インターフェロン治療のための方法および組成物
【課題】上皮細胞、そして特に尿路上皮に対する、治療用タンパク質、ポリペプチド(例えば、インターフェロン、IntronA)または遺伝子送達系または核酸の送達を改善する方法を提供すること。
【解決手段】タンパク質またはこのタンパク質をコードする核酸は、標的組織または器官の細胞に対するインターフェロンまたは核酸の送達を増大する送達増強因子を用いた治療と組み合わせて、この標的組織または器官に投与される。この方法および組み合わせは特にインターフェロン療法に応答性の癌または他の症状の治療に有効である。例示的な方法は、αインターフェロンまたはこのインターフェロンをコードする遺伝子送達系およびSYN3またはSYN3のホモログもしくはアナログを含む薬学的組成物の治療上有効な量の膀胱への経尿道膀胱内投与を包含する。
【解決手段】タンパク質またはこのタンパク質をコードする核酸は、標的組織または器官の細胞に対するインターフェロンまたは核酸の送達を増大する送達増強因子を用いた治療と組み合わせて、この標的組織または器官に投与される。この方法および組み合わせは特にインターフェロン療法に応答性の癌または他の症状の治療に有効である。例示的な方法は、αインターフェロンまたはこのインターフェロンをコードする遺伝子送達系およびSYN3またはSYN3のホモログもしくはアナログを含む薬学的組成物の治療上有効な量の膀胱への経尿道膀胱内投与を包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2003年6月4日出願、米国特許出願第10/455,215号の一部継続出願であり、この出願は、2002年1月22日出願、米国特許出願第10/055,863号の一部継続出願であり、この出願は、1998年7月8日出願、米国特許出願第09/112,074号(2002年5月21日発行の米国特許第6,392,069号)の継続出願であり、この出願は、1997年7月8日出願、米国特許出願第08/889,355号の一部継続出願であり、この出願は、1996年1月8日出願、米国特許出願第08/584,077号(1998年8月4日発行、米国特許第5,789,244号)の一部継続であり;本出願はまた、2003年6月3日出願、譲渡された米国特許出願番号(Townsend and Townsend and Crew LLP代理人整理番号016930−000815)の一部継続出願であり、この出願は、2000年8月28日出願の米国特許出願第09/650,359号の継続出願であり、この出願は、1997年1月7日出願、米国特許出願第08/779,627号(2000年12月26日発行、米国特許第6,165,779号)の継続出願であり、この出願は、1996年1月8日出願、米国特許出願第08/584,077号の一部継続出願であり;本出願は、2004年6月4日出願、譲渡される米国特許出願番号(Townsend and Townsend and Crew LLP代理人整理番号016930−000831USに対する優先権を主張し、この出願は、2003年6月4日出願米国特許出願第60/475926号の恩典を請求する。本出願は、2001年12月20日出願、米国特許出願第60/342329号の恩典を請求する、2002年12月20日出願、米国特許出願第10/329,043号の主題に関する主題を含む。これらの優先出願の開示は、全ての目的のためにその全体が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
毎年米国では45,000例を超える表在性膀胱癌が診断されている(Cancer Facts and Figures 2002)。表在性の疾患は典型的には、粘膜表面(Ta)に限定されるか、または平面伝播性の改変型である上皮内癌(CIS)として存在する。いくつかのタイプの疾患は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)によって最初に切り出され得るが、おそらく、可視的な腫瘍の肉眼での切除では、最終的に腫瘍再発を生じる顕微鏡的な病巣が残留し得るので、新規な腫瘍形成の傾向は高いままである。さらに、上皮内癌(CIS)の治療には、外科的な介入は不可能である。従って、膀胱内療法が、腫瘍再発を防止する外科手術に対する補助療法として、または小さい残留性疾患および/またはCISのようなアクセス不能な疾患を排除するために、開発されている。
【0003】
表在性膀胱癌の治療のために、2つの一般的なタイプの膀胱内療法が現在使用されている:化学療法およびBCG免疫療法。膀胱内投与を介して有効性が示されている化学療法剤は3つしかない:チオテパ、アドリアマイシン(およびその誘導体、エピルビシンおよびバルビシン)、およびマイトマイシン。TURBT単独に対してこれらの化学療法剤を比較する多重無作為化トライアルによって、腫瘍再発の12〜15%という正味の減少(すなわち、TURBTでの60%の再発、対TURBTに加えて化学療法での45%の再発)があり、1因子では併用より明らかな優位性はないことが明らかになっている(非特許文献1)。さらに重要な事には、再発におけるこの統計学的に有意な低下にもかかわらず、化学療法が最終的な疾患の進行の可能性を減少させるか、または生存率を向上させるということを実証しているエビデンスは示されていない(非特許文献2)。
【0004】
免疫療法は典型的に、Mycobacterium bovis Bacillus Calmette−Guerin(「BCG」)の生ワクチン株の膀胱内投与からなる。腫瘍再発は、TURBT(または膀胱内化学療法約2回)後にBCGを用いて約30%に減少する(非特許文献3)。小さい乳頭状腫瘍(<2cm)の切除は、その時点で55〜60%、そしてCISについては75%まで達成され得る(非特許文献4)。膀胱内BCGは、再発または疾患の進行のリスクの高い表在性膀胱癌の患者では標準的な治療となっている。これに関して、BCGを用いる膀胱内療法によって、ある程度の疾患管理、および表在性膀胱癌のあらゆる患者について望ましい目標である、膀胱の機能的保持が可能である。しかし、高いリスクの表在性膀胱癌の初期治療についてのこのBCG介在性の利点にもかかわらず、約50%の患者が2年以内に再発する。一般に、このような再発はBCGで再治療される。しかし、複数回の膀胱内BCG点滴で治療された患者は、用量制限毒性、例えば、膀胱炎、排尿障害、発熱、そして場合によりBCG敗血症を被り得ることが観察された。従って、十分な忍容性を示し、かつ有効であるBCG治療に対する代替法が望まれる。
【0005】
近年では、研究者は、表在性膀胱癌の治療のための膀胱内での組換えインターフェロンα2bタンパク質(IntronA(登録商標))療法について評価している。第II相ヒト臨床試験によって、50〜100MIUの用量での単独薬剤としての膀胱内滴下注入IntronAは、表在性膀胱癌を有する患者の40%において完全寛解を得ることが実証された(非特許文献5)。
【0006】
上記の観点から、上皮細胞、そして特に尿路上皮に対する、治療用タンパク質、ポリペプチド(例えば、インターフェロン、IntronA)または遺伝子送達系または核酸の送達を改善する方法を有することは有利である。
【非特許文献1】Traynelis et al.,「Current status of intravesical therapy for bladder cancer In:S.N.Rous(編)Urology Annual」,New York:WW Norton and Co,1994,Vol.8,pp.113−143
【非特許文献2】Lamm et al.,J Urol,(1995)153:1444〜50
【非特許文献3】O’Donnell MA,「Use of Intravesical BCG in Treatment of Superficial Bladder Cancer」In:Droller、編、Bladder Cancer:Current Diagnosis and Treatment,Totowa NJ:Human Press Inc.,2001
【非特許文献4】Kavoussi et al.,J.Urol.(1988)139:935
【非特許文献5】O’Donnell et al.,J.Urol.,2001 Oct.,166(4):1300〜5
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明の1態様では、上皮細胞層を有する組織または器官に対してタンパク質療法を行うための方法および薬学的組成物が提供される。1態様では、タンパク質療法は、ベクターによって標的組織または器官の細胞の形質導入を増大する、タンパク質療法送達増強因子を用いた治療と併用して標的の組織または器官に投与される。この方法および組み合わせは、生物学的に活性なタンパク質を用いた治療に応答性である癌および他の状態の治療に有効であり得る。好ましい実施形態では、送達増強因子はSYN3である。
【0008】
いくつかの実施形態では、タンパク質療法は、インターフェロンタンパク質自体の投与によって、または形質導入された上皮もしくは尿道上皮細胞において発現されるべきインターフェロンタンパク質を遺伝子がコードしている、インターフェロン遺伝子送達系の投与によって、インターフェロンタンパク質を提供する。例示的な実施形態では、この
方法は、SYN3またはSYN3のホモログもしくはアナログおよびインターフェロンまたはこのインターフェロンをコードするアデノウイルスベクターを含む薬学的組成物の治療上有効な量の膀胱への経尿道膀胱内投与を包含する。さらなる実施形態では、このインターフェロンは、αインターフェロンである。
【0009】
別の態様では、本発明は、上皮組織に対する核酸の送達を増強するための組成物および方法を提供する。1つの実施形態では、この方法は、送達増強因子と組み合わせてインターフェロンを遺伝子がコードする、遺伝子送達系を、組織または器官の細胞と接触させる工程を提供する。1つのさらなる実施形態では、本発明は、インターフェロン遺伝子をコードする組換えアデノウイルスおよび送達増強因子を含む薬学的組成物を提供する。例示的な実施形態では、この送達増強因子はSYN3であり、そしてこの系は、生物学的に活性なヒトインターフェロンポリペプチドをコードするアデノウイルスベクターを含む。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、送達増強因子および治療タンパク質の膀胱内投与により、膀胱上皮に対する、治療タンパク質またはこのタンパク質をコードする遺伝子を有する遺伝子送達系の送達を増強することによって、膀胱癌を治療するための組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態では、この治療タンパク質はインターフェロンである。さらなる実施形態では、この治療タンパク質はインターフェロンα2bまたはインターフェロンα2α1である。さらに他の実施形態では、送達増強因子はSYN3またはSYN3ホモログである。例示的実施形態では、送達増強因子はSYN3であり、タンパク質はインターフェロン(例えば、生物学的に活性なヒトインターフェロンポリペプチド)である。さらなる実施形態では、タンパク質は、タンパク質としてまたはこのタンパク質をコードする遺伝子送達系を介して投与され得る。さらに他の実施形態では、このタンパク質は、抗体または抗体フラグメントである。さらなる実施形態では、抗体は、サイトカインを指向している。
【0011】
別の態様では、本発明は、治療タンパク質または送達増強因子の投与のための薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、このタンパク質は、インターフェロンであり、そして送達増強因子は、SYN3またはSYN3ホモログである。例示的な実施形態では、この送達増強因子はSYN3であり、このタンパク質は生物学的に活性なヒトインターフェロンポリペプチドである。さらなる実施形態では、このインターフェロンはインターフェロンα2bまたはインターフェロンα2α1である。
【0012】
いくつかの態様では、本発明の方法は、送達増強因子および治療用タンパク質または治療タンパク質をコードする核酸の膀胱内投与によって、上皮膜で裏打ちされたかまたは上皮膜を含む、内部の隙間、洞、室、通路、容積、腔、空隙または管腔を規定する任意の器官または組織を治療する工程を包含する。このように規定された表面または壁は、薬学的組成物の身体の別の部分への大量の液体の動きまたは移動を含むか、または遅らせるか、または制限するように機能し、そして上皮膜と薬学的組成物との長い接触時間を可能にし得る。器官または組織は、内面に上皮膜を有する膀胱(bladder)(例えば、膀胱(urinary bladder))であってもよい。ある実施形態では、器官は胃、子宮、腸、食道、口、結腸、上部もしくは下部の消化管、または上部もしくは下部の気道である。ある実施形態では、この器官または組織は、腹腔のような空間を規定し、上皮表面は、腹腔内の空間と液体接触し得る上皮表面上に位置する。ある実施形態では、この器官または組織は癌を有する。増殖性障害または感染性疾患および治療タンパク質は、インターフェロンであり、そして送達増強因子はSYN3またはSYN3アナログである。
【0013】
本発明によれば、さらに以下が提供される。
(項目1)
1)SYN3およびSYN3ホモログからなる群より選択される送達増強因子、ならびに2)インターフェロンタンパク質またはインターフェロン遺伝子送達系を含有する薬学的組成物であって、該遺伝子送達系がインターフェロンの遺伝子を含有し、かつ該インターフェロンの遺伝子が、該遺伝子の発現を調節する遺伝的調節要素に作動可能に連結されている、薬学的組成物。
(項目2)
前記組成物が、薬学的に受容可能なキャリアを含有する、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目3)
前記組成物が、凍結乾燥される、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目4)
前記組成物が、SYN3を含有する、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目5)
前記インターフェロンが、α−インターフェロン、β−インターフェロン、δ−インターフェロン、γ−インターフェロンおよびそれらの融合インターフェロンからなる群より選択される、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目6)
前記インターフェロンが、インターフェロンα−2b、融合インターフェロンα−/2α−1、およびインターフェロンα−2eからなる群より選択される、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目7)
前記因子が、SYN3であり、かつ前記インターフェロンが、ヒトαインターフェロンまたはその融合インターフェロンである、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目8)
前記αインターフェロンが、α1インターフェロンまたはα2インターフェロンである、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目9)
前記インターフェロンが、ヒトインターフェロンである、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目10)
前記ホモログが以下の式:
【化1】
の化合物である、項目1に記載の薬学的組成物であって、
ここで:
R1およびR2は、個々に独立して、水素およびヒドロキシル基からなる群より選択されるメンバーであり;
mおよびnは、個々に独立して、約0〜2から選択され;
R3は、−NR4R5からなる群より選択され、ここでR4およびR5は、個々に独立して、水素、糖残基、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアシル、および任意に置換されたアシルオキシ、および四級アンモニウム塩−NR6R7R8Xからなる群より選択されるメンバーであり、ここでR6、R7およびR8は、独立して、水素およびC1−C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり、そしてXは、ハロゲンおよび任意に置換されたカルボキシレートからなる群より選択される負に荷電されたイオン結合された対イオンである、
薬学的組成物。
(項目11)
R1およびR2が、両方ともヒドロキシル基である、項目10に記載の組成物。
(項目12)
mおよびnが、それぞれ1である、項目10に記載の組成物。
(項目13)
前記化合物が、式II:
【化2】
を有する、項目12に記載の組成物。
(項目14)
R4が、水素であり;そしてR5が、水素、糖残基、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアシル、および任意に置換されたアシルオキシからなる群より選択されるメンバーである、項目10に記載の組成物。
(項目15)
前記化合物が、式III:
【化3】
を有する、項目10に記載の組成物。
(項目16)
R4がスクシニルである、項目10に記載の化合物。
(項目17)
R4がアセチルである、項目10に記載の化合物。
(項目18)
R3がトリメチルアンモニウム塩である、項目10に記載の化合物。
(項目19)
R3がトリエチルアンモニウム塩である、項目10に記載の化合物。
(項目20)
哺乳動物被験体に対してインターフェロンを送達するための方法であって、該方法は、SYN3およびSYN3ホモログからなる群より選択される送達増強因子を含有する薬学的組成物の治療上有効な量を該被験体の上皮組織または器官に投与する工程、およびインターフェロンまたはインターフェロン遺伝子送達系を投与する工程を包含し、ここで該遺伝子送達系が、インターフェロンの遺伝子を含み、そして該インターフェロンの遺伝子が、該遺伝子の発現を調節する遺伝的調節要素に作動可能に連結されている、方法。
(項目21)
前記因子が、SYN3である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記因子がSYN3であり、かつ前記組成物中の該SYN3の濃度が0.1mg〜10mg/mlである、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記インターフェロンが、α−インターフェロン、β−インターフェロン、δ−インターフェロン、γ−インターフェロンおよびそれらの融合インターフェロンからなる群より選択される、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記インターフェロンが、インターフェロンα−2bからなる群より選択され、融合インターフェロンがα−/2α−1、およびインターフェロンα−2eである、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記被験体が、ヒトであり、前記因子が、SYN3であり、そして前記インターフェロンが、ヒトαインターフェロンまたはその融合インターフェロンである、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記αインターフェロンが、α1インターフェロンまたはα2インターフェロンである、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記インターフェロンが、ヒトインターフェロンである、項目20に記載の方法。
(項目28)
前記組成物が、組織または器官に対して膀胱内に投与される、項目23に記載の方法。
(項目29)
前記組織または器官が、癌性である、項目23に記載の方法。
(項目30)
前記組織または器官が、ヒト膀胱である、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記投与が、ほぼ週1回、月2回、毎月および隔月からなる群より選択される間隔である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記投与が、所定の範囲内でインターフェロン遺伝子の発現を維持するために投与される組成物の投与の頻度または量に関して調節される、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記組成物が、約50〜600mlの体積で投与される、項目30に記載の方法。
(項目34)
前記体積が、約100〜300mlである、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記組成物が、カテーテルによって投与される、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記カテーテルが、バルーンカテーテルであり、該カテーテルのバルーン部分が、膀胱の空隙体積を減少させるために挿入後に膨張される、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記被験体が、再発性または反復性の膀胱癌患者である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記被験体が、BCG療法を用いて事前処置された、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記組織または器官が、気道組織もしくは器官、上部もしくは下部胃腸の組織もしくは器官、または腹膜組織もしくは器官である、項目20に記載の方法。
(項目40)
前記組成物が、約5分間〜約2時間の時間にわたって投与される、項目30に記載の方法。
(項目41)
前記組成物中のSYN3の濃度が、0.1〜10mg/mlの量である、項目30に記載の方法。
(項目42)
前記ホモログが、式:
【化4】
を有する、項目23に記載の方法であって、
ここで:
R1およびR2は、個々に独立して、水素およびヒドロキシル基からなる群より選択されるメンバーであり;
mおよびnは、個々に独立して、約0〜2から選択され;
R3は、−NR4R5からなる群より選択され、ここでR4およびR5は、個々に独立して、水素、糖残基、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアシル、および任意に置換されたアシルオキシ、および四級アンモニウム塩−NR6R7R8Xからなる群より選択されるメンバーであり、ここでR6、R7およびR8は、独立して、水素およびC1−C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり、そしてXは、ハロゲンおよび任意に置換されたカルボキシレートからなる群より選択される負に荷電されたイオン結合された対イオンである、方法。
(項目43)
前記SYN3またはSYN3ホモログが、インターフェロンまたは遺伝子送達系との同時処方物中で投与される、項目20に記載の方法。
(項目44)
前記SYN3組成物またはSYN3ホモログ組成物、および前記インターフェロンまたはインターフェロン遺伝子送達系が、別個に投与される、項目20に記載の方法。
(項目45)
前記SYN3組成物またはSYN3ホモログ組成物が、前記インターフェロンまたはインターフェロン遺伝子送達系の投与の前に投与される、項目44に記載の方法。
(項目46)
キットであって、以下:
インターフェロンの送達を強化し得るSYN3またはSYN3ホモログを含む第一の容器;および
インターフェロンまたは遺伝子送達系を含む第二の容器であって、該遺伝子送達系が、インターフェロンの遺伝子を含み、該インターフェロンの遺伝子が、該遺伝子の発現を調節する遺伝的調節要素に作動可能に連結されている、第二の容器、
を備えるキット。
(項目47)
前記第一の容器が、SYN3の凍結乾燥処方物を含む、項目46に記載のキット。
(項目48)
前記第二の容器が、インターフェロンまたは遺伝子送達系の凍結乾燥処方物を含む、項目46に記載のキット。
(項目49)
前記インターフェロン遺伝子が、αインターフェロン遺伝子である、項目46に記載のキット。
(項目50)
前記インターフェロン遺伝子が、ヒトである、項目46に記載のキット。
(項目51)
SYN3およびSYN3ホモログからなる群より選択される遺伝子送達増強因子ならびに遺伝子送達系を含有する薬学的組成物であって、該遺伝子送達系は、インターフェロンの遺伝子を含み、該インターフェロンの遺伝子は、該遺伝子の発現を調節する遺伝的調節要素に作動可能に連結されている、薬学的組成物。
(項目52)
前記遺伝子送達系が、組換えウイルスベクターを含む、項目51に記載の薬学的組成物。
(項目53)
前記組換えウイルスベクターが、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびアデノウイルスベクターからなる群より選択される、項目52に記載の薬学的組成物。
(項目54)
前記因子が、SYN3であり、前記インターフェロンが、ヒトαインターフェロンまたはその融合インターフェロンであり、前記遺伝子送達系が、組換えアデノウイルス遺伝子送達系である、項目53に記載の薬学的組成物。
(項目55)
前記組成物が、単位投薬量形態であり、前記因子の量が1〜2000mgである治療量の組成物を含む、項目51に記載の薬学的組成物。
(項目56)
哺乳動物被験体にインターフェロンを送達するための方法であって、該方法は、SYN3およびSYN3ホモログからなる群より選択される送達増強因子および遺伝子送達系を含む薬学的組成物の治療上有効な量を該被験体の上皮組織または器官に投与する工程を包含し、該遺伝子送達系が、インターフェロンの遺伝子を含み、該インターフェロンの遺伝子が、該遺伝子の発現を調節する遺伝的調節要素に作動可能に連結されている、方法。
(項目57)
前記遺伝子送達系が、DNAおよび陽イオン性脂質を含む、項目51に記載の方法。
(項目58)
前記インターフェロンの発現を測定するために、尿がモニタリングされる、項目51に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
他に規定しない限り、本明細書において用いる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において引用される、各々の刊行物、特許出願、特許および他の引用文献は、本開示と矛盾しない程度までその全体が参考として援用される。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「1つの(「a」、「an」)」、および「この、その(「the」)」は、文脈が他に明確に示さない限り、複数の言及を包含する。
【0016】
1態様では、本発明は、上皮層または尿路上皮を有する組織に対するタンパク質または核酸の送達を増強する組成物および方法を提供する。1つの実施形態では、この方法は、組織または器官の細胞と、インターフェロンまたはインターフェロンをコードする遺伝子送達系とを、送達増強因子と組み合わせて接触させる工程を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明は、上皮と送達増強因子(例えば、SYN3)とを接触させることによって、上皮に対するタンパク質(例えば、インターフェロン)の送達を増強する組成物および方法を提供する。1つの実施形態では、この方法は、膀胱の尿路上皮と1)インターフェロンまたはインターフェロン遺伝子送達系、および2)SYN3またはSYN3ホモログとを接触させる工程を提供する。本発明は、膀胱に対する遺伝子送達系およびタンパク質のSYN3増強性送達が、SYN3を用いて組換えアデノウイルス遺伝子療法で得られたものに対抗する量で生物学的に活性なタンパク質(例えば、インターフェロン)を送達する高度に有効な方法であるという発見に関する。これらの結果によって、特に、インターフェロンのSYN3増強送達が膀胱癌を治療するのに有効であることが示される。この結果によってまた、一般に、SYN3およびそのホモログがまた、特に尿路上皮に関して、上皮組織の細胞に対する上皮性の障壁を横切って他の治療タンパク質を送達するのに有効であるはずであるということが示される。
【0018】
(遺伝子送達系:)
「遺伝子送達系(gene delivery system)」は、細胞中のタンパク質遺伝子の発現をもたらす発現調節配列に作動可能に連結された、生物学的に活性なタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドを含む。インターフェロン遺伝子送達系は、細胞中でインターフェロン遺伝子の発現をもたらす発現調節配列に作動可能に連結された、インターフェロンをコードする組換えポリヌクレオチドを含む。
【0019】
ポリヌクレオチドという用語は、ヌクレオチドモノマーからなるポリマーをいう。ポリヌクレオチドとは、天然に存在する核酸、例えば、デオキシリボ核酸(「DNA」)およびリボ核酸(「RNA」)、ならびに核酸アナログを包含する。核酸アナログとは、それらの天然には存在しない塩基、天然に存在するホスホジエステル結合以外のヌクレオチドと連結されて係合しているか、またはホスホジエステル結合以外の連結を通じて結合された塩基を含むヌクレオチドを包含する。従って、ヌクレオチドアナログとしては、例えば、限定はしないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、ホスホラミダイト、ボラノホスフェート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNAs)などが挙げられる。このようなポリヌクレオチドは、例えば、自動的なDNAシンセサイザーを用いて合成され得る。「核酸(nucleic acid)」という用語は典型的には、大型のポリヌクレオチドをいう。「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」という用語は典型的には、短いポリヌクレオチド、一般には約50未満のヌクレオチドをいう。ヌクレオチド配列が、DNA配列(すなわち、A、T、G、C)によって提示される場合、これはまた、「U」が「T」と置き換わっているRNA配列(すなわち、A、U、G、C)を含むことが理解される。「組換えポリヌクレオチド(recombinant
polynucleotide)」とは、天然には一緒に連結されていない配列を有するポリヌクレオチドをいう。増幅されるかまたはアセンブルされた組換えポリヌクレオチドは、適切なベクターに含まれてもよく、そしてベクターを用いて、被験体の適切な宿主細胞を形質転換することができる。組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞(recombinant host cell)」と呼ばれる。次いで、遺伝子は、組換え宿主細胞中で発現されて、例えば、「組換えインターフェロンポリペプチド(recombinant interferon polypeptide)」を産生する。
【0020】
「コードする(encoding)」という用語は、生物学的プロセス中で他のポリマーおよび高分子の合成のためのテンプレートとして機能する遺伝子、cDNAまたはmRNAのようなポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特定の配列であって、ヌクレオチドの規定の配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)またはアミノ酸の規定の配列のいずれかを有する配列の固有の特性、ならびにそれから得られる生物学的特性をいう。従って、ある遺伝子によって生成されるmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的系において、このタンパク質を産生する場合、この遺伝子はこのタンパク質をコードする。mRNA配列に対してヌクレオチド配列が同一であり、配列表において一般に提供される、両方のコード鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のテンプレートとして用いられる、非コード鎖は、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードするということができる。他に特定しない限り、「インターフェロンのアミノ酸配列またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(nucleotide sequence encoding an interferon amino acid sequence or polypeptide)」とは、お互いの縮重バージョンであり、かつ同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を包含する。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含んでもよい。
【0021】
「発現調節配列(expression control sequence)」とは、ポリヌクレオチド中のヌクレオチド配列であって、それに作動可能に連結されたヌクレオチド配列の発現(転写および/または翻訳)を調節するヌクレオチド配列をいう。「作動可能に連結された(operatively linked)」とは、2つの部分の間の機能的関係であって、1部分の活性(例えば、転写を調節する能力)が他の部分(例えば、配列の転写)に対して作用を生じる関係をいう。発現調節配列としては、例えば、限定はしないが、プロモーター(例えば、誘導性プロモーターまたは構成的プロモーター)、エンハンサー、転写ターミネーター、開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンのスプライシングシグナルおよび終止コドンの配列を挙げることができる。
【0022】
発現ベクターは、発現のための十分なシス作用性エレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞発現系によって供給され得る。発現ベクターとしては、当該分野で公知のベクター、例えば、コスミド、プラスミド(例えば、裸のまたはリポソームに含まれるプラスミド)および組換えポリヌクレオチドを組み込むウイルスが挙げられる。
【0023】
1つの実施形態では、特定の発現調節配列を使用して、目的の組織により優先的に用いられるプロモーターおよび/または他の発現エレメントの使用によって、特定のタイプの組織中のインターフェロン遺伝子の選択的発現を得ることができる。公知の組織特異的プロモーターの例としては、筋肉および心臓組織におけるジストロフィンcDNA発現の発現を指向するように用いられている、クレアチンキナーゼのプロモーター(Cox et
al.,Nature,364:725−729(1993));B細胞における遺伝子の発現のための免疫グロブリン重鎖または軽鎖プロモーター;それぞれ肝臓系統の細胞およびヘパトーマ細胞の標的細胞に対するアルブミンまたはαフェトプロテインプロモーターが挙げられる。肝臓についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、HMG−CoAリダクターゼプロモーター(Luskey,Mol.Cell.Biol.,7(5):1881〜1893(1987));ステロール調節エレメント1(SRE−1;Smith et al.,J.Biol.Chem.,265(4):2306〜2310(1990);ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)プロモーター(Eisenberger et al.,Mol.Cell Biol.,12(3):1396〜1403(1992));ヒトC応答性タンパク質(CRP)プロモーター(Li et al.,J.Bio.Chem.,265(7):4136−4142(1990));ヒトグルコキナーゼプロモーター(Tanizawa et al.,Mol.Endocrinology,6(7):1070−81(1992);コレステロール7αヒドロキシラーゼ(CYP−7)プロモーター(Lee et al.,J.Biol.Chem.,269(20):14681−9(1994));βガラクトシダーゼα−2,6シアリルトランスフェラーゼプロモーター(Svensson et al.,J.Biol.Chem.265(34):20863−8(1990);インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP−1)プロモーター(Babajko et al.,Biochem Biophys.Res.Comm.,196(1):480−6(1993));アルドラーゼBプロモーター(Bringle et al.,Biochem J.,294(Pt2):473−9(1993));ヒトトランスフェリンプロモーター(Mendelzon et al.,Nucl.Acids Res.,18(19):5717〜21(1990);コラーゲンI型プロモーター(Houglum et al.,J.Clin.Invest.,94(2):808−14(1994))。前立腺の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)プロモーター(Banas et al.,Biochim.Biophys.Acta.1217(2):188−94(1994);94の前立腺分泌タンパク質(PSP 94)プロモーター(Nolet et al.,Biochim.Biophys.ACTA,1098(2):247―9(1991));前立腺特異的抗原複合体プロモーター(Casper et al.,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.,47(1−6):127−35(1993));ヒト腺性カリクレイン遺伝子プロモーター(hgt−1)(Lilja et al.,World J.Urology,11(4):188−91(1993)が挙げられる。胃組織の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないがヒトH+/K+−ATPaseαサブユニットプロモーター(Tanura et al.,FEBS Letters,298:(2−3):137−41(1992))が挙げられる。膵臓の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、膵炎関連タンパク質プロモーター(PAP)(Dusetti et al.,J.Biol.Chem.,268(19):14470−5(1993));エラスターゼ1転写エンハンサー(Kruse et al.,Genes and Development,7(5):774−86(1993));膵臓特異的アミラーゼおよびエラスターゼエンハンサープロモーター(Wu et al.,Mol.Cell.Biol.,11(9):4423−30(1991);Keller et al.,Genes & Dev.,4(8):1316−21(1990));膵臓コレステロールエステラーゼ遺伝子プロモーター(Fontaine et al.,Biochemistry,30(28):7008−14(1991))が挙げられる。子宮内膜の例示的組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、ウテログロビンプロモーター(Helftenbein et al.,Annal.NY Acad.Sci.,622:69−79(1991))が挙げられる。副腎細胞の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、コレステロール側鎖切断(SCC)プロモーター(Rice et al.,J.Biol.Chem.,265:11713−20(1990)が挙げられる。全身の神経系の例示的な組織特異的発現系としては、限定はしないが、γ−γエノラーゼ(ニューロン特異的エノラーゼ、NSE)プロモーター(Forss−Petter et al.,Neuron、5(2):187−97(1990))が挙げられる。脳の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、神経フィラメント重鎖(NF−H)プロモーター(Schwartz et al.,J.Biol.Chem.,269(18)13444−50(1994))が挙げられる。リンパ球の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、ヒトCGL−1/グランザイムBプロモーター(Hanson et al.,J.Biol.Chem.,266(36):24433−8(1991));末端デオキシトランスフェラーゼ(TdT)、λ5、VpreBおよびlck(リンパ球特異的チロシンプロテインキナーゼp56lck)プロモーター(Lo et al.,Mol.Cell.Biol.,11(10):5229−43(1991));ヒトCD2プロモーターおよびその3’転写エンハンサー(Lake et al.,EMBO J.,9(10):3129−36(1990))、ならびにヒトNK細胞およびT細胞特異的活性化(NKG5)プロモーター(Houchins et al.,Immunogenetics,37(2):102−7(1993))が挙げられる。結腸の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、pp60c−srcチロシンキナーゼプロモーター(Talamoni et al.,J.Clin.Invest,91(1):53−60(1993));器官特異的新生抗原(neoantigen)(OSN),mw40kDa(p40)プロモーター(Ilantzis et al.,Microbiol.Immunol.,37(2):119−28(1993));結腸特異的抗原Pプロモーター(Sharkey et al.,Cancer,73(3 supp.)864−77(1994))が挙げられる。乳房細胞の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、ヒトαラクトアルブミンプロモーター(Thean et al.,British J.Cancer.,61(5):773−5(1990))が挙げられる。
【0024】
「インターフェロン遺伝子(interferon gene)」という用語の使用は、インターフェロンの発現を指向する遺伝子を指す。
【0025】
本明細書において用いられる「遺伝子(gene)」という用語は、ポリペプチドをコードする核酸配列を指すものとする。この定義は、種々の配列多型性、変異および/または配列変異体であって、このような変更が遺伝子産物の機能に影響しないものを包含する。「遺伝子(gene)」という用語としては、コード配列だけではなく、プロモーター、エンハンサーおよび末端領域のような調節性領域を挙げることができる。この用語はさらに、選択的スプライシング部位から生じる変異体とともに、mRNA転写物からスプライシングされた全てのイントロンおよび他のDNA配列を包含し得る。ポリペプチドをコードする核酸配列は、特定のタンパク質またはペプチドの発現を指向する、DNAまたはRNAであってもよい。これらの核酸配列は、RNAに転写されるDNA鎖配列であっても、タンパク質に翻訳されるRNA配列であってもよい。これらの核酸配列としては、全長核酸配列、および全長タンパク質に由来する非全長配列の両方が挙げられる。この配列は、特定の宿主細胞においてコドン優先を提供するために導入され得るネイティブの配列(単数または複数)の縮重コドンを包含することがさらに理解される。
