説明

ウエーハの加工方法

【課題】ウエーハの厚さを薄く形成してもデバイスの品質を確保することができるとともに、デバイスに埋設された電極をウエーハの裏面から突出させることができるウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】ストリートに沿ってデバイス22の仕上がり厚さに相当する深さの分割溝201を形成する分割溝形成工程と、デバイス領域220と外周余剰領域230との境界部に沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの環状溝202を形成する環状溝形成工程と、ウエーハの表面に保護部材4を貼着する保護部材貼着工程と、ウエーハの基板におけるデバイス領域に対応する裏面を研削して、ウエーハの基板の裏面に分割溝および環状溝を露出せしめるとともに、外周余剰領域に対応する領域に環状の補強部230bを形成する裏面研削工程と、ウエーハの基板の裏面をエッチングして、基板の裏面から電極222を突出せしめる裏面エッチング工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に格子状に配列された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを有するウエーハを、複数のストリートに沿って分割するウエーハの分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように形成された半導体ウエーハは一般に切削装置を用いてストリートに沿って切断することにより個々のデバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
一方近年、電気機器の小型化を図るため、デバイスを複数個積層して構成した積層型半導体装置が実用化されている。このようなデバイスを製造する製造方法が下記特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特許第537447公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デバイスを積層するためにはウエーハの厚さを100μm以下に形成することが要求されている。しかるに、ウエーハの厚さを100μm以下に形成すると剛性が低下するため、後工程における取り扱いが困難となる。また、デバイスを積層するためには各デバイスに埋設された電極をウエーハの裏面から突出させる必要があり、このためウエーハ裏面を研削して所定の厚さに形成した後に、ウエーハの裏面をエッチングして電極を突出させている。このように薄く形成されたウエーハを切削装置によりストリートに沿って切断して個々のデバイスに分割すると、デバイスの外周に多くの欠けが生じて品質が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ウエーハの厚さを薄く形成してもデバイスの品質を確保することができるとともに、デバイスに埋設された電極をウエーハの裏面から突出させることができるウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、基板の表面に格子状に配列された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを有し、該デバイス領域の基板に電極が埋設されているウエーハを、複数のストリートに沿って分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの基板の表面側からストリートに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの分割溝を形成する分割溝形成工程と、
基板の表面側から該デバイス領域と該外周余剰領域との境界部に沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの環状溝を形成する環状溝形成工程と、
該分割溝形成工程および該環状溝形成工程が実施されたウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材貼着工程が実施されたウエーハの基板における該デバイス領域に対応する裏面を研削して、ウエーハの基板の裏面に該分割溝および該環状溝を露出せしめるとともに、該外周余剰領域に対応する領域に環状の補強部を形成する裏面研削工程と、
該裏面研削工程が実施されたウエーハの基板の裏面をエッチングして、基板の裏面から該電極を突出せしめる裏面エッチング工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、基板の表面に格子状に配列された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを有し、該デバイス領域の基板に電極が埋設されているウエーハを、複数のストリートに沿って分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの基板の表面側からストリートに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの分割溝を形成する分割溝形成工程と、
