説明

ウエザストリップ

【課題】曲げ加工に伴う加飾層の剥離を防止し、外観品質の低下を抑制する。
【解決手段】ウエザストリップ4は、曲げ加工が施されることで断面略U字状に形成され、車内側側壁部11、車外側側壁部12及び両側壁部11,12を連結する連結部13を具備し、ドア開口3周縁のフランジ23に保持されるトリム部5と、車外側側壁部12から突出し、ドア2閉時にドア2周縁に圧接されるシール部6と、トリム部5外表面から延出する意匠リップ18とを備える。少なくともトリム部5の車外側側壁部12の連結部13側端部にその車外側端縁部が配置されるように、トリム部5等の外表面に樹脂接着層25を介して加飾層26が設けられる。トリム部5のうち加飾層26の車外側端縁部よりも連結部13から離間する側の位置に、曲げ加工に際しトリム部5外表面に加わる伸張応力が加飾層26の車外側端縁部より集中しやすくなるように応力集中部が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のドア開口周縁に用いられるウエザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の内装材に、織布や、不織布等を貼り付けることで、外観品質の向上を図ることが考えられている。内装品としては、例えば、車両室内の天井板等が挙げられる。
【0003】
また、車両のドア開口周縁にはオープニングトリムウエザストリップと称されるウエザストリップが設けられる。図11に示すように、ウエザストリップ51は、例えば、内部にインサート52を有し、ドア開口周縁のフランジ53に嵌め込まれる断面略U字状のトリム部54と、当該トリム部54から車外側へと突出して設けられた中空状のシール部55とを備えている。そして、ドア閉時には、ドアの周縁部にシール部55が圧接されることによって、ドアとボディとの間がシールされる。尚、ガーニッシュ等の内装品の端部を覆うべく、トリム部54の外表面から車内側へと延びるリップ部58を設けることとしてもよい。
【0004】
ところで近年では、天井板等の内装材以外にも、ウエザストリップ51の意匠面(外観に現れる部位)に、織布や不織布等が貼着されてなる帯状の加飾層56を設けることも考えられている(例えば、特許文献1等参照)。
【0005】
ここで、加飾層56が設けられたウエザストリップ51は、例えば、次のようにして製造される。すなわち、ゴム押出機(図示せず)に対して、未加硫ゴム及び曲げ加工前のインサート52が連続的に供給される。これにより、図12に示すように、前記ゴム押出機のダイスから、前記未加硫ゴムによってインサート52が被覆された状態でウエザストリップ51の中間成形体61が押出成形される。この段階では、中間成形体61のうち、トリム部54に対応するインサート52の埋設された部位が、略平板状に開いた状態とされている。続く加硫工程では、押出成形された中間成形体61が高周波加硫槽(UHF)に案内され、一次加硫が施される。次いで、熱風加硫槽(HAV)に案内され、二次加硫が施される。
【0006】
その後、図13に示すように、中間成形体61に加飾層56が設けられる。より詳しくは、加硫の直後で比較的高温となっている中間成形体61の意匠面に対して、裏面に樹脂接着層57が設けられた織布等を圧着させる。これにより、樹脂接着層57が溶融し、その後固着されることで、加飾層56が中間成形体61に設けられる。尚、リップ部58を設けた場合には、中間成形体61としては、加飾層56をリップ部58に圧着しやすいように、トリム部54を予め略へ字状に曲げ、リップ部58からトリム部54の車外側側壁に対応する部位にかけて略平板状となるようにプレフォーミングをすることとしてもよい。
【0007】
次いで、加飾層56が設けられた中間成形体61は、曲げ加工機(図示せず)に供され、そこで曲げ加工が施されることで、断面略U字状のトリム部54が形成される。その後、所定の寸法に裁断されることにより、ウエザストリップ51が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−131096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のようにトリム部54は曲げ加工を施すことにより最終的に断面略U字状に形成されるが、当該曲げ加工に際して、トリム部54のうち外表面(意匠面)側の部位に伸張応力が加わり、当該部位が伸ばされてしまう。トリム部54の外表面側が伸ばされてしまうと、加飾層56に対して幅方向に沿った伸張応力が加わってしまう。