抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に付すことができる。電気泳動後に、分離した抗原をニトロセルロース膜に移し、10%ウシ胎児血清でブロックし、モノクローナル抗体プローブで調べる。ヒトIgG結合は抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを用いて検出し、BCIP/NBT基質錠剤(Sigma Chem. Co., St. Louis, Mo)を用いて顕像させる。
【0054】
免疫複合体
また別の特徴では、本発明は、治療成分(例えば細胞毒、薬剤(例えば免疫抑制剤)又は放射性毒素)と複合体を形成した抗IFNAR-1抗体又はそのフラグメントに関する。そのような複合体は本明細書では“免疫複合体”と称される。1つ又は2つ以上の細胞毒を含む免疫複合体は“イムノトキシン”と称される。細胞毒又は細胞毒性物質には、細胞にとって有害である(例えば細胞を殺す)任意の物質が含まれる。その例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロパノロール並びにピューロマイシン及びその類似体又は同族体が含まれる。治療物質にはまた、例えば抗代謝薬(例えばメトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロタレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC及びcis-ジクロロジアミンプラチナム(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン及びアントラマイシン(AMC))並びに抗細胞分裂剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)が含まれる。
本発明の抗体と複合体を形成することができる、他の好ましい治療用細胞毒の例には、デュオカルマイシン、カリケアミシン、マイタンシン並びにオウリスタチン及びその誘導体が含まれる。カルキアミシン抗体複合体の例は市販されている(ミロタルグ(Mylotarg(商標)、Wyeth-Ayerst)。
【0055】
細胞毒は、当分野で利用可能なリンカー技術を用いて本発明の抗体に結合させることができる。抗体と細胞毒との複合体を形成させるためにこれまでに用いられたリンカータイプの例には、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド及びペプチド含有リンカーが含まれるが、ただしこれらに限定されない。リンカーは、例えばリソゾーム区画内での低pHによる切断に感受性を有するもの、又はプロテアーゼ(例えば腫瘍組織でもっぱら発現されるプロテアーゼ、例えばカテプシン(例えばカテプシンB、C、D))による切断に感受性を有するものを選択することができる。
細胞毒のタイプ、リンカー、及び治療物質と抗体との複合体形成方法の更なる考察についてはまた以下を参照されたい:G. Saito et al. (2003) Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199-215;P.A. Trail et al. (2003) Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337;G. Payne (2003) Cancer Cell 3:207-212;T.M. Allen (2002) Nat. Rev. Cancer 2:750-763;I. Pastan and R.J. Kreitman (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091;P.D. Senter and C.J. Springer (2001) Adv. Drug Deliv. Rev. 53:274-264。
本発明の抗体はまた放射性同位元素と複合体を形成させて細胞毒性放射性医薬(放射性免疫複合体とも称される)を生成することができる。抗体と結合させることができる、診断又は治療的に使用される放射性同位元素の例にはヨード131、インジウム111、イットリウム90及びルテチウム177が含まれるが、ただしこれらに限定されない。放射性免疫複合体の調製方法は当分野では確立されている。放射性免疫複合体の例は市販されており(ゼバリン(Zevalin(商標)、IDEC Pharmaceuticals)、及びベキサー(Bexxar(商標)、Corixa Pharmaceuticals)を含む)、類似の方法を利用し本発明の抗体を用いて放射性免疫複合体を調製することができる。
【0056】
本発明の抗体複合体を用いて与えられた生物学的応答を改変することができる。さらに、薬剤成分は、古典的な化学療法剤に限定されると解されるべきではない。例えば、薬剤成分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質であってもポリペプチドであってもよい。そのようなタンパク質には、例えば酵素的に活性な毒素又はその活性フラグメント、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、又はジフテリア毒素;タンパク質、例えば腫瘍壊死因子又はインターフェロンγ;又は生物学的応答の改変物質、例えばリンホカイン、インターロイキン-1(“IL-1”)、インターロイキン-2(“IL-2”)、インターロイキン-6(“IL-6”)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(“GM-CSF”)、顆粒球コロニー刺激因子(“G-CSF”)又は他の増殖因子が含まれる。
そのような治療用成分と抗体との複合体を形成させる技術は周知であり、例えば以下を参照されたい:Arnon et al. “Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al.(eds), pp.243-56(Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstrom et al. “Antibodies for Drug Delivery”, in Controlled Drug Deliverry (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53(Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, “Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies '84: Biological and Clinical Applications, Pinchera et al.(eds.), pp.475-506 (1985);“Analysis, Results, And Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp.303-16(Academic Press 1985);Thorpe et al. “The Preparation and Cytotoxic Properties of Antibody-Toxin Conjugates”, Immunol. Rev., 62:119-58 (1982)。
【0057】
二重特異性分子
また別の特徴では、本発明は、本発明の抗IFNAR-1抗体又はそのフラグメントを含む二重特異性分子に関する。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、また別の機能的分子(例えば別の抗体又はレセプターに対するリガンド)に誘導するか、又はこれと結合させて、少なくとも2つの異なる結合部位又は標的分子と結合する二重特異性分子を生成することができる。実際、本発明の抗体は、2つ以上の他の機能的分子に誘導するか、又はこれと結合させて、3つ以上の異なる結合部位及び/又は標的分子と結合するマルチ特異性分子を生成することができる。そのようなマルチ特異性分子もまた、本明細書で用いられる“二重特異性分子”に包含される。本発明の二重特異性分子を作出するために、本発明の抗体を別の抗体、抗体フラグメント、ペプチド模倣体若しくは結合模倣体のような1つ又は2つ以上の他の結合性分子と機能可能に連結させて(例えば、化学的結合、遺伝子融合、非共有結合的会合又はその他によって)、二重特異性分子を生成することができる。
したがって、本発明は、INFAR-1に対する少なくとも1つの第一の結合特異性及び第二の標的エピトープに対する第二の結合特異性を含む二重特異性分子を含む。本発明の具体的な実施態様では、第二の標的エピトープはFcレセプター、例えばヒトFcγRI(CD64)又はヒトFcαレセプター(CD89)である。したがって、本発明は、FcγR、FcαR又はFcεRを発現するエフェクター細胞(例えば単球、マクロファージ又は多形核細胞(PMN))及びIFNAR-1を発現する標的細胞の両方と結合することができる二重特異性分子を含む。これらの二重特異性分子は、IFNAR-1発現細胞からエフェクター細胞を標的とし、Fcレセプター仲介エフェクター細胞活性の引き金となる。前記エフェクター細胞活性は、例えばIFNAR-1発現細胞の食作用、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、サイトカイン放出、又は超酸化物陰イオンの生成である。
【0058】
二重特異性分子がマルチ特異性である本発明のある実施態様では、前記分子は、抗Fc結合特異性及び抗IFNAR-1結合特異性の他にさらに第三の結合特異性を含む。ある実施態様では、前記第三の結合特異性は、抗強化因子(EF)部分、例えば細胞傷害性活性に必要とされる表面タンパク質と結合し、それによって標的細胞に対する免疫応答を高める分子である。“抗強化因子部分”とは、抗体、機能的抗体フラグメント又はリガンドであって、ある分子(例えば抗原又はレセプター)と結合しそれによってFcレセプター又は標的細胞抗原に対する結合決定基の作用の強化をもたらすものでありうる。“抗強化因子部分”はFcレセプター又は標的細胞抗原と結合することができる。また別には、前記抗強化因子部分は、第一及び第二の結合特異性が結合する実体とは異なる実体と結合することができる。例えば、前記抗強化因子部分は、(例えばCD2、CD3、CD8、CD28、CD4、ICAM-1又は標的細胞に対する免疫応答の強化をもたらす他の免疫細胞を介して)細胞傷害性T細胞と結合することができる。
ある実施態様では、本発明の二重特異性分子は、結合特異性として少なくとも1つの抗体又はその抗体フラグメント(例えばFab、Fab'、F(ab')2、Fv、又は単鎖Fvを含む)を含む。前記抗体はまた、軽鎖又は重鎖ダイマー、又はその任意の最小フラグメント、例えば米国特許4,946,778号(Ladner et al.)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に記載されたFv又は単鎖構築物でありうる。
ある実施態様では、Fcγレセプターに対する結合特異性はモノクローナル抗体によって提供され、その結合はヒト免疫グロブリンG(IgG)によって阻止されない。本明細書で用いられる、“IgGレセプター”という用語は、1番目染色体に位置する8つのγ鎖遺伝子のいずれかを指す。これらの遺伝子は合計12のトランスメンブレン又は可溶性レセプターアイソフォームをコードする。前記レセプターのアイソフォームは3つのFcγレセプタークラス(FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16))に分類される。ある好ましい実施態様では、Fcγレセプターはヒト高親和性FcγRIである。ヒトFcγRIは72kDaの分子であり、前記はIgGモノマーに対し高親和性を示す(108〜109M-1)。
【0059】
