説明

ウェイストゲート弁の駆動機構及びターボチャージャ

【課題】ウェイストゲート弁の駆動機構における偏摩耗を抑制し、ウェイストゲート弁の応答性の低下を抑制することができる、ウェイストゲート弁の駆動機構及びターボチャージャを提供する。
【解決手段】ウェイストゲート弁2の駆動源を構成するアクチュエータ31と、アクチュエータ31に接続されたロッド32と、ウェイストゲート弁2に接続されるとともに回転駆動によってウェイストゲート弁2を開閉駆動させるシャフト33と、シャフト33に固定されたリンク板34と、リンク板34に固定された固定部35aとロッド32に回動可能に挿通された回動部35bとを有するリンクピン35と、を備え、リンクピン35の回動部35bの外周にブッシュ36を回転可能に装着し、ブッシュ36の外周にロッド32を回転可能に装着し、ブッシュ36の回転により摩耗を分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェイストゲート弁の駆動機構及びターボチャージャに関し、特に、排気ガスの一部をタービンホイールに導入せずに迂回させるバイパス流路の開閉を行うウェイストゲート弁の駆動機構及び該駆動機構を有するウェイストゲート弁を備えたターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャは、一般に、エンジンの排気ガスによって駆動されるタービンホイールを有するタービンと、前記タービンホイールに連結されたコンプレッサホイールを有するコンプレッサと、を備え、前記コンプレッサにより加圧された空気を前記エンジンに供給し、前記エンジンの吸気圧(過給圧)を高めるものである。
【0003】
ターボチャージャ付きエンジンの最大過給圧は、エンジンの破損を防止するため、一定値以下となるように制御される。そのため、タービンホイールを収容するタービンハウジングには、排気ガスの一部をタービンホイールに導入せずに迂回させるバイパス流路が形成される。かかるバイパス流路には、ウェイストゲート弁が開閉自在に配置され、かかるウェイストゲート弁を適宜開閉駆動することによって、エンジンへの過給圧が一定値以下となるように制御している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
例えば、特許文献2には、駆動源としてのアクチュエータと、該アクチュエータに備えられ過給圧に応じてウェイストゲート弁を開閉するために軸方向に移動されるロッドと、前記ウェイストゲート弁に接続されその回動に応じて前記ウェイストゲート弁を開閉するシャフトと、該シャフトに固定されたリンク板と、一端が前記リンク板に形成された孔に回動可能に挿通され他端が前記ロッドに固定されたリンクピンと、を備えたウェイストゲート弁の駆動機構が開示されている。
【0005】
かかる駆動機構によれば、アクチュエータとウェイストゲート弁とが、ロッド、リンクピン、リンク板及びシャフトを介して接続されていることから、ウェイストゲート弁を開閉するためのアクチュエータの作動力は、これらの部材を介してウェイストゲート弁に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−284674号公報
【特許文献2】実用新案登録第2504927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、過給圧制御のためにアクチュエータのロッドが軸方向に伸縮されると、ロッドが略直線上を往復移動するため、ロッドに固定されたリンクピンと、リンクピンが挿通されるリンク板に形成された孔とが、周方向の略同一箇所で繰り返し接触して偏摩耗する。ロッドは、過給圧制御を行っている間、常に移動されるため、リンクピンとリンク板の孔との偏摩耗が進行する。また、ウェイストゲート弁は高温の排気ガス(ガソリンエンジンでは約950℃)に晒されているため、高温となったウェイストゲート弁から熱が伝わるリンク板も高温(約600℃)となり、この熱影響によっても、リンク板の孔とリンクピンとの偏摩耗が促進される。
【0008】
経年使用によって、リンクピンとリンク板の孔との偏摩耗が進行すると、アクチュエータの初期セット値がずれてしまい、ウェイストゲート弁の開閉駆動の応答性が低下してしまう。例えば、リンク板の孔とリンクピンとの隙間が最初0.3mmに設定されていたものが、ロッドの繰り返しの往復駆動によりリンクピンがリンク板の孔に押し付けられる特定箇所の隙間が偏摩耗して0.6mmまで拡大したとすると、本来、ロッドが0.3mm以上移動すればウェイストゲート弁が開き始めていたものが、ロッドが0.6mm以上移動しなければウェイストゲート弁が開かないことになる。