そのため、伸張応力が集中する加飾層56の幅方向端縁部から剥離が生じてしまい、外観品質の低下を招いてしまうことが懸念される。これは、トリム部54のゴムの伸びに対して、加飾層56の樹脂接着層57の伸びが追従しないためである。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、曲げ加工に伴う加飾層の剥離をより確実に防止することができ、ひいては外観品質の低下を抑制することができるウエザストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.曲げ加工が施され、断面略U字状に形成されることで、車内側側壁部、車外側側壁部、及び、両側壁部を連結する連結部を具備し、車両のドア開口周縁のフランジに保持されるトリム部と、
前記車外側側壁部から車外側へと突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁に圧接される中空状のシール部と、
織布、不織布、又は、植毛シートで構成される加飾層とを備え、
該加飾層が接着層を介して、少なくとも前記トリム部の車外側側壁部の連結部側端部に、その車外側端縁部が配置されるように前記トリム部の外表面に設けられるウエザストリップにおいて、
前記トリム部のうち、前記加飾層の車外側端縁部よりも前記連結部から離間する側の位置に、前記曲げ加工に際し前記トリム部外表面に加わる伸張応力が、前記加飾層の車外側端縁部よりも集中しやすくなるように構成された応力集中部を設けたことを特徴とするウエザストリップ。
【0013】
尚、「応力集中部」は、例えば、トリム部において加飾層の車外側端縁部が設けられる部位よりも薄肉に形成された薄肉部や、トリム部の長手方向に沿って延びるスリット、トリム部を構成する材料よりも軟質の材料によって形成された軟質部等を設けることによって実現することができる。
【0014】
上記手段1によれば、トリム部に応力集中部を設けることで、曲げ加工に際しトリム部の外表面に加わる伸張応力が、加飾層の接着部位である車外側端縁部よりも応力集中部に対して集中しやすくなる。従って、トリム部のうち加飾層の車外側端縁部が設けられた部位に加わる、曲げ加工時の伸張応力を相対的に低減することができる。そのため、加飾層の端縁部からの剥離をより確実に防止でき、外観品質の低下をより確実に防止することができる。
【0015】
手段2.曲げ加工が施され、断面略U字状に形成されることで、車内側側壁部、車外側側壁部、及び、両側壁部を連結する連結部を具備し、車両のドア開口周縁のフランジに保持されるトリム部と、
前記車外側側壁部から車外側へと突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁に圧接される中空状のシール部と、
前記トリム部の外表面から延出形成されたリップ部と、
織布、不織布、又は、植毛シートで構成される加飾層とを備え、
該加飾層が接着層を介して、少なくとも前記トリム部の車外側側壁部の連結部側端部に、その車外側端縁部が配置されるように前記トリム部及び前記リップ部の外表面に設けられるウエザストリップにおいて、
前記トリム部のうち、前記加飾層の車外側端縁部よりも前記連結部から離間する側の位置に、前記曲げ加工に際し前記トリム部外表面に加わる伸張応力が、前記加飾層の車外側端縁部よりも集中しやすくなるように構成された応力集中部を設けたことを特徴とするウエザストリップ。
【0016】
上記手段2によれば、基本的には手段1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0017】
手段3.前記応力集中部は、前記トリム部の外表面に凹部が形成されることで構成されることを特徴とする手段1又は2に記載のウエザストリップ。
【0018】
上記手段3によれば、応力集中部は、トリム部の外表面に凹部を形成することで構成される。すなわち、トリム部のうち、凹部の底面部に対応する薄肉部分により応力集中部が構成されることとなる。従って、押出成形等によって比較的簡易に応力集中部を形成することができ、応力集中部の形成に伴う生産性の低下を防止することができる。
【0019】
手段4.前記凹部を埋めるようにして埋設部が設けられるとともに、
前記埋設部は、前記トリム部を形成する材料よりも軟質の材料によって構成されていることを特徴とする手段3に記載のウエザストリップ。
【0020】
