説明

ウィンドウフィルム及びその製造方法、並びにそのウィンドウフィルムを用いたウィンドウ及びその製造方法

【課題】長期間の使用においても劣化し難いエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分として含む接着層を有するウィンドウフィルムで、透明基板に貼り付ける際に、外観不良が生じ難いウィンドウフィルムを提供する。
【解決手段】透明フィルム12、及びその一方の表面に接着層11を有するウィンドウフィルム20であって、接着層11が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、光重合開始剤及び溶剤を含む接着層形成用液の塗工層であり、且つ接着層11の透明フィルム12側と反対側の表面に、算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001))が0.1〜10.0μmの凹凸形状19を有することを特徴とするウィンドウフィルム20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする接着層、熱線遮蔽層等の機能性層及び透明フィルムを備えるウィンドウフィルムに関し、ガラス板等の透明基板に貼り付けた際に、外観不良を生じ難いウィンドウフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等のウィンドウ、建築物の窓等(以下、ウィンドウという)には、飛散防止機能、耐擦傷機能、熱線遮蔽機能等を付与するため、それらの機能を有するウィンドウフィルムという機能性フィルムが、透明基板に貼り付けられて用いられている。一般に、ウィンドウフィルムは、透明プラスチックフィルムの表面に、掃除や設置の際にガラス板等の透明基板表面に傷が生じるのを防止するためのハードコート層、又は太陽光中の近赤外線(熱線)の遮蔽や室内から放射される熱線の反射のための熱線遮蔽層等が形成され、その反対側の表面に透明基板に貼り付けるための接着層が形成されている。
【0003】
接着層としては、通常、アクリル樹脂系粘着剤等の感圧接着剤(以下、PSAという)が用いられている(例えば、特許文献1)。接着層にPSAを用いたウィンドウフィルムは透明基板に貼り付ける際に、ゴムローラー等を用いて容易に気泡が入らないように容易に貼り付けることができる。しかしながら、アクリル樹脂系粘着剤の場合は、長期間の使用により、粘着剤が劣化し、フィルムと透明基板との間に発泡が生じたり、フィルムが浮いて剥がれたりして外観不良が生じる場合がある。従って、複層ガラスの内側や高所の窓ガラス等の貼り替えが困難な位置には使用し難いという問題がある。
【0004】
一方、ウィンドウフィルムの接着層として、より耐候性が高い、合わせガラス用の中間膜に一般に用いられる粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(以下、EVAともいう)を主成分とするもの(以下、EVA系粘着剤ともいう)等が知られている(例えば、特許文献2)。EVA系粘着剤は安価であり、接着強度が高く、優れた耐候性、透明性を有する点で有用である。また、EVA系粘着剤は、有機過酸化物などの架橋剤を用いて共重合体を架橋させることにより、接着性、耐貫通性、耐久性等を向上させることができる。特許文献3の明細書中には、上記EVAを含む接着層をカレンダ成形により作成し、その接着層を、機能性層が形成された透明プラスチックフィルムとガラス板との間に挟持させ接着一体化することでウィンドウガラスを作成する方法が記載されている。
【0005】
EVA系粘着剤を用いてウィンドウフィルムと透明基板を貼り合わせる方法としては、接着層を介してウィンドウフィルムと透明基板を積層した積層体を真空袋に入れ、脱気し、加熱下で押圧する真空ラミネート法や、上記積層体をニップロールで加圧した後、2次加熱等により硬化を行うニップロール法等がある。特にニップロール法は連続的に製造できる有利な方法といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−094584号公報
【特許文献2】特開2009−051713号公報
【特許文献3】特開2011−051803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載されたようなEVA系粘剤着剤からなる接着層を用いた場合、ウィンドウフィルムとガラス板等の透明基板とを圧着する際、特にニップロール法を用いて圧着する際に、気泡が入る等によりフィルム表面に凹凸が生じたり、接着層の平滑性が低く、厚みムラを生じることにより遠景が歪んだりする等の外観不良が生じる場合があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、接着層に、長期間の使用においても劣化し難く、前述のような利点を有するEVAを主成分として含む粘着剤を用いたウィンドウフィルムであって、透明基板に貼り付けた際に、外観不良が生じ難いウィンドウフィルムを提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、このウィンドウフィルムの製造方法を提供することにある。
【0010】
更に、本発明の目的は、このウィンドウフィルムを用いたウィンドウを提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、このウィンドウフィルムを用いたウィンドウの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、透明フィルム、及びその一方の表面に接着層を有するウィンドウフィルムであって、前記接着層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、光重合開始剤及び溶剤を含む接着層形成用液の塗工層であり、且つ前記接着層の透明フィルム側と反対側の表面に、算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001))が0.1〜10.0μmの凹凸形状を有することを特徴とするウィンドウフィルムによって達成される。
【0013】
EVAを含む接着層形成用液を塗工することで接着層を形成することにより、接着層をカレンダ成形や押出成形によって透明フィルムに積層して形成した場合と比較して、薄膜で、且つ平滑性に優れた接着層とすることができ、遠景の歪み等の外観不良が抑えられたウィンドウフィルムとすることができる。また、接着層表面に、上記範囲の算術平均粗さRaの凹凸形状を有していることにより、ウィンドウフィルムを透明基板に圧着する際にエア抜けが良好になり、ニップロール法を用いた場合であっても、気泡が入ってフィルム表面に凹凸が生じる等の外観不良が防止されたウィンドウフィルムとすることができる。更に、上記凹凸形状を有することにより、ウィンドウフィルムを透明基板に載置する際に、貼り付きが抑制され、位置合わせの微調整が容易なウィンドウフィルムとすることができる。
【0014】
接着層表面の凹凸形状の算術平均粗さRaが0.1μm未満であれば、エア抜け等の効果が低く、10μmを超えると、ウィンドウフィルムを透明基板に圧着した後に凹凸形状が残存してしまう場合がある。
【0015】
また、接着層におけるEVAの硬化に光重合開始剤を用いることで、熱硬化のように高い温度で処理する必要がなく、加熱による応力を大幅に低減でき、透明基板に貼り付ける際の内部応力の発生を抑制し、ウィンドウフィルムのしわや剥離の発生を更に防止することができる。
【0016】
