説明

インドール基用保護基、並びに核酸自動合成用アミダイド及び核酸合成方法

【課題】緩やかな条件下で脱保護が可能な保護基、前記保護基を有する核酸自動合成用アミダイド及びその前駆体、前記核酸自動合成用アミダイドを用いた核酸合成方法、及び前記核酸合成方法により得られる核酸の提供。
【解決手段】スルホニルエチルカーバメト基を有し、下記一般式(I)で表される、非プロトン性溶媒中で脱保護可能なインドール基用保護基。


ただし、Rは、水素原子、アルキル基、フェニル基、及びアルコキシフェニル基のいずれかを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インドール基用保護基、並びに核酸の製造に好適な核酸自動合成用アミダイド及びその前駆体、前記核酸自動合成用アミダイドを用いた核酸合成方法、及び前記核酸合成方法により合成された核酸に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の全遺伝子情報が既に明らかになった。その結果、研究者や科学者の興味の中心は遺伝子産物である蛋白質の解析に移行している。蛋白質の解析においては、対象となる個々の蛋白質に対してアフィニティー(結合性)を有する分子を得ることによって、初めて実質的な解析が可能になるといっても過言ではない。しかしながら、細胞中には非常に多種類の蛋白質が存在し、そのアミノ酸配列や構造が未知であるものも多い。
【0003】
ある特定の蛋白質に対してアフィニティーを有する分子を得る最も一般的な手法は、動物の免疫系を用い、アフィニティー抗体を作製する方法である。しかし、この方法では動物を用いるため、多量の蛋白質や多大な工程、費用が必要となり、しかもある特定の物質に対するアフィニティー抗体は生成されないという欠点があった。このような問題を解決するために、生物に依存しないアプタマー法(別名:SELEX法)も提案されているが、この方法で得られる分子は、特定の蛋白質に対しては強い相互作用を示すものの、必ずしも全ての蛋白質に応用可能なものではなかった。
【0004】
そこで本発明者らは、前記アプタマー法を改良し、核酸を用いた修飾アプタマー法を提案している(特許文献1参照)。しかしながら、多種類の修飾核酸を用いているため、良好なPCR増幅条件の選定が困難であった。また同時に、標的物質に強く結合する機能性分子ほど、PCRにより増幅しにくいという問題があった。このような問題を解決するために本発明者らは既に、標的物質との結合に関与する官能基とダイマー配列情報とが一対一で対応し、アンモニア処理により除去可能な結合で導入し標的物質と結合させた後に除去し、PCR増幅を行うことが、可能な機能性分子の原料アミダイドの合成法を提案している。
【0005】
一方で、核酸の固相合成は、20年以上も前から行われており、自動合成装置もその時点で販売されている。核酸の固相合成は、例えば、ヌクレオシドを結合させた固相担体(例えば、CPG)にヌクレオシド化合物(アミダイド)を縮合反応させていくことにより行われるが、この縮合反応の際には、前記アミダイドのリン酸部分と他方の水酸基のみを縮合反応に関与させ、それ以外の反応性基は縮合反応に関与させずに行う必要がある。したがって、使用するアミダイドの核酸塩基が有する環外アミノ基等には、保護基を導入して縮合反応への関与を防止し、全縮合反応が終了した後、保護基を脱離する(脱保護する)ことが必要となる。従来から、核酸塩基の環外アミノ基に導入する保護基としては、ベンゾイル基、イソブチリル基等が用いられており、これらの保護基の脱保護には、濃アンモニア水を、55℃で8時間〜15時間、作用させる方法が一般的であった。
【0006】
しかしながら、これらの蛋白質に対してアフィニティー(結合性)を有する核酸の製造においては、このような従来の脱保護条件では、保護基の脱保護とともに、核酸における修飾部分(蛋白質との結合性を有する置換基部分)までもが脱離してしまい、安定して核酸を製造することができないという問題があった。したがって、このような核酸を製造するにあたっては、保護基の脱保護とともに、蛋白質との結合性を有する置換基部分までもが外れてしまわないよう、より緩やかな条件下で保護基の脱保護が可能なアミダイドを用いることが求められている。
【0007】
例えば、従来の技術において、嵩高い塩基、シアザビシクロウンデセン(DBU)で脱保護可能な核酸アミダイドなどが報告されているが(非特許文献1〜2参照)、これらの核酸自動合成用アミダイドは、非プロトン性溶媒であるアセトニトリル中で不安定であり(非特許文献5参照)、実用には向かないものであった。また、ピリジン中、0.5M DBUの条件下、16時間で脱保護可能である核酸自動合成用アミダイドも報告されている(非特許文献3〜4参照)が、DBUが高濃度であり、更に長時間による脱保護のため、核酸塩基へのアルキル化が起こるという問題があった。また、メタノール中、KCOを用いた条件下で脱保護可能である核酸自動合成用アミダイドも報告されている(非特許文献5〜6参照)が、プロトン性溶媒であるメタノール中で塩基のKCOを使用するため、エステル等が分解するという問題があった。
【0008】
したがって、緩やかな条件下での脱保護が可能であり、これにより、蛋白質等の標的物質の解析に好適な核酸を安定して製造することのできる、優れた保護基、前記保護基を有する核酸自動合成用アミダイド、及び前記核酸自動合成用アミダイドを用いた核酸合成方法の開発が、未だ望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2003/078623号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Acta Chem,Scand.,B37,263(1983)
【非特許文献2】J.Org.Chem.,54,1657(1989)
【非特許文献3】Tetrahedron 40,4171(1992)
【非特許文献4】Nucleodied & Nuclrotides 13,2059(1994)
【非特許文献5】Tetrahedron Letters 46,6729(1990)
【非特許文献6】Nucleic Acids Reserch 21,3493(1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、緩やかな条件下での脱保護が可能であり、これにより、核酸を安定して製造することのできる、優れた保護基、前記保護基を有する核酸自動合成用アミダイド及びその前駆体、前記核酸自動合成用アミダイドを用いた核酸合成方法、及び前記核酸合成方法により得られる核酸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、後述の付記に記載の通りである。即ち、
本発明のインドール基用保護基は、後述する一般式(I)に示される通り、少なくともスルホニルエチルカーバメト基を有する。前記インドール基用保護基は、緩やかな条件下での脱保護が可能であるため、インドール基を導入した核酸塩基やアミダイドから該インドール基を脱離させることなしに、保護基を容易に脱保護することができる。
【0013】
本発明の核酸自動合成用アミダイドは、後述する一般式(II)及び一般式(III)に示される通り、少なくとも核酸塩基、インドール基、及び前記インドール基を保護するための保護基を有する。前記核酸自動合成用アミダイドは、緩やかな条件下での脱保護が可能であるため、インドール基を脱離させることなしに、保護基を容易に脱保護することができる。
【0014】
本発明の核酸自動合成用アミダイド用前駆体は、本発明の核酸自動合成用アミダイドの前駆体であり、後述する構造式(3)から(7)のいずれかで表される。本発明の前記核酸自動合成用アミダイドを合成する際に本発明の前記前駆体を経ることで、本発明の核酸自動合成用アミダイドを高収率で得ることができる。
【0015】
本発明の核酸合成方法は、本発明の前記核酸自動合成用アミダイドを用いる。前記核酸合成方法は、本発明の前記核酸自動合成用アミダイドを用いるため、インドール基を脱離させない程度の、緩やかな条件下で保護基の脱保護を行うことができる。したがって、前記核酸合成方法によれば、核酸を、安定して製造することができる。
【0016】
本発明の核酸は、本発明の前記核酸合成方法により得られる。前記核酸は、本発明の前記核酸合成方法により得られるものであるため、インドール基を有する核酸である。前記核酸は、インドール基を介して、蛋白質等の標的物質との結合が可能であり、したがって、前記核酸は、例えば、蛋白質等の標的物質の解析に、好適に利用可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、緩やかな条件下での脱保護が可能であり、これにより、核酸を安定して製造することのできる、優れた保護基、前記保護基を有する核酸自動合成用アミダイド及びその前駆体、前記核酸自動合成用アミダイドを用いた核酸合成方法、及び前記核酸合成方法により得られる核酸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例1における構造式(3)で表される化合物のH−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、実施例1における構造式(4)で表される化合物のH−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、実施例1における構造式(5)で表される化合物のH−NMRスペクトルである。
【図4−1】図4−1は、実施例1における構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイドのH−NMRスペクトルである。
【図4−2】図4−2は、実施例1における構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイドの31P−NMRスペクトルである。
【図5】図5は、実施例1における構造式(6)で表される化合物のH−NMRスペクトルである。
【図6】図6は、実施例1における構造式(7)で表される化合物の31P−NMRスペクトルである。
【図7−1】図7−1は、実施例1における構造式(2)で表される核酸自動合成用アミダイドのH−NMRスペクトルである。
【図7−2】図7−2は、実施例1における構造式(2)で表される核酸自動合成用アミダイドの31P−NMRスペクトルである。
【図7−3】図7−3は、実施例1における構造式(2)で表される核酸自動合成用アミダイドのHHcosyスペクトルである。
【図8】図8は、実施例2におけるHPLCチャート1である。
【図9】図9は、実施例2におけるHPLCチャート2である。
【図10】図10は、実施例2におけるHPLCチャート3である。
【図11】図11は、実施例2におけるHPLCチャート4である。
【図12】図12は、実施例2におけるHPLCチャート5である。
【図13】図13は、本発明の核酸自動合成用アミダイド(構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイド)における脱保護機構を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(インドール基用保護基)
本発明のインドール基用保護基は、インドール基の保護基であって、スルホニルエチルカーバメト基を有し、下記一般式(I)で表される。
【化1】

