説明

ウレタン系セメント組成物、床材および舗装材

【課題】反応制御性に優れ、低温から高温までの多用な施工条件において可使時間、硬化時間を制御でき、かつ作業性、外観を損なわず、かつ優れた機能を維持する硬化物を与える、ウレタン系セメント組成物を提供する。
【解決手段】(a)窒素原子を有する活性水素化合物、(b)窒素原子を有さない活性水素化合物、(c)水、(d)湿潤分散剤及び(e)無機酸を含む分散液(A)と分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(B)と水硬性セメント(C)とを含んでなるウレタン系セメント組成物、床材および舗装材を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐薬品性、耐熱水性、耐衝撃性、および耐摩耗性に優れ、食品工場、化学工場、機械工場などの工場床等、産業床及び舗装材用途に適したウレタン系セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗り床材、舗装材としては、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、メチルメタクリレート(MMA)系などの材料が用いられてきた。しかし、これらは食品工場、化学工場機械工場などの産業床用としては耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性などが必ずしも充分ではなかった。また上記床材のなかには、溶剤を多く含む材料や臭気を強く発する材料もあり、これらの材料は、環境上好ましいものではなかった。
【0003】
そこで、水硬性セメント、骨材、水、ポリオール、および2個以上のイソシアネート基を有する化合物からなるポリウレタン系セメント組成物が提案された(例えば特許文献1参照)。このポリウレタン系セメント組成物は現場で上記各成分を混合することにより、水と水硬性セメントの水和反応、ポリオールとイソシアネートとのウレタン化反応およびイソシアネートと水による炭酸ガスの発生を伴う尿素化反応が同時に進行するものである。この組成物が硬化すると、硬く、耐摩耗性に優れ、加えて耐熱性や耐薬品性を持つので、工場床等、産業床における耐久性に優れた床材として使用することができる。
【0004】
しかしこのようなセメント組成物は、施工する際に構成成分を混合するまで、活性水素化合物成分とイソシアネート成分との少なくとも2成分に分けておくことが必要である。さらにこれらの成分を混合する作業を容易にかつ確実に行うため、この種のセメント組成物における活性水素化合物成分は、分散液の状態で保存されていることが望ましく、かつイソシアネート成分と混合、反応中においても安定な乳化状態を保つことが望ましいものであるが、この分散液の保存安定性は必ずしもよいものではなく、反応中にかかる乳化状態が崩れて水が分離し、均一な膜が得られにくくなる場合が多い。
【0005】
そこで、分散液の保存安定性を改善するため、ポリイソシアネート、水、ポリヒドロキシアミン、エトキシ化アルキルフェノールおよび脂肪酸からなる組成物が提案されている(例えば特許文献2参照)。しかし、この組成物は、エトキシ化アルキルフェノールの水酸基とイソシアネートとの反応により親水性が低下するため、界面活性能が低下・消失し、水の分離が生じる。
【0006】
また、低温における高い硬化性が要求される場合とか、工程上の養生時間の硬化時間短縮が要求される場合には、触媒を増加することにより硬化性を高めたり、硬化を速める方法が採用されうる。
しかし、上記のウレタン系セメント組成物のように、複数の反応が同時に進行して硬化する系においては、触媒を増加すると、各反応の制御が困難になる問題がある。そのため可使時間が確保できず、施工作業性が悪くなり、かつ得られた硬化物にフクレや亀裂が発生する問題がおこっていた。
これを解決するため、窒素原子を有する活性水素含有化合物、1級アミノ基および2級アミノ基等の活性水素含有基を有する活性水素含有化合物を用いる方法について提案されている(例えば特許文献3参照)が、反応性が高すぎて、常温から高温で充分な可使時間を確保しにくいため、実用的な方法ではない。
【0007】
【特許文献1】特開平8−169744号公報
【特許文献2】特開平2−247214号公報
