説明

インターホン機器における水抜き構造

【課題】方形のスピーカ孔が上下方向へ複数並設されているようなインターホン機器においても、各スピーカ孔に溜まろうとする水を排出側へ確実に抜くことができるインターホン機器における水抜き構造を提供する。
【解決手段】上下方向に複数個、左右方向に複数列並設された正方形状のスピーカ孔6、6・・に対し、各スピーカ孔6から所定の間隔を隔てた後方に、スピーカ孔6の形状に応じた矩形の背板12を設けるとともに、背板12の上辺及び下辺に沿って切り欠き13、14を形成し、更に、下辺側の切り欠き14の左右幅を上辺側の切り欠き13の左右幅よりも短くした。したがって、スピーカ孔16から浸入し背板12の前方に溜まろうとする水滴を効果的に下方へ導くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば来訪者が居住者を呼び出すためのインターホン子機等といったインターホン機器における水抜き構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば玄関等の屋外に設置されるインターホン子機等では、スピーカ孔を介して本体ケース内へ雨水等の水滴が浸入し、各種電子基板へ悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、従来よりインターホン機器には水抜き構造が設けられており、その一例としては、たとえば特許文献1に開示されているような水抜き構造がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−212583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水抜き構造は、スピーカ孔の形状等によって好適に採用できないこともあり、たとえば特開2005−136700号公報に開示されているように、方形状のスピーカ孔が上下方向へ複数並設されているようなインターホン機器においては、最も下方にあるスピーカ孔を除いたスピーカ孔に対して上記特許文献1に開示されている水抜き構造を採用することは難しい上、採用したところで効果的に機能しないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、方形のスピーカ孔が上下方向へ複数並設されているようなインターホン機器においても、各スピーカ孔に溜まろうとする水を排出側へ確実に抜くことができるインターホン機器における水抜き構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、本体ケースの前面に、方形に開設されたスピーカ孔が上下方向へ複数個並設されてなるインターホン機器における水抜き構造であって、各スピーカ孔から所定の間隔を隔てた後方に、スピーカ孔の形状に応じた矩形の背板を設けるとともに、背板の上辺に沿って左右方向へ所定の幅にわたる第1の切り欠きを、背板の下辺に沿って左右方向へ第1の切り欠きよりも短い幅にわたって第2の切り欠きを夫々設けたことを特徴とする。
この構成によれば、背板の上辺及び下辺に沿って夫々長さが異なり、且つ、下辺側の方が上辺側よりも短い切り欠きを設けているため、スピーカ孔から浸入した水滴が第1及び第2の切り欠きによりバランスを崩し、背板の前方で溜まることなく下方(すなわち、排出側)へ流れることになる。したがって、各スピーカ孔に溜まろうとする水を排出側へ確実に抜くことができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、本体ケースの前面を構成する前ケースの内面に、各スピーカ孔を上下に跨ぐゲート部材を設け、ゲート部材から背板を突設するとともに、上下方向で隣り合うゲート部材同士を繋ぐ案内リブを設けたことを特徴とする。
この構成によれば、第1及び第2の切り欠きによってバランスを崩された水滴が案内リブを伝いながら順次下方のスピーカ孔へと導かれることになり、背板の前方に溜まろうとする水滴を一層スムーズに排出側へ導くことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各スピーカ孔から所定の間隔を隔てた後方に、スピーカ孔の形状に応じた矩形の背板を設けるとともに、背板の上辺に沿って左右方向へ所定の幅にわたる第1の切り欠きを、背板の下辺に沿って左右方向へ第1の切り欠きよりも短い幅にわたって第2の切り欠きを夫々設けているため、スピーカ孔から浸入した水滴が第1及び第2の切り欠きによりバランスを崩し、背板の前方で溜まることなく下方(すなわち、排出側)へ流れることになり、各スピーカ孔に溜まろうとする水を排出側へ確実に抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】インターホン子機を前面側から示した説明図である。
