説明

インフルエンザを治療するための化合物および方法

本発明は、式Iの化合物を使用してインフルエンザウイルスHA成熟過程を阻害することによりインフルエンザ感染を治療および予防するための方法を対象とする。本発明はまた、式Iの化合物および他の薬剤を含む、インフルエンザ感染を治療および予防するための組み合わせを対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年6月26日出願の米国特許仮出願第61/220,891号から優先権を主張し、その全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、チアゾリドを使用して、インフルエンザ感染を治療し予防する方法および生成物を対象とする。
【背景技術】
【0003】
全年齢群に影響を与える伝染性の高い急性呼吸器疾患であるインフルエンザは、米国だけで年間に約36,000名の死亡者および226,000名を超える入院患者をもたらす。インフルエンザウイルスは、核タンパク質およびマトリックスタンパク質の抗原性の違いによって(A型、B型、およびC型として)分類され、エンベロープを有する、マイナス鎖RNAウイルスであり;A型が、臨床的に最も重要である。A型インフルエンザウイルスの多くのサブタイプは、2つの表面糖タンパク質である血球凝集素(「HA」)およびノイラミニダーゼ(「NA」)が異なり、これらは防御免疫応答の主な標的であり、(H番号で示される)血球凝集素および(N番号で示される)ノイラミニダーゼのタイプに従って表示される。HAおよびNAは、抗原連続変異および抗原不連続変異の結果として連続的に変化する。16種のHサブタイプ(または「血清型」)および9種のNサブタイプが知られている。
【0004】
新型H1N1ブタインフルエンザなどの、高病原性A型インフルエンザウイルス株の出現は、世界的なヒトの健康に特に深刻な脅威を示す。監視および早期診断に加えて、新興インフルエンザ株を制御する努力により、有効なワクチンおよび新規な抗ウイルス薬の開発が際立っている。
【0005】
A型インフルエンザウイルス血球凝集素は、株に応じてサブユニット当たり3〜9個のN結合型グリコシル化シークオンを含む三量体糖タンパク質である。HAは、小胞体において、最初に合成され、75〜79kDa前駆体(HA0)としてコアグリコシル化され、この前駆体が集合して、非共有結合ホモ三量体となる。この三量体は、速やかにゴルジ複合体に運搬され、原形質膜に到達し、そこで、HAの挿入が新たに形成されたウイルス粒子の集合および成熟のプロセスを開始するする。原形質膜への挿入の直前またはそれと同時に、各三量体サブユニットはタンパク分解により2つの糖タンパク質、HA1およびHA2に切断されるが、これらはジスルフィド結合によって連結されたままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、エンドグリコシダーゼ消化に対する抵抗性に先行する段階でウイルスの血球凝集素の成熟をブロックすることによりウイルス感染症を治療および予防する方法に関する。治療および予防は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて投与することにより行われる。式Iの化合物は、ウイルス表面タンパク質HAの成熟を選択的にブロックし、それによって、細胞内運搬および宿主細胞原形質膜への挿入を障害する新規な機序によって、抗ウイルス活性を示す。予備的な結果によれば、式Iの化合物はA型インフルエンザ感染に対して有効な抗ウイルス薬の新規なクラスを構成することが示唆されている。本発明はまた、抗ウイルス療法において個別、同時の、または逐次使用のための組み合わせ製剤としての、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩、および有効量の追加の抗ウイルス薬、または有効量の免疫賦活薬、または有効量のワクチンを含む製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インフルエンザウイルスのHAの成熟を阻害することによってインフルエンザ感染を治療および予防するための、式Iのチアゾリドを使用する方法、医薬組成物、および組み合わせ製剤を対象とする。本発明による組み合わせ製剤、医薬組成物および治療方法において、抗ウイルス薬は、1から4種の化合物または調製物を含むことができ、ワクチンおよび/または免疫賦活薬を含むこともできる。
【0008】
一実施形態では、本発明は、治療有効量の式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供または企図する。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩および他の抗ウイルス薬を含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせを提供または企図する。
【0010】
より具体的な実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩およびノイラミニダーゼ阻害薬を含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせを提供または企図する。
【0011】
他のより具体的な実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩、および免疫賦活薬を含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせを提供または企図する。
【0012】
他のより具体的な実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩、およびペグ化インターフェロンを含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせを提供または企図する。
【0013】
他のより具体的な実施形態では、本発明は、式Iの化合物,または薬学的に許容されるその塩、および組換えシアリダーゼ融合タンパク質を含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせを提供または企図する。
【0014】
他のより具体的な実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩、およびワクチンを含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせを提供または企図する。
【0015】
他のより具体的な実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせを提供または企図する。
【0016】
他のより具体的な実施形態では、本発明は、2つの薬剤を実質的に同時に投与する式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩および他の抗ウイルス薬を含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせを提供または企図する。
【0017】
他のより具体的な実施形態では、本発明は、2つの薬剤を順次投与する、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩および他の抗ウイルス薬を含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせを提供または企図する。
【0018】
他の実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することによりウイルス感染症を治療および予防する方法を提供する。
【0019】
他の実施形態では、本発明は、免疫賦活薬と組み合わせて、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することによりウイルス感染症を治療および予防する方法を提供する。
【0020】
他の実施形態では、本発明は、ノイラミニダーゼ阻害薬と組み合わせて、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することによりウイルス感染症を治療および予防する方法を提供する。
【0021】
他の実施形態では、本発明は、ワクチンと組み合わせて、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することによりウイルス感染症を治療および予防する方法を提供する。
【0022】
他の実施形態では、本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドと組み合わせて、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することにより、ウイルス感染症を治療および予防する方法を提供する。
【0023】
他の実施形態では、本発明は、アダマンチン類似体と組み合わせて、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することによりウイルス感染症を治療および予防する方法を提供する。
【0024】
他の実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩およびノイラミニダーゼ阻害薬を含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせパックまたはキットを提供する。
【0025】
他の実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩および免疫賦活薬を含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせパックまたはキットを提供する。
【0026】
他の実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩およびアダマンチン類似体を含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせパックまたはキットを提供する。
【0027】
他の実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩および組換えシアリダーゼ融合タンパク質を含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせパックまたはキットを提供する。
【0028】
他の実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、インフルエンザを治療するために有用な組み合わせパックまたはキットを提供する。
【0029】
本明細書では、以下の用語は、指定された意味を有する。
【0030】
別段の指示がない限り、「a」という用語は、「1つ(種)または複数」を意味する。
【0031】
別段の指示がない限り、本明細書では、「1つまたは複数の置換基」という用語は、利用可能な結合部位の数に基づいた1から最大数のあり得る置換基を意味する。
【0032】
本明細書では、「治療」という用語は、かかる用語を適用する障害もしくは状態、またはかかる状態もしくは障害の1つまたは複数の症状の進行を逆転する、緩和する、抑制する、あるいは、それらを予防することを意味する。本明細書では、「治療」という用語は、「治療する」が直上に定義される通り、治療する行為を意味する。
【0033】
「組み合わせ」、「組み合わせ療法」および「併用療法」という用語は、式Iの化合物、およびこれらの治療薬の協調的作用から有益な効果を提供することを目的としたある特定の治療レジメンの一部としての他の薬剤の投与を包含する。組み合わせの有益な効果には、それだけには限らないが、治療薬の組み合わせから生じる薬物動態学的または薬力学的な相互作用が含まれる。組み合わせでのこれらの治療薬の投与は、通常、規定された期間(選択された組み合わせに依存して、通常、分、時間、日または週)にわたって実施される。
【0034】
「組み合わせ療法」は、一般に、偶発的におよび任意に本発明の組み合わせになる別々の単独療法レジメンの一部としてこれらの治療薬の2つ以上の投与を包含することは意図しない。「組み合わせ療法」は、実質的に同時の方式または逐次的な方式で治療薬の投与が含まれるものとする。実質的に同時の投与は、例えば、治療薬の固定比率を含む単一のカプセルを投与することによりまたはそれぞれの治療薬のための単一のカプセルを投与することにより達成することができる。治療薬の逐次および実質的に同時の投与は、それだけには限らないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、および粘膜組織による直接吸収が含まれる任意の適当な経路により実施することができる。治療薬は、同一経路または異なる経路により投与することができる。例えば、選択される組み合わせの第一の治療薬を静脈内注射により投与することができ、組み合わせの他の治療薬を経口で投与することができる。あるいは、例えば、すべての治療薬を経口で投与してもよく、すべての治療薬を静脈内注射により投与してもよい。治療薬を投与する順序は、重要なことも重要ではないこともある。「組み合わせ療法」はまた、生物学的有効成分(それだけには限らないが、異なる抗ウイルス薬、ワクチン、または免疫賦活薬など)、ならびに栄養補助食品を含めた非薬物療法とさらに組み合わせた、前述した通り治療薬の投与を包含することもできる。
【0035】
「塩」という用語は、最も広義に用いられる。例えば、「塩」という用語には、本化合物のイオンとの水素塩および水酸化物塩が含まれる。いくつかの実施形態において、「塩」という用語は、薬理学的活性を有する本化合物の塩であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない、薬学的に許容される塩と称されるサブクラスとなり得る。すべての実施形態では、塩は、それだけには限らないが、酸で形成することができ、水素塩、ハロゲン化物、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩(glucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩(tosylate)、およびウンデカン酸塩などであり得る。すべての実施形態において、塩は、それだけには限らないが、水酸化物塩、アンモニウム塩、リチウム、ナトリウムおよびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、アンモニア、メチルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基との塩、ならびにアルギニンおよびリシンなどのアミノ酸との塩など、塩基で形成することができる。塩基性の窒素含有基は、メチル、エチル、プロピルおよびブチル塩化物、臭化物およびヨウ化物などの低級アルキルハロゲン化物;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミルなどの硫酸ジアルキル;デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル塩化物、臭化物およびヨウ化物などの長鎖ハロゲン化物;および臭化ベンジルおよび臭化フェネチルなどのアラルキルハロゲン化物を含めた薬剤で四級化することができる。
【0036】
本明細書では、「治療上許容される塩」、および「薬学的に許容される塩」という用語は、水または油に可溶性または分散性であり;過度の毒性、刺激性、およびアレルギー応答がなく疾患の治療に適しており;妥当な利益/危険比と釣り合い;これらの所期の使用のために有効である、本発明の化合物の塩および両性イオンの形態を表す。塩は、化合物の最終の単離および精製中に調製することもでき、または別々に遊離塩基の形態の適当な化合物を適当な酸と反応させることにより調製することもできる。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L−アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、カンホラート、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、二グルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチジン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL−マンデル酸、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロプリオナート(phenylproprionate)、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバラート、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L−酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、炭酸水素塩、p‐トルエンスルホン酸(p−トシラート)、およびウンデカン酸塩が含まれる。また、本発明の化合物中の塩基性基は、メチル、エチル、プロピル、およびブチル塩化物、臭化物、およびヨウ化物;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミル;デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル塩化物、臭化物、およびヨウ化物;ならびに臭化ベンジルおよび臭化フェネチルで四級化することができる。治療上許容される付加塩を形成するために用いることができる酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸などの無機酸、およびシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、およびクエン酸などの有機酸が含まれる。塩は、化合物のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類イオンとの配位により形成することもできる。そのため、本発明は、本発明の化合物の化合物のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩などを考えている。
【0037】
塩基性付加塩は、カルボキシル、フェノールもしくは類似の基を、金属水酸化物、カルボナート、もしくは炭酸水素塩などの適当な塩基と、あるいはアンモニアまたは有機第1級、第2級、もしくは第3級アミンと反応させることにより、化合物の最終の単離および精製中に調製することができる。治療上許容される塩の陽イオンには、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム、ならびにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N−ジベンジルフェネチルアミン、1−エフェナミン、およびN,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどの非毒性の第4級アミン陽イオンが含まれる。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンには、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、およびピペラジンが含まれる。
【0038】
「溶媒和物」という用語は、最も広義に用いられる。例えば、溶媒和物という用語には、本発明の化合物が1つまたは複数の結合水分子を含むときに形成された水和物が含まれる。