【0020】
ただし、前記一般式(I)において、Rは、水素原子、アルキル基、フェニル基、及びアルコキシフェニル基のいずれかを表す。
【0021】
前記インドール基用保護基は、非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基、即ち、緩やかな条件下で脱保護可能な保護基である。
ここで、前記「緩やかな条件下で脱保護可能」とは、例えば、前記保護基が、非プロトン性溶媒中で、嵩高い塩基により脱保護可能であることをいう。
【0022】
前記非プロトン性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。これらの中でも、DNA合成機を用いて脱保護する場合は、アセトニトリルが好ましい。
前記非プロトン性溶媒を用いることにより、前記インドール基を有する核酸塩基やアミダイドなどから、前記インドール基が前記保護基の脱保護とともに脱落することなく、安定してインドール基含有核酸を製造できる。
【0023】
前記嵩高い塩基としては、Lewis則やBronsted−Lowry則に従う塩基であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、テトラメチルグアニジンなどが挙げられる。これらの中でも、前記保護基は、前記アセトニトリル中、前記DBUにより脱保護されることが好ましい。
【0024】
前記保護基の脱保護に要するDBUの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5M以下が好ましく、0.1M以下がより好ましく、0.01M以下が特に好ましい。
前記脱保護は、脱離副生成物及びDBUの濃度が増加しない状態、即ち、DNA合成後、固相担体上で固定された状態で、DBU含有溶液を流し、DNAは固相担体上、脱離副生成物は溶液中になるよう物理的に分離できることが好ましい。
前記DBU、脱離副生成物、及びDNAを分離せず、濃縮し、DBU濃度が0.5Mを超えると、核酸塩基へのアルキル化が起こることがある。
【0025】
前記保護基の脱保護に要する時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、8時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましく、15分間以内が特に好ましい。
脱離副生成物を分離せずに、前記脱保護に要する時間が8時間を超えると、核酸塩基へのアルキル化が起こることがある。
【0026】
前記インドール基用保護基において、前記スルホニルエチルカーバメト基は、塩基性条件では不安定であるため、前記非プロトン性溶媒中で嵩高い塩基により脱保護されるが、インドール基に前記インドール基用保護基を導入する場合も塩基性条件で行なわれることが好ましく、そのため、前記スルホニルエチルカーバメト基は、塩基性条件で安定なチオエチルカーバメート基の形で前記インドール基に導入された後、該チオエチルカーバメート基が酸化されることにより合成されることが好ましい。
【0027】
前記インドール基用保護基は、穏やかな条件で脱保護可能であるため、インドール基を導入した核酸合成などに好適に利用可能である。
【0028】
(核酸自動合成用アミダイド)
本発明の核酸自動合成用アミダイドは、非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基により保護されたインドール基を有し、かつ下記一般式(II)及び下記一般式(III)の少なくともいずれかで表される。
【化2】