ある種の好ましい抗Fcγモノクローナル抗体の製造及び特徴付けは以下の文献に記載されている:PCT公開公報WO88/00052(Fanger et al.)及び米国特許4,954,617号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。これらの抗体では、FcγRI、FcγRII又はFcγRIIInoエピトープと前記レセプターのFcγ結合部位とは別個の部位にあり、したがってそれらの結合は生理学的レベルのIgGによって実質的には阻止されない。本発明で有用な特異的な抗FcγRI抗体は、mAb22、mAb32、mAb44、mAb62及びmAb197である。mAb32を生成するハイブリドーマはアメリカ菌培養集積所で入手できる(ATCCアクセッション番号HB9469)。他の実施態様では、抗Fcγレセプター抗体はモノクローナル抗体22(H22)のヒト化型である。H22の製造及び特徴付けは以下の文献に記載されている:R.F. Graziano et al. (1995) J. Immunol. 155(10):4996-5002及びPCT公開公報WO94/10332。H22抗体産生細胞株はアメリカ菌培養集積所にHA022CL1の名称で寄託され、アクセッション番号はCRL11177である。
さらに他の好ましい実施態様では、Fcレセプターに対する結合特異性は、ヒトIgAレセプター、例えばFc-αレセプター(FcαRI(CD89))と結合する抗体によって提供される。前記抗体の結合は好ましくはヒト免疫グロブリンA(IgA)によって阻止されない。“IgAレセプター”という用語は、19番目染色体に位置する1つのα-遺伝子(FcαRI)の遺伝子生成物を含むことを意図する。この遺伝子は、55から110kDaのいくつかの別個にスプライスされるトランスアイソフォームをコードすることが知られている。FcαRI(CD89)は単球/マクロファージ、好酸性顆粒球及び好中性顆粒球で構成的に発現されるが、非エフェクター細胞集団では発現されない。FcαRIは、IgA1及びIgA2の両方に対して中等度の親和性を有し(約5x107M-1)、前記親和性はサイトカイン(例えばG-CSF又はGM-CSF)に暴露されたとき増加する(H.C. Morton et al. (1996) Critical Reviews in Immunology 16:423-440)。4つのFcαRI特異的モノクローナル抗体(A3、A59、A62及びA77として同定され、前記はFcαRIとIgAリガンド結合ドメインの外側で結合する)が報告された(R.C. Monteiro et al. (1992) J. Immunol. 148:1764)。
【0060】
FcαRI及びFcγRIは本発明の二重特異性分子で使用するために好ましいトリガーレセプターである。なぜならば、それらは(1)主として免疫エフェクター細胞(例えば単球、PMN、マクロファージ及び樹状細胞)で発現され;(2)高レベルで発現され(例えば5,00〜100,000/細胞);(3)細胞傷害性活性(例えばADCC、食作用)の仲介物質であり;(4)抗原(自己抗原を含む)の抗原提示の強化を仲介するからである。
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本発明の二重特異性分子で用いることができる他の抗体はマウス、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体である。
本発明の二重特異性分子は、当分野で公知の方法を用いて、結合特異性構成成分(例えば抗FcR及び抗IFNAR-1結合特異性)と結合させることによって調製することができる。例えば二重特異性分子の各結合特異性を別々に生成し、続いて互いに結合させることができる。前記結合特異性がタンパク質又はペプチドである場合は、多様なカップリング剤又は架橋剤を共有結合に用いることができる。架橋剤の例には、タンパク質A、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(sulfo-SMCC)が含まれる(例えば以下を参照されたい:Karpovsky et al.(1984) J. Exp. Med. 160:1686;M.A. Liu et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648)。他の方法には以下の文献に記載されたものが含まれる:Paulus (1985) Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132;Brennan et al. (1985) Science 229:81-83;Glennie et al. (1987) J. Immunol. 139:2367-2375。好ましい複合体形成剤はSATA及びsulfo-SMCCであり、両物質はピアスケミカル社(Pierce Chemical Co., Rockford, IL)から入手できる。
結合特異性が抗体である場合は、それらは、2つの重鎖のC-末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して結合させることができる。特に好ましい実施態様では、ヒンジ領域は結合前に改変されて奇数(好ましくは1つ)のスルフヒドリル残基を含む。
【0061】
また別には、両結合特異性は同じベクター内でコードされ、同じ宿主細胞内で発現及びアッセンブリングされうる。この方法は、特に二重特異性分子がmAbxmAb、mAbxFab、FabxF(a'b)2、又はリガンドxFab融合タンパク質である場合に有用である。本発明の二重特異性分子は、1つの単鎖抗体及び結合決定基を含む単鎖分子であっても、又は2つの結合決定基を含む単鎖二重特異性分子であってもよい。二重特異性分子は少なくとも2つの単鎖分子を含むことができる。二重特異性分子の調製方法は例えば以下に記載されている:米国特許5,260,203号;米国特許5,455,030号;米国特許4,881,175号;米国特許5,132,405号;米国特許5,091,513号;米国特許5,476,786号;米国特許5,013,653号;米国特許5,258,498号;および米国特許5,482,858号。
二重特異性分子とそれらの特異的標的との結合は、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射性免疫アッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば増殖阻害)、又はウェスタンブロットアッセイによって確認することができる。これらのアッセイの各々は、一般的には具体的な対象のタンパク質-抗体複合体の存在を、前記対象複合体に特異的な標識試薬(例えば抗体)を利用して検出する。例えば、FcR-抗体複合体は、例えば前記複合体を認識しこれと特異的に結合する酵素結合抗体又は抗体フラグメントを用いて検出することができる。また別には、前記複合体は多様な他の免疫アッセイのいずれかを用いて検出できる。例えば、抗体は放射能標識し、放射能免疫アッセイ(RIA)を用いてもよい(例えば以下を参照されたい:B. Weintraub, Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, March, 1986(前記文献は参照により本明細書に含まれる))。放射性同位元素は、γ計測器若しくはシンチレーション計測器の使用のような手段によって又はオートラジオグラフィーによって検出することができる。
【0062】
医薬組成物
また別の特徴では、本発明は組成物(例えば医薬組成物)を提供し、前記は、医薬的に許容される担体とともに製剤化された、本発明のモノクローナル抗体又その抗原結合部分の1つ若しくはその組合せを含む。そのような組成物は、本発明の(例えば2つ又は3つ以上の異なる)抗体、又は免疫複合体、又は二重特異性分子の1つ又は前記の組合せを含むことができる。例えば、本発明の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープと結合するか、又は相補的な活性を有する抗体(又は免疫複合体又は二重特異性物質)の組合せを含む。
本発明の医薬組成物はまた、組合せ療法で(すなわち他の薬剤と組み合わせて)投与することができる。例えば、前記組合せ療法は、本発明の抗IFNAR-1抗体が少なくとも1つの他の免疫抑制物質と組み合わされたものを含む。
本明細書で用いられる、“医薬的に許容される担体”には、生理学的に適合しうる任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗カビ剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。好ましくは、前記担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄内又は表皮投与(例えば注射又は輸液による)に適切である。投与経路に応じて、活性化合物(すなわち抗体、免疫複合体又は二重特異性分子)は、酸の作用及び前記化合物を不活化する可能性がある他の天然の条件から前記化合物を保護する物質で被覆することができる。
【0063】
本発明の医薬化合物は1つ又は2つ以上の医薬的に許容される塩を含むことができる。“医薬的に許容される塩”とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、さらに望ましくない毒物学的影響を全く与えない塩を指す(例えば以下を参照されたい:S.M. Berge et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19)。そのような塩の例には酸付加塩及び塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、非毒性無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などから誘導された酸と同様に、非毒性有機酸、例えば脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸などから誘導された酸が含まれる。塩基付加塩には、アルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどから誘導される塩と同様に、非毒性の有機アミン、例えばN,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどから誘導されたものが含まれる。
本発明の医薬組成物はまた医薬的に許容される抗酸化剤を含むことができる。医薬的に許容される抗酸化剤の例には以下が含まれる:(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システインヒドロクロリド、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えばアスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガレート、アルファートコフェロールなど;(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0064】
本発明の医薬組成物に利用することができる適切な水性及び非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及び前記の適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、並びに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが含まれる。適切な流動性は、例えばコーティング剤(例えばレシチン)を使用することによって、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持することによって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
これらの組成物はまた、補助剤、例えば保存料、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含むことができる。微生物の存在の防止は、無菌的工程(上記)によって、並びに種々の抗菌及び抗カビ剤(例えばパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸など)の使用によって担保することができる。さらにまた、等張剤、例えば砂糖、塩化ナトリウムなどを組成物に加えることもまた所望できる。さらに、注射可能な剤形の長期にわたる吸収は、吸収を遅らせる物質(例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)を加えることによってもたらされうる。
