説明

インフルエンザワクチンに関連する潜在的医原性リスクの減少

ヒト用ワクチンを調製する際に使用するためのインフルエンザウイルスは、伝統的には胚含有ニワトリ卵にて増殖させていたが、より新しい技術では、例えばVero、MDCK、またはPER.C6細胞株などの哺乳動物細胞培養物内でウイルスを増殖させる。発明者は、5培養物のインフルエンザウイルスに用いた条件によって、インフルエンザウイルス以外の病原体がその細胞株で増殖する危険性が増大することが可能であることを理解し、具体的に混入汚染の危険物を特定した。従って、安全性を確保し、医原性感染を避けるために、製造の過程で適切な試験を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において引用されるすべての文献は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、インフルエンザウイルスワクチンの生産および品質管理に関係する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
ヒト用ワクチンを調製する際に使用するためのインフルエンザウイルスは、伝統的には胚含有トリ卵にて増殖させていたが、より新しい技術では、例えばVero、MDCK、またはPER.C6細胞株などの哺乳動物細胞培養物でウイルスを増殖させる。ウイルス増殖基質が変わったことによって、インフルエンザワクチンの安全性規制を再評価する機会が生じた。例えば、宿主細胞DNAへの混入汚染が細胞由来のワクチンに関する規制上の問題点となっているが(特許文献1)[1]、過去における、卵内で増殖させたワクチンでは、これは問題ではなかった。
【0004】
従って、卵由来のインフルエンザワクチン周辺の安全性の問題は、より厳密な安全性の下にある細胞由来のワクチンに伴う、細胞培養物にて増殖したワクチン周辺のものとは異なる。本発明の目的は、こうした異なる安全性の問題に向けられており、特に細胞培養物にて増殖したインフルエンザワクチンの安全性を高めるための方法を提供する。
【特許文献1】米国特許第5948410号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(本発明の開示)
本質的に、インフルエンザワクチン生産のために哺乳動物細胞基質を使用することは、ウイルスの増殖および複製に良く適した条件下で細胞を培養することが関係する。発明者は、こうした条件では、インフルエンザウイルス以外の病原体が細胞培養物内で増殖する危険性が増し、よって最終ワクチン製品の混入汚染の可能性に繋がると、理解した。混入汚染に関する試験は一般に、実施するのに難しいものではないが、製造者は最初にどんな試験を行うべきかを知る必要がある。発明者は具体的な混入汚染の危険物を特定し、その成果は、細胞培養物上で増殖したインフルエンザワクチンの安全性および品質を確保するための適切な試験を、製造過程で行うことができることを意味する。混入汚染物の一部は、最終ワクチン製品において無害である場合があるが、これらの存在は、インフルエンザウイルスの増殖およびその後の精製を妨げることが可能であり、そのため、これらを除去することが、品質および複製能に関する主要な問題となる。別の一部の混入汚染物は最終ワクチンにおいて有害となる可能性もあり、そのためこれらの除去は安全性上の大きな問題である。
【0006】
ウイルス共培養から生じる混入汚染の危険性は先例がないわけではないが(例えば初期のバッチのポリオウイルスワクチンは、ポリオーマウイルスであるシミアンウイルス40(「SV40」)で汚染されていた。)、ヒト用インフルエンザワクチン生産のための細胞培養に伴う具体的な危険物を特定することに関する開示物はこれまでに存在していない。ワクチン生産のために使用されるウイルス株は毎年変わるため、新たな培養物を毎年確立しなければならず、細胞培養物上で増殖したインフルエンザウイルスには、特に混入汚染の危険性がある。特に、製造者のために種ウイルスを調製する過程で複数継代が行われ、これによって外来性の病原体が平行増殖する危険性が増すことから、生産物が毎年変わるということは毎年新たな混入汚染の危険性がもたらされることを意味する。
【0007】
発明者は、細胞培養物中でインフルエンザウイルスを増殖させるための条件では増殖し得るが、ニワトリ卵では増殖しない感染因子を特定した。これらの感染因子は、インフルエンザワクチンに対する、伝統的なインフルエンザワクチン関してこれまで問題となっていない新たな混入汚染リスクである。従って、本発明は、哺乳動物細胞株の培養物内で増殖させたインフルエンザウイルスからインフルエンザワクチンを調製するための方法を提供し、これはワクチンおよび/または培養物を、上記細胞株内では増殖し得るが胚含有ニワトリ卵では増殖しない感染因子の存在に関して試験する工程を含む。
【0008】
また、発明者はインフルエンザワクチンを作製するために使用する一部の細胞基質では増殖するがこれ以外では増殖しない感染因子を特定した。これらの感染因子は、従って、一部のインフルエンザウイルスのみに対する混入汚染危険物である。すなわち本発明はまた、第1の哺乳動物細胞の培養物中で増殖したインフルエンザウイルスからインフルエンザワクチンを調製するための方法を提供し、これは、上記第1細胞株中では増殖し得るが第2の哺乳動物細胞株中では増殖しない感染因子の存在に関して、そのワクチンおよび/または培養物を試験する工程を含む。
【0009】
また、本発明は、哺乳動物細胞株の培養物中で増殖させたインフルエンザウイルスからインフルエンザワクチンを調製するための方法を提供し、これは、そのワクチンおよび/または培養物を処理して、その細胞株中では増殖し得るが胚含有ニワトリ卵中では増殖しない感染因子を除去および/または不活化する工程を含む。同様に、本発明は、第1の哺乳動物細胞株の培養物中で増殖させたインフルエンザウイルスからインフルエンザワクチンを調製するための方法を提供し、これは、そのワクチンおよび/または培養物を処理して、上記第1細胞株中では増殖し得るが第2の哺乳動物細胞株中では増殖しない感染因子を除去および/または不活化する工程を含む。除去および/または不活化の後、例えば感染因子が除去・不活化されたことを確認するために、感染因子の存在に関してワクチン・培養物を試験する場合がある。
