説明

ウエットマスターバッチの製造方法、ならびに、この方法によって形成されたウエットマスターバッチ、ゴム組成物、および、タイヤ

【課題】充填材を含有するスラリー溶液とゴム溶液とを混合・凝固させてウエットマスターバッチを製造するに際し、これらの溶液から生成された凝固物の大きさを均一にし、均一な組成のマスターバッチを提供するとともに、凝固物が凝固槽内で大きな固まりとなって、攪拌効率が低下したり凝固物の排出が困難になったりする問題を防止する。
【解決手段】凝固槽2に設けられた攪拌羽根3によりスラリー溶液とゴム溶液とを攪拌しながら凝固物を生成し、この凝固物を、凝固槽に設けられた破砕羽根7によって破砕する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填材を含有するスラリー溶液とゴム溶液とを混合・凝固させてウエットマスターバッチを製造する方法、この方法によって形成されたマスターバッチ、ゴム組成物、ならびに、タイヤに関し、特に、マスターバッチの均一性を向上させることができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、充填材を含有するゴム組成物を形成する際の加工性や分散性を向上させるため、ウエットマスターバッチを用いる方法が知られている。このウエットマスターバッチは、カーボンブラックやシリカ等の充填材を含有するスラリー溶液とゴム溶液とを混合して凝固させ、これらの凝固物を含有する凝固液から固形分だけを分離し、分離された固形分を脱水し乾燥させて生成される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、前記ウエットマスターバッチの生成工程において、スラリー溶液とゴム溶液とを混合して凝固させる過程において、これらを均一に攪拌することは、生成した凝固物内の組成を均一にするためには重要である。
【特許文献1】特公昭51−43851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記に例示したマスターバッチの製造方法は、特に、ゴム溶液に天然ゴムラテックスを用いる場合など、使用する原料やプロセス条件によっては、酸や塩を加えなくても、これらを攪拌しただけで凝固物が生成されることがあり、この場合、スラリー溶液とゴム溶液とを均一に混合する前に凝固が開始してしまい、その結果組成が不均一になり、物性にバラツキが生じる原因となってしまう。また、酸や塩を加える場合でも、部分的に急速に凝固してしまう場合があり、この場合、凝固物が凝固槽内で大きな固まりとなってしまい、攪拌効率の低下や凝固物の排出困難という問題を生じることになる。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、充填材を含有するスラリー溶液とゴム溶液とを混合・凝固させてウエットマスターバッチを製造するに際し、これらの溶液から生成された凝固物の大きさを均一にし、均一な組成のマスターバッチを提供するとともに、凝固物が凝固槽内で大きな固まりとなって、攪拌効率が低下したり凝固物の排出が困難になったりする問題を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>は、充填材を含有するスラリー溶液とゴム溶液とを連続的に混合・凝固させてウエットマスターバッチを製造する方法において、
凝固槽に設けられた攪拌羽根により前記スラリー溶液と前記ゴム溶液とを攪拌しながら凝固物を生成し、この凝固物を、前記凝固槽に設けられた破砕羽根によって破砕することを特徴とするウエットマスターバッチの製造方法。
【0007】
<2>は、<1>において、前記攪拌羽根の回転軸と、前記破砕羽根の回転軸とが直交する方向に配置された凝固槽を用いるウエットマスターバッチの製造方法である。
【0008】
<3>は、<1>〜<2>のいずれかにおいて、前記破砕羽根の回転数を変化させることにより、破砕後の凝固物の大きさを制御するウエットマスターバッチの製造方法である。
【0009】
<4>は、<1>〜<3>のいずれかにおいて、前記スラリー溶液中の充填材として、体積平均粒径が25μm以下であり90体積%粒径が30μm以下である粒度分布を有し、かつ、スラリー溶液から回収した充填材の24M4DBP吸油量がスラリー溶液中に分散される前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持する特性を有するものを用いるウエットマスターバッチの製造方法である。
【0010】
<5>は、<1>〜<4>のいずれかにおいて、前記ゴム溶液として、天然ゴムラテックスもしくは合成ゴムラテックスを用いるウエットマスターバッチの製造方法である。
【0011】
