ウエハのダイシング方法、接続方法及び接続構造体
【課題】 ウエハをダイシングする際の加工性を良好にするウエハのダイシング方法を提供する。
【解決手段】 ウエハ10の一方の面10aに、接着層22と透過性を有する保護フィルム24とが順次積層されてなる接着フィルム付きウエハ39の他方の面39bをダイシングテープ18に貼着する貼着工程S1と、接着フィルム付きウエハ39におけるウエハの一方の面10aの画像を撮像する撮像工程S2と、撮像した画像に基づいて、接着フィルム付きウエハ39を分割する位置を決定する分割位置決定工程S3と、接着フィルム付きウエハ39に、接着フィルム付きウエハ39の一方の面39a側から他方の面39bまで達しない深さの切削溝を形成する切削溝形成工程S4と、接着フィルム付きウエハ39の保護フィルム24の表面に保護部材62を配設する保護部材配設工程S5と、複数の接着フィルム付きチップ60を形成する分割工程S6と、接着層付きチップ64をピックアップするピックアップ工程S7とを有する。
【解決手段】 ウエハ10の一方の面10aに、接着層22と透過性を有する保護フィルム24とが順次積層されてなる接着フィルム付きウエハ39の他方の面39bをダイシングテープ18に貼着する貼着工程S1と、接着フィルム付きウエハ39におけるウエハの一方の面10aの画像を撮像する撮像工程S2と、撮像した画像に基づいて、接着フィルム付きウエハ39を分割する位置を決定する分割位置決定工程S3と、接着フィルム付きウエハ39に、接着フィルム付きウエハ39の一方の面39a側から他方の面39bまで達しない深さの切削溝を形成する切削溝形成工程S4と、接着フィルム付きウエハ39の保護フィルム24の表面に保護部材62を配設する保護部材配設工程S5と、複数の接着フィルム付きチップ60を形成する分割工程S6と、接着層付きチップ64をピックアップするピックアップ工程S7とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層と透過性を有する保護フィルムとが順次積層されてなる接着フィルム付きウエハのダイシング方法、接続方法及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
COB(Chip On Board)等のパッケージ・実装方法において、IC(Integrated Circuit)を基板上へ固定化する方法が多数存在し、例えば実装方向としてIC表裏(フェイスアップ、フェイスダウン)、接着層(固定材)としてペーストやフィルム、導電粒子の有無など様々な方法がある。ダイシング以前にウエハへ接着層を貼り付ける工法として、ACF(Anisotropic Conductive Film)やNCF(Non Particle Conductive Film)を用いた工法等が挙げられる。ACFやNCFを用いた工法では、ICの機能面に接着層が位置する。
【0003】
ウエハのダイシング工法には、「レーザ(Dry)」や「プラズマ(Dry)」、「ブレード(Wet)」がある。これらの工法のうち、Dry環境(乾燥した環境)で行うレーザやプラズマの工法は、加工中のコンタミネーションに関して有利である。しかし、これらレーザやプラズマの工法に用いる装置は、一般的でなく、装置コストもブレードの3倍以上である。また、ダイシングを行う場合、位置決め(パターン認識)をするために、パターンが可視であること又はIRカメラで透視することが必要となる。しかし、IRカメラは、一般的なブレードダイシング装置には装備されていない。
【0004】
また、ブレードダイシング工法を用いてウエハを分割(個片化)する場合、ウエハは、一時的に加工に用いる純水に曝される。この純水の役割の1つとしては、洗浄が挙げられる。この純水中には、加工によって削られたウエハの屑(主にシリコン)等が分散する。これらウエハの屑は、加工部材表面にタック性(粘着性)が無い場合、洗い流される。しかし、タック性を有する部材の場合、ウエハの屑は、部材に捕捉されて洗浄し難くなり、切削屑によるコンタミネーションが起こってしまう。切削屑が接着層に付着すると、切削屑が付着した面がICの機能面であるため、最終的な実装を行った場合に、切削屑がICの機能面に接触(アタック)してしまうおそれがある。また、薄型のウエハをダイシングする場合には、ウエハにチッピング(破損)が生じてしまい、加工性が良好でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−101290号公報
【特許文献2】特開2005−175136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、ウエハをダイシングする際の加工性を良好にするウエハのダイシング方法、接続方法及び接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るウエハのダイシング方法は、一方の面に回路パターンを有するウエハの該一方の面に、接着層と透過性を有する保護フィルムとが順次積層されてなる接着フィルム付きウエハの他方の面をダイシングテープに貼着する貼着工程と、前記接着フィルム付きウエハの一方の面で反射して前記接着層及び前記保護フィルムを透過した光を受光することにより、該接着フィルム付きウエハにおける前記ウエハの一方の面の画像を撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像した画像に基づいて、前記接着フィルム付きウエハを分割する位置を決定する分割位置決定工程と、前記分割位置決定工程で決定した位置に基づいて、前記接着フィルム付きウエハに、該接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成する切削溝形成工程と、前記切削溝が形成された接着フィルム付きウエハの前記保護フィルムの表面に、保護部材を配設する保護部材配設工程と、前記保護部材を配設した接着フィルム付きウエハの他方の面を研削して該接着フィルム付きウエハを分割することにより、一方の面に前記回路パターンを有するチップの一方の面に前記接着層が積層された接着層付きチップと、前記保護フィルムとを備える複数の接着フィルム付きチップを形成する分割工程と、前記接着フィルム付きチップから、前記接着層付きチップをピックアップするピックアップ工程とを有する。
【0008】
本発明に係る接続方法は、上記ウエハのダイシング方法でピックアップした接着層付きチップを、接着層を介して電極を有する回路基板に圧着し、該電極と該接着層付きチップの回路パターンとを接続する圧着工程を有する。
【0009】
本発明に係る接続構造体は、上記接続方法により得られるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウエハをダイシングする際のチッピングを防止して、ウエハをダイシングする際の加工性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係るウエハのダイシング方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】治具にウエハを接着する段階の一例を示す概略図である。
【図3】ウエハに接着フィルムを貼付けする段階の一例を示す概略図である。
【図4】接着フィルム付きウエハが載置されたダイシング装置の一例を示す概略概略図である。
【図5】撮像工程及び分割位置決定工程の一例を示す概略図である。
【図6】切削溝形成工程の一例を示す概略図である。
【図7】保護部材配設工程の一例を示す概略図である。
【図8】分割工程の一例を示す概略図である。
【図9】ピックアップ工程の一例を示す概略図である。
【図10】本実施の形態に係る接続方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図11】圧着工程の一例を示す概略図である。
【図12】圧着工程で圧着された接続構造体の一例を示す概略図である。
【図13】圧着工程の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用したウエハのダイシング方法、接続方法及び接続構造体の具体的な実施の形態の一例について、図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.ウエハのダイシング方法
1−1.貼着工程
1−2.撮像工程
1−2−1.ダイシング装置
1−2−2.撮像方法
1−3.分割位置決定工程
1−4.切削溝形成工程
1−5.保護部材配設工程
1−6.分割工程
1−7.ピックアップ工程
2.接続方法及び接続構造体
2−1.圧着工程
3.他の実施形態
4.実施例
【0013】
<1.ウエハのダイシング方法>
図1に示すように、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法は、貼着工程S1と、撮像工程S2と、分割位置決定工程S3と、切削溝形成工程S4と、保護部材配設工程S5と、分割工程S6と、ピックアップ工程S7とを有する。
【0014】
<1−1.貼着工程>
図2、図3に示すように、貼着工程S1において、一方の面に回路パターンであるバンプ16を有するウエハ10の一方の面(表面)10aに、接着層22と透過性を有する保護フィルム24とが順次積層されてなる接着フィルム付きウエハ39の他方の面10bをダイシングテープ18に貼着する。例えば、貼着工程S1において、次のような処理を行う。
【0015】
まず、図2に示すように、準備したウエハ10を治具12に固定する。
【0016】
ウエハ10としては、例えば、シリコンウエハ等の半導体ウエハが挙げられる。ウエハ10の一方の面10aには、格子状のスクライブライン14が形成されている。ウエハ10の一方の面10aには、回路パターンであるバンプ16が形成されている。
【0017】
治具12は、例えば、ウエハ10の直径よりも大きな直径を有するリング状又は枠状のフレーム20と、一方の面が接着性を有するダイシングテープ18とを備えている。
【0018】
ダイシングテープ18は、例えば、フレーム20の一方の面の側に貼り付けられ、フレーム20の内側に展張されている。ウエハ10は、例えば、治具12の中央部に貼り付けられる。また、ウエハ10は、一方の面10a(以下、「機能面10a」ともいう。)の他方の面(反対側の面)10bがダイシングテープ18に貼り付けられる。ダイシングテープ18としては、例えば、紫外線を照射することにより剥離力が小さくなる粘着フィルムが用いられる。これにより、ウエハ10を複数のチップ21に分割した後、ダイシングテープ18に紫外線を照射することで、個々のチップ21をピックアップするときにチップ21をダイシングテープ18から容易に分離することができる。
【0019】
続いて、図3に示すように、ウエハ10の機能面10aに、保護フィルム24と接着層22とが積層されてなる接着フィルム26を配置する。
【0020】
接着層22は、例えば、膜形成樹脂、液状硬化成分及び硬化剤を含んでいる。また、接着層22は、例えば、各種ゴム成分、柔軟剤、各種フィラー類等の添加剤や、導電性粒子を含んでいてもよい。接着層22は、NCF(Non Particle Conductive Film)、ACF(Anisotropic Conductive Film)、またはそれらを積層させたものであってもよい。
【0021】
膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂を例示できる。膜形成樹脂は、材料の入手の容易さ及び接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を含むことが好ましい。液状硬化成分としては、液状エポキシ樹脂、アクリレートを例示できる。液状硬化成分は、接続信頼性及び硬化物の安定性の観点から、2以上の官能基を有することが好ましい。硬化剤としては、液状硬化成分が液状エポキシ樹脂の場合は、イミダゾール、アミン類、スルホニウム塩、オニウム塩、フェノール類を例示できる。液状硬化成分がアクリレートの場合には、硬化剤として有機過酸化物を例示できる。