【0039】
本明細書では、「アルキルカルボニル」および「アルカノイル」という用語は、カルボニル基により親分子部分に結合したアルキル基を意味する。かかる基の例には、アセチルとしても知られるメチルカルボニル;プロピオニルとしても知られるエチルカルボニル;および2−メチル−シクロペンチルカルボニルなどが含まれる。
【0040】
本明細書では、「アシル」という用語は、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルに結合したカルボニル、またはそのカルボニルに結合した原子が炭素である任意の他の部分を意味する。「アセチル」基は、−C(O)CH3基を意味する。アシル基の例には、ホルミル、アセチル、およびプロピオニルなどのアルカノイル基、ベンゾイルなどのアロイル基、およびシンナモイルなどの混合されたアルキル−アリール基が含まれる。
【0041】
「アシルアミノ」という用語は、アシル基で置換されたアミノラジカルを意味する。「アシルアミノ」ラジカルの一例は、アセチルアミノ(CH3C(O)NH−)であり;他は、ベンゾイルアミノである。
【0042】
本明細書では、「アルケニル」という用語は、直鎖、分枝鎖、もしくは環式不飽和の炭化水素ラジカル、または1つまたは複数の二重結合を有し、2から20個の炭素原子を含む、または環式部分の場合では、3から20個の環員を有する、直鎖もしくは分枝鎖、および環式部分の任意の組み合わせを含むラジカルを意味する。多くの実施形態では、アルケニル基は、2から6個の炭素原子を含む。「アルケニル基」という用語は、最も広義に用いられる。例えば、「(C2〜C8)アルケニル基」という用語は、少なくとも1つの二重結合を有する2から8個の炭素原子を含む直鎖、分枝、および環式炭化水素ラジカルを包含する。適当なアルケニルラジカルの例には、ビニルとしても知られるエテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、tert−ブテニル、1,3−ブタジエニル、n−ペンテニル、n−ヘキセニル、シクロヘキセニルおよび1,3−シクロペンタジエニルなどのシクロアルケニルラジカル、シクロヘキセニルメチルなどのシクロアルケニルアルキルラジカル、メチレンシクロヘキシルなどのアルケニルシクロアルキルラジカルなどが含まれる。
【0043】
アルケニレンは、エテニレン[(−CH=CH−),(−C::C−)]などの2つ以上の位置で結合した炭素−炭素二重結合系を意味する。
【0044】
本明細書では、「アルコキシ」という用語は、アルキルエーテルラジカルを意味し、アルキルという用語は、本明細書で定義する通りである。適当なアルキルエーテルラジカルの例には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、シクロメントキシなどが含まれる。
【0045】
本明細書では、「アルコキシアルコキシ」という用語は、他のアルコキシ基により親分子部分に結合した1つまたは複数のアルコキシ基を意味する。例には、エトキシエトキシ、メトキシプロポキシエトキシ、エトキシペントキシエトキシエトキシなどが含まれる。
【0046】
本明細書では、「アルコキシアルキル」という用語は、アルキル基により親分子部分に結合したアルコキシ基を意味する。「アルコキシアルキル」という用語は、アルキル基に結合した、すなわち、モノアルコキシアルキルおよびジアルコキシアルキル基を形成するために結合した、1つまたは複数のアルコキシ基を有するアルコキシアルキル基をも包含する。
【0047】
本明細書では、「アルコキシカルボニル」という用語は、カルボニル基により親分子部分に結合したアルコキシ基を意味する。かかる「アルコキシカルボニル」基の例には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニルおよびヘキシルオキシカルボニルが含まれる。
【0048】
「アルコキシカルボニルアルキル」という用語は、上記で定義した通り、アルキルラジカルに置換された「アルコキシカルボニル」を有するラジカルを意味する。より好ましいアルコキシカルボニルアルキルラジカルは、上記で定義した通り1から6個の炭素原子に結合した低級アルコキシカルボニルラジカルを有する「低級アルコキシカルボニルアルキル」である。かかる低級アルコキシカルボニルアルキルラジカルの例には、メトキシカルボニルメチルが含まれる。
【0049】
本明細書では、「アルキル」という用語は、直鎖、分枝、もしくは環式アルキルラジカルまたは直鎖、分枝および/または環式ラジカルの任意の組み合わせからなるラジカルを意味し、1〜20個の炭素原子を含む飽和脂肪族炭化水素基である。多くの実施形態では、アルキル基は、1〜10個の炭素原子を含む。多くの他の実施形態では、アルキル基は、1〜6個の炭素原子を含む。「アルキル基」という用語は、最も広義に用いられる。アルキル基は、本明細書で定義する通り、場合によって置換することができる。アルキルラジカルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソアミル、ヘキシル、シクロヘキシル、トランス−1,2−ジ−エチルシクロヘキシル、オクチル、ノニルなどが含まれる。例えば、略語「(C1〜C6)−アルキル基」には、(C3〜C6)−シクロアルキル基ならびに直鎖および分枝アルキル基が含まれ、「O(C1〜C8)−アルキル基」は、直鎖O(C1〜C8)−アルキル基、分枝O(C1〜C6”)−アルキル基、および環式O(C1〜C6)−アルキル基が含まれる。
【0050】
本明細書では、「アルキレン」という用語は、メチレン(−CH2−)、エチレン、および1,3−シクロブチレンなど、2つ以上の位置で結合した直鎖または分枝鎖飽和炭化水素に由来する飽和脂肪族基を意味する。
【0051】
本明細書では、「アルキルアミノ」という用語は、アルキル基により親分子部分に結合したアミノ基を意味する。
【0052】
本明細書では、「アルキルアミノカルボニル」という用語は、カルボニル基により親分子部分に結合したアルキルアミノ基を意味する。かかるラジカルの例には、N−メチルアミノカルボニルおよびN,N−ジメチルカルボニルが含まれる。
【0053】
本明細書では、「アルキリデン」という用語は、炭素−炭素二重結合の1個の炭素原子がアルケニル基が結合した部分に属するアルケニル基を意味する。
【0054】
本明細書では、「アルキルスルフィニル」という用語は、スルフィニル基により親分子部分に結合したアルキル基を意味する。アルキルスルフィニル基の例には、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、ブチルスルフィニルおよびヘキシルスルフィニルが含まれる。
【0055】
本明細書では、「アルキルスルホニル」という用語は、スルホニル基により親分子部分に結合したアルキル基を意味する。アルキルスルフィニル基の例には、メタンスルホニル、エタンスルホニル、tert−ブタンスルホニルなどが含まれる。
【0056】
本明細書では、「アルキルチオ」という用語は、アルキルチオエーテル(R−S−)ラジカルを意味し、アルキルという用語は、上記で定義される通りである。適当なアルキルチオエーテルラジカルの例には、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、エトキシエチルチオ、メトキシプロポキシエチルチオ、エトキシペントキシエトキシエチルチオなどが含まれる。
【0057】
「アルキルチオアルキル」という用語は、アルキルラジカルに結合したアルキルチオラジカルを包含する。アルキルチオアルキルラジカルには、1から6個の炭素原子のアルキルラジカルおよび前述した通りアルキルチオラジカルを有する「低級アルキルチオアルキル」ラジカルが含まれる。かかるラジカルの例には、メチルチオメチルが含まれる。
【0058】
本明細書で最も広義に用いられる通り、「アルキニル」という用語は、直鎖、分枝鎖、または環式不飽和の炭化水素ラジカル、ならびに1つまたは複数の炭素−炭素三重結合を有し、2から20個の炭素原子を含む直鎖、分枝、および/または環式ラジカルの任意の組み合わせを含むラジカルを意味する。多くの実施形態では、アルキニル基は、2から6個の炭素原子を含む。多くの他の実施形態では、アルキニル基は、2から4個の炭素原子を含む。「アルキニレン」は、エチニレン(−C:::C−、−C≡C−)などの2つの位置で結合した炭素−炭素三重結合を意味する。例えば、(C2〜C8)アルキニル基は、少なくとも1つの三重結合を有する2から8個の炭素原子を含む直鎖、分枝、および環式炭化水素鎖を包含し、この用語には、それだけには限らないが、別段の指示がない限り、エチニル、プロピニル、ヒドロキシプロピニル、ブチン−1−イル、ブチン−2−イル、ペンチン−1−イル、ペンチン−2−イル、4−メトキシペンチン−2−イル、3−メチルブチン−1−イル、ヘキシン−1−イル、ヘキシン−2−イル、ヘキシン−3−イル、3,3−ジメチルブチン−1−イルなどの置換基が含まれる。
【0059】
本明細書では、「アミド」という用語は、後述の通りカルボニル基またはスルホニル基により親分子部分に結合したアミノ基を意味する。本明細書では、「Cアミド」という用語は、C(=O)NR2基を意味し、Rは本明細書で定義する通りである。本明細書では、「Nアミド」という用語は、RC(=O)NH基を意味し、Rは本明細書で定義する通りである。
【0060】
本明細書では、「アミノ」という用語は、−NRR’を意味し、RおよびR’は、独立に、水素、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、アリールアルケニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキル、複素環、ヘテロシクロアルケニル、およびヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、アリール、アリールアルケニルのアリール部位、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルケニルのヘテロアリール部位およびヘテロアリールアルキル、複素環、ヘテロシクロアルケニルの複素環部位およびヘテロシクロアルキルは、独立に、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、シアノ、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシ−アルキル、ニトロ、およびオキソからなる群から選択される1、2、3、4または5個の置換基で場合によって置換することができる。
【0061】
本明細書では、「アミノアルキル」という用語は、アルキル基により親分子部分に結合したアミノ基を意味する。例には、アミノメチル、アミノエチルおよびアミノブチルが含まれる。「アルキルアミノ」という用語は、1または2個のアルキルラジカルで置換されているアミノ基を意味する。モノ−またはジアルキル化し、それによって、例えば、N−メチルアミノ、N−エチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノなどの基を形成することができる。
【0062】
本明細書では、「アミノカルボニル」および「カルバモイル」という用語は、アミノ置換カルボニル基を意味し、アミノ基は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルラジカルなどから選択される置換基を含む第または第2アミノ基となり得る。
【0063】
本明細書では、「アミノカルボニルアルキル」という用語は、前述した通り、アルキルラジカルに結合したアミノカルボニルラジカルを意味する。かかるラジカルの例は、アミノカルボニルメチルである。「アミジノ」という用語は、−C(NH)NH2ラジカルを意味する。「シアノアミジノ」という用語は、−C(N−CN)NH2ラジカルを意味する。
【0064】
本明細書では、「アラルケニル」または「アリールアルケニル」という用語は、アルケニル基により親分子部分に結合したアリール基を意味する。
【0065】
本明細書では、「アラルコキシ」または「アリールアルコキシ」という用語は、アルコキシ基により親分子部分に結合したアリール基を意味する。
【0066】
本明細書では、「アラルキル」または「アリールアルキル」という用語は、アルキル基により親分子部分に結合したアリール基を意味する。
【0067】
本明細書では、「アラルキルアミノ」または「アリールアルキルアミノ」という用語は、窒素原子により親分子部分に結合したアリールアルキル基を意味し、窒素原子は、水素で置換されている。
【0068】
本明細書では、「アラルキリデン」または「アリールアルキリデン」という用語は、アルキリデン基により親分子部分に結合したアリール基を意味する。
【0069】
本明細書では、「アラルキルチオ」または「アリールアルキルチオ」という用語は、硫黄原子により親分子部分に結合したアリールアルキル基を意味する。
【0070】
本明細書では、「アラルキニル」または「アリールアルキニル」という用語は、アルキニル基により親分子部分に結合したアリール基を意味する。
【0071】
本明細書では、「アラルコキシカルボニル」という用語は、式アラルキル−O−C(O)−のラジカルを意味し、「アラルキル」という用語は、上述した意義を有する。アラルコキシカルボニルラジカルの例は、ベンジルオキシカルボニル(「Z」または「Cbz」)および4−メトキシフェニルメトキシカルボニル(「MOS」)である。
【0072】
本明細書では、「アラルカノイル」という用語は、ベンゾイル、フェニルアセチル、3−フェニルプロピオニル(ヒドロシンナモイル)、4−フェニルブチリル、(2−ナフチル)アセチル、4−クロロヒドロシンナモイル、4−アミノヒドロシンナモイル、4−メトキシヒドロシンナモイルなどのアリール置換アルカンカルボン酸由来のアシルラジカルを意味する。「アロイル」という用語は、アリールカルボン酸に由来するアシルラジカルを意味し、「アリール」は、以下の意味を有する。かかるアロイルラジカルの例には、ベンゾイル、4−クロロベンゾイル、4−カルボキシベンゾイル、4−(ベンジルオキシカルボニル)ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、6−カルボキシ−2−ナフトイル、6−(ベンジルオキシカルボニル)−2−ナフトイル、3−ベンジルオキシ−2−ナフトイル、3−ヒドロキシ−2−ナフトイル、3−(ベンジルオキシホルムアミド)−2−ナフトイルなどの置換されたおよび非置換のベンゾイルまたはナフトイルが含まれる。
【0073】
本明細書では、「アリール」という用語は、1、2または3つの環を含む炭素環式芳香族系を意味し、かかる環は、ペンダント方式で一緒になって結合してもよく、縮合してもよい。「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、およびビフェニルなどの芳香族ラジカルを包含する。本発明のアリール基は、本明細書で定義する通り基から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で、場合によって置換することができる。
【0074】
本明細書では、「アリールアミノ」という用語は、N−フェニルアミノなど、アミノ基により親部分に結合したアリール基を意味する。
【0075】
本明細書では、「アリールカルボニル」および「アロイル」という用語は、カルボニル基により親分子部分に結合したアリール基を意味する。
【0076】
本明細書では、「アリールオキシ」という用語は、酸素原子により親分子部分に結合したアリール基を意味する。
【0077】
本明細書では、「アリールスルホニル」という用語は、スルホニル基により親分子部分に結合したアリール基を意味する。
【0078】
本明細書では、「アリールチオ」という用語は、硫黄原子により親分子部分に結合したアリール基を意味する。
【0079】
「カルボキシ」または「カルボキシル」という用語は、「カルボキシアルキル」など、単独で用いられても他の用語と共に用いられても−CO2Hを意味する。
【0080】
本明細書では、「ベンゾ」および「ベンズ」という用語は、ベンゼンに由来する二価ラジカルC6H4=を意味する。例には、ベンゾチオフェンおよびベンズイミダゾールが含まれる。
【0081】
本明細書では、「カルバモイルオキシ」という用語は、酸素原子(例えば、RR’NC(=O)O−)により親分子部分に結合したアミノ置換カルボニル基を意味し、アミノ基は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルラジカルなどから選択される置換基を含む1級もしくは2級アミノ基であり得る。
【0082】
本明細書では、「O−カルバミル」という用語は、本明細書で定義する通りRを有する基−OC(O)NR基を意味する。
【0083】
本明細書では、「C−結合」という用語は、炭素−炭素結合により親分子部分に結合される任意の置換基を意味する。
【0084】
本明細書では、「N−カルバミル」という用語は、ROC(O)NH基を意味し、Rは本明細書で定義する通りである。
【0085】
本明細書では、「カルボナート」という用語は、−O−C(=O)OR基を意味し、Rは本明細書で定義する通りである。
【0086】
本明細書では、「カルボニル」という用語は、単独のとき、ホルミル[−C(O)H]を含み、組み合わせたとき、−C(O)−基である。
【0087】
本明細書では、「カルボキシ」という用語は、−C(O)OHまたはカルボン酸塩誘導体もしくはエステル誘導体などの対応する「カルボキシラート」を意味する。「O−カルボキシ」基は、RC(O)O−基を意味し、Rは本明細書で定義する通りである。「C−カルボキシ」基は、−C(O)OR基を意味し、Rは、本明細書で定義する通りである。
【0088】
本明細書では、「シアノ」という用語は、−CN基を意味する。
【0089】
本明細書では、「シクロアルキル」という用語は、飽和したもしくは部分的に飽和した単環式、二環式または三環式アルキルラジカルを意味し、それぞれの環式部分は、3から12個、好ましくは3から7個の炭素原子環員を含み、本明細書で定義する通り、場合によって置換されているベンゾ縮合環系に場合によってなり得る。かかるシクロアルキルラジカルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、オクタヒドロナフチル、2,3−ジヒドロ−1H−インデニル、アダマンチルなどが含まれる。本明細書では、「二環式」および「三環式」は、デカヒドナフタレン、オクタヒドロナフタレンなどの縮合環系、ならびに多環式(多中心性)の飽和もしくは部分的に不飽和のタイプが含まれるものとする。異性体の後者のタイプは、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、カンフルおよびビシクロ[3.2.1]オクタンによって一般に例示される。
【0090】
本明細書では、「シクロアルケニル」という用語は、部分的に不飽和の単環式、二環式もしくは三環式ラジカルを意味し、それぞれの環式部分は、3から12個、好ましくは5から8個の、炭素原子環員を含み、本明細書で定義する通り、場合によって置換されているベンゾ縮合環系に場合によってなり得る。かかるシクロアルケニルラジカルの例には、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロオクタジエニル、−1H−インデニルなどが含まれる。
【0091】
本明細書では、「シクロアルキルアルキル」という用語は、上記で定義した通りシクロアルキルラジカルによって置換されている上記で定義したアルキルラジカルを意味する。かかるシクロアルキルアルキルラジカルの例には、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、1−シクロペンチルエチル、1−シクロヘキシルエチル、2−シクロペンチルエチル、2−シクロヘキシルエチル、シクロブチルプロピル、シクロペンチルプロピル、シクロヘキシルブチルなどが含まれる。