上記手段4によれば、凹部を埋めるようにして埋設部が設けられるため、凹部の存在による外観品質の低下という事態を防止することができる。また、埋設部は、トリム部を形成する材料よりも軟質の材料によって構成されるため、応力集中部としての機能が損なわれてしまうことをより確実に防止できる。
【0021】
手段5.前記凹部は、底面部及び当該底面部の幅方向両端縁に連接される一対の内側面部により形成され、
前記加飾層の車外側端縁部は、前記一対の内側面部のうち前記加飾層側の内側面部に取着されていることを特徴とする手段3に記載のウエザストリップ。
【0022】
上記手段5によれば、凹部の中に加飾層の車外側端縁部を入り込ませるという比較的容易な手法によって、凹部のうち外観に現れる部分を小さくすることができる。従って、外観品質の低下をより容易に、かつ、より確実に防止することができる。
【0023】
また、加飾層の車外側端縁部が、凹部の加飾層側の内側面部に取着されているため、曲げ加工に伴う伸張応力が加わったときに、加飾層の車外側端縁部がより剥がれにくくなる。従って、加飾層の剥離をより確実に防止することができ、外観品質の低下をより一層抑制することができる。
【0024】
手段6.前記応力集中部は、前記トリム部の外表面に、前記トリム部の長手方向に沿って延びるスリットが形成されることで構成されることを特徴とする手段1又は2に記載のウエザストリップ。
【0025】
上記手段6のように、スリットを形成することで応力集中部を設けることとしてもよい。この場合にも、上記手段1,3等と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0026】
手段7.前記加飾層は、その裏面に一体形成された樹脂接着層を介してトリム部の外表面に取着されることで設けられ、
前記トリム部のうち前記加飾層の車外側端縁部が取着される部位は、発泡材料により形成されていることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載のウエザストリップ。
【0027】
上記手段7によれば、トリム部のうち、加飾層の車外側端縁部が取着される部位は、発泡材料によって形成される。従って、接着層が発泡材料の気泡部分に入り込むことで、いわゆるアンカー効果による、トリム部に対する樹脂接着層の接着力向上を期待することができる。その結果、トリム部に対して加飾層をより強固に取着することができ、加飾層の剥離をより一層確実に防止することができる。
【0028】
手段8.前記加飾層側において前記応力集中部に隣接する部位に、前記トリム部の本体部から突出する突部を設けたことを特徴とする手段1乃至7のいずれかに記載のウエザストリップ。
【0029】
上記手段8によれば、応力集中部に隣接する部位のうちの加飾層側に、トリム部の本体部から突出する突部が設けられるため、トリム部のうち凹部に隣接する部位をトリム部の本体部と比較して厚肉に形成することができる。このため、曲げ加工に伴う伸張応力を応力集中部に対してより集中させることができ、ひいては加飾層の端縁部に加わる伸張応力を一層低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】自動車を示す斜視図である。
【図2】一実施形態であるウエザストリップを示す断面図である。
【図3】加飾層や凹部等の構成を説明するための部分拡大断面図である。
【図4】ウエザストリップの製造ラインの一部を示す模式図である。
【図5】他の実施形態における応力集中部の一例を示す部分拡大断面図である。
【図6】他の実施形態におけるトリム部の部分拡大断面図である。
【図7】他の実施形態におけるトリム部の部分拡大断面図である。
【図8】(a),(b)は、他の実施形態におけるトリム部の部分拡大断面図である。
【図9】他の実施形態における加飾層端縁部の接着位置を示す部分拡大断面図である。
【図10】他の実施形態におけるウエザストリップの構成を示す断面図である。
【図11】従来技術に係るウエザストリップの断面図である。
【図12】従来技術に係るウエザストリップの製造方法を説明するための中間成形体の断面図である。
【図13】従来技術に係るウエザストリップの製造方法を説明するための中間成形体等の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両としての自動車1の側方にはドア2が開閉可能に設けられ、ドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁にはウエザストリップ4が装着されている。本実施形態のウエザストリップ4は、主として押出成形法によって成形され、全体として環状をなす。