【0022】
接着層22の厚さは、バンプ16の高さ以上の厚さとするのが好ましい。すなわち、接着層22の厚さは、バンプ16を覆うことが可能な厚さとするのが好ましい。
【0023】
保護フィルム24は、ダイシング装置などを用いてウエハ10を分割するときに、切削屑などが接着層22に付着することを防止する。保護フィルム24としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチック材料、上質紙、グラシン紙等の紙類等が挙げられる。
【0024】
保護フィルム24としては、例えば、可視光を透過する機能を有するものが用いられる。これにより、安価な光学系を用いた場合であっても、保護フィルム24および接着層22をウエハ10に貼り付けた状態で、ウエハ10の表面の画像を撮像することができる。すなわち、IRカメラのような高価な光学系を使用しなくても、ウエハ10の機能面に形成されたスクライブライン14、バンプ16、アライメントマークなどの画像を撮像することができる。
【0025】
保護フィルム24は、可視光のうち、特定の波長の光を吸収してよい。保護フィルム24は、波長が440nm以上700nm以下の光のうち、特定の波長の光を吸収してもよい。この場合、ウエハ10の表面の可視光画像を撮像すると、当該可視光画像において保護フィルム24が存在する領域が着色される。これにより、ウエハ10の表面を撮像した可視光画像に基づいて、保護フィルム24の有無を判別することができる。
【0026】
保護フィルム24が特定の波長の光を吸収する場合であっても、保護フィルム24が、可視光のうち上記特定の波長の光以外の光を十分に透過させる場合には、保護フィルム24が存在する領域において、ウエハ10の表面のパターンを判別することができる。
【0027】
保護フィルム24の厚さは、50〜100μmの範囲が好ましい。保護フィルム24の厚さが50μm未満の場合には、ダイシング装置等を用いてウエハ10を分割する工程の途中で保護フィルム24が接着層22から剥離する場合があり、保護フィルム24の厚さが50μm以上の場合と比較して加工性に劣る。保護フィルム24の厚さが100μmを超えると、保護フィルム24の上に接着層22を塗布して接着フィルム26を製造するときに、保護フィルム24の上に接着層22を塗布しにくくなる。
【0028】
保護フィルム24と接着層22との間の剥離力は、0.17N/5cm以上であることが好ましい。ここで、保護フィルム24と接着層22との間の剥離力とは、例えば、JIS Z0237に基づいて、180度方向にT型剥離した場合の剥離力を示す。保護フィルム24と接着層22との間の剥離力が0.17N/5cm未満の場合には、ダイシング装置などを用いてウエハ10を分割する工程、すなわち、後に詳述する分割工程S6の途中で、保護フィルム24から後述する接着フィルム付きチップ64が剥離する場合があり、保護フィルム24と接着層22との間の剥離力が0.17N/cm以上の場合と比較して加工性に劣る。また、保護フィルム24と接着層22との間の剥離力は、2.0N/5cm以下であることが好ましい。保護フィルム24と接着層22との間の剥離力が2.0N/cmを超える場合には、保護フィルムが一部だけ剥がれ残ってしまい、ピックアップ工程S7における剥離性が良好ではなくなるからである。
【0029】
保護フィルム24と接着層22との間の剥離力は、保護フィルム24の表面に離型処理を施すことで調整することができる。離型処理は、例えば、シリコーン系の剥離剤を保護フィルム24の表面に塗布した後、保護フィルム24を加熱して、保護フィルム24を乾燥させることで実施できる。
【0030】
保護フィルム24と接着層22との間の剥離力は、図2に関連して説明した治具12にウエハ10を接着する段階における、ウエハ10とダイシングテープ18との剥離力より小さくてよい。これにより、後に詳述するように、ピックアップ工程S7において、ウエハ10を加工した後の保護フィルム24の剥離性を良好にすることができる。
【0031】
接着フィルム26は、波長が440nm以上700nm以下の光の透過率が74%以上であることが好ましい。この光の透過率は、保護フィルム24又は接着層22の材質、厚さ、表面処理などにより調整できる。光の透過率は、保護フィルム24又は接着層22に添加する添加剤の種類や添加量により調整できる。例えば、接着層22に無機フィラーを添加することで、接着層22の光の透過率を制御することができる。このような透過率とすることにより、上述したように、IRカメラのような高価な光学系を使用しなくても、ウエハ10の機能面に形成されたスクライブライン14、バンプ16、アライメントマークなどの画像を撮像することができる。
【0032】
ここで、波長が440nm以上700nm以下の光の透過率が74%以上とは、波長が440nm以上700nm以下の光の透過率の最大値が74%以上であることを示す。また、光の透過率は、接着フィルム26の厚さによって異なる。そこで、光の透過率とは、ウエハ10に貼り付けられた状態における接着フィルム26の厚さにおける光の透過率を示す。例えば、接着フィルム26は、波長が440nm以上700nm以下の全範囲における光の透過率が74%以上であってもよい。
【0033】
続いて、例えば図3に示すように、押圧装置28を用いて、接着フィルム26をウエハ10に貼付する。
【0034】
押圧装置28は、例えば、ステージ30とヘッド32とを備えている。ステージ30は、例えば、ウエハ10を載置している。また、ウエハ10は、治具12に保持されたまま、ステージ30に載置される。また、ステージ30は、例えば加熱装置34を有する。なお、接着フィルム26をウエハ10に貼付する段階においては、加熱装置34を使用しなくてもよい。
【0035】
ヘッド32は、例えば図3に示すように、押圧部材36と、押圧部材36を保持する保持部38とを有する。ヘッド32は、押圧部材36をステージ30側に向かって押圧する。押圧部材36は、例えば、弾性体で構成される。弾性体としては、シリコーンゴムなどのエラストマーを用いることができる。これにより、金属製の押圧部材と比較して、接着フィルム26をウエハ10に均一に貼付することができる。
【0036】
続いて、押圧装置28は、表面に接着フィルム26が配置されたウエハ10を、ステージ30とヘッド32との間に挟んで押圧する。すなわち、ヘッド32に保持されている押圧部材36で、接着フィルム26をウエハ10の機能面に押圧する。これにより、接着フィルム26をウエハ10に貼付することができる。
【0037】
以上のようにして、貼着工程S1では、フィルム付きウエハにおけるウエハ10の他方の面10bがダイシングテープに貼着される。
【0038】
<1−2.撮像工程>
撮像工程S2では、接着フィルム付きウエハ39におけるウエハ10の一方の面10a(以下、「ウエハ10の機能面10a」という。)で反射して接着層22及び保護フィルム24を透過した光を受光することにより、機能面10aの画像を撮像する。
【0039】
<1−2−1.ダイシング装置>
撮像工程S2では、例えば、図4に示すダイシング装置40が用いられる。ダイシング装置は、チャックテーブル42と、アライメントステージ44と、撮像部46と、切削部48と、制御部52とを備える。
【0040】
チャックテーブル42は、例えば、図示しない減圧装置により治具12を吸引して、チャックテーブル42の上に治具12を固定する。
【0041】
アライメントステージ44は、例えば、制御部52の指示に基づいて、チャックテーブル42をx方向およびy方向に移動させる。
【0042】
撮像部46は、例えば、ウエハ10を照明する照明部材と、ウエハ10の表面で反射した光を受光する光学系と、光学系が捉えた像を撮像する撮像素子とを有する。撮像部46は、ウエハ10の機能面10aで反射して接着層22及び保護フィルム24を透過した光を受光することにより、ウエハ10の機能面10aの画像を撮像する。撮像部46は、撮像した画像の情報を制御部52に送信する。撮像部46は、特に限定されるものではないが、安価な光学系を用いることができる理由から、可視光画像を撮像することが好ましい。
【0043】
切削部48は、制御部52の指示に基づいて、ウエハ10を切削する。切削部48は、例えば、ウエハ10を切削するブレード50を有する。切削部48は、回転するブレード50をウエハ10に押圧して、ウエハ10等を切削する。
【0044】
駆動部56は、制御部52の画像処理部54から、ウエハ10を分割する位置に関する情報を受け取る。駆動部56は、ウエハ10を分割する位置に関する情報に基づいて、アライメントステージ44及び切削部48を駆動する。これにより、ダイシング装置40は、ウエハ10を分割(個片化)することができる。
【0045】
<1−2−2.撮像方法>
撮像工程S2では、例えば上述したダイシング装置40を用いて、次の処理を行う。
【0046】
まず、撮像部46は、ウエハ10の機能面10aで反射して接着層22及び保護フィルム24を透過した光を受光することにより、ウエハ10の機能面10aの画像を撮像する。続いて、撮像部46は、撮像した画像の情報を制御部52に送信する。続いて、ダイシング装置40の画像処理部54が、撮像部46が撮像した画像の情報を受け取る。
【0047】
<1−3.分割位置決定工程>
分割位置決定工程S3では、撮像工程S2で撮像した画像に基づいて、接着フィルム付きウエハ39を分割する位置を決定する。例えば、分割位置決定工程S3では図5に示すように、画像処理部54が、ウエハ10の機能面10aの画像からスクライブライン14の位置を認識し、スクライブライン14に沿って、ウエハ10を分割する位置を決定する。
【0048】
<1−4.切削溝形成工程>
切削溝形成工程S4では、例えば図6に示すように、分割位置決定工程S3で決定した位置に基づいて、接着フィルム付きウエハ39に、接着フィルム付きウエハ39の一方の面39a側から他方の面39bまで達しない深さの切削溝61を形成する。
【0049】
例えば、切削溝形成工程S4では、上述した図5に示すダイシング装置40を用いて以下の処理を行う。
【0050】
まず、画像処理部54がスクライブライン14に沿って、ウエハ10をx方向に分割することを決定した場合、駆動部56は、アライメントステージ44を駆動して、スクライブライン14の一端がブレード50の下方に位置するように、チャックテーブル42を移動させる。
【0051】
続いて、駆動部56は、切削部48を駆動して、ブレード50を回転させた状態で切削部48を下方に移動させて、ブレード50をウエハ10に圧接させる。
【0052】
続いて、駆動部56は、アライメントステージ44を駆動して、ウエハ10をx方向に移動させる。
【0053】
これにより、切削溝形成工程S4では、スクライブライン14に沿って、ウエハ10を分割し、接着フィルム付きウエハ39の一方の面39a側から他方の面39bまで達しない深さの切削溝61、すなわち、チップ21の仕上がり厚さに相当する深さの切削溝61が形成された接着フィルム付きウエハ39を形成する。
【0054】
<1−5.保護部材配設工程>
保護部材配設工程S5では、切削溝形成工程S4で切削溝61が形成された接着フィルム付きウエハ39の保護フィルム24の表面に、保護部材62を配設する。
【0055】
例えば図7(A)、図7(B)に示すように、保護部材配設工程S5では、接着フィルム付きウエハ39をダイシングテープ18から剥がすとともに、接着フィルム付きウエハ39の一方の面39a側に、保護部材62を貼着して配設する。このような保護部材62としては、例えば、バックグラインドテープが挙げられる。粘着剤は、その後、保護部材62が剥離される際に粘着成分が接着フィルム付きウエハ39の表面に残らないようにするため、紫外線照射型の保護テープ、すなわち、UVテープを使用するのが好ましい。保護部材62を配設した接着フィルム付きウエハ39は、次の分割工程S6に移行される。
【0056】
<1−6.分割工程>
