説明

ウォームホイールの製造方法及びウォーム減速機

【課題】ウォームホイール5aの歯部8aの耐久性確保と加工代の低減(低コスト化)とを高次元で両立させる。
【解決手段】中間素材12aの外周面に形成するはすば歯車13の各歯の圧力角θを、完成後のウォームホイール5aの歯部8aの圧力角θよりも小さくする。この結果、歯厚を厚くしても、歯底円直径の大きさをそのままにでき(歯底溝の深さをそのままにでき)、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電動式パワーステアリング装置に組み込んで使用するウォーム減速機と、このウォーム減速機を構成するウォームホイールの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の操舵輪(フォークリフト等の特殊車両を除き、通常は前輪)に舵角を付与する際に運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図る為の装置として、パワーステアリング装置が広く使用されている。又、この様なパワーステアリング装置で、補助動力源として電動モータを使用する電動式パワーステアリング装置も、近年普及し始めている。又、この様な電動式パワーステアリング装置には減速機を組み込むが、この減速機として従来から、大きなリード角を有し、動力の伝達方向に関して可逆性を有するウォーム減速機が、一般的に使用されている。
【0003】
図7〜8は、この様な電動式パワーステアリング装置に組み込んだウォーム減速機の従来構造の1例として、特許文献1に記載された構造を示している。このウォーム減速機は、電動モータ1に固定した、減速機用のハウジング2の内側に設けられており、軸方向中間部にウォーム3を形成したウォーム軸4と、このウォーム3に噛合させたウォームホイール5とを備える。このうちのウォーム軸4は、軸方向両端部に外嵌した1対の玉軸受6、6により、上記ハウジング2の内側に回転自在に支持している。これと共に、上記ウォーム軸4の一端部(図7の左端部)を上記電動モータ1の出力軸7に接続する事により、このウォーム軸4を回転駆動自在としている。
【0004】
又、上記ウォームホイール5は、上記ハウジング2の内側に回転自在に設けられており、自身の回転中心軸を、上記ウォーム軸4に対して捩れの位置に配置している。そして、このウォームホイール5の外周縁部分に形成した歯部8を、上記ウォーム3に噛合させる事により、このウォームホイール5と上記ウォーム軸4との間での回転力の伝達を自在としている。尚、図示の例の場合、上記ウォームホイール5は、径方向の内端部及び中間部を金属により造ると共に、上記歯部8を含む径方向の外端部(図7〜8に斜格子を付して示した部分)を合成樹脂9により造っている。これにより、運転時に上記噛合部で発生する打音及び摺動音の低減と軽量化とを図っている。又、この様なウォームホイール5は、ステアリングシャフト10の中間部に外嵌固定している。これにより、上記電動モータ1で発生した回転駆動力を、上記ウォーム軸4と上記ウォームホイール5とから成るウォーム減速機を介して、上記ステアリングシャフト10に伝達可能としている。
【0005】
上述の様なウォーム減速機を含んで構成する電動式パワーステアリング装置は、次の様に動作する。操舵輪に舵角を付与する為、運転者がステアリングホイールを操作し、上記ステアリングシャフト10が回転すると、トルクセンサ(図示せず)がこのステアリングシャフト10の回転方向とトルクとを検出し、その検出値を表す信号を制御器(図示せず)に送る。すると、この制御器は、上記電動モータ1に通電し、上記ウォーム減速機を介して上記ステアリングシャフト10を、上記ステアリングホイールの操作に基づく回転方向と同方向に回転させる。この結果、上記ステアリングシャフト10は、上記ステアリングホイールの操作に基づいて発生したトルクに加え、通電に基づいて上記電動モータ1が発生したアシストトルク(補助動力)を受けて回転する。従って、この補助動力の分だけ、運転者が上記ステアリングホイールを操作する為に要する力を軽減できる。一方、例えば前記ウォーム軸4を接続した電動モータ1が故障した場合には、上記ステアリングホイールを操作する事に基づいて、上記ウォーム減速機を逆動作させる。これにより、このステアリングホイールの操作が行なえなくなる事を防止する。
【0006】
