ウェハの分離方法及び分離装置
【課題】多数枚のウェハが積層された状態の積層ウェハ群からウェハを分離し、分離したウェハを一枚ずつ所定の箇所にい載する作業において、分離するウェハに対し摩擦や変形等によるストレスをできるだけ与えないようにして破損を防止することにより、ウェハの歩留まりをより向上させてウェハの安定供給ができる、ウェハの分離装置を提供する。
【解決手段】ウェハ分離装置は、水槽(2)と、水槽(2)の水面近傍となる位置に配されている噴出ノズル(3)と、積層ウェハ群(7)を保持し、水面側の噴出ノズル(3)による水の入水部へ積層ウェハ群(7)を移動させるウェハ供給機(4)と、積層ウェハ群(7)から分離したウェハを保持して所定の箇所に移載するウェハ移動機(5)とを備え、噴出ノズル(3)は、吐出された水が水面で空気を取り込んで、水中に水と多数の気泡を含む気液混合流が生じるよう配されている。
【解決手段】ウェハ分離装置は、水槽(2)と、水槽(2)の水面近傍となる位置に配されている噴出ノズル(3)と、積層ウェハ群(7)を保持し、水面側の噴出ノズル(3)による水の入水部へ積層ウェハ群(7)を移動させるウェハ供給機(4)と、積層ウェハ群(7)から分離したウェハを保持して所定の箇所に移載するウェハ移動機(5)とを備え、噴出ノズル(3)は、吐出された水が水面で空気を取り込んで、水中に水と多数の気泡を含む気液混合流が生じるよう配されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハの分離方法及び分離装置に関するものである。更に詳しくは、半導体素子の材料であり、多数枚のウェハが積層された状態の積層ウェハ群からウェハを分離し、分離したウェハを一枚ずつ所定の箇所に移動する、ウェハの分離方法及び分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の材料として用いられるウェハ(wafer:ウエハ、ウェーハまたはウエハーとも称される)の製造においては、シリコン等で形成されたインゴットを薄板状に切断することにより多数枚のウェハが積層された状態の積層ウェハ群を形成し、ウェハはこの積層ウェハ群から一枚ずつ剥がして分離される。
このウェハの分離作業は、周知のように非常に困難な作業であり、ウェハを分離し安定的に供給するための装置としては、例えば特許文献1に記載の「ウェハの分離搬送装置及び分離搬送方法」、あるいは特許文献2に記載の「ウェーハの枚葉装置および枚葉装置」、特許文献3の「ウェハ・スタックからウェハを分離する方法と装置」等がある。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、「支持部材と分離押出手段及び噴射ノズルを有し、液体内において多数枚のウェハを積層状態で支持部材により支持し、支持部材の上昇により多数のウェハを所定量ずつ上昇させて、最上部に位置する一枚のウェハを水面付近の位置に配置し、分離押出手段の接触子で最上部のウェハを機械的に回転させて始動力を付与し、さらに噴射ノズルにより水面位置のウェハの上面に対し、その中心から偏倚した位置に水を噴射して一方向に回転させ、他のウェハから分離させて、搬出方向に搬送する」というものである。
【0004】
また、特許文献2に記載の発明は、「第1吸着部材によって分離ウェーハを吸着保持するとともに、第2吸着部材によって第1吸着部材よりも上方位置で前記分離ウェーハを吸着保持し、第2吸着部材のフレキシブルパイプを収縮させて分離ウェーハを反らせながら吸着保持し、続いて、隣接ウェーハの外周面上部をストッパによって押さえて、分離ウェーハの移動に伴う隣接ウェーハの移動を禁止しながら、分離ウェーハを上方に移動させて積層ウェーハ群から分離することにより、厳しい隙間管理を要することなく、積層ウェーハ群からウェーハを確実に1枚ずつ枚葉できるようにする」というものである。
【0005】
更に、特許文献3に記載の発明は、「垂直のウェハ・スタックからウェハを分離する方法で、ウェハは、上から作用する移動手段を介して上から個別に転送される。移動手段はウェハ(12)の最上部が接する吸引表面を持つ回転ベルトとして製造され、吸引表面へのウェハ(12)の接触は負圧の吸引で加速される。他のウェハの上に配置された複数のウェハを分離するため、移動手段は下記2つステップの少なくとも1つを受け、
a)水は最上部のウェハの先端に力が加わるように下斜めから噴射される。
b)移動手段(23)は移動中ウェハの下方表面に下から接する剥離装置の上をウェハが超えるように案内し、双方がウェハを吸引表面に押しつけブレーキ作用する。
その後、ウェハは、転送パスへ移動し更なる処理へ転送される。」というものである。
なお、a)において噴射される水は、「空気あるいはガス泡を含むことにより水圧のみならず空気泡が個々のウェハの間を通過できて結果として付着作用をなくす」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−148278
【0007】
【特許文献2】特開2002−75922
【0008】
【特許文献3】特表2011−507242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、前記したように、「分離押出手段の接触子で最上部のウェハを機械的に回転させて始動力を付与し、さらに噴射ノズルにより水面位置のウェハの上面に対し、その中心から偏倚した位置に水を噴射して一方向に回転させる」ようになっている。このため、最上部のウェハと他のウェハとの接面部では移動摩擦抵抗が相当に大きくなり、特に分離押出手段による始動の際、両ウェハには大きなストレスがかかるため、実際上はウェハを円滑に分離させることは難しく、ウェハが破損するおそれがある。
【0010】
また、特許文献2に記載の発明は、前記したように、「第1吸着部材によって分離ウェーハを吸着保持するとともに、第2吸着部材によって第1吸着部材よりも上方位置で分離ウェーハを吸着保持し、第2吸着部材のフレキシブルパイプを収縮させて分離ウェーハを反らせながら吸着保持する」ようになっている。このため、分離ウェーハには変形による大きなストレスがかかり、破損するおそれがある。
【0011】
特許文献3に記載の発明は、前記空気泡が個々のウェハの間を通過できて結果として付着作用をなくすことから、特許文献1及び2に記載の発明よりもウェハの分離が容易になることが期待できる。
しかし、空気あるいはガスを含んだ水噴射は、空気あるいはガスを水噴射あるいは水噴射させるためのノズルの中へ注入することによって生成されるために、コンプレッサや換気装置等の付帯設備が必要となる。その結果、付帯設備に伴う製造コストの上昇やメンテナンス等の運転コストが生じる課題がある。
【0012】
本発明者らは、特別な付帯設備なしで水と空気の混合流を発生させることができないか研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0013】
(本発明の目的)
そこで、本発明の目的は、多数枚のウェハが積層された状態の積層ウェハ群からウェハを分離し、分離したウェハを一枚ずつ所定の箇所に移動する作業において、分離するウェハに対し摩擦や変形等によるストレスをできるだけ与えないようにして破損を防止することにより、ウェハの歩留まりをより向上させてウェハの安定供給ができるようにした、ウェハの分離方法及び分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
【0015】
(1)本発明は、
液体中にある積層ウェハ群の積層面に、液体と気泡とを含む気液混合流を当てることにより、多数枚のウェハが積層された状態の前記積層ウェハ群からウェハを分離する方法であって、
前記気液混合流は、液面に噴出された液体が液面と衝突することにより気液界面で取り込まれた気体によって生じた気泡を含む、
ウェハの分離方法である。
【0016】
(2)本発明は、
気液混合流は、液面に噴出された液体が液面と衝突することにより気液界面で取り込まれた気体によって生じた気泡を含む噴流と、液体中に噴出された噴流とが、合流したものである、前記(1)に係るウェハの分離方法である。
【0017】
(3)本発明は、
気液混合流は、液面に対して所要の下向きの傾斜角度の噴流となって液面側から液体中にある積層ウェハ群に当たる、前記(1)又は(2)に係るウェハの分離方法である。
【0018】
(4)本発明は、
積層ウェハ群は、気液混合流が当たる側が高くなるように液面に対して傾いて設置されており、気液混合流の下向きの傾斜角度と前記積層ウェハ群の傾斜角度は、同じか又は略同じである、前記(3)に係るウェハの分離方法である。
【0019】
(5)本発明は、
積層ウェハ群から分離したウェハのうち、最上部の位置にあるウェハを所定の箇所に移動する、前記(4)に係るウェハの分離方法である。
【0020】
(6)本発明は、
ウェハの移動は、吸着手段により吸着されて行われる、前記(5)に係るウェハの分離方法である。
【0021】
(7)本発明は、
液体中にある積層ウェハ群より分離したウェハは、設置した傾斜角度と同じ傾き方向で液体中を移動して液面に向かい、液体中から気体中に取り出される、前記(5)又は(6)に係るウェハの分離方法である。
【0022】
(8)本発明は、
液体中にある積層ウェハ群の積層面に、液体と気泡とを含む気液混合流を当てることにより、多数枚のウェハが積層された状態の前記積層ウェハ群からウェハを分離する装置であって、
該装置は、液面に液体を噴出する気中噴出口から液面に噴出した液体が液面と衝突して気液界面で気体を取り込んで噴出液体中に気泡を含む噴出手段を有している、
ウェハ分離装置である。
【0023】
(9)本発明は、
噴出手段は、気中噴出口の他に液体中に液体を噴出する液中噴出口を備え、前記気中噴出口から液面に噴出した噴流と前記液中噴出口から噴出した噴流が合流して気液混合流を構成する、前記(8)に係るウェハ分離装置である。
【0024】
(10)本発明は、
噴出手段が噴出ノズルであり、気中噴出口と液中噴出口は、同一の噴出ノズルに備わるか、又はそれぞれ別個の噴出ノズルに備わる、前記(9)に係るウェハ分離装置である。
【0025】
(11)本発明は、