分割工程S6では、例えば図8に示すように、保護部材配設工程S5で保護部材62を配設した接着フィルム付きウエハ39の他方の面39bを研削して、接着フィルム付きウエハ39を分割する。これにより、一方の面にバンプ16を有するチップ21の一方の面に接着層22が積層された接着層付きチップ64と、保護フィルム24とを備える複数の接着フィルム付きチップ60を形成する。
【0057】
例えば、分割工程S6は、少なくともチャックテーブルと、研削砥石と、研削砥石を駆動する駆動部と、駆動部を支持し上下方向の移動をガイドするガイド部と、駆動部を上下方向に精密に移動させる移動用駆動部とを備える研削装置によって行うことができる。
【0058】
保護部材62を配設した接着フィルム付きウエハ39は、図8に示すように、他方の面39bを上にし、保護部材62をチャックテーブル(図示せず)に当接させて載置固定し、研削水を供給しながら研削砥石を駆動して接着層付きウエハ39の他方の面39b側を研削する。また、接着フィルム付きウエハ39は、図8に示すように、表面39b側から、切削溝形成工程S4で形成した切削溝61が露出するまで全面的に均等に研削する。
【0059】
このように、接着フィルム付きウエハ39の他方の面39b側を研削することによって、接着フィルム付きウエハ39を分割し、接着層付きチップ64と、保護フィルム24とを備える複数の接着フィルム付きチップ60を形成する。このように形成された複数の接着フィルム付きチップ60は、切削溝61の深さに対応した厚み、すなわち、仕上がり厚みを有する。
【0060】
<1−7.ピックアップ工程>
ピックアップ工程S7では、接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24から、接着層付きチップ64をピックアップ(剥離)する。
【0061】
例えば、ピックアップ工程S7では、図9に示すように、まず、接着フィルム付きチップ60の裏面60b側を上に向け保護部材62を下側にし、フレーム20にダイシングテープ18を介して貼着載置させる。
【0062】
続いて、接着フィルム付きチップ60を図9の矢印の方向に引っ張ることで、複数の接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24のそれぞれから、接着層付きチップ64をピックアップする。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法では、分割工程S6において、保護部材62を配設した接着フィルム付きウエハ39の他方の面39bを研削して接着フィルム付きウエハ39を分割することにより、ウエハ10をダイシングする際のチッピングを防止することができる。チッピングとは、例えば、研削処理により、チップ上に割れ、欠け、クラック等が入ることをいう。例えば、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法では、薄いウエハ(例えば、50μm以下のウエハ)をダイシングする場合においてもチッピングを防止し、ウエハをダイシングする際の加工性を良好にすることができる。
【0064】
また、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法では、分割工程S6において、保護部材62を配設した接着フィルム付きウエハ39の他方の面39bを研削して接着フィルム付きウエハ39を分割するとともに、上述したように、接着層22と保護フィルム24との剥離力を所定の値とする。これにより、分割工程S6において、保護フィルム24から接着層付きチップ64が剥がれてしまうことを防止できるため、ウエハをダイシングする際の加工性をより良好にすることができる。
【0065】
さらに、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法では、切削溝形成工程S4において、接着フィルム付きウエハ39の一方の面39a側から他方の面39bまで達しない深さの切削溝61を形成する。これにより、分割工程S6において、ウエハ10を分割する際の切削屑等の異物のコンタミネーションを防止することができる。すなわち、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法では、接着層22の表面が保護フィルム24に覆われた状態で、接着フィルム付きチップ60を製造することができるため、接着層22の表面に切削屑が付着することを防止できる。したがって、例えば、上述した分割工程S6において、接着フィルム付きウエハ39の他方の面39b側を研削砥石で研削水を供給しながら研削しても、ストリートに沿って形成した各切削溝61が接着フィルム付きウエハ39の外周端縁まで達していないので、汚れた研削水が接着フィルム付きウエハ39の外周端縁から内部に浸透してチップを汚染するおそれがない。
【0066】
<2.接続方法及び接続構造体>
図10に示すように、本実施の形態に係る接続方法は、貼着工程S1と、撮像工程S2と、分割位置決定工程S3と、切削溝形成工程S4と、保護部材配設工程S5と、分割工程S6と、ピックアップ工程S7と、圧着工程S8とを有する。なお、貼着工程S1〜ピックアップ工程S7は、上述した図1に示す処理と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0067】
<2−1.圧着工程>
圧着工程S8では、ピックアップ工程S7でピックアップした接着層付きチップ64を、接着層22を介して電極72を有する回路基板70に圧着し、電極72と接着層付きチップ64のバンプ16とを接続する。
【0068】
例えば、圧着工程S8では、図11に示すような押圧装置28を用いて、次の処理を行う。
【0069】
まず、回路基板70上に複数の接着層付きチップ64を仮搭載する。すなわち、保護フィルム24が剥離されていることが確認された接着層付きチップ64を、回路基板70の表面の所定の位置に配置する。接着層付きチップ64と回路基板70とは、両者を押圧したときに、接着層付きチップ64のバンプ16と回路基板70の電極72とが電気的に接続するように位置合わせされる。
【0070】
続いて、接着層付きチップ64が配置された回路基板70を、押圧装置28のステージ30の上に載置する。
【0071】
続いて、ヘッド32に保持されている押圧部材36で、接着層付きチップ64を回路基板70の表面に押圧する。例えば、EBS(Elasticity Bonding System)工法と呼ばれる回路基板全体を弾性体で覆った状態で押圧する方法により、同一基板上に複数仮配置されたチップを一括して圧着する方法が挙げられる。EBS工法では、ヘッド32本体の回路基板と対抗する部分に凹部が設けられたエラストマーからなる圧着部材を用いる。すなわち、EBS工法では、プリント基板全体を覆う弾性エラストマーからなる押圧面を有する熱圧着ヘッドにより複数の接着層付きチップを押圧し、複数の接着層付きチップ64を一括して本圧着させる。これにより、接着層付きチップ64を、接着層22を介して回路基板70の表面に一括して実装することができる。
【0072】
このように、本実施の形態に係る接続方法では、図12に示すように、接着層付きチップ64のバンプ16と、回路基板70の電極72とが接着層22を介して接続されてなる接続構造体80を製造することができる。
【0073】
<3.他の実施形態>
上述した分割位置決定工程S3において、画像処理部54は、ウエハ10の機能面の画像からバンプ16またはアライメントマークの位置を認識して、スクライブライン14の位置を認識してもよい。
【0074】
また、上述した押圧部材36は弾性体であってよい。これにより、複数の接着層付きチップ64を回路基板70の表面に同時に押圧した場合であっても、接着層付きチップ64と回路基板70とを良好に接続することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、押圧部材36にエラストマーなどの弾性体を用いて、複数の接着層付きチップ64を回路基板70に一括して実装する場合について説明した。しかし、回路基板70に接着層付きチップ64を実装する方法は、これに限定されない。例えば、エラストマーなどの弾性体を用いずに、接着層付きチップ64を回路基板70に実装してもよい。また、複数の接着層付きチップ64を、1つずつ回路基板70に実装してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、押圧装置28を用いて、接着フィルム26をウエハ10に貼付する場合について説明した。しかし、接着フィルム26をウエハ10に貼付する方法は、これに限定されない。例えば、ロールラミネーターを用いて、接着フィルム26をウエハ10に貼付してもよい。
【0077】
また、押圧部材36は、上述したEBSのみに限定される訳ではなく、通常の熱圧着ヘッド(セラミックや金属等の硬質ヘッド)や超音波ヘッドの使用を妨げるものではない。
【0078】
例えば、図13に示すように、接着層付きチップ64を回路基板70に接着するようにしてもよい。図13において、図1から図12までと同一または類似の部分には、図1から図12までと同一の参照番号を付して、重複する説明を省く場合がある。
【0079】
押圧装置82は、フリップチップボンディングにより、回路基板70とチップ21とを電気的に接続する。押圧装置82は、ステージ84と、セラミックツール86とを備える。押圧装置82およびステージ84は、それぞれ、押圧装置28およびステージ30と同様の構成を有してよい。
【0080】
セラミックツール86は、接着層付きチップ64を回路基板70に対して押圧する。セラミックツール86は、複数の接着層付きチップ64を、1つずつ回路基板70に対して押圧してよい。セラミックツール86は、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム等のセラミックを含んでよい。セラミックツール86は、ヘッドの一例であってよい。セラミックツール86は、セラミックツール86を加熱する加熱装置88を有してよい。加熱装置88は、セラミックヒータであってよい。
【0081】
また、接着フィルム付きチップ60から接着層付きチップ64を剥離した後、ダイシング装置40の撮像部46が、ウエハ10の表面の画像を撮像してもよい。これにより、画像処理部54は、ウエハ10の表面の画像を処理して、接着フィルム付きチップ60から、接着層付きチップ64が剥離されているか否かを確認することができる。
【0082】
例えば、保護フィルム24として、波長が440nm以上700nm以下の光のうち特定の波長の光を吸収する材料を用いた場合、ウエハ10の表面の可視光画像における保護フィルム24が存在する領域は、着色されて見える。これにより、接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24から、接着層付きチップ64が剥離されているか否かを確認することができる。画像処理部54は、接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24から剥離されている接着層付きチップ64を選別してよい。
【0083】
また、例えば、接着フィルム付きチップ60から個々の接着層付きチップ64を分離するピックアップ装置が、接着フィルム付きチップ60から接着層付きチップ64が剥離されているか否かを確認してもよい。
【0084】
また、例えば、接着フィルム付きチップ60から個々の接着層付きチップ64を分離するピックアップ装置が、接着層付きチップ64をピックアップする場合、接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24から接着層付きチップ64が剥離されていないときには、保護フィルム24から接着層付きチップ64が剥離されているときと比較して、ピックアップ装置の先端とダイシングテープ18との距離がより遠い地点で、ピックアップ装置と接着層付きチップ64とが接触する。そこで、ピックアップ装置が検出する圧力変化に基づいて、接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24から接着層付きチップ64が剥離されているか否かを確認してよい。