医薬的に許容される担体には、無菌的水溶液又は分散液、並びに無菌的注射用溶液及び分散液の即席調製物のための無菌的散剤が含まれる。医薬的に活性な物質のためのそのような媒体及び物質を使用することは当分野では公知である。前記活性化合物と適合しない場合を除き、本発明の医薬組成物における通常の媒体又は物質のいずれの使用も意図される。補助的活性化合物もまた本組成物に組み込むことができる。
【0065】
治療用組成物は典型的には無菌的であり、さらに製造及び保存条件下で安定でなければならない。前記組成物は、溶液、微細乳濁液、リポソーム、又は高い薬剤濃度に適した他の秩序のある構造として製剤化することができる。前記担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)及びその適切な混合物を含む溶媒又は分散媒体でありうる。適切な流動性は、例えばコーティング剤(例えばレシチン)を使用することによって、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持することによって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの事例では、等張剤、例えば砂糖、ポリアルコール(例えばマンニトール、ソルビトール)、又は塩化ナトリウムなどを組成物に加えることもまた所望される。注射が可能な組成物の長期にわたる吸収は、吸収を遅らせる物質(例えばモノステアリン酸塩及びゼラチン)を加えることによってもたらされうる。
無菌的な注射用溶液は、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又はそれらの組合せとともに、必要な量の活性化合物を適切な溶媒に取り込み、続いてろ過滅菌を実施することによって調製することができる。一般的には、分散液は、塩基性分散媒体及び上記に列挙のものから選択される必要な他の成分を含む無菌的ビヒクルに活性化合物を取り入れることによって調製される。無菌的注射用溶液の調製のための無菌的散剤の事例では、好ましい調製方法は、以前に無菌的にろ過されたその溶液から得られる、活性成分+所望される任意の追加成分の粉末を生じる真空乾燥及び凍結乾燥(ライオフィリゼーション)である。
担体物質と組み合わせて単一剤形を製造することができる活性成分の量は、治療される対象者及び具体的な投与態様にしたがって変動するであろう。担体物質と組み合わせて単一剤形を製造することができる活性成分の量は、一般的には、治療効果を生じる組成物の量であろう。一般的には、この量は、100パーセント中で約0.01パーセントから約99パーセントの範囲の活性成分、好ましくは約0.1%から約70%、もっとも好ましくは約1%から約30%の活性成分であり、医薬的に許容される担体と組み合わされている。
【0066】
投薬計画は、所望される最適の応答(例えば治療応答)を提供するように調節される。例えば単回ボーラス投与を実施するか、一定期間にわたって数回に分けて投与するか、又は治療状況の必要性にしたがって比例的に用量を増減させてもよい。投与の容易さ及び均一な投薬のために、ユニット剤形として非経口組成物を製剤化することは特に有益である。本明細書で用いられるユニット剤形は、治療される対象者のための分割できない投薬量として適切な、物理的に分離されたユニットを指す。各ユニットは、必要な医薬担体と一緒になって所望の治療効果を生じるように計算された、予め定められた量の活性化合物を含む。本発明のユニット剤形の内訳は以下によって決定されるとともに、それらに直接左右される:(a)活性化合物の固有の特徴及び達成されるべき具体的な治療効果、及び(b)個体の感受性の治療のためにそのような活性化合物を調合することの当分野における固有の限界。
抗体の投与の場合、投薬量は約0.0001から100mg/kg宿主体重、より通常は0.01から5mg/kg宿主体重の範囲である。例えば、投薬量は0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重又は10mg/kg体重又は1〜10mg/kgの範囲内でありうる。典型的な治療計画は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月に1回又は3から6ヶ月に1回の投与を必要とする。本発明の抗IFNAR-1抗体のための好ましい投薬計画は、静脈内投与による1mg/kg体重又は3mg/kg体重を含み、抗体は以下の投与スケジュールの1つを用いて投与される:(i)4週間毎に6回の投与、続いて3ヶ月毎の投与;(ii)3週間毎;(iii)3mg/kg体重を1回、続いて3週間毎に1mg/kg体重。
いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2つ又は3つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、この事例では、投与される各抗体の投薬量は表示の範囲内に入る。抗体は通常複数回投与される。各投薬の間隔は、例えば1週間、1ヶ月、3ヶ月毎、又は1年であろう。間隔はまた標的抗原に対する抗体の患者の血中レベルの測定による指示にしたがい不規則であってもよい。いくつかの方法では、投薬は、約1〜1000μg/mL、いくつかの方法では約25〜300μg/mLの血中抗体濃度を達成するために調節される。
【0067】
また別には、徐放性製剤として投与することもできる。この事例では、より頻度の少ない投与が要求される。投薬量及び頻度は、抗体の患者での半減期に左右される。一般的には、ヒト抗体はもっとも長い半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体及び非ヒト抗体がその後に続く。投薬量及び投与頻度は、処置が予防的であるか治療的であるかによって変動しうる。予防的適用では、比較的低用量が比較的少ない間隔で長期にわたって投与される。幾人かの患者では生涯にわたって治療が継続される。治療的適用では、比較的高用量が比較的短い間隔で、時には疾患の進行が低下するか又は停止するまで、好ましくは患者が症状の部分的又は完全な緩和を示すまで要求される。それ以後は、患者は予防的処置を施されうる。
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、個々の患者、組成物及び投与態様について所望される治療的応答の達成に有効であり、患者にとって毒性を生じない量の活性成分を得るために変動させることができる。選択される投薬レベルは、多様な薬理学的動態因子(用いられる本発明の個々の組成物(又はそのエステル、塩若しくはアミド)の活性、投与経路、投与時間、用いられる個々の化合物の排泄速度、治療期間、用いられる個々の組成物と併用される他の薬剤、化合物及び/又は物質、年齢、性別、体重及び医療分野で周知の因子などを含む)によって左右されるであろう。
本発明の抗IFNAR-1抗体の“治療的に有効な投薬量”は、症状の重篤度の減少、症状緩解期間の出現頻度及びその期間の増加、又は疾患の苦痛からくる障害又は不能の予防をもたらす。例えば全身性紅斑性狼瘡(SLE)の場合には、治療的に有効な量は、好ましくはSLEに付随する肉体的症状、例えば痛み、疲労感又は虚弱の更なる悪化を予防する。治療的に有効な用量はまた、SLEの初期兆候又は前兆が存在するときに所望されうるように、SLEを予防し又はその開始を遅らせる。同様に、前記用量はSLEに付随する長期的進行を遅らせることを含む。SLEの診断で利用される実験室検査には、化学検査、血液学的検査、血清学的検査及び放射能検査が含まれる。したがって、前述のいずれかをモニターする臨床アッセイ又は生化学的アッセイを用いて、個々の処置がSLEの処置のために治療的に有効であるか否かを決定することができる。対象者のサイズ、対象者の症状の重篤度、及び選択される個々の組成物又は投与経路のような因子を基準にして、当業者は前記のような用量を決定することができよう。
【0068】
本発明の組成物は、当分野で公知の多様な方法の1つ又は2つ以上を用い、1つ又は2つ以上の投与経路を介して投与することができる。当業者には理解されるところであるが、投与経路及び/又は態様は所望される結果に応じて変動するであろう。本発明の抗体のための好ましい投与経路には静脈内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄内、又は他の非経口投与経路、例えば注射又は輸液が含まれる。本明細書で用いられる“非経口投与”という語句は、経腸及び局所投与以外の投与態様、通常は注射による投与を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、硬膜下腔内、関節胞内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢胞下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び輸液が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
また別には、本発明の抗体は上記の非経口的経路に該当しない経路、例えば局所投与、上皮又は粘膜経路投与、例えば鼻内、経口、膣、直腸、舌下又は局所的に投与することができる。
活性化合物は、急速な遊離に対して化合物を保護する担体とともに調製することができる。前記は例えば徐放性製剤であり、インプラント、経皮膏薬及び微小被包化デリバリーシステムが含まれる。生物分解性、生物適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリアンヒドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ酢酸を用いることができる。そのような製剤の製造のための多くの方法が特許権を得ており、一般的に当業者には知られている。例えば以下を参照されたい:Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed. Marcel Dekker, Inc., New York, 1978。
【0069】
治療用組成物は当業界で公知の医療装置を用いて投与することができる。例えば、好ましい実施態様では、本発明の治療組成物は、例えば米国特許5,399,163号、5,383,851号、5,312,335号、5,064,413号、4,941,880号、4,790,824号又は4,596,556号に開示された、針のない皮下注射用装置で投与することができる。本発明で有用な周知のインプラント及びモジュールの例には以下が含まれる:米国特許4,487,603号、前記は、制御された速度で医薬を分配することを目的とする移植可能な極小輸液ポンプを開示する;米国特許4,486,194号、前記は皮膚から医薬を投与することを目的とする治療装置を開示する;米国特許4,447,233号、前記は正確な輸液速度で医薬をデリバーするための医薬輸液ポンプを開示する;米国特許4,447,224号、前記は持続的な薬剤デリバリーを目的とする、移植可能な種々の流れを有する輸液装置を開示する;米国特許4,439,196号、前記は複数のチャンバーコンパートメントを有する浸透圧性デリバリーシステムを開示する;及び米国特許4,475,196号、前記は浸透圧性薬剤デリバリーシステムを開示する。他の多くの同様なデイバリーシステム及びモジュールが当業者には公知である。
ある種の実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、in vivoでの適切な分布を担保するために製剤化することができる。例えば、脳血液関門(BBB)は多くの高親水性化合物を排除する。本発明の治療化合物が(所望の場合に)BBBを通過することを担保するために、それらは、例えばリポソームとして製剤化することができる。リポソームを製造する方法については、例えば米国特許4,522,811号、5,374,548号及び5,399,311号を参照されたい。前記リポソームは、特異的細胞又は器官に選択的に輸送され、したがって標的誘導薬剤デリバリーを強化する1つ又は2つ以上の成分を含むことができる(例えば以下を参照されたい:V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685)。例示的な標的誘導成分には以下が含まれる:フォレート又はビオチン(例えば米国特許5,416,016号(Low et al.)を参照);マンノシド(Umezawa et al.(1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140;M. Owais et al. (1995) Antimaicrob. Agents Chemother. 39:180);界面活性タンパク質Aレセプター(Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233:134);p120(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090);さらにまた以下を参照されたい:K. Keinaren; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123;J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273。