噴出ノズルは、気液混合流が液面に対して所要の下向きの傾斜角度で噴流となって液体中にある積層ウェハ群に当たる噴出口を有する、前記(10)に係るウェハ分離装置である。
【0026】
(12)本発明は、
噴出ノズルは、気液混合流を生じさせる第1の噴出ノズルと、液体中で液体を噴出する第2の噴出ノズル及び第4の噴出ノズルと、気体中で液体を噴出する第3の噴出ノズルを備え、
第1の噴出ノズル、第2の噴出ノズル及び第3の噴出ノズルは、積層ウェハ群から分離されたウェハの搬送方向側であって搬送路線を挟んで積層ウェハ群の両側に配置され、
第4の噴出ノズルは、前記ウェハの搬送方向とは反対側であって前記搬送路線の逆延長線を挟んで積層ウェハ群の両側に配置される、 前記(10)又は(11)に係るウェハ分離装置である。
【0027】
(13)本発明は、
積層ウェハ群は、気液混合流が当たる側が高くなるように液面に対して傾いて設置されており、気液混合流の下向きの傾斜角度と前記積層ウェハ群の傾斜角度は、同じか又は略同じである、前記(11)又は(12)に係るウェハ分離装置である。
【0028】
(14)本発明は、
液体中にある積層ウェハ群より分離した最上部の位置にあるウェハを、前記積層ウェハ群が設置した傾斜角度と同じ傾き方向で液体中を移動して液面に向かわせて、液体中から気体中に取り出す手段を備えた、前記(13)に係るウェハ分離装置である。
【0029】
(15)本発明は、
積層ウェハ群から分離したウェハが、取り出し位置からずれるのを防止するストッパーを備え、該ストッパーは進退手段によって前記積層ウェハ群に対して進退する、前記(14)に係るウェハ分離装置である。
【0030】
(16)本発明は、
積層ウェハ群を保持し、気液混合流が積層面に当たる位置に前記積層ウェハ群を移動させるウェハ供給手段を備えている、前記(14)又は(15)に係るウェハ分離装置である。
【0031】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「積層面」の用語は、積層ウェハ群の側面、すなわち多数枚積層されている各ウェハの厚みが表れている面の意味で使用している。
また、「気中噴出口」は気体中(具体的には空気中)にある噴出口を、「液中噴出口」は液体中(具体的には水中)にある噴出口を指称する意味で使用している。
【0032】
(作用)
本発明に係るウェハ分離装置の作用を説明する。
【0033】
まず、噴出手段(噴出ノズル等)によって液面に噴出された液体が液面と衝突することにより、気液界面で取り込まれた気体によって生じた多数の気泡を含む気液混合流を液体中に生じさせる。なお、噴出のタイミングは積層ウェハ群を所要の位置に移動させた後でもよい。
次に、ウェハ供給手段(ウェハ供給機等)によって積層ウェハ群を保持し、前記気液混合流が積層面に当たる位置に積層ウェハ群を移動させる。
【0034】
これによって、積層ウェハ群を構成するウェハの間に液体と気泡が入り込み、例えば積層ウェハ群の液面側に近い複数枚のウェハが徐々に分離し、各ウェハ間に隙間が空くことによって液体と気泡がさらに入り込み、分離するウェハに摩擦や変形等による大きなストレスをかけることなく、無理なく分離させることができる。
【0035】
また、各ウェハ間に多数の気泡が入り、これら気泡がいわばクッション(緩衝材)の機能を果たすことにより、各々が分離し水中で浮遊している状態の各ウェハ同士が接触又は衝突しにくく、これによりウェハが損傷することを防止できる。さらには、多数の気泡によって分離するウェハに大きな浮力が付与され、これによりウェハがより短い時間で分離される。
【0036】
そして、分離している各ウェハのうち、最上部に位置するウェハをウェハ移動手段(ウェハ移動機等)で保持し、所定の箇所に移動する。その後、この移動箇所からウェハを取り出す等して後工程へ送る。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、多数枚のウェハが積層された状態の積層ウェハ群からウェハを分離し、分離したウェハを一枚ずつ所定の箇所に移動する作業において、多数の気泡を含む水流である気液混合流を積層ウェハ群の積層面に当ててウェハを分離させることにより、分離するウェハに対し摩擦や変形等による大きなストレスを与えないようにして破損を防止することができる。
これにより、ウェハの歩留まりをより向上させてウェハを安定的に供給することができる。
【0038】
また、気液混合流に含まれる気泡は、液面に噴出される液体が液面と衝突することにより気液界面で取り込まれた気体によって生じたものであるために、コンプレッサや換気装置等の付帯設備は不必要であり、付帯設備に伴う製造コストの上昇やメンテナンス等の運転コストが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るウェハ分離装置の第1の実施の形態を示しており、前方側から視た斜視説明図。
【図2】図1に示すウェハ分離装置を後方側から視た斜視説明図。
【図3】ウェハ分離装置の構造を示す正面視説明図。
【図4】図3におけるX−X矢視断面説明図。
【図5】図3におけるY−Y矢視断面説明図。
【図6】ウェハ分離装置によるウェハの分離までの工程を示す説明図。
【図7】ウェハ分離装置によるウェハの分離後の移動までの工程を示す説明図。
【図8】リフトベースの初期状態を示し、(a)は左側面視説明図、(b)は上面視説明図。
【図9】図8に示すリフトベースに積層ウェハ群を載置した状態を示しており、(a)は左側面視説明図、(b)は上面視説明図。
【図10】リフトベースで積層ウェハ群を分離作業位置まで上昇させた状態を示し、(a)は左側面視説明図、(b)は上面視説明図。
【図11】積層ウェハ群に気液混合流を当てて複数のウェハを分離している状態を示し、(a)は左側面視説明図、(b)は上面視説明図。
【図12】本発明に係るウェハ分離装置の第2の実施の形態の要部を示しており、図13のA矢視説明図。
【図13】図12のX−X線矢視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。なお、以下の説明においては、例として、気体が空気の場合、液体が水の場合を説明しているが、空気や水に限定する意図はない。水に界面活性剤を添加した液体や、本発明を実施できる他の気体や液体を使用してもよい。
(第1の実施の形態)
図1乃至図5及び図8乃至図11を参照する。
なお、図1乃至図5においては、説明の便宜上、多数枚のウェハが積層された状態の積層ウェハ群7及び積層ウェハ群7から分離した単独のウェハ70も表している。
【0041】
ウェハ分離装置Aは、積層ウェハ群7からウェハ70を分離して所定の箇所(本実施の形態では、後述する移動受機6)に移動するものである。
ウェハ分離装置Aは、角パイプで組まれたフレーム1を有している。フレーム1には、水槽2、水槽2の水面位置(水面下及び水面上の両方に亘る。)に配されている噴出ノズル3、3a、積層ウェハ群7を保持し、噴出ノズル3、3aにより生じた気液混合流がウェハの間に入る位置へ積層ウェハ群7を移動させるウェハ供給機4、積層ウェハ群7から分離したウェハ70を保持して移動するウェハ移動機5及びウェハ移動機5からウェハ70を受け取る移動受機6が組み込まれている。
【0042】
水槽2は、フレーム1の下部に固定されている。水槽2には、清浄な水が所定量入れられ、水面の高さは一定に維持されるようになっている。水槽2内には、二箇所に噴出ノズル3、3aが配されている。噴出ノズル3、3aには清浄な水が供給されるようになっている。噴出ノズル3、3aは、先端の噴出口30の中心が水面の高さの位置となるように、先側が所要角度(例えば、水面に対しては15〜40°の下向きの傾斜角度―本実施の形態では25°)で水槽2に固定されている。
【0043】
また、噴出ノズル3、3aは、本実施の形態では、後記するように積層ウェハ群7が水面近傍まで上昇した時に、その両側(図3で左右側)から積層ウェハ群7の左右両角部へ向けて気液混合流が流れ、積層面の両側面と前面に気液混合流が効果的に当たるように配されている(図11(b)参照)。
なお、噴出ノズル3、3aの位置(高さ)及び傾斜角度は前記に限定されないが、少なくとも噴出ノズル3、3aから噴出された水が水面に衝突し、気液界面で空気を取り込んで、水中において水と多数の気泡を含む気液混合流が生じる位置及び傾斜角度に設定される。
【0044】
図4に示すように、ウェハ供給機4は、例えば水槽2の底部に固定されている基枠46を有している。基枠46の中央には四角形の支持板40が固定されている。支持板40は、前側(図4で右側)が高くなるように、水槽2の底面(又は水面)と15〜40°(本実施の形態では25°)の角度で傾斜させてある。本実施の形態では、支持板40の角度が、前記噴出ノズル3、3aから水が水面に対し噴出される角度と同じに設定されているが、限定はされない。支持板40の前部側の一辺を除く三辺側の上面には、支持板40と直角方向に各辺あたり所要間隔で二本ずつ、ガイドピン41が固定されている(図8(a)、(b)参照)。
【0045】
各ガイドピン41は、角柱形状の積層ウェハ群7の三方側部の積層面が若干の隙間をもって内側に収まる位置に設定されており、ガイドピン41が設けられていない一辺側(ウェハの搬送又は取り出し側)から積層ウェハ群7を入れて収めることができる。なお、本実施の形態の支持板40及びガイドピン41は、四角形のウェハに対応しているが、円形のウェハに対応できるように、例えば支持板40の前記と同じ三辺にそれぞれガイドピンを一本ずつ設けた構造としてもよい。
【0046】
各ガイドピン41のうち、支持板40の相対向する二辺(図3で左右側)の各ガイドピン41の上部には、それぞれ板状のストッパー42が互いに同じ高さになるように平行に固定されている。各ストッパー42は、ウェハ70を積層ウェハ群7から分離する際、分離したウェハ70をウェハ移動機5で吸着する位置から外れないように止めるもので、支持板40と平行に固定されている。
【0047】
また、ウェハ供給機4は、積層ウェハ群7を載置するリフトベース43を有している。リフトベース43は、支持板40の上面側に位置し、フレーム1の一方側(図3で右側)に固定された駆動装置44のリフト体45の下側先端に片持ち構造で固定されている。リフトベース43の載置部は支持板40と平行であり、リフトベース43はボールスクリュー式の駆動装置44によって前記ガイドピン41と平行方向に昇降するようになっている。