【実施例】
【0085】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、下記のいずれかの実施例に本発明の範囲が限定されるものではない。
【0086】
<接着フィルムの作製>
接着層として、厚みが30μmのNCFを用いた。各接着フィルムの保護フィルムとして、厚さが100μmの離型処理方法と厚さの異なるポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」という。)を用いた。
【0087】
<バインダーαを用いた接着フィルム>
バインダーαを用いた接着フィルムは、以下の手順で作製した。まず、フェノキシ樹脂(YP−50、東都化成株式会社製)10質量部、液状エポキシ樹脂(EP828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)10質量部、イミダゾール系潜在性硬化剤(ノバキュア3941HP、旭化成株式会社製)15質量部、ゴム成分(RKB、レジナス化成株式会社製)5質量部及びシランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)1質量部にトルエン100質量部を加えて攪拌して、均一な樹脂溶液(以下、「バインダーα」という)を調整した。
【0088】
次に、バーコーターを用いて、各保護フィルムの上に、上記の樹脂溶液を塗布した。樹脂溶液を塗布した保護フィルムを80℃のオーブンに入れ、溶媒を揮発させて、樹脂溶液を乾燥させることで、接着層であるNCFと保護フィルムであるPETフィルムとが順次積層されてなる接着フィルムを作製した。
【0089】
<バインダーβを用いた接着フィルム>
バインダーβを用いた接着フィルムは、バインダーαの組成に無機フィラー(不定形シリカ 平均粒径0.5μm アドマテックス社製)を100質量部加えたもの(以下、「バインダーβ」という)を用いたこと以外は、バインダーαを用いた接着フィルムと同様に作製した。
【0090】
接着フィルムにおいて、接着層と保護フィルムとの剥離力は、保護フィルムの上に接着層を塗布する前に、保護フィルムの表面に離型処理を施すことで調整した。離型処理は、シリコーン系の剥離剤を保護フィルムの表面に塗布した後、保護フィルムを加熱して、保護フィルムを乾燥させることで実施した。シリコーン系の剥離剤の配合を調整することで、接着層と保護フィルムとの剥離力が異なる表1に示す実施例1〜実施例10及び表2に示す比較例1〜比較例3の接着フィルムを作製した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
<透過率について>
接着フィルムの透過率は、CM−3600d(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、全光線透過率を測定した。接着フィルムの透過率は、以下の手順で算出した。まず、接着フィルムの接着層とガラス基板とが対向するように各接着フィルムをガラス基板の上に貼り付けて、測定試料を準備した。ガラス基板の厚さは1.1mmであった。次に、ガラス基板単体の全光線透過率を測定した。測定は、透過させる光の波長を360nmから740nmまで連続的に変化させて実施した。次に、準備した測定試料のそれぞれについても同様に、全光線透過率を測定した。ガラス基板単体の全光線透過率を100%として、各接着フィルムの透過率を算出した。
【0094】
<保護フィルムの厚みについて>
表1及び表2に示す保護フィルムの厚みは、マイクロメーター(ミツトヨ株式会社製)を用いて測定した。
<接着フィルムに対する保護フィルムの剥離力>
【0095】
表1及び表2に示す接着フィルムに対する保護フィルムの剥離力は、テンシロン(株式会社オリエンテック製)を用いて測定した。引張方向は、180度方向した。引張方法は、T型剥離とした。引張速度は、毎分300mmに設定した。測定は、温度23±2℃、湿度55±10%RHの条件で実施した。
【0096】
<ダイシング試験について>
実施例1〜実施例10では、ダイシング試験として、図1に示す各工程の処理、すなわち、接着層付きウエハに切削溝を形成した後に研削処理を行った。
【0097】
シリコンウエハは、直径が6インチであり、厚さが700μmであった。また、シリコンウエハに形成されているバンプは、高さが25μmであった。
【0098】
切削溝形成工程S4では、ダイシング装置(DFD−651)により、接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成した。ブレードは、NBC−ZB2030−0.04t(株式会社ディスコ製)を用いた。ブレードの厚さは、40μmであった。ブレードの回転数は30000rpmに設定した。ブレードの送り速度は10mm/secに設定した。
【0099】
分割工程S6では、研削装置(DFD−8540 株式会社ディスコ製)を用いて、接着フィルム付きウエハのそれぞれを6.3mm×6.3mmの接着フィルム付きチップに分割した。加工条件は、粗削り切削速度を0.4μm/secとし、仕上げ切削速度を0.3μm/secとした。研削後のウエハの厚みは、200μmとした。以下、実施例1〜実施例10で行った処理を「ダイシング工程A」という。
【0100】
比較例1では、図1に示す切削溝形成工程S4において、接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達する深さの切削溝を形成したこと以外は、実施例1〜実施例10と同様にダイシング試験を行った。以下、比較例1で行った処理を「ダイシング工程B」という。
【0101】
比較例2では、図1に示す分割工程S6においてウエハの厚みが200μmとなるように研削処理を行った後に、切削溝形成工程S4において接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達する深さの切削溝を形成したこと以外は、実施例1〜実施例10と同様にダイシング試験を行った。以下、比較例2で行った処理を「ダイシング工程C」という。
【0102】
比較例3では、図1に示す分割工程S6を行わずに、貼着工程S1においてウエハの厚みが200μmとなるように研削処理を行った後にウエハに接着フィルムを貼り合わせたこと以外は、比較例2と同様にダイシング試験を行った。以下、比較例3で行った処理を「ダイシング工程D」という。
【0103】
<パターン認識性評価について>
パターンの視認性は、DFD−651(株式会社ディスコ製)に搭載されたCCDカメラでシリコンウエハの表面に形成されたパターンを観察した。パターンの線幅は30μmであった。
【0104】
表1及び表2において、パターン認識性が「○」とは、装置認識スコアが80以上である、すなわち、パターン認識性が良好であることを示す。また、パターン認識性が「△」とは、装置認識スコアが80未満である、すなわち、パターン認識性が良好ではないことを示す。
【0105】
<加工性について>
加工性は、図1に示す分割工程S6における研削処理時のチップ飛びやチップのズレ及び研削処理後のチッピングの程度を観察することにより評価した。
【0106】
表1及び表2において、加工性が「◎」とは、チップ飛び・ズレ無しであってチッピングなし(10点平均中不良なし)であることを示す。加工性が「○」とは、チップ飛び・ズレが無しであって、チッピングが小(10点平均中、不良が10%未満)であることを示す。加工性が「△」とは、一部にズレ(10点平均中、不良が30%未満)があることを示す。加工性が「×」とは、チッピングが多い(10点平均中、不良が50%以上)ことを示す。
【0107】
<実施例及び比較例の評価結果について>
表1に示すように、実施例1〜実施例10では、加工性、カバーフィルム剥離性及び接続信頼性が良好であった。特に、実施例2及び実施例3では、加工性が他の実施例と比較して、より良好であった。
【0108】
一方、表2に示すように、比較例1では、図1に示す切削溝形成工程S4において、接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成せず、上述したダイシング工程Bを行ったため、加工性が良好ではなかった。
【0109】
また、表2に示すように、比較例2では、図1に示す切削溝形成工程S4において、接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成せず、上述したダイシング工程Cを行ったため、加工性が良好ではなかった。
【0110】
また、表2に示すように、比較例3では、図1に示す切削溝形成工程S4において、接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成せず、上述したダイシング工程Dを行ったため、加工性が良好ではなかった。
【符号の説明】
【0111】
10 ウエハ、12 治具、14 スクライブライン、16 バンプ、18 ダイシングテープ、20 フレーム、21 チップ、22 接着層、24 保護フィルム、26 接着フィルム、28 押圧装置、30 ステージ、32 ヘッド、34 加熱装置、36 押圧部材、38 保持部、39 接着フィルム付きウエハ、40 ダイシング装置、42 チャックテーブル、44 アライメントステージ、46 撮像部、48 切削部、50 ブレード、52 制御部、54 画像処理部、56 駆動部、60 接着フィルム付きチップ、61 切削溝、62 保護部材、64 接着層付きチップ、70 回路基板、72 電極、80 接続構造体、82 押圧装置、84 ステージ、86 セラミックツール、88 加熱装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層と透過性を有する保護フィルムとが順次積層されてなる接着フィルム付きウエハのダイシング方法、接続方法及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
COB(Chip On Board)等のパッケージ・実装方法において、IC(Integrated Circuit)を基板上へ固定化する方法が多数存在し、例えば実装方向としてIC表裏(フェイスアップ、フェイスダウン)、接着層(固定材)としてペーストやフィルム、導電粒子の有無など様々な方法がある。ダイシング以前にウエハへ接着層を貼り付ける工法として、ACF(Anisotropic Conductive Film)やNCF(Non Particle Conductive Film)を用いた工法等が挙げられる。ACFやNCFを用いた工法では、ICの機能面に接着層が位置する。
【0003】
ウエハのダイシング工法には、「レーザ(Dry)」や「プラズマ(Dry)」、「ブレード(Wet)」がある。これらの工法のうち、Dry環境(乾燥した環境)で行うレーザやプラズマの工法は、加工中のコンタミネーションに関して有利である。しかし、これらレーザやプラズマの工法に用いる装置は、一般的でなく、装置コストもブレードの3倍以上である。また、ダイシングを行う場合、位置決め(パターン認識)をするために、パターンが可視であること又はIRカメラで透視することが必要となる。しかし、IRカメラは、一般的なブレードダイシング装置には装備されていない。
【0004】
また、ブレードダイシング工法を用いてウエハを分割(個片化)する場合、ウエハは、一時的に加工に用いる純水に曝される。この純水の役割の1つとしては、洗浄が挙げられる。この純水中には、加工によって削られたウエハの屑(主にシリコン)等が分散する。これらウエハの屑は、加工部材表面にタック性(粘着性)が無い場合、洗い流される。しかし、タック性を有する部材の場合、ウエハの屑は、部材に捕捉されて洗浄し難くなり、切削屑によるコンタミネーションが起こってしまう。切削屑が接着層に付着すると、切削屑が付着した面がICの機能面であるため、最終的な実装を行った場合に、切削屑がICの機能面に接触(アタック)してしまうおそれがある。また、薄型のウエハをダイシングする場合には、ウエハにチッピング(破損)が生じてしまい、加工性が良好でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−101290号公報