【0026】
1態様では、本発明は、上皮と送達増強因子(例えば、SYN3またはSYN3ホモログ)とを接触させることによって、上皮に対するタンパク質(例えば、インターフェロン)の送達を増強する組成物および方法を提供する。このタンパク質は、サイトカイン(例えば、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子)、転移抑制因子または腫瘍抑制タンパク質であってもよい。いくつかの実施形態では、このタンパク質は、任意の1つ以上のマクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−11(IL−11)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−13(IL−13)、インターロイキン−18(IL−18)、熱ショックタンパク質(HSP)、p53、および血管新生阻害因子(血管内皮細胞成長因子(VEGF)の血管形成作用に対向するタンパク質因子、転移抑制因子、例えば、メタロプロテイナーゼの組織インヒビター(TIMP)およびBCG活性を増大する因子である。
【0027】
いくつかの実施形態では、タンパク質療法のタンパク質は、抗体であり、この抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体またはFabフラグメントであってもよい。この抗体は、キメラまたはヒト化抗体であってもよい。これらの抗体としては、限定はしないが、サイトカインに対する抗体ならびにI型およびII型インターフェロン(例えば、抗インターフェロンα、抗インターフェロンβ、抗インターフェロンδ、抗インターフェロンγ)、ならびにインターロイキン(例えば、抗IL−1、抗IL−2、抗IL−4、抗Il−6、抗IL−7および抗IL−10)に対する抗体が挙げられる。本発明の状況では、抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、およびF(ab’)2)および組換え産生された結合パートナーを含むことが理解される。抗体は、Kaが10−7M以上である場合に、この標的に対して反応性であることが理解される。
【0028】
ポリクローナル抗体は、種々の温血動物から当業者によって容易に生成され得る。モノクローナル抗体はまた、従来の技術を用いて容易に生成され得る(例えば、米国特許第RE32,011号、同第4,902,614号;同第4,543,439号;および同第4,411,993号を参照のこと;またKennett,McKearnおよびBechtol(編)Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analysis,Plenum Press,(1980);ならびにHarlow and lane(編)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988))を参照のこと。好ましい抗体の調製はさらに、以下の実施例の節に記載される。
【0029】
本明細書において用いられるインターフェロンという用語は、インターフェロンポリペプチドの全てのクラスおよびサブクラス、ならびにその欠失、挿入または保存的アミノ酸置換を含む置換変異体、その生物学的に活性なポリペプチドフラグメント、ならびにその対立形質を含むこととする。種々の適切なインターフェロンポリペプチドは、当業者に公知である。いくつかの実施形態では、インターフェロンポリペプチドは、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロンおよびωインターフェロン(例えば、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロンおよびωインターフェロン)と通常命名されるインターフェロンおよびそれらの組み合わせを含む、I型またはII型のインターフェロンであり、αインターフェロンのコンセンサス配列を含む。いくつかの実施形態では、αインターフェロンは、α1またはα2−インターフェロンである。いくつかの実施形態では、この遺伝子はインターフェロンα−2bをコードする。
【0030】
いくつかの実施形態では、インターフェロンタンパク質(タンパク質として投与される場合、または遺伝子送達系によってコードされる)は、野生型インターフェロンポリペプチドである。他の実施形態では、インターフェロンは、野生型インターフェロンポリペプチドまたはその融合タンパク質に対して実質的に同一である。2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の状況では、「同一な(identical)」または「同一性(identity)」パーセントという用語は、最大対応について比較および整列された場合、同じであるか、または同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基の特定の割合を有する2つ以上の配列(単数または複数)をいう。2つの核酸またはポリペプチドの状況では、「実質的に同一な(substantially identical)」という用語は、Altschul et al.,J.Mol.Biol.,215:403−410(1990)に記載されるBLASTアルゴリズムを用いて測定される場合、最大対応について比較および整列されるときに、少なくとも70%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する2つ以上の配列(単数または複数)をいう。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて一般的に利用可能である。配列同一性のパーセントを算出することに加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列の間の類似性の統計的分析を行う(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,90:5873−5787(1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの指標は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸の配列の間のマッチが偶然生じる確率の指標となる最小合計確率(P(N))である。例えば、核酸は、参照核酸に対する試験核酸の比較における最小合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満である場合、この参照配列に類似であるとみなされる。
【0031】
他の実施形態では、インターフェロンポリペプチド(タンパク質として投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる場合)は実質的に、ネイティブポリペプチドの50アミノ酸、100アミノ酸、150アミノ酸または全長のストレッチにわたって、ネイティブまたは野生型ポリペプチドの配列に対して同一である。いくつかの実施形態では、インターフェロンポリペプチド(投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる)は、ネイティブポリペプチドの50アミノ酸、100アミノ酸または全長のストレッチにわたって、野生型インターフェロンポリペプチドの配列に対して99%、98%、95%または90%同一である。いくつかの実施形態では、インターフェロンポリペプチド(タンパク質として投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる)は、ネイティブポリペプチドの50アミノ酸、100アミノ酸または全長のストレッチにわたって、ヒト野生型αインターフェロンポリペプチドの配列に対して実質的に同一である。いくつかの実施形態では、遺伝子送達系によってコードされるインターフェロンポリペプチド(タンパク質として投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる)は、ネイティブポリペプチドの50アミノ酸、100アミノ酸、150アミノ酸または全長のストレッチにわたって、ヒト野生型ポリペプチドの配列に対して99%、98%、95%または90%同一である。
【0032】
いくつかの実施形態では、インターフェロン(タンパク質として投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる)は、ハイブリッドインターフェロンである。種々のインターフェロンサブタイプ配列の組み合わせを含むハイブリッドαインターフェロン遺伝子の構築物(例えば、αおよびΔ、αおよびβ、ならびにαおよびF)は、米国特許第4,414,150号、同第4,456,748号および同第4,678,751号に開示される。米国特許第4,695,623号、同第4,897,471号および同第5,831,062号は、天然に存在するαインターフェロンサブタイプポリペプチドの間で各々の位置で見られる共通のまたは優勢なアミノ酸を含むアミノ酸配列を有し、そしてコンセンサスヒト白血球インターフェロンと呼ばれる、新規なヒト白血球インターフェロンポリペプチドを開示する。本発明の1つの実施形態では、ハイブリッドインターフェロンはインターフェロンα2 α1である。
【0033】
いくつかの実施形態では、インターフェロン(タンパク質として投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる)は、インターフェロンαである。組換えインターフェロンαは、例えば、E.coli中でクローニングされて発現されている(例えば、Weissmann et al.,Science,209:1343−1349(1980);Sreuli et al.,Science,209:1343−1347(1980);Goeddel et al.,Nature,290:20−26(1981);Henco et al.,J.Mol.Biol.,185:227−260(1985))。このような実施形態のいくつかでは、インターフェロンはヒトインターフェロンαである。いくつかの実施形態では、インターフェロンαは、インターフェロンα2aまたは2bである(例えば、WO91/18927を参照のこと)。いくつかの実施形態では、タンパク質は、抗癌性、抗感染性または免疫系調節生物活性を有するインターフェロンである。いくつかの実施形態では、投与されたインターフェロンタンパク質は、半合成のタンパク質ポリマー結合体(例えば、PEG化されたインターフェロン)である。いくつかの例示的な実施形態では、インターフェロンはI型インターフェロンα(IFN−α)であり、抗感染性および抗腫瘍活性を有するか、またはPEG化IFNα2bである。12,000Daのモノメトキシポキエチレングリコール(PEG−12000)ポリマーが結合され得る。PEG結合体化は、血清半減期を拡大増大させて、それによって患者に対する生物学的能力変更することなくIFN−α2bに対する患者の曝露を長くすると考えられる。
【0034】
「ポリペプチド(polypeptide)」という用語は、アミノ酸残基からなるポリマー、関連する天然に存在する構造変異体、およびペプチド結合を介して連結されたその合成の天然に存在しないアナログ、関連の天然に存在する構造的変異体、およびその合成の天然に存在しないアナログをいう。合成ポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチドシンセサイザーを用いて合成され得る。「タンパク質(protein)」という用語は典型的には、大きいポリペプチドをいう。「ペプチド(peptide)」という用語は典型的には、短いポリペプチドをいう。「同類置換(conservative substitution)」とは、ポリペプチドにおける機能的または構造的に類似のアミノ酸でのアミノ酸の置換をいう。以下の6つの群の各々は、お互いについて同類置換である、アミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0035】
本明細書において用いる場合、「生物学的に活性(biologically active)」という用語は、当該分野で周知の技術によって測定した場合、任意の抗ウイルスまたは抗増殖性または抗癌活性をいう(例えば、Openakker et al.,前出;Mossman,J.Immunol.Methods,65:55(1983)を参照のこと)。
【0036】
「対立形質(allelic form)」とは、同じ遺伝子座を占有するポリペプチドの任意の2つ以上の多型をいう。対立形質の変異体は、変異を通じて天然に生じ、そして集団内の表現型多型性を生じ得る。遺伝子突然変異は、サイレント(コードされたポリペプチドの変化はない)であってもよく、または変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしてもよい。「対立形質(allelic forms)」はまた、遺伝的な対立遺伝子変異体のmRNA転写物に由来するcDNAポリペプチドをいう。いくつかの実施形態では、インターフェロンは対立形質である。
【0037】
本明細書において用いる場合、「アルキル(alkyl)」という用語は、分枝した炭化水素、未分枝の炭化水素、もしくは環状の炭化水素、またはそれらの組み合わせを意味し、これは、完全に飽和されても、単価または多価不飽和であってもよく、そして指定される多数の炭素原子を有する、二価置換および多価置換を包含してもよい(すなわち、C1−C10は1〜10個の炭素を意味する)飽和された炭化水素置換基の例としては、限定はしないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、オクタ−デシル、2−メチルペンチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロペンチルメチルのような基が挙げられる。この置換基は、アルキル置換基、例えば、カルボキシメチル、トリフルオロメチル、3−ヒドロキシヘキシル、2−カルボキシプロピルなどを形成するために、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、またはチオ、シアノ、アルキルチオ、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、ニトロ、アミノ、アルコキシル、アミドなどのような鎖に対して通常結合される1つ以上の官能基で作動可能に置換されてもよい。不飽和アルキル置換基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有する置換基である。不飽和アルキル基の例としては、限定はしないが、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、ならびにそれ以上のホモログおよび異性体が挙げられる。置換基は、飽和炭化水素について記載されたような鎖に対して一般的に結合される、1つ以上の官能基で置換されてもよい。
【0038】
「アリール(aryl)」という用語は、多価不飽和、典型的には芳香族の炭化水素置換基を意味し、この基は、一緒に縮合されるかまたは共有結合される単環または多環(3環まで)であってもよい。
【0039】
「ヘテロアリール(heteroaryl)」という用語は、N、OおよびSから選択される0〜4個のヘテロ原子を含むアリール基(または環)をいい、ここで窒素原子およびイオウ原子は任意選択的に酸化され、窒素原子(単数または複数)は任意選択的に四級化される。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を通じて分子の残りに対して結合され得る。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリルおよび6−キノリルが挙げられる。上記のアリールおよびヘテロアリール環系は、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、チオ、シアノ、アルキルチオ、カルボキシル、ニトロ、アミノ、アルコキシルまたはアミドのような環系に通常結合される、1つ以上の官能基でさらに置換されてもよい。
【0040】
用語「アシル(acyl)」は、−C(O)R−置換基を指し、ここでRは、上記のようなアルキルまたはアリール、例えば、限定はしないが、ベンゾイル、スクシニル、アセチル、プロピオニルまたはブチリルである。
【0041】
「ヒドロキシル(hydroxyl)」という用語は、置換基−OH−を意味する。
【0042】
「アルコキシ(alkoxy)」という用語は、置換基−OR−を意味し、ここでRはアルキルである。
【0043】
「アミノ(amino)」という用語は、アミノ連結(−NRR’)を意味し、ここでRおよびR’は独立して水素置換基、アルキル置換基、またはアリール置換基である。
【0044】
「カルボキシレート(carboxylate)」という用語は、置換基−OC(O)R−を意味し、ここでRは任意選択的に置換されたアルキルまたはアリールである。
【0045】
「アシルオキシ(acyloxy)」という用語は、置換基−(CRR’)mC(O)OR’’−を意味し、ここでRおよびR’は独立してアルキル置換基、アリール置換基または水素置換基からなる群より選択され、そしてR’’は、水素またはアルキル置換基であり、そしてmは1〜8の間の包括的な整数である。
【0046】
「ハロゲン(halogen)」または「ハロ(halo)」という用語は、置換基F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0047】
「糖残基(saccharide residue)」という用語は、ホモオリゴ糖置換基(1タイプの単糖類を含むオリゴ糖類)または異種オリゴ糖類置換基(1つより多くのタイプの単糖類を含むオリゴ糖類)として連結された2つ以上の単糖置換基を含み得る単糖置換基を指す。好ましい実施形態では、同種および異種のオリゴ糖置換基は、2〜10個の単糖単位から構成される。単糖類は、五炭糖または六炭糖の残基を含み得、そして残基は、環化型または非環化(開放鎖)型として存在し得る。単糖類が開放鎖型である場合、カルボニル炭素の酸素原子は、−RR’−で置換されてもよく、ここでRおよびR’は独立してアルキル置換基、ハロゲン置換基、ヒドロキシル置換基、水素置換基、アミノ置換基またはアルコキシ置換基の群から選択される。好ましいオリゴ糖類としては、五炭糖−五炭糖の二糖類基、六炭糖−六炭糖の二糖類基、五炭糖−六炭糖の二糖類基、および六炭糖五炭糖の二糖類基が挙げられる。単糖類は、リボース、アラビノース、キシロースおよびリキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グルコース、イドース、ガラクトースまたはタロースの群から選択されてもよく、それによって単糖類上の1つ以上のヒドロキシル基は、水素、アルキル置換基、アルコキシ置換基、アミノ置換基またはアシル置換基で置換されてもよい。
【0048】
膀胱上皮または「尿路上皮(urothelium)」は、膀胱内面の内側を覆い、従ってその内容物に近位である。尿路上皮はまた、腎盂、尿管および膀胱の内面の内側を覆い、そして尿の保持を可能にする緻密な障壁を形成し、一方でイオン、溶質および毒性代謝物の上皮障壁を横切る調節不可能な移動を妨げる。この透過性障壁は、器官自体を満たして空にする時の圧力において周期的変化を受けている場合でさえ正常に維持されなければならない。ほとんどの膀胱癌がこの上皮の細胞に由来する。尿道、尿管および腎盂はまた、この移行上皮によって内側を覆われるので、膀胱にみられる同じタイプの癌はまた、これらの部位でも生じ得る。いくつかの実施形態では、この方法および組成物は、尿道、尿管および腎盂におけるこれらの部位でこのような癌を治療するために用いられ得る。
【0049】
この遺伝子送達系は一般に、真核生物細胞におけるインターフェロン遺伝子の発現を指向し得る真核生物発現ベクターの形態で提供される。真核生物発現ベクターの例としては、ウイルスおよび非ウイルスベクターが挙げられる。「真核生物発現ベクター(eucaryotic expression vector)」という用語は、インターフェロン発現カセットを含む従来の組換えDNA技術によって調製されるウイルスおよび非ウイルスベクターをいう。本明細書において用いる場合、「発現カセット(expression cassette)」という用語を用いて、形質導入された哺乳動物細胞におけるインターフェロン配列の転写および翻訳を生じるために、インターフェロンコード配列に作動可能に連結される発現調節エレメントを含む、インターフェロンコード配列の転写および翻訳を指向し得るヌクレオチド配列を規定する。形質導入された細胞においてヌクレオチド配列の発現を達成するために有効な種々のウイルスおよび非ウイルス送達ベクターは当該分野で公知である。例えば、Boulikas,T Gene Therapy and Molecular Biology,Volume 1(Boulikas,T.編)1998Gene Therapy Press,Palo Alto,CA 1−172頁を参照のこと。
【0050】
標的細胞に対してインターフェロン遺伝子を誘導するために用いられる非ウイルス送達系の例としては、インターフェロンの発現を指向し得る発現プラスミドが挙げられる。発現プラスミドは、標的細胞においてDNA配列の発現を達成し得る非選択的条件下で細胞生存について正常なゲノムとは異なりかつ必須のものではない、自己複製を行う染色体外の細胞性DNA分子である。発現プラスミドはまた、プロモーター、エンハンサーまたは治療遺伝子の発現および/または分泌を補助する他の配列を含んでもよく、また発現ベクター中に含まれてもよい。さらなる遺伝子、例えば、薬物耐性をコードする遺伝子が、組換えベクターの存在についての選択またはスクリーニングを可能にするために含まれてもよい。このようなさらなる遺伝子としては、例えば、ネオマイシン耐性、多剤耐性、チミジンキナーゼ、βガラクトシダーゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を挙げることができる。
【0051】
インターフェロン遺伝子を含む発現プラスミドは、リポソーム中に包含されてもよい。リポソームは、エマルジョン、泡状物、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散剤、層状相などを含む。リポソームキャリアを用いる細胞への核酸の送達は当該分野で周知である。例えばSzoka et al.,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980),Szoka,et al.,1983年7月19日発行、米国特許第4,394,448号、ならびに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号および同第5,019,369号に記載されるような種々の方法が、リポソームを調製するために利用可能である。本発明の実施において有用なリポソームは、天然および負に荷電されたリン脂質およびコレステロールのようなステロールを一般に含む1つ以上の標準的な小胞形成脂質から形成され得る。このような脂質形成小胞の例としては、米国特許第5,650,096号に開示されるようなDC−chol、DOGS、DOTMA、DOPE、DOSPA、DMRIE、DOPC、DOTAP、DORIE、DMRIE−HP、n−スペルミジンコレステロールカルバメートおよび他の陽イオン性脂質が挙げられる。脂質の選択は一般に、例えば、血流中のリポソームのサイズ、酸不安定性およびリポソームの安定性を検討することによって導かれる。1991年5月7日発行の米国特許第5,013,556号および1993年5月25日発行の同第5,213,804号に記載されるような、ポリエチレングリコールコーティング(いわゆる「PEG化(PEG−ylation)」)などの血清半減期を拡大するためのさらなる成分もリポソーム処方物に加えられてもよい。
【0052】
特定の細胞に対する非ウイルスインターフェロン遺伝子送達系の直接送達を行うため、細胞標的化を容易にする非ウイルス送達系へエレメントを組み込むことが有利であり得る。例えば、脂質カプセル化発現プラスミドは、標的化を容易にするために改変された細胞表面レセプターリガンドを組み込んでもよい。単純なリポソーム処方物が投与され得るが、本発明の本発明の所望の組成物を充填されるかまたはそれを修飾されたリポソームは、全身的に送達され得るか、または目的の組織に指向されてもよく、ここで次にこのリポソームは選択された治療/免疫原性ペプチド組成物を送達する。このようなリガンドの例としては、抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体またはそれらの機能的フラグメント(Fv、Fab、Fab’)が挙げられる。あるいは、本発明のDNA構築物は、1992年11月24日発行、Wu et al.,米国特許第5,166,320号、および1997年6月3日発行、Wu et al.,米国特許第5,635,383号に記載のような標的化部分に対してポリリシン部分を通じて連結され得る。
【0053】
本明細書に例示されるような本発明の1つの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。ウイルス(単数または複数)およびウイルスベクター(単数または複数)という用語は、本明細書においては互換可能に用いられる。本発明の実施において有用なウイルスとしては、好ましくはバキュロウイルス科、パルボウイルス科、ピコルノウイルス科(picornoviridiae)、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、アデノウイルス科またはピコルナウイルス科(picornnaviridiae)から選択された、組換え可能に改変されたエンベロープまたは非エンベロープのDNAおよびRNAウイルスが挙げられる。ウイルスゲノムはインターフェロンの発現を提供する従来の組換えDNA技術によって改変されてもよく、複製欠損、条件的複製または複製コンピテントになるように操作されてもよい。親のベクターの特性の各々の有利なエレメントを開発するキメラウイルスベクター(例えば、Feng,et al.,(1997)Nature Biotechnology 15:866−870を参照のこと)はまた、本発明の実施において有用であり得る。ウイルス骨格がウイルスベクターのパッケージングに必要な配列のみを含み、そして任意選択的にインターフェロン発現カセットを含んでもよい最小ベクター系がまた、本発明の実施において使用され得る。ある場合には、既存の免疫応答の回避のような好ましい病原性の特徴を保有する、投与されるべき種とは異なる種に由来するベクターを使用することが有利であり得る。例えば、ヒト遺伝子治療のためのウマヘルペスウイルスベクターは、1998年8月5日公開WO98/27216に記載されている。このベクターは、ヒトでの治療に有効であることが記載されている。なぜなら、このウマウイルスはヒトに毒性ではないからである。同様に、ヒツジアデノウイルスベクターは、ヒト遺伝子治療に用いられ得る。なぜならそれらは、ヒトアデノウイルスベクターに対する抗体を回避することが請求されているからである。このようなベクターは、1997年4月10日公開WO97/06826に記載されている。
【0054】
多くのウイルスが、広範囲の細胞型に影響する能力を示す。しかし、いくつかの適用では、細胞の特定の小集団にのみ影響することが望ましくあり得る。結果として、種々の技術によって、選択的または「標的とされた(targeted)」ベクターが、特定の細胞タイプの成熟ウイルス粒子の優先的な感染性を生じることを容易にするように開発した。細胞タイプ特異性または細胞タイプ標的化はまた、特徴的な広範な感染性を有するウイルス、例えばアデノウイルスに由来するベクターにおいて、ウイルスエンベロープタンパク質の改変によって達成され得る。例えば、細胞標的化は、固有の細胞表面レセプターとの特異的相互作用を有する改変ノブおよびファイバードメインの発現を達成するために、ウイルスゲノムのノブおよびファイバーコード配列の選択的改変によって、アデノウイルスベクターで達成されている。このような改変の例は、Wickham,et al.,(1997)J.Virol.71(11):8221−9229(アデノウイルスファイバータンパク質へのRGDペプチドの組み込み);Arnberg,et al.,(1997)Virology 227:239−244(眼および生殖器官に対する向性を達成するためのアデノウイルスファイバー遺伝子の改変);Harris and Lemonine(1996)TIG 12(10):400−405;Stevenson,et al.,(1997)J.Virol.71(6):4782−4790;Michael,et al.,(1995)gene therapy 2:660−668(アデノウイルスファイバータンパク質へのガストリン放出ペプチドフラグメントの組み込み);およびOhno,et al.,(1997)Nature Biotechnology 15:763−767(SindbisウイルスへのプロテインA−IgG結合ドメインの組み込み)に記載されている。細胞特異的標的化の他の方法は、エンベロープタンパク質への抗体または抗体フラグメントの結合体化によって達成されている(例えば、Michael,et al.,(1993)J.Biol.Chem.268:6866−6869,Watkins,et al.,(1997)Gene Therapy 4:1004−1012;Douglas,et al.,(1996)Nature Biotechnology 14:1574−1578を参照のこと。このような標的化改変の1つ以上を包含するウイルスベクターを任意選択的に、本発明の実施において使用して、選択的な感染および肺組織、特に肺の上皮組織中でのインターフェロンの発現を増強し得る。
【0055】
本明細書に例示されるような本発明の1つの実施形態では、ベクターはアデノウイルスベクターである。アデノウイルスベクターという用語は総称的に、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、マウスおよびサルのアデノウイルス亜属を含むがこれらに限定されないマストアデノウイルス属の動物アデノウイルスを指す。詳細には、ヒトアデノウイルスとしては、A−Fの亜属、ならびにその個々の血清型、個々の血清型およびA−Fの亜属が挙げられ、限定はしないが、これらには、ヒトアデノウイルス型1、2、3、4、4a、5、6、7、8、9、10、11(Ad11AおよびAd11P)、12、13、14、15、16、17、18、19、19a、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、34a、35、35p、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、および91が挙げられる。ウシアデノウイルスという用語は、限定はしないが、ウシアデノウイルス1型、2型、3型、4型、7型および10型を包含する。イヌアデノウイルスという用語は、限定はしないが、イヌ1型(株CLL、Glaxo、RI261、Utrect、Tronto26−61)および2を包含する。ウマアデノウイルスという用語は、限定はしないが、ウマ1型および2型を包含する。ブタアデノウイルスという用語は、限定はしないがブタ3型および4型を包含する。内因性導入遺伝子の送達のためのアデノウイルスベクターの使用は当該分野で周知である。例えば、Zhang,W−W.(1999)Cancer Gene Therapy 6:113−138を参照のこと。1つの実施形態では、インターフェロン配列の発現のためのアデノウイルスベクターは、任意選択的に第IXプロテインの機能を欠失している、標的組織において実質的に複製不能なウイルスを生じる、アデノウイルスE1遺伝子の排除によって作製された血清型2または5の複製欠損ヒトアデノウイルスである。好ましい組換えウイルスベクターは、第IXプロテイン遺伝子が欠失しているアデノウイルスベクター送達系である。本発明と同じ譲受人に譲渡され、全ての目的のためにその全体が参考として本明細書に援用される、米国特許第6,210,939号に開示されるこのようなシステムを参照のこと。
【0056】
好ましいベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレトロウイルスのゲノムに由来する。本発明の最も好ましい実施では、このベクターは、ヒトアデノウイルスゲノム由来である。好ましいベクターは、ヒトアデノウイルス血清型2または5に由来する。このようなベクターの複製能力は、E1aおよび/またはE1bコード領域における改変または欠失によって(「複製欠損(replication deficient)」とみなされるポイントまで)減弱され得る。特定の発現特徴を達成するか、または反復投与を可能にするか、または免疫応答を低下させるためのウイルスゲノムへの他の改変が好ましい。
【0057】
あるいは、ウイルスベクターは、条件的に複製されても、または複製コンピテントであってもよい。条件的に複製するウイルスベクターを用いて、望ましくない広範なスペクトルの感染を回避しながら、特定の細胞タイプにおいて選択的な発現を達成する。ウイルスゲノムは、特定の条件下でのみ複製または発現を達成する誘導性プロモーターを含むように改変されてもよい。誘導性プロモーターの例は、当該分野で公知である(例えば、YoshidaおよびHamada(1997)Biochem.Biophys.Res.Comm.230:426−430;Iida,et al.,(1996)J.Virol.70(9):6054−6059;Hwang,et al.,(1997)J.Virol. 71(9):7128−7131;Lee,et al.,(1997)Mol.Cell.Biol.17(9):5097−5105;およびDreher,et al.,(1997)J.Biol.Chem.272(46);29364−29371を参照のこと。ウイルスはまた、Ramachandra,et al.,PCT国際特許公開番号WO00/22137、2000年4月20日に公開された国際出願番号PCT/US99/21452、およびHowe,J.PCT国際公開番号WO WO0022136、2000年4月20日公開、国際出願番号PCT/US99/21451記載されるウイルスのような選択的に複製するウイルスとなるように設計されてもよい。このウイルスはまた、特定の細胞タイプにおける複製について減弱されるように改変されてもよい。例えば、E1b55K遺伝子に特異的な欠失があるアデノウイルスdl1520(BarkerおよびBerk(1987)Virology 156:107)は、ヒトでの治療効果を伴って用いられている。このようなベクターはまた、McCormick(1997年10月14日発行、米国特許第5,677,178号)および1998年12月8日発行McCormickの米国特許第5,846,945号に記載されている。
【0058】
本発明のベクターは、IRESエレメントの使用を通じてタンデムで、または独立調節性プロモーターを通じて、インターフェロン遺伝子に対するさらなる導入遺伝子をコードするように改変され得る。
【0059】
本発明は、標的組織または器官の上皮に対するタンパク質または核酸の送達を、このタンパク質(例えば、インターフェロン)または核酸とともに処方された場合に増強する送達増強化合物を提供する。「送達増強化合物(delivery−enhancing compound)」または「送達増強因子(delivery−enhancing agent)」としては、膀胱内投与の際、上皮または尿路上皮に対してタンパク質または核酸の送達を強化する任意の化合物が挙げられる。タンパク質に関して、増強された送達は、標的組織または器官の上皮の細胞に接触するタンパク質の量の増大か、または上皮(例えば、尿路上皮)の細胞に入るタンパク質の量の増大のいずれかまたは両方によって確認され得る。特定の化合物がタンパク質の送達の増強に有効であるか否かの決定は、当業者によって容易に確認され得る。尿路上皮によるタンパク質の保持は、任意の手段、例えば、ELISA、蛍光標識の検出、遺伝子発現を含む細胞活性の調節によって測定され得る。
【0060】
遺伝子送達系に関して、本発明は、標的細胞、組織または器官に対するインターフェロン遺伝子の送達を増強する送達増強化合物を提供する。増強された送達は、各々の細胞に入るインターフェロン遺伝子もしくは遺伝子送達系のコピー数の増大によって、または例えば、インターフェロンもしくはインターフェロン遺伝子送達系を取り込む、組織もしくは器官中の細胞の割合の増大によって、そのいずれかまたはその両方で確認され得る。送達増強化合物と組み合わせた、組織または器官へのインターフェロン遺伝子送達系の投与によって、細胞内に送達され発現されるインターフェロン遺伝子の量における増大が、送達増強化合物の非存在下で投与された場合にこの細胞に送達されて発現される遺伝子の量に対応して生じる。特定の化合物が核酸送達系の送達を増強するのに有効であるか否かを決定することは当業者に公知の方法による。翻訳およびタンパク質発現を評価するために、βガラクトシダーゼまたは緑色蛍光タンパク質のようなレポーター遺伝子を、核酸送達系に組み込んで、増強された遺伝子発現のレベルを評価するために容易にアッセイ可能なシグナルを生成することができる。転写および複製を評価するために、DNAのコピーの存在をPCR分析によって評価してもよい。
【0061】
特定の送達増強化合物は、不斉の炭素原子(光学的中心)または二重結合を保有し得る;ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体は全て、本発明の範囲内に包含されるものとする。例えば、対のエナンチオマーの単独のジアステレオマーは、適切な溶媒、例えば、メタノールもしくは酢酸エチルまたはそれらの混合物からの分別晶出によって得ることができる。このようにして得られたエナンチオマーの対は、従来の手段によって、例えば、分割剤のような光学活性な酸の使用によって、個々の立体異性体に分離され得る。あるいは、本発明の化合物の任意のエナンチオマーは、光学的に純粋な出発物質または立体配置が公知の試薬を用いて立体特異的合成によって得ることができる。
【0062】
送達増強化合物は、互変異性体とも呼ばれる水素結合の種々のポイントが存在し得る。このような例は、ケトンおよびケト−エノール互変異性体として公知のそのエノール型であってもよい。個々の互変異性体およびその混合物は、本発明の処方物によって包含される。
【0063】
送達増強化合物は、その原子の1つ以上で原子同位体の天然ではない比を有してもよい。例えば、化合物は、トリチウムまたは炭素−14のような同位体で放射性標識されてもよい。本発明の化合物の全ての同位体バリエーションは、放射性であるか否かにかかわらず、本発明の範囲内である。「基(group)」または「部分(moiety)」が化合物の別の部分に結合される化合物処方において記載される場合、この「基」または「部分」に相当するラジカルであって、H原子が除去されて形成されているラジカルが意味されることが理解されるべきである。この送達増強化合物は、薬学的に受容可能な酸付加塩、例えば、無機および有機の酸の使用に由来する塩の形態で単離されてもよい。このような酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸などを挙げることができる。さらに、酸の機能を有する特定の化合物は、対イオンがナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムなどから、そして有機塩基から選択され得るその無機塩の形態であってもよい。「薬学的に受容可能な塩(pharmaceutically acceptable salts)」という用語は、無機の塩基または酸および有機の塩基または酸を含む薬学的に受容可能な無毒性の塩基または酸から調製される塩をいう。
【0064】
例示的な送達増強化合物は、各々が本出願と同じ譲受人に譲渡され、その全体が参考として援用されている、米国特許第6,165,779号、および1997年7月8日出願、米国特許出願第08/889,355号および2000年8月28日出願、米国特許出願第09/650,359号において教示されている。このような化合物としては、限定はしないが、崩壊剤、アルコール、グリコール、サーファクタント、胆汁塩、ヘパリンアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼインヒビター、高張性塩溶液および酢酸塩が挙げられる。アルコールとしては、例えば、脂肪族アルコール、例えばエタノール、N−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、アセチルアルコールが挙げられる。グリコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよび他の低分子量グリコール、例えば、グリセロールおよびトリグリセロールが挙げられる。アセテート、例えば、酢酸、グルコン酸および酢酸ナトリウムは、送達増強化合物のさらなる例である。高張性塩溶液、例えば1M NaClも、送達増強化合物の例である。サーファクタントの例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびリゾレシチン、ポリソルベート80、ノニルフェノキシ−ポリオキシエチレン、リゾホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80、ポリオキシエチレンエタノール、ポリグリコールエーテルサーファクタントおよびDMSOが挙げられる。胆汁酸塩、例えば、タウロコール酸塩、タウロデオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸および硝酸銀などの他の収斂剤も、硫酸プロタミンのような四級アミンなどのヘパリンアンタゴニストが用いられ得るように、用いられてもよい。シクロオキシゲナーゼインヒビター、例えば、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸および非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)例えば、ヨードメタシン、ナプロキセンおよびジクロフェナクもまた適切である。
【0065】