【0048】
図5に示すように、ウェハ移動機5は、フレーム1の他方側(図3で左側)に固定された所要長さのガイド体50を有している。ガイド体50は、前側が高くなるように水槽2の底面と15〜40°の角度で傾斜させてある。本実施の形態では、支持板40の角度と同じに設定されているが、限定はされない。ガイド体50には、移行体51がボールスクリュー式の駆動装置52によってガイド体50に沿って移行できるように取り付けられている。
【0049】
移行体51は、アクチュエータ52と、アクチュエータ52により昇降する昇降アーム53を有している。昇降アーム53の下側先端には、真空吸着部54が片持ち構造で設けられている。移行体51は、真空吸着部54をリフトベース43に載置された積層ウェハ群7のガイドピン41の高さ方向上方に位置させることができ、真空吸着部54は分離したウェハ70を吸着することができる。昇降アーム53の昇降する方向は、ガイド体50の方向に対して上下に直角方向である。
なお、本実施の形態では、ウェハ移動機5は一台であるが、移動効率を高めるために複数台としてもよい。
【0050】
図1,2に示すように、移動受機6は、フレーム1前側の一方側(図3で右側)に固定され、その取り付け高さは、後述する受台板62の上昇停止位置が水槽2の上部縁部の高さ近傍となるよう設定されている。
移動受機6は、アクチュエータ60と、アクチュエータ60により昇降する昇降体61を有しており、昇降体61の下側先端には受台板62が片持ち構造で設けられている。受台板62は前記支持板40と平行、すなわち真空吸着部54で吸着されて送られてくるウェハ70と平行になるように傾斜している。
【0051】
受台板62の上面には、移動されたウェハ70が落下しないように嵌め入れる載置凹部63が設けられている。載置凹部63は、後側に段部があり、前側に段部がないように形成されており(図5参照)、移動されたウェハ70は斜め上方向(前方向)にスライドさせて取り出すことができる。
【0052】
なお、受台板62は、アクチュエータ60により受台板62の表面方向と直角方向に昇降するようになっている。受台板62の上昇停止位置は、前記ウェハ移動機5の昇降アーム53が下降したときに、真空吸着部54で吸着されているウェハ70が載置凹部63に入る高さに設定されている。
また、本実施の形態では移動受機6を設けているが、これを設けずに、例えば公知構造の搬送機、例えばベルトコンベア等、分離したウェハ70を後工程へ送るための装置にウェハ移動機5からウェハ70を直接移動する構造とすることもできる。
【0053】
また、水槽内の水の汚れ(濁り)を常時監視し、汚れが一定のレベルになったら警告するか、又は水を入れ替えるような装置を付帯することも推奨される。このような装置には、例えば水の汚れを光で検知するセンサー、電気の伝わり具合の変化を測定する電導度センサー等の公知のセンサーを用いることができる。
【0054】
(作用)
図1乃至図11を参照して、ウェハ分離装置Aの作用及びウェハ分離装置Aにより、多数枚のウェハが積層された積層ウェハ群からウェハを分離し、分離したウェハを一枚ずつ所定の箇所に移動する工程を説明する。
【0055】
(1)図6(a)及び図8(a)、(b)に示す状態は初期状態であり、ウェハ供給機4のリフトベース43は最下部まで下降しており、ウェハ移動機5の昇降アーム53を有する移行体51は前位置にあり、昇降アーム53及び真空吸着部54は上位置にある。
(2)ウェハ供給機4のリフトベース43の上に積層ウェハ群7を載置し、各ガイドピン41の内側に収容する(図6(b)、図9(a)、(b)参照)。
【0056】
(3)駆動装置44が作動しリフトベース43と共に積層ウェハ群7が上昇する(図10(a)、(b)参照)。そして、噴出ノズル3、3aより水面及び水中へ水を所要の圧力で噴出する。水面に噴出された水は水面から水中に入水する際に空気を取り込み、水中に噴出された水と合流して多数の気泡Bを含む気液混合流が生じる(図6(c)、図11(a)参照)。
【0057】
(4)リフトベース43が、積層ウェハ群7の上部の積層面に前記気液混合流が当たる位置である分離作業位置に停止し、積層ウェハ群7の左右両側から積層ウェハ群7の左右両角部へ向けて気液混合流が流れ、積層面の両側面と前面に気液混合流が当たる。なお、気液混合流は、ウェハ70の分離に支障がなければ、積層面の他の位置に当てることもできる。
【0058】
これにより、複数のウェハ70が気液混合流によって各ガイドピン41の内側で積層ウェハ群7から浮き上がるように分離し、最上部に位置するウェハ70がストッパー42の下側で止められる(図11(a)参照)。そして、ウェハ移動機5の移行体51が後方のウェハ吸着位置へ移動する(図6(d)参照)。
【0059】
なお、ウェハ70が分離する際には、各ウェハ70の間に水と気泡Bが入り込み、分離するウェハ70に摩擦や変形等による大きなストレスをかけることなく、無理なく分離させることができる。また、各ウェハ70間に入った気泡Bがいわばクッションの機能を果たすことにより、各々が分離し水中で浮遊している状態の各ウェハ70同士が接触又は衝突しにくく、これによりウェハが損傷することを防止できる。さらには、多数の気泡Bによって、分離する各ウェハ70に大きな浮力が付与され、これによりウェハ70がより短い時間で分離される。
【0060】
(5)ウェハ移動機5の昇降アーム53が下降し、積層ウェハ群7から分離してストッパー42の下方に位置している最上部に位置するウェハ70を真空吸着部54によって吸着する(図7(e)参照)。最上部のウェハ70が吸着される位置は、ストッパー42の下面よりやや下側の水中(図11(a)では、ウェハ70の前側の一部が水面から出ているが、全体が水中にあってもよい)であり、移動受機6へ向けて移動する際にストッパー42に接触しないようにして損傷を防止している。
【0061】
(6)昇降アーム53の真空吸着部54で最上部のウェハ70を吸着した状態で駆動装置52が作動し、移行体51が前進して所定の位置に停止する(図7(f)参照)。
積層ウェハ群7は前記のように水面に対して15〜40°(本実施の形態では25°)の下向きの傾斜角度を有して設置される。したがって、積層ウェハ群7より分離したウェハ70は、ウェハ移動機5によって水面に対して前記角度の上向きの角度となり、その角度を保持し、ウェハの端面を先端にしながら水中を移動して水面に向かい、水面下(水中)から水面上に取り出される。したがってウェハ70に受ける水の抵抗を避けながら水面下から水面上に取り出すことができるので、ウェハにストレスがかからず、ウェハの破損が防止できる。
【0062】
なお、前記気液混合流は継続して積層ウェハ群7及び分離している各ウェハ70に当たっており、最上部に位置するウェハ70が移動した後、その次のウェハ70がストッパー42の下側で止められる。また、積層ウェハ群7は、積層ウェハ群7全体がウェハ70に分離するようにリフトベース43によって徐々に上昇するようになっている。
【0063】
(7)移動受機6のアクチュエータ60(図1、図2参照)が作動し、受台板62が上昇し所定位置に停止する。真空吸着部54によるウェハ70の吸着状態を解除し、ウェハ70を受台板62の載置凹部63に移動する(図7(g)、図4、図5参照)。
(8)受台板62が下降し、元の位置に戻る。また、昇降アーム53が上昇する(図7(h)参照)。
【0064】
これにより前記(3)終了の状態へ戻り、積層ウェハ群7を構成するウェハ70がなくなるまで、(4)〜(8)の工程を繰り返し、ウェハ70の分離作業を行う。なお、移動受機6へ移動したウェハは、順次後工程へ送られる。
【0065】
なお、本実施の形態のウェハ分離装置Aの有効性及び優位性を確認するために、(1)水中にて水と空気の気液混合流を噴出した場合(本実施の形態)、(2)水中にて水のみを噴出した場合、(3)水中にて空気のみを噴出した場合の各ケースで比較検証した(表1参照)。
具体的には、水槽内の水中にある積層ウェハ群の積層面へ向けて各流体を噴出し、最上部に位置するウェハを分離させる際の分離時間を測定し、最上部に位置するウェハが分離した後に昇降アームにてウェハを移動するまでのNG確率(不良率)を検証した。
【0066】
【表1】
【0067】
(考察)
まず、ウェハ分離時間に関しては、噴出方法を水のみとした(2)の場合よりも、本実施の形態の水と空気の気液混合流を噴出した(1)の場合の方が、より短時間でウェハを分離させることができた。これは、積層されたウェハ間に水と共に多数の気泡が入り込み、最上部に位置するウェハに大きな浮力を付与することによりウェハの分離を促進しているためと考えられる。
【0068】
また、ウェハ移動時のNG確率に関しては、噴出方法を水のみとした(2)の場合には、ウェハ分離状態が不安定なことに伴うウェハの割れ、吸着不良によるウェハ移動ミス及びウェハの2枚取りが発生しNG確率が14%であったのに対し、本実施の形態の水と空気(気泡)の気液混合流を噴出した(1)の場合はNGが発生せず、明確な優位性が認められた。
【0069】
なお、空気のみを噴出した場合(3)に関しては、水中の空気(気泡)の流れが安定せず、ウェハの破損が発生した。また、ウェハが破損しない程度に空気流量を少なくした場合、ウェハを分離するには流量が足りず、結果的に検証が困難であった。
このように、前記3つのケースでは、(1)の水と空気(気泡)の気液混合流を噴出する方法でウェハの分離を行うのが最も有効であることが分かった。
【0070】
(第2の実施の形態)
図12及び図13を参照する。第2の実施の形態では、主として噴出ノズルの数と配置、ウェハ供給機のガイドピンの取り付け構造、及び積層ウェハ群から分離したウェハの浮き上がりを防止するストッパーに係る構成等が第1の実施の形態と異なり、その他は第1の実施の形態と大体において同じである。なお、第1の実施の形態と同一又は同等箇所には同一符号を付して示している。
【0071】
(噴出ノズル関連)
噴出ノズルは、積層ウェハ群7から分離されたウェハ70の搬送路線Lを挟んで積層ウェハ群7の略四隅又は四方に配置される。