【特許文献2】特開2005−175136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、ウエハをダイシングする際の加工性を良好にするウエハのダイシング方法、接続方法及び接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るウエハのダイシング方法は、一方の面に回路パターンを有するウエハの該一方の面に、接着層と透過性を有する保護フィルムとが順次積層されてなる接着フィルム付きウエハの他方の面をダイシングテープに貼着する貼着工程と、前記接着フィルム付きウエハの一方の面で反射して前記接着層及び前記保護フィルムを透過した光を受光することにより、該接着フィルム付きウエハにおける前記ウエハの一方の面の画像を撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像した画像に基づいて、前記接着フィルム付きウエハを分割する位置を決定する分割位置決定工程と、前記分割位置決定工程で決定した位置に基づいて、前記接着フィルム付きウエハに、該接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成する切削溝形成工程と、前記切削溝が形成された接着フィルム付きウエハの前記保護フィルムの表面に、保護部材を配設する保護部材配設工程と、前記保護部材を配設した接着フィルム付きウエハの他方の面を研削して該接着フィルム付きウエハを分割することにより、一方の面に前記回路パターンを有するチップの一方の面に前記接着層が積層された接着層付きチップと、前記保護フィルムとを備える複数の接着フィルム付きチップを形成する分割工程と、前記接着フィルム付きチップから、前記接着層付きチップをピックアップするピックアップ工程とを有する。
【0008】
本発明に係る接続方法は、上記ウエハのダイシング方法でピックアップした接着層付きチップを、接着層を介して電極を有する回路基板に圧着し、該電極と該接着層付きチップの回路パターンとを接続する圧着工程を有する。
【0009】
本発明に係る接続構造体は、上記接続方法により得られるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウエハをダイシングする際のチッピングを防止して、ウエハをダイシングする際の加工性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係るウエハのダイシング方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】治具にウエハを接着する段階の一例を示す概略図である。
【図3】ウエハに接着フィルムを貼付けする段階の一例を示す概略図である。
【図4】接着フィルム付きウエハが載置されたダイシング装置の一例を示す概略概略図である。
【図5】撮像工程及び分割位置決定工程の一例を示す概略図である。
【図6】切削溝形成工程の一例を示す概略図である。
【図7】保護部材配設工程の一例を示す概略図である。
【図8】分割工程の一例を示す概略図である。
【図9】ピックアップ工程の一例を示す概略図である。
【図10】本実施の形態に係る接続方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図11】圧着工程の一例を示す概略図である。
【図12】圧着工程で圧着された接続構造体の一例を示す概略図である。
【図13】圧着工程の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用したウエハのダイシング方法、接続方法及び接続構造体の具体的な実施の形態の一例について、図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.ウエハのダイシング方法
1−1.貼着工程
1−2.撮像工程
1−2−1.ダイシング装置
1−2−2.撮像方法
1−3.分割位置決定工程
1−4.切削溝形成工程
1−5.保護部材配設工程
1−6.分割工程
1−7.ピックアップ工程
2.接続方法及び接続構造体
2−1.圧着工程
3.他の実施形態
4.実施例
【0013】
<1.ウエハのダイシング方法>
図1に示すように、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法は、貼着工程S1と、撮像工程S2と、分割位置決定工程S3と、切削溝形成工程S4と、保護部材配設工程S5と、分割工程S6と、ピックアップ工程S7とを有する。
【0014】
<1−1.貼着工程>
図2、図3に示すように、貼着工程S1において、一方の面に回路パターンであるバンプ16を有するウエハ10の一方の面(表面)10aに、接着層22と透過性を有する保護フィルム24とが順次積層されてなる接着フィルム付きウエハ39の他方の面10bをダイシングテープ18に貼着する。例えば、貼着工程S1において、次のような処理を行う。
【0015】
まず、図2に示すように、準備したウエハ10を治具12に固定する。
【0016】
ウエハ10としては、例えば、シリコンウエハ等の半導体ウエハが挙げられる。ウエハ10の一方の面10aには、格子状のスクライブライン14が形成されている。ウエハ10の一方の面10aには、回路パターンであるバンプ16が形成されている。
【0017】
治具12は、例えば、ウエハ10の直径よりも大きな直径を有するリング状又は枠状のフレーム20と、一方の面が接着性を有するダイシングテープ18とを備えている。
【0018】
ダイシングテープ18は、例えば、フレーム20の一方の面の側に貼り付けられ、フレーム20の内側に展張されている。ウエハ10は、例えば、治具12の中央部に貼り付けられる。また、ウエハ10は、一方の面10a(以下、「機能面10a」ともいう。)の他方の面(反対側の面)10bがダイシングテープ18に貼り付けられる。ダイシングテープ18としては、例えば、紫外線を照射することにより剥離力が小さくなる粘着フィルムが用いられる。これにより、ウエハ10を複数のチップ21に分割した後、ダイシングテープ18に紫外線を照射することで、個々のチップ21をピックアップするときにチップ21をダイシングテープ18から容易に分離することができる。
【0019】
続いて、図3に示すように、ウエハ10の機能面10aに、保護フィルム24と接着層22とが積層されてなる接着フィルム26を配置する。
【0020】
接着層22は、例えば、膜形成樹脂、液状硬化成分及び硬化剤を含んでいる。また、接着層22は、例えば、各種ゴム成分、柔軟剤、各種フィラー類等の添加剤や、導電性粒子を含んでいてもよい。接着層22は、NCF(Non Particle Conductive Film)、ACF(Anisotropic Conductive Film)、またはそれらを積層させたものであってもよい。
【0021】
膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂を例示できる。膜形成樹脂は、材料の入手の容易さ及び接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を含むことが好ましい。液状硬化成分としては、液状エポキシ樹脂、アクリレートを例示できる。液状硬化成分は、接続信頼性及び硬化物の安定性の観点から、2以上の官能基を有することが好ましい。硬化剤としては、液状硬化成分が液状エポキシ樹脂の場合は、イミダゾール、アミン類、スルホニウム塩、オニウム塩、フェノール類を例示できる。液状硬化成分がアクリレートの場合には、硬化剤として有機過酸化物を例示できる。
【0022】
接着層22の厚さは、バンプ16の高さ以上の厚さとするのが好ましい。すなわち、接着層22の厚さは、バンプ16を覆うことが可能な厚さとするのが好ましい。
【0023】
保護フィルム24は、ダイシング装置などを用いてウエハ10を分割するときに、切削屑などが接着層22に付着することを防止する。保護フィルム24としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチック材料、上質紙、グラシン紙等の紙類等が挙げられる。
【0024】
保護フィルム24としては、例えば、可視光を透過する機能を有するものが用いられる。これにより、安価な光学系を用いた場合であっても、保護フィルム24および接着層22をウエハ10に貼り付けた状態で、ウエハ10の表面の画像を撮像することができる。すなわち、IRカメラのような高価な光学系を使用しなくても、ウエハ10の機能面に形成されたスクライブライン14、バンプ16、アライメントマークなどの画像を撮像することができる。
【0025】
保護フィルム24は、可視光のうち、特定の波長の光を吸収してよい。保護フィルム24は、波長が440nm以上700nm以下の光のうち、特定の波長の光を吸収してもよい。この場合、ウエハ10の表面の可視光画像を撮像すると、当該可視光画像において保護フィルム24が存在する領域が着色される。これにより、ウエハ10の表面を撮像した可視光画像に基づいて、保護フィルム24の有無を判別することができる。
【0026】
保護フィルム24が特定の波長の光を吸収する場合であっても、保護フィルム24が、可視光のうち上記特定の波長の光以外の光を十分に透過させる場合には、保護フィルム24が存在する領域において、ウエハ10の表面のパターンを判別することができる。
【0027】
保護フィルム24の厚さは、50〜100μmの範囲が好ましい。保護フィルム24の厚さが50μm未満の場合には、ダイシング装置等を用いてウエハ10を分割する工程の途中で保護フィルム24が接着層22から剥離する場合があり、保護フィルム24の厚さが50μm以上の場合と比較して加工性に劣る。保護フィルム24の厚さが100μmを超えると、保護フィルム24の上に接着層22を塗布して接着フィルム26を製造するときに、保護フィルム24の上に接着層22を塗布しにくくなる。
【0028】
保護フィルム24と接着層22との間の剥離力は、0.17N/5cm以上であることが好ましい。ここで、保護フィルム24と接着層22との間の剥離力とは、例えば、JIS Z0237に基づいて、180度方向にT型剥離した場合の剥離力を示す。保護フィルム24と接着層22との間の剥離力が0.17N/5cm未満の場合には、ダイシング装置などを用いてウエハ10を分割する工程、すなわち、後に詳述する分割工程S6の途中で、保護フィルム24から後述する接着フィルム付きチップ64が剥離する場合があり、保護フィルム24と接着層22との間の剥離力が0.17N/cm以上の場合と比較して加工性に劣る。また、保護フィルム24と接着層22との間の剥離力は、2.0N/5cm以下であることが好ましい。保護フィルム24と接着層22との間の剥離力が2.0N/cmを超える場合には、保護フィルムが一部だけ剥がれ残ってしまい、ピックアップ工程S7における剥離性が良好ではなくなるからである。
【0029】
保護フィルム24と接着層22との間の剥離力は、保護フィルム24の表面に離型処理を施すことで調整することができる。離型処理は、例えば、シリコーン系の剥離剤を保護フィルム24の表面に塗布した後、保護フィルム24を加熱して、保護フィルム24を乾燥させることで実施できる。
【0030】
保護フィルム24と接着層22との間の剥離力は、図2に関連して説明した治具12にウエハ10を接着する段階における、ウエハ10とダイシングテープ18との剥離力より小さくてよい。これにより、後に詳述するように、ピックアップ工程S7において、ウエハ10を加工した後の保護フィルム24の剥離性を良好にすることができる。
【0031】
