説明

ウエハを薄くする方法及びサポートプレート

【課題】本発明は、ディンプルが発生しないようにウエハを薄くする方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
ウエハ(2)が接着部材(4)で密着された貫通孔(10)をもつサポートプレート(1)の上記ウエハが密着されていない面における上記貫通孔の開口部を100μm以上の厚さを有するディンプル防止部材(3)で塞ぎ、それから、このディンプル防止部材を介してサポートプレートを真空吸着しつつ、上記ウエハを研削/研磨するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハを薄くする方法に関し、特に貫通孔をもつサポートプレートに貼り付けたウエハを薄く研削/研磨する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器の薄型化、小型化、又は軽量化の開発が進むにつれ、機器に組み込まれる半導体チップの更なる薄板化が求められてきている。この半導体チップに利用されるウエハは現状は厚みが125μm〜150μmであるが、25μm〜50μmの薄板化の開発も進められている。
【0003】
このように薄板化されるウエハは、ウエハの厚みを薄くする研削/研磨工程やウエハの裏面処理を行う工程などを経て製造され、最終的に複数の半導体チップに分割される。ウエハが薄板化されるにつれ、それ自体で形状を維持することができず、例えば折れ曲がるなどしてそのハンドリングが困難になる。そのため、通常は、そのウエハを硬い支持板(以下、サポートプレートと呼ぶこととする)に貼り付けておき、各工程ではそのサポートプレートごと上記ウエハをハンドリングするようにしている。
【0004】
このようなサポートプレートを使用してウエハを薄板化する方法の中には、研削/研磨工程後にウエハ裏面に膜を形成する工程が含まれるものもある。この場合においてウエハの薄板化の実施方法を開示した文献には、研削/研磨で生じたコンタミネーション(以下、コンタミと略称する)の影響をその膜の形成時に受けないように保護テープを使用することが記載されている。
【0005】
その保護テープを使用する場合、先ず、半導体ウエハを貼り付けた支持基板(上記サポートプレートに相当)の裏面側にその保護テープを事前に貼り付けておき、その保護テープを貼り付けたままの状態で上記半導体ウエハの裏面を研削/研磨する。続いて、その研削/研磨後に、ウエハ及び支持基板に付着しているコンタミを洗浄し、更に上記保護テープを剥がし、支持基板にコンタミの付着が少ない状態で膜形成工程を行う(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−150434号公報(段落「0025」、「0033」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ウエハを薄板化する場合に使用される上述のサポートプレートには、例えば貫通孔を有するものや穴を有しない表面の平らなものなど様々な形態のものが開発されている。
【0007】
その中で、上記貫通孔をもつ形態のサポートプレートは、後に接着能力の緩和が可能な部材(例えばアルコールにより接着能力が緩和される接着剤などがあり、以下ではそれらのグループを接着部材と総称することにする)を介してそのサポートプレート面にウエハを貼り合わせる場合に使用される。その貫通孔は、ウエハが貼り合わされる範囲内で開口する配置に、一度貼り合わされたウエハを後にそのサポートプレートから剥離するための溶解液(剥離液)の通路として形成されている。
【0008】
半導体製造時の各種処理工程では、上記ウエハは例えば作業ロボットにサポートプレートを把持させるなどしてハンドリングされ、サポートプレートの裏面の真空吸着や静電吸着などにより所定位置に固定される。
【0009】
しかし、この形態のサポートプレートを使用した場合、サポートプレートから剥離した後のウエハ表面の上記貫通孔の対応位置にディンプルが生じるので問題であった。
図6は、そのディンプルが発生したウエハの斜視図である。同図に示されるようにウエハ9の表面9−1には無数のディンプル90が発生する。
【0010】