本発明のウィンドウフィルムの好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体に対して28質量%以上、50質量%未満である。これにより、溶解性が高いEVAとなり、接着層形成用液の塗工性が良好になり、より平滑性に優れた接着層とすることができる。更に、ウィンドウフィルム圧着時の内部応力の発生が抑制され、しわや剥離が発生し難いウィンドウフィルムとすることができる。なお、EVAのメルトフローレート(MFR)(JIS−K7210に従う)は、190℃、荷重21.18Nの条件下で18g/10分以上、100g/10分未満が好ましい。
(2)前記接着層形成用液における溶剤の配合量が、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、230〜400質量部である。
(3)前記接着層の最大厚みが、10〜100μmである。
(2)、(3)により、更に平滑性に優れる接着層とすることができ、より遠景の歪み等の外観不良が抑えられたウィンドウフィルムとすることができる。
(4)幅方向2mmの測定幅で、幅方向に0.5mm毎に測定した厚みの最大値及び最小値の差が、0.5μm以下である。このようなフィルムであれば、厚みムラが極めて小さく、平滑性に優れたウィンドウフィルムであるといえる。
(5)ヘイズ(JIS−K7105)が、2.0〜80%である。接着層形成用液から形成された接着層は、カレンダ成形や押出成形により形成された接着層よりヘイズを低く抑えることができる。
(6)前記透明フィルム、前記接着層、及び少なくとも1層の機能性層を含む積層体からなり、前記接着層が最表層に設けられている。
(7)前記機能性層が熱線遮蔽層である。
(8)前記接着層の表面に剥離シートが設けられている。
【0017】
透明フィルムの一方の表面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体、光重合開始剤及び溶剤を含む接着層形成用液を塗工し、乾燥することで接着層を形成する工程、及び前記接着層の透明フィルム側と反対側の表面に、エンボス加工により算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001))が、0.1〜10.0μmの凹凸形状を設ける工程、を含むウィンドウフィルムの製造方法;又は
一方の表面に、算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001))が、0.1〜10.0μmの凹凸形状の反転凹凸形状を有する剥離シートの当該反転凹凸形状を有する表面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体、光重合開始剤及び溶剤を含む接着層形成用液を塗工し、乾燥することで接着層を形成する工程、及び前記接着層の剥離シート側と反対側の表面を、透明フィルムの表面に対向させて、載置、押圧することで、当該透明フィルムの表面に前記凹凸形状を有する接着層を設ける工程、を含むウィンドウフィルムの製造方法によって達成される。上記の方法により、本発明のウィンドウフィルムを効率的に製造することができる。
【0018】
本発明のウィンドウフィルムの製造方法においては、透明フィルムの少なくとも一方の表面に、少なくとも1層の機能性層を形成する工程を更に含むことが好ましい。
【0019】
なお、本発明の製造方法においても、上述の本発明のウィンドウフィルムの好ましい態様と同様な態様が好ましい。
【0020】
また、上記目的は、透明基板の一方の表面に、本発明のウィンドウフィルムが、接着層を介して接着された積層体を有することを特徴とするウィンドウによって達成される。本発明のウィンドウフィルムを用いることで、遠景の歪み等の外観不良がなく、長時間の使用においても劣化し難い耐久性の高いウィンドウとすることができる。
【0021】
更に、上記目的は、透明基板の一方の表面に、本発明のウィンドウフィルムが、接着層を介して接着された積層体と、別の透明基板とが、間隙を置いて配置され、その間隙により中空層が形成されていることを特徴とするウィンドウによって達成される。2枚の透明基板の間隙に中空層を有するものは、一般に、複層ガラスといわれるものである。本発明のウィンドウフィルムを用いることで、外観不良がなく、長期間の使用においても劣化し難い、耐久性の高い複層ガラス型のウィンドウとすることができる。
【0022】
また、上記目的は、透明基板の一方の表面に、本発明のウィンドウフィルムを、接着層を透明基板の表面に対向させて配置して積層し積層体を得る工程、及び前記積層体を加熱し、ニップロールを用いて加圧することにより圧着する圧着工程、を含むことを特徴とするウィンドウの製造方法によっても達成される。本発明のウィンドウの製造方法は、本発明のウィンドウフィルムを用いるので、ウィンドウフィルムを透明基板に圧着する際、気泡が入ってフィルム表面に凹凸が生じる等の外観不良を防止して、ニップロール法を用いて効率的にウィンドウを製造することができる。
【0023】
本発明のウィンドウの製造方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記圧着工程後に、更に、前記積層体に紫外線照射する工程を含む。これにより、ウィンドウフィルムの接着層を十分に硬化させることができる。紫外線照射量は、好ましくは300mJ/cm2以上で、通常0.1秒〜数十秒であり、0.1〜10秒が好ましく、0.5〜5秒が更に好ましい。
(2)前記圧着工程において、前記積層体を加熱する温度が、40〜90℃である。
(3)前記圧着工程において、ニップロールによる加圧の線圧が、2〜100kN/mである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ウィンドウフィルムにおいて、接着層がEVAを含む接着層形成用液から形成されているので、薄膜で、平滑性に優れた接着層とすることができ、透明基板に貼り付けて使用する際に、遠景の歪み等の外観不良を抑えることができる。また、接着層の表面に上記の範囲の算術平均粗さRaの凹凸形状を有しているので、ウィンドウフィルムを透明基板に圧着する際にエア抜けが良好になり、ニップロール法を用いた場合であっても、気泡が入ってフィルム表面に凹凸が生じる等の外観不良を防止することができる。従って、本発明のウィンドウフィルムを用いることで、ニップロール法により低コストで生産可能で、遠景の歪み等の外観不良がなく、長時間の使用においても劣化し難い耐久性の高いウィンドウを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のウィンドウフィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のウィンドウフィルムの別の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のウィンドウフィルムの製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のウィンドウフィルムの製造方法の別の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明のウィンドウの一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明のウィンドウの別の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明のウィンドウの製造方法の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明のウィンドウフィルムについて、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のウィンドウフィルムの一例を示す概略断面図である。図1において、ウィンドウフィルム20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の耐熱性の透明フィルム12の一方の表面に、EVAを主成分とする接着層11を有している。接着層11は、後述の製造方法の説明で示すようにEVA、光重合開始剤及び溶剤を含む接着層形成用液を用いて塗工法により形成された塗工層である。そして、接着層11の透明フィルム12側と反対側の表面には、算術平均粗さRaが0.1〜10.0μmの凹凸形状19を有している。凹凸形状19は、後述するようにエンボス工程等により形成される。なお、本発明において、表面の算術平均粗さRaとは、JIS−B0601(2001)に準拠した方法により測定した値である。即ち、粗さ曲線から、その平均線の方向に、所定の長さを抜き取り、その抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。