【0032】
図2に示すように、ウエザストリップ4はトリム部5及びシール部6を備えている。トリム部5は、車内側側壁部11、車外側側壁部12及び両側壁部11,12を連結する連結部13を備えており、全体として断面略U字状をなす。トリム部5の大部分は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合)ソリッドゴムによって構成されており、その内部には金属製のインサート14が埋設されている。
【0033】
車外側側壁部12の内面(車内側面)にはトリム部5の内側(車内側)に向かって延びる複数の保持リップ部15が一体形成され、車内側側壁部11の内面(車外側面)にはトリム部5の内側(車外側)に向かって延びる保持リップ部16が一体形成されている。また、連結部13には図示しないガーニッシュ等の内装品の端部を覆う、リップ部としての意匠リップ18が車内側に向けて延出形成されている。尚、トリム部5の内部にインサート14が埋設されていなくてもよい。また、トリム部5の被覆材は、所定の剛性を備えたEPDMスポンジゴムであってもよい。
【0034】
加えて、ドア開口3周縁には、前記ボディのインナパネル21及びアウタパネル22が接合されることによりフランジ23が形成されており、このフランジ23にトリム部5が嵌め込まれることにより、ウエザストリップ4がドア開口3周縁に保持される。尚、保持リップ部15,16を省略し、両面接着テープによってウエザストリップ4をフランジに貼着することとしてもよい。
【0035】
一方、シール部6は、車外側側壁部12の車外側面から車外側に向けて突出しており、EPDMスポンジゴムによって中空状に形成されている。そして、ドア2閉時には、シール部6がドア2の周縁に圧接されることで、ドア2と自動車1のボディとの間がシールされる。
【0036】
ウエザストリップ4の取付状態では、意匠リップ18の略先端部から基端部、さらにはトリム部5の連結部13、車外側側壁部12におけるシール部6との連接部に至る範囲の外表面は、外観に現れる意匠面となる。この意匠面の大部分(より詳しくは、意匠面のうち、車外側側壁部12におけるシール部6との連接部の近傍を除く部位)には、シート状(フィルム状を含む)の樹脂接着層25を介在させて、織布で構成される加飾層26が溶着されている。尚、意匠面は、意匠リップ18先端の折返し部分を含んでいる。
【0037】
本実施形態における樹脂接着層25は、オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリエチレン(PE)を原材料としている。また、この樹脂接着層25には白色の着色が施されている。もちろん、樹脂接着層25に着色される色種は白色に限らず、ガーニッシュ等の内装品に合わせたどのような色であってもよい(例えば、赤、青、緑等)。尚、室内の内装品等が黒色系である場合、室内の内装品等と色・艶を合わせるために黒色顔料を加えて調整する場合もある。また、着色を省略してもよい。
【0038】
さらに、本実施形態における加飾層26は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル繊維製の織布で構成されている。尚、当該織布は、例えばPET等のポリエステル以外にもPE、ポリプロピレン(PP)等の他の熱可塑性樹脂材料等により構成されていてもよい。また、加飾層26を構成するものは織布に限定されるものではなく、例えば、不織布や植毛シートにより構成することとしてもよい
加えて、本実施形態では、トリム部5のうち、前記加飾層26の車外側(シール部6側)端縁部と、シール部6及び車外側側壁部12の連接部との間には、凹部31が設けられている。尚、図3に示すように、前記加飾層26の車外側端縁部は、トリム部5のうち前記凹部31の直前の部分に接着されている。加えて、前記凹部31は、底面部32及び当該底面部32の幅方向両端縁に連接される一対の内側面部33,34により形成されている。本実施形態では、トリム部5のうち、前記底面部32に対応する部位であって、加飾層26の車外側端縁部が取着された部位よりも薄肉の薄肉部35が、応力集中部に相当する。
【0039】
さらに、前記凹部31を埋めるようにして、低剛性の軟質材料(例えば、EPDMスポンジゴム)からなる埋設部36が設けられている。また、埋設部36の外表面と、トリム部5のうち凹部31を除く部位の外表面とは面一となるように構成されており、ひいては前記凹部31は外部から視認できない状態となっている。
【0040】
