説明

イージーオープン缶蓋及びその缶蓋の製造方法並びにそれを用いた缶容器に充填されている飲料製品

【課題】本発明は、缶蓋の積み重ね性を損なわず、指掛かり性が改善されるイージーオープン缶蓋を提供することを目的とし、さらに本イージーオープン缶蓋の簡便で量産可能な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のイージーオープン缶蓋1は、パネル3の中央からリングタブ7のタブテール15の方向に対して、パネル3の中央が最凹部となるように傾斜面23が形成され、リングタブ7の下面が傾斜面23に当接若しくは沿って近接されており、リングタブ7は、上方からの押しつぶし加工によって形成された窪みSを有し、窪みSによってリングタブが折り曲げられていることを特徴とする。本発明のイージーオープン缶蓋1の製造方法は、リングタブ7をパネル3に固着する工程の後又は固着する工程と同時に、リングタブ7のアウターランスの一部に上方から押しつぶし加工を施す工程を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶容器を密閉するためのイージーオープン機構を備えた缶蓋に関し、更に詳しくは、飲料用の缶容器のために好適な缶蓋及び缶蓋の製造方法並びにそれを用いた飲料製品に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料缶に代表される液体状の内容物を充填する缶容器には、イージーオープン機構として開缶容器なリングタブを備えた缶蓋が多く用いられている。このリングタブを備えたイージーオープン缶蓋の一例を図1に正面図、図2に縦断面図として示す。缶蓋1には、リングタブ7がリベット5によって取り付けられている。このリングタブ7のタブテール15に指を掛けて引き上げることによって、リベット5の近傍が折れ曲がって支点となり、リングタブ7のノーズ部13の先端が作用点となって、パネル3の表面のスコア17(缶蓋開裂誘導のための切り欠き線)に囲まれた部分であるスコアパネル19を押し下げる。この結果、パネル3の表面はスコア17の形状に沿って開裂し、スコアパネル19は缶蓋1と離れることなく缶内部に押し入れられて開缶する。このとき、飲み口が開口することから、「開缶」を「開口」と呼ぶこともある。
【0003】
このようなイージーオープン缶蓋は、開缶動作の開始時において、パネル3とリングタブ7のタブテール15の隙間に指を差し込んでリングタブ7を引き上げる操作が必要である。この開缶動作の開始時において、スコア17を最初に断裂するためにリングタブ7の引き上げに大きな力を要するため、リングタブ7への指の掛かり易さ(以下、「指掛かり性」ともいう。)を改善することが開缶性の向上のために重要となっている。指掛かり性を改善するために、従来から図1及び図2に示すように、リングタブ7のタブテール15の近傍のパネル3にフィンガーデポス21と呼ばれる凹部を設けて、指をタブテール15の下側に回り込ませることができるようにする技術が公知となっている。しかしパネル3の表面のスペースの制約や缶蓋の強度維持の面からフィンガーデポス21を指のサイズに合わせて十分に大きく形成できないため、指掛かり性の改善は不十分であった。そこで指掛かり性を向上するために以下の方法が提案されている。
【0004】
リングタブ7のタブテール15とパネル3の隙間を拡げて指を掛かりやすくするために、タブテール15をパネル3より必要な量だけ浮き上がらせる方法として、リングタブ7の下面に接するパネル3の上面に突起を設ける方法やリングタブ7をあらかじめ折り曲げておく方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、開缶動作の開始時に小さい力でリングタブ7が所定量折れ曲がってタブテール15が持ち上がるように、リングタブ7のアウターランス11(リングタブのU字状切り込み部9の外側部)にあらかじめ強度が弱い部分を設けることによって指を掛かりやすくする方法も開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
【特許文献1】実公平8−6746号公報
