説明

ウェザーストリップ

【課題】フロントガラスとクォータガラスがそれぞれ単独で開閉可能であり、クォータガラスにはフロントガラスとの間をシールするウェザーストリップが取付けられるコンバーチブル車又はハードトップ車において、フロントガラスを閉じたのちにクォータガラスを閉じる際、ウェザーストリップ上端の型成形部におけるシールリップの巻き込みを防止することができるクォータガラス用のウェザーストリップを提供する。
【解決手段】リップ5の上端部に横向きで車外側に隆起し、先端がリップ5より側方に突出する突部12を形成する。突部12は、隆起の頂部12aが突部先端に向かうにつれ、車内側に後退するように湾曲し、フロントガラスを閉じたのちにクォータガラスを閉じるときには、隆起の頂部12aがフロントガラス端に係合し、そのまま押込まれてフロントガラス1の車内側に進入する。続いて突部上のシールリップがフロントガラス下にもぐり込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントガラスとリヤ側のクォータガラスを備え、各ガラスがそれぞれ単独で個別に開閉可能であるコンバーチブル車又はハードトップ車のクォータガラス用ウェザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、フロントガラス1とリヤ側のクォータガラス2を備え、各ガラス1及び2がそれぞれ単独で開閉可能であるコンバーチブル車又はハードトップ車を示すもので、クォータガラス2の前縁には、図2に示すように、フロントガラス1とクォータガラス2との間をシールするためのウェザーストリップ3が固定され、クォータガラス2と共に開閉する。このウェザーストリップ3は、押出成形部3aと上端の型成形部3bとからなっている。図2に示す三角印は黒く塗り潰した部分の側が型成形部、非塗り潰し部分の側が押出成形部を示す。以下の図においても同様である。
【0003】
図3は、型成形部3bの拡大図、図4は図3のA−A線断面、図5は同B−B線断面、図6はC−C線断面を示すもので、型成形部3bの下側部(押出成形部との接続部付近)は図4に示す押出成形部3aと同様、中空シール部4とリップ5を有し、中空シール部4とリップ5はクォータガラス2を閉じたとき、フロントガラス1側縁に車内側より弾接してフロントガラス1との間をシールするようになっている。またウェザーストリップ3は柔軟なゴム等による弾性体で構成されているため、機能を害する変形のないようにウェザーストリップ3の車内側には、図4に示すように、金属や硬質プラスチックにより形成されるリテーナ20が設けられている。更に、図示しないが、型成形部3bの内部には、前記リテーナ20と同様な材質のインサート材が補強用に埋設されている。
【0004】
型成形部3bの上側部は、図6に示すようにフロントガラス1に沿って側方に延出する薄肉のシールリップ6を有し、フロントガラス1とクォータガラス2を閉じたとき、シールリップ6上端がフロントガラス1とルーフサイドウェザーストリップ8(図1及び図2参照)との間に挟まれて両者の間の間をシールするようになっている。
【0005】
ウェザーストリップ3のシールリップ6は前述するようにシールリップ上端がフロントガラス1とルーフサイドウェザーストリップ8との間に挟まれるが、フロントガラス1が閉じてルーフサイドウェザーストリップに押し付けられた状態において(この状態でフロントガラス1は、ルーフサイドウェザーストリップに押付けられてシールするため車内側に傾いて倒れている)、クォータガラス2を図2の矢印方向に閉じる際、シールリップ6をルーフサイドウェザーストリップ8とフロントガラス1との間に進入させるのは困難である。そこでフロントガラス1を閉じたのちにクォータガラス2を閉じるときには、図2の矢印で示すようにフロントガラス1を一旦下方に若干降下させ、ルーフサイドウェザーストリップ8との間に隙間を形成してシールリップ上端をルーフサイドウェザーストリップ8とフロントガラス1との間に進入し易くすることが提案されている。なお、クォータガラス2を閉じたのちにフロントガラス1を閉じるときには、フロントガラス上縁はシールリップ6上に被さるようにして接触し、前述する問題は生じない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フロントガラスを閉じたのちにクォータガラスを閉じる際、フロントガラスを一旦下方に若干降下させてルーフサイドウェザーストリップとの間に隙間を形成することにより型成形部のシールリップがフロントガラスとルーフサイドウェザーストリップとの間に進入し易くなるが、シールリップは薄肉で、剛性が小さいため翻り易く、しかもフロントガラス1を若干降下させ、ルーフサイドウェザーストリップ8との間に隙間を形成すると、フロントガラス1は車内側に倒れ込むが、このフロントガラス1の車内側への倒れ込みはクォータガラス2よりも大きいこともあって、クォータガラス2を図2の矢印方向に閉じるとき、シールリップ6が図6の一点鎖線で示すように、フロントガラス1の車内側に翻る巻き込みを発生させ易い。