説明

インダクタンス素子及びそれを用いたノイズフィルタ

【課題】安価に小型化及び高性能化が可能なコモンモード用インダクタンス素子を提供すること。
【解決手段】このインダクタンス素子13bは、素子外径側内部の局部となる絶縁性ケース15b(トロイダル形状の磁性体コア14aの外周面を覆って装着される)内の一部に接地接続用端子21を有する銅箔23を設けた構造としている。この銅箔23は、磁性体コア14bに巻回される巻線16,17を容量結合するための箔状導体であり、絶縁物である絶縁性ケース15bを介在させて設けられ、その部分で巻線16,17を覆う構造であるため、巻線16,17との沿面距離を確保できる。このインダクタンス素子13bの場合、減衰特性は接地接続用端子21を有する銅箔23を持たない従来品の減衰特性を上回る高性能なものとなり、且つ磁性体コア14bを小さ目にして全休の小型化も図り得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてスイッチング電源回路を使用している電源回路における交流(AC)アダプタに適用される電気部品に関し、詳しくは商用電源入力に必要とされる交流線(ACライン)に対してノイズ減衰のために接続されるノイズフィルタを構成するために用いられるインダクタンス素子及びそれを用いたノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスイッチング電源回路としては、例えば図6に示すような回路構成のもの(文献公知に係る発明でないが、一般的に周知であるもの)が挙げられる。
【0003】
このスイッチング電源回路は、入力側(1次側)フィルタ部1、1次側整流回路部2、スイッチング素子部3、トランス部4、出力側(2次側)整流回路部5、2次側平滑コンデンサ6、電圧変化検出回路部7、及び制御回路部8を備えて成る。尚、ここでは細部を略図するが、各部には抵抗,コンデンサ,ダイオード等のチップ部品が含まれて回路構成される。
【0004】
このうち、入力側フィルタ部1は、商用電源入力に必要とされる交流線に対してノイズ減衰のために接続されるノイズフィルタであり、電源入力側からのノイズ進入を防ぐ働きがある他、スイッチング電源から発生して入力電源側に帰還するノイズを抑制する働きがある。1次側整流回路部2は、商用電源による交流電源を全波又は半波で整流する。スイッチング回路部3は、制御回路部8から与えられた制御信号に基づいて整流された電圧をオン,オフ制御し、所定の周波数で制御信号に対応したパルス幅の交流電圧を出力する。トランス部4は、1次側から入力されたスイッチング回路部3からの交流電圧を所定の値を持った交流電圧に変圧して2次側から出力する。2次側整流回路部5は、トランス部4から出力された交流電圧を整流して脈動電圧を出力する。2次側平滑コンデンサ6は、2次側整流回路部5からの脈動電圧を平滑化して直流電圧として出力する。電圧変化検出回路部7は、2次側平滑コンデンサ6から出力される直流電圧の変化を検出して検出信号を出力する。制御回路部8は、電圧変化検出回路部7からの検出信号に基づいてパルス幅の検出信号を所定の周波数の制御信号となるように出力してスイッチング回路部3へ与える。
【0005】
図7は、このスイッチング電源回路における商用電源入力側の細部構成を示した回路ブロック図である。ここでは、主に入力側フィルタ部1における回路構成の細部を示しているが、入力側フィルタ部1自体はコモンモードのノイズを除去する電気部品としてのインダクタンス素子13、コンデンサ素子12、及びディファレンシャルモードのノイズを除去する電気部品としてのインダクタンス素子11から成っている。因みに、ここでのディファレンシャルモードのノイズとは、入力側フィルタ回路部1における入力線間に発生するノイズを示し、コモンモードのノイズとは、入力側フィルタ回路郵1における二つの入力線間と別な基準電位との間に発生するノイズを示すものである。特にインダクタンス素子13については、トロイダル形状の磁性体コアに巻線が巻回された基本構造のものであり、電流も流れるために巻線は或る程度の太さが必要となっている。
【0006】
図8は、上述した入力側フィルタ部1に備えられるインダクタンス素子13の基本構成を示した平面図である。このインダクタンス素子13は、一般的に周知な構造のもの(例えば特許文献1,2参照)で、トロイダル形状の磁性体コア14の外周面を絶縁性ケース15で覆った上、その表面全体に円周方向に沿って巻線16,17を巻回し、巻線16,17のリード部分が平行して外方へ引き出された構造となっている。
【0007】
