説明

ウレタンオリゴマー、それを含有する熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】基材との密着性、耐折性、低反り性、はんだ耐熱性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性等に優れた可撓性の被膜形成に適したウレタン樹脂、それを含有する熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化物からなる保護膜や絶縁層を形成したプリント配線板を提供する。
【解決手段】一級アミノ基含有ウレタンオリゴマーは、(a)ポリイソシアネート化合物と、(b)2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物と、(c)一級アミノ基含有化合物とを反応させて得られる。好適には、上記一級アミノ基はウレタンオリゴマーの脂環式もしくは脂肪族構成ユニットに結合されており、ウレタンオリゴマーのイソシアネート成分は、脂肪族もしくは脂環式ジイソシアネートである。また、上記化合物(b)は、ポリカーボネートジオールであることが好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、(A)上記一級アミノ基含有ウレタンオリゴマーと、(B)熱硬化性化合物とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材との密着性、耐折性、低反り性、はんだ耐熱性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性等に優れた可撓性の被膜形成に適したアミノ基含有ウレタンオリゴマー及びそれを含有する熱硬化性樹脂組成物、並びにその硬化物からなる保護膜や絶縁材料に関し、プリント配線板の製造、特にフレキシブルプリント配線板の製造やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジストや層間絶縁膜等の保護膜や絶縁層、又は液晶ディスプレイのバックライトや情報表示用のディスプレイ等に使用されるエレクトロルミネッセントパネルの背面電極用保護膜や、携帯電話、時計、カーステレオ等の表示パネルの保護膜、ICや超LSI封止材料などに有用である。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジストとしては、カバーレイフィルムと呼ばれるポリイミドフィルムをパターンに合わせた金型で打ち抜いた後、接着剤を用いて貼り付けるタイプや、可撓性を有する被膜を形成する紫外線硬化型又は熱硬化型のソルダーレジストインキをスクリーン印刷により塗布するタイプや、可撓性を有する被膜を形成する液状フォトソルダーレジストインキのタイプが用いられている。
【0003】
しかしながら、カバーレイフィルムでは、銅箔との追随性に問題があるため、高精度なパターンを形成することができない。一方、紫外線硬化型ソルダーレジストインキ及び液状フォトソルダーレジストインキでは、基材のポリイミドとの密着性が悪く、充分な可撓性が得られない。また、ソルダーレジストインキの硬化収縮及び硬化後の冷却収縮が大きいため反りが生じてしまい、問題となっている。
【0004】
また、従来の熱硬化型ソルダーレジストインキとしては、特公平5−75032号(特許文献1)に開示されているようなエポキシ樹脂と長鎖二塩基酸無水物を必須成分とするエポキシ樹脂系レジストインキ組成物があるが、形成される被膜に可撓性を付与するように調整した場合、基材のポリイミドとの密着性が悪くなり、耐めっき性、PCT耐性並びにはんだ耐熱性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、特開2006−117922号(特許文献2)では、(A)1分子中に2個以上のカルボキシル基を有し、かつポリカーボネートジオール(a)とポリイソシアネート(b)との反応で形成されるウレタン結合を有するポリウレタン、及び(B)熱硬化性成分を含む熱硬化性樹脂組成物が提案されている。熱硬化性成分としてのエポキシ樹脂と組み合わせてこのようなカルボキシル基含有ウレタン樹脂を用いることにより、前記した従来のソルダーレジストインキの問題点は解決できるが、はんだ耐熱性等の特性において未だ改良すべき点が残されていた。
【特許文献1】特公平5−75032号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2006−117922号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点を解決し、基材との密着性、耐折性、低反り性、はんだ耐熱性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性等に優れた可撓性の被膜形成に適したウレタン樹脂及びそれを含有する熱硬化性樹脂組成物を提供し、もって比較的低コストでその硬化物からなる保護膜や絶縁層を形成したプリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板や、テープキャリアパッケージ等の部品もしくは製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明によれば、分子中に一級のアミノ基を含有するウレタンオリゴマーが提供される。好適な態様においては、上記一級のアミノ基はウレタンオリゴマーの脂環式もしくは脂肪族構成ユニットに結合されており、また、上記ウレタンオリゴマーのイソシアネート成分は、脂肪族もしくは脂環式ジイソシアネートであることが好ましい。
より具体的な好適な態様においては、(a)ポリイソシアネート化合物と、(b)2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物と、(c)一級のアミノ基を含有する化合物とを反応させて得られるウレタン樹脂が提供される。好適には、上記2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)は、ポリカーボネートジオールである。
【0008】
また本発明によれば、(A)分子中に一級のアミノ基を含有するウレタンオリゴマーと、(B)熱硬化性化合物とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物が提供される。
好適な態様においては、上記熱硬化性化合物(B)はエポキシ樹脂であり、また、さらに(C)硬化促進剤を含有することが好ましい。さらに無機及び/又は有機フィラーを含有することもでき、必要に応じて有機溶媒を含有することもできる。
