説明

インフレータ装置及びエアバッグ装置

【課題】自動車の乗員の側方に展開するサイドエアバッグ装置のエアバッグに好ましい特性でガスを供給する。
【解決手段】インフレータ装置12のノズル部22に、通路規制手段23を備える。通路規制手段23は、ガスの供給中に、制御装置の制御により、ノズル部22のガス通路部35に通路規制片23を進退し、ガス量を調整する。制御装置は、展開初期には、ガス通路部35の開口面積を全開として、エアバッグ14を迅速に展開する。エアバッグ14が展開した後は、ガス通路部35の開口面積を小さくして、ガス量を抑制し、長時間にわたりガスを供給してエアバッグ14が展開した状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の衝突時に乗員を保護するエアバッグにガスを供給するインフレータ装置及びインフレータ装置を備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車のステアリングホイールやインストルメントパネルに備えられ、ガスによりエアバッグを膨張させ自動車の乗員を保護するエアバッグ装置が用いられている。このようなエアバッグ装置は、センサからの信号により電流がガス発生装置であるインフレータに送られ、この電流によりインフレータが作動し、このインフレータから供給されたガスが袋状のエアバッグに送られ、エアバッグが急速に膨張する構成となっている。また、インフレータは、ガス発生剤の燃焼ガスを用いる燃焼型(火工式、パイロテクニックタイプ)の他、ボンベに貯蔵した貯蔵ガスを用いる貯蔵型(ストレージタイプ)や、貯蔵型と燃焼型とを複合したハイブリッドタイプなどが用いられている。
【0003】
このようなインフレータについて、例えば、横転時にも乗員を保護可能ないわゆるカーテンエアバッグやサイドエアバッグなどのエアバッグ装置に用いるインフレータとして、起動した直後に大量のガスを供給してエアバッグを迅速に展開させるとともに、長時間にわたりガスの供給を継続して内圧を維持する特性などが求められる場合がある。
【0004】
この点、それぞれ異なる特性でガスを供給する複数のガス供給部を備え、これらガス供給部を独立して制御し、あるいは時間差を有して作動させ、好ましい特性でガスを供給することを図ったインフレータが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−225670号公報 (図3、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のように、複数のガス供給部を独立して制御する構成では、構成が複雑になり、製造コストが上昇する問題を有している。また、互いに独立して作動するガス供給部から供給されるガスを混合して噴射する構成では、複数のガス流が互いに干渉などするため、シミュレーションによっても適切な構成の確定は容易ではなく、製造コストが上昇する問題を有している。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、所望の特性を容易に実現できるとともに製造コストを低減できるインフレータ装置及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のインフレータ装置は、エアバッグにガスを供給して展開させるインフレータ装置であって、ガスを供給するガス供給部と、このガス供給部から供給されるガスが通過するガス通路部を設けたノズル部と、前記ガス通路部を通過するガス量を規制可能な通路規制手段と、前記通路規制手段を制御してガスの供給中に前記開口面積を変化させる制御装置とを具備するものである。
【0008】
そして、この構成では、ガス供給部からガスを供給中に、制御装置の制御により通路規制手段でガス量を変化させることにより、好ましい特性が容易に実現される。ガス供給部の構成が簡略化され、構造及び設計が簡略化されるとともに、制御手段の設定により特性の変更が容易になり、汎用性が向上し、製造コストが低減される。
【0009】
請求項2記載のインフレータ装置は、請求項1記載のインフレータ装置において、通路規制手段は、ガス通路部に対して進退可能に支持されこのガス通路部の開口面積を変化させる通路規制片と、この通路規制片を駆動するアクチュエータとを備えたものである。
【0010】
そして、この構成では、簡略な構成で通路規制手段が形成され、製造コストが低減される。
【0011】
請求項3記載のインフレータ装置は、請求項1または2記載のインフレータ装置において、制御装置は、最初にガス量を最大としてエアバッグを迅速に展開させる展開初期制御と、この展開初期制御に続き、ガス量を小さくしてエアバッグが展開した状態を維持する展開維持制御とを行うものである。
【0012】
そして、この構成では、最初にガスを大量に供給してエアバッグを迅速に展開させ、その後ガスの供給量を抑制して比較的長い時間エアバッグが展開した状態を維持するとの好ましい特性が容易に実現される。
【0013】
