説明

インプリタピドを含む薬学的組成物およびこの薬学的組成物の使用方法

インプリタピドの固体分散剤を含む薬学的組成物が提供される。このような固体分散剤は、インプリタピドと、少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤とを含み得る。いくつかの実施形態では、開示される固体分散剤は、実質的に非結晶性のインプリタピドを含む。本発明の組成物および/または固体分散剤としては、約1:3〜約1:9(例えば、約1:3〜約1:4)の薬学的に受容可能なマトリックスに対するインプリタピドの重量比をもつものが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2006年5月18日に出願された、欧州特許出願第EP06010232.4号に対する優先権を主張し、この特許は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(分野)
本発明は、薬学的組成物、および、例えば、高脂血症性の障害の処置におけるその使用に関する。開示される薬学的組成物は、単一の薬剤としても、他の治療と組み合わせても使用され得る。
【背景技術】
【0003】
(背景)
高コレステロール血症および高脂血症は、冠動脈心疾患の発症に対する主要な危険因子であると考えられる。種々の疫学研究が、総コレステロールおよび低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールの低下を媒介する薬物が、心臓血管事象の有意な減少を伴うことを実証した。The National Cholesterol Education Program(NCEP)の最新のガイドラインは、ハイリスクの患者についての全体的な目標は、100mg/dL未満のLDLを達成することであると推奨しており、そして、このような患者について、70mg/dL未満のLDLレベルを達成するという目標を設定する治療上の選択肢がある。
【0004】
ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)インヒビターは、MTPが媒介する中性脂質の転移活性の強力なインヒビターとして開発された。ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)は、腸におけるキロミクロンと、肝臓における超低密度リポタンパク質の両方の合成に必須である。MTPは、ヘテロ二量体の転移タンパク質であり、アテロームを形成するアポリポタンパク質B(apoB)含有リポタンパク質の産生もまた制限する。それゆえ、MTPは、例えば、脂質異常症の処置、ならびに、アテローム性動脈硬化症の処置および/または予防に対する1つの標的である。
【0005】
インプリタピド(implitapide)は、肝細胞からのapoB−リポタンパク質分泌を阻害し、そして、MTP触媒性の脂質の輸送をジアステレオ選択的に阻害することが示されている、1つのこのような化合物である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
固体分散剤を含む薬学的組成物が提供される。このような固体分散剤は、インプリタピドおよび薬学的に受容可能なマトリックスを含む。企図される組成物および/または固体分散剤としては、約1:3〜約1:9(例えば、約1:3〜約1:4)の薬学的に受容可能なマトリックスに対するインプリタピドの重量比をもつものが挙げられる。
【0007】
いくつかの実施形態では、開示される組成物中のインプリタピドの実質部分は、非結晶状態である。このような組成物としては、インプリタピドの溶解度が、結晶性インプリタピドの溶解度と比較して増加しているもの、例えば、溶解度が、結晶性インプリタピドの溶解度を少なくとも400倍上回って増加しているものが挙げられ得る。
【0008】
組成物は、薬学的に受容可能なマトリックスを含み、この薬学的に受容可能なマトリックスは、例えば、糖、シクロデキストリンまたは糖アルコールのうち少なくとも1種を含み得る。異なる実施形態では、薬学的に受容可能なマトリックスは、薬学的に受容可能なポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンおよび/またはヒドロキシプロピルセルロースを含み得る。開示される組成物は、追加の活性成分(例えば、高脂血症性の疾患の処置に有用なもの)を含み得る。
【0009】
開示される組成物は、経口投与に適したものであり得、例えば、錠剤(例えば、即放性錠剤(immediate release tablet))の形態であり得る。
【0010】
一実施形態では、組成物は、インプリタピドを含む固体分散剤を含み得、上記組成物は、患者に投与されると、AUCにより測定した場合に、実質的に結晶性のインプリタピドの懸濁液を患者に投与したときと比較して、インプリタピドのより高い曝露量をもたらす。このより高い曝露量とは、少なくとも約7倍高いか、少なくとも約10倍高いか、約10倍〜約20倍高いか、または、少なくとも約20倍高くさえあり得る。
【0011】
別の実施形態では、インプリタピドおよび薬学的に受容可能なマトリックスを含む組成物が提供され、インプリタピドの、薬学的に受容可能なマトリックスに対する重量比は、約1:3〜約1:4である。
【0012】