【0092】
本明細書では、「シクロアルケニルアルキル」という用語は、上記で定義した通りシクロアルケニルラジカルによって置換されている上記で定義したアルキルラジカルを意味する。かかるシクロアルケニルアルキルラジカルの例には、1−メチルシクロヘキシ−1−エニル−、4−エチルシクロヘキシ−1−エニル−、1−ブチルシクロペント−1−エニル−、3−メチルシクロペント−1−エニル−などが含まれる。
【0093】
本明細書では、「エステル」という用語は、炭素原子で結合した2つの部分を架橋するカルボニルオキシ−(C=O)O−基を意味する。例には、安息香酸エチル、桂皮酸n−ブチル、酢酸フェニルなどが含まれる。
【0094】
本明細書では、「エーテル」という用語は、炭素原子で結合した2つの部分を架橋するオキシ基を意味する。
【0095】
本明細書では、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0096】
本明細書では、「ハロアルコキシ」という用語は、酸素原子により親分子部分に結合したハロアルキル基を意味する。
【0097】
本明細書では、「ハロアルキル」という用語は、上記で定義した意味を有するアルキルラジカルを意味し、1つまたは複数の水素は、ハロゲンで置き換えられる。具体的に含まれるのは、モノハロアルキル、ジハロアルキル、ペルハロアルキル、およびポリハロアルキルラジカルである。一例としては、モノハロアルキルラジカルは、ラジカルの中でヨード、ブロモ、クロロまたはフルオロ原子を有し得る。ジハロおよびポリハロアルキルラジカルは、同一のハロ原子の2つ以上または異なるハロラジカルの組み合わせを有し得る。ハロアルキルラジカルの例には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、トリクロロエチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ジフルオロクロロメチル、ジクロロフルオロメチル、ジフルオロエチル、ジフルオロプロピル、ジクロロエチルおよびジクロロプロピルが含まれる。「ハロアルキレン」は、2つ以上の位置で結合したハロヒドロカルビル基を意味する。例には、フルオロメチレン(−CHF−)、ジフルオロメチレン(−CF2−)、クロロメチレン(−CHCl−)などが含まれる。かかるハロアルキルラジカルの例には、クロロメチル、1−ブロモエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1,1,1−トリフルオロエチル、ペルフルオロデシルなどが含まれる。
【0098】
本明細書では、「ヘテロアルキル」という用語は、完全飽和のまたは1から3度の不飽和を含む、定まった数の炭素原子ならびにO、N、およびSからなる群から選択される1から3個のヘテロ原子からなる、安定した直鎖もしくは分枝鎖、もしくは環式炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、窒素および硫黄原子は、場合によって酸化することができ、窒素ヘテロ原子は、場合によって、四級化することができる。1個(または複数)のヘテロ原子O、NおよびSは、ヘテロアルキル基の任意の内側の位置に置くことができる。2個までのヘテロ原子は、例えば、−CH2−NH−OCH3など、連続的になり得る。
【0099】
本明細書では、「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個の原子がN、O、およびSからなる群から選択され、残りの環原子が炭素である場合、芳香族5または6員環を意味する。5員環は、2つの二重結合を有し、6員環は、3つの二重結合を有する。ヘテロアリール基は、環の中の置換可能な炭素または窒素原子により親分子基に連結される。「ヘテロアリール」という用語はまた、ヘテロアリール環が、本明細書で定義する通り、アリール基、本明細書で定義する通り複素環基、または追加のヘテロアリール基に縮合される系が含まれる。ヘテロアリールは、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルベンゾトリアゾリル、シンノリニル、フリル、イミダゾリル、トリアゾリル[例えば、4H−1,2,4−トリアゾリル、1H−1,2,3−トリアゾリル、2H−1,2,3−トリアゾリルなど]、テトラゾリル[例えば、1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリルなど]、インダゾリル、インドリル、イソオキサゾリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル[例えば、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリルなど]、オキサゾリル、イソオキサゾリル、プリニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チエノピリジニル、チエニル、チアジアゾリル[例えば、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリルなど]、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、ピリド[2,3−d]ピリミジニル、ピロロ[2,3−b]ピリジニル、キナゾリニル、キノリニル、チエノ[2,3−c]ピリジニル、テトラゾリル、トリアジニルなどによって例示される。本発明のヘテロアリール基は、場合によって、本明細書で定義された基から独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で置換することができる。
【0100】
ヘテロアリール基の例には、それだけには限らないが、チエニル、ベンゾチエニル、フリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、テトラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、およびイソオキサゾリルが含まれる。
【0101】
本明細書では、「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルキル」という用語は、アルキル基により親分子部分に結合したヘテロアリール基を意味する。
【0102】
本明細書では、「ヘテロアラルケニル」または「ヘテロアリールアルケニル」という用語は、アルケニル基により親分子部分に結合したヘテロアリール基を意味する。
【0103】
本明細書では、「ヘテロアラルコキシ」または「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、アルコキシ基により親分子部分に結合したヘテロアリール基を意味する。
【0104】
本明細書では、「ヘテロアラルキリデン」または「ヘテロアリールアルキリデン」という用語は、アルキリデン基により親分子部分に結合したヘテロアリール基を意味する。
【0105】
本明細書では、「ヘテロアリールオキシ」という用語は、酸素原子により親分子部分に結合したヘテロアリール基を意味する。
【0106】
本明細書では、「ヘテロアリールスルホニル」という用語は、スルホニル基により親分子部分に結合したヘテロアリール基を意味する。
【0107】
本明細書では、「ヘテロシクロアルキル」、同義的に「ヘテロシクリル」という用語は、環員として1つまたは複数のヘテロ原子を含む、飽和、部分的に不飽和の、または完全に不飽和の単環式、二環式、もしくは三環式複素環式ラジカルをそれぞれ意味し、それぞれの前記ヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄からなる群から独立に選択することができ、それぞれの環に通常3から8個の環員がある。最も一般的な複素環式環は、5から6個の環員を含む。本発明のいくつかの実施形態において、複素環式環は、1から4個のヘテロ原子を含み;他の実施形態では、複素環式環は、1から2個のヘテロ原子を含む。「ヘテロシクロアルキル」および「複素環」は、スルホン、スルホキシド、三級窒素環員のN−オキシド、および炭素環式縮合およびベンゾ縮合環系を含むものとし、さらに、両方の用語にはまた、複素環が本明細書で定義する通りアリール基または追加の複素環基に縮合される系が含まれる。本発明の複素環基は、アジリジニル、アゼチジニル、1,3−ベンゾジオキソリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロシンノリニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロ[1,3]オキサゾロ[4,5−b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピリジニル、1,3−ジオキサニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、イソインドリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピペリジニル、チオモルホリニルなどによって例示される。複素環基は、特に禁止されない限り、場合によって置換してもよい。
【0108】
本明細書では、「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、アルケニル基により親分子部分に結合した複素環基を意味する。
【0109】
本明細書では、「ヘテロシクロアルコキシ」という用語は、酸素原子により親分子基に結合した複素環基を意味する。
【0110】
本明細書では、「ヘテロシクロアルキルアルキル」という用語は、少なくとも1つの水素原子が、ピロリジニルメチル、テトラヒドロチエニルメチル、ピリジルメチルなど、上記で定義した通りヘテロシクロアルキルラジカルによって置き換えられる、上記で定義したアルキルラジカルを意味する。
【0111】
本明細書では、「ヘテロシクロアルキリデン」という用語は、アルキリデン基により親分子部分に結合した複素環基を意味する。
【0112】
本明細書では、「ヒドラジニル」という用語は、単結合、すなわち、−N−N−によって結合される2個のアミノ基を意味する。
【0113】
本明細書では、「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」という用語は、−OH基を意味する。
【0114】
本明細書では、「ヒドロキシアルキル」という用語は、1から約10個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基を意味し、そのいずれか1つは、1つまたは複数のヒドロキシルラジカルで置換することができる。かかるラジカルの例には、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルおよびヒドロキシヘキシルが含まれる。
【0115】
本明細書では、「ヒドロキシアルキル」という用語は、アルキル基により親分子部分に結合したヒドロキシ基を意味する。
【0116】
本明細書では、「イミノ」という用語は、=N−を意味する。
【0117】
本明細書では、「イミノヒドロキシ」という用語は、=N(OH)および=N−O−を意味する。
【0118】
「主鎖中で」という語句は、基の本発明の化合物への結合点で開始する炭素原子の最も長い隣接するまたは近接する鎖を意味する。
【0119】
「イソシアナト」という用語は、−NCO基を意味する。
【0120】
「イソチオシアナト」という用語は、−NCS基を意味する。
【0121】
「原子の直鎖」という語句は、炭素、窒素、酸素および硫黄から独立に選択される原子の最も長い直鎖を意味する。
【0122】
「低級アルキル」のようなかかる用語として本明細書において用いられる「低級」という用語は、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するものを意味する。
【0123】
本明細書では、「メルカプトアルキル」という用語は、R’SR−基を意味し、RおよびR’は本明細書で定義する通りである。
【0124】
本明細書では、「メルカプトメルカプチル」という用語は、RSR’S−基を意味し、Rは、本明細書で定義する通りである。
【0125】
本明細書では、「メルカプチル」という用語は、RS−基を意味し、Rは、本明細書で定義する通りである。
【0126】
「ヌルの」という用語は、孤立電子対を意味する。
【0127】
本明細書では、「ニトロ」という用語は、−NO2を意味する。
【0128】
「場合によって置換されている」という用語は、先行する基が置換されても置換されなくてもよいことを意味する。「置換されている」は、炭素に結合した1個または複数の水素原子が、「置換基」によって置き換えられていることを意味する。「場合によって置換されている」という用語の範囲内に含まれるまたはそれらによって考えられる置換基は、C1〜3アルキル、C3〜6シクロアルキル、C1〜3アルコキシ、ヒドロキシ、C1〜3アルカノイル、C1〜3アルコキシカルボニル、ハロ、フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンゾイル、ピリジル、アミノ、C1〜3アルキルアミノ、アミド、C1〜3アルキルアミド、シアノ、C1〜3ハロアルキル、およびC1〜3ペルハロアルキルである。2つの置換基は、メチレンジオキシ、またはエチレンジオキシなどの0から3個のヘテロ原子からなる縮合された4−、5−、6−、もしくは7員炭素環式または複素環式環を形成するために一緒になって結合することができる。場合によって置換されている基は、非置換(例えば、−CH2CH3)、完全に置換されている(例えば、−CF2CF3)、一置換されている(例えば、−CH2CH2F)または完全に置換されているおよび一置換されている(例えば、−CH2CF3)の間のどこかで、あるレベルで置換されていてよい。置換基が置換に関して資格を有さず列挙される場合、置換および非置換の形態は包含される。置換基が「置換されている」資格がある場合、置換された形態は、特に意図される。すべてのペンダントアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクロ部分は、上に挙げた基から独立に選択される、1、2、3、4または5個の置換基で場合によってさらに置換することができる。
【0129】
本明細書では、「オキシ」または「オキサ」という用語は、−O−を意味する。
【0130】
本明細書では、「オキソ」という用語は、二重に結合された酸素=Oを意味する。
【0131】
「ペルハロアルコキシ」という用語は、水素原子のすべてがハロゲン原子によって置き換えられるアルコキシ基を意味する。
【0132】
本明細書では、「ペルハロアルキル」という用語は、すべての水素原子がハロゲン原子によって置き換えられるアルキル基を意味する。
【0133】
本明細書では、「ホスホン酸塩」という用語は、GおよびG1がH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールなどから選択される、−P(=O)(OG)(OG1)基を意味する。
【0134】
本明細書では、「ホスフィナート」という用語は、GおよびG1がH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールなどから選択される、−P(=O)(G)(OG1)基を意味する。
【0135】
本明細書では、「スルホン酸塩」、「スルホン酸」および「スルホン基の」という用語は、−SO3H基を意味し、スルホン酸としてのその陰イオンは、塩形成に用いられる。
【0136】
本明細書では、「スルファニル」という用語は、−Sおよび−S−を意味する。
【0137】
本明細書では、「スルフィニル」という用語は、−S(O)−を意味する。
【0138】
本明細書では、「スルホニル」という用語は、−SO2−を意味する。
【0139】
「N−スルホンアミド」という用語は、RS(=O)2NH基を意味し、Rは本明細書で定義する通りである。
【0140】
「S−スルホンアミド」という用語は、S(=O)2NR2基を意味し、Rは本明細書で定義する通りである。
【0141】
本明細書では、「チア」および「チオ」という用語は、−S−基またはエーテルを意味し、酸素は、硫黄で置き換えられる。チオ基の酸化型の誘導体、すなわちスルフィニルおよびスルホニルは、チアおよびチオの定義に含まれる。
【0142】
本明細書では、「チオエーテル」という用語は、炭素原子で結合した2つの部分を架橋するチオ基を意味する。
【0143】
本明細書では、「チオール」という用語は、−SH基を意味する。
【0144】
本明細書では、「チオカルボニル」という用語は、単独のとき、チオホルミル−C(S)Hを含み、組み合わせたとき、−C(S)−基である。
【0145】
「N−チオカルバミル」という用語は、ROC(S)NH−基を意味し、Rは本明細書で定義する通りである。
【0146】
「O−チオカルバミル」という用語は、本明細書で定義する通りRを有する基、−OC(S)NRを意味する。
【0147】
「チオシアナト」という用語は、−CNS基を意味する。
【0148】
「トリハロメタンスルホンアミド」という用語は、X3CS(O)2NR−基を意味し、Xは、ハロゲンであり、Rは本明細書で定義する通りである。
【0149】
「トリハロメタンスルホニル」という用語は、Xがハロゲンである、X3CS(O)2−基を意味する。
【0150】
「トリハロメトキシ」という用語は、Xがハロゲンである、X3CO−基を意味する。
【0151】
本明細書では、「三置換シリル」という用語は、置換アミノの定義の下で本明細書に示された基を有する、その3つの自由原子価で置換されたシリコーン基を意味する。例には、トリメチシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリルなどが含まれる。
【0152】
本明細書では、「尿素」という用語は、−N(R)C(=O)N(R)(R)を意味し、Rは本明細書で定義する通りである。
【0153】
「担体」という用語は、最も広義に用いられる。例えば、担体という用語は、任意の担体、賦形剤、添加剤、湿潤剤、緩衝剤、懸濁化剤、潤滑剤、アジュバント、ビヒクル、送達系、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色料、香料、および甘味剤を意味する。いくつかの実施形態において、担体は、「薬学的に許容される担体」という用語が、医薬組成物中で使用するために適しているはずである非毒性を意味するため、担体よりも狭義の用語である、薬学的に許容される担体となり得る。
【0154】
本発明はまた、薬学的に許容される担体中で、本発明の少なくとも1つの化合物の有効量を含む医薬組成物に関する。
【0155】
有効量という用語は、最も広義に用いられる。例えば、この用語は、所望の効果をもたらすために必要とされる量を意味する。
【0156】
一実施形態では、本発明は、ウイルスの血球凝集素の成熟を標的にし、現在利用可能な抗インフルエンザ薬によって得られるのと異なる段階で、感染性ウイルス粒子の産生を妨害するための機会を提供する。他の実施形態では、本発明は、式Iの化合物の有効量を投与することによってヒトおよび他の哺乳動物におけるウイルス感染症を治療および予防する方法を提供または企図する。1つのかかる化合物は、慢性C型肝炎の治療について米国および海外で第II相臨床試験を現在行っている感染性胃腸炎の治療のための、米国において承認済みの生成物である、ニタゾキサニド(1)である。薬物は、1年にわたって投与されるとき、安全かつ有効であることが示されており、第II相臨床試験は、将来は任意の期間でインフルエンザの治療において開始することができる。臨床試験では、ロタウイルス性胃腸炎および慢性B型およびC型肝炎を治療することにおけるニタゾキサニドの市販の医薬製剤の活性が最近実証されている。
【化1】