【特許文献2】実開平3−111939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし指掛かりが十分に容易な隙間を確保するためリングタブのタブテールをパネル3より大きく浮き上がらせると、缶蓋の製造工程や缶容器への巻き締め工程において缶蓋を重ねて搬送したり保管したりする際に、浮き上がったタブテールが上側に重ねられた缶蓋のパネルの裏面(缶の内面側)を接触し、缶蓋同士が互いに干渉することによってパネルの裏面の塗装被膜を傷つけたり、缶蓋同士の重なりに隙間ができてスタック性が悪くなり搬送不良となる等の問題があり、指掛かり性を十分に改善することは困難である(以下、缶蓋を積み重ねた際に、缶蓋のリングタブが上側の缶蓋に接触せず安定して積み重ねられる特性を「缶蓋の積み重ね性」ともいう。)。一方、リングタブが開缶時に折り曲がるようにする指掛かり性の改善方法は、リングタブが所定の量だけ折り曲がるようにする加工が困難であり、またリングタブに必要な強度の確保することも困難である。
【0007】
そこで本発明は、イージーオープン缶蓋におけるリングタブの指掛かり性の改善に関する上記の問題を解決することを目的とする。具体的には、缶蓋の積み重ね性を損なわず、リングタブの強度も維持しながら、缶蓋を巻き締めた後の缶容器として使用する際には、リングタブのタブテールが缶蓋より十分に浮き上がることによって指掛かり性が改善されるイージーオープン缶蓋を提供することを目的とする。さらに、本イージーオープン缶蓋の簡便で量産可能な製造方法を提供することを目的とする。また本イージーオープン缶蓋によって密封した缶容器を使用する開缶しやすい飲料製品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図2に示すような従来の一般的なイージーオープン缶蓋1は、パネル3がほぼ水平に成形されており、リベット5によって固着されたリングタブ7も平板上であることから、タブテール15はパネル3と当接若しくはパネル3に沿うように近接している。従ってタブテール15とパネル3との隙間は極めて小さく、フィンガーデポス21を設けていても、ときには指の爪先を使用しなければならないほどタブテール15に指を掛けることは困難である。発明者らは、缶蓋を巻き締め後の缶容器内部が陽圧となるような内容物を充填した缶容器(以下、「陽圧缶」という。)では、図3に示すようにパネル3が凸状に膨らむため、リングタブ7のリベット5とともに持ち上がり、タブテール15とパネル3との隙間Xが拡がることに着目した。しかしビール、炭酸飲料等、一般に缶内が陽圧となる飲料の開缶時における通常の陽圧レベルでは従来の缶蓋1のパネル3の膨らみは小さく、タブテール15とパネル3との隙間の拡大は指掛かり性を改善するには不十分であった。
【0009】
そこで本発明者らは鋭意開発を進めた結果、缶蓋のパネルの中央を凹ませてパネルに傾斜を与え、さらにリングタブを上方からの押しつぶし加工によって折り曲げた形状としてパネルの傾斜面に沿わせた缶蓋の構成にすると、缶蓋の積み重ね性に影響を与えることがなく、缶蓋を巻き締めた後の缶容器として使用する際には缶容器の内容液の圧力によって缶蓋のパネルが凸状に上方に膨らみ、折り曲げられたリングタブがリベットとともに上方に持ち上がることによって、タブテールとパネルの間の間隔が従来よりも広くなることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明に係るイージーオープン缶蓋では、パネルの上面に飲み口形状に刻設したスコアと、該スコアによって囲まれた開口片と、前記パネルの上面中央にリベットを介して固着されたリングタブを備え、該リングタブのノーズ部によって前記スコアを断裂しつつ、前記開口片を押し下げて開缶するイージーオープン缶蓋において、前記パネルの中央から前記リングタブのタブテールの方向に対して、前記パネルの中央が最凹部となるように傾斜面が形成され、前記リングタブの下面が前記傾斜面に当接若しくは沿って近接されており、前記リングタブはアウターランスに、上方からの押しつぶし加工によって形成された窪みを有し、該窪みによってリングタブが折り曲げられていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るイージーオープン缶蓋では、前記窪みを設けるアウターランスの範囲は、前記リベットからタブテールに向かう方向に対して直交するように前記リベットの外周に引いた2接線によって挟まれた範囲であることが好ましい。窪みをアウターランスのこの範囲に設けると窪みがパネルの傾斜面の中央とほぼ一致するため、リングタブの折れ曲がりとパネルの傾斜面の位置がほぼ一致して、リングタブをパネルに沿わせやすい。