開示される薬学的組成物を製造するためのプロセスもまた本明細書中に開示される。このようなプロセスは、a)インプリタピドおよび少なくとも1種の薬学的に受容可能なマトリックスを、溶媒または溶媒混合物(例えば、アセトンを含む溶媒または溶媒混合物)中に溶解して、溶液を形成する工程;b)この溶液を1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤と接触させる工程;c)上記溶媒または溶媒混合物を除去して、顆粒を形成する工程;ならびに、d)必要に応じて、上記顆粒を、1種以上のさらなる薬学的に受容可能な賦形剤とブレンドして、後ブレンド顆粒(post−blend granulate)を形成する工程を包含し得る。開示されるプロセスは、上記後ブレンド顆粒を細分する工程をさらに包含し得、そして必要に応じて、上記後ブレンド顆粒を1種以上のさらなる薬学的に受容可能な賦形剤でコーティングする工程をさらに包含し得る。
【0013】
一実施形態では、高脂血症性の障害の処置を必要とする患者において、高脂血症性の障害を処置するための方法が提供され、この方法は、開示される薬学的組成物の薬学的に有効な量を投与する工程を包含する。本発明はまた、高脂血症性の障害の処置のための医薬の製造における、本明細書中に開示される薬学的組成物の使用にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(説明)
本開示は、少なくとも部分的に、式Iの化合物の固体分散剤を含む薬学的組成物の使用に関する。このような組成物は、患者に対し有意な利益を提供し得る。
【0015】
式Iは、以下:
【0016】
【化1】

のように表され得る。
【0017】
用語「インプリタピド」、「式Iの化合物」または「本発明の化合物」とは、式Iに表されるような、(2S)−2−シクロペンチル−2−(4−((2,4−ジメチル−9H−ピリド(2,3−B)インドール−9−イル)メチル)−フェニル)−N−((1R)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)アセトアミドをいい、特定の実施形態では、その多形体、溶媒和物、水和物、薬学的に受容可能な塩またはこれらの組み合わせもいう。
【0018】
本発明は、少なくとも部分的に、固体分散剤(すなわち、薬物物質を主に結晶の状態から主に〜完全に非結晶の状態にする処方物)の形態の式Iの化合物を含む薬学的組成物に関し、この固体分散剤は、例えば、固体溶液、ガラス溶液(glass solution)、ガラス懸濁液(glass suspension)、結晶性キャリア中の非結晶沈殿物、共晶物もしくは偏晶物(monotectic)、化合物もしくは錯体構成物(complex formation)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
また、高脂血症性疾患の処置のための開示される組成物の、単一の薬剤として、または、他の脂質低下治療と組み合わせての、使用もまた本明細書中で企図される。
【0020】
インプリタピドの固体分散剤を含む処方物または組成物が本明細書中に開示される。例えば、このような処方物は、1部の化合物と、例えば、約3〜約9部のマトリックス形成剤(例えば、薬学的に受容可能なマトリックス)を含み得る。処方物は、約1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、また、さらに約1:10の、薬学的に受容可能なマトリックスに対するインプリタピドの重量比を含み得る。一実施形態では、約1部のインプリタピドに対し、約3〜約4部のマトリックス形成剤が、このような組成物中に存在し得る。このような化合物/マトリックス形成剤の比は、この薬物物質の溶解度を、数百倍(例えば、少なくとも100倍、200倍、また、さらに400倍)まで増やし得る。このような処方物はまた、結晶状態の化合物と比較して、その化合物のインビボでの効力の莫大な増加をもたらし得、したがって、簡便なサイズの、固体薬学的投薬形態を提供し得る。
【0021】
以下で、種々のタイプの固体分散剤(例えば、固体溶液、ガラス溶液、ガラス懸濁液、結晶性キャリア中の非結晶沈殿物、共晶物もしくは偏晶物、化合物もしくは錯体構成物、およびこれらの組み合わせ)は、まとめて、固体分散剤という。
【0022】
一局面では、本明細書中に開示される薬学的組成物は、少なくとも、式Iの化合物と薬学的に受容可能なマトリックスとを含む固体分散剤を含む。
【0023】
一局面では、固体分散剤を含む薬学的組成物が提供され、ここで、マトリックスは、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー、ポリアルキレングリコール(すなわち、ポリエチレングリコール)、ヒドロキシアルキルセルロース(すなわち、ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシアルキルメチルセルロース(すなわち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ビニルアルコール/ビニルアセテートコポリマー、ポリグリコール化グリセリド、キサンタンガム、カラゲナン、キトサン、キチン、ポリデキストリン、デキストリン、デンプンおよびタンパク質のような、薬学的に受容可能なポリマーを含む。
【0024】
