説明

インバータ搭載基板ユニット及び洗濯機

【課題】複数のインバータモジュールを回路基板に搭載する構成において、グランド配線の引き回しに伴うノイズの影響を回避できるインバータ搭載基板ユニットを提供する。
【解決手段】実施形態のインバータ搭載基板ユニットによれば、交流電源を整流及び平滑して得られた直流電源と、この直流電源を交流に変換する複数のインバータ回路をそれぞれモジュール化したインバータモジュールとを備え、前記複数のインバータモジュールが回路基板に搭載されるものにおいて、前記回路基板は、前記複数のインバータモジュールの負極端子が共通に接続されるグランド点を有し、前記複数のインバータモジュールのうち、出力電流の大きさが上位から第1位,第2位となる2つのインバータモジュールを、それらの負極端子があるパッケージの一辺が互いに向き合うように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数のインバータモジュールを回路基板に搭載して構成されるインバータ搭載基板ユニット及び前記ユニットを備える洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のインバータモジュールを回路基板に搭載する場合、それらを含む制御側の回路グランドは1点で共通化されるのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−116066号公報
【特許文献2】特開2008−104481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の場合、複数のインバータモジュールの負極端子と共通グランド点との間を接続するグランド配線には共通インピーダンスが存在するため、インバータ回路を介して負荷電流が流れることにより、上記共通インピーダンス部分に電位差が発生する。その電位差がPWM指令の生成や電流を検出する場合の誤差要因となることで、誤動作や負荷を駆動する場合の騒音を発生させる。
【0005】
また、共通インピーダンスの発生を回避するため、例えばモータの各相電流をインバータ回路の下アーム側に挿入するシャント抵抗により検出する構成では、複数の電流検出抵抗を極力一カ所に集めるように配置して、共通のグランド点から各検出抵抗にスター状に配線することも考えられる。ところが、この場合もグランド点と各検出抵抗との間のグランド配線が長くなるため、サージノイズが発生して誤動作を引き起こす場合がある。
【0006】
そこで、複数のインバータモジュールを回路基板に搭載する構成において、グランド配線の引き回しに伴い発生するノイズの影響を回避できるインバータ搭載基板ユニット及び前記ユニットを備えた洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のインバータ搭載基板ユニットは、交流電源を整流及び平滑して得られた直流電源と、この直流電源を交流に変換する複数のインバータ回路をそれぞれモジュール化したインバータモジュールとを備え、前記複数のインバータモジュールが回路基板に搭載されるものにおいて、前記回路基板は、前記複数のインバータモジュールの負極端子が共通に接続されるグランド点を有し、前記複数のインバータモジュールのうち、出力電流の大きさが上位から第1位,第2位となる2つのインバータモジュールを、それらの負極端子があるパッケージの一辺が互いに向き合うように配置する。
また、実施形態の洗濯機は、実施形態のインバータ搭載基板ユニットを備えてなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態であり、複数のパワーモジュールが回路基板に搭載される場合のレイアウトを示す平面図
【図2A】ドラムモータ及びコンプレッサモータの駆動系を概略的に示す図(その1)
【図2B】ドラムモータ及びコンプレッサモータの駆動系を概略的に示す図(その2)
【図3】洗濯乾燥機の縦断側面図
【図4】ヒートポンプの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ヒートポンプ式洗濯乾燥機(ランドリー機器,電気機器)の一実施形態につき、図面を参照して説明する。洗濯乾燥機の縦断側面図である図3において、外箱1の内部には、水槽2が複数の支持装置3により弾性支持されて水平状態に配設されている。この水槽2の内部には、これと同軸状態で回転ドラム4が回転可能に配設されている。この回転ドラム4は、周側壁及び後壁に通風孔を兼ねる脱水孔4a(一部のみ図示)を多数有していて、洗濯槽、脱水槽及び乾燥室としても機能する。なお、回転ドラム4の内周面には、複数のバッフル4b(1個のみ図示)が設けられている。
