説明

インドリウム化合物及び該化合物を用いた光学記録材料

【課題】耐熱性や耐光性が高く、且つ高速の光学記録用途に好適な熱分解挙動を示すインドリウム化合物及び該インドリウム化合物を含有してなる光学記録材料を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるインドリウム化合物。


(環Aはベンゼン環又はナフタレン環を、環Bは5〜6員の複素環を、R1はアルキル基等を、R2はベンジル基或いはアリル基等を、Y1はアルキル基等を、Anはカウンターアニオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として光学記録材料等に用いられる新規なインドリウム化合物及び該インドリウム化合物を含有してなる光学記録材料に関し、詳しくは、情報をレーザ等による情報パターンとして付与することにより記録する光学記録媒体に使用される光学記録材料に関し、さらに詳しくは、紫外及び可視領域の波長を有し且つ低エネルギーのレーザ等による高密度の光学記録及び再生が可能な光学記録媒体に使用される光学記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
光学記録媒体は、一般に、記録容量が大きく、記録又は再生が非接触で行なわれること等の優れた特徴を有することから、広く普及している。WORM、CD−R、DVD±R等の追記型の光ディスクでは、記録層の微小面積にレーザを集光させ、光学記録層の性状を変えて記録し、記録部分と未記録部分との反射光量の違いによって再生を行なっている。
【0003】
550nm〜620nmの範囲に強度の大きい吸収を有する化合物、特に極大吸収(λmax)が550〜620nmにある化合物は、DVD−R等の光学記録媒体の光学記録層を形成する光学記録材料として用いられている。
【0004】
上記の光学記録材料としては、インドール環を有するインドリウム化合物が感度が高く、記録の高速化に対応できるメリットがあるので報告例が多い。例えば、特許文献1〜6にはスチリルインドリウム化合物が報告されている。また、特許文献7には、インドール環の3位にベンジル基を導入した低温分解性のシアニン化合物が報告されており、特許文献8には、インドール環の3位にベンジル基を導入したインドリウム化合物が報告されている。低温で分解する化合物は、光学記録層の記録部分(ピット)を形成しやすく、高速記録メディアに適応すると考えられている。
しかし、これらの材料は、耐熱性、耐光性や記録特性の点で、満足のいく性能が得られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−34489号公報
【特許文献2】特開平11−170695号公報
【特許文献3】特開2001−342366号公報
【特許文献4】特開2002−206061号公報
【特許文献5】特開2003−313447号公報
【特許文献6】特開2003−321450号公報
【特許文献7】特開2003−231359号公報
【特許文献8】特開2006−150841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、耐熱性や耐光性が高く、且つ高速の光学記録用途に好適な熱分解挙動を示すインドリウム化合物及び該インドリウム化合物を含有してなる光学記録材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定のカチオン構造を有するインドリウム化合物が光学記録材料として良好な熱分解挙動を示すことを知見し、本発明に到達した。
【0008】
本発明は、下記一般式(I)で表されるインドリウム化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0009】
【化1】

(式中、環Aはベンゼン環又はナフタレン環を表し、環Bは五員又は六員の複素環を表し、R1は下記一般式(II)、下記一般式(II')又は下記一般式(III)で表される基を表し、R2は炭素原子数1〜30の有機基、下記一般式(II)、下記一般式(II’)又は下記一般式(III)で表される基を表し、Y1は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基を表し、Z1及びZ2は、ハロゲン基で置換されてもよく、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルホニル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルフィニル基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、下記一般式(III)で表される基、シアノ基、ニトロ基、水酸基又はハロゲン基を表し、複数のZ2同士は結合して環構造を形成していてもよく、aは0〜6の整数を表し、bは0〜5の整数を表し、Anq-はq価のアニオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【0010】
【化2】

(上記一般式(II)において、GとTの間の結合は、二重結合、共役二重結合又は三重結合であり、Gは炭素原子を表し、Tは炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し(ただし、Tが酸素原子である場合はyとzは0であり、Tが窒素原子である場合はy+zは0又は1である。)、wは0〜4の数を表し、x、y及びzは、0又は1を表し、R01、R02、R03及びR04は、各々独立に、水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、R01とR04は結合してシクロアルケン環又は複素環を形成してもよい。上記一般式(II’)において、G’とT’の間の結合は、二重結合又は共役二重結合であり、G’は炭素原子を表し、T’は炭素原子又は窒素原子を表し、w’は0〜4の数を表し、R01’は水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、G’及びT’を含む環は、ヘテロ原子を含んでもよい5員環、ヘテロ原子を含んでもよい6員環、ナフタレン環、キノリン環、イソキノリン環、アントラセン環又はアントラキノン環を表し、これらG’及びT’を含む環は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい。)
【0011】
【化3】