【0009】
なお、ここでは、アクチュエータのロッドにリンクピンを固定しそのリンクピンにリンク板を回動可能に装着した場合について説明したが、逆に、リンク板にリンクピンを固定しそのリンクピンにロッドを回動可能に装着した場合であっても、同様の偏摩耗が生じることになる。
【0010】
本発明は、上述した問題点に鑑みて創案されたものであり、ウェイストゲート弁の駆動機構における偏摩耗を抑制し、ウェイストゲート弁の応答性の低下を抑制することができる、ウェイストゲート弁の駆動機構及びターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、排気ガスの一部をタービンホイールに導入せずに迂回させるバイパス流路の開閉を行うウェイストゲート弁の駆動機構であって、前記ウェイストゲート弁の駆動源を構成するアクチュエータと、該アクチュエータに接続されたロッドと、前記ウェイストゲート弁に接続されるとともに回転駆動によって前記ウェイストゲート弁を開閉駆動させるシャフトと、該シャフトに固定されたリンク板と、該リンク板及び前記ロッドのいずれか一方に固定された固定部と他方に回動可能に挿通された回動部とを有するリンクピンと、を備え、前記リンクピンの前記回動部の外周にブッシュを回転可能に装着し、該ブッシュの外周に前記回動部が挿通される前記リンク板又は前記ロッドを回転可能に装着し、前記ブッシュの回転により摩耗を分散させるようにした、ことを特徴とするウェイストゲート弁の駆動機構が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、排気ガスによって回転されるタービンホイールを有するタービンと、前記タービンホイールに連結されたコンプレッサホイールを有するコンプレッサと、前記タービンに形成され前記排気ガスの一部を前記タービンホイールに導入せずに迂回させるバイパス流路と、該バイパス流路の開閉を行うウェイストゲート弁と、を備えたターボチャージャにおいて、前記ウェイストゲート弁の駆動機構は、前記ウェイストゲート弁の駆動源を構成するアクチュエータと、該アクチュエータに接続されたロッドと、前記ウェイストゲート弁に接続されるとともに回転駆動によって前記ウェイストゲート弁を開閉駆動させるシャフトと、該シャフトに固定されたリンク板と、該リンク板及び前記ロッドのいずれか一方に固定された固定部と他方に回動可能に挿通された回動部とを有するリンクピンと、を備え、前記リンクピンの前記回動部の外周にブッシュを回転可能に装着し、該ブッシュの外周に前記回動部が挿通される前記リンク板又は前記ロッドを回転可能に装着し、前記ブッシュの回転により摩耗を分散させるようにした、ことを特徴とするターボチャージャが提供される。
【0013】
上述したウェイストゲート弁の駆動機構及びターボチャージャにおいて、前記リンクピンを前記リンク板に固定した場合に前記リンクピンの前記回動部と前記ブッシュとの隙間が前記ブッシュと前記ロッドとの隙間よりも大きく設定してもよいし、前記リンクピンを前記ロッドに固定した場合に前記リンク板と前記ブッシュとの隙間が前記ブッシュと前記リンクピンの前記回動部との隙間よりも大きく設定してもよい。
【0014】
前記ブッシュは、前記リンクピン及び前記回動部が挿通される前記ロッド又は前記リンク板よりも硬度が低い材質により構成されていてもよい。また、前記ブッシュは、拡径したフランジ部を有し、該フランジ部は前記ロッドと前記リンク板との間に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係るウェイストゲート弁の駆動機構及びターボチャージャによれば、アクチュエータの作動力が、ロッド、リンクピン及びリンク板を介してウェイストゲート弁に伝達されるようになっており、リンクピンの回動部(リンクピンとロッドとの間又はリンクピンとリンク板との間)に装着されたブッシュは回転可能に配置されていることから、ブッシュの摩耗が特定の箇所に限定されず、周方向に分散される。したがって、ウェイストゲート弁の駆動機構における偏摩耗を抑制し、ウェイストゲート弁の応答性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係るウェイストゲート弁の駆動機構を備えたターボチャージャの概略断面図である。
【図2】図1に示したウェイストゲート弁の駆動機構の斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るウェイストゲート弁の駆動機構の要部を示す図であり、(a)は断面図、(b)は図3(a)におけるB−B断面図、である。