【化3】

【0029】
ただし、前記一般式(II)及び前記一般式(III)において、Xは、核酸塩基を表し、Yは、前記インドール基を表し、Zは、前記インドール基を保護するための保護基を表し、Z’は、前記核酸塩基を保護するための保護基を表し、Qは、水素原子及び水酸基のいずれかを表し、n及びmは、0及び1のいずれかの整数を表す。前記核酸塩基は、任意の置換基を有していてもよい。
【0030】
前記一般式(II)及び前記一般式(III)において、前記mが0の場合、モノマーの核酸自動合成用アミダイドを表す。
前記一般式(II)及び前記一般式(III)において、前記mが1の場合、ダイマーの核酸自動合成用アミダイドを表す。前記ダイマーの核酸自動合成用アミダイドは、少なくとも一方が、前記インドール基Yを有するモノマーの核酸自動合成用アミダイドを含んでいればよく、前記一般式(III)で表されるように、他方の核酸自動合成用アミダイドは、核酸塩基X又は保護基Z’を有する核酸塩基Xのみを有するものであってもよい。また、前記ダイマーの核酸自動合成用アミダイドは、下記一般式(IV)で表されるものであってもよい。
【化4】

ただし、前記一般式(IV)において、Xは、核酸塩基を表し、Yは、前記インドール基を表し、Zは、前記インドール基を保護するための保護基を表し、Z’は、前記核酸塩基を保護するための保護基を表し、Qは、水素原子及び水酸基のいずれかを表し、nは、0及び1のいずれかの整数を表す。前記核酸塩基は、任意の置換基を有していてもよい。
【0031】
<インドール基>
前記一般式(II)、前記一般式(III)、及び前記一般式(IV)において、Yで表されるインドール基としては、前記インドール基の保護基Zが、緩やかな条件下で脱保護される際に、併せて脱離されてしまわないよう、前記一般式(II)、前記一般式(III)、及び前記一般式(IV)において、核酸塩基Xに導入されていることが好ましい。
【0032】
前記インドール基は、前記一般式(II)、前記一般式(III)、及び前記一般式(IV)において核酸塩基Xと直接結合していてもよく、後述する核酸塩基が有する置換基を介して結合していてもよい。
【0033】
<インドール基を保護するための保護基>
前記一般式(II)、前記一般式(III)、及び前記一般式(IV)において、Zで表される保護基は、前記インドール基Yを保護するための保護基であり、その種類としては、非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基、即ち、緩やかな条件下で脱保護可能な保護基であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の前記一般式(I)で表されるインドール基用保護基が好ましい。これらの中でも、前記保護基は、前記一般式(I)において、Rが、アルコキシフェニル基が好ましく、p−メトキシフェニル基が、核酸自動合成用アミダイドの収率が高い点でより好ましい。
【0034】
<核酸塩基>
前記一般式(II)、前記一般式(III)、及び前記一般式(IV)において、Xで表される核酸塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、ウラシル(U)などが挙げられる。これらの中でも、前記核酸塩基としては、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)が好ましい。
また、前記核酸塩基Xは、核酸塩基を有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述するヌクレオシド化合物であってもよいし、前記核酸塩基が置換基を有していてもよい。
更に、前記一般式(III)及び前記一般式(IV)で表される核酸自動合成用アミダイドにおいては、前記核酸塩基Xは、前記核酸塩基の保護基Z’を有していてもよい。前記一般式(III)及び前記一般式(IV)において、前記保護基Z’が0の場合、即ち前記核酸塩基が前記Z’を有さない場合、前記核酸塩基Xは、飽和した核酸塩基を示す。
【0035】
前記核酸塩基Xに前記インドール基Y又は前記置換基が導入される位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アデニン核酸塩基の6位、シトシン核酸塩基の6位、グアニン核酸塩基の2位などが好ましい。
【0036】
<<ヌクレオシド化合物>>
前記ヌクレオシド化合物とは、核酸の合成に用いられるヌクレオシド又はヌクレオシド誘導体のモノマーをいい、前記ヌクレオシド誘導体には、末端がアミダイド化された「核酸合成用アミダイド」が含まれる。
【0037】
前記ヌクレオシド化合物としては、例えば、特開2008−162992号、特開2008−230985号、特開2009−062307号等の公報に記載のアミダイドなどを用いることができる。また、リン酸結合部以外に保護基を有しないアミダイド、例えば、サイアニン色素アミダイド、市販のdTアミダイドなどを用いることもできる。
【0038】
<<置換基>>
前記置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然又は非天然のアミノ酸、金属錯体、蛍光色素、酸化還元色素、スピンラベル体、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、下記一般式(101)〜(110)で表される基などの構造を含むことができる。
【0039】
【化5】

【0040】
前記天然又は非天然のアミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリンなどが挙げられる。
【0041】
前記金属錯体としては、金属イオンに配位子が配位した化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ruビピリジル錯体、フェロセン錯体、ニッケルイミダゾール錯体などが挙げられる。
【0042】
前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオレセイン系列、ローダミン系列、エオシン系列、NBD系列等の蛍光色素などが挙げられる。
【0043】
前記酸化還元色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロイコアニリン、ロイコアントシアニン等のロイコ色素などが挙げられる。
前記スピンラベル体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄N−(ジチオカルボキシ)サルコシン(sarcosine)、TEMPO(テトラメチルピペリジン)誘導体などが挙げられる。
【0044】
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
これらは、置換基で更に置換されていてもよい。
【0045】
−核酸塩基の保護基−
前記一般式(III)及び前記一般式(IV)において、Z’で表される前記核酸塩基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基、即ち、緩やかな条件下で脱保護可能な保護基であることが好ましい。
前記核酸塩基の保護基としては、例えば、特開2007−225507号、特開2008−162992号、特開2008−230985号、特開2009−062307号等の公報に記載の核酸塩基の保護基などを用いることができる。また、前記インドール基用保護基を核酸塩基の保護基として用いることも可能である。
【0046】
<具体例>
前記核酸自動合成用アミダイドの具体例としては、例えば、下記構造式(1)〜(2)で表されるものなどが挙げられるが、前記核酸自動合成用アミダイドとしては、これらに限定されるものではない。
【化6】