本明細書中に提供される別の局面は、マトリックスを含む固体分散剤を含む薬学的組成物であり、ここで、マトリックスは、糖および/または糖アルコールおよび/またはシクロデキストリン(例えば、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、ラフィノース、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、イノシトール、トレハロース、イソマルトース(isomalt)、イヌリン、マルトデキストリン、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、または、スルホブチルエーテルシクロデキストリン)を含む。
【0025】
マトリックスの形成に有用であるか、または、開示される固体分散剤を含む組成物中に含まれ得るさらなる適切なキャリアとしては、アルコール、有機酸、有機塩基、アミノ酸、リン脂質、蝋、塩、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよび尿素が挙げられるがこれらに限定されない。
【0026】
マトリックス中の式Iの化合物の固体分散剤は、特定の追加の薬学的に受容可能な成分(例えば、界面活性剤、充填剤、崩壊剤、再結晶化インヒビター、可塑剤、脱泡剤、抗酸化物質、粘着性減少剤(detackifier)、pH調整剤、流動促進剤および滑沢剤)を含み得る。
【0027】
本発明の固体分散剤は、融合/融解技術、ホットメルト押出し、溶媒蒸発(すなわち、顆粒粉末のフリーズドライ、噴霧乾燥または成層)、共沈、超臨界流体技術および静電紡糸法のような、固体分散剤の製造についての当該分野で公知の方法に従って調製され得る。
【0028】
一実施形態では、式Iの化合物が実質的に非結晶性の薬学的組成物が提供される。
【0029】
本明細書中に開示される別の局面は、式Iの化合物の固体分散剤であり、ここで、マトリックスは、ポリビニルピロリドンポリマーである。
【0030】
別の局面は、式Iの化合物の固体分散剤であり、ここで、マトリックスは、ヒドロキシプロピルセルロースポリマーである。
【0031】
本明細書中に提供される薬学的組成物は、例えば、投与を必要とする患者に経口投与することによって所望の薬理学的作用を達成するために利用され得、そして、薬物の放出、バイオアベイラビリティおよび/または哺乳動物における患者間での変動性の点で、従来の処方物(例えば、結晶状態の薬物)よりも有益であり得る。本発明の目的に関し、患者は、特定の状態または疾患の処置を必要とする哺乳動物(ヒトを含む)である。
【0032】
経口投与に関し、本明細書中に記載される固体分散剤は、散剤、顆粒剤、ペレット、錠剤、カプセル、糖衣丸、チュアブル錠、分散錠、トローチ、薬用ドロップ、溶融物(melt)、溶液、懸濁液またはエマルジョンのような、固体または液体の調製物へと処方され得、そして、薬学的組成物の製造の当該分野で公知の方法に従って調製され得る。この目的に関して、固体分散剤は、従来の賦形剤(例えば、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、溶剤、界面活性剤、増粘剤および安定化剤、コーティング物質ならびに矯味矯臭剤、甘味料、矯味矯臭着色剤)と混合され得る。
【0033】
当業者は、先の情報を利用すれば、その最も完全な程度まで本発明を利用し得るものと考えられる。式Iの化合物の経口用処方物とは、広範囲の投薬量(例えば、1日の投薬が、1mg、10mg、100mg、また、さらに1g、およびこれを超える量)をいう。これは、例えば、組成物、および錠剤もしくはカプセルのサイズを修正することによって、そして/または、投与を必要とする患者に対し、1日あたり複数の錠剤もしくはカプセルを投与することによって、達成される。あるいは、固体分散剤の処方物はまた、散剤、顆粒、チュアブル錠もしくは分散錠のような形態で投薬されても、例えば、最適な投薬レジメンがもはや実現可能な錠剤またはカプセルのサイズと結び付かない場合には、使用前に任意の適切な固体処方物を適切な液体中に分散させることによって投薬されてもよい。
【0034】
本発明の新規薬学的組成物を用いて、経口経路により投与される活性成分(すなわち、式Iの化合物)の総量は、一般に、1日あたり体重1kgあたり約0.01mg〜約10mgの範囲である。単位投薬量は、約1mg〜約500mgの活性成分、好ましくは、5mg〜100mgの活性成分(例えば、約5mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、50mg、80mgまたは100mg)を含み得、そして、1日あたり1回以上、代表的には、1日に1回、2回または3回、投与され得る。
【0035】
本発明の薬学的組成物は、単一の薬剤として投与されても、1以上の他の治療と組み合わせて投与されてもよいが、この場合、この組み合わせは、受け入れられない有害な作用を引き起こさない。
【0036】
当業者は、先の情報および当該分野で利用可能な情報を利用すれば、その最も完全な程度まで本発明を利用し得るものと考えられる。本明細書中に示される本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、本発明に対して変更および修正がなされ得ることは、当業者に明らかであるはずである。
【0037】
実施例1、2および3は、本発明の化合物の固体分散剤の種々の調製物(散剤および錠剤)に言及する。本発明の化合物の代表的な固体分散剤処方物のインビボ試験は、実施例4(イヌ)および5(ヒト)に記載される。
【実施例】
【0038】
実施例1
式Iの化合物とポリビニルピロリドンとの1:3、1:4、1:6および1:9の固体分散剤の調製