【0010】
また本発明は、本発明の方法によって得たインフルエンザワクチンを提供する。また本発明は、本発明の方法によって得ることが可能なインフルエンザワクチンを提供する。
【0011】
また本発明は、哺乳動物細胞株の培養物中で増殖させたインフルエンザワクチンを提供し、ここで、このワクチンは、上記細胞株中では増殖し得るが胚含有ニワトリ卵中では増殖しない感染因子が存在しない状態にあることが確認されている。同様に、本発明は、第1の哺乳動物細胞株の培養物中で増殖させたインフルエンザワクチンを提供し、ここで、このワクチンは、上記第1細胞株中では増殖し得るが第2の哺乳動物細胞株中では増殖しない感染因子が存在しない状態にあることが確認されている。
【0012】
また本発明は、哺乳動物レオウイルスがRT−PCRによって検出不能であるインフルエンザワクチンを提供する(例えばL1.rv5、L1.rv6、L1.rv7、およびL1.rv8プライマーを教示されているように使用する、文献16にて開示されているL1ベースのRT−PCRを用いる。)卵で増殖していないので、このワクチンには卵白アルブミンおよびニワトリDNAが存在しないこととなる。
【0013】
(哺乳動物細胞株)
本発明のインフルエンザワクチンは、胚含有卵にて増殖させるのではなく、哺乳動物細胞株にて増殖させる。生物製剤の作製に使用される典型的な哺乳動物細胞系には、MDCK、CHO、BHK、Vero、MCR−5、PER.C6、WI−38などが含まれる。インフルエンザウイルスを増殖させるのに好ましい哺乳動物細胞株には、メイディン・ダービーイヌ腎臓に由来するMDCK細胞[2−5]、アフリカミドリザル(Cercopithecus aethiops)腎臓に由来するVero細胞[6−8]、またはヒト胚性網膜芽細胞に由来するPER.C6細胞[9]が含まれる。
【0014】
これらの細胞株は、例えばAmerican Type Cell Culture(ATCC)収集物[10]、またはCoriell Cell Repositories[11]などから、幅広く入手可能である。例えばATCCは、カタログ番号CCL−81、CCL−81.2、CRL−1586、およびCRL−1587として様々な種類のVero細胞を提供しており、さらにカタログ番号CCL−34としてMDCK細胞を提供している。
【0015】
哺乳動物細胞株での増殖物に由来する物質のために有用であるばかりでなく、本発明は、例えばニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)などニワトリに由来する細胞株を含む鳥類細胞株[例えば参考文献12と13。]に由来する材料にまで拡大し得る。
【0016】
(胚含有ニワトリ卵にて増殖しない感染因子)
発明者は、ワクチン生産のためのインフルエンザウイルスを調製するために使用される哺乳動物細胞株(特にMDCK細胞およびVero細胞の双方。)にて増殖し得るがニワトリ卵では増殖しない様々な病原体を同定した。これらの病原体による混入汚染の試験は伝統的な卵基質で調製されるワクチンには必要ないが、発明者は、ワクチンの品質管理には、最高の安全基準を確保するために、1つ以上のこれら病原体に関する試験を含めるべきであると理解している。この病原体は以下のものである。:
・RSウイルス(RSV)を含むPneumovirus属などのニューモウイルス亜科。
・麻疹ウイルスなど、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス属。
・コクサッキーウイルス、エコーウイルス、およびエンテロウイルスなど、ピコルナウイルス科のエンテロウイルス属。但し、一部のコクサッキーウイルス(例えばB3、B4)は、MDCK細胞内では増殖しないことが認められている。
・哺乳動物レオウイルス科、特にオルトレオウイルス(例えば哺乳動物レオウイルス類)およびロタウイルス。レオウイルスは、VeroおよびMDCK細胞にて非制限的な増殖を示すことができるので、これらに関する試験は特に重要である。ロタウイルスは、インフルエンザウイルスと同じ、細胞培養物中で増殖するためのプロテアーゼ要求性を持っており、この平行性のために混入するロタウイルスの活性化が、気づくことなく導かれる可能性が考えられる。
【0017】
これらの病原体に異なる宿主を持つ異なる株が含まれる場合(例えばヒトRSVとウシRSVなど)、試験は典型的にはヒトに感染し得る株に関係するものとなる。
【0018】
逆遺伝学の方法の過程で、ウイルス生産のための種ウイルスは哺乳動物細胞培養物中にて複数過程の処理を受け、よって外来性の感染因子による混入汚染の危険性が増すことから、これらの因子に関する試験は、逆遺伝学の手法によってできたウイルス株に対して、特に重要である。
【0019】
(卵では増殖しないが、様々な哺乳動物細胞株で増殖する感染因子)
発明者は、ニワトリ卵では増殖せず、MDCK細胞で増殖しないがVero細胞にて増殖する様々な種類の病原体を同定した。これらの病原体による混入汚染に対する試験は伝統的な卵基質で調製されるワクチンには必要なく、MDCK細胞で調製されるワクチンにも必要ないが、Vero細胞で増殖させたワクチンの品質管理には、最高の安全基準を確保するためにこれら病原体の1つ以上のものに関する試験を含めるべきであると認識した。この病原体には以下ものがある。:
・ヒトメタニューモウイルス(HMPV)など、パラミクソウイルス科のメタニューモウイルス属類。
・Veroにてよく増殖する流行性耳下腺炎ウイルスなど、パラミクソウイルス科のルブラウイルス属。
・風疹ウイルスなどのトガウイルス科。
・SARSコロナウイルスおよび他のヒトコロナウイルスなどのコロナウイルス科。非制限的な増殖を示すSARSウイルスと共に、これらのウイルスはVero細胞にて高い増殖性を示し、これらのものに関する試験は特に重要である。
・M型リノウイルスなど、ライノウイルス属。
・3型ヒトヘルペスウイルス(HHV3)とも呼ばれるVaricella Zosterウイルス(VZV)。VZVはVero細胞にて非制限的な増殖を示すことができ、これに関する試験は特に重要である。