【化7】

【0047】
<製造>
前記一般式(II)及び前記一般式(III)で表されるモノマーの核酸自動合成用アミダイドの合成方法としては、特に制限はなく、例えば、後述する実施例に記載の方法などにより合成することができる。
【0048】
前記一般式(II)、前記一般式(III)、及び前記一般式(IV)で表されるダイマーの核酸自動合成用アミダイドを得る方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記モノマーの核酸自動合成用アミダイドと、前記モノマーの核酸自動合成用アミダイド又は前記ヌクレオシド化合物とを連結する方法などが挙げられる。
【0049】
前記連結する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、亜リン酸トリエステル結合(P(OR))を介して連結されることが好ましい。
前記亜リン酸トリエステル結合を介してなる前記一般式(II)、前記一般式(III)、及び前記一般式(IV)で表されるダイマーの核酸自動合成用アミダイドは、リン酸トリエステル結合を介してなるダイマーアミダイドと比較して、塩基性条件で安定性が高く、精製が容易である。そのため、精製が困難な、リン酸トリエステル結合を介して連結してなるダイマーアミダイドと比較して、高純度の核酸自動合成用アミダイドとして得ることができる。
【0050】
前記亜リン酸トリエステル結合の反応に用いる化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、亜リン酸塩化物、亜リン酸ジ塩化物などを用いることができるが、副反応を抑える意味で、後述する実施例に記載の方法が好適であると考えられる。
【0051】
(核酸自動合成用アミダイド用前駆体)
本発明の核酸自動合成用アミダイド用前駆体は、本発明の前記核酸自動合成用アミダイドの前駆体であり、下記構造式(3)〜(7)で表される。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0052】
前記核酸自動合成用アミダイド用前駆体は、前記核酸自動合成用アミダイドの合成経路で安定に存在するため、前記核酸自動合成用アミダイドは、前記核酸自動合成用アミダイド用前駆体を経て合成されることで、高収率で得ることができる。
【0053】
(核酸合成方法)
本発明の核酸合成方法は、本発明の前記核酸自動合成用アミダイドを用いることを特徴とする。
前記核酸合成方法は、前記核酸自動合成用アミダイドを用いて核酸を合成する方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエステル法、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホロアミダイト法、H−ホスホネート法、チオホスファイト法等の縮合反応に、固相法を組み合わせた従来の核酸合成方法を利用することができる。
前記核酸合成方法は、例えば、従来の核酸自動合成装置を用いて行うことができる。
【0054】
前記核酸合成方法においては、前記核酸自動合成用アミダイドを、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、前記核酸合成方法に用いるアミダイド(ヌクレオシド化合物)としては、前記核酸自動合成用アミダイドのみならず、他のアミダイドを組み合わせて用いてもよい。
この場合、前記他のアミダイドとしては、前記したような緩やかな条件下で脱保護可能なアミダイドを用いることが好ましく、このようなアミダイドとしては、例えば、特開2008−162992号、特開2008−230985号、特開2009−062307号等の公報に記載のアミダイドなどを用いることができる。
【0055】
前記核酸合成方法においては、前記核酸自動合成用アミダイドと、前記核酸自動合成用アミダイド及び前記他のアミダイドの少なくともいずれかとの縮合反応の後、前記核酸自動合成用アミダイド及び前記他のアミダイドの保護基の脱保護を行う。
前記脱保護の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記したような緩やかな条件下で行われることが好ましく、例えば、非プロトン性溶媒中で、嵩高い塩基により脱保護を行うことが好ましい。
前記非プロトン性溶媒、前記嵩高い塩基としては、前記同様である。また、脱保護に要する濃度及び時間としても、前記同様である。
【0056】
前記脱保護は緩やかな条件下で行われるため、前記核酸自動合成用アミダイドにおけるインドール基は脱離されない。
【0057】
(核酸)
本発明の核酸は、本発明の前記核酸合成方法により得られることを特徴とする。即ち、前記核酸は、その少なくとも一部に、インドール基を有する修飾ヌクレオチド単位を含んでなるものである。
【0058】
前記核酸を構成するヌクレオチド単位の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10個〜200個が好ましく、20個〜100個がより好ましく、30個〜80個が特に好ましい。
なお、前記核酸を構成するヌクレオチド単位のうち、前記核酸自動合成用アミダイドに由来する修飾ヌクレオチド単位の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0059】
前記核酸は、DNA配列及びRNA配列のいずれであってもよい。また、前記DNA配列及びRNA配列は、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよい。
【0060】
前記核酸は、インドール基を有してなるため、インドール基を介して蛋白質等の標的物質との結合が可能である。したがって、前記核酸は、例えば、蛋白質等の標的物質の解析に、好適に利用可能である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。また、以下の実施例及び試験例中、「%」は、特に明記のない限り「モル%」を表す。
【0062】
(実施例1:核酸自動合成用アミダイドの合成)
構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイド、及び、構造式(2)で表される核酸自動合成用アミダイドを以下のようにして合成した。
保護基としては、前記一般式(I)において、Rがp−メトキシフェニル基の化合物を用いた。
【0063】
【化13】

【0064】
<構造式(3)で表される化合物の合成>
クロロエタノール5.0mL(74.9mmol)を100mLの脱水ジメチルフォルムアミドに溶解し、4−メトキシチオフェノール8.7mL(71.3mmol)を加えた。反応混合物を窒素ガスで5分間パージした。続いて、炭酸ナトリウム31g(224mmol)を加えた後に、氷冷下15分間静置した後、室温で30分間攪拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮することにより構造式(8)で表される化合物13.04gを得た。
【0065】
トリフォスゲン7.00g(23.59mmol)を80mLの脱水テトラヒドロフランに溶解した。本溶液を表冷し、構造式(8)で表される化合物13.04g(最大70.78mmol)、ピリジン6.01mL(74.32mmol)及び80mLの脱水テトラヒドロフランの混合溶液を約30分間かけて滴下した。室温で30分間攪拌した後、再び表冷し、イミダゾール4.82g(70.78mmol)及びピリジン6.01mL(74.32mmol)を加え、室温にて30分間攪拌した。反応混合物にヘキサン160mLを加え、攪拌した後にろ過し、濾物をテトラヒドロフラン:ヘキサン(1:1(体積比))で洗浄した。濾液及び洗浄液を減圧濃縮することにより構造式(9)で表される化合物20.02gを得た。
【0066】
3−インドール酢酸11.27g(64.35mmol)を130mLの脱水ジメチルフォルムアミドに溶解し、60重量%水素化ナトリウム−オイル混合物5.66g(141.6mmol)を加え、室温で1時間攪拌した後、氷冷し、構造式(9)で表される化合物 20.02g(最大70.78mmol)の71mL脱水ジメチルフォルムアミドの冷却溶液を加え5分間攪拌した後、室温で30分間攪拌した。反応混合物に塩化アンモニム13.8gを加え減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(1%酢酸一定、酢酸エチル:ヘキサン=1:2→1:1(体積比))にて精製し、構造式(3)で表される化合物12.52g(32.48mmol)を得た。
【0067】
<構造式(4)で表される化合物の合成>
構造式(3)で表される化合物10.11g(26.23mmol)を66mLのジクロロメタンに溶解し、氷冷下70% m−クロロ過安息香酸、水混合物13.28gを加え、30分間攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(2%酢酸一定、ジクロロメタン:酢酸エチル=1:0→4:1(体積比))にて精製し、構造式(4)で表される化合物8.91g(21.34mmol、81%)を得た。
【0068】
【化14】