【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】チアゾリドが侵入後レベルで作用するA型インフルエンザウイルスの複製を阻害することを示す図である。
【図2】チゾキサニドがインフルエンザの血球凝集素成を選択的に変更することを示す図である
【図3】チアゾリドが、ウイルス血球凝集素Nグリコシル化に干渉することを示す図である。
【図4】チゾキサニドが、EndoH−感受性段階でHA成熟をブロックすることを示す図である。
【図5】チゾキサニドが、インフルエンザ血球凝集素の細胞表面への運搬を阻害することを示す図である。
【図6】A型インフルエンザに対する3つの濃度のザナミビルおよび0.1ug/mLのニタゾキサニドと組み合わせたザナミビルの抗ウイルス活性を示す図である。
【図7】A型インフルエンザに対する3つの濃度のザナミビルおよび1.0ug/mLのニタゾキサニドと組み合わせたザナミビルの抗ウイルス活性を示す図である。
【図8】A型インフルエンザに対する3つの濃度のオセルタミビルおよび0.1ug/mLのニタゾキサニドと組み合わせたオセルタミビルの抗ウイルス活性を示す図である。
【図9】A型インフルエンザに対する3つの濃度のオセルタミビルおよび1.0ug/mLのニタゾキサニドと組み合わせたオセルタミビルの抗ウイルス活性を示す図である。
【図10】A型インフルエンザおよびB型ウイルスに対するチゾキサニドの抗ウイルス活性を示す図である。
【図11】チゾキサニドが、ヒト低密度リポタンパク質受容体(LDLR)原形質膜標的指向化に影響を与えないことを示す図である。
【図12】ニタゾキサニドが、インフルエンザ様疾患に伴う症状を解消することができることを示す図である。
【図13】7日の理学的検査データを示す図である。ニタゾキサニドは、その後インフルエンザ様疾患に伴う呼吸器症状を低減する。
【図14】試験後の抗生物質の使用を示す図である。
【図15】日毎の組織収集物の重量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0158】
実験手順
材料および方法
材料
ニタゾキサニド(NTZ、I)、チゾキサニド(TIZ、2)、およびチアゾリド類似体および参照化合物スウェインソニン(SW)(Sigma−Aldrich)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。ツニカマイシン(TM)および1−デオキシマンノジリマイシン(DMJ)(Sigma−Aldrich)を水溶液に溶解した。