【0027】
通常、ウィンドウフィルムにおいて、EVA系粘着剤からなる接着層を透明フィルムの表面に形成する場合、粘着剤組成物を透明フィルム上に押出成形するか、カレンダ成形した粘着剤シートを透明フィルムの表面に圧着する等により形成する。EVA系粘着剤を使用する場合における一般的な方法だからである。しかしながら、カレンダ成形等により接着層を形成した場合、シートの形成時に厚みムラが生じ平滑性が低くなり、ウィンドウフィルムを透明基板に貼り付けて使用する際に、遠景の歪み等の外観不良が生じる場合がある。また、粘着剤シートから形成した接着層の場合、一般に、ウィンドウフィルムを透明基板に貼り付ける加工温度が高く(例えば、130℃程度)、加熱冷却の際に、フィルムのしわの発生や剥離が生じる場合がある。また、従来のEVAを主成分とする接着層を有するウィンドウフィルムでは、接着層の表面性状については適性化されていなかったため、ウィンドウフィルムを透明基板に貼り付ける際に、特に効率的な方法としてニップロール法を用いると、気泡が入って外観不良を生じる場合がある。
【0028】
本発明においては、EVAを含む接着層形成用液を用いて塗工法により接着層11を形成することにより、接着層をカレンダ成形や押出成形によって透明フィルムに積層して形成した場合と比較して、薄膜で、且つ平滑性に優れた接着層11とすることができ、遠景の歪み等の外観不良が抑えられたウィンドウフィルム20とすることができる。更に、接着層11の透明フィルム12の反対側の表面に、上記範囲の算術平均粗さRaの凹凸形状19を有していることにより、ウィンドウフィルム20を透明基板に圧着する際にエア抜けが良好になる。これにより、ウィンドウフィルムを透明基板に貼り付ける際に、ニップロール法を用いた場合であっても、気泡が入ってフィルム表面に凹凸が生じる等の外観不良が防止されたウィンドウフィルムとすることができる。また、凹凸形状19を有することにより、ウィンドウフィルムを透明基板に載置する際に、貼り付きが抑制され、位置合わせの微調整が容易なウィンドウフィルムとすることができる。
【0029】
後述する実施例に示すように、接着層11の表面の凹凸形状19の算術平均粗さRaが0.1μm未満であれば、エア抜け等の効果が低く、10μmを超えてもエアが抜け難く、また、ウィンドウフィルムを透明基板に圧着した後に、凹凸形状19が残存してしまう場合がある。表面の算術平均粗さRaは、0.5〜10μmが好ましく、0.5〜5μmが更に好ましい。
【0030】
接着層11の厚みには特に制限は無いが、薄過ぎると、ウィンドウフィルムの耐貫通性等が低下する場合があり、厚過ぎると平滑性が低下する場合がある。接着層11の厚みは最大厚みとして、10〜100μmが好ましく、更に20〜70μmが好ましく、特に25〜50μmが好ましい。
【0031】
また、図2は本発明のウィンドウフィルムの別の一例を示す概略断面図である。図2において、ウィンドウフィルム20は、図1の場合と同様に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の耐熱性の透明フィルム12の一方の表面に、EVAを主成分とする接着層11を有している。そして、透明フィルム12の接着層11の反対側の面に、熱線遮蔽層、ハードコート層等の機能性層13が形成されている。機能性層13は1層でも良く、用途に応じて2層以上形成されていても良い。機能性層13の形成位置は、接着層11と透明フィルム12との間であっても良く(透明フィルム12/機能性層13/接着層11の順で形成されている)、透明フィルム12の両側の表面に形成されていても良い(機能性層13/透明フィルム12/機能性層13/接着層11の順で形成されている)。接着層11により透明基板に貼り付けるというウィンドウフィルムの性質上、通常、接着層11はウィンドウフィルム20の最表層に形成されている。接着層11及び透明フィルム12については、図1の説明の通りである。
【0032】
なお、図1及び図2のウィンドウフィルム20において、ハンドリング性を向上するため、後述する透明基板への貼り付け等に使用するまで、接着層11の表面に剥離シートが設けられていても良い(図示していない)。
【0033】
本発明のウィンドウフィルム20は、上述のように塗工法により形成された接着層11を有しているので平滑性に優れている。平滑性としては、例えば、幅方向2mmの測定幅で、幅方向に0.5mm毎に測定した5点の厚みを比較して、最大値及び最小値の差が、0.5μm以下であることが好ましい。このようなフィルムであれば、厚みムラが極めて小さく、平滑性に優れたウィンドウフィルムであるといえる。厚みムラは、例えば連続厚み計(ロータリーキャリパー計RC−1(明産社製))を用いて測定できる。
【0034】
また、塗工法により形成された接着層11は、カレンダ成形等により形成された接着層と比較して透明性を高くすることができるので、本発明のウィンドウフィルム20は、ヘイズ(JIS−K7105)を比較的低く抑えることができる。例えば、ヘイズ(JIS−K7105)が、2.0〜80%であることが好ましい。
【0035】
以下に、本発明のウィンドウフィルム20を構成する材料について詳述する。本発明において接着層11は、上述の通り、EVA、光重合開始剤及び溶剤を含む接着層形成用液から形成される。
【0036】
[エチレン−酢酸ビニル共重合体]
本発明において、接着層形成用液に含まれるEVAに特に制限はない。EVAにおける酢酸ビニルの含有量は、一般にカレンダ成形等によりシート状に成形する場合に比べて高い方が好ましい。例えば、酢酸ビニルの含有量は、前記EVAに対して、28質量%以上、50質量%未満が好ましい。この範囲であれば、溶剤への溶解性が十分高いEVAとなり、接着層形成用液の塗工性が良好になり、より平滑性に優れた接着層とすることができる。更に、より柔軟性が高いEVAとすることができ、ウィンドウフィルム圧着時の内部応力の発生が抑制され、しわや剥離が発生し難いウィンドウフィルムとすることができる。EVAの酢酸ビニル単位の含有量が高い程、EVAの溶剤への溶解性が高くなる傾向があり、得られる塗工液の塗工性が良好になる。但し、EVAの酢酸ビニル含有量が50質量%以上の場合、形成される接着層の常温での粘着性が高くなり、ウィンドウフィルムを透明基板に貼り付ける際に、エア抜けが不十分になったり、位置合わせの微調整を行い難くなったりする場合がある。また、EVAの酢酸ビニル含有量が28質量%未満の場合、EVAの溶解性が不十分で、得られる塗工液の塗工性が低くなる場合がある。EVAにおける酢酸ビニルの含有量は30〜45質量%が更に好ましく、特に32〜42質量%が好ましい。また、EVAのメルトフローレート(MFR)(JIS−K7210に従う)は、190℃、荷重21.18Nの条件下で、18g/10分以上、100g/10分未満が好ましく、更に20〜80g/10分が好ましく、特に30〜70g/10分が好ましい。更に塗工性に優れた接着層形成用液とすることができ、より平滑性に優れた接着層とすることができる。
【0037】
[光重合開始剤]