巻き込み防止対策としてシールリップ6の剛性を高め、肉厚を厚くすると、フロントガラス1を閉じたときルーフサイドウェザーストリップ8とフロントガラス1との間に挟まれるシールリップ6により段差ができて該段差によりルーフサイドウェザーストリップ8とフロントガラス1との間に隙間を生じ、シール切れを発生させる。
【0007】
本発明は、フロントガラスを閉じたのちにクォータガラスを閉じる際、ウェザーストリップ上端の型成形部におけるシールリップの巻き込みをシールリップの肉厚を増すことなく防止することができるようにしたクォータガラス用のウェザーストリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、フロントガラスとクォータガラスを備え、フロントガラス及びクォータガラスがそれぞれ単独で開閉可能であるコンバーチブル車又はハードトップ車のクォータガラス側縁に取付けられ、フロントガラスとの間をシールするウェザーストリップであって、押出成形部と、該押出成形部上端の型成形部よりなり、クォータガラスを閉じたとき、フロントガラスとルーフサイドウェザーストリップとに接触する薄肉のシールリップを有する前記型成形部には、シールリップ下に車外側に隆起し、車前方の先端がシールリップ13より車前方に突出する突部を設け、該突部は隆起の頂部が先端に向かうにつれ、車内側に後退するように傾斜ないし湾曲し、クォータガラス2を閉じるとき、前記隆起の頂部がフロントガラス側端に当接することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、型成形部は、その断面がフロントガラス側縁に車内側より弾接する中空シール部と、中空シール部に沿い、かつ中空シール部に向かって湾曲するリップを有し、前記突部はリップ上端に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、フロントガラスを閉じたのちクォータガラスを閉じるときには、先ず型成形部に形成される突部の隆起頂部が先端以外の箇所でフロントガラス端に係合し、突部先端は、フロントガラスより車内側に突出する。そのためクォータガラスを更に閉じる方向に動かすと、傾斜ないし湾曲した隆起頂部がガイドとなってフロントガラス端を滑り、フロントガラスの車内側に進入する。続いてシールリップが突部の進入に案内されてフロントガラスの車内側にもぐり込み、シールリップは薄く剛性がなくてもフロントガラスの車外側に巻き込まれることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態のウェザーストリップについて図面により説明する。図中、図2〜図6に示すウェザーストリップ3と同一構造部分には同一符号を付した。
【0012】
図7は、本発明に係わるウェザーストリップ11の型成形部11bを示すものであり、図8は図7のD−D線断面(図6のB−B線断面に相当する)、図8は同E−E線断面を示すもので、型成形部11bの下側部は図4に示す型成形部3bと同様、中空シール部4とリップ5を有し、中空シール部4とリップ5はフロントガラス1及びクォータガラス2を閉じたとき、フロントガラス1の側縁に車内側より弾接して、フロントガラス1との間をシールするようになっている。
【0013】
型成形部11bの略中央部でリップ5の上端部に車外側に隆起し、車前方の先端がリップ5より車前方に突出する突部12が横向きに稜線を描くように形成されている。この突部12は、隆起の頂部12aが車前方の突部先端に向かうにつれ、車内側に後退するように湾曲しているが、傾斜して形成されていてもよい。
【0014】
突部12より上側の型成形部上側部には、図9に示すように中空シール部4より側方に突出する薄肉のヒレ状のシールリップ13が形成されている。このシールリップ13は図6に示すシールリップ6より短く、リップ5よりもクォータガラス2側に後退して形成されている。したがってクォータガラス2を閉じた状態では、突部12が型成形部11bの中で最も車前方側に突出した状態になる。