送達増強化合物として機能し得る界面活性剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられる。例示的な界面活性剤としては、限定はしないが、タウロコール酸塩、デオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、セチルピリジウム(cetylpyridium)、塩化ベルコニウム(benalkonium chloride)、ZWITTERGENT(登録商標)3−14界面活性剤、CHAPS(3−[(3−クロラムイミドプロピル)ジメチルアンモニオール]−1−プロパンスルホネート、ヒドレート、Aldrich)、Big CHAP、Deoxy Big CHAP、TRITON(登録商標)−X−100界面活性剤、C12E8、オクチル−B−D−グルコピラノシド、PLURONIC(登録商標)―F68界面活性剤、TWEEN(登録商標)20界面活性剤およびTWEEN(登録商標)80界面活性剤(CALBIOCHEM(登録商標)Biochemicals)が挙げられる。
【0066】
好ましい送達増強化合物の1つの例は、例えば、コール酸塩誘導体であるBig CHAPである(例えば、Helenius et al.,(1979)「Properties of Detergents」In:Methods in Enzymology,第66巻734−749を参照のこと。特に好ましい送達増強化合物は、式I、II、IIIおよびVIおよびVIIの化合物ならびにその薬学的に受容可能な塩である。
【0067】
さらなる実施形態では、本発明は、インターフェロンおよび式I:
【0068】
【化5】
を有する少なくとも1つの送達増強化合物を含む組成物を提供し、ここでX1がそしてX2が
【0069】
【化6】
からなる群より選択され、そしてX3は、糖類基であり、ここで糖類基は、五炭糖単糖類基、六炭糖単糖類基、五炭糖−五炭糖二糖類基、六炭糖−六炭糖の二糖類基、五炭糖−六炭糖の二糖類基、および六炭糖−五炭糖の二糖類基からなる群より選択され得る。他の糖類基としては、ホモオリゴ糖類またはヘテロオリゴ糖類のいずれかに連結された1つより多くの単糖類を挙げることができる。好ましい単糖類としては、五炭糖および/または六炭糖の残基が挙げられる。例えば、糖類基は、五炭糖の単糖類基、六炭糖の単糖類基、五炭糖−五炭糖二糖類基、六炭糖−六炭糖の二糖類基、五炭糖−六炭糖の二糖類基、および六炭糖−五炭糖の二糖類基からなる群より選択され得る。X3の好ましい糖類基の1つの例はラクトースである。
【0070】
いくつかの実施形態では、式Iの送達増強化合物は、3つ以上の糖類基から構成されるX3糖類基を有する。好ましくは、糖類基は1〜8個の単糖類、より好ましくは1〜4個の単糖類、そして最も好ましくはおよそ2〜3個の単糖類を有する。三糖類の使用によって、例えば、溶解度を高める化合物を得ることができる。
【0071】
さらなる実施形態では、X1およびX2は両方とも
【0072】
【化7】
であり、そしてX3はグルコース基である。
【0073】
本発明による使用のための例示的送達増強剤としては、式II:
【0074】
【化8】
の化合物が挙げられ、ここでR1およびR2が個々に独立して、水素およびヒドロキシル基からなる群より選択されるメンバーであり;mおよびnが個々に独立して、約0〜2から選択され;R3が、−NR4R5からなる群より選択され、ここでR4およびR5は個々に独立して、水素、糖残基、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアシル、および任意選択的に置換されたアシルオキシ、および四級アンモニウム塩−NR6R7R8Xからなる群より選択されるメンバーであり、ここでR6、R7およびR8が独立して、水素およびC1−C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり、そしてXが薬学的に受容可能な対イオンからなる群より選択される負に荷電されたイオン結合された対イオンである。いくつかの実施形態では、対イオンは水素または任意選択的に置換されたカルボキシレートである。
【0075】
1つの実施形態では、式IIの例示的化合物は、両方がヒドロキシル基であるR1およびR2を有する。別の実施形態では、式IIの化合物は、mおよびnが各々1である化合物である。別の実施形態では、式IIの化合物は、R4が水素である化合物である;そしてR5は、水素、糖残基、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアシル、および任意選択的に置換されたアシルオキシからなる群より選択されるメンバーである。
【0076】
1つの実施形態では、送達増強化合物は式VI:
【0077】
【化9】
を有する。
【0078】
別の実施形態では、送達増強化合物は、式VII(SYN3):
【0079】
【化10】
を有する。
【0080】
別の実施形態では、R4またはR5の少なくとも1つがスクシニルまたはアセチルである。別の実施形態では、R3がトリメチルアンモニウム塩である。
【0081】
別の実施形態では、R4およびR5は個々に独立して、水素、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアシル、および任意選択的に置換されたアシルオキシ、および四級アンモニウム塩−NR6R7R8Xからなる群より選択されるメンバーであり、ここでR6、R7およびR8が独立して、水素およびC1−C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり、そしてXが薬学的に受容可能な対イオンからなる群より選択される負に荷電されたイオン結合された対イオンである。
【0082】
この方法および組成物における使用のための好ましい送達増強化合物の1つの例は、式VIIを有するSYN3である。SYN3およびそのホモログを作製する方法は、本出願と同じ譲受人に譲渡され、その全体が参考として援用される、米国特許第6,392,069号に教示される。
【0083】
いくつかの出願については、他の化合物に比較して水溶性の増大および/または送達増強活性を示す、本発明の方法および組成物における送達増強化合物を用いることが望ましい。例示的な送達増強化合物は、Rが陽イオン性基である式Iの化合物である。適切な陽イオン性基としては、例えば、テトラメチルおよびアンモニウム部分、ならびにその塩が挙げられる。
【0084】
別の態様では、本発明は、タンパク質および送達増強因子を含む、膀胱へのタンパク質の膀胱内投与のための薬学的組成物を提供する。ある実施形態では、送達増強因子は、SYN3またはSYN3ホモログを含む。ある実施形態では、送達増強因子は、SYN3またはSYN3ホモログである。ある実施形態では、送達増強因子はSYN3であり、タンパク質はインターフェロンである。ある実施形態では、この組成物は、インターフェロンおよびSYN3(例えば、インターフェロン、約0.1〜10mg/ml SYN3,SYN3溶解因子(例えば、Big CHAPまたはヒドロキシルプロピルβシロデキストリン(HPβCG)またはTRITONTM−X−100界面活性剤/オクチルフェノキシポリエトキシエタノールを含むサーファクタント)緩衝液および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。ある実施形態では、インターフェロンは、α−インターフェロン、β−インターフェロン、γ−インターフェロンまたはω−インターフェロンまたはそれらの融合物である。1つの実施形態では、処方物中のSYN3の量は、1〜10mg/mlである。この組成物は使用前に適切な医薬用キャリアで希釈するように凍結乾燥されてもよい。
【0085】
ある実施形態では、本発明はまた、このタンパク質および送達増強化合物を含む薬学的組成物を提供する。処方物中のこの送達増強化合物の濃度は、多数の要因、例えば、用いられている特定のタンパク質および送達増強化合物、緩衝液、pHならびに投与プロトコールに依存する。送達増強化合物の濃度は、タンパク質およびその溶解度に実質的に依存し得る。高濃度で有用な因子については、この濃度はしばしば、1%〜50%(v/v)、好ましくは10%〜40%(v/v)、そして最も好ましくは15%〜30%(v/v)の範囲である。低濃度で有効な送達増強因子については、本発明の特定の送達増強化合物は好ましくは、約0.002〜2mg/ml、より好ましくは約0.02〜2mg/ml、最も好ましくは約0.1〜1mg/mlの範囲で、本発明の処方物中で用いられ得る。SYN3またはそのホモログもしくはアナログを含む本発明の送達増強化合物は好ましくは、0.002〜20mg/ml、より好ましくは約0.02〜2mg/ml、最も好ましくは約0.1〜1mg/mlの範囲で、本発明の処方物中で用いられる。
【0086】
別の態様では、本発明は、インターフェロン遺伝子をコードする組換えアデノウイルスおよび送達増強因子の投与のための薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、送達増強剤は、SYN3またはSYN3ホモログを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子送達系は、インターフェロン遺伝子をコードする約109〜1012粒子(PN)/mlの組換えアデノウイルス、約0.1〜10mg/ml SYN3、SYN3溶解性因子(例えば、Big CHAPまたはヒドロキシルプロピルβシロデキストリン(HPβCG)またはTRITONTM−X−100界面活性剤/オクチルフェノキシポリエトキシエタノールを含むサーファクタント)、緩衝液および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、このインターフェロン遺伝子は、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロンもしくはωインターフェロンの遺伝子またはその融合物またはインターフェロン抗癌、抗感染性もしくは免疫系調節生物活性を有するポリペプチドをコードするその一部である。1つの実施形態では、処方物中のSYN3の量は、1〜10mg/mlである。この組成物は、使用前に適切な医薬用キャリアでの希釈のために凍結乾燥されてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明はまた、インターフェロン遺伝子送達系および送達増強化合物を含む処方物を提供する。処方物中の送達増強化合物の濃度は、多数の要因、例えば、用いられている特定の遺伝子送達系および送達増強化合物、緩衝液、pH、標的組織または器官および投与形態に依存する。送達増強化合物の濃度は実質的に、用いられる因子に依存する。高濃度で有用な因子については、この濃度はしばしば、1%〜50%(v/v)、好ましくは10%〜40%(v/v)、そして最も好ましくは15%〜30%(v/v)の範囲である。低濃度で有効な送達増強因子については、本発明の特定の送達増強化合物は好ましくは、0.002〜2mg/ml、より好ましくは約0.02〜2mg/ml、最も好ましくは約0.1〜1mg/mlの範囲で、本発明の処方物中で用いられ得る。SYN3またはそのホモログもしくはアナログを含む本発明の送達増強化合物は好ましくは、約0.002〜20mg/ml、より好ましくは約0.02〜2mg/ml、最も好ましくは約0.1〜1mg/mlの範囲で、本発明の処方物中で用いられる。
【0088】
本発明の方法および組成物における使用のための送達増強化合物は典型的には、化合物が溶解性である溶媒に処方されるが、化合物が部分的にのみ可溶性である処方物も適切である。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)は、これらの化合物の適切な可溶化剤の1つの例であり、そして他のものは当業者に公知である。当業者は、特定のさらなる賦形剤および添加物が、種々の薬学的処方物についてこれらの因子の溶解度特徴を達成することが所望され得るということを理解する。例えば、周知の可溶化因子、例えば、界面活性剤、脂肪酸エステルおよびサーファクタントは、使用される種々の溶媒におけるこの化合物の溶解度を促進するために適切な濃度で添加され得る。この処方物が界面活性剤を含む場合、患者に投与される最終処方物中の界面活性剤濃度は好ましくは、約0.5〜2×臨界ミセル化濃度(CMC)である。適切な界面活性剤としては、上記に列挙されるものが挙げられる。それらの使用のために適切な界面活性剤および適切な濃度の同定は、本明細書に記載のように決定され得る。SYN3のような化合物および関連の化合物の可溶化因子の1つの例は、約0.05%〜約0.3%の濃度、より好ましくは約0.10%〜約0.15%の濃度のTween 80である。Big CHAPも、SYN3および関連の化合物についての可溶化因子である。
【0089】
医薬的用途のために用いる場合、本発明の処方物は、送達増強化合物を含む緩衝液を含む。緩衝液は、任意の薬学的に受容可能な緩衝液、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水またはリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム、Tris緩衝液、グリシン緩衝液、滅菌水および当業者に公知の他の緩衝液、例えば、Good et al.,Biochemistry,(1966)5:467によって記載される緩衝液であってもよい。例えば、調節性の治療タンパク質を含む薬学的組成物中の緩衝液のpHは典型的には、6.4〜8.4、好ましくは7〜7.5、そして最も好ましくは7.2〜7.4の範囲である。
【0090】
本発明の組成物はさらに、タンパク質安定化剤または可溶化剤、増強剤または他の薬学的に受容可能なキャリアもしくはビヒクルを含んでもよい。生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、グルコース、スクロースまたはデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸またはグルタチオンのような抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質または他の安定化剤もしくは賦形剤を挙げることができる。他の生理学的に受容可能な化合物としては、微生物の増殖または作用を防止するために特に有効である湿潤剤、乳化剤、分散剤または防腐剤が挙げられる。種々の防腐剤が周知であり、それらには、例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が挙げられる。当業者は、薬学的に受容可能なキャリアの選択が、治療タンパク質の投与の経路および特定の物理化学的特徴に依存することを承知している。キャリア、安定化剤またはアジュバントの例は、参考として本明細書に援用されるMartin,Remington’s Pharm.Sci.,第15版(Mack
Publ.Co.,Easton,PA 1975)、およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版)(Lippincott,Williams & Wilkins Publisher,December 1995)に見出すことができる。
【0091】
本発明のさらなる態様は、薬学的に受容可能な水性キャリア、少なくとも1つの薬学的に受容可能な安定化剤と少なくとも1つの薬学的に受容可能な充填剤と組み合わせて、インターフェロンおよびSYN3を含む薬学的組成物である。このような薬学的組成物はさらに、薬学的に受容可能なキャリアおよびタンパク質と組み合わせてSYN3を含み得る。2002年12月20日出願で、本出願と同じ譲受人に譲渡され、その全体が参考として本明細書に援用される米国特許出願第10/329,043号[タイトル「SYN3 COMPOSITIONS AND METHODS」、代理人整理番号016930−000841US]を参照のこと。
【0092】
組換えアデノウイルスの投与のための例示的な処方物は約109−1011PN/mlウイルス、約0.1〜1mg/ml SYN3、さらに適切なSYN3可溶化剤(例えば、約2〜10mM Big CHAPまたは約0.1〜1.0mM TRITON(登録商標)−X−100)界面活性剤を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に含み、加えて約2〜3%スクロース(w/v)および約1〜3mM MgCl2を含み、約pH6.4〜8.4である。
【0093】
本発明のさらなる態様は、インターフェロン遺伝子送達系およびSYN3を、薬学的に受容可能な水性キャリア、少なくとも1つの薬学的に受容可能な安定化剤と少なくとも1つの薬学的に受容可能な充填剤と組み合わせて含む薬学的組成物である。このような薬学的組成物はさらに、薬学的に受容可能なキャリア、およびインターフェロンDNAが外来性であるベクターにインターフェロンDNA配列が挿入されている発現ベクターまたは遺伝子送達系と組み合わせて、SYN3を含んでもよい。インターフェロンの核酸配列は、ある実施形態では、外来性であってもよく、そうでない場合被験体における意図する組織もしくは器官において有意に発現されなくてもよい。2002年12月20日出願で、本出願と同じ譲受人に譲渡され、その全体が参考として本明細書に援用される、米国特許出願第10/329,043号[タイトル「SYN3 COMPOSITIONS AND
METHODS」、代理人整理番号016930−000841US]を参照のこと。
【0094】
本発明の処方物に用いられ得る溶媒としては、好ましくは米国薬局方(USP)標準に従って調製されるような、例えば、注射用水のような水性溶媒ならびに/またはDMSOおよびDMAとしても公知のN,N−ジメチルアセトアミドのような非水性の溶媒、ならびに共溶媒(co−solvent)混合物、例えば、グリセロールおよび水が挙げられる。
【0095】
この処方物は好ましくは、とりわけ、例えば、ポリソルベート80およびポリソルベート20を含む非イオン性サーファクタントの1クラスである、ポリソルベートすなわちポリオキシエチレンソルビタンエステル、とりわけ、例えば、プルロニック(Pluronic)L68およびL92を含む、非イオン性サーファクタントの1クラスである、プルロニックすなわちポリエチレンポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ならびに例えば、HPβCDおよびBig CHAPを含む、非イオン性複合剤の1クラスである、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、ポリ置換ヒドロキシアルキルβシクロデキストリンを含む。HPβCD、Big CHAP、ポリソルベート80、ポリソルベート20、プルロニックL64およびプルロニックL92が可溶化剤として好ましい。可溶化剤は、例えば、個々にまたは込み合わせて用いられ得る。可溶化剤の濃度は以下に示される。HPβCDは、約50〜500mg/mlの濃度で存在し得、Big CHAPは、約20〜約360mg/mlの濃度で存在し得、ポリソルベート80は、約1〜36mg/mlの濃度で存在し得、プルロニックは、約1〜約150mg/mlの濃度で存在し得、そしてその他の成分は、以下に示す濃度で存在してもよい。
【0096】
SYN3の凍結乾燥処方物は好ましくは、クエン酸緩衝化系を含む。より好ましくは、このクエン酸緩衝化系は、少なくとも1つのクエン酸緩衝液、例えば、米国薬局方のクエン酸一水和物または米国薬局方のクエン酸ナトリウム二水和物を含んでもよい。より好ましくは、クエン酸緩衝系は、米国薬局方のクエン酸一水和物と米国薬局方のクエン酸ナトリウム二水和物の組み合わせを含む。組み合わせて用いられる場合、米国薬局方のクエン酸一水和物の量は、約0.005〜約2mg/ml、より好ましくは0.016〜約1.35mg/ml、好ましくは0.016〜約0.72mg/ml、好ましくは約0.005〜約1.35mg/mlの濃度で存在し得る、そして米国薬局方のクエン酸ナトリウム二水和物は、約0.02〜約5.37mg/ml、好ましくは0.05〜3.00mg/ml、好ましくは0.05〜2.31mg/mlの濃度で存在し得る。適切である他の適切な緩衝化系は、例えば、クエン酸緩衝化系の代わりに、またはそれと組み合わせて、リン酸塩、グリシン、そして上記の全ての種々の組み合わせを含む。
【0097】
緩衝化系は、溶解度が向上するような凍結乾燥処方物のpHを提供する。好ましくはこのpHは、約5〜約6の範囲である。SYN3の混合水性処方物は好ましくは、約7〜約8.5、好ましくは約7.4のおよそのpHで緩衝化され、そしてSYN3は40℃で少なくとも3ヶ月間、脱水された粉末中で安定なままである。
【0098】
凍結乾燥処方物は好ましくは、凍結乾燥充填剤としてグリシンまたはマンニトールを含む。用いられ得る他の適切な凍結乾燥充填剤としては、例えば、ラクトース、組換えゼラチンおよびメチルセルロースが挙げられる。凍結乾燥充填剤は、この薬剤がマンニトールである場合、約5〜100mg/ml、そしてこの薬剤がグリシンである場合、約10〜200mg/mlの濃度で存在し得る。
【0099】
凍結乾燥処方物は好ましくは、抗酸化剤としてアスコルビン酸を含む。用いられ得る他の適切な抗酸化剤としては、例えば、クエン酸が挙げられる。アスコルビン酸が抗酸化剤である場合、これは約0.001〜約0.6mg/mlの濃度で存在し得る。
【0100】
本発明の組成物は、さらに、例えば、安定化剤、増強剤または他の薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクルを含んでもよい。薬学的に受容可能なキャリアは、例えば、腫瘍抑制遺伝子を含む組換えアデノウイルスベクター送達系を安定化させるように作用する生理学的に受容可能な化合物を含んでもよい。生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランのような炭水化物、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定化剤もしくは賦形剤を挙げることができる。
【0101】
他の生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、保湿剤、乳化剤、分散剤または微生物の増殖もしくは作用を妨げるために特に有効な防腐剤が挙げられる。種々の防腐剤が周知であり、これには、例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が挙げられる。当業者は、薬学的に受容可能なキャリアの選択が、治療タンパク質の投与経路および特定の物理化学的特長に依存することを承知している。キャリア、安定化剤またはアジュバントの例は、参考として本明細書に援用されるGennaro,Remington’s:The
Science and Practice of Pharmacy,第19版(Mack Publishing.Co.,Easton,Pa.1995)に見出すことができる。
【0102】
本発明の被験体は、哺乳動物であって、これには、限定はしないが、マウス、ラット、霊長類および特にヒトが挙げられる。
【0103】
核酸およびタンパク質の両方の送達のための例示的な送達増強化合物としては、式IIの化合物を含む本発明による使用のためのSYN3のホモログが挙げられる。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、送達増強化合物を含む緩衝液中に、「治療上有効な(therapeutically effective)」量の治療因子(例えば、タンパク質またはそのタンパク質の遺伝子送達系)を含む。本明細書において用いる場合、「治療上有効な」とは、癌もしくはウイルス感染のような疾患状態またはその症状の予防、軽減または治癒をいう。
【0105】
送達増強化合物は、単独で、またはインターフェロンもしくはインターフェロン遺伝子送達系と組み合わせて、またはさらなる因子とさらに組み合わせて適用され得る。例えば、この処方物は、癌、細胞増殖性障害および慢性の感染を含む疾患および状態を治療するのに有効である。「癌(cancer)」は一般に、組織または器官内の細胞の制御されない増殖に関する。これは、1つ以上の細胞が癌性、悪性、腫瘍性、前癌性、トランスフォームした、または腺腫もしくは癌腫に分類される状態、あるいはこれらの状態について当該分野で一般に用いられる任意の他の同義語を包含するものとする。
【0106】
送達増強因子を含む緩衝液中に処方された、組換えウイルス送達系にインターフェロン遺伝子を含む薬学的組成物の治療上有効な量が、本発明の教示に従って投与され得る。例えば、送達増強因子を含む緩衝液中に処方された、組換えアデノウイルスベクター送達系のインターフェロン遺伝子の治療上有効な量は、約108粒子/ml〜1012粒子/ml、より典型的には約108粒子/ml〜5×1011粒子/ml、最も典型的には約109粒子/ml〜×1011粒子/ml(PN/ml)または1010粒子/ml〜1011粒子/ml(PN/ml)の範囲である。前述の投薬量は一般に、被験体が耐えられる範囲で高頻度に投与される。腫瘍学の分野では一般に、最大耐容用量で、またはほぼその付近の投薬量を投与することになる。
【0107】
送達増強因子を含む緩衝液中に処方された、タンパク質(例えば、インターフェロン)を含む薬学的組成物の治療上有効な量が、本発明の教示に従って投与され得る。例えば、インターフェロンまたはインターフェロン遺伝子送達系の治療上有効な量は、同様に、当業者によって容易に決定され得る。この用量は一般に、被験体が耐えられる範囲で高頻度に投与される。上記のとおり、腫瘍学の分野では一般に、最大耐容用量で、またはほぼその付近で投薬量を与えることが行われる。
【0108】
膀胱癌の治療のための本発明の1つの実施形態では、インターフェロンは、各々のサイクルが各々のサイクルの1日目にまたは任意選択的に1日目および2日目に1回の膀胱内投与を提供する、3週サイクルの投与からなる複数回の投与レジメンの一部として送達増強因子と組み合わせて提供される。膀胱癌の治療の典型的な形態では、実施者は被験体が排泄できるように尿道にカテーテルを挿入する。処方された送達増強因子および治療用インターフェロンタンパク質またはインターフェロン遺伝子送達系を含む溶液を調製して、膀胱に点滴注入する。カテーテルをクランプして、約1時間の間、膀胱中に溶液を維持する。長時間の曝露によって、上皮に対する送達を増強することが所望され得るが実際的な懸念から、このような実施は制限されることが注意されるべきである。例えば、1時間は一般に、被験体が排尿する必要を感じるポイントである。送達増強因子の効果は、長期の効果を生じ、その結果、タンパク質の注入の前に膀胱を送達増強因子に事前に曝露することが送達の増強をもたらすことが実証されている。これは、タンパク質処方物と送達増強因子処方物との間の適合性が懸念される場合に使用され得る。所望の曝露後に、カテーテルクランプをカテーテルから外して、被験体を排尿可能にさせた。前述の手順は、治療効果を達成するために、患者が耐容可能な範囲で何度も繰り返され得る。この治療効果は、膀胱に挿入された膀胱鏡のような従来の手段によって容易に評価できる。
【0109】
これらの処方物は、充填される空隙、または投与される器官もしくは組織のサイズに相当する用量で投与され得る。ヒト膀胱については、適切な投与用量は、被験体の、そして詳細にはその膀胱の、年齢およびサイズに依存する。投与される用量は典型的には、50〜500mlの範囲、そしてより一般的には50〜250ml、または100〜200mlの範囲に及んでもよい。ある投与方法では、投与されるべき量は、投与されるべき膀胱(vesicalまたはbladder)にへバルーンカテーテルを挿入すること、およびカテーテルのバルーン部分を膨張させ、それらによって投与組成物が占有する空隙容積を軽減することによって、経済的に節約され得る。
【0110】
さらに、上記の投与レジメンは、治療効果の増強を得るために、補充されてもよいし、または他の治療投与レジメンと組み合わせて用いられてもよい。本発明の方法は、例えば、従来のBCGおよび/または化学療法投与レジメンによって補充され得る。腫瘍学の分野では、効果を最大化するために個体に対応して複数回の投与レジメンを行うことが標準的な施行である。
【0111】
別の態様では、本発明は、第一の容器に送達増強化合物を、そして第二の容器にタンパク質または遺伝子送達系を有するキットを提供する。1つの実施形態では、この容器の中身は、送達増強因子およびタンパク質または遺伝子送達系の両方を含む処方物を調製するのに組み合わされて、これがその後被験体に投与される。別の実施形態では、この容器の内容物は、患者に対して個別の調製物として投与される。送達増強因子は、タンパク質または遺伝子送達系の投与の前、間または後に投与され得る。例示的な実施形態では、それらは、同時にまたはほぼ同時に投与される。容器のうち一方または両方の処方物は、薬学的に受容可能な液体キャリア中で戻される凍結乾燥粉末であってもよい。
【0112】
別の実施形態では、このキットは、タンパク質の送達を増強し得るSYN3またはSYN3ホモログもしくはアナログ、あるいは遺伝子送達系を含む第一の容器;ならびにタンパク質または遺伝子送達系を含む第二の容器を提供する。1つのさらなる実施形態では、第一の容器は、SYN3またはSYN3のモホログもしくはアナログの凍結乾燥処方物を含む。別の実施形態では、第二の容器は、タンパク質の凍結乾燥処方物を含む。さらなる実施形態では、第一の容器および第二の容器の両方が、そのそれぞれの内容物の凍結乾燥処方物を保持する。例示的なさらなる実施形態では、このタンパク質は、ヒトαインターフェロンポリペプチドに対して実質的に同一であるか、もしくはヒトαインターフェロンポリペプチドであるポリペプチドであるか、またはこの遺伝子送達系がタンパク質、すなわち、ヒトαインターフェロンポリペプチドに対して実質的に同一であるか、もしくはヒトαインターフェロンポリペプチドであるポリペプチドをコードする。
【0113】
いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物による投与は、治療効果を増大するために種々の時間間隔にわたって繰り返され得る。これらの間隔は、ほぼ毎日、毎週または毎月であってもよい。投与の回数は、治療レジメンおよびその期間で変化する。一般には本発明の治療投与は、週2回、毎週、隔週で、毎月または隔月で、最大2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月またはそれ以上でさえ投与されてもよい。投与の回数は、被験体におけるインターフェロンの産生もしくは放出をモニタリングすることによって、または患者の臨床効果(例えば、治療される疾患が癌である場合、腫瘍軽減)を評価することによって個々の被験体に対して耐容され得る。
【0114】
治療されるべき状態が膀胱の癌であり、治療タンパク質(例えば、インターフェロン)または遺伝子送達系(例えば、インターフェロンをコードする遺伝子について)が膀胱内に投与される別の実施形態では、本発明の治療方法および組成物に対する被験体における効果は、膀胱で見出される腫瘍塊のサイズおよび数をモニタリングすることによって評価される。このモニタリングは、血液もしくは尿のような体液中での腫瘍特異的な抗原または産生物の測定によっても、またはMRIもしくは放射性同位体画像化技術のような直接画像化方法によってもよい。
【0115】
送達増強因子およびインターフェロンまたはインターフェロンをコードする遺伝子で処方された組成物を用いて、詳細には、器官および組織の上皮細胞を含む細胞に対してインターフェロンを提供してもよい。インターフェロンの治療効果および用法は当業者に公知である。例えば、本発明による組成物は、癌の治療において有効である。本発明の方法および組成物による投与に適切な癌組織および器官としては、胃腸管、膀胱、呼吸器および肺のような上皮性の膜を有する任意の組織または器官を包含する。例としては、限定はしないが、膀胱および上部気道、陰門、子宮頸部、膣、子宮または気管支の癌腫;腹膜の局所転移性腫瘍;気管支肺胞の癌腫;胸膜転移性癌腫;口腔および扁桃の癌腫;鼻咽頭、鼻、喉頭、食道、胃、結腸および直腸、胆嚢または皮膚の癌腫;または黒色腫が挙げられる。
【0116】
本発明の方法および組成物は詳細には、哺乳動物および詳細にはヒトにおける膀胱癌の治療において有効である。1つの実施形態では、本発明の方法および組成物は、種々の膀胱癌治療で投与されており、膀胱腫瘍塊のサイズもしくは数を減少することができないこと、またはこのような腫瘍の再発(relapseまたはresurgenceまたはrecurrence)を遅らせることによって測定した場合に満足な効果が見られない個体を治療するために用いられる。1つの実施形態では、本発明の方法および組成物は、BCG治療において満足な効果が見られない被験体に投与される。いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物は、膀胱癌の治療においてBCG治療のような別の癌治療と組み合わされる。このような実施形態では、被験体は、BCG治療の前、後または間に本発明の方法および組成物を受けてもよい。
【0117】
ある実施形態では、膀胱癌の再発または治療の有効性は、膀胱内視鏡、より好ましくは尿中のマイクロサテライトDNAの測定によって評価され得る。Steiner G,Schoenberg MP,Linn JF,Mao L,Sidransky D,「Detection of bladder cancer recurrence by microstellite analysis of urine」Nat Med.,1997 Jun;3(6)621−4を参照のこと。膀胱の治療のための1つの実施形態では、治療組成物は、バルーンカテーテルを介して投与される。カテーテルは、本発明に従って投与された組成物によって占有される空隙の残りを最小にするように、空隙の一部、好ましくは空隙のほとんどを占有するために膨張される場合、膀胱の空隙に対して尿道を介して挿入され得るバルーン部分を有する。カテーテルは、膀胱の空隙と接触するように、膀胱に組成物を輸送する別の部分を有する。バルーン尿道カテーテルは、当業者に公知である。
【0118】
ある実施形態では、本発明の組成物は、送達増強因子の希釈を減少するかまたは回避する方法で投与されてもよく、あるいは、調製物中の送達増強因子の量は、予想される希釈用量を考慮して増大され得る。希釈物を回避するための方法は、生理学的方法(例えば、排尿、絶食)または薬理学的介入(例えば、下剤)または医学的介入(カテーテルによる排液)によって標的の空間を空にする工程を包含する。バルーンカテーテルまたは他の方法を用いて、この組成物によって占有される管腔または通路内の空間の容積を隔絶してもよい。ある実施形態では、占有される必要がある空間を減少させるように、充填されている空間を部分的に占有するために、バルーンカテーテルが用いられ得る。他の実施形態では、処方物自体が、この因子のリザーバとして機能するように、または標的空間の表面に対して固定するために処方され、これによってバルク混合による即時希釈またはバルクフローによる損失を回避する。
【0119】
膀胱への膀胱内投与の際の送達増強剤とインターフェロンまたはインターフェロン遺伝子インターフェロン治療との間の相乗作用は、インターフェロン治療に一般的に伴う副作用を軽減または回避することを補助する。
【0120】
適切な量の組成物の投与は、例えば、局所投与、部分投与、経口投与または直腸投与、非経口的投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、皮内投与、経皮投与、鼻腔内投与、眼内投与、肺内投与、経皮投与または経尿道投与、膀胱内投与、筋肉内投与または経尿道投与および膀胱内投与のような当該分野で公知の任意の方法によるものであってもよい。いくつかの実施形態では、投与は経皮的に行う。本発明の適切な量および用量は、当該分野で公知であるように経験的に決定され得る。
【0121】
薬学的に受容可能な、または生理学的に受容可能な塩としては、限定はしないが、金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩など;アルカリ土類金属、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など;有機アミン塩、例えば、トリエチルアミン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩など;無機酸塩、例えば、塩酸、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など;有機酸塩、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩など;スルホン酸塩、例えば、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩など;アミノ酸塩、例えば、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられる。
【実施例】
【0122】
以下の実施例は、例示目的で提供されるものであり、本明細書において請求されるような本発明の範囲内に限定されないものとする。当業者が行う例示された物品および/または方法における任意のバリエーションは、本発明の範囲内におさまるものとする。
【0123】
(実施例1)
米国特許第6,312,681号は、膀胱の上皮性膜で癌細胞に対する導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターを送達するための方法を開示するが、この方法は、上皮性膜に対してアデノウイルスベクター、および1%〜50%(v/v)のエタノールまたは別の送達増強因子を投与する工程であって、このアデノウイルスベクターが細胞に感染して、導入遺伝子が感染細胞中で発現される工程を包含する。本出願と同じ譲受人に譲渡された米国特許第6,312,681号は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0124】
(実施例2)
以下の表は、本発明の非水性液体SYN3処方物の成分の例示的な範囲を示す。投与前に(例えば、膀胱癌のため)、SYN3溶液を、組換えアデノウイルス調製物と1:50v/v比で組み合わせて、患者に投与される混合物を形成する。
【0125】
【表1】
調製するために、ガラスビーカー中に約75%のDMAを秤量する。個別のビーカーに、サーファクタント(ポリソルベート80、ポリソルベート20、プルロニックL64またはプルロニックL92)を加えて、少量(最終用量の約10%)のDMAに溶解する。連続的に撹拌しながらDMA/サーファクタント溶液をDMA中に加える。個別の容器にSYN3を事前秤量する。撹拌しながら溶液中にSYN3をゆっくり加える。一旦SYN3が溶解されれば、十分なDMAを最終の重量容積まで添加する(25℃で、密度=0.962g/ml)。ラテックスでない栓を備えるシリンジに取り付けた0.22のフィルターを通じて溶液を濾過して、緊密に密閉されたガラス容器に4℃で溶液を貯蔵する。
【0126】
以下のさらなる組成物は、実施例1に従って調製され得る。
【0127】
【表2】
以下の25mlのバッチは、同じ手順によって調製した。
【0128】
【表3】
(実施例3)
以下の表は、本発明の凍結乾燥されたSYN3処方物の成分の例示的な範囲を示す。配合された溶液は、示されるように20mlの用量のII型ガラスバイアルに充填させて、凍結乾燥する。投与のための調製物は、SYN3を再溶解するために凍結乾燥ケーキを含むバイアルへの20mlのWFIの添加を要する。SYN3溶液はp53と、または任意の組換えアデノウイルス調製物と1:5のv/v比で合わされる。次いでこの混合物を例えば膀胱癌については患者に投与する。
【0129】
【表4】
以下の実施例は、凍結乾燥処方物を調製する方法である。
【0130】
(実施例4)
【0131】
【表5】
充填されるSYN3の正確な量は、以下の式を用いて薬物バッチの純度に従って調節される:
SYN3のグラム数=24.0×100/(純度%)
例えば:
SYN3薬物=97.0%純粋。
【0132】
24.0×100/97.0=1リットルに24.7gのSYN3が加えられる。
【0133】
従って、以下の式に従って、バッチに加えられるSYN3の量を決定する:
SYN3のg数/リットル=24.0g/リットル×[100/(SYN3バッチ純度%)]
このバッチに加えられる注射用水の用量は、以下の式に従って決定されるものである:
注射用水の用量(リットル)=バッチ用量(リットル)×0.5
撹拌機を備える風袋測定配合容器に上記の式を用いて算出した用量の注射用水を加える。Big CHAPを撹拌しながら添加して溶解する。注射用滅菌水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。Big CHAPの完全溶解には、中程度の撹拌速度での約30〜60分の連続的な撹拌を要し得る。Big CHAP溶液中にSYN3を撹拌(中程度の撹拌速度)しながら加えて溶解する。注射用水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。SYN3の完全な溶解には、最大1時間におよぶ混合を要し得る。撹拌しながら、かつ以下の順序:グリシン、アスコルビン酸、クエン酸一水和物およびクエン酸ナトリウム二水和物で、Big CHAPおよびSYN3の両方を含む溶液に添加して溶解する。注射用水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。注射用水を添加してこのバッチを最終用量にする(溶液の密度は25℃で約1.051g/mlである)。この溶液を15分間、混合する。
【0134】
pH測定のために溶液のわずかな(<5ml)サンプルを取り出す。pHは5.0〜6.0であるべきである。pHの調節は必須である。当業者は得られた産物のpHを容易に確認できる。
【0135】
配合を完了するため、溶液を無菌処理して濾過する。任意選択的に、化合物のバッチは、バイアルに充填する前に、密閉された滅菌のステンレス製圧力容器に2℃〜8℃で最大24時間まで保管してもよい。このバッチは、滅菌性を確保するために2回以上濾過してもよい。
【0136】
洗浄して滅菌されている20mlの1型フリントガラスバイアルに5.3±0.1mlの溶液を無菌処理して満たす。洗浄されて、シリコン処理されて、滅菌されている20−mmのWest 4416/50リオ型(lyo−shaped)ゴム栓をバイアルの凍結乾燥位置に無菌処理して挿入する。
【0137】
