説明

ウェザストリップ

【課題】ドアのインナパネルに取付けられる取付基部と該取付基部に一体形成される中空状のシール部よりなるウェザストリップにおいて、シール部が車体側のパネルに形成される段に押付けられたときに形成される三角隙より雨水等が浸入することによるシール不足を解消する。
【解決手段】シール部6には、車体側のシール当接部に設けられる段15に押付けられる箇所のシール面にスポンジテープを貼着して厚肉部22を局部的にパッチ状に形成し、該厚肉部22がドア閉め時に段15での三角隙16を埋めてシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアやトランクリッド等の開閉体と車体との間をシールするウェザストリップに関する。
本願発明において、車体又は開閉体に設けられるシール当接部とは、ドア閉時、ウェザストリップのシール部のシール面が当接する部位をいう。
【背景技術】
【0002】
ウェザストリップには、例えばドア周りに取付けられ、ドア閉時に車体のドア開口縁部に弾接して車体との間をシールするウェザストリップ、車体のドア開口縁部に取付けられ、ドア閉時にドアに弾接してドアとの間をシールするウェザストリップ、トランクの開口縁部に取付けられ、トランクリッド閉時にトランクリッドとの間をシールするウェザストリップなど各種のウェザストリップがある。
【0003】
図2は、図1に示す自動車のベルトライン下のフロントドア1周りに取付けられるウェザストリップの図1に示すA−A線での断面を示すもので、このウェザストリップ2はドアインナパネル3に図示しないクリップや両面粘着テープ等によって取付けられる中空状の取付基部4と、該取付基部4より突設され、ドア閉時に車体のドア開口縁部5のシール当接部に弾接してシールする中空状のシール部6と、ドアインナパネル3に弾接するシールリップ7よりなっている。
【0004】
ウェザストリップは、種々の原因によって局部的なシール不足を来たすことがある。その一つとして下記特許文献1には、高速走行時の車両の内外圧力差によってドアが車両外側に吸い出され、ドアフレームの剛性の低い部位に車両外側への負荷がかかることによってウェザストリップのボデーへの弾接力が低下することによるものが挙げられ、同文献ではこの問題を解消するために当該箇所の車体にアクリルテープを取付けてシール不足を解消するようにしており、アクリルテープに代えてシーラーを塗布することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−22320号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の局部的なシール不足は、特許文献1に開示されるもののほか、例えばドアや車体或いはウェザストリップの形状上のバラ付き、パネルを重ねて溶接したときの溶接部分での段、高剛性を必要とする箇所を厚肉としたときの薄肉部分との段などにおいても生ずる。図3は、車体の段が形成される箇所を例示するもので、センターピラー9には厚肉部分による段11が、またフロント側及びリヤ側のドア開口縁部5、12にはヒンジ側下部コーナに取付けた補強板13、14によって形成される段15(図3には補強板13、14の水平部端により形成される段15のみを示している)が示されている。
【0007】
本発明は、前述するような局部的なシール不足を解消することができるウェザストリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、ドアやトランクリッド等の開閉体又は車体のいずれか一方に取付けられる取付基部と、該取付基部と一体形成され、前記開閉体を閉じたとき前記車体又は開閉体の他方に設けられたシール当接部に弾接するシール部を備え、前記開閉体と車体との間をシールするウェザストリップにおいて、前記シール部から離れる方向に向かって凹となる段を備えた前記シール当接部に押付けられる前記シール部のシール面には、局部的にスポンジ等の弾性材よりなるテープを貼着するか、或いはシーラーを塗布して厚肉部を形成することを特徴とし、
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記厚肉部は比重が0.05〜0.4のゴム様弾性体又は熱可塑性エラストマー等の樹脂よりなるスポンジ材で、気泡の目が表面に出現していることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明において、前記厚肉部はテープの貼着により形成され、該テープはコーナがR形状をなすことを特徴とする。
請求項4に係わる発明は、請求項1ないし3に係わる発明において、前記厚肉部はシール部の車両の上下方向に延存する部位に設けられ、該厚肉部の上端は車内に向かって上向きに傾斜することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係わる発明のウェザストリップによると、ドアやトランクリッド等の開閉体又は車体のシール当接部に設けられる段に当接するシール部のシール面に厚肉部を形成することにより、前記段でのシール不足を解消することができる。なお、厚肉部はウェザストリップを開閉体又は車体に組み付ける前に段に当たる箇所に予め形成されるが、開閉体又は車体に組付け後、シール不足が生じた箇所に形成することもできる。ここで段とは、例えばドアや車体において、パネルを重ねて溶接したときの溶接部分での段、高剛性を必要とする箇所を厚肉としたときの薄肉部分との段などで、ウェザストリップのシール部から離れる方向に向かって凹となる部分をいう。