次に上記ウエザストリップ4の製造方法について説明する。図4はウエザストリップ4の製造ラインの一部を示す模式図であり、同図中においてウエザストリップ4は左側から右方向に進みながら製造される。
【0041】
まず、押出成形工程においては、ゴム押出機71に対し、EPDM未加硫ゴムとともにインサート14が連続的に供給される。そして、EPDM未加硫ゴムによってインサート14が被覆された状態で、ゴム押出機71のダイスからウエザストリップ4の本体部となる中間成形体72が押出成形される。尚、押出成形に際し、中間成形体72には凹部31及び埋設部36にあたる部位が同時に形成される。また、この段階では、トリム部5に対応する部位が開いた状態で略平板状となっている。尚、略平板状に代えて、略へ字状に予めプレフォーミングがされていてもよい。
【0042】
次の加硫工程では、押出成形された中間成形体72が高周波加硫槽(UHF)73に案内され、一次加硫が施される。その後、熱風加硫槽(HAV)74に案内され、二次加硫が施されることにより、中間成形体72の加硫が完了する。
【0043】
次に、加飾層成形工程において、中間成形体72に加飾層26を成形する。より詳しくは、ポリエステル繊維製の織布に予めPEシートが熱溶着により一体的に裏打ちされた織布75を繰り出し、加硫の直後で比較的高温となっている中間成形体72の前記意匠面に対応する部位に圧着させる。これにより、PEシートが溶融し、織布75が中間成形体72に熱溶着される。
【0044】
加飾層成形工程を経た中間成形体72は曲げ加工機77により曲げ加工され、断面略U字状のトリム部5が形成される。その後、カッター78で所定の寸法に裁断され、ウエザストリップ4が得られる。
【0045】
以上詳述したように、本実施形態によれば、応力集中部としての薄肉部35を設けることで、曲げ加工に際しトリム部5の外表面に加わる伸張応力が、織布75による加飾層26の車外側端縁部よりも薄肉部35に対して集中しやすくなる。従って、トリム部5のうち加飾層26の車外側端縁部が設けられた部位に加わる、曲げ加工時の伸張応力を低減することができる。そのため、加飾層26の端縁部からの剥離をより確実に防止でき、外観品質の低下をより確実に防止することができる。
【0046】
また、応力集中部は、トリム部5の外表面に凹部31を形成することで構成される。従って、押出成形によって比較的簡易に応力集中部を形成することができ、応力集中部の形成に伴う生産性の低下を防止することができる。
【0047】
さらに、凹部31を埋めるようにして埋設部36が設けられているため、凹部31の存在による外観品質の低下という事態を防止することができる。なお、埋設部36は、トリム部5を形成する材料よりも軟質の材料によって構成されているため、応力集中部としての機能が損なわれてしまうことはない。
【0048】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0049】
(a)上記実施形態では、応力集中部として薄肉部35を例示しているが、応力集中部は、曲げ加工に伴う伸張応力を、トリム部5のうち加飾層26の車外側端縁部が取着される部位以外に集中させやすくするものであればよい。従って、図5に示すように、トリム部5の外表面に、トリム部5の長手方向に沿って延びる複数のスリット38を設けることで、応力集中部を構成することとしてもよい。また、軟質のゴム材料等からなる軟質部を設けることで、応力集中部を構成することとしてもよいし、トリム部5のうち、加飾層26の車外側端縁部が設けられた部位の直後からシール部6及び車外側側壁部12の連接部にかけて薄肉部を設けることで、応力集中部を構成することとしてもよい。
【0050】
(b)上記実施形態では、凹部31を埋めるようにして埋設部36が設けられているが、図6に示すように、埋設部36を省略して構成することとしてもよい。
【0051】
(c)上記実施形態では、EPDMソリッドゴムからなるトリム部5に対して、加飾層26の車外側端縁部が取着されているが、図7に示すように、トリム部5のうち前記加飾層26(樹脂接着層25)の端縁部が取着される部位に、発泡材料(例えば、EPDMスポンジゴム)により形成された発泡部40を設けることとしてもよい。この場合には、樹脂接着層25が発泡部40の気泡部分に入り込むこととなるため、アンカー効果によりトリム部5に対する樹脂接着層25の接着力をより高めることができる。その結果、トリム部5に対して加飾層26をより強固に接着することができ、加飾層26の剥離をより一層確実に防止することができる。尚、同図に示すように、発泡部40を、埋設部36と一体的に設けることとしてもよいし、埋設部36とは別体で設けることとしてもよい。
