説明

インペラ用ガイド板及び曝気撹拌機

【課題】縦軸型の曝気撹拌機を有するオシキデーションディッチ槽において、オシキデーションディッチ槽内全体に効率よく循環流を形成させることができるインペラ用ガイド板及び曝気撹拌機を提供すること。
【解決手段】無終端状に形成された循環水路と、循環水路における水面付近に設置され略鉛直方向の軸線回りに回転するインペラ2とを備えるオキシデーションディッチにおいてインペラ2に対して用いられるインペラ用ガイド板1であって、インペラ2の側方に離間して配置され、インペラ2の下流側が開放されると共に、インペラ2の少なくとも上流側を側方から覆うことにより、インペラ2の回転による上流側への噴出流をインペラ2の下流側へ誘導する形状とされている、インペラ用ガイド板1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラ用ガイド板及び曝気撹拌機に関する。
【背景技術】
【0002】
下水の処理方法として、無終端状の循環水路が形成されたオシキデーションディッチ槽を使用する方法が知られている(特許文献1、2参照)。このオシキデーションディッチ槽における曝気撹拌機としては、縦軸型、横軸型及び斜軸型の3種類が知られている。これらのうち、横軸型の曝気撹拌機は撹拌羽根に夾雑物が絡まりやすく、斜軸型の曝気撹拌機は撹拌力が弱いためにオシキデーションディッチ槽当たりの設置台数を増やす必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−252681号公報
【特許文献2】特開2002−320994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、縦軸型の曝気撹拌機は、処理水の水面上にインペラの一部を出した状態でインペラを回転させて表面曝気を、処理水にインペラを水没させた状態でインペラを回転させて無酸素撹拌をそれぞれ行うと共に、オシキデーションディッチ槽内全体に循環流を良好に形成させるものである。しかしながら、インペラの回転により発生する撹拌流は、インペラの下流側だけでなく上流側にも噴出するため、上流側に噴出した撹拌流が良好な循環流の形成を妨げ、下水処理性能を低下させる虞がある。特に、曝気撹拌機を循環水路の直線部分に設置する場合には、循環流に対する逆流として作用するため、その傾向が顕著となる。
【0005】
そこで本発明は、縦軸型の曝気撹拌機を有するオシキデーションディッチ槽において、オシキデーションディッチ槽内全体に効率よく循環流を形成させることができるインペラ用ガイド板及び曝気撹拌機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、無終端状に形成された循環水路と、循環水路における水面付近に設置され略鉛直方向の軸線回りに回転するインペラとを備えるオキシデーションディッチにおいてインペラに対して用いられるインペラ用ガイド板であって、インペラの側方に離間して配置され、インペラの下流側が開放されると共に、インペラの少なくとも上流側を側方から覆うことにより、インペラの回転による上流側への噴出流をインペラの下流側へ誘導する形状とされている、インペラ用ガイド板を提供する。このようなインペラ用ガイド板(以下、単に「ガイド板」ともいう。)によれば、インペラの回転による上流側への噴出流を、ガイド板で堰き止めつつガイド板の形状に沿ってインペラの下流側へ誘導することができるため、オシキデーションディッチ槽内全体に効率よく循環流を形成させることができる。
【0007】
ここで、ガイド板の形状は、インペラの回転に沿う方向に延びるにつれて前記インペラとの離間距離が大きくなる形状とされていることが好ましい。このような形状であると、インペラの回転による上流側への噴出流を、ガイド板の形状に沿ってインペラの下流側へ容易かつ効率的に誘導することができる。
【0008】
また、本発明のガイド板の上部に、当該ガイド板の内外を連通する連通部を有することが好ましい。このような連通部があると、ガイド板の上流側の水面に形成されガイド板に堰き止められて当該ガイド板の外側に溜まるスカムが、連通部を通じて撹拌流による吸引が作用してガイド板の内側へ移動しガイド板に沿って下流側へ誘導されるため、ガイド板の外側にスカムが溜まることを防止することができる。
【0009】
また、本発明は、インペラと、上記ガイド板とを備える曝気撹拌機であって、インペラが、循環水路の直線部分に配置される曝気撹拌機を提供する。このような曝気撹拌機によれば、特に、循環水路の直線部分で問題となるインペラの回転による上流側への噴出流(循環流に対する逆流)を、ガイド板で堰き止めつつガイド板の形状に沿ってインペラの下流側へ誘導することができるため、オシキデーションディッチ槽内全体に、より効率よく循環流を形成させることができる。