インフルエンザ試験の方法
細胞培養、治療および形質移入−メイディン−ダービーイヌ腎臓(MDCK)細胞、およびヒトA549肺胞II型様上皮細胞、ジャーカットTリンパ芽球様細胞およびU397単球性白血病細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)、2mMグルタミンおよび抗生物質を補充したRPMI 1640(Invitrogen)中でCO2 5%の雰囲気で37℃で増殖させた。試験化合物を、1時間の吸収期間の直後に加え、別に指定されない限り、実験の時間全体で培養培地中で保持した。対照には、等量のビヒクルを投与し、これは、細胞生存率またはウイルス複製に影響を与えなかった。細胞生存率を、前述の通りMTTホルマザン転換アッセイ(Sigma−Aldrich)への3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)によって決定した。擬似感染したもしくはウイルス−感染細胞の顕微鏡検査を、Leica DM−IL顕微鏡を用いて行い、画像を、Leica Image−Manager500ソフトウェアを用いたLeica DC 300カメラで取り込んだ。
【0159】
形質移入実験について、LabTekIIカバーガラスチャンバー(Nunch−Thermo Fisher Scientific Inc.)に播種したMDCK細胞を、製造業者の指示によりLipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、緑色蛍光タンパク質(GFP)タグ付き内部移行欠損ヒト低密度リポタンパク質受容体(hLDLR)変異体(E.Rodriguez−Boulan、Cornell University New York、NYによって快く提供されたLDLR−A18−GFPプラスミド)で一時的に形質移入した。
【0160】
ウイルス調製、感染および滴定−4種の異なるA型インフルエンザウイルス、哺乳動物のH1N1 A/PR/8/34(PR8)およびA/WSN/33(WSN)、およびH3N2 A/Firenze/7/03(A/FI)、およびH5N9低病原性トリ株A/Ck/It/9097/97(A/Ck)、ならびにインフルエンザB型ウイルス、B/Parma/3/04臨床分離株を、本試験のために利用した。A/Firenze/7/03、A/Ck/It/9097/97およびB/Parma/3/04インフルエンザウイルスは、Dr.Isabella Donatelli、Istituto Superiore di Sanita’、Rome、Italyからの親切な寄贈品であった。トリ株A/Ck/It/9097/97を、10日齢特定病原体除去の(SPF)胚発育鶏卵中でニワトリ臓器ホモジネートの初期継代後に単離した。A型インフルエンザウイルスを、8日齢胚発育卵の尿膜腔中で成長させた。37℃で48時間後、尿膜腔液を回収し、5000rpmで30分間遠心して細胞細片を除去し、ウイルス力価を、標準手順に従って血球凝集素滴定およびプラークアッセイによって決定した。コンフルエントな細胞単層を、別に指定されない限り、5HAU/105細胞の感染多重度(m.o.i.)で37℃で1時間インフルエンザウイルスに感染させた。吸着期間後(時間0)、ウイルス接種物を除去し、細胞単層をリン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄した。細胞を2%ウシ胎児血清を含むRPMI 1640培養培地中で37℃で維持した。多段階ウイルス成長曲線について、感染細胞を、1μg/mlトリプシンIX(Sigma−Aldrich)を含む同じ培地中でインキュベートした。ウイルス収率を、血球凝集素滴定により感染後(p.i.)24もしくは48時間決定した。PR8ウイルス感染性アッセイについて、96−穴プレートで成長したMDCK細胞を、1μg/mlトリプシンの存在下で48時間37℃でウイルス懸濁液の連続希釈で接種し、TCID50(50%組織培養感染量)を記載の通り決定した。あるいは、ウイルス力価を、MDCK細胞上で感染後の蛍光細胞数をカウントするおよび抗インフルエンザA/PR/8/34抗体(抗−PR8、E.Rodriguez−Boulan、Cornell University New York、NYから親切な寄贈品)で間接免疫蛍光染色することにより決定した。力価を、対応するように、ffu(蛍光形成単位)/mlとして表した。
【0161】
代謝性標識、タンパク質合成の分析およびウエスタンブロット
擬似感染した細胞またはインフルエンザウイルス感染細胞を、メチオニン/システイン除去培地中で30分の飢餓の後、指示された時間に[35S]−メチオニン−システイン([35S]−Met/Cys、Redivue Pro−Mix 35S in vitro cell−labeling mix;GE Healthcare)10μCi/mlで標識した。パルス/チェイス実験について、細胞を、メチオニン/システイン除去培地中で30分の飢餓の後15分間[35S]−Met/Cys(100μCi/ml)で標識した。パルスの終了時、細胞を、TIZの非存在もしくは存在下で異なる時間に10mM冷メチオニンおよび1mMシクロヘキシミドを含む完全培地中で追跡した。パルス/チェイスを氷の上で細胞を置くことにより終了させた。1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)およびプロテアーゼ阻害薬カクテル(PIC;Roche Diagnostics GmbH)を含むRIPA緩衝液(150mM NaCl、10mM トリス−HCl pH7.5、4mM EDTA、1%Triton X−100、600mM KCl)中で細胞溶解後、同量の放射能を含むサンプルを、SDS/PAGE(3%濃縮ゲル、10%分離ゲル)によって分離し、記載した通り、オートラジオグラフィー用に処理した。オートラジオグラフィーのパターンを視覚化し、Typhoon−8600 Imager(Molecular Dynamics、Amersham Pharmacia Biotech)において定量化し、画像をImageQuantソフトウェア(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて得た(MDP分析)。
【0162】
ウイルス粒子に取り込まれたタンパク質の分析について、ウイルス吸着後のTIZ、TMまたはビヒクルで処理した、PR8感染したもしくは擬似感染したMDCK細胞を、p.i.3時間目に薬物の存在下で[35S]−Met/Cys(25μCi/ml、21h−パルス)で標識した。p.i.24時間目に、細胞培養上清を回収し、10分間13,000rpmで遠心にかけて、細胞細片を除去し、次いで、45,000rpm(Beckman XL−100K Ultracentrifuge、rotor 70.1Ti;Beckman Coulter Inc.)で2時間超遠心をかけた。ウイルス粒子を含むペレットを、Laemmliサンプル緩衝液に再懸濁し、放射能標識したウイルスタンパク質を、10%SDS−PAGEで分離し、Amplify(商標)Fluorographic Reagent(GE Healthcare)に曝露後、オートラジオグラフィーによって調べた。オートラジオグラフィーのパターンを、前述した通り視覚化した。
【0163】
ウエスタンブロット分析については、細胞を、2mM ジチオスレイトール(DTT)、1mM PMSF、1mM オルトバナダート、20mM β−グリセロリン酸塩、1mM p−ニトロフェニルリン酸(pNPP)およびPICを含む冷高塩抽出(HSB)緩衝液で溶解した、または1mM PMSFおよびPICを含むRIPA緩衝液で溶解した。全細胞抽出物(30μg)を、SDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロースにブロットし、フィルターを、ポリクローナル抗ホスホSer51−eIF2α(p−eIF2α、Calbiochem)、抗eIF2α(FL−315、Santa Cruz Biotechnology)、および抗インフルエンザA/PR/8/34抗体またはモノクローナル抗HA(IVC102;Biodesign Inc.)および抗−Grp78/BiP(Stressgene)抗体と共にインキュベートし、その後、ペルオキシダーゼ標識された抗ウサギIgGまたは抗マウスIgG(Super Signal検出キット;Pierce)で修飾した。タンパク質の定量的評価を、BIO−RAD Laboratoriesにより入出可能なQuantity Oneソフトウェアプログラムを用いたVersadoc−1000分析により決定した。
【0164】
ウイルス吸着後10μg/ml TIZまたは対照賦形剤で処理したHA0 PR8感染もしくは擬似感染したMDCK細胞の免疫沈降を、p.i.5もしくは6時間目にメチオニン/システイン除去培地中で30分の飢餓の後に[35S]−Met/Cys(70μCi/ml、4h−パルス)で標識した。PICおよび1mM PMSFの存在下でRIPA緩衝液中に溶解後、細胞細片を、13,000rpmで10分間冷却遠心によって除去した。放射能標識したライセート(50μl)を、1mM PMSF、PICおよびタンパク質−A−セファロース(Sigma−Aldrich)を含むRIPA緩衝液中で抗HAモノクローナル抗体(IVC102;Biodesign Inc.)で4℃で16時間インキュベートした。遠心後、ペレットを、RIPA緩衝液で3回洗浄し、Laemmliサンプル緩衝液(20)中で95℃で5分間溶出させた。免疫沈降したサンプルを、Endo−H消化(後述の通り)にかけ、かつ/またはAmplify(商標)Fluorographic試薬に曝露後、SDS/PAGE(3%濃縮ゲル、10%分離ゲル)およびオートラジオグラフィー用に処理した。オートラジオグラフィーのパターンを、Typhoon−8600 Imagerにおいて視覚化し、画像を前述した通りに得た。
【0165】
血球凝集素グリコシル化、三量体形成およびプロセシングの分析 擬似感染した細胞またはインフルエンザウイルス感染細胞を、[3H]−マンノースまたは[3H]−グルコサミン塩酸塩(GE Healthcare)20μCi/mlでp.i.6時間目に4時間標識し、次いで、前述した通りSDS/PAGE(3%濃縮ゲル、10%分離ゲル)およびオートラジオグラフィー用に処理した。エンドグリコシダーゼ消化実験について、MDCK細胞を、PR8インフルエンザウイルスに感染させ、洗浄して未結合のウイルスを除去し、10μg/ml TIZの存在または非存在下でインキュベートした。p.i.5時間目に、細胞を、メチオニン/システイン除去培地中で30分の飢餓の後[35S]−Met/Cys(50μCi/ml、4h−パルス)で標識した。パルスの終了時、放射活性培地を除去し、細胞を氷の上に置いた。PICおよび1mM PMSFの存在下でL緩衝液(100mM NaCl、10mM トリス−HCl pH7.5、5mM EDTA、1% Triton X−100、0.1% SDS)に溶解、および13,000rpmで10分間冷遠心後、同量の放射能を含むサンプルを、エンドグリコシダーゼH(Endo−H)またはペプチドN−グリコシダーゼF(PNGase−F)消化用に処理した。Endo−H消化の場合に、(前述した通り)抗HAモノクローナル抗体で免疫沈降したサンプルまたは免疫沈降していないサンプルを、100mM クエン酸ナトリウム(pH5.5)中の0.1%SDSおよび140mM β−メルカプトエタノール100μl中でインキュベートし、95℃で5分間加熱した。1mM PMSFおよびPICの添加後、サンプルを2等分のアリコートに分け、一方のアリコートを、5mU Endo−H(Roche Diagnostics GmbH)で37℃で16時間インキュベートした。ペプチドN−グリコシダーゼ消化を、製造業者のプロトコール(New England BioLabs Inc.)に従ってPNGase−F 500Uで行った。消化を、Laemmliサンプル緩衝液を加えて終了させた。サンプルを、10% SDS−PAGEゲル上に添加する前に95℃で5分間加熱した。三量体形成の分析について、HAの架橋を、0.2mM EGS[エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシナート);Pierce]を含むDMSOの容積1:10を擬似感染したMDCK細胞およびPR8感染したMDCK細胞から得られた全細胞抽出物に加えることにより行った。22℃で15分後に、反応を、最終濃度75mMでグリシンを加えて急冷し、サンプルをSDS−PAGE(6%分離ゲル)にかけた。HA架橋生成物を、モノクローナル抗HA抗体またはポリクローナル抗PR8で探索することにより視覚化した。
【0166】
免疫蛍光顕微鏡法 カバーガラスで成長したPR8感染したMDCKおよびWSN感染したA549細胞を、リン酸緩衝食塩水中の4%パラホルムアルデヒドでそれぞれp.i.16時間目または24時間目に室温で20分間固定した。擬似感染細胞を同様に処理した。固定された細胞を抗HAモノクローナル抗体(IVC102;Biodesign Inc.)と共に原形質膜染色用に37℃で1時間インキュベートした、または0.1% TritonX100−PBSで10分間室温で透過させ、次いで、モノクローナル抗HAおよび抗p230トランス−ゴルジ(clone 15;BD Biosciences)またはポリクローナル抗α−チューブリン(11H10;Cell Signaling、Technology Inc.)抗体と共に1時間37℃でインキュベートし、その後、Alexa Fluor488共役(Molecular Probes−Invitrogen)またはローダミン共役(Pierce)ヤギ抗−マウスIgG、およびローダミン共役ヤギ抗ウサギIgG(Pierce)で修飾した。核を、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)またはHoechst 33342(Molecular Probes−Invitrogen)で染色した。画像を取り込み、SoftWoRx−2.50ソフトウェア(Applied−Precision)を用いてDeltaVision顕微鏡(Applied−Precision)で畳み込みを解いた。対照インキュベーションは、抗免疫グロブリン複合体間の、または抗免疫グロブリン複合体と不適切な一次抗体との非交差反応性を実証した。類似の結果を有する3つのうち代表的な実験を示す。
【0167】
ヒト低密度リポタンパク質受容体(hLDLR)の原形質膜標的指向化の検出について、カバーガラスチャンバーに蒔いたMDCK細胞を、GFPタグ付き内部移行欠損hLDLR変異体(LDLR−A18−GFPプラスミド)で一時的に形質移入し、8時間後、TIZ(10μg/ml)またはビヒクルで次の16時間処理した。タンパク質合成を100μg/mlシクロヘキシミド(Sigma−Aldrich)で1時間遮断した後、原形質膜を、CellMask(商標)Orange原形質膜染色(Molecular Probes、Invitrogen)を用いて染色した。染色後、細胞をUV励起フィルターを備えたLeica DM−IL蛍光顕微鏡を用いて試験した。画像をLeica Image−Manager500ソフトウェアを用いたLeica DC−300カメラで取り込んだ。
【0168】
血球吸着アッセイ−擬似もしくはPR8感染したMDCK細胞単層を、ウイルス吸着後、TIZ、TMまたはビヒクルで処理した。p.i.5時間目に、細胞を、PBSで3回洗浄し、PBS中で20分間4℃でヒト赤血球(RBC)0.1%でインキュベートしてノイラミニダーゼ活性を阻害した。PBSで3回洗浄することにより未結合の赤血球を除去してから、MDCK細胞表面で吸着したRBCを位相差顕微鏡により検出した。画像を、Leica Image−Manager500ソフトウェアを用いたLeica DC300カメラを装備したLeica DMLB顕微鏡で取り込んだ。粘着性の赤血球を、150mM NH4Cl緩衝液に室温で2時間溶解し、ヘモグロビン吸光度をλ=540nmで測定することにより定量化した。
【0169】
統計分析−統計分析を、独立データのためのスチューデントt検定を用いて行った。データを、複製サンプルの平均+S.D.として表す。<0.05のp値を有意とみなした。
【0170】
結果
A型インフルエンザウイルスの異なる株に対するチアゾリドの抗ウイルス活性。チアゾリド治療の効果を、ヒトおよびイヌの細胞において、A型インフルエンザウイルスの4種の異なる株、すなわち、哺乳動物のH1N1 A/PR/8/34(PR8)およびA/WSN/33(WSN)、およびH3N2 A/Firenze/7/03(A/FI)ウイルス、およびH5N9低病原性トリ株A/Ck/It/9097/97(A/Ck)による感染後に観察した。PR8、WSNまたはA/Ckインフルエンザウイルスに感染したメイディン−ダービーイヌ腎臓(MDCK)細胞を、ウイルス吸着期間の直後にNTZ、TIZまたはビヒクルの異なる濃度で処理し、ウイルス収率を、感染後(p.i.)24時間目に決定した。NTZ治療は、PR8、WSNおよびA/CkウイルスについてEC50がそれぞれ1、0.5および1μg/mlであるウイルス複製の用量依存阻害をもたらした(図1B)。TIZは、EC50が1μg/ml(PR8)および0.5μg/ml(WSNおよびA/Ck)であるすべてのインフルエンザA株に対して等しく活性であった(図1B)。TIZは、H3N2 A/FIA型インフルエンザおよびB/Parma/3/04インフルエンザB型ウイルスの複製の阻害においてやはり非常に有効であった(図10および図11)。NTZもTIZも、非感染性細胞についての有効な抗ウイルス薬濃度(CC50>50μg/ml)で細胞毒性でなかった。インフルエンザウイルス試験のために通常用いられるイヌMDCK細胞に加えて、TIZは、単球性U937,T−リンパ球性ジャーカットおよび肺胞II型様A549細胞を含めたヒト細胞の異なるタイプで、μM以下(EC50=0.3μg/ml)の非毒性濃度でA型インフルエンザウイルス複製を阻害するのに有効であった(図1C)。TIZの抗インフルエンザ活性は、感染のm.o.i.と無関係であり、H1N1 PR8ウイルス複製の劇的な遮断は、多段階および一段階ウイルス成長の条件下で等しく検出された(図10C、D)。PR8A型インフルエンザウイルス対するいくつかのチアゾリドの抗ウイルス活性を、表1に収集する。試験されたチアゾリドのうち、NTZ(1)、TIZ(2)、チゾキサニドナトリウム塩(3)、化合物14〜16、27、28、36および37は、強力かつ選択的であることが判明した。化合物27および28は、非常に選択的であり、NTZおよびTIZよりも10倍強力であり、それぞれがEC50=0.1μg/mlおよびCC50>50μg/mlであった。
表1は、チアゾリドについてのA型インフルエンザ細胞アッセイから得られたデータを示す。
【表1−1】