本発明において、接着層形成用液に含まれる光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用することができる。特に、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等のベンゾフェノン系光重合開始剤、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。具体的には、例えば、ベンジルジメチルケタール(イルガキュア651(BASF社製))、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184(BASF社製))、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア1173(BASF社製))、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン(イルガキュア907(BASF社製))等が好ましく挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸等の安息香酸系又は、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、等の第3級アミン系などの公知の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。
【0038】
接着層形成用液における光重合開始剤の含有量は、EVA100質量部に対して、通常0.1〜20質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。光重合開始剤の含有量が上記の範囲であれば、強固な架橋構造が得られ、ウィンドウフィルムを透明基板に貼り付けた時、透明フィルム、接着層及び透明基板を十分に接着一体化させることができる。
【0039】
[溶剤]
本発明において、接着層形成用液に含まれる溶剤としては、EVA等、接着層の材料を良好に溶解できる溶剤であれば、特に制限はない。トルエン、キシレン、シクロヘキサン等を好ましく用いることができる。溶剤の配合量は、接着層形成用液が塗工できる粘度(0.1〜3Pa・s(塗工温度)が好ましく、0.2〜2Pa・s(塗工温度)が更に好ましい)になれば特に制限は無い。溶剤の配合量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、230〜400質量部が好ましく、270〜350質量部が更に好ましい。即ち、EVAの濃度として、20〜30質量%が好ましく、22〜27質量%が好ましい。このような濃度であれば、より平滑性の高い接着層とすることができる。
【0040】
[接着向上剤]
本発明において、接着層形成用液は、更に優れた接着力を付与するために、接着向上剤をさらに含んでいても良い。接着向上剤としては、シランカップリング剤を用いることができる。前記シランカップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましく挙げられる。
【0041】
前記シランカップリング剤の含有量はEVA100質量部に対して0.1〜2質量部が好ましく、更に0.1〜0.65質量部、特に0.1〜0.4質量部であることが好ましい。
【0042】
[その他]
本発明において、接着層形成用液は、接着層の種々の物性(機械的強度、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整のため、必要に応じて、可塑剤、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物、架橋助剤などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0043】
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、EVA100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
【0044】
アクリロキシ基含有化合物及びメタクリロキシ基含有化合物としては、一般にアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体であり、例えばアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルやアミドを挙げることができる。エステル残基の例としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等の直鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、テトラヒドルフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプオピル基を挙げることができる。アミドの例としては、ジアセトンアクリルアミドを挙げることができる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルも挙げることができる。
【0045】
エポキシ含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(エチレンオキシ)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0046】
前記架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等を挙げることができる。
【0047】
前記アクリロキシ基含有化合物、前記メタクリロキシ基含有化合物、前記エポキシ基含有化合物、または前記架橋助剤は、それぞれEVA100質量部に対してそれぞれ一般に0.1〜10.0質量部、好ましくは0.5〜5.0質量部、特に1.0〜4.0質量部含まれていることが好ましい。
【0048】
更に、本発明において、接着層形成用液は、紫外線吸収剤、光安定剤および老化防止剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤を含むことにより、照射された光などの影響によってEVAが劣化し、接着層が黄変するのを抑制することができる。紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。なお、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、EVA100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0049】
また、光安定剤を含むことによっても、照射された光などの影響によってEVAの劣化し、接着層が黄変するのを抑制することができる。光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA−63p、LA−67、LA−68(いずれも(株)ADEKA製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもBASF社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、EVA100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0050】
老化防止剤としては、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
【0051】
[透明フィルム]
