インモールド用転写箔、及びそれを用いた成形品
【課題】高い表面強度を有しつつ、且つ、成形品表面に凹凸を形成することのできる、インモールド用転写箔を提供する。
【解決手段】ベースフィルムの一方の面に、剥離層と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層と、所定の絵柄パターンを有する印刷層と、該印刷層を成形品の表面に接着させるための接着層とをこの順序で備え、ベースフィルムのもう一方の面に、熱硬化性樹脂を含む凹凸形成層が設けられているインモールド用転写箔。
【解決手段】ベースフィルムの一方の面に、剥離層と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層と、所定の絵柄パターンを有する印刷層と、該印刷層を成形品の表面に接着させるための接着層とをこの順序で備え、ベースフィルムのもう一方の面に、熱硬化性樹脂を含む凹凸形成層が設けられているインモールド用転写箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、インモールド用転写箔に関し、さらに詳しくは、工業製品の加飾に適したインモールド用転写箔に関する。
【背景技術】
【０００２】
インモールド用転写箔を用いた成形品は、日用品や生活用品などの機器本体、食品や各種物品の容器類、電子機器や事務用品などの筐体類などに用いられる。
【０００３】
インモールド用転写箔とは、基材となるベースフィルム上に、たとえば、剥離層、印刷層、接着層を形成したプラスチック加飾成形用の転写箔である。インモールド成形は、一対の射出成形用金型間に該転写箔を供給し、該射出成形用金型によって形成されるキャビティに加熱加圧した成形樹脂を充填後、ベースフィルム及び剥離層を剥離して、成形樹脂に印刷層を転写して装飾を行う成形方法である。
【０００４】
表面強度の高い成形品を得るためのインモールド用転写箔としては、剥離層の表面上に紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層を形成し、さらにその上に印刷層、接着層などを形成したものがある。この場合、成形前のインモールド用転写箔に紫外線を照射し、ハードコート層を硬化させてしまうと、成形性が損なわれることから、成形後に成形品に紫外線を照射し、ハードコート層を硬化させることが望ましい。
【０００５】
従来のインモールド用転写箔は、文字や絵柄等をベースフィルム上に平面的に印刷しただけの構造であるため、成形品表面の立体感が乏しいという問題があった。成形品表面に立体感を持たせる方法として、成形時にキャビティを構成する一対の射出成形用金型の内側のベースフィルムが対接する側に、予め凹凸を設けておく方法がある。しかし、このような凹凸形成方法では、1つの射出成形用金型に対して、1つの凹凸模様にしか対応できず、多様な凹凸模様に対応するには、多数の射出成形用金型を用意しなければならず、コストが高くなるといった問題が生じる。また、インモールド用転写箔の供給位置によって凹凸模様位置が決まるので、インモールド用転写箔の絵柄と凹凸模様を対応させることが難しい。
【０００６】
そこで、成形品表面に凹凸を形成する方法として、ベースフィルムの一方の面に、剥離層、印刷層、該印刷層を成形品の表面に接着させるための接着層を備えると共に、上記ベースフィルムのもう一方の面に、印刷による凹凸形成層を設けるといった方法がある(例えば、特許文献１参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特開平１−１２０３９８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
工業製品は長期にわたる使用や、過酷な環境での使用が予想されるため、工業製品の加飾に用いるインモールド用転写箔には転写後の成形品の表面強度の高い転写箔が求められる。そこで、剥離層の上にハードコート層を形成し、さらにその上に印刷層、接着層などを形成したインモールド用転写箔を、工業製品の加飾に用いることが望ましい。しかし、インモールド用転写箔で用いられるハードコート層の多くは、紫外線硬化性樹脂から形成されるため、紫外線硬化性樹脂を用いて凹凸形成層を設けると、成形前にインモールド用
転写箔に紫外線を照射しなければならず、成形前に紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層を硬化させてしまう。それにより、インモールド用転写箔の成形性が損なわれ、不良品が発生しやすいといった問題が生じる。
【０００９】