【特許文献3】特開2000−302514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、反応制御性に優れ、低温から高温までの多用な施工条件において可使時間、硬化時間を制御でき、かつ作業性、外観を損なわず、かつ優れた機能を維持する硬化物を与える、ウレタン系セメント組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前述の問題点を解決すべく検討を行った結果、湿潤分散剤と無機酸とを配合すると、広い範囲で反応性を制御することができることを発見するに及んで、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、(a)窒素原子を有する活性水素化合物、(b)窒素原子を有さない活性水素化合物、(c)水、(d)湿潤分散剤及び(e)無機酸を含む分散液(A)と分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(B)と水硬性セメント(C)とを含んでなるウレタン系セメント組成物を提供するものである。また本発明は、前記ウレタン系セメント組成物からなる床材および舗装材を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウレタン系セメント組成物は、低温から高温までの多用な施工条件において、可使時間、硬化時間を制御でき、かつ作業性、外観を損なわず、かつ優れた機能を与えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の分散液(A)中の(a)窒素原子を有する活性水素含有化合物としては、特に限定されないが、例えばモノエタノールアミンのようなアミノアルコール類及びそのアルキレンオキシド反応物;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルテトラミン、m−及びp−フェニレンジアミン並びに2,4−及び2,6−ジアミノトルエンのようなポリアミン類、及びそのアルキレンオキシド反応物;ホルムアルデヒドとメラミン、尿素、アミド類、カルバメート類、ウロン類、ウレイン類、ウレイド類、イミダゾリジノン類、ピリジノン類及びトリアジノン類との縮合生成物、並びにそのような縮合生成物の低級アルキルエーテル、例えばメチル化ポリメチロールメラミン/尿素、ジメチロールとジエチロールエチレン尿素、ジヒドロキシジメチロール及びジエチロール尿素樹脂縮合物等が挙げられる。
【0012】
(a)窒素原子を有する活性水素含有化合物の使用割合は、分散液(A)中に0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%である。
窒素原子を有さない活性水素含有化合物(b)としては、活性水素含有基を少なくとも2個有する化合物が好ましく、低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリジエンポリオール、ひまし油、水素化ひまし油などが挙げられる。
【0013】
低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、1,4−、1,3−及び2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0014】
ポリエーテルポリオールとしては、前記低分子量ポリオールを開始剤として、触媒の存在下、環状エーテルを開環重合付加して得られる化合物が挙げられる。環状エーテルとしては、例えばエチレンオキシド、エビクロロヒドリン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド及び2,3−ブチレンオキシドのようなアルキレンオキシド、トリメチレンオキシド及びテトラヒドロフラン等がある。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸と2価アルコールを既知の方法によって反応させて得られる化合物が挙げられる。適切なジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸、並びにこれらの酸の混合物が挙げられる。2価アルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール及び2,2−ジエチルトリメチレングリコールが挙げられる。
【0016】
ポリジエンポリオールとしては、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリクロロプレンポリオール、及びこれらに水素添加したポリオールなどが挙げられる。
【0017】
更に窒素原子を有さない活性水素含有化合物(b)として、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、及びメチルカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロースのアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル及びアルキルヒドロキシアルキルエーテル等などのセルロース誘導体である水溶性イソシアネート反応性ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレングリコールなどを使用することができる。
【0018】
(b)窒素原子を有さない活性水素含有化合物の数平均分子量は300〜3000が好ましく、500〜2000が特に好ましい。水酸基数は2〜5が好ましい。
【0019】
(b)窒素原子を有さない活性水素含有化合物の使用割合は、分散液(A)中に、5〜85重量%、好ましくは20〜60重量%である。