さらに本発明によれば、前記熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物や、該硬化物で、面の一部又は全部が被覆されたプリント配線基板も提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウレタン樹脂は、分子中に一級のアミノ基を含有するウレタンオリゴマーであることを特徴としている。このアミノ基含有ウレタンオリゴマーは、一級のアミノ基に由来する高い反応性と基材との優れた密着性を有し、さらに、オリゴマーはウレタン構造を有することから優れた可撓性を発現する。これらの理由から、熱硬化性樹脂組成物の熱硬化性成分として、高性能を有する多官能エポキシ樹脂等を使用した場合においても、低反り性、耐折性に優れ、さらにはんだ耐熱性を向上させることができる。また、本発明のウレタン樹脂は、好適な態様として、(a)ポリイソシアネート化合物と、(b)2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物と、(c)一級のアミノ基を含有する化合物を反応させて得られるものであり、こうして得られるウレタンオリゴマーは、分子末端に一級のアミノ基が残るように反応がコントロールされ、保存安定性を向上させることができる。また、ウレタンオリゴマーの末端に一級アミノ基を有するため、熱硬化性成分との硬化反応により、はんだ耐熱性等の特性をさらに向上させることができる。
従って、本発明のウレタンオリゴマーは、基材との密着性、耐折性、低反り性、はんだ耐熱性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性等に優れた可撓性の被膜形成に適している。
【0010】
また、このような一級のアミノ基を含有するウレタンオリゴマーを熱硬化性化合物と共に含有する本発明の熱硬化性樹脂組成物は、可撓性に優れたフレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジスト等の保護膜や絶縁樹脂材料として有用である。また、このような熱硬化性樹脂組成物から得られる被膜は、熱硬化後に反りがないため、フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージへの部品又はチップの装着が容易である。従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いることにより、密着性、耐折性、低反り性、無電解金めっき耐性、はんだ耐熱性、電気絶縁性等の諸特性に優れた可撓性の保護膜を低コストで生産性良く形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者らは、前記した課題を達成すべく鋭意研究した結果、(a)ポリイソシアネート化合物と、(b)2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物と、(c)一級のアミノ基を含有する化合物とを反応させて得られるアミノ基含有ウレタンオリゴマーは、アミノ基に由来する特性として挙げられる基材との優れた密着性を有し、さらに、熱硬化の際にこのアミノ基が熱硬化性化合物の官能基、例えばエポキシ樹脂のエポキシ基と架橋反応を起こし、はんだ耐熱性等の特性を向上できることを見出した。一般に、樹脂の架橋密度が低くなる程、形成される被膜の可撓性が増大し、熱硬化後の被膜の反りは少なくなる。しかしながら、架橋密度が低くなると、得られる被膜のはんだ耐熱性、めっき耐性、耐薬品性等の特性も低下し易くなる。本発明では、アミノ基含有ウレタンオリゴマーを用いることにより、一級のアミノ基に由来する高い反応性と基材との密着性を向上させることができる。さらに、ウレタン構造に由来する優れた可撓性を併せ持つことから、一般的にフレキシブル基板用ソルダーレジストに使用することが困難とされる高性能を有する高Tgエポキシ樹脂や多官能エポキシ等を用いることが可能となり、低反り性を維持しつつ、はんだ耐熱等の特性を向上できることを見出した。
以下、本発明のアミノ基含有ウレタンオリゴマー及びそれを含有する熱硬化性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0012】
まず、本発明のウレタンオリゴマー(A)は、(a)ポリイソシアネート化合物と、(b)2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物と、(c)一級のアミノ基を含有する化合物との反応により、末端に導入されたアミノ基を有するウレタンオリゴマーであることが好ましい。
【0013】
前記ウレタンオリゴマー(A)は、例えば、前記好適なウレタンオリゴマーの場合、第一の反応として(a)ポリイソシアネート化合物と(b)2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物とを反応させ、続いて第二の反応として(c)一級のアミノ基を含有する化合物を反応させることが好ましい。
【0014】
前記反応は、室温〜100℃で撹拌・混合することにより無触媒で進行するが、反応速度を高めるために70〜100℃に加熱することが好ましい。
【0015】
前記ポリイソシアネート化合物(a)としては、従来公知の各種ポリイソシアネートを使用でき、特定の化合物に限定されない。前記好適なウレタンオリゴマーを合成する場合に用いられる(分岐)脂肪族もしくは脂環式イソシアネート(a)の具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の分岐脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、(o,m,又はp)−水添キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネートであるトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。また、(o,m,又はp)−キシリレンジイソシアネートなど、芳香環を有するジイソシアネートも使用することができる。これらのジイソシアネートは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのジイソシアネートを使用した場合、低反り性に優れた硬化物を得ることができる。
【0016】