接着フィルム26は、波長が440nm以上700nm以下の光の透過率が74%以上であることが好ましい。この光の透過率は、保護フィルム24又は接着層22の材質、厚さ、表面処理などにより調整できる。光の透過率は、保護フィルム24又は接着層22に添加する添加剤の種類や添加量により調整できる。例えば、接着層22に無機フィラーを添加することで、接着層22の光の透過率を制御することができる。このような透過率とすることにより、上述したように、IRカメラのような高価な光学系を使用しなくても、ウエハ10の機能面に形成されたスクライブライン14、バンプ16、アライメントマークなどの画像を撮像することができる。
【0032】
ここで、波長が440nm以上700nm以下の光の透過率が74%以上とは、波長が440nm以上700nm以下の光の透過率の最大値が74%以上であることを示す。また、光の透過率は、接着フィルム26の厚さによって異なる。そこで、光の透過率とは、ウエハ10に貼り付けられた状態における接着フィルム26の厚さにおける光の透過率を示す。例えば、接着フィルム26は、波長が440nm以上700nm以下の全範囲における光の透過率が74%以上であってもよい。
【0033】
続いて、例えば図3に示すように、押圧装置28を用いて、接着フィルム26をウエハ10に貼付する。
【0034】
押圧装置28は、例えば、ステージ30とヘッド32とを備えている。ステージ30は、例えば、ウエハ10を載置している。また、ウエハ10は、治具12に保持されたまま、ステージ30に載置される。また、ステージ30は、例えば加熱装置34を有する。なお、接着フィルム26をウエハ10に貼付する段階においては、加熱装置34を使用しなくてもよい。
【0035】
ヘッド32は、例えば図3に示すように、押圧部材36と、押圧部材36を保持する保持部38とを有する。ヘッド32は、押圧部材36をステージ30側に向かって押圧する。押圧部材36は、例えば、弾性体で構成される。弾性体としては、シリコーンゴムなどのエラストマーを用いることができる。これにより、金属製の押圧部材と比較して、接着フィルム26をウエハ10に均一に貼付することができる。
【0036】
続いて、押圧装置28は、表面に接着フィルム26が配置されたウエハ10を、ステージ30とヘッド32との間に挟んで押圧する。すなわち、ヘッド32に保持されている押圧部材36で、接着フィルム26をウエハ10の機能面に押圧する。これにより、接着フィルム26をウエハ10に貼付することができる。
【0037】
以上のようにして、貼着工程S1では、フィルム付きウエハにおけるウエハ10の他方の面10bがダイシングテープに貼着される。
【0038】
<1−2.撮像工程>
撮像工程S2では、接着フィルム付きウエハ39におけるウエハ10の一方の面10a(以下、「ウエハ10の機能面10a」という。)で反射して接着層22及び保護フィルム24を透過した光を受光することにより、機能面10aの画像を撮像する。
【0039】
<1−2−1.ダイシング装置>
撮像工程S2では、例えば、図4に示すダイシング装置40が用いられる。ダイシング装置は、チャックテーブル42と、アライメントステージ44と、撮像部46と、切削部48と、制御部52とを備える。
【0040】
チャックテーブル42は、例えば、図示しない減圧装置により治具12を吸引して、チャックテーブル42の上に治具12を固定する。
【0041】
アライメントステージ44は、例えば、制御部52の指示に基づいて、チャックテーブル42をx方向およびy方向に移動させる。
【0042】
撮像部46は、例えば、ウエハ10を照明する照明部材と、ウエハ10の表面で反射した光を受光する光学系と、光学系が捉えた像を撮像する撮像素子とを有する。撮像部46は、ウエハ10の機能面10aで反射して接着層22及び保護フィルム24を透過した光を受光することにより、ウエハ10の機能面10aの画像を撮像する。撮像部46は、撮像した画像の情報を制御部52に送信する。撮像部46は、特に限定されるものではないが、安価な光学系を用いることができる理由から、可視光画像を撮像することが好ましい。
【0043】
切削部48は、制御部52の指示に基づいて、ウエハ10を切削する。切削部48は、例えば、ウエハ10を切削するブレード50を有する。切削部48は、回転するブレード50をウエハ10に押圧して、ウエハ10等を切削する。
【0044】
駆動部56は、制御部52の画像処理部54から、ウエハ10を分割する位置に関する情報を受け取る。駆動部56は、ウエハ10を分割する位置に関する情報に基づいて、アライメントステージ44及び切削部48を駆動する。これにより、ダイシング装置40は、ウエハ10を分割(個片化)することができる。
【0045】
<1−2−2.撮像方法>
撮像工程S2では、例えば上述したダイシング装置40を用いて、次の処理を行う。
【0046】
まず、撮像部46は、ウエハ10の機能面10aで反射して接着層22及び保護フィルム24を透過した光を受光することにより、ウエハ10の機能面10aの画像を撮像する。続いて、撮像部46は、撮像した画像の情報を制御部52に送信する。続いて、ダイシング装置40の画像処理部54が、撮像部46が撮像した画像の情報を受け取る。
【0047】
<1−3.分割位置決定工程>
分割位置決定工程S3では、撮像工程S2で撮像した画像に基づいて、接着フィルム付きウエハ39を分割する位置を決定する。例えば、分割位置決定工程S3では図5に示すように、画像処理部54が、ウエハ10の機能面10aの画像からスクライブライン14の位置を認識し、スクライブライン14に沿って、ウエハ10を分割する位置を決定する。
【0048】
<1−4.切削溝形成工程>
切削溝形成工程S4では、例えば図6に示すように、分割位置決定工程S3で決定した位置に基づいて、接着フィルム付きウエハ39に、接着フィルム付きウエハ39の一方の面39a側から他方の面39bまで達しない深さの切削溝61を形成する。
【0049】
例えば、切削溝形成工程S4では、上述した図5に示すダイシング装置40を用いて以下の処理を行う。
【0050】
まず、画像処理部54がスクライブライン14に沿って、ウエハ10をx方向に分割することを決定した場合、駆動部56は、アライメントステージ44を駆動して、スクライブライン14の一端がブレード50の下方に位置するように、チャックテーブル42を移動させる。
【0051】
続いて、駆動部56は、切削部48を駆動して、ブレード50を回転させた状態で切削部48を下方に移動させて、ブレード50をウエハ10に圧接させる。
【0052】
続いて、駆動部56は、アライメントステージ44を駆動して、ウエハ10をx方向に移動させる。
【0053】
これにより、切削溝形成工程S4では、スクライブライン14に沿って、ウエハ10を分割し、接着フィルム付きウエハ39の一方の面39a側から他方の面39bまで達しない深さの切削溝61、すなわち、チップ21の仕上がり厚さに相当する深さの切削溝61が形成された接着フィルム付きウエハ39を形成する。
【0054】
<1−5.保護部材配設工程>
保護部材配設工程S5では、切削溝形成工程S4で切削溝61が形成された接着フィルム付きウエハ39の保護フィルム24の表面に、保護部材62を配設する。
【0055】
例えば図7(A)、図7(B)に示すように、保護部材配設工程S5では、接着フィルム付きウエハ39をダイシングテープ18から剥がすとともに、接着フィルム付きウエハ39の一方の面39a側に、保護部材62を貼着して配設する。このような保護部材62としては、例えば、バックグラインドテープが挙げられる。粘着剤は、その後、保護部材62が剥離される際に粘着成分が接着フィルム付きウエハ39の表面に残らないようにするため、紫外線照射型の保護テープ、すなわち、UVテープを使用するのが好ましい。保護部材62を配設した接着フィルム付きウエハ39は、次の分割工程S6に移行される。
【0056】
<1−6.分割工程>
分割工程S6では、例えば図8に示すように、保護部材配設工程S5で保護部材62を配設した接着フィルム付きウエハ39の他方の面39bを研削して、接着フィルム付きウエハ39を分割する。これにより、一方の面にバンプ16を有するチップ21の一方の面に接着層22が積層された接着層付きチップ64と、保護フィルム24とを備える複数の接着フィルム付きチップ60を形成する。
【0057】
例えば、分割工程S6は、少なくともチャックテーブルと、研削砥石と、研削砥石を駆動する駆動部と、駆動部を支持し上下方向の移動をガイドするガイド部と、駆動部を上下方向に精密に移動させる移動用駆動部とを備える研削装置によって行うことができる。
【0058】
保護部材62を配設した接着フィルム付きウエハ39は、図8に示すように、他方の面39bを上にし、保護部材62をチャックテーブル(図示せず)に当接させて載置固定し、研削水を供給しながら研削砥石を駆動して接着層付きウエハ39の他方の面39b側を研削する。また、接着フィルム付きウエハ39は、図8に示すように、表面39b側から、切削溝形成工程S4で形成した切削溝61が露出するまで全面的に均等に研削する。
【0059】
このように、接着フィルム付きウエハ39の他方の面39b側を研削することによって、接着フィルム付きウエハ39を分割し、接着層付きチップ64と、保護フィルム24とを備える複数の接着フィルム付きチップ60を形成する。このように形成された複数の接着フィルム付きチップ60は、切削溝61の深さに対応した厚み、すなわち、仕上がり厚みを有する。
【0060】
<1−7.ピックアップ工程>
ピックアップ工程S7では、接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24から、接着層付きチップ64をピックアップ(剥離)する。
【0061】
例えば、ピックアップ工程S7では、図9に示すように、まず、接着フィルム付きチップ60の裏面60b側を上に向け保護部材62を下側にし、フレーム20にダイシングテープ18を介して貼着載置させる。
【0062】
続いて、接着フィルム付きチップ60を図9の矢印の方向に引っ張ることで、複数の接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24のそれぞれから、接着層付きチップ64をピックアップする。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法では、分割工程S6において、保護部材62を配設した接着フィルム付きウエハ39の他方の面39bを研削して接着フィルム付きウエハ39を分割することにより、ウエハ10をダイシングする際のチッピングを防止することができる。チッピングとは、例えば、研削処理により、チップ上に割れ、欠け、クラック等が入ることをいう。例えば、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法では、薄いウエハ(例えば、50μm以下のウエハ)をダイシングする場合においてもチッピングを防止し、ウエハをダイシングする際の加工性を良好にすることができる。
【0064】
また、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法では、分割工程S6において、保護部材62を配設した接着フィルム付きウエハ39の他方の面39bを研削して接着フィルム付きウエハ39を分割するとともに、上述したように、接着層22と保護フィルム24との剥離力を所定の値とする。これにより、分割工程S6において、保護フィルム24から接着層付きチップ64が剥がれてしまうことを防止できるため、ウエハをダイシングする際の加工性をより良好にすることができる。
【0065】
さらに、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法では、切削溝形成工程S4において、接着フィルム付きウエハ39の一方の面39a側から他方の面39bまで達しない深さの切削溝61を形成する。これにより、分割工程S6において、ウエハ10を分割する際の切削屑等の異物のコンタミネーションを防止することができる。すなわち、本実施の形態に係るウエハのダイシング方法では、接着層22の表面が保護フィルム24に覆われた状態で、接着フィルム付きチップ60を製造することができるため、接着層22の表面に切削屑が付着することを防止できる。したがって、例えば、上述した分割工程S6において、接着フィルム付きウエハ39の他方の面39b側を研削砥石で研削水を供給しながら研削しても、ストリートに沿って形成した各切削溝61が接着フィルム付きウエハ39の外周端縁まで達していないので、汚れた研削水が接着フィルム付きウエハ39の外周端縁から内部に浸透してチップを汚染するおそれがない。
