ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する抗体および/または抗体コンジュゲート、その組成物ならびに使用
ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する抗体および/または抗体コンジュゲート、その組成物ならびに使用を提供する。抗体および抗体コンジュゲートは、治療薬もしくは診断薬を包含することができるが、これらを使用して、たとえば癌のような疾患を治療、予防、または検出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 分野
ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する抗体および/または抗体コンジュゲート、その組成物ならびに使用を提供する。さらに具体的には、ウロキナーゼのアミノ末端断片の、クリングル領域、成長因子ドメイン領域またはC末端領域と結合することができる抗体および/または抗体コンジュゲート、それらの組成物ならびに使用を提供する。抗体および抗体コンジュゲートは、治療薬もしくは診断薬を包含することができるが、これらを使用して、たとえば癌のような疾患を治療、予防、または検出することができる。
【背景技術】
【0002】
2. 背景
ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター系は、セリンプロテアーゼウロキナーゼ(uPA)、ウロキナーゼ細胞表面レセプター(uPAR)、およびプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)からなり、多くの固形腫瘍の血管新生、浸潤および転移に関与する因子のひとつである(Danら、Adv. Cancer Res., 1985, 44:139-266)。uPARは、腫瘍細胞および血管新生内皮細胞による細胞外マトリックスの制御された分解、および再構築に、不可欠な役割を担っている(図1)。uPA-uPAR依存性カスケードは、結果として、プロマトリックスメタロプロテイナーゼ-9の活性化、ならびにHGF、VEGFおよびTGFβなどの成長因子および血管新生因子の活性化および放出ももたらす。
【0003】
細胞は、不活性型のuPA、プロウロキナーゼ(pro-uPA)もしくは一本鎖uPA(scuPA)を411アミノ酸タンパク質として生成し、これが次にuPARと結合する。この結合事象は、細胞環境におけるscuPAの二本鎖uPA(tcuPA)への効率的な活性化のために、あらかじめ必要な条件である(Ellisら、j. Biol. Chem. 1989, 264:2185-88)。Pro-uPAは、プロ酵素を活性化するためにアミノ酸158(Lys)と159(Ile)の間での一回のタンパク質分解切断によって活性化される。切断の結果、二本鎖の活性uPA(tcuPA)が形成され、これは結果として、高次構造の変化をもたらし、また、天然および合成基質とのプラスミノーゲンアクチベーター活性の増加をもたらす。
【0004】
uPAは、N末端成長因子ドメイン、クリングルドメイン、および(3)C末端セリンプロテアーゼドメインを含んでなる3-ドメインタンパク質である。pro-uPAのレセプターであるuPARもマルチドメインタンパク質であって、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカーによって細胞膜の外葉に固定されている(Behrendtら、Biol. Chem. Hoppe-Seyler 1995, 376:269-279)。
【0005】
uPARは、通常、静止細胞では検出可能なレベルで発現されないため、uPA系の活性が生じる前に、アップレギュレートされるに違いない。uPARの発現は、in vitroではホルボールエステルのような試薬(Lundら、J. Biol. Chem. 1991, 266:5177-5181)、上皮細胞のトランスフォーメーション、ならびにさまざまな成長因子およびサイトカイン、たとえば、VEGF、bFGF、HGF、IL-1、TNFα(内皮細胞において)およびGM-CSF(マクロファージにおいて)によって促進される(Mignattiら、J. Cell Biol. 1991, 113: 1193-1201; Mandriotaら、J. Biol. Chem. 270:9709-9716; Yoshidaら、Inflammation 1996,20: 319-326)。uPARの発現は、細胞の運動性、浸潤および接着の増加という機能上の結果をもたらす(Mandriotaら、上記)。さらに重要なことには、uPARは、現在までに調べられた大部分のヒトの癌において、具体的には、腫瘍細胞それ自体において、血管新生を行う腫瘍関連内皮細胞において、ならびに、腫瘍血管新生の誘導に関与しうるマクロファージ(Pykeら、Cancer Res. 1993, 53:1911-15)において、in vivoでアップレギュレートされていると思われる(Lewisra,J. Leukoc. Biol. 1995, 57:747-751)。癌患者におけるuPAR発現は、進行した病変に存在し、多くのヒト癌において予後不良と関連づけられる(Hofmannら、Cancer 1996, 78:487-92; Heissら、Nature Med. 1995, 1:1035-39)。その上、uPARは腫瘍全体にわたって均等に発現されるのではなく、浸潤辺縁に付随する傾向があり、ヒト胃癌において転移の表現型マーカーとなると考えられる。したがって、uPARは、腫瘍細胞および血管新生内皮細胞による細胞外マトリックスの制御された分解、および再構築に、必須である(図1)。腫瘍増殖におけるuPA-uPARの重要な役割、ならびに(正常組織ではなく)腫瘍内でのその夥しい発現によって、この系は、魅力的な診断および治療ターゲットとなる。
【0006】
uPA、pro-uPA、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)またはストレプトキナーゼ(血栓塞栓症用)の治療上の使用が、癌のような病的状態を治療するために、研究されてきた。しかしながら、こうした治療薬は、一つには急速なクリアランスのために、非常に高用量を必要とする。これらのタンパク質の短い半減期について考えられる理由としては、特異的な血中インヒビターとの結合、レセプターとの結合、インヒビター結合および/またはレセプター結合PAのインターナリゼーションおよび分解がある。
【0007】
したがって、必要とされるのは、uPA-uPAR系に関わる疾病を治療および/または予防することができる新規治療薬および診断薬である。
【発明の開示】
【0008】
3. 概要
これらのおよび他の必要性は、ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する抗体および/または抗体コンジュゲート、その組成物、ならびにその使用を提供することによって満たされる。抗体および抗体コンジュゲートには治療薬もしくは診断薬を含めることができるが、これらを、たとえば、癌のような疾病を治療、予防または検出するために使用することができる。
【0009】
ある態様において、ウロキナーゼのアミノ末端断片に結合する抗体が提供される。ある実施形態において、抗体はウロキナーゼの成長因子ドメインに結合する。他の実施形態において、抗体は、ウロキナーゼのクリングルドメインに結合する。
【0010】
抗体は、好ましくは、モノクローナル抗体であって、ウロキナーゼと結合後、これを細胞内にインターナライズすることができる。ある実施形態において、抗体はタンパク質毒素と融合される。他の実施形態において、抗体は、治療薬と結合される。好ましくは、治療薬は、タキサン、カンプトテシンもしくはエポチロンといった細胞毒性抗癌剤である。ある実施形態において、治療薬はドキソルビシンである。他の実施形態において、治療薬は放射性核種である。さらに他の実施形態において、抗体は診断薬と結合されるが、この診断薬は放射性核種、陽電子放出断層撮影法による画像化を可能にする薬剤、磁気共鳴イメージング剤、蛍光剤、発蛍光団、発色団、色素原、燐光剤、化学発光剤、または生物発光剤とすることができる。
【0011】
もう一つの態様において、一般に、1つもしくは複数の抗体もしくは抗体コンジュゲート、ならびに製薬上許容される賦形剤、たとえば、希釈剤、担体、賦形剤、もしくはアジュバントを含んでなる、医薬組成物が提供される。希釈剤、担体、賦形剤およびアジュバントの選択は、他の要因もあるが、とりわけ望ましい投与方式によって決まる。
【0012】
また別の態様において、1つもしくは複数の抗体もしくは抗体コンジュゲート、および製薬上許容されるビヒクル、たとえば、希釈剤、担体、賦形剤、もしくはアジュバントを一般に含んでなる診断用組成物が提供される。希釈剤、担体、賦形剤およびアジュバントの選択は、他の要因もあるが、とりわけ望ましい投与方式によって左右される。