次に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)としては、従来公知の各種ポリオールを使用でき、特定の化合物に限定されないが、ポリカーボネートジオール等のポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール、水素化ポリブタジエン系ポリオール、水素化イソプレンポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、リン含有ポリオール、カルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物、フェノール性ヒドロキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等を好適に用いることができる。ポリカーボネートジオールとしては、1種又は2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−1)、1種又は2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−2)、又は直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−3)が挙げられる。前記2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
前記、1種又は2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−1)の具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,9−ノナンジオールと2−メチル−1,8−オクタンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0018】
前記、1種又は2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−2)の具体例としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0019】
前記、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−3)の具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールと1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0020】
前記直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールは、低反り性や可撓性に優れる傾向がある。また、脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールは、結晶性が高くなり、耐錫めっき性、はんだ耐熱性に優れる傾向にある。以上の観点から、これらポリカーボネートジオールは2種以上を組み合わせて用いるか、あるいは直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールを用いることができる。低反り性や可撓性と、はんだ耐熱性や耐錫めっき性とをバランスよく発現させるには、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの共重合割合が質量比で3:7〜7:3のポリカーボネートジオールを用いるのが好ましい。
【0021】
前記ポリカーボネートジオールは、数平均分子量200〜5,000のものが好ましいが、ポリカーボネートジオールが構成単位として直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を含み、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの共重合割合が質量比で3:7〜7:3である場合は、数平均分子量が400〜2,000のものが好ましい。
【0022】
前記ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体としては、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、ブチレンオキシド付加体等が挙げられるが、これらの中でもビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体が好ましい。
【0023】
前記リン含有ポリオールの具体例としては、FC−450(旭電化工業(株)製)、M−Ester(三光(株)製)、M−Ester−HP(三光(株)製)等が挙げられる。これらのリン含有ポリオールを用いることによりウレタン樹脂中にリン化合物を導入することができ、難燃性を付与することができる。
【0024】
前記カルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物の具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を使用することによって、ウレタン樹脂中に容易にカルボキシル基を導入することができる。
【0025】
本発明において用いられる一級のアミノ基を含有する化合物(c)の具体例としては、例えば、ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミンが挙げられる。
【0026】
前記アミノ基含有ウレタンオリゴマー(A)の重量平均分子量は、500〜100,000であることが好ましく、8,000〜50,000がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の値である。アミノ基含有ウレタンオリゴマー(A)の重量平均分子量が500未満では、硬化膜の伸度、可撓性、並びに強度を損なうことがあり、一方、100,000超えると溶媒への溶解性が低くなる上に、溶解しても粘度が高くなりすぎるために、使用面で制約が大きくなる。
【0027】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、前記アミノ基含有ウレタンオリゴマー(A)と共に配合される熱硬化性化合物(B)としては、前記(A)成分であるウレタン樹脂のアミノ基と反応し得るエポキシ基、オキセタニル基等を1分子中に2個以上有するエポキシ樹脂やオキセタン化合物を好適に使用できるが、特にエポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0029】