本発明において、透明フィルム12としては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)のフィルムであり、通常、透明プラスチックフィルムである。透明フィルム12としては、用途によって適宜選択することができ、ウィンドウフィルム20として使用する際の耐熱性を有していれば特に制限はない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンブチレートフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリカーボネートフィルム等を挙げることができる。加工時の熱、溶剤、折り曲げ等の負荷に対する耐性が高く、透明性が高い点でPETフィルムが好ましい。透明フィルム12の表面には機能性層や接着層の密着性を良くするための易接着層を設けても良い。易接着層は、例えば、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。透明フィルム12の厚さは、特に制限は無いが、10〜500μmが好ましく、50〜400μmが更に好ましく、特に100〜250μmが好ましい。
【0052】
[機能性層]
本発明において、図2における機能性層13は特に制限はなく、ウィンドウフィルムに要求されるどのような機能を有する層でも良い。例えば、従来から用いられている、太陽光中の近赤外線(熱線)を遮蔽する熱線遮蔽層、室内から放射される熱線を反射する熱線反射層、取り付け時や清掃時の透明基板表面の擦り傷や掻き傷を防止するためのハードコート層等が挙げられる。
【0053】
[熱線遮蔽層]
本発明のウィンドウフィルムは、ウィンドウに用いたときの耐候性、耐熱性が高いため、太陽光等の熱線を受けるウィンドウに用いることが好ましい。従って、機能性層13は熱線遮蔽層であることが好ましい。この場合、長期間の使用においても剥がれたりするような外観不良が生じ難いため、透明基板の交換が困難な複層ガラスの内側に用いることもできる。
【0054】
熱線遮蔽層は、近赤外線吸収剤及びバインダを含む樹脂組成物からなる層である。近赤外線吸収剤は、一般に800〜1200nmの波長に吸収極大を有する無機系材料又は有機系色素である。例えば、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物((複合)タングステン酸化物ともいう)、インジウム−錫酸化物、錫酸化物、アンチモン−錫酸化物、フタロシアニン系色素、金属錯体系色素、ニッケルジチオレン錯体系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、アントラキノン系色素等を挙げることができる。これらの近赤外線吸収剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0055】
バインダとしては、例えば、後述のハードコート層と同様な樹脂を使用することができる。
【0056】
近赤外線吸収剤として、上記(複合)タングステン酸化物を使用する場合、熱線遮蔽層は、バインダ100質量部に対して、(複合)タングステン酸化物を10〜500質量部、さらに20〜500質量部、特に30〜300質量部含有することが好ましい。
【0057】
また、近赤外線吸収剤として、有機系色素を単独、又は上記(複合)タングステン酸化物と併用して使用する場合、上記色素は、バインダ100質量部に対して、0.1〜20質量部、さらに1〜20質量部、特に1〜10質量部含有することが好ましい。
【0058】
また、光学特性に大きな影響を与えない限り、熱線遮蔽層には、着色用の色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤等をさらに加えても良い。
【0059】
[ハードコート層]
本発明のウィンドウフィルムはウィンドウに用いたときの耐候性が高く、長期間の使用においても剥がれたりするような外観不良が生じ難い。従って、機能性層13は、更に、ウィンドウの表面の擦り傷等による外観不良も防止することができるハードコート層であることも好ましい。なお、複数の機能性層を形成する場合、ハードコート層はウィンドウフィルムの最外層(透明基板に貼り付けた際に最外層)であることが好ましい。
【0060】
ハードコート層は、JIS K5600(1999)で規定される鉛筆硬度試験でH以上の硬度のものが好ましい。このようなハードコート層とするには、紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の樹脂組成物が好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物であれば、短時間でハードコート層を形成することができる。特に紫外線硬化性樹脂組成物は、より短時間で硬化させることができ、生産性に優れているので好ましい。紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができ、紫外線硬化性樹脂は光重合開始剤等とともに紫外線硬化性樹脂組成物とし、熱硬化性樹脂は熱重合開始剤等とともに熱硬化性樹脂組成物として使用する。
【0061】
紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)としては、例えば、(メタ)アクリレートモノマー類、ポリオール化合物と有機ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。特に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0062】
これらの紫外線硬化性樹脂を、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。
【0063】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤として、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、チオキサントン系等が使用できる。特に、特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184(BASF社製))が好ましい。光重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0064】
熱硬化性樹脂の熱重合開始剤として、加熱により重合を開始させる官能基を含む化合物である有機過酸化物やカチオン重合開始剤が挙げられ、中でも有機過酸化物が好ましい。熱重合開始剤は、1種又は2種以上の混合で使用することができる。熱重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して、一般に0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0065】
更に、ハードコート層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいても良い。その量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0066】
ハードコート層を形成するには、例えば、紫外線硬化樹脂の場合、アクリル系モノマー及び光重合開始剤、必要に応じてその他の添加剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物をトルエン等の溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコーター等により透明フィルムの表面に塗工し、その後乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を挙げることができる。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜できるという利点がある。
【0067】
紫外線硬化の光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0068】