本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、成形品表面に凹凸を形成しつつ、且つ、高い表面強度を有する成形品を提供することの出来る転写箔と成形品を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上記課題を解決するために、本発明の請求項１の発明は、ベースフィルムの一方の面に、剥離層と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層と、所定の絵柄パターンを有する印刷層と、該印刷層を成形品の表面に接着させるための接着層とをこの順序で備え、ベースフィルムのもう一方の面に、熱硬化性樹脂からなる凹凸形成層が設けられていることを特徴とするインモールド用転写箔である。
【００１１】
請求項２の発明に係わる成形品は、請求項１に記載のインモールド用転写箔を用いて、インモールド射出成形法で製造されてなる成形品である。
【発明の効果】
【００１２】
本発明の転写箔を使用すれば、転写時に、凹凸形成層を構成する樹脂の厚みにより、その凹凸パターンに従った凹凸を成形品の表面に形成することができる。また、本発明のインモールド用転写箔は、従来の凹凸模様のない射出成形用金型を使用して、成形品表面に凹凸を形成することができるため、金型の交換にかかるコストを削減できて経済的である。さらに、熱硬化性樹脂を用いて凹凸形成層を設けた基材の反対面に紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層を設けることができるので高い表面強度を有する成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１３】
【図１】本発明におけるインモールド用転写箔の断面模式図である。
【図２】本発明におけるインモールド転写箔の印刷層５側から該射出成形用金型８のキャビティ内へ成形樹脂７を射出した断面の様子を示した図である。
【図３】本発明における表面に凹凸を有する成形品の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【００１４】
以下、図面を援用して本発明の実施形態の一例を説明する。
インモールド射出成形法とは、（１）インモールド用転写箔を準備する工程、（２）該インモールド用転写箔を射出成形用金型内へ挿入する工程、（３）該射出成形用金型へ樹脂を射出成形し密着させることで、該樹脂の表面にインモールド用転写箔を転写する工程、（４）冷却後、射出成形用金型を開放し、ベースフィルム及び剥離層を剥離して成形品を取り出す工程、の４つの工程からなる射出成形法である。
【００１５】
本発明のインモールド用転写箔は、ベースフィルム２と、該ベースフィルム２の一方の面へ剥離層３と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層４と、印刷層５と、接着層６と、を備え、該ベースフィルム２のもう一方の面に熱硬化性樹脂を含む凹凸形成層１を備える層構成である。
【００１６】
ベースフィルム２としては、製造および成形工程で必要な耐熱性、機械的強度、耐溶剤性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、などがある。好ましくは、耐熱性、機械的強度の点で、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルムが挙げられ、なかでもポリエチレンテレフタレート樹脂のフィルムが最適である。
【００１７】
剥離層３の材質としては、必要な剥離性を備えた樹脂であれば特に限定されないが、本発明のインモールド用転写箔ではメラミン系樹脂を用いることが好ましい。該メラミン系樹脂を用いることで、ハードコート層４との組み合わせで安定した剥離性を発揮する。剥離層３の形成方法としては、周知の印刷法や塗工法を用いることが出来る。
【００１８】
ハードコート層４は、転写後にベースフィルム２を剥離した際に、成形品の最表面層となる層である。ハードコート層４の材料としては、紫外線で硬化する紫外線硬化性樹脂を用いる。紫外線硬化性のハードコート層であれば、紫外線照射によって直ちに成形品表面を硬化させることができるため、成形品の生産効率が向上することになる。また、未硬化の状態で成形し、成形後に硬化させることで、成形性向上と物性向上の両立が可能である。ハードコート層４の形成方法としては、周知の印刷法や塗工法を用いることが出来る。
【００１９】