凍結乾燥棚を4±2℃に事前冷却する。凍結乾燥棚上に充填したバイアルのトレイを無菌処理して並べる。全てのトレイを置いた後、−40℃に1時間この棚を冷却して、処理前に−35℃以下で少なくとも4時間この生成物を維持する。コンデンサーの冷却を開始する。コンデンサーの温度が−45℃以下である場合、チャンバの排出を開始する。50〜70mm Hgの真空圧が得られれば、棚の温度を0.5時間で−20℃まで加熱する。棚の温度を−20℃で36時間、約150mmHgの圧(100〜200mmHgの圧)で維持する。生成物の温度は、処理前少なくとも6時間は−20℃以上に保たなければならない。棚を1時間で25℃まで加熱して、圧力を約50mmHgの圧まで低下させる。棚の温度を25℃で、約50mmHgの圧で14時間維持する。滅菌濾過した窒素を用いてチャンバを約950mmHgまで排気する。凍結乾燥機の内側でバイアルに栓をする。凍結乾燥機からバイアルを取り出して、20mmのアルミニウムシールでこのバイアルを圧着する。バイアルは、検査が終了するまで2℃〜8℃で保管しなければならない。
【0138】
この生成物は灰白色のケーキである。このバイアルは、検査後、2℃〜8℃で保管しなければならない。標識および検査の目的で、このバイアルを最大6時間まで19℃〜25℃に曝してもよい。
【0139】
(実施例5)
以下の実施例は、上記の実施例4に示されるようなバッチ調製に従って調製した。
【0140】
【表6】
得られた生成物のpHは5.34であった。
【0141】
【表7】
得られた生成物のpHは5.45であった。
【0142】
【表8】
得られた生成物のpHは5.76であった。
【0143】
得られた凍結乾燥生成物の安定性試験によって、それらがSYN3に関して高度に安定であることが示された。安定性試験はHPLCによって達成した。
【0144】
凍結乾燥処方物は、19.5ml WFIで再構成(再溶解)した:サンプルを指定の温度条件で、特定の時間インキュベートして、濃度をHPLCによって決定して、最初の濃度と比較した。
【0145】
(実施例6)
【0146】
【表9】
加えられるSYN3の正確な量は、以下の式を用いて、製剤原料のバッチの純度に従って調節する:
SYN3のグラム数=24.0×100(純度%)。
【0147】
サンプルの算出:
SYN3の製剤原料=97.0%純粋。
【0148】
24.0×100/97.0=1リットルのバッチに加えられるべきSYN3が24.7グラム。
【0149】
以下の実施例は次の手順で調製した:
最初に、以下の式に従ってバッチに加えられるSYN3の量を決定する:
SYN3のg数/リットル=24.0g/リットル×[100(SYN3のバッチ純度%)]
次に、以下の式に従って、バッチに加えられる注射用水の用量を決定する:
注射用水の用量(リットル)=バッチ用量(リットル)×0.5
撹拌機を備える風袋測定配合容器にこの用量の注射用水を加える。ヒドロキシプロピルβシクロデキストリンを撹拌しながら添加して溶解する。ヒドロキシプロピルβシクロデキストリンの完全な溶解には、中程度の速度での約30〜45分の連続的撹拌が必要であり得る。注射用水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。ポリソルベート80をこの溶液に加えて溶解する。ポリソルベート80は、0.1×注射用水の総バッチ容量(リットル)に再溶解して、この溶液に加えてもよい。
【0150】
この溶液中にSYN3を撹拌しながら加えて溶解する。SYN3の完全溶解には、最大1時間までの混合を要し得る。注射用水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。
【0151】
撹拌しながら、かつ以下の順序:アスコルビン酸、クエン酸一水和物およびクエン酸ナトリウム二水和物をこの溶液に加えて溶解する。注射用水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。注射用水を添加してこのバッチを最終用量にする(溶液の密度は25℃で約1.058g/mlである)。この溶液を最大15分間、混合する。
【0152】
pH測定のために溶液のわずかな(<5ml)サンプルを取り出す。pHは5.0〜6.0でなければならない。pHの調節は必須ではない。洗浄されて完全性について試験されている溶液を、滅菌されたステンレス製の圧力容器中に無菌処理して濾過するか、またはその等価物を用いなければならない。任意選択的に、この配合されたバッチは、充填前に、密閉した無菌のステンレス製の圧力容器中に最長24時間まで2℃〜8℃で保管され得る。このバッチは、滅菌性を確保するために2回以上濾過してもよい。
【0153】
洗浄して滅菌されている20mlの1型フリントガラスバイアル中に5.3±0.1mlの溶液を無菌処理して満たす。洗浄されて、シリコン処理されて、滅菌されているリオ型ゴム栓をバイアルの凍結乾燥位置に無菌処理して挿入する。
【0154】
凍結乾燥するために、凍結乾燥棚を4±2℃に予備冷却する。凍結乾燥棚上に充填したバイアルのトレイを無菌処理して並べる。全てのトレイを置いた後、この棚を−40℃に1時間冷却して、処理前には−35℃以下で少なくとも4時間この生成物を維持する。コンデンサーの冷却を開始する。コンデンサーの温度が−45℃以下である場合、チャンバの排出を開始する。50〜70mm Hgの真空圧が得られれば、棚の温度を0.5時間で−20℃まで加熱する。棚の温度を−20℃で36時間、約150mmHgの圧(100〜200mmHgの圧)で維持する。生成物の温度は、処理前には少なくとも6時間にわたり−20℃以上に保たなければならない。棚を1時間で25℃に加熱して、圧力を約50mmHgの圧まで低下させる。棚の温度を25℃で、約50mmHgの圧で14時間維持する。滅菌濾過した窒素を用いてチャンバを約950mmHgまで排気する。凍結乾燥機の内側でバイアルに栓をする。凍結乾燥機からバイアルを取り出して、20mmのアルミニウムでこのバイアルを圧着する。バイアルは、検査が終了するまで2℃〜8℃で保管しなければならない。
【0155】
この生成物は灰白色のケーキである。このバイアルは、検査後、2℃〜8℃で保管しなければならない。標識および検査の目的で、このバイアルを最大6時間まで19℃〜25℃に曝してもよい。
【0156】
組換えアデノウイルスベクター(例えば、p53(rAD/p53))は、SYN3の凍結乾燥処方物と合わせた場合、37℃で少なくとも2時間、そして25℃で24時間、安定なままであり得る。p53は、SYN3の水溶液処方物と合わせた場合、37℃で少なくとも4時間、そして25℃で24時間、安定なままである。
【0157】
(実施例7.化合物A−LBの合成)
以下の実施例では、「g」は、グラムを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「mol」はモルを意味し、「℃」はセ氏温度を意味し、「分(min.)」は分を意味し、「DMF」は、ジメチルホルムアミドを意味し、そして「PN」は、粒子数を特定する。全ての温度は、他に特定しない限り、セ氏温度である。
【0158】
以下は、A−LBとしても公知である化合物VIIの合成において利用される方法形態に関する。以下に示すのは、化合物5−6の合成の詳細および精製に必要な工程である。
【0159】
用いられる材料および試薬
N−(3−アミノプロピル)−1,3−ジアミンプロパン
コール酸
ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)
イソブチルクロロホルメート
トリエチルアミン
ラクトビオン酸。
【0160】
(実験)
(化合物A−LBの合成)
以下は、A−LBとしても公知の化合物VIIの合成において利用される方法形態に関する。以下に示すのは、化合物5−6の合成の詳細および精製に必要な工程である。
【0161】
用いられる材料および試薬
N−(3−アミノプロピル)−1,3−ジアミンプロパン
コール酸
ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)
イソブチルクロロホルメート
トリエチルアミン
ラクトビオン酸。
【0162】
化合物5:ラクトビオン酸(716mg,2mmol)を含むメタノール(60mL)の溶液を加熱還流させた。この溶液にDCC(500mg、2.5mmol)を添加して、得られた溶液を還流させながら撹拌した。2時間後、N−(3−アミノプロピル)−1,3−ジアミンプロパン(800mL,5.7mmol)を添加して、得られた溶液をさらに1時間撹拌した。この反応溶液を室温まで冷却して濃縮し、粗生成物5を得た。粗アミド5をジクロロメタンを用いる倍散によって精製して、粘着性の吸湿性固体として5(2.72g、5.7mmol)を得た。
【0163】
化合物6:コール酸(4.1mg,10mmol)を含むDMF(60mL)の溶液を0℃に冷却した。この溶液にイソブチルクロロホルメート(1.2mL、10.2mmol)およびトリエチルアミン(1.4mL,10.4mmol)を添加して、得られた溶液を10分間撹拌し、続いて5(2.5g,5.3mmol)を含むDMF(40mL)を添加した。次いで、この反応溶液を72時間撹拌して濃縮し、粗生成物6を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製し、純粋な6(A−LB)を得た。
【0164】
【化11】
【0165】
【化12】
(実施例8)
(膀胱癌のインターフェロン療法)
本実施例では、ヒトインターフェロンα導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターの使用を前臨床動物モデルにおいて評価した。rAd−IFNを含むSYN3処方物の膀胱内投与を受けた動物は、動物の尿中のインターフェロンタンパク質の局所濃度が極めて高く、インターフェロンの全身的レベルは最小であった。本発明者らはまた、胸腺欠損マウスを用いて表在性膀胱癌の正所性腫瘍モデルにおけるrAd−IFN/SYN3の有効性を試験した。rAd−IFN/SYN3を投与されたマウスは、コントロールに比較して膀胱腫瘍のサイズの劇的な減少があった。これらの結果に基づいて、rAd−IFN/SYN3は、表在性膀胱癌の新規な代替的治療法であり得る。
【0166】
(実施例8A.rAd−IFNの抗腫瘍活性)
ヒトインターフェロン(IFN)(rAD−IFN)をコードするE1領域欠失アデノウイルスを構築した。インビボの膀胱内送達研究のために、本発明者らは、ヒトα2bインターフェロン遺伝子(IACB)をコードするアデノウイルスベクターを利用した。このベクターを用いる細胞の形質導入によって、INTRON Aと同一の一次アミノ酸配列を有するヒトα2bインターフェロンタンパク質の産生が生じる。このタンパク質は、165アミノ酸のインターフェロンタンパク質に連結された23アミノ酸の分泌リーダーペプチドを含む。N末端アミノ酸配列決定によって、分泌リーダーペプチドが翻訳後改変の間に適切に切断されることが確認されている。E.coliの産生した組換えINTRON Aと比較して、rAd−IFN形質導入から生成されるインターフェロンタンパク質をグリコシル化する。IFNの明らかなグリコシル化は、イムノアッセイまたは抗ウイルスバイオアッセイによるIFNのrAd−IFN介在性発現の検出に影響しなかった。電気化学発光免疫アッセイを用いる血清および尿の両方からのIFNタンパク質の検出のための生物分析方法が開発された。
【0167】
インターフェロンα種は一般に、生物学的特性において高レベルの種特異性を示す。ヒト腫瘍異種移植片を含むマウス腫瘍モデルにおけるインターフェロンαの抗腫瘍有効性を評価するために、マウスおよびヒトの両方のインターフェロンレセプターに結合し得るインターフェロンα種を有することが最適である。マウス腫瘍モデルを用いるインビボの有効性実験のために、本発明者らは、ハイブリッド型のインターフェロン(α2/α1)を含むアデノウイルスベクターを利用した。ハイブリッドインターフェロンタンパク質は、ヒト腫瘍細胞およびマウス腫瘍細胞の両方に対して抗腫瘍活性を有する(Renberg et al.,J.Biol.Chem.,257(19):11497−502(1982))。ハイブリッドインターフェロンは、マウス細胞に対してもヒト細胞に対しても活性であるので(Rehberg et al.,J Biol Chem.,257(19):11497−502(1982))、ハイブリッドインターフェロンの高次構造は、マウスIFNレセプターに結合して活性化できる必要がある。従って、ハイブリッドIFNタンパク質は、ヒトのインターフェロンα2bの抗腫瘍有効性をより密接にモデルすると考えられた。
【0168】
インターフェロン導入遺伝子は、参考として援用される米国特許第6,210,939号においてA/C/N 53として記載されるベクターと同じアデノウイルス骨格に組み込まれる。このベクターの模式的な提示は図1に例示されている。rAd−IFNによる細胞培養物および動物におけるIFNの発現およびIFNの生物学的活性の実証後、皮下異種移植片腫瘍モデルにおけるrAd−IFNの抗腫瘍有効性を評価した(図2)。腫瘍増殖の阻害は、グリア芽細胞腫(LN229、U87MG)、肝細胞腫(HEP3B)およびCML(K562)から誘導された腫瘍を有するヌードマウスでの腫瘍内rAd−IFN投与後に観察された。これらの研究では、投与を開始する前に、腫瘍モデルに応じて腫瘍は10〜30日間で樹立された。
【0169】
K562モデルでは、5匹のマウスのうち3匹に腫瘍がなく、そしてU87MGモデルでは、5匹のマウスのうち4匹に腫瘍がなかった。これらの結果に基づいて、rAd−IFNは、種々の腫瘍サブタイプにおいて皮下固形腫瘍モデルにおける強力な抗腫瘍活性を有することが明らかである。図2を参照のこと。
【0170】
(実施例8B)
(アデノウイルス遺伝子発現のSYN3増強)
本実施例では、組換えアデノウイルスの膀胱内投与は、全身への曝露は極めて微量であって、膀胱の管腔内に局所的に適用され得る。しかし、ヒト組換え複製欠損アデノウイルス(rAd)の単回の膀胱内投与は、以前の研究においてはごく限られた遺伝子移入および発現しか示していない(Bass et al.,Cancer Gene Ther.,2(2):97−104(1995))。膀胱の構造は、ウイルスベクターによって形質導入されることが不能である原因となり得ると考えられる。膀胱は病原性細菌およびウイルスに対する主要な天然の防御として機能し得るが、一方では尿の封入のためのリザーバとしても機能する。管腔の膀胱上皮は、膀胱管腔から組織への尿の通過を妨害する親水性グリコサミノグリカン(GAG)層で覆われる。GAG層は、他の上皮保護機構(例えば、胃腸管(胃腸管参照))に匹敵して、細菌結合を防御する(Parsons CL,World J Urol.,12(1):38−42(1994))。アデノウイルス結合および形質導入を増強するためにこの層を改変する因子の同定についての研究が重ねられている。エタノールはアデノウイルスの遺伝子導入を増大させ得る因子として最初に同定されたが(Engler et al.,Urology、53(5):1049−53(1999))、出血性膀胱炎も投与後に注目され、この処方物は不適切であると思われた。代替的処方物のさらなるスクリーニングをCanjiで行って、エタノールの有害作用がなくアデノウイルス遺伝子の膀胱への移入を増強し得る因子を同定した。種々の界面活性剤(陽イオン性、陰イオン性、両性イオン性および非イオン性)を、それがアデノウイルス送達を増強する能力について評価した。非イオン性界面活性剤Big CHAPは、膀胱炎なしにアデノウイルスベクターで膀胱上皮の形質導入を強力に増強することが見出された。Big CHAPは、濃度依存性の様式で遺伝子導入を向上させ、最大の形質導入および遺伝子発現の飽和は、30mg/ml(34mM)のBig CHAP濃度で達成された。
【0171】
Big CHAPの増強活性のさらなる特徴によって、種々の市販の調製物の間の変動が明らかになり、これによって界面活性剤の組成の異質性が示唆される。実際、Big CHAPのいくつかの調製物は、ウイルス導入遺伝子発現を全体として増強できなかった。Big CHAPの生物活性ロットを薄層クロマトグラフィーによって不活性なロットと比較した場合、この生物活性ロットには少なくとも3つのさらなる化合物が存在した。MALDI−MS、1H−NMRおよび13C−NMR構造分析によって、3つのさらなる成分がBig CHAP製造プロセス由来の最も可能性の高い副産物であることが示された。各々の不純物を単離して、rAd−β−galとの同時投与により膀胱中のウイルス導入遺伝子発現を増強する能力について評価した。不純物2番は、最も強力な化合物であったが、極めて不溶性でもあった。その全体が参考として本明細書に援用される米国特許第6,392,069号を参照のこと。
【0172】
膀胱上皮におけるrAd遺伝子形質導入を増強する能力についてSYN3を試験した。ラットには、rAd−β−gal(0.5ml;7.6×1010P/ml)を含むSYN3処方物またはビヒクル処方物(0.1% Tween−80)のいずれかの膀胱内投与を与えた。45分後、被験体を取り出して、動物を回復させた。2日後、動物を屠殺して、その膀胱を回収してX−galを染色してrAd遺伝子発現の程度を判定した。rAd−β−galを含むSYN3処方物を投与されたラットは、同じウイルスをビヒクル処方物に含むものの送達に比較して、lacZ遺伝子発現の劇的な増強を有した(図3)。
【0173】
(実施例8C)
(膀胱におけるインターフェロン発現に対する併用療法の効果)
SYN3を用いる膀胱癌の治療と、インターフェロン遺伝子を含む組換えアデノウイルスベクターとの併用は、膀胱の治療におけるインターフェロンに対して、導入遺伝子インターフェロンの発現における予期せぬ多大な増大をもたらした。前臨床試験によって、SYN3は、種々の組換えアデノウイルスベクターの膀胱上皮への送達および発現を劇的に増強し得ることが実証された。マウスで研究を行って、SYN3処方物を用いる膀胱上皮に対する遺伝子移入の増大を定量した。マウスは、SYN3またはビヒクル処方物のいずれかにおいてrAd−IFNの膀胱内投与を受けた。投与の2日後、マウスを屠殺して、それらの膀胱を回収して、ドライアイス上で急速凍結させた。次いで各々の膀胱から核酸を抽出して、それぞれPCRおよびRT−PCRを用いて、存在するrAd−IFN DNAおよびRNAのレベルをアッセイした。rAd−IFNを含むSYN3処方物を投与されたマウスは、rAd−IFNを含むビヒクル処方物を投与されたマウスに比較してrAd−IFN DNAのコピー数が約千倍多く(図4a)、そしてrAd−IFNを含むビヒクル処方物を投与されたマウスよりも膀胱ホモジネート中で決定されたRNAが少なくとも1万倍多い。
【0174】
【表10】
表1。マウスには、rAd−IFNを含むSYN3処方物(100μl;7.4×1010P/ml)を含むまたはビヒクル処方物のいずれかを45分間膀胱内投与した。投与の2日後、マウスを屠殺して、その膀胱を回収してドライアイス上で急速凍結させた。次いで各々の膀胱から核酸を抽出して、それぞれPCRおよびRT−PCRを用いて、存在するrAd−IFN DNAおよびRNAのレベルをアッセイした。BQL:定量レベル未満:DNA:10コピー数/組織1mg;RNA:1000MEQ/組織1mg。比較のために、SYN3単独の投与によって得たレベルも示す。これらの結果に基づいて、SYN3処方物が、膀胱上皮におけるrAd−IFNの送達および発現を増強するために必要とされることは明白である。
【0175】
(実施例8D)
(表在性膀胱癌についてのrAd−IFN/SYN3の有効性)
rAd−IFN/SYN3の有効性を、正所性腫瘍モデルを用いて評価した(Watanabe et al.,Cancer Gene Ther.,7(12):1575−80(2000))。表在性腫瘍は、腫瘍細胞結合を増強するための短時間のトリプシン事前投与の後にヒトUMUS−3移行上皮癌(TCC)の膀胱内投与によって胸腺欠損マウスの膀胱において樹立された。処理の開始前に6日間増殖することによって腫瘍を形成させた。次いで、rAd−IFN/SYN3、rAd−コントロール/SYN3またはSYN3−ビヒクル単独のいずれかをマウスに膀胱内投与した。2つの異なるコントロールのアデノウイルス構築物をこれらの研究において比較のために用いたが、一方は導入遺伝子を含まず(ZZCB)、もう一方は、ヒト分泌アルカリホスファターゼ遺伝子(APCB)を含む。なぜなら、rAd−IFNは、分泌遺伝子産物を産生する。マウスに、100μlのrAd(1.1×1011P/ml)を含むSYN3処方物を2日連続して1時間投与した。投与の14日後(腫瘍の開始後20日)、マウスを屠殺して、その膀胱を回収して、ホルマリンで固定し、それらの腫瘍負荷を顕微鏡検査で評価した。腫瘍があった膀胱の全体的割合、および腫瘍の相対的サイズを記録した。腫瘍によって占有される膀胱管腔の割合に基づいて0〜4のスケールで腫瘍をスコア付けした。rAd−IFN/SYN3投与群における腫瘍の全体的頻度は、rAd−コントロールまたはSYN3のみの群における腫瘍の頻度よりも有意に低かった(図4)。著しいことに、rAd−IFN投与動物においては残りの腫瘍のわずかな例だけがコントロールに比較して有意に小さいサイズを有した。これらの結果によって、rAd−IFN/SYN3が、この正所性腫瘍モデルにおいて表在性膀胱腫瘍の増殖を大きく軽減させることが示される。
【0176】
他の研究では、トリプシン前処理後の緑色蛍光タンパク質(GFP)で安定にトランスフェクトされたヒトKU−7膀胱癌細胞の膀胱内投与によって表在性腫瘍が胸腺欠損マウスの膀胱で樹立される正所性腫瘍モデルが用いられている。膀胱を外科的に露出させて、GFP蛍光を活性化させる光を用いて照射することによって、腫瘍サイズの連続的評価は、動物を屠殺することなくインビボでモニターできる。腫瘍細胞を10日間増殖させて、その後すぐ膀胱を外科的に露出させて、照射して、各々の動物についての蛍光腫瘍負荷を写真で記録した。画像分析ソフトウェアを用いて、膀胱の総面積に対する、腫瘍細胞を含む膀胱の面積の割合をまた投与の前後に決定した。マウスには、100μlのrAd(1×1011P/ml)の膀胱内投与を2日続けて1時間ずつ行った。4つの投与群を比較した;rAd−IFN/SYN3、rAd−β−gall/SYN3 rAd−IFN単独またはSYN3単独。投与の21日後(腫瘍増殖の開始の31日後)、膀胱を再度膨張させて、外科的に露出させて、GFP腫瘍負荷を上記のように再度測定した。
【0177】
rAd−IFN/SYN3を投与された動物は、経時的に腫瘍負荷の有意な減少を示した(図5)。対照的に、腫瘍のサイズは他の全ての投与群では増大させ続けた。rAd−IFN単独の投与では、腫瘍増殖の有意な軽減は生じず、このことはこの処方物に増強因子SYN3を含むことの必要性を示す。rAd−β−gal/SYN3群では腫瘍増殖の軽減は観察されないので、rAd−IFN/SYN3群で観察される腫瘍増殖の減少は、インターフェロン導入遺伝子発現の結果であるはずであり、アデノウイルスベクターの投与に起因する単なる非特異性効果ではない。要するに、rAd−IFN/SYN3は、この正所性腫瘍モデルにおける表在性膀胱腫瘍の増殖を有意に軽減するようである。コントロールに比較してSYN3/rAd−IFNを用いて達成された腫瘍負荷の軽減を可視化するために、投与の前後での個々の動物についての腫瘍負荷の写真が各々の投与群について提供される)。
【0178】
(実施例8E.ラット膀胱におけるrAd−IFN発現の検出)
細胞にrAd−IFNを形質導入する場合、分泌されたタンパク質産物が産生される。従って、膀胱上皮において得られるウイルスの導入遺伝子発現のレベルは尿中で分泌されるインターフェロンの量によって評価され得るという仮説が立てられた。最初の実験で、rAd−IFNまたはrAd−コントロール(ZZCB)を含むSYN3処方物の膀胱内投与を受けた雌性Sprague−Dawleyラット由来の尿中のインターフェロンのレベルを比較した。ラットには、rAd(5×1010P/ml)を含むSYN3(1mg/ml)の膀胱内投与を45分間行って、回復させた。投与の48時間後、代謝ケージを用いて(4時間の収集)各々の動物から尿を得た。rAd−IFNを含むSYN3処方物を投与されたラットは、その尿中で極めて高レベルのインターフェロン有し(約25ng/ml)、その血清中のインターフェロンのレベルは極めて低かった(図5)。対照的に、rAd−コントロールを含むSYN3処方物を投与されたラットは、その尿または血清中にインターフェロンタンパク質を有さなかった。48時間後、ラットを屠殺して、その膀胱を回収して、ホモジナイズして、インターフェロンレベルを決定した。SYN3/rAd−IFNを投与されたラットは、膀胱ホモジネート中に有意に高レベルのIFNタンパク質が検出された。SYN3/rAd−コントロール動物の膀胱ホモジネート中ではインターフェロンは検出されなかった。これらの結果は、PCR/RT−PCRの結果と一致しており、これによって尿が膀胱のウイルス導入遺伝子発現のレベルおよび期間の両方をモニターするツールとして用いられ得ることが示唆される。
【0179】
(実施例9)
(パート1:化合物3の合成)
米国特許第6,392,069号から改変されているSYN3の合成スキームを図7に示す。ラクトビオン酸(2)のラクトンは、50mlのエタノールにラクトビオン酸(1)の1g(2.8mmol)を溶解すること、ロータリー・エバポレーター中で蒸発乾燥するまでエバポレートし、そのプロセスを6回繰り返すことによって、合成された。化合物3を得るためには、50℃まで加熱することによって、得られた残滓(2)を50mlのイソプロパノールに溶解した。この溶液に、1.2ml(8.4mmol)のN−3−アミノプロピル)−1,2−プロパンジアミンを添加した。この温度を100℃まで上昇させて、この溶液を3時間撹拌させた。ロータリー・エバポレーションによって溶媒を除去して、得られた残滓をクロロホルムを用いて数回洗浄して、過剰な未処理のN−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンを除去した。この残留している残滓(3)を以下のパート3においてそのままに用いた。
【0180】
(パート2:化合物4の合成)
2.28gのコール酸(5.6mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド中に、60℃に加熱することで溶解することによって化合物4を合成した。トリエチルアミン(0.78ml(5.6mmol))を添加して、溶液を氷浴中で冷却した。次いで、イソブチルクロロホルメート(0.73ml(5.6mmol))を添加して、撹拌を10分間続けて白色沈殿物を形成した。
【0181】
(パート3:SYN3(化合物5)の合成)
化合物IIIをN,N−ジメチルホルムアミド中に溶解して、氷浴中で冷却して、撹拌した。化合物4の合成から得られる懸濁物を化合物3を含む溶液中に濾過した。得られた溶液を室温下で6時間撹拌した。この溶媒を高圧ロータリー・エバポレーションを用いて除去して、その残滓を100mlのクロロホルム/メタノール(50/50)に溶解した。この溶液の25mlを、溶出溶媒としてクロロホルム/メタノール(60/40)を用いてシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。クロロホルム/メタノール/水/濃水酸化アンモニウム(100/80/10/5)からなる移動相を用いてシリカゲル薄層クロマトグラフィーによって、カラムから溶出する分画の分析を行った。硫酸エタノールの噴霧後の炭化によってこの化合物を可視化した。フラッシュクロマトグラフィーを用い、溶出溶媒としてクロロホルム/メタノール/水/濃水酸化アンモニウム(100/80/10/5)を用いて、生成物を含む画分を確認して、再精製した。生成物を含む画分を確認して白色粉末までエバポレートした(300mgの化合物5)。この生成物の1H−NMRおよびMALDI質量スペクトル分析は、示した構造と一致した。
【0182】
(実施例11)
好ましい送達増強化合物は以下の表に示す。この表は、コール酸置換基を有する化合物を例示するが、当業者は、他のステロイド置換基がこの化合物の送達増強特性を損なうことなくコール酸と置換できることを容易に理解する。このような化合物を作製する方法は、本出願と同じ譲受人に譲渡され、その全体が参考として本明細書に援用される、Townsend and Townsend and Crew LLP代理人整理番号:016930−000830USとして2003年6月4日に提出された仮出願に教示されており、そこに開示される形質導入因子および送達増強因子、これらを作製する方法およびそれらの用途が特に参照される。
【0183】
【表11】
(実施例12)
(SYN3処方物における膀胱内投与後のIFNタンパク質の取り込み)
本実施例は、SYN3処方物中で投与されたときに、インターフェロンタンパク質の組織レベルを、SYN3が増大させ得るか否かを決定することによって、インターフェロンタンパク質の取り込みをSYN3が増強するか否かを検討した。
【0184】
方法。ハイブリッドIFNタンパク質の供給は限定されているので、IFNα/2bタンパク質(Intron A)が主に用いられた。比較の目的で、t=0時点でハイブリッドタンパク質も包含され得る。非近交系のHSDラットを、イソフルランを用いて麻酔した。投与前の尿を収集した。カテーテルおよび潤滑剤を用いて膀胱に経尿道的に投与した。被験体を膀胱に投与した。尿道はカテーテルを引き抜くことなく2.0Gの縫合糸で結紮した。45分後(0時間)、被験体を取り出して、動物を飼育ケージ中で回復させた。屠殺の直前にラットから尿サンプルを得た。尿を収集した後、ラットからその日に膀胱を回収した。組織を凍結させて、IFN応答性遺伝子の上方制御についてアッセイした。
【0185】
【表12】
物質:
38匹の雌性Harlan Sprague−Dawleyラット;
IACB: Tris−グリセロール処方物 7.57×1011P/ml
IHCB: vPBS処方物 1.10×1012P/ml
SYN3: 6×ストック(6mg/ml)
Intron A: 使用参照バイアル:1mlの滅菌ナノピュアdH2O中で水和(10MIU/ml)
3,008μlのPBSで希釈した950μlのIntron A(2.4 MIU/ml)
PBSまたはSYN3のいずれか125μlに添加された625μlの希釈されたIntron A(6mg/ml)
IFN α2α1タンパク質: 105μg/ml=105×106pg/ml
1.34×107IU/ml
1.28×108IU/mg
IACBは、インターフェロンα2bの組換えアデノウイルスベクターであり、CMVプロモーターおよびE1領域欠失を有する。IHCBはハイブリッドインターフェロンα2α1の組換えアデノウイルスベクターであり、CMVプロモーターおよびE1領域欠失を有する。
【0186】
(被験体の調製:)
2.4MIU/mlの最終濃度でIFNα2bを調製する(1参照バイアルを1mlの滅菌注射用水中で水和する)。
950μl Intron A濃縮物
3,008μl PBS。
【0187】
PBS中でIFNα2bを調製するため:
625μl Intron A 2.4MIU/ml
125μl PBS。
【0188】
SYN3中でIFNα2bを調製するため:
625μl Intron A 2.4MIU/ml
125μl SYN3。
【0189】
SYN3中でrAd−IFNα2b(IACB)を調製するため:
66μl IACB
250μl SYN3
1184μl Tris−グリセロール緩衝液。
【0190】
IFNα/2α1タンパク質の濃縮物調製(2.2ml):
243μl IFN α2α1タンパク質
1957μl PBS。
【0191】
IFNα2α1/PBS:
625μl IFNα2α1タンパク質
125μl PBS。
【0192】
IFNα2α1/SYN3:
625μl IFNα2α1タンパク質
125μl SYN3。
【0193】
【表13】
従って、賦形剤の最終濃度は以下のとおりである:
SYN3: (120mg/20ml)/6=1mg/ml
クエン酸一水和物 (1.6mg/20ml)/6=0.01333mg/ml
クエン酸ナトリウム二水和物(5.1mg/20ml)/6=0.0425mg/ml
ヒドロキシ−シクロデキストリン(1000mg/20ml)/6=8.33mg/mlポリソルベート80(Tween−80)(60mg/20ml)/6=0.5mg/ml。
【0194】
組織ホモジネート中に存在するIFNα2bの量は、ELISAアッセイ(PBL)を用いて決定した。タンパク質の濃度は、Bradfordタンパク質アッセイを用いて測定した。組織に存在するIFNのレベルは、組織1mgあたりのIFNのpg数(pgIFN/組織mg)として表した(図8を参照のこと)。図8に示されるように、SYN3処方物中のIFNα2bの送達は、投与後最長24時間まで検出可能なIFNα2bタンパク質の量の約15倍の増大を生じた。ハイブリッドIFNタンパク質(IFNα2α1)の送達はまた、SYN3処方物中の送達によって増強され、そしてIFNα2bタンパク質と同様の組織濃度レベルで検出された。
【0195】
(実施例13)
(IFNタンパク質を含むSYN3処方物の投与後の膀胱上皮に対するインターフェロンの生物学的作用の分析)
本実施例によって、IFN組織濃度の増大が測定可能な生物学的応答を生じたか否かを検討した。生物学的活性を評価するため、本発明者らは、RT−PCRを用いて、IFNタンパク質での投与後のラット膀胱ホモジネート中のIFN応答性遺伝子の発現をモニターした(Intron Aおよび「ユニバーサル(universal)」インターフェロン(IFN A/D;IFNα2α1)の両方。以下のラット遺伝子をアッセイした:2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(2’,5’−OAS);インターフェロン誘導性p78タンパク質をコードする遺伝子(MxAMX1)(MX1);インターフェロン調節性因子1(IRF−1);およびインターフェロンγIFNγ。(IFNγは、正常にはIFN応答性遺伝子とはみなされないが、一般にはBCGのような病原体に対する曝露後に発現させ、同様のIFNγ応答が組換えアデノウイルスによって誘導されるか否かを決定するために含まれた)。この方法は概して、実施例12において上記されるものであった。1時間後、被験体を取り出して、動物をホームケージで回復させた。ラットを指定の時点で屠殺し(0時間=投与の直後)、そしてそのサンプルを液体N2中で急速凍結させて、RT−PCR分析に供した。
【0196】
【表14】
(必要な材料:)
38例の雌性Harlan Sprague−Dawleyラット;プロトコール04−634から移した
IACB: Tris−グリセロール処方物 7.57×1011P/ml
IHCB: vPBS処方物 1.10×1012P/ml
SYN3: 6×ストック(6mg/ml)
D−PBS
Tris−グリセロール緩衝液:
滅菌WFI
IFNα2α1タンパク質: 105μg/ml=105×106pg/ml
1.34×107IU/ml
1.28×108IU/mg。
【0197】
(被験物質の調製:)
(1)IFNα2b/PBS:2 MIU/ml最終濃度で5ml)
・1ml注射用滅菌水1,000μl Intron A濃縮物中で1参照バイアルを水和する(10MIU/バイアル)
4,000μl PBS。
【0198】
(2)IFN α2b/SYN3:最終濃度2MIU/mlで10ml)
・2ml注射用滅菌水2,000μl Intron A濃縮物で2つの参照バイアルを水和する。
6,334μl PBS
1,666μl SYN3。
【0199】
(IACB/SYN3:SYN3中に1.0×1011P/mlで4.5ml)
660μl IACB
750μl SYN3
3,090μl Tris−グリセロール緩衝液。
【0200】
(IFNα2α/PBS:1MIU/mlの最終濃度で4ml)
298μl IFNα2α1タンパク質
3,702μl PBS。
【0201】
(IFNα2α1/SYN3:1MIU/mlの最終濃度で6ml)
444μl IFNα2α1タンパク質
4,556μl PBS
1,000μl SYN3。
【0202】
(IHCB/SYN3 SYN3中に1.0×1011P/mlで4.0ml)
364μl IHCB
667μl SYN3
2,969μl Tris−グリセロール緩衝液。
【0203】
動物を指定の時点(図9〜11を参照のこと)において屠殺して、RT−PCR分析のために液体窒素上にその膀胱を回収した。一次分析では、Intron A/PBS送達後に観察されるレベルに対して上記の遺伝子のmRNAレベルを比較した。これにより、示されるグラフでは、遺伝子活性化のレベルは、Intron A/PBS群に対して正規化される(1.0)。
【0204】
図9〜12に示されるように、SYN3の追加は、同じ量のタンパク質を含むPBS処方物の送達に比較して、公知の下流IFN活性化遺伝子(2’−5’OAS,MX1)の発現を増大させた。SYN3におけるハイブリッドタンパク質(BS:IFNα2α1/SYN3)は、IFNα2bについて2MIU/mlの代わりに1MIU/mlで投与された場合でさえ、より強力な生物学的応答をもたらすと思われた。Intron A(IFNα2b)およびハイブリッドIFN(IFNα2α1)の両方ともSYN3処方物中で投与された場合、ラットOASおよびMX1遺伝子の発現を増大させたが、両方ともrAd−IFNα2bまたはrAd−IFNα2α1の投与後に得られたレベルよりも幾分か劣った。
【0205】
本明細書で記載される実施例および実施形態は、例示的な目的のものでしかなく、それらに照らして様々な改変または変化が当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に包含されるものであるということが理解される。本明細書に引用される全ての刊行物および特許出願は、各々の個々の刊行物または特許出願が詳細にかつ個々に参考として援用されることを意図しているように、全ての目的についてその全体が参考として本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】図1は、腫瘍細胞における遺伝子発現を増強する送達増強因子の効果を実証するために、本明細書に記載された実験において用いられる、複製欠損組換えアデノウイルス遺伝子送達系の模式図を提供する。
【図2】図2は、皮下の異種移植片腫瘍モデルにおける、組換えアデノウイルスインターフェロン遺伝子送達系およびSYN3を含む、薬学的組成物の抗腫瘍有効性を示すグラフ表示である。グリア芽細胞種(LN229、U87MG)、肝細胞腫(HEP3B)およびCML(K562)に由来する腫瘍を保有するヌードマウスにおいて腫瘍内rAd−IFN投与後に、腫瘍増殖の阻害が観察された。腫瘍内投与による皮下異種移植片腫瘍増殖の阻害。5匹のマウスの群に、ビヒクル、rAd−コントロール、またはrAd−IFNを用いて2週間の間、週に3日の注射によって投与した(1×1010粒子/用量;総用量6×1010粒子)。
【図3】図3は、ラットにおける組換えアデノウイルス遺伝子送達系の送達をSYN3が増強する能力を示す。雌性Sprague−Dawleyラットには、45分間に、rAd−β−gal(7.6×1010P/ml)を含むSYN3処方物(ビヒクルに1mg/ml)、またはビヒクル単独(0.1% Tween−80)のいずれかの膀胱内投与を与えた。48時間後、動物を屠殺して、それらの膀胱を回収し、固定して、lacZ発現についてX−gal染色した。
【図4】図4は、マウスの膀胱腫瘍モデルにおける腫瘍に対する、SYN3を有するインターフェロン遺伝子送達系を含む薬学的組成物の効果を示す。雌性ヌードマウスでは、経尿道的にカテーテルを使用して、3時間、UMUC−3細胞(1×107;100ml)を投与する前に30分間、100mlのトリプシン−EDTA(0.25%)を投与した。6日後、rAd−IFNまたはrAdコントロール(1×1011/100μl)またはSYN3のみ(1mg/ml)のいずれかの膀胱内投与によって動物に2×(24時間間隔;6日、7日)投与した。腫瘍細胞移植の21日後、動物を屠殺して、それらの膀胱を、顕微鏡検査および腫瘍負荷のスコア付けのためにホルマリンに収集した。腫瘍は以下のようにスコア付けした:0=腫瘍なし、1=閉塞した膀胱管腔のうち25%未満;2=閉塞した膀胱管腔のうち25〜50%;3=閉塞した膀胱管腔の50%超。
【図5】図5は、トリプシン前処理後に緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein)(GFP)で安定にトランスフェクトされたヒトKU−7膀胱癌細胞の膀胱内投与により胸腺欠損マウスの膀胱で表在性腫瘍を樹立した表在性膀胱癌の同所性腫瘍モデルにおける、遺伝子送達増強系と組み合わせたSYN3の有効性に関連するデータを提供する。GFP蛍光を活性化するために膀胱を外科的に露出および照射することによって、腫瘍サイズの経時的な評価は、動物を屠殺することなくインビボでモニターできる。腫瘍細胞を10日間増殖させ、その後、膀胱を外科的に露出させて照射し、そして各々の動物についての蛍光の腫瘍負荷を写真で記録した。画像分析ソフトウェアを用いて、膀胱の総領域に対する腫瘍細胞を含む膀胱の領域の割合をまた、投与の前後に決定した。2日連続して1時間、100μlのrAd(1×1011P/ml)の膀胱内投与をマウスに行った。4つの投与群を比較した:rAd−IFN/SYN3、rAd−β−gall/SYN3 rAd−IFN単独またはSYN3単独。投与の21日後(腫瘍増殖の開始後31日)、膀胱を再度膨らませて、外科的に露出させて、GFP腫瘍負荷を上記のように再度測定した。rAd−IFN/SYN3を投与された動物は、経時的に腫瘍負荷が有意に低下した。
【図6】図6は、血液、尿および膀胱の組織におけるインターフェロンのレベルに対する、SYN3およびインターフェロン遺伝子送達系を含む薬学的組成物の効果を示す。rAd−IFN(IACB)またはrAd−コントロール(ZZCB)のいずれかを含むSYN3処方物(1mg/ml)の膀胱内投与(100μl;7.4×1010P/ml)をマウスに行った。投与の2日後、尿および血清を各々の動物から得るとすぐに動物を屠殺して、それらの膀胱を回収して、ホモジナイズして、IFNのレベルについてアッセイした。このデータによって、インターフェロン発現のレベルが尿のアッセイによって決定され得るということ、およびインターフェロンをコードする遺伝子送達系の膀胱内投与後のインターフェロンタンパク質に対する動物の識別可能な全身的曝露がないということがわかる。
【図7】図7は、SYN3の合成の1つの方法を例示する。
【図8】図8は、種々の時点でのラットにおける尿路上皮によるインターフェロンの取り込みに対する、PBSと比較したSYN3処方物の効果を示す。ハイブリッドIFNタンパク質の供給が制限されるので、IFNα2bタンパク質(Intron A)が主に用いられた。比較のためには、ハイブリッドタンパク質をまた、t=0時点で含んだ。
【図9】図9は、ラットにおける、2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(OAS)のインターフェロン発現に対する、PBSと比較したSYN3処方物の効果を示す。
【図10】図10は、ラットにおける、MX1のインターフェロン誘導性発現に対する、PBSと比較したSYN3処方物の効果を示す。
【図11】図11は、ラットにおける、IRF1の任意のインターフェロン誘導性発現に対する、PBSと比較したSYN3処方物の効果を示す。