【0010】
また、本発明は、インペラと、上記ガイド板とを備える曝気撹拌機であって、インペラを回転させる回転軸の位置が、循環水路を横断する線分の中心位置から、インペラが平面視反時計回りに回転する場合は循環水路を区画する区画壁の側にずれた位置に存在し、インペラが平面視時計回りに回転する場合はオキシデーションディッチの周囲壁の側にずれた位置に存在する曝気撹拌機を提供する。このような曝気撹拌機によれば、インペラの回転による撹拌流が循環水路の循環流に対して逆流となる領域が小さくなるため、オシキデーションディッチ槽内全体に、より効率よく循環流を形成させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、縦軸型の曝気撹拌機を有するオシキデーションディッチ槽において、オシキデーションディッチ槽内全体に効率よく循環流を形成させることができるインペラ用ガイド板及び曝気撹拌機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インペラと本実施形態のインペラ用ガイド板とを備える曝気撹拌機を循環水路の上流側から見た正面図である。
【図2】インペラと本実施形態のインペラ用ガイド板とを備える曝気撹拌機を循環水路の直線部分に配置した場合の平面図である。
【図3】本実施形態のインペラ用ガイド板を備えない曝気撹拌機を循環水路の直線部分に配置した場合のインペラの回転により発生する噴出流の流れを示す平面図である。
【図4】本実施形態のインペラ用ガイド板を備える曝気撹拌機を循環水路の直線部分に配置した場合のインペラの回転により発生する噴出流の流れを示す平面図である。
【図5】上部に連通部を有するインペラ用ガイド板の部分斜視図である。
【図6】インペラ用ガイド板の連通部を通じてスカムがガイド板の内側へ移動する流れを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、インペラ2と本実施形態のガイド板1とを備える曝気撹拌機10を循環水路の上流側から見た正面図である。この曝気撹拌機10は、インペラ2及びガイド板1の他に、略鉛直方向の軸線を有し下部にインペラ2が設けられた回転軸5及びインペラ2を回転駆動させるための回転駆動力を生じる電動機3と、電動機3からの回転駆動力を回転軸5に伝達し回転軸5を回転させる減速機4とを備えている。
【0015】
図2は、インペラ2と本実施形態のガイド板1とを備える曝気撹拌機10をオキシデーションディッチ槽30内の循環水路の直線部分に配置した場合の平面図である。オキシデーションディッチ槽30は、長円形に形成された周囲壁12と、排水等の被処理水Wが満たされたオキシデーション槽30内を中央で仕切る平面視直線状の区画壁14とを有し、無終端状の循環水路を形成したものである。
【0016】
図2では、インペラ2が循環水路の直線部分に配置されると共に区画壁14側に配置される態様を示した。ここで、インペラ2は、排水等の被処理水Wの水面付近に浸漬されて回転することで被処理水Wを撹拌及び曝気する。この撹拌は同時に、オシキデーションディッチ槽30内全体に循環流を形成する。そして、インペラ2は反時計回りに回転し、矢印で示した方向に循環流を形成する。
【0017】
また、曝気撹拌機10は、インペラ2を反時計回りに回転させる回転軸の位置が、循環水路を横断する線分の中心位置から循環水路を区画する区画壁14の側にずれた位置に存在する。言い換えると、循環流の流れる方向に対して、インペラ2の回転方向が逆向きとなる側が、区画壁14側に近づいた状態となるように曝気撹拌機10が配置される。
【0018】
そして、このオシキデーションディッチ槽30にあっては、所定時間撹拌曝気することでオキシデーションディッチ槽30全体を好気性領域とし、その後所定時間インペラ2を低速回転させ撹拌のみを行うことでオキシデーションディッチ槽30全体を嫌気性領域とする。なお、インペラ2として、特開平11−290885号公報又は特開2010−203351号公報に開示されている昇降可能なものを用いて、所定時間撹拌曝気することで槽全体を好気性領域とし、その後所定時間インペラ2を被処理水W内に浸漬して撹拌のみを行うことで槽全体を嫌気性領域とするオキシデーションディッチとすることもできる。更に、インペラ2の下流側の所定領域を好気性とし、そこからインペラ2の上流側までを嫌気性とするオキシデーションディッチとすることもできる。