印刷層５の材料としては、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いる。印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法を用いることが出来る。好ましくは、多色刷りや階調表現が可能で、且つ、大量生産に適しているグラビア印刷法で印刷するのが良い。また、ハードコート層４との密着性を向上させるために、印刷層５とハードコート層４との間にアンカー層（図示せず）を設けても良い。アンカー層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが出来る。特に、膜厚・生産性の点からグラビア印刷法で印刷するのが望ましい。
【００２０】
接着層６は、成形品の表面に上記の各層を接着するものである。接着層６としては、成形樹脂７に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。接着層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが出来る。特に、膜厚・生産性の点からグラビア印刷法で印刷するのが望ましい。なお、印刷層５が成形品に対して充分接着性を有しており、接着層としての効果も備えている場合には、接着層６を別に設けなくても良い。
【００２１】
ベースフィルム２の反剥離層側に設けられる凹凸形成層１は、グラビア印刷法やスクリーン印刷法によって印刷することで形成できる。凹凸形成層１の材料としては転写時に受ける熱や圧力に耐えることのできる熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂を用いることができる。しかし、紫外線硬化性樹脂を用いると、成形前にハードコート層も硬化して、成形性が損なわれる。そこで、熱硬化性樹脂を用いて凹凸形成層１を形成するのが良い。
【００２２】
また、凹凸形成層１は、熱硬化性樹脂をグラビア印刷法、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、シルクスクリーン印刷法、その他通常のコート法ないし印刷法で塗工後、該熱硬化性樹脂をエンボス加工することによって形成しても良い。
【００２３】
各層を上記のように積層して、図１に示すような、本発明のインモールド用転写箔が準備できる。該インモールド用転写箔を用いて、インモールド射出成形することにより、表面に凹凸を有する成形品を製造することができる。
インモールド射出成形は、該インモールド用転写箔を射出成形用金型８内へ挿入し、該インモールド転写箔の印刷層５側から該射出成形用金型８のキャビティ内へ成形樹脂７を射出成形することで、該成形樹脂７の表面にインモールド用転写箔を転写し、冷却後、射出成形用金型８を解放し、インモールド用転写箔のベースフィルム２及び剥離層３を剥離して成形品を取り出すという公知の順序で行うことが出来る。
この方法で射出成形用金型８のキャビティ内へ成形樹脂７を射出成形し、インモールド
用転写箔に圧力をかけることで、該インモールド用転写箔における凹凸形成層１を構成する樹脂の厚みにより、図２に示すように、そのパターンに従って成形品のインモールド用転写箔側の面に凹凸が形成される（図３参照）ことになる。
【実施例】
【００２４】
＜実施例１＞
ベースフィルム２としてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、ベースフィルム２の上にメラミン樹脂系剥離層３、紫外線硬化性のアクリル樹脂系ハードコート層４を形成した後、印刷層５としてウレタン系インキ、接着層６としてアクリル系樹脂をグラビア印刷法にて形成した。次に、該ベースフィルム２の反剥離層側に、凹凸形成層１として、グラビア印刷法にて熱硬化性のウレタン系樹脂を塗工した後、５０℃雰囲気下で６日間放置することによりウレタン系樹脂を硬化させることで、インモールド用転写箔を得た。該インモールド用転写箔を射出成形用金型８に固定し、型締めしてＰＣ／ＡＢＳ樹脂を射出成形した。冷却後、射出成形用金型８を開放し、該インモールド用転写箔のベースフィルム２を剥離層３とともに成形品から剥離した後、成形品表面に高圧水銀灯を用いて、積算光量１０００ｍＪ／ｃｍ２の紫外線を照射し、ハードコート層４を架橋硬化させ、高い表面強度を有し、且つ、表面に凹凸を有する成形品を得た。
【符号の説明】
【００２５】
１…凹凸形成層
２…ベースフィルム
３…剥離層
４…ハードコート層
５…印刷層
６…接着層
７…成形樹脂
８…射出成形用金型
【技術分野】
【０００１】
本発明は、インモールド用転写箔に関し、さらに詳しくは、工業製品の加飾に適したインモールド用転写箔に関する。
【背景技術】
【０００２】
インモールド用転写箔を用いた成形品は、日用品や生活用品などの機器本体、食品や各種物品の容器類、電子機器や事務用品などの筐体類などに用いられる。
【０００３】