・SV−40ポリオーマウイルス、BKポリオーマウイルス、およびJCポリオーマウイルスなどのポリオーマウイルス科。これらのポリオーマウイルスは、Vero細胞(特にBK細胞)にて非制限的な増殖を示すことができ、これらに関する試験は特に重要である。
・ブタサーコウイルス。
・ブタ水疱病ウイルス(SVDV)およびテッシェンタルファンウイルスなどのブタピコルナウイルス。
・C.trachomatis、C.pneumoniae、およびC.psittaciなどのクラミジア属細菌。これらの細菌はVero細胞にて増殖する場合があり、これらに関する試験は特に重要である。
・イヌパルボウイルス(CPV)またはブタパルボウイルスなどのパルボウイルス属。
【0020】
これらの病原体に異なる宿主(例えばヒトRSVとウシRSVなど。)を持つ異なる株が存在する場合、試験は、典型的にはヒトに感染し得る株に関係することとなる。
【0021】
非ヒトウイルス(例えば鳥類およびブタウイルス)に関する試験は、例えば、最初に株がブタまたはトリから単離されていた場合、または1次増殖の過程で卵を使用した場合、もしくは細胞培養物にブタトリプシンを使用した場合など、ウイルスの調製に鳥類またはブタの材料が使用される場合にのみ、主に問題となる。
【0022】
(卵および哺乳動物細胞株にて増殖する感染因子)
また、発明者は、上記のものとは対照的に、哺乳動物細胞株とニワトリ卵の双方にて増殖する病原体を同定した。本発明の工程には当該病原体に関する試験の方法が含まれるが、この方法は、ニワトリ卵にて増殖させたウイルスの品質管理強化の一部となる可能性も考えられる。これらの病原体には以下が含まれる。:
・PIV−1、PIV−2、およびPIV−3を含む、Paramyxoviridae paramyxovirinaeの一員であるパラインフルエンザウイルス(PIV)。
・1型単純ヘルペスウイルスおよび2型単純ヘルペスウイルスなどのヘルペスウイルス科。
・ヒトおよびシミアンアデノウイルスを含む、アデノウイルスなどのアデノウイルス科。
・マイコプラズマ属。
・トリサーコウイルス。
・哺乳動物細胞株にて増殖し得るトリレオウイルスなどのトリレオウイルス科。特にオルトレオウイルス。
【0023】
また、発明者は、ニワトリ卵およびVero細胞では増殖するが、MDCK細胞では増殖しないようである病原体を同定した。本発明の方法は、当該病原体に関する試験を行う方法を含む場合があるが、この方法はニワトリ卵にて増殖させたウイルスの品質管理強化の一部となる可能性も考えられ、またこの方法はMDCK基質を使用する場合には必要ではない。これらの病原体には、以下が含まれる。:
・伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(ガンボロウイルスとも呼ばれる。)などのビルナウイルス科。
【0024】
卵と細胞株の双方で増殖する病原体に関する試験は、例えばウイルス生産のための種ウイルスなど、卵内で複数の処理を通過した後に派生するウイルス株にとって、重要である。
【0025】
これらの病原体は卵内で増殖することから、続いて、卵上で増殖したウイルスから調製されたウイルスに対しても、その存在の有無に関する試験を用いることができる。従って、本発明は、細胞培養物にて増殖したワクチンに限るものではなく、これはまた、「伝統的な」卵ベースのワクチンに対しても用いることができる。
【0026】
(試験方法)
細胞培養物および生物医薬品内の病原体の存在を検出するための方法は、日常的に利用可能である。一般に方法は、免疫化学的検出(イムノアッセイ、ウエスタンブロット、ELISAなど。)および/または核酸検出(サザンブロット、スロットブロット、PCRなどのハイブリダイズ法。)に頼ることとなる。または、従来の細胞培養物接種によって病原体の存在に関する試験を行うことが可能である(従って、適当な条件下で培養された時に、その材料が混入する病原菌の産生を導くものであるか否かの試験。)。
【0027】
方法は、1種の病原菌(例えば1種のウイルス)を検出する、または複数種の病原体(例えば複数種のウイルス)を検出する場合がある。試験によって複数種の病原体(例えば「X」、「Y」、または「Z」。)が検出された場合、具体的な結果(例えばウイルス「Y」が存在する。)が得られる、または全般的な結果(例えば「X」、「Y」、または「Z」のうちの1種が存在する。)が得られる場合がある。方法は、定量的、準定量的、または定性的である場合がある。リアルタイム検出法が用いられる場合がある。
【0028】
対象とする病原菌(例えばウイルス)を検出するための一般的な指針は、文献14にて確認し得る。多数のより具体的なアッセイを、以下の文章にて提供し、技術者は、任意の選択された病原菌の存在を検出するためのアッセイを、容易に見つける、または準備し得る。
【0029】
文献15は、1回の試験で、主にエンテロウイルス、A型およびB型インフルエンザウイルス、RSウイルス、1型および3型パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、Mycoplasma pneumoniae、およびChlamydia pneumoniaeなどの9つの呼吸器菅病原体を検出するための、多重逆転写PCR(RT−PCR)アッセイを開示しており、これは「m−RT−PCR−ELISA」と呼ばれている。哺乳動物レオウイルスを検出するためのRT−PCR法は、文献16にて開示されている。文献17は、既知の遺伝系列からヒトメタニューモウイルスを検出するためのリアルタイムRT−PCRアッセイを開示している。文献18は、ヒトRSウイルス(HRSV)、1型、2型、および3型ヒトパラインフルエンザウイルス、およびA型およびB型インフルエンザを検出するための単回RT−PCRアッセイを開示している。文献19は、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、およびパルボウイルスB19を検出および鑑別するための多重RT−PCRアッセイを開示している。ヒトリノウイルスを、ピコルナウイルス科の他のウイルスと正確に識別して検出するためのRT−PCRアッセイが、文献20に開示されている。