基板の表面側から該デバイス領域と該外周余剰領域との境界部に沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの環状溝を形成する環状溝形成工程と、
該分割溝形成工程および該環状溝形成工程が実施されたウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材貼着工程が実施されたウエーハの基板における該デバイス領域に対応する裏面を研削して、該外周余剰領域に対応する領域に環状の補強部を形成する裏面研削工程と、
該裏面研削工程が実施されたウエーハの基板の裏面をエッチングして、基板の裏面に該分割溝および該環状溝を露出せしめるとともに、基板の裏面から該電極を突出せしめる裏面エッチング工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるウエーハの加工方法においては、裏面研削工程または裏面エッチング工程を実施して基板の裏面に分割溝および環状溝を露出することにより個々のデバイスに分割するので、デバイスの厚さを薄くしても切削装置によって切断するようにデバイスの外周に欠けが発生することはない。また、本発明によるウエーハの加工方法においては、裏面研削工程を実施した後に裏面エッチング工程を実施するので、基板の裏面から電極を突出させることができるとともに、裏面研削工程を実施することによってデバイスの裏面に生成された研削歪を除去することができ、デバイスの抗折強度を向上されることができる。更に、本発明によるウエーハの加工方法においては、ウエーハは保護部材が貼着された状態で個々のデバイスに分割されているが、環状の補強部が残存してウエーハの形態が維持されているので、容易に搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明によるウエーハの分割方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1には本発明によるウエーハの加工方法によって加工されるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図が示されている。図1に示す半導体ウエーハ2は、例えば厚さが700μmのシリコン基板20の表面2aに複数のストリート21が格子状に配列されているとともに、該複数のストリート21によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス22が形成されている。この半導体ウエーハ2は、デバイス22の表面に配設された複数のボンディングパッド221を備えているとともに、このボンディングパッド221に接続しシリコン基板20に埋設された電極222を備えている。このように構成された半導体ウエーハ2は、デバイス22が形成されているデバイス領域220と、該デバイス領域220を囲繞する外周余剰領域230を備えている。
【0010】
上記半導体ウエーハ2をストリート21に沿って個々のデバイスに分割するウエーハの加工方法においては、先ず半導体ウエーハ2のシリコン基板20の表面20a側からストリート21に沿ってデバイス22の仕上がり厚さに相当する深さの分割溝を形成する分割溝形成工程を実施する。この分割溝形成工程は、図3の(a)に示す切削装置3を用いて実施する。図3の(a)に示す切削装置3は、吸引保持手段を備えたチャックテーブル31と、切削ブレード321を備えた切削手段32と、撮像手段33を具備している。この切削装置3を用いて分割溝形成工程を実施するには、チャックテーブル31上に半導体ウエーハ2のシリコン基板20の表面20aを上にして載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、半導体ウエーハ2をチャックテーブル31上に保持する。このようにして、半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル31は、図示しない切削送り機構によって撮像手段33の直下に位置付けられる。
【0011】
チャックテーブル31が撮像手段33の直下に位置付けられると、撮像手段33および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2の分割溝を形成すべき切削領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段33および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されているストリート21と、切削ブレード321との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、切削領域のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、半導体ウエーハ2に形成されている上記所定方向に対して直角に延びるストリート21に対しても、同様に切削領域のアライメントが遂行される。