因みに、こうした構造のインダクタンス素子(フィルタ素子,通信用トランス)は、コモンモードのノイズを除去するために2本の巻線が必要であり、そのためには巻線の巻回数も或る程度多くする必要がある。商用電源から電力を得るタイプの電気製品には必ず上述したようなスイッチング電源回路が使用されており、そこには必ずノイズフィルタ(入力側フィルタ部)が必要になる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−235709号公報(段落[0013], [0014],[0018],[0028]、図1、図5、図15)
【特許文献2】特開2005−150198号公報(要約、段落[0004],[0040],[0041],[0056],[0065]〜[0069]、図1、図2、図5、図7、図9、図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年の電気製品の小型化・薄型化の要望によりスイッチング電源回路の入力側フィルタ部回路にも小型にして安価で高性能な品質が求められており、これに伴ってそこに用いられるインダクタンス素子にも同様に小型化や高特性化が求められている。
【0010】
ところが、上述した図8に示したような基本構造(特許文献1,2のフィルタ素子,通信用トランスを含むものとする)のままで入力側フィルタ回路部のコモンモードのノイズを除去するためのインダクタンス素子として適用しようとすると、電流が流れるために巻線を或る程度太くした上でその巻回数も或る程度大きくする必要があることに加え、減衰量を向上させるために磁性体コアを大きくする必要があることにより、全体として体積が大きくなって小型化が困難となってしまうため、結果として安価に小型化及び高性能の双方を実現することができないという問題がある。
【0011】
このことは、インダクタンス素子自体について、そもそも基本構造(全体構造)や巻線の磁性体コアに対する沿面距離等を考慮した改善も数十年に及ぶ期間進んでおらず、比較的大きい体積を有するものとなっており、しかもフィルタとしての特性改善についても長年停滞したままであるという事情がある。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、安価に小型化及び高性能が可能なコモンモード用インダクタンス素子及びそれを用いたノイズフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、磁性体コアヘ巻線を巻回して或るインダクタンス素子において、巻線を容量結合するための箔状導体を素子の少なくとも一部分に対して絶縁物を介在させて覆うように設けて成るインダクタンス素子が得られる。
【0014】
又、本発明によれば、上記インダクタンス素子において、箔状導体は、外方へ引き出されるように接続された接地接続用端子を有するインダクタンス素子が得られる。
【0015】
更に、本発明によれば、上記何れかのインダクタンス素子において、磁性体コアの外表面を覆った絶縁性ケース、磁性体コアを装着可能で巻線を巻回するための絶縁性ボビン、及び磁性体コアを固定可能で箔状導体が配設された絶縁性端子台の少なくとも一つを有するインダクタンス素子が得られる。
【0016】
加えて、本発明によれば、上記何れか一つのインダクタンス素子において、箔状導体は銅箔であるインダクタンス素子が得られる。
【0017】
又、本発明によれば、上記何れか一つのインダクタンス素子において、磁性体コアの透磁率は10000以上であるインダクタンス素子が得られる。
【0018】
これらの何れか一つのインダクタンス素子において、巻線は複数本から成ると共に、磁性体コアにより互いに磁気的に結合されたことは好ましい。
【0019】
一方、本発明によれば、上記何れか一つのインダクタンス素子を有するノイズフィルタであって、該インダクタンス素子を商用電源入力の交流線に対して接続したノイズフィルタが得られる。
【0020】
他方、本発明によれば、上記何れか一つのインダクタンス素子と少なくとも1個の容量性素子とから成るフィルタユニットが得られる。このフィルタユニットにおいて、少なくとも1個の別なインダクタンス素子を備えて成ることは好ましい。
【0021】