文献21は、ヒトパラインフルエンザウイルス赤血球凝集素の保存された領域、ヒトコロナウイルスのスパイクタンパク質、およびヒトエンテロウイルスおよびリノウイルスのポリタンパク質遺伝子に標的化させた入れ子状のプライマーセットを用いる多重RT‐PCRアッセイを開示しており、これによって、4種類のパラインフルエンザウイルス(1、2、3、4AB)、ヒトコロナウイルス229EおよびOC43の迅速で感受性の高い同時検出および分類、およびエンテロウイルスおよびリノウイルスの一般検出が可能となる。RT−PCRによるSVDV検出が、文献22に開示されている。SARSコロナウイルスに対する1段間定量RT−PCRアッセイが、文献23に開示されている。文献24は、VZVに関するTaqMan対立遺伝子識別リアルタイルRT−PCRアッセイを開示している。仮性狂犬病ウイルス、パルボウイルス、およびサーコウイルスの迅速な同時検出のための多重PDRアッセイが、文献25にて開示されている。SV−40ポリオーマウイルス検出に関するリアルタイムFRETプローブPCRアッセイが、文献26に記載されている。文献27は、迅速で感受性の高いPCR−ELAHA法による、ヒトポリオーマウイルスJCおよびBKの同時検出および鑑別のためのアッセイを開示している。PCRおよび間接免疫蛍光アッセイによる、ヒト細胞株におけるブタサーコウイルスの検出が、文献28に開示されている。ビルナウイルス検出のためのPCR法が、文献29および30にて開示されている。
【0030】
本発明の検出方法は、種ウイルスおよび/または細胞基質および/または培地の段階から、ウイルス感染および増殖段階、ウイルス回収、任意のウイルス処理(例えば表面タンパク質の開裂、および/または摘出など。)、ワクチンの組成を通じて、ワクチン梱包まで、ワクチン製造の過程の任意の段階で実施される場合がある。従って、本発明に従って用いられるアッセイは、ウイルス培養物を創出するのに使用する物質に関して、ウイルス培養物自体に関して、およびウイルス培養物から抽出した物質およびこれに派生する物質に関して、実行し得る。このアッセイは、ワクチンまたは培養物1つずつについて行う必要はないが、通常の品質管理の一部として、適切な間隔で用いることができる。規制当局が毎年新ためて推奨する株のためにワクチン生産が変更される場合、新たな培養物を確立して新たな品質管理を受けることが必要とされる段階で、これは特に有用である。本発明のアッセイは、ワクチン製造のために使用される種ウイルスについて行うと有益である。
【0031】
本発明の方法では、インフルエンザウイルスを増殖させるのに使用する細胞株は、例えば無血清培地、無タンパク質培地など、任意の適切な培地にて培養される場合がある。インフルエンザウイルスの無血清培養に関する方法は文献2にて開示されており、無タンパク質培養に関する方法は文献2、また無タンパク質培養に関する方法は、文献および/または無タンパク質31にて開示されている。しかし、「無タンパク質」培地は、インフルエンザの増殖に必要な場合のある1つ以上のプロテアーゼ(例えばトリプシン)を含む場合がある。無血清培地は、血清添加物を含む場合がある。
【0032】
ウシ由来の物質を添加しない培地でワクチンが増殖していれば、それは好ましく、これによってその培養物が任意の可能性のあるBSE混入物およびウシウイルスを含有しないことが確保される。任意の海綿状脳症に関係する成分を含有しない培地が、好ましい。
【0033】
(インフルエンザワクチン)
本発明は、インフルエンザワクチンの品質管理に関係する。このワクチンは、生きたウイルスまたは、好ましくは不活化ウイルスの形態にある場合がある。ウイルスの不活化には、典型的には、ホルマリンまたはβ‐プロピオラクトンなど化学薬品での処理が含まれる。分割ウイルスは、ウイルスを界面活性剤(例えばエチルエーテル、ポリソルベート80、デオキシコレート、リン酸トリ‐N‐ブチル、トリトンX‐100、トリトンN101、臭化セチルトリメチルアンモニウムなど。)で処理し、準ウイルス粒子を作製することによって得られる。サブユニットワクチンは、共にインフルエンザ表面抗原である赤血球凝集素およびノイラミニダーゼを含む。またインフルエンザ抗原は、ビロソームの形態にて提供されることが可能である[32]。
【0034】
本発明のインフルエンザワクチンは、任意の適切なウイルス株(1種または複数種)に基づくものであることができる。ワクチンは、典型的には、A型インフルエンザの少なくとも1系統、および/またはB型インフルエンザの少なくとも1系統に由来する抗原を含む。ワクチンに関して推奨されるウイルス型は、シーズンごとに変化する。現在の間流行期において、ワクチンは、典型的には、2種のA型インフルエンザ株(H1N1およびH3N2)と1種のB型インフルエンザ株とが含まれており、3価のワクチンが好まれている。また、本発明は、H5株またはH7株などの汎発株に由来するウイルスを調製するのに適切であり、これらのウイルス株に対してヒト集団は免疫学的にナイーブである。流行期のワクチンは、1価である場合がある、または汎発株を加えた通常の3価ワクチンを基礎とする場合がある。
【0035】
本発明の方法にて使用されるインフルエンザウイルス(1種または複数種)は、レアソータント株である場合がある、および/または逆遺伝学の技術によって得られたものである場合がある。ウイルスは弱毒化されている場合がある。ウイルスは温度感受性である場合がある。ウイルスは冷順応されている場合がある。
【0036】
ワクチンが1種よりも多くのインフルエンザ株を含む場合、典型的には、別種の株を別々に増殖させ、ウイルスを回収して抗原を調製した後に混合する。従って、本発明の方法は、1種以上のウイルス株に由来する抗原を混合する方法を含む場合がある。病原体に対する試験は、当該混合の前、または後に行われる場合がある。
【0037】
ワクチンは、典型的には、注射(例えば皮下注射または筋肉内注射)によって患者に投与するために調製されるであろうが、例えば経鼻[33−35]、経口[36]、皮膚内[37、38]経皮(transcutaneous、transdermal)[39]など、他の投与経路がインフルエンザウイルスに関して周知されている
本発明に従って調製されるワクチンは、小児と成人の双方を治療するために使用される場合がある。インフルエンザワクチンは、現在、生後6ヶ月から、小児および成人の予防接種に使用するよう推奨されている。特に、免疫学的にナイーブである対象者が短期間に2回のワクチン接種を受けるように(例えば1ヶ月または2ヶ月の間隔で。)、安全性の問題は小児の予防接種に関して最も深刻である。