【0010】
上記外箱1、水槽2及び回転ドラム4において、いずれも前面部(図中、右側部)には、洗濯物出し入れ用の開口部5、6及び7をそれぞれ有しており、開口部5と開口部6とは、弾性変形可能なベロー8により水密に連通接続されている。また、外箱1の開口部5には、これを開閉する扉9が設けられている。また、前記回転ドラム4は、背面部に回転軸10を有しており、この回転軸10は、軸受(図示せず)に支持されて、水槽2の背面部の外側に取付けられた運転用モータとしてのアウタロータ型の三相ブラシレスDCモータからなるドラムモータ(洗い・脱水モータ)11により回転駆動される。
【0011】
外箱1の底板1aには、複数の支持部材12を介してケーシング13が支持されており、そのケーシング13の右端部上部及び左端部上部には、吐出口13a及び吸入口13bがそれぞれ形成されている。また、底板1aには、ヒートポンプ(冷凍サイクル)14のコンプレッサ15が設置されている。更に、ケーシング13内には、ヒートポンプ14の凝縮器16及び蒸発器17が右側から左側に向け順に設置されているとともに、右端部に位置して送風ファン18が配設されている。図4には、各部を冷媒循環用のパイプ80で接続したヒートポンプ14の構成を示しており、この図では、冷媒の流量を調整する調整弁81も示している。なお、ケーシング13における蒸発器17の下方に位置する部位には、皿状の水受け部13cが形成されている。
【0012】
水槽2において、前面部の上部には、吸気口19が形成され、背面部下部には、排気口20が形成されている。吸気口19は、直線状ダクト21及び伸縮自在な連結ダクト22を介してケーシング13の吐出口13aに接続されている。また、排気口20は、環状ダクト23及び伸縮自在の連結ダクト24を介してケーシング13の吸入口13bに接続されている。環状ダクト23は、水槽2の背面部の外側に取付けられており、ドラムモータ11と同心円状をなすように形成されている。すなわち、環状ダクト23の入口側が排気口20に接続され、出口側が連結ダクト24を介して吸入口13bに接続されている。そして、上記ケーシング13、連結ダクト22、直線状ダクト21、吸気口19、排気口20、環状ダクト23及び連結ダクト14は、空気循環経路25を構成する。
【0013】
外箱1内において、その後方上部には、三方弁からなる給水弁26が配設され、また、前方上部には、洗剤投入器26aが配設されている。給水弁26は、その入水口が給水ホースを介して水道の蛇口に接続され、第1の出水口が洗い用給水ホース26bを介して洗剤投入器26aの上段の入水口に接続され、第2の出水口がすすぎ用給水ホース26cを介して洗剤投入器26aの下段の入水口に接続されるように構成されている。そして、洗剤投入器26aの出水口は、水槽2の上部に形成された給水口2aに給水ホース26dを介して接続されている。
【0014】
水槽2の底部の後方の部位には、排水口2bが形成されており、この排水口2bは、排水弁27aを介して排水ホース27に接続されている。なお、排水ホース27の一部は伸縮自在になっている。そして、ケーシング13の水受け部13cは、排水ホース28及び逆止弁28aを介して排水ホース27の途中部位に接続されている。
【0015】
外箱1の前面上部には操作パネル部29が設けられており、この操作パネル部29には、図示はしないが、表示器及び各種の操作スイッチが設けられている。また、前記操作パネル部29の裏面には、制御回路(制御手段,電流検出手段)30が設けられている。制御回路30は、マイクロコンピュータで構成されており、操作パネル部29の操作スイッチの操作に応じて給水弁26、ドラムモータ11及び排水弁27aを制御し、洗い、すすぎ及び脱水の洗濯運転や、ドラムモータ11及びコンプレッサ15を駆動する三相ブラシレスDCモータからなるコンプレッサモータ31(図2参照)を制御することで乾燥運転を実行する。
【0016】
図2は、ドラムモータ11及びコンプレッサモータ31の駆動系を概略的に示すものである。インバータ回路32は、6個のIGBT(半導体スイッチング素子)33a〜33fを三相ブリッジ接続して構成されており、各IGBT33a〜33fのコレクタ−エミッタ間には、フライホイールダイオード34a〜34fが接続されている。