【0019】
曝気撹拌機10において、ガイド板1は、図1及び図2に示すように、インペラ2の側方に離間して配置され、例えばボルト締め等により区画壁14に固定される。ここで、ガイド板1は、インペラ2の下流側が開放されると共に、インペラ2の少なくとも上流側を側方から覆うように配置され、その形状は、インペラ2の回転による上流側への噴出流をインペラ2の下流側へ誘導する形状とされている。具体的には、ガイド板1の形状は、インペラ2の回転に沿う方向(図2及び図4の反時計回り方向)に延びるにつれてインペラ2との離間距離が大きくなる形状とされている。また、ガイド板1の形状は、インペラ2の回転に沿う方向に対して曲線からなり、インペラ2の回転に沿う方向に延びるにつれて曲率が連続的に徐々に小さくなる形状とされている。
【0020】
ガイド板1の高さ方向の位置は、インペラ2の高さと概ね一致し、その高さ方向の長さは、インペラ2の回転により上流側へ向かって発生する噴出流を堰き止めるために十分な程度の長さを有するものとする。従って、当該噴出流が及ばない水深部、すなわちガイド板1の鉛直方向下側は、循環流が通過する領域となる。
【0021】
ガイド板1の材質としては、被処理水Wに長期間浸漬しても腐食せず、かつ、循環流やインペラ2の撹拌流に耐える剛性を有するものであれば特に制限なく採用することができ、例えばステンレススチールやプラスチック等を採用することができる。また、ガイド板1の表面が防腐処理されていることが特に好ましい。
【0022】
図3は、本実施形態のガイド板1を備えない曝気撹拌機を循環水路の直線部分に配置した場合のインペラ2の回転により発生する噴出流の流れを示す平面図である。曝気撹拌機が本実施形態のガイド板1を備えない場合、図3中の矢印で示したように、反時計回りに回転するインペラ2の回転により発生する噴出流は、インペラ2の下流側だけでなく、循環流の逆流となる上流側及び周囲壁12側にも噴出するため、上流側及び周囲壁12側に噴出した撹拌流が良好な循環流の形成を妨げ、下水処理性能を低下させる虞がある。
【0023】
図4は、本実施形態のインペラ用ガイド板1を備える曝気撹拌機10を循環水路の直線部分に配置した場合のインペラ2の回転により発生する噴出流の流れを示す平面図である。曝気撹拌機が本実施形態のガイド板1を備える場合、図4中の矢印で示したように、図3において上流側及び周囲壁12側へ噴出していた噴出流が、ガイド板1で堰き止められつつ、ガイド板1の形状に沿ってインペラ2の下流側へ誘導される。このため、曝気撹拌機10の周辺部においては、インペラ2による水流はガイド板1に従い下流側へ向かい、オシキデーションディッチ槽30内全体に効率よく循環流が形成される。
【0024】
また、ここでは、ガイド板1の形状がインペラ2の回転に沿う方向に延びるにつれてインペラ2との離間距離が大きくなる形状とされているため、インペラ2の回転による上流側及び周囲壁12側への噴出流を、ガイド板1の形状に沿ってインペラ2の下流側へ容易かつ効率的に誘導することができる。また、ガイド板1の形状がインペラ2の回転に沿う方向に対して曲線からなりインペラ2の回転に沿う方向に延びるにつれて曲率が連続的に小さくなる形状とされているため、上記効果が一層容易に得られる。なお、ガイド板1は、例えば曲率半径の異なる弧を組み合わせた場合のように、インペラ2の回転に沿う方向に延びるにつれて曲率が段階的に小さくなる形状とされていてもよく、直線部分を含んだ形状とされていてもよい。
【0025】
また、ここでは、インペラ2が、循環水路の直線部分に配置され、循環水路の直線部分で問題となるインペラ2の回転による上流側への噴出流を、ガイド板1で堰き止めつつガイド板1の形状に沿ってインペラ2の下流側へ誘導することができるため、オシキデーションディッチ槽30内全体に、より効率よく循環流を形成させることができる。
【0026】
さらにまた、インペラ2を反時計回りに回転させる回転軸5の位置が、循環水路を横断する線分の中心位置から循環水路を区画する区画壁14の側にずれた位置に存在しているため、インペラ2の回転による撹拌流が循環水路の循環流に対して逆流となる領域が小さくなり、オシキデーションディッチ槽30内全体に、より効率よく循環流を形成させることができる。なお、本実施形態では曝気撹拌機10が区画壁14側に配置された例を示しているが、インペラ2の回転方向を時計回りとし、曝気撹拌機10を周囲壁12側に配置した態様とすることもできる。
【0027】