さらに好ましい高Tgの硬化物を得られ易いエポキシ樹脂としては、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂などが挙げられ、具体的には、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂であるGTR−1800(日本化薬(株)製)、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂であるHP−7200(大日本インキ化学工業(株)製)、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であるHP−4032D、EXA−7240、EXA−4700、EXA−4770(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)、キサンテン骨格を有するエポキシ樹脂であるEXA−7335(大日本インキ化学工業(株)製)、ビフェノールノボラックエポキシ樹脂であるNC−3000(日本化薬(株)製)が挙げられ、これらの多官能エポキシ樹脂や他の3官能及び4官能エポキシ樹脂等を用いることにより、はんだ耐熱性等の特性を向上させることができる。
また、難燃性付与のために、塩素、臭素等のハロゲンや燐等の原子がその構造中に導入されたものを使用してもよい。
【0030】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、前記熱硬化性化合物(B)は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。その配合量は、前記(A)成分であるアミノ基含有ウレタンオリゴマー100質量部に対し、5〜1000質量部、好ましくは10〜500質量部の割合であることが望ましい。5質量部未満では、熱硬化性樹脂組成物の硬化被膜のはんだ耐熱性が不充分となる場合があり、一方、1000質量部を超えると、フレキシブルプリント配線基板(FPC)の絶縁保護膜として使用した場合の諸特性、特に電気絶縁性が悪化する傾向がある。
【0031】
本発明で用いる硬化促進剤(C)は、熱硬化反応を促進させるものであり、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上させるために使用される。このような硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール及びその誘導体(例えば、四国化成工業(株)製、2MZ、2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ、1B2MZ、2MZ−CN、2E4MZ−CN、C11Z−CN、2PZ−CN、2PHZ−CN、2MZ−CNS、2E4MZ−CNS、2PZ−CNS、2MZ−AZINE、2E4MZ−AZINE、C11Z−AZINE、2MA−OK、2P4MHZ、2PHZ、2P4BHZ等);アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩及び/又はエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製イルガキュアー(登録商標)261、(株)ADEKA製オプトマ−SP−170等の光カチオン重合触媒;スチレン−無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物等の公知慣用である硬化促進剤あるいは硬化剤類が挙げられる。
【0032】
これら硬化促進剤(C)は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。硬化促進剤(C)の使用は必須ではないが、特に硬化を促進したい場合には、前記熱硬化性化合物(B)100質量部に対して好ましくは0.1〜25質量部の範囲で用いることができる。25質量部を超えるとその硬化物からの昇華性成分が多くなるので好ましくない。
【0033】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記アミノ基含有ウレタンオリゴマー(A)、熱硬化性化合物(B)、及び必要に応じて硬化促進剤(C)やフィラー等を、混合機、例えばディスパー、ニーダー、3本ロールミル、ビーズミル等を用いて、溶解又は分散することにより得られる。その際、エポキシ基やフェノール性ヒドロキシル基に対して不活性な溶剤を使用してもよい。このような不活性溶剤としては有機溶剤が好ましい。
【0034】
有機溶剤は、前記アミノ基含有ウレタンオリゴマー(A)、熱硬化性化合物(B)を容易に溶解又は分散させるため、あるいは塗工に適した粘度に調整するために使用する。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、カルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム及び塩化メチレン等を挙げることができる。有機溶剤の配合量は、所望の粘度に応じて適宜設定できる。
【0035】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、密着性、硬度、耐熱性等の特性を上げる目的で、カルボキシル基及び/又はフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を含有することができる。カルボキシル基及び/又はフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、カルボキシル基及び/又はフェノール性ヒドロキシル基を有する限り全ての化合物を使用可能であり、特定のものに限定されるものではないが、それらの中でも例えば下記のような樹脂が好ましい。
(1)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合を有する化合物とを共重させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)多官能エポキシ化合物と飽和もしくは不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した2級のヒドロキシル基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(3)ヒドロキシル基含有ポリマーに多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(4)ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基と1つのカルボキシル基を有する化合物、1つのヒドロキシル基を有する化合物との4種類の化合物の付加反応により得られるカルボキシル基含有樹脂、
(5)多官能フェノール樹脂、