【表1−2】

【0171】
チアゾリドは、侵入後レベルで作用する。ウイルス吸着前のチアゾリド処理が宿主細胞をウイルス感染症から保護できるか否かを観察するために、MDCK細胞を10μg/ml TIZで12時間、6時間または3時間処理した。指示された時間で、薬物を除去し、PR8ウイルスに感染前に細胞単層を3回洗浄した。図1D(前)に示す通り、ウイルス感染症前の12時間までの細胞のチゾキサニド(2)前処理は、インフルエンザウイルス複製に対して影響しなかった。さらに、ウイルス接種物(データ未掲載)の処理または吸着期間中細胞のみの処理は、ウイルス複製を阻害せず(図1D)、薬物がウイルス感染性にも、標的細胞へのその結合または侵入へも直接影響を与えないことが示された。p.i.0から3時間の間で開始したTIZ処理は、ウイルス複製を阻害するのに最も有効であった(図1D、後)。p.i.6時間目に開始した治療は、有効性に欠けるが、やはり、ウイルス複製を阻害することができ、p.i.12時間目に投与したとき薬物は無効であった。ウイルス吸着後の薬物の単回投与は、感染後少なくとも48時間ウイルス複製を阻害するのに有効であった(図1E)。
【0172】
チアゾリドは、ウイルスの血球凝集素成熟を選択的に変更させる。チアゾリドの抗インフルエンザ活性がタンパク質合成の変更によって引き起こされたか否かを観察するために、ウイルス吸着後すぐにTIZで処理した、擬似感染細胞またはPR8感染細胞を、[35S]−メチオニン−システイン([35S]−Met/Cys)でp.i.の異なる時間で標識し、タンパク質を、SDS/PAGEおよびオートラジオグラフィー、またはウエスタンブロット分析によって分析した。図2Aで示される通り、TIZは、宿主タンパク質合成を阻害せず(下部)、合成されたポリペプチドの電気泳動パターンにおける検出可能な変更をもたらさず(上部);さらに、TIZは、非感染性細胞またはPR8感染細胞中で真核生物翻訳開始因子2α(eIF2−α)(中央)のリン酸化に影響を与えなかった。主なインフルエンザウイルスタンパク質を、p.i.4時間目に開始する未処理の細胞中で大量に合成することが判明し;インフルエンザウイルスタンパク質合成の主な変化は、およそ79kDa分子量のバンドの消失を除いて、処理された細胞中で検出され、続いて、血球凝集素前駆体の成熟したアイソフォーム、および74kDaの高速遊走性のバンドの同時の出現として同定された(図2A)。
【0173】
TIZ−治療がHA合成を選択的に変更するか否かを決定するために、TIZ(10μg/ml)で処理した擬似感染したもしくはPR8感染したMDCK細胞を、p.i.5時間目に代謝的に標識し(4時間パルス)、放射能標識したタンパク質を、抗血球凝集素モノクローナル抗体で免疫沈降し、次いで、SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィー用に処理した。図2Bに示したデータは、電気泳動の移動度がウイルスHA0前駆体としてTIZによって変更されるタンパク質を同定する。TIZ誘導HA0修正が一時的であったか否かを決定するために、TIZ(10μg/ml)もしくはN−グリコシル化阻害薬ツニカマイシン(TM、5μg/ml)で処理された、擬似感染したまたはPR8−感染したMDCK細胞を、p.i.3時間目に次の15時間、代謝的に標識し、タンパク質をSDS/PAGEおよびオートラジオグラフィーにより分析した。あるいは、PR8感染細胞をp.i.5時間目に標識し、次いで、次のp.i.3時間10mM冷メチオニンおよび1mMシクロヘキシミドの存在下で追跡した。図2Cに示される通り、TIZ誘導HA0翻訳後の修正は、やはりp.i.18時間目に明らかであり、2つのHA0形態の異なる電気泳動の移動度パターンによって指示される通り、TM誘導変更と異なると思われ;さらに、TMは、HA0蓄積の減少をもたらし、前述のように、長期のTIZ処理は、感染細胞中の細胞内のHA0レベルを低下させなかった。TMとは異なって、TIZは、MDCK細胞中の折り畳まれていないタンパク質応答のマーカーであるグルコース調節ストレスタンパク質Grp78/BiPの発現を誘導しなかった(図2C)。チェイス実験から得られた結果は、未治療の細胞中でHA0が合成後10から20分で成熟した79kDa形態になったものを示し、TIZの存在下で、緩徐遊走性の74kDaHA0形態が開始して合成した後(30分)に現れ(図2D)、電気泳動の移動度のさらなる変化は、次の2.5時間で検出できなかった(データ未掲載)。
【0174】
TIZがHA0グリコシル化を阻害しているか否かを決定するために、PR8感染細胞を、ウイルス吸着後にTIZまたはツニカマイシンで処理し、p.i.6時間目に、[35S]−Met/Cys、[3H]−グルコサミンまたは[3H]−マンノースで標識した。図3Aに示される通り、TMは、HA0グリコシル化を完全に防止し、TIZによる処理は、グルコサミンを減少させず、未成熟のHA0形態へのマンノース取り込みを実際に増加させた。しかし、チアゾリドは、2つの阻害薬で処理した細胞中に存在するHA0形態に比べて、TIZ誘導未成熟HA0の異なる電気泳動の移動度によって示される通り、α−マンノシダーゼI、1−デオキシマンノジリマイシン、およびα−マンノシダーゼII、スウェインソニンの阻害薬と異なって作用すると思われる(図3B)。
【0175】
HA成熟が宿主細胞グリコシル化機構およびウイルス株に影響されることは公知である。記載されたHA0変更がPR8ウイルスに特異的であったか細胞依存であったかを決定するために、ヒト肺上皮A549細胞をA型インフルエンザヒトWSN株に感染させ、MDCK細胞をトリA/Ck株に感染させた。両方の場合では、PR8株について記載されたものと類似のHA0成熟の変更を検出し(図3、CおよびD)、TIZが独立に宿主細胞およびA型インフルエンザ株のタイプのHA0成熟を阻害することができることを示した。最後に、図3、EおよびFに示される通り,ニタゾキサニドは、ヒト(E)およびトリ(F)インフルエンザウイルスの血球凝集素の類似の変化をもたらした。
【0176】
チゾキサニドは、細胞膜へのHA運搬を阻害し、宿主細胞からウイルスが出るのを防ぐ。他の細胞表面糖タンパク質のようなHAのグリコシル化を、「高マンノース」オリゴ糖を加え、ERにおいて開始する。マンノースに富んだ糖成分は、細胞表面への運搬中ゴルジ装置で処理され、末端グリコシル化は、ゴルジ装置のトランス槽で生じる。TIZがゴルジによるHA0通過に影響を与え得るか否かを観察するため、本発明者らは、放射能標識したタンパク質のアリコートおよびHA0免疫沈降したサンプルを、末端的にグリコシル化されていないN結合型糖鎖を除去する酵素である、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼH(Endo−H)で、または全N−グリカンを除去する酵素である、ペプチドN−グリコシダーゼF(PNGase−F)で消化させた。予想通り、タンパク質の両方の形態は、PNGase−F消化に感受性があるが;対照細胞から得られたHA0を、最後にグリコシル化(glysosylated)しEndo−H抵抗性になり、TIZで処理された細胞から得られたHA0は、合成後4時間までプロテアーゼによる消化に依然として感受性があった(図4、AおよびB)。図4Cに示される通り、TIZ誘導変更は、三量体を形成するHA0能力を防止しなかった。
【0177】
Endo−H抵抗性の獲得が、シスおよび中間のゴルジコンパートメントへの運搬のためのマーカーであるため、これらの結果は、TIZ誘導変更が、ERとゴルジ複合体との間のHA0輸送をブロックすることができ、原形質膜へのその運搬を防止するということが示される。トランス−ゴルジコンパートメントへの運搬の阻害を、特異的トランス−ゴルジ抗体を用いた免疫蛍光によって実際に検出した(図4D)。成熟したウイルス粒子を出さないようにする宿主細胞原形質膜へのHA運搬を阻害したTIZ処理を確認するため、擬似感染したおよびPR8−感染したMDCK細胞を、ウイルス吸着後にTIZ(10μg/ml)またはツニカマイシン(5μg/ml)で処理し、細胞質(図5A)および原形質膜(図5B)ウイルス血球凝集素のレベルを、p.i.16時間目に免疫蛍光によって検出した。これらの試験は、TIZ処理細胞におけるHA0細胞質レベルが対照に類似し(図5A)、ウイルスタンパク質の原形質膜レベルは、TIZ処理細胞を劇的に減少させたことが確認された(図5B、上部)。TIZ処理後のHA原形質膜レベルの相当な減少を、受容体−結合(赤血球の血球吸着)アッセイによる原形質膜取り込みHAの生物学的機能を決定することによりさらに確認した(図5B、下部)。平行試験では、MDCK細胞の、GFPタグ付き内部移行欠損ヒト低密度リポタンパク質受容体変異体(LDLR−A18−GFPプラスミド)による一時的な形質移入後、TIZがLDLRの原形質膜標的指向化を阻害しなかったことが判明し、チアゾリドの選択的効果を示唆した(図11)。類似の結果を、MDCK細胞およびHEK−293細胞の、異なる原形質膜細胞の糖タンパク質、ヒトToll様受容体−4による一時的な形質移入後に得た(データ未掲載)。
【0178】
平行サンプルでは、擬似感染細胞およびPR8感染細胞を、次の21時間p.i.3時間目に[35S]−Met/Cysで代謝的に標識し、放射能標識したビリオンを、感染細胞の上澄みから精製した。ウイルス粒子に取り込まれたタンパク質を、SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーによって分析した。図5Cに示される通り、ウイルスタンパク質は、TIZ−処理した細胞の上澄み中で検出することができなかった。ウイルス粒子の劇的な低減を、p.i.24時間目にTCID50感染力アッセイ(図5D、上部)またはHAUアッセイ(図5D、下部)による平行の、非標識サンプルからのウイルス収率を決定することにより確認した。
【0179】
PR8A型インフルエンザウイルスに対するニタゾキサニドおよびノイラミニダーゼ阻害薬ザナミビルおよびオセルタミビルによる組み合わせ試験は、相乗的な活性を実証する。臨床的のインフルエンザ阻害薬と組み合わせたNTZの抗ウイルス活性を決定するために、本発明者らは、異なる濃度でNTZのザナミビルとの組み合わせおよびNTZのオセルタミビルとの組み合わせを試験した。ザナミビルおよびオセルタミビルは、感染した宿主細胞からのウイルスの効率的な放出を障害し、チアゾリドの機序と明確に異なる機序により作用するノイラミニダーゼ(NA)阻害薬である。
【0180】
NTZおよびザナミビル組み合わせ治療の効果を、哺乳動物のH1N1 A/PR/8/34(PR8)ウイルスによる感染後、イヌ細胞中で観察した。PR8インフルエンザウイルスに感染したメイディン−ダービーイヌ腎臓(MDCK)細胞を、ウイルス吸着期間直後にNTZ、ザナミビル、またはビヒクルの異なる濃度で処理し、ウイルス収率を、感染後(p.i.)24時間目に決定した。
【0181】
別々の試験において、NTZ治療は、PR8ウイルスについて1μg/ml(3.3M)のEC50を有するウイルス複製の用量依存的な阻害をもたらした(図1B)。以下の表2は、組み合わせ実験から得られた抗ウイルス薬データをまとめて示す。活性を、未治療の対照に対してHAU/mlの低減として表す。ザナミビルによる実験において、NTZは、以前の試験においてよりもわずかに強力であると思われ、〜0.66μg/ml(〜2.2μM)のEC50を有した。ザナミビル単独では、最高試験濃度1μMでのみウイルス収率が50%低減(阻害)になり、したがって、本発明者らは、ザナミビルがこれらの実験条件下で1μMのEC50を有したことを決定した(図6および7、左側)。1μMのザナミビルを0.1μg/ml(0.33μM)のNTZと組み合わせると、未処理の対照に対してウイルスの複製を83%減少させ、ザナミビル単独による治療に対しておよそ3倍の効力の増加に対応する(図6、右側)。