噴出ノズルは、第1の実施の形態で説明した噴出ノズルに相当する第1の噴出ノズル3,3aの他に、第1の噴出ノズル3,3aと同じ側に、第2の噴出ノズル3b,3c及び第3の噴出ノズル3d,3eが配置されている。また、ウェハの搬送方向とは反対側には第4の噴出ノズル3f,3gが配置されている。
【0072】
第1の噴出ノズル3,3aは、全体形状が大体において縦長直方体形状であり、縦長のスリット状の噴出口30、30aを有する。噴出口30、30aは水面下から水面上(水中から空気中)に亘って設けられており、水面上と水面下に位置している。これによって、水中と水面の双方に水を噴出する。水の噴出方向は、ウェハの表面と平行であるが、ウエハが剥離できれば多少の交差角を設けても良い。
【0073】
噴出口30、30aから水面に噴出された水の衝撃により水面近傍の空気が水中に取り込まれた噴流と、水面下に噴出された水の噴流とが合流して多数の気泡を含む水と気泡の気液混合流が生じる。この気液混合流を積層ウェハ群7の積層面に当てることにより積層ウェハ群7からウェハ70を分離させる。
【0074】
第2の噴出ノズル3b,3cは、第1の噴出ノズルと同じ側にあり、全体形状が大体において縦長直方体形状であり、縦長のスリット状の噴出口30b、30cを有する。噴出口30b、30cの全部が水面下に位置し、水の噴出方向はウエハ表面と平行である。第2の噴出ノズルは、積層ウェハ群7からウェハ70が分離するのを補助又は支援し、向上させる。
【0075】
第3の噴出ノズル3d,3eは、第1の噴出ノズルと同じ側にあり、水流が扇形状に噴出される噴出口30d、30e有している。扇形に噴出された水は、ウエハ積層面に対してやや交差する角度で当たる。噴出口30d、30eの全部が水面の上に位置しており、液体中にある積層ウェハ群に水面上より噴流を当てる。その際に気泡を生じる。第3のノズルは、扇形状の水流で積層ウエハ群7のウェハの間の隙間を、より確実に開けて、積層ウェハ群7からウェハ70が分離するのを補助又は支援し、向上させる。
【0076】
第4の噴出ノズル3f,3gは、第1乃至第3の噴出ノズルとは反対側にあり、全体形状が大体において縦長直方体形状であり、縦長のスリット状の噴出口30f、30gを有する。噴出口30f、30gの全部が水中にある。水の噴出方向は、ウエハ表面と平行である。第4の噴出ノズルは、ウェハ70が分離するのを補助又は支援し、向上させると共に、浮き上がったウエハ70をウェハ移動機5の真空吸着部54と平行にしてウェハ吸着の安定性を図るものである。
【0077】
第1乃至第3の噴出ノズルはウエハの搬送路Lを挟んで積層ウェハ群7の両側に配置して、分離したウエハの搬送に邪魔にならないようにしている。また、第1乃至第4の噴出ノズルを積層ウエハ群7の中心に向けることにより、噴流を効率的に積層ウェハ群7に当ててウエハを分離するようにしている。
【0078】
(ウェハ供給機とストッパー関連)
ウェハ供給機4aは、積層ウェハ群7を載せ置き、最上部のウェハ70の分離に伴って積層ウェハ群7を上昇させるリフトベース43を有する。リフトベース43は本実施の形態では、略四角形状をしている。リフトベース43のうち、ウェハ70の搬送又は取り出し側の辺を除く残りの三辺の端縁からやや内方には、所要間隔をおいて各辺に二本ずつガイドピン41が立設されている。
【0079】
また、積層ウェハ群7から分離したウェハ70が取り出し位置からずれるのを防止する一対のストッパー機構Sを備える。ストッパー機構Sはウェハ70の搬送路Lに対して直交する両側に配置されている。
各ストッパー機構Sは、ウェハ70を積層ウェハ群7から分離する際、分離したウェハ70をウェハ移動機5で吸着する位置から外れないように止めるストッパー420、ストッパー420を進退するエアーシリンダー422、一方側がエアーシリンダー422のロッドの先端に取り付けられ、他方側には前記ストッパー420が取り付けられているブラケット421で構成される、
【0080】
ストッパー420の先端縁であるガイドピン41側には、ガイドピン41を導入するべく、切欠された導入部420aを有する。導入部420aは、ウェハ70の搬送又は取り出し方向と平行な4本のガイドピン41の位置に対応しており、ストッパー420をガイドピン41に向けて進めたときに、ストッパー420の先端縁がガイドピン41を越えてウェハの上部に被るようにしている。
なお、ストッパ機構Sは、対向する一方は固定、他方は可動となる構成を採用してもよい。
【0081】
(作用)
前記構成のストッパー機構Sの作用を説明する。
積層ウェハ群7をリフトベース43に載せ置くときには、エアーシリンダー422を作動させてストッパー420をリフトベース43から離れる方向に移動させ、ウェハ供給機4のリフトベース43の上に積層ウェハ群7を載置し、各ガイドピン41の内側に収容する。
【0082】
次いで、エアーシリンダー422を作動させて、ストッパー420をリフトベース43に載せ置かれた積層ウェハ群7に対して進め、各導入部420aを各ガイドピン41に臨ませて各ストッパー42の先端縁を積層ウェハ群の上に被さるようにする。これによってウェハ70を積層ウェハ群7から分離する際、分離したウェハ70をウェハ移動機5で吸着する位置から外れないように止めることができる。
第2の実施の形態に係るその他の作用については、第1の実施の形態の作用と略同じであり、第1の実施の形態の作用を援用し、説明は省略する。
【0083】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
また、第1、第2などの言葉は、等級や重要度を意味するものではなく、一つの要素を他の要素から区別するために使用したものである。
【符号の説明】
【0084】
A ウェハ分離装置
1 フレーム
2 水槽
3、3a 噴出ノズル(第1の噴出ノズル)
3b、3c 第2の噴出ノズル
3d、3e 第3の噴出ノズル
3f、3g 第4の噴出ノズル
30 噴出口
4 ウェハ供給機
40 支持板
41 ガイドピン
42 ストッパー
43 リフトベース
44 駆動装置
45 リフト体
46 基枠
5 ウェハ移動機
50 ガイド体
51 移行体
52 アクチュエータ
52 駆動装置
53 昇降アーム
54 真空吸着部
6 移動受機
60 アクチュエータ
61 昇降体
62 受台板
63 載置凹部
7 積層ウェハ群
70 ウェハ
B 気泡
S ストッパー機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハの分離方法及び分離装置に関するものである。更に詳しくは、半導体素子の材料であり、多数枚のウェハが積層された状態の積層ウェハ群からウェハを分離し、分離したウェハを一枚ずつ所定の箇所に移動する、ウェハの分離方法及び分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の材料として用いられるウェハ(wafer:ウエハ、ウェーハまたはウエハーとも称される)の製造においては、シリコン等で形成されたインゴットを薄板状に切断することにより多数枚のウェハが積層された状態の積層ウェハ群を形成し、ウェハはこの積層ウェハ群から一枚ずつ剥がして分離される。
このウェハの分離作業は、周知のように非常に困難な作業であり、ウェハを分離し安定的に供給するための装置としては、例えば特許文献1に記載の「ウェハの分離搬送装置及び分離搬送方法」、あるいは特許文献2に記載の「ウェーハの枚葉装置および枚葉装置」、特許文献3の「ウェハ・スタックからウェハを分離する方法と装置」等がある。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、「支持部材と分離押出手段及び噴射ノズルを有し、液体内において多数枚のウェハを積層状態で支持部材により支持し、支持部材の上昇により多数のウェハを所定量ずつ上昇させて、最上部に位置する一枚のウェハを水面付近の位置に配置し、分離押出手段の接触子で最上部のウェハを機械的に回転させて始動力を付与し、さらに噴射ノズルにより水面位置のウェハの上面に対し、その中心から偏倚した位置に水を噴射して一方向に回転させ、他のウェハから分離させて、搬出方向に搬送する」というものである。
【0004】
また、特許文献2に記載の発明は、「第1吸着部材によって分離ウェーハを吸着保持するとともに、第2吸着部材によって第1吸着部材よりも上方位置で前記分離ウェーハを吸着保持し、第2吸着部材のフレキシブルパイプを収縮させて分離ウェーハを反らせながら吸着保持し、続いて、隣接ウェーハの外周面上部をストッパによって押さえて、分離ウェーハの移動に伴う隣接ウェーハの移動を禁止しながら、分離ウェーハを上方に移動させて積層ウェーハ群から分離することにより、厳しい隙間管理を要することなく、積層ウェーハ群からウェーハを確実に1枚ずつ枚葉できるようにする」というものである。
【0005】
更に、特許文献3に記載の発明は、「垂直のウェハ・スタックからウェハを分離する方法で、ウェハは、上から作用する移動手段を介して上から個別に転送される。移動手段はウェハ(12)の最上部が接する吸引表面を持つ回転ベルトとして製造され、吸引表面へのウェハ(12)の接触は負圧の吸引で加速される。他のウェハの上に配置された複数のウェハを分離するため、移動手段は下記2つステップの少なくとも1つを受け、
a)水は最上部のウェハの先端に力が加わるように下斜めから噴射される。
b)移動手段(23)は移動中ウェハの下方表面に下から接する剥離装置の上をウェハが超えるように案内し、双方がウェハを吸引表面に押しつけブレーキ作用する。
その後、ウェハは、転送パスへ移動し更なる処理へ転送される。」というものである。
なお、a)において噴射される水は、「空気あるいはガス泡を含むことにより水圧のみならず空気泡が個々のウェハの間を通過できて結果として付着作用をなくす」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−148278
【0007】
【特許文献2】特開2002−75922
【0008】