【図2】前ケースを前方側から示した斜視説明図である。
【図3】前ケースを前方側から示した斜視説明図である。
【図4】前ケースを後方側から示した斜視説明図である。
【図5】前ケースのスピーカ孔箇所を後方から拡大して示した説明図である。
【図6】背板の切り欠き長さを変更した例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態となるインターホン機器における水抜き構造について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0011】
図1は、インターホン機器の一例であるインターホン子機1を前方から示した説明図である。
インターホン子機1は、前側に配置される前ケース2と、後側に配置される後ケース(図示せず)とで構成される本体ケースを有しており、この本体ケース内の上部には、通話のためのマイク(図示せず)や来訪者を撮影するためのカメラユニット3等が設置されている。また、本体ケース内の略中央部には、通話のためのスピーカ4が設置されており、該スピーカ4の下方に、呼出ボタン5が押し込み操作可能に備えられている。このスピーカ4は、上下方向に複数個、左右方向に複数列並設された5.0mm四方の正方形状のスピーカ孔6、6・・と、スピーカ孔6、6・・の後方(本体ケース内)に配置されるスピーカ基板(図示せず)とから構成されている。そして、このようなインターホン子機1は、住戸の玄関の壁面等に設置されており、来訪者によって呼出ボタン5が押し込み操作されると、図示しない居室親機を呼び出すとともに、カメラユニット3を作動させて来訪者を撮影する。その後、居室親機において応答操作がなされると、マイクやスピーカ4を作動させ、居室親機との間で通話可能となる。
【0012】
ここで、本発明の要部となる各スピーカ孔6に設けられた水抜き構造について、図2〜図5をもとに説明する。図2及び3は、前ケース2を前方側から示した斜視説明図であり、図4は、前ケース2を後方側から示した斜視説明図である。図5は、前ケース2のスピーカ孔6、6・・箇所を後方から拡大して示した説明図である。
【0013】
各スピーカ孔6の後方には、スピーカ孔6を上下に跨ぐ門形のゲート部材11と、各ゲート部材11から右方(後方から見ると左方)へ、各スピーカ孔6から所定の間隔を隔てた後方位置で各スピーカ孔6を覆う背板12とが設けられている。ゲート部材11は、各スピーカ孔6の上下左端(後方から見ると右端)位置から後方へ突設された一対の柱部と、上下の柱部間を連結する架設部とからなり、前ケース2の後面と一体的に設けられている。また、各ゲート部材11の前ケース2後面からの突出量(柱部の突設高さ)は、3.0mmとされている。一方、背板12は、各ゲート部材11の架設部から突設されており、スピーカ孔6の形状に応じた矩形板状に形成されている。そして、該背板12の上辺と下辺とには、先端(後方から見て左端)から基端へと向かって切り欠き13、14が設けられている。上辺側の切り欠き13の左右幅は3.2mm、下辺側の切り欠き14の左右幅は2.2mmとなっており、上辺側の切り欠き13の方が下辺側の切り欠き14よりも基端側まで切り欠かれている(すなわち、下辺側の切り欠き14の左右幅は、上辺側の切り欠き13よりも短い幅とされている)。そのため、ゲート部材11の上側の柱部の方が、ゲート部材11の下側の柱部よりも左右幅が短くなっており、上下方向で見た際、ゲート部材11の柱部の側方に形成される背板2とスピーカ孔6との間の隙間は、上部の隙間の方が下部の隙間よりも左右方向で広くなっている。加えて、前ケース2の後面で上下に並ぶスピーカ孔6、6間には、上下のゲート部材11、11の柱部同士を繋ぐように案内リブ15が後方へ突設されている。
【0014】
上記構成を有する水抜き構造によれば、スピーカ孔6から浸入して背板12の前方で溜まろうとした水滴は、背板12の上辺及び下辺に沿って設けられた左右幅の異なる切り欠き13、14によってバランスが崩れ、案内リブ15を伝いながら順次下方のスピーカ孔6のゲート部材11及び背板12へと導かれ、最も下方のスピーカ孔6まで達すると図示しない排出孔から本体ケース外へ排出される。尚、本件出願人は、上辺側の切り欠き13と下辺側の切り欠き14との長さを上記実施形態の態様とは異ならせて、同様に水抜きの実験を行った。しかしながら、図6(a)に示すように下辺側の切り欠き14を上辺側の切り欠き13の切り欠き幅よりも長く形成した(上記実施形態とは逆にした)場合や、図6(b)に示すように上下の切り欠き13、14を同じ切り欠き幅とした場合には、背板12の前方で溜まろうとする水滴を効果的に排出側へ導くことができなかった。