【図4】本発明の第二実施形態に係るウェイストゲート弁の駆動機構の要部を示す図であり、(a)は断面図、(b)は図4(a)におけるB−B断面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るウェイストゲート弁の駆動機構及び該駆動機構を備えたターボチャージャについて、図1〜図4を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るウェイストゲート弁の駆動機構を備えたターボチャージャの概略断面図である。図2は、図1に示したウェイストゲート弁の駆動機構の斜視図である。
【0018】
本発明の実施形態に係るターボチャージャ1は、図1及び図2に示したように、排気ガスによって回転されるタービンホイール11aを有するタービン11と、タービンホイール11aに連結されたコンプレッサホイール12aを有するコンプレッサ12と、タービン11に形成され排気ガスの一部をタービンホイール11aに導入せずに迂回させるバイパス流路11bと、バイパス流路11bの開閉を行うウェイストゲート弁2と、を備え、ウェイストゲート弁2の駆動機構3は、ウェイストゲート弁2の駆動源を構成するアクチュエータ31と、アクチュエータ31に接続されたロッド32と、ウェイストゲート弁2に接続されるとともに回転駆動によってウェイストゲート弁2を開閉駆動させるシャフト33と、シャフト33に固定されたリンク板34と、リンク板34に固定された固定部35aとロッド32に回動可能に挿通された回動部35bとを有するリンクピン35と、を備え、リンクピン35の回動部35bの外周にブッシュ36を回転可能に装着し、ブッシュ36の外周にロッド32を回転可能に装着し、ブッシュ36の回転により摩耗を分散させるようにしている。
【0019】
前記ターボチャージャ1は、図1に示すように、エンジンの排気ガスによって駆動されるタービンホイール11aと、タービンホイール11aにシャフト13を介して連結されたコンプレッサホイール12aと、を有している。なお、図示したターボチャージャ1の構成は、単なる一例であり、ウェイストゲート弁2を有するターボチャージャ1であれば、本実施形態を適用することができる。
【0020】
前記コンプレッサ12は、コンプレッサホイール12aを回転可能に収容するコンプレッサハウジング12bを有する。コンプレッサハウジング12bは、コンプレッサホイール12aの上流側に入口流路として筒状に形成されたインレット12cと、コンプレッサホイール12aの外周に形成されたディフューザ12dと、ディフューザ12dの外周に渦巻き状に形成されたスクロール部12eと、を備えている。コンプレッサホイール12aが回転すると、吸気(空気)は、インレット12cから吸い込まれ、コンプレッサホイール12a、ディフューザ12d及びスクロール部12eを通って加圧され、エンジンの吸気系に供給される。
【0021】
前記タービン11は、タービンホイール11aを回転可能に収容するタービンハウジング11cを有する。タービンハウジング11cは、タービンホイール11aの下流側に出口流路として形成されたアウトレット11dと、タービンホイール11aの外周に渦巻き状に形成されたスクロール部11eと、を備えている。エンジンの排気ガスは、スクロール部11eに導入されて加速され、タービンホイール11aを回転させ、アウトレット11dから排出される。
【0022】
また、タービンハウジング11cには、排気ガスの一部をタービンホイール11aに導入せずに迂回させるバイパス流路11bが形成されている。バイパス流路11bは、スクロール部11eとアウトレット11dとを連通するように形成されている。また、バイパス流路11bの出口部は、アウトレット11dに臨むように形成されており、かかる出口部には、ウェイストゲート弁2が開閉可能に配置されている。ウェイストゲート弁2は、駆動機構3によって開閉され、エンジンへの最大過給圧を所定値以下に制御する。
【0023】
ウェイストゲート弁2の駆動機構3は、図1〜図3に示したように、アクチュエータ31と、ロッド32と、シャフト33と、リンク板34と、リンクピン35と、ブッシュ36と、を備えている。アクチュエータ31を作動させると、ロッド32が軸方向に往復移動し、それに伴ってリンクピン35、リンク板34及びシャフト33を介してウェイストゲート弁2が開閉駆動される。
【0024】