【特許文献3】特表2011−507242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、前記したように、「分離押出手段の接触子で最上部のウェハを機械的に回転させて始動力を付与し、さらに噴射ノズルにより水面位置のウェハの上面に対し、その中心から偏倚した位置に水を噴射して一方向に回転させる」ようになっている。このため、最上部のウェハと他のウェハとの接面部では移動摩擦抵抗が相当に大きくなり、特に分離押出手段による始動の際、両ウェハには大きなストレスがかかるため、実際上はウェハを円滑に分離させることは難しく、ウェハが破損するおそれがある。
【0010】
また、特許文献2に記載の発明は、前記したように、「第1吸着部材によって分離ウェーハを吸着保持するとともに、第2吸着部材によって第1吸着部材よりも上方位置で分離ウェーハを吸着保持し、第2吸着部材のフレキシブルパイプを収縮させて分離ウェーハを反らせながら吸着保持する」ようになっている。このため、分離ウェーハには変形による大きなストレスがかかり、破損するおそれがある。
【0011】
特許文献3に記載の発明は、前記空気泡が個々のウェハの間を通過できて結果として付着作用をなくすことから、特許文献1及び2に記載の発明よりもウェハの分離が容易になることが期待できる。
しかし、空気あるいはガスを含んだ水噴射は、空気あるいはガスを水噴射あるいは水噴射させるためのノズルの中へ注入することによって生成されるために、コンプレッサや換気装置等の付帯設備が必要となる。その結果、付帯設備に伴う製造コストの上昇やメンテナンス等の運転コストが生じる課題がある。
【0012】
本発明者らは、特別な付帯設備なしで水と空気の混合流を発生させることができないか研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0013】
(本発明の目的)
そこで、本発明の目的は、多数枚のウェハが積層された状態の積層ウェハ群からウェハを分離し、分離したウェハを一枚ずつ所定の箇所に移動する作業において、分離するウェハに対し摩擦や変形等によるストレスをできるだけ与えないようにして破損を防止することにより、ウェハの歩留まりをより向上させてウェハの安定供給ができるようにした、ウェハの分離方法及び分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
【0015】
(1)本発明は、
液体中にある積層ウェハ群の積層面に、液体と気泡とを含む気液混合流を当てることにより、多数枚のウェハが積層された状態の前記積層ウェハ群からウェハを分離する方法であって、
前記気液混合流は、液面に噴出された液体が液面と衝突することにより気液界面で取り込まれた気体によって生じた気泡を含む、
ウェハの分離方法である。
【0016】
(2)本発明は、
気液混合流は、液面に噴出された液体が液面と衝突することにより気液界面で取り込まれた気体によって生じた気泡を含む噴流と、液体中に噴出された噴流とが、合流したものである、前記(1)に係るウェハの分離方法である。
【0017】
(3)本発明は、
気液混合流は、液面に対して所要の下向きの傾斜角度の噴流となって液面側から液体中にある積層ウェハ群に当たる、前記(1)又は(2)に係るウェハの分離方法である。
【0018】
(4)本発明は、
積層ウェハ群は、気液混合流が当たる側が高くなるように液面に対して傾いて設置されており、気液混合流の下向きの傾斜角度と前記積層ウェハ群の傾斜角度は、同じか又は略同じである、前記(3)に係るウェハの分離方法である。
【0019】
(5)本発明は、
積層ウェハ群から分離したウェハのうち、最上部の位置にあるウェハを所定の箇所に移動する、前記(4)に係るウェハの分離方法である。
【0020】
(6)本発明は、
ウェハの移動は、吸着手段により吸着されて行われる、前記(5)に係るウェハの分離方法である。
【0021】
(7)本発明は、
液体中にある積層ウェハ群より分離したウェハは、設置した傾斜角度と同じ傾き方向で液体中を移動して液面に向かい、液体中から気体中に取り出される、前記(5)又は(6)に係るウェハの分離方法である。
【0022】
(8)本発明は、
液体中にある積層ウェハ群の積層面に、液体と気泡とを含む気液混合流を当てることにより、多数枚のウェハが積層された状態の前記積層ウェハ群からウェハを分離する装置であって、
該装置は、液面に液体を噴出する気中噴出口から液面に噴出した液体が液面と衝突して気液界面で気体を取り込んで噴出液体中に気泡を含む噴出手段を有している、
ウェハ分離装置である。
【0023】
(9)本発明は、
噴出手段は、気中噴出口の他に液体中に液体を噴出する液中噴出口を備え、前記気中噴出口から液面に噴出した噴流と前記液中噴出口から噴出した噴流が合流して気液混合流を構成する、前記(8)に係るウェハ分離装置である。
【0024】
(10)本発明は、
噴出手段が噴出ノズルであり、気中噴出口と液中噴出口は、同一の噴出ノズルに備わるか、又はそれぞれ別個の噴出ノズルに備わる、前記(9)に係るウェハ分離装置である。
【0025】
(11)本発明は、
噴出ノズルは、気液混合流が液面に対して所要の下向きの傾斜角度で噴流となって液体中にある積層ウェハ群に当たる噴出口を有する、前記(10)に係るウェハ分離装置である。
【0026】
(12)本発明は、
噴出ノズルは、気液混合流を生じさせる第1の噴出ノズルと、液体中で液体を噴出する第2の噴出ノズル及び第4の噴出ノズルと、気体中で液体を噴出する第3の噴出ノズルを備え、
第1の噴出ノズル、第2の噴出ノズル及び第3の噴出ノズルは、積層ウェハ群から分離されたウェハの搬送方向側であって搬送路線を挟んで積層ウェハ群の両側に配置され、
第4の噴出ノズルは、前記ウェハの搬送方向とは反対側であって前記搬送路線の逆延長線を挟んで積層ウェハ群の両側に配置される、 前記(10)又は(11)に係るウェハ分離装置である。
【0027】
(13)本発明は、
積層ウェハ群は、気液混合流が当たる側が高くなるように液面に対して傾いて設置されており、気液混合流の下向きの傾斜角度と前記積層ウェハ群の傾斜角度は、同じか又は略同じである、前記(11)又は(12)に係るウェハ分離装置である。
【0028】
(14)本発明は、
液体中にある積層ウェハ群より分離した最上部の位置にあるウェハを、前記積層ウェハ群が設置した傾斜角度と同じ傾き方向で液体中を移動して液面に向かわせて、液体中から気体中に取り出す手段を備えた、前記(13)に係るウェハ分離装置である。
【0029】
(15)本発明は、
積層ウェハ群から分離したウェハが、取り出し位置からずれるのを防止するストッパーを備え、該ストッパーは進退手段によって前記積層ウェハ群に対して進退する、前記(14)に係るウェハ分離装置である。
【0030】
(16)本発明は、
積層ウェハ群を保持し、気液混合流が積層面に当たる位置に前記積層ウェハ群を移動させるウェハ供給手段を備えている、前記(14)又は(15)に係るウェハ分離装置である。
【0031】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「積層面」の用語は、積層ウェハ群の側面、すなわち多数枚積層されている各ウェハの厚みが表れている面の意味で使用している。
また、「気中噴出口」は気体中(具体的には空気中)にある噴出口を、「液中噴出口」は液体中(具体的には水中)にある噴出口を指称する意味で使用している。
【0032】
(作用)
本発明に係るウェハ分離装置の作用を説明する。
【0033】
まず、噴出手段(噴出ノズル等)によって液面に噴出された液体が液面と衝突することにより、気液界面で取り込まれた気体によって生じた多数の気泡を含む気液混合流を液体中に生じさせる。なお、噴出のタイミングは積層ウェハ群を所要の位置に移動させた後でもよい。
次に、ウェハ供給手段(ウェハ供給機等)によって積層ウェハ群を保持し、前記気液混合流が積層面に当たる位置に積層ウェハ群を移動させる。
【0034】
これによって、積層ウェハ群を構成するウェハの間に液体と気泡が入り込み、例えば積層ウェハ群の液面側に近い複数枚のウェハが徐々に分離し、各ウェハ間に隙間が空くことによって液体と気泡がさらに入り込み、分離するウェハに摩擦や変形等による大きなストレスをかけることなく、無理なく分離させることができる。
【0035】
また、各ウェハ間に多数の気泡が入り、これら気泡がいわばクッション(緩衝材)の機能を果たすことにより、各々が分離し水中で浮遊している状態の各ウェハ同士が接触又は衝突しにくく、これによりウェハが損傷することを防止できる。さらには、多数の気泡によって分離するウェハに大きな浮力が付与され、これによりウェハがより短い時間で分離される。
【0036】
そして、分離している各ウェハのうち、最上部に位置するウェハをウェハ移動手段(ウェハ移動機等)で保持し、所定の箇所に移動する。その後、この移動箇所からウェハを取り出す等して後工程へ送る。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、多数枚のウェハが積層された状態の積層ウェハ群からウェハを分離し、分離したウェハを一枚ずつ所定の箇所に移動する作業において、多数の気泡を含む水流である気液混合流を積層ウェハ群の積層面に当ててウェハを分離させることにより、分離するウェハに対し摩擦や変形等による大きなストレスを与えないようにして破損を防止することができる。
これにより、ウェハの歩留まりをより向上させてウェハを安定的に供給することができる。
【0038】
また、気液混合流に含まれる気泡は、液面に噴出される液体が液面と衝突することにより気液界面で取り込まれた気体によって生じたものであるために、コンプレッサや換気装置等の付帯設備は不必要であり、付帯設備に伴う製造コストの上昇やメンテナンス等の運転コストが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るウェハ分離装置の第1の実施の形態を示しており、前方側から視た斜視説明図。
【図2】図1に示すウェハ分離装置を後方側から視た斜視説明図。
【図3】ウェハ分離装置の構造を示す正面視説明図。
【図4】図3におけるX−X矢視断面説明図。
【図5】図3におけるY−Y矢視断面説明図。
【図6】ウェハ分離装置によるウェハの分離までの工程を示す説明図。
【図7】ウェハ分離装置によるウェハの分離後の移動までの工程を示す説明図。
【図8】リフトベースの初期状態を示し、(a)は左側面視説明図、(b)は上面視説明図。