【0012】
以上のようにしてチャックテーブル31上に保持されている半導体ウエーハ2の切削領域のアライメントが行われたならば、半導体ウエーハ2を保持したチャックテーブル31を切削領域の切削開始位置に移動する。そして、切削ブレード321を図3の(a)において矢印321aで示す方向に回転しつつ下方に移動して所定量の切り込み送りを実施する。この切り込み送り位置は、切削ブレード321の外周縁が半導体ウエーハ2の基板20の表面からデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ位置(例えば、100μm)に設定されている。このようにして、切削ブレード321の切り込み送りを実施したならば、切削ブレード321を回転しつつチャックテーブル31を図3の(a)において矢印Xで示す方向に切削送りすることによって、図3の(b)に示すように半導体ウエーハ2のシリコン基板20にはストリート21に沿って表面20aからデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ(例えば、100μm)の分割溝201が形成される。この分割溝形成工程を半導体ウエーハ2のシリコン基板20の表面20aに形成された全ての分割予定ライン21に沿って実施する。
【0013】
上述した分割溝形成工程を実施したならば、半導体ウエーハ2のシリコン基板20の表面2a側からデバイス領域220と外周余剰領域230との境界部に沿ってデバイス22の仕上がり厚さに相当する深さの環状溝を形成する環状溝形成工程を実施する。この環状溝形成工程は、上記図3の(a)に示す切削装置3を用いて実施することができる。即ち、上記分割溝形成工程を実施した状態で、図4に示すように撮像手段33の直下に位置付ける。そして、撮像手段33および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2の切削すべき領域を検出するアライメント工程を実行する。即ち、撮像手段33および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2のデバイス領域220と外周余剰領域230との境界部と切削ブレード321との位置合わせを行うためのアライメント作業を遂行する。
【0014】
以上のようにしてチャックテーブル31上に保持されている半導体ウエーハ2の切削すべき領域を検出するアライメントが行われたならば、半導体ウエーハ2を保持したチャックテーブル31を切削領域に移動する。そして、切削手段32の切削ブレード321をチャックテーブル31に保持された半導体ウエーハ2のデバイス領域220と外周余剰領域230との境界部の直上に位置付ける。そして、図5の(a)に示すように切削ブレード321を矢印321aで示す方向に回転しつつ2点鎖線で示す待機位置から下方に切り込み送りし、実線で示すように所定の切り込み送り位置に位置付ける。この切り込み送り位置は、切削ブレード321の外周縁が半導体ウエーハ2のシリコン基板20の表面からデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ位置(例えば、100μm)に設定されている。
【0015】
次に、上述したように切削ブレード321を矢印321aで示す方向に回転しつつチャックテーブル31を図5の(a)において矢印31aで示す方向に回転せしめる。そして、チャックテーブル31が1回転することにより、図5の(b)に示すように半導体ウエーハ2のシリコン基板20にはデバイス領域220と外周余剰領域230との境界部に沿って表面20aからデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ(例えば、100μm)の環状溝202が形成される。
【0016】
上述した分割溝形成工程および環状溝形成工程を実施したならば、半導体ウエーハ2の表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程を実施する。即ち、図6に示すように半導体ウエーハ2のシリコン基板20の表面20a(デバイス22が形成されている面)に例えば厚さが150μmのポリオレフィンシートからなる保護部材4を貼着する。従って、半導体ウエーハ2は、シリコン基板20の裏面20bが露出する形態となる。
【0017】