【0038】
本発明のワクチンは、補助薬を含有する場合がある。インフルエンザワクチンに使用されているアジュバントには、アルミニウム塩[40、41]、キトサン[42]、CpG 7909などのCpGオリゴデオキシヌクレオチド[43]、MF 59などの水中油型乳剤[44]、水中油中水型乳剤[45]、E.coli熱不安定毒素[34、46]およびこれらの無毒化変異物[47−48]、モノホスホリルリピッドA[49]およびこれの3−o−脱アシル化誘導体[50]、百日咳毒素変異物[51]、ムラミールジペプチド[52]などが含まれる。
【0039】
赤血球凝集素(HA)は、インフルエンザ不活化ワクチンにおける主要な免疫原であり、ワクチン投与量は、典型的には一元放射免疫拡散(SRID)法によって測定されるHAレベルを照会して標準化される。ワクチンは、典型的には、1株当たり約15μgのHAを含有するが、例えば小児に対して、または流行状態などでは、これよりも少ない投与量でも用いられる。1/2(例えば1株当たり7.5μのHA)、1/4、1/8など、分数量も用いられている[40、53]。従って、ワクチンは、インフルエンザ1株当たり1から20μgの間のHAを含有し、例えば約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9などであることが好ましい。
【0040】
このワクチンは、チオメルサールまたは2−フェノキシエタノールなどの保存剤を含有する場合がある。しかしながら、ワクチンは、例えばチオメルサールを含まないなど、水銀物質を実質的に含むべきでないこと(例えば5μ/ml未満など。)が好ましい[54、55]。水銀を含有しないワクチンがより好ましい。
【0041】
本発明のワクチンは、1回投与量当たり10ng未満(好ましくは1ng未満、より好ましくは100pg未満)の残余宿主細胞DNAを含有することが好ましいが、微量の宿主細胞DNAが存在する場合がある。例えばクロマトグラフィーなどの標準精製方法を用いて、ワクチン調製の過程で混入したDNAを除去し得る。残余宿主細胞DNAの除去は、例えばベンゾナーゼTM DNアーゼを用いるなど、ヌクレアーゼ処理によって強化し得る[1]。0.25ml量当たり<10ng(例えば<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含有するワクチンのように、15μgの赤血球凝集素につき<10ng(例えば<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含有するワクチンが好ましい。0.5ml量当たり<10ng(例えば<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含有するワクチンのように、50μgの赤血球凝集素につき<10ng(例えば<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含有するワクチンがより好ましい。
【0042】
このワクチンのこれら様々な特徴は、本発明の工程に適切な方法を包含させることによって達成される場合がある。従って、特別な方法には、以下が含まれる。:不活化させる方法、3つのウイルス株を混合して、3価のワクチンを作る方法、注射用にワクチンを組成する方法、このワクチンを患者に投与する方法、このワクチンをアジュバントと組み合わせる方法、HA量を測定する方法、例えば稀釈などによってHA量を調整する方法、保存剤を添加する方法、残余宿主細胞核酸を除去する方法、その他。
【0043】
(試験するための好ましい外来作用因子)
インフルエンザウイルスの一次臨床分離物内に、呼吸器系試料にて見つかる外来作用因子が存在する可能性がより高いため、本発明の好ましい実施様態は、呼吸器系試料にて見つかる外来作用因子、特にウイルスに関係する。呼吸器病原体には、RSV、PIV−3、SARS、コロナウイルス、アデノウイルス、リノウイルス、レオウイルス(「呼吸器腸病原性孤児ウイルス」)などが含まれる。単純ヘルペスウイルスも呼吸器系試料にて見つかることが可能である。
【0044】
本発明を用いる対象とする特に好ましい病原体は、レオウイルス(特に哺乳動物レオウイルス)、ポリオーマウイルス、ビルナウイルス、サーコウイルス、およびパルボウイルスである。また、単純ヘルペスウイルスに対する試験も好ましい。
【0045】
ワクチンを界面活性剤で処理した場合(例えば分割ウイルスワクチンまたはサブユニットワクチンなど。)、混入ウイルスをも分断することもし得ることから、この処理段階によってさらなる安全性が得られる。しかし、混入物が外被で覆われていない場合、界面活性剤処理はワクチンに対して何ら影響しないこととなるため、この処理自体は安全性を改善しない。従って、以下の病原体に対する試験は、これらが外被に覆われていないため、特に重要である。:ピコルナウイルス科、レオウイルス科、ビルナウイルス科、パルボウイルス科、サーコウイルス科、アデノウイルス科、ポリオーマウイルス科。
【0046】
Vero細胞基質を使用する場合、Vero細胞における高増殖性と組み合わさったこれらのウイルスの界面活性剤耐性は、ヒトエンテロウイルス、哺乳動物レオウイルス科、アデノウイルス科、およびポリオーマウイルス科に対する試験が特に重要であることを意味する。哺乳動物レオウイルス科はMDCK細胞でも高量増殖する。また、これらのウイルスは、不活化に対する耐性が最も大きいものの一つである。
【0047】
以下のことから、哺乳動物レオウイルス科の存在に関する試験は、本発明の好ましい一実施様態である。:(a)このウイルスはニワトリ卵では簡単に増殖しないため、これらのウイルスに対する試験は伝統的なインフルエンザウイルス製造の一部分ではなかった。(b)このウイルスは、MDCKおよびVero細胞株の双方にて、非制限的な増殖を示すことができる。(c)このウイルスは不活化に対して高い耐性を持ち、ワクチン加工の過程で継続的に安定している。(d)このウイルスは、外被で覆われていないため、インフルエンザウイルスを界面活性剤処理しても残存し得る。(e)このウイルスは呼吸器感染症に関係するため、一次ウイルス分離物に混入することが考えられる。ウイルスを調製する過程で鳥類の物質が使用されている場合、トリレオウイルス科に対する試験も重要であり、先に列挙した判断基準(b)から(e)は、等しくトリレオウイルス科に適用される