インモールド用転写箔とは、基材となるベースフィルム上に、たとえば、剥離層、印刷層、接着層を形成したプラスチック加飾成形用の転写箔である。インモールド成形は、一対の射出成形用金型間に該転写箔を供給し、該射出成形用金型によって形成されるキャビティに加熱加圧した成形樹脂を充填後、ベースフィルム及び剥離層を剥離して、成形樹脂に印刷層を転写して装飾を行う成形方法である。
【０００４】
表面強度の高い成形品を得るためのインモールド用転写箔としては、剥離層の表面上に紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層を形成し、さらにその上に印刷層、接着層などを形成したものがある。この場合、成形前のインモールド用転写箔に紫外線を照射し、ハードコート層を硬化させてしまうと、成形性が損なわれることから、成形後に成形品に紫外線を照射し、ハードコート層を硬化させることが望ましい。
【０００５】
従来のインモールド用転写箔は、文字や絵柄等をベースフィルム上に平面的に印刷しただけの構造であるため、成形品表面の立体感が乏しいという問題があった。成形品表面に立体感を持たせる方法として、成形時にキャビティを構成する一対の射出成形用金型の内側のベースフィルムが対接する側に、予め凹凸を設けておく方法がある。しかし、このような凹凸形成方法では、1つの射出成形用金型に対して、1つの凹凸模様にしか対応できず、多様な凹凸模様に対応するには、多数の射出成形用金型を用意しなければならず、コストが高くなるといった問題が生じる。また、インモールド用転写箔の供給位置によって凹凸模様位置が決まるので、インモールド用転写箔の絵柄と凹凸模様を対応させることが難しい。
【０００６】
そこで、成形品表面に凹凸を形成する方法として、ベースフィルムの一方の面に、剥離層、印刷層、該印刷層を成形品の表面に接着させるための接着層を備えると共に、上記ベースフィルムのもう一方の面に、印刷による凹凸形成層を設けるといった方法がある(例えば、特許文献１参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特開平１−１２０３９８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
工業製品は長期にわたる使用や、過酷な環境での使用が予想されるため、工業製品の加飾に用いるインモールド用転写箔には転写後の成形品の表面強度の高い転写箔が求められる。そこで、剥離層の上にハードコート層を形成し、さらにその上に印刷層、接着層などを形成したインモールド用転写箔を、工業製品の加飾に用いることが望ましい。しかし、インモールド用転写箔で用いられるハードコート層の多くは、紫外線硬化性樹脂から形成されるため、紫外線硬化性樹脂を用いて凹凸形成層を設けると、成形前にインモールド用
転写箔に紫外線を照射しなければならず、成形前に紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層を硬化させてしまう。それにより、インモールド用転写箔の成形性が損なわれ、不良品が発生しやすいといった問題が生じる。
【０００９】
本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、成形品表面に凹凸を形成しつつ、且つ、高い表面強度を有する成形品を提供することの出来る転写箔と成形品を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上記課題を解決するために、本発明の請求項１の発明は、ベースフィルムの一方の面に、剥離層と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層と、所定の絵柄パターンを有する印刷層と、該印刷層を成形品の表面に接着させるための接着層とをこの順序で備え、ベースフィルムのもう一方の面に、熱硬化性樹脂からなる凹凸形成層が設けられていることを特徴とするインモールド用転写箔である。
【００１１】
請求項２の発明に係わる成形品は、請求項１に記載のインモールド用転写箔を用いて、インモールド射出成形法で製造されてなる成形品である。
【発明の効果】
【００１２】
本発明の転写箔を使用すれば、転写時に、凹凸形成層を構成する樹脂の厚みにより、その凹凸パターンに従った凹凸を成形品の表面に形成することができる。また、本発明のインモールド用転写箔は、従来の凹凸模様のない射出成形用金型を使用して、成形品表面に凹凸を形成することができるため、金型の交換にかかるコストを削減できて経済的である。さらに、熱硬化性樹脂を用いて凹凸形成層を設けた基材の反対面に紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層を設けることができるので高い表面強度を有する成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１３】