上述した保護部材貼着工程を実施したならば、半導体ウエーハ2のシリコン基板20におけるデバイス領域220に対応する裏面を研削して外周余剰領域230に対応する領域に環状の補強部を形成する裏面研削工程を実施する。この裏面研削工程は、図示の実施形態においては図7に示す研削装置によって実施する。図7に示す研削装置5は、被加工物としてのウエーハを保持するチャックテーブル51と、該チャックテーブル51に保持されたウエーハの加工面を研削する研削手段52を具備している。チャックテーブル51は、上面にウエーハを吸引保持し図7において矢印51aで示す方向に回転せしめられる。研削手段52は、スピンドルハウジング521と、該スピンドルハウジング521に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル522と、該回転スピンドル522の下端に装着されたマウンター523と、該マウンター523の下面に取り付けられた研削ホイール524とを具備している。この研削ホイール524は、円板状の基台525と、該基台525の下面に環状に装着された研削砥石526とからなっており、基台525がマウンター523の下面に取り付けられている。
【0018】
上述した研削装置5を用いて裏面研削工程を実施するには、チャックテーブル51の上面(保持面)に上述した分割溝形成工程および環状溝形成工程が実施されシリコン基板20の表面20aに保護部材4が貼着された半導体ウエーハ2の保護部材4側を載置し、半導体ウエーハ2をチャックテーブル51上に吸引保持する。従って、チャックテーブル51上に吸引保持された半導体ウエーハ2は、シリコン基板20の裏面20bが上側となる。ここで、チャックテーブル51に保持された半導体ウエーハ2と研削ホイール524を構成する環状の研削砥石526の関係について、図8の(a)を参照して説明する。チャックテーブル51の回転中心P1と環状の研削砥石526の回転中心P2は偏芯しており、環状の研削砥石526の外径は、半導体ウエーハ2のデバイス領域220と外周余剰領域230との境界線240の直径より小さく境界線240の半径より大きい寸法に設定され、環状の研削砥石526がチャックテーブル51の回転中心P1(半導体ウエーハ2の中心)を通過するようになっている。
【0019】
次に、図7および図8の(a)に示すようにチャックテーブル51を矢印51aで示す方向に300rpmで回転しつつ、研削ホイール524を矢印524aで示す方向に6000rpmで回転せしめるとともに、研削ホイール524を下方に移動して研削砥石526を半導体ウエーハ2のシリコン基板20の裏面20bに接触させる。そして、研削ホイール524を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。この結果、半導体ウエーハ2のシリコン基板20の裏面20bは、図8の(b)および(c)に示すようにデバイス領域220に対応する領域が研削除去されて円形状の凹部220bに形成されるとともに、外周余剰領域230に対応する領域が残存されて環状の補強部230bに形成される。ここで、裏面研削工程の実施形態について、図8の(b)および(c)を参照して説明する。図8の(b)に示す実施形態は、半導体ウエーハ2のシリコン基板20の裏面20bにおけるデバイス領域220に対応する領域をデバイスの仕上がり厚さ(例え100μm)まで研削して、分割溝201および環状溝202を露出せしめる。この結果、半導体ウエーハ2のデバイス領域220は、個々のデバイス22に分割される。なお、図8の(b)に示す実施形態のように分割溝201および環状溝202が露出するまで研削すると半導体ウエーハ2は個々のデバイス22に分割されるが、環状の補強部230bが残存しているのでウエーハの形態が維持される。一方、図8の(c)に示す実施形態は、シリコン基板20の裏面20bに分割溝201および環状溝202が露出する数μm手前で研削を終了する。
【0020】
上述した裏面研削工程を実施したならば、半導体ウエーハ2の裏面をエッチングして、半導体ウエーハ2の裏面から電極を突出せしめる裏面エッチング工程を実施する。この裏面エッチング工程は、図示の実施形態においては図9に示すプラズマエッチング装置を用いて実施する。図9に示すプラズマエッチング装置6は、エッチング室61aを形成するハウジング61を具備している。このハウジング61は、底壁611と上壁612と左右側壁613、614と後側が側壁615および前側側壁(図示せず)とからなっており、右側側壁614には被加工物搬出入用の開口614aが設けられている。開口614aの外側には、開口614aを開閉するためのゲート62が上下方向に移動可能に配設されている。このゲート62は、ゲート作動手段63によって作動せしめられる。ゲート作動手段63は、エアシリンダ631と該エアシリンダ631内に配設された図示しないピストンに連結されたピストンロッド632とからなっており、エアシリンダ631がブラケット633を介して上記ハウジング61の底壁611に取り付けられており、ピストンロッド632の先端(図において上端)が上記ゲート62に連結されている。このゲート作動手段63によってゲート62が開けられることにより、被加工物としての上記裏面研削工程が実施された半導体ウエーハ2を開口614aを通して搬出入することができる。また、ハウジング61を構成する底壁611には排気口611aが設けられており、この排気口611aがガス排出手段64に接続されている。
【0021】