このディンプル90の発生原因としては、研削/研磨装置が例えば、ウエハ表面9−1に貼り付けられた不図示のサポートプレートをウエハ9が上面に位置する向きで台上に真空吸着固定し、ウエハ9の上方側からこのウエハ9の露出面(ウエハの裏面)9−2上に例えば研削ホイール等を押し下げてそのウエハ9を薄く研削/研磨する構成をとる場合に、次の点が考えられる。第一に、研削ホイール等の押圧力によりウエハ9とサポートプレートの間に介在する不図示の接着部材が上記サポートプレートの開口部に沈み込み、第二に、サポートプレート裏面の真空吸着により上記貫通孔を通じて上記接着部材がサポートプレートの開口部に引き込まれ、これらの反動で生ずるということである。
【0011】
そこで本発明は、上記問題を鑑みてなされた発明であり、ウエハを薄くする方法及びサポートプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するために以下のように構成する。
本発明のウエハを薄くする方法の態様の一つは、ウエハが接着部材で密着された貫通孔をもつサポートプレートの上記ウエハが密着されていない面における上記貫通孔の開口部を100μm以上の厚さを有するディンプル防止部材で塞ぎ、それから、このディンプル防止部材を介してサポートプレートを真空吸着しつつ、上記ウエハを研削/研磨するようにする。
【0013】
更に、上記研削/研磨の後に上記ウエハからサポートプレートを剥離するときは、先ず上記ディンプル防止部材を取り払い、それから、所定の剥離液を上記貫通孔を通じて上記接着部材に接触させて上記ウエハから上記サポートプレートを剥離するようにする。
【0014】
なお、上記ディンプル防止部材としてテープを利用することが好ましく、このテープで上記サポートプレートの上記ウエハが密着されていない面に形成されている貫通孔の開口部の全てを塞ぐことが好ましい。サポートプレートの一面でのテープの貼り付け状態は、サポートプレートの面と段差が生じないようにその面に一様に貼り付けられていることが好ましい。
【0015】
本発明のサポートプレートの態様の一つは、ウエハを接着部材を挟んで面サポートするためのサポートプレートに、上記ウエハを密着させる範囲内に開口部をもつ貫通孔と、上記開口部へ通じている上記貫通孔の第二開口部(該開口部の反対側の開口部)を塞ぐ着脱式の100μm以上の厚さのディンプル防止部材と、を備える。
【0016】
また、上記ディンプル防止部材は、粘着力により上記サポートプレートに貼り合わさるテープであることが好ましく、当該テープは、上記第二開口部の全てを覆い隠す大きさに構成されていることが好ましい。なお、サポートプレートの一面でのテープの貼り付け状態は、サポートプレートの面と段差が生じないようにその面に一様に貼り付けられていることが好ましい。
【0017】
本発明では、サポートプレートを真空吸着して該サポートプレート上のウエハを研削/研磨するよりも前に、ウエハが密着されてない側のサポートプレート面上に開口している貫通孔の開口部(第二開口部)を100μm以上の厚さを有するディンプル防止部材で塞ぐ、または、その開口部が100μm以上の厚さを有するディンプル防止部材で予め塞がれているサポートプレートを準備した。これにより研削/研磨工程において上記貫通孔の内部空間は密閉され、更に100μm以上の厚みも作用し、開口部での研削ホイール等の押圧力による接着部材の上記沈み込みや、真空吸着による接着部材の上記引き込みが低減される。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、ウエハ表面のディンプルの発生を大幅に抑止することが可能になる。
ディンプル防止部材で開口部を塞いだ貫通孔の反対側の開口部の位置のウエハはディンプルが発生せず、その位置のウエハからは扁平率の高い高精度の半導体チップが抽出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る研削/研磨工程で利用するサポートプレートの構成例である。
【0020】
同図においては、各部の配置関係を分かりやすくするためにウエハを貼り合わせてある状態のサポートプレートを示している。
同図(a)は、上記サポートプレートの斜視図であり、その全体構成が分かるように透視図で示している。
【0021】
本例のサポートプレート1は、同図に上下方向に所定の厚みをもつ円盤形状をしており、その上面1-1及び下面1-2は平坦に形成されている。このサポートプレート1は、ウエハ2を不図示の接着部材で上面1−1に密着させてそのウエハ2を面サポートし、またその下面1−2にディンプル防止部材3を装着している。
【0022】