【0011】
請求項2に係わる発明によると、ウェザストリップのシール面に厚肉部によって表面が凹凸したスポンジの気泡が出現するため、微細な段差にも追従してシール性を高めると共に、表面に気泡の目が出現する厚肉部が継ぎ当て状(パッチ状)に形成されることによりウェザストリップの意匠効果を挙げることができる。
【0012】
請求項3に係わる発明によると、コーナに角が立っていると、運搬時や組付け時に角に引掛かって剥がれ易くなるが、コーナをR形状にすることにより上記の問題を解消することができる。
請求項4に係わる発明によると、厚肉部の上端が車内に向かって上向きに傾斜することにより、上端に向かって雨水等が車内側に侵入するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】自動車の側面図。
【図2】従来のウェザストリップの図1のA−A線での断面図。
【図3】フロント側及びリヤ側のドア開口縁部を備えた車体側面の一部の斜視図。
【図4】(a)は図1のA−A線相当、(b)は同B−B線相当における本発明に係わるウェザストリップの要部の模式図。
【図5】図4に示すウェザストリップをドアインナパネルに組付けたときの図4のC−C線での拡大断面図。
【図6】厚肉部が段に押付けられたときの模式的な断面図。
【図7】従来例の模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態のウェザストリップについて図面により説明する。図中、図2に示すウェザストリップと同一構造部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
図4(a)に示すウェザストリップ21は、図1に示すA−A線での断面形状のウェザストリップにおいて、車体のドア開口縁部5におけるシール当接部18の段15に当たってシール部6によるシール不足を来すことが予測される箇所のシール面に弾性材であるコーキングスポンジのテープを貼着して厚肉部22を形成してなるもので、該厚肉部22は形状を限定する必要はないが、ここでは4角形をなしている。
【0015】
また図4(b)は、上下方向に延在する部位である、図3に示す自動車のセンターピラー9に当接するウェザストリップにおいて、図1のB−B線に対応し、かつ図3に示す段11に対応する箇所に、コーキングスポンジのテープを貼着することにより形成される別の厚肉部26を示すもので、車両の高さ方向での上下端が車内に向かって上向きに傾斜する平行四辺形をなしている。前述する厚肉部22及び別の厚肉部26は、四隅のコーナが面取りされてR形状をなしており、また図の上下及び左右の各辺は端に向かって薄肉となるテーパをなし、シール面との段差を生じないか、段差を生ずるにしても該段差が小さくなるようにしている。前述するコーキングスポンジは、比重が0.05〜0.4のゴム様弾性体又は熱可塑性エラストマー等の樹脂製で、例えばEPDMゴムなどゴム材やウレタン樹脂よりなる場合、これらは架橋されていても架橋されていなくてもよいが、架橋されている方が丈夫で望ましい。また表面には気泡の目が出現して、凹凸が多数存在しているものである。
【0016】
図5は、図4(a)に示すウェザストリップ21をベルトライン下の車両のドア開口縁部の底部であるドアインナパネル3に組付け、前記中空状のシール部6をシール当接部18の段15に押付けたときの図4(a)のC−C線での断面を示すもので、ドア開口縁部を形成する車体側のパネルは強度を必要とする箇所に取付けた補強板13によって補強板両側にシール部6から離れる方向に向かって凹となる段15が形成され、ドア閉時、該段15にシール部6の前記厚肉部22が押し当てられるようになっている(図6)。以上述べたように、ウェザストリップ21のシール部6が押し当てられる車体のドア開口縁部5、12のシール当接部18には、車両の前後方向及び上下方向の両側に段11、15が設けられている。この段11、15は、車体の構造によっては車両の前後方向のみに、或いは上下方向のみに発生する場合がある。
【0017】