【0013】
さらに別の態様において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を抑制する方法が提供される。その方法は一般に、有効量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物と、細胞を接触させることを含んでなる。
【0014】
もう一つの態様において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を治療または予防する方法が提供される。その方法は一般に、そうした治療もしくは予防を必要とする患者に、治療上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を投与することを包含する。
【0015】
また別の態様において、アポトーシスを誘導する方法が提供される。その方法は一般に、有効量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物と細胞を接触させることを含んでなる。
【0016】
さらに別の態様において、アポトーシスを誘導する方法が提供される。その方法は一般に、そうした治療もしくは予防を必要とする患者に、治療上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を投与することを包含する。
【0017】
また別の態様において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生によって引き起こされる疾病を治療または予防する方法が提供される。その方法は一般に、そうした治療もしくは予防を必要とする患者に、治療上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を投与することを包含する。
【0018】
さらに別の態様において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を検知する方法が提供される。その方法は一般に、診断上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその診断用組成物と細胞を接触させることを含んでなる。
【0019】
もう一つの実施形態において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を検知する方法が提供される。その方法は一般に、そうした治療もしくは予防を必要とする患者に、診断上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその診断用組成物を投与することを包含する。
【0020】
また別の態様において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生によって引き起こされる疾病を検出する方法が提供される。その方法は一般に、そうした治療もしくは予防を必要とする患者に、診断上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその診断用組成物を投与することを包含する。
【0021】
さらに別の態様において、ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する抗体および/または抗体コンジュゲートが細胞内にインターナライズされるかどうかを検出する方法が提供される。ある実施形態において、細胞を、抗体および/または抗体コンジュゲートと接触させた後、洗浄、固定して細胞を透過性とする。次に、診断用に標識された二次抗体を添加し、診断用標識を検出する。別の実施形態においては、抗体および/または抗体コンジュゲートを診断用に標識する。細胞を、診断用に標識した抗体および/または抗体コンジュゲートと接触させて、診断用標識を検出する。
【0022】
4. 図面の簡単な説明
(本明細書の最後に記載する。)
5. 詳細な説明
5.1 定義
「アルキル」は単独で、または別の置換基の一部として、飽和もしくは不飽和で、分枝、直鎖、もしくは環状の一価炭化水素基を指し、こうした基は、親アルカン、アルケンまたはアルキンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる。典型的なアルキル基には、メチル;エチル類、たとえばエタニル、エテニル、エチニル;プロピル類、たとえばプロパン-1-イル、プロパン-2-イル、シクロプロパン-1-イル、プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル(アリル)、シクロプロパ-1-エン-1-イル、シクロプロパ-2-エン-1-イル、プロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イルなど;ブチル類、たとえば、ブタン-1-イル、ブタン-2-イル、2-メチル-プロパン-1-イル、2-メチル-プロパン-2-イル、シクロブタン-1-イル、ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブタ-1-エン-1-イル、シクロブタ-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-3-イン-1-イルなど;および同種のもがあるがそれらに限定されない。
【0023】
「アルキル」という用語は、具体的には、さまざまな飽和度を有する基、すなわち、炭素-炭素単結合のみを有する基、1つもしくは複数の炭素-炭素二重結合を有する基、1つもしくは複数の炭素-炭素三重結合を有する基、ならびに炭素-炭素一重、二重、および三重結合を混合して有する基を包含するものとする。特定の飽和度を意図する場合、「アルカニル」、「アルケニル」、および「アルキニル」という表現を使用する。好ましくは、アルキル基は、1から20個までの炭素原子、より好ましくは1から10個までの炭素原子、もっとも好ましくは1から6個までの炭素原子を含んでなる。
【0024】
「アルカニル」は、単独で、または別の置換基の一部として、飽和した、分枝、直鎖、もしくは環状のアルキル基を指し、この基は、親アルカンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる。典型的なアルカニル基には、メタニル;エタニル;プロパニル類、たとえばプロパン-1-イル、プロパン-2-イル(イソプロピル)、シクロプロパン-1-イルなど;ブタニル類、たとえばブタン-1-イル、ブタン-2-イル(sec-ブチル)、2-メチル-プロパン-1-イル(イソブチル)、2-メチル-プロパン-2-イル(t-ブチル)、シクロブタン-1-イルなど;および同種のものが含まれるがそれらに限定されない。
【0025】
「アルケニル」は、単独で、または別の置換基の一部として、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、不飽和の、分枝、直鎖、もしくは環状アルキル基を指し、これは、親アルケンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる。こうした基は、二重結合についてシスもしくはトランス立体配座のいずれかをとることができる。典型的なアルケニル基には、エテニル;プロペニル類、たとえばプロパ1-エン-1-イル、プロパ1-エン-2-イル、プロパ2-エン-1-イル(アリル)、プロパ2-エン-2-イル、シクロプロパ1-エン-1-イル、シクロプロパ2-エン-1-イル;ブテニル類、たとえば、ブト-1-エン-1-イル、ブト-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ1-エン-1-イル、ブト-2-エン-1-イル、ブト-2-エン-1-イル、ブト-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イルなど;および同種のものがあるが、それらに限定されない。
【0026】
「アルキニル」は、単独で、または別の置換基の一部として、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する、不飽和の、分枝、直鎖、もしくは環状アルキル基を指し、これは、親アルキンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる。典型的なアルキニル基には、エチニル;プロピニル類、たとえば、プロパ1-イン-1-イル、プロパ2-イン-1-イルなど;ブチニル類、たとえば、ブト-1-イン-1-イル、ブト-1-イン-3-イル、ブト-3-イン-1-イルなど;および同種のもがあるがそれらに限定されない。
【0027】