<6>は、<1>〜<5>のいずれか前記スラリー溶液として、水分散溶液を用いるウエットマスターバッチの製造方法である。
【0012】
<7>は、<1>〜<6>のいずれかにおいて、前記凝固槽より排出された凝固液から固形分を抽出し、抽出した固形分を脱水したあと乾燥させ、この固形分を乾燥させるに際し、固形分にせん断力を加えながら乾燥を行うウエットマスターバッチの製造方法である。
【0013】
<8>は、<7>において、前記固形分を乾燥させるに際し、バレルとその中で回転する複数のスクリューとよりなる多軸混練押出機を用い、昇温されたバレル中に供給された固形分を、回転するスクリューでせん断力を加えながら押し出すことにより、固形分中の水分を加熱蒸発させて乾燥させるウエットマスターバッチの製造方法である。
【0014】
<9>は、<1>〜<8>のいずれかの製造方法によって形成されたウエットマスターバッチである。
【0015】
<10>は、<9>のウエットマスターバッチを用いて形成されたゴム組成物である。
【0016】
<11>は、<10>のゴム組成物を用いて形成されたタイヤである。
器である。
【発明の効果】
【0017】
<1>によれば、凝固槽に設けられた攪拌羽根により前記スラリー溶液と前記ゴム溶液とを攪拌しながら凝固物を生成し、この凝固物を、前記凝固槽に設けられた破砕羽根によって破砕するので、生成された凝固物の大きさを均一にし、均一な組成のマスターバッチを提供することができ、また、凝固物が凝固槽内で大きな固まりとなって、攪拌効率が低下したり凝固物の排出が困難になったりする問題を防止する。
【0018】
<2>によれば、攪拌羽根の回転軸と、前記破砕羽根の回転軸とが直交する方向に配置された凝固槽を用いるので、凝固物をまんべんなく破砕することができる。
【0019】
<3>によれば、破砕羽根の回転数を変化させ、凝固物が破砕羽根に破砕される頻度を変化させることにより、破砕後の凝固物の大きさを制御するので、このことによって容易に、凝固物の大きさを、後工程におけるハンドリングに適したものにすることができる。
【0020】
<4>によれば、前記スラリー溶液中の充填材として、体積平均粒径が25μm以下であり90体積%粒径が30μm以下である粒度分布を有し、かつ、スラリー溶液から回収した充填材の24M4DBP吸油量がスラリー溶液中に分散される前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持する特性を有するものを用いるので、充填材の粒度を好ましい範囲に収めることができ、体積平均粒径が25μmを超え、もしくは、90体積%粒径が30μmを超えると、ゴム中の充填材の分散が悪化し、ウエットマスターバッチの補強性、耐摩耗性の悪化を招き、また、スラリー溶液への分散前後の充填材における24M4DBP吸油量の差が上記の規定より大きいことは、充填材の粒度を小さくするためにスラリーに過度のせん断力をかけたことを意味し、この場合、充填材のストラクチャーが破壊され、充填材の補強性を低下させてしまう。
【0021】
<5>によれば、ゴム溶液として、天然ゴムラテックスもしくは合成ゴムラテックスを用いるので、有機溶剤の処理や回収工程を不要なものにすることができる。
することができる。
【0022】
<6>によれば、スラリー溶液として、水分散溶液を用いるので、この場合にも、有機溶剤の処理や回収工程を不要なものにすることができる。
【0023】
<7>によれば、凝固槽より排出された凝固液から固形分を抽出し、抽出した固形分を脱水したあと乾燥させ、この固形分を乾燥させるに際し、固形分にせん断力を加えながら乾燥を行うので、加工性、補強性、および低燃費性能に優れたゴムを得ることができる。
【0024】
<8>によれば、前記固形分を乾燥させるに際し、バレルとその中で回転する複数のスクリューとよりなる多軸混練押出機を用い、昇温されたバレル中に供給された固形分を、回転するスクリューでせん断力を加えながら押し出すことにより、固形分中の水分を加熱蒸発させて乾燥させるので、特に優れた加工性、補強性、および、低燃費性能を得ることができる。
【0025】
<9>のウエットマスターバッチは、<1>〜<8>のいずれかの製造方法によって形成されるものなので、<1>〜<8>について説明したとおりの効果をもたらすことができる。
【0026】
<10>のゴム組成物は、<9>のウエットマスターバッチを用いて形成されたものであり、したがって、同様に、<9>について説明したとおりの効果をもたらすことができる。
【0027】