【0070】
本発明の抗体(並びに免疫複合体及び二重特異性分子)は、in vitro及びin vivo診断並びに治療で有用である。例えば、これらの分子は、培養細胞に(例えばin vitro若しくはex vivoで)又は患者に投与して、多様な疾患を治療、予防又は診断することができる。本明細書で用いられる“対象者”という用語はヒト及び非ヒト動物を含むことが意図される。非ヒト動物には全ての脊椎動物、例えば哺乳動物及び非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、乳牛、ウマ、ニワトリ、両生類、爬虫類が含まれる。前記方法は、異常な又は不適切なI型インターフェロン発現(例えば過剰発現)を伴う疾患を有するヒトの患者の治療に特に適切である。
IFNAR-1に対する抗体が別の物質とともに投与されるとき、前記の2つはいずれかの順に又は同時に投与することができる。例えば、本発明の抗IFNAR-1抗体は、1つ又は2つ以上の以下の物質と組み合わせて用いることができる:抗IFNα抗体、抗IFNγレセプター抗体、可溶性IFNγレセプター、抗TNF抗体、抗TNFレセプター抗体及び/又は可溶性TNFレセプター(例えば米国特許5,888,511号を参照されたい)。さらにまた、本発明の抗IFNAR-1はFlt3リガンドアンタゴニストと組み合わせて用いてもよい(例えば米国特許出願2002/0160974号を参照されたい)。
ある実施態様では、本発明の抗体(並びに免疫複合体及び二重特異性物質)を用いて、IFNAR-1レベル又はIFNAR-1を発現する細胞レベルを検出することができる。前記は、例えばサンプル(例えばin vitroサンプル)及びコントロールサンプルを抗IFNAR-1抗体と、前記抗体とIFNAR-1との間で複合体を形成することを可能にする条件下で接触させることによって達成することができる。前記抗体とIFNAR-1との間で形成される全ての複合体が検出され、サンプルとコントロールで比較される。例えば、当分野で周知の標準的な検出方法(例えばELISA及びフローサイトメトリーアッセイ)は、本発明の組成物を用いて実施することができる。
【0071】
したがって、ある特徴では、本発明は、さらにサンプル中のIFNAR-1(例えばヒトIFNAR-1抗原)の存在を検出、又はIFNAR-1の量を測定する方法を提供する。前記方法は、サンプル及びコントロールサンプルを本発明の抗体又はその抗原結合部分(前記はIFNAR-1と特異的に結合する)と、前記抗体又はその部分とIFNAR-1との間で複合体を形成することを可能にする条件下で接触させることを含む。続いて複合体の形成を検出し、この場合、コントロールサンプルと比較して前記サンプル間で複合体形成の相違は前記サンプルにおけるIFNAR-1の存在を示す。
さらにまた本発明の範囲内に包含されるものは、本発明の組成物(例えば抗体、ヒト抗体、免疫複合体及び二重特異性分子)及び使用のための指示を含むキットである。前記キットはさらに、少なくとも1つの追加の試薬、又は1つ若しくは2つ以上の追加される本発明の抗体を含む(前記追加される本発明の抗体は、例えば第一の抗体とは別個の標的抗原上のエピトープと結合する相補的活性を有する抗体である)。キットは典型的にはキットの内容物の意図される使用を表示するラベルを含む。前記ラベルという用語は、キットとともに若しくはキット上で提供される、又はキットに付随する任意の記入又は記録物を含む。
FINAR-1はI型インターフェロンに対する細胞性レセプターの部分であり、I型インターフェロンは、とりわけT細胞分化、抗体産生並びにメモリーT細胞の活性及び生存に必要な免疫調節性サイトカインであることが知られている。さらにまた、I型インターフェロンの発現増加は、複数の自己免疫疾患で、HIV感染で、移植拒絶で、対宿主移植片病(GVHD)で報告されている。したがって、本発明の抗IFNAR-1抗体(並びに免疫複合体及び二重特異性分子)(前記はI型インターフェロンの機能活性を阻害する)は、異常な又は望ましくないI型インターフェロン活性に中心的に関与する多様な臨床症状で用いることができる。本発明は、したがって、I型インターフェロン仲介疾患又は異常を抑制する方法を提供し、前記方法は、本発明の抗体又はその抗原結合部分を、I型インターフェロン仲介疾患又は異常が治療されるように投与することを含む。
【0072】
本発明の抗体を用いることができる自己免疫症状の具体的な例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):全身性紅斑性狼瘡(SLE)、インスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、炎症性腸疾患(IBD)(クローン病、潰瘍性大腸炎及びシェリアキー病を含む)、多発性硬化症(MS)、乾癬、自己免疫性甲状腺炎、慢性関節リウマチ(RA)及び糸球体腎炎。さらにまた、本発明の抗体組成物は、移植拒絶の抑制若しくは予防のために、又は対宿主移植変病(GVDH)の治療に、又はHIV感染/エイズの治療に用いることができる。
高レベルのIFNαが全身性紅斑性狼瘡(SLE)の患者の血清中で観察された(例えば以下を参照されたい:Kim et al. (1987) Clin. Exp. Immunol. 70:562-569)。さらにまた、例えば癌又はウイルス感染の治療で、IFNαの投与はSLEを誘発することが示された(Garcia-Porrua et al. (1998) Clin. Exp. Rheumatol. 16:107-108)。したがって、また別の実施態様では、本発明の抗IFNAR-1抗体は、治療の必要がある患者に前記抗体を投与することによって、SLEの治療に用いることができる。前記抗体は、単独で又は抗SLE薬剤と併用して用いることができる。前記抗SLE薬剤は、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、コルチコステロイド(例えばプレジニソン、ヒドロコルチゾン)、免疫抑制剤(例えばシクロホスファミド、アザチオプリン及びメトトレキセート)、抗マラリア薬(例えばヒドロキシクロロキン)及びdsDNA抗体の産生を阻害する生物学的薬剤(例えばLJP394)である。
IFNαはまた、I型糖尿病の病理にも関与していた。例えば、I型糖尿病患者の膵臓のベータ細胞における免疫反応性IFNαの存在が報告されている(Foulis et al. (1987) Lancet 2:1423-1427)。抗ウイルス治療におけるIFNαの長期使用もまたI型糖尿病を誘発することが示された(Waguri et al. (1994) Diabetes Res. Clin. Prac. 23:33-36)。したがって、また別の実施態様では、治療の必要がある対象者に本発明の抗IFNAR-1抗体を投与することによって、I型糖尿病の治療で本発明の抗体を用いることができる。前記抗体は、単独で又は他の抗糖尿病薬(例えばインスリン)と併用して用いることができる。
【0073】
IFNARに対する抗体は、炎症性腸疾患の動物モデルで有効であることが示された(米国特許出願60/465,155号を参照されたい)。したがって、治療の必要がある対象者に本発明の抗IFNAR-1抗体を投与することによって、炎症性腸疾患(IBD)(潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む)の治療に前記抗体を用いることができる。前記抗体は、単独で又は他の抗IBD薬剤と併用して用いることができる。前記抗IBD薬剤は、例えばメサラミンを含む薬剤(スルファサラジン及び5-アミノサリチル酸(5-ASA)を含む他の薬剤(例えばオルサラジン及びバルサラジド)を含む)、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、コルチコステロイド(例えばプレジニソン、ヒドロコルチゾン)、TNF阻害剤(アジリムマブ(Humira(商標))、エタネルセプト(Enbrel(商標))及びインフリキシマブ(Remicade(商標))、免疫抑制剤(例えば6-メルカプトプリン、アザチオプリン及びシクロスポリンA)及び抗生物質である。
IFNαによる治療はまた自己免疫性甲状腺炎を誘発することが観察された(Monzani et al. (2004) Clin. Exp. Med. 3:199-210;Prummel and Lauberg (2003) Thyroid 13:547-551)。したがって、また別の実施態様では、治療の必要がある対象者に本発明の抗IFNAR抗体を投与することによって、自己免疫性甲状腺疾患(自己免疫性原発性甲状腺機能低下症、グレーブズ病、橋本甲状腺炎、及び甲状腺機能低下症による破壊性甲状腺炎を含む)の治療に本発明の抗IFNAR抗体を用いることができる。前記抗体は、単独で又は他の薬剤又は治療(例えば抗甲状腺薬、放射性ヨウ素、甲状腺準全摘)と併用して用いることができる。
I型インターフェロン(特にIFB-β)のレベル増加はRAの患者の血清で観察された(例えば以下を参照されたい:Hertzog et al. (1988) Clin. Immunol. Immunopath. 48:192)。したがって、ある実施態様では、治療の必要がある対象者に本発明の抗IFNAR-1抗体を投与することによって、RAの治療に本発明の抗IFNAR-1抗体を用いることができる。前記抗体は、単独で又は1つもしくは2つ以上の以下の他の抗-RA薬剤と併用して用いることができる。前記他の抗RA薬剤は、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、COX-2阻害剤、鎮痛剤、コルチコステロイド(例えばプレジニソン、ヒドロコルチゾン)、金、免疫抑制剤(例えばメトトレキセート)、B-細胞枯渇剤(例えばRituxan(商標))、B細胞アゴニスト(例えばLymphoStat-B(商標))及び抗TNFα剤(例えばEMBREL(商標)、HUMIRA(商標)及びREMICADE(商標))である。
【0074】
IFNαの投与は乾癬を悪化させることが報告された。したがって、また別の実施態様では、治療の必要がある対象者に本発明の抗IFNAR-1抗体を投与することによって、乾癬及び乾癬性関節炎の治療に本発明の抗IFNAR-1抗体を用いることができる。前記抗体は、単独で又は1つ又は2つ以上の他の抗乾癬治療(例えば光線療法、局所療法(例えば局所グルココルチコイド)、又は全身療法(例えばメトトレキセート、合成レチノイド、シクロスポリン)、抗TNFα剤(例えばEMBREL(商標)、HUMIRA(商標)及びREMICADE(商標))、及びT細胞阻害剤(例えばRaptiva(商標))と併用して用いることができる。
高レベルのIFNαはまたHIV感染患者の血液循環で観察され、その存在はエイズの進行の予測マーカーである(DeStefano et al. (1982) J. Infect. Disease 146:451;Vadhan-Raj et al. (1986) Cancer Res. 46:417)。したがって、また別の実施態様では、治療の必要がある対象者に本発明の抗IFNAR-1抗体を投与することによって、HIV乾癬又はエイズの治療に本発明の抗IFNAR-1抗体を用いることができる。前記抗体は、単独で又は他の抗HIV薬剤(例えばヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤及び融合阻害剤)と併用して用いることができる。