[剥離シート]
接着層11の表面に剥離シートを設ける場合、剥離シートとして、一般にプラスチックフィルム上に、シリコーン等の表面張力の低い剥離層を有する構成が好ましい。剥離層としては、例えば、ヒドロキシル基を有するポリシロキサンと水素化ポリシロキサンとの縮合反応生成物からなる剥離層、或いは不飽和2重結合基(好ましくはビニル基)を有するポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)と水素化ポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)から形成される剥離層等を挙げることができる。
【0069】
プラスチックフィルムとしては、ガラス転移温度が50℃以上の透明のポリマーが好ましく、このような材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂フィルムを用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートのフィルムが好適に用いることができ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0070】
[ウィンドウフィルムの製造方法]
図3は本発明のウィンドウフィルムの製造方法の一例を示す概略断面図である。まず、EVA、光重合開始剤、溶剤及び必要に応じて上述した各種成分を含む組成物をミキサーで混合溶解し、接着層形成用液を調製する。混合溶解は、加熱して行っても良い。そして、必要に応じて機能性層13が形成された透明フィルム12の一方の表面に、ナイフコーター、スロットダイコーター、ロールコーター、グラビアコーター、メイヤバーコーター、ブレードコーター等の適当なコーティング装置を用いて、上記の接着層形成用液を塗工し、接着層(乾燥前)11pを形成する(図3(a))。次に、接着層(乾燥前)11pを乾燥させて溶剤を蒸発させ、透明フィルム12の表面に接着層11を形成する(図3(b))。乾燥は常温で行っても良く、加熱して行っても良い。乾燥温度は30〜100℃が好ましく、40〜90℃が更にこのましい。
【0071】
その後、形成された接着層11の透明フィルム12と反対側の表面をエンボス加工することにより、算術平均粗さRaが0.1〜10.0μmの凹凸形状19を設ける(図3(c))。エンボス加工は、従来公知の方法を用いて行えば良い。例えば、上記凹凸形状の反転凹凸形状パターンを有するエンボスローラーやエンボスプレートを接着層の表面に加熱押圧し、上記凹凸形状を付与することができる。以上によりウィンドウフィルム20を製造することができる。
【0072】
図4は、本発明のウィンドウフィルムの製造方法の別の一例を示す概略断面図である。図4においては、まず、一方の表面に、算術平均粗さRaが0.1〜10.0μmの凹凸形状19の反転凹凸形状19rを有する剥離シート14の反転凹凸形状19rを有する表面に、上記適当なコーティング装置を用いて、上述のように調製した接着層形成用液を塗工し、接着層(乾燥前)11pを形成する(図4(a))。剥離シート14の反転凹凸形状19rは、どのように形成されていても良いが、上述のエンボス加工やサンドブラスト法を用いることができる。次に、接着層(乾燥前)11pを乾燥させて溶剤を蒸発させ、剥離シート14の表面に接着層11を形成する(図4(b))。その後、接着層11の剥離シート14と反対側の表面に、必要に応じて機能性層13が形成された透明フィルム12を対向させて、載置、押圧することで透明フィルム12の表面に、接着層11を貼り付ける(図4(c))。透明フィルム12の押圧は、常温で行っても良く、加熱して行っても良い。押圧温度は30〜90℃が好ましく、40〜80℃が更にこのましい。
【0073】
剥離シート14を剥離すると、接着層11の表面に凹凸形状19が形成されたウィンドウフィルム20が得られる(図4(d))。凹凸形状19rを有する剥離シート14は、接着層11に透明フィルム12を貼り付ける工程の後(図4(c))、すぐに剥離して、次の接着層形成用液の塗工工程(図4(a))に用いても良く、上述のハンドリング性向上のための剥離シートとして、ウィンドウフィルム20の使用時まで、貼り付けたままにしておいても良い。
【0074】
これらの方法により、本発明のウィンドウフィルムを効率的に製造することができる。なお、本発明の製造方法においては、透明フィルムの少なくとも一方の表面に、上述の機能性層の説明において、示したような方法により、少なくとも1層の機能性層を形成する工程を含むことが好ましい。その他、本発明の製造方法においても、本発明のウィンドウフィルムの好ましい態様と同様な態様が好ましい。
【0075】
[ウィンドウ]
以下に、本発明のウィンドウについて図面を参照しながら説明する。図5は、本発明のウィンドウの一例を示す概略断面図である。
【0076】
ウィンドウ30は、透明基板25の表面に、本発明のウィンドウフィルムが圧着されたウィンドウフィルム(圧着後)20cとからなる積層体(圧着積層体という)である。圧着は、好ましくは後述するように、ニップロールを用いる加圧を含む圧着工程によって行われる。ウィンドウフィルム(圧着後)20cは、図2における接着層11が圧着硬化し、接着層(圧着後)11cとなった以外は、上述の図2のウィンドウフィルム20と同様な構成である。
【0077】
本発明のウィンドウ30は、本発明のウィンドウフィルム20を透明基板25に圧着したものなので、遠景の歪み等の外観不良がなく、効率的に、且つフィルムのしわや剥離等の外観不良を生じ難いため歩留り良く生産でき、長期間の使用においてもウィンドウフィルムの劣化による外観不良が生じ難い耐久性の高いウィンドウである。
【0078】
透明基板25は、透明な基板であれば良く、例えば、グリーンガラス、珪酸塩ガラス、無機ガラス板、無着色透明ガラス板などのガラス板の他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンブチレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート等のプラスチック製の基板を用いてもよい。耐熱性、耐候性、耐衝撃性等の点でガラス板が好ましく、ガラス板の厚さは、2〜20mm程度が一般的である。
【0079】
また、図6は、本発明のウィンドウの別の一例を示す概略断面図である。図示の通り、本発明のウィンドウ60は、透明基板45の一方の表面に、本発明のウィンドウフィルムが圧着されたウィンドウフィルム(圧着後)20cとからなる圧着積層体50、圧着積層体50と間隙をおいて対向するように配置された別の透明基板57、これらの外周部に配置され接着剤(図示していない)によりこれらを接合しているスペーサー59、及びスペーサー59によって圧着積層体50と透明基板57との間に形成された中空層58から構成されている。即ち、ウィンドウ60は、一般に複層ガラスといわれる構成を備えている(複層ガラス型のウィンドウともいう)。
【0080】
圧着積層体50は、上述のウィンドウ30と同様な構成である。従って、ウィンドウフィルムの透明基板45への圧着は、好ましくは後述するように、ニップロールを用いる加圧を含む圧着工程によって行われる。また、ウィンドウフィルム(圧着後)20cは、図2における接着層11が圧着硬化し、接着層(圧着後)11cとなった以外は、上述の図2のウィンドウフィルム20と同様な構成である。そして、透明基板45は上述の透明基板25と同様である。また、透明基板57については、上述の透明基板25と同様なものの他、表面処理により光拡散機能を備えたすりガラス、網入りガラス、線入板ガラス、強化ガラス、倍強化ガラス、低反射ガラス、高透過板ガラス、セラミック印刷ガラス、熱線や紫外線吸収機能を備えた特殊ガラス等、種々のガラスを適宜選択して用いることができる。
【0081】