【0017】
下アーム側のIGBT33d、33e、33fのエミッタは、シャント抵抗(電流検出手段)35u、35v、35wを介してグランドに接続されている。また、IGBT33d、33e、33fのエミッタとシャント抵抗35u、35v、35wとの共通接続点は、夫々レベルシフト回路36を介して制御回路30に接続されている。
レベルシフト回路36はオペアンプなどを含んで構成され、シャント抵抗35u〜35wの端子電圧を増幅すると共にその増幅信号の出力範囲が正側に収まるように(例えば、0〜+3.3V)バイアスを与える。また、過電流比較回路38は、インバータ回路32の上下アームが短絡した場合、回路の破壊を防止するために過電流検出を行なう。
【0018】
インバータ回路32の入力側には駆動用電源回路39が接続されている。駆動用電源回路39は、100Vの交流電源40を、ダイオードブリッジで構成される全波整流回路41及び直列接続された2個のコンデンサ42a、42bにより倍電圧全波整流し、約280Vの直流電圧をインバータ回路32に供給する。インバータ回路32の各相出力端子は、ドラムモータ11の各相巻線11u、11v、11wに接続されている。
【0019】
制御回路30は、レベルシフト回路36を介して得られるモータ11の巻線11u〜11wに流れる電流Iau〜Iawを検出し、その電流値に基づいて2次側の回転磁界の位相θ及び回転角速度ωを推定すると共に、三相電流を直交座標変換及びdq(direct−quadrature) 座標変換して励磁電流成分Id、トルク電流成分Iqを得る。
そして、制御回路30は外部より速度指令が与えられると、推定した位相θ及び回転角速度ω並びに電流成分Id、Iqに基づいて電流指令Idref 、Iqref を生成し、それを電圧指令Vd、Vqに変換すると直交座標変換及び三相座標変換を行なう。最終的には、駆動信号がPWM信号として生成され、インバータ回路32を介してモータ11の巻線11u〜11wに出力される。
【0020】
第1電源回路43は、インバータ回路32に供給される約280Vの駆動用電源を降圧して15Vの制御用電源を生成して制御回路30及び駆動回路44並びに後述する駆動回路51に供給する。また、第2電源回路45は、上記駆動用電源を降圧して3.3Vの制御用電源を生成し、制御回路30に供給する三端子レギュレータである。高圧ドライバ回路46は、インバータ回路32における上アーム側のIGBT33a〜33cを駆動するために配置されている。
【0021】
また、モータ11のロータには、起動時に使用するための回転位置センサ82が配置されており、回転位置センサ82が出力するロータの位置信号は、制御回路30に与えられている。すなわち、モータ11の起動時において、ロータ位置の推定が可能となる回転速度(例えば、約30rpm)までは、回転位置センサ82を使用してベクトル制御を行い、上記回転速度に達した以降は、回転位置センサ82を使用しないセンサレスベクトル制御に切り替える。
【0022】
そして、コンプレッサモータ31については、ドラムモータ11の駆動系と対称な構成が配置されている。即ち、コンプレッサモータ31は、インバータ回路47によって駆動され、その下アーム側にはシャント抵抗(電流検出手段)48u〜48wが挿入されている。それらのシャント抵抗48u〜48wの端子電圧は、レベルシフト回路49を介して制御回路30に与えられ、また、過電流比較回路50によって過電流検出のための比較が行なわれる。制御回路30は、駆動回路51及び高圧ドライバ回路52を介してインバータ回路47を駆動する。
【0023】
また、図2において、破線で囲んでいるインバータ回路32,駆動回路44及び高圧ドライバ回路46はドラムモータパワーモジュール(第2インバータモジュール)61を構成しており、インバータ回路47,駆動回路51及び高圧ドライバ回路52はコンプレッサパワーモジュール(第1インバータモジュール)62を構成している。そして、循環ポンプパワーモジュール(第4インバータモジュール)63,循環ファンパワーモジュール(第3インバータモジュール)64は、それぞれ図示しない循環ポンプ,循環ファンを駆動するもので、内蔵されている回路は、パワーモジュール61及び62と同様である。循環ポンプは、洗濯運転時において、回転ドラム4内の洗濯物に洗浄水を振りかけるため、与えられる駆動指令に応じて洗浄水を汲み上げるポンプであり、循環ファンは、乾燥運転時において、回転ドラム4内に送風を行うファンである。