本例のサポートプレート1は、更に、その厚み方向(上面1−1から下面1−2)に貫通孔10が形成されている。この貫通孔10はサポートプレート上面1−1のウエハ2の密着範囲に複数形成されており、その貫通孔10の片側がサポートプレート上面1−1上のその密着範囲で開口し(この開口部を第一開口部と呼ぶこととする)、もう片方はサポートプレート下面1−2で開口している(この開口部を第二開口部と呼ぶこととする)。なおこの貫通孔10の数や配置は、同図では一列あたり15個の貫通孔10が3列形成されたものを示しているがこれは貫通孔を図から読み取りやすくするためであり、実際にはウエハ2の密着範囲全体に亘って等間隔またはランダムにより高い密集密度で形成されている。この貫通孔は、従来構成であるため特に詳しくその機能を説明しないが、ウエハの研削/研磨処理や裏面形成処理などの各種加工処理後にサポートプレートとウエハ間の上記接着部材を溶解するために使用する溶解液(剥離液)の通路として利用される。
【0023】
同図(b)は、同図(a)のA−A´方向の断面図である。同図に示されるように、本例のサポートプレート1は、その上面に接着部材が薄く延ばされた接着層4を介して研削/研磨処理前の厚みのあるウエハ2が密着している。サポートプレート1の内部ではその上面1−1から下面1−2に向けて複数の貫通孔10(同図には15個の貫通孔)が延びており、その端部である下面1−2にディンプル防止部材3が装着されている。このディンプル防止部材3にはサポートプレートからの取り外しが可能な部材(例えば片面に粘着性をもつテープ)が使用されている。ディンプル防止部材としてそのテープを利用する場合のサポートプレートへの装着は、テープの粘着面をサポートプレートの下面1−2に貼り合わせるようにして行う。また、サポートプレートからの取り外しは、そのテープを粘着面ごとサポートプレートから剥がす(取り払う)ことにより行う。なお、ディンプル発生の防止効果を得るためにはディンプル防止部材3の厚みを100μm以上とすることが望ましいため、本例のディンプル防止部材3にはその厚みを100μm以上に設計したテープを利用している。同図(c)は範囲Cの拡大図で、ディンプル防止部材3は上面に粘着層30を有するテープで構成され、貫通孔10の第二開口部10−2を塞ぐようにしてサポートプレートの下面1−2に貼り付けられている。
【0024】
同図(d)は、同図(a)のB方向の図(つまり、下面図)である。同図には、貫通孔10の第二開口部10−2の位置とディンプル防止部材3の装着範囲との関係が分かるようにディンプル防止部材3で隠れて見えない貫通孔10の第二開口部10−2を破線で示すようにしている。ディンプル防止部材3は、一部の貫通孔10の第二開口部10−2を塞ぐようにしてサポートプレートの下面1−2に貼り付けてもディンプル防止効果は生じる。しかし、ウエハ2の密着領域内に第一開口部をもつ貫通孔の第二開口部10−2を全て塞ぐように(例えば、同図のような配置で)貼り付けることが望ましい。このように第二開口部10−2の全てを塞ぐことで、ディンプル防止効果はより高まる。具体的には、第二開口部10−2が塞がれることによりその貫通孔の第一開口部が位置するウエハ上の領域でディンプルの発生を抑えることができる、つまりその領域のウエハの扁平率を高くすることができる。このため、ウエハの密着領域内に第一開口部をもつ貫通孔の第二開口部10−2を全て塞ぐようにすれば、ウエハの全範囲に亘って高い扁平率をもたせることが可能になり、そのウエハから高精度の半導体チップをより多く抽出できるようになる。ゆえに、ディンプル防止部材の大きさはその第二開口部の全てを覆い隠す大きさに設計するのが好ましい。
【0025】
なお、本例で示すサポートプレート1は、6インチ、8インチ及び12インチのウエハの全てに適用できるように12インチよりも1mm程度大きめの径で設計している。またその厚みを500〜1000μm程度に、貫通孔の径を400〜500μm程度に設計している。材料としては、ガラスを用いているが、その他にも、鉄-ニッケル合金(ニッケル36%の合金:インバー)や、セラミック板などが利用できる。
【0026】
また、ウエハとサポートプレートを密着させる接着部材には、加工途中に洗浄や冷却のために水などの液体が流し込まれる場合は、その途中でウエハがサポートプレートから剥離しないように上記液体に対して非溶性を示し且つ剥離液に対して溶性を示す材料を選択して用いる。
【0027】
また、ディンプル防止部材においても、加工途中に洗浄や冷却のために水などの液体を浴びるような場合は、この液体に対して非溶性を示し且つ人の力で剥がしやすい材料を選択して用いる。