ウィンドウ60において、ウィンドウフィルム(圧着後)20cの位置は特に制限は無いが、図5に示したように、ウィンドウフィルム(圧着後)20cが別の透明基板57に対向するように、即ち、ウィンドウフィルム(圧着後)20cが中空層58に隣接するように配置されていることが好ましい。本発明のウィンドウフィルムは、長時間の使用においても劣化し難いので、ウィンドウフィルムの貼り替えが困難な複層ガラスの内側にも好ましく用いることができるからである。
【0082】
本発明のウィンドウ60は、本発明のウィンドウフィルム20を透明基板45に圧着した圧着積層体50を含んでいるので、遠景の歪み等の外観不良がなく、効率的に、且つフィルムのしわや剥離等の外観不良を生じ難いため歩留り良く生産でき、長期間の使用においてもウィンドウフィルムの劣化による外観不良が生じ難い耐久性の高い複層ガラス型のウィンドウである。
【0083】
[ウィンドウの製造方法]
図6は、本発明のウィンドウの製造方法の一例を示す概略断面図である。図4におけるウィンドウの製造方法は、まず、透明基板225の一方の表面に、本発明のウィンドウフィルム220を接着層211が透明基板225に接触するように積層し、積層体229を形成する。ウィンドウフィルム220は、透明フィルム212の一方の表面に機能性層213が形成され、その反対側の表面にEVA系粘着剤からなる接着層211が、上述の説明のように形成されたものである。
【0084】
この積層体229を搬送装置253により、搬送しながら加熱炉251を通過させる。加熱炉251はヒーター部252を備え、積層体229が加熱炉251を通過する間に、ウィンドウフィルム220の接着層211を所定の温度になるように加熱することができる。その後、積層体229を、対向する2基1対のロール部で構成されるニップロール254の間を通過させる。ニップロール254は、ロール部間を通過するものを所定の線圧で連続的に加圧する装置である。これにより積層体229が加圧され、加熱された接着層211が透明基板225及び透明フィルム212の境界面に圧着し、接着層(圧着後)211cとなり、透明基板225にウィンドウフィルム(圧着後)220cが密着したウィンドウ230が形成される。この際、本発明のウィンドウフィルム220において、接着層211は、上述のように透明フィルム212に接着層形成用液を用いて塗工法により形成され、且つ、接着層211の透明基板225側の表面には算術平均粗さRaが0.1〜10.0μmの凹凸形状を有している。これにより、ニップロールを用いる加圧であっても、ウィンドウフィルム220に歪みが生じ難く、接着層211と透明基板225の境界面のエア抜けが良く、気泡が入り難くなっている。
【0085】
搬送装置253、加熱炉251、及びニップロール254は従来公知のものを使用することができる。加熱炉251のヒーター部252の加熱方式はどの様な方式でも良く、例えば、赤外線加熱方式、熱風方式等が挙げられる。加熱炉251ではなく、加熱ロール方式の加熱装置であっても良い。加熱温度には特に制限は無い。本発明における接着層221は、上述のように塗工法により形成されており、更に光重合開始剤の作用で接着層221の硬化を行うので、カレンダ成形等により形成され、有機過酸化物を含む従来の場合に比べて、低温での製造可能である。従って、積層体229を加熱する温度は、40〜90℃が好ましく、50〜85℃が更に好ましい。
【0086】
ニップロール254はどの様なものでも良く、複数対のニップロールを有するものでも良い。また、加圧時の温度低下を避けるため、加熱ロールで構成されているものでも良い。ニップロール254による加圧の線圧は特に制限は無いが、2〜100kN/mが好ましく、5〜50kN/mが更に好ましい。
【0087】
本発明のウィンドウの製造方法において、上述の圧着工程後、更に、紫外線照射することで接着層211を硬化させる工程(紫外線照射工程)を行うことが好ましい。これにより、接着層211を十分に硬化させ、より接着力を高めることができ、よりウィンドウフィルムが剥がれ難いウィンドウとすることができる。光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等が挙げられる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、通常0.1秒〜数十秒であり、0.1〜10秒が好ましく、0.5〜5秒が更に好ましい。紫外線照射量は、300mJ/cm2以上が好ましい。
【0088】
また、硬化促進のために、予め積層体を30〜80℃に加温し、これに紫外線を照射してもよい。
【0089】
なお、図5に示した複層ガラス型のウィンドウ60とするには、上述のように製造したウィンドウを圧着積層体50として用い、常法により製造することができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0091】
[実施例1〜8、比較例1〜6]
1.熱線遮蔽層の形成
下記配合の組成物を、透明フィルムとして、PETフィルム(厚さ;100μm)上に、バーコータを用いて塗布し、80℃のオーブン中で2分間乾燥させた後、照射線量500mJ/m2で1秒間紫外線を照射することによりPETフィルム上に熱線遮蔽層(厚さ5μm)を形成した。
(配合)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:80質量部
光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)184):5質量部
Cs0.33WO3(平均粒径80nm):20質量部
メチルイソブチルケトン:300質量部
【0092】
2.接着層の形成
表1に示した実施例1〜8及び比較例1〜5の配合で、各材料を溶剤(トルエン)に常温で固形分25質量%になるように溶解し、接着層形成用液を調製した。比較例6については、表1に示した配合の粘着剤組成物を原料としてカレンダ成形法により粘着剤シート(ウィンドウフィルムとしたときに、接着層の厚みが400μmとなるように調製)を作成した。
【0093】
次いで、表1に示した算術平均粗さRaの反転凹凸形状を形成した剥離シート(離型処理PET)に各接着用塗工液(実施例1〜8及び比較例1〜5)をハンドコーターで塗工し、80℃、2分間乾燥することで、接着層を形成した。なお、各接着層が、乾燥後に表1に示した最大厚みになるように、塗工厚を調整した。比較例6についても、剥離シートに粘着剤シートを積層して接着層とした。
【0094】
なお、表面性状の測定は、JIS−B0601(2001)に準拠し、表面粗さ測定機((株)東京精密製サーフコム480A)を用いて測定した。また、測定は10箇所行い、その測定値の平均値を求めた。測定条件は、触針先端半径:2μm、評価長さ:12.5mm、測定速度:0.3mm/s、長波長カットオフ値λc:2.5mm、カットオフ比λc/λs:300(λsは短波長カットオフ値)とした。
【0095】
3.ウィンドウフィルムの作製
各接着層を形成した剥離シートと熱線遮蔽層を形成したPETフィルムを積層し、押圧ロールで押圧して、剥離シート/接着層/PETフィルム/熱線遮蔽層の構成のウィンドウフィルムを作製した。
【0096】
4.ウィンドウの作製
各ウィンドウフィルムから、剥離シートを除去し、透明基板としてガラス板(厚さ:3mm)に、接着層をガラス板側にして載置し、加熱装置及びニップロールによる加圧装置を有するロールラミネーターを用いて、表1に示した温度及び速度で線圧12kN/mで圧着し、次いで照射線量500mJ/m2で1秒間紫外線照射することで、ウィンドウを作製した。比較例6については、オートクレーブにより温度125℃、圧力5×105Paの条件下で30分間加圧処理してウィンドウを作製した。ウィンドウの評価は、以下の様に行った。