IFNAR-1に対する抗体は、同種異型移植拒絶の抑制及び同種異型移植生存の延長に有効であることが示された(例えば以下を参照されたい:Tovey et al. (1996) J. Leukoc. Biol. 59:512-517;Benizri et al. (1998) J. Interferon Cytokine Res. 18:273-284)。したがって、本発明の抗IFNAR-1抗体はまた移植片受容者で用いて同種異型移植の拒絶を阻害、及び/又は同種異型移植の生存を延長することができる。本発明は、治療の必要がある移植片の受容者に本発明の抗IFNAR-1抗体を投与することによって、移植拒絶を抑制する方法を提供する。治療することができる組織移植の例には、肝臓、肺臓、心臓、小腸及び膵臓島細胞の他に、対宿主移植片病(GVHD)の治療が含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記抗体は、単独で又は他の移植拒絶抑制剤と併用して用いることができる。前記他の移植拒絶抑制剤は、例えば免疫抑制剤(例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メチルプレドニソロン、プレドニソロン、プレドニソン、ミコフェノレート・モフェチル、シリリムス、ラパマイシン、タクロリムス)、抗感染剤(例えばアシクロバー、クロトリマゾール、ガンシクロバー、ニスタチン、トリメトプリムスルファメトキサゾール)、利尿剤(例えばブメタニド、フロセミド、メトラゾン)、及び潰瘍治療薬(例えばシメチジン、ファモチジン、ランソプラゾール、オメプラゾール、ラニチジン、スクラルフェート)である。
本発明は以下の実施例によってさらに例示される(前記実施例は更なる限定と解されるべきではない)。本出願を通して引用した全ての図面、全ての参考文献、特許、公開された特許出願は参照により本明細書に含まれる。
【実施例1】
【0075】
実施例1:IFNAR-1に対するヒトモノクローナル抗体の作成
抗原:可溶性IFNAR-1(IFNAR-1の細胞外ドメインを含む)を組換えによる方法で生成し、免疫用抗原として用いた。
トランスジェニックHuMabマウス:IFNAR-1に対する完全にヒトのモノクローナル抗体は、HuMabトランスジェニックマウスのHCo7、HCo12及びHCo7xHCo12系統を用いて調製した。前記系統の各々はヒト抗体遺伝子を発現する。これらのマウスの系統の各々で、内在性のマウスκ軽鎖遺伝子は、Chenら(EMBO J. 12:811-820, 1993)が記載したようにホモ接合体破壊を実施し、内在性マウス重鎖遺伝子は、PCT公開WO01/09187の実施例1に記載されたようにホモ接合体破壊を実施した。これらのマウス系統の各々は、ヒトκ軽鎖導入遺伝子KCo5をFishwildら(Nature Biotechnology 14:845-851, 1996)が記載したように保持している。HCo7系統は、米国特許5,545,806号、5,625,825号及び5,545,807号に記載されているようにHCo7ヒト重鎖導入遺伝子を保持している。HCo12系統は、PCT公開WO01/09187の実施例2に記載されたようにHCo12ヒト重鎖導入遺伝子を保持している。HCo7xHCo12系統は、HCo7及びHCo12の両方の導入遺伝子を保持し、前記2つの系統を一緒に交配することによって作成された。
【0076】
HuMabマウスの免疫:IFNAR-1に対する完全にヒトのモノクローナル抗体を生成するために、抗原として精製した組換えIFNAR-1を用いてHuMabマウスを免疫した。HuMabマウスに対する一般的な免疫スキームは報告されている(N. Lonberg et al.(1994) Nature 368(6474):856-859;D. Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851及びPCT公開WO98/24884)。マウスは第1回目の抗原輸液時に6〜16週齢であった。精製された可溶性IFNAR-1抗原の組換え調製物(5〜50μg)を用いて、HuMabマウスを腹腔内、皮下(Sc)又はフットパッド注射により免疫した。
トランスジェニックマウスを完全フロイントアジュバント又はリビ(Ribi)アジュバント中の抗原を用いて腹腔内(IP)、皮下(Sc)又はフットパッド(FP)で2回免疫し、続いてフロイントの不完全アジュバント又はリビアジュバント中の抗原を用いて3〜21日にIP、Sc又はFPで免疫を実施した。免疫応答は後眼窩採血によってモニターした。(下記に記載したように)血漿をELISAによってスクリーニングし、抗IFNAR-1ヒト免疫グロブリンの充分な力価を有するマウスを融合に用いた。マウスを殺処分し脾臓を摘出する3日及び2日前に静脈内に抗原でブースター免疫した。典型的には各抗原について10〜35融合を実施した。数ダースのマウスを各抗原について免疫した。
抗IFNAR-1抗体を産生するHuMabマウスの選別:INFAR-1と結合した抗体を産生するHuMabマウスを選別するために、免疫マウスに血清を文献(D. Fishwild et. al.(1996))に記載されたようにELISAで検査した。簡単に記せば、マイクロタイタープレートを大腸菌から得た精製組換えIFNAR-1(PBS中で1〜2μg/mL、50μL/ウェル)で被覆して4℃で一晩インキュベートし、続いてPBS/トゥイーン(0.05%)中に5%のニワトリ血清(200μL/ウェル)でブロックした。IFNAR-1免疫マウスの血清希釈物を各ウェルに添加し、周囲温度で1〜2時間インキュベートした。プレートをPBS/トゥイーンで洗浄し、続いてセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)を結合させたヤギ抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体とともに室温で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートをABTS基質(Sigma, A-1888:0.22mg/mL)とともに反応させ、OD415-495で分光光度計によって分析した。もっとも高力価の抗IFNAR-1抗体を産生したマウスを融合に用いた。融合は下記に記載するように実施し、ハイブリドーマの上清を抗IFNAR-1活性についてELISAによって検査した。
【0077】
IFNAR-1に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作成:前記HuMabマウスから単離したマウスの脾臓細胞をPEGとともにマウスミエローマ細胞株と標準的なプロトコルにしたがって融合させた。続いて、得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングした。免疫マウスの脾臓リンパ球の単一細胞懸濁物を1/4の数のSP2/0非分泌性マウスミエローマ細胞(ATCC, CRL1581)と50%PEG(Sigma)を用いて融合させた。細胞を約1x105/ウェルで平底マイクロタイタープレートに播種し、続いて約2週間、選択培養液中でインキュベートした。前記選択培養液は以下を含む:10%ウシ胎児血清、10%P388D1(ATCC, CRL TIB-63)の条件付け培養液、DMEM(Mediatech, CRL10013, 高グルコース、L-グルタミン及びピルビン酸ナトリウム)+5mMのHEPES中の3〜5%オリゲン(IGEN)、0.055mMの2-メルカプトエタノール、50mg/mLのゲンタマイシン及び1xのHAT(Sigma, CRL P-7185)。1〜2週間後、HATをHTに置き換えた培養液で細胞を培養した。続いて個々の細胞をヒト抗IFNAR-1モノクローナルIgG抗体についてELISAで(上記に記載したように)スクリーニングした。いったん強いハイブリドーマの増殖が開始したら(通常10〜14日後)、培養液をモニターした。抗体分泌ハイブリドーマを再播種し、ヒトIgGについてなお陽性であるか否かを再びスクリーニングし、抗IFNAR-1モノクローナル抗体産生クローンを少なくとも2回限界希釈によってサブクローニングした。続いて安定なサブクローンをin vitroで培養し、更なる特徴付けのために少量の抗体を組織培養液中に生成させる。
ハイブリドーマクローン3F11、4G5、11E2及び9D4が更なる分析のために選択された。
【実施例2】
【0078】
実施例2:ヒトモノクローナル抗体3F11、4G5、11E2及び9D4の構造的特徴付け
3F11、4G5、11E2及び9D4モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖可変領域をコードするcDNA配列を、それぞれ3F11、4G5、11E2及び9D4ハイブリドーマから標準的なPCR技術を用いて入手し、標準的なDNAシークェンシング技術を用いて配列を決定した。
3F11の重鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列は図1A、並びに配列番号33及び25にそれぞれ示されている。
3F11の軽鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列は図1B、並びに配列番号37及び29にそれぞれ示されている。
公知のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン重鎖配列との3F11重鎖免疫グロブリン配列の比較によって、3F11重鎖は、ヒト生殖細胞系列VH4-34由来のVHセグメント、未決定Dセグメント、及びヒト生殖細胞系列JH6b由来のJHセグメントを利用することが示された。生殖細胞系列VH4-34配列に対する3F11のVH配列のアラインメントは図5に示されている。CDR領域決定のカバット(Kabat)システムを用いた3F11のVH配列の更なる分析によって、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の輪郭が、図1A及び5並びに配列番号1、5及び9にそれぞれ示されているように明らかになった。
公知のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン軽鎖配列との3F11軽鎖免疫グロブリン配列の比較によって、3F11軽鎖は、ヒト生殖細胞系列VKL18由来のVLセグメント及びヒト生殖細胞系列JK5由来のJKセグメントを利用することが示された。生殖細胞系列VKL18配列に対する3F11のVL配列のアラインメントは図8に示されている。CDR領域決定のカバットシステムを用いた3F11のVL配列の更なる分析によって、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の輪郭が、図1B及び8並びに配列番号13、17及び21にそれぞれ示されているように明らかになった。
4G5の重鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列は図2A、並びに配列番号34及び26にそれぞれ示されている。
4G5の軽鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列は図2B、並びに配列番号38及び30にそれぞれ示されている。
公知のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン重鎖配列との4G5重鎖免疫グロブリン配列の比較によって、4G5重鎖は、ヒト生殖細胞系列VH4-34由来のVHセグメント、未決定Dセグメント、及びヒト生殖細胞系列JH4b由来のJHセグメントを利用することが示された。生殖細胞系列VH4-34配列に対する4G5のVH配列のアラインメントは図6に示されている。CDR領域決定のカバットシステムを用いた4G5のVH配列の更なる分析によって、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の輪郭が、図2A及び6並びに配列番号2、6及び10にそれぞれ示されているように明らかになった。