【0015】
本実施形態のウェザーストリップは以上のように構成され、フロントガラス1を閉じたのち、クォータガラス2を図2の矢印方向に閉じるときには、先ず型成形部11bに形成される突部12の頂部12aがその先端以外の箇所でフロントガラス端のエッジに当接し、突部先端は図示するようにフロントガラス1より車内側に突出した状態になる(図10)。クォータガラス2を更に閉じる方向に動かすと、突部12の頂部12aがガイドとなってフロントガラス1端のエッジを滑り、フロントガラス1の車内側にもぐり込む(図8)。突部12のもぐり込みに案内され、続いてリップ5やシールリップ13もフロントガラスの車内側にもぐり込み、シールリップ13が図6の一点鎖線で示すようにフロントガラス1の車内側に巻込まれることはない。
【0016】
クォータガラス2を閉じるときには、従来のようにシールリップ13がルーフサイドウェザーストリップ8とフロントガラス1との間に進入し易いようにフロントガラス1を一旦下方に若干降下させ、ルーフサイドウェザーストリップ8との間に隙間を形成するのが望ましいが、シールリップ13はリップ5より後退して従来のシールリップ6に比べ短く、ルーフサイドウェザーストリップ8とフロントガラス1との間に挟まれる量も少ないため、フロントガラス1を閉じたままで、ルーフサイドウェザーストリップ8との間に隙間を形成しなくても、シールリップ13上端をフロントガラス1とルーフサイドウェザーストリップ8との間に進入させることも可能である。またウェザーストリップ3には図示していないが、図4に示すような補強用のリテーナ20やインサート材が設けられている。
【0017】
クォータガラス2を閉じたのちにフロントガラス1を閉じるときには、フロントガラス1はウェザーストリップ上に被さるだけで、シールリップ13の巻き込みを生ずることはない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コンバーチブル車又はハードトップ車の要部の側面図。
【図2】ウェザーストリップの要部の正面図。
【図3】図2に示すウェザーストリップの型成形部の正面図。
【図4】図3のA−A線断面図。
【図5】同B−B線断面図。
【図6】同C−C線断面図。
【図7】本発明に係わるウェザーストリップの型成形部の正面図。
【図8】図7のD−D線断面図。
【図9】同E−E線断面図。
【図10】クォータガラス閉時に突部がフロントガラス端に当たった状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0019】
1・・フロントガラス
2・・クォータガラス
3、11・・ウェザーストリップ
3a・・押出成形部
3b、11b・・型成形部
4・・中空シール部
5・・リップ
6、13・・シールリップ
8・・ルーフサイドウェザーストリップ
12・・突部
12a・・突部の頂部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラス1とクォータガラス2を備え、フロントガラス1及びクォータガラス2がそれぞれ単独で開閉可能であるコンバーチブル車又はハードトップ車のクォータガラス側縁に取付けられ、フロントガラス1との間をシールするウェザーストリップ11であって、押出成形部3aと、該押出成形部上端の型成形部11bよりなり、クォータガラス2を閉じたとき、フロントガラス1とルーフサイドウェザーストリップ8とに接触する薄肉のシールリップ13を有する前記型成形部には、シールリップ下に車外側に隆起し、車前方の先端がシールリップ13より車前方に突出する突部12を設け、該突部12は隆起の頂部12aが先端に向かうにつれ、車内側に後退するように傾斜ないし湾曲し、クォータガラス2を閉じるとき、前記隆起の頂部12aがフロントガラス側端に当接することを特徴とするウェザーストリップ。
【請求項2】
前記型成形部11bは、その断面がフロントガラス側縁に車内側より弾接する中空シール部4と、中空シール部4に沿い、かつ中空シール部4に向かって湾曲するリップ5を有し、前記突部12はリップ上端に形成されることを特徴とする請求項1記載のウェザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−83390(P2010−83390A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256227(P2008−256227)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】