【0052】
(d)上記実施形態では特に言及していないが、図8(a),(b)に示すように、凹部31の隣接部分のうち加飾層26側の部位に、トリム部5の本体部から突出する突部42,44を設けることとしてもよい。この場合には、トリム部5のうち凹部31に隣接する部位を、トリム部5の本体部と比較して厚肉に形成することができる。このため、凹部31に対応する部位と、突部42,44に対応する部位との強度差(剛性の差)をより大きくすることができる。従って、曲げ加工に伴う伸張応力を応力集中部(薄肉部35)に対してより集中させることができ、ひいては加飾層26の端縁部に加わる伸張応力を一層低減させることができる。尚、突部としては、同図(a)に示すように、凸形状をなすように構成することとしてもよいし、同図(b)に示すように、凹部31側へと徐々に突出するように構成することとしてもよい。また、加飾層26の車外側端縁部を、同図(a)に示すように、突部42に至ることなく、トリム部5の外表面に取着することとしてもよいし、同図(b)に示すように、突部44の表面に対して取着することとしてもよい。
【0053】
(e)上記実施形態では、加飾層26の車外側端縁部は、トリム部5のうち凹部31の直前部分に対して取着されているが、図9に示すように、加飾層26の車外側端縁部を、凹部31に入り込ませた状態で、前記内側面部34に対して取着することとしてもよい。この場合には、凹部31のうち外観に現れる部位を比較的容易に小さくすることができ、外観品質の低下をより容易に、かつ、より確実に防止することができる。また、加飾層26の車外側端縁部に伸張応力が加わったときに、加飾層26の車外側端縁部がより剥がれにくくなる。その結果、加飾層26の剥離をより確実に防止することができ、外観品質の低下の更なる抑制を図ることができる。
【0054】
(f)上記実施形態におけるウエザストリップ4は、リップ部としての意匠リップ18を備えているが、図10に示すように、ウエザストリップ81が、意匠リップ18を省略して構成されることとしてもよい。この場合において、トリム部5の車外側側壁部12の連結部13側端部から車内側側壁部11にかけての外表面が外観に現れる。そのため、ウエザストリップ81は、当該意匠面に対して加飾層26が設けられて構成されている。
【0055】
(g)上記実施形態では、(サイドフロント)ドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁に設けられるウエザストリップ4について具体化しているが、リヤドア、バックドア、ラッゲージドア(トランクリッド)、ルーフドア(スライディングルーフパネル)等の他のドアに対向するドアの開口周縁に設けられるウエザストリップについて適用することも可能である。
【0056】
(h)上記実施形態では、ウエザストリップ4を構成する素材としてEPDMを例示しているが、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)等の他のゴム材料やTPE等の樹脂材料を用いてもよい。
【0057】
(i)上記実施形態では、樹脂接着層25を構成する素材として、PEを例示しているが、PP等の他の樹脂材料を用いることとしてもよい。また、樹脂接着層25を織布75等に対して別体で形成し、貼り合せ時に織布75等とトリム部5の外表面との間に介在させる構成としてもよい。さらに、常温硬化型のウレタン樹脂の接着剤をトリム部5の外表面に塗布し、この接着剤の層を接着層として利用してもよい。但し、トリム部5の表面へ加飾層26を供給するときに、織布75の裏面に樹脂接着層25が一体的に形成されていないと、織布75等が延ばされてしまうおそれがある。従って、上記実施形態のように、織布75の裏面に樹脂接着層25を一体的に形成することが加飾層26の安定供給を図るという点で好ましい。尚、意匠リップ18の可撓性を十分に確保するためには、樹脂接着層25の厚みを50μm〜800μmとすることが好ましい。
【0058】