アクチュエータ31は、図1に示したように、コンプレッサハウジング12bにブラケット31aを介して設置される。ロッド32は、アクチュエータ31の過給圧に応じて軸方向に往復移動する。ロッド32の先端部には、貫通孔32aが形成されている。貫通孔32aには、図3(a)に示したように、ブッシュ36が回転可能に装着され、ブッシュ36には、リンクピン35の回動部35bが回転可能に挿通されている。
【0025】
一方、ウェイストゲート弁2には、図2に示したように、アーム2aが接続されており、アーム2aは、タービンハウジング11cを貫通するシャフト33に固定されている。シャフト33は、タービンハウジング11cに回動可能に支持されており、シャフト33の回動に応じて、ウェイストゲート弁2がバイパス流路11bの出口部を開閉するように構成されている。
【0026】
また、シャフト33には、タービンハウジング11cの外側に突出した端部に、リンク板34がカシメや溶接等によって固定されている。また、リンク板34の他端部には、貫通孔34aが形成されている。貫通孔34aには、図3(a)に示したように、リンクピン35がカシメや溶接等によって固定されている。
【0027】
すなわち、リンクピン35の一端には、リンク板34に固定された固定部35aが形成され、リンクピン35の他端には、ブッシュ36が回転可能に挿通される回動部35bが形成されている。回動部35bの直径は、回動部35bとブッシュ36との間のヘルツ応力をなるべく小さく抑えるために、固定部35aの直径よりも大きく形成されている。
【0028】
また、リンクピン35には、ブッシュ36及びロッド32の端面に当接するように、ブッシュ36の抜け止め用のクリップ35cが装着される。クリップ35cは、略C字状に形成された弾性板であり、リンクピン35に形成された溝部に嵌め込まれ、ブッシュ36の回転を許容しつつ、ブッシュ36及びロッド32の脱落を抑制している。
【0029】
ブッシュ36は、図3(a)及び(b)に示したように、略円筒形状を有する。ブッシュ36の内径は、リンクピン35の外周に一定の隙間t1を形成するように構成され、ブッシュ36の外径は、ロッド32の貫通孔32aと一定の隙間t2を形成するように構成される。また、ブッシュ36は、拡径したフランジ部36aを有し、フランジ部36aはロッド32とリンク板34との間に配置される。かかるフランジ部36aにより、ロッド32とリンク板34との接触を抑制し、両者の摩耗を抑制することができる。
【0030】
また、ブッシュ36は、リンクピン35及びロッド32よりも軟らかい材質、すなわち、硬度(硬さ)が低い材質により構成されている。かかる構成により、ブッシュ36がリンクピン35又はロッド32と接触した際に、リンクピン35及びロッド32を摩耗させずに、ブッシュ36を積極的に摩耗させることができる。よって、メンテナンス時には、摩耗したブッシュ36を交換すれば足り、リンクピン35やロッド32を交換する機会を低減することができる。
【0031】
例えば、ブッシュ36の材質としては、耐蝕、耐熱、耐摩耗性等を考慮し、例えば、SUS材(SUS303、SUS304、SUS310、SUS316、SUS440等)、SCS材(SCS13、SCS14等)等が用いられる。具体的には、リンクピン35及びロッド32の材質や駆動機構3の使用条件等を考慮して、リンクピン35及びロッド32よりも軟らかい又は硬度(硬さ)が低い材質の中から適切なものを選択する。なお、リンクピン35及びロッド32の材質には、一般に、ブッシュ36よりも硬いステンレス鋼が用いられる。
【0032】
また、ブッシュ36の表面に、上述したSUS材やSCS材よりも硬い材質(例えば、セラミック等)をコーティングして耐摩耗性を高めるようにしてもよいし、潤滑剤(例えば、硫化モリブデン等)をコーティングして潤滑性を高めるようにしてもよい。ブッシュ36の表面に、かかる機能性コーティング層を形成することにより、耐摩耗性や潤滑性等の機能性を向上させることができる。なお、コーティング層の機能性は、ブッシュ36の材質、駆動機構3の使用条件等によって、適宜選択されるものであり、上述した耐摩耗性や潤滑性に限定されるものではない。
【0033】
上述したように、リンクピン35とロッド32との間にブッシュ36を一定の隙間t1,t2を持って装着することにより、リンクピン35とロッド32との接触を抑制し、両者の摩耗を抑制することができる。また、ブッシュ36は、内外の部材(リンクピン35及びロッド32)と一定の隙間t1,t2を有していることから、リンクピン35とロッド32との間で自由に回転することができる。
【0034】
