説明

ウェーハの加工方法

【課題】外周にリング状の補強部を残して中央部分が薄く研削されたウェーハをダイシング加工時のハンドリング性を損なうことなく個々のデバイスに分割する。
【解決手段】デバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域10が外周余剰領域に囲繞されて表面が構成されるウェーハ1を個々のデバイスに分割する場合において、デバイス領域10の裏側を研削してその外周側にリング状補強部13を形成し、ウェーハ1の裏面にダイシングテープ4を貼着し表面側からレーザービーム61aを照射してデバイスに分割するとともにリング状補強部13に分解起点を形成し、ダイシングテープ4を拡張して分解起点を起点としてリング状補強部13を分解してデバイス領域10から分離すると共に隣り合うデバイス間の間隔を広げる。ウェーハを個々のデバイスに分割する際にはリング状補強部13が残存しているため、分割加工時のハンドリング性を損なうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームの照射によりウェーハを個々のデバイスに分割する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円盤形状である半導体ウェーハの表面に格子状に配列されたストリートとよばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウェーハをストリートに沿って切削装置で切削することにより、半導体ウェーハが個々の半導体チップ(デバイス)に分割される。
【0003】
分割されるウェーハは、ストリートに沿って切削する前に裏面を研削して所定の厚みに形成される。近年は、電気機器の軽量化、小型化を達成するために、ウェーハの厚さをより薄く、例えば50μm程度にすることが要求されている。
【0004】
このように薄く形成されたウェーハは、紙のように腰がなくなって取り扱いが困難になり、搬送等において破損する恐れがある。そこで、ウェーハのデバイス領域に対応する裏面のみを研削し、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域に対応するウェーハの裏面にリング状の補強部を形成する研削方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、このようにして裏面の外周にリング状の補強部が形成されたウェーハをストリート(分割予定ライン)に沿って分割する方法として、リング状の補強部を除去した後、ウェーハの表面側から切削ブレードで切削する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−173487号公報
【特許文献2】特開2007−19379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、リング状の補強部が除去されたウェーハは、ダイシング時のハンドリングで破損し易いという問題が生じる。したがって、裏面の外周にリング状の補強部が形成されたウェーハを個々のデバイスに分割する際には、リング状の補強部をどのタイミングで取り除くべきかが問題となる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外周にリング状の補強部を残して中央部分が薄く研削されたウェーハを、ダイシング加工時のハンドリング性を損なうことなく個々のデバイスに分割可能なウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを表面に有するウェーハを個々のデバイスに分割するウェーハの加工方法に関するもので、以下の工程により構成される。
(1)ウェーハのデバイス領域に対応する裏面を研削して所定の厚みに研削すると共に外周余剰領域に対応する裏面にリング状の補強部を形成するウェーハ研削工程、
(2)ウェーハの裏面にダイシングテープを貼着すると共にウェーハを収容する開口部を有するダイシングフレームにダイシングテープの外周部を貼着して、ウェーハをダイシングフレームで支持するウェーハ支持工程、
(3)ウェーハのデバイス領域に対応する裏面を吸引保持するデバイス領域保持部と、リング状の補強部を支持するリング状補強部支持部とを有するチャックテーブルにダイシングフレームで支持されたウェーハを保持するウェーハ保持工程、
(4)ウェーハの表面側から分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射してアブレーション加工を施すことによってウェーハを個々のデバイスに分割すると共に、リング状の補強部に分解起点を形成するアブレーション加工工程、
(5)ダイシングテープを拡張することによって、分解起点を起点としてリング状の補強部を分解してデバイス領域から分離すると共に、隣り合うデバイス間の間隔を広げるエキスパンド工程、
(6)ダイシングテープから個々のデバイスをピックアップするピックアップ工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ウェーハを個々のデバイスに分割するアブレーション工程においてリング状補強部に分解起点を形成し、隣り合うデバイス間の間隔を広げるエキスパンド工程においてリング状補強部をデバイス領域から分離させることとしたため、ウェーハを個々のデバイスに分割する際にはリング状補強部が残存している。したがって、ウェーハの分割加工時のハンドリング性を損なうことなく個々のデバイスに分割することができる。また、リング状補強部をデバイス領域から分離する工程がエキスパンド工程で行われ、リング状補強部を分離するための独立した工程が不要であるため、生産性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ウェーハの一例を示す平面図である。