【図12】図12は、ラットにおける、IFNγのインターフェロン発現に対する、PBSと比較したSYN3処方物の効果を示す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2003年6月4日出願、米国特許出願第10/455,215号の一部継続出願であり、この出願は、2002年1月22日出願、米国特許出願第10/055,863号の一部継続出願であり、この出願は、1998年7月8日出願、米国特許出願第09/112,074号(2002年5月21日発行の米国特許第6,392,069号)の継続出願であり、この出願は、1997年7月8日出願、米国特許出願第08/889,355号の一部継続出願であり、この出願は、1996年1月8日出願、米国特許出願第08/584,077号(1998年8月4日発行、米国特許第5,789,244号)の一部継続であり;本出願はまた、2003年6月3日出願、譲渡された米国特許出願番号(Townsend and Townsend and Crew LLP代理人整理番号016930−000815)の一部継続出願であり、この出願は、2000年8月28日出願の米国特許出願第09/650,359号の継続出願であり、この出願は、1997年1月7日出願、米国特許出願第08/779,627号(2000年12月26日発行、米国特許第6,165,779号)の継続出願であり、この出願は、1996年1月8日出願、米国特許出願第08/584,077号の一部継続出願であり;本出願は、2004年6月4日出願、譲渡される米国特許出願番号(Townsend and Townsend and Crew LLP代理人整理番号016930−000831USに対する優先権を主張し、この出願は、2003年6月4日出願米国特許出願第60/475926号の恩典を請求する。本出願は、2001年12月20日出願、米国特許出願第60/342329号の恩典を請求する、2002年12月20日出願、米国特許出願第10/329,043号の主題に関する主題を含む。これらの優先出願の開示は、全ての目的のためにその全体が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
毎年米国では45,000例を超える表在性膀胱癌が診断されている(Cancer Facts and Figures 2002)。表在性の疾患は典型的には、粘膜表面(Ta)に限定されるか、または平面伝播性の改変型である上皮内癌(CIS)として存在する。いくつかのタイプの疾患は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)によって最初に切り出され得るが、おそらく、可視的な腫瘍の肉眼での切除では、最終的に腫瘍再発を生じる顕微鏡的な病巣が残留し得るので、新規な腫瘍形成の傾向は高いままである。さらに、上皮内癌(CIS)の治療には、外科的な介入は不可能である。従って、膀胱内療法が、腫瘍再発を防止する外科手術に対する補助療法として、または小さい残留性疾患および/またはCISのようなアクセス不能な疾患を排除するために、開発されている。
【0003】
表在性膀胱癌の治療のために、2つの一般的なタイプの膀胱内療法が現在使用されている:化学療法およびBCG免疫療法。膀胱内投与を介して有効性が示されている化学療法剤は3つしかない:チオテパ、アドリアマイシン(およびその誘導体、エピルビシンおよびバルビシン)、およびマイトマイシン。TURBT単独に対してこれらの化学療法剤を比較する多重無作為化トライアルによって、腫瘍再発の12〜15%という正味の減少(すなわち、TURBTでの60%の再発、対TURBTに加えて化学療法での45%の再発)があり、1因子では併用より明らかな優位性はないことが明らかになっている(非特許文献1)。さらに重要な事には、再発におけるこの統計学的に有意な低下にもかかわらず、化学療法が最終的な疾患の進行の可能性を減少させるか、または生存率を向上させるということを実証しているエビデンスは示されていない(非特許文献2)。
【0004】
免疫療法は典型的に、Mycobacterium bovis Bacillus Calmette−Guerin(「BCG」)の生ワクチン株の膀胱内投与からなる。腫瘍再発は、TURBT(または膀胱内化学療法約2回)後にBCGを用いて約30%に減少する(非特許文献3)。小さい乳頭状腫瘍(<2cm)の切除は、その時点で55〜60%、そしてCISについては75%まで達成され得る(非特許文献4)。膀胱内BCGは、再発または疾患の進行のリスクの高い表在性膀胱癌の患者では標準的な治療となっている。これに関して、BCGを用いる膀胱内療法によって、ある程度の疾患管理、および表在性膀胱癌のあらゆる患者について望ましい目標である、膀胱の機能的保持が可能である。しかし、高いリスクの表在性膀胱癌の初期治療についてのこのBCG介在性の利点にもかかわらず、約50%の患者が2年以内に再発する。一般に、このような再発はBCGで再治療される。しかし、複数回の膀胱内BCG点滴で治療された患者は、用量制限毒性、例えば、膀胱炎、排尿障害、発熱、そして場合によりBCG敗血症を被り得ることが観察された。従って、十分な忍容性を示し、かつ有効であるBCG治療に対する代替法が望まれる。
【0005】
近年では、研究者は、表在性膀胱癌の治療のための膀胱内での組換えインターフェロンα2bタンパク質(IntronA(登録商標))療法について評価している。第II相ヒト臨床試験によって、50〜100MIUの用量での単独薬剤としての膀胱内滴下注入IntronAは、表在性膀胱癌を有する患者の40%において完全寛解を得ることが実証された(非特許文献5)。
【0006】
上記の観点から、上皮細胞、そして特に尿路上皮に対する、治療用タンパク質、ポリペプチド(例えば、インターフェロン、IntronA)または遺伝子送達系または核酸の送達を改善する方法を有することは有利である。
【非特許文献1】Traynelis et al.,「Current status of intravesical therapy for bladder cancer In:S.N.Rous(編)Urology Annual」,New York:WW Norton and Co,1994,Vol.8,pp.113−143
【非特許文献2】Lamm et al.,J Urol,(1995)153:1444〜50
【非特許文献3】O’Donnell MA,「Use of Intravesical BCG in Treatment of Superficial Bladder Cancer」In:Droller、編、Bladder Cancer:Current Diagnosis and Treatment,Totowa NJ:Human Press Inc.,2001
【非特許文献4】Kavoussi et al.,J.Urol.(1988)139:935
【非特許文献5】O’Donnell et al.,J.Urol.,2001 Oct.,166(4):1300〜5
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明の1態様では、上皮細胞層を有する組織または器官に対してタンパク質療法を行うための方法および薬学的組成物が提供される。1態様では、タンパク質療法は、ベクターによって標的組織または器官の細胞の形質導入を増大する、タンパク質療法送達増強因子を用いた治療と併用して標的の組織または器官に投与される。この方法および組み合わせは、生物学的に活性なタンパク質を用いた治療に応答性である癌および他の状態の治療に有効であり得る。好ましい実施形態では、送達増強因子はSYN3である。
【0008】
いくつかの実施形態では、タンパク質療法は、インターフェロンタンパク質自体の投与によって、または形質導入された上皮もしくは尿道上皮細胞において発現されるべきインターフェロンタンパク質を遺伝子がコードしている、インターフェロン遺伝子送達系の投与によって、インターフェロンタンパク質を提供する。例示的な実施形態では、この
方法は、SYN3またはSYN3のホモログもしくはアナログおよびインターフェロンまたはこのインターフェロンをコードするアデノウイルスベクターを含む薬学的組成物の治療上有効な量の膀胱への経尿道膀胱内投与を包含する。さらなる実施形態では、このインターフェロンは、αインターフェロンである。
【0009】
別の態様では、本発明は、上皮組織に対する核酸の送達を増強するための組成物および方法を提供する。1つの実施形態では、この方法は、送達増強因子と組み合わせてインターフェロンを遺伝子がコードする、遺伝子送達系を、組織または器官の細胞と接触させる工程を提供する。1つのさらなる実施形態では、本発明は、インターフェロン遺伝子をコードする組換えアデノウイルスおよび送達増強因子を含む薬学的組成物を提供する。例示的な実施形態では、この送達増強因子はSYN3であり、そしてこの系は、生物学的に活性なヒトインターフェロンポリペプチドをコードするアデノウイルスベクターを含む。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、送達増強因子および治療タンパク質の膀胱内投与により、膀胱上皮に対する、治療タンパク質またはこのタンパク質をコードする遺伝子を有する遺伝子送達系の送達を増強することによって、膀胱癌を治療するための組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態では、この治療タンパク質はインターフェロンである。さらなる実施形態では、この治療タンパク質はインターフェロンα2bまたはインターフェロンα2α1である。さらに他の実施形態では、送達増強因子はSYN3またはSYN3ホモログである。例示的実施形態では、送達増強因子はSYN3であり、タンパク質はインターフェロン(例えば、生物学的に活性なヒトインターフェロンポリペプチド)である。さらなる実施形態では、タンパク質は、タンパク質としてまたはこのタンパク質をコードする遺伝子送達系を介して投与され得る。さらに他の実施形態では、このタンパク質は、抗体または抗体フラグメントである。さらなる実施形態では、抗体は、サイトカインを指向している。
【0011】
別の態様では、本発明は、治療タンパク質または送達増強因子の投与のための薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、このタンパク質は、インターフェロンであり、そして送達増強因子は、SYN3またはSYN3ホモログである。例示的な実施形態では、この送達増強因子はSYN3であり、このタンパク質は生物学的に活性なヒトインターフェロンポリペプチドである。さらなる実施形態では、このインターフェロンはインターフェロンα2bまたはインターフェロンα2α1である。
【0012】
いくつかの態様では、本発明の方法は、送達増強因子および治療用タンパク質または治療タンパク質をコードする核酸の膀胱内投与によって、上皮膜で裏打ちされたかまたは上皮膜を含む、内部の隙間、洞、室、通路、容積、腔、空隙または管腔を規定する任意の器官または組織を治療する工程を包含する。このように規定された表面または壁は、薬学的組成物の身体の別の部分への大量の液体の動きまたは移動を含むか、または遅らせるか、または制限するように機能し、そして上皮膜と薬学的組成物との長い接触時間を可能にし得る。器官または組織は、内面に上皮膜を有する膀胱(bladder)(例えば、膀胱(urinary bladder))であってもよい。ある実施形態では、器官は胃、子宮、腸、食道、口、結腸、上部もしくは下部の消化管、または上部もしくは下部の気道である。ある実施形態では、この器官または組織は、腹腔のような空間を規定し、上皮表面は、腹腔内の空間と液体接触し得る上皮表面上に位置する。ある実施形態では、この器官または組織は癌を有する。増殖性障害または感染性疾患および治療タンパク質は、インターフェロンであり、そして送達増強因子はSYN3またはSYN3アナログである。
【0013】
本発明によれば、さらに以下が提供される。
(項目1)
1)SYN3およびSYN3ホモログからなる群より選択される送達増強因子、ならびに2)インターフェロンタンパク質またはインターフェロン遺伝子送達系を含有する薬学的組成物であって、該遺伝子送達系がインターフェロンの遺伝子を含有し、かつ該インターフェロンの遺伝子が、該遺伝子の発現を調節する遺伝的調節要素に作動可能に連結されている、薬学的組成物。
(項目2)
前記組成物が、薬学的に受容可能なキャリアを含有する、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目3)
前記組成物が、凍結乾燥される、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目4)
前記組成物が、SYN3を含有する、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目5)
前記インターフェロンが、α−インターフェロン、β−インターフェロン、δ−インターフェロン、γ−インターフェロンおよびそれらの融合インターフェロンからなる群より選択される、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目6)
前記インターフェロンが、インターフェロンα−2b、融合インターフェロンα−/2α−1、およびインターフェロンα−2eからなる群より選択される、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目7)
前記因子が、SYN3であり、かつ前記インターフェロンが、ヒトαインターフェロンまたはその融合インターフェロンである、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目8)
前記αインターフェロンが、α1インターフェロンまたはα2インターフェロンである、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目9)
前記インターフェロンが、ヒトインターフェロンである、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目10)
前記ホモログが以下の式:
【化1】
の化合物である、項目1に記載の薬学的組成物であって、
ここで:
R1およびR2は、個々に独立して、水素およびヒドロキシル基からなる群より選択されるメンバーであり;
mおよびnは、個々に独立して、約0〜2から選択され;
R3は、−NR4R5からなる群より選択され、ここでR4およびR5は、個々に独立して、水素、糖残基、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアシル、および任意に置換されたアシルオキシ、および四級アンモニウム塩−NR6R7R8Xからなる群より選択されるメンバーであり、ここでR6、R7およびR8は、独立して、水素およびC1−C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり、そしてXは、ハロゲンおよび任意に置換されたカルボキシレートからなる群より選択される負に荷電されたイオン結合された対イオンである、
薬学的組成物。
(項目11)
R1およびR2が、両方ともヒドロキシル基である、項目10に記載の組成物。
(項目12)
mおよびnが、それぞれ1である、項目10に記載の組成物。
(項目13)
前記化合物が、式II:
【化2】
を有する、項目12に記載の組成物。
(項目14)
R4が、水素であり;そしてR5が、水素、糖残基、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアシル、および任意に置換されたアシルオキシからなる群より選択されるメンバーである、項目10に記載の組成物。
(項目15)
前記化合物が、式III:
【化3】
を有する、項目10に記載の組成物。
(項目16)
R4がスクシニルである、項目10に記載の化合物。
(項目17)
R4がアセチルである、項目10に記載の化合物。
(項目18)
R3がトリメチルアンモニウム塩である、項目10に記載の化合物。
(項目19)
R3がトリエチルアンモニウム塩である、項目10に記載の化合物。
(項目20)
哺乳動物被験体に対してインターフェロンを送達するための方法であって、該方法は、SYN3およびSYN3ホモログからなる群より選択される送達増強因子を含有する薬学的組成物の治療上有効な量を該被験体の上皮組織または器官に投与する工程、およびインターフェロンまたはインターフェロン遺伝子送達系を投与する工程を包含し、ここで該遺伝子送達系が、インターフェロンの遺伝子を含み、そして該インターフェロンの遺伝子が、該遺伝子の発現を調節する遺伝的調節要素に作動可能に連結されている、方法。
(項目21)
前記因子が、SYN3である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記因子がSYN3であり、かつ前記組成物中の該SYN3の濃度が0.1mg〜10mg/mlである、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記インターフェロンが、α−インターフェロン、β−インターフェロン、δ−インターフェロン、γ−インターフェロンおよびそれらの融合インターフェロンからなる群より選択される、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記インターフェロンが、インターフェロンα−2bからなる群より選択され、融合インターフェロンがα−/2α−1、およびインターフェロンα−2eである、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記被験体が、ヒトであり、前記因子が、SYN3であり、そして前記インターフェロンが、ヒトαインターフェロンまたはその融合インターフェロンである、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記αインターフェロンが、α1インターフェロンまたはα2インターフェロンである、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記インターフェロンが、ヒトインターフェロンである、項目20に記載の方法。
(項目28)
前記組成物が、組織または器官に対して膀胱内に投与される、項目23に記載の方法。
(項目29)
前記組織または器官が、癌性である、項目23に記載の方法。
(項目30)
前記組織または器官が、ヒト膀胱である、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記投与が、ほぼ週1回、月2回、毎月および隔月からなる群より選択される間隔である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記投与が、所定の範囲内でインターフェロン遺伝子の発現を維持するために投与される組成物の投与の頻度または量に関して調節される、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記組成物が、約50〜600mlの体積で投与される、項目30に記載の方法。
(項目34)
前記体積が、約100〜300mlである、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記組成物が、カテーテルによって投与される、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記カテーテルが、バルーンカテーテルであり、該カテーテルのバルーン部分が、膀胱の空隙体積を減少させるために挿入後に膨張される、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記被験体が、再発性または反復性の膀胱癌患者である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記被験体が、BCG療法を用いて事前処置された、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記組織または器官が、気道組織もしくは器官、上部もしくは下部胃腸の組織もしくは器官、または腹膜組織もしくは器官である、項目20に記載の方法。
(項目40)
前記組成物が、約5分間〜約2時間の時間にわたって投与される、項目30に記載の方法。
(項目41)
前記組成物中のSYN3の濃度が、0.1〜10mg/mlの量である、項目30に記載の方法。
(項目42)
前記ホモログが、式:
【化4】
を有する、項目23に記載の方法であって、
ここで:
R1およびR2は、個々に独立して、水素およびヒドロキシル基からなる群より選択されるメンバーであり;
mおよびnは、個々に独立して、約0〜2から選択され;
R3は、−NR4R5からなる群より選択され、ここでR4およびR5は、個々に独立して、水素、糖残基、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアシル、および任意に置換されたアシルオキシ、および四級アンモニウム塩−NR6R7R8Xからなる群より選択されるメンバーであり、ここでR6、R7およびR8は、独立して、水素およびC1−C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり、そしてXは、ハロゲンおよび任意に置換されたカルボキシレートからなる群より選択される負に荷電されたイオン結合された対イオンである、方法。
(項目43)
前記SYN3またはSYN3ホモログが、インターフェロンまたは遺伝子送達系との同時処方物中で投与される、項目20に記載の方法。
(項目44)
前記SYN3組成物またはSYN3ホモログ組成物、および前記インターフェロンまたはインターフェロン遺伝子送達系が、別個に投与される、項目20に記載の方法。
(項目45)
前記SYN3組成物またはSYN3ホモログ組成物が、前記インターフェロンまたはインターフェロン遺伝子送達系の投与の前に投与される、項目44に記載の方法。
(項目46)
キットであって、以下:
インターフェロンの送達を強化し得るSYN3またはSYN3ホモログを含む第一の容器;および
インターフェロンまたは遺伝子送達系を含む第二の容器であって、該遺伝子送達系が、インターフェロンの遺伝子を含み、該インターフェロンの遺伝子が、該遺伝子の発現を調節する遺伝的調節要素に作動可能に連結されている、第二の容器、
を備えるキット。
(項目47)
前記第一の容器が、SYN3の凍結乾燥処方物を含む、項目46に記載のキット。
(項目48)
前記第二の容器が、インターフェロンまたは遺伝子送達系の凍結乾燥処方物を含む、項目46に記載のキット。
(項目49)
前記インターフェロン遺伝子が、αインターフェロン遺伝子である、項目46に記載のキット。
(項目50)
前記インターフェロン遺伝子が、ヒトである、項目46に記載のキット。
(項目51)
SYN3およびSYN3ホモログからなる群より選択される遺伝子送達増強因子ならびに遺伝子送達系を含有する薬学的組成物であって、該遺伝子送達系は、インターフェロンの遺伝子を含み、該インターフェロンの遺伝子は、該遺伝子の発現を調節する遺伝的調節要素に作動可能に連結されている、薬学的組成物。
(項目52)
前記遺伝子送達系が、組換えウイルスベクターを含む、項目51に記載の薬学的組成物。
(項目53)
前記組換えウイルスベクターが、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびアデノウイルスベクターからなる群より選択される、項目52に記載の薬学的組成物。
(項目54)
前記因子が、SYN3であり、前記インターフェロンが、ヒトαインターフェロンまたはその融合インターフェロンであり、前記遺伝子送達系が、組換えアデノウイルス遺伝子送達系である、項目53に記載の薬学的組成物。
(項目55)
前記組成物が、単位投薬量形態であり、前記因子の量が1〜2000mgである治療量の組成物を含む、項目51に記載の薬学的組成物。
(項目56)
哺乳動物被験体にインターフェロンを送達するための方法であって、該方法は、SYN3およびSYN3ホモログからなる群より選択される送達増強因子および遺伝子送達系を含む薬学的組成物の治療上有効な量を該被験体の上皮組織または器官に投与する工程を包含し、該遺伝子送達系が、インターフェロンの遺伝子を含み、該インターフェロンの遺伝子が、該遺伝子の発現を調節する遺伝的調節要素に作動可能に連結されている、方法。
(項目57)
前記遺伝子送達系が、DNAおよび陽イオン性脂質を含む、項目51に記載の方法。
(項目58)
前記インターフェロンの発現を測定するために、尿がモニタリングされる、項目51に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
他に規定しない限り、本明細書において用いる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において引用される、各々の刊行物、特許出願、特許および他の引用文献は、本開示と矛盾しない程度までその全体が参考として援用される。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「1つの(「a」、「an」)」、および「この、その(「the」)」は、文脈が他に明確に示さない限り、複数の言及を包含する。
【0016】
1態様では、本発明は、上皮層または尿路上皮を有する組織に対するタンパク質または核酸の送達を増強する組成物および方法を提供する。1つの実施形態では、この方法は、組織または器官の細胞と、インターフェロンまたはインターフェロンをコードする遺伝子送達系とを、送達増強因子と組み合わせて接触させる工程を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明は、上皮と送達増強因子(例えば、SYN3)とを接触させることによって、上皮に対するタンパク質(例えば、インターフェロン)の送達を増強する組成物および方法を提供する。1つの実施形態では、この方法は、膀胱の尿路上皮と1)インターフェロンまたはインターフェロン遺伝子送達系、および2)SYN3またはSYN3ホモログとを接触させる工程を提供する。本発明は、膀胱に対する遺伝子送達系およびタンパク質のSYN3増強性送達が、SYN3を用いて組換えアデノウイルス遺伝子療法で得られたものに対抗する量で生物学的に活性なタンパク質(例えば、インターフェロン)を送達する高度に有効な方法であるという発見に関する。これらの結果によって、特に、インターフェロンのSYN3増強送達が膀胱癌を治療するのに有効であることが示される。この結果によってまた、一般に、SYN3およびそのホモログがまた、特に尿路上皮に関して、上皮組織の細胞に対する上皮性の障壁を横切って他の治療タンパク質を送達するのに有効であるはずであるということが示される。
【0018】
(遺伝子送達系:)
「遺伝子送達系(gene delivery system)」は、細胞中のタンパク質遺伝子の発現をもたらす発現調節配列に作動可能に連結された、生物学的に活性なタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドを含む。インターフェロン遺伝子送達系は、細胞中でインターフェロン遺伝子の発現をもたらす発現調節配列に作動可能に連結された、インターフェロンをコードする組換えポリヌクレオチドを含む。
【0019】
ポリヌクレオチドという用語は、ヌクレオチドモノマーからなるポリマーをいう。ポリヌクレオチドとは、天然に存在する核酸、例えば、デオキシリボ核酸(「DNA」)およびリボ核酸(「RNA」)、ならびに核酸アナログを包含する。核酸アナログとは、それらの天然には存在しない塩基、天然に存在するホスホジエステル結合以外のヌクレオチドと連結されて係合しているか、またはホスホジエステル結合以外の連結を通じて結合された塩基を含むヌクレオチドを包含する。従って、ヌクレオチドアナログとしては、例えば、限定はしないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、ホスホラミダイト、ボラノホスフェート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNAs)などが挙げられる。このようなポリヌクレオチドは、例えば、自動的なDNAシンセサイザーを用いて合成され得る。「核酸(nucleic acid)」という用語は典型的には、大型のポリヌクレオチドをいう。「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」という用語は典型的には、短いポリヌクレオチド、一般には約50未満のヌクレオチドをいう。ヌクレオチド配列が、DNA配列(すなわち、A、T、G、C)によって提示される場合、これはまた、「U」が「T」と置き換わっているRNA配列(すなわち、A、U、G、C)を含むことが理解される。「組換えポリヌクレオチド(recombinant
polynucleotide)」とは、天然には一緒に連結されていない配列を有するポリヌクレオチドをいう。増幅されるかまたはアセンブルされた組換えポリヌクレオチドは、適切なベクターに含まれてもよく、そしてベクターを用いて、被験体の適切な宿主細胞を形質転換することができる。組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞(recombinant host cell)」と呼ばれる。次いで、遺伝子は、組換え宿主細胞中で発現されて、例えば、「組換えインターフェロンポリペプチド(recombinant interferon polypeptide)」を産生する。
【0020】
「コードする(encoding)」という用語は、生物学的プロセス中で他のポリマーおよび高分子の合成のためのテンプレートとして機能する遺伝子、cDNAまたはmRNAのようなポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特定の配列であって、ヌクレオチドの規定の配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)またはアミノ酸の規定の配列のいずれかを有する配列の固有の特性、ならびにそれから得られる生物学的特性をいう。従って、ある遺伝子によって生成されるmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的系において、このタンパク質を産生する場合、この遺伝子はこのタンパク質をコードする。mRNA配列に対してヌクレオチド配列が同一であり、配列表において一般に提供される、両方のコード鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のテンプレートとして用いられる、非コード鎖は、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードするということができる。他に特定しない限り、「インターフェロンのアミノ酸配列またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(nucleotide sequence encoding an interferon amino acid sequence or polypeptide)」とは、お互いの縮重バージョンであり、かつ同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を包含する。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含んでもよい。
【0021】
「発現調節配列(expression control sequence)」とは、ポリヌクレオチド中のヌクレオチド配列であって、それに作動可能に連結されたヌクレオチド配列の発現(転写および/または翻訳)を調節するヌクレオチド配列をいう。「作動可能に連結された(operatively linked)」とは、2つの部分の間の機能的関係であって、1部分の活性(例えば、転写を調節する能力)が他の部分(例えば、配列の転写)に対して作用を生じる関係をいう。発現調節配列としては、例えば、限定はしないが、プロモーター(例えば、誘導性プロモーターまたは構成的プロモーター)、エンハンサー、転写ターミネーター、開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンのスプライシングシグナルおよび終止コドンの配列を挙げることができる。
【0022】
発現ベクターは、発現のための十分なシス作用性エレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞発現系によって供給され得る。発現ベクターとしては、当該分野で公知のベクター、例えば、コスミド、プラスミド(例えば、裸のまたはリポソームに含まれるプラスミド)および組換えポリヌクレオチドを組み込むウイルスが挙げられる。
【0023】
1つの実施形態では、特定の発現調節配列を使用して、目的の組織により優先的に用いられるプロモーターおよび/または他の発現エレメントの使用によって、特定のタイプの組織中のインターフェロン遺伝子の選択的発現を得ることができる。公知の組織特異的プロモーターの例としては、筋肉および心臓組織におけるジストロフィンcDNA発現の発現を指向するように用いられている、クレアチンキナーゼのプロモーター(Cox et
al.,Nature,364:725−729(1993));B細胞における遺伝子の発現のための免疫グロブリン重鎖または軽鎖プロモーター;それぞれ肝臓系統の細胞およびヘパトーマ細胞の標的細胞に対するアルブミンまたはαフェトプロテインプロモーターが挙げられる。肝臓についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、HMG−CoAリダクターゼプロモーター(Luskey,Mol.Cell.Biol.,7(5):1881〜1893(1987));ステロール調節エレメント1(SRE−1;Smith et al.,J.Biol.Chem.,265(4):2306〜2310(1990);ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)プロモーター(Eisenberger et al.,Mol.Cell Biol.,12(3):1396〜1403(1992));ヒトC応答性タンパク質(CRP)プロモーター(Li et al.,J.Bio.Chem.,265(7):4136−4142(1990));ヒトグルコキナーゼプロモーター(Tanizawa et al.,Mol.Endocrinology,6(7):1070−81(1992);コレステロール7αヒドロキシラーゼ(CYP−7)プロモーター(Lee et al.,J.Biol.Chem.,269(20):14681−9(1994));βガラクトシダーゼα−2,6シアリルトランスフェラーゼプロモーター(Svensson et al.,J.Biol.Chem.265(34):20863−8(1990);インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP−1)プロモーター(Babajko et al.,Biochem Biophys.Res.Comm.,196(1):480−6(1993));アルドラーゼBプロモーター(Bringle et al.,Biochem J.,294(Pt2):473−9(1993));ヒトトランスフェリンプロモーター(Mendelzon et al.,Nucl.Acids Res.,18(19):5717〜21(1990);コラーゲンI型プロモーター(Houglum et al.,J.Clin.Invest.,94(2):808−14(1994))。前立腺の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)プロモーター(Banas et al.,Biochim.Biophys.Acta.1217(2):188−94(1994);94の前立腺分泌タンパク質(PSP 94)プロモーター(Nolet et al.,Biochim.Biophys.ACTA,1098(2):247―9(1991));前立腺特異的抗原複合体プロモーター(Casper et al.,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.,47(1−6):127−35(1993));ヒト腺性カリクレイン遺伝子プロモーター(hgt−1)(Lilja et al.,World J.Urology,11(4):188−91(1993)が挙げられる。胃組織の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないがヒトH+/K+−ATPaseαサブユニットプロモーター(Tanura et al.,FEBS Letters,298:(2−3):137−41(1992))が挙げられる。膵臓の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、膵炎関連タンパク質プロモーター(PAP)(Dusetti et al.,J.Biol.Chem.,268(19):14470−5(1993));エラスターゼ1転写エンハンサー(Kruse et al.,Genes and Development,7(5):774−86(1993));膵臓特異的アミラーゼおよびエラスターゼエンハンサープロモーター(Wu et al.,Mol.Cell.Biol.,11(9):4423−30(1991);Keller et al.,Genes & Dev.,4(8):1316−21(1990));膵臓コレステロールエステラーゼ遺伝子プロモーター(Fontaine et al.,Biochemistry,30(28):7008−14(1991))が挙げられる。子宮内膜の例示的組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、ウテログロビンプロモーター(Helftenbein et al.,Annal.NY Acad.Sci.,622:69−79(1991))が挙げられる。副腎細胞の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、コレステロール側鎖切断(SCC)プロモーター(Rice et al.,J.Biol.Chem.,265:11713−20(1990)が挙げられる。全身の神経系の例示的な組織特異的発現系としては、限定はしないが、γ−γエノラーゼ(ニューロン特異的エノラーゼ、NSE)プロモーター(Forss−Petter et al.,Neuron、5(2):187−97(1990))が挙げられる。脳の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、神経フィラメント重鎖(NF−H)プロモーター(Schwartz et al.,J.Biol.Chem.,269(18)13444−50(1994))が挙げられる。リンパ球の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、ヒトCGL−1/グランザイムBプロモーター(Hanson et al.,J.Biol.Chem.,266(36):24433−8(1991));末端デオキシトランスフェラーゼ(TdT)、λ5、VpreBおよびlck(リンパ球特異的チロシンプロテインキナーゼp56lck)プロモーター(Lo et al.,Mol.Cell.Biol.,11(10):5229−43(1991));ヒトCD2プロモーターおよびその3’転写エンハンサー(Lake et al.,EMBO J.,9(10):3129−36(1990))、ならびにヒトNK細胞およびT細胞特異的活性化(NKG5)プロモーター(Houchins et al.,Immunogenetics,37(2):102−7(1993))が挙げられる。結腸の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、pp60c−srcチロシンキナーゼプロモーター(Talamoni et al.,J.Clin.Invest,91(1):53−60(1993));器官特異的新生抗原(neoantigen)(OSN),mw40kDa(p40)プロモーター(Ilantzis et al.,Microbiol.Immunol.,37(2):119−28(1993));結腸特異的抗原Pプロモーター(Sharkey et al.,Cancer,73(3 supp.)864−77(1994))が挙げられる。乳房細胞の例示的な組織特異的発現エレメントとしては、限定はしないが、ヒトαラクトアルブミンプロモーター(Thean et al.,British J.Cancer.,61(5):773−5(1990))が挙げられる。
【0024】
「インターフェロン遺伝子(interferon gene)」という用語の使用は、インターフェロンの発現を指向する遺伝子を指す。
【0025】
本明細書において用いられる「遺伝子(gene)」という用語は、ポリペプチドをコードする核酸配列を指すものとする。この定義は、種々の配列多型性、変異および/または配列変異体であって、このような変更が遺伝子産物の機能に影響しないものを包含する。「遺伝子(gene)」という用語としては、コード配列だけではなく、プロモーター、エンハンサーおよび末端領域のような調節性領域を挙げることができる。この用語はさらに、選択的スプライシング部位から生じる変異体とともに、mRNA転写物からスプライシングされた全てのイントロンおよび他のDNA配列を包含し得る。ポリペプチドをコードする核酸配列は、特定のタンパク質またはペプチドの発現を指向する、DNAまたはRNAであってもよい。これらの核酸配列は、RNAに転写されるDNA鎖配列であっても、タンパク質に翻訳されるRNA配列であってもよい。これらの核酸配列としては、全長核酸配列、および全長タンパク質に由来する非全長配列の両方が挙げられる。この配列は、特定の宿主細胞においてコドン優先を提供するために導入され得るネイティブの配列(単数または複数)の縮重コドンを包含することがさらに理解される。
【0026】
1態様では、本発明は、上皮と送達増強因子(例えば、SYN3またはSYN3ホモログ)とを接触させることによって、上皮に対するタンパク質(例えば、インターフェロン)の送達を増強する組成物および方法を提供する。このタンパク質は、サイトカイン(例えば、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子)、転移抑制因子または腫瘍抑制タンパク質であってもよい。いくつかの実施形態では、このタンパク質は、任意の1つ以上のマクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−11(IL−11)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−13(IL−13)、インターロイキン−18(IL−18)、熱ショックタンパク質(HSP)、p53、および血管新生阻害因子(血管内皮細胞成長因子(VEGF)の血管形成作用に対向するタンパク質因子、転移抑制因子、例えば、メタロプロテイナーゼの組織インヒビター(TIMP)およびBCG活性を増大する因子である。