【0020】
本発明に使用する(c)水の配合量は、水硬性セメント(C)100重量部に対して5〜500重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましく、10〜50重量部が最も好ましい。
【0021】
本発明に使用する(d)湿潤分散剤としては、例えばウレタン系湿潤分散剤、ポリエステル系湿潤分散剤、アクリル系湿潤分散剤、ポリアミド系湿潤分散剤などが挙げられる。湿潤分散剤を用いることにより組成物の分散性が向上する。これらの湿潤分散剤のうち、3級アミノ基を含有する化合物からなる湿潤分散剤が好ましい。
【0022】
湿潤分散剤の使用割合は、分散液(A)中に、0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0023】
本発明において(e)無機酸は、具体的には塩酸、リン酸、硝酸、硫酸などが挙げられ、これらのうち、好ましくはリン酸である。
【0024】
無機酸の使用割合は、分散液(A)中に、0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0025】
本発明における分散液(A)は、必要に応じていわゆる界面活性剤を含んでいてもよい。この界面活性剤の使用は、分散液の分散安定性を補助し、さらに混合時にまきこまれる空気を微細化する効果が期待できる。使用できる界面活性剤としては、合成界面活性剤、樹脂酸塩系界面活性剤、タンパク系界面活性剤のいずれも使用できる。界面活性剤の種類はアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が単独で又は混合して使用される。
【0026】
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(B)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4'−ジイソシアネート、4,4'ジイソシアネート−3,3'−ジメチルジフェニル、ジメチルジフェニルエーテルジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート、並びにジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのような脂環式ジイソシアネートが挙げられる。また、2,4,6−トリイソシアネートトルエンやトリイソシアネートジフェニルエーテルのような芳香族トリイソシアネートも挙げられる。
【0027】
これら化合物は、ウレチジオン変性体、ヌレート変性体、カルボジイミド変性体、ビュレット変性体、ウレア変性体などの変性体であってもよい。
【0028】
また分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物として、前記化合物又はその変性体とポリオールとを、イソシアネート基過剰で反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーを使用することもできる。この場合ポリオールとしては、前記低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリジエンポリオールなどが挙げられる。
【0029】
また、ホルムアルデヒドとアニリン及びo−トルイジンのような芳香族アミンとを酸性条件下で反応させて得られた混合ポリアミンをホスゲン化して得られる混合物も使用できる。この混合物は、例えばポリメリックMDIとして知られているもので、塩酸の存在下でホルムアルデヒドとアニリンとを反応させ調製した混合ポリアミンのホスゲン化によって得られ、異性体及び2個を超えるイソシアネート基を含むメチレン結合ポリフェニルポリイソシアネートと混り合っているジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアメートよりなるものも使用できる。
【0030】
さらにその他のイソシアネート基末端プレポリマーとして、イソシアネートと反応し得る基を有するコールタールピッチと任意に上記のポリオールを混合したものに有機ポリイソシアネートをイソシアネート基過剰で反応させて得られる反応生成物も使用できる。
【0031】
前記化合物は二種以上を混合して使用してもよいし、可塑剤及び、又は希釈剤と併用してもよい。
【0032】
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(B)の使用割合としては、分散液(A)100重量部に対して10〜1000重量部、好ましくは50〜200重量部である。
【0033】
水硬性セメント(C)とは、水と混和することにより硬化あるいは凝結する構造材料の一群を示す。ポルトランドセメントや高いアルミナ含量を特徴とする迅速硬化型セメントが特に好ましい。ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、鉄及び炭素含量の低いセメントである白色ポルトランドセメントなどがある。