【表2】

【0182】
0.1μMのザナミビル単独による治療は、ウイルス複製に対して影響を与えなかった(図7、左側)。しかし、0.1μMのザナミビルおよび1.0μg/ml(3.3μM)のNTZの組み合わせでは、NTZ単独による治療に対してウイルス複製の50%を超える低減をもたらした(図7、右側)。これらの結果は、ザナミビル単独による治療に対しておよそ6倍の効力の増加に対応し、NTZ単独による治療に対して2倍の効力の増加に対応する。1.0μMのザナミビルおよび1.0μg/ml(3.3μM)のNTZを組み合わせると、NTZ単独による治療に対してウイルス複製を94%低減した(図7、右側)。これらの結果は、ザナミビル単独による治療に対しておよそ24倍の効力の増加に対応し、NTZ単独による治療に対して16倍の効力の増加に対応する。まとめると、これらの結果により、ザナミビルおよびNTZの組み合わせの抗ウイルス活性がPR8A型インフルエンザウイルスに対して相乗的であることが示唆される。
【0183】
類似のやり方において、NTZおよびオセルタミビル組み合わせ治療の効果を、哺乳動物H1N1 A/PR/8/34(PR8)ウイルスによる感染後のイヌ細胞中で観察した。PR8インフルエンザウイルスに感染したメイディン−ダービーイヌ腎臓(MDCK)細胞を、ウイルス吸着期間直後にNTZ、オセルタミビル、またはビヒクルの異なる濃度で処理し、ウイルス収率を感染後(p.i.)24時間目に決定した。
【0184】
これらの実験では、NTZは、1μg/ml(3.3μM)のEC50を実証した。本発明者らは、1μMまでの試験濃度でオセルタミビル単独によるウイルス収率の低減(阻害)を観察せず、したがって、EC50を、オセルタミビルについて決定しなかった(図8および9、左側)。オセルタミビルまたはNTZ単独による治療に対しておよそ1.5倍の効力の増加に対応して、1μMのオセルタミビルを、0.1μg/ml(0.33μM)のNTZと組み合わせると、ウイルス複製の低減が33%増加した(図8、右側)。NTZ用量がその確立されたEC50の10分の1であったことに留意する。
【0185】
1.0μMのオセルタミビルおよび1.0μg/ml(3.3μM)のNTZを組み合わせると、オセルタミビル単独による治療に対してウイルス複製の低減を67%増加させ、NTZ単独による治療に対してウイルス複製の低減を33%増加させた(図9、右側)。これらの結果は、オセルタミビル単独による治療に対しておよそ3倍の効力の増加に対応し、NTZ単独による治療に対して1.5倍の効力の増加に対応する。まとめると、これらの結果は、オセルタミビルおよびNTZ組み合わせの抗ウイルス活性がPR8A型インフルエンザウイルスに対して相加および相乗の間くらいであることが示唆される。
【0186】
いくつかの生化学的手法によって得られた結果は、TIZが、シスおよび中間のゴルジコンパートメントに運搬するためのマーカーであるエンドグリコシダーゼ−H消化の抵抗性を先行する段階で、HA末端のグリコシル化をブロックすることが実証されている。感染細胞により産生されたウイルス粒子の免疫顕微鏡研究および分析では、TIZ誘導変更は、ERおよびゴルジ複合体の間のHA0輸送を障害し、宿主細胞原形質膜へのその運搬および挿入を防ぎ、宿主細胞からの成熟したビリオンの出口を遮断することが確認されている。HA成熟の変更が、ウイルス糖タンパク質へのTIZの直接結合によって引き起こされるのか、または細胞によって媒介された効果によるものなのかは確立されていない。
【0187】
チアゾリドは、2種の異なるRNAウイルス、C型肝炎(HCV)、プラス鎖RNAウイルス、およびロタウイルス、二本鎖RNAウイルス、およびDNAウイルス、B型肝炎(HBV)ウイルスに対して抗ウイルス活性を有することが前もって示されている。広スペクトル抗ウイルス活性は、特異的なウイルス標的ではなく細胞媒介効果を示唆している。ウイルス糖タンパク質の成熟が、HBVおよびHCVに対する抗ウイルス活性が関与し得る可能性は、現在試験中である。ロタウイルスの場合においては、構造上のウイルス糖タンパク質VP7のTIZ誘導修正は最近示されており(Santoro MG and Rossignol JF、結果非公表)、最重要なウイルス糖タンパク質の成熟および運搬がこの新規なクラスの薬物の抗ウイルス活性の一般的な機序となり得るという仮説を裏付けている。チアゾリドが、成熟が細胞膜へのウイルス糖タンパク質輸送を必要としないピコルナウイルスである、ヒトライノウイルスの複製にあまり影響を与えないという知見は、さらにこの仮説を支持している。
【0188】
用いられる略語は以下の通りである。NTZ、ニタゾキサニド;TIZ、チゾキサニド;EC50、50%有効濃度;CC50、50%細胞毒性濃度;HA、血球凝集素;TM、ツニカマイシン;Endo−H、エンド−β−NアセチルグルコサミニダーゼH;PNG−ase F、ペプチドN−グリコシダーゼ F;TCID50、50%組織培養感染量;SW、スウェインソニン;DMJ、1−デオキシマンノジリマイシン;HAU/ml、血球凝集単位/ml、EGS、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシナート)。
【0189】
ウイルス感染を治療するためのNTZなどのチアゾリドの低用量投与。NTZは、インフルエンザの治療として300mgまたは600mg1日2回5日間の用量で経口投与することができる。臨床試験では、この用量レジメンはインフルエンザを治療する能力を有することが示されている。好ましくは、ニタゾキサニドの用量は、300mg1日2回5日間であり、これは、腸管感染症を治療するために必要なNTZの用量を超えず、それによって、高用量に伴う副作用を低減することができるようになる。チアゾリドは、調節放出二重層錠剤として投与することもできる。そのようなものとして、チアゾリドは、ウイルス感染を治療するために100mg、200mg、300mg、400mg、500mgまたは600mg用量で1日2回5日間投与することができる。
【0190】
ニタゾキサニドなどのチアゾリドは、他の呼吸器ウイルスに対する活性を有することも見出されている。Invivoデータを表3に示す。
【表3】

【0191】
興味深いことに、NTZなどのチアゾリドはまた、インフルエンザ様疾患(ILI)患者を治療する能力を有する。インフルエンザ様疾患は、インフルエンザの症状を呈し、別のウイルスまたは病原体によって引き起こされ得る。
【0192】
インフルエンザ様疾患を有する小児患者および成人における症状の期間に対する1日2回ニタゾキサニド5日間の効果の評価を行った。2つの二重盲検プラセボ対照試験を行った。年齢12ヵ月〜11歳の小児に、NTZ懸濁剤を投与し(n=100、1群当たり50名)、≧12歳の患者にNTZ500mg錠剤を投与した(n=86、1群当たり43名)。単施設試験を行った。試験は、TAMIFLU(登録商標)試験に基づいた。試験は、特定の組み入れ/除外基準に従った。組み入れは、(咳、鼻汁、くしゃみ、咽頭痛などを含めた)呼吸器症状≧1および/または全身症状(筋肉痛、倦怠感、疲労、頭痛、悪寒/発汗など)≧1を有する>100Fの発熱を伴う≧12歳の患者のうち小児年齢1〜11歳を要した。主な除外には、症状期間>72時間、妊娠または授乳、併用抗生物質/抗ウイルス薬剤、または喘息もしくは他の肺疾患の病歴が含まれた。
【0193】
患者をランダム化してNTZまたはプラセボをb.i.d.で5日間投与した。鼻咽頭のスワブは、7種のウイルス(RSV、A型およびB型インフルエンザ、パラインフルエンザ1〜3型、およびアデノウイルス)に関する急速直接免疫蛍光アッセイ(SimulFluor respiratory Screen)のベースライン時に収集した。症状は、0から3の尺度:なし、軽度、中等度、重度で類別した各症状を有する患者(または親)によって毎日の日誌に記録した。組織をジッパー付きプラスチック袋に保存し、これは秤量のために試験員によって毎日収集された。フォローアップ身体検査を7日目に行った。主要エンドポイントは、ベースラインから各症状がなしまたは軽度(<2)に戻るまでの時間であった。副次的エンドポイントには、抗生物質の使用、7日の呼吸器症状、毎日の組織/粘液重量が含まれる。
【0194】
追加の生化学的手法から得られた結果は、ニタゾキサニドが追加の呼吸器ウイルスに対して効果を有することを実証している。患者構成については表4およびウイルス検出については表5を参照のこと。表5は、大部分の患者が、アデノウイルス、RSV、A型インフルエンザ、パラインフルエンザ1型の存在について陽性を試験しなかったことを示す。しかし、図12〜15は、NTZがインフルエンザ様疾患を有する患者を治療する能力を有することを示す。これらのデータは、驚くべきことに、インフルエンザの症状を示すが、アデノウイルス、RSV、A型インフルエンザ、パラインフルエンザ1型についての陽性を試験しない患者が、NTZなどのチアゾリドで治療することができることを示す。
【表4】