請求項4記載のインフレータ装置は、請求項3記載のインフレータ装置において、制御装置は、展開維持制御に続き、ガス供給部からのガスの供給量の低減に応じてガス量を大きくする展開後期制御を行うものである。
【0014】
そして、この構成では、後期に、ガス供給部からのガスの供給量の低減に応じてガス量を大きくすることにより、エアバッグが乗員を保護できる状態を可能な限り長く維持するとの好ましい特性が容易に実現される。
【0015】
請求項5記載のエアバッグ装置は、請求項1ないし4いずれか一記載のインフレータ装置と、このインフレータ装置に接続されたエアバッグとを具備したものである。
【0016】
そして、この構成では、請求項1ないし4いずれか一記載のインフレータ装置を備えたため、所望の特性が容易に実現されるとともに製造コストが低減される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のインフレータ装置によれば、ガス供給部からガスを供給中に、制御装置の制御により通路規制手段でガス量を変化させることにより、エアバッグを容易に好ましい特性で展開できる。ガス供給部の構成を簡略化でき、構造及び設計を簡略化できるとともに、制御手段の設定により特性の変更が容易になり、汎用性を向上し、製造コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のインフレータ装置及びエアバッグ装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1及び図2において、10はエアバッグ装置で、このエアバッグ装置10は、被取付部材である自動車の車室の座席(シート)に取り付けられ、側面衝突の際に座席の側面から展開し、座席に着座した被保護物である乗員と対向物である車体のドアとの間に膨張展開して乗員を保護するいわゆるサイドエアバッグ装置を構成している。なお、以下の説明において、前後、両側、上下などの方向は、自動車の直進方向を基準とし、図1におけるFが前方、Uが上方である。
【0020】
そして、このエアバッグ装置10は、ガスを発生させ噴射するインフレータ装置12と、このインフレータ装置12が供給するガスにより膨張展開する袋状のエアバッグ14とを備え、さらに、図示しないが、これらインフレータ装置12とエアバッグ14とを連結して座席に固定するリテーナとも呼ばれる固定具、この固定具に一体的に形成されたガス案内体、及びこれら部材を収納するケース体となどを備えている。
【0021】
そして、インフレータ装置12は、インフレータ20と、このインフレータ20に接続された図示しない制御装置とを備えている。そして、インフレータ20は、略円柱状の本体部21と、この本体部21の一端部から突設されたノズル部22と、このノズル部22の部分に取り付けられた通路規制手段23とを備えている。そして、このインフレータ20は、いわゆるハイブリッドタイプで、本体部21の内側に、ガス源であるガス供給部24として、円柱状の空間である第1のガス供給部25と、この第1のガス供給部25のノズル部22側に直列に連通する円柱状の空間である第2のガス供給部26とを備えている。また、これら第1のガス供給部25と第2のガス供給部26との間、及び第2のガス供給部26とノズル部22との間は、それぞれクロージャーディスクあるいはバーストディスクなどとも呼ばれる円盤状の蓋体27,28で閉塞されている。また、これら蓋体27,28は、本体部21の中心軸上に相対向して配置されている。
【0022】
そして、第1の供給部25は、内部にガス発生剤が充填されているとともに、基端部に、このガス発生剤に点火して燃焼させる点火器であるスクイブ30が備えられている。そして、このスクイブ30は、端子部31及びリード線32を介して、制御装置に電気的に接続されている。一方、第2の供給部26は、ボンベであり、窒素ガス(N2)の他、ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの混合ガスが選択され圧縮して充填されている。なお、本実施の形態では、第1のガス供給部25より第2のガス供給部26の方が容積が大きく形成されている。
【0023】
また、ノズル部22は、ガス供給口、ガスノズル、あるいはディフューザなどとも呼ばれるもので、本体部21の一端部から、本体部21より径寸法の小さい円柱状に突設されている。そして、このノズル部22の内側には、第2のガス供給部26に連通する円柱状の空間であるガス通路部35が形成されている。そして、このノズル部22は、先端部は閉塞されているとともに、周面には、複数の円孔状のガス吐出口37が形成されている。また、ガス通路部35は、ガスの流量、すなわち単位時間に流出するガスの量であるマスフローレート(m〔Kg/s〕)を主として規定するオリフィスであり、このガス通路部35の断面積すなわち開口面積を変えることで、マスフローレート(m)が変化し、インフレータ装置12の特性が変化する。すなわち、エアバッグ14に供給するガス量(充填モル数)(m〔kg/s〕)、すなわちエアバッグ内に流入するガスの質量流量速度は、以下の式に示されるように、ガス通路部35の開口面積(At〔m〕)、すなわち、スロートと呼ばれるガス通路部35の断面積が最小となる部分の最小断面積に比例する。