<11>のタイヤは、<10>のゴム組成物を用いて形成されたものであり、前述のとおりの効果をもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る実施形態について、図を参照して説明する。図1は、ウエットマスターバッチの製造方法の工程を例示する工程図であり、全体工程20は、カーボンやシリカ等の充填材を分散させたスラリー溶液を調合して準備する充填材スラリー溶液調合工程21と、天然ゴムや合成ゴムのラテックスや有機溶媒溶液を所望の濃度に調製するゴム溶液調合工程22と、これらの工程で調合されたスラリー溶液とゴム溶液とを連続的に混合・凝固させ凝固物を含有する凝固液を形成する混合・凝固工程23と、形成された凝固液から固形分だけを分離して取り出す固液分離工程24と、分離された固形分からこれに付着されもしくは含有された凝固剤等の不純物を洗浄して除去する洗浄工程25と、その後固形分を脱水する脱水工程26と、これを乾燥する乾燥工程27と、乾燥された固形分を粒状、ベール状等の所望の形状に成型して製品としてのウエットマスターバッチを形成する成型工程28とよりなる。
【0029】
ここで、図1に示した工程は、代表例を示したものであり、例えば、これに代えて、固液分離工程以降の工程の処理のうち、複数の工程の処理を同時に進行させてこれらを一つの工程とすることもできる。また、上記の工程20において、複数の工程を連続処理工程とするのが生産効率の点、安定的な品質の確保の点において好ましい。
【0030】
図2は、混合・凝固工程23において、スラリー溶液とゴム溶液とを混合・凝固させるウエットマスターバッチ反応器を示す概念図であり、反応器1は、スラリー溶液、ゴム溶液、および、これらから生成された前記凝固液を収容する凝固槽2と、凝固槽2の中に回転軸13を上下に向けて配置された攪拌羽根3でこれらの溶液を攪拌する攪拌機4と、凝固槽2の側壁に取り付けられ、回転軸14を水平に向けて配置された破砕羽根7を有し、生成された、凝固液中の凝固物を破砕羽根7で破砕する破砕機5を具えて構成される。
【0031】
攪拌羽根3は、減速機17を介してモータ15によって駆動され、また、破砕羽根7は、モータ6によって駆動される。
【0032】
また、凝固槽2の上部には、スラリー溶液やゴム溶液などの原料を供給するための開口部12が設けられ、シリンダ16によって駆動される開閉弁10を有する排水口9が配設される。また、凝固槽2の胴部には、冷却や加温のため、その外周を覆うジャケット11が設けられる。
【0033】
図2に示した反応器1においては、攪拌羽根3の回転軸13と、破砕羽根7の回転軸14とを直交させて配置させたが、図3に、変形例を模式図で示すように、モータ32によって駆動される攪拌羽根35と、モータ36によって駆動される破砕羽根37との回転軸同士を平行に配置することもできる。
【0034】
以上のように構成された反応器1を用いてスラリー溶液とゴム溶液とを混合・凝固させるには、凝固液を収容する凝固槽2の中にスラリー溶液とゴム溶液とを供給し、攪拌羽根3および破砕羽根7を回転させながら、同時に、水、凝固剤、種々の添加物を含有する溶液等を供給し、しかるべき攪拌の後に、シリンダ16で開閉弁10を開けて凝固液を排出すればよい。
【0035】
以上のような製造方法によるスラリー溶液とゴム溶液との混合・凝固においては、凝固物を、破砕羽根7によって破砕するので、生成された凝固物の大きさを均一にして組成の均一なマスターバッチを得ることができ、また、凝固物が凝固槽内で大きな固まりとなって、攪拌効率が低下したり凝固物の排出が困難になったりする問題を防止することができる。
【0036】
以上、混合・凝固工程23について詳述したが、他の工程についての説明を以下に補足する。充填材スラリー調合工程21において、スラリー溶液を調合する方法としては公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、コロイドミルに所定量の充填剤と水を入れ、高速で一定時間攪拌することで、当該スラリー溶液を調製することができる。
【0037】
ここで、前記スラリー溶液としては、カーボンブラック、シリカ、もしくは、一般式(I)で表される充填材の少なくとも1種を予め水中に分散させたものを用いるのがよい。

〔式中、M1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である〕
【0038】
前記式(I)で表される充填材としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al・HO)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)]、炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO 、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(Ca・SiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。また、前記一般式(I)中のMがアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。