【0028】
以上の設計情報は一例であり、加工対象のウエハの大きさや、装置で使用する各種薬品などに応じて適宜設計して良い。
以上の例では貫通孔の第二開口部がサポートプレートの下面にあるものとして説明した。以下でもこの例を元に説明することとするが、例えばサポートプレートに厚みがありその側面に第二開口部があるサポートプレートを使用する場合は、その側面の第二開口部をディンプル防止部材で塞ぐようにしても良い。また、それ以外の場所に第二開口部をもつサポートプレートを使用する場合においても、同じようにディンプル防止部材で第二開口部を塞ぐようにしても良い。この場合、その貫通孔が真空引きされるような場合にディンプル防止効果が表れる。
【0029】
(実施例1)
本実施例では、ディンプル防止部材の使用方法を説明する。
図2は、上記ディンプル防止部材を使用するときのウエハの薄板化工程の全体フローを説明するための図である。同図には、その実施の順にアルファベット(a)から(i)が付与されている。
【0030】
先ず、ウエハ2の表面(回路が形成されている面)に接着液(接着部材)4を落とし、不図示のスピンナーで回転させるなどしてその接着液4をウエハ2の表面上に薄く広げる(図2a)。この接着液4としては、例えばノボラックタイプのフェノール樹脂系材料を使用する。
【0031】
次に、ウエハ2の表面上の接着液4を予備乾燥させて流動性を低減させ、その接着液の層4にサポートプレートを貼り付ける(図2b)。上記予備乾燥にはオーブンを用いて例えば80℃で5分間加熱する。また接着層4の厚みはウエハ2の表面に形成した回路の高さに応じて決定する。
【0032】
次に、サポートプレート1のウエハ2が密着していない面(本明細書では、下面と呼んでいる)1−2に100μm以上の厚みのあるディンプル防止部材(本例では粘着テープ)3を貼り付ける(図2c)。この貼り付け方法は、テープの粘着面30をサポートプレート1の下面1−2に向かい合わせ、サポートプレート1の貫通孔10の開口部(本例では、サポートプレート下面1−2の外径より小径の円内にその開口部(第二開口部)が構成されており、同図においてその開口部を点で示している)を全て塞ぐようにして貼り付ける。このように貼り付け範囲は第二開口部が存在する範囲(同図cに点で示されている範囲)で良いため、サポートプレート1のエッジ付近に第二開口部が存在しない場合はその範囲まで覆う必要はない、つまり、サポートプレートの下面1−2の全体を覆う必要はない。また反対に、サポートプレートの下面1−2だけでなくその他の面(例えば側面や、上面1−1上のウエハ2の密着していない領域など)に上記第二開口部がある場合は、それらの第二開口部も積極的に覆うようにする。なお、ディンプル防止部材3で第二開口部の全てを覆うようにすることがより好ましいが、第二開口部の一部だけであっても良い。この場合、ディンプル防止部材3で覆った第二開口部をもつ貫通孔10のウエハ2の密着領域側における開口部(第一開口部)ではディンプルの発生を抑えることが可能になる。このため、その領域内の半導体チップは他の領域に比べて扁平率が高くなり、その領域から高精度の半導体チップを抽出できる。
【0033】
本例では、サポートプレート1とウエハ2との間の接着層4が十分に乾燥したあとにディンプル防止部材3を貼り合わせるようにしている。貫通孔10の径の大きさに応じて異なるが、接着層4の乾燥が不十分であるとその接着材料4がその貫通孔10を通じてディンプル防止部材3に接触してくっつき、後に述べるディンプル防止部材3の取り外しが困難になる場合を想定してのことである。ただし、貫通孔の径を十分に小さくしたり、接着材料の量を減らしたり、或いは貫通孔の長さを長く構成するなど、各種の設計を変えることで回避も可能である。このため、ディンプル防止部材3を装着するタイミングは、次に示す研削/研磨工程の前の段階であれば何れの段階にしても良く、また、例えば、図1に示す予めディンプル防止部材3が装着されたサポートプレート1を最初から使用するようにしても良い。
【0034】
次に、ディンプル防止部材が貼り付けられたサポートプレート1を反転し(つまりウエハ2の露出面が上向きになるようにし)、その露出面(本明細書では裏面と呼んでいる)を研削/研磨する(図2d)。
【0035】
この工程では、ウエハ2の露出面の上方から研削ホイール100を下ろし、その露出面を研削ホイール100で押し付けながら薄く削っていく。