「アリール」は、単独で、または別の置換基の一部として、親芳香環系の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる、一価芳香族炭化水素基を指す。典型的なアリール基は、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどから誘導される基を包含するがそれに限定されない。好ましくは、アリール基は、6から20個までの炭素原子、より好ましくは6から12個までの炭素原子を含んでなる。
【0028】
「アリールアルキル」は、単独で、または別の置換基の一部として、炭素原子、典型的には末端炭素原子もしくはsp3炭素原子、に結合した水素原子のうち1つがアリール基で置換された、非環式アルキル基を指す。典型的なアリールアルキル基には、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イルなどがあるがそれらに限定されない。具体的なアルキル部分が意図される場合には、アリールアルカニル、アリールアルケニル、および/またはアリールアルキニルという術語を使用する。好ましくは、アリールアルキル基は(C7-C30)アリールアルキルであって、たとえば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルもしくはアルキニル部分は(C1-C10)であり、アリール部分は(C6-C20)であるが、より好ましくは、アリールアルキル基は(C7-C20)アリールアルキルであって、たとえば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルもしくはアルキニル部分は(C1-C8)であり、アリール部分は(C6-C12)である。
【0029】
「ヘテロアルキル、ヘテロアルカニル、ヘテロアルケニル、およびヘテロアルキニル」は、単独で、または別の置換基の一部として、1つもしくは複数の炭素原子(および付随する水素原子)が互いに無関係に、同一もしくは異なるヘテロ原子団で置換された、それぞれ、アルキル、アルカニル、アルケニル、およびアルキニル基を指す。上記の基に含まれる典型的なヘテロ原子団には、-O-、-S-、-O-O-、-S-S-、-O-S-、-NR37R38-、=N-N=、-N=N-、-N=N-NR39R40、-PR41-、-P(O)2-、-POR42-、-O-P(O)2-、-SO-、-SO2-、-SnR43R44-などがあるがそれに限定されることはなく、前記においてR37、R38、R39、R40、R41、R42、R43およびR44は、互いに無関係に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたは置換ヘテロアリールアルキルである。
【0030】
「ヘテロアリール」は、単独で、または別の置換基の一部として、親ヘテロ芳香環系の1つの原子から1つの水素原子を除去することによって得られる、一価ヘテロ芳香族基を指す。典型的なヘテロアリール基には、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどから誘導された基があるがそれに限定されない。好ましくは、ヘテロアリール基は骨格原子数5〜20のヘテロアリール、さらに好ましくは骨格原子数5〜10のヘテロアリールである。好ましいヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾールおよびピラジンから導かれる基である。
【0031】
「ヘテロアリールアルキル」は、単独で、または別の置換基の一部として、炭素原子、典型的には末端炭素原子もしくはsp3炭素原子、に結合した水素原子のうち1つがヘテロアリール基で置換された、非環式アルキル基を指す。具体的なアルキル部分が意図される場合には、ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニル、および/またはヘテロアリールアルキニルという術語を使用する。好ましい実施形態において、ヘテロアリールアルキル基は、6〜30員のヘテロアリールアルキルであって、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニルもしくはアルキニル部分は1〜10の骨格原子からなり、ヘテロアリール部分は、骨格原子数5〜20のヘテロアリールであり、さらに好ましくは骨格原子数6〜20のヘテロアリールであって、たとえば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分は、1〜8の骨格原子からなり、ヘテロアリール部分は骨格原子数5〜12のヘテロアリールである。
【0032】
「親芳香環系」は、共役π電子系を有する不飽和単環系もしくは多環系を指す。具体的に「親芳香環系」の定義に含まれるのは、環の1つもしくは複数が芳香族であり、環のうち1つもしくは複数が、飽和もしくは不飽和である、縮合環系であって、たとえばフルオレン、インダン、インデン、フェナレンなどである。典型的な親芳香環系には、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどが含まれるがそれらに限定されない。
【0033】
「親ヘテロ芳香環系」は、1つもしくは複数の炭素原子(および付随する水素原子)が互いに無関係に、同一もしくは異なるヘテロ原子で置換された、親芳香環系を指す。炭素原子を置き換える典型的なヘテロ原子には、N、P、O、S、Siなどがあるがそれに限定されない。具体的に「親ヘテロ芳香環系」の定義に含まれるのは、環の1つもしくは複数が芳香族であり、環のうち1つもしくは複数が、飽和もしくは不飽和である縮合環系であって、たとえば、アルシンドール、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどである。典型的な親ヘテロ芳香環系には、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0034】
「診断上有効な量」は、ある疾患を検知するために投与したとき、その疾患を検知するのに十分な抗体の量を指す。「診断上有効な量」は、化合物、疾病およびその重症度、ならびに処置を受ける患者の年齢、体重などに応じてさまざまである。
【0035】
「有効な量」は、たとえばある特定の性質もしくは状態を検出、誘導または抑制するために投与したとき、その性質もしくは状態を検出、誘導または抑制するのに十分な抗体の量を指す。「有効な量」は、抗体および特定の性質もしくは状態に応じて変動するであろう。
【0036】
「患者」はヒトを包含する。「ヒト」および「患者」という用語は、本明細書では同義的に用いられる。
【0037】
「製薬上許容される塩」は、製薬上許容され、親化合物の望ましい薬理活性を保持する、抗体の塩を指す。こうした塩には、(1)酸付加塩であって、無機酸、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などによって形成される塩;もしくは有機酸、たとえば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などによって形成される塩;または(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、たとえば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、もしくはアルミニウムイオンによって置換されるとき、または有機塩基、たとえばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどに配位するときに形成される塩がある。
【0038】
「製薬上許容されるビヒクル」は、抗体および/または抗体コンジュゲートとともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤もしくは担体を指す。
【0039】
「予防すること」または「予防」は、疾病もしくは障害を獲得する(すなわち、疾病の臨床症状の少なくとも1つを引き起こす)リスクを減じることを意味し、疾病に曝され、または罹りやすい可能性はあるが、まだその疾病の症状を経験せず、または症状を示さない患者において、罹患しないようにする。
【0040】
疾病もしくは障害を「治療すること」もしくはその「治療」は、ある実施形態において、疾病もしくは障害を改善すること(すなわち、病気、または病気の臨床症状の少なくとも1つの進行を停止、または軽減すること)を指す。別の実施形態において、「治療すること」もしくは「治療」は、少なくとも1つの物理的パラメーターを改善することであって、それは患者にとって認識できないかもしれない。さらに別の実施形態では、「治療すること」もしくは「治療」は、疾病もしくは障害を抑制することであって、身体的に(認識可能な症状の安定化)、生理学的に(たとえば物理的パラメーターの安定化)、またはその両者で抑制される。また別の実施形態において、「治療すること」もしくは「治療」は、疾病もしくは障害の発症を遅らせることである。