上記ハウジング61によって形成されるエッチング室61aには、下部電極65と上部電極66が対向して配設されている。下部電極65は、導電性の材料によって形成されており、円盤状の被加工物保持部651と、該被加工物保持部651の下面中央部から突出して形成された円柱状の支持部652とからなっている。このように被加工物保持部651と円柱状の支持部652とから構成された下部電極65は、支持部652がハウジング61の底壁611に形成された穴611bを挿通して配設され、絶縁体67を介して底壁611にシールされた状態で支持されている。このようにハウジング61の底壁611に支持された下部電極65は、支持部652を介して高周波電源68に電気的に接続されている。
【0022】
下部電極65を構成する被加工物保持部651の上部には、上方が開放された円形状の嵌合凹部651aが設けられており、該嵌合凹部651aにポーラスセラミック材によって形成された円盤状の吸着保持部材653が嵌合される。嵌合凹部651aにおける吸着保持部材653の下側に形成される室651bは、被加工物保持部651および支持部652に形成された連通路652aによって吸引手段69に連通されている。従って、吸着保持部材653上に被加工物を載置して吸引手段69を作動して連通路652aを負圧源に連通することにより室651bに負圧が作用し、吸着保持部材653上に載置された被加工物が吸引保持される。また、吸引手段69を作動して連通路652aを大気に開放することにより、吸着保持部材653上に吸引保持された被加工物の吸引保持が解除される。
【0023】
下部電極65を構成する被加工物保持部651の下部には、冷却通路651cが形成されている。この冷却通路651bの一端は支持部652に形成された冷媒導入通路652bに連通され、冷却通路651bの他端は支持部652に形成された冷媒排出通路652cに連通されている。冷媒導入通路652bおよび冷媒排出通路652cは、冷媒供給手段70に連通されている。従って、冷媒供給手段70が作動すると、冷媒が冷媒導入通路652b、冷却通路651cおよび冷媒排出通路652cを通して循環せしめられる。この結果、後述するプラズマエッチング処理時に発生する熱は下部電極65から冷媒に伝達されるので、下部電極65の異常昇温が防止される。
【0024】
上記上部電極66は、導電性の材料によって形成されており、円盤状のガス噴出部661と、該ガス噴出部661の上面中央部から突出して形成された円柱状の支持部662とからなっている。このようにガス噴出部661と円柱状の支持部662とからなる上部電極66は、ガス噴出部661が下部電極65を構成する被加工物保持部651と対向して配設され、支持部662がハウジング61の上壁612に形成された穴612aを挿通し、該穴612aに装着されたシール部材71によって上下方向に移動可能に支持されている。支持部662の上端部には作動部材663が取り付けられており、この作動部材663が昇降駆動手段72に連結されている。なお、上部電極66は、支持部662を介して接地されている。
【0025】
上部電極66を構成する円盤状のガス噴出部661には、下面に開口する複数の噴出口661aが設けられている。この複数の噴出口661aは、ガス噴出部661に形成された連通路661bおよび支持部662に形成された連通路662aを介してガス供給手段73に連通されている。ガス供給手段63は、SF6 等のフッ素系ガスと酸素を主体とするプラズマ発生用の混合ガスを供給する。
【0026】
図示の実施形態におけるプラズマエッチング装置6は、上記ゲート作動手段63、ガス排出手段64、高周波電源68、吸引手段69、冷媒供給手段70、昇降駆動手段72、ガス供給手段73等を制御する制御手段74を具備している。この制御手段74にはガス排出手段64からハウジング61によって形成されるエッチング室61a内の圧力に関するデータが、冷媒供給手段70から冷媒温度(即ち電極温度)に関するデータが、ガス供給手段73からガス流量に関するデータが入力され、これらのデータ等に基づいて制御手段74は上記各手段に制御信号を出力する。
【0027】
図示の実施形態におけるプラズマエッチング装置6は以上のように構成されており、以下上述したように裏面研削工程が実施された半導体ウエーハ2のシリコン基板20の裏面20b側からプラズマエッチングして、半導体ウエーハ2のシリコン基板20の裏面20bから電極を突出せしめる裏面エッチング工程について説明する。
先ずゲート作動手段63を作動してゲート62を図9において下方に移動せしめ、ハウジング61の右側側壁614に設けられた開口614aを開ける。次に、図示しない搬出入手段によって裏面研削工程が実施された半導体ウエーハ2(シリコン基板20の表面20aに保護部材が貼着されている)を開口614aからハウジング61によって形成されるエッチング室61aに搬送し、下部電極65を構成する被加工物保持部651の吸着保持部材653上に保護部材4側を載置する。このとき、昇降駆動手段72を作動して上部電極66を上昇せしめておく。そして、吸引手段69を作動して上述したように下部電極65の室651bに負圧を作用することにより、吸着保持部材653上に載置された半導体ウエーハ2は保護部材4を介して吸引保持される(図10参照)。