図3は、模式的な研削/研磨装置の断面図である。
【0036】
同図に示されているように、ディンプル防止部材3が装着された当該サポートプレート1は、ウエハ2の露出面2−2が上向きになるようにして台上に置かれ、その露出面2−2上に研削ホイール100が押し下げられている。本例では台110に真空引き用の孔(110−1〜110−4)が形成されており、サポートプレート1の下面1−2に貼り付けられたディンプル防止部材3をその孔(110−1〜110−4)を通じて同図破線矢印の方向へ真空引きして台110の上面に吸着固定する。
【0037】
上記研削ホイール100は、回転軸100−1を中心軸にして回転しながらウエハの露出面2−2に同図の実線矢印に示す方向へ所定の押圧力を加えてその露出面2−2を一様に研削していく。こうして、ウエハ2の厚みを例えば125μm〜150μmのオーダー、要求に応じては25μm〜50μmのオーダーに薄くする。なお、研削時はウエハ2と研削ホイール100の間に摩擦熱が生じるため、ウエハの露出面に水を供給するなどしてその熱を抑える。
【0038】
この間、サポートプレート1の下面のディンプル防止部材3によりサポートプレート1の貫通孔10が塞がれている。このためこの貫通孔10の内圧変動は大幅に緩和され、ウエハ2とサポートプレート1の間の接着部材4の貫通孔10内部への落ち込み(ディンプルの発生原因)が大幅に緩和される。
【0039】
さて、図2に戻り、引き続き研削/研磨に続く工程の説明をする。
次の工程では、研削/研磨処理により薄板化したウエハ2を裏面処理する(図2e)。
この裏面処理としては、例えば、バックメタライズ加工(図2e−1)や回路形成処理(図2e−2)などがあり、これらの工程が不要であれば省くこともできる。
【0040】
上記裏面処理は、サポートプレート1にディンプル防止部材3を装着したまま行われる。このため、そのディンプル防止部材3はこの工程においてサポートプレート1の貫通孔10へのコンタミネーション(コンタミ)の進入やそれによる貫通孔10の詰りなどを防止する。
【0041】
次に、ウエハ2の露出面側を粘着性を有するダイシングテープ6に貼りつけ、更に、反対側の面に装着されているディンプル防止部材3をサポートプレート1の下面1−2から剥がす(図2f)。
【0042】
本例ではディンプル防止部材3として粘着テープを利用しているため、特に溶剤を用いることなく人の力で剥がすことができる。
このディンプル防止部材3を剥がすことにより、ディンプル防止部材3によって塞がっていた貫通孔10の一端(第二開口部)が再び開放され、後の工程で剥離液の通路として利用できるようになる。ゆえに、ディンプル防止部材3の取り外し(剥離)は、ウエハ2の裏面処理後から後に説明する剥離工程の前までに適宜行えば良い。
【0043】
次に、ディンプル防止部材3が剥がされたサポートプレート1の貫通孔10を通じてそのサポートプレートの上面1−1とウエハ2の表面の間の接着層4に剥離液7を満たす(図2g)。
【0044】
図4は上記接着層4に剥離液7を浸入させるときのサポートプレート1の貫通孔10の状態を示した図である。同図のサポートプレート1の上面1−1がディンプル防止部材3が装着されていた面で、下面1−2がウエハ2を密着させている接着層4と当接する面である。前工程でディンプル防止部材3が剥がされているため、貫通孔10の第二開口部10−2は再び開放され、その第二開口部10−2を通じて上記接着層4へ剥離液7が浸入できるようになる。この剥離液7はその接着部材4に接触することによりその接着力を低下させ、その接着層4の一部に接触、または接着層4の全体に満たされればより確実に、ウエハ2とサポートプレート1を分離する。
【0045】
なお、上記剥離液7としては、例えばアルコール(特にエタノールやメタノールなどの分子量が小さいもの)、ケトン、またはアルコールとケトンとの混合溶液などを使用する。
【0046】
次に、ウエハ2とサポートプレート1間の接着力が十分に低下したら、ダイシングテープ6に貼り付けられているウエハ2からサポートプレート1を剥がす(図2h)。
そして、ダイシング装置によってウエハ2をチップサイズに分割する(図2i)。分割された各半導体チップは、ダイシングテープ6に紫外線を照射してその粘着力を低下せしめることで、個々に取り出すことができる。
【0047】
図5は、薄板化したウエハ2のサポートプレート剥離後の表面状態を示した図である。同図に示されるように、当該ウエハ2の表面はディンプルのない滑らかな面になり、後の工程で扁平率の高い高精度の半導体チップをウエハの全面から抽出できるようになる。