更に、上記何れか一つのインダクタンス素子を商用電源入力部に備えた電気機器を構成すること、上記何れかのフィルタユニットを商用電源入力部に備えると共に、交流ラインフィルタとして機能する電気機器を構成すること、上記何れか一つのインダクタンス素子を商用電源入力部に備えてスイッチング電源装置を構成すること、上記何れかのフィルタユニットを商用電源入力部に備えると共に、交流ラインフィルタとして機能するスイッチング電源装置を構成すること、上記何れか一つのインダクタンス素子を電圧出力部に配置してスイッチング電源装置を構成すること、上記何れかのフィルタユニットを電圧出力部に配置してスイッチング電源装置を構成することは、それぞれ好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のインダクタンス素子の場合、磁性体コアヘ巻回された巻線を容量結合するための箔状導体を素子の少なくとも一部分に対して絶縁物を介在させて覆うように設け、箔状導体に接続された接地接続用端子を外方へ引き出される構造とした上、磁性体コアを従来のものと比べてその体積を約1/2として高い透磁率が得られるように材料選定しているため、小型化しても高周波帯域で優れた減衰特性が得られてノイズ除去効果が増大し、結果として安価に全体の小型化及び高性能が図られ、これをコモンモード用として適用したノイズフィルタにおいても同様な効果が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の最良の形態に係るインダクタンス素子は、磁性体コアヘ巻線を巻回して成る基本構造において、巻線を容量結合するための箔状導体を素子の少なくとも一郎分に対して絶縁物を介在させて覆うように設けて或るものである。
【0024】
但し、このインダクタンス素子において、箔状導体は、外方へ引き出されるように接続された接地接続用端子を有することが好ましい。何れの場合も、インダクタンス素子は、磁性体コアの外表面を覆った絶縁性ケース、磁性体コアを装着可能で巻線を巻回するための絶縁性ボビン、及び磁性体コアを固定可能で箔状導体が設けられた絶縁性端子台の少なくとも一つを有する場合に適用でき、こうした構造とすることも好ましい。又、箔状導体は銅箔であることが好ましい他、磁性体コアの透磁率は10000以上であることが好ましい。更に、巻線は複数本から成ると共に、磁性体コアにより互いに磁気的に結合された構造であることが好ましい。
【0025】
何れのインダクタンス素子についても、これらを有するノイズフィルタであって、インダクタンス素子を商用電源入力の交流線(ACライン)に対して接続したノイズフィルタとして適用させることができる。因みに、ここで言うノイズフィルタとは、図6に示したスイッチング電源回路における入力側フィルタ部1であり、何れのインダクタンス素子についても、それに使用される図7に示されるコモンモード用インダクタンス素子13に代用されるものである。
【0026】
そこで、以下は、幾つかの実施例を挙げ、本発明のスイッチング電源回路用入力側フィルタ部向けコモンモード用インダクタンス素子について、図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の実施例1に係るコモンモード用インダクタンス素子13aの基本構成を示した平面図である。
【0028】
このインダクタンス素子13aは、トロイダル形状の磁性体コア14aの外周面を絶縁性ケース15aで覆った上、その表面全体に円周方向に沿って巻線16,17を巻回した基本構造を有する他、巻線16,17の外表面の局所に対して巻線16,17を容量結合するための箔状導体として銅箔22を設け、この銅箔22に接続された接地接続用端子21が巻線16,17のリード部分と平行し、且つ隔てられて外方へ引き出された構造となっている。
【0029】
即ち、このインダクタンス素子13aでは、素子外周の巻線16,17外表面の一部に接地接続用端子21を有する銅箔22を設けてその部分で巻線16,17を覆っているが、実際に使用する場合には巻線16,17と銅箔22との間に絶縁物を介在させて銅箔22の巻線16,17に対する容量結合を得る構造とする必要がある。
【0030】
この実施例1に係るインダクタンス素子13aの場合、使用した磁性体コア14aの大きさは、外径が10.85mm、内径が6.61mm、高さが1.67mm、体積が95mmである。因みに、比較として図8で説明したインダクタンス素子13に使用されている磁性体コア14の大きさは、外径が10.91mm、内径が5.87mm、高さが3.00mm、体積が199mmである場合を例示できるので、磁性体コア14aの体積は、磁性体コア14の体積の約1/2となっている。又、磁性体コア14aの透磁率は磁性体コア14の透磁率の2倍程度となっている。
【0031】
そこで、実施例1に係るインダクタンス素子13aと周知のインダクタンス素子13とにおける周波数に対する減衰特性を比較した。
【0032】
図2は、ここでのインダクタンス素子13aにおける周波数(MHz)に対する減衰Mag(dB)特性を比較としての図8に示した従来のインダクタンス素子13のものと対比して示したものである。