(6)ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、アルコール性ヒドロキシル基とフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物との3種類の化合物の付加反応により得られるフェノール性ヒドロキシル基含有樹脂、及び
(7)ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基と1つのカルボキシル基を有する化合物、アルコール性ヒドロキシル基とフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物との4種類の化合物の付加反応により得られるカルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシル基含有樹脂。
これらの中でも、得られる硬化物の可撓性や低そり性を損なわず、密着性、硬度、耐熱性等の特性を向上させるために、ウレタン構造を有する上記(4)、(6)及び(7)のカルボキシル基含有樹脂を配合させることが特に望ましい。
【0036】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、ポリイミド等の基材との密着性を向上させるために、公知慣用のメルカプト化合物を含有することができる。メルカプト化合物としては、2−メルカプトプロピオン酸、トリメチロールプロパントリス(2−チオプロピオネート)、2−メルカプトエタノール、2−アミノチオフェノール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−プロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。その配合量は、本発明の熱硬化性樹脂組成物100質量部当たり、10質量部以下の範囲が適当である。メルカプト化合物の配合量が上記範囲を越えた場合、架橋反応に必要な前記エポキシ樹脂のエポキシ基を消費し(エポキシ基と反応し)、架橋密度が下がるため好ましくない。
【0037】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、密着性、硬度、耐熱性等の特性を上げる目的で、無機及び/又は有機フィラーを含有することができる。無機フィラーとしては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、酸化珪素、無定形シリカ、タルク、クレー、雲母粉等が挙げられ、有機フィラーとしては、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等が挙げられる。上記フィラーの中でも、低吸湿性、低体積膨張性に特に優れるのは、シリカである。シリカは溶融、結晶性を問わず、これらの混合物であってもかまわないが、特にカップリング剤等で表面処理したシリカの場合、電気絶縁性を向上させることができるので好ましい。フィラーの平均粒径は、25μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは3μm以下であることが望ましい。これら無機及び/又は有機フィラーの配合量は、本発明の熱硬化性樹脂組成物100質量部当たり、300質量部以下が適当であり、好ましくは5〜150質量部の割合である。フィラーの配合量が上記割合を越えると、硬化被膜の耐折性が低下し、好ましくない。
【0038】
さらに本発明の熱硬化性樹脂組成物中には、本発明の効果を損なわない限り、前記成分以外の他の添加剤、着色剤を添加してもよい。添加剤としては、アスベスト、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの増粘剤、シリコーン系、フッ素系の消泡剤、レベリング剤、ガラス繊維、炭素繊維、窒化ホウ素繊維等の繊維強化材などが挙げられ、着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、酸化チタン、カーボンブラックなどが挙げられる。さらに、必要に応じて、公知慣用の熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、発泡剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤等を添加できる。
【0039】
以上のような組成を有する熱硬化性樹脂組成物は、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、スプレーコーティング法及びディップコーティング法など従来公知の種々の方法でプリント基板に塗布することができる他、ドライフィルム又はプリプレグ等様々の形態、用途に使用することができる。その使用方法や用途により様々な溶剤を用いることができるが、場合によっては良溶媒だけでなく貧溶剤を用いることも差し支えない。
【0040】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、回路形成されたフレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージ又はエレクトロルミネッセントパネルにスクリーン印刷法により塗布し、例えば120〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化収縮及び冷却収縮による反りがなく、基材に対する密着性、耐折性、低反り性、無電解金めっき耐性、はんだ耐熱性、電気絶縁性等に優れたソルダーレジスト膜や保護膜が形成される。
【実施例】
【0041】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことは勿論である。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0042】
合成例1<アミノ基含有ウレタンオリゴマーの合成例>
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器中に、ジメチルホルムアミド300gにポリイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート280gを投入し、室温にて攪拌を行った。フラスコ内が均一に混合された後、溶液を70℃まで上昇させ、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(宇部興産(株)製、PCDL800、数平均分子量800)800gを撹拌しながら投入し、70℃で15時間撹拌を続け、ウレタンオリゴマーを得た。