公知のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン軽鎖配列との4G5軽鎖免疫グロブリン配列の比較によって、4G5軽鎖は、ヒト生殖細胞系列VKL18由来のVLセグメント及びヒト生殖細胞系列JK2由来のJKセグメントを利用することが示された。生殖細胞系列VKL18配列に対する4G5のVL配列のアラインメントは図9に示されている。CDR領域決定のカバットシステムを用いた4G5のVL配列の更なる分析によって、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の輪郭が、図2B及び9並びに配列番号14、18及び22にそれぞれ示されているように明らかになった。
11E2の重鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列は図3A、並びに配列番号35及び27にそれぞれ示されている。
11E2の軽鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列は図3B、並びに配列番号39及び31にそれぞれ示されている。
公知のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン重鎖配列との11E2重鎖免疫グロブリン配列の比較によって、11E2重鎖は、ヒト生殖細胞系列VH5-51由来のVHセグメント、未決定Dセグメント、及びヒト生殖細胞系列JH4b由来のJHセグメントに由来するか、又は前記と高度に類似することが示された。生殖細胞系列VH5-51配列に対する11E2のVH配列のアラインメントは図7に示されている。CDR領域決定のカバットシステムを用いた11E2のVH配列の更なる分析によって、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の輪郭が、図3A及び7並びに配列番号3、7及び11にそれぞれ示されているように明らかになった。
公知のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン軽鎖配列との112E軽鎖免疫グロブリン配列の比較によって、11E2軽鎖は、ヒト生殖細胞系列VKA27由来のVLセグメント及びヒト生殖細胞系列JK5由来のJKセグメントを利用することが示された。生殖細胞系列VKA27配列に対する11E2のVL配列のアラインメントは図10に示されている。CDR領域決定のカバットシステムを用いた11E2のVL配列の更なる分析によって、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の輪郭が、図3B及び10並びに配列番号15、19及び23にそれぞれ示されているように明らかになった。
9D4の重鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列は図4A、並びに配列番号36及び28にそれぞれ示されている。
9D4の軽鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列は図4B、並びに配列番号40及び32にそれぞれ示されている。
公知のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン重鎖配列との9D4重鎖免疫グロブリン配列の比較によって、9D4重鎖は、ヒト生殖細胞系列VH5-51由来のVHセグメント、未決定Dセグメント、及びヒト生殖細胞系列JH4b由来のJHセグメントに由来するか、又は前記と高度に類似することが示された。生殖細胞系列VH5-51配列に対する9D4のVH配列のアラインメントは図7に示されている。CDR領域決定のカバットシステムを用いた9D4のVH配列の更なる分析によって、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の輪郭が、図4A及び7並びに配列番号4、8及び12にそれぞれ示されているように明らかになった。
公知のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン軽鎖配列との9D4軽鎖免疫グロブリン配列の比較によって、9D4軽鎖は、ヒト生殖細胞系列VKA27由来のVLセグメント及びヒト生殖細胞系列JK5由来のJKセグメントを利用することが示された。生殖細胞系列VKA27配列に対する9D4のVL配列のアラインメントは図10に示されている。CDR領域決定のカバットシステムを用いた9D4のVL配列の更なる分析によって、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域の輪郭が、図3B及び10並びに配列番号16、20及び24にそれぞれ示されているように明らかになった。
【実施例3】
【0079】
実施例3:抗IFNAR-1ヒトモノクローナル抗体はインターフェロンα2bの生物学的活性を阻害する
ダウディ細胞株(ヒトBリンパ芽球バーキットリンパ腫に由来する)は高レベルのIFNAR-1を発現し、これらの細胞の増殖はI型インターフェロンによって阻害される。ヒト抗IFNAR-1抗体の機能的阻止能力を測定するために、2つの別個のアッセイ、細胞増殖アッセイ及びレポーターアッセイを実施した。
第一のアッセイでは、ダウディ細胞を抗体の存在下又は非存在下でインターフェロンα2bとともに培養し、3[H]-チミジンの取り込みによって増殖を測定した。ダウディ細胞(ATCC CCL−213)は、10%FCS及び2mMのβ-メルカプトエタノールを含むRPMI(培養液)中で増殖させた。細胞を遠心し、さらに1x106細胞/mLの濃度で1%ヒト血清アルブミン添加培養液(培養液&HS)に再懸濁させた。96ウェルプレートの各ウェルに、適切な濃度の抗体を含む200U/mLのインターフェロンα2b(Schering Corporation)を加えた。培養液&HS中のダウディ細胞の100μLをウェルに添加し、プレートを37℃で48時間インキュベートした。前記プレートを1μCiの3[H]-チミジンでパルスし、さらに24時間インキュベートした。前記プレートを採集し、96ウェルファイバーフィルタープレート上に収集し、トップカウント(TopCount)シンチレーションカウンター(Packard)を用いて計測した。カウント/分を抗体濃度の関数として作図し、プリズムソフトウェア(San Diego, CA)を用いてデータを非線形回帰S字状ドースレスポンス(可変スロープ)によって解析した。
第二のアッセイでは、インターフェロン刺激応答エレメント(Interfero Stimulated Response Element)がレポーター遺伝子に連結された構築物(ISRE-RG)でU937細胞をトランスフェクトし、前記レポーター遺伝子のIFN誘導性発現を阻止するヒト化抗IFNAR-1抗体の能力を測定した。前記細胞は、10%FCS及び2-メルカプトエタノールを含むRPMI(培養液)中で増殖させた。前記細胞を2%のヒト血清を添加した培養液に再懸濁させた(1x106細胞/mL)。100μLの細胞を96ウェルプレートに添加した。200U/mLのインターフェロンα2b(Schering Corporation)を含む培養液で抗体を段階希釈し、100μLを各ウェルに添加した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。このインキュベーションに続いて、レポーター遺伝子の発現をフローサイトメトリーで判定した。蛍光強度の相乗平均を抗体濃度の関数として作図し、プリズムソフトウェア(San Diego, CA)を用いてデータを非線形回帰S字状ドースレスポンス(可変スロープ)によって解析した。
上記記載の2つのアッセイを用いて、3F11ヒトモノクローナル抗体の能力を、マウス抗IFNAR-1抗体64G12(ECACC寄託番号92022605)及びヒト化抗IFNAR-1抗体DIH3K1(US特許出願60/465,058でさらに記載されている)と比較した。3F11の能力は、前記マウス抗体よりも5〜10倍強く、及び前記ヒト化抗体よりも6〜30倍強い能力を示した。結果は下記の表1に要約されている。
【0080】
表1:IFNアルファ2bに対するヒト抗IFNAR-1抗体の阻止能力

【実施例4】
【0081】
実施例4:抗IFNAR-1ヒトモノクローナル抗体はIFNωの生物学的活性を阻害する
上記実施例3に記載したダウディ増殖アッセイを用いて、ヒト抗IFNAR-1抗体のIFNオメガ応答を阻害する能力を検査した。96ウェルプレートの各ウェルに、適切な濃度の抗体を含む200U/mLのインターフェロンオメガ(PBL)の100μLを加えた。ヒト抗体3F11、4G5、11E2及び9D4は、マウス64G12抗体よりも4〜18倍強力であった(EC50で測定したとき)。結果は下記の表2に要約されている。
【0082】
表2:IFNオメガに対するヒト抗IFNAR-1抗体の阻止能力

【実施例5】
【0083】
実施例5:抗IFNAR-1ヒトモノクローナル抗体は複数のI型IFNの生物学的活性を阻害する
実施例3で述べたように、インターフェロンアルファはダウディ(バーキットリンパ腫、ATCC#CCL-213)細胞の増殖を用量依存態様で阻害する。中和抗体(前記はインターフェロンとそのレセプターとの結合を阻止する)は増殖を回復させる。この細胞増殖アッセイを用いて、精製ヒト抗IFNα抗体の特異性を、天然の類リンパ芽球IFNα、天然の白血球インターフェロン、13の組換えIFNαサブタイプ、IFNベータ及びIFNオメガの阻止について検査することによって調べた。
IFNαの存在下及び非存在下で、ダウディ細胞を培養液(10%FCS、1x2-ME、L-グルタミン及びペニシリンストレプトマイシンを補充したRPMI1640)で平底細胞培養プレートの96ウェルで増殖させた。テストしたI型インターフェロンの各々をEC50で解析し、2倍段階希釈の抗IFNAR-1抗体3F11(典型的には50μg/mL(312nM)から381pg/mL(2.4pM)まで)と混合した。前記抗体/IFN混合物を96ウェル平底プレートのダウディ細胞に最終濃度1x104ダウディ細胞/100μL/ウェルで加え、37℃、5%CO2、72時間インキュベートした。増殖はMTS(Promega)を20μL/ウェルで添加してアッセイし、490nmでODを測定し、続いてさらに3時間インキュベートした。生存細胞数はODの読みと比例した。インターフェロンの阻止百分率をIFNの非存在下でのダウディの増殖(=100%阻止)及びIFNのみの存在下(=0%阻止)に対して算出した。3F11抗体を阻止の程度にしたがって採点し、IFNαサブタイプ特異性プロフィルを得た。結果は、ヒト抗インターフェロンアルファレセプター1抗体、3F11は複数のインターフェロンアルファサブタイプ(IFNα6、2b、2a、1、16、10、8、5、14、17、7、4及び21の他類リンパ芽球IFN、白血球IFN及びIFNオメガを含む)の作用を阻害することを示している。3F11はIFNベータのより低レベルの阻害物質であるが、ただし50%を超える阻害が観察された。インターフェロンの%阻止及び標準偏差は下記の表3に示されている。
【0084】
表3:複数のI型インターフェロンの抗体による阻害

【実施例6】
【0085】
実施例6:抗IFNAR-1抗体によるIFN誘導性IP-10分泌の阻害
IFNα2bの細胞培養液への添加は、正常な抹消血単核細胞(PBMNC)によるIP-10分泌を誘導することが示された。正常なPBMNC培養によるIP-10のインターフェロン誘導性分泌の阻害について、ヒト抗IFNAR-1抗体3F11の活性をELISAによって検査した。
PBMNCを培養液(RPMI1640+10%FBS+1%ヒト血清)中で白血球IFN、IFNα2b又はIFNωとともに24〜48時間インキュベートした。
上清を採集し、定量的サンドイッチELISAキット(Quantikine(商標)、R&D Systems)を用い製造元の指示に従い1:30希釈でIP-10/CXCL10濃度について解析した。結果は、ヒトモノクローナル抗体3F11は、正常PBMNC培養による白血球IFN、組換えIFNα2b及び組換えIFNω誘導性IP-10分泌を阻害することを示している。これらの結果を表4に示す。
【0086】
表4:正常PBMNCに対するIFN誘導性IP-10発現の抗体による阻害

*各IFNサブユニット100ユニット/mLを培養に添加した。
【実施例7】
【0087】
実施例7:抗IFNAR-1ヒトモノクローナル抗体の交差競合アッセイ
ヒトモノクローナル抗体がマウス64G12モノクローナル抗体と同じエピトープと結合するか否かを判定するために、交差競合ELISAアッセイを用い、前記抗体が同じ結合エピトープについて競合するか否かを決定した。