【0033】
減衰特性の比較結果からは、実施例1に係るインダクタンス素子13aは、周波数30kHz〜約60MHzまでの帯域でインダクタンス素子13のものよりも上回っていることが判る。
【0034】
特に低周波数帯域側で実施例1に係るインダクタンス素子13aの減衰特性が従来のインダクタンス素子13の減衰特性を上回っているのは、使用した磁性体コア14aの透磁率が磁性体コア14の透磁率よりも2倍大きく、その材料特性の相違に大きく起因している。又、インダクタンス素子13aの減衰特性が1MHz〜60MHzの周波数帯域までインダクタンス素子13の減衰特性を大きく上回っているのは、インダクタンス素子13aの場合には巻線16,17の一部を銅箔22で覆い、銅箔22から接地接続用端子21により接地接続することより、巻線16,17の自己線間容量がキャンセルされて高周波特性が改善される基本構造の相違に起因していると考えられる。
【0035】
因みに、実施例1に係るインダクタンス素子13aにおいて、銅箔22で巻線16,17を覆う箇所や面積等は、巻回されている巻線16,17の巻回数(ターン数),太さ,長さや、磁性体コア14aの大きさ,材料特性等により適宜変更可能である。
【実施例2】
【0036】
図3は、本発明の実施例2に係るコモンモード用インダクタンス素子13bの基本構成を一部透視して示した平面図である。
【0037】
このインダクタンス素子13bは、トロイダル形状の磁性体コア14bの外周面を絶縁性ケース15bで覆った上、その表面全体に円周方向に沿って巻線16,17を巻回した基本構造を有する他、絶縁性ケース15b内の局所に対して巻線16,17を容量結合するための箔状導体として銅箔23を設け、この銅箔23に接続された接地接続用端子21が巻線16,17のリード部分と平行し、且つ隔てられて外方へ引き出された構造となっている。
【0038】
即ち、このインダクタンス素子13bでは、素子外周側内部の局部となる絶縁性ケース15b内の一部に接地接続用端子21を有する銅箔23を設けてその部分で巻線16,17を覆う構造としているが、この場合には銅箔23を絶縁性ケース15bの内側に貼り付けして配置させるか、或いは銅箔23を磁性体コア14bの外局面に貼り付けて配置させることが可能である。何れにせよ、ここでは銅箔23を絶縁物である絶縁性ケース15bを介在させて設け、その部分で巻線16,17を覆うことができるため、巻線16,17との沿面距離も確保できるという点で便利な構造となっている。
【0039】
この実施例2に係るインダクタンス素子13bについても、減衰特性は図2に示した実施例1の場合と同様に従来のインダクタンス素子13の減衰特性を上回る高性能なものとなり、且つ全体の小型化も図り得るものとなる。因みに、この実施例2に係るインダクタンス素子13bの場合においても、銅箔23で巻線16,17を覆う箇所や面積等は、巻回されている巻線16,17の巻回数(ターン数),太さ,長さや、磁性体コア14bの大きさ,材料特性等により適宜変更可能である。
【実施例3】
【0040】
図4は、本発明の実施例3に係るコモンモード用インダクタンス素子13cの基本構成を示した平面図である。
【0041】
このインダクタンス素子13cは、トロイダル形状の磁性体コア14cの外周面を絶縁性ケース15cで覆った上、その表面全体に円周方向に沿って巻線16,17を巻回した基本構造を有する他、素子内周側に巻線16,17を覆うように容量結合するための箔状導体として銅箔24を設け、この銅箔24に接続された接地接続用端子21が巻線16,17のリード部分と平行し、且つやや隔てられて外方へ引き出された構造となっている。
【0042】
即ち、このインダクタンス素子13cでは、素子内周側表面の一部に接地接続用端子21を有する銅箔24を設けてその部分で巻線16,17を覆っているが、ここでも実際に使用する場合には巻線16,17と銅箔24との問に絶縁物を介在させて銅箔24の巻線16,17に対する容量結合を得る構造とする必要がある他、接地接続用端子21の引き出し方(リード線の引き出しパターン)を例えば図4に示されるように例えば巻線17のリード部分に接近させる等、工夫を施す必要がある。
【0043】
この実施例3に係るインダクタンス素子13cについても、減衰特性は図2に示した実施例1の場合と同様に従来のインダクタンス素子13の減衰特性を上回る高性能なものとなり、且つ全体の小型化も図り得るものとなる。因みに、この実施例3に係るインダクタンス素子13cの場合においても、銅箔24で巻線16,17を覆う箇所や面積等は、巻回されている巻線16,17の巻回数(ターン数),太さ,長さや、磁性体コア14cの大きさ,材料特性等により適宜変更可能である。又、実施例2の場合と同様に、素子内周側であって、コアケース内に銅箔を配置した構造とすることも可能である。