【0034】
水硬性セメント(C)としては、前記以外にも、珪酸二カルシウムとアルミノ亜鉄酸四カルシウムの含有率が高く、珪酸三カルシウムとアルミン酸三カルシウムの含有率が低いこ低熱セメント;珪酸三カルシウムと珪酸二カルシウムの含有率が高く、アルミン酸三カルシウムとアルミノ亜鉄酸四カルシウムの含有率が低い耐硫酸塩セメント;ポルトランドセメントクリンカーと顆粒状鉱滓との混合物であるポルトランドブラストファーネスセメント;ポルトランドセメントと、水和石灰、顆粒状鉱滓、粉砕石灰石、コロイド状粘土、珪藻土、もしくはその他のシリカ、ステアリン酸カルシウムとパラフィンの微粉状物のうちから選ばれた一種又は二種以上の物との混合物であるメーソンリーセメント;アメリカ合衆国リーハイ・ヴァレーの堆積物から得られた天然セメント;純粋な、もしくは不純な形のカルシウムの酸化物である石灰セメント;石灰に5〜10重量%の焼石膏を添加したセレナイトセメント;火山灰、火山性珪藻土、軽石、石灰華、サントリン土もしくは顆粒状鉱滓と石灰モルタルとの混合物である火山灰混合セメント;硫酸カルシウムの水和物による物で、焼石膏、キーンスセメント及び石膏プラスターを含有している硫酸カルシウムセメントなどが挙げられる。
【0035】
水硬性セメント(C)の使用量としては、ポリイソシアネート(B)100重量部に対して、30〜1000重量部、好ましくは50〜300重量部である。
【0036】
本発明のウレタン系セメント組成物は、さらに骨材(D)を含むことが好ましい。骨材(D)としては、砂及び低粘土含量の砂利、ガラスの粉砕物珪質骨材、プラスチック及びゴムの粉砕物、プラスチック廃物、鋸屑、木屑、軽石、フライアッシュバルーンやメサライト・Gライトなどの軽量骨材、ひる石等が挙げられる。これらのうち、珪質骨材が好ましい。
【0037】
前記プラスチック及びゴムの粉砕物としては、例えばプラスチック・ゴムの粉砕物のチップ、旋削屑(turnings)、又は顆粒が用いることができる。プラスチック廃物は、射出成形その他の方法で成形された物品をトリミングする際に出るものである。
【0038】
これらの骨材(D)は、水硬性セメント(C)と混合して使用することが特に好ましい。骨材は、洗浄された平均粒径が0.076mm〜4cmであるものが好ましい。これらの材料は、天然の状態でも、あるいは、例えば染料や顔料や被覆材の使用により、人工的に着色されたものでもよい。
【0039】
骨材(D)の使用割合は、水硬性セメント(C)100重量部に対して1〜1000重量部、好ましくは100〜500重量部である。
【0040】
更に、本発明のウレタン系セメント組成物は、その他充填剤、反応調整剤、二酸化炭素吸収剤、消泡剤、可塑剤、硬化促進剤、瀝青を含有していてもよい。
【0041】
充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウムなどの無機粉体やガラス繊維、綿、羊毛、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の天然起源又は人工起源の繊維性材料も使用できる。タルクや繊維性材料を加えることによりセメント組成物に遥変性を付与することができ、斜路や立ち面に塗装可能な材料を調整することができる。
【0042】
これらの充填剤は、水硬性セメントと混合して使用することが特に好ましい。
反応調整剤としては、1価アルコール、エポキシ基含有化合物等の連鎖停止剤が挙げられる。純粋なあるいは例えばパイン油のような炭化水素と混合したテルピネオールも使用できる。
【0043】
1価アルコールの例としては、メタノール、ヘキサノール、イソオクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、セチルアルコール等の飽和アルコール類、アリルアルコール及びプロパルギルアルコールのような不飽和アルコール類、及びそれらのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0044】
エポキシ基含有化合物としては、大豆油、ヒマシ油等の油脂を酸化して得られる混合脂肪酸をまず1価アルコール、ジオールもしくは多官能性のポリオールでエステル化し、次いで得られた混合エステルをエポキシ化することで得られるエポキシ化油脂、ジフェニロールプロパンとエピクロロヒドリンとから誘導されるビスエポキシ化合物類や、少なくとも一個のエポキシシクロヘキサン基又はエポキシシクロペンタン基を含む化合物類が挙げられる。
【0045】
本発明のウレタン系セメント組成物において、イソシアネート成分と水がセメント組成物の中で共存しているが、水硬性セメントが充分量存在しており、イソシアネート成分が水と反応した際に発生する二酸化炭素を吸収するのに充分に塩基性であることから発泡は起きにくい。しかし、該セメント組成物を硬化させる際に発泡の傾向があるなら、二酸化炭素吸収剤や消泡剤を使用することができる。
【0046】