ところで、上述した様なウォーム減速機を構成するウォームホイール5の場合、例えば特許文献1、2等に記載されている様に、外周面に複数のスリットを形成したホブカッターにより、合成樹脂9部分に歯部8を形成する事が一般的に行なわれている。又、このうちの特許文献2には、予めウォームホイール5の歯部8となるべき部分にはすば歯車(ヘリカルギヤ)を型成形(射出成形)して中間素材とした後、この中間素材の歯部(はすば歯車が形成された部分)にホブ加工(ホブカッターによる切削)を施して、上記ウォームホイール5の歯部8を形成する技術が記載されている。この様な技術を採用すれば、型成形(射出成形)する為の金型(成形型)を簡素に構成できる他、バリの発生、加工代の低減を図れ、加工コストを低減できる。
【0007】
一方、前記特許文献1には、上述の様なホブカッターに代えて、図9に示す様に、表面に砥粒を電着して成る加工用ウォーム11により、ウォームホイール5の歯部8の加工を行なう技術が記載されている。即ち、この加工用ウォーム11は、使用時に歯部8に噛合させるウォーム3(図7、8参照)と同形・同大である(乃至は、軸方向に関する歯のピッチが同等で、且つ、歯先及び歯底の径寸法がそれぞれ少しだけ大きい)ウォームの表面(斜格子を付して示した部分)に、多数の砥粒を電着して成る。そして、図9(a)(b)に示す様に、外周面を円筒面状に形成した中間素材12と、上記加工用ウォーム11とを、それぞれウォーム減速機の減速比に応じた速度関係で回転させた状態で、上記加工用ウォーム11を上記中間素材12の外周面に押し付ける。そして、この加工用ウォーム11によりこの中間素材12の外周面を研削(若しくは切削)し、図9(c)に示す様に、この中間素材12の外周面に上記歯部8を形成する。この様に、使用時に噛合させるウォーム3と略同形状の加工用ウォーム11を用いてウォームホイール5を加工(歯部8を形成)すれば、ホブカッターを用いる場合に比べ、上記ウォームホイール5とウォーム3との噛合部の接触面積の確保を高次元で図れる。
【0008】
ところで、上述の様な加工用ウォーム11を用いて歯部8を形成する場合にも、例えば加工代を少なくし、加工時間の短縮、工具寿命の確保、延いては低コスト化(製造コストの低減)等を図る為に、上記加工用ウォーム11による加工(歯部8の形成)に先立ち、前述した特許文献2に記載されている様に、予めウォームホイール5の歯部8となるべき部分にはすば歯車(ヘリカルギヤ)を形成しておく事が考えられる。ところが、この様な場合に、単にはすば歯車を形成しておくだけでは、上記歯部8の耐久性の確保と加工代の低減(低コスト化)との両立を十分に図れない可能性がある。即ち、合成樹脂製の歯部8を有するウォームホイール5と金属製のウォーム3とを組み合わせてウォーム減速機を構成する場合、このウォームホイール5の歯部8の耐久性を確保する為には、この歯部8を構成する各歯の歯厚を大きく(厚く)する必要がある。一方、この様に歯部8を構成する各歯の歯厚を大きくする為には、ウォームホイール5の歯部8となるべき部分に予め形成するはすば歯車(ヘリカルギヤ)の歯厚も大きくしておく必要がある。但し、この場合に、このはすば歯車の歯厚を単に大きくしただけでは、このはすば歯車の歯底円直径も大きくなり、その分、歯底(歯溝底)部分の加工代が大きくなる。特に、前述した様な加工用ウォーム11を用いて加工する場合には、ホブカッターによる加工に比べて加工量(単位時間当たりの切削量)が小さくなる為、上述の様な加工代が大きくなる事は好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−142400号公報
【特許文献2】特開2003−334724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、ウォームホイールの歯部の耐久性確保と加工代の低減(低コスト化)との両立を高次元で図れる、ウォームホイールの製造方法及びウォーム減速機を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のウォームホイールの製造方法及びウォーム減速機のうち、請求項1〜5に記載したウォームホイールの製造方法は、少なくとも歯部{の歯面(ウォームと接触する面)}の表層部が合成樹脂により造られているウォームホイールの製造方法に関する。