【0066】
<2.接続方法及び接続構造体>
図10に示すように、本実施の形態に係る接続方法は、貼着工程S1と、撮像工程S2と、分割位置決定工程S3と、切削溝形成工程S4と、保護部材配設工程S5と、分割工程S6と、ピックアップ工程S7と、圧着工程S8とを有する。なお、貼着工程S1〜ピックアップ工程S7は、上述した図1に示す処理と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0067】
<2−1.圧着工程>
圧着工程S8では、ピックアップ工程S7でピックアップした接着層付きチップ64を、接着層22を介して電極72を有する回路基板70に圧着し、電極72と接着層付きチップ64のバンプ16とを接続する。
【0068】
例えば、圧着工程S8では、図11に示すような押圧装置28を用いて、次の処理を行う。
【0069】
まず、回路基板70上に複数の接着層付きチップ64を仮搭載する。すなわち、保護フィルム24が剥離されていることが確認された接着層付きチップ64を、回路基板70の表面の所定の位置に配置する。接着層付きチップ64と回路基板70とは、両者を押圧したときに、接着層付きチップ64のバンプ16と回路基板70の電極72とが電気的に接続するように位置合わせされる。
【0070】
続いて、接着層付きチップ64が配置された回路基板70を、押圧装置28のステージ30の上に載置する。
【0071】
続いて、ヘッド32に保持されている押圧部材36で、接着層付きチップ64を回路基板70の表面に押圧する。例えば、EBS(Elasticity Bonding System)工法と呼ばれる回路基板全体を弾性体で覆った状態で押圧する方法により、同一基板上に複数仮配置されたチップを一括して圧着する方法が挙げられる。EBS工法では、ヘッド32本体の回路基板と対抗する部分に凹部が設けられたエラストマーからなる圧着部材を用いる。すなわち、EBS工法では、プリント基板全体を覆う弾性エラストマーからなる押圧面を有する熱圧着ヘッドにより複数の接着層付きチップを押圧し、複数の接着層付きチップ64を一括して本圧着させる。これにより、接着層付きチップ64を、接着層22を介して回路基板70の表面に一括して実装することができる。
【0072】
このように、本実施の形態に係る接続方法では、図12に示すように、接着層付きチップ64のバンプ16と、回路基板70の電極72とが接着層22を介して接続されてなる接続構造体80を製造することができる。
【0073】
<3.他の実施形態>
上述した分割位置決定工程S3において、画像処理部54は、ウエハ10の機能面の画像からバンプ16またはアライメントマークの位置を認識して、スクライブライン14の位置を認識してもよい。
【0074】
また、上述した押圧部材36は弾性体であってよい。これにより、複数の接着層付きチップ64を回路基板70の表面に同時に押圧した場合であっても、接着層付きチップ64と回路基板70とを良好に接続することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、押圧部材36にエラストマーなどの弾性体を用いて、複数の接着層付きチップ64を回路基板70に一括して実装する場合について説明した。しかし、回路基板70に接着層付きチップ64を実装する方法は、これに限定されない。例えば、エラストマーなどの弾性体を用いずに、接着層付きチップ64を回路基板70に実装してもよい。また、複数の接着層付きチップ64を、1つずつ回路基板70に実装してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、押圧装置28を用いて、接着フィルム26をウエハ10に貼付する場合について説明した。しかし、接着フィルム26をウエハ10に貼付する方法は、これに限定されない。例えば、ロールラミネーターを用いて、接着フィルム26をウエハ10に貼付してもよい。
【0077】
また、押圧部材36は、上述したEBSのみに限定される訳ではなく、通常の熱圧着ヘッド(セラミックや金属等の硬質ヘッド)や超音波ヘッドの使用を妨げるものではない。
【0078】
例えば、図13に示すように、接着層付きチップ64を回路基板70に接着するようにしてもよい。図13において、図1から図12までと同一または類似の部分には、図1から図12までと同一の参照番号を付して、重複する説明を省く場合がある。
【0079】
押圧装置82は、フリップチップボンディングにより、回路基板70とチップ21とを電気的に接続する。押圧装置82は、ステージ84と、セラミックツール86とを備える。押圧装置82およびステージ84は、それぞれ、押圧装置28およびステージ30と同様の構成を有してよい。
【0080】
セラミックツール86は、接着層付きチップ64を回路基板70に対して押圧する。セラミックツール86は、複数の接着層付きチップ64を、1つずつ回路基板70に対して押圧してよい。セラミックツール86は、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム等のセラミックを含んでよい。セラミックツール86は、ヘッドの一例であってよい。セラミックツール86は、セラミックツール86を加熱する加熱装置88を有してよい。加熱装置88は、セラミックヒータであってよい。
【0081】
また、接着フィルム付きチップ60から接着層付きチップ64を剥離した後、ダイシング装置40の撮像部46が、ウエハ10の表面の画像を撮像してもよい。これにより、画像処理部54は、ウエハ10の表面の画像を処理して、接着フィルム付きチップ60から、接着層付きチップ64が剥離されているか否かを確認することができる。
【0082】
例えば、保護フィルム24として、波長が440nm以上700nm以下の光のうち特定の波長の光を吸収する材料を用いた場合、ウエハ10の表面の可視光画像における保護フィルム24が存在する領域は、着色されて見える。これにより、接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24から、接着層付きチップ64が剥離されているか否かを確認することができる。画像処理部54は、接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24から剥離されている接着層付きチップ64を選別してよい。
【0083】
また、例えば、接着フィルム付きチップ60から個々の接着層付きチップ64を分離するピックアップ装置が、接着フィルム付きチップ60から接着層付きチップ64が剥離されているか否かを確認してもよい。
【0084】
また、例えば、接着フィルム付きチップ60から個々の接着層付きチップ64を分離するピックアップ装置が、接着層付きチップ64をピックアップする場合、接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24から接着層付きチップ64が剥離されていないときには、保護フィルム24から接着層付きチップ64が剥離されているときと比較して、ピックアップ装置の先端とダイシングテープ18との距離がより遠い地点で、ピックアップ装置と接着層付きチップ64とが接触する。そこで、ピックアップ装置が検出する圧力変化に基づいて、接着フィルム付きチップ60の保護フィルム24から接着層付きチップ64が剥離されているか否かを確認してよい。
【実施例】
【0085】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、下記のいずれかの実施例に本発明の範囲が限定されるものではない。
【0086】
<接着フィルムの作製>
接着層として、厚みが30μmのNCFを用いた。各接着フィルムの保護フィルムとして、厚さが100μmの離型処理方法と厚さの異なるポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」という。)を用いた。
【0087】
<バインダーαを用いた接着フィルム>
バインダーαを用いた接着フィルムは、以下の手順で作製した。まず、フェノキシ樹脂(YP−50、東都化成株式会社製)10質量部、液状エポキシ樹脂(EP828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)10質量部、イミダゾール系潜在性硬化剤(ノバキュア3941HP、旭化成株式会社製)15質量部、ゴム成分(RKB、レジナス化成株式会社製)5質量部及びシランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)1質量部にトルエン100質量部を加えて攪拌して、均一な樹脂溶液(以下、「バインダーα」という)を調整した。
【0088】
次に、バーコーターを用いて、各保護フィルムの上に、上記の樹脂溶液を塗布した。樹脂溶液を塗布した保護フィルムを80℃のオーブンに入れ、溶媒を揮発させて、樹脂溶液を乾燥させることで、接着層であるNCFと保護フィルムであるPETフィルムとが順次積層されてなる接着フィルムを作製した。
【0089】
<バインダーβを用いた接着フィルム>
バインダーβを用いた接着フィルムは、バインダーαの組成に無機フィラー(不定形シリカ 平均粒径0.5μm アドマテックス社製)を100質量部加えたもの(以下、「バインダーβ」という)を用いたこと以外は、バインダーαを用いた接着フィルムと同様に作製した。
【0090】
接着フィルムにおいて、接着層と保護フィルムとの剥離力は、保護フィルムの上に接着層を塗布する前に、保護フィルムの表面に離型処理を施すことで調整した。離型処理は、シリコーン系の剥離剤を保護フィルムの表面に塗布した後、保護フィルムを加熱して、保護フィルムを乾燥させることで実施した。シリコーン系の剥離剤の配合を調整することで、接着層と保護フィルムとの剥離力が異なる表1に示す実施例1〜実施例10及び表2に示す比較例1〜比較例3の接着フィルムを作製した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
<透過率について>
接着フィルムの透過率は、CM−3600d(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、全光線透過率を測定した。接着フィルムの透過率は、以下の手順で算出した。まず、接着フィルムの接着層とガラス基板とが対向するように各接着フィルムをガラス基板の上に貼り付けて、測定試料を準備した。ガラス基板の厚さは1.1mmであった。次に、ガラス基板単体の全光線透過率を測定した。測定は、透過させる光の波長を360nmから740nmまで連続的に変化させて実施した。次に、準備した測定試料のそれぞれについても同様に、全光線透過率を測定した。ガラス基板単体の全光線透過率を100%として、各接着フィルムの透過率を算出した。
【0094】
<保護フィルムの厚みについて>
表1及び表2に示す保護フィルムの厚みは、マイクロメーター(ミツトヨ株式会社製)を用いて測定した。
<接着フィルムに対する保護フィルムの剥離力>
【0095】
表1及び表2に示す接着フィルムに対する保護フィルムの剥離力は、テンシロン(株式会社オリエンテック製)を用いて測定した。引張方向は、180度方向した。引張方法は、T型剥離とした。引張速度は、毎分300mmに設定した。測定は、温度23±2℃、湿度55±10%RHの条件で実施した。
【0096】
<ダイシング試験について>
実施例1〜実施例10では、ダイシング試験として、図1に示す各工程の処理、すなわち、接着層付きウエハに切削溝を形成した後に研削処理を行った。
【0097】
シリコンウエハは、直径が6インチであり、厚さが700μmであった。また、シリコンウエハに形成されているバンプは、高さが25μmであった。
【0098】