【0069】
<構造式(10)で表される化合物の合成>
構造式(10)で表される化合物は、特願2007−069378号明細書(XIVで表される化合物)に示された合成方法に従い合成した。
【0070】
<構造式(5)で表される化合物の合成>
構造式(10)で表される化合物18.42g(21.34mmol)を42mL脱水ジクロロメタンに溶解し、トリエチルシラン5.11ml(32.01mmol)及びジアザビシクロウンデセエン4.79mL(32.01mml)を加え室温にて10分間攪拌した後に、トリエチルアミン塩酸塩5.29g(38.41mmol)を加え、5分間以上攪拌し、溶液Aを得た。
構造式(4)で表される化合物8.91g(21.34mmol)を脱水ジメトキシエタンに溶解し減圧濃縮する操作を3回行った。残渣を65mLの脱水ジクロロメタンに懸濁し、ジイソプロピルエチルアミン4.09mL(23.47mmol)及びO−ベンゾトリアゾリル−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート8.50g(22.41mmol)を加え、室温にて30分間攪拌した。本溶液を上記溶液Aに加え室温にて30分間攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル:エタノール=19:1→9:1(体積比))にて精製し、構造式(5)で表される化合物21.30g(20.48mmol、96%)を得た。
【0071】
<構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイドの合成>
構造式(5)で表される化合物15.88g(15.27mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を46mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下ジメチルアミノピリジン93mg(0.76mmol)、ジイソプロピルエチルアミン3.02mL(18.32mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト3.75mL(16.80mmol)の15mL塩化メチレン溶液を5分間以上かけて滴下した。混合溶液を氷冷下5分間攪拌し、4℃で一晩静置した。続いてメタノール3.0mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(2%ピリジン含有酢酸エチル−ヘキサン(2:1(体積比)):2%ピリジン及び7%エタノール含有酢酸エチル=1:0→0:1(体積比))にて精製し、構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイド14.96g(79%)を得た。
【0072】
<構造式(6)で表される化合物の合成>
構造式(5)で表される化合物21.30g(20.48mmol)を脱水ジオキサンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を62mLの脱水ジオキサンに溶解し、ジメチルアミノピリジン150mg(1.2mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド6.34g(30.72mmol)及びレブリン酸3.15mL(30.72mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液に4mLのメタノールを加え、30分間攪拌した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を97mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、7.2mLのトリフロロ酢酸を加え、0℃で1時間攪拌した後、82mLの脱水メタノール及び11mLの脱水ピリジンを加えた。反応混合物を室温一晩攪拌した。反応混合物を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン:エタノール=19:1→91:9(体積比))にて精製し、構造式(6)で表される化合物14.69g(86%)を得た。
【0073】
【化15】

【0074】
<構造式(7)で表される化合物の合成>
構造式(6)で表される化合物12.54g(15.0mmol)及びdTアミダイド(グレンリサーチ株式会社製)11.50g(15.44mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を60mLの脱水アセトニトリルに溶解し、テトラゾール5.25g(75.0mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。続いてメタノール3.0mLを加え30分間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣を75mLのピリジンに溶解し、氷冷下、1Mヒドラジン1水和物含有ピリジン:酢酸(5:2(体積比))溶液22.5mLを加え、0℃で30分間攪拌し、構造式(7’)で表される化合物の消失が確認できるまで、15分間毎に、1Mヒドラジン1水和物含有ピリジン:酢酸(5:2(体積比))溶液7.5mLを加えた。氷冷下、アセトン37.5mLを加え0℃で10分間攪拌した後ジクロロメタンで希釈し水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン:エタノール=94:6→9:1(体積比))にて精製し、構造式(7)で表される化合物 15.1g(73%)を得た。
【0075】
<構造式(2)で表される核酸自動合成用アミダイドの合成>
構造式(7)で表される化合物15.10g(10.93mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタン混合溶液に溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を40mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン66mg(5.45mmol)及びジイソプロピルエチルアミン2.28mL(13.11mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト2.68mL(12.02mmol)のジクロロメタン11mL希釈溶液を加えた。混合溶液を4℃で一晩攪拌した。続いてメタノール2.2mLを加え30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を(2%ピリジン含有ジクロロメタン−ヘキサン(2:1(体積比)):2%ピリジン含有ジクロロメタン=0:100→100:0、続けて2%ピリジン含有ジクロロメタン:2%ピリジン、20%エタノール、及び2%ピリジン含有ジクロロメタン=1:0→3:1(体積比))にて精製し、構造式(2)で表される核酸自動合成用アミダイド11.06g(62%)を得た。
【0076】
<各化合物の構造確認>
前記各化合物(構造式(1)〜(7)で表される化合物)の構造確認を以下のようにして行った。結果を図1〜図12に示す。
【0077】
H−NMR−
各サンプル約5mgを重ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。プロトン核磁気共鳴スペクトルとして、300.4MHzにおいて重ジメチルスルホキシドで、18℃〜20℃にて測定した。内部標準は、残留プロトンジメチルスルホキシドピークを基準とした。
【0078】
31P−NMR−
各サンプル約5mgを重ジメチルスルホキシドに溶解した。リン31核磁気共鳴スペクトルとして、121.5MHzにおいて重ジメチルスルホキシドで、20℃にて測定した。外部標準は、トリフェニルホスフィン(PPh)を用い、−6.2ppmを基準とし、BCMにて測定を行った。
【0079】
−HHcosy−
各サンプル約5mgを重ジメチルスルホキシドに溶解した。HHcosyスペクトルとして、300.4MHzにおいて重ジメチルスルホキシドで、20℃にて測定した。内部標準は、重ジメチルスルホキシドピークを基準とした。
【0080】
(実施例2:構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイドの脱保護の確認)
実施例1で合成した核酸自動合成用アミダイド(構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイド)が、緩やかな条件下で脱保護可能であることを以下のようにして確認した。
【0081】
図13に示すように、まず、実施例1で合成した、構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイドと同様のインドール基及び保護基を有する構造式(4)で表される化合物(構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイドの前駆体)1.2mMを20μL用いHPLCの測定を行った(HPLCチャート1、図8)。
【0082】
また、構造式(4)で表される化合物1.2mM、及び20mM DBU含有ジメチルホルムアミド:アセトニトリル(1:99(体積比))の混合溶液を室温で15分間静置した。この反応混合物20μL用いHPLCの測定を行った(HPLCチャート2、図9)。
【0083】
DNA合成機として日本テクノサービス株式会社製のH−8−FDNA合成機を用い、0.2μmolのS−S結合固相レジン(グレンリサーチ株式会社製)に、Tアミダイド(グレンリサーチ株式会社製)、構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイドの順に反応させ合成した。この固相レジンに、20mM DBU含有アセトニトリルの混合溶液5mLを1時間かけて流したときの溶出溶液を20μL用いHPLCの測定を行った(HPLCチャート3、図10)。
【0084】
更に、前記DNA合成機を用い、0.2μmolのS−S結合固相レジンに、Tアミダイド(グレンリサーチ株式会社製)、構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイドの順に反応させ合成した。この固相レジンを、前記同様に、20μM DBU含有アセトニトリルの混合溶液で処理した後、アセトニトリルで洗浄し、100mM ジチオトレイトール(DTT)含有リン酸緩衝溶液(pH8.3)250μLを1時間かけて流したときの溶出溶液を20μL用いHPLCの測定を行った(HPLCチャート4、図11)。
【0085】
HPLCチャート3の混合溶液(構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイドのDBU処理サンプル)114μL及びHPLCチャート2の混合溶液(構造式(4)で表される化合物)5.7μLをともにHPLCで測定したところ、これらは一致した(HPLCチャート5、図12)。
【0086】
この結果より、構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイドを用いて核酸を合成する際に、アセトニトリル中でのDBU処理等の緩やかな条件下で脱保護を行うことにより、保護基が外され、インドール基含有核酸を得ることができることが確認された。
【0087】
なお、実施例2におけるHPLC分析条件は以下の通りである。
[HPLC分析条件]
流速:1mL/分間
A溶液:100mMトリエチルアンモニウム酢酸緩衝液(pH7.0)
B溶液:アセトニトリル〔B溶液:0%→40%(0分間→30分間)→100%(35分間)〕
【0088】
(実施例3)
構造式(1)で表される核酸自動合成用アミダイドを、実施例1とは異なる保護基を用いて合成した。即ち、保護基としては、前記一般式(I)において、Rがフェニル基の化合物を用いた。
【0089】
【化16】