【図9】図8に示すリフトベースに積層ウェハ群を載置した状態を示しており、(a)は左側面視説明図、(b)は上面視説明図。
【図10】リフトベースで積層ウェハ群を分離作業位置まで上昇させた状態を示し、(a)は左側面視説明図、(b)は上面視説明図。
【図11】積層ウェハ群に気液混合流を当てて複数のウェハを分離している状態を示し、(a)は左側面視説明図、(b)は上面視説明図。
【図12】本発明に係るウェハ分離装置の第2の実施の形態の要部を示しており、図13のA矢視説明図。
【図13】図12のX−X線矢視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。なお、以下の説明においては、例として、気体が空気の場合、液体が水の場合を説明しているが、空気や水に限定する意図はない。水に界面活性剤を添加した液体や、本発明を実施できる他の気体や液体を使用してもよい。
(第1の実施の形態)
図1乃至図5及び図8乃至図11を参照する。
なお、図1乃至図5においては、説明の便宜上、多数枚のウェハが積層された状態の積層ウェハ群7及び積層ウェハ群7から分離した単独のウェハ70も表している。
【0041】
ウェハ分離装置Aは、積層ウェハ群7からウェハ70を分離して所定の箇所(本実施の形態では、後述する移動受機6)に移動するものである。
ウェハ分離装置Aは、角パイプで組まれたフレーム1を有している。フレーム1には、水槽2、水槽2の水面位置(水面下及び水面上の両方に亘る。)に配されている噴出ノズル3、3a、積層ウェハ群7を保持し、噴出ノズル3、3aにより生じた気液混合流がウェハの間に入る位置へ積層ウェハ群7を移動させるウェハ供給機4、積層ウェハ群7から分離したウェハ70を保持して移動するウェハ移動機5及びウェハ移動機5からウェハ70を受け取る移動受機6が組み込まれている。
【0042】
水槽2は、フレーム1の下部に固定されている。水槽2には、清浄な水が所定量入れられ、水面の高さは一定に維持されるようになっている。水槽2内には、二箇所に噴出ノズル3、3aが配されている。噴出ノズル3、3aには清浄な水が供給されるようになっている。噴出ノズル3、3aは、先端の噴出口30の中心が水面の高さの位置となるように、先側が所要角度(例えば、水面に対しては15〜40°の下向きの傾斜角度―本実施の形態では25°)で水槽2に固定されている。
【0043】
また、噴出ノズル3、3aは、本実施の形態では、後記するように積層ウェハ群7が水面近傍まで上昇した時に、その両側(図3で左右側)から積層ウェハ群7の左右両角部へ向けて気液混合流が流れ、積層面の両側面と前面に気液混合流が効果的に当たるように配されている(図11(b)参照)。
なお、噴出ノズル3、3aの位置(高さ)及び傾斜角度は前記に限定されないが、少なくとも噴出ノズル3、3aから噴出された水が水面に衝突し、気液界面で空気を取り込んで、水中において水と多数の気泡を含む気液混合流が生じる位置及び傾斜角度に設定される。
【0044】
図4に示すように、ウェハ供給機4は、例えば水槽2の底部に固定されている基枠46を有している。基枠46の中央には四角形の支持板40が固定されている。支持板40は、前側(図4で右側)が高くなるように、水槽2の底面(又は水面)と15〜40°(本実施の形態では25°)の角度で傾斜させてある。本実施の形態では、支持板40の角度が、前記噴出ノズル3、3aから水が水面に対し噴出される角度と同じに設定されているが、限定はされない。支持板40の前部側の一辺を除く三辺側の上面には、支持板40と直角方向に各辺あたり所要間隔で二本ずつ、ガイドピン41が固定されている(図8(a)、(b)参照)。
【0045】
各ガイドピン41は、角柱形状の積層ウェハ群7の三方側部の積層面が若干の隙間をもって内側に収まる位置に設定されており、ガイドピン41が設けられていない一辺側(ウェハの搬送又は取り出し側)から積層ウェハ群7を入れて収めることができる。なお、本実施の形態の支持板40及びガイドピン41は、四角形のウェハに対応しているが、円形のウェハに対応できるように、例えば支持板40の前記と同じ三辺にそれぞれガイドピンを一本ずつ設けた構造としてもよい。
【0046】
各ガイドピン41のうち、支持板40の相対向する二辺(図3で左右側)の各ガイドピン41の上部には、それぞれ板状のストッパー42が互いに同じ高さになるように平行に固定されている。各ストッパー42は、ウェハ70を積層ウェハ群7から分離する際、分離したウェハ70をウェハ移動機5で吸着する位置から外れないように止めるもので、支持板40と平行に固定されている。
【0047】
また、ウェハ供給機4は、積層ウェハ群7を載置するリフトベース43を有している。リフトベース43は、支持板40の上面側に位置し、フレーム1の一方側(図3で右側)に固定された駆動装置44のリフト体45の下側先端に片持ち構造で固定されている。リフトベース43の載置部は支持板40と平行であり、リフトベース43はボールスクリュー式の駆動装置44によって前記ガイドピン41と平行方向に昇降するようになっている。
【0048】
図5に示すように、ウェハ移動機5は、フレーム1の他方側(図3で左側)に固定された所要長さのガイド体50を有している。ガイド体50は、前側が高くなるように水槽2の底面と15〜40°の角度で傾斜させてある。本実施の形態では、支持板40の角度と同じに設定されているが、限定はされない。ガイド体50には、移行体51がボールスクリュー式の駆動装置52によってガイド体50に沿って移行できるように取り付けられている。
【0049】
移行体51は、アクチュエータ52と、アクチュエータ52により昇降する昇降アーム53を有している。昇降アーム53の下側先端には、真空吸着部54が片持ち構造で設けられている。移行体51は、真空吸着部54をリフトベース43に載置された積層ウェハ群7のガイドピン41の高さ方向上方に位置させることができ、真空吸着部54は分離したウェハ70を吸着することができる。昇降アーム53の昇降する方向は、ガイド体50の方向に対して上下に直角方向である。
なお、本実施の形態では、ウェハ移動機5は一台であるが、移動効率を高めるために複数台としてもよい。
【0050】
図1,2に示すように、移動受機6は、フレーム1前側の一方側(図3で右側)に固定され、その取り付け高さは、後述する受台板62の上昇停止位置が水槽2の上部縁部の高さ近傍となるよう設定されている。
移動受機6は、アクチュエータ60と、アクチュエータ60により昇降する昇降体61を有しており、昇降体61の下側先端には受台板62が片持ち構造で設けられている。受台板62は前記支持板40と平行、すなわち真空吸着部54で吸着されて送られてくるウェハ70と平行になるように傾斜している。
【0051】
受台板62の上面には、移動されたウェハ70が落下しないように嵌め入れる載置凹部63が設けられている。載置凹部63は、後側に段部があり、前側に段部がないように形成されており(図5参照)、移動されたウェハ70は斜め上方向(前方向)にスライドさせて取り出すことができる。
【0052】
なお、受台板62は、アクチュエータ60により受台板62の表面方向と直角方向に昇降するようになっている。受台板62の上昇停止位置は、前記ウェハ移動機5の昇降アーム53が下降したときに、真空吸着部54で吸着されているウェハ70が載置凹部63に入る高さに設定されている。
また、本実施の形態では移動受機6を設けているが、これを設けずに、例えば公知構造の搬送機、例えばベルトコンベア等、分離したウェハ70を後工程へ送るための装置にウェハ移動機5からウェハ70を直接移動する構造とすることもできる。
【0053】
また、水槽内の水の汚れ(濁り)を常時監視し、汚れが一定のレベルになったら警告するか、又は水を入れ替えるような装置を付帯することも推奨される。このような装置には、例えば水の汚れを光で検知するセンサー、電気の伝わり具合の変化を測定する電導度センサー等の公知のセンサーを用いることができる。
【0054】
(作用)
図1乃至図11を参照して、ウェハ分離装置Aの作用及びウェハ分離装置Aにより、多数枚のウェハが積層された積層ウェハ群からウェハを分離し、分離したウェハを一枚ずつ所定の箇所に移動する工程を説明する。
【0055】
(1)図6(a)及び図8(a)、(b)に示す状態は初期状態であり、ウェハ供給機4のリフトベース43は最下部まで下降しており、ウェハ移動機5の昇降アーム53を有する移行体51は前位置にあり、昇降アーム53及び真空吸着部54は上位置にある。
(2)ウェハ供給機4のリフトベース43の上に積層ウェハ群7を載置し、各ガイドピン41の内側に収容する(図6(b)、図9(a)、(b)参照)。
【0056】
(3)駆動装置44が作動しリフトベース43と共に積層ウェハ群7が上昇する(図10(a)、(b)参照)。そして、噴出ノズル3、3aより水面及び水中へ水を所要の圧力で噴出する。水面に噴出された水は水面から水中に入水する際に空気を取り込み、水中に噴出された水と合流して多数の気泡Bを含む気液混合流が生じる(図6(c)、図11(a)参照)。
【0057】
(4)リフトベース43が、積層ウェハ群7の上部の積層面に前記気液混合流が当たる位置である分離作業位置に停止し、積層ウェハ群7の左右両側から積層ウェハ群7の左右両角部へ向けて気液混合流が流れ、積層面の両側面と前面に気液混合流が当たる。なお、気液混合流は、ウェハ70の分離に支障がなければ、積層面の他の位置に当てることもできる。
【0058】
これにより、複数のウェハ70が気液混合流によって各ガイドピン41の内側で積層ウェハ群7から浮き上がるように分離し、最上部に位置するウェハ70がストッパー42の下側で止められる(図11(a)参照)。そして、ウェハ移動機5の移行体51が後方のウェハ吸着位置へ移動する(図6(d)参照)。
【0059】
なお、ウェハ70が分離する際には、各ウェハ70の間に水と気泡Bが入り込み、分離するウェハ70に摩擦や変形等による大きなストレスをかけることなく、無理なく分離させることができる。また、各ウェハ70間に入った気泡Bがいわばクッションの機能を果たすことにより、各々が分離し水中で浮遊している状態の各ウェハ70同士が接触又は衝突しにくく、これによりウェハが損傷することを防止できる。さらには、多数の気泡Bによって、分離する各ウェハ70に大きな浮力が付与され、これによりウェハ70がより短い時間で分離される。