96ウェルプレートを可溶性CHO由来ヒトIFNAR-1(新しく調製したDPBS(Mediatech)中で1μg/mLの濃度で100μL/ウェル)で被覆した。ヒトモノクローナル抗体3F11、4G5、11E2及び9D4をウェルのカラム1に20μg/mLで添加し、さらにカラム1からカラム12に向かって前記を1:2の比で段階希釈し、続いて45分間インキュベートした。マウスのモノクローナル抗体64G12を0.3μg/mLのEC75濃度で50μL/ウェルで添加し、プレートを30分インキュベートした。前記プレートをElx405自動プレート洗浄装置(BIO-TEK Instruments)で3回洗浄した。ペルオキシダーゼアフィニティ精製したF(ab')2ヤギ抗マウスIgG(Fcγ特異的)抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories, cat. 115-036-0710)をPBSで1:1000に希釈し、検出複合体として添加した。1時間のインキュベーショ後に、プレートをElx405自動プレート洗浄装置で3回洗浄した。ABTS溶液(800μLのABTSストック、8μLの30%H2O2、及び100μLのクエン酸リン酸緩衝液)を各ウェルに添加し、20分インキュベートした。プレートを415nmで読み取り、参照波長として490nmを用いた。結果は図11に示されている。前記結果は、ヒト抗IFNAR-1モノクローナル抗体3F11、4G5、11E2及び9D4はIFNAR-1との結合について64G12と競合しないこと、したがって64G12とは異なるIFNAR-1上のエピトープと結合することを示している。
【実施例8】
【0088】
実施例8:SLE血漿仲介樹状細胞発生の抗体による阻害
SLE血漿は正常なヒト単球から樹状細胞の発生を誘導する。この実施例では、精製ヒト抗IFNAR-1モノクローナル抗体3F11を樹状細胞の発生の阻害について調べた。前記は、SLE血漿による細胞表面マーカーCD38、MHCクラスI及びCD123の誘導を阻害する抗体の能力によって判定した。
25mLのバッフィーコートをPBSで4倍に希釈した。前記サンプルを4x50mL円錐管に分け、15mLのリンパ球分離液(ICN Biomedicals)を下層に置いた。500xgでの30分の遠心の後、PBMCを含むバッフィー層を取り出し、PBSで洗浄した。細胞を培養液に4x106細胞/mLで再懸濁した。培養液中でPBMCを1.5時間、37℃でインキュベートし、続いて非粘着性細胞を2回洗浄することによって単球を単離した。2回目の洗浄の後で、1%の熱不活化ヒト血清を含む培養液中で細胞を培養した。25%のSLE患者血清+/−中和抗体及びアイソタイプコントロール(30μg/mL)を前記培養フラスコに添加した。IFNα2b(100及び10iu/mL)+25%正常ヒト血清をマーカー誘導のための陽性コントロールとして用いた。フラスコは37℃、5%CO2で3から7日間インキュベートした。条件付け培養液を各フラスコから採集し、懸濁細胞はソーバルRTH-750ローターで1000rpmの遠心によって回収した。沈殿した細胞は氷上で維持し、上清はELISAのために−80℃で凍結した。粘着細胞は、PBS洗浄(2mL)、続いて必要な場合にはバーセン(3mL)中での15分のインキュベーションによりフラスコから回収した。バーセンインキュベーションの終了時にフラスコを掻きとって、最後にPBS(2mL)で洗浄した。PBS洗浄の各々及び前記バーセンを条件付け培養液の採集から回収された細胞と一緒にした。前記プールした細胞懸濁液をソーバルRTH-750ローターで1000rpmで遠心した。得られたペレットを300μLの染色緩衝液(PBS+0.1MEDTA+2%FBS+1%HS)に再懸濁し、V底の96ウェルプレートに100μL/ウェルで分注した。ソーバルRTH-750ローターで2800rpmでプレートをパルス遠心し、以下のとおり、25μL/ウェルの蛍光色素標識抗体中で沈殿細胞を再懸濁した:(1)マウス抗MHC1-FITC+マウス抗CD38-PE、及び(2)アイソタイプコントロール、マウスIgG-FITC+マウスIgG-PE。光を防ぎながら、プレートを氷上で45分間インキュベートした。200μLの染色緩衝液を添加し続いてパルス遠心することによって細胞を3回洗浄し、最後にPBS中に2%のパラホルムアルデヒドの200μLに再懸濁させた。樹状細胞の染色はベクトン・ディキンソンFACSカリバー(FACScalibur(商標))を用いてフローサイトメトリーで分析した。ゲートはフォワードスキャター対サイドスキャターグラフで描き、分析から夾雑細胞を除去した。抗IFNAR-1ヒトモノクローナル抗体3F11は、3F11の存在下での細胞表面マーカーMHCクラスI、CD38及びCD123の標準化発現によって示されたように、樹状細胞発生のIFNα依存プロセスを阻害する。この結果は下記の表5に示され、この場合、(A)及び(B)は2人の代表的なSLEドナーのサンプルについての結果の要旨である。
【0089】
表5:樹状細胞成熟の阻害
(A)ドナー血漿#40*(13.3IU/mL)

(B)ドナー血漿#59*(75.3IU/mL)

【実施例9】
【0090】
実施例9:ダウディ細胞又はヒト末梢血単核細胞に対する抗IFNAR-1ヒト抗体のスキャチャード結合分析
ヒト末梢血単核細胞を新鮮な血液からフィコール分離を用い標準的プロトコルによって調製した。ダウディ細胞はATCCから入手し、10%ウシ胎児血清(FBS)含有RPMIで増殖させた。10%FBS含有RPMIで4度で細胞を2回洗浄し、10%ウシ胎児血清含有RPMI培養液(結合緩衝液)で4x107細胞/mLに細胞を調整した。ミリポアプレート(MAFB NOB)を水に1%の脱脂粉乳で被覆し、4℃で一晩保存した。プレートを結合緩衝液で洗浄し、結合緩衝液中の非標識抗体(1000倍過剰)25μLを、ミリポア96ウェルガラスファイバーフィルタープレート(非特異的結合NSB)のコントロールウェルに加えた。緩衝液のみ25μLを最大結合コントロールウェル(総結合)に添加した。25μLの種々の濃度の125I-抗IFNAR-1抗体及び結合緩衝液中のダウディ細胞又はヒト末梢血単核細胞(4x107細胞/mL)を添加した。4℃のシェーカー上で200RPM、2時間、前記プレートをインキュベートした。インキュベーションの完了時に、前記ミリポアプレートを0.2mLの冷結合緩衝液で2回洗浄した。フィルターを取り出し、ガンマカウンターで計測した。結合の平衡の判定は、プリズムソフトウェア(San Diego, CA)によるシングルサイト結合を用いて実施した。
上記のスキャチャード結合アッセイを用いて、ダウディ細胞及びヒト末梢血単核細胞に対する抗体のKDは、それぞれ0.2nM及び0.5nMであった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1Aは、3F11ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号33)及びアミノ酸配列(配列番号25)を示す。CDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号5)及びCDR3(配列番号9)の領域が明示されている。図1Bは、3F11ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号37)及びアミノ酸配列(配列番号29)を示す。CDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号17)及びCDR3(配列番号21)の領域が明示されている。
【図2】図2Aは、4G5ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号34)及びアミノ酸配列(配列番号26)を示す。CDR1(配列番号2)、CDR2(配列番号6)及びCDR3(配列番号10)の領域が明示されている。図2Bは、4G5ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号38)及びアミノ酸配列(配列番号30)を示す。CDR1(配列番号14)、CDR2(配列番号18)及びCDR3(配列番号22)の領域が明示されている。
【図3】図3Aは、11E2ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号35)及びアミノ酸配列(配列番号27)を示す。CDR1(配列番号3)、CDR2(配列番号7)及びCDR3(配列番号11)の領域が明示されている。図3Bは、11E2ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号39)及びアミノ酸配列(配列番号31)を示す。CDR1(配列番号15)、CDR2(配列番号19)及びCDR3(配列番号23)の領域が明示されている。
【図4】図4Aは、9D4ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号36)及びアミノ酸配列(配列番号28)を示す。CDR1(配列番号4)、CDR2(配列番号8)及びCDR3(配列番号12)の領域が明示されている。図4Bは、9D4ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号40)及びアミノ酸配列(配列番号32)を示す。CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号20)及びCDR3(配列番号24)の領域が明示されている。
【図5】3F11の重鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖細胞系列のVH4-34のアミノ酸配列(配列番号41)とのアラインメントを示す。
【図6】4G5の重鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖細胞系列のVH4-34のアミノ酸配列(配列番号41)とのアラインメントを示す。
【図7】11E2及び9DAの重鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖細胞系列のVH5-51のアミノ酸配列(配列番号42)とのアラインメントを示す。
【図8】3F11の軽鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖細胞系列のVkL18のアミノ酸配列(配列番号43)とのアラインメントを示す。
【図9】4G5の軽鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖細胞系列のVkL18のアミノ酸配列(配列番号43)とのアラインメントを示す。
【図10】11E2及び9DAの軽鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖細胞系列のVkA27のアミノ酸配列(配列番号44)とのアラインメントを示す。
【図11】ヒトIFNAR-1に対して作成されたヒトモノクローナル抗体(3F11)は、IFNAR-1との結合についてマウスモノクローナル抗体64G12と競合しないことを明示する実験結果を示すグラフである。
【0092】
(配列表のリストの概要)

【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図4A】

【図4B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターフェロンアルファレセプター1(IFNAR-1)と特異的に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、
以下の特性の1以上を示す、前記抗体又はその抗原結合部分:
a)1x10-7MのKD又はそれより強い親和性でIFNAR-1と結合する;
b)複数のI型インターフェロンの生物学的活性を阻害する;
c)ダウディ(Daudi)細胞増殖アッセイでIFNα2bの活性を阻害する;
d)ダウディ(Daudi)細胞増殖アッセイでIFNオメガの活性を阻害する;
e)IFNα2bによって誘導される末梢血単核細胞によるIP-10分泌を阻害する;
f)IFNオメガによって誘導される末梢血単核細胞によるIP-10分泌を阻害する;
g)全身性紅斑性狼瘡血漿によって仲介される樹状細胞の発生を阻害する;及び