(式中、Ra〜Riは、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は−O−又は−CO−で置換されていてもよく、Qは直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されていてもよく、MはFe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【0012】
また、本発明は、上記一般式(I)で表されるインドリウム化合物が、下記一般式(IV)で表される化合物であるインドリウム化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0013】
【化4】

(式中、環A、R1、R2、Z1、Z2、Y1、a、b、Anq-、p及びqは、上記一般式(I)と同じであり、X1は−NR5−、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、ここでR5は水素原子又はハロゲン基で置換されてもよく、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基を表す。)
【0014】
また、本発明は、上記一般式(IV)で表される化合物が、下記一般式(V)で表される化合物であるインドリウム化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0015】
【化5】

(式中、環A、R2、Z1、Z2、Y1、a、b、Anq-、p及びqは上記一般式(I)と同じであり、X1は上記一般式(IV)と同じであり、Z4はハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、dは0〜5の数を表す。)
【0016】
また、本発明は、上記一般式(IV)で表される化合物が、下記一般式(VI)で表される化合物であるインドリウム化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0017】
【化6】

(式中、環A、R2、Z1、Z2、Y1、a、b、Anq-、p及びqは上記一般式(I)と同じであり、X1は上記一般式(IV)と同じであり、R6、R7及びR8は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、dは0〜5の数を表す。)
【0018】
また、本発明は、基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層の形成に用いられる、上記インドリウム化合物の少なくとも一種を含有してなる光学記録材料を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0019】
また、本発明は、基体上に、上記光学記録材料から形成された光学記録層を有することを特徴とする光学記録媒体を提供することで、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学記録媒体の光学記録層の形成に適したインドリウム化合物及び該インドリウム化合物を含有してなる光学記録材料を提供することができる。本発明の特定のインドリウム化合物は、分解点が低いため蓄熱性が低く熱干渉が抑えられ、また耐光性が高く、光学記録媒体の光学記録層の形成に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のインドリウム化合物及び該インドリウム化合物を含有してなる光学記録材料について、好ましい実施形態について詳細に説明する。
先ず、上記一般式(I)及び(IV)〜(VI)で表されるインドリウム化合物について説明する。
【0022】
上記一般式(I)及び(IV)〜(VI)中、環Aで表されるベンゼン環又はナフタレン環の置換基Z1及び環Bで表される五員又は六員の複素環の置換基Z2で表される、ハロゲン基で置換されてもよく又は−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基において、ハロゲン基の置換位置、及び−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−の中断位置は任意であり、−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−が環Aと直接結合するものも含む。上記炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、イソブトキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、t−アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、t−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、t−オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ、トリフルオロメトキシ、ペンタフルオロエトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−メチル−2−ヒドロキシエトキシ、1−メチル−2−ヒドロキシエトキシ、3−ヒドロキシプロポキシ、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−ブトキシエトキシ、2−メチル−2−メトキシエトキシ、1−メチル−2−メトキシエトキシ、3−メトキシプロポキシ、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ、アセチル、アセトニル、ブタン−2−オン−1−イル、ブタン−3−オン−1−イル、シクロヘキサン−4−オン−1−イル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、アセトキシ、エタンカルボニルオキシ、プロパンカルボニルオキシ、ブタンカルボニルオキシ、トリフルオロアセトキシ等が挙げられる。また、Z1及びZ2で表されるスルホニル基又はスルフィニル基が有する炭素原子数1〜8の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル等のアルキル基;ビニル、1−メチルエテン−1−イル、プロペン−1−イル、プロペン−2−イル、プロペン−3−イル、ブテン−1−イル、ブテン−2−イル、2−メチルプロペン−3−イル、1,1−ジメチルエテン−2−イル、1,1−ジメチルプロペン−3−イル等のアルケニル基;フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−t−ブチルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル等のアリール基;ベンジル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、スチリル等のアラルキル基が挙げられ、Z1及びZ2で表されるアルキルアミノ基又はジアルキルアミド基が有する炭素原子数1〜8のアルキル基としては、上記例示のアルキル基が挙げられ、Z1及びZ2で表されるハロゲン基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0023】
上記一般式(I)及び(IV)〜(VI)において、Z2の置換基同士が結合して形成する環構造の例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5〜7員環及びナフタレン環、アントラセン環等の縮合環が挙げられる。