【0060】
(5)ウェハ移動機5の昇降アーム53が下降し、積層ウェハ群7から分離してストッパー42の下方に位置している最上部に位置するウェハ70を真空吸着部54によって吸着する(図7(e)参照)。最上部のウェハ70が吸着される位置は、ストッパー42の下面よりやや下側の水中(図11(a)では、ウェハ70の前側の一部が水面から出ているが、全体が水中にあってもよい)であり、移動受機6へ向けて移動する際にストッパー42に接触しないようにして損傷を防止している。
【0061】
(6)昇降アーム53の真空吸着部54で最上部のウェハ70を吸着した状態で駆動装置52が作動し、移行体51が前進して所定の位置に停止する(図7(f)参照)。
積層ウェハ群7は前記のように水面に対して15〜40°(本実施の形態では25°)の下向きの傾斜角度を有して設置される。したがって、積層ウェハ群7より分離したウェハ70は、ウェハ移動機5によって水面に対して前記角度の上向きの角度となり、その角度を保持し、ウェハの端面を先端にしながら水中を移動して水面に向かい、水面下(水中)から水面上に取り出される。したがってウェハ70に受ける水の抵抗を避けながら水面下から水面上に取り出すことができるので、ウェハにストレスがかからず、ウェハの破損が防止できる。
【0062】
なお、前記気液混合流は継続して積層ウェハ群7及び分離している各ウェハ70に当たっており、最上部に位置するウェハ70が移動した後、その次のウェハ70がストッパー42の下側で止められる。また、積層ウェハ群7は、積層ウェハ群7全体がウェハ70に分離するようにリフトベース43によって徐々に上昇するようになっている。
【0063】
(7)移動受機6のアクチュエータ60(図1、図2参照)が作動し、受台板62が上昇し所定位置に停止する。真空吸着部54によるウェハ70の吸着状態を解除し、ウェハ70を受台板62の載置凹部63に移動する(図7(g)、図4、図5参照)。
(8)受台板62が下降し、元の位置に戻る。また、昇降アーム53が上昇する(図7(h)参照)。
【0064】
これにより前記(3)終了の状態へ戻り、積層ウェハ群7を構成するウェハ70がなくなるまで、(4)〜(8)の工程を繰り返し、ウェハ70の分離作業を行う。なお、移動受機6へ移動したウェハは、順次後工程へ送られる。
【0065】
なお、本実施の形態のウェハ分離装置Aの有効性及び優位性を確認するために、(1)水中にて水と空気の気液混合流を噴出した場合(本実施の形態)、(2)水中にて水のみを噴出した場合、(3)水中にて空気のみを噴出した場合の各ケースで比較検証した(表1参照)。
具体的には、水槽内の水中にある積層ウェハ群の積層面へ向けて各流体を噴出し、最上部に位置するウェハを分離させる際の分離時間を測定し、最上部に位置するウェハが分離した後に昇降アームにてウェハを移動するまでのNG確率(不良率)を検証した。
【0066】
【表1】
【0067】
(考察)
まず、ウェハ分離時間に関しては、噴出方法を水のみとした(2)の場合よりも、本実施の形態の水と空気の気液混合流を噴出した(1)の場合の方が、より短時間でウェハを分離させることができた。これは、積層されたウェハ間に水と共に多数の気泡が入り込み、最上部に位置するウェハに大きな浮力を付与することによりウェハの分離を促進しているためと考えられる。
【0068】
また、ウェハ移動時のNG確率に関しては、噴出方法を水のみとした(2)の場合には、ウェハ分離状態が不安定なことに伴うウェハの割れ、吸着不良によるウェハ移動ミス及びウェハの2枚取りが発生しNG確率が14%であったのに対し、本実施の形態の水と空気(気泡)の気液混合流を噴出した(1)の場合はNGが発生せず、明確な優位性が認められた。
【0069】
なお、空気のみを噴出した場合(3)に関しては、水中の空気(気泡)の流れが安定せず、ウェハの破損が発生した。また、ウェハが破損しない程度に空気流量を少なくした場合、ウェハを分離するには流量が足りず、結果的に検証が困難であった。
このように、前記3つのケースでは、(1)の水と空気(気泡)の気液混合流を噴出する方法でウェハの分離を行うのが最も有効であることが分かった。
【0070】
(第2の実施の形態)
図12及び図13を参照する。第2の実施の形態では、主として噴出ノズルの数と配置、ウェハ供給機のガイドピンの取り付け構造、及び積層ウェハ群から分離したウェハの浮き上がりを防止するストッパーに係る構成等が第1の実施の形態と異なり、その他は第1の実施の形態と大体において同じである。なお、第1の実施の形態と同一又は同等箇所には同一符号を付して示している。
【0071】
(噴出ノズル関連)
噴出ノズルは、積層ウェハ群7から分離されたウェハ70の搬送路線Lを挟んで積層ウェハ群7の略四隅又は四方に配置される。
噴出ノズルは、第1の実施の形態で説明した噴出ノズルに相当する第1の噴出ノズル3,3aの他に、第1の噴出ノズル3,3aと同じ側に、第2の噴出ノズル3b,3c及び第3の噴出ノズル3d,3eが配置されている。また、ウェハの搬送方向とは反対側には第4の噴出ノズル3f,3gが配置されている。
【0072】
第1の噴出ノズル3,3aは、全体形状が大体において縦長直方体形状であり、縦長のスリット状の噴出口30、30aを有する。噴出口30、30aは水面下から水面上(水中から空気中)に亘って設けられており、水面上と水面下に位置している。これによって、水中と水面の双方に水を噴出する。水の噴出方向は、ウェハの表面と平行であるが、ウエハが剥離できれば多少の交差角を設けても良い。
【0073】
噴出口30、30aから水面に噴出された水の衝撃により水面近傍の空気が水中に取り込まれた噴流と、水面下に噴出された水の噴流とが合流して多数の気泡を含む水と気泡の気液混合流が生じる。この気液混合流を積層ウェハ群7の積層面に当てることにより積層ウェハ群7からウェハ70を分離させる。
【0074】
第2の噴出ノズル3b,3cは、第1の噴出ノズルと同じ側にあり、全体形状が大体において縦長直方体形状であり、縦長のスリット状の噴出口30b、30cを有する。噴出口30b、30cの全部が水面下に位置し、水の噴出方向はウエハ表面と平行である。第2の噴出ノズルは、積層ウェハ群7からウェハ70が分離するのを補助又は支援し、向上させる。
【0075】
第3の噴出ノズル3d,3eは、第1の噴出ノズルと同じ側にあり、水流が扇形状に噴出される噴出口30d、30e有している。扇形に噴出された水は、ウエハ積層面に対してやや交差する角度で当たる。噴出口30d、30eの全部が水面の上に位置しており、液体中にある積層ウェハ群に水面上より噴流を当てる。その際に気泡を生じる。第3のノズルは、扇形状の水流で積層ウエハ群7のウェハの間の隙間を、より確実に開けて、積層ウェハ群7からウェハ70が分離するのを補助又は支援し、向上させる。
【0076】
第4の噴出ノズル3f,3gは、第1乃至第3の噴出ノズルとは反対側にあり、全体形状が大体において縦長直方体形状であり、縦長のスリット状の噴出口30f、30gを有する。噴出口30f、30gの全部が水中にある。水の噴出方向は、ウエハ表面と平行である。第4の噴出ノズルは、ウェハ70が分離するのを補助又は支援し、向上させると共に、浮き上がったウエハ70をウェハ移動機5の真空吸着部54と平行にしてウェハ吸着の安定性を図るものである。
【0077】
第1乃至第3の噴出ノズルはウエハの搬送路Lを挟んで積層ウェハ群7の両側に配置して、分離したウエハの搬送に邪魔にならないようにしている。また、第1乃至第4の噴出ノズルを積層ウエハ群7の中心に向けることにより、噴流を効率的に積層ウェハ群7に当ててウエハを分離するようにしている。
【0078】
(ウェハ供給機とストッパー関連)
ウェハ供給機4aは、積層ウェハ群7を載せ置き、最上部のウェハ70の分離に伴って積層ウェハ群7を上昇させるリフトベース43を有する。リフトベース43は本実施の形態では、略四角形状をしている。リフトベース43のうち、ウェハ70の搬送又は取り出し側の辺を除く残りの三辺の端縁からやや内方には、所要間隔をおいて各辺に二本ずつガイドピン41が立設されている。
【0079】
また、積層ウェハ群7から分離したウェハ70が取り出し位置からずれるのを防止する一対のストッパー機構Sを備える。ストッパー機構Sはウェハ70の搬送路Lに対して直交する両側に配置されている。
各ストッパー機構Sは、ウェハ70を積層ウェハ群7から分離する際、分離したウェハ70をウェハ移動機5で吸着する位置から外れないように止めるストッパー420、ストッパー420を進退するエアーシリンダー422、一方側がエアーシリンダー422のロッドの先端に取り付けられ、他方側には前記ストッパー420が取り付けられているブラケット421で構成される、
【0080】
ストッパー420の先端縁であるガイドピン41側には、ガイドピン41を導入するべく、切欠された導入部420aを有する。導入部420aは、ウェハ70の搬送又は取り出し方向と平行な4本のガイドピン41の位置に対応しており、ストッパー420をガイドピン41に向けて進めたときに、ストッパー420の先端縁がガイドピン41を越えてウェハの上部に被るようにしている。
なお、ストッパ機構Sは、対向する一方は固定、他方は可動となる構成を採用してもよい。
【0081】
(作用)
前記構成のストッパー機構Sの作用を説明する。
積層ウェハ群7をリフトベース43に載せ置くときには、エアーシリンダー422を作動させてストッパー420をリフトベース43から離れる方向に移動させ、ウェハ供給機4のリフトベース43の上に積層ウェハ群7を載置し、各ガイドピン41の内側に収容する。
【0082】
次いで、エアーシリンダー422を作動させて、ストッパー420をリフトベース43に載せ置かれた積層ウェハ群7に対して進め、各導入部420aを各ガイドピン41に臨ませて各ストッパー42の先端縁を積層ウェハ群の上に被さるようにする。これによってウェハ70を積層ウェハ群7から分離する際、分離したウェハ70をウェハ移動機5で吸着する位置から外れないように止めることができる。
第2の実施の形態に係るその他の作用については、第1の実施の形態の作用と略同じであり、第1の実施の形態の作用を援用し、説明は省略する。