【図2】ウェーハの表面に保護テープを貼着した状態を略示的に示す断面図である。
【図3】ウェーハのデバイス領域の裏面を研削する状態を示す斜視図である。
【図4】ウェーハのデバイス領域の裏面に凹部が形成されその外周側にリング状補強部が形成された状態を略示的に示す断面図である。
【図5】ウェーハの裏面にダイシングテープを貼着した状態を略示的に示す断面図である。
【図6】レーザー加工装置のチャックテーブルにウェーハを保持した状態を略示的に示す断面図である。
【図7】ウェーハにアブレーション加工を施す状態を略示的に示す断面図である。
【図8】アブレーション加工が施されたウェーハを示す平面図である。
【図9】隣り合うデバイス間の間隔が広がった状態を示す断面図である。
【図10】デバイスをピックアップする状態を略示的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すウェーハ1は、例えばシリコンウェーハ、ガリウム砒素、シリコンカーバイド等の半導体ウェーハや、サファイア系の無機材料基板のウェーハであり、その表面1aには、複数のデバイスDが分割予定ラインLによって区画されたデバイス領域10と、デバイス領域10を囲繞しデバイスが形成されていない外周余剰領域11とを有している。すなわち、デバイス領域10は、製品化されるチップが存在する領域であり、外周余剰領域11は、製品化されるチップが存在しない領域である。
【0013】
以下では、ウェーハ1のデバイス領域10の裏側にあたる部分を研削してその周囲に研削部分よりも肉厚のリング状補強部を形成し、その後、デバイス領域10を分割予定ラインLに沿ってレーザー加工により切断して分割し、さらにリング状補強部をデバイス領域から分離し、個々のデバイスをピックアップする方法について説明する。
【0014】
(1)ウェーハ研削工程
最初に、図2に示すように、デバイスを保護するための保護テープ2をウェーハ1の表面1aに貼着する。そして、例えば図3に示す研削装置3を用いて、表面1aに保護テープ2が貼着されたウェーハ1の裏面1bを研削する。
【0015】
この研削装置3は、ウェーハを保持して回転可能なチャックテーブル30と、チャックテーブル30に保持されたウェーハを研削する研削手段31とを備えている。研削手段31は、鉛直方向の軸心を有する回転軸310と、回転軸310の下端に装着された研削ホイール311とを備えており、研削ホイール311の下面には研削砥石312が円環状に複数固着されている。
【0016】
チャックテーブル30においては保護テープ2側が保持され、裏面1b側が露出した状態となる。そして、チャックテーブル30を矢印Aの方向に例えば300RPMの回転速度で回転させるとともに、回転軸310を例えば6000RPMの回転速度で回転させながら研削手段31を降下させ、回転する研削砥石312を裏面1bに接触させる。このとき、研削砥石312は、ウェーハ1の裏面1bのうち、表面1aのデバイス領域10の裏側の部分のみに接触させ、それよりも外周側には接触させないようにする。また、チャックテーブル30の回転中心と研削砥石311の回転中心とは偏心しており、研削砥石311が常にウェーハ1の回転中心に接触するようにする。そうすると、図3及び図4に示すように、研削が行われた部分が所定の厚みに形成されて凹部12が形成され、その外周側、すなわち外周余剰領域11に対応する裏面には、研削部分よりも肉厚のリング状補強部13が形成される。例えば、直径8インチのウェーハの場合、デバイス領域10の厚みは50μm、リング状補強部13の厚みは600μm程度である。
【0017】
(2)ウェーハ支持工程
次に、図5に示すように、ウェーハ1の裏面1bにダイシングテープ4を貼着する。ダイシングテープ4の外周部には、リング状に形成されたダイシングフレーム5が貼着される。ダイシングフレーム5には開口部50が形成されており、ダイシングテープ4が開口部50を塞ぎ、その塞がれた部分にウェーハ1が貼着されることにより、ウェーハ1がダイシングフレーム5によって支持される。
【0018】
(3)ウェーハ保持工程
裏面1bにダイシングテープ4が貼着されダイシングフレーム5に支持されたウェーハ1は、図6に示すように、表面1aから保護テープ2が剥離され、レーザー加工装置6のチャックテーブル60に保持される。このチャックテーブル60は、ウェーハ1のデバイス領域10に対応する裏面を吸引保持するデバイス領域保持部600と、リング状補強部13を支持するリング状補強部支持部601とを有している。デバイス領域保持部600は、図示しない吸引源に連通し、リング状補強部支持部601よりも上方に突出しており、ウェーハ1の裏面側を吸引すると、凹部12にデバイス領域保持部600が収容された状態となり、ウェーハ1が保持される。このとき、ダイシングテープ4は、デバイス領域支持部600と凹部12との間に挟まれた状態で保持される。
【0019】
(4)アブレーション工程
図7に示すように、レーザー加工装置6には、レーザービームを下方に照射する照射ヘッド61を備えており、表面1aが露出した状態でチャックテーブル60にウェーハ1が保持されると、チャックテーブル6と照射ヘッド61とが水平方向に相対移動しながら、表面1a側から図1に示した分割予定ラインLに沿ってレーザービーム61aが照射される。
【0020】
アブレーション工程では、最初にリング状補強部13の分割予定ラインLの上方に照射ヘッド61を位置付けた状態でレーザービーム61aの照射を開始し、チャックテーブル60をX方向に移動させながら、デバイス領域10にも同様にレーザービーム61aを照射し、さらに、デバイス領域10を通過したレーザービーム61aをリング状補強部13に照射する。リング状補強部13及びデバイス領域10におけるレーザービーム61aの厚さ方向の集光位置は、表面1aの近傍とする。このように、レーザービーム61aを表面1a近傍に集光させ、分割予定ラインLの一端から他端にかけて表面1a側に一連のアブレーション領域14を形成する。このような加工を、すべての分割予定ラインLについて行う。