本発明のガイド板は、他の実施形態において、その上部に当該ガイド板の内外を連通する連通部15を有する。図5は、上部に連通部15を有するガイド板11の部分斜視図であり、図6は、ガイド板11の連通部15を通じてスカムがガイド板11の内側(下流側)へ移動する流れを示す平面図である。連通部15は、内外で連通すると共に上方に開放されたスリット15aと、このスリット15aに後述のスカムを案内すべくスリット15aを外側から覆うように設けられた案内部15bとを有し、図5中の矢印で示したように、ガイド板11の上流側の水面に形成されガイド板11に堰き止められて当該ガイド板11の外側に溜まるスカム(図示せず)を、被処理水Wとともにガイド板11の外から内へ移動させる連絡通路として機能する。そして、当該連通部15を通じてインペラ2の撹拌流による吸引が作用して、図6中の矢印で示したように、スカム及び被処理水Wがガイド板11の外側から内側へ移動し、ガイド板11に沿って下流側へ誘導され、これによりガイド板11の外側にスカムが溜まることが防止される。
【0028】
なお、オキシデーションディッチ槽は、循環水路の折り返し部分(コーナー部分)の水流を整流するために、当該折り返し部分に、折り返し部分の形状に沿って底壁から上方に延びる隔壁が設けられる場合があり、この場合には折り返し部分に曝気撹拌機を配置できず、本実施形態のように循環水路の直線部分に曝気撹拌機を配置することになるため、本実施形態の適用が特に有効である。
【0029】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、オキシデーションディッチ槽の循環水路は無終端状に形成されたものであれば特に限定されず、長円形の他に、例えば馬蹄形とすることもできる。また、上記実施形態ではオキシデーションディッチ槽当たりの曝気撹拌機の設置台数を1台としているが、これを複数台とすることもできる。さらに、ガイド板の上部に設けられた連通部の形状は、スカムを案内できる形状であれば特に限定されず、例えば貫通孔であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1,11…インペラ用ガイド板、2…インペラ、3…電動機、4…減速機、5…回転軸、10…曝気撹拌機、12…周囲壁、14…区画壁、15…連通部、15a…スリット、15b…案内部、30…オキシデーションディッチ槽、W…被処理水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無終端状に形成された循環水路と、前記循環水路における水面付近に設置され略鉛直方向の軸線回りに回転するインペラとを備えるオキシデーションディッチにおいて前記インペラに対して用いられるインペラ用ガイド板であって、
前記インペラの側方に離間して配置され、前記インペラの下流側が開放されると共に、前記インペラの少なくとも上流側を側方から覆うことにより、前記インペラの回転による上流側への噴出流を前記インペラの下流側へ誘導する形状とされている、インペラ用ガイド板。
【請求項2】
前記形状は、前記インペラの回転に沿う方向に延びるにつれて前記インペラとの離間距離が大きくなる形状とされている、請求項1に記載のインペラ用ガイド板。
【請求項3】
ガイド板の上部に、当該ガイド板の内外を連通する連通部を有する、請求項1又は2に記載のインペラ用ガイド板。
【請求項4】
インペラと、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインペラ用ガイド板とを備える曝気撹拌機であって、前記インペラが、前記循環水路の直線部分に配置される、曝気撹拌機。
【請求項5】
インペラと、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインペラ用ガイド板とを備える曝気撹拌機であって、前記インペラを回転させる回転軸の位置が、前記循環水路を横断する線分の中心位置から、前記インペラが平面視反時計回りに回転する場合は前記循環水路を区画する区画壁の側にずれた位置に存在し、前記インペラが平面視時計回りに回転する場合は前記オキシデーションディッチの周囲壁の側にずれた位置に存在する、曝気撹拌機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−157829(P2012−157829A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20001(P2011−20001)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)
【Fターム(参考)】