(他の生物学的事項)
インフルエンザワクチンの試験に有用であることに加え、本発明は、例えば抗体[56]、成長因子、サイトカイン、リンホカイン、受容体、ホルモン、ワクチン抗原、診断抗原などの組換えタンパク質など、他の生物学的事項にも用いることができる。
【0048】
(一般事項)
用語「含む、包含する」とは、「含む」および「からなる」を包含する。例えば、X「を含む」組成物は、Xのみからなってもよいし、または(例えばX+Yなどの)何か追加となるものを含んでもよい。
【0049】
数値Xに関係する「約」という語は、例えばx±10%を意味する。
【0050】
「実質的に」という語は、「完全に」を除くものではない。例えば「実質的に」Y「を含まない」ある組成物は、完全にYを含まない場合がある。必要な場合、「実質的に」という語が、本発明の定義から省略される場合がある。
【0051】
ウイルス株、増殖のための細胞株、投与量、組み合わせ、組成などを含む、インフルエンザワクチンに関するさらに全般的な情報は、文献57の第17および18章にて確認し得る。ウイルス増殖過程でのウイルスライフサイクルの詳細などインフルエンザウイルスに関する詳細は、文献14の第46章にて確認し得る。
【0052】
(本発明を実施するための様式)
(MDCK細胞)
発明者は、長期に渡る、ワクチン調製のために血清を含まない培地中のMDCK細胞でインフルエンザウイルスを増殖させる経験を有している。彼らは、この細胞が他の病原体にも適切な宿主であることを理解し、他の様々な病原体が同じ条件で増殖する能力を試験した(文献2にて記載されているように、特にMDCK 33016培養物、DSM ACC2219として沈積、血清を含まない培地中で。)。
【0053】
活性ウイルスの複製またはMDCK細胞における増殖に関する試験を行った時、RSウイルスRSV−A2およびRSV−Bに対する試験は陰性であった。パラインフルエンザPI−3株およびSV−5株は検出された。ヒトコロナウイルス229EおよびSARSに対する試験は陰性であり、ポリオウイルス1型、エコーウイルス6型、コクサッキーウイルスA16、およびコクサッキーウイルスB3に対する試験も同様であった。レオウイルスReo 3に対する試験は陽性であり、単純ヘルペスウイルスHSV−1に対する試験も同様であった。ヒトアデノウイルス1型、5型、および6型に対する試験は陰性であった。SV−40の試験は陰性であり、接種力価は14日間安定していた。イヌパルボウイルスおよびマウス微小ウイルス試験は陰性であり、ラウス肉腫ウイルスも同様であった。Mycoplasma hyorhinis試験は陰性であった。Chlamydia trachomatis試験は陰性であったが、感染後3〜5日の間、非常に低量の増殖は排除できなかった。
【0054】
さらに研究によって、MDCK細胞は、水疱性口内炎ウイルス(インディアナ)、ワクシニアウイルス、コクサッキーウイルスB5、レオウイルス2型、ヒトアデノウイルス4型および5型、ブタ水疱性発疹ウイルス、および伝染性イヌ肝炎ウイルスの増殖を支えることが可能なことが示された[58]。
【0055】
MDCK細胞で増殖することが考えられるウイルスの中で、パラインフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、およびアデノウイルスは胚含有ニワトリ卵でも増殖し得る。対照的に、ヒトレオウイルス(および他の哺乳動物レオウイルス)は、卵では容易に増殖しない。故に、インフルエンザウイルス生産のための細胞培養系としてMDCK細胞を使用する場合、品質管理検査はヒトレオウイルスによる混入汚染に対して調べるべきである。発明者は、MDCK懸濁培養物中で継代を繰り返す過程で、レオウイルス量は5ログ以上増殖し、一方アデノウイルスなどのウイルス量は6から10ログ減少するであろうと見積もっている。8ログ以上の単純ヘルペスウイルスの増殖が可能であることから、HSV量も調べるべきである。同様に、培養1週間後に、PIV−3では8ログの増殖が見られた。
【0056】
(Vero細胞)
MDCK細胞での試験作業に続いて、Vero細胞における病原体の複製を調べた。Vero細胞は、RSV−AおよびRSV−Bなどのニューモウイルス、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)、麻疹ウイルスなどのモルビリウイルス、流行性耳下腺炎ウイルスおよびパラインフルエンザウイルスなどのパラミクソウイルス、風疹ウイルス、ヒトおよびトリコロナウイルス、エンテロウイルス、エコーウイルスおよびコクサッキーウイルス、ブタSVDV、およびテッシェンタルファンウイルスなどのピコルナウイルス、哺乳動物およびトリレオウイルス、HSV−1およびHSV−2などのヘルペスウイルス、シミアンおよびヒトアデノウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、JC、BK、およびSV−40などのポリオーマウイルス、ガンボロウイルスなどのビルナウイルス、ブタサーコウイルス、イヌパルボウイルス、およびChlamydiaなどの病原体の増殖を支える。
【0057】
これらの病原体の中で、以下のものはニワトリ卵では増殖せず、従って、Vero細胞を基質として使用する場合の、インフルエンザワクチンの混入汚染に関する新たな危険物である。:RSV、HMPV、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ヒトコロナウイルス、エンテロウイルス、レオウイルス、VZV、ポリオーマウイルス、ブタピコルナウイルス、パルボウイルス、およびサーコウイルス。これらの病原体の内多数のものはMDCK細胞では増殖せず、このことは、インフルエンザワクチンの生産にはMDCK細胞がより安全な基質であることを示している。SARSコロナウイルスなどの新生ウイルスは、Vero細胞では増殖するがMDCK細胞上では増殖しない。同様に、VZVは、Vero細胞では増殖するが、ニワトリ卵またはMDCK細胞では増殖しない。不注意でこのコロナウイルスまたはVZVが混入した、Vero由来のインフルエンザワクチンを接種すると、SARSおよび/または水痘の医原性大流行に繋がると考えられ、これは人々にとっても、またワクチンの風評という点でも大きな災難と考えられる。しかし、これらの危険性を同定することによって、適切な品質管理機構を整備し得る。