【0015】
以上のようなインターホン子機1における水抜き構造によれば、上下方向に複数個、左右方向に複数列並設された正方形状のスピーカ孔6、6・・に対し、各スピーカ孔6から所定の間隔を隔てた後方に、スピーカ孔6の形状に応じた矩形の背板12を設けるとともに、背板12の上辺及び下辺に沿って切り欠き13、14を形成し、更に、下辺側の切り欠き14の左右幅を上辺側の切り欠き13の左右幅よりも短くしている。したがって、スピーカ孔16から浸入し背板12の前方に溜まろうとする水滴を効果的に下方(すなわち排出側)へ導くことができる。
【0016】
また、各スピーカ孔6を上下に跨ぐゲート部材11から背板12を突設するとともに、上下で並ぶゲート部材11、11同士を繋ぐように案内リブ15を設けているため、切り欠き13、14によってバランスを崩された水滴は案内リブ15を伝いながら順次下方のスピーカ孔6へと導かれることになり、背板12の前方に溜まろうとする水滴を一層スムーズに排出側へ導くことができる。
【0017】
なお、本発明に係るインターホン機器における水抜き構造は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、インターホン機器全体の構成は勿論、スピーカ孔の形状や案内リブの有無等に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0018】
たとえば、上記実施形態では、スピーカ孔6を正方形状としているが、上下方向若しくは左右方向へ長い長方形状としても何ら問題はなく、背板12の形状もスピーカ孔6の形状に応じて適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、ゲート部材11から背板12を突設する構成としているが、たとえばスピーカ孔6の左縁に沿って壁状の支持片を後方へ突設し、該支持片から背板12を突設するような構成を採用することも可能である。ただ、壁状の支持片よりもゲート部材11を採用した方が、水滴を下方へ導くための隙間が多く、効果的に水を排出側へ導くことができるという効果がある。
【0019】
さらに、案内リブ15の有無については適宜設計変更可能であるし、上記実施形態ではゲート部材11をスピーカ孔6の左端の位置においてスピーカ孔6を跨ぐように設けているが、右端の位置においてスピーカ孔6を跨ぐようにゲート部材11を設け、背板12をゲート部材11から左方へ突設する等、ゲート部材11の設置位置についても適宜設計変更可能である。
加えて、インターホン機器の一例であるインターホン子機1について説明しているが、本発明のインターホン機器は、方形のスピーカ孔が上下方向に複数個並設されていさえすれば、住戸内に設置される居室親機や電話機器、集合住宅インターホンシステムを構成する集合玄関機等の他のインターホン機器に対しても良好に適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1・・インターホン子機(インターホン機器)、2・・前ケース(本体ケース)、4・・スピーカ、6・・スピーカ孔、11・・ゲート部材、12・・背板、13、14・・切り欠き、15・・案内リブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースの前面に、方形に開設されたスピーカ孔が上下方向へ複数個並設されてなるインターホン機器における水抜き構造であって、
各前記スピーカ孔から所定の間隔を隔てた後方に、前記スピーカ孔の形状に応じた矩形の背板を設けるとともに、前記背板の上辺に沿って左右方向へ所定の幅にわたる第1の切り欠きを、前記背板の下辺に沿って左右方向へ前記第1の切り欠きよりも短い幅にわたって第2の切り欠きを夫々設けたことを特徴とするインターホン機器における水抜き構造。
【請求項2】
前記本体ケースの前面を構成する前ケースの内面に、各前記スピーカ孔を上下に跨ぐゲート部材を設け、前記ゲート部材から前記背板を突設するとともに、上下方向で隣り合うゲート部材同士を繋ぐ案内リブを設けたことを特徴とする請求項1に記載のインターホン機器における水抜き構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−209693(P2012−209693A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72762(P2011−72762)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】