【0024】
制御回路30と、循環ポンプパワーモジュール63,循環ファンパワーモジュール64との間は、それぞれに内蔵されるインバータ回路を制御するために共通化された6本の制御信号線を介して接続されている。制御回路30と循環ポンプパワーモジュール63との間は抵抗素子65a〜65fが挿入されており、制御回路30と循環ファンパワーモジュール64との間は抵抗素子66a〜66fが挿入されている。
【0025】
そして、循環ポンプパワーモジュール63の6本の入力端子は、NPNトランジスタ67のコレクタに共通に接続されており、循環ファンパワーモジュール64の6本の入力端子は、NPNトランジスタ68のコレクタに共通に接続されている。NPNトランジスタ67,68のベースには、制御回路30により個別に制御信号が与えられ、それぞれのエミッタはグランドに接続されている。
【0026】
循環ポンプパワーモジュール63,循環ファンパワーモジュール64に内蔵されるインバータ回路の各相下アーム側にはシャント抵抗(電流検出手段)69u〜69wが挿入されている。それらのシャント抵抗69u〜69wの端子電圧は、レベルシフト回路70を介して制御回路30に与えられ、また、過電流比較回路71によって過電流検出のための比較が行なわれる。これにより、制御回路30は、シャント抵抗69u〜69wからの信号に基づいてベクトル制御により循環ポンプモータ又は循環ファンモータのロータの回転位置を検出し、各インバータ回路をPWM制御して、各モータを設定速度に制御する。
【0027】
ここで、制御回路30は、循環ポンプパワーモジュール63側を制御する場合は、NPNトランジスタ67をオン,NPNトランジスタ68をオフしてシャント抵抗69の検出信号に基づきPWM信号を生成すると、循環ポンプパワーモジュール63にPWM信号を与えて制御し、循環ポンプを駆動する。これにより、水槽2内の洗濯水は、洗濯水の循環経路を経て噴出口(何れも図示せず)から回転ドラム4内に噴射される。
【0028】
また、制御回路30は、循環ファンパワーモジュール64側を制御する場合は、NPNトランジスタ67をオフ,NPNトランジスタ68をオンしてシャント抵抗69の検出信号に基づきPWM信号を生成すると、循環ファンパワーモジュール64にPWM信号を与えて制御し、循環ファンを駆動する。これにより、吹出口から温風を水槽2内に供給して回転ドラム4内の洗濯物の乾燥を行なう。
【0029】
図1は、ドラムモータパワーモジュール61,コンプレッサパワーモジュール62,循環ポンプパワーモジュール63,循環ファンパワーモジュール64が回路基板72に搭載される場合のレイアウトを示す平面図である。ドラムモータパワーモジュール61,コンプレッサパワーモジュール62はDIP(Dual Inline Package)であり、循環ポンプパワーモジュール63,循環ファンパワーモジュール64はSIP(Single Inline Package)である。尚、抵抗素子をシンボルで示す等の都合上、配線パターンについては必ずしも実態的なレイアウトを反映していない。
【0030】
ここで、モジュール61〜64をそれぞれ通電制御する場合に流れる電流値(出力電流値)は、例えばコンプレッサパワーモジュール62が1A〜9A,ドラムモータパワーモジュール61が0.1A〜7A,循環ポンプパワーモジュール63が0.1A〜0.2A,循環ファンパワーモジュール64が0.1A〜1A程度であるとする。すなわち、通電電流値の大きさでは、コンプレッサパワーモジュール62が第1位であり、ドラムモータパワーモジュール61が第2位であるとする。
また、上記各電流値に応じて、シャント抵抗48の抵抗値は例えば33mΩ,シャント抵抗35の抵抗値は例えば33mΩ〜100mΩ,シャント抵抗69の抵抗値は例えば300mΩ〜1Ω程度に設定されている。また、モジュール61〜64については、発熱量の大きさに応じてパッケージにヒートシンクが装着されたり、送風冷却等の熱対策が採られる。
【0031】
コンプレッサパワーモジュール62のパッケージは、図中左上側を1ピンとすると図中右下側が18ピンとなり、18〜20ピンがインバータ回路の下アーム側端子(負極端子;NW,NV,NU)となっており、これらに対してシャント抵抗48w,48v,48uが接続されている。そして、コンプレッサパワーモジュール62の18,19,20ピンに対して、ドラムモータパワーモジュール61の20,19,18ピンが対向するように配置されており、シャント抵抗48w,48v,48uに対してシャント抵抗35u,35v,35wがそれぞれ対向するように配置されている。すなわち、2つのパワーモジュール62,61は、それらの下アーム側端子があるパッケージの一辺が互いに向き合うようにして配置されている。