【0039】
なお、上記カーボンブラック、シリカ、前記一般式(I)で表される充填材の少なくとも一種を含む充填材のスラリー濃度は、スラリー溶液に対して0.5重量%〜60重量%が好ましく、特に好ましい範囲は1重量%〜30重量%である。
【0040】
また、前記充填材は、ウエットゴムマスターバッチのゴム成分100重量部に対して、5〜100重量部添加されるのが好ましく、特には10〜80重量部の範囲であることが好ましい。充填材の量が5重量部より少ないと充分な補強性が得られない場合があり、また100重量部を超えると加工性が悪化する場合があるからである。さらに、上記カーボンブラック、シリカ、及び前記一般式(I)で表される充填材は単独でまたは二種以上のものを混合して用いることもできる。
【0041】
前記スラリー溶液中の充填材として、体積平均粒径(mv)が25μm以下であり90体積%粒径(D90)が30μm以下である粒度分布を有しすることが好ましく、さらに好ましくは、体積平均粒子径(mv)が20μm以下、かつ90体積%粒径(D90)が25μm以下とするのがよい。
【0042】
粒度が大きすぎるとゴム中の充填材の分散が悪化し、補強性、耐摩耗性が悪化することがあるからである。
【0043】
また、スラリー溶液から回収した充填材の24M4DBP吸油量がスラリー溶液中に分散される前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持する特性を有するものを用いるのが好ましく、さらに好ましくは、96%以上を保持する特性を有するものを用いるのがよい。ここで、24M4DBP吸油量は、ISO6894に準拠して測定される値である。
【0044】
スラリー溶液への充填材の、分散前後の24M4DBP吸油量の差が大きいことは、充填材の粒度を小さいことを意味し、24M4DBP吸油量の変化を上記のように規定するのは、粒度を小さくするためにスラリーに過度のせん断力をかけると、充填材のストラクチャーが破壊され、補強性の低下を引き起こしてしまうからである。
【0045】
ゴム溶液調合工程22において調合されるゴム溶液として、天然ゴムラテックスもしくは合成ゴムラテックスを用いるのが好ましい。
【0046】
脱水した固形分を乾燥させる乾燥工程27においては、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー、バンドドライヤー等の通常の乾燥機を用いることができるが、さらに充填材の分散性を向上させるためには、機械的せん断力をかけながら乾燥を行なうことが好ましい。これにより、加工性、補強性、低燃費性に優れたゴムを得ることができる。この乾燥は、一般的な混練機を用いて行うことができるが、工業的生産性の観点から、連続混練機を用いることが好ましい。さらには、同方向回転、あるいは異方向回転の2軸混練押出機を用いることがより好ましい。
【0047】
また、上記のせん断力をかけながら乾燥を行う工程においては、乾燥工程前のウエットマスターバッチ中の水分は10%以上であることが好ましい。この水分が10%未満であると、乾燥工程での充填材分散の改良幅が小さくなってしまうことがある。
【実施例】
【0048】
以下の、実施例1、実施例2、および、比較例の3種類の条件で凝固物を生成し、この凝固物からそれらの凝固物の固まりの平均の大きさを調査した。また、凝固物に含有される充填材の部数の平均値および標準偏差も調査した。
【0049】
[実施例1]
図2に示した反応器1を用いて、凝固槽2(有効容量50L)にカーボンブラックN234を5%濃度で分散させたスラリー溶液34Lと、天然ゴムラテックスを20%濃度で含有するゴム溶液17Lとを加えたあと、攪拌羽根3を100rpm、破砕羽根7を3000rpmで回転させて凝固を行った。
【0050】
[実施例2]
図3に示した反応器を用いて、ステンレスタンクの凝固槽(有効容量50L)の上部より、プロペラ型の軸流型攪拌羽根35を凝固槽の底部より5cmの高さになるように設置するとともに、凝固槽上部より破砕羽根37を設置し、凝固槽に、カーボンブラックN234を5%濃度で分散させたスラリー溶液34Lと、天然ゴムラテックスを20%濃度で含有するゴム溶液17Lとを加えたあと、プロペラ型の軸流型攪拌羽根を300rpm、破砕羽根7を3000rpmで回転させて凝固を行った。
【0051】
[比較例]
実施例2と同様に、図2に示した反応器を用いて、ステンレスタンクの凝固槽(有効容量50L)の上部より、プロペラ型の軸流型攪拌羽根35を凝固槽の底部より5cmの高さになるように設置し、カーボンブラックN234を5%濃度で分散させたスラリー溶液34Lと、天然ゴムラテックスを20%濃度で含有するゴム溶液17Lとを加えたあと、プロペラ型の軸流型攪拌羽根を300rpmで回転させて凝固を行った。