二酸化炭素吸収剤としては、具体的には酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カドミウム、珪酸カルシウム、珪酸バリウム、珪酸ナトリウム、水酸化鉛、塩基性酢酸鉛等、金属の酸化物、水酸化物、塩基性塩、錯塩及び複塩などが挙げられる。
【0047】
また、消泡剤としては、ポリ(シロキサン)、ポリ(アルキルシロキサン)及びポリ(ジアルキルシロキサン)、ポリエチレンオリゴマーなどが挙げられる。
【0048】
可塑剤としては、具体的にはフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ブチルベンジル、リン酸トリクレジル、リン酸トリトリル、リン酸トリ(2−クロロエチル)等の可塑剤、塩素化酸炭化水素類が挙げられる。
【0049】
硬化促進剤とは、イソシアネート基と活性水素含有基との間に反応速度を加速するとして知られている化合物である。適切な促進剤としては、例えば有機金属化合物、金属塩及び三級アミンがあり、例として、ジブチル錫ジラウレート、チタン酸テトラブチル、オクタン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オクタン酸第一錫、塩化第二錫、塩化第二鉄、オクタン酸鉛、オレイン酸カリ、2−エチルヘキサン酸コバルト、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−エチルモルホリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4−ジメチルアミノピリジン、オキシプロピル化トリエタノールアミン、β−ジエチルアミノエタノール及びN,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシ)エチレンジアミンが挙げられる。
【0050】
瀝青(この意味とするところは、原油の蒸留残渣であり、本質的には脂肪族系の性状を有し、実質上イソシアネートとの反応性を持っていないもの)を使用してもよい。これは、一般的に柔軟性と耐水性とを改善する。コールタールピッチもまたこの組成物に加えてよい。
【0051】
本発明において、各種材料を混合する場合、又は、第1成分、第2成分及び第3成分の3成分を混合する場合、セメントミキサーや強制へらミキサーのような手段を使用して混合する方法が好ましい。また、該セメント組成物は例えば、コテ塗り、注ぎ込み、吹きつけ、その他の適切な方法で、基材に塗布し、硬化させうる。
【0052】
また、本発明のポリウレタン系セメント組成物は、建築物の床面、階段などの床面、道路や軌道などの塗り床材及び下地調整材/道路や軌道などの舗装材及び下地調整材として適し、食品工場、化学工場、機械工場などの工場床、産業床用の材料として用いられる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例1〜5および比較例1〜17によって具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。部は重量部を示す。
【0054】
ウレタン系セメント組成物に使用した原料は次のとおりである。
ポリオールA:エチレンジアミンにプロピレンオキシド次いでエチレンオキシドを開環付加させて得られたオキシエチレン基含量40重量%、分子量500の窒素原子含有のポリオキシアルキレントリオール。
ポリオールB:トリエタノールアミンにプロピレンオキシドを開環付加させて得られた分子量470の窒素原子含有のポリオキシアルキレントリオール。
ユーリックH−30;ヒマシ油、伊藤製油(株)製。
BBP:フタル酸ブチルベンジル。
DOP:フタル酸−2−エチルヘキシル。
DMA:N,N−ジメチルアミノエタノール。
Disperbyk−161;3級アミノ基を有するウレタン系湿潤分散剤、ビックケミージャパン(株)製(以下湿潤分散剤1という)。
Disperbyk−163;3級アミノ基を有するウレタン系湿潤分散剤、ビックケミージャパン(株)製(以下湿潤分散剤2という)。
マイティ2000R;ナフタレン系セメント減水剤、花王(株)製。
ニューコール562;ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、HLB8.9、日本乳化剤(株)製。
MR−200;ポリメリックMDI、日本ポリウレタン(株)製。
GN;酸化クロム、バイエル(株)製。
【0055】
(合成例1)
35部のヒマシ油、35部のDOP、2部のポリオールA、1部の湿潤分散剤1、0.2部の89重量%燐酸(試薬1級)を加えた26.8部の水と撹拌混合し、分散液1を調製した。
【0056】
(合成例2)
40部のヒマシ油、31部のBBP、2部のポリオールB、1部の湿潤分散剤2と0.5部の89重量%燐酸を加えた32.5部の水と撹拌混合し、分散液2を調製した。
【0057】
(比較合成例1)
35部のヒマシ油、35部のDOP、2部のポリオールA、0.2部の89重量%燐酸(試薬1級)を加えた27.8部の水と撹拌混合し、分散液3を調製した。
【0058】
(比較合成例2)