【0012】
本発明に係るイージーオープン缶蓋では、前記パネルの傾斜面と水平面とがなす角度が1〜3°であることが好ましい。この角度の範囲であれば缶蓋の積み重ね性に問題が生じるおそれがなく、缶容器使用時に缶蓋のパネルが凸状に上方に膨らんだ際のタブテールとパネルの間の隙間も十分広くすることができる。
【0013】
本発明に係るイージーオープン缶蓋では、前記パネルの中央の最凹部の凹み量が0.1〜0.5mmであることが好ましい。この範囲の凹み量であれば上記と同様に、缶蓋の積み重ね性に支障を与えるおそれがなく、缶容器使用時に缶蓋のパネルが凸状に上方に膨らんだ際のタブテールとパネルの間の隙間も十分広くすることができる。
【0014】
本発明に係るイージーオープン缶蓋の製造方法では、パネルの上面に飲み口形状にスコアを刻設する工程と、前記パネルの上面にリングタブを前記パネルの中央のリベットを介して固着する工程とを有するイージーオープン缶蓋の製造方法において、前記リングタブを前記パネルに固着する工程の後又は固着する工程と同時に、前記リングタブのアウターランスの一部に、上方から押しつぶし加工を施す工程を有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るイージーオープン缶蓋の製造方法では、前記押しつぶし加工を施す工程は、前記パネルの中央を押し下げることによって、前記パネルの中央から前記リングタブのタブテールの方向に対して、前記パネルの中央が最凹部となるように傾斜面を形成するともに、前記リングタブのアウターランスの一部に窪みを成形し、該窪みによって前記リングタブが折り曲げられて、前記リングタブの下面が前記傾斜面に当接若しくは沿って近接するように、前記リングタブを加工することが好ましい。一回の押しつぶし加工の工程によってパネルを押し下げて傾斜を付けるとともに、リングタブがパネルの傾斜面に沿って折れ曲がるため、本発明に係るイージーオープン缶蓋の製造を簡便かつ効率よく実施することができる。
【0016】
本発明に係る飲料製品は、本発明に係るイージーオープン缶蓋で密封された缶容器に充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のイージーオープン缶蓋は、缶蓋の積み重ね性を損なわず、リングタブの強度も維持しながら、缶蓋を巻き締めた後に缶容器として使用する際にはリングタブのタブテールが缶蓋より十分に浮き上がることによって、リングタブの指掛かり性を大きく改善することができる。さらに本発明のイージーオープン缶蓋の製造方法は、本発明のイージーオープン缶蓋を簡便かつ効率的に量産することができる。また本発明の飲料製品は、本イージーオープン缶蓋によって密封した缶容器を使用することによって開缶が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本実施形態に係るイージーオープン缶蓋の作用について説明する。本実施形態に係るイージーオープン缶蓋は図6に示すように、巻き締める前はタブテール15とパネル3の間の隙間は小さく、缶蓋の積み重ね性を損なわない程度である。そして陽圧缶の密封に使用すると、図4に示すようにパネル3が凸状に膨らみ、その膨らみの程度は従来のパネル3が傾斜していないイージーオープン缶蓋(図3を参照。)と同じである。このとき、リベット5に固着されたリングタブ7もリベット5とともに持ち上がり、タブテール15とパネル3との間に隙間が拡がり間隔Xが形成される。本実施形態に係るリングタブ7は、缶蓋1の巻き締め前の形状であるパネル3の傾斜面に沿って上方にく字に折れ曲がっているため、間隔Xはパネル3の膨らみの高さに加えてタブテール15の折れ曲がりの高さの合計となる。この結果、本発明に係る缶蓋1ではタブテール15とパネル3の間の間隔Xを指掛かり性が大きく改善するレベルまで十分に広くすることができる。
【0019】
本発明の実施の形態を、図4〜図8を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、種々の変形が可能である。なお、同一部材・同一部位には、同一符号を付した。
【0020】