【0058】
Vero細胞に加えて、PER.C6細胞もアデノウイルスの増殖を支える[59、60]。既知のウイルス特性に基づくと、PER.C6細胞も、少なくともパラインフルエンザウイルスおよびレオウイルスの増殖を支えると予期し得る。
【0059】
本発明は、例示のためだけに上記に記載されていること、本発明の範囲および精神の範囲内に留まりながら改変がなされ得ることが、理解される。
【0060】
参考文献(その内容が、本明細書において参考として援用される)
【0061】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物細胞株の培養物中で増殖させたインフルエンザウイルスからインフルエンザワクチンを調製するための方法であって、
該ワクチンおよび/または該培養物を、該細胞株中では増殖し得るが胚含有ニワトリ卵中では増殖しない感染因子の存在に関して試験する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
哺乳動物細胞株の培養物中で増殖させたインフルエンザウイルスからインフルエンザワクチンを調製するための方法であって、
該ワクチンおよび/または該培養物を、該細胞株中では増殖し得るが胚含有ニワトリ卵中では増殖しない感染因子を除去および/または不活化するために処理する工程、
を包含する、方法。
【請求項3】
前記哺乳動物細胞株が、MDCK細胞株、Vero細胞株、またはPER.C6細胞株である、請求項1または請求項2の方法。
【請求項4】
前記感染因子が、ニューモウイルス亜科、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス属、ピコルナウイルス科のエンテロウイルス属、哺乳動物レオウイルス科、およびビルナウイルス科からなる群より選択される、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記感染因子が、RSウイルス、麻疹ウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス、オルトレオウイルス、ロタウイルス、および伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳動物細胞株が、Vero細胞株であり、前記感染因子が、パラミクソウイルス科のメタニューモウイルス属、パラミクソウイルス科のルブラウイルス属、トガウイルス科、コロナウイルス科、ピコルナウイルス科のライノウイルス属、水痘帯状疱疹ウイルス、ポリオーマウイルス科、ブタサーコウイルス、ブタピコルナウイルス、クラミジア属細菌、およびパルボウイルス属からなる群より選択される、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記感染因子が、ヒトメタニューモウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、SARSコロナウイルス、ライノウイルスM株、SV−40ポリオーマウイルス、BKポリオーマウイルス、JCポリオーマウイルス、ブタ水疱病ウイルス、テッシェンタルファンウイルス、C.trachomatis、C.pneumoniae、C.psittaci、イヌパルボウイルス、およびブタパルボウイルスからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ワクチンおよび/または前記培養物を、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、マイコプラズマ属、トリサーコウイルス、およびトリレオウイルス科からなる群より選択される病原体の存在に関して試験する工程;
をさらに包含する、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第1の哺乳動物細胞株の培養物中にて増殖させたインフルエンザウイルスからインフルエンザワクチンを調製するための方法であって、
該ワクチンおよび/または該培養物を、該第1の細胞株中では増殖し得るが第2の哺乳動物細胞株中では増殖しない感染因子の存在に関して試験する工程;
を包含する、方法。
【請求項10】
第1の哺乳動物細胞株の培養物中にて増殖させたインフルエンザウイルスからインフルエンザワクチンを調製するための方法であって、
該ワクチンおよび/または該培養物を、該第1の細胞株中では増殖し得るが第2の哺乳動物細胞株中では増殖しない感染因子を除去および/または不活化するために処理する工程;
を包含する、方法。
【請求項11】
(a)前記第1の哺乳動物細胞株が、MDCK細胞株、Vero細胞株、またはPER.C6細胞株からなる群より選択され、(b)前記第2の哺乳動物細胞株が、MDCK細胞株、Vero細胞株、またはPER.C6細胞株からなる群より選択され、(c)該第1の哺乳動物細胞株と該第2の哺乳動物細胞株とは異なる、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の哺乳動物細胞株が、Vero細胞株であり、前記感染因子が、パラミクソウイルス科のメタニューモウイルス属、パラミクソウイルス科のルブラウイルス属、トガウイルス科、コロナウイルス科、ピコルナウイルス科のライノウイルス属、水痘帯状疱疹ウイルス、ポリオーマウイルス科、ブタサーコウイルス、ブタピコルナウイルス、クラミジア属細菌、パルボウイルス属、およびビルナウイルス科からなる群より選択される、請求項9〜11のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記感染因子が、ヒトメタニューモウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、SARSコロナウイルス、ライノウイルスM株、SV−40ポリオーマウイルス、BKポリオーマウイルス、JCポリオーマウイルス、ブタ水疱病ウイルス、テッシェンタルファンウイルス、C.trachomatis、C.pneumoniae、C.psittaci、イヌパルボウイルス、ブタパルボウイルス、および伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスからなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ワクチンおよび/または前記培養物が、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、マイコプラズマ属、トリサーコウイルス、およびトリレオウイルス科からなる群より選択される病原体の存在に関して試験される工程;