(j)上記実施形態では、ウエザストリップ4がドア開口3周縁の全周にわたって取付けられているが、必ずしも全周でなくてもよく、例えば部分的に取付けられるウエザストリップであってもよい。また、部分的に型成形部を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…車両としての自動車、2…ドア、3…ドア開口、4,81…ウエザストリップ、5…トリム部、6…シール部、18…意匠リップ、25…樹脂接着層、26…加飾層、31…凹部、32…底面部、33,34…内側面部、35…応力集中部としての薄肉部、36…埋設部、38…スリット、42,44…突部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ加工が施され、断面略U字状に形成されることで、車内側側壁部、車外側側壁部、及び、両側壁部を連結する連結部を具備し、車両のドア開口周縁のフランジに保持されるトリム部と、
前記車外側側壁部から車外側へと突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁に圧接される中空状のシール部と、
織布、不織布、又は、植毛シートで構成される加飾層とを備え、
該加飾層が接着層を介して、少なくとも前記トリム部の車外側側壁部の連結部側端部に、その車外側端縁部が配置されるように前記トリム部の外表面に設けられるウエザストリップにおいて、
前記トリム部のうち、前記加飾層の車外側端縁部よりも前記連結部から離間する側の位置に、前記曲げ加工に際し前記トリム部外表面に加わる伸張応力が、前記加飾層の車外側端縁部よりも集中しやすくなるように構成された応力集中部を設けたことを特徴とするウエザストリップ。
【請求項2】
曲げ加工が施され、断面略U字状に形成されることで、車内側側壁部、車外側側壁部、及び、両側壁部を連結する連結部を具備し、車両のドア開口周縁のフランジに保持されるトリム部と、
前記車外側側壁部から車外側へと突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁に圧接される中空状のシール部と、
前記トリム部の外表面から延出形成されたリップ部と、
織布、不織布、又は、植毛シートで構成される加飾層とを備え、
該加飾層が接着層を介して、少なくとも前記トリム部の車外側側壁部の連結部側端部に、その車外側端縁部が配置されるように前記トリム部及び前記リップ部の外表面に設けられるウエザストリップにおいて、
前記トリム部のうち、前記加飾層の車外側端縁部よりも前記連結部から離間する側の位置に、前記曲げ加工に際し前記トリム部外表面に加わる伸張応力が、前記加飾層の車外側端縁部よりも集中しやすくなるように構成された応力集中部を設けたことを特徴とするウエザストリップ。
【請求項3】
前記応力集中部は、前記トリム部の外表面に凹部が形成されることで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエザストリップ。
【請求項4】
前記凹部を埋めるようにして埋設部が設けられるとともに、
前記埋設部は、前記トリム部を形成する材料よりも軟質の材料によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載のウエザストリップ。
【請求項5】
前記凹部は、底面部及び当該底面部の幅方向両端縁に連接される一対の内側面部により形成され、
前記加飾層の車外側端縁部は、前記一対の内側面部のうち前記加飾層側の内側面部に取着されていることを特徴とする請求項3に記載のウエザストリップ。
【請求項6】
前記応力集中部は、前記トリム部の外表面に、前記トリム部の長手方向に沿って延びるスリットが形成されることで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエザストリップ。
【請求項7】
前記加飾層は、その裏面に一体形成された樹脂接着層を介してトリム部の外表面に取着されることで設けられ、
前記トリム部のうち前記加飾層の車外側端縁部が取着される部位は、発泡材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のウエザストリップ。
【請求項8】
前記加飾層側において前記応力集中部に隣接する部位に、前記トリム部の本体部から突出する突部を設けたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のウエザストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−195172(P2010−195172A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41722(P2009−41722)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】