【0024】
上記一般式(I)及び(IV)〜(VI)において、R2で表される上記一般式(II)、(II’)及び(III)で表される基以外の炭素原子数1〜30の有機基としては特に制限を受けず、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ペプタデシル、オクタデシル等のアルキル基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、1−フェニルプロペン−3−イル等のアルケニル基;フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、シクロヘキシルフェニル等のアルキルアリール基;ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基及びこれらの炭化水素基がエーテル結合又はチオエーテル結合で中断されたもの、例えば、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、2−ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、2−フェノキシエチル、2−メチルチオエチル、2−フェニルチオエチルが挙げられ、更にこれらの基は、以下に示す置換基で置換されていてもよい。
【0025】
上記置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、イソブトキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、t−アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、t−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、t−オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、s−ブチルチオ、t−ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、t−アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、t−ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、t−オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等の複素環基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2−クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4−トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基等が挙げられ、これらの基は更に置換されていてもよい。また、カルボキシル基及びスルホ基は塩を形成していてもよい。
【0026】
2で表される上記一般式(II)、(II’)及び(III)で表される基以外の好ましい置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチルが挙げられる。
【0027】
上記一般式(I)において、環Bで表される五員の複素環としては、例えば、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、イミダゾリジン環、オキサゾール環、イソキサゾール環、イソオキサゾリジン環、チアゾール環、イソチアゾリジン環等が挙げられ、環Bで表される六員の複素環としては、例えば、ピペラジン環、モルフォリン環、チオモルフォリン環、ユロリジン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環等が挙げられ、環Bで表される五員又は六員の複素環は、他の環と縮合されていたり置換されていたりしていてもよく、例えば、キノリン環、イソキノリン環、インドール環、ユロリジン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾトリアゾール環、アズレン環、フタルイミド環等が挙げられる。
【0028】
上記一般式(I)及び(IV)〜(VI)において、Y1で表される炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等が挙げられ、Y1で表される炭素原子数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセン−1−イル、フェナントレン−1−イル等が挙げられ、Y1で表される炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等が挙げられる。
【0029】
上記一般式(I)及び(IV)〜(VI)において、Anq-で表されるアニオンとしては、例えば、一価のものとして、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リン酸アニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン;ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸アニオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸アニオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸アニオン、特開2004−53799号公報に記載されたスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスホン酸アニオン等の有機リン酸系アニオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドアニオン、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミドアニオン、パーフルオロ−4−エチルシクロヘキサンスルホネートアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン等が挙げられ、二価のものとしては、例えば、ベンゼンジスルホン酸アニオン、ナフタレンジスルホン酸アニオン等が挙げられる。また、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャーアニオンやシクロペンタジエニル環にカルボキシル基やホスホン酸基、スルホン酸基等のアニオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物アニオン等も、必要に応じて用いることができる。
【0030】
上記のクエンチャーアニオンとしては、例えば、下記一般式(A)又は(B)や下記化学式(C)又は(D)で表されるもの、特開昭60−234892号公報、特開平5−43814号公報、特開平5−305770号公報、特開平6−239028号公報、特開平9−309886号公報、特開平9−323478号公報、特開平10−45767号公報、特開平11−208118号公報、特開2000−168237号公報、特開2002−201373号公報、特開2002−206061号公報、特開2005−297407号公報、特公平7−96334号公報、国際公開98/29257号公報等に記載されたようなアニオンが挙げられる。
【0031】
【化7】