【0041】
「治療上有効な量」は、疾病を治療するために患者に投与したとき、前記のような疾病の治療を達成するのに十分な抗体および/または抗体コンジュゲートの量を意味する。「治療上有効な量」は、化合物、疾病およびその重篤度、治療を受ける患者の年齢、体重などに応じてさまざまとなる。
【0042】
ここで、本発明の実施形態について詳細に言及することとする。本発明はこれらの実施形態と関連して説明されるが、当然のことながら、そうした実施形態に本発明を限定するつもりはない。その反対に、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の精神および範囲に包含することができる、代替物、変更、および均等物を本発明の対象とするものである。
【0043】
5.2 抗体
ウロキナーゼのアミノ末端断片に結合する抗体および/または抗体コンジュゲート。抗体および/または抗体コンジュゲートは、ウロキナーゼのアミノ末端断片の、クリングル領域、成長因子ドメイン領域、もしくはC末端領域、またはこれらの組み合わせと結合することができる。抗体および/または抗体コンジュゲートは、治療薬または診断薬を包含することができ、たとえば癌のような疾病を治療、予防、または検出するために使用することができる。
【0044】
抗体は、いかなるクラス(たとえば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEなど)、またはいかなるアイソタイプの免疫グロブリンでもよい。ある実施形態において、抗体はIgG1抗体である。他の実施形態において、抗体はκアイソタイプのIgG1抗体である。さらに他の実施形態において、抗体は、ポリクローナルであり、好ましくはヒトまたは適当な動物からアフィニティ精製される。また別の実施形態において、抗体はモノクローナルである。さらに他の実施形態において、抗体はモノクローナルIgG1抗体である。他の実施形態において、抗体は、κアイソタイプのモノクローナルIgG1抗体である。ウロキナーゼのアミノ末端断片に対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体は、当業者に知られている従来の方法によって調製することができる。
【0045】
抗体の機能的に活性なフラグメントを使用することも検討される。抗体の機能的に活性なフラグメントは、当業者に知られているいかなる方法によっても測定されるように、抗原と免疫特異的に結合する能力を保持している。機能的に活性なフラグメントの例には、当業者に知られている方法によって容易に調製することができるFab、F(ab)2、Fab'、F(ab')2およびFv断片といったフラグメントがあるがそれらに限定されない。
【0046】
一本鎖抗体を使用してもよく、当技術分野で知られている方法によって調製することができる(Ladnerら、米国特許第4,946,778号;Bird, Science 1988, 242, 423-426; Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. 1988, 85, 5879-5883; Wardら、Nature 1988, 334, 544-546)。重鎖および軽鎖ダイマーならびに二重特異性抗体(diabody)の使用も検討される。
【0047】
キメラ抗体(すなわち、この場合、抗体分子の別々の部分が異なる種に由来する)、たとえば、マウス抗体に由来する可変領域、およびヒト免疫グロブリンに由来する定常領域を有する抗体(すなわち、ヒト化抗体)を使用してもよい。キメラ抗体およびヒト化抗体を調製する方法は当技術分野で知られている(Neubergerら、国際特許出願番号PCT/GB85/00392)。
【0048】
抗体および/または抗体コンジュゲートは一般に、ウロキナーゼのアミノ末端断片に結合する(成熟ウロキナーゼの配列については配列番号1を参照されたい)。ある実施形態において、ウロキナーゼのアミノ末端断片は、配列番号1のアミノ酸1-143を含んでなる。成長因子ドメイン、クリングルドメイン、およびC末端ドメインといった、アミノ末端断片のさまざまな部分に特異的に結合する抗体は、やはり本発明の範囲に含まれる。ある実施形態において、成長因子ドメインは配列番号1のアミノ酸1-48を含んでなる。他の実施形態において、クリングルドメインは配列番号1のアミノ酸49-135を含んでなる。さらに他の実施形態において、C末端ドメインは配列番号1のアミノ酸136-143を含んでなる。
【0049】
5.3 抗体コンジュゲート
抗体修飾によって、ウロキナーゼのアミノ末端断片への免疫特異的な結合が妨げられたり阻害されたりしない限りは、どのようなタイプの分子でもそれを共有結合することによって抗体を修飾することができる。たとえば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、タンパク質分解切断、細胞リガンドもしくはタンパク質との結合などによって抗体を修飾することができる。ある実施形態において、抗体は、直接、または連結成分を介して、治療薬もしくは診断薬と結合される。
【0050】
ある実施形態において、まず診断薬もしくは治療薬に連結成分を付けて、連結成分中間体を形成し、次に、その中間体をさらに抗体に結合させる。他の実施形態においては、連結成分を、最初に抗体に結合させて連結成分抗体中間体を形成し、その後、その中間体を診断薬もしくは治療薬につなげることができる。
【0051】
典型的には、連結成分には、治療薬もしくは診断薬を抗体にコンジュゲートするリンカーおよび連結基が含まれる。リンカーは親水性または疎水性とすることができ、長くても短くてもよく、リジッド(固定)またはフレキシブル(可動性)とすることができるが、リンカーの種類は個別の用途、および望ましいコンジュゲーションの種類によって決まる。リンカーは、選択肢として、1つもしくは複数の連結基(同一でも異なっていてもよい)で置換されていてもよく、それによって、複数の治療薬もしくは診断薬を抗体にコンジュゲートすることができる多価連結成分が与えられる。
【0052】
連結基を抗体から隔てるのに適した安定な結合を含む、さまざまなリンカーが当技術分野において知られており、限定ではなく例証として、アルキル、ヘテロアルキル、非環式ヘテロ原子架橋、アリール、アリール-アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール-ヘテロアリール、置換ヘテロアリール-ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリール-ヘテロアルキルなど、およびそれらの置換類似体が挙げられる。このように、リンカーは、炭素-炭素単結合、二重結合、三重結合、もしくは芳香族性結合、窒素-窒素結合、炭素-窒素結合、炭素-酸素結合、および/または炭素-硫黄結合を包含することができる。したがって、カルボニル類、エーテル類、チオエーテル類、カルボキサミド類、スルホンアミド類、尿素類、ウレタン類、ヒドラジン類などといった官能基をリンカーに含めることができる。
【0053】
適当なリンカーを選択することは、当業者の能力の範囲内である。たとえば、リジッドなリンカーが望ましい場合には、リンカーは、リジッドな多価不飽和アルキル、またはアリール、ビアリール、ヘテロアリールなどとすることができる。フレキシブルリンカーが求められる場合には、リンカーは、Gly-Gly-Glyといったフレキシブルペプチド、またはフレキシブルな飽和アルカニルもしくはヘテロアルカニルとすることができる。親水性リンカーは、たとえば、ポリアルキレングリコール類のようなポリアルコール類もしくはポリエーテル類とすることができる。疎水性リンカーは、たとえば、アルキル類もしくはアリール類とすることができる。
【0054】
好ましくは、連結基は、たとえば抗体にコンジュゲートした治療薬もしくは診断薬を与えるために抗体の補足的な反応性官能価との、共有結合の形成を仲介することができる。したがって、連結基は、抗体において認められる一般的な化学基と反応する、当業者に公知のいかなる反応性官能基であってもよい(たとえば、アミノ、スルフヒドリル、ヒドロキシ、カルボキシル、イミダゾリル、グアニジウム、アミドなど)。連結基はたとえば、光化学的に活性化される基、電気化学的に活性化される基、フリーラジカルドナー、フリーラジカルアクセプター、求核基もしくは求電子基とすることができる。しかしながら、当業者は、ある反応条件下では通常非反応性である様々な官能基が、活性化されて反応性となりうることを認識することができる。反応性となるように活性化することができる基は、たとえば、アルコール類、カルボン酸類およびエステル類を包含し、その塩を含める。