この様な本発明のウォームホイールの製造方法のうち、請求項1に記載したウォームホイールの製造方法は、このウォームホイールの歯部となるべき部分に、完成後の歯部の圧力角(JIS B 0102)よりも小さい圧力角を有するはすば歯車(ヘリカルギヤ)を形成して、中間素材とする。尚、この様な中間素材は、例えば、合成樹脂の射出成形、即ち、キャビティの内面のうちで歯部となるべき部分に対応する部分の形状を(内歯型の)はすば歯車の如き形状とした成形型を用いて射出成形する事により造る事ができる。
【0012】
そして、この様に(射出成形により)中間素材を形成したならば、この中間素材の歯部(はすば歯車が形成された部分)を、使用時に噛合させるウォームと比較して、軸方向に関する歯のピッチが同等で且つ歯先及び歯底の径寸法がそれぞれ同等以上である{例えば、歯先及び歯底がそれぞれ少しだけ(使用時に噛合させるウォームに対して1〜10%程度、より好ましくは1〜3%程度)大きい}ウォームの表面に砥粒(例えばダイヤモンド砥粒)を、電着、接着等により固着して成る加工用ウォームにより加工する。尚、上記使用時にウォームホイールと噛合するウォームは、円筒状ウォームであっても、或は、鼓状ウォームであっても、何れでも良い。上記加工用ウォームは、使用時にウォームホイールに噛合させるウォームに合わせて、円筒状ウォーム又は鼓状ウォームとする。
【0013】
又、請求項2に記載したウォームホイールの製造方法は、このウォームホイールの歯部となるべき部分に、完成後の歯部の圧力角以下の(完成後の歯部の圧力角と同じかこれよりも小さい)圧力角を有するはすば歯車を形成すると共に、このはすば歯車の歯底に、後の加工工程で用いる加工用ウォームの歯先に対する加工代を小さくする為の歯底溝(逃げ溝)を形成して、中間素材とする。この様な中間素材も、例えば、合成樹脂の射出成形により造れる。そして、上述の様な歯底溝が形成されたはすば歯車を有する中間素材を形成したならば、上述した請求項1に記載したウォームホイールの製造方法と同様に、この中間素材の歯部を上述した加工用ウォームにより加工して、ウォームホイールとする。尚、上記はすば歯車の歯底に形成する上記歯底溝は、例えば請求項3に記載した様に、互いに平行な側面を有する歯底溝としたり、請求項4に記載した様に、上記歯底に向かう程互いに近付く方向に、完成後の歯部の圧力角よりも小さい角度で傾斜した側面を有する歯底溝とする事ができる。又、請求項5に記載した様に、断面円弧形の輪郭を有する歯底溝を形成する事もできる。
【0014】
又、請求項6に記載したウォーム減速機は、ウォームとウォームホイールとを互いに噛合させて成る。
特に、請求項6に記載したウォーム減速機に於いては、上記ウォームホイールを、上述した請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した製造方法により造られたものとする。
【発明の効果】
【0015】
上述の様に、本発明のウォームホイールの製造方法のうち、請求項1に記載したウォームホイールの製造方法の場合には、加工用ウォームにより加工する前の中間素材に形成するはすば歯車(ヘリカルギヤ)の圧力角を、完成後の歯部の圧力角よりも小さくしている。この為、この完成後の歯厚を大きく(厚く)すべく、上記中間素材に形成する上記はすば歯車の歯厚を大きくしても、このはすば歯車の圧力角を小さくしている分、歯底円直径が大きくなる程度を小さくできる。従って、完成後の歯部の歯厚を十分に確保しつつ、歯底(歯溝底)部分の加工代を小さくでき、耐久性の確保と加工代の低減との両立を高次元で図れる。
一方、請求項2〜5に記載したウォームホイールの製造方法の場合には、上述の様な請求項1に記載した製造方法の様に圧力角を小さくする必要はないが、はすば歯車の歯底に、上記加工用ウォームの歯先に対する加工代を小さくする為の歯底溝(逃げ溝)を形成して、中間素材とする。この為、上述の請求項1に記載した製造方法と同様に、歯厚を大きくしても、上記加工用ウォームにより研削(若しくは切削)しなければならない、歯底部分の加工代を小さくして、耐久性の確保と加工代の低減との両立を高次元で図れる。
そして、上述の様な製造方法により造られたウォームホイールを組み込んだ、本発明のウォーム減速機の場合には、ウォームホイールとウォームとの噛合部の接触面積の確保を高次元で図れる他、耐久性の確保と低コスト化との両立も高次元で図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】中間素材に形成されたはすば歯車を加工用ウォームにより加工する状態を示す部分拡大図で、(a)は、本発明の実施の形態の第1例を、(b)は、(a)の構造に比べてはすば歯車の圧力角が大きい場合を、それぞれ示している。