(式中、Mは、上記一般式(III)と同じであり、R9及びR10は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は−SO2−J基を表し、Jは、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ピペリジノ基又はモルフォリノ基を表し、e及びfは、各々独立に、0〜4の数を表す。また、R11、R12、R13及びR14は、各々独立に、アルキル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基又はハロゲン化フェニル基を表す。)
【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
上記一般式(II)において、R01〜R04で表されるハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル等が挙げられ、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、R01とR04とが結合して形成するシクロアルケン環としては、例えば、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環等が挙げられ、R01とR04とが結合して形成する複素環としては、例えば、ジヒドロピラン環、ピロリン環、ピラゾリン環、インドリン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、イソオキサゾリジン環、イソチアゾリジン環等が挙げられ、これらの環は他の環と縮合されていたり、置換されていたりしてもよい。
【0035】
上記一般式(II’)において、ヘテロ原子を含んでもよい5員環としては、例えば、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、イミダゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソキサゾール環、チオフェン環、フラン環、ピロール環等が挙げられ、ヘテロ原子を含んでもよい6員環としては、例えばベンゼン環、ピリジン環、ピペラジン環、ピペリジン環、モルフォリン環、ピラジン環、ピロン環、ピロリジン環等が挙げられる。
【0036】
上記一般式(III)において、Ra〜Riで表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−O−で置換された基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メトキシエチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−CO−で置換された基としては、アセチル、1−カルボニルエチル、アセチルメチル、1−カルボニルプロピル、2−オキソブチル、2−アセチルエチル、1−カルボニルイソプロピル等が挙げられる。
【0037】
上記一般式(III)において、Qで表される置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル等が挙げられ、該アルキレン基中のメチレン基が−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換された基としては、例えば、メチレンオキシ、エチレンオキシ、オキシメチレン、チオメチレン、カルボニルメチレン、カルボニルオキシメチレン、メチレンカルボニルオキシ、スルホニルメチレン、アミノメチレン、アセチルアミノ、エチレンカルボキシアミド、エタンイミドイル、エテニレン、プロペニレン等が挙げられる。
また、Mで表される金属原子は、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrである。
【0038】
上記一般式(IV)〜(VI)において、R5で表されるハロゲン基で置換されてもよく、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基において、ハロゲン基の置換位置、及び−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−の中断位置は任意であり、上記炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基及び炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、上記Y1で例示した置換基が挙げられる。
【0039】
上記一般式(V)におけるZ4及び上記一般式(VI)におけるR6、R7及びR8で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、2−クロロエチル等が挙げられ、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、2−クロロエトキシ等が挙げられる。
【0040】
本発明のインドリウム化合物としては、製造コストが低く、モル吸光係数が大きいので、上記一般式(VI)で表される化合物が望ましく、中でも上記一般式(V)及び上記一般式(VI)表される化合物が、簡便に製造でき、光学記録材料としてより適性な光吸収特性を有するのでより好ましい。
【0041】
上記一般式(I)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記化合物No.1〜No.41が挙げられる。尚、以下の例示では、アニオンを省いたインドリウムカチオンで示している。本発明のインドリウム化合物において、ポリメチン鎖は共鳴構造をとっていてもよい。