h)マウスモノクローナル抗体64G12(ECACC寄託番号92022605)とは異なるエピトープに結合する。
【請求項2】
1x10-8MのKD又はそれより強い親和性でヒトインターフェロンアルファレセプター1と結合する、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
1x10-9MのKD又はそれより強い親和性でヒトインターフェロンアルファレセプター1と結合する、請求項1記載の抗体。
【請求項4】
単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、ヒトインターフェロンアルファレセプター1との結合について参照抗体と交差競合し、前記参照抗体が以下から成る群より選択される、前記抗体又はその抗原結合部分:
a)配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号29のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;
b)配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;
c)配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;及び
d)配列番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【請求項5】
ヒトVH4-34又は5-51遺伝子の生成物であるか又はヒトVH4-34又は5-51遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、請求項1記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項6】
ヒトVKL18又はA27遺伝子の生成物であるか又はヒトVKL18又はA27遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む、請求項1記載の単離されたヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項7】
ヒトVKL18又はA27遺伝子の生成物であるか又はヒトVKL18又はA27遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む、請求項5記載の単離されたヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項8】
ヒトVH4-34遺伝子の重鎖可変領域及びヒトVKL18遺伝子の軽鎖可変領域を含む、請求項7記載の抗体。
【請求項9】
ヒトVH5-51遺伝子の重鎖可変領域及びヒトVKA27遺伝子の軽鎖可変領域を含む、請求項7記載の抗体。
【請求項10】
以下を含む、請求項2記載の抗体:
(a)配列番号1を含むヒト重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号5を含むヒト重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号9を含むヒト重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号13を含むヒト軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号17を含むヒト軽鎖可変領域CDR2、及び
(f)配列番号21を含むヒト軽鎖可変領域CDR3。
【請求項11】
以下を含む、請求項2記載の抗体:
(a)配列番号2を含むヒト重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号6を含むヒト重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号10を含むヒト重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号14を含むヒト軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号18を含むヒト軽鎖可変領域CDR2、及び
(f)配列番号22を含むヒト軽鎖可変領域CDR3。
【請求項12】
以下を含む、請求項2記載の抗体:
(a)配列番号3を含むヒト重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号7を含むヒト重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号11を含むヒト重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号15を含むヒト軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号19を含むヒト軽鎖可変領域CDR2、及び
(f)配列番号23を含むヒト軽鎖可変領域CDR3。
【請求項13】
以下を含む、請求項2記載の抗体:
(a)配列番号4を含むヒト重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号8を含むヒト重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号12を含むヒト重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号16を含むヒト軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号20を含むヒト軽鎖可変領域CDR2、及び
(f)配列番号24を含むヒト軽鎖可変領域CDR3。
【請求項14】
以下を含む、請求項2記載の抗体:
(a)配列番号25のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域、及び
(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域。
【請求項15】
以下を含む、請求項2記載の抗体:
(a)配列番号26のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域、及び
(b)配列番号30のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域。
【請求項16】
以下を含む、請求項2記載の抗体:
(a)配列番号27のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域、及び
(b)配列番号31のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域。
【請求項17】
以下を含む、請求項2記載の抗体:
(a)配列番号28のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域、及び
(b)配列番号32のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域。
【請求項18】
マウスモノクローナル抗体64G12(ECACC寄託番号92022605)と同じエピトープには結合しない、請求項1記載のヒト抗体。
【請求項19】
請求項1記載の抗体又はその抗原結合部分と、医薬的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項20】
治療薬剤と結合されている請求項1記載の抗体又はその抗原結合部分を含む、免疫複合体。
【請求項21】
さらに医薬的に許容される担体を含む、請求項20記載の免疫複合体。
【請求項22】
治療薬剤が細胞毒である、請求項20記載の免疫複合体。
【請求項23】
さらに医薬的に許容される担体を含む、請求項22記載の免疫複合体。
【請求項24】
治療薬剤が放射性同位元素である、請求項20記載の免疫複合体。
【請求項25】
さらに医薬的に許容される担体を含む、請求項24記載の免疫複合体。
【請求項26】
別個の結合特異性を有する第二の機能的部分と結合されている請求項1から18のいずれか1項記載の抗体又はその抗原結合部分を含む、二重特異性分子。
【請求項27】
請求項26記載の二重特異性分子と医薬的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項28】
請求項1から18のいずれか1項記載の抗体又はその抗原結合部分をコードする、単離された核酸分子。
【請求項29】
請求項28記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項30】
請求項29記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項31】
請求項1から18のいずれか1項記載の抗体を発現する、ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖導入遺伝子を含むトランスジェニックマウス。
【請求項32】
請求項1から18のいずれか1項記載の抗体を生成する、請求項31記載のマウスから調製されるハイブリドーマ。
【請求項33】
以下を含む抗IFNAR-1抗体を調製する方法:
(a)(i)配列番号1、2、3及び4から成る群から選択されるCDR1配列、配列番号5、6、7及び8から成る群から選択されるCDR2配列、並びに配列番号9、10、11及び12から成る群から選択されるCDR3配列を含む、重鎖可変領域抗体配列;又は(ii)配列番号13、14、15及び16から成る群から選択されるCDR1配列、配列番号17、18、19及び20から成る群から選択されるCDR2配列、並びに配列番号21、22、23及び24から成る群から選択されるCDR3配列を含む、軽鎖可変領域抗体配列;を提供すること、
(b)前記重鎖可変領域抗体配列及び前記軽鎖可変領域抗体配列から選択される少なくとも1つの可変領域抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を改変して、少なくとも1つの改変抗体配列を作製すること;並びに
(c)前記改変抗体配列をタンパク質として発現させること。
【請求項34】
請求項1から18のいずれか1項記載の抗体と前記細胞を接触させて、I型インターフェロンの生物学的活性を阻害させることを含む、インターフェロンアルファレセプター1を発現する細胞でI型インターフェロンの生物学的活性を阻害する方法。
【請求項35】
治療の必要がある対象者のI型インターフェロン仲介疾患又は異常を治療する方法であって、請求項1から18のいずれか1項記載の抗体又はその抗原結合部分を前記対象者に投与して、前記対象者のI型インターフェロン仲介疾患を治療することを含む、前記方法。
【請求項36】
I型インターフェロン仲介疾患がインターフェロンアルファ仲介疾患である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
疾患又は異常が全身性紅斑性狼瘡である、請求項35記載の方法。
【請求項38】
疾患又は異常が、インスリン依存性真性糖尿病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、自己免疫性甲状腺炎、慢性関節リウマチ及び糸球体腎炎から成る群から選択される、請求項35記載の方法。
【請求項39】
疾患又は異常がHIV感染又はエイズである、請求項35記載の方法。
【請求項40】
疾患又は異常が移植拒絶又は対宿主性移植片病である、請求項35記載の方法。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−508864(P2008−508864A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518205(P2007−518205)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/021951
【国際公開番号】WO2006/002177
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(504378238)メダレックス インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】