【0083】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
また、第1、第2などの言葉は、等級や重要度を意味するものではなく、一つの要素を他の要素から区別するために使用したものである。
【符号の説明】
【0084】
A ウェハ分離装置
1 フレーム
2 水槽
3、3a 噴出ノズル(第1の噴出ノズル)
3b、3c 第2の噴出ノズル
3d、3e 第3の噴出ノズル
3f、3g 第4の噴出ノズル
30 噴出口
4 ウェハ供給機
40 支持板
41 ガイドピン
42 ストッパー
43 リフトベース
44 駆動装置
45 リフト体
46 基枠
5 ウェハ移動機
50 ガイド体
51 移行体
52 アクチュエータ
52 駆動装置
53 昇降アーム
54 真空吸着部
6 移動受機
60 アクチュエータ
61 昇降体
62 受台板
63 載置凹部
7 積層ウェハ群
70 ウェハ
B 気泡
S ストッパー機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中にある積層ウェハ群の積層面に、液体と気泡とを含む気液混合流を当てることにより、多数枚のウェハが積層された状態の前記積層ウェハ群からウェハを分離する方法であって、
前記気液混合流は、液面に噴出された液体が液面と衝突することにより気液界面で取り込まれた気体によって生じた気泡を含む、
ウェハの分離方法。
【請求項2】
気液混合流は、液面に噴出された液体が液面と衝突することにより気液界面で取り込まれた気体によって生じた気泡を含む噴流と、液体中に噴出された噴流とが、合流したものである、請求項1記載のウェハの分離方法。
【請求項3】
気液混合流は、液面に対して所要の下向きの傾斜角度の噴流となって液面側から液体中にある積層ウェハ群に当たる、請求項1又は2に記載のウェハの分離方法。
【請求項4】
積層ウェハ群は、気液混合流が当たる側が高くなるように液面に対して傾いて設置されており、気液混合流の下向きの傾斜角度と前記積層ウェハ群の傾斜角度は、同じか又は略同じである、請求項3に記載のウェハの分離方法。
【請求項5】
積層ウェハ群から分離したウェハのうち、最上部の位置にあるウェハを所定の箇所に移動する、請求項4に記載のウェハの分離方法。
【請求項6】
ウェハの移動は、吸着手段により吸着されて行われる、請求項5記載のウェハの分離方法。
【請求項7】
液体中にある積層ウェハ群より分離したウェハは、設置した傾斜角度と同じ傾き方向で液体中を移動して液面に向かい、液体中から気体中に取り出される、請求項5又は6に記載のウェハの分離方法。
【請求項8】
液体中にある積層ウェハ群の積層面に、液体と気泡とを含む気液混合流を当てることにより、多数枚のウェハが積層された状態の前記積層ウェハ群からウェハを分離する装置であって、
該装置は、液面に液体を噴出する気中噴出口から液面に噴出した液体が液面と衝突して気液界面で気体を取り込んで噴出液体中に気泡を含む噴出手段を有している、
ウェハ分離装置。
【請求項9】
噴出手段は、気中噴出口の他に液体中に液体を噴出する液中噴出口を備え、前記気中噴出口から液面に噴出した噴流と前記液中噴出口から噴出した噴流が合流して気液混合流を構成する、請求項8記載のウェハ分離装置。
【請求項10】
噴出手段が噴出ノズルであり、気中噴出口と液中噴出口は、同一の噴出ノズルに備わるか、又はそれぞれ別個の噴出ノズルに備わる、請求項9記載のウェハ分離装置。
【請求項11】
噴出ノズルは、気液混合流が液面に対して所要の下向きの傾斜角度で噴流となって液体中にある積層ウェハ群に当たる噴出口を有する、請求項10に記載のウェハ分離装置。
【請求項12】
噴出ノズルは、気液混合流を生じさせる第1の噴出ノズルと、液体中で液体を噴出する第2の噴出ノズル及び第4の噴出ノズルと、気体中で液体を噴出する第3の噴出ノズルを備え、
第1の噴出ノズル、第2の噴出ノズル及び第3の噴出ノズルは、積層ウェハ群から分離されたウェハの搬送方向側であって搬送路線を挟んで積層ウェハ群の両側に配置され、
第4の噴出ノズルは、前記ウェハの搬送方向とは反対側であって前記搬送路線の逆延長線を挟んで積層ウェハ群の両側に配置される、請求項10又は11に記載のウェハ分離装置。
【請求項13】
積層ウェハ群は、気液混合流が当たる側が高くなるように液面に対して傾いて設置されており、気液混合流の下向きの傾斜角度と前記積層ウェハ群の傾斜角度は、同じか又は略同じである、請求項11又は12に記載のウェハ分離装置。
【請求項14】
液体中にある積層ウェハ群より分離した最上部の位置にあるウェハを、前記積層ウェハ群が設置した傾斜角度と同じ傾き方向で液体中を移動して液面に向かわせて、液体中から気体中に取り出す手段を備えた、請求項13に記載のウェハ分離装置。
【請求項15】
積層ウェハ群から分離したウェハが、取り出し位置からずれるのを防止するストッパーを備え、該ストッパーは進退手段によって前記積層ウェハ群に対して進退する、請求項14に記載のウェハ分離装置。
【請求項16】
積層ウェハ群を保持し、気液混合流が積層面に当たる位置に前記積層ウェハ群を移動させるウェハ供給手段を備えている、
請求項14又は15に記載のウェハ分離装置。
【請求項1】
液体中にある積層ウェハ群の積層面に、液体と気泡とを含む気液混合流を当てることにより、多数枚のウェハが積層された状態の前記積層ウェハ群からウェハを分離する方法であって、
前記気液混合流は、液面に噴出された液体が液面と衝突することにより気液界面で取り込まれた気体によって生じた気泡を含む、
ウェハの分離方法。
【請求項2】
気液混合流は、液面に噴出された液体が液面と衝突することにより気液界面で取り込まれた気体によって生じた気泡を含む噴流と、液体中に噴出された噴流とが、合流したものである、請求項1記載のウェハの分離方法。
【請求項3】
気液混合流は、液面に対して所要の下向きの傾斜角度の噴流となって液面側から液体中にある積層ウェハ群に当たる、請求項1又は2に記載のウェハの分離方法。
【請求項4】
積層ウェハ群は、気液混合流が当たる側が高くなるように液面に対して傾いて設置されており、気液混合流の下向きの傾斜角度と前記積層ウェハ群の傾斜角度は、同じか又は略同じである、請求項3に記載のウェハの分離方法。
【請求項5】
積層ウェハ群から分離したウェハのうち、最上部の位置にあるウェハを所定の箇所に移動する、請求項4に記載のウェハの分離方法。
【請求項6】
ウェハの移動は、吸着手段により吸着されて行われる、請求項5記載のウェハの分離方法。
【請求項7】
液体中にある積層ウェハ群より分離したウェハは、設置した傾斜角度と同じ傾き方向で液体中を移動して液面に向かい、液体中から気体中に取り出される、請求項5又は6に記載のウェハの分離方法。
【請求項8】
液体中にある積層ウェハ群の積層面に、液体と気泡とを含む気液混合流を当てることにより、多数枚のウェハが積層された状態の前記積層ウェハ群からウェハを分離する装置であって、
該装置は、液面に液体を噴出する気中噴出口から液面に噴出した液体が液面と衝突して気液界面で気体を取り込んで噴出液体中に気泡を含む噴出手段を有している、
ウェハ分離装置。
【請求項9】
噴出手段は、気中噴出口の他に液体中に液体を噴出する液中噴出口を備え、前記気中噴出口から液面に噴出した噴流と前記液中噴出口から噴出した噴流が合流して気液混合流を構成する、請求項8記載のウェハ分離装置。
【請求項10】
噴出手段が噴出ノズルであり、気中噴出口と液中噴出口は、同一の噴出ノズルに備わるか、又はそれぞれ別個の噴出ノズルに備わる、請求項9記載のウェハ分離装置。
【請求項11】
噴出ノズルは、気液混合流が液面に対して所要の下向きの傾斜角度で噴流となって液体中にある積層ウェハ群に当たる噴出口を有する、請求項10に記載のウェハ分離装置。
【請求項12】
噴出ノズルは、気液混合流を生じさせる第1の噴出ノズルと、液体中で液体を噴出する第2の噴出ノズル及び第4の噴出ノズルと、気体中で液体を噴出する第3の噴出ノズルを備え、
第1の噴出ノズル、第2の噴出ノズル及び第3の噴出ノズルは、積層ウェハ群から分離されたウェハの搬送方向側であって搬送路線を挟んで積層ウェハ群の両側に配置され、
第4の噴出ノズルは、前記ウェハの搬送方向とは反対側であって前記搬送路線の逆延長線を挟んで積層ウェハ群の両側に配置される、請求項10又は11に記載のウェハ分離装置。
【請求項13】
積層ウェハ群は、気液混合流が当たる側が高くなるように液面に対して傾いて設置されており、気液混合流の下向きの傾斜角度と前記積層ウェハ群の傾斜角度は、同じか又は略同じである、請求項11又は12に記載のウェハ分離装置。
【請求項14】
液体中にある積層ウェハ群より分離した最上部の位置にあるウェハを、前記積層ウェハ群が設置した傾斜角度と同じ傾き方向で液体中を移動して液面に向かわせて、液体中から気体中に取り出す手段を備えた、請求項13に記載のウェハ分離装置。
【請求項15】
積層ウェハ群から分離したウェハが、取り出し位置からずれるのを防止するストッパーを備え、該ストッパーは進退手段によって前記積層ウェハ群に対して進退する、請求項14に記載のウェハ分離装置。
【請求項16】
積層ウェハ群を保持し、気液混合流が積層面に当たる位置に前記積層ウェハ群を移動させるウェハ供給手段を備えている、
請求項14又は15に記載のウェハ分離装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−28455(P2013−28455A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167169(P2011−167169)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(593032916)武井電機工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(593032916)武井電機工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
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