【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
本発明の上記一般式(I)で表されるインドリウム化合物には、R1及びR2で表される基が結合する不斉原子をキラル中心とするエナンチオマー、ジアステレオマー又はラセミ体等の光学異性体が存在する場合があるが、これらのうち、いかなる光学異性体を単離して用いても、あるいはそれらの混合物として用いてもよい。
【0046】
上記一般式(I)で表されるインドリウム化合物は、その製造法によって制限を受けるものではない。例えば、2−メチルインドール誘導体と芳香族アルデヒド誘導体とを縮合反応した後、塩交換反応を行うことによって合成することができる。
【0047】
また、上記一般式(II)及び(II’)で表される多重結合を有する基は、中間体である2−メチルインドール誘導体を得る過程において導入できる。その方法としては、例えば、アリールヒドラジン誘導体を出発物質にして、上記一般式(II)及び(II’)で表される多重結合基を有する2−ブタノン誘導体によりインドール環を形成する時に導入する方法、インドール環にハロゲン化誘導体を反応させて導入する方法が挙げられる。Yは、インドール環のNHと反応するY−D(Dは塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基;フェニルスルホニルオキシ、4−メチルフェニルスルホニルオキシ、4−クロロフェニルスルホニルオキシ等のスルホニルオキシ基)により導入できる。また、上記一般式(II)及び(II’)で表される多重結合基を有する2−ブタノン誘導体は、アセトンと該当する多重結合基を有するアルデヒドとを反応させることで得られる。
【0048】
本発明の上記インドリウム化合物は、光学記録材料として用いられる他、光学フィルターに含有させる光吸収剤等の光学要素、医薬品、農薬、香料、染料等の合成中間体、あるいは各種機能性材料等各種ポリマー原料に用いられる。しかし、これらの用途によって本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0049】
次に、本発明の光学記録材料及び光学記録媒体について説明する。
本発明の光学記録材料は、上記インドリウム化合物を少なくとも一種含有する。
また、本発明の光学記録媒体は、基体上に、該光学記録材料からなる光学記録層を形成して得られるものである。
【0050】
本発明の光学記録材料の調製、及び本発明の基体上に、該光学記録材料からなる光学記録層を形成したことを特徴とする光学記録媒体を製造する方法については、特に制限を受けない。一般には、メタノール、エタノール等の低級アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等の有機溶媒に、本発明のインドリウム化合物及び必要に応じて後述の各種化合物を溶解して溶解して溶液状の光学記録材料を作製し、該光学記録材料を基体上にスピンコート、スプレー、ディッピング等で塗布する湿式塗布法が用いられる。その他の方法としては、蒸着法、スパッタリング法等も用いられる。上記有機溶媒を使用する場合、その使用量は、本発明の光学記録材料中における上記インドリウム化合物の含有量が0.1〜10質量%となる量にするのが好ましい。
【0051】
上記光学記録層は薄膜として形成され、その厚さは、通常、0.001〜10μmが適当であり、好ましくは0.01〜5μmの範囲である。
【0052】
また、本発明の光学記録材料中において、本発明のインドリウム化合物の含有量は、本発明の光学記録材料に含まれる固形分中、10〜100質量%が好ましい。上記光学記録層は、光学記録層中に上記インドリウム化合物を50〜100質量%含有するように形成されることが好ましく、このようなインドリウム化合物含有量の光学記録層を形成するために、本発明の光学記録材料は、上記インドリウム化合物を、本発明の光学記録材料に含まれる固形分基準で50〜100質量%含有するのがさらに好ましい。
【0053】
本発明の光学記録材料に含まれる上記固形分は、該光学記録材料から有機溶媒等の固形分以外の成分を除いた成分のことであり、該固形分の含有量は、上記光学記録材料中、0.01〜100質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0054】
本発明の光学記録材料は、本発明のインドリウム化合物の他に、必要に応じて、アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、オキソノール系化合物、スクアリリウム系化合物、インドール化合物、スチリル系化合物、ポルフィン系化合物、アズレニウム系化合物、クロコニックメチン系化合物、ピリリウム系化合物、チオピリリウム系化合物、トリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、テトラヒドロコリン系化合物、インドフェノール系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、キサンテン系化合物、チアジン系化合物、アクリジン系化合物、オキサジン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ローダミン系化合物等の、通常光学記録層に用いられる化合物;ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂類;界面活性剤;帯電防止剤;滑剤;難燃剤;ヒンダードアミン等のラジカル捕捉剤;フェロセン誘導体等のピット形成促進剤;分散剤;酸化防止剤;架橋剤;耐光性付与剤等を含有してもよい。さらに、本発明の光学記録材料は、一重項酸素等のクエンチャーとして芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよい。本発明の光学記録材料において、これらの各種化合物は、本発明の光学記録材料に含まれる固形分中、0〜50質量%の範囲となる量で使用される。