【0028】
半導体ウエーハ2が保護部材4を介して吸着保持部材653上に吸引保持されたならば、ゲート作動手段63を作動してゲート62を図9において上方に移動せしめ、ハウジング61の右側側壁614に設けられた開口614aを閉じる。そして、昇降駆動手段72を作動して上部電極66を下降させ、図10に示すように上部電極66を構成するガス噴射部661の下面と下部電極65を構成する被加工物保持部651に保持された保護部材4を貼着した半導体ウエーハ2の上面(シリコン基板20の裏面20b)との間の距離をプラズマエッチング処理に適した所定の電極間距離(D)に位置付ける。なお、この電極間距離(D)は、図示の実施形態においては10mmに設定されている。
【0029】
次に、被加工物保持部61に配設された図示しない静電力生成手段を作動して静電力で半導体ウエーハ2を保持し、ガス排出手段64を作動してハウジング61によって形成されるエッチング室61a内を排気する。エッチング室61a内を排気して減圧したならば、ガス供給手段73を作動してプラズマ発生用ガスを上部電極66に供給する。ガス供給手段73から供給されたプラズマ発生用ガスは、支持部662に形成された連通路662aおよびガス噴出部661に形成された連通路661bを通して複数の噴出口661aから下部電極65の吸着保持部材653上に保持された半導体ウエーハ2の裏面2b(上面)に向けて噴出される。そして、エッチング室61a内を所定のガス圧力に維持する。このように、プラズマ発生用ガスを供給した状態で、高周波電源68から下部電極65と上部電極66との間に高周波電圧を印加する。これにより、下部電極65と上部電極66との間の空間にSF6のプラズマが発生し、このプラズマにより生じる活性物質が半導体ウエーハ2の裏面2bに作用するので、半導体ウエーハ2のシリコン基板20の裏面20bがエッチングされる。
【0030】
上記裏面エッチング工程は、例えば以下の条件で行われる。
電源68の出力 :2000W
エッチング室61a内の圧力 :80Pa
プラズマ発生用ガス :六フッ化イオウ(SF6)を76ml/分、ヘリウム(He)を15
ml/分、酸素(O2)を27ml/分
または
:六フッ化イオウ(SF6)を76ml/分、三フッ化メチル(CHF3)
を15ml/分、酸素(O2)を27ml/分
または
:六フッ化イオウ(SF6)を76ml/分、窒素(N2)を15ml/
分、酸素(O2)を27ml/分
エッチング処理時間 :3分
【0031】
上述した加工条件によって裏面エッチング工程を実施することにより、半導体ウエーハ2を構成するシリコン基板20の裏面20bが数μmエッチングされる。この結果、図11に示すように半導体ウエーハ2のシリコン基板20の裏面20bから電極222が数μm突出する。なお、上記裏面研削工程において半導体ウエーハ2が図8の(c)に示す実施形態のようにシリコン基板20の裏面20bに分割溝201および環状溝202が露出する数μm手前で研削を終了した場合には、上記エッチング工程を実施することによりシリコン基板20の裏面20bから電極222が数μm突出するとともに、シリコン基板20の裏面20bに分割溝201および環状溝202が露出する。この結果、半導体ウエーハ2のデバイス領域220は、個々のデバイス22に分割される。
【0032】
以上のようにして裏面エッチング工程が実施され、半導体ウエーハ2のシリコン基板20の裏面20bから電極222が突出するとともに、デバイス領域220が個々のデバイス22に分割されたならば、次工程である分割された個々のデバイス22をピックアップするピックアップ工程に搬送される。このとき、半導体ウエーハ2は保護部材4が貼着された状態で個々のデバイス22に分割されているが、環状の補強部230bが残存してウエーハの形態が維持されているので、容易に搬送することができる。
【0033】
以上のように、図示の実施形態におけるウエーハの加工方法においては、裏面研削工程または裏面エッチング工程を実施してシリコン基板20の裏面20bに分割溝201および環状溝202を露出することにより個々のデバイス22に分割するので、デバイスの厚さを薄くしても切削装置によって切断するようにデバイスの外周に欠けが発生することはない。また、図示の実施形態におけるウエーハの加工方法においては、上記裏面研削工程を実施した後に裏面エッチング工程を実施するので、シリコン基板20の裏面20bから電極222を突出することができるとともに、裏面研削工程を実施することによってデバイスの裏面に生成された研削歪を除去することができ、デバイスの抗折強度を向上されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるウエーハの加工方法によって個々のデバイスに分割されるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図。