【0024】
m=At P1 k ([{2/(k+1)}{(k+1)/(k−1)}]/(k R T1))1/2
なお、この式で、P1はインフレータのガス圧力〔Pa〕、kはインフレータのガス比熱比、Rはガス定数〔J/kg・K〕、T1はインフレータのガス温度〔K〕であり、流路を流れるガスは理想気体であり、流れは等エントロピ変化であると仮定している。
【0025】
さらに、このガス通路部35には、図1及び図2に示すように、基端側に位置して、弁座38が設けられている。この弁座38は、第1及び第2のガス供給部25,26の軸方向すなわちガス通路部35の軸方向と直交する方向にノズル部22の壁部を貫通する軸受部38aと、この軸受部38aに対向して壁部が凹設された凹設部38bとを備えている。
【0026】
また、通路規制手段23は、通路規制片41と、このこの通路規制片41を進退駆動するアクチュエータ42とを備えている。そして、通路規制片41は、ノズル部22の弁座38に進退可能に組み合わせられたニードル弁であり、軸受部38aに進退可能に気密に支持されている。また、アクチュエータ42は、電磁式であり、コイル44を備え、このコイル44がリード線45を介して制御装置に接続されている。そこで、この通路規制片41は、アクチュエータ42への通電により進退駆動され、軸受部38a内まで後退した状態(後退位置)で、ガス通路部35の開口面積を最大とし、先端部が凹設部38bされる前進限まで前進した状態(前進位置)でガス通路部35の開口面積を最小とするとともに、これら最大の開口面積と最小の開口面積との間で開口面積を変化できるようになっている。
【0027】
また、制御装置は、CPUなどを備え、インフレータ装置12に接続されているとともに、単数あるいは複数の図示しないセンサに接続され、これらセンサからの信号に基づき、すなわち乗員や衝突の状態に応じて、インフレータ装置12のスクイブ30とアクチュエータ42とに例えばマイクロ秒(ms)単位で信号である電力を供給するようになっている。
【0028】
また、エアバッグ14は、1枚あるいは複数枚のパネルとも呼ばれる基布を縫合して扁平な袋状に構成されている。そして、この袋体の内側が、ガスが供給されて膨張する膨出部となるとともに、この膨出部の後端部の下側部に、インフレータ装置12が配置されるガス導入部が設定されている。また、膨出部には、必要に応じて排気口(ベントホール)が形成されている。
【0029】
そして、このエアバッグ装置10は、インフレータ装置12と固定具とを組み合わせた組立体を構成し、この組立体をエアバッグ14に挿入するとともに、適宜の状態にエアバッグ14を折り畳んで構成される。そして、このエアバッグ装置10は、必要に応じてケースに収納した上で、座席の側部に収納し、固定具を座席のフレームなどに固定することにより、自動車の座席に取り付けられる。
【0030】
次に、このインフレータ装置12及びエアバッグ装置10の動作を説明する。
【0031】
図3は、インフレータ装置12からエアバッグ14に供給されるマスフローレートの経時的な変化を示すいわゆるマスフロー波形のグラフであり、実線Zはこのインフレータ装置12のマスフロー波形、破線Xは比較例のマスフロー波形である。
【0032】
まず、通常時は、制御装置により、インフレータ装置12の通路規制片41は、軸受部38a内まで後退した状態となり、すなわち、制御装置は、ガス通路部35の開口面積が最大となる展開初期制御(i)を行っている。
【0033】
そして、センサからの信号により、制御装置が、側面衝突すなわち車体の側方からの衝撃あるいは車体の横転などを検出すると、制御手段はインフレータ装置12のスクイブ30に電力を供給する。すると、スクイブ30が作動して、第1のガス供給部25のガス発生剤に点火して燃焼させ、急速にガスを供給する。すると、このガスの圧力により、2個の蓋体27,28が破壊され、第1のガス供給部25のガスと第2の供給部26のガスとがほぼ同時にノズル部22に供給され、このノズル部22からエアバッグ14に供給される。
【0034】
この展開の最初期の状態は、展開初期制御(i)により、ガス通路部35の開口面積は最大となっているため、エアバッグ14は、乗員がドアパネルあるいはエアバッグ14に当接するよりも早く、乗員とドアパネルとの間の狭い空間に迅速に十分に膨張展開する。すなわち、エアバッグ14は、乗員に接触する前に、乗員の肩部、胸部、腹部などに対向して位置決め(ポジショニング)されたいわばフル展開状態となる。
【0035】
次いで、エアバッグ14が十分に、ここでは完全に膨張展開すると想定される時点(点A)で、制御装置は、展開維持制御(ii)に移行する。すなわち、アクチュエータ42に信号すなわち電力を供給し、通路規制片41を前進させる駆動を行い、ガス通路部35の開口面積を小さく、ここでは最小として、エアバッグ14から抜けていくガス量と等しいガス量をエアバッグ14に供給し、ガスを節約しつつ内圧の維持に必要なガス量を供給し、エアバッグ14が十分に展開した状態を維持する。