【0055】
本発明の光学記録材料には、ジイモニウム化合物を含有させてもよい。該ジイモニウム化合物を含有させることにより、本発明の光学記録媒体の経時的な吸光度残存率の低下をより効果的に防ぐことができる。また該イモニウム化合物を含有させる場合の含有量は、本発明の光学記録材料に含まれる固形分中、0〜99質量%の範囲となる量が好ましく、より好ましくは、50〜95質量%である。
【0056】
このような光学記録層を設層する上記基体の材質は、書き込み(記録)光および読み出し(再生)光に対して実質的に透明なものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの樹脂、ガラスなどが用いられる。また、その形状は、用途に応じ、テープ、ドラム、ベルト、ディスク等の任意の形状のものを使用できる。
【0057】
また、上記光学記録層上には、金、銀、アルミニウム、銅等を用いて蒸着法あるいはスパッタリング法により反射膜を形成することもできるし、アクリル樹脂、紫外線硬化性樹脂等により保護層を形成することもできる。
【0058】
本発明の光学記録材料は、記録、再生に半導体レーザを用いる光学記録媒体に好適であり、特に高速記録タイプのCD−R、DVD±R、HD−DVD―R、BD−R等の公知の単層式、二層式、多層式光ディスクに好適である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例、比較例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
下記製造例1〜4は、上記一般式(I)で表される化合物No.1〜No.3の過塩素酸塩及び化合物No.1のクエンチャー(C)塩の製造例を示す。
また、下記実施例1〜4は、製造例1〜4で得られた化合物No.1〜No.3を含有する光学記録材料の調製及び該光学記録材料を用いた光学記録媒体No.1〜No.4の製造例を示す。
【0060】
下記比較例1は、上記一般式(I)で表されるインドリウム化合物とは異なる構造を持つインドリウム化合物を用いた比較光学記録材料の調製及び該比較光学記録材料を用いた比較光学記録媒体No.1の製造例を示す。
【0061】
下記評価例1並びに比較評価例1では、実施例1で得られた光学記録媒体No.1並びに比較例1で得られた比較光学記録媒体No.1についての耐熱性を、UV吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)における吸光度残存率の測定により評価を行った。それらの結果を〔表5〕に示す。
【0062】
[製造例1〜4]化合物No.1〜No.3の過塩素酸塩及び化合物No.1のクエンチャー(C)塩の製造
以下に示す合成方法を用いて、化合物No.1〜No.3を合成した。得られた化合物の同定は、IR及び1H−NMR分析により行った。〔表1〕に、得られた化合物の収率並びに特性値[溶液状態での光吸収特性(λmax、及びλmaxにおけるε)、分解点]の測定結果、〔表2〕及び〔表3〕に同定データを示す。
なお、〔表1〕において、分解点は10℃/分の昇温速度における示差熱分析の質量減少開始温度である。
【0063】
〔製造例1〜3〕化合物No.1〜No.3のClO4塩の製造
インドレニン四級塩(臭素塩)24mmol、フェロセンカルボキシアルデヒド30mmol及びクロロホルム38gを仕込み、80℃で7時間撹拌した。過塩素酸ナトリウム30mmol及び水30gを加え、60℃で1時間撹拌した。油水分離を行い、溶媒を留去し、得られた残さをクロロホルム20mlから再結晶し、目的物である化合物No.1〜No.3のClO4塩をそれぞれ得た。
【0064】
〔製造例4〕化合物No.1のクエンチャー(C)塩の製造
化合物No.1のClO4塩0.69mmol、上記化学式〔C〕で示されるアニオンのトリエチルアミン塩0.69mmol及びピリジン3.6gを仕込み、60℃で2時間撹拌し、メタノール8gを加え、室温まで冷却した。析出した固体をろ別後、減圧乾燥し、目的物である化合物No.1のクエンチャーアニオン(C)塩を得た。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
[実施例1〜4]
上記の製造例1〜4で得た化合物を、それぞれインドリウム化合物濃度が濃度1.0質量%となるように2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに溶解して、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール溶液として光学記録材料を得た。チタンキレート化合物(T−50:日本曹達社製)を塗布、加水分解して下地層(0.01μm)を設けた直径12cmのポリカーボネートディスク基板上に、上記の光学記録材料をスピンコーティング法にて塗布して、厚さ100nmの光学記録層を形成し光学記録媒体No.1〜No.4をそれぞれ得た。得られた光学記録媒体のUVスペクトル吸収及び薄膜(光学記録層)の入射角5°の反射光のUVスペクトルを測定した。結果を〔表4〕に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
[比較例1]
本発明に係るインドリウム化合物に代えて下記比較化合物No.1を用いた以外は、上記実施例1〜4と同様にして光学記録材料を作製し、該光学記録材料を用いて光学記録媒体No.1を得た。
【0071】
【化13】