【0055】
連結基は、たとえば、-NHR1、-NH2、-OH、-SH、ハロゲン、-CHO、-R1CO、-SO2H、-PO2H、-N3、-CN、-CO2H、-SO3H、-PO3H、-PO2(ORl)H、-CO2R1、-SO3R1または-PO(OR1)2とすることができるが、この場合、R1はアルキルである。好ましくは、連結基は、-NHR1、-NH2、-OH、-SH、-CHO、-CO2H、R1CO-、ハロゲン、および-CO2R1である。
【0056】
リンカーおよび連結基に関する、ある実施形態は、たとえば、リンカーが-(CH2)n-であり、nは1から8までの整数であって、連結基が、-NH2、-OH、-CO2H、および-CO2R1である化合物、ならびに適当な水素のいずれか1つが置換された、対応する類似体を包含する。連結成分の他の実施形態は、任意のアミノ酸を包含し、これはたとえば、DまたはLアミノ酸とすることができる。したがって、連結成分は、アミノ酸の任意の組み合わせからなるジペプチド、トリペプチド、またはテトラペプチドとすることができる。これらのペプチドにおけるペプチド結合の極性はC-NまたはN-Cのいずれかでありうる。
【0057】
治療薬および診断薬を、当業者に知られているさまざまな従来の反応を用いて、抗体に直接、結合することができる(Garnett, Adv. Drug Delivefy Rev. 2001,53, 171-216 ; Meyerら、Annual Reports in Medicinal Chemistry 2003, 38, 229-237, Trailら、Cancer immunol. Immunother. 2003, 52, 328-337)。たとえば、縮合反応(たとえば、カルボジイミド、カルボニルジイミダゾールなど)を用いて、治療薬もしくは診断薬のアミノ基と、グルタミン酸およびアスパラギン酸といった残基のカルボン酸基との間にアミド結合を形成することができる。あるいはまた、抗体の糖鎖残基を、シッフ塩基形成によって治療薬もしくは診断薬に直接、結合してもよく(たとえば、Sivanら、米国特許第5,521,290号; Shihら、米国特許第5,057,313号)、その後in situで還元する。
【0058】
同様の方法を用いて、リンカーおよび連結基を有する治療薬および診断薬を抗体に結合することができる。たとえば、リンカーおよび連結基を有する診断薬および治療薬を、リシンのアミノ基、グルタミン酸およびアスパラギン酸のカルボン酸基、システインのスルフヒドリル基、トレオニンおよびセリンのヒドロキシル基、ならびに芳香族アミノ酸のさまざまな部分に、当業者に知られている従来の方法によって、結合することができる。一般に、直接的に、またはリンカーおよび連結基を介して、診断薬もしくは治療薬を抗体に結合するのに適した方法の選択は、十分に当業者が行うことのできる範囲内である。
【0059】
抗体および抗体フラグメントに結合することができる治療薬には、放射性核種、タンパク質毒素(たとえば、リシン、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素、サポリン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、bouganinなど)、細胞毒性抗癌剤、カンプトテシン類(たとえば、9-ニトロカンプトテシン(9NC)、9-アミノカンプトテシン(9AC)、10-アミノカンプトテシン、9-クロロカンプトテシン、10,11-メチレンジオキシカンプトテシン、イリノテカン、芳香族カンプトテシンエステル類、アルキルカンプトテシンエステル類、トポテカン、(lS,9S)-l-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン メタンスルホネート二水和物(DX-8951f)、7-[(2-トリメチル-シリル)エチル]-20(S)カンプトテシン(BNP1350)、ルビテカン(Rubitecan)、エキサテカン(Exatecan)、ルートテカン(Lurtotecan)、ジフロモテカン(Diflomotecan)および他のホモカンプトテシン類など)、タキサン類(たとえばタキソール)、エポシロン類、カリケアマイシン類、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア類、シスプラチン、マイトマイシン類、マイタンシン類、カルボプラチン、ダカルバジン、プロカルバジン、エトポシド類、テノポシド、ブレオマイシン、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン、ダウノマイシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、サイトカラシン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、グラミシジンD、グルココルチコイド類、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、マスタード毒素類、アンスラマイシン、パクリタキセル、アルキル化剤(たとえば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メ
ルファラン、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾシンなど)、その相同体および類似体があるが、それらに限定されない。好ましくは、治療薬は、たとえば、タキサン、カンプトテシン、エポシロン、またはアンスラサイクリンといった細胞毒性抗癌剤である。ある実施形態において、治療薬はドキソルビシンである。他の実施形態において、治療薬は、放射性核種である。さらに他の実施形態において、治療薬はカンプトテシンである。
【0060】
「診断用に標識された」という用語は、抗体が診断上検出可能な標識を結合していることを意味する。当技術分野には、多くのさまざまな標識があり、標識化の方法は当業者によく知られている。本発明において使用できる標識の一般的な分類としては、放射性同位体、常磁性同位体、陽電子放出断層撮影法(PET)によって画像化することができる化合物、蛍光もしくは有色化合物、磁気共鳴によって画像化可能な化合物、化学発光化合物、生物発光化合物などがあるが、それらに限定されない。適当な検出可能な標識には、放射性標識、蛍光標識、蛍光発生標識または発色標識が挙げられるが、それらに限定されない。有用な放射性標識(放射性核種)は、ガンマカウンター、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーで簡単に検出され、3H、125I、131I、35S、および14Cを包含するがこれらに限定されない。
【0061】
抗体のような大きな分子に金属を結合するための方法および組成物は当技術分野でよく知られている。金属は、放射性核種のような検出可能な金属原子を包含するが、これを従来法によって抗体および抗体コンジュゲートに結合することができる(たとえば、米国特許第5,627,286号、第5,618,513号、第5,567,408号、第5,443,816号および第5,561,220号を参照されたい)。
【0062】
よく用いられる蛍光標識としては、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒドおよびフルオレスカミンがあるが、それらに限定されない(Haugland, Handbook of fluorescent Probes and Research Chemicals, Sixth Ed., Molecular Probes, Eugene, OR, 1996)。これらを用いて抗体および/または抗体コンジュゲートを標識することができる。フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、およびフルオレセイン様分子、たとえば、Oregon GreenTMならびにその誘導体、Rhodamine GreenTMおよびRhodal GreenTMを、たとえばイソチオシアネート、スクシンイミジルエステルもしくはジクロロトリアジニル-反応性基を用いて、アミノ基に結合することができる。同様に、フルオロフォアも、マレイミド、ヨードアセトアミド、およびアジリジン-反応性基を用いてチオール基に結合することができる。ある実施形態において、フルオロフォアは、窒素原子に置換基を有するRhodamine GreenTM誘導体のような長波長ローダミンである。このグループには、テトラメチルローダミン、X-ローダミンおよびTexas RedTM誘導体を含める。他の実施形態において、フルオロフォアは、紫外線によって励起される物質である。例としては、カスケードブルー(cascade blue)、クマリン誘導体、ナフタレン類(塩化ダンシルはこれに属する)、ピレン類およびピリジルオキサゾール誘導体があるが、それらに限定されない。