【0027】
いくつかの実施形態では、タンパク質療法のタンパク質は、抗体であり、この抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体またはFabフラグメントであってもよい。この抗体は、キメラまたはヒト化抗体であってもよい。これらの抗体としては、限定はしないが、サイトカインに対する抗体ならびにI型およびII型インターフェロン(例えば、抗インターフェロンα、抗インターフェロンβ、抗インターフェロンδ、抗インターフェロンγ)、ならびにインターロイキン(例えば、抗IL−1、抗IL−2、抗IL−4、抗Il−6、抗IL−7および抗IL−10)に対する抗体が挙げられる。本発明の状況では、抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、およびF(ab’)2)および組換え産生された結合パートナーを含むことが理解される。抗体は、Kaが10−7M以上である場合に、この標的に対して反応性であることが理解される。
【0028】
ポリクローナル抗体は、種々の温血動物から当業者によって容易に生成され得る。モノクローナル抗体はまた、従来の技術を用いて容易に生成され得る(例えば、米国特許第RE32,011号、同第4,902,614号;同第4,543,439号;および同第4,411,993号を参照のこと;またKennett,McKearnおよびBechtol(編)Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analysis,Plenum Press,(1980);ならびにHarlow and lane(編)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988))を参照のこと。好ましい抗体の調製はさらに、以下の実施例の節に記載される。
【0029】
本明細書において用いられるインターフェロンという用語は、インターフェロンポリペプチドの全てのクラスおよびサブクラス、ならびにその欠失、挿入または保存的アミノ酸置換を含む置換変異体、その生物学的に活性なポリペプチドフラグメント、ならびにその対立形質を含むこととする。種々の適切なインターフェロンポリペプチドは、当業者に公知である。いくつかの実施形態では、インターフェロンポリペプチドは、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロンおよびωインターフェロン(例えば、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロンおよびωインターフェロン)と通常命名されるインターフェロンおよびそれらの組み合わせを含む、I型またはII型のインターフェロンであり、αインターフェロンのコンセンサス配列を含む。いくつかの実施形態では、αインターフェロンは、α1またはα2−インターフェロンである。いくつかの実施形態では、この遺伝子はインターフェロンα−2bをコードする。
【0030】
いくつかの実施形態では、インターフェロンタンパク質(タンパク質として投与される場合、または遺伝子送達系によってコードされる)は、野生型インターフェロンポリペプチドである。他の実施形態では、インターフェロンは、野生型インターフェロンポリペプチドまたはその融合タンパク質に対して実質的に同一である。2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の状況では、「同一な(identical)」または「同一性(identity)」パーセントという用語は、最大対応について比較および整列された場合、同じであるか、または同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基の特定の割合を有する2つ以上の配列(単数または複数)をいう。2つの核酸またはポリペプチドの状況では、「実質的に同一な(substantially identical)」という用語は、Altschul et al.,J.Mol.Biol.,215:403−410(1990)に記載されるBLASTアルゴリズムを用いて測定される場合、最大対応について比較および整列されるときに、少なくとも70%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する2つ以上の配列(単数または複数)をいう。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて一般的に利用可能である。配列同一性のパーセントを算出することに加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列の間の類似性の統計的分析を行う(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,90:5873−5787(1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの指標は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸の配列の間のマッチが偶然生じる確率の指標となる最小合計確率(P(N))である。例えば、核酸は、参照核酸に対する試験核酸の比較における最小合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満である場合、この参照配列に類似であるとみなされる。
【0031】
他の実施形態では、インターフェロンポリペプチド(タンパク質として投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる場合)は実質的に、ネイティブポリペプチドの50アミノ酸、100アミノ酸、150アミノ酸または全長のストレッチにわたって、ネイティブまたは野生型ポリペプチドの配列に対して同一である。いくつかの実施形態では、インターフェロンポリペプチド(投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる)は、ネイティブポリペプチドの50アミノ酸、100アミノ酸または全長のストレッチにわたって、野生型インターフェロンポリペプチドの配列に対して99%、98%、95%または90%同一である。いくつかの実施形態では、インターフェロンポリペプチド(タンパク質として投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる)は、ネイティブポリペプチドの50アミノ酸、100アミノ酸または全長のストレッチにわたって、ヒト野生型αインターフェロンポリペプチドの配列に対して実質的に同一である。いくつかの実施形態では、遺伝子送達系によってコードされるインターフェロンポリペプチド(タンパク質として投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる)は、ネイティブポリペプチドの50アミノ酸、100アミノ酸、150アミノ酸または全長のストレッチにわたって、ヒト野生型ポリペプチドの配列に対して99%、98%、95%または90%同一である。
【0032】
いくつかの実施形態では、インターフェロン(タンパク質として投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる)は、ハイブリッドインターフェロンである。種々のインターフェロンサブタイプ配列の組み合わせを含むハイブリッドαインターフェロン遺伝子の構築物(例えば、αおよびΔ、αおよびβ、ならびにαおよびF)は、米国特許第4,414,150号、同第4,456,748号および同第4,678,751号に開示される。米国特許第4,695,623号、同第4,897,471号および同第5,831,062号は、天然に存在するαインターフェロンサブタイプポリペプチドの間で各々の位置で見られる共通のまたは優勢なアミノ酸を含むアミノ酸配列を有し、そしてコンセンサスヒト白血球インターフェロンと呼ばれる、新規なヒト白血球インターフェロンポリペプチドを開示する。本発明の1つの実施形態では、ハイブリッドインターフェロンはインターフェロンα2 α1である。
【0033】
いくつかの実施形態では、インターフェロン(タンパク質として投与されるか、または遺伝子送達系によってコードされる)は、インターフェロンαである。組換えインターフェロンαは、例えば、E.coli中でクローニングされて発現されている(例えば、Weissmann et al.,Science,209:1343−1349(1980);Sreuli et al.,Science,209:1343−1347(1980);Goeddel et al.,Nature,290:20−26(1981);Henco et al.,J.Mol.Biol.,185:227−260(1985))。このような実施形態のいくつかでは、インターフェロンはヒトインターフェロンαである。いくつかの実施形態では、インターフェロンαは、インターフェロンα2aまたは2bである(例えば、WO91/18927を参照のこと)。いくつかの実施形態では、タンパク質は、抗癌性、抗感染性または免疫系調節生物活性を有するインターフェロンである。いくつかの実施形態では、投与されたインターフェロンタンパク質は、半合成のタンパク質ポリマー結合体(例えば、PEG化されたインターフェロン)である。いくつかの例示的な実施形態では、インターフェロンはI型インターフェロンα(IFN−α)であり、抗感染性および抗腫瘍活性を有するか、またはPEG化IFNα2bである。12,000Daのモノメトキシポキエチレングリコール(PEG−12000)ポリマーが結合され得る。PEG結合体化は、血清半減期を拡大増大させて、それによって患者に対する生物学的能力変更することなくIFN−α2bに対する患者の曝露を長くすると考えられる。
【0034】
「ポリペプチド(polypeptide)」という用語は、アミノ酸残基からなるポリマー、関連する天然に存在する構造変異体、およびペプチド結合を介して連結されたその合成の天然に存在しないアナログ、関連の天然に存在する構造的変異体、およびその合成の天然に存在しないアナログをいう。合成ポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチドシンセサイザーを用いて合成され得る。「タンパク質(protein)」という用語は典型的には、大きいポリペプチドをいう。「ペプチド(peptide)」という用語は典型的には、短いポリペプチドをいう。「同類置換(conservative substitution)」とは、ポリペプチドにおける機能的または構造的に類似のアミノ酸でのアミノ酸の置換をいう。以下の6つの群の各々は、お互いについて同類置換である、アミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0035】
本明細書において用いる場合、「生物学的に活性(biologically active)」という用語は、当該分野で周知の技術によって測定した場合、任意の抗ウイルスまたは抗増殖性または抗癌活性をいう(例えば、Openakker et al.,前出;Mossman,J.Immunol.Methods,65:55(1983)を参照のこと)。
【0036】
「対立形質(allelic form)」とは、同じ遺伝子座を占有するポリペプチドの任意の2つ以上の多型をいう。対立形質の変異体は、変異を通じて天然に生じ、そして集団内の表現型多型性を生じ得る。遺伝子突然変異は、サイレント(コードされたポリペプチドの変化はない)であってもよく、または変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしてもよい。「対立形質(allelic forms)」はまた、遺伝的な対立遺伝子変異体のmRNA転写物に由来するcDNAポリペプチドをいう。いくつかの実施形態では、インターフェロンは対立形質である。
【0037】
本明細書において用いる場合、「アルキル(alkyl)」という用語は、分枝した炭化水素、未分枝の炭化水素、もしくは環状の炭化水素、またはそれらの組み合わせを意味し、これは、完全に飽和されても、単価または多価不飽和であってもよく、そして指定される多数の炭素原子を有する、二価置換および多価置換を包含してもよい(すなわち、C1−C10は1〜10個の炭素を意味する)飽和された炭化水素置換基の例としては、限定はしないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、オクタ−デシル、2−メチルペンチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロペンチルメチルのような基が挙げられる。この置換基は、アルキル置換基、例えば、カルボキシメチル、トリフルオロメチル、3−ヒドロキシヘキシル、2−カルボキシプロピルなどを形成するために、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、またはチオ、シアノ、アルキルチオ、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、ニトロ、アミノ、アルコキシル、アミドなどのような鎖に対して通常結合される1つ以上の官能基で作動可能に置換されてもよい。不飽和アルキル置換基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有する置換基である。不飽和アルキル基の例としては、限定はしないが、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、ならびにそれ以上のホモログおよび異性体が挙げられる。置換基は、飽和炭化水素について記載されたような鎖に対して一般的に結合される、1つ以上の官能基で置換されてもよい。
【0038】
「アリール(aryl)」という用語は、多価不飽和、典型的には芳香族の炭化水素置換基を意味し、この基は、一緒に縮合されるかまたは共有結合される単環または多環(3環まで)であってもよい。
【0039】
「ヘテロアリール(heteroaryl)」という用語は、N、OおよびSから選択される0〜4個のヘテロ原子を含むアリール基(または環)をいい、ここで窒素原子およびイオウ原子は任意選択的に酸化され、窒素原子(単数または複数)は任意選択的に四級化される。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を通じて分子の残りに対して結合され得る。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリルおよび6−キノリルが挙げられる。上記のアリールおよびヘテロアリール環系は、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、チオ、シアノ、アルキルチオ、カルボキシル、ニトロ、アミノ、アルコキシルまたはアミドのような環系に通常結合される、1つ以上の官能基でさらに置換されてもよい。
【0040】
用語「アシル(acyl)」は、−C(O)R−置換基を指し、ここでRは、上記のようなアルキルまたはアリール、例えば、限定はしないが、ベンゾイル、スクシニル、アセチル、プロピオニルまたはブチリルである。
【0041】
「ヒドロキシル(hydroxyl)」という用語は、置換基−OH−を意味する。
【0042】
「アルコキシ(alkoxy)」という用語は、置換基−OR−を意味し、ここでRはアルキルである。
【0043】
「アミノ(amino)」という用語は、アミノ連結(−NRR’)を意味し、ここでRおよびR’は独立して水素置換基、アルキル置換基、またはアリール置換基である。
【0044】
「カルボキシレート(carboxylate)」という用語は、置換基−OC(O)R−を意味し、ここでRは任意選択的に置換されたアルキルまたはアリールである。
【0045】
「アシルオキシ(acyloxy)」という用語は、置換基−(CRR’)mC(O)OR’’−を意味し、ここでRおよびR’は独立してアルキル置換基、アリール置換基または水素置換基からなる群より選択され、そしてR’’は、水素またはアルキル置換基であり、そしてmは1〜8の間の包括的な整数である。
【0046】
「ハロゲン(halogen)」または「ハロ(halo)」という用語は、置換基F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0047】
「糖残基(saccharide residue)」という用語は、ホモオリゴ糖置換基(1タイプの単糖類を含むオリゴ糖類)または異種オリゴ糖類置換基(1つより多くのタイプの単糖類を含むオリゴ糖類)として連結された2つ以上の単糖置換基を含み得る単糖置換基を指す。好ましい実施形態では、同種および異種のオリゴ糖置換基は、2〜10個の単糖単位から構成される。単糖類は、五炭糖または六炭糖の残基を含み得、そして残基は、環化型または非環化(開放鎖)型として存在し得る。単糖類が開放鎖型である場合、カルボニル炭素の酸素原子は、−RR’−で置換されてもよく、ここでRおよびR’は独立してアルキル置換基、ハロゲン置換基、ヒドロキシル置換基、水素置換基、アミノ置換基またはアルコキシ置換基の群から選択される。好ましいオリゴ糖類としては、五炭糖−五炭糖の二糖類基、六炭糖−六炭糖の二糖類基、五炭糖−六炭糖の二糖類基、および六炭糖五炭糖の二糖類基が挙げられる。単糖類は、リボース、アラビノース、キシロースおよびリキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グルコース、イドース、ガラクトースまたはタロースの群から選択されてもよく、それによって単糖類上の1つ以上のヒドロキシル基は、水素、アルキル置換基、アルコキシ置換基、アミノ置換基またはアシル置換基で置換されてもよい。
【0048】
膀胱上皮または「尿路上皮(urothelium)」は、膀胱内面の内側を覆い、従ってその内容物に近位である。尿路上皮はまた、腎盂、尿管および膀胱の内面の内側を覆い、そして尿の保持を可能にする緻密な障壁を形成し、一方でイオン、溶質および毒性代謝物の上皮障壁を横切る調節不可能な移動を妨げる。この透過性障壁は、器官自体を満たして空にする時の圧力において周期的変化を受けている場合でさえ正常に維持されなければならない。ほとんどの膀胱癌がこの上皮の細胞に由来する。尿道、尿管および腎盂はまた、この移行上皮によって内側を覆われるので、膀胱にみられる同じタイプの癌はまた、これらの部位でも生じ得る。いくつかの実施形態では、この方法および組成物は、尿道、尿管および腎盂におけるこれらの部位でこのような癌を治療するために用いられ得る。
【0049】
この遺伝子送達系は一般に、真核生物細胞におけるインターフェロン遺伝子の発現を指向し得る真核生物発現ベクターの形態で提供される。真核生物発現ベクターの例としては、ウイルスおよび非ウイルスベクターが挙げられる。「真核生物発現ベクター(eucaryotic expression vector)」という用語は、インターフェロン発現カセットを含む従来の組換えDNA技術によって調製されるウイルスおよび非ウイルスベクターをいう。本明細書において用いる場合、「発現カセット(expression cassette)」という用語を用いて、形質導入された哺乳動物細胞におけるインターフェロン配列の転写および翻訳を生じるために、インターフェロンコード配列に作動可能に連結される発現調節エレメントを含む、インターフェロンコード配列の転写および翻訳を指向し得るヌクレオチド配列を規定する。形質導入された細胞においてヌクレオチド配列の発現を達成するために有効な種々のウイルスおよび非ウイルス送達ベクターは当該分野で公知である。例えば、Boulikas,T Gene Therapy and Molecular Biology,Volume 1(Boulikas,T.編)1998Gene Therapy Press,Palo Alto,CA 1−172頁を参照のこと。
【0050】
標的細胞に対してインターフェロン遺伝子を誘導するために用いられる非ウイルス送達系の例としては、インターフェロンの発現を指向し得る発現プラスミドが挙げられる。発現プラスミドは、標的細胞においてDNA配列の発現を達成し得る非選択的条件下で細胞生存について正常なゲノムとは異なりかつ必須のものではない、自己複製を行う染色体外の細胞性DNA分子である。発現プラスミドはまた、プロモーター、エンハンサーまたは治療遺伝子の発現および/または分泌を補助する他の配列を含んでもよく、また発現ベクター中に含まれてもよい。さらなる遺伝子、例えば、薬物耐性をコードする遺伝子が、組換えベクターの存在についての選択またはスクリーニングを可能にするために含まれてもよい。このようなさらなる遺伝子としては、例えば、ネオマイシン耐性、多剤耐性、チミジンキナーゼ、βガラクトシダーゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を挙げることができる。
【0051】
インターフェロン遺伝子を含む発現プラスミドは、リポソーム中に包含されてもよい。リポソームは、エマルジョン、泡状物、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散剤、層状相などを含む。リポソームキャリアを用いる細胞への核酸の送達は当該分野で周知である。例えばSzoka et al.,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980),Szoka,et al.,1983年7月19日発行、米国特許第4,394,448号、ならびに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号および同第5,019,369号に記載されるような種々の方法が、リポソームを調製するために利用可能である。本発明の実施において有用なリポソームは、天然および負に荷電されたリン脂質およびコレステロールのようなステロールを一般に含む1つ以上の標準的な小胞形成脂質から形成され得る。このような脂質形成小胞の例としては、米国特許第5,650,096号に開示されるようなDC−chol、DOGS、DOTMA、DOPE、DOSPA、DMRIE、DOPC、DOTAP、DORIE、DMRIE−HP、n−スペルミジンコレステロールカルバメートおよび他の陽イオン性脂質が挙げられる。脂質の選択は一般に、例えば、血流中のリポソームのサイズ、酸不安定性およびリポソームの安定性を検討することによって導かれる。1991年5月7日発行の米国特許第5,013,556号および1993年5月25日発行の同第5,213,804号に記載されるような、ポリエチレングリコールコーティング(いわゆる「PEG化(PEG−ylation)」)などの血清半減期を拡大するためのさらなる成分もリポソーム処方物に加えられてもよい。
【0052】
特定の細胞に対する非ウイルスインターフェロン遺伝子送達系の直接送達を行うため、細胞標的化を容易にする非ウイルス送達系へエレメントを組み込むことが有利であり得る。例えば、脂質カプセル化発現プラスミドは、標的化を容易にするために改変された細胞表面レセプターリガンドを組み込んでもよい。単純なリポソーム処方物が投与され得るが、本発明の本発明の所望の組成物を充填されるかまたはそれを修飾されたリポソームは、全身的に送達され得るか、または目的の組織に指向されてもよく、ここで次にこのリポソームは選択された治療/免疫原性ペプチド組成物を送達する。このようなリガンドの例としては、抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体またはそれらの機能的フラグメント(Fv、Fab、Fab’)が挙げられる。あるいは、本発明のDNA構築物は、1992年11月24日発行、Wu et al.,米国特許第5,166,320号、および1997年6月3日発行、Wu et al.,米国特許第5,635,383号に記載のような標的化部分に対してポリリシン部分を通じて連結され得る。
【0053】
本明細書に例示されるような本発明の1つの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。ウイルス(単数または複数)およびウイルスベクター(単数または複数)という用語は、本明細書においては互換可能に用いられる。本発明の実施において有用なウイルスとしては、好ましくはバキュロウイルス科、パルボウイルス科、ピコルノウイルス科(picornoviridiae)、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、アデノウイルス科またはピコルナウイルス科(picornnaviridiae)から選択された、組換え可能に改変されたエンベロープまたは非エンベロープのDNAおよびRNAウイルスが挙げられる。ウイルスゲノムはインターフェロンの発現を提供する従来の組換えDNA技術によって改変されてもよく、複製欠損、条件的複製または複製コンピテントになるように操作されてもよい。親のベクターの特性の各々の有利なエレメントを開発するキメラウイルスベクター(例えば、Feng,et al.,(1997)Nature Biotechnology 15:866−870を参照のこと)はまた、本発明の実施において有用であり得る。ウイルス骨格がウイルスベクターのパッケージングに必要な配列のみを含み、そして任意選択的にインターフェロン発現カセットを含んでもよい最小ベクター系がまた、本発明の実施において使用され得る。ある場合には、既存の免疫応答の回避のような好ましい病原性の特徴を保有する、投与されるべき種とは異なる種に由来するベクターを使用することが有利であり得る。例えば、ヒト遺伝子治療のためのウマヘルペスウイルスベクターは、1998年8月5日公開WO98/27216に記載されている。このベクターは、ヒトでの治療に有効であることが記載されている。なぜなら、このウマウイルスはヒトに毒性ではないからである。同様に、ヒツジアデノウイルスベクターは、ヒト遺伝子治療に用いられ得る。なぜならそれらは、ヒトアデノウイルスベクターに対する抗体を回避することが請求されているからである。このようなベクターは、1997年4月10日公開WO97/06826に記載されている。
【0054】
多くのウイルスが、広範囲の細胞型に影響する能力を示す。しかし、いくつかの適用では、細胞の特定の小集団にのみ影響することが望ましくあり得る。結果として、種々の技術によって、選択的または「標的とされた(targeted)」ベクターが、特定の細胞タイプの成熟ウイルス粒子の優先的な感染性を生じることを容易にするように開発した。細胞タイプ特異性または細胞タイプ標的化はまた、特徴的な広範な感染性を有するウイルス、例えばアデノウイルスに由来するベクターにおいて、ウイルスエンベロープタンパク質の改変によって達成され得る。例えば、細胞標的化は、固有の細胞表面レセプターとの特異的相互作用を有する改変ノブおよびファイバードメインの発現を達成するために、ウイルスゲノムのノブおよびファイバーコード配列の選択的改変によって、アデノウイルスベクターで達成されている。このような改変の例は、Wickham,et al.,(1997)J.Virol.71(11):8221−9229(アデノウイルスファイバータンパク質へのRGDペプチドの組み込み);Arnberg,et al.,(1997)Virology 227:239−244(眼および生殖器官に対する向性を達成するためのアデノウイルスファイバー遺伝子の改変);Harris and Lemonine(1996)TIG 12(10):400−405;Stevenson,et al.,(1997)J.Virol.71(6):4782−4790;Michael,et al.,(1995)gene therapy 2:660−668(アデノウイルスファイバータンパク質へのガストリン放出ペプチドフラグメントの組み込み);およびOhno,et al.,(1997)Nature Biotechnology 15:763−767(SindbisウイルスへのプロテインA−IgG結合ドメインの組み込み)に記載されている。細胞特異的標的化の他の方法は、エンベロープタンパク質への抗体または抗体フラグメントの結合体化によって達成されている(例えば、Michael,et al.,(1993)J.Biol.Chem.268:6866−6869,Watkins,et al.,(1997)Gene Therapy 4:1004−1012;Douglas,et al.,(1996)Nature Biotechnology 14:1574−1578を参照のこと。このような標的化改変の1つ以上を包含するウイルスベクターを任意選択的に、本発明の実施において使用して、選択的な感染および肺組織、特に肺の上皮組織中でのインターフェロンの発現を増強し得る。
【0055】
本明細書に例示されるような本発明の1つの実施形態では、ベクターはアデノウイルスベクターである。アデノウイルスベクターという用語は総称的に、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、マウスおよびサルのアデノウイルス亜属を含むがこれらに限定されないマストアデノウイルス属の動物アデノウイルスを指す。詳細には、ヒトアデノウイルスとしては、A−Fの亜属、ならびにその個々の血清型、個々の血清型およびA−Fの亜属が挙げられ、限定はしないが、これらには、ヒトアデノウイルス型1、2、3、4、4a、5、6、7、8、9、10、11(Ad11AおよびAd11P)、12、13、14、15、16、17、18、19、19a、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、34a、35、35p、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、および91が挙げられる。ウシアデノウイルスという用語は、限定はしないが、ウシアデノウイルス1型、2型、3型、4型、7型および10型を包含する。イヌアデノウイルスという用語は、限定はしないが、イヌ1型(株CLL、Glaxo、RI261、Utrect、Tronto26−61)および2を包含する。ウマアデノウイルスという用語は、限定はしないが、ウマ1型および2型を包含する。ブタアデノウイルスという用語は、限定はしないがブタ3型および4型を包含する。内因性導入遺伝子の送達のためのアデノウイルスベクターの使用は当該分野で周知である。例えば、Zhang,W−W.(1999)Cancer Gene Therapy 6:113−138を参照のこと。1つの実施形態では、インターフェロン配列の発現のためのアデノウイルスベクターは、任意選択的に第IXプロテインの機能を欠失している、標的組織において実質的に複製不能なウイルスを生じる、アデノウイルスE1遺伝子の排除によって作製された血清型2または5の複製欠損ヒトアデノウイルスである。好ましい組換えウイルスベクターは、第IXプロテイン遺伝子が欠失しているアデノウイルスベクター送達系である。本発明と同じ譲受人に譲渡され、全ての目的のためにその全体が参考として本明細書に援用される、米国特許第6,210,939号に開示されるこのようなシステムを参照のこと。
【0056】
好ましいベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレトロウイルスのゲノムに由来する。本発明の最も好ましい実施では、このベクターは、ヒトアデノウイルスゲノム由来である。好ましいベクターは、ヒトアデノウイルス血清型2または5に由来する。このようなベクターの複製能力は、E1aおよび/またはE1bコード領域における改変または欠失によって(「複製欠損(replication deficient)」とみなされるポイントまで)減弱され得る。特定の発現特徴を達成するか、または反復投与を可能にするか、または免疫応答を低下させるためのウイルスゲノムへの他の改変が好ましい。
【0057】
あるいは、ウイルスベクターは、条件的に複製されても、または複製コンピテントであってもよい。条件的に複製するウイルスベクターを用いて、望ましくない広範なスペクトルの感染を回避しながら、特定の細胞タイプにおいて選択的な発現を達成する。ウイルスゲノムは、特定の条件下でのみ複製または発現を達成する誘導性プロモーターを含むように改変されてもよい。誘導性プロモーターの例は、当該分野で公知である(例えば、YoshidaおよびHamada(1997)Biochem.Biophys.Res.Comm.230:426−430;Iida,et al.,(1996)J.Virol.70(9):6054−6059;Hwang,et al.,(1997)J.Virol. 71(9):7128−7131;Lee,et al.,(1997)Mol.Cell.Biol.17(9):5097−5105;およびDreher,et al.,(1997)J.Biol.Chem.272(46);29364−29371を参照のこと。ウイルスはまた、Ramachandra,et al.,PCT国際特許公開番号WO00/22137、2000年4月20日に公開された国際出願番号PCT/US99/21452、およびHowe,J.PCT国際公開番号WO WO0022136、2000年4月20日公開、国際出願番号PCT/US99/21451記載されるウイルスのような選択的に複製するウイルスとなるように設計されてもよい。このウイルスはまた、特定の細胞タイプにおける複製について減弱されるように改変されてもよい。例えば、E1b55K遺伝子に特異的な欠失があるアデノウイルスdl1520(BarkerおよびBerk(1987)Virology 156:107)は、ヒトでの治療効果を伴って用いられている。このようなベクターはまた、McCormick(1997年10月14日発行、米国特許第5,677,178号)および1998年12月8日発行McCormickの米国特許第5,846,945号に記載されている。
【0058】
本発明のベクターは、IRESエレメントの使用を通じてタンデムで、または独立調節性プロモーターを通じて、インターフェロン遺伝子に対するさらなる導入遺伝子をコードするように改変され得る。
【0059】
本発明は、標的組織または器官の上皮に対するタンパク質または核酸の送達を、このタンパク質(例えば、インターフェロン)または核酸とともに処方された場合に増強する送達増強化合物を提供する。「送達増強化合物(delivery−enhancing compound)」または「送達増強因子(delivery−enhancing agent)」としては、膀胱内投与の際、上皮または尿路上皮に対してタンパク質または核酸の送達を強化する任意の化合物が挙げられる。タンパク質に関して、増強された送達は、標的組織または器官の上皮の細胞に接触するタンパク質の量の増大か、または上皮(例えば、尿路上皮)の細胞に入るタンパク質の量の増大のいずれかまたは両方によって確認され得る。特定の化合物がタンパク質の送達の増強に有効であるか否かの決定は、当業者によって容易に確認され得る。尿路上皮によるタンパク質の保持は、任意の手段、例えば、ELISA、蛍光標識の検出、遺伝子発現を含む細胞活性の調節によって測定され得る。
【0060】
遺伝子送達系に関して、本発明は、標的細胞、組織または器官に対するインターフェロン遺伝子の送達を増強する送達増強化合物を提供する。増強された送達は、各々の細胞に入るインターフェロン遺伝子もしくは遺伝子送達系のコピー数の増大によって、または例えば、インターフェロンもしくはインターフェロン遺伝子送達系を取り込む、組織もしくは器官中の細胞の割合の増大によって、そのいずれかまたはその両方で確認され得る。送達増強化合物と組み合わせた、組織または器官へのインターフェロン遺伝子送達系の投与によって、細胞内に送達され発現されるインターフェロン遺伝子の量における増大が、送達増強化合物の非存在下で投与された場合にこの細胞に送達されて発現される遺伝子の量に対応して生じる。特定の化合物が核酸送達系の送達を増強するのに有効であるか否かを決定することは当業者に公知の方法による。翻訳およびタンパク質発現を評価するために、βガラクトシダーゼまたは緑色蛍光タンパク質のようなレポーター遺伝子を、核酸送達系に組み込んで、増強された遺伝子発現のレベルを評価するために容易にアッセイ可能なシグナルを生成することができる。転写および複製を評価するために、DNAのコピーの存在をPCR分析によって評価してもよい。
【0061】
特定の送達増強化合物は、不斉の炭素原子(光学的中心)または二重結合を保有し得る;ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体は全て、本発明の範囲内に包含されるものとする。例えば、対のエナンチオマーの単独のジアステレオマーは、適切な溶媒、例えば、メタノールもしくは酢酸エチルまたはそれらの混合物からの分別晶出によって得ることができる。このようにして得られたエナンチオマーの対は、従来の手段によって、例えば、分割剤のような光学活性な酸の使用によって、個々の立体異性体に分離され得る。あるいは、本発明の化合物の任意のエナンチオマーは、光学的に純粋な出発物質または立体配置が公知の試薬を用いて立体特異的合成によって得ることができる。
【0062】
送達増強化合物は、互変異性体とも呼ばれる水素結合の種々のポイントが存在し得る。このような例は、ケトンおよびケト−エノール互変異性体として公知のそのエノール型であってもよい。個々の互変異性体およびその混合物は、本発明の処方物によって包含される。
【0063】
送達増強化合物は、その原子の1つ以上で原子同位体の天然ではない比を有してもよい。例えば、化合物は、トリチウムまたは炭素−14のような同位体で放射性標識されてもよい。本発明の化合物の全ての同位体バリエーションは、放射性であるか否かにかかわらず、本発明の範囲内である。「基(group)」または「部分(moiety)」が化合物の別の部分に結合される化合物処方において記載される場合、この「基」または「部分」に相当するラジカルであって、H原子が除去されて形成されているラジカルが意味されることが理解されるべきである。この送達増強化合物は、薬学的に受容可能な酸付加塩、例えば、無機および有機の酸の使用に由来する塩の形態で単離されてもよい。このような酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸などを挙げることができる。さらに、酸の機能を有する特定の化合物は、対イオンがナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムなどから、そして有機塩基から選択され得るその無機塩の形態であってもよい。「薬学的に受容可能な塩(pharmaceutically acceptable salts)」という用語は、無機の塩基または酸および有機の塩基または酸を含む薬学的に受容可能な無毒性の塩基または酸から調製される塩をいう。
【0064】
例示的な送達増強化合物は、各々が本出願と同じ譲受人に譲渡され、その全体が参考として援用されている、米国特許第6,165,779号、および1997年7月8日出願、米国特許出願第08/889,355号および2000年8月28日出願、米国特許出願第09/650,359号において教示されている。このような化合物としては、限定はしないが、崩壊剤、アルコール、グリコール、サーファクタント、胆汁塩、ヘパリンアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼインヒビター、高張性塩溶液および酢酸塩が挙げられる。アルコールとしては、例えば、脂肪族アルコール、例えばエタノール、N−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、アセチルアルコールが挙げられる。グリコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよび他の低分子量グリコール、例えば、グリセロールおよびトリグリセロールが挙げられる。アセテート、例えば、酢酸、グルコン酸および酢酸ナトリウムは、送達増強化合物のさらなる例である。高張性塩溶液、例えば1M NaClも、送達増強化合物の例である。サーファクタントの例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびリゾレシチン、ポリソルベート80、ノニルフェノキシ−ポリオキシエチレン、リゾホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80、ポリオキシエチレンエタノール、ポリグリコールエーテルサーファクタントおよびDMSOが挙げられる。胆汁酸塩、例えば、タウロコール酸塩、タウロデオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸および硝酸銀などの他の収斂剤も、硫酸プロタミンのような四級アミンなどのヘパリンアンタゴニストが用いられ得るように、用いられてもよい。シクロオキシゲナーゼインヒビター、例えば、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸および非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)例えば、ヨードメタシン、ナプロキセンおよびジクロフェナクもまた適切である。
【0065】
送達増強化合物として機能し得る界面活性剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられる。例示的な界面活性剤としては、限定はしないが、タウロコール酸塩、デオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、セチルピリジウム(cetylpyridium)、塩化ベルコニウム(benalkonium chloride)、ZWITTERGENT(登録商標)3−14界面活性剤、CHAPS(3−[(3−クロラムイミドプロピル)ジメチルアンモニオール]−1−プロパンスルホネート、ヒドレート、Aldrich)、Big CHAP、Deoxy Big CHAP、TRITON(登録商標)−X−100界面活性剤、C12E8、オクチル−B−D−グルコピラノシド、PLURONIC(登録商標)―F68界面活性剤、TWEEN(登録商標)20界面活性剤およびTWEEN(登録商標)80界面活性剤(CALBIOCHEM(登録商標)Biochemicals)が挙げられる。
【0066】
好ましい送達増強化合物の1つの例は、例えば、コール酸塩誘導体であるBig CHAPである(例えば、Helenius et al.,(1979)「Properties of Detergents」In:Methods in Enzymology,第66巻734−749を参照のこと。特に好ましい送達増強化合物は、式I、II、IIIおよびVIおよびVIIの化合物ならびにその薬学的に受容可能な塩である。