をさらに包含する、請求項9〜13のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記除去および/または不活化の後に、前記ワクチンおよび/または前記培養物を、前記感染因子の存在に関して試験する工程;
をさらに包含する、請求項2または請求項10に記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物細胞株の培養物中またはニワトリ卵中にて増殖させたインフルエンザウイルスからインフルエンザワクチンを調製するための方法であって、
該ワクチンおよび/または該培養物を、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、マイコプラズマ属、トリサーコウイルス、トリレオウイルス科、ビルナウイルス科からなる群より選択される病原体の存在に関して試験する工程;
を包含する、方法。
【請求項17】
前記病原体が、PIV−1、PIV−2、PIV−3、1型単純ヘルペスウイルス、2型単純ヘルペスウイルス、ヒトアデノウイルス、シミアンアデノウイルス、オルトレオウイルス、および伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記培養物を、免疫化学的検出および/または核酸検出によって試験する、請求項1〜17のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記検出が、ELISAおよび/またはPCR(RT−PCRを含む)によるものである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物細胞株の培養物中にて増殖させたインフルエンザワクチンであって、該細胞株中では増殖し得るが胚含有ニワトリ卵中では増殖しない感染因子が存在しないことが確認されている、インフルエンザワクチン。
【請求項21】
第1の哺乳動物細胞株の培養物中にて増殖させたインフルエンザワクチンであって、該第1細胞株中で増殖し得るが第2の哺乳動物細胞株中では増殖しない感染因子が存在しないことが確認されている、インフルエンザワクチン。
【請求項22】
MDCK細胞株、Vero細胞株、またはPER.C6細胞株の培養物中で増殖された、請求項18または請求項19に記載のワクチン。
【請求項23】
哺乳動物レオウイルスがRT−PCRによって検出不能である、インフルエンザワクチン。
【請求項24】
卵白アルブミンおよびニワトリDNAを含まない、請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
請求項1〜17のうちのいずれか1項に記載の方法によって得られるかまたは得ることが可能である、インフルエンザワクチン。
【請求項26】
生ウイルスワクチンである、請求項20〜25のうちのいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項27】
不活化ウイルスワクチンである、請求項20〜25のうちのいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項28】
ウイルス完全体ワクチン、分割ウイルスワクチン、またはウイルスサブユニットワクチンである、請求項27に記載のワクチン。
【請求項29】
3価インフルエンザワクチンである、請求項20〜28のうちのいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項30】
汎流行性インフルエンザウイルス株を含む、請求項20〜29のうちのいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項31】
インフルエンザウイルスH5株またはH7株を含む、請求項30に記載のワクチン。
【請求項32】
注入、鼻内経路、経口経路、皮内経路、経皮経路または経皮的経路によって患者に投与するための、請求項20〜31のうちのいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項33】
小児免疫用である、請求項20〜32のうちのいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項34】
1株当たり1〜20μgのインフルエンザウイルス赤血球凝集素を含む、請求項20〜33のうちのいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項35】
アジュバントを含む、請求項20〜34のうちのいずれか1項に記載のワクチン。

【公表番号】特表2008−512443(P2008−512443A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530801(P2007−530801)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003266
【国際公開番号】WO2006/027698
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(301072524)カイロン ベーリング ゲーエムベーハー アンド カンパニー (5)
【Fターム(参考)】