【0036】
そして、このようにエアバッグ14が十分に展開した状態で、乗員がエアバッグ14に当接し、すなわちエアバッグ14が乗員の拘束を開始する(点B)。
【0037】
さらに、時間の経過に伴い、ガス供給部24から供給されるガス量は徐々に減少し、例えば第1のガス供給部25から供給されるガス量はガス発生剤の燃焼に伴い徐々に減少する。そこで、ガス量が減少し始める時点(点C)で、制御装置は、展開後期制御(iii)に移行する。すなわち、アクチュエータ42に信号すなわち電力を供給し、想定されるガス供給部24からのガスの供給量の低減に応じて、通路規制片41を徐々に後退させる駆動を行い、ガス通路部35の開口面積が徐々に大きくなるように、初期の全開状態まで変化させ、エアバッグ14が乗員を保護できる状態を可能な限り長く維持し、乗員が車体のドアパネルに底付きするまでエアバッグ14の内圧を保持することを可能とする。
【0038】
なお、グラフの点Dは、エアバッグ14による拘束が終了し、乗員がドアパネルに当接するいわゆる底付きの時点である。
【0039】
この点、比較例の構成(X)では、一定以上のガスの供給時間を確保するため、最初期に十分なガスを供給できず、本願の構成に比べて展開が遅くなっているとともに、展開の後期では、必要以上にガスを供給し、本願の構成に比べて乗員を保護できる時間が短くなっている。
【0040】
このように、本実施の形態によれば、インフレータ装置12からエアバッグ14にガスを供給して展開させ、乗員を保護するエアバッグ装置10について、インフレータ装置12のガス供給部24からガスを供給している過程で、制御装置の制御に基づき、アクチュエータ42により通路規制片41を進退駆動させ、ノズル部22のガス通路部35の開口面積を変化させ、所定のタイミングで適切なガス量を供給できるため、エアバッグ14にガスを効率良く供給し、好ましい特性を容易に実現できる。
【0041】
すなわち、何らの制御をしない場合には、最初期に急速にガスを供給することは可能だが比較的短時間にガスを放出してしまう特性のガス供給部24を備えたインフレータ20を用い、最初期には、開口面積を最大として乗員がエアバッグ14に当接する前にエアバッグ14を所望の形状まで迅速に展開させるガス量を供給する展開初期制御を行い、次いで、開口面積を小さくしてエアバッグ14が展開した状態を維持するガス量を供給する展開維持制御を行い、次いで、ガス供給部24からのガスの供給量の低減に応じて開口面積を拡大し乗員の保護に適切なガス量を供給する展開後期制御を行うことにより、最初にガスを大量に供給してエアバッグ14を迅速に展開させ、その後ガスの供給量を適切に抑制して長時間エアバッグ14が乗員を保護できる展開状態を維持し、乗員拘束時間を可能な限り長くするとの乗員の保護に好ましい特性を実現できる。
【0042】
特に、乗員の側方に展開して胸部から腰部を保護するいわゆるサイドエアバッグ装置は、狭い空間に迅速に展開し、その後、展開した状態を維持することが求められるため、サイドエアバッグ用のインフレータ装置12として、理想的な特性を実現できる。
【0043】
そして、複数のスクイブを備えるインフレータなど、複雑なガス供給部を備えた複雑な構造のインフレータ装置などを用いる必要がなく、ガス供給部24の構成を簡略化できるとともに、シミュレーションによる設計も容易になり、構造及び設計が簡略化され、製造コストを低減できる。すなわち、2個以上の独立したガス供給部を組み合わせると、ノズル部22の構成が複雑になり、1個のガス供給部から供給されるガス流が、2個目以降のガス供給部から供給されるガス流に影響を与え、特性の調整が困難になる可能性がある。これに対して本実施の形態の構成では、1個のガス流に規制を加えればよいため、複数のガス噴射口の相互干渉や、例えば、燃焼式のガス供給部からのガス流による後続のガス供給部の加熱や、貯蔵式のガス供給部からのガス流による後続のガス供給部の冷却など、先に起動したガス供給部のガス流で後のガス供給部に熱的な影響を生じるなどの複雑な問題を回避できる。
【0044】
また、アクチュエータ42により通路規制片41を進退させる構成は容易に実現でき、製造コストを低減できる。
【0045】
そして、ガスを効率良く利用できるため、インフレータ装置12の小形化、軽量化を容易にできる。
【0046】
また、制御手段の設定により特性の変更が容易になり、汎用性が向上し、製造コストを低減できる。
【0047】
また、制御装置による通路規制片41の進退の制御は、近年のシミュレーション技術を利用して解析し、この解析結果を実験にて実証あるいは調整して行うことができる。
【0048】
なお、上記の実施の形態では、制御装置は、ガス通路部35の開口面積を全開とする展開初期制御、開口面積を小さくする展開維持制御に続き、開口面積を徐々に拡大する展開後期制御を行ったがこの構成に限られず、展開初期制御及び展開維持制御のみを行い、展開後期制御を行わないこともできる。