【0063】
半導体ナノ結晶(Bruchezら、1998, Science 281 : 2013-2016)、および量子ドット、たとえば、硫化亜鉛でキャッピングされたセレン化カドミウム(Chanら、Science 1998,281 :2016-2018)といった無機物も、診断用標識として使用することができる。
【0064】
抗体および/または抗体コンジュゲートはまた、152Euまたはランタニド系列の他の元素のような蛍光発光金属で標識することもできる。こうした金属は、抗体および/または抗体コンジュゲートに、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのようなアシルキレート基を介して結合させることができる。
【0065】
放射性核種は、in vivo診断のために、直接、またはDTPAおよびEDTAのようなアシルキレート基を用いて間接的に、抗体および/または抗体コンジュゲートに結合させることができる。キレート化の化学は、当技術分野でよく知られており、抗体に対するさまざまなキレート剤を用いて、標識抗体を得ることができる。当然、標識された抗体は、ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する活性を保持していなければならない。
【0066】
診断上または治療上の有用性を有するいかなる放射性核種も、本発明における放射性標識として使用することができる。ある実施形態において、放射性核種は、γ線放射性核種もしくはβ線放射性核種、たとえば、ランタニドもしくはアクチニド系列の元素から選択される核種である。陽電子放射性核種、たとえば、68Gaまたは64Cuを使用することもできる。適当なγ線放射性核種には、診断画像化の用途に有用な核種が含まれる。γ線放射性核種は、好ましくは1時間から40日の半減期を有するが、好ましくは12時間から3日までである。適当なγ線放射性核種の例としては、67Ga、111In、99mTc、169Yb、および186Reが挙げられる。ある実施形態において、放射性核種は99mTcである。有用な放射性核種の例としては、(原子番号順に)67Cu、67Ga、68Ga、72As、89Zr、90Y、97Ru、99Tc、111In、123I、125I、131I、169Yb、186Re、および201Tlがある。標識としての陽電子放射性金属についての研究は限られているが、トランスフェリンおよびヒト血清アルブミンのようなある種のタンパク質は68Gaで標識されている。
【0067】
磁気共鳴イメージングに有用な金属(放射性同位体でない)には、ガドリニウム、マンガン、銅、鉄、金およびユーロピウムがある。ある実施形態において、金属はガドリニウムである。一般に、診断用途において検出可能であるために必要とされる標識抗体の量は、患者の年齢、状態、性別および病気の程度、禁忌(もしあれば)、ならびに他の可変要因に応じてさまざまに変化すると考えられ、個別の主治医または診断医によって調整されるべきである。投薬量は0.01 mg/kgから100 mg/kgまで、さまざまとすることができる。
【0068】
抗体および/または抗体コンジュゲートは、当業者に周知のように、燐光または化学発光化合物と結合させることによっても検出することができる。化学発光化合物には、ルミノール、イソルミノール、theromaticアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルが含まれるが、それらに限定されない。同様に、生物発光化合物を使用して抗体および/または抗体コンジュゲートを検出してもよく、これにはルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンが含まれるが、それらに限定されない。
【0069】
比色検出を用いて、吸光係数の高い発色団を有する、または結果としてそうなる発色化合物に基づいて、抗体を検出することができる。
【0070】
タンパク質毒素と遺伝的に融合された抗体の使用が、本明細書において検討される(Frankelら、Sem. Oncol. 2003, 30, 545-557; Kreitman, Curr. Opin. Molec. Therapeutics 2003, 5, 44-51; Kreitman, Curr. Opin. Invest. Drugs 2001, 2, 1282-1293)。タンパク質毒素には、リシン、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素、サポリン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ブーガニン(bouganin)、それらの類似体および相同体が含まれるが、それらに限定されない。好ましいタンパク質毒素はシュードモナス外毒素およびジフテリア毒素である。タンパク質毒素に融合させた抗体は、下記のセクション5.5に記載の組換えDNA法によって作製することができる(たとえば、Brinkmanら、Proc. Natl. Acad. Sci. 1991, 88, 8616-8620; Haggertyら、Toxicol. Pathol. 1999, 87-94; Damisら、J. Pharm. Pharmacol. 2000, 52, 671-678を参照されたい)。
【0071】
5.4 アッセイ
当業者には当然のことながら、本明細書に記載の抗体および抗体コンジュゲートの活性を測定するのに有用なin vitroおよびin vivoアッセイは、包括的というよりはむしろ例証的なものである。
【0072】
5.4.1 内皮細胞遊走についてのアッセイ
内皮細胞(EC)遊走のために、トランスウェル当たり200μlのI型コラーゲン溶液(50μg/ml)を添加した後37℃にて一晩インキュベートすることによって、トランスウェルをI型コラーゲンでコートする。このトランスウェルを24ウェルプレートに取り付け、化学誘引物質(たとえばFGF-2)を総量0.8mlとして下部チャンバーに加える。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)のようなECは、トリプシンによって単層培養から剥離しておき、最終濃度約106細胞/mlとなるように無血清培地で希釈して、この細胞懸濁液の0.2mlを各トランスウェルの上部チャンバーに加える。被験インヒビターを上部および下部チャンバーの両方に加え、37℃にて加湿環境において5時間、遊走を進行させる。トランスウェルをプレートから外し、DiffQuik(登録商標)を用いて染色する。遊走しなかった細胞を綿棒で掻き取って上部チャンバーから除去し、膜を取り外してスライドガラス上に載せ、高倍率視野(400x)でカウントし、遊走した細胞数を測定する。
【0073】
5.4.2 抗浸潤活性の生物学的アッセイ
マトリゲル(Matrigel(登録商標))浸潤アッセイ系として知られるアッセイにおいて、ECもしくは腫瘍細胞(たとえば、PC-3ヒト前立腺癌細胞)といった細胞が再構成基底膜(マトリゲル)を貫通して浸潤することができることは、当技術分野で詳細に記載されている(Kleinmanら、Biochemistry 1986, 25: 312-318 ; Parishら、1992, Int. J. Cancer 52: 378-383)。マトリゲルは以下の物質を含有する再構成基底膜である:IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、たとえばパールカン(bFGFと結合し、それを局在化させる)、ビトロネクチンおよびトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ならびにプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1型(PAI-1)として知られるセルピン(Chambersら、Canc. Res. 1995, 55: 1578-1585)。細胞外レセプターもしくは酵素を標的とする抗体および/または抗体コンジュゲートについて上記アッセイで得られた結果が、in vivoでの前記抗体および/または抗体コンジュゲートの有効性を予測するものであることは、当技術分野において認められている(Rabbaniら、Int. J. Cancer 1995, 63: 840-845)。
【0074】