【0090】
<構造式(21)で表される化合物の合成>
トリフォスゲン5.94g(20.0mmol)を100mLの脱水テトラヒドロフランに溶解した。本溶液を氷冷し2−(フェニルチオ)エタノール8.10mL(60.0mmol)、ピリジン5.09mL(63.0mmol)、及び40mLの脱水テトラヒドロフランの混合溶液を約30分間かけて滴下した。室温で15分間攪拌した後、再び氷冷し、イミダゾール4.09g(60.0mmol)及びピリジン5.09mL(63.0mmol)を加え、室温にて30分間攪拌した。この反応混合物にヘキサン140mLを加え、攪拌した後にろ過し、濾物をテトラヒドロフラン:ヘキサン(1:1(体積比))で洗浄した。濾液及び洗浄液を減圧濃縮することにより構造式(21)で表される化合物を得た。
【0091】
3−インドール酢酸9.47g(55.0mmol)を110mLの脱水ジメチルフォルムアミドに溶解し、60重量%水素化ナトリウム−オイル混合物4.40g(141.6mmol)を加え室温で1時間攪拌した後、氷冷し、構造式(21)で表される化合物の30mL脱水ジメチルフォルムアミド溶液を滴下し5分間攪拌した後、室温で30分間攪拌した。反応混合物に塩化アンモニム10gを加え減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(1%酢酸一定、酢酸エチル:ヘキサン=1:2→1:1(体積比))にて精製し、構造式(22)で表される化合物12.80g(36.03mmol)を得た。
【0092】
<構造式(23)で表される化合物の合成>
構造式(22)で表される化合物11.39g(32.05mmol)を80mLのジクロロメタンに溶解し、氷冷下70% m―クロロ過安息香酸、水混合物16.22gを加え、30分間攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(2%酢酸一定、ジクロロメタン:酢酸エチル=1:0→4:1(体積比))にて精製し、構造式(23)で表される化合物10.07g(25.98mmol、81%)を得た。
【0093】
【化17】

【0094】
<構造式(24)で表される化合物の合成>
構造式(10)で表される化合物17.26g(20.0mmol)を40mL脱水ジクロロメタンに溶解し、トリエチルシラン4.79ml(30.0mmol)及びジアザビシクロウンデセエン4.49mL(30.0mml)を加え室温にて10分間攪拌した後にトリエチルアミン塩酸塩4.96g(36.0mmol)を加え5分間以上攪拌し、溶液Aを得た。
【0095】
構造式(23)で表される化合物7.75g(20.0mmol)を脱水ジメトキシエタンに溶解し減圧濃縮する操作を3回行った。残渣を60mLの脱水ジクロロメタンに懸濁し、ジイソプロピルエチルアミン4.09mL(23.47mmol)及びO−ベンゾトリアゾリル−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート7.97g(21.0mmol)を加え室温にて30分間攪拌した。本溶液を上記溶液Aに加え室温にて30分間攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル:エタノール=19:1→9:1(体積比))にて精製し、構造式(24)で表される化合物13.28g(13.15mmol、66%)を得た。
【0096】
<構造式(25)で表される化合物の合成>
構造式(24)で表される化合物13.28g(13.15mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を40mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下ジメチルアミノピリジン80mg(0.66mmol)、ジイソプロピルエチルアミン2.60mL(15.78mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト3.26mL(14.47mmol)の13mL塩化メチレン溶液を5分間以上かけて滴下した。混合溶液を氷冷下5分間攪拌し、4℃で一晩静置した。続いてメタノール3.0mLを加え30分間攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(2%ピリジン含有酢酸エチル−ヘキサン(2:1(体積比)):2%ピリジン、及び7%エタノール含有酢酸エチル=1:0→0:1(体積比))にて精製し、構造式(25)で表される化合物4.86g(30%)を得たが、少量の分解物と考えられる不純物の混入が認められ、DNA合成機を用いた収率も95%を超えなかった。
【0097】
比較例1〜3において、下記一般式(201)〜(203)で表される保護基を用い、アミダイドの合成を試みた。
【化18】

【0098】
(比較例1)
前記一般式(201)で表される保護基を用いて、以下のようにアミダイドの合成を行った。
【化19】

【0099】
<構造式(26)で表される化合物の合成>
3−インドール酢酸0.96g(5.5mmol)を11mLの脱水ジメチルフォルムアミドに溶解し、60重量%水素化ナトリウム−オイル混合物440mg(5.5mmol)を加え室温で1時間攪拌した後、氷冷し、FMOCOSu 2.02g(6mmol)の3mL脱水ジメチルフォルムアミドの溶液を加え5分間攪拌した後、室温で30分間攪拌した。反応混合物に塩化アンモニム13.8gを加え減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し水で洗浄した。しかし酢酸エチル溶液に構造式(26)で表される化合物と認められる生成物は存在せず、様々な混合物であった。
【0100】
(比較例2)
前記一般式(202)で表される保護基を用いて、以下のようにアミダイドの合成を行った。
【化20】