キャップを取ったバイアル中で、1部の式Iの化合物を、それぞれ、3部、4部、6部または9部のポリビニルピロリドン(PVP−25/Kollidon 25)と混合する。この混合物を、全ての粉末が溶液になるまで、十分な量のアセトンおよびエタノールの混合物中に溶解する。キャップを取ったバイアルを、40℃に設定した真空オーブン中に置き、そして、少なくとも24時間にわたり乾燥させる。
【0039】
この処理の後、粉末の非結晶状態が達成される(このことは、例えば、X線回折測定法または溶解度の決定により同定され得る)。例えば、薬物:PVPの1:3の比は、溶解度の約400倍の増加をもたらす(0.1N HCl中、40mg/l 対 0.1mg/l)。
【0040】
実施例2
式Iの化合物とポリビニルピロリドンとの比が1:4の固体分散剤をベースとした、錠剤処方物の製造
式Iの薬物を、ポリビニルピロリドンと一緒に(比 1:4)、アセトンおよびエタノールの混合物に加え(比 薬物:アセトン:エタノール=1:24:6.4)、そして、透明な溶液が得られるまで撹拌する(必要な場合、バッチを暖める)。この溶液を、次いで、流動造粒プロセスにおいて、微結晶性セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムを含む粉末基材上に噴霧し、共沈の状態で薬物を含む顆粒を得る。高い嵩容量を減らすために、この顆粒を、ローラー圧縮で処理する。次の工程において、後ブレンド成分であるクロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムを加える。ブレンドした後、錠剤を、適切な打錠機で圧縮し、そして、最終的に、錠剤を、フィルムコーティングする(標準的なコーティング層は、Hypromelloseベースである)。代表的な組成物は、以下のとおりである(例えば、錠剤5mgおよび錠剤20mg):
【0041】
【表1】


【0042】
実施例3
式Iの化合物とポリビニルピロリドンとの比が1:3の固体分散剤をベースとした、錠剤処方物の製造
式Iの薬物を、ポリビニルピロリドンと一緒に(比 1:3)、アセトンおよびエタノールの混合物に加え(比 薬物:アセトン:エタノール=1:24:6.4)、そして、透明な溶液が得られるまで撹拌する。この工程を容易にするために、バッチをわずかに暖める。この溶液を、次いで、流動造粒プロセスにおいて、クロスカルメロースナトリウムからなる粉末基材上に噴霧し、共沈の状態を得る。高い嵩容量を減らすために、この顆粒を、ローラー圧縮で処理する。次の工程において、後ブレンド成分であるクロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムを加える。ブレンドした後、錠剤を、適切な打錠機で圧縮し、そして、最終的に、錠剤を、フィルムコーティングする(標準的なコーティング層は、Hypromelloseベースである)。
【0043】
代表的な組成物は、以下のとおりである(例えば、錠剤40mgおよび錠剤80mg):
【0044】
【表2】


【0045】
実施例4
式Iの化合物を含む種々の処方物のインビボ試験/イヌの運動性試験
イヌにおける運動性研究において、式Iの化合物を、体重1kgあたり1mgの用量にて、いくつかの処方物成分で、動物に投与する:
・固体分散剤は、実施例1に従う(比 1:3)
・結晶性の、微粉にされた薬物物質を含む懸濁液
・平均粒子径d50<1μmである結晶性の薬物物質を含む「ナノ懸濁液」
結晶性薬物の吸収は乏しく、血漿レベルが検出できなかったことが分かった;固体分散剤のみが、適度な血漿レベルと、計算可能なPKパラメーターとをもたらした。
【0046】
イヌの運動性試験において、実施例2に従う式Iの化合物の錠剤処方物(比 1:4)を結晶性化合物の懸濁液(粉砕して平均粒子径d50<1μmの「ナノ懸濁液」とする)と比較すると、実施例1に従う処方物は、AUC値に関して、約20倍高い曝露量をもたらしたことが見出され得る(図1を参照のこと)。
【0047】
実施例5
式Iの化合物を含む種々の処方物のインビボ試験/ヒトの治験
標準的な第I相のヒトの治験において、実施例2に従う式Iの化合物の錠剤処方物(用量強度=1mg)をこの化合物の結晶性懸濁液(用量=20mg;粉砕して平均粒子径d50<1μmの「ナノ懸濁液」とする)と比較すると、実施例1に従う処方物は、AUC値に関して、約7倍高い曝露量をもたらすことが見出され得る。さらに、ヒトにおいて行った臨床プログラムは、懸濁液中の結晶性の粉砕した薬物物質の用量を10mgから20mgに増やしたときに、CmaxおよびAUCの増加が見られないことを明らかにする(参照.AUC10mg=17.98μgh/l 対 AUC20mg=17.92μgh/l)。実施例2に従う錠剤は、かなり高い用量(例えば、80mg以上)まで投与され得、全用量範囲にわたってほぼ用量依存性であり得る。
【0048】
【表3】