切削溝形成工程S4では、ダイシング装置(DFD−651)により、接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成した。ブレードは、NBC−ZB2030−0.04t(株式会社ディスコ製)を用いた。ブレードの厚さは、40μmであった。ブレードの回転数は30000rpmに設定した。ブレードの送り速度は10mm/secに設定した。
【0099】
分割工程S6では、研削装置(DFD−8540 株式会社ディスコ製)を用いて、接着フィルム付きウエハのそれぞれを6.3mm×6.3mmの接着フィルム付きチップに分割した。加工条件は、粗削り切削速度を0.4μm/secとし、仕上げ切削速度を0.3μm/secとした。研削後のウエハの厚みは、200μmとした。以下、実施例1〜実施例10で行った処理を「ダイシング工程A」という。
【0100】
比較例1では、図1に示す切削溝形成工程S4において、接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達する深さの切削溝を形成したこと以外は、実施例1〜実施例10と同様にダイシング試験を行った。以下、比較例1で行った処理を「ダイシング工程B」という。
【0101】
比較例2では、図1に示す分割工程S6においてウエハの厚みが200μmとなるように研削処理を行った後に、切削溝形成工程S4において接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達する深さの切削溝を形成したこと以外は、実施例1〜実施例10と同様にダイシング試験を行った。以下、比較例2で行った処理を「ダイシング工程C」という。
【0102】
比較例3では、図1に示す分割工程S6を行わずに、貼着工程S1においてウエハの厚みが200μmとなるように研削処理を行った後にウエハに接着フィルムを貼り合わせたこと以外は、比較例2と同様にダイシング試験を行った。以下、比較例3で行った処理を「ダイシング工程D」という。
【0103】
<パターン認識性評価について>
パターンの視認性は、DFD−651(株式会社ディスコ製)に搭載されたCCDカメラでシリコンウエハの表面に形成されたパターンを観察した。パターンの線幅は30μmであった。
【0104】
表1及び表2において、パターン認識性が「○」とは、装置認識スコアが80以上である、すなわち、パターン認識性が良好であることを示す。また、パターン認識性が「△」とは、装置認識スコアが80未満である、すなわち、パターン認識性が良好ではないことを示す。
【0105】
<加工性について>
加工性は、図1に示す分割工程S6における研削処理時のチップ飛びやチップのズレ及び研削処理後のチッピングの程度を観察することにより評価した。
【0106】
表1及び表2において、加工性が「◎」とは、チップ飛び・ズレ無しであってチッピングなし(10点平均中不良なし)であることを示す。加工性が「○」とは、チップ飛び・ズレが無しであって、チッピングが小(10点平均中、不良が10%未満)であることを示す。加工性が「△」とは、一部にズレ(10点平均中、不良が30%未満)があることを示す。加工性が「×」とは、チッピングが多い(10点平均中、不良が50%以上)ことを示す。
【0107】
<実施例及び比較例の評価結果について>
表1に示すように、実施例1〜実施例10では、加工性、カバーフィルム剥離性及び接続信頼性が良好であった。特に、実施例2及び実施例3では、加工性が他の実施例と比較して、より良好であった。
【0108】
一方、表2に示すように、比較例1では、図1に示す切削溝形成工程S4において、接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成せず、上述したダイシング工程Bを行ったため、加工性が良好ではなかった。
【0109】
また、表2に示すように、比較例2では、図1に示す切削溝形成工程S4において、接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成せず、上述したダイシング工程Cを行ったため、加工性が良好ではなかった。
【0110】
また、表2に示すように、比較例3では、図1に示す切削溝形成工程S4において、接着フィルム付きウエハに、接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成せず、上述したダイシング工程Dを行ったため、加工性が良好ではなかった。
【符号の説明】
【0111】
10 ウエハ、12 治具、14 スクライブライン、16 バンプ、18 ダイシングテープ、20 フレーム、21 チップ、22 接着層、24 保護フィルム、26 接着フィルム、28 押圧装置、30 ステージ、32 ヘッド、34 加熱装置、36 押圧部材、38 保持部、39 接着フィルム付きウエハ、40 ダイシング装置、42 チャックテーブル、44 アライメントステージ、46 撮像部、48 切削部、50 ブレード、52 制御部、54 画像処理部、56 駆動部、60 接着フィルム付きチップ、61 切削溝、62 保護部材、64 接着層付きチップ、70 回路基板、72 電極、80 接続構造体、82 押圧装置、84 ステージ、86 セラミックツール、88 加熱装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に回路パターンを有するウエハの該一方の面に、接着層と透過性を有する保護フィルムとが順次積層されてなる接着フィルム付きウエハの他方の面をダイシングテープに貼着する貼着工程と、
前記接着フィルム付きウエハの一方の面で反射して前記接着層及び前記保護フィルムを透過した光を受光することにより、該接着フィルム付きウエハにおける前記ウエハの一方の面の画像を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像した画像に基づいて、前記接着フィルム付きウエハを分割する位置を決定する分割位置決定工程と、
前記分割位置決定工程で決定した位置に基づいて、前記接着フィルム付きウエハに、該接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成する切削溝形成工程と、
前記切削溝が形成された接着フィルム付きウエハの前記保護フィルムの表面に、保護部材を配設する保護部材配設工程と、
前記保護部材を配設した接着フィルム付きウエハの他方の面を研削して該接着フィルム付きウエハを分割することにより、一方の面に前記回路パターンを有するチップの一方の面に前記接着層が積層された接着層付きチップと、前記保護フィルムとを備える複数の接着フィルム付きチップを形成する分割工程と、
前記接着フィルム付きチップから、前記接着層付きチップをピックアップするピックアップ工程と
を有するウエハのダイシング方法。
【請求項2】
前記接着層と前記保護フィルムとが順次積層されてなる接着フィルムは、波長が440〜700nmの光の透過率が74%以上である請求項1記載のウエハのダイシング方法。
【請求項3】
前記保護フィルムと前記接着層との剥離力は、0.17N/5cm以上である請求項1又は2記載のウエハのダイシング方法。
【請求項4】
前記保護フィルムの厚さは、50〜100μmである請求項1乃至3のうちいずれか1項記載のウエハのダイシング方法。
【請求項5】
前記接着層と前記保護フィルムとが順次積層されてなる接着フィルムは、NCF又はACFを含む請求項1乃至4のうちいずれか1項記載のウエハのダイシング方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項記載のウエハのダイシング方法でピックアップした接着層付きチップを、前記接着層を介して電極を有する回路基板に圧着し、該電極と該接着層付きチップの前記回路パターンとを接続する圧着工程を有する接続方法。
【請求項7】
前記接着層が、NCFまたはACFである請求項6記載の接続方法。
【請求項8】
前記圧着工程は、ヘッドに保持されている弾性体で、前記接着層付きチップを前記回路基板の表面に押圧する押圧段階を有する請求項6又は7記載の接続方法。
【請求項9】
前記押圧段階は、前記弾性体で、複数の前記接着層付きチップを前記回路基板の表面に同時に押圧する段階を有する請求項8記載の接続方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のうちいずれか1項記載の接続方法により得られる接続構造体。
【請求項1】
一方の面に回路パターンを有するウエハの該一方の面に、接着層と透過性を有する保護フィルムとが順次積層されてなる接着フィルム付きウエハの他方の面をダイシングテープに貼着する貼着工程と、
前記接着フィルム付きウエハの一方の面で反射して前記接着層及び前記保護フィルムを透過した光を受光することにより、該接着フィルム付きウエハにおける前記ウエハの一方の面の画像を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像した画像に基づいて、前記接着フィルム付きウエハを分割する位置を決定する分割位置決定工程と、
前記分割位置決定工程で決定した位置に基づいて、前記接着フィルム付きウエハに、該接着フィルム付きウエハの一方の面側から他方の面まで達しない深さの切削溝を形成する切削溝形成工程と、
前記切削溝が形成された接着フィルム付きウエハの前記保護フィルムの表面に、保護部材を配設する保護部材配設工程と、
前記保護部材を配設した接着フィルム付きウエハの他方の面を研削して該接着フィルム付きウエハを分割することにより、一方の面に前記回路パターンを有するチップの一方の面に前記接着層が積層された接着層付きチップと、前記保護フィルムとを備える複数の接着フィルム付きチップを形成する分割工程と、
前記接着フィルム付きチップから、前記接着層付きチップをピックアップするピックアップ工程と
を有するウエハのダイシング方法。
【請求項2】
前記接着層と前記保護フィルムとが順次積層されてなる接着フィルムは、波長が440〜700nmの光の透過率が74%以上である請求項1記載のウエハのダイシング方法。
【請求項3】
前記保護フィルムと前記接着層との剥離力は、0.17N/5cm以上である請求項1又は2記載のウエハのダイシング方法。
【請求項4】
前記保護フィルムの厚さは、50〜100μmである請求項1乃至3のうちいずれか1項記載のウエハのダイシング方法。
【請求項5】
前記接着層と前記保護フィルムとが順次積層されてなる接着フィルムは、NCF又はACFを含む請求項1乃至4のうちいずれか1項記載のウエハのダイシング方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項記載のウエハのダイシング方法でピックアップした接着層付きチップを、前記接着層を介して電極を有する回路基板に圧着し、該電極と該接着層付きチップの前記回路パターンとを接続する圧着工程を有する接続方法。
【請求項7】
前記接着層が、NCFまたはACFである請求項6記載の接続方法。
【請求項8】
前記圧着工程は、ヘッドに保持されている弾性体で、前記接着層付きチップを前記回路基板の表面に押圧する押圧段階を有する請求項6又は7記載の接続方法。
【請求項9】
前記押圧段階は、前記弾性体で、複数の前記接着層付きチップを前記回路基板の表面に同時に押圧する段階を有する請求項8記載の接続方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のうちいずれか1項記載の接続方法により得られる接続構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−253940(P2011−253940A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126919(P2010−126919)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】
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