【0032】
また、これらのパッケージにおいて、21,22,23ピンがインバータ回路のW,V,U相の出力端子であり、24ピンが電源端子(P)であり駆動用電源回路39からの280V電源が供給されている。そして、シャント抵抗48w,48v,48uとシャント抵抗35u,35v,35wとの共通接続点が制御グランド点73(図中に破線の楕円で囲む)となっており、この制御グランド点73より図中下方側に伸びるグランド配線74と、図中左下方向に伸びるグランド配線75とが配置されている。グランド配線74は、循環ポンプパワーモジュール63,循環ファンパワーモジュール64の各相下アーム側端子に接続されているシャント抵抗69u,69v,69wに接続されている。グランド配線75は、制御回路30のグランド端子に接続されている。以上の図1に示す構成がインバータ搭載基板ユニット76を構成している。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明する。制御回路30は、各モジュール61〜64における各相電流を内蔵しているA/D変換器によりA/D変換して読み込み、検出した各相電流に基づいてベクトル制御を行う。コンプレッサパワーモジュール62,ドラムモータパワーモジュール61は通電電流量が第1位,第2位であり、図1に示すレイアウトを採用することで、各相下アーム側端子と制御グランド点73との配線インダクタンスを最小化する。これにより、負側サージを極力低減し(モジュール内のスイッチング素子;IGBT33等の特性にもよるが、例えば通常5V以下)、制御回路30がA/D変換を行う際にノイズの影響が及ぶことを回避する。
【0034】
一方、循環ポンプパワーモジュール63,循環ファンパワーモジュール64については通電電流量が比較的小さいため、電流変化量(di/dt)が小さくなるので、制御グランド点73に接続されるグランド配線74が多少長くなっても発生するサージの振幅は小さく、上記したA/D変換に及ぼす影響も少ない。また、グランド配線74,75は、コンプレッサパワーモジュール62,ドラムモータパワーモジュール61との配線長が最短となる制御グランド点73から放射状に延びるように配線されているので、共通インピーダンスが問題となることもない。
更に、グランド配線74が長くなると、その配線抵抗分が各相電流を検出する際の誤差となるが、通電電流値が小さい分だけシャント抵抗69の抵抗値を大きくしているので、誤差は相対的に問題ないレベルとなる。
【0035】
以上のように本実施形態によれば、複数のパワーモジュール61〜64が回路基板72に搭載されるインバータ搭載基板ユニット76において、インバータ搭載基板ユニット76をドラム式洗濯乾燥機に使用する。そして、ヒートポンプ14を構成するコンプレッサ15を駆動するコンプレッサパワーモジュール62と、回転ドラム4を駆動するドラムパワーモジュール61と、回転ドラム4内に送風するファンを駆動する循環ファンパワーモジュール64と、回転ドラム4内に洗浄水を循環させる循環ポンプパワーモジュール63とを備え、回路基板72は、パワーモジュール61〜64の負極端子が共通に接続される制御グランド点73を有し、パワーモジュール61〜64のうち、出力電流の大きさが上位から第1位,第2位となる2つのパワーモジュール62,61を、それらの負極端子が対向するように配置した。
【0036】
したがって、パワーモジュール62,61の負極端子と制御グランド点73との配線インダクタンスを最小化して、負側サージを極力低減し、制御回路30が各相電流をA/D変換して読み込む際にノイズの影響が及ぶことを回避でき、誤動作の発生を防止できる。また、通電電流が小さい循環ポンプパワーモジュール63,循環ファンパワーモジュール64を回路基板72にレイアウトする際の自由度が高くなるので、実装密度をより高めてコストの低減に資することができる。
【0037】
そして、パワーモジュール62,61の各相負極端子にシャント抵抗48w,48v,48u,シャント抵抗35u,35v,35wを外付けし、回路基板72は、シャント抵抗48及び35が共通に接続される側に、制御グランド点73に接続されるグランド配線74,75を配置した。これにより、共通インピーダンスが問題となることを回避し、電流検出を正確に行うことでモータの回転精度を向上させ、騒音の発生を抑制できる。