本実施形態に係るイージーオープン缶蓋の正面図を図5に、縦断面図を図6(図5のB−B’線上の断面図を示す。)に示す。本実施形態に係るイージーオープン缶蓋1では、図1に示したような液体用の缶容器に用いられるイージーオープン缶蓋とその主たる部品は変わるところがない。すなわち図5において、パネル3の上面中央にリベット5を介して固着されたリングタブ7と、パネル3の上面に刻設されたスコア17と、スコア17に囲まれた開口片19を備え、リングタブ7のタブテール15に指を掛けてリングタブ7を引き上げると、リングタブ7のノーズ部13によって開口片19が押し下げられ、スコア17が断裂して開缶する構造になっている。ここで本実施形態に係るイージーオープン缶蓋では、図6に示した断面形状から明らかなように、パネル3の中央からリングタブ7のタブテール15の方向に対して、パネル3の中央のリベット5部分が最凹部となるように傾斜面23が形成され、リングタブ7の下面が傾斜面23に当接若しくは沿うように近接している。
【0021】
パネル3に形成された傾斜面23は、リングタブ7が傾斜面23に沿うことができる範囲にあればよく、図6ではパネル3が凹み始める起点をタブテール15近傍のフィンガーデポス21の端部とした形態を示した。なお図6では傾斜面23は浅底の円錐状をした形態を示したが、すり鉢状にパネルが凹んでいてもよい(不図示)。
【0022】
本実施形態のリングタブ7は、パネル3の傾斜面23に沿っており、そのためにパネル3の最凹部に対応するリベット5の近傍を起点として、パネル3の傾斜角度とほぼ一致した角度で傾斜して折れ曲がった形状をしている。
【0023】
本実施形態のタブテール15とパネル3との間の間隔は、0〜0.3mmの範囲であることが好ましい。タブテール15の浮き上がりが0.3mmより大きいと、缶蓋を重ねた際にタブテール15が上側の缶蓋の裏面に接触し、缶蓋の積み重ね性が損なわれる場合があるためである。
【0024】
本実施形態に係るイージーオープン缶蓋1では、リングタブ7のアウターランス11の一部に、上方からの押しつぶし加工によって形成された窪みSを設け、リングタブ7が折り曲げられている。図7に本実施形態に係るリングタブの部分拡大正面図を、図8に側面図(図7のC方向の側面図)を示す。上方からの押しつぶし加工によって窪みSをリングタブ7のアウターランス11に設けると、アウターランス11は金属薄板がカールされて断面が中空筒状をしているため、筒上側の側面が圧縮されることによって窪みSを起点にリングタブ7が上方に折れ曲がる効果が生じ、リングタブ7を容易に所定量の量だけ折り曲げることができる。さらに押しつぶし加工を制御することによって、リングタブ7をパネル3の傾斜面に沿った角度αに容易に折り曲げることができ、かつ、リングタブ7の曲げ強度を維持することが容易である。
【0025】
本実施形態に係る窪みSの形状は、リングタブ7の折り曲げが容易な楔状が好ましく、その深さは0.05〜0.1mmであることが望ましい。窪みの深さが0.05mmより小さいとリングタブ7の折れ曲がりが不十分な場合があり、0.1mmより大きいと缶蓋の積み重ね性を損なう場合がある。
【0026】
本実施形態に係る窪みSはアウターランス11上であって、リベット5からタブテール15に向かう方向に対して直交するようにリベット5の外周に引いた2接線L1,L2によって挟まれた範囲に設けてあることが好ましい。この範囲のアウターランス11に窪みSを設けると、図8に示すようにリングタブ7の折れ曲がりの起点がパネル3の傾斜面23の最凹部(リベット5の箇所である。)とほぼ一致するため、リングタブ7の折れ曲がりをパネル3の傾斜面23に沿わせることが容易である。
【0027】
本実施形態に係るイージーオープン缶蓋1では、パネル3の傾斜面と水平面とがなす角度が1〜3°であることが好ましい。この角度が1°より小さいと、その傾斜角度に沿うようにしたリングタブ7の折れ曲がり量も小さくなるため、缶蓋1のパネル3が凸状に上方に膨らんだ際のタブテール15とパネル3の間の隙間を十分広くすることができない場合があり、この角度が3°より大きいと、缶蓋の積み重ね性を損なう場合がある。
【0028】
本実施形態に係るイージーオープン缶蓋では、パネル3中央の最凹部の凹み量が0.1〜0.5mmであることが好ましい。凹み量が0.1mmより小さいと上記と同様に、パネル3が凸状に上方に膨らんだ際のタブテール15とパネル3の間の隙間を十分に広くできない場合があり、凹み量が0.5mmより大きいと缶蓋の積み重ね性を損なう場合がある。
【0029】