【0052】
これらに対する調査結果を表1にまとめた。表1において、充填材部数の標準偏差は、n=10について求めたものである。
【0053】
【表1】

【0054】
表1から明らかなように、実施例のものは、比較例のものに対比して、充填材の混合比の平均値は変わらないものの、混合比のバラツキの点で、極めて優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、充填材を含有するスラリー溶液とゴム溶液とを連続的に混合・凝固させるウエットマスターバッチの製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ウエットマスターバッチの製造方法の工程を例示する工程図である。
【図2】ウエットマスターバッチ反応器を示す概念図である。
【図3】ウエットマスターバッチ反応器の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 反応器
2 凝固槽
3 攪拌羽根
4 攪拌機
5 破砕機
6 モータ
7 破砕羽根
9 排水口
10 開閉弁
11 ジャケット
12 開口部
13、14 回転軸
16 シリンダ
20 全体工程
21 充填材スラリー溶液調合工程
22 ゴム溶液調合工程
23 混合・凝固工程
24 固液分離工程
25 洗浄工程
26 脱水工程
27 乾燥工程
28 成型工程
32、33 モータ
35 攪拌羽根
37 破砕羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材を含有するスラリー溶液とゴム溶液とを連続的に混合・凝固させてウエットマスターバッチを製造する方法において、
凝固槽に設けられた攪拌羽根により前記スラリー溶液と前記ゴム溶液とを攪拌しながら凝固物を生成し、この凝固物を、前記凝固槽に設けられた破砕羽根によって破砕することを特徴とするウエットマスターバッチの製造方法。
【請求項2】
前記攪拌羽根の回転軸と、前記破砕羽根の回転軸とが直交する方向に配置された凝固槽を用いる請求項1に記載のウエットマスターバッチの製造方法。
【請求項3】
前記破砕羽根の回転数を変化させることにより、破砕後の凝固物の大きさを制御する請求項1〜2のいずれかに記載のウエットマスターバッチの製造方法。
【請求項4】
前記スラリー溶液中の充填材として、体積平均粒径が25μm以下であり90体積%粒径が30μm以下である粒度分布を有し、かつ、スラリー溶液から回収した充填材の24M4DBP吸油量がスラリー溶液中に分散される前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持する特性を有するものを用いる請求項1〜3のいずれかに記載のウエットマスターバッチの製造方法。
【請求項5】
前記ゴム溶液として、天然ゴムラテックスもしくは合成ゴムラテックスを用いる請求項1〜4のいずれかに記載のウエットマスターバッチの製造方法。
【請求項6】
前記スラリー溶液として、水分散溶液を用いる請求項1〜5のいずれかに記載のウエットマスターバッチの製造方法。
【請求項7】
前記凝固槽より排出された凝固液から固形分を抽出し、抽出した固形分を脱水したあと乾燥させ、この固形分を乾燥させるに際し、固形分にせん断力を加えながら乾燥を行う請求項1〜6のいずれかに記載のウエットマスターバッチの製造方法。
【請求項8】
前記固形分を乾燥させるに際し、バレルとその中で回転する複数のスクリューとよりなる多軸混練押出機を用い、昇温されたバレル中に供給された固形分を、回転するスクリューでせん断力を加えながら押し出すことにより、固形分中の水分を加熱蒸発させて乾燥させる請求項7に記載のウエットマスターバッチの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載された製造方法によって形成されたウエットマスターバッチ。
【請求項10】
請求項9に記載のウエットマスターバッチを用いて形成されたゴム組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のゴム組成物を用いて形成されたタイヤ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−237456(P2007−237456A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59634(P2006−59634)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】