【0101】
<構造式(27)で表される化合物の合成>
FMOCOSu 33.74g(100mmol)を100mLのジクロロメタンに溶解し、氷冷下、2−(メチルアミノ)エタノール8.25mL(105mmol)を加え、室温にて一晩攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1→1:0(体積比))にて精製し、構造式(27)で表される化合物28.72g(97%)を得た。
【0102】
<構造式(29)で表される化合物の合成>
トリフォスゲン5.94g(20.0mmol)を100mLの脱水テトラヒドロフランに溶解した。本溶液を氷冷し構造式(27)で表される化合物17.84(60.0mmol)、ピリジン5.09mL(63.0mmol)及び40mLの脱水テトラヒドロフランの混合溶液を約30分間かけて滴下した。室温で15分間攪拌した後、再び氷冷し、イミダゾール4.09g(60.0mmol)及びピリジン5.09mL(63.0mmol)を加え室温にて30分間攪拌した。反応混合物にヘキサン140mLを加え攪拌した後にろ過し、濾物をテトラヒドロフラン:ヘキサン(1:1(体積比))で洗浄した。濾液及び洗浄液を減圧濃縮することにより構造式(28)で表される化合物を得た。
【0103】
3−インドール酢酸9.47g(55.0mmol)を110mLの脱水ジメチルフォルムアミドに溶解し、60重量%水素化ナトリウム−オイル混合物4.40g(141.6mmol)を加え室温で1時間攪拌した後、氷冷し、構造式(28)で表される化合物の30mL脱水ジメチルフォルムアミド溶液を滴下し5分間攪拌した後、室温で30分間攪拌した。反応混合物に塩化アンモニム10gを加え減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮した。しかし酢酸エチル溶液に構造式(29)で表される化合物と考えられる生成物は存在せず、様々な混合物であった。
【0104】
(比較例3)
前記一般式(203)で表される保護基を用いて、以下のようにアミダイドの合成を行った。
【化21】

【0105】
<構造式(30)で表される化合物の合成>
トリフォスゲン5.94g(20.0mmol)を100mLの脱水テトラヒドロフランに溶解した。本溶液を氷冷し2−(フェニルチオ)エタノール8.10mL(60.0mmol)、ピリジン5.09mL(63.0mmol)及び40mLの脱水テトラヒドロフランの混合溶液を約30分間かけて滴下した。室温で15分間攪拌した後、再び氷冷し、N−ヒドロキシスクシンイミド7.25g(63.0mmol)及びピリジン5.09mL(63.0mmol)のテトラヒドロフラン30mLを加え室温にて30分間攪拌した。反応混合物にヘキサン140mLを加え攪拌した後にろ過し、濾物をテトラヒドロフラン−ヘキサン(1:1(体積比))で洗浄した。濾液及び洗浄液を減圧濃縮した。残渣を50mLのジクロロメタンに溶解し氷冷下、2−(メチルアミノ)エタノール5.28mL(66.0mmol)を加え、室温にて2時間攪拌した。反応溶液を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1→1:0(体積比))にて精製し、構造式(30)で表される化合物14.19g(93%)を得た。
【0106】
<構造式(31)で表される化合物の合成>
トリフォスゲン5.50g(18.52mmol)を93mLの脱水テトラヒドロフランに溶解した。本溶液を氷冷し構造式(30)で表される化合物14.19g(55.6mmol)、ピリジン4.71mL(58.3mol)及び37mLの脱水テトラヒドロフランの混合溶液を約30分間かけて滴下した。室温で15分間攪拌した後、再び氷冷し、イミダゾール3.79g(55.6mmol)及びピリジン4.71mL(58.3mmol)を加え室温にて30分間攪拌した。反応混合物にヘキサン120mLを加え攪拌した後にろ過し、濾物をテトラヒドロフラン:ヘキサン(1:1(体積比))で洗浄した。濾液及び洗浄液を減圧濃縮することにより構造式(31)で表される化合物を得た。
【0107】
3−インドール酢酸8.78g(51.0mmol)を100mLの脱水ジメチルフォルムアミドに溶解し、60重量%水素化ナトリウム−オイル混合物4.08g(131mmol)を加え室温で1時間攪拌した後、氷冷し、構造式(31)で表される化合物の30mL脱水ジメチルフォルムアミド溶液を滴下し5分間攪拌した後、室温で30分間攪拌した。反応混合物に塩化アンモニム10gを加え減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(1%酢酸一定、酢酸エチル:ヘキサン=1:2→2:1(体積比))にて精製し、構造式(32)で表される化合物14.03g(30.7mmol)を得た。
【0108】
<構造式(33)で表される化合物の合成>
構造式(32)で表される化合物10.66g(23.34mmol)を60mLのジクロロメタンに溶解し、氷冷下70% m―クロロ過安息香酸、水混合物11.82gを加え、30分間攪拌した。不溶物を濾過した後、反応溶液を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(2%酢酸一定、ジクロロメタン:酢酸エチル=1:0→2:1(体積比))にて精製し、構造式(33) 9.98g(20.42mmol、87%)を得た。
【0109】
<構造式(33)の脱保護検討>
構造式(33)をジメチルフォルムアミドに溶解し 1.2mM、及び20mM DBU含有1%ジメチルフォルムアミド−アセトニトリル溶液を室温にて15分間静置したが、構造式(33)は、かなり残存し、若干量の3−インドール酢酸が生成することをTLCより確認でき、本条件下で、保護基を完全に除くことが困難であることが分かった。
【0110】
以上の実施例1〜3を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) スルホニルエチルカーバメト基を有し、下記一般式(I)で表されるインドール基の保護基であって、非プロトン性溶媒中で脱保護可能であることを特徴とするインドール基用保護基。
【化22】