引き続き、撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器中に、ジメチルホルムアミド330g、ノルボルネンジアミン130gを投入し、室温にて攪拌を行い、フラスコ内が均一に混合されたことを確認した後に先に得られたウレタンオリゴマー540gを2時間かけて分割投入し、反応温度を室温から70℃まで上昇させた。さらに、反応温度を70℃に保ち5時間攪拌を行った。赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了し、固形分が67wt%のアミノ基含有ウレタンオリゴマー(以下、ワニスAと略記する)を得た。
【0043】
合成例2<カルボキシル基含有ウレタンオリゴマーの合成例>
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(宇部興産(株)製、PCDL800、数平均分子量800)360g、ジメチロールブタン酸81.4g、及び反応停止剤としてn−ブタノール11.8gを投入した。次に、ヘキサメチレンジイソシアネート151.2gを投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のカルボキシル基含有ウレタンオリゴマー(以下、ワニスBと略記する)を得た。得られたウレタンオリゴマーの固形分の酸価は51.0mgKOH/gであった。
【0044】
合成例3<ウレタンオリゴマーの合成例>
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(宇部興産(株)製、PCDL800、数平均分子量800)800g、n−ブタノール11.8gを投入した。次に、ヘキサメチレンジイソシアネート151.2gを投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のウレタンオリゴマー(以下、ワニスCと略記する)を得た。
【0045】
実施例1〜8及び比較例1、2
表1に示す各成分及び配合割合で、室温にて三本ロールミルにより混合し、熱硬化性樹脂組成物を調製した。得られた熱硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷にて基板に塗工し、150℃で60分間熱硬化を行なった。
【0046】
【表1】

【0047】
前記各熱硬化性樹脂組成物の硬化被膜について、以下のような種々の特性について下記の方法で評価した。その結果を表2に示す。
(1)密着性
上記実施例1〜8及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれカプトン100H(東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)にスクリーン印刷で全面印刷し、150℃で60分間熱硬化させた。その硬化被膜の密着性を、セロハン粘着テープを用いたピーリング試験によるレジスト層の剥れの有無で確認し、以下の基準で評価した。
○:全く剥れなし。
△:若干剥れ有り。
×:剥れ有り。
【0048】
(2)耐折性
上記実施例1〜8及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれカプトン100H(東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)にスクリーン印刷で全面印刷し、150℃で60分間熱硬化させた。得られた硬化被膜を180゜折り曲げ、以下の基準で評価した。
○:硬化被膜にクラックがないもの。
△:硬化被膜に若干クラックがあるもの。
×:硬化被膜にクラックがあるもの。
【0049】
(3)低反り性
上記実施例1〜8及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれカプトン100H(東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)にスクリーン印刷で全面印刷し、150℃で60分間熱硬化させた。冷却後、得られた硬化被膜を50×50mmに切り出し、4角の反りを測定して平均を求め、以下の基準で評価した。
○:反りが1mm未満であるもの。
△:反りが1以上5mm未満であるもの。
×:反りが5mm以上であるもの。
【0050】
(4)無電解金めっき耐性
上記実施例1〜8及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれプリント回路基板(厚さ1.6mm)上にパターン印刷し、150℃で60分間熱硬化させて試験片を得た。得られた試験片を用いて、後述する工程で無電解金めっきを行ない、無電解金めっき耐性を以下の基準で評価した。
○:硬化被膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの。
△:硬化被膜に若干ふくれ、剥がれ、変色があるもの。
×:硬化被膜にふくれ、剥がれ、変色があるもの。
【0051】
無電解金めっき工程:
1.脱脂:試験片を、30℃の酸性脱脂液((株)日本マクダーミッド製、MetexL−5Bの20vol%水溶液)に3分間、浸漬した。
2.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
3.ソフトエッチ:試験片を、14.3wt%の過硫酸アンモン水溶液に室温で1分間、浸漬した。
4.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
5.酸浸漬:試験片を、10vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
6.水洗:試験片を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
7.触媒付与:試験片を、30℃の触媒液((株)メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10vol%水溶液)に3分間、浸漬した。
8.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
9.無電解ニッケルめっき:試験片を、85℃、pH=4.6のニッケルめっき 液((株)メルテックス製、メルプレートNi−865M、20vol%水溶液)に30分間、浸漬した。
10.酸浸漬:試験片を、10vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
11.水洗:試験片を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