したがって、駆動機構3の作動時に、ブッシュ36とリンクピン35及びロッド32とが接触した場合であっても、ブッシュ36は位置が固定されることがなく、リンクピン35とロッド32との間で回転することができ、摩耗の発生を抑制することができる。また、駆動機構3の作動を繰り返した場合であっても、その都度ブッシュ36は回転されることから、ブッシュ36の摩耗が特定の箇所に限定されず、摩耗を周方向に分散することができる。したがって、ウェイストゲート弁2の駆動機構3における偏摩耗を抑制し、ウェイストゲート弁2の応答性の低下を抑制することができる。
【0035】
ところで、ウェイストゲート弁2は、高温の排気ガス(ガソリンエンジンでは約950℃)に晒されるため、高温となったウェイストゲート弁2から熱が伝わるリンク板34及びリンクピン35も高温(約600℃)となる。この熱影響を考慮して、図3(a)及び(b)に示したように、リンクピン35をリンク板34に固定した場合に、リンクピン35の回動部35bとブッシュ36との隙間t1がブッシュ36とロッド32との隙間t2よりも大きく設定されるようにしてもよい。
【0036】
すなわち、隙間t1,t2は、リンク板34、リンクピン35、ブッシュ36及びロッド32が熱膨張した場合であっても、ブッシュ36がリンクピン35とロッド32との間で回転可能となるように設定される。一般に、リンク板34、リンクピン35、ブッシュ36、ロッド32の順に温度は低下していくことから、リンクピン35からの距離に応じて隙間t1,t2を設定することができ、相対的に高温の箇所の隙間t1は相対的に低温の箇所の隙間t2よりも大きく設定される。例えば、リンクピン35とブッシュ36との隙間t1は0.3〜0.5mm程度、ブッシュ36とロッド32との隙間t2は0.1〜0.2mm程度に設定される。なお、これらの数値は単なる一例であり、本発明を限定するものではない。
【0037】
ところで、ウェイストゲート弁2の駆動機構3は、作動時にロッド32の往復運動をリンク機構の回転運動に変換する関係上、ロッド32が揺動するように構成される場合がある。このとき、ロッド32とリンク板34との接続部に捩れが生じる場合があるため、ブッシュ36は、リンクピン35の軸方向(すなわち、ブッシュ36とリンク板34との間又はブッシュ36とクリップ35cとの間)に一定の隙間を有していてもよい。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態に係るウェイストゲート弁2の駆動機構3について説明する。ここで、図4は、本発明の第二実施形態に係るウェイストゲート弁の駆動機構の要部を示す図であり、(a)は断面図、(b)は図4(a)におけるB−B断面図、である。なお、図3に示した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0039】
図4に示した第二実施形態に係るウェイストゲート弁2の駆動機構3は、リンクピン35をロッド32に固定し、リンクピン35をリンク板34に回動可能に接続したものである。第一実施形態及び第二実施形態の構成を考慮すれば、リンクピン35は、リンク板34及びロッド32のいずれか一方に固定された固定部35aと、他方に回動可能に挿通された回動部35bと、を有する。
【0040】
図4(a)に示したように、ロッド32に形成された貫通孔32aには、リンクピン35の固定部35aがカシメや溶接等によって固定される。また、リンク板34の貫通孔34aには、ブッシュ36が回転可能に装着され、ブッシュ36には、リンクピン35の回動部35bが回転可能に挿通されている。また、リンクピン35には、ブッシュ36及びリンク板34の端面に当接するように、ブッシュ36の抜け止め用のクリップ35cが装着される。
【0041】
また、図4(a)及び(b)に示したように、ブッシュ36の内径は、リンクピン35の外周に一定の隙間t3を形成するように構成され、ブッシュ36の外径は、リンク板34の貫通孔34aと一定の隙間t4を形成するように構成される。また、リンクピン35をロッド32に固定した場合に、リンク板34とブッシュ36との隙間t4がブッシュ36とリンクピン35の回動部35bとの隙間t3よりも大きく設定される。
【0042】
すなわち、隙間t3,t4は、リンク板34、ブッシュ36及びリンクピン35が熱膨張した場合であっても、ブッシュ36がリンクピン35とリンク板34との間で回転可能となるように設定される。一般に、リンク板34、ブッシュ36、リンクピン35の順に温度は低下していくことから、リンクピン35からの距離に応じて隙間t1,t2を設定することができ、相対的に高温の箇所の隙間t4は相対的に低温の箇所の隙間t3よりも大きく設定される。例えば、ブッシュ36とリンク板34との隙間t4は0.3〜0.5mm程度、リンクピン35とブッシュ36との隙間t3は0.1〜0.2mm程度に設定される。なお、これらの数値は単なる一例であり、本発明を限定するものではない。