ただし、前記一般式(I)において、Rは、水素原子、アルキル基、フェニル基、及びアルコキシフェニル基のいずれかを表す。
(付記2) 非プロトン性溶媒が、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF、及びN−メチルピロリドンからなる群より選択される少なくともいずれかである付記1に記載のインドール基用保護基。
(付記3) 嵩高い塩基により15分間以内に脱保護可能である付記1から2のいずれかに記載のインドール基用保護基。
(付記4) 嵩高い塩基が、Lewis則に従う塩基である付記3に記載のインドール基用保護基。
(付記5) 嵩高い塩基が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、及びテトラメチルグアニジンからなる群より選択される少なくともいずれかである付記3から4のいずれかに記載のインドール基用保護基。
(付記6) 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン 0.01M以下の濃度で脱保護可能である付記5に記載のインドール基用保護基。
(付記7) スルホニルエチルカーバメト基が、チオエチルカーバメート基の形で導入された後、該チオエチルカーバメート基が酸化されることにより合成される付記1から6のいずれかに記載のインドール基用保護基。
(付記8) 非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基により保護されたインドール基を有し、かつ下記一般式(II)、下記一般式(III)、及び一般式(IV)の少なくともいずれかで表されることを特徴とする核酸自動合成用アミダイド。
【化23】

【化24】

【化25】

ただし、前記一般式(II)及び前記一般式(III)において、Xは、核酸塩基を表し、Yは、前記インドール基を表し、Zは、前記インドール基を保護するための保護基を表し、Z’は、前記核酸塩基を保護するための保護基を表し、Qは、水素原子及び水酸基のいずれかを表し、n及びmは、0及び1のいずれかの整数を表す。前記核酸塩基は、任意の置換基を有していてもよい。
前記一般式(IV)において、Xは、核酸塩基を表し、Yは、前記インドール基を表し、Zは、前記インドール基を保護するための保護基を表し、Z’は、前記核酸塩基を保護するための保護基を表し、Qは、水素原子及び水酸基のいずれかを表し、nは、0及び1のいずれかの整数を表す。前記核酸塩基は、任意の置換基を有していてもよい。
(付記9) 一般式(II)、一般式(III)、及び一般式(IV)において、インドール基Yを保護するための保護基Zが、付記1から7のいずれかに記載のインドール基用保護基である付記8に記載の核酸自動合成用アミダイド。
(付記10) 一般式(II)、一般式(III)、及び一般式(IV)において、Xで表される核酸塩基が、アデニン、グアニン、及びシトシンのいずれかである付記8から9のいずれかに記載の核酸自動合成用アミダイド。
(付記11) リン酸基に、シアノエチル基及びその誘導体、フルオレニルメチル基及びその誘導体、フェネチル基及びその誘導体、並びに、ニトロエチル基及びその誘導体からなる群より選択されるいずれかである保護基を更に有する付記8から10のいずれかに記載の核酸合成用アミダイド。
(付記12) 下記構造式(1)及び下記構造式(2)の少なくともいずれかで表される付記8から11のいずれかに記載の核酸自動合成用アミダイド。
【化26】

【化27】

(付記13) 付記8から12のいずれかに記載の核酸自動合成用アミダイドの前駆体であり、下記構造式(3)から(7)のいずれかで表されることを特徴とする核酸自動合成用アミダイド用前駆体。
【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

(付記14) 付記8から12のいずれかに記載の核酸自動合成用アミダイドを用いることを特徴とする核酸合成方法。
(付記15) 核酸自動合成用アミダイドと、ヌクレオシド化合物とが縮合反応することにより行われる付記14に記載の核酸合成方法。
(付記16) 縮合反応の後、非プロトン性溶媒中で核酸自動合成用アミダイドの保護基の脱保護が行われる付記15に記載の核酸合成方法。
(付記17) 非プロトン性溶媒が、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF、及びN−メチルピロリドンからなる群より選択される少なくともいずれかである付記14から16のいずれかに記載の核酸合成方法。
(付記18) 嵩高い塩基により15分間以内に脱保護可能である付記14から17のいずれかに記載の核酸合成方法。
(付記19) 嵩高い塩基が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、及びテトラメチルグアニジンからなる群より選択される少なくともいずれかである付記18に記載の核酸合成方法。
(付記20) 付記14から19のいずれかに記載の核酸合成方法により得られることを特徴とする核酸。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のインドール基用保護基、並びに核酸自動合成用アミダイド、及び核酸合成方法によれば、緩やかな条件下での脱保護が可能であり、インドール基を含有する本発明の核酸を効率的に得ることができる。得られた本発明の核酸は、前記インドール基を介して蛋白質等の標的物質との結合が可能であり、したがって、前記核酸は、例えば、蛋白質等の標的物質の解析に、好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホニルエチルカーバメト基を有し、下記一般式(I)で表されるインドール基の保護基であって、非プロトン性溶媒中で脱保護可能であることを特徴とするインドール基用保護基。
【化33】

ただし、前記一般式(I)において、Rは、水素原子、アルキル基、フェニル基、及びアルコキシフェニル基のいずれかを表す。
【請求項2】
非プロトン性溶媒が、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF、及びN−メチルピロリドンからなる群より選択される少なくともいずれかである請求項1に記載のインドール基用保護基。
【請求項3】
嵩高い塩基により15分間以内に脱保護可能である請求項1から2のいずれかに記載のインドール基用保護基。
【請求項4】
スルホニルエチルカーバメト基が、チオエチルカーバメート基の形で導入された後、該チオエチルカーバメート基が酸化されることにより合成される請求項1から3のいずれかに記載のインドール基用保護基。
【請求項5】
非プロトン性溶媒中で脱保護可能な保護基により保護されたインドール基を有し、かつ下記一般式(II)及び下記一般式(III)の少なくともいずれかで表されることを特徴とする核酸自動合成用アミダイド。
【化34】

【化35】

ただし、前記一般式(II)及び前記一般式(III)において、Xは、核酸塩基を表し、Yは、前記インドール基を表し、Zは、前記インドール基を保護するための保護基を表し、Z’は、前記核酸塩基を保護するための保護基を表し、Qは、水素原子及び水酸基のいずれかを表し、n及びmは、0及び1のいずれかの整数を表す。前記核酸塩基は、任意の置換基を有していてもよい。
【請求項6】
一般式(II)及び一般式(III)において、インドール基Yを保護するための保護基Zが、請求項1から4のいずれかに記載のインドール基用保護基である請求項5に記載の核酸自動合成用アミダイド。
【請求項7】
下記構造式(1)及び下記構造式(2)の少なくともいずれかで表される請求項5から6のいずれかに記載の核酸自動合成用アミダイド。
【化36】

【化37】

【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載の核酸自動合成用アミダイドの前駆体であり、下記構造式(3)から(7)のいずれかで表されることを特徴とする核酸自動合成用アミダイド用前駆体。
【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【請求項9】
請求項5から7のいずれかに記載の核酸自動合成用アミダイドを用いることを特徴とする核酸合成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸合成方法により得られることを特徴とする核酸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−105641(P2011−105641A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262124(P2009−262124)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】