12.無電解金めっき:試験片を、85℃、pH=6の金めっき液((株)メルテックス製、オウロレクトロレスUP15vol%、シアン化金カリウム3wt%水溶液)に30分間、浸漬した。
13.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
14.湯洗:試験片を、60℃の温水に浸漬し、3分間充分に水洗した後、水を良くきり乾燥した。
【0052】
(5)はんだ耐熱性
上記実施例1〜8及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれプリント回路基板(厚さ1.6mm)上にパターン印刷し、150℃で60分間熱硬化させた。得られた硬化被膜にロジン系フラックスを塗布し、260℃のはんだ槽に10秒間浸漬し、硬化被膜の状態を以下の基準で評価した。
◎:10秒浸漬を2回繰り返しても硬化被膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの。
○:硬化被膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの。
△:硬化被膜に若干ふくれ、剥がれ、変色があるもの。
×:硬化被膜にふくれ、剥がれ、変色があるもの。
【0053】
(6)電気絶縁性
上記実施例1〜8及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれL/S=20/20μmのポリイミド基板(新日鐵化学(株)製、エスパネックス)上に塗膜を作成し、150℃で60分間熱硬化させた。得られた硬化被膜の電気絶縁性を以下の条件及び基準にて評価した。
加湿条件:温度120℃、湿度85%RH、印加電圧60V、100時間
測定条件:測定時間60秒、印加電圧60V
○:加湿後の絶縁抵抗値10Ω以上、銅のマイグレーションなし。
△:加湿後の絶縁抵抗値10Ω以上、銅のマイグレーションあり。
×:加湿後の絶縁抵抗値10Ω以下、銅のマイグレーションあり。
【0054】
【表2】

【0055】
前記各熱硬化性樹脂組成物の硬化被膜について、先錫めっき処理をした基板上において、以下のような種々の特性について下記の方法で評価した。その結果を表3に示す。
(7)錫めっき上密着性
上記実施例1〜8及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれL/S(ライン/スペース)=15/15μmの錫めっき処理をしているポリイミド基板(住友金属鉱山(株)製エスパーフレックス(S’PERFLEX)に錫めっき処理をした基板)上に塗膜を作成し、120℃で60分間熱硬化させた後、125℃で7.5時間熱硬化を行った。その硬化被膜の錫めっき上における密着性を、セロハン粘着テープを用いたピーリング試験によるレジスト層の剥れの有無で確認し、以下の基準で評価した。
○:全く剥れなし。
△:若干剥れ有り。
×:剥れ有り。
【0056】
(8)電気絶縁性
上記実施例1〜5及び比較例1の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれL/S(ライン/スペース)=15/15μmの錫めっき処理をしているポリイミド基板(住友金属鉱山(株)製エスパーフレックス(S’PERFLEX)に錫めっき処理をした基板)上に塗膜を作成し、120℃で60分間熱硬化させた後、125℃で7.5時間熱硬化を行った。得られた硬化被膜の電気絶縁性を以下の条件及び基準にて評価した。
加湿条件:温度120℃、湿度85%RH、印加電圧60V、100時間
試験条件:測定時間60秒、印加電圧60V、室温にて測定
○:加湿後の絶縁抵抗値10Ω以上、マイグレーションの発生なし。
△:加湿後の絶縁抵抗値10Ω以上、マイグレーションの発生あり。
×:加湿後の絶縁抵抗値10Ω以下、マイグレーションの発生あり。
【0057】
【表3】

【0058】
上記表2、3に示す結果から明らかなように、本発明の熱硬化性樹脂組成物から形成した硬化被膜は、基材への密着性、耐折性、低反り性、無電解金めっき耐性、はんだ耐熱性、電気絶縁性に優れていた。さらに、先錫めっき処理をした基板上においても良好な結果を得る事ができた。これに対して、アミノ基を含有しないウレタンオリゴマー(ワニスB、C)を用いた比較例1、2の場合、基材への密着性、耐折性、低反り性においては問題なかったが、無電解金めっき耐性、はんだ耐熱性及び電気絶縁性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に一級のアミノ基を含有するウレタンオリゴマー。
【請求項2】
前記一級のアミノ基が、ウレタンオリゴマーの脂環式もしくは脂肪族構成ユニットに結合されていることを特徴とする請求項1に記載のウレタンオリゴマー。
【請求項3】
前記ウレタンオリゴマーのイソシアネート成分が、脂肪族もしくは脂環式ジイソシアネートであることを特徴とする請求項1又は2に記載のウレタンオリゴマー。
【請求項4】
前記ウレタンオリゴマーの構成成分である2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物が、ポリカーボネートジオールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタンオリゴマー。
【請求項5】
(A)請求項1〜4のいずれか1項に記載のウレタンオリゴマーと、(B)熱硬化性化合物とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱硬化性化合物(B)がエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(C)硬化促進剤を含有することを特徴とする請求項5又は6に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに無機及び/又は有機フィラーを含有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記請求項5〜8のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項10】
前記請求項5〜8のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物で、面の一部又は全部が被覆されたプリント配線基板。

【公開番号】特開2009−235173(P2009−235173A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80503(P2008−80503)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】