【0043】
かかる第二実施形態の構成によっても、リンクピン35とリンク板34との間にブッシュ36を一定の隙間t3,t4を持って装着することにより、リンクピン35とリンク板34との接触を抑制し、両者の摩耗を抑制することができる。また、ブッシュ36は、内外の部材(リンクピン35及びリンク板34)と一定の隙間t3,t4を有していることから、リンクピン35とリンク板34との間で自由に回転することができる。
【0044】
したがって、駆動機構3の作動時に、ブッシュ36とリンクピン35及びリンク板34とが接触した場合であっても、ブッシュ36は位置が固定されることがなく、リンクピン35とリンク板34との間で回転することができ、摩耗の発生を抑制することができる。また、駆動機構3の作動を繰り返した場合であっても、その都度ブッシュ36は回転されることから、ブッシュ36の摩耗が特定の箇所に限定されず、摩耗を周方向に分散することができる。したがって、ウェイストゲート弁2の駆動機構3における偏摩耗を抑制し、ウェイストゲート弁2の応答性の低下を抑制することができる。
【0045】
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 ターボチャージャ
2 ウェイストゲート弁
3 駆動機構
11 タービン
11a タービンホイール
11b バイパス流路
12 コンプレッサ
12a コンプレッサホイール
31 アクチュエータ
32 ロッド
33 シャフト
34 リンク板
35 リンクピン
35a 固定部
35b 回動部
36 ブッシュ
36a フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの一部をタービンホイールに導入せずに迂回させるバイパス流路の開閉を行うウェイストゲート弁の駆動機構であって、
前記ウェイストゲート弁の駆動源を構成するアクチュエータと、該アクチュエータに接続されたロッドと、前記ウェイストゲート弁に接続されるとともに回転駆動によって前記ウェイストゲート弁を開閉駆動させるシャフトと、該シャフトに固定されたリンク板と、該リンク板及び前記ロッドのいずれか一方に固定された固定部と他方に回動可能に挿通された回動部とを有するリンクピンと、を備え、
前記リンクピンの前記回動部の外周にブッシュを回転可能に装着し、該ブッシュの外周に前記回動部が挿通される前記リンク板又は前記ロッドを回転可能に装着し、前記ブッシュの回転により摩耗を分散させるようにした、ことを特徴とするウェイストゲート弁の駆動機構。
【請求項2】
前記リンクピンを前記リンク板に固定した場合に前記リンクピンの前記回動部と前記ブッシュとの隙間が前記ブッシュと前記ロッドとの隙間よりも大きく設定される、又は、前記リンクピンを前記ロッドに固定した場合に前記リンク板と前記ブッシュとの隙間が前記ブッシュと前記リンクピンの前記回動部との隙間よりも大きく設定される、ことを特徴とする請求項1に記載のウェイストゲート弁の駆動機構。
【請求項3】
前記ブッシュは、前記リンクピン及び前記回動部が挿通される前記ロッド又は前記リンク板よりも硬度が低い材質により構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のウェイストゲート弁の駆動機構。
【請求項4】
前記ブッシュは、拡径したフランジ部を有し、該フランジ部は前記ロッドと前記リンク板との間に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載のウェイストゲート弁の駆動機構。
【請求項5】
排気ガスによって回転されるタービンホイールを有するタービンと、前記タービンホイールに連結されたコンプレッサホイールを有するコンプレッサと、前記タービンに形成され前記排気ガスの一部を前記タービンホイールに導入せずに迂回させるバイパス流路と、該バイパス流路の開閉を行うウェイストゲート弁と、を備えたターボチャージャにおいて、
前記ウェイストゲート弁の駆動機構は、請求項1から請求項4のいずれかに記載されたウェイストゲート弁の駆動機構である、ことを特徴とするターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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