【表5】

【0195】
〔図面の説明〕
図1はチアゾリドが侵入後レベルで作用するA型インフルエンザウイルスの複製を阻害することを示す図である。A、ニタゾキサニド(NTZ)およびチゾキサニド(TIZ)の構造、B、NTZ(青色の円)およびTIZ(赤色の円)がMDCK細胞中でヒト(PR8、WSN)およびトリ(A/Ck)A型インフルエンザウイルス株の複製を阻害する。ウイルス収率は、p.i.24時間目に決定される。C、ヒト単球性U937(●)およびT−リンパ芽球様ジャーカット(▲)細胞中のA型インフルエンザPR8ウイルス、およびヒト肺上皮A549細胞(■)中のWSNウイルスに対するTIZの抗ウイルス活性。D、MDCK細胞を感染前(前)、吸着期間直後(後)の指示された時間で10μg/mlTIZ(黒棒)、または吸着期間中のみ(Ad、破線棒)で処理した。白抜き棒は、未治療の感染した対照を表す(C)。E、ウイルス吸着後の10μg/mlTIZ(黒丸)またはビヒクル(白抜きの円)で処理したPR8感染MDCK細胞中のTIZの長期抗ウイルス活性。B〜E、HAU/mlで(BおよびE)または未治療対照のパーセントとして(CおよびD)表されるウイルス収率は、類似の結果を有する3つのうちの代表的な実験から得られた複製サンプルの平均値±標準偏差を表す。=P<0.01;**=P<0.05
【0196】
図2はチゾキサニドがインフルエンザの血球凝集素成を選択的に変更することを示す図である。A、PR8ウイルスタンパク質合成の速度に対するTIZの効果。ウイルス吸着後の10μg/ml TIZで処理した擬似感染細胞(U)またはPR8感染細胞から得られたp.i.異なる時間での[35S]−Met/Cys標識タンパク質(1.5h−パルス)のオートラジオグラフィー(上部)。ウイルスタンパク質を示す。同じ実験において、タンパク質合成を、TIZ(●)またはビヒクル(○)で治療した細胞のタンパク質への[35S]−Met/Cys取り込みにより決定し(下部)、ホスホ−eIF−2αタンパク質レベルを抗ホスホSer−51−eIF2α(p−eIF2α)またはeIF2α汎特異的抗体を用いて免疫ブロット分析により決定した(中央)。B、p.i.5時間目に[35S]−Met/Cys−標識化後に抗−HA抗体を用いた免疫沈降による血球凝集素同定(4時間−パルス)。免疫沈降したタンパク質(+αHA、IP)および抗体付加前の同一サンプルから得られた放射能標識したタンパク質(−αHA)を示す。HA非切断前駆体(HA0)の位置を示す。C、ウイルス吸着後の10μg/ml TIZ、5μg/mlツニカマイシン(TM)またはビヒクル(C)で処理した擬似感染細胞(U)またはPR8感染細胞から得られた[35S]−Met/Cys標識されたタンパク質(15h−パルス)のオートラジオグラフィー。白色の三角形および黒矢印は、それぞれTM誘導GRP78/BiPおよび非グリコシル化HA0を示す[免疫ブロットによって同定された(未掲載)]。D、Aのように処理したPR8感染細胞から得られた[35S]−Met/Cys標識タンパク質(p.i.5時間目に15分パルス、その後指示された時間追跡)のオートラジオグラフィー。A〜D、未治療のもしくはTIZ治療細胞中の緩徐遊走性および高速遊走性のHA0形態を、それぞれアステリスクおよび黒色の三角形により同定する。
【0197】
図3はチアゾリドが、ウイルス血球凝集素Nグリコシル化に干渉することを示す図である。A、擬似感染した(U)またはPR8感染した(PR8)MDCK細胞を、ウイルス吸着後に10μg/ml TIZ、5μg/ml TMまたはビヒクル(C)で処理した。p.i.6時間目に、細胞を[35S]−Met/Cys(上部)、[3H]−グルコサミン(中央)または[3H]−マンノース(下部)で4時間標識した。放射能標識したサンプルをSDS−PAGEおよびオートラジオグラフィー用に処理した。SDS/PAGEゲルから得られた蛍光図のセクションを示す。白色の矢印は、TM誘導Grp78/BiPを示す。B、擬似感染した(U)もしくはPR8感染したMDCK細胞を、ウイルス吸着後に10μg/ml TIZ、10μg/mlスウェインソニン(SW)、15μg/ml 1−デオキシマンノジリマイシン(DMJ)またはビヒクル(C)で処理した。p.i.6時間目に、細胞を[35S]−Met/Cys(4h−パルス)で標識し、放射能標識したサンプルをSDS−PAGEおよびオートラジオグラフィー用に処理した。C〜D、擬似感染した(U)もしくはWSN感染した(WSN)A549細胞(C)、およびウイルス吸着後に5μg/ml TIZ、5μg/mlツニカマイシン(TM)またはビヒクル(C)で処理した擬似感染したもしくはトリA型インフルエンザウイルス感染した(A/Ck)MDCK細胞(D)から得られた放射能標識したタンパク質のオートラジオグラフィー。p.i.3時間目(WSN)または6時間目(A/Ck)に、細胞を、15時間(WSN)または4時間(A/Ck)[35S]−Met/Cysで標識した。E〜F、擬似感染した(U)PR8感染した(PR8)(E)またはウイルス吸着後に10μg/ml TIZ、10μg/mlニタゾキサニド(NTZ)またはビヒクル(C)で処理したトリのA型インフルエンザウイルス感染した(A/Ck)(F)MDCK細胞から得られた放射能標識したタンパク質のオートラジオグラフィー。p.i.6時間目に、細胞を4時間[35S]−Met/Cysで標識した。A〜F、ウイルスタンパク質HA0、NP、M1およびNS1を示す。未処理のもしくはチアゾリドで処理した細胞中の緩徐遊走性および高速遊走性のHA0形態を、それぞれアステリスクおよび三角形によって同定する。
【0198】
図4はチゾキサニドが、EndoH−感受性段階でHA成熟をブロックすることを示す図である。A、ウイルス吸着後に10μg/ml TIZ(+)またはビヒクル(−)で処理した擬似感染した(U)もしくはPR8感染した(PR8)MDCK細胞を、p.i.5時間目に[35S]−Met/Cys(4時間−パルス)で標識した。放射能標識したタンパク質をPNGase−FまたはEndo−Hを消化した(+)または消化せず(−)、SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィー用に処理した。切断しないグリコシル化された(HA0)および非グリコシル化の(HAp)血球凝集素前駆体形態を示す。B、Aのように処理したMDCK細胞を、p.i.6時間目に[35S]−Met/Cys(4時間−パルス)で標識した。放射能標識したタンパク質を、抗HA抗体(α−HA)で免疫沈降し、Endo−Hで消化した(+)または消化せず(−)、SDS−PAGE用に処理した。蛍光図のセクションを示す。C、TIZ(+)またはビヒクル(−)で処理した擬似感染した(U)およびPR8感染した(PR8)MDCK細胞から得られた全細胞抽出物を架橋試薬EGS(0.2mM)を用いて(+)または用いずに(−)インキュベートし、抗HA抗体を用いてウエスタンブロット用に処理した。HA単量体(1)、二量体(2)および三量体(3)を示す。A〜C、未処理のもしくはTIZで処理した細胞中の緩徐遊走性および高速遊走性のHA0形態を、それぞれアステリスクおよび三角形によって同定する。D、24時間TIZ(5μg/ml)もしくはビヒクルで処理した擬似感染した(U)およびWSN感染したA549細胞の免疫蛍光は、抗p230トランス−ゴルジ(赤色)および抗HA(緑色)抗体で標識した。核をDAPI(青色)で染色した。3種の蛍光色素のオーバーレイを示す(マージ)。拡大された領域(差し込み図)は、未処理のおよびTIZ処理した細胞中のHAの局在化を強調している。画像を、SoftWoRx−2.50ソフトウェアを用いたDeltaVision顕微鏡で取り込み、畳み込みを解いた。横棒=5μm。
【0199】
図5はチゾキサニドが、インフルエンザ血球凝集素の細胞表面への運搬を阻害することを示す図である。A、全血球凝集素(緑色)およびα−チューブリン(赤色)のレベルを、間接免疫蛍光によりp.i.16時間目に擬似感染した(U)および未処理のもしくはTIZ処理した(10μg/ml)PR8感染したMDCK細胞中で検出した(横棒=10μm)。核をDAPI(青色)で染色する。3種の蛍光色素のオーバーレイを示す(マージ)。画像をSoftWoRx−2.50ソフトウェアを用いたDeltaVision顕微鏡で取り込み、畳み込みを解いた。B、原形質膜血球凝集素(緑色)のレベルを、10μg/ml TIZまたは5μg/ml TMで処理した擬似感染細胞またはPR8感染細胞中で間接免疫蛍光(上部)によりp.i.16時間目に検出した。核を、Hoechst 33342(青色)で染色した。画像を、Aのように処理した(横棒=10μm)。2種の蛍光色素のオーバーレイを示す。p.i.5時間目に原形質膜上の赤血球血球吸着を、平行サンプルにおいて示す(下部)(横棒=35μm)。結合した赤血球のヘモグロビンレベルを、分光光度的に定量した(λ=540nm)。光学密度(O.D.)で表されるデータは、類似の結果を有する2つのうちの代表的な実験から得られた複製サンプルの平均値±標準偏差を表す。=P<0.05対感染した対照。C、Bのように擬似感染細胞またはPR8感染細胞の上澄みからp.i.24時間目に精製したウイルス粒子に取り込まれた[35S]−Met/Cys標識タンパク質のオートラジオグラフィー。ウイルスタンパク質(HA、NP、M1)を示す。D、平行して、ウイルス収率を、感染力アッセイ(上部)および血球凝集アッセイ(下部)によりp.i.24時間目に未治療の(白抜き棒)またはTIZ処理した(黒棒)PR8−感染細胞中で決定した。TCID50/mlおよびHAU/mlでそれぞれ表されたデータは、類似の結果を有する2つのうちの代表的な実験から得られた複製サンプルの平均±標準偏差を表す。
【0200】
図6はA型インフルエンザに対する3つの濃度のザナミビルおよび0.1ug/mLのニタゾキサニドと組み合わせたザナミビルの抗ウイルス活性を示す図である。ザナミビルを0.01、0.1および1.0μMの用量でおよび0.1μg/mlのNTZの存在下でA型インフルエンザ(MDCK/PR8)に対して単独で試験した。
【0201】
図7はA型インフルエンザに対する3つの濃度のザナミビルおよび1.0ug/mLのニタゾキサニドと組み合わせたザナミビルの抗ウイルス活性を示す図である。ザナミビルを0.01、0.1および1.0μMの用量でおよび1.0μg/mlのNTZの存在下でA型インフルエンザ(MDCK/PR8)に対して単独で試験した。
【0202】
図8はA型インフルエンザに対する3つの濃度のオセルタミビルおよび0.1ug/mLのニタゾキサニドと組み合わせたオセルタミビルの抗ウイルス活性を示す図である。オセルタミビルを0.01、0.1および1.0μMの用量でおよび0.1μg/mlのNTZの存在下でA型インフルエンザ(MDCK/PR8)に対して単独で試験した。
【0203】
図9はA型インフルエンザに対する3つの濃度のオセルタミビルおよび1.0ug/mLのニタゾキサニドと組み合わせたオセルタミビルの抗ウイルス活性を示す図である。オセルタミビルを、0.01、0.1および1.0Mの用量でおよび1.0μg/mlのNTZの存在下でA型インフルエンザ(MDCK/PR8)に対して単独で試験した。
【0204】
図10はA型インフルエンザおよびB型ウイルスに対するチゾキサニドの抗ウイルス活性を示す図である。A、MDCK細胞を、10HAU/105細胞のm.o.i.で、異なる4種のA型インフルエンザウイルス株、哺乳動物のH1N1 PR8およびWSN、およびH3N2 A/FI、およびH5N9トリ株A/Ckに感染させ、吸着期間直後に10μg/ml TIZ(黒棒)またはビヒクル(白抜き棒)で処理した。ウイルス収率をp.i.24時間目に決定した。B、インフルエンザB型ウイルス(B/Parma/3/04)に感染し、ウイルス吸着後に10μg/ml TIZ(●)またはビヒクル(★)で治療したMDCK細胞中のTIZの長期抗ウイルス活性。C〜D、単一段階(C)および多段階(D)PR8ウイルス成長曲線を、Aのように10(C)または0.001(D)ffu/細胞のm.o.i.で感染し、10μg/ml TIZ(●)またはビヒクル(★)で処理したMDCK細胞について行った。ウイルス収率を、p.i.の指定された時間で決定した。(A〜D)未治療の対照(A)のパーセントとしてまたはHAU/ml(B〜D)で表したウイルス収率は、類似の結果を有する3つのうちの代表的な実験から得られた複製サンプルの平均値±標準偏差を表す。=P<0.01;**=P<0.05。
【0205】
図11はチゾキサニドが、ヒト低密度リポタンパク質受容体(LDLR)原形質膜標的指向化に影響を与えないことを示す図である。MDCK細胞を、緑色蛍光タンパク質(GFP)タグ付き内部移行欠損ヒト低密度リポタンパク質受容体変異体(LDLR−A18−GFPプラスミド)(40)で一時的に形質移入され、8時間後、次の16時間TIZ(10μg/ml)またはビヒクルで処理した。シクロヘキシミドで1時間タンパク質合成をブロックしてから、原形質膜をCellMask(商標)Orange原形質膜(PM)染色を用いて染色し、UV励起フィルターを装備したLeica DM−IL蛍光顕微鏡を用いて撮像した。画像を、Leica Image−Manager500ソフトウェアを用いたLeica DC−300カメラで取り込んだ。LDLR−GFP(緑色)およびPM(赤色)のレベルを、未治療の(上部パネル)またはTIZ処理された(下部パネル)形質移入されたMDCK細胞中で検出した。2つの蛍光色素のオーバーレイを示す(マージ)。代表的な実験の同じ画像のセクション(横棒=10μm)を示す。
【0206】
図12はニタゾキサニドが、インフルエンザ様疾患に伴う症状を解消することができることを示す図である。
【0207】
図13は7日の理学的検査データを示す図である。ニタゾキサニドは、その後インフルエンザ様疾患に伴う呼吸器症状を低減する。
【0208】
図14は試験後の抗生物質の使用を示す図である。
【0209】
図15は日毎の組織収集物の重量を示す図である。
【0210】
本発明の化合物(I)は、以下の一般反応式[式中、R6およびR9は、ニトロ(NO2)およびSO2R12から選択することができる]に従って、本明細書で定義する通り、適当な反応条件下でアロイル誘導体[式中、G1は、ヒドロキシ、クロロ、フルオロ、ブロモ、アルコキシなどである]を、アミノチアゾール誘導体と反応させることにより合成することができる。いくつかの実施形態において、反応を、以下の通り総称的に表す。

【化2】

【0211】
本発明の化合物(I)は、公開された手順US3950351、US6020353、PCT WO2006042195A1およびUS2009/0036467Aに従って合成することもできる。
【0212】
本発明の化合物の例は、それだけには限らないが、表6に列挙した以下の化合物を含むことができる。例のこのセットは、本発明を限定するものではない。
【表6−1】


【表6−2】


【表6−3】


【表6−4】


【表6−5】


【表6−6】


【表6−7】


【表6−8】


【表6−9】


【表6−10】


【表6−11】


【表6−12】

【0213】
以上が、特に好ましい実施形態を意味するが、本発明がそれほど限定されないということが理解される。これは、様々な修正が開示された実施形態になされることができ、かかる修正が本発明の範囲内であることを意図している当業者に行われる。
【0214】
本明細書において引用した特許公報、特許出願および特許のすべては、その全体を参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染症を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療有効量の式Iの化合物を投与することを含む方法
【化1】


[式中、R、R、Rの1つは、OHまたはOC(=O)Qであり、ここで、Qは、R、OR、またはNHRであり;Rは低級アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、場合によって置換されており;R、R、ならびにR、R、およびRの残りは、独立に、H、ハロ、低級アルコキシ、または低級アルキルであり;RがNOであり、RがHである、またはRがHであり、RがSO12であり、ここで、R12は、低級アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、場合によって置換されている]。
【請求項2】
、R、Rの1つが、OHまたはOC(=O)Qであり、ここで、Qは、R、OR、またはNHRであり;Rは、低級アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、場合によって置換されており;R、R、ならびにR、R、およびRの残りが、Hであり;RがNOであり、RがHである、またはRがHであり、RがSO12であり、ここで、R12は、低級アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、場合によって置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルス感染症がインフルエンザ感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ウイルス感染症が、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、およびH10N7から選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式Iの化合物を、ノイラミニダーゼ阻害薬と組み合わせて投与する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
式Iの化合物を、ワクチンと組み合わせて投与する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
式Iの化合物を、免疫賦活薬と組み合わせて投与する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
式Iの化合物を、アダマンチン類似体と組み合わせて投与する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
式Iの化合物を、組換えシアリダーゼ融合タンパク質と組み合わせて投与する、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
式Iの化合物を、アンチセンスオリゴヌクレオチドと組み合わせて投与する、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
組み合わせを、実質的に同時の方式で投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
組み合わせを、逐次的なやり方で投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
ウイルス感染症の治療のための、組み合わせ療法に用いるときの、(a)請求項1に記載の式Iの化合物および(b)ノイラミニダーゼ阻害薬を含む、組み合わせ。
【請求項14】
ノイラミニダーゼ阻害薬が、オセルタミビル、ザナミビル、ペルミビル、RWJ−270201、DANA、およびCS−8958からなる群から選択される、請求項13に記載の組み合わせ。
【請求項15】
ウイルス感染症の治療のための、組み合わせ療法に用いるときの、(a)請求項1に記載の式Iの化合物および(b)ワクチンを含む、組み合わせ。
【請求項16】
免疫賦活薬をさらに含む、請求項15に記載の組み合わせ。
【請求項17】
ウイルス感染症の治療および予防のための、組み合わせ療法に用いるときの、(a)請求項1に記載の式Iの化合物および(b)アダマンチン類似体を含む、組み合わせ。
【請求項18】
アダマンチン類似体が、アマンタジンおよびリマンタジンからなる群から選択される、請求項17に記載の組み合わせ。
【請求項19】
ウイルス感染症の治療のための、組み合わせ療法に用いるときの、(a)請求項1に記載の式Iの化合物および(b)免疫賦活薬を含む、組み合わせ。
【請求項20】
免疫賦活薬がポリオキシドニウムである、請求項19に記載の組み合わせ。
【請求項21】
ウイルス感染症の治療のための、組み合わせ療法に用いるときの、(a)請求項1に記載の式Iの化合物および(b)ペグ化インターフェロンを含む、組み合わせ。
【請求項22】
ウイルス感染症の治療のための、組み合わせ療法に用いるときの、(a)請求項1に記載の式Iの化合物および(b)組換えシアリダーゼ融合タンパク質を含む、組み合わせ。
【請求項23】
組換えシアリダーゼ融合タンパク質がFludase(登録商標)である、請求項22に記載の組み合わせ。
【請求項24】
ウイルス感染症の治療のための、組み合わせ療法に用いるときの、(a)請求項1に記載の式Iの化合物および(b)アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、組み合わせ。
【請求項25】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、Neugene(登録商標)アンチセンスホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーを含む、請求項22に記載の組み合わせ。
【請求項26】
組み合わせを、逐次的なやり方で投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
組み合わせを、実質的に同時の方式で投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
インフルエンザ感染を治療する方法であって、それを必要とする患者に、ウイルス糖タンパク質の成熟をブロックする化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルの治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項29】
インフルエンザ感染を治療する方法であって、それを必要とする患者に、エンドグリコシダーゼ−H消化に対する抵抗性に先行する段階でウイルス血球凝集素の成熟をブロックする化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルの治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項30】
化合物が、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
ヒトまたは他の哺乳動物における感染性ウイルス粒子の産生を妨害または防止する方法であって、前記ヒトもしくは他の哺乳動物に、請求項1に記載の式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルの治療有効量を投与することを含むを含む方法。
【請求項32】
式Iの化合物が、表6に示される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
i)インフルエンザ感染の治療または予防に有効なの量の、請求項1に記載の式Iの化合物またはその塩もしくはエステル;および
ii)薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項34】
式Iの化合物との相乗効果をもたらすのに十分な量の他の抗ウイルス薬をさらに含む、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
式Iの化合物との相乗的な抗ウイルス保護効果をもたらすのに十分なの量のワクチンをさらに含む、請求項33に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−531420(P2012−531420A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517679(P2012−517679)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/039638
【国際公開番号】WO2010/151577
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(507337865)ロマーク ラボラトリーズ エル.シー. (6)
【Fターム(参考)】