【0021】
こうして、分割予定ラインLに沿ってデバイス領域10及びリング状補強部13の表面近傍にレーザービームを集光すると、デバイス領域10については、アブレーション領域14がすべての分割予定ラインLに沿って表裏を貫通し、図8に示すように、分割予定ラインLに沿ってアブレーション溝14aが縦横に形成され、アブレーション溝14aが形成されることによって個々のデバイスDごとのチップに分割される。
【0022】
一方、図7に示したように、リング状補強部13は、デバイス領域10よりも厚く形成されているため、アブレーション領域14がリング状補強部13を貫通せず、切断されずにハーフカットされた溝となる。ハーフカットされた溝は、図8において太線で示した分解起点14bであり、この分解起点14bは、デバイス領域10に形成されたアブレーション溝14aの延長線上に形成されている。分解起点14bは、表面側に形成され裏面まで貫通しない溝であり、後のエキスパンド工程においてリング状補強部13を分解する際の起点となるものである。アブレーション溝14aと分解起点14bとは集光深さが同じであるため、生産性を低下させることなく一連のアブレーション加工によって形成することができる。
【0023】
(5)エキスパンド工程
図8に示したように、デバイス領域10が個々のチップに分割され、リング状補強部13に分解起点14bが形成されると、その後、ダイシングフレーム5に支持され全体としてウェーハ1の形状を維持した複数のデバイスDを、図7に示したチャックテーブル60から取り外す。そして、図9に示すように、ダイシングテープ4を面方向(図9におけるC方向)に拡張することにより、隣り合うデバイス間の間隔を広げる。また、このとき、分解起点14bを起点としてリング状補強部13が分解されてデバイス領域10から分離される。このように、デバイス間の間隔を広げることとリング状補強部13を分離させることとを同時に行うことができるため、生産性が高い。
【0024】
(6)ピックアップ工程
次に、デバイス間の間隔を広がった状態で、個々のデバイスDのピックアップを行う。例えば、図10に示すように、コレット7を降下させてデバイスDを吸着し、コレット7を上昇させることによりデバイスDをダイシングテープ4から剥離しピックアップし、所定の位置に運ぶ。なお、ダイシングテープ4として紫外線硬化型のテープを使用した場合は、ピックアップの前にダイシングテープ4に紫外線を照射して粘着力を低下させることにより、ピックアップをより円滑に行うことができる。
【0025】
以上のように、ウェーハを個々のデバイスに分割するアブレーション工程においてリング状補強部に分解起点を形成し、隣り合うデバイス間の間隔を広げるエキスパンド工程においてリング状補強部をデバイス領域から分離させるため、ウェーハを個々のデバイスに分割する際にはリング状補強部が残存している。したがって、分割加工時のハンドリング性を損なうことなくウェーハを個々のデバイスに分割することができる。また、リング状補強部の分離は、デバイス間の間隔を広げるエキスパンド工程において行うことができ、リング状補強部の分離のための独立した工程が不要であるため、生産性が高い。
【符号の説明】
【0026】
1:ウェーハ
1a:表面
10:デバイス領域 L:分割予定ライン D:デバイス
11:外周余剰領域
1b:裏面
12:凹部 13:リング状補強部
14:アブレーション領域 14a:アブレーション溝 14b:分解起点
2:保護テープ
3:研削装置
30:チャックテーブル
31:研削手段 310:回転軸 311:研削ホイール 312:研削砥石
4:ダイシングテープ 5:ダイシングフレーム 50:開口部
6:レーザー加工装置
60:チャックテーブル 600:デバイス領域保持部 601:リング状補強部支持部
61:照射ヘッド 61a:レーザービーム
7:コレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域
を囲繞する外周余剰領域とを表面に有するウェーハを個々のデバイスに分割するウェーハの加工方法であって、
ウェーハのデバイス領域に対応する裏面を研削して所定の厚みに研削すると共に外周余
剰領域に対応する裏面にリング状の補強部を形成するウェーハ研削工程と、
該ウェーハの裏面にダイシングテープを貼着すると共にウェーハを収容する開口部を有するダイシングフレームに該ダイシングテープの外周部を貼着して、該ウェーハを該ダイシングフレームで支持するウェーハ支持工程と、
該ウェーハのデバイス領域に対応する裏面を吸引保持するデバイス領域保持部と、該リング状の補強部を支持するリング状補強部支持部とを有するチャックテーブルに該ダイシングフレームで支持されたウェーハを保持するウェーハ保持工程と、
該ウェーハの表面側から分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射してアブレーション加工を施すことによって該ウェーハを個々のデバイスに分割すると共に、該リング状の補強部に分解起点を形成するアブレーション加工工程と、
該ダイシングテープを拡張することによって、該分解起点を起点として該リング状の補強部を分解して該デバイス領域から分離すると共に、隣り合うデバイス間の間隔を広げるエキスパンド工程と、
該ダイシングテープから個々のデバイスをピックアップするピックアップ工程と、
を含むウェーハの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−59985(P2012−59985A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202845(P2010−202845)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】