【図2】図1に示す半導体ウエーハの要部を拡大して示す断面図。
【図3】本発明によるウエーハの加工方法における分割溝形成工程を実施するための切削装置および分割溝形成工程の説明図。
【図4】本発明によるウエーハの加工方法における環状溝形成工程を実施するための切削装置および環状溝形成工程の説明図。
【図5】本発明によるウエーハの加工方法における環状溝形成工程の説明図。
【図6】本発明によるウエーハの加工方法における保護部材貼着工程の説明図。
【図7】本発明によるウエーハの加工方法における裏面研削工程を実施するための研削装置および裏面研削工程の説明図。
【図8】本発明によるウエーハの加工方法における裏面研削工程の説明図。
【図9】本発明によるウエーハの加工方法における裏面エッチング工程を実施するためのプラズマエッチング装置の断面図。
【図10】図9に示すプラズマエッチング装置の下部電極を構成する被加工物保持部上に半導体ウエーハに貼着された保護部材を載置した状態を示す断面図。
【図11】本発明によるウエーハの加工方法における裏面エッチング工程が実施された半導体ウエーハの要部を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
【0035】
2:半導体ウエーハ
22:シリコン基板
21:ストリート
22:デバイス
220:デバイス領域
230:外周余剰領域
3:切削装置
31:切削装置のチャックテーブル
32:切削手段
321:切削ブレード
4:保護部材
5:研削装置
51:研削装置のチャックテーブル
52:研削手段
526:研削砥石
6:プラズマエッチング装置
65:下部電極
66:上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に格子状に配列された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを有し、該デバイス領域の基板に電極が埋設されているウエーハを、複数のストリートに沿って分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの基板の表面側からストリートに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの分割溝を形成する分割溝形成工程と、
基板の表面側から該デバイス領域と該外周余剰領域との境界部に沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの環状溝を形成する環状溝形成工程と、
該分割溝形成工程および該環状溝形成工程が実施されたウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材貼着工程が実施されたウエーハの基板における該デバイス領域に対応する裏面を研削して、ウエーハの基板の裏面に該分割溝および該環状溝を露出せしめるとともに、該外周余剰領域に対応する領域に環状の補強部を形成する裏面研削工程と、
該裏面研削工程が実施されたウエーハの基板の裏面をエッチングして、基板の裏面から該電極を突出せしめる裏面エッチング工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
基板の表面に格子状に配列された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを有し、該デバイス領域の基板に電極が埋設されているウエーハを、複数のストリートに沿って分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの基板の表面側からストリートに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの分割溝を形成する分割溝形成工程と、
基板の表面側から該デバイス領域と該外周余剰領域との境界部に沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの環状溝を形成する環状溝形成工程と、
該分割溝形成工程および該環状溝形成工程が実施されたウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材貼着工程が実施されたウエーハの基板における該デバイス領域に対応する裏面を研削して、該外周余剰領域に対応する領域に環状の補強部を形成する裏面研削工程と、
該裏面研削工程が実施されたウエーハの基板の裏面をエッチングして、基板の裏面に該分割溝および該環状溝を露出せしめるとともに、基板の裏面から該電極を突出せしめる裏面エッチング工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−43992(P2009−43992A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208223(P2007−208223)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】