次に本実施形態に係るイージーオープン缶蓋の製造工程について、代表例を説明する。本実施形態に係るイージーオープン缶蓋1の製造方法は、パネル3に飲み口形状にスコア17を刻設する工程と、リベット5によってリングタブ7をパネル3の中央に固着する工程とを有する缶蓋の製造工程において、リングタブ7をパネル3に固着する工程の後、リングタブ7のアウターランス11の一部に、上方から押しつぶし加工を施す工程を有する。押しつぶし加工をリングタブ7がパネル3に固着されている状態で行うことにより、リングタブ7の折り曲げ角度αをパネル3の傾斜角度に近づけることが容易である。尚、押しつぶし加工を施す工程は、リングタブ7をパネル3に固着する工程と同時に行ってもよい。リベット加工と押しつぶし加工を一回のプレス工程で行うことができる。
【0030】
押しつぶし加工は、リングタブ7のアウターランス11に対してリングタブ7の折り曲げ強度を損なわない程度の深さの窪みSを形成することができれば、どのような方法でもよいが、リングタブ7が上方に折れ曲がる効果をより生じさせるために楔状の凹みを形成する加工が望ましい。
【0031】
本実施形態に係るイージーオープン缶蓋1の製造方法では、リングタブ7に押しつぶし加工を施す一工程において、同時にパネル3の中央を押し下げるとともに、リングタブ7のアウターランス11に窪みSを設けて折り曲げることが好ましい。すなわちリングタブ7のアウターランス11を押しつぶす工程によってパネル3の中央が押し下げられ、リベット5からタブテール15の方向に対して、パネル3の中央が最凹部となるように傾斜面23を形成されるともに、リングタブ7のアウターランス11の一部に窪みSが形成されてリングタブが折り曲げられる。このときリングタブ7の下面が傾斜面23に当接若しくは沿って近接するように、リングタブ7を加工することが好ましい。一回の押しつぶし加工によってパネル3の押し下げとリングタブ7の折り曲げを同時に行うと、リングタブ7はパネル3の傾斜面23に沿って折れ曲がり、リングタブ7の折れ曲がり角度αはパネル3の傾斜角度に近づけることができるため、タブテール15の浮き上がり量は缶蓋の積み重ね性を損なうことがなく、本実施形態に係るイージーオープン缶蓋の製造が簡便かつ効率よく実施することができる。
【0032】
本実施形態に係るイージーオープン缶蓋で密封された缶容器は、缶製造時や充填巻き締め工程で問題がなく、指掛かり性が改善されて開缶しやすいため飲料製品の容器として好適に使用できる。
【実施例】
【0033】
実施例として、缶蓋の形状が図5及び図6に示す形状のイージーオープン缶蓋について、巻き締め後の指掛かり性を評価する指標となるタブテール浮き上がり量を調査した。
【0034】
<タブテール浮き上がり量の調査方法>
図3及び図4に示すように、タブテール15の下面とフィンガーデポス21のタブテール15側の端部との間の間隔Xをタブテール浮き上がり量として計測した。計測に当たって、缶内圧を0MPaから0.5MPaまで0.05MPa刻みに変化させて、巻き締め後の缶蓋のタブテール浮き上がり量の変化を計測した。
【0035】
(実施例)
ビール用のアルミニウム合金製204径イージーオープン缶蓋を使用し、図5及び図6に示すように、リングタブ7のアウターランス11の部分に楔状のプレスを使用した押しつぶし加工によって窪みを設けるともに、パネル3の中央を最凹部としてフィンガーデポスの方向に2°の傾斜を施し、同時にリングタブ7はパネル3の傾斜面に沿うように折り曲げられた缶蓋を使用した。
【0036】
(比較例)
押しつぶし加工を施さず、パネルの傾斜及びリングタブの折り曲げのない以外は、実施例1と同様である。
【0037】
<タブテール浮き上がり量の調査結果>
実施例及び比較例に係るタブテール浮き上がり量と缶内圧の関係を示すグラフを図9に示す(実施例を●、比較例を▲で示す。)。図9に示すように内圧がない状態では、実施例は比較例と同程度のタブテール浮き上がり量であり、缶蓋の積み重ね性を損なわないレベルであった。ついで缶内圧を上昇させると、実施例では缶内圧が0.05MPa以上になるとタブテール浮き上がり量が大きく増加し、指掛かり性が大きく改善された。一方比較例では、缶内圧を高くした場合でもタブテール浮き上がり量の増加は少なく、実施例と比較して指掛かり性の改善は殆ど認められなかった。
【0038】