更に、循環ポンプパワーモジュール63と循環ファンパワーモジュール64とは同時に使用することがないので、それらと制御回路30との間の入出力信号線を共通化することで、実装密度を一層向上させることができる。
【0038】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
必ずしも2つのパワーモジュール62,61それぞれの負極端子が直接対向するように配置する必要はなく、例えば、双方の負極端子が制御グランド点73を挟んで斜向かいとなるように配置しても良い。要は、少なくとも2つのインバータモジュールを、それらの負極端子があるパッケージの一辺が互いに向き合うように配置すれば良い。
【0039】
各相毎にシャント抵抗を設け3シャント方式に限らず、インバータ回路の負側母線にシャント抵抗を挿入して通電パターンに応じて各相電流を検出する1シャント方式に適用しても良い。
各インバータモジュールが駆動対象とするものは、ドラム,コンプレッサモータ,循環ポンプ,循環ファンに限ることはない。したがって、ドラム式洗濯乾燥機に限ることなく、複数のインバータモジュールを搭載してそれらの各相電流を検出し、インバータを制御するものであれば適用できる。
【符号の説明】
【0040】
図面中、32,47はインバータ回路、35,48はシャント抵抗(電流検出抵抗)、61はドラムモータパワーモジュール(第2インバータモジュール)、62はコンプレッサパワーモジュール(第1インバータモジュール)、63は循環ポンプパワーモジュール(第4インバータモジュール)、64は循環ファンパワーモジュール(第3インバータモジュール)、72は回路基板、73は制御グランド点、74,75はグランド配線、76はインバータ搭載基板ユニットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を整流及び平滑して得られた直流電源と、この直流電源を交流に変換する複数のインバータ回路をそれぞれモジュール化したインバータモジュールとを備え、前記複数のインバータモジュールが回路基板に搭載されるインバータ搭載基板ユニットにおいて、
前記回路基板は、前記複数のインバータモジュールの負極端子が共通に接続されるグランド点を有し、
前記複数のインバータモジュールのうち、出力電流の大きさが上位から第1位,第2位となる2つのインバータモジュールを、それらの負極端子があるパッケージの一辺が互いに向き合うように配置したことを特徴とするインバータ搭載基板ユニット。
【請求項2】
前記2つのインバータモジュールを、それらの負極端子が対向するように配置したことを特徴とする請求項1記載のインバータ搭載基板ユニット。
【請求項3】
前記対向するように配置された2つのインバータモジュールは、出力電流を検出するための電流検出抵抗が前記負極端子に外付けされ、
前記回路基板は、前記インバータモジュールの負極端子に接続される電流検出抵抗が共通に接続される側に、前記グランド点に接続されるグランド配線を配置したことを特徴とする請求項1又は2記載のインバータ搭載基板ユニット。
【請求項4】
ドラム式洗濯乾燥機に使用され、
ヒートポンプを構成するコンプレッサを駆動する第1インバータモジュールと、
ドラムを駆動する第2インバータモジュールと、
前記ドラム内に送風するファンを駆動する第3インバータモジュールと、
前記ドラム内に洗浄水を循環させるポンプを駆動する第4インバータモジュールとを備え、
前記第1及び第2のインバータモジュールの負極端子を対向するように配置したことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のインバータ搭載基板ユニット。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかに記載のインバータ搭載基板ユニットを備えることを特徴とする洗濯機。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−59203(P2013−59203A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196052(P2011−196052)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】