【0049】
また、インフレータ20のガス源であるガス供給部24については、種々の構成を採ることができ、基本的にボンベに貯蔵した貯蔵ガスを用いる貯蔵式(ストレージタイプ)、基本的にガス発生剤の燃焼ガスを用いる火工式とも呼ばれる燃焼式(パイロテクニックタイプ)、あるいは上記のように貯蔵式と燃焼式とを組み合わせたハイブリッドタイプを用いることができる。
【0050】
また、通路規制手段23についても、上記の構成に限られず、通路規制片41を進退させるアクチュエータ42は、電磁式の他、燃焼ガスの圧力で駆動する火工式(パイロテクニック・アクチュエータ)を用いることもできる。また、通路規制片41も、進退するニードル弁の他、板状の弁体を進退あるいは回動させ、通気抵抗を変化させることもできる。但し、通路規制片41を火工式で駆動する場合にも、エアバッグ14を膨張展開させる主要なガス源はインフレータ20自身のガス供給部24とすることで、特性の調整を容易にできる。
【0051】
また、エアバッグ14は、基布のパネルを縫合して袋状とする他、袋織により袋状に形成することもできる。また、基布の素材も、ナイロン66、ポリエステルなどを用いることができる。さらに、基布にシリコーン樹脂をコーティングして気密性などの向上を図ることができ、特に、縫合により袋状とする場合には、縫合の縫い目にシリコーンシーラントを付与して、縫い目からのガス洩れを抑制し、ガスを効率良く使用することもできる。なお、このエアバッグ14の縫い目からのガスの洩れを考慮し、展開維持制御及び展開後期制御において、ガス量を大きく設定することもできる。すなわち、通路規制片41の前進位置をやや後ろに下げ、流路の規制を緩和することができる。
【0052】
また、上記の実施の形態では、自動車の座席の側部に備えられるサイドエアバッグ装置について説明したが、この構成に限られず、例えば、ドアパネルの上部のルーフサイドに沿って配置されるカーテンエアバッグ装置や、あるいは、ステアリングホイールや助手席乗員の前方のインストルメントパネルに備えられるエアバッグ装置に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば、自動車の乗員の側方にエアバッグを展開し、側面衝突時に乗員を保護する側突用のエアバッグ装置に用いるインフレータ装置及びエアバッグ装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のインフレータ装置及びエアバッグ装置の一実施の形態を示す説明図である。
【図2】同上インフレータ装置の図1のI−I断面相当位置の説明図である。
【図3】同上インフレータ装置のマスフローを示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
10 エアバッグ装置
12 インフレータ装置
14 エアバッグ
22 ノズル部
23 通路規制手段
24 ガス供給部
35 ガス通路部
41 通路規制片
42 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグにガスを供給して展開させるインフレータ装置であって、
ガスを供給するガス供給部と、
このガス供給部から供給されるガスが通過するガス通路部を設けたノズル部と、
前記ガス通路部を通過するガス量を規制可能な通路規制手段と、
前記通路規制手段を制御してガスの供給中に前記開口面積を変化させる制御装置と
を具備することを特徴とするインフレータ装置。
【請求項2】
通路規制手段は、ガス通路部に対して進退可能に支持されこのガス通路部の開口面積を変化させる通路規制片と、この通路規制片を駆動するアクチュエータとを備えた
ことを特徴とする請求項1記載のインフレータ装置。
【請求項3】
制御装置は、最初にガス量を最大としてエアバッグを迅速に展開させる展開初期制御と、この展開初期制御に続き、ガス量を小さくしてエアバッグが展開した状態を維持する展開維持制御とを行う
ことを特徴とする請求項1または2記載のインフレータ装置。
【請求項4】
制御装置は、展開維持制御に続き、ガス供給部からのガスの供給量の低減に応じてガス量を大きくする展開後期制御を行う
ことを特徴とする請求項3記載のインフレータ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか一記載のインフレータ装置と、
このインフレータ装置に接続されたエアバッグと
を具備したことを特徴とするエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−56975(P2009−56975A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227013(P2007−227013)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】