【0067】
さらなる実施形態では、本発明は、インターフェロンおよび式I:
【0068】
【化5】
を有する少なくとも1つの送達増強化合物を含む組成物を提供し、ここでX1がそしてX2が
【0069】
【化6】
からなる群より選択され、そしてX3は、糖類基であり、ここで糖類基は、五炭糖単糖類基、六炭糖単糖類基、五炭糖−五炭糖二糖類基、六炭糖−六炭糖の二糖類基、五炭糖−六炭糖の二糖類基、および六炭糖−五炭糖の二糖類基からなる群より選択され得る。他の糖類基としては、ホモオリゴ糖類またはヘテロオリゴ糖類のいずれかに連結された1つより多くの単糖類を挙げることができる。好ましい単糖類としては、五炭糖および/または六炭糖の残基が挙げられる。例えば、糖類基は、五炭糖の単糖類基、六炭糖の単糖類基、五炭糖−五炭糖二糖類基、六炭糖−六炭糖の二糖類基、五炭糖−六炭糖の二糖類基、および六炭糖−五炭糖の二糖類基からなる群より選択され得る。X3の好ましい糖類基の1つの例はラクトースである。
【0070】
いくつかの実施形態では、式Iの送達増強化合物は、3つ以上の糖類基から構成されるX3糖類基を有する。好ましくは、糖類基は1〜8個の単糖類、より好ましくは1〜4個の単糖類、そして最も好ましくはおよそ2〜3個の単糖類を有する。三糖類の使用によって、例えば、溶解度を高める化合物を得ることができる。
【0071】
さらなる実施形態では、X1およびX2は両方とも
【0072】
【化7】
であり、そしてX3はグルコース基である。
【0073】
本発明による使用のための例示的送達増強剤としては、式II:
【0074】
【化8】
の化合物が挙げられ、ここでR1およびR2が個々に独立して、水素およびヒドロキシル基からなる群より選択されるメンバーであり;mおよびnが個々に独立して、約0〜2から選択され;R3が、−NR4R5からなる群より選択され、ここでR4およびR5は個々に独立して、水素、糖残基、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアシル、および任意選択的に置換されたアシルオキシ、および四級アンモニウム塩−NR6R7R8Xからなる群より選択されるメンバーであり、ここでR6、R7およびR8が独立して、水素およびC1−C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり、そしてXが薬学的に受容可能な対イオンからなる群より選択される負に荷電されたイオン結合された対イオンである。いくつかの実施形態では、対イオンは水素または任意選択的に置換されたカルボキシレートである。
【0075】
1つの実施形態では、式IIの例示的化合物は、両方がヒドロキシル基であるR1およびR2を有する。別の実施形態では、式IIの化合物は、mおよびnが各々1である化合物である。別の実施形態では、式IIの化合物は、R4が水素である化合物である;そしてR5は、水素、糖残基、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアシル、および任意選択的に置換されたアシルオキシからなる群より選択されるメンバーである。
【0076】
1つの実施形態では、送達増強化合物は式VI:
【0077】
【化9】
を有する。
【0078】
別の実施形態では、送達増強化合物は、式VII(SYN3):
【0079】
【化10】
を有する。
【0080】
別の実施形態では、R4またはR5の少なくとも1つがスクシニルまたはアセチルである。別の実施形態では、R3がトリメチルアンモニウム塩である。
【0081】
別の実施形態では、R4およびR5は個々に独立して、水素、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアシル、および任意選択的に置換されたアシルオキシ、および四級アンモニウム塩−NR6R7R8Xからなる群より選択されるメンバーであり、ここでR6、R7およびR8が独立して、水素およびC1−C4アルキルからなる群より選択されるメンバーであり、そしてXが薬学的に受容可能な対イオンからなる群より選択される負に荷電されたイオン結合された対イオンである。
【0082】
この方法および組成物における使用のための好ましい送達増強化合物の1つの例は、式VIIを有するSYN3である。SYN3およびそのホモログを作製する方法は、本出願と同じ譲受人に譲渡され、その全体が参考として援用される、米国特許第6,392,069号に教示される。
【0083】
いくつかの出願については、他の化合物に比較して水溶性の増大および/または送達増強活性を示す、本発明の方法および組成物における送達増強化合物を用いることが望ましい。例示的な送達増強化合物は、Rが陽イオン性基である式Iの化合物である。適切な陽イオン性基としては、例えば、テトラメチルおよびアンモニウム部分、ならびにその塩が挙げられる。
【0084】
別の態様では、本発明は、タンパク質および送達増強因子を含む、膀胱へのタンパク質の膀胱内投与のための薬学的組成物を提供する。ある実施形態では、送達増強因子は、SYN3またはSYN3ホモログを含む。ある実施形態では、送達増強因子は、SYN3またはSYN3ホモログである。ある実施形態では、送達増強因子はSYN3であり、タンパク質はインターフェロンである。ある実施形態では、この組成物は、インターフェロンおよびSYN3(例えば、インターフェロン、約0.1〜10mg/ml SYN3,SYN3溶解因子(例えば、Big CHAPまたはヒドロキシルプロピルβシロデキストリン(HPβCG)またはTRITONTM−X−100界面活性剤/オクチルフェノキシポリエトキシエタノールを含むサーファクタント)緩衝液および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。ある実施形態では、インターフェロンは、α−インターフェロン、β−インターフェロン、γ−インターフェロンまたはω−インターフェロンまたはそれらの融合物である。1つの実施形態では、処方物中のSYN3の量は、1〜10mg/mlである。この組成物は使用前に適切な医薬用キャリアで希釈するように凍結乾燥されてもよい。
【0085】
ある実施形態では、本発明はまた、このタンパク質および送達増強化合物を含む薬学的組成物を提供する。処方物中のこの送達増強化合物の濃度は、多数の要因、例えば、用いられている特定のタンパク質および送達増強化合物、緩衝液、pHならびに投与プロトコールに依存する。送達増強化合物の濃度は、タンパク質およびその溶解度に実質的に依存し得る。高濃度で有用な因子については、この濃度はしばしば、1%〜50%(v/v)、好ましくは10%〜40%(v/v)、そして最も好ましくは15%〜30%(v/v)の範囲である。低濃度で有効な送達増強因子については、本発明の特定の送達増強化合物は好ましくは、約0.002〜2mg/ml、より好ましくは約0.02〜2mg/ml、最も好ましくは約0.1〜1mg/mlの範囲で、本発明の処方物中で用いられ得る。SYN3またはそのホモログもしくはアナログを含む本発明の送達増強化合物は好ましくは、0.002〜20mg/ml、より好ましくは約0.02〜2mg/ml、最も好ましくは約0.1〜1mg/mlの範囲で、本発明の処方物中で用いられる。
【0086】
別の態様では、本発明は、インターフェロン遺伝子をコードする組換えアデノウイルスおよび送達増強因子の投与のための薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、送達増強剤は、SYN3またはSYN3ホモログを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子送達系は、インターフェロン遺伝子をコードする約109〜1012粒子(PN)/mlの組換えアデノウイルス、約0.1〜10mg/ml SYN3、SYN3溶解性因子(例えば、Big CHAPまたはヒドロキシルプロピルβシロデキストリン(HPβCG)またはTRITONTM−X−100界面活性剤/オクチルフェノキシポリエトキシエタノールを含むサーファクタント)、緩衝液および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、このインターフェロン遺伝子は、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロンもしくはωインターフェロンの遺伝子またはその融合物またはインターフェロン抗癌、抗感染性もしくは免疫系調節生物活性を有するポリペプチドをコードするその一部である。1つの実施形態では、処方物中のSYN3の量は、1〜10mg/mlである。この組成物は、使用前に適切な医薬用キャリアでの希釈のために凍結乾燥されてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明はまた、インターフェロン遺伝子送達系および送達増強化合物を含む処方物を提供する。処方物中の送達増強化合物の濃度は、多数の要因、例えば、用いられている特定の遺伝子送達系および送達増強化合物、緩衝液、pH、標的組織または器官および投与形態に依存する。送達増強化合物の濃度は実質的に、用いられる因子に依存する。高濃度で有用な因子については、この濃度はしばしば、1%〜50%(v/v)、好ましくは10%〜40%(v/v)、そして最も好ましくは15%〜30%(v/v)の範囲である。低濃度で有効な送達増強因子については、本発明の特定の送達増強化合物は好ましくは、0.002〜2mg/ml、より好ましくは約0.02〜2mg/ml、最も好ましくは約0.1〜1mg/mlの範囲で、本発明の処方物中で用いられ得る。SYN3またはそのホモログもしくはアナログを含む本発明の送達増強化合物は好ましくは、約0.002〜20mg/ml、より好ましくは約0.02〜2mg/ml、最も好ましくは約0.1〜1mg/mlの範囲で、本発明の処方物中で用いられる。
【0088】
本発明の方法および組成物における使用のための送達増強化合物は典型的には、化合物が溶解性である溶媒に処方されるが、化合物が部分的にのみ可溶性である処方物も適切である。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)は、これらの化合物の適切な可溶化剤の1つの例であり、そして他のものは当業者に公知である。当業者は、特定のさらなる賦形剤および添加物が、種々の薬学的処方物についてこれらの因子の溶解度特徴を達成することが所望され得るということを理解する。例えば、周知の可溶化因子、例えば、界面活性剤、脂肪酸エステルおよびサーファクタントは、使用される種々の溶媒におけるこの化合物の溶解度を促進するために適切な濃度で添加され得る。この処方物が界面活性剤を含む場合、患者に投与される最終処方物中の界面活性剤濃度は好ましくは、約0.5〜2×臨界ミセル化濃度(CMC)である。適切な界面活性剤としては、上記に列挙されるものが挙げられる。それらの使用のために適切な界面活性剤および適切な濃度の同定は、本明細書に記載のように決定され得る。SYN3のような化合物および関連の化合物の可溶化因子の1つの例は、約0.05%〜約0.3%の濃度、より好ましくは約0.10%〜約0.15%の濃度のTween 80である。Big CHAPも、SYN3および関連の化合物についての可溶化因子である。
【0089】
医薬的用途のために用いる場合、本発明の処方物は、送達増強化合物を含む緩衝液を含む。緩衝液は、任意の薬学的に受容可能な緩衝液、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水またはリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム、Tris緩衝液、グリシン緩衝液、滅菌水および当業者に公知の他の緩衝液、例えば、Good et al.,Biochemistry,(1966)5:467によって記載される緩衝液であってもよい。例えば、調節性の治療タンパク質を含む薬学的組成物中の緩衝液のpHは典型的には、6.4〜8.4、好ましくは7〜7.5、そして最も好ましくは7.2〜7.4の範囲である。
【0090】
本発明の組成物はさらに、タンパク質安定化剤または可溶化剤、増強剤または他の薬学的に受容可能なキャリアもしくはビヒクルを含んでもよい。生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、グルコース、スクロースまたはデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸またはグルタチオンのような抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質または他の安定化剤もしくは賦形剤を挙げることができる。他の生理学的に受容可能な化合物としては、微生物の増殖または作用を防止するために特に有効である湿潤剤、乳化剤、分散剤または防腐剤が挙げられる。種々の防腐剤が周知であり、それらには、例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が挙げられる。当業者は、薬学的に受容可能なキャリアの選択が、治療タンパク質の投与の経路および特定の物理化学的特徴に依存することを承知している。キャリア、安定化剤またはアジュバントの例は、参考として本明細書に援用されるMartin,Remington’s Pharm.Sci.,第15版(Mack
Publ.Co.,Easton,PA 1975)、およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版)(Lippincott,Williams & Wilkins Publisher,December 1995)に見出すことができる。
【0091】
本発明のさらなる態様は、薬学的に受容可能な水性キャリア、少なくとも1つの薬学的に受容可能な安定化剤と少なくとも1つの薬学的に受容可能な充填剤と組み合わせて、インターフェロンおよびSYN3を含む薬学的組成物である。このような薬学的組成物はさらに、薬学的に受容可能なキャリアおよびタンパク質と組み合わせてSYN3を含み得る。2002年12月20日出願で、本出願と同じ譲受人に譲渡され、その全体が参考として本明細書に援用される米国特許出願第10/329,043号[タイトル「SYN3 COMPOSITIONS AND METHODS」、代理人整理番号016930−000841US]を参照のこと。
【0092】
組換えアデノウイルスの投与のための例示的な処方物は約109−1011PN/mlウイルス、約0.1〜1mg/ml SYN3、さらに適切なSYN3可溶化剤(例えば、約2〜10mM Big CHAPまたは約0.1〜1.0mM TRITON(登録商標)−X−100)界面活性剤を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に含み、加えて約2〜3%スクロース(w/v)および約1〜3mM MgCl2を含み、約pH6.4〜8.4である。
【0093】
本発明のさらなる態様は、インターフェロン遺伝子送達系およびSYN3を、薬学的に受容可能な水性キャリア、少なくとも1つの薬学的に受容可能な安定化剤と少なくとも1つの薬学的に受容可能な充填剤と組み合わせて含む薬学的組成物である。このような薬学的組成物はさらに、薬学的に受容可能なキャリア、およびインターフェロンDNAが外来性であるベクターにインターフェロンDNA配列が挿入されている発現ベクターまたは遺伝子送達系と組み合わせて、SYN3を含んでもよい。インターフェロンの核酸配列は、ある実施形態では、外来性であってもよく、そうでない場合被験体における意図する組織もしくは器官において有意に発現されなくてもよい。2002年12月20日出願で、本出願と同じ譲受人に譲渡され、その全体が参考として本明細書に援用される、米国特許出願第10/329,043号[タイトル「SYN3 COMPOSITIONS AND
METHODS」、代理人整理番号016930−000841US]を参照のこと。
【0094】
本発明の処方物に用いられ得る溶媒としては、好ましくは米国薬局方(USP)標準に従って調製されるような、例えば、注射用水のような水性溶媒ならびに/またはDMSOおよびDMAとしても公知のN,N−ジメチルアセトアミドのような非水性の溶媒、ならびに共溶媒(co−solvent)混合物、例えば、グリセロールおよび水が挙げられる。
【0095】
この処方物は好ましくは、とりわけ、例えば、ポリソルベート80およびポリソルベート20を含む非イオン性サーファクタントの1クラスである、ポリソルベートすなわちポリオキシエチレンソルビタンエステル、とりわけ、例えば、プルロニック(Pluronic)L68およびL92を含む、非イオン性サーファクタントの1クラスである、プルロニックすなわちポリエチレンポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ならびに例えば、HPβCDおよびBig CHAPを含む、非イオン性複合剤の1クラスである、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、ポリ置換ヒドロキシアルキルβシクロデキストリンを含む。HPβCD、Big CHAP、ポリソルベート80、ポリソルベート20、プルロニックL64およびプルロニックL92が可溶化剤として好ましい。可溶化剤は、例えば、個々にまたは込み合わせて用いられ得る。可溶化剤の濃度は以下に示される。HPβCDは、約50〜500mg/mlの濃度で存在し得、Big CHAPは、約20〜約360mg/mlの濃度で存在し得、ポリソルベート80は、約1〜36mg/mlの濃度で存在し得、プルロニックは、約1〜約150mg/mlの濃度で存在し得、そしてその他の成分は、以下に示す濃度で存在してもよい。
【0096】
SYN3の凍結乾燥処方物は好ましくは、クエン酸緩衝化系を含む。より好ましくは、このクエン酸緩衝化系は、少なくとも1つのクエン酸緩衝液、例えば、米国薬局方のクエン酸一水和物または米国薬局方のクエン酸ナトリウム二水和物を含んでもよい。より好ましくは、クエン酸緩衝系は、米国薬局方のクエン酸一水和物と米国薬局方のクエン酸ナトリウム二水和物の組み合わせを含む。組み合わせて用いられる場合、米国薬局方のクエン酸一水和物の量は、約0.005〜約2mg/ml、より好ましくは0.016〜約1.35mg/ml、好ましくは0.016〜約0.72mg/ml、好ましくは約0.005〜約1.35mg/mlの濃度で存在し得る、そして米国薬局方のクエン酸ナトリウム二水和物は、約0.02〜約5.37mg/ml、好ましくは0.05〜3.00mg/ml、好ましくは0.05〜2.31mg/mlの濃度で存在し得る。適切である他の適切な緩衝化系は、例えば、クエン酸緩衝化系の代わりに、またはそれと組み合わせて、リン酸塩、グリシン、そして上記の全ての種々の組み合わせを含む。
【0097】
緩衝化系は、溶解度が向上するような凍結乾燥処方物のpHを提供する。好ましくはこのpHは、約5〜約6の範囲である。SYN3の混合水性処方物は好ましくは、約7〜約8.5、好ましくは約7.4のおよそのpHで緩衝化され、そしてSYN3は40℃で少なくとも3ヶ月間、脱水された粉末中で安定なままである。
【0098】
凍結乾燥処方物は好ましくは、凍結乾燥充填剤としてグリシンまたはマンニトールを含む。用いられ得る他の適切な凍結乾燥充填剤としては、例えば、ラクトース、組換えゼラチンおよびメチルセルロースが挙げられる。凍結乾燥充填剤は、この薬剤がマンニトールである場合、約5〜100mg/ml、そしてこの薬剤がグリシンである場合、約10〜200mg/mlの濃度で存在し得る。
【0099】
凍結乾燥処方物は好ましくは、抗酸化剤としてアスコルビン酸を含む。用いられ得る他の適切な抗酸化剤としては、例えば、クエン酸が挙げられる。アスコルビン酸が抗酸化剤である場合、これは約0.001〜約0.6mg/mlの濃度で存在し得る。
【0100】
本発明の組成物は、さらに、例えば、安定化剤、増強剤または他の薬学的に受容可能なキャリアまたはビヒクルを含んでもよい。薬学的に受容可能なキャリアは、例えば、腫瘍抑制遺伝子を含む組換えアデノウイルスベクター送達系を安定化させるように作用する生理学的に受容可能な化合物を含んでもよい。生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランのような炭水化物、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定化剤もしくは賦形剤を挙げることができる。
【0101】
他の生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、保湿剤、乳化剤、分散剤または微生物の増殖もしくは作用を妨げるために特に有効な防腐剤が挙げられる。種々の防腐剤が周知であり、これには、例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が挙げられる。当業者は、薬学的に受容可能なキャリアの選択が、治療タンパク質の投与経路および特定の物理化学的特長に依存することを承知している。キャリア、安定化剤またはアジュバントの例は、参考として本明細書に援用されるGennaro,Remington’s:The
Science and Practice of Pharmacy,第19版(Mack Publishing.Co.,Easton,Pa.1995)に見出すことができる。
【0102】
本発明の被験体は、哺乳動物であって、これには、限定はしないが、マウス、ラット、霊長類および特にヒトが挙げられる。
【0103】
核酸およびタンパク質の両方の送達のための例示的な送達増強化合物としては、式IIの化合物を含む本発明による使用のためのSYN3のホモログが挙げられる。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、送達増強化合物を含む緩衝液中に、「治療上有効な(therapeutically effective)」量の治療因子(例えば、タンパク質またはそのタンパク質の遺伝子送達系)を含む。本明細書において用いる場合、「治療上有効な」とは、癌もしくはウイルス感染のような疾患状態またはその症状の予防、軽減または治癒をいう。
【0105】
送達増強化合物は、単独で、またはインターフェロンもしくはインターフェロン遺伝子送達系と組み合わせて、またはさらなる因子とさらに組み合わせて適用され得る。例えば、この処方物は、癌、細胞増殖性障害および慢性の感染を含む疾患および状態を治療するのに有効である。「癌(cancer)」は一般に、組織または器官内の細胞の制御されない増殖に関する。これは、1つ以上の細胞が癌性、悪性、腫瘍性、前癌性、トランスフォームした、または腺腫もしくは癌腫に分類される状態、あるいはこれらの状態について当該分野で一般に用いられる任意の他の同義語を包含するものとする。
【0106】
送達増強因子を含む緩衝液中に処方された、組換えウイルス送達系にインターフェロン遺伝子を含む薬学的組成物の治療上有効な量が、本発明の教示に従って投与され得る。例えば、送達増強因子を含む緩衝液中に処方された、組換えアデノウイルスベクター送達系のインターフェロン遺伝子の治療上有効な量は、約108粒子/ml〜1012粒子/ml、より典型的には約108粒子/ml〜5×1011粒子/ml、最も典型的には約109粒子/ml〜×1011粒子/ml(PN/ml)または1010粒子/ml〜1011粒子/ml(PN/ml)の範囲である。前述の投薬量は一般に、被験体が耐えられる範囲で高頻度に投与される。腫瘍学の分野では一般に、最大耐容用量で、またはほぼその付近の投薬量を投与することになる。
【0107】
送達増強因子を含む緩衝液中に処方された、タンパク質(例えば、インターフェロン)を含む薬学的組成物の治療上有効な量が、本発明の教示に従って投与され得る。例えば、インターフェロンまたはインターフェロン遺伝子送達系の治療上有効な量は、同様に、当業者によって容易に決定され得る。この用量は一般に、被験体が耐えられる範囲で高頻度に投与される。上記のとおり、腫瘍学の分野では一般に、最大耐容用量で、またはほぼその付近で投薬量を与えることが行われる。
【0108】
膀胱癌の治療のための本発明の1つの実施形態では、インターフェロンは、各々のサイクルが各々のサイクルの1日目にまたは任意選択的に1日目および2日目に1回の膀胱内投与を提供する、3週サイクルの投与からなる複数回の投与レジメンの一部として送達増強因子と組み合わせて提供される。膀胱癌の治療の典型的な形態では、実施者は被験体が排泄できるように尿道にカテーテルを挿入する。処方された送達増強因子および治療用インターフェロンタンパク質またはインターフェロン遺伝子送達系を含む溶液を調製して、膀胱に点滴注入する。カテーテルをクランプして、約1時間の間、膀胱中に溶液を維持する。長時間の曝露によって、上皮に対する送達を増強することが所望され得るが実際的な懸念から、このような実施は制限されることが注意されるべきである。例えば、1時間は一般に、被験体が排尿する必要を感じるポイントである。送達増強因子の効果は、長期の効果を生じ、その結果、タンパク質の注入の前に膀胱を送達増強因子に事前に曝露することが送達の増強をもたらすことが実証されている。これは、タンパク質処方物と送達増強因子処方物との間の適合性が懸念される場合に使用され得る。所望の曝露後に、カテーテルクランプをカテーテルから外して、被験体を排尿可能にさせた。前述の手順は、治療効果を達成するために、患者が耐容可能な範囲で何度も繰り返され得る。この治療効果は、膀胱に挿入された膀胱鏡のような従来の手段によって容易に評価できる。
【0109】
これらの処方物は、充填される空隙、または投与される器官もしくは組織のサイズに相当する用量で投与され得る。ヒト膀胱については、適切な投与用量は、被験体の、そして詳細にはその膀胱の、年齢およびサイズに依存する。投与される用量は典型的には、50〜500mlの範囲、そしてより一般的には50〜250ml、または100〜200mlの範囲に及んでもよい。ある投与方法では、投与されるべき量は、投与されるべき膀胱(vesicalまたはbladder)にへバルーンカテーテルを挿入すること、およびカテーテルのバルーン部分を膨張させ、それらによって投与組成物が占有する空隙容積を軽減することによって、経済的に節約され得る。
【0110】
さらに、上記の投与レジメンは、治療効果の増強を得るために、補充されてもよいし、または他の治療投与レジメンと組み合わせて用いられてもよい。本発明の方法は、例えば、従来のBCGおよび/または化学療法投与レジメンによって補充され得る。腫瘍学の分野では、効果を最大化するために個体に対応して複数回の投与レジメンを行うことが標準的な施行である。
【0111】
別の態様では、本発明は、第一の容器に送達増強化合物を、そして第二の容器にタンパク質または遺伝子送達系を有するキットを提供する。1つの実施形態では、この容器の中身は、送達増強因子およびタンパク質または遺伝子送達系の両方を含む処方物を調製するのに組み合わされて、これがその後被験体に投与される。別の実施形態では、この容器の内容物は、患者に対して個別の調製物として投与される。送達増強因子は、タンパク質または遺伝子送達系の投与の前、間または後に投与され得る。例示的な実施形態では、それらは、同時にまたはほぼ同時に投与される。容器のうち一方または両方の処方物は、薬学的に受容可能な液体キャリア中で戻される凍結乾燥粉末であってもよい。
【0112】
別の実施形態では、このキットは、タンパク質の送達を増強し得るSYN3またはSYN3ホモログもしくはアナログ、あるいは遺伝子送達系を含む第一の容器;ならびにタンパク質または遺伝子送達系を含む第二の容器を提供する。1つのさらなる実施形態では、第一の容器は、SYN3またはSYN3のモホログもしくはアナログの凍結乾燥処方物を含む。別の実施形態では、第二の容器は、タンパク質の凍結乾燥処方物を含む。さらなる実施形態では、第一の容器および第二の容器の両方が、そのそれぞれの内容物の凍結乾燥処方物を保持する。例示的なさらなる実施形態では、このタンパク質は、ヒトαインターフェロンポリペプチドに対して実質的に同一であるか、もしくはヒトαインターフェロンポリペプチドであるポリペプチドであるか、またはこの遺伝子送達系がタンパク質、すなわち、ヒトαインターフェロンポリペプチドに対して実質的に同一であるか、もしくはヒトαインターフェロンポリペプチドであるポリペプチドをコードする。
【0113】
いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物による投与は、治療効果を増大するために種々の時間間隔にわたって繰り返され得る。これらの間隔は、ほぼ毎日、毎週または毎月であってもよい。投与の回数は、治療レジメンおよびその期間で変化する。一般には本発明の治療投与は、週2回、毎週、隔週で、毎月または隔月で、最大2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月またはそれ以上でさえ投与されてもよい。投与の回数は、被験体におけるインターフェロンの産生もしくは放出をモニタリングすることによって、または患者の臨床効果(例えば、治療される疾患が癌である場合、腫瘍軽減)を評価することによって個々の被験体に対して耐容され得る。
【0114】
治療されるべき状態が膀胱の癌であり、治療タンパク質(例えば、インターフェロン)または遺伝子送達系(例えば、インターフェロンをコードする遺伝子について)が膀胱内に投与される別の実施形態では、本発明の治療方法および組成物に対する被験体における効果は、膀胱で見出される腫瘍塊のサイズおよび数をモニタリングすることによって評価される。このモニタリングは、血液もしくは尿のような体液中での腫瘍特異的な抗原または産生物の測定によっても、またはMRIもしくは放射性同位体画像化技術のような直接画像化方法によってもよい。
【0115】
送達増強因子およびインターフェロンまたはインターフェロンをコードする遺伝子で処方された組成物を用いて、詳細には、器官および組織の上皮細胞を含む細胞に対してインターフェロンを提供してもよい。インターフェロンの治療効果および用法は当業者に公知である。例えば、本発明による組成物は、癌の治療において有効である。本発明の方法および組成物による投与に適切な癌組織および器官としては、胃腸管、膀胱、呼吸器および肺のような上皮性の膜を有する任意の組織または器官を包含する。例としては、限定はしないが、膀胱および上部気道、陰門、子宮頸部、膣、子宮または気管支の癌腫;腹膜の局所転移性腫瘍;気管支肺胞の癌腫;胸膜転移性癌腫;口腔および扁桃の癌腫;鼻咽頭、鼻、喉頭、食道、胃、結腸および直腸、胆嚢または皮膚の癌腫;または黒色腫が挙げられる。
【0116】
本発明の方法および組成物は詳細には、哺乳動物および詳細にはヒトにおける膀胱癌の治療において有効である。1つの実施形態では、本発明の方法および組成物は、種々の膀胱癌治療で投与されており、膀胱腫瘍塊のサイズもしくは数を減少することができないこと、またはこのような腫瘍の再発(relapseまたはresurgenceまたはrecurrence)を遅らせることによって測定した場合に満足な効果が見られない個体を治療するために用いられる。1つの実施形態では、本発明の方法および組成物は、BCG治療において満足な効果が見られない被験体に投与される。いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物は、膀胱癌の治療においてBCG治療のような別の癌治療と組み合わされる。このような実施形態では、被験体は、BCG治療の前、後または間に本発明の方法および組成物を受けてもよい。
【0117】
ある実施形態では、膀胱癌の再発または治療の有効性は、膀胱内視鏡、より好ましくは尿中のマイクロサテライトDNAの測定によって評価され得る。Steiner G,Schoenberg MP,Linn JF,Mao L,Sidransky D,「Detection of bladder cancer recurrence by microstellite analysis of urine」Nat Med.,1997 Jun;3(6)621−4を参照のこと。膀胱の治療のための1つの実施形態では、治療組成物は、バルーンカテーテルを介して投与される。カテーテルは、本発明に従って投与された組成物によって占有される空隙の残りを最小にするように、空隙の一部、好ましくは空隙のほとんどを占有するために膨張される場合、膀胱の空隙に対して尿道を介して挿入され得るバルーン部分を有する。カテーテルは、膀胱の空隙と接触するように、膀胱に組成物を輸送する別の部分を有する。バルーン尿道カテーテルは、当業者に公知である。
【0118】
ある実施形態では、本発明の組成物は、送達増強因子の希釈を減少するかまたは回避する方法で投与されてもよく、あるいは、調製物中の送達増強因子の量は、予想される希釈用量を考慮して増大され得る。希釈物を回避するための方法は、生理学的方法(例えば、排尿、絶食)または薬理学的介入(例えば、下剤)または医学的介入(カテーテルによる排液)によって標的の空間を空にする工程を包含する。バルーンカテーテルまたは他の方法を用いて、この組成物によって占有される管腔または通路内の空間の容積を隔絶してもよい。ある実施形態では、占有される必要がある空間を減少させるように、充填されている空間を部分的に占有するために、バルーンカテーテルが用いられ得る。他の実施形態では、処方物自体が、この因子のリザーバとして機能するように、または標的空間の表面に対して固定するために処方され、これによってバルク混合による即時希釈またはバルクフローによる損失を回避する。
【0119】
膀胱への膀胱内投与の際の送達増強剤とインターフェロンまたはインターフェロン遺伝子インターフェロン治療との間の相乗作用は、インターフェロン治療に一般的に伴う副作用を軽減または回避することを補助する。
【0120】
適切な量の組成物の投与は、例えば、局所投与、部分投与、経口投与または直腸投与、非経口的投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、皮内投与、経皮投与、鼻腔内投与、眼内投与、肺内投与、経皮投与または経尿道投与、膀胱内投与、筋肉内投与または経尿道投与および膀胱内投与のような当該分野で公知の任意の方法によるものであってもよい。いくつかの実施形態では、投与は経皮的に行う。本発明の適切な量および用量は、当該分野で公知であるように経験的に決定され得る。
【0121】
薬学的に受容可能な、または生理学的に受容可能な塩としては、限定はしないが、金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩など;アルカリ土類金属、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など;有機アミン塩、例えば、トリエチルアミン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩など;無機酸塩、例えば、塩酸、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など;有機酸塩、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩など;スルホン酸塩、例えば、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩など;アミノ酸塩、例えば、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられる。
【実施例】
【0122】
以下の実施例は、例示目的で提供されるものであり、本明細書において請求されるような本発明の範囲内に限定されないものとする。当業者が行う例示された物品および/または方法における任意のバリエーションは、本発明の範囲内におさまるものとする。
【0123】
(実施例1)
米国特許第6,312,681号は、膀胱の上皮性膜で癌細胞に対する導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターを送達するための方法を開示するが、この方法は、上皮性膜に対してアデノウイルスベクター、および1%〜50%(v/v)のエタノールまたは別の送達増強因子を投与する工程であって、このアデノウイルスベクターが細胞に感染して、導入遺伝子が感染細胞中で発現される工程を包含する。本出願と同じ譲受人に譲渡された米国特許第6,312,681号は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0124】
(実施例2)
以下の表は、本発明の非水性液体SYN3処方物の成分の例示的な範囲を示す。投与前に(例えば、膀胱癌のため)、SYN3溶液を、組換えアデノウイルス調製物と1:50v/v比で組み合わせて、患者に投与される混合物を形成する。
【0125】
【表1】
調製するために、ガラスビーカー中に約75%のDMAを秤量する。個別のビーカーに、サーファクタント(ポリソルベート80、ポリソルベート20、プルロニックL64またはプルロニックL92)を加えて、少量(最終用量の約10%)のDMAに溶解する。連続的に撹拌しながらDMA/サーファクタント溶液をDMA中に加える。個別の容器にSYN3を事前秤量する。撹拌しながら溶液中にSYN3をゆっくり加える。一旦SYN3が溶解されれば、十分なDMAを最終の重量容積まで添加する(25℃で、密度=0.962g/ml)。ラテックスでない栓を備えるシリンジに取り付けた0.22のフィルターを通じて溶液を濾過して、緊密に密閉されたガラス容器に4℃で溶液を貯蔵する。
【0126】
以下のさらなる組成物は、実施例1に従って調製され得る。
【0127】
【表2】
以下の25mlのバッチは、同じ手順によって調製した。
【0128】
【表3】
(実施例3)
以下の表は、本発明の凍結乾燥されたSYN3処方物の成分の例示的な範囲を示す。配合された溶液は、示されるように20mlの用量のII型ガラスバイアルに充填させて、凍結乾燥する。投与のための調製物は、SYN3を再溶解するために凍結乾燥ケーキを含むバイアルへの20mlのWFIの添加を要する。SYN3溶液はp53と、または任意の組換えアデノウイルス調製物と1:5のv/v比で合わされる。次いでこの混合物を例えば膀胱癌については患者に投与する。
【0129】
【表4】
以下の実施例は、凍結乾燥処方物を調製する方法である。
【0130】
(実施例4)
【0131】
【表5】
充填されるSYN3の正確な量は、以下の式を用いて薬物バッチの純度に従って調節される:
SYN3のグラム数=24.0×100/(純度%)
例えば:
SYN3薬物=97.0%純粋。
【0132】
24.0×100/97.0=1リットルに24.7gのSYN3が加えられる。
【0133】
従って、以下の式に従って、バッチに加えられるSYN3の量を決定する:
SYN3のg数/リットル=24.0g/リットル×[100/(SYN3バッチ純度%)]
このバッチに加えられる注射用水の用量は、以下の式に従って決定されるものである:
注射用水の用量(リットル)=バッチ用量(リットル)×0.5
撹拌機を備える風袋測定配合容器に上記の式を用いて算出した用量の注射用水を加える。Big CHAPを撹拌しながら添加して溶解する。注射用滅菌水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。Big CHAPの完全溶解には、中程度の撹拌速度での約30〜60分の連続的な撹拌を要し得る。Big CHAP溶液中にSYN3を撹拌(中程度の撹拌速度)しながら加えて溶解する。注射用水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。SYN3の完全な溶解には、最大1時間におよぶ混合を要し得る。撹拌しながら、かつ以下の順序:グリシン、アスコルビン酸、クエン酸一水和物およびクエン酸ナトリウム二水和物で、Big CHAPおよびSYN3の両方を含む溶液に添加して溶解する。注射用水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。注射用水を添加してこのバッチを最終用量にする(溶液の密度は25℃で約1.051g/mlである)。この溶液を15分間、混合する。
【0134】
pH測定のために溶液のわずかな(<5ml)サンプルを取り出す。pHは5.0〜6.0であるべきである。pHの調節は必須である。当業者は得られた産物のpHを容易に確認できる。
【0135】
配合を完了するため、溶液を無菌処理して濾過する。任意選択的に、化合物のバッチは、バイアルに充填する前に、密閉された滅菌のステンレス製圧力容器に2℃〜8℃で最大24時間まで保管してもよい。このバッチは、滅菌性を確保するために2回以上濾過してもよい。
【0136】
洗浄して滅菌されている20mlの1型フリントガラスバイアルに5.3±0.1mlの溶液を無菌処理して満たす。洗浄されて、シリコン処理されて、滅菌されている20−mmのWest 4416/50リオ型(lyo−shaped)ゴム栓をバイアルの凍結乾燥位置に無菌処理して挿入する。
【0137】
凍結乾燥棚を4±2℃に事前冷却する。凍結乾燥棚上に充填したバイアルのトレイを無菌処理して並べる。全てのトレイを置いた後、−40℃に1時間この棚を冷却して、処理前に−35℃以下で少なくとも4時間この生成物を維持する。コンデンサーの冷却を開始する。コンデンサーの温度が−45℃以下である場合、チャンバの排出を開始する。50〜70mm Hgの真空圧が得られれば、棚の温度を0.5時間で−20℃まで加熱する。棚の温度を−20℃で36時間、約150mmHgの圧(100〜200mmHgの圧)で維持する。生成物の温度は、処理前少なくとも6時間は−20℃以上に保たなければならない。棚を1時間で25℃まで加熱して、圧力を約50mmHgの圧まで低下させる。棚の温度を25℃で、約50mmHgの圧で14時間維持する。滅菌濾過した窒素を用いてチャンバを約950mmHgまで排気する。凍結乾燥機の内側でバイアルに栓をする。凍結乾燥機からバイアルを取り出して、20mmのアルミニウムシールでこのバイアルを圧着する。バイアルは、検査が終了するまで2℃〜8℃で保管しなければならない。
【0138】
この生成物は灰白色のケーキである。このバイアルは、検査後、2℃〜8℃で保管しなければならない。標識および検査の目的で、このバイアルを最大6時間まで19℃〜25℃に曝してもよい。
【0139】
(実施例5)
以下の実施例は、上記の実施例4に示されるようなバッチ調製に従って調製した。
【0140】
【表6】
得られた生成物のpHは5.34であった。
【0141】
【表7】
得られた生成物のpHは5.45であった。
【0142】
【表8】
得られた生成物のpHは5.76であった。
【0143】
得られた凍結乾燥生成物の安定性試験によって、それらがSYN3に関して高度に安定であることが示された。安定性試験はHPLCによって達成した。
【0144】
凍結乾燥処方物は、19.5ml WFIで再構成(再溶解)した:サンプルを指定の温度条件で、特定の時間インキュベートして、濃度をHPLCによって決定して、最初の濃度と比較した。