【図１】本発明におけるインモールド用転写箔の断面模式図である。
【図２】本発明におけるインモールド転写箔の印刷層５側から該射出成形用金型８のキャビティ内へ成形樹脂７を射出した断面の様子を示した図である。
【図３】本発明における表面に凹凸を有する成形品の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【００１４】
以下、図面を援用して本発明の実施形態の一例を説明する。
インモールド射出成形法とは、（１）インモールド用転写箔を準備する工程、（２）該インモールド用転写箔を射出成形用金型内へ挿入する工程、（３）該射出成形用金型へ樹脂を射出成形し密着させることで、該樹脂の表面にインモールド用転写箔を転写する工程、（４）冷却後、射出成形用金型を開放し、ベースフィルム及び剥離層を剥離して成形品を取り出す工程、の４つの工程からなる射出成形法である。
【００１５】
本発明のインモールド用転写箔は、ベースフィルム２と、該ベースフィルム２の一方の面へ剥離層３と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層４と、印刷層５と、接着層６と、を備え、該ベースフィルム２のもう一方の面に熱硬化性樹脂を含む凹凸形成層１を備える層構成である。
【００１６】
ベースフィルム２としては、製造および成形工程で必要な耐熱性、機械的強度、耐溶剤性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、などがある。好ましくは、耐熱性、機械的強度の点で、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルムが挙げられ、なかでもポリエチレンテレフタレート樹脂のフィルムが最適である。
【００１７】
剥離層３の材質としては、必要な剥離性を備えた樹脂であれば特に限定されないが、本発明のインモールド用転写箔ではメラミン系樹脂を用いることが好ましい。該メラミン系樹脂を用いることで、ハードコート層４との組み合わせで安定した剥離性を発揮する。剥離層３の形成方法としては、周知の印刷法や塗工法を用いることが出来る。
【００１８】
ハードコート層４は、転写後にベースフィルム２を剥離した際に、成形品の最表面層となる層である。ハードコート層４の材料としては、紫外線で硬化する紫外線硬化性樹脂を用いる。紫外線硬化性のハードコート層であれば、紫外線照射によって直ちに成形品表面を硬化させることができるため、成形品の生産効率が向上することになる。また、未硬化の状態で成形し、成形後に硬化させることで、成形性向上と物性向上の両立が可能である。ハードコート層４の形成方法としては、周知の印刷法や塗工法を用いることが出来る。
【００１９】
印刷層５の材料としては、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いる。印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法を用いることが出来る。好ましくは、多色刷りや階調表現が可能で、且つ、大量生産に適しているグラビア印刷法で印刷するのが良い。また、ハードコート層４との密着性を向上させるために、印刷層５とハードコート層４との間にアンカー層（図示せず）を設けても良い。アンカー層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが出来る。特に、膜厚・生産性の点からグラビア印刷法で印刷するのが望ましい。
【００２０】
接着層６は、成形品の表面に上記の各層を接着するものである。接着層６としては、成形樹脂７に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。接着層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが出来る。特に、膜厚・生産性の点からグラビア印刷法で印刷するのが望ましい。なお、印刷層５が成形品に対して充分接着性を有しており、接着層としての効果も備えている場合には、接着層６を別に設けなくても良い。
【００２１】
ベースフィルム２の反剥離層側に設けられる凹凸形成層１は、グラビア印刷法やスクリーン印刷法によって印刷することで形成できる。凹凸形成層１の材料としては転写時に受ける熱や圧力に耐えることのできる熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂を用いることができる。しかし、紫外線硬化性樹脂を用いると、成形前にハードコート層も硬化して、成形性が損なわれる。そこで、熱硬化性樹脂を用いて凹凸形成層１を形成するのが良い。
【００２２】