【図2】中間素材に形成されたはすば歯車を示す、図1と同様の部分拡大図。
【図3】中間素材を模式的に示す部分切断斜視図。
【図4】実施の形態の第2例を示す、中間素材の部分拡大図。
【図5】同第3例を示す、中間素材の部分拡大図。
【図6】同第4例を示す、中間素材の部分拡大図。
【図7】パワーステアリング装置のうち、ウォーム減速機を組み込んだ部分の断面図。
【図8】図7のイ部拡大図。
【図9】従来のウォームホイールの加工工程を示す図で、(a)は、加工用ウォームによりウォームホイールを研削(若しくは切削)する前の状態を、(b)は、(a)のロ−ロ断面を、(c)は、加工用ウォームにより研削(若しくは切削)した後の状態を、それぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態の第1例]
図1〜3の(a)は、請求項1に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、ウォームホイール5aの製造方法、及び、このウォームホイール5aを含んで構成するウォーム減速機の構造にある。その他の部分の構造及び作用は、例えば前述の図7〜8に示した従来構造の場合と同様である為、重複する図示及び説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0018】
本例の場合も、上記ウォームホイール5aの歯部8aの加工を行なう為の工具として、前述の図9に示した様な加工用ウォーム11を使用する。即ち、本例の場合も、使用時に噛合させるウォーム3(図7、8参照)と比較して、軸方向に関する歯のピッチが同等で且つ歯先及び歯底の径寸法がそれぞれ同等以上である{例えば、歯先及び歯底がそれぞれ少しだけ(使用時に噛合させるウォーム3に対して1〜10%程度、より好ましくは1〜3%程度)大きい}ウォームの表面に砥粒(例えばダイヤモンド砥粒)を電着して成る加工用ウォーム11により、上記歯部8aの加工を行なう。特に、本例の場合には、この様な加工用ウォーム11を使用して上記歯部8aの加工を行なうのに先立ち、予めウォームホイール5aの歯部8aとなるべき部分にはすば歯車(ヘリカルギヤ)13を形成した中間素材12aを形成する。
【0019】
この為に、本例の場合は、例えばキャビティの内面のうちで上記歯部8aとなるべき部分に対応する部分の形状をはすば歯車13とした金型(成形型)を用いて、合成樹脂を射出成形する事により、図2、3の(a)に示す様な中間素材12aを造る。更に、本例の場合には、この様な中間素材12aの外周面に形成する上記はすば歯車13の各歯の圧力角θ(歯面上の任意の点Aに於ける歯型への接平面αと、基準ピッチ円筒Pと同軸で当該任意の点Aを通る円筒Pへの接平面の法線βとのなす角θ)を、完成後のウォームホイール5aの歯部8aの圧力角θ(歯面上の任意の点Bに於ける歯型への接平面γと、基準ピッチ円筒Pと同軸で当該任意の点Bを通る円筒Pへの接平面の法線δとのなす角θ)よりも小さく(θ<θ)している。そして、この様な中間素材12aを形成した後、この中間素材12aの外周面に形成した上記はすば歯車13を、図1に示す様に加工用ウォーム11により加工(研削若しくは切削)して、上記ウォームホイール5aの歯部8aを形成する。尚、この様な加工用ウォーム11を用いて行なう加工に関しては、前述の特許文献1に詳しく記載されている為、その説明を省略する。
【0020】
上述の様な、本例のウォームホイール5の製造方法によれば、完成後の歯部8aの歯厚を十分に確保しつつ、歯底(歯溝底)部分の加工代を小さくでき、耐久性の確保と加工代の低減との両立を高次元で図れる。
即ち、上述した様に、本例の場合には、加工用ウォーム11により加工される前の中間素材12aに形成するはすば歯車(ヘリカルギヤ)13の各歯の圧力角θを、完成後の歯部8aの圧力角θよりも小さく(θ<θ)している。この為、この完成後の歯部8aの歯厚を大きく(厚く)すべく、上記中間素材12aに形成する上記はすば歯車13の各歯の歯厚を大きくしても、このはすば歯車13の各歯の圧力角θを小さくしている分、歯底円直径が大きくなる(歯底溝が浅くなる)程度を小さくできる。
【0021】