上記アッセイは、トランスウェル組織培養インサートを使用する。浸潤細胞は、マトリゲルおよびポリカーボネート膜の上面を貫通して横切り、この膜の下側に付着することができる細胞として定義される。ポリカーボネート膜(孔径8.0μm)を有するトランスウェル(Costar)を、あらかじめ滅菌PBSで希釈して最終濃度75μg/mlとしたマトリゲル(Collaborative Research)でコートし(インサート当たり希釈マトリゲル60μl)、24ウェルプレートのウェル内においた。生物安全キャビネット内で、膜を乾燥した後、抗体含有DMEM 100μlの添加によって、振盪台上で1時間、再水和する。DMEMを各インサートから吸引によって除去し、0.8mlのDMEM/10%FBS/抗体を24ウェルプレートの各ウェルに添加して、それがトランスウェルの外側を包むようにする(「下部チャンバー」)。新しいDMEM/抗体(100μl)、ヒトGlu-プラスミノーゲン(5μl/ml)、および被験インヒビターを上部の、トランスウェルの内側に加える(「上部チャンバー」)。試験すべき細胞をトリプシン処理し、DMEM/抗体中に再懸濁した後、800,000細胞/mlの最終濃度でトランスウェルの上部チャンバーに加える。上部チャンバーの最終容量は200μlに調整する。つぎに、組み立てたプレートを5% CO2湿潤雰囲気中で72時間インキュベートする。インキュベーション後、細胞を固定し、DiffQuik(登録商標)を用いて染色し(ギムザ染色)、次に上部チャンバーを綿棒でこすってマトリゲルおよび膜を貫通して浸潤しなかった細胞を除去する。X-acto(登録商標)ブレードを用いて膜をトランスウェルから切り取り、Permount(登録商標)およびカバーガラスを用いてスライドガラス上に載せた後、高倍率視野(400x)でカウントする。カウントした5〜10視野から、浸潤した細胞の平均を求め、インヒビター濃度の関数としてプロットする。
【0075】
5.4.3 抗血管新生作用の管腔形成アッセイ
調製または購入することができる、内皮細胞、たとえば、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)またはヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)を2 x 105細胞/mlとして、フィブリノーゲン(リン酸緩衝食塩水(PBS)中5mg/ml)と1:1(v/v)の割合で混合する。トロンビンを添加し(終濃度5ユニット/ml)、その混合物をただちに24ウェルプレートに移す(ウェル当たり0.5 ml)。フィブリンゲルを形成させたのち、VEGFおよびbFGFを被験化合物とともにウェルに加える(それぞれ終濃度は5 ng/ml)。細胞を37℃にて5% CO2中で4日間インキュベートするが、その時点で各ウェル中の細胞を計数し、円形、枝分かれなく伸長、分枝1つを有して伸長、または2つ以上の分枝を有して伸長、のいずれかとして分類する。結果は、それぞれの濃度の化合物について5個の異なるウェルの平均として示される。典型的には、血管新生インヒビターの存在下では、細胞は円形のままであるか、未分化の管腔(たとえば、0または1分枝)を形成するかのいずれかである。このアッセイは、当技術分野において、in vivoでの血管新生(または抗血管新生)効果を予測するものとして認められている(Minら、Cancer Res. 1996, 56: 2428-2433)。
【0076】
もう一つのアッセイにおいて、内皮細胞をマトリゲル上で培養したとき、内皮細胞管腔形成が認められる(Schnaperら、J. Cell. Physiol. 1995, 165: 107-118)。内皮細胞(1 x 104細胞/ウェル)をマトリゲルコートの24ウェルプレート上に移し、48時間後に管腔形成を定量化する。内皮細胞と同時に、またはその後さまざまな時点でインヒビターを添加することによって、インヒビターを試験する。(a)bFGFもしくはVEGFといった血管新生増殖因子、(b)分化促進剤(たとえば、PMA)、または(c)これらを組み合わせたもの、を添加することによって管腔形成を刺激することもできる。
【0077】
理論に縛られたくはないが、このアッセイは、内皮細胞に、特殊なタイプの基底膜(すなわち、遊走して分化する内皮細胞が最初に遭遇すると予想されるマトリックスの層)を与えることによって、血管新生をモデル化するものである。結合された増殖因子に加えて、マトリゲル中(およびin situで基底膜中)に存在するマトリックス成分またはそのタンパク質分解産物も、内皮細胞管腔形成に対して刺激性であると考えられ、このような管腔形成によって、このモデルは、既述されたフィブリンゲル血管新生モデルを補完するものとなる(Bloodら、Biochim. Biophys. Acta 1990, 1032: 89-118; Odedraら、Pharmac. Ther. 1991, 49: 111-124)。
【0078】
5.4.4 増殖阻害アッセイ
抗体および/または抗体コンジュゲートがECの増殖を阻害する能力を、96ウェルフォーマットで測定することができる。I型コラーゲン(ゼラチン)を用いて、プレートのウェルをコートする(0.1〜1mg/ml PBS、ウェル当たり0.1 ml、室温30分)。プレートを洗浄(3x w/PBS)した後、ウェル当たり3〜6,000個の細胞を播き、内皮細胞増殖培地(EGM; Clonetics)または0.1〜2% FBS含有M199培地中で4時間付着させる(37℃/5% CO2)。培地および付着しない細胞を4時間終了した時点で除去し、bFGF(1〜10 ng/ml)またはVEGF(1〜10 ng/ml)を含有する新培地を各ウェルに添加する。被験抗体および/または抗体コンジュゲートを最後に加え、プレートを24〜48時間インキュベートする(37℃/5% CO2)。MTS(Promega)を各ウェルに加え、1〜4時間インキュベートする。490nmの吸光度は細胞数と比例するので、それを測定して、対照ウェルと被験抗体および/または抗体コンジュゲートを含むウェルとの間で増殖の相違を判断する。
【0079】
同様のアッセイ系を培養付着腫瘍細胞についても設定することができる。しかしながら、このフォーマットでは、コラーゲンを省いてもよい。腫瘍細胞(たとえば、3,000〜10,000個/ウェル)を播いて一晩付着させる。次に、無血清培地をウェルに添加し、24時間、細胞を同調させる。その後、10% FBS含有培地を各ウェルに加えて、増殖を刺激する。被験抗体および/または抗体コンジュゲートを、一部のウェルに入れる。24時間後、MTSをプレートに添加し、アッセイを発色させて、上記のように読み取る。
【0080】
5.4.5 細胞毒性アッセイ
抗体および/または抗体コンジュゲートの抗増殖性および細胞毒性効果を、腫瘍細胞、EC、線維芽細胞およびマクロファージなどのさまざまな細胞型について測定することができる。これは、放射線療法剤もしくは毒素といった治療用成分にコンジュゲートさせた抗体を試験する場合に特に有用である。たとえば、本発明の抗体の一つと、131Iでヨウ素化されたBolton-Hunter試薬とのコンジュゲートは、uPARを発現する細胞の増殖を(もっとも可能性が高いのはアポトーシスを誘導することによって)阻害することが予想される。腫瘍細胞および刺激された内皮細胞に対して抗増殖効果が予想されるが、ある状況下では、静止状態の内皮細胞に対しても正常なヒト皮膚線維芽細胞に対しても、抗増殖効果はないと思われる。正常細胞において観察されるいかなる抗増殖性もしくは細胞毒性効果も、コンジュゲートの非特異的毒性を意味する可能性がある。
【0081】
典型的なアッセイは、96ウェルプレートのウェル当たり5〜10,000細胞の密度で細胞を播くことが必要となる。被験化合物を、結合アッセイで測定されたIC50の10倍濃度で添加し(これはコンジュゲートに応じて変動しうる)、細胞とともに30分間インキュベートする。細胞を培地で3回洗浄し、次に[3H]チミジン(1μCi/ml)を含有する新培地を細胞に加えて、24時間および48時間、37℃にて5% CO2中でインキュベートする。さまざまな時点で1M NaOHによって細胞を溶解し、ウェルあたりの計数値を、βカウンターを用いて測定する。増殖は全細胞数を測定するためのMTS試薬、またはCyQuant(登録商標)を用いて、非放射性の方法で測定することができる。細胞毒性アッセイ(細胞溶解を測定する)のために、Promega 96ウェル細胞毒性キットを使用する。抗増殖活性の証拠があるならば、TumorTACS(Genzyme)を用いて、アポトーシスの誘導を測定することができる。
【0082】
5.4.6 カスパーゼ-3活性
抗体および/または抗体コンジュゲートがECのアポトーシスを促進する能力を、カスパーゼ-3の活性化を測定することによって判定することができる。I型コラーゲン(ゼラチン)を用いて、P100プレートをコートし、5 x 105個のECを10% FBS含有EGMに播く。(37℃、5% CO2中で)24時間後、培地を、2% FBS、10 ng/ml bFGF、および目的の被験化合物を含有するEGMに交換する。6時間後に細胞を集め、細胞溶解物を1% Triton中で調製し、EnzChek(登録商標)Caspase-3 Assay Kit #1 (Molecular Probes)を用いて、メーカーの使用説明書にしたがってアッセイする。