また、凹凸形成層１は、熱硬化性樹脂をグラビア印刷法、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、シルクスクリーン印刷法、その他通常のコート法ないし印刷法で塗工後、該熱硬化性樹脂をエンボス加工することによって形成しても良い。
【００２３】
各層を上記のように積層して、図１に示すような、本発明のインモールド用転写箔が準備できる。該インモールド用転写箔を用いて、インモールド射出成形することにより、表面に凹凸を有する成形品を製造することができる。
インモールド射出成形は、該インモールド用転写箔を射出成形用金型８内へ挿入し、該インモールド転写箔の印刷層５側から該射出成形用金型８のキャビティ内へ成形樹脂７を射出成形することで、該成形樹脂７の表面にインモールド用転写箔を転写し、冷却後、射出成形用金型８を解放し、インモールド用転写箔のベースフィルム２及び剥離層３を剥離して成形品を取り出すという公知の順序で行うことが出来る。
この方法で射出成形用金型８のキャビティ内へ成形樹脂７を射出成形し、インモールド
用転写箔に圧力をかけることで、該インモールド用転写箔における凹凸形成層１を構成する樹脂の厚みにより、図２に示すように、そのパターンに従って成形品のインモールド用転写箔側の面に凹凸が形成される（図３参照）ことになる。
【実施例】
【００２４】
＜実施例１＞
ベースフィルム２としてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、ベースフィルム２の上にメラミン樹脂系剥離層３、紫外線硬化性のアクリル樹脂系ハードコート層４を形成した後、印刷層５としてウレタン系インキ、接着層６としてアクリル系樹脂をグラビア印刷法にて形成した。次に、該ベースフィルム２の反剥離層側に、凹凸形成層１として、グラビア印刷法にて熱硬化性のウレタン系樹脂を塗工した後、５０℃雰囲気下で６日間放置することによりウレタン系樹脂を硬化させることで、インモールド用転写箔を得た。該インモールド用転写箔を射出成形用金型８に固定し、型締めしてＰＣ／ＡＢＳ樹脂を射出成形した。冷却後、射出成形用金型８を開放し、該インモールド用転写箔のベースフィルム２を剥離層３とともに成形品から剥離した後、成形品表面に高圧水銀灯を用いて、積算光量１０００ｍＪ／ｃｍ２の紫外線を照射し、ハードコート層４を架橋硬化させ、高い表面強度を有し、且つ、表面に凹凸を有する成形品を得た。
【符号の説明】
【００２５】
１…凹凸形成層
２…ベースフィルム
３…剥離層
４…ハードコート層
５…印刷層
６…接着層
７…成形樹脂
８…射出成形用金型
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ベースフィルムの一方の面に、剥離層と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層と、所定の絵柄パターンを有する印刷層と、該印刷層を成形品の表面に接着させるための接着層とをこの順序で備え、ベースフィルムのもう一方の面に、熱硬化性樹脂からなる凹凸形成層が設けられていることを特徴とするインモールド用転写箔。
【請求項２】
請求項１に記載のインモールド用転写箔を用いて、インモールド射出成形法で製造されてなることを特徴とする成形品。
【請求項１】
ベースフィルムの一方の面に、剥離層と、紫外線硬化性樹脂を含むハードコート層と、所定の絵柄パターンを有する印刷層と、該印刷層を成形品の表面に接着させるための接着層とをこの順序で備え、ベースフィルムのもう一方の面に、熱硬化性樹脂からなる凹凸形成層が設けられていることを特徴とするインモールド用転写箔。
【請求項２】
請求項１に記載のインモールド用転写箔を用いて、インモールド射出成形法で製造されてなることを特徴とする成形品。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２０１２−１８３８０８（Ｐ２０１２−１８３８０８Ａ）
【公開日】平成２４年９月２７日（２０１２．９．２７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−５０３２８（Ｐ２０１１−５０３２８）
【出願日】平成２３年３月８日（２０１１．３．８）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年９月２７日（２０１２．９．２７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年３月８日（２０１１．３．８）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
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