【0048】
以上、本発明のサポートプレートとその使用方法などについてその一例を説明した。そのサポートプレートに装着されるディンプル防止部材の装着方法もその一例に含まれる。
よってその他の装着方法も適宜実施が可能であり、例えば、ディンプル防止部材の材質や厚みなどによりサポートプレートとの段差が生じるなどして不具合が生じる場合などには、そのディンプル防止部材の大きさをサポートプレートと同径にしてそのサポートプレートの一面に一様に貼り付けることにより、サポートプレートの面との段差の発生による不具合を回避できる。ディンプル防止部材の材質や厚み、或いは装置構成上等で、上記不具合が予め見込まれる場合は、そのディンプル防止部材の大きさをサポートプレートと同径にしてそのサポートプレートの一面に一様に貼り付けるようにする方がより好ましい。
【0049】
以上に示したように、ディンプル防止部材を装着することにより上記貫通孔の内部空間が密閉され、更に100μm以上の厚みが作用する。このため、研削/研磨工程では研削ホイール等の押圧力による開口部内への接着部材の沈み込みや、真空吸着によるその開口部内への接着部材の引き込みが大幅に解消される。また、裏面処理を行う場合には、その裏面処理の工程においてその貫通孔にコンタミが入り込むことを防止できる。
【0050】
この結果、ウエハ表面のディンプルの発生を大幅に抑止することが可能になり、更に、コンタミによる影響も低減することも可能になり、ウエハのより広い範囲から扁平率の高い高精度の半導体チップが抽出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る研削/研磨工程で利用するサポートプレートの構成例である。
【図2】ディンプル防止部材を使用してウエハを薄板化する工程図である。
【図3】模式的な研削/研磨装置の断面図である。
【図4】剥離液7を浸入させるときの貫通孔10の状態図である。
【図5】薄板化したウエハ2の表面状態図である。
【図6】ディンプルが生じているウエハの表面状態図である。
【符号の説明】
【0052】
1 サポートプレート
2 ウエハ
3 ディンプル防止部材
4 接着部材
10 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを薄くする方法であって、
前記ウエハが接着部材で密着された貫通孔をもつサポートプレートの前記ウエハが密着されていない面における前記貫通孔の開口部を100μm以上の厚さを有するディンプル防止部材で塞ぎ、
前記ディンプル防止部材を介して前記サポートプレートを真空吸着しつつ、前記ウエハを研削/研磨する、
ことを特徴とするウエハを薄くする方法。
【請求項2】
前記研削/研磨の後前記ディンプル防止部材を取り払い、
所定の剥離液を前記貫通孔を通じて前記接着部材に接触させて前記ウエハから前記サポートプレートを剥離する、
ことを特徴とする請求項1に記載のウエハを薄くする方法。
【請求項3】
前記ディンプル防止部材としてテープを利用し且つ前記サポートプレートの前記ウエハが密着されていない面における貫通孔の開口部の全てを前記テープで塞ぐようにする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のウエハを薄くする方法。
【請求項4】
ウエハを接着部材を挟んで面サポートするサポートプレートであって、
前記ウエハを密着させる範囲内に開口部をもつ貫通孔と、
前記開口部へ通じている前記貫通孔の第二開口部を塞ぐ着脱式の100μm以上の厚さのディンプル防止部材と、
を備えることを特徴とするサポートプレート。
【請求項5】
前記ディンプル防止部材は、粘着力により前記サポートプレートに貼り合わさるテープであり、
前記テープは、前記第二開口部の全てを覆い隠す大きさに構成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のサポートプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−21937(P2008−21937A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194692(P2006−194692)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】