本実施形態のウェザストリップ21によると、厚肉部を有しない図2に示すウェザストリップ1では、シール部6が段11、15に押し当てられたとき、シール部6とシール当接部18の段11、15とで形成される三角隙(図7においては特に車両の前後方向に発生する段15により形成される上下方向の三角隙16を示している)から雨水等が侵入することによるシール不足を来たすおそれがあるが、スポンジテープの貼着により形成される厚肉部22が図5に示すように三角隙を埋めることでシール不足を解消することができること、厚肉部22はテープによりシール部6にパッチ状に局部的に形成され、しかもその表面はシール部6の滑らかなシール面に比べ、スポンジの気泡が顕になった凹凸のあるざら目模様となって微小な段差にも追従してシール性を上げると共に意匠効果を挙げることができること(意匠効果を上げるために前記スポンジテープに着色したテープを用いてもよいし、滑性を持たせるための塗装をしてもよい)、厚肉部22を形成するテープは四隅のコーナに角が立っていると、運搬時や組付け時に角に引っ掛って剥がれ易くなるが、R形状をなすことにより、こうした問題が生じにくいこと、厚肉部12の各片は端に向かって薄肉のテーパをなすため、図7に示すように車体側の段15に押し付けられたとき、該段15との間に隙間が生じにくくなり、雨水等の浸入を防ぐことができること、更にピラー部に当たる図4(b)に示すウェザストリップ21では、厚肉部22の上下端が車内に向かって上向きに傾斜することで図4(b)の矢印で示すような厚肉部22の上下端に沿って雨水等が車内側に侵入するのを防ぐことができること等の効果を奏する。
【0018】
前記実施形態では、厚肉部22を形成するテープは、ウェザストリップ21をドアインナパネル3に組み付ける前にシール部6に貼着されるが、ウェザストリップ21をドアインナパネル3に組付けたのちに段15に当たる箇所のシール面にテープを貼り付けるようにしてもよい。
【0019】
前記実施形態では、中空状のシール部6にテープを貼り付けて厚肉部22、26を形成するようになっているが、リップ状のシール部においてもテープを貼着して厚肉部を形成することにより前記実施形態と同様の効果を挙げることができる。
【0020】
前記実施形態はまた、フロントドア用ドア開口縁部5の底部に組みつけられるウェザストリップ21に厚肉部22を形成する例を示したが、底部以外の他の部分、例えば前記センターピラー9に組み付けられるウェザストリップに対しても、シール不足が予測され、或いはシール不足を来たす箇所にテープを貼着することで前記実施形態と同様の効果を挙げることができる。リヤドア用ドア開口縁部12に取付けられるウェザストリップ、車体側に取付けられるオープニングウェザストリップ更にはトランクの開口周縁に取付けられるウェザストリップに対しても同様に適用して同様の効果を挙げることができる。
【0021】
前記実施形態ではまた、厚肉部22は段15に押付けられてシール不足を解消するようにしているが、別の実施形態ではドアのインナパネル3や車体側のパネルの形状上のバラ付き、組付け後のウェザストリップのバラ付きによって局部的なシール不足を来たし、或いは来たすことが予測される箇所にテープを貼着して厚肉部が形成される。この場合、一枚のテープの貼着ではシール不足を解消できない場合、複数のテープが重ねて貼り付けられる。
【0022】
前記実施形態では更にまた、厚肉部22がテープの貼着により形成されているが、液状のシーラーを1ないし複数回繰り返し塗布して厚肉部を形成することもできる。
【符号の説明】
【0023】
1・・ドア
3・・ドアインナパネル
4・・取付基部
5・・ドア開口縁部
6・・シール部
11、15・・段
16・・三角隙
18・・シール当接部
21・・ウェザストリップ
22・・厚肉部
23・・車体側のパネル
26・・別の厚肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア1やトランクリッド等の開閉体又は車体のいずれか一方に取付けられる取付基部4と、該取付基部4と一体形成され、前記開閉体を閉じたとき前記車体又は開閉体の他方に設けられたシール当接部に弾接するシール部6を備え、前記開閉体と車体との間をシールするウェザストリップ21において、前記シール部6から離れる方向に向かって凹となる段11、15を備えた前記シール当接部に押付けられる前記シール部6のシール面には、局部的にスポンジ等の弾性材よりなるテープを貼着するか、或いはシーラーを塗布して厚肉部22を形成することを特徴とするウェザストリップ。
【請求項2】
前記厚肉部22は比重が0.05〜0.4のゴム様弾性体又は熱可塑性エラストマー等の樹脂よりなるスポンジ材で、気泡の目が表面に出現していることを特徴とする請求項1記載のウェザストリップ。
【請求項3】
前記厚肉部22はテープの貼着により形成され、該テープはコーナがR形状をなすことを特徴とする請求項1又は2記載のウェザストリップ。
【請求項4】
前記厚肉部22はシール部6の車両の上下方向に延存する部位に設けられ、該厚肉部22の上端は車内に向かって上向きに傾斜することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの請求項に記載のウェザストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−28212(P2013−28212A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163887(P2011−163887)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】