即ち、完成後の歯部8aの歯厚を大きく(厚く)すべく、図2に示す様に、上記中間素材12aに形成する上記はすば歯車13の歯厚を、鎖線で示す状態から厚くする場合を考える。この場合に、図2の(b)に実線で示す様に、上記圧力角θの大きさを変えずに(圧力角θの大きさをそのままとした状態で)歯厚を大きくした場合には、歯厚が厚くなるだけでなく、この歯厚の増大と共に歯底円直径も、図2の(b)にtで示す分、大きくなる(歯底溝の深さが浅くなる)。そして、この様な図2の(b)で実線で表されたはすば歯車13aに、図1の(b)に示す様に、上記加工用ウォーム11による研削若しくは切削を施す場合には、図1、3の(b)にそれぞれ斜格子で表された部分が、この加工用ウォーム11により削り取らなければならない部分(加工代)となる。
【0022】
これに対して、上記はすば歯車13の歯厚を厚くする場合に、上記圧力角θの大きさを小さくした場合には、図2の(a)に実線で示す様に、歯厚を厚くしても、歯底円直径の大きさをそのままにできる(歯底溝の深さをそのままにできる)。そして、この様な図2の(a)で実線で表されたはすば歯車13に、図1の(a)に示す様に、上記加工用ウォーム11による研削若しくは切削を施す場合には、図1、3の(a)にそれぞれ斜格子で表された部分が、この加工用ウォーム11により削り取らなければならない部分(加工代)となる。この様な図1、3から明らかな様に、上記中間素材12aに形成するはすば歯車13の各歯の圧力角θを小さくすれば、完成後の歯部8aの歯厚を大きくしつつ、歯底(歯溝底)部分の加工代を小さくできる。そこで、本例の場合には、上記中間素材12aに形成する上記はすば歯車13の圧力角θの大きさを、完成後の歯部8aの圧力角θとの関係で規制している。
【0023】
即ち、上記中間素材12aに形成する上記はすば歯車13の圧力角θを、完成後の歯部8aの圧力角θよりも小さく(θ<θ)している。そして、この様にはすば歯車13の圧力角θを小さくする事により、歯底円の直径を小さく(歯底溝を深く)して、完成後の歯部8aの歯厚を十分に確保しつつ、歯底(歯溝底)部分の加工代を小さくして、耐久性の確保と加工代の低減との両立を高次元で図れる様にしている。そして、この様なウォームホイール5aをウォーム減速機に組み込んだ本例の場合には、上述の様に加工用ウォーム11により加工したウォームホイール5aとウォーム3(図4、5参照)とを噛合させる為、これらウォームホイール5aとウォーム3との噛合部の接触面積の確保を高次元で図れる。しかも、上述の様に造られたウォームホイール5aを組み込む為、耐久性の確保と低コスト化との両立も高次元で図れる。
【0024】
[実施の形態の第2例]
図4は、請求項2、3に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合は、加工用ウォーム11(図1、9参照)により加工される前の中間素材12bに形成するはすば歯車(ヘリカルギヤ)13bの各歯の圧力角θを、完成後の歯部8aの圧力角θ(図1参照)と同じにしている(θ=θ)。但し、本例の場合には、上記はすば歯車13bの歯底に、上記加工用ウォーム11の歯先に対する加工代を小さくする為の歯底溝14、即ち、互いに平行な側面を有する歯底溝14を設けて、上記中間素材12bとしている。この為に、例えば上記中間素材12bを射出成形する為の金型(成形型)の内面の形状を、図4に示す様なはすば歯車13bに対応するキャビティとなる様に形成している。この様な本例の場合も、前述の実施の形態の第1例と同様に、歯厚を大きくしても、上記加工用ウォーム11により研削(若しくは切削)しなければならない、歯底部分の加工代を小さくして、耐久性の確保と加工代の低減との両立を高次元で図れる。
その他の部分の構成及び作用は上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【0025】
[実施の形態の第3例]
図5は、請求項2、4に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合は、中間素材12bに形成するはすば歯車(ヘリカルギヤ)13bの歯底に、この歯底に向かう程互いに近付く方向に傾斜した側面を有する歯底溝14aを設けている。この歯底溝14aの側面の傾斜角度θは、上記はすば歯車(ヘリカルギヤ)13bの各歯の圧力角θ、延いては、完成後の歯部8aの圧力角θ(図1参照)よりも小さい。
その他の部分の構成及び作用は上述した実施の形態の第2例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【0026】
[実施の形態の第4例]