【実施例4】
【0044】
図5は、本発明の実施例4に係るコモンモード用インダクタンス素子13dの基本構成を一部透視して示した平面図である。
【0045】
このインダクタンス素子13dは、トロイダル形状の磁性体コア14dの外周面を絶縁性ケース15dで覆った上、その表面全体を円周方向に沿って巻線16,17を巻回した基本構造を有する他、素子の外周面の局所に対して巻線16,17を容量結合するための箔状導体として銅箔25を埋め込んだ絶縁性端子台26を付設して磁性体コア14dを固定し、絶縁性端子台26内の銅箔25に接続された接地接続用端子21が巻線16,17のリード部分の間へ平行して外方へ引き出される構造となっている。
【0046】
即ち、このインダクタンス素子13dでは、別途部品として素子に付設される絶縁性端子台26に接地接続用端子21を有する銅箔25を埋め込んでその部分で巻線16,17を覆っているが、この場合には銅箔25を絶縁性ケース15d及び絶縁性端子台26を介在させて設けることができるため、実施例3の場合と同様に巻線16,17との沿面距離も一層精度良く確保できるという点で有利な構造となっている。
【0047】
この実施例4に係るインダクタンス素子13dについても、幾分部品点数は増えるものの、減衰特性は図2に示した実施例1の場合と同様に従来のインダクタンス素子13の減衰特性を上回る高性能なものとなり、且つ全体の小型化も図り得るものとなる。因みに、この実施例4に係るインダクタンス素子13dの場合においても、絶縁性端子台26に埋設される銅箔25で巻線16,17を覆う箇所や面積等は、巻回されている巻線16,17の巻回数(ターン数),太さ,長さや、磁性体コア14dの大きさ,材料特性等により適宜変更可能である。
【0048】
尚、上述した各実施例に係るインダクタンス素子13a〜13dでは、磁性体コア14a〜14dの外表面(外周面)を絶縁性ケース15a〜15dで覆った構造を説明したが、これ以外にも磁性体コア14a〜14dを装着可能な絶縁性ボピンを用い、その絶縁性ボビンヘ巻線16,17を巻回する構造へ変更することが可能であり、こうした構造にしても同等に全体の小型化及び減衰特性の優れた高性能化を図ることができるので、本願発明のインダクタンス素子は各実施例で開示したものに限定されない。何れにしても、本願発明のインダクタンス素子をノイズフィルタに適用した場合、同等に小型化及び高性能に寄与できる。
【0049】
ところで、上述したインダクタンス素子の場合、巻線17,18を複数本から成るものであって、磁性体コア15a〜15dにより互いに磁気的に結合された構造とすることもできるが、こうした場合も含めて上述したインダクタンス素子は様々な分野への適用が可能である。例えば、係るインダクタンス素子に対して少なくとも1個の容量性素子を組み合わせたり、更に少なくとも1個の別なインダクタンス素子を備えた構成とすれば、フィルタユニットとして適用できる。又、係るインダクタンス素子を商用電源入力部に備えれば、電気機器として適用できる。この場合、特に上述した構成のフィルタユニットを商用電源入力部に備えるようにすれば、交流(AC)ラインフィルタとして機能する電気機器を作製できる。更に、係るインダクタンス素子を商用電源入力部に備えれば、スイッチング電源装置として適用できる。この場合も、特に上述した構成のフィルタユニットを商用電源入力部に備えるようにすれば、交流(AC)ラインフィルタとして機能するスイッチング電源装置を作製できる。加えて、係るインダクタンス素子を電圧出力部に配置すれば、スイッチング電源装置として適用できる。この場合、特に上述した構成のフィルタユニットを電圧出力部に配置してスイッチング電源装置を構築すれば好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例1に係るインダクタンス素子の基本構成を示した平面図である。
【図2】図1に示すインダクタンス素子における周波数に対する減衰特性を従来のインダクタンス素子のものと対比して示したものである。
【図3】本発明の実施例2に係るインダクタンス素子の基本構成を一郎透視して示した平面図である。
【図4】本発明の実施例3に係るインダクタンス素子の基本構成を示した平面図である。
【図5】本発明の実施例4に係るインダクタンス素子の基本構成を一部透視して示した平面図である。
【図6】従来のスイッチング電源回路の基本構成を示した回路ブロック図である。