式Iの化合物の固体分散剤を含むこの新しいタイプの薬学的組成物は、改善されたバイオアベイラビリティをもたらし得、そして、高脂血症性の疾患の処置に関して全体的に優れた効能をもたらし得ることが示され得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、イヌの運動性研究での、懸濁液における粉砕した結晶性薬物と共沈錠剤(n=6匹の動物)との比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体分散剤を含む薬学的組成物であって、該固体分散剤は、インプリタピドおよび薬学的に受容可能なマトリックスを含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記インプリタピドの前記薬学的に受容可能なマトリックスに対する重量比が、約1:3〜約1:9である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記インプリタピドの前記薬学的に受容可能なマトリックスに対する重量比が、約1:3〜約1:4である、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記インプリタピドの実質部分が、非結晶状態である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記インプリタピドの溶解度が、結晶性インプリタピドの溶解度と比較して増加している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記インプリタピドの溶解度が、少なくとも400倍増加している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記薬学的に受容可能なマトリックスが、糖、シクロデキストリンまたは糖アルコールのうち少なくとも1種を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的に受容可能なマトリックスが、薬学的に受容可能なポリマーを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記薬学的に受容可能なポリマーが、ポリビニルピロリドンである、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記薬学的に受容可能なポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
経口投与用組成物であり、請求項1〜10のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
追加の活性成分をさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の薬学的組成物を含む、錠剤。
【請求項14】
即放性錠剤である、請求項12に記載の錠剤。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬学的組成物を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、以下:
a)前記インプリタピドおよび少なくとも1種の薬学的に受容可能なマトリックスを、溶媒または溶媒混合物中に溶解して、溶液を形成する工程;
b)該溶液を1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤と接触させる工程;
c)該溶媒または溶媒混合物を除去して、顆粒を形成する工程;ならびに
d)必要に応じて、該顆粒を、1種以上のさらなる薬学的に受容可能な賦形剤とブレンドして、後ブレンド顆粒を形成する工程
を包含する、プロセス。
【請求項16】
前記後ブレンド顆粒を細分する工程をさらに包含する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記後ブレンド顆粒を、1種以上のさらなる薬学的に受容可能な賦形剤でコーティングする工程をさらに包含する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記溶媒または溶媒混合物がアセトンを含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
インプリタピドを含む固体分散剤を含む組成物であって、該組成物は、患者に投与されると、AUCにより測定した場合に、実質的に結晶性のインプリタピドの懸濁液を患者に投与したときと比較して、インプリタピドのより高い曝露量をもたらす、組成物。
【請求項20】
前記より高い曝露量は、少なくとも約7倍高い、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記より高い曝露量は、少なくとも約20倍高い、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項22】
前記固体分散剤が、さらに、薬学的に受容可能なポリマーを含む、請求項19〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
インプリタピドおよび薬学的に受容可能なマトリックスを含む組成物であって、該インプリタピドの該薬学的に受容可能なマトリックスに対する重量比は、約1:3〜約1:4である、組成物。
【請求項24】
高脂血症性の障害の処置を必要とする患者において、高脂血症性の障害を処置するための方法であって、請求項1〜12または19〜23のいずれか1項に記載の薬学的組成物の薬学的に有効な量を投与する工程を包含する、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−537505(P2009−537505A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510557(P2009−510557)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050275
【国際公開番号】WO2007/135461
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】