51部のヒマシ油、15部のBBP、1部の湿潤分散剤2と0.5部の89重量%燐酸(試薬1級)を加えた32.5部の水と撹拌混合し、分散液4を調製した。
【0059】
(比較合成例3)
50部のヒマシ油、15部のBBP、1部のポリオールB、1部の湿潤分散剤1と0.5部のオクチル酸を加えた32.5部の水と撹拌混合し、分散液5を調製した。
【0060】
(比較合成例4)
34部のヒマシ油、34部のBBP、1.5部のマイティ2000R、および、0.5部のポリシロキサン系消泡剤を、30部の水と撹拌混合し、分散液6を調製した。
【0061】
(比較合成例5)
34部のヒマシ油、32.4部のBBP、1.5部のマイティ2000R、1.5部の酢酸、0.1部のDMAおよび、0.5部のポリシロキサン系消泡剤を、30部の水と撹拌混合し、分散液7を調製した。
【0062】
(比較合成例6)
34部のヒマシ油、34部のBBP、1.5部のマイティ2000R、0.04部のジブチル錫ジラウレートおよび、0.5部のポリシロキサン系消泡剤を、30部の水と撹拌混合し、分散液8を調製した。
【0063】
(比較合成例7)
34部のヒマシ油(ユーリックH−30)、34部のBBP、1.5部のニューコール562、および、0.5部のポリシロキサン系消泡剤を、30部の水と撹拌混合し、分散液9を調製した。
【0064】
(比較合成例8)
30.8部のヒマシ油、34部のBBP、1.5部のニューコール562、3部のポリオールA、0.2部の酢酸、および、0.5部のポリシロキサン系消泡剤を、30部の水と撹拌混合し分散液10を調製した。
【0065】
(合成例1及び2、比較合成例1〜8)
上記にて調整した分散液を下記評価基準にしたがって評価した。結果を表−1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
(実施例1〜3、比較例1〜8)
上記で得られた分散液を表2、表3及び表4に示す部数を配合し、コンクリート下地にコテで塗布し10mm厚さに延展し、5℃で相対湿度50%、20℃で相対湿度50%、35℃で相対湿度50%の恒温恒湿槽内でそれぞれ養生し、床面を得た。得られた床面を上記評価法にしたがって評価した。結果を表−2、表−3及び表−4に示す。
【0068】
(評価基準)
<分散液>
乳化安定性 :前記合成例及び比較合成例で得られた分散液を20℃の室内で保管し、分離しにくさを確認した。均一な乳化状態を保持した場合を○、分離の傾向が認められる場合は△、分離した場合は×とした。
均一硬化性 :合成例及び比較合成例で得られた分散液100部とMR−200100部を配合し、均一な乳化状態のままで硬化するものを○、分離の傾向が認められる場合は△、硬化中に乳化状態が崩れ分離するものを×とした。
<セメント組成物>
可使時間 :攪拌開始からコテ作業が出来る限界までの時間とした(単位:分)。
塗 装 性 :コテ作業が軽快である場合を〇、コテ作業が重い場合を×、中間を△とした。
硬 化 性 :タックフリーとなり歩行可能になるまでの時間を測定した(単位:時間)。
仕上がり外観:フクレおよびピンホールがない場合を〇、フクレまたはピンホールがわずかに確認できる場合を△、明らかなフクレまたはピンホールがある場合を×、とした。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)窒素原子を有する活性水素化合物、(b)窒素原子を有さない活性水素化合物、(c)水、(d)湿潤分散剤及び(e)無機酸を含む分散液(A)と分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(B)と水硬性セメント(C)とを含んでなるウレタン系セメント組成物。
【請求項2】
さらに、骨材(D)を含有する請求項1に記載のウレタン系セメント組成物。
【請求項3】
前記(d)湿潤分散剤が、3級アミノ基を含有する化合物である請求項1又は2記載のウレタン系セメント組成物。
【請求項4】
前記(e)無機酸が、リン酸である請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタン系セメント組成物。
【請求項5】
前記(a)窒素原子を有する活性水素化合物が、アミンにアルキレンオキシドを付加反応して得られるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のウレタン系セメント組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のウレタン系セメント組成物からなる床材。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のウレタン系セメント組成物からなる舗装材。



【公開番号】特開2006−206354(P2006−206354A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18132(P2005−18132)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】