【0072】
[評価例1並びに比較評価例1]
実施例1で得られた光学記録媒体No.1並びに比較例1で得られた比較光学記録媒体No.1について、耐熱性評価を行なった。評価は、該光学記録媒体に80℃に設定した熱風循環式定温乾燥機内に120時間入れ、加熱前のUV吸収スペクトルのλmaxからの吸光度残存率を測定した。評価結果を以下の〔表5〕に示す。
【0073】
【表5】

【0074】
〔表5〕から明らかなように、本発明の光学記録材料により形成された光学記録層を有する光学記録媒体は、80℃で120時間加熱した後においても残存率が高かった。一方、比較化合物を含有する比較光学記録材料により形成された光学記録層を有する比較光学記録媒体は著しい残存率の低下が見られ、耐熱性はよくなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるインドリウム化合物。
【化1】

(式中、環Aはベンゼン環又はナフタレン環を表し、環Bは五員又は六員の複素環を表し、R1は下記一般式(II)、下記一般式(II')又は下記一般式(III)で表される基を表し、R2は炭素原子数1〜30の有機基、下記一般式(II)、下記一般式(II’)又は下記一般式(III)で表される基を表し、Y1は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基を表し、Z1及びZ2は、ハロゲン基で置換されてもよく、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルホニル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルフィニル基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、下記一般式(III)で表される基、シアノ基、ニトロ基、水酸基又はハロゲン基を表し、複数のZ2同士は結合して環構造を形成していてもよく、aは0〜6の整数を表し、bは0〜5の整数を表し、Anq-はq価のアニオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【化2】

(上記一般式(II)において、GとTの間の結合は、二重結合、共役二重結合又は三重結合であり、Gは炭素原子を表し、Tは炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し(ただし、Tが酸素原子である場合はyとzは0であり、Tが窒素原子である場合はy+zは0又は1である。)、wは0〜4の数を表し、x、y及びzは、0又は1を表し、R01、R02、R03及びR04は、各々独立に、水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、R01とR04は結合してシクロアルケン環又は複素環を形成してもよい。上記一般式(II’)において、G’とT’の間の結合は、二重結合又は共役二重結合であり、G’は炭素原子を表し、T’は炭素原子又は窒素原子を表し、w’は0〜4の数を表し、R01’は水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、G’及びT’を含む環は、ヘテロ原子を含んでもよい5員環、ヘテロ原子を含んでもよい6員環、ナフタレン環、キノリン環、イソキノリン環、アントラセン環又はアントラキノン環を表し、これらG’及びT’を含む環は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい。)
【化3】

(式中、Ra〜Riは、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は−O−又は−CO−で置換されていてもよく、Qは直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されていてもよく、MはFe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【請求項2】
上記一般式(I)で表されるインドリウム化合物が、下記一般式(IV)で表される化合物である請求項1に記載のインドリウム化合物。
【化4】

(式中、環A、R1、R2、Z1、Z2、Y1、a、b、Anq-、p及びqは、上記一般式(I)と同じであり、X1は−NR5−、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、ここでR5は水素原子又はハロゲン基で置換されてもよく、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基を表す。)
【請求項3】
上記一般式(IV)で表される化合物が、下記一般式(V)で表される化合物である請求項2に記載のインドリウム化合物。
【化5】

(式中、環A、R2、Z1、Z2、Y1、a、b、Anq-、p及びqは上記一般式(I)と同じであり、X1は上記一般式(IV)と同じであり、Z4はハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、dは0〜5の数を表す。)
【請求項4】
上記一般式(IV)で表される化合物が、下記一般式(VI)で表される化合物である請求項2に記載のインドリウム化合物。
【化6】

(式中、環A、R2、Z1、Z2、Y1、a、b、Anq-、p及びqは上記一般式(I)と同じであり、X1は上記一般式(IV)と同じであり、R6、R7及びR8は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、dは0〜5の数を表す。)
【請求項5】
上記一般式(IV)におけるX1が硫黄原子である請求項2〜4の何れかに記載のインドリウム化合物。
【請求項6】
基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層の形成に用いられる、請求項1〜5の何れかに記載のインドリウム化合物の少なくとも一種を含有してなる光学記録材料。
【請求項7】
基体上に、請求項6に記載の光学記録材料から形成された光学記録層を有することを特徴とする光学記録媒体。

【公開番号】特開2009−96844(P2009−96844A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267682(P2007−267682)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】