【図7】図6に示すスイッチング電源回路における商用電源入力側の細部構成を示した回路ブロック図である。
【図8】図7に示される入力側フィルタ部に備えられるインダクタンス素子の基本構成を示した平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 入力側フィルタ部
2 1次側整流回路部
3 スイッチング回路部
4 トランス部
5 2次側整流回路部
6 2次側コンデンサ
7 電圧変化検出部
8 制御回路郎
11,13,13a〜13d インダクタンス素子
12 コンデンサ素子
14,14a〜14d 磁性体コア
15,15a〜15d 絶縁性ケース
16,17 巻線
21 接地接続用端子
22〜25 銅箔
26 絶縁性端子台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体コアへ巻線を巻回して成るインダクタンス素子において、前記巻線を容量結合させるための箔状導体を素子の少なくとも一部分に対して絶縁物を介在させて覆うように設けて成ることを特徴とするインダクタンス素子。
【請求項2】
請求項1記載のインダクタンス素子において、前記箔状導体は、外方へ引き出されるように接続された接地接続用端子を有することを特徴とするインダクタンス素子。
【請求項3】
請求項1又は2記載のインダクタンス素子において、前記磁性体コアの外表面を覆った絶縁性ケース、前記磁性体コアを装着可能で前記巻線を巻回するための絶縁性ボビン、及び前記磁性体コアを固定可能で前記箔状導体が配設された絶縁性端子台のうちの少なくとも一つを備えたことを特徴とするインダクタンス素子。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一つに記載のインダクタンス素子において、前記箔状導体は、銅箔であることを特徴とするインダクタンス素子。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一つに記載のインダクタンス素子において、前記磁性体コアの透磁率は10000以上であることを特徴とするインダクタンス素子。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一つに記載のインダクタンス素子において、前記巻線は複数本から成ると共に、前記磁性体コアにより互いに磁気的に結合されたことを特徴とするインダクタンス素子。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一つに記載のインダクタンス素子を有するノイズフィルタであって、該インダクタンス素子を商用電源入力の交流線に対して接続したことを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか一つに記載のインダクタンス素子と少なくとも1個の容量性素子とから成ることを特徴とするフィルタユニット。
【請求項9】
請求項8記載のフィルタユニットにおいて、少なくとも1個の別なインダクタンス素子を備えて成ることを特徴とするフィルタユニット。
【請求項10】
請求項1〜6の何れか一つに記載のインダクタンス素子を商用電源入力部に備えたことを特徴とする電気機器。
【請求項11】
請求項8又は9記載のフィルタユニットを商用電源入力部に備えると共に、交流ラインフィルタとして機能することを特徴とする電気機器。
【請求項12】
請求項1〜6の何れか一つに記載のインダクタンス素子を商用電源入力部に備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項13】
請求項8又は9記載のフィルタユニットを商用電源入力部に備えると共に、交流ラインフィルタとして機能することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項14】
請求項1〜6の何れか一つに記載のインダクタンス素子を電圧出力部に配置したことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項15】
請求項8又は9記載のフィルタユニットを電圧出力部に配置したことを特徴とするスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−205295(P2008−205295A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41160(P2007−41160)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】