(1)遠景歪み:斜め10°から各ウィンドウを透過した遠景を見た場合に、風景に歪みが確認できない場合を○、歪みが確認できる場合を×とした。
(2)HAZE(へイズ):各ウィンドウについて、JIS K 7105に従って、ヘイズ(%)を測定した。
(3)エア入り:ニップロール処理後(オートクレーブ前)に積層体を外観観察し、気泡が目視で確認できない場合を○、気泡が確認できる場合を×とした。
(4)エンボス残り:各ウィンドウを外観観察し、エンボス(凹凸形状)の跡が目視で確認できない場合を○、エンボスの跡が確認できる場合を×とした。
(5)位置合わせ:ガラス板上に、ウィンドウフィルムを合わせる際に、フィルムを引っ張って位置を微調整できる場合を○、微調整できない場合を×とした。
【0097】
5.評価結果
評価結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1に示す通り、ウィンドウフィルムの接着層がEVA等を含む接着層形成用液を用いて塗工法で形成し、接着層の透明フィルム側と反対側の表面に、算術平均粗さRaが0.1〜10.0μmの凹凸形状を有する実施例1〜8は全ての評価で合格であった。一方、接着層のRaが上記範囲より小さい、比較例1、3及び5は、エアが抜け難く、位置合わせについても不合格であり、Raが上記範囲より大きい、比較例2及び4ではエアが抜け難く、エンボス残りが認められた。また、カレンダ成形を用いた比較例6は遠景歪みも認められた。
【0100】
以上により、本発明のウィンドウフィルムは、EVAを含む接着層であっても、ニップロール法を用いて、遠景の歪み等の外観不良を抑えられた良好なウィンドウを製造できることが示された。
【0101】
なお、本発明は上記の実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明により、遠景の歪み等の外観不良を抑えられ、耐候性及び耐久性が高いウィンドウを効率的に製造できるウィンドウフィルムを提供できる。本発明により得られるウィンドウは、建築物や乗り物(自動車、鉄道車両、船舶)用の窓、プラズマディスプレイなどの電子機器、冷蔵庫や保温装置などのような各種装置の扉や壁部など、種々の用途に使用することができる。
【符号の説明】
【0103】
11、211 接着層
11p 接着層(乾燥前)
11c、211c 接着層(圧着後)
12、212 透明フィルム
13、213 機能性層
14 剥離シート
19 凹凸形状
19r 反転凹凸形状
20、220 ウィンドウフィルム
20c、220c ウィンドウフィルム(圧着後)
25、45、57、225 透明基板
30、60、230 ウィンドウ
50 圧着積層体
58 中空層
59 スペーサー
229 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム、及びその一方の表面に接着層を有するウィンドウフィルムであって、
前記接着層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、光重合開始剤及び溶剤を含む接着層形成用液の塗工層であり、且つ
前記接着層の透明フィルム側と反対側の表面に、算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001))が0.1〜10.0μmの凹凸形状を有することを特徴とするウィンドウフィルム。
【請求項2】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体に対して28質量%以上、50質量%未満である請求項1に記載のウィンドウフィルム。
【請求項3】
前記接着層形成用液における溶剤の配合量が、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、230〜400質量部である請求項1又は2に記載のウィンドウフィルム。
【請求項4】
前記接着層の最大厚みが、10〜100μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項5】
幅方向2mmの測定幅で、幅方向に0.5mm毎に測定した厚みの最大値及び最小値の差が、0.5μm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項6】
ヘイズ(JIS−K7105)が、2.0〜80%である請求項1〜5のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項7】
前記透明フィルム、前記接着層、及び少なくとも1層の機能性層を含む積層体からなり、前記接着層が最表層に設けられている請求項1〜6のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項8】
前記機能性層が熱線遮蔽層である請求項1〜7のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項9】
前記接着層の表面に剥離シートが設けられている請求項1〜8のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項10】
透明フィルムの一方の表面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体、光重合開始剤及び溶剤を含む接着層形成用液を塗工し、乾燥することで接着層を形成する工程、及び
前記接着層の透明フィルム側と反対側の表面に、エンボス加工により算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001))が、0.1〜10.0μmの凹凸形状を設ける工程、を含むウィンドウフィルムの製造方法。
【請求項11】
一方の表面に、算術平均粗さRa(JIS−B0601(2001))が、0.1〜10.0μmの凹凸形状の反転凹凸形状を有する剥離シートの当該反転凹凸形状を有する表面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体、光重合開始剤及び溶剤を含む接着層形成用液を塗工し、乾燥することで接着層を形成する工程、及び
前記接着層の剥離シート側と反対側の表面を、透明フィルムの表面に対向させて、載置、押圧することで、当該透明フィルムの表面に前記凹凸形状を有する接着層を設ける工程、を含むウィンドウフィルムの製造方法。
【請求項12】
透明フィルムの少なくとも一方の表面に、少なくとも1層の機能性層を形成する工程を更に含む請求項10又は11に記載のウィンドウフィルムの製造方法。
【請求項13】
透明基板の一方の表面に、請求項1〜8のいずれか1項に記載のウィンドウフィルムが、接着層を介して接着された積層体を有することを特徴とするウィンドウ。
【請求項14】
透明基板の一方の表面に、請求項1〜8のいずれか1項に記載のウィンドウフィルムが、接着層を介して接着された積層体と、別の透明基板とが、間隙を置いて配置され、その間隙により中空層が形成されていることを特徴とするウィンドウ。
【請求項15】
透明基板の一方の表面に、請求項1〜8のいずれか1項に記載のウィンドウフィルムを、接着層を透明基板の表面に対向させて配置して積層し積層体を得る工程、及び
前記積層体を加熱し、ニップロールを用いて加圧することにより圧着する圧着工程、を含むことを特徴とするウィンドウの製造方法。
【請求項16】
前記圧着工程後に、更に、前記積層体に紫外線照射する工程を含む請求項15に記載のウィンドウの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75409(P2013−75409A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216198(P2011−216198)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】