図6は、請求項2、5に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合は、中間素材12bに形成するはすば歯車(ヘリカルギヤ)13bの歯底に、断面円弧形の輪郭を有する歯底溝14bを設けている。
その他の部分の構成及び作用は前述した実施の形態の第2例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
尚、図示は省略するが、上述した実施の形態の第2〜4例で、加工用ウォーム11(図1、9参照)により加工される前の中間素材12bに形成するはすば歯車(ヘリカルギヤ)13bの各歯の圧力角θを、完成後の歯部8aの圧力角θよりも小さく(θ<θ)する事もできる。即ち、この様に中間素材12bに形成するはすば歯車13bの各歯の圧力角θを、完成後の歯部8aの圧力角θよりも小さく(θ<θ)すると共に、このはすば歯車13bの歯底に、上述した実施の形態の第2〜4例で示した様な、上記加工用ウォーム11の歯先に対する加工代を小さくする為の歯底溝14、14a、14bを設ける事もできる。又、この様に歯底溝14、14a、14bを設ける場合には、中間素材12bに形成するはすば歯車13bの各歯の圧力角θを、完成後の歯部8aの圧力角θよりも大きく(θ>θ)する事もできる。
【符号の説明】
【0027】
1 電動モータ
2 ハウジング
3 ウォーム
4 ウォーム軸
5、5a ウォームホイール
6 玉軸受
7 出力軸
8 歯部
9 合成樹脂
10 ステアリングシャフト
11 加工用ウォーム
12、12a、12b 中間素材
13、13a、13b はすば歯車
14、14a、14b 歯底溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも歯部の表層部が合成樹脂により造られているウォームホイールの製造方法であって、
このウォームホイールの歯部となるべき部分に、完成後の歯部の圧力角よりも小さい圧力角を有するはすば歯車を形成して中間素材とした後、
使用時に噛合させるウォームと比較して、軸方向に関する歯のピッチが同等で且つ歯先及び歯底の径寸法がそれぞれ同等以上であるウォームの表面に砥粒を固着して成る加工用ウォームにより、上記中間素材の歯部を加工する、
ウォームホイールの製造方法。
【請求項2】
少なくとも歯部の表層部が合成樹脂により造られているウォームホイールの製造方法であって、
このウォームホイールの歯部となるべき部分に、完成後の歯部の圧力角以下の圧力角を有するはすば歯車を形成すると共に、このはすば歯車の歯底に、後の加工工程で用いる加工用ウォームの歯先に対する加工代を小さくする為の歯底溝を形成して中間素材とした後、
使用時に噛合させるウォームと比較して、軸方向に関する歯のピッチが同等で且つ歯先及び歯底の径寸法がそれぞれ同等以上であるウォームの表面に砥粒を固着して成る上記加工用ウォームにより、上記中間素材の歯部を加工する、
ウォームホイールの製造方法。
【請求項3】
はすば歯車の歯底に、互いに平行な側面を有する歯底溝を形成して中間素材とする、請求項2に記載したウォームホイールの製造方法。
【請求項4】
はすば歯車の歯底に、この歯底に向かう程互いに近付く方向に、完成後の歯部の圧力角よりも小さい角度で傾斜した側面を有する歯底溝を形成して中間素材とする、請求項2に記載したウォームホイールの製造方法。
【請求項5】
はすば歯車の歯底に、断面円弧形の輪郭を有する歯底溝を形成して中間素材とする、請求項2に記載したウォームホイールの製造方法。
【請求項6】
ウォームとウォームホイールとを互いに噛合させて成るウォーム減速機に於いて、このウォームホイールが請求項1〜5のうちの何れか1項に記載したウォームホイールの製造方法により造られたものである事を特徴とするウォーム減速機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−39667(P2013−39667A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201558(P2012−201558)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【分割の表示】特願2007−242096(P2007−242096)の分割
【原出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】