【0145】
(実施例6)
【0146】
【表9】
加えられるSYN3の正確な量は、以下の式を用いて、製剤原料のバッチの純度に従って調節する:
SYN3のグラム数=24.0×100(純度%)。
【0147】
サンプルの算出:
SYN3の製剤原料=97.0%純粋。
【0148】
24.0×100/97.0=1リットルのバッチに加えられるべきSYN3が24.7グラム。
【0149】
以下の実施例は次の手順で調製した:
最初に、以下の式に従ってバッチに加えられるSYN3の量を決定する:
SYN3のg数/リットル=24.0g/リットル×[100(SYN3のバッチ純度%)]
次に、以下の式に従って、バッチに加えられる注射用水の用量を決定する:
注射用水の用量(リットル)=バッチ用量(リットル)×0.5
撹拌機を備える風袋測定配合容器にこの用量の注射用水を加える。ヒドロキシプロピルβシクロデキストリンを撹拌しながら添加して溶解する。ヒドロキシプロピルβシクロデキストリンの完全な溶解には、中程度の速度での約30〜45分の連続的撹拌が必要であり得る。注射用水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。ポリソルベート80をこの溶液に加えて溶解する。ポリソルベート80は、0.1×注射用水の総バッチ容量(リットル)に再溶解して、この溶液に加えてもよい。
【0150】
この溶液中にSYN3を撹拌しながら加えて溶解する。SYN3の完全溶解には、最大1時間までの混合を要し得る。注射用水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。
【0151】
撹拌しながら、かつ以下の順序:アスコルビン酸、クエン酸一水和物およびクエン酸ナトリウム二水和物をこの溶液に加えて溶解する。注射用水を用いて秤量容器をリンスして、全ての物質を回収し得る。注射用水を添加してこのバッチを最終用量にする(溶液の密度は25℃で約1.058g/mlである)。この溶液を最大15分間、混合する。
【0152】
pH測定のために溶液のわずかな(<5ml)サンプルを取り出す。pHは5.0〜6.0でなければならない。pHの調節は必須ではない。洗浄されて完全性について試験されている溶液を、滅菌されたステンレス製の圧力容器中に無菌処理して濾過するか、またはその等価物を用いなければならない。任意選択的に、この配合されたバッチは、充填前に、密閉した無菌のステンレス製の圧力容器中に最長24時間まで2℃〜8℃で保管され得る。このバッチは、滅菌性を確保するために2回以上濾過してもよい。
【0153】
洗浄して滅菌されている20mlの1型フリントガラスバイアル中に5.3±0.1mlの溶液を無菌処理して満たす。洗浄されて、シリコン処理されて、滅菌されているリオ型ゴム栓をバイアルの凍結乾燥位置に無菌処理して挿入する。
【0154】
凍結乾燥するために、凍結乾燥棚を4±2℃に予備冷却する。凍結乾燥棚上に充填したバイアルのトレイを無菌処理して並べる。全てのトレイを置いた後、この棚を−40℃に1時間冷却して、処理前には−35℃以下で少なくとも4時間この生成物を維持する。コンデンサーの冷却を開始する。コンデンサーの温度が−45℃以下である場合、チャンバの排出を開始する。50〜70mm Hgの真空圧が得られれば、棚の温度を0.5時間で−20℃まで加熱する。棚の温度を−20℃で36時間、約150mmHgの圧(100〜200mmHgの圧)で維持する。生成物の温度は、処理前には少なくとも6時間にわたり−20℃以上に保たなければならない。棚を1時間で25℃に加熱して、圧力を約50mmHgの圧まで低下させる。棚の温度を25℃で、約50mmHgの圧で14時間維持する。滅菌濾過した窒素を用いてチャンバを約950mmHgまで排気する。凍結乾燥機の内側でバイアルに栓をする。凍結乾燥機からバイアルを取り出して、20mmのアルミニウムでこのバイアルを圧着する。バイアルは、検査が終了するまで2℃〜8℃で保管しなければならない。
【0155】
この生成物は灰白色のケーキである。このバイアルは、検査後、2℃〜8℃で保管しなければならない。標識および検査の目的で、このバイアルを最大6時間まで19℃〜25℃に曝してもよい。
【0156】
組換えアデノウイルスベクター(例えば、p53(rAD/p53))は、SYN3の凍結乾燥処方物と合わせた場合、37℃で少なくとも2時間、そして25℃で24時間、安定なままであり得る。p53は、SYN3の水溶液処方物と合わせた場合、37℃で少なくとも4時間、そして25℃で24時間、安定なままである。
【0157】
(実施例7.化合物A−LBの合成)
以下の実施例では、「g」は、グラムを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「mol」はモルを意味し、「℃」はセ氏温度を意味し、「分(min.)」は分を意味し、「DMF」は、ジメチルホルムアミドを意味し、そして「PN」は、粒子数を特定する。全ての温度は、他に特定しない限り、セ氏温度である。
【0158】
以下は、A−LBとしても公知である化合物VIIの合成において利用される方法形態に関する。以下に示すのは、化合物5−6の合成の詳細および精製に必要な工程である。
【0159】
用いられる材料および試薬
N−(3−アミノプロピル)−1,3−ジアミンプロパン
コール酸
ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)
イソブチルクロロホルメート
トリエチルアミン
ラクトビオン酸。
【0160】
(実験)
(化合物A−LBの合成)
以下は、A−LBとしても公知の化合物VIIの合成において利用される方法形態に関する。以下に示すのは、化合物5−6の合成の詳細および精製に必要な工程である。
【0161】
用いられる材料および試薬
N−(3−アミノプロピル)−1,3−ジアミンプロパン
コール酸
ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)
イソブチルクロロホルメート
トリエチルアミン
ラクトビオン酸。
【0162】
化合物5:ラクトビオン酸(716mg,2mmol)を含むメタノール(60mL)の溶液を加熱還流させた。この溶液にDCC(500mg、2.5mmol)を添加して、得られた溶液を還流させながら撹拌した。2時間後、N−(3−アミノプロピル)−1,3−ジアミンプロパン(800mL,5.7mmol)を添加して、得られた溶液をさらに1時間撹拌した。この反応溶液を室温まで冷却して濃縮し、粗生成物5を得た。粗アミド5をジクロロメタンを用いる倍散によって精製して、粘着性の吸湿性固体として5(2.72g、5.7mmol)を得た。
【0163】
化合物6:コール酸(4.1mg,10mmol)を含むDMF(60mL)の溶液を0℃に冷却した。この溶液にイソブチルクロロホルメート(1.2mL、10.2mmol)およびトリエチルアミン(1.4mL,10.4mmol)を添加して、得られた溶液を10分間撹拌し、続いて5(2.5g,5.3mmol)を含むDMF(40mL)を添加した。次いで、この反応溶液を72時間撹拌して濃縮し、粗生成物6を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製し、純粋な6(A−LB)を得た。
【0164】
【化11】
【0165】
【化12】
(実施例8)
(膀胱癌のインターフェロン療法)
本実施例では、ヒトインターフェロンα導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターの使用を前臨床動物モデルにおいて評価した。rAd−IFNを含むSYN3処方物の膀胱内投与を受けた動物は、動物の尿中のインターフェロンタンパク質の局所濃度が極めて高く、インターフェロンの全身的レベルは最小であった。本発明者らはまた、胸腺欠損マウスを用いて表在性膀胱癌の正所性腫瘍モデルにおけるrAd−IFN/SYN3の有効性を試験した。rAd−IFN/SYN3を投与されたマウスは、コントロールに比較して膀胱腫瘍のサイズの劇的な減少があった。これらの結果に基づいて、rAd−IFN/SYN3は、表在性膀胱癌の新規な代替的治療法であり得る。
【0166】
(実施例8A.rAd−IFNの抗腫瘍活性)
ヒトインターフェロン(IFN)(rAD−IFN)をコードするE1領域欠失アデノウイルスを構築した。インビボの膀胱内送達研究のために、本発明者らは、ヒトα2bインターフェロン遺伝子(IACB)をコードするアデノウイルスベクターを利用した。このベクターを用いる細胞の形質導入によって、INTRON Aと同一の一次アミノ酸配列を有するヒトα2bインターフェロンタンパク質の産生が生じる。このタンパク質は、165アミノ酸のインターフェロンタンパク質に連結された23アミノ酸の分泌リーダーペプチドを含む。N末端アミノ酸配列決定によって、分泌リーダーペプチドが翻訳後改変の間に適切に切断されることが確認されている。E.coliの産生した組換えINTRON Aと比較して、rAd−IFN形質導入から生成されるインターフェロンタンパク質をグリコシル化する。IFNの明らかなグリコシル化は、イムノアッセイまたは抗ウイルスバイオアッセイによるIFNのrAd−IFN介在性発現の検出に影響しなかった。電気化学発光免疫アッセイを用いる血清および尿の両方からのIFNタンパク質の検出のための生物分析方法が開発された。
【0167】
インターフェロンα種は一般に、生物学的特性において高レベルの種特異性を示す。ヒト腫瘍異種移植片を含むマウス腫瘍モデルにおけるインターフェロンαの抗腫瘍有効性を評価するために、マウスおよびヒトの両方のインターフェロンレセプターに結合し得るインターフェロンα種を有することが最適である。マウス腫瘍モデルを用いるインビボの有効性実験のために、本発明者らは、ハイブリッド型のインターフェロン(α2/α1)を含むアデノウイルスベクターを利用した。ハイブリッドインターフェロンタンパク質は、ヒト腫瘍細胞およびマウス腫瘍細胞の両方に対して抗腫瘍活性を有する(Renberg et al.,J.Biol.Chem.,257(19):11497−502(1982))。ハイブリッドインターフェロンは、マウス細胞に対してもヒト細胞に対しても活性であるので(Rehberg et al.,J Biol Chem.,257(19):11497−502(1982))、ハイブリッドインターフェロンの高次構造は、マウスIFNレセプターに結合して活性化できる必要がある。従って、ハイブリッドIFNタンパク質は、ヒトのインターフェロンα2bの抗腫瘍有効性をより密接にモデルすると考えられた。
【0168】
インターフェロン導入遺伝子は、参考として援用される米国特許第6,210,939号においてA/C/N 53として記載されるベクターと同じアデノウイルス骨格に組み込まれる。このベクターの模式的な提示は図1に例示されている。rAd−IFNによる細胞培養物および動物におけるIFNの発現およびIFNの生物学的活性の実証後、皮下異種移植片腫瘍モデルにおけるrAd−IFNの抗腫瘍有効性を評価した(図2)。腫瘍増殖の阻害は、グリア芽細胞腫(LN229、U87MG)、肝細胞腫(HEP3B)およびCML(K562)から誘導された腫瘍を有するヌードマウスでの腫瘍内rAd−IFN投与後に観察された。これらの研究では、投与を開始する前に、腫瘍モデルに応じて腫瘍は10〜30日間で樹立された。
【0169】
K562モデルでは、5匹のマウスのうち3匹に腫瘍がなく、そしてU87MGモデルでは、5匹のマウスのうち4匹に腫瘍がなかった。これらの結果に基づいて、rAd−IFNは、種々の腫瘍サブタイプにおいて皮下固形腫瘍モデルにおける強力な抗腫瘍活性を有することが明らかである。図2を参照のこと。
【0170】
(実施例8B)
(アデノウイルス遺伝子発現のSYN3増強)
本実施例では、組換えアデノウイルスの膀胱内投与は、全身への曝露は極めて微量であって、膀胱の管腔内に局所的に適用され得る。しかし、ヒト組換え複製欠損アデノウイルス(rAd)の単回の膀胱内投与は、以前の研究においてはごく限られた遺伝子移入および発現しか示していない(Bass et al.,Cancer Gene Ther.,2(2):97−104(1995))。膀胱の構造は、ウイルスベクターによって形質導入されることが不能である原因となり得ると考えられる。膀胱は病原性細菌およびウイルスに対する主要な天然の防御として機能し得るが、一方では尿の封入のためのリザーバとしても機能する。管腔の膀胱上皮は、膀胱管腔から組織への尿の通過を妨害する親水性グリコサミノグリカン(GAG)層で覆われる。GAG層は、他の上皮保護機構(例えば、胃腸管(胃腸管参照))に匹敵して、細菌結合を防御する(Parsons CL,World J Urol.,12(1):38−42(1994))。アデノウイルス結合および形質導入を増強するためにこの層を改変する因子の同定についての研究が重ねられている。エタノールはアデノウイルスの遺伝子導入を増大させ得る因子として最初に同定されたが(Engler et al.,Urology、53(5):1049−53(1999))、出血性膀胱炎も投与後に注目され、この処方物は不適切であると思われた。代替的処方物のさらなるスクリーニングをCanjiで行って、エタノールの有害作用がなくアデノウイルス遺伝子の膀胱への移入を増強し得る因子を同定した。種々の界面活性剤(陽イオン性、陰イオン性、両性イオン性および非イオン性)を、それがアデノウイルス送達を増強する能力について評価した。非イオン性界面活性剤Big CHAPは、膀胱炎なしにアデノウイルスベクターで膀胱上皮の形質導入を強力に増強することが見出された。Big CHAPは、濃度依存性の様式で遺伝子導入を向上させ、最大の形質導入および遺伝子発現の飽和は、30mg/ml(34mM)のBig CHAP濃度で達成された。
【0171】
Big CHAPの増強活性のさらなる特徴によって、種々の市販の調製物の間の変動が明らかになり、これによって界面活性剤の組成の異質性が示唆される。実際、Big CHAPのいくつかの調製物は、ウイルス導入遺伝子発現を全体として増強できなかった。Big CHAPの生物活性ロットを薄層クロマトグラフィーによって不活性なロットと比較した場合、この生物活性ロットには少なくとも3つのさらなる化合物が存在した。MALDI−MS、1H−NMRおよび13C−NMR構造分析によって、3つのさらなる成分がBig CHAP製造プロセス由来の最も可能性の高い副産物であることが示された。各々の不純物を単離して、rAd−β−galとの同時投与により膀胱中のウイルス導入遺伝子発現を増強する能力について評価した。不純物2番は、最も強力な化合物であったが、極めて不溶性でもあった。その全体が参考として本明細書に援用される米国特許第6,392,069号を参照のこと。
【0172】
膀胱上皮におけるrAd遺伝子形質導入を増強する能力についてSYN3を試験した。ラットには、rAd−β−gal(0.5ml;7.6×1010P/ml)を含むSYN3処方物またはビヒクル処方物(0.1% Tween−80)のいずれかの膀胱内投与を与えた。45分後、被験体を取り出して、動物を回復させた。2日後、動物を屠殺して、その膀胱を回収してX−galを染色してrAd遺伝子発現の程度を判定した。rAd−β−galを含むSYN3処方物を投与されたラットは、同じウイルスをビヒクル処方物に含むものの送達に比較して、lacZ遺伝子発現の劇的な増強を有した(図3)。
【0173】
(実施例8C)
(膀胱におけるインターフェロン発現に対する併用療法の効果)
SYN3を用いる膀胱癌の治療と、インターフェロン遺伝子を含む組換えアデノウイルスベクターとの併用は、膀胱の治療におけるインターフェロンに対して、導入遺伝子インターフェロンの発現における予期せぬ多大な増大をもたらした。前臨床試験によって、SYN3は、種々の組換えアデノウイルスベクターの膀胱上皮への送達および発現を劇的に増強し得ることが実証された。マウスで研究を行って、SYN3処方物を用いる膀胱上皮に対する遺伝子移入の増大を定量した。マウスは、SYN3またはビヒクル処方物のいずれかにおいてrAd−IFNの膀胱内投与を受けた。投与の2日後、マウスを屠殺して、それらの膀胱を回収して、ドライアイス上で急速凍結させた。次いで各々の膀胱から核酸を抽出して、それぞれPCRおよびRT−PCRを用いて、存在するrAd−IFN DNAおよびRNAのレベルをアッセイした。rAd−IFNを含むSYN3処方物を投与されたマウスは、rAd−IFNを含むビヒクル処方物を投与されたマウスに比較してrAd−IFN DNAのコピー数が約千倍多く(図4a)、そしてrAd−IFNを含むビヒクル処方物を投与されたマウスよりも膀胱ホモジネート中で決定されたRNAが少なくとも1万倍多い。
【0174】
【表10】
表1。マウスには、rAd−IFNを含むSYN3処方物(100μl;7.4×1010P/ml)を含むまたはビヒクル処方物のいずれかを45分間膀胱内投与した。投与の2日後、マウスを屠殺して、その膀胱を回収してドライアイス上で急速凍結させた。次いで各々の膀胱から核酸を抽出して、それぞれPCRおよびRT−PCRを用いて、存在するrAd−IFN DNAおよびRNAのレベルをアッセイした。BQL:定量レベル未満:DNA:10コピー数/組織1mg;RNA:1000MEQ/組織1mg。比較のために、SYN3単独の投与によって得たレベルも示す。これらの結果に基づいて、SYN3処方物が、膀胱上皮におけるrAd−IFNの送達および発現を増強するために必要とされることは明白である。
【0175】
(実施例8D)
(表在性膀胱癌についてのrAd−IFN/SYN3の有効性)
rAd−IFN/SYN3の有効性を、正所性腫瘍モデルを用いて評価した(Watanabe et al.,Cancer Gene Ther.,7(12):1575−80(2000))。表在性腫瘍は、腫瘍細胞結合を増強するための短時間のトリプシン事前投与の後にヒトUMUS−3移行上皮癌(TCC)の膀胱内投与によって胸腺欠損マウスの膀胱において樹立された。処理の開始前に6日間増殖することによって腫瘍を形成させた。次いで、rAd−IFN/SYN3、rAd−コントロール/SYN3またはSYN3−ビヒクル単独のいずれかをマウスに膀胱内投与した。2つの異なるコントロールのアデノウイルス構築物をこれらの研究において比較のために用いたが、一方は導入遺伝子を含まず(ZZCB)、もう一方は、ヒト分泌アルカリホスファターゼ遺伝子(APCB)を含む。なぜなら、rAd−IFNは、分泌遺伝子産物を産生する。マウスに、100μlのrAd(1.1×1011P/ml)を含むSYN3処方物を2日連続して1時間投与した。投与の14日後(腫瘍の開始後20日)、マウスを屠殺して、その膀胱を回収して、ホルマリンで固定し、それらの腫瘍負荷を顕微鏡検査で評価した。腫瘍があった膀胱の全体的割合、および腫瘍の相対的サイズを記録した。腫瘍によって占有される膀胱管腔の割合に基づいて0〜4のスケールで腫瘍をスコア付けした。rAd−IFN/SYN3投与群における腫瘍の全体的頻度は、rAd−コントロールまたはSYN3のみの群における腫瘍の頻度よりも有意に低かった(図4)。著しいことに、rAd−IFN投与動物においては残りの腫瘍のわずかな例だけがコントロールに比較して有意に小さいサイズを有した。これらの結果によって、rAd−IFN/SYN3が、この正所性腫瘍モデルにおいて表在性膀胱腫瘍の増殖を大きく軽減させることが示される。
【0176】
他の研究では、トリプシン前処理後の緑色蛍光タンパク質(GFP)で安定にトランスフェクトされたヒトKU−7膀胱癌細胞の膀胱内投与によって表在性腫瘍が胸腺欠損マウスの膀胱で樹立される正所性腫瘍モデルが用いられている。膀胱を外科的に露出させて、GFP蛍光を活性化させる光を用いて照射することによって、腫瘍サイズの連続的評価は、動物を屠殺することなくインビボでモニターできる。腫瘍細胞を10日間増殖させて、その後すぐ膀胱を外科的に露出させて、照射して、各々の動物についての蛍光腫瘍負荷を写真で記録した。画像分析ソフトウェアを用いて、膀胱の総面積に対する、腫瘍細胞を含む膀胱の面積の割合をまた投与の前後に決定した。マウスには、100μlのrAd(1×1011P/ml)の膀胱内投与を2日続けて1時間ずつ行った。4つの投与群を比較した;rAd−IFN/SYN3、rAd−β−gall/SYN3 rAd−IFN単独またはSYN3単独。投与の21日後(腫瘍増殖の開始の31日後)、膀胱を再度膨張させて、外科的に露出させて、GFP腫瘍負荷を上記のように再度測定した。
【0177】
rAd−IFN/SYN3を投与された動物は、経時的に腫瘍負荷の有意な減少を示した(図5)。対照的に、腫瘍のサイズは他の全ての投与群では増大させ続けた。rAd−IFN単独の投与では、腫瘍増殖の有意な軽減は生じず、このことはこの処方物に増強因子SYN3を含むことの必要性を示す。rAd−β−gal/SYN3群では腫瘍増殖の軽減は観察されないので、rAd−IFN/SYN3群で観察される腫瘍増殖の減少は、インターフェロン導入遺伝子発現の結果であるはずであり、アデノウイルスベクターの投与に起因する単なる非特異性効果ではない。要するに、rAd−IFN/SYN3は、この正所性腫瘍モデルにおける表在性膀胱腫瘍の増殖を有意に軽減するようである。コントロールに比較してSYN3/rAd−IFNを用いて達成された腫瘍負荷の軽減を可視化するために、投与の前後での個々の動物についての腫瘍負荷の写真が各々の投与群について提供される)。
【0178】
(実施例8E.ラット膀胱におけるrAd−IFN発現の検出)
細胞にrAd−IFNを形質導入する場合、分泌されたタンパク質産物が産生される。従って、膀胱上皮において得られるウイルスの導入遺伝子発現のレベルは尿中で分泌されるインターフェロンの量によって評価され得るという仮説が立てられた。最初の実験で、rAd−IFNまたはrAd−コントロール(ZZCB)を含むSYN3処方物の膀胱内投与を受けた雌性Sprague−Dawleyラット由来の尿中のインターフェロンのレベルを比較した。ラットには、rAd(5×1010P/ml)を含むSYN3(1mg/ml)の膀胱内投与を45分間行って、回復させた。投与の48時間後、代謝ケージを用いて(4時間の収集)各々の動物から尿を得た。rAd−IFNを含むSYN3処方物を投与されたラットは、その尿中で極めて高レベルのインターフェロン有し(約25ng/ml)、その血清中のインターフェロンのレベルは極めて低かった(図5)。対照的に、rAd−コントロールを含むSYN3処方物を投与されたラットは、その尿または血清中にインターフェロンタンパク質を有さなかった。48時間後、ラットを屠殺して、その膀胱を回収して、ホモジナイズして、インターフェロンレベルを決定した。SYN3/rAd−IFNを投与されたラットは、膀胱ホモジネート中に有意に高レベルのIFNタンパク質が検出された。SYN3/rAd−コントロール動物の膀胱ホモジネート中ではインターフェロンは検出されなかった。これらの結果は、PCR/RT−PCRの結果と一致しており、これによって尿が膀胱のウイルス導入遺伝子発現のレベルおよび期間の両方をモニターするツールとして用いられ得ることが示唆される。
【0179】
(実施例9)
(パート1:化合物3の合成)
米国特許第6,392,069号から改変されているSYN3の合成スキームを図7に示す。ラクトビオン酸(2)のラクトンは、50mlのエタノールにラクトビオン酸(1)の1g(2.8mmol)を溶解すること、ロータリー・エバポレーター中で蒸発乾燥するまでエバポレートし、そのプロセスを6回繰り返すことによって、合成された。化合物3を得るためには、50℃まで加熱することによって、得られた残滓(2)を50mlのイソプロパノールに溶解した。この溶液に、1.2ml(8.4mmol)のN−3−アミノプロピル)−1,2−プロパンジアミンを添加した。この温度を100℃まで上昇させて、この溶液を3時間撹拌させた。ロータリー・エバポレーションによって溶媒を除去して、得られた残滓をクロロホルムを用いて数回洗浄して、過剰な未処理のN−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンを除去した。この残留している残滓(3)を以下のパート3においてそのままに用いた。
【0180】
(パート2:化合物4の合成)
2.28gのコール酸(5.6mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド中に、60℃に加熱することで溶解することによって化合物4を合成した。トリエチルアミン(0.78ml(5.6mmol))を添加して、溶液を氷浴中で冷却した。次いで、イソブチルクロロホルメート(0.73ml(5.6mmol))を添加して、撹拌を10分間続けて白色沈殿物を形成した。
【0181】
(パート3:SYN3(化合物5)の合成)
化合物IIIをN,N−ジメチルホルムアミド中に溶解して、氷浴中で冷却して、撹拌した。化合物4の合成から得られる懸濁物を化合物3を含む溶液中に濾過した。得られた溶液を室温下で6時間撹拌した。この溶媒を高圧ロータリー・エバポレーションを用いて除去して、その残滓を100mlのクロロホルム/メタノール(50/50)に溶解した。この溶液の25mlを、溶出溶媒としてクロロホルム/メタノール(60/40)を用いてシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。クロロホルム/メタノール/水/濃水酸化アンモニウム(100/80/10/5)からなる移動相を用いてシリカゲル薄層クロマトグラフィーによって、カラムから溶出する分画の分析を行った。硫酸エタノールの噴霧後の炭化によってこの化合物を可視化した。フラッシュクロマトグラフィーを用い、溶出溶媒としてクロロホルム/メタノール/水/濃水酸化アンモニウム(100/80/10/5)を用いて、生成物を含む画分を確認して、再精製した。生成物を含む画分を確認して白色粉末までエバポレートした(300mgの化合物5)。この生成物の1H−NMRおよびMALDI質量スペクトル分析は、示した構造と一致した。
【0182】
(実施例11)
好ましい送達増強化合物は以下の表に示す。この表は、コール酸置換基を有する化合物を例示するが、当業者は、他のステロイド置換基がこの化合物の送達増強特性を損なうことなくコール酸と置換できることを容易に理解する。このような化合物を作製する方法は、本出願と同じ譲受人に譲渡され、その全体が参考として本明細書に援用される、Townsend and Townsend and Crew LLP代理人整理番号:016930−000830USとして2003年6月4日に提出された仮出願に教示されており、そこに開示される形質導入因子および送達増強因子、これらを作製する方法およびそれらの用途が特に参照される。
【0183】
【表11】
(実施例12)
(SYN3処方物における膀胱内投与後のIFNタンパク質の取り込み)
本実施例は、SYN3処方物中で投与されたときに、インターフェロンタンパク質の組織レベルを、SYN3が増大させ得るか否かを決定することによって、インターフェロンタンパク質の取り込みをSYN3が増強するか否かを検討した。
【0184】
方法。ハイブリッドIFNタンパク質の供給は限定されているので、IFNα/2bタンパク質(Intron A)が主に用いられた。比較の目的で、t=0時点でハイブリッドタンパク質も包含され得る。非近交系のHSDラットを、イソフルランを用いて麻酔した。投与前の尿を収集した。カテーテルおよび潤滑剤を用いて膀胱に経尿道的に投与した。被験体を膀胱に投与した。尿道はカテーテルを引き抜くことなく2.0Gの縫合糸で結紮した。45分後(0時間)、被験体を取り出して、動物を飼育ケージ中で回復させた。屠殺の直前にラットから尿サンプルを得た。尿を収集した後、ラットからその日に膀胱を回収した。組織を凍結させて、IFN応答性遺伝子の上方制御についてアッセイした。
【0185】
【表12】
物質:
38匹の雌性Harlan Sprague−Dawleyラット;
IACB: Tris−グリセロール処方物 7.57×1011P/ml
IHCB: vPBS処方物 1.10×1012P/ml
SYN3: 6×ストック(6mg/ml)
Intron A: 使用参照バイアル:1mlの滅菌ナノピュアdH2O中で水和(10MIU/ml)
3,008μlのPBSで希釈した950μlのIntron A(2.4 MIU/ml)
PBSまたはSYN3のいずれか125μlに添加された625μlの希釈されたIntron A(6mg/ml)
IFN α2α1タンパク質: 105μg/ml=105×106pg/ml
1.34×107IU/ml
1.28×108IU/mg
IACBは、インターフェロンα2bの組換えアデノウイルスベクターであり、CMVプロモーターおよびE1領域欠失を有する。IHCBはハイブリッドインターフェロンα2α1の組換えアデノウイルスベクターであり、CMVプロモーターおよびE1領域欠失を有する。
【0186】
(被験体の調製:)
2.4MIU/mlの最終濃度でIFNα2bを調製する(1参照バイアルを1mlの滅菌注射用水中で水和する)。
950μl Intron A濃縮物
3,008μl PBS。
【0187】
PBS中でIFNα2bを調製するため:
625μl Intron A 2.4MIU/ml
125μl PBS。
【0188】
SYN3中でIFNα2bを調製するため:
625μl Intron A 2.4MIU/ml
125μl SYN3。
【0189】
SYN3中でrAd−IFNα2b(IACB)を調製するため:
66μl IACB
250μl SYN3
1184μl Tris−グリセロール緩衝液。
【0190】
IFNα/2α1タンパク質の濃縮物調製(2.2ml):
243μl IFN α2α1タンパク質
1957μl PBS。
【0191】
IFNα2α1/PBS:
625μl IFNα2α1タンパク質
125μl PBS。
【0192】
IFNα2α1/SYN3:
625μl IFNα2α1タンパク質
125μl SYN3。
【0193】
【表13】
従って、賦形剤の最終濃度は以下のとおりである:
SYN3: (120mg/20ml)/6=1mg/ml
クエン酸一水和物 (1.6mg/20ml)/6=0.01333mg/ml
クエン酸ナトリウム二水和物(5.1mg/20ml)/6=0.0425mg/ml
ヒドロキシ−シクロデキストリン(1000mg/20ml)/6=8.33mg/mlポリソルベート80(Tween−80)(60mg/20ml)/6=0.5mg/ml。
【0194】
組織ホモジネート中に存在するIFNα2bの量は、ELISAアッセイ(PBL)を用いて決定した。タンパク質の濃度は、Bradfordタンパク質アッセイを用いて測定した。組織に存在するIFNのレベルは、組織1mgあたりのIFNのpg数(pgIFN/組織mg)として表した(図8を参照のこと)。図8に示されるように、SYN3処方物中のIFNα2bの送達は、投与後最長24時間まで検出可能なIFNα2bタンパク質の量の約15倍の増大を生じた。ハイブリッドIFNタンパク質(IFNα2α1)の送達はまた、SYN3処方物中の送達によって増強され、そしてIFNα2bタンパク質と同様の組織濃度レベルで検出された。
【0195】
(実施例13)
(IFNタンパク質を含むSYN3処方物の投与後の膀胱上皮に対するインターフェロンの生物学的作用の分析)
本実施例によって、IFN組織濃度の増大が測定可能な生物学的応答を生じたか否かを検討した。生物学的活性を評価するため、本発明者らは、RT−PCRを用いて、IFNタンパク質での投与後のラット膀胱ホモジネート中のIFN応答性遺伝子の発現をモニターした(Intron Aおよび「ユニバーサル(universal)」インターフェロン(IFN A/D;IFNα2α1)の両方。以下のラット遺伝子をアッセイした:2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(2’,5’−OAS);インターフェロン誘導性p78タンパク質をコードする遺伝子(MxAMX1)(MX1);インターフェロン調節性因子1(IRF−1);およびインターフェロンγIFNγ。(IFNγは、正常にはIFN応答性遺伝子とはみなされないが、一般にはBCGのような病原体に対する曝露後に発現させ、同様のIFNγ応答が組換えアデノウイルスによって誘導されるか否かを決定するために含まれた)。この方法は概して、実施例12において上記されるものであった。1時間後、被験体を取り出して、動物をホームケージで回復させた。ラットを指定の時点で屠殺し(0時間=投与の直後)、そしてそのサンプルを液体N2中で急速凍結させて、RT−PCR分析に供した。
【0196】
【表14】
(必要な材料:)
38例の雌性Harlan Sprague−Dawleyラット;プロトコール04−634から移した
IACB: Tris−グリセロール処方物 7.57×1011P/ml
IHCB: vPBS処方物 1.10×1012P/ml
SYN3: 6×ストック(6mg/ml)
D−PBS
Tris−グリセロール緩衝液:
滅菌WFI
IFNα2α1タンパク質: 105μg/ml=105×106pg/ml
1.34×107IU/ml
1.28×108IU/mg。
【0197】
(被験物質の調製:)
(1)IFNα2b/PBS:2 MIU/ml最終濃度で5ml)
・1ml注射用滅菌水1,000μl Intron A濃縮物中で1参照バイアルを水和する(10MIU/バイアル)
4,000μl PBS。
【0198】
(2)IFN α2b/SYN3:最終濃度2MIU/mlで10ml)
・2ml注射用滅菌水2,000μl Intron A濃縮物で2つの参照バイアルを水和する。
6,334μl PBS
1,666μl SYN3。
【0199】
(IACB/SYN3:SYN3中に1.0×1011P/mlで4.5ml)
660μl IACB
750μl SYN3
3,090μl Tris−グリセロール緩衝液。
【0200】
(IFNα2α/PBS:1MIU/mlの最終濃度で4ml)
298μl IFNα2α1タンパク質
3,702μl PBS。
【0201】
(IFNα2α1/SYN3:1MIU/mlの最終濃度で6ml)
444μl IFNα2α1タンパク質
4,556μl PBS
1,000μl SYN3。
【0202】
(IHCB/SYN3 SYN3中に1.0×1011P/mlで4.0ml)
364μl IHCB
667μl SYN3
2,969μl Tris−グリセロール緩衝液。
【0203】
動物を指定の時点(図9〜11を参照のこと)において屠殺して、RT−PCR分析のために液体窒素上にその膀胱を回収した。一次分析では、Intron A/PBS送達後に観察されるレベルに対して上記の遺伝子のmRNAレベルを比較した。これにより、示されるグラフでは、遺伝子活性化のレベルは、Intron A/PBS群に対して正規化される(1.0)。
【0204】
図9〜12に示されるように、SYN3の追加は、同じ量のタンパク質を含むPBS処方物の送達に比較して、公知の下流IFN活性化遺伝子(2’−5’OAS,MX1)の発現を増大させた。SYN3におけるハイブリッドタンパク質(BS:IFNα2α1/SYN3)は、IFNα2bについて2MIU/mlの代わりに1MIU/mlで投与された場合でさえ、より強力な生物学的応答をもたらすと思われた。Intron A(IFNα2b)およびハイブリッドIFN(IFNα2α1)の両方ともSYN3処方物中で投与された場合、ラットOASおよびMX1遺伝子の発現を増大させたが、両方ともrAd−IFNα2bまたはrAd−IFNα2α1の投与後に得られたレベルよりも幾分か劣った。
【0205】
本明細書で記載される実施例および実施形態は、例示的な目的のものでしかなく、それらに照らして様々な改変または変化が当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に包含されるものであるということが理解される。本明細書に引用される全ての刊行物および特許出願は、各々の個々の刊行物または特許出願が詳細にかつ個々に参考として援用されることを意図しているように、全ての目的についてその全体が参考として本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】図1は、腫瘍細胞における遺伝子発現を増強する送達増強因子の効果を実証するために、本明細書に記載された実験において用いられる、複製欠損組換えアデノウイルス遺伝子送達系の模式図を提供する。
【図2】図2は、皮下の異種移植片腫瘍モデルにおける、組換えアデノウイルスインターフェロン遺伝子送達系およびSYN3を含む、薬学的組成物の抗腫瘍有効性を示すグラフ表示である。グリア芽細胞種(LN229、U87MG)、肝細胞腫(HEP3B)およびCML(K562)に由来する腫瘍を保有するヌードマウスにおいて腫瘍内rAd−IFN投与後に、腫瘍増殖の阻害が観察された。腫瘍内投与による皮下異種移植片腫瘍増殖の阻害。5匹のマウスの群に、ビヒクル、rAd−コントロール、またはrAd−IFNを用いて2週間の間、週に3日の注射によって投与した(1×1010粒子/用量;総用量6×1010粒子)。
【図3】図3は、ラットにおける組換えアデノウイルス遺伝子送達系の送達をSYN3が増強する能力を示す。雌性Sprague−Dawleyラットには、45分間に、rAd−β−gal(7.6×1010P/ml)を含むSYN3処方物(ビヒクルに1mg/ml)、またはビヒクル単独(0.1% Tween−80)のいずれかの膀胱内投与を与えた。48時間後、動物を屠殺して、それらの膀胱を回収し、固定して、lacZ発現についてX−gal染色した。
【図4】図4は、マウスの膀胱腫瘍モデルにおける腫瘍に対する、SYN3を有するインターフェロン遺伝子送達系を含む薬学的組成物の効果を示す。雌性ヌードマウスでは、経尿道的にカテーテルを使用して、3時間、UMUC−3細胞(1×107;100ml)を投与する前に30分間、100mlのトリプシン−EDTA(0.25%)を投与した。6日後、rAd−IFNまたはrAdコントロール(1×1011/100μl)またはSYN3のみ(1mg/ml)のいずれかの膀胱内投与によって動物に2×(24時間間隔;6日、7日)投与した。腫瘍細胞移植の21日後、動物を屠殺して、それらの膀胱を、顕微鏡検査および腫瘍負荷のスコア付けのためにホルマリンに収集した。腫瘍は以下のようにスコア付けした:0=腫瘍なし、1=閉塞した膀胱管腔のうち25%未満;2=閉塞した膀胱管腔のうち25〜50%;3=閉塞した膀胱管腔の50%超。
【図5】図5は、トリプシン前処理後に緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein)(GFP)で安定にトランスフェクトされたヒトKU−7膀胱癌細胞の膀胱内投与により胸腺欠損マウスの膀胱で表在性腫瘍を樹立した表在性膀胱癌の同所性腫瘍モデルにおける、遺伝子送達増強系と組み合わせたSYN3の有効性に関連するデータを提供する。GFP蛍光を活性化するために膀胱を外科的に露出および照射することによって、腫瘍サイズの経時的な評価は、動物を屠殺することなくインビボでモニターできる。腫瘍細胞を10日間増殖させ、その後、膀胱を外科的に露出させて照射し、そして各々の動物についての蛍光の腫瘍負荷を写真で記録した。画像分析ソフトウェアを用いて、膀胱の総領域に対する腫瘍細胞を含む膀胱の領域の割合をまた、投与の前後に決定した。2日連続して1時間、100μlのrAd(1×1011P/ml)の膀胱内投与をマウスに行った。4つの投与群を比較した:rAd−IFN/SYN3、rAd−β−gall/SYN3 rAd−IFN単独またはSYN3単独。投与の21日後(腫瘍増殖の開始後31日)、膀胱を再度膨らませて、外科的に露出させて、GFP腫瘍負荷を上記のように再度測定した。rAd−IFN/SYN3を投与された動物は、経時的に腫瘍負荷が有意に低下した。
【図6】図6は、血液、尿および膀胱の組織におけるインターフェロンのレベルに対する、SYN3およびインターフェロン遺伝子送達系を含む薬学的組成物の効果を示す。rAd−IFN(IACB)またはrAd−コントロール(ZZCB)のいずれかを含むSYN3処方物(1mg/ml)の膀胱内投与(100μl;7.4×1010P/ml)をマウスに行った。投与の2日後、尿および血清を各々の動物から得るとすぐに動物を屠殺して、それらの膀胱を回収して、ホモジナイズして、IFNのレベルについてアッセイした。このデータによって、インターフェロン発現のレベルが尿のアッセイによって決定され得るということ、およびインターフェロンをコードする遺伝子送達系の膀胱内投与後のインターフェロンタンパク質に対する動物の識別可能な全身的曝露がないということがわかる。
【図7】図7は、SYN3の合成の1つの方法を例示する。
【図8】図8は、種々の時点でのラットにおける尿路上皮によるインターフェロンの取り込みに対する、PBSと比較したSYN3処方物の効果を示す。ハイブリッドIFNタンパク質の供給が制限されるので、IFNα2bタンパク質(Intron A)が主に用いられた。比較のためには、ハイブリッドタンパク質をまた、t=0時点で含んだ。
【図9】図9は、ラットにおける、2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼ(OAS)のインターフェロン発現に対する、PBSと比較したSYN3処方物の効果を示す。
【図10】図10は、ラットにおける、MX1のインターフェロン誘導性発現に対する、PBSと比較したSYN3処方物の効果を示す。
【図11】図11は、ラットにおける、IRF1の任意のインターフェロン誘導性発現に対する、PBSと比較したSYN3処方物の効果を示す。
【図12】図12は、ラットにおける、IFNγのインターフェロン発現に対する、PBSと比較したSYN3処方物の効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の薬学的組成物。
【請求項1】
本明細書中に記載の薬学的組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−269808(P2007−269808A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147517(P2007−147517)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【分割の表示】特願2006−515206(P2006−515206)の分割
【原出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(399025284)カンジ,インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【分割の表示】特願2006−515206(P2006−515206)の分割
【原出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(399025284)カンジ,インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
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