上記の結果からわかるように、実施例は比較例に比べて、指掛かり性が大きく改善されており、かつ缶蓋の積み重ね性を損なわないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来のイージーオープン缶蓋の概略正面図である。
【図2】図1におけるA−A’線縦断面図である。
【図3】従来のイージーオープン缶蓋を陽圧缶に巻き締めたときの状態を説明するための断面図である。
【図4】本発明の一実施形態のイージーオープン缶蓋を陽圧缶に巻き締めたときの状態を説明するための断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示すイージーオープン缶蓋の概略正面図である。
【図6】図5におけるB−B’線縦断面図である。
【図7】本発明の一実施形態を示すリングタブの部分拡大正面図である。
【図8】図7におけるC方向から見た側面図である。
【図9】実施例及び比較例に係るタブテール浮き上がり量と缶内圧の関係を示すグラフである。●は実施例を示し、▲は比較例を示す。
【符号の説明】
【0040】
1 缶蓋
3 パネル
5 リベット
7 リングタブ
9 U字切り込み部
11 アウターランス
13 ノーズ部
15 タブテール
17 スコア
19 スコアパネル
21 フィンガーデポス
23 傾斜面
S 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの上面に飲み口形状に刻設したスコアと、該スコアによって囲まれた開口片と、前記パネルの上面中央にリベットを介して固着されたリングタブを備え、該リングタブのノーズ部によって前記スコアを断裂しつつ、前記開口片を押し下げて開缶するイージーオープン缶蓋において、
前記パネルの中央から前記リングタブのタブテールの方向に対して、前記パネルの中央が最凹部となるように傾斜面が形成され、前記リングタブの下面が前記傾斜面に当接若しくは沿って近接されており、前記リングタブはアウターランスに、上方からの押しつぶし加工によって形成された窪みを有し、該窪みによってリングタブが折り曲げられていることを特徴とするイージーオープン缶蓋。
【請求項2】
前記窪みを設けるアウターランスの範囲は、前記リベットから前記タブテールに向かう方向に対して直交するように前記リベットの外周に引いた2接線によって挟まれた範囲であることを特徴とする請求項1に記載のイージーオープン缶蓋。
【請求項3】
前記傾斜面と水平面とがなす角度が、1〜3°であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイージーオープン缶蓋。
【請求項4】
前記パネルの中央の最凹部の凹み量が0.1〜0.5mmであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のイージーオープン缶蓋。
【請求項5】
パネルの上面に飲み口形状にスコアを刻設する工程と、前記パネルの上面にリングタブをパネルの中央のリベットを介して固着する工程とを有するイージーオープン缶蓋の製造方法において、
前記リングタブを前記パネルに固着する工程の後又は固着する工程と同時に、前記リングタブのアウターランスの一部に、上方から押しつぶし加工を施す工程を有することを特徴とするイージーオープン缶蓋の製造方法。
【請求項6】
前記押しつぶし加工を施す工程は、前記パネルの中央を押し下げることによって、前記パネルの中央から前記リングタブのタブテールの方向に対して、前記パネルの中央が最凹部となるように傾斜面を形成するとともに、前記リングタブのアウターランスの一部に窪みを形成し、該窪みによって前記リングタブが折り曲げられて、前記リングタブの下面が前記傾斜面に当接若しくは沿って近接するように、前記リングタブを加工することを特徴とする請求項5に記載のイージーオープン缶蓋の製造方法。
【請求項7】
請求項1、2,3又は4に記載のイージーオープン缶蓋で密封された缶容器に充填されていることを特徴とする飲料製品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−12823(P2009−12823A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177701(P2007−177701)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】