【0083】
5.4.7 角膜血管新生モデル
使用する方法は基本的に、Volpertら、J. Clin. Invest. 1996, 98: 671-679の記載と同じである。概略を述べると、雌のFischerラット(120〜140 g)を麻酔し、Hydron(登録商標)、bFGF(150 nM)、ならびに被験抗体および/または抗体コンジュゲートからなるペレット(5μl)を、角膜の縁から1.0〜1.5 mmに入れた小さな切り口に埋め込む。埋め込みの5日および7日後に新血管形成をアッセイする。7日目に動物を麻酔し、コロイド状カーボンのような色素を注入して血管を染色する。次に動物を安楽死させ、角膜をホルマリンで固定し、角膜を平らにして写真に撮り、新血管形成の程度を評価する。新血管は、全血管面積もしくは長さを画像化することによって、または単純に血管を数えることによって定量化することができる。
【0084】
5.4.8 マトリゲル(Matrigel(登録商標))プラグアッセイ
このアッセイは基本的に、Passanitiら、1992, Lab Invest. 67: 519-528に記載のように実施する。氷冷したマトリゲル(たとえば、500μl)(Collaborative Biomedical Products, Inc., Bedford, MA)を、ヘパリン(たとえば、50μg/ml)、FGF-2(たとえば、400 ng/ml)および被験化合物と混合する。アッセイによっては、血管新生を刺激するものとして、bFGFを腫瘍細胞と置き換えることができる。マトリゲル混合物を4〜8週齢の胸腺欠損ヌードマウスの腹部正中線に近い部位に、好ましくはマウスごとに3カ所、皮下注射する。注入されたマトリゲルは、触知できる固形ゲルを形成する。注射部位は、それぞれの動物が陽性対照プラグ(たとえば、FGF-2+ヘパリン)、陰性対照プラグ(たとえば、バッファー+ヘパリン)および血管新生に対する効果を調べる被験化合物を含むプラグ(FGF-2+ヘパリン+化合物)を受け取るように選択される。すべての処置は3回反復で行うことが好ましい。注射後約7日、または血管新生を観察するのに最適と思われる別の時点で、頸椎脱臼により動物を屠殺する。マウスの皮膚を、腹部正中線にそって剥がし、マトリゲルプラグを回収し、ただちに高解像度のスキャンにかける。その後、プラグを水中に分散させて、37℃にて一晩インキュベートする。Drabkin溶液(たとえば、Sigmaから購入)を用いて、メーカーの使用説明書にしたがってヘモグロビン(Hb)レベルを測定する。プラグ中のHb量は、サンプル中の血液量を反映するので、血管新生の間接的な指標となる。それに加えて、またはその代わりに、屠殺前に、フルオロフォアを結合させた高分子量デキストランを含有する0.1mlバッファー(好ましくはPBS)を動物に注射してもよい。分散させたプラグにおける蛍光の量は、蛍光測定法で測定されるが、これもプラグ中の血管新生の指標として役立つ。mAB抗CD31(CD31は「血小板-内皮細胞接着分子、つまりPECAM」である)を使用して、新血管形成およびプラグ中の微小血管密度を確認することができる。
【0085】
5.4.9 ニワトリ漿尿膜(CAM)血管新生アッセイ
このアッセイは、基本的にNguyenら、Microvascular Res. 1994, 47: 31-40に記載のように実施する。血管新生因子(bFGF)もしくは腫瘍細胞のほかにインヒビターを含有するメッシュを8日齢ニワトリ胚のCAM上に載せ、サンプルの移植後3〜9日の間CAMを観察する。メッシュ中の、血管を含む区画の割合を測定することによって、血管新生を定量化する。
【0086】
5.4.10 腫瘍細胞を用いたマトリゲルプラグアッセイによる血管新生阻害および抗腫瘍効果のin vivo評価
このアッセイにおいて、腫瘍細胞、たとえば1〜5 x 106個の3LL Lewis肺癌細胞もしくはラット前立腺細胞株MatLyLuをマトリゲルと混合した後、上記セクション5.4.8に記載の方法にしたがってマウスの側腹部に注射する。5〜7日後にプラグにおいて、腫瘍細胞集団および強い血管新生反応を観察することができる。実際の腫瘍環境における化合物の抗腫瘍作用および抗血管新生作用を、プラグ中にその化合物を含めることによって評価することができる。その後、腫瘍の重量、Hbレベルもしくは(屠殺前に注入されたデキストラン-フルオロフォアコンジュゲートの)蛍光レベルを測定する。Hbもしくは蛍光を測定するために、最初にプラグを組織破砕機でホモジナイズする。
【0087】
5.4.11 皮下(s.c.)腫瘍増殖の異種移植モデル
ヌードマウスの右側腹部の皮下にMDA-MB-231細胞(ヒト乳癌)およびマトリゲル(1 x 106細胞を0.2ml中に含む)を接種する。腫瘍が200 mm3に達したら、被験組成物による処置を開始する(100μg/動物/日、毎日腹腔内に与える)。腫瘍量は1日おきに求め、2週間処置した後、動物を屠殺する。腫瘍を摘出し、重量を測定し、パラフィン包埋する。腫瘍の組織切片を、H and E、抗CD31、Ki-67、TUNEL、およびCD68染色によって分析する。
【0088】
5.4.12 転移の異種移植モデル
抗体および/または抗体コンジュゲートの、遅発性転移の抑制を、実験転移モデルを用いて試験する(Crowleyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993, 90: 5021-5025)。遅発性転移は、腫瘍細胞の付着および血管外遊出、局所浸潤、播種、増殖、ならびに血管新生の段階を包含する。レポーター遺伝子(好ましくは緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子であるが、その代わりとしては、酵素、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼまたはLacZをコードする遺伝子)でトランスフェクトされたヒト前立腺癌細胞(PC-3)を、ヌードマウスに接種する。この方法は、上記細胞の運命を追跡するために上記マーカーのいずれかを利用することができる(GFPの蛍光検出、または酵素活性の組織化学的比色検出)。細胞は、好ましくは静脈内に注入され、約14日後に転移が識別される(詳細には肺においてであるが、局所リンパ節、大腿および脳においても)。これは、ヒト前立腺癌において自然発生する転移の臓器親和性を模倣している。たとえば、GFP発現PC-3細胞(マウス当たり1 x 106細胞)をヌード(nu/nu)マウスの尾静脈に静脈注射する。動物を被験組成物で処置し、100μg/動物/日で1日1回腹腔内に与える。蛍光顕微鏡法、もしくは光学顕微鏡組織化学によって、または組織の破砕、および検出可能な標識の定量的比色アッセイによって、個別の転移細胞および病巣を可視化し、定量する。
【0089】
5.4.13 in vivo自然転移の抑制
ラット同系乳癌系は、Mat BIIIラット乳癌細胞を使用する(Xingら、Int. J. Cancer 1996, 67: 423-429)。たとえば、約106個を0.1 ml PBSに懸濁した腫瘍細胞を雌Fischerラット乳房の脂肪体に接種する。接種の時点で、14日用アルザ(Alza)浸透圧ミニポンプを腹腔内に埋め込み、被験抗体および/または抗体コンジュゲートを投与できるようにする。抗体および/または抗体コンジュゲート(PBS中)を無菌濾過し、ミニポンプ内に入れて、約4mg/kg/日の速度で放出できるようにする。対照動物は、ビヒクル(PBS)のみ、またはビヒクル対照ペプチドをミニポンプで受け取る。動物を約14日目に屠殺する。抗体および/または抗体コンジュゲートで処置したラットにおいて、原発腫瘍の大きさ、ならびに脾臓、肺、肝臓、腎臓およびリンパ節における転移の数(別々の病巣として数える)の有意な減少を認めることができる。組織学的、および免疫組織化学的分析は、処置動物の腫瘍において壊死およびアポトーシスの徴候の増加を示す。新血管形成のない腫瘍領域において、大きな壊死部位が見られる。131Iを結合させた抗体および/または抗体コンジュゲート(抗体分子当たり1または2個のI原子)は有効な放射線療法であり、非結合抗体よりも少なくとも2倍以上強力であると考えられる。これに対して、対照抗体による処置は腫瘍の大きさ、または転移に有意な変化をもたらさない。
【0090】
5.4.14 3LL Lewis肺癌:原発腫瘍増殖
この腫瘍株は、C57BL/6マウスにおいて肺の悪性腫瘍として自然に発生したものである(Malaveら、J. Nat'l. Canc. Inst. 1979, 62: 83-88)。この株は、皮下(sc)接種によりC57BL/6マウスにおいて継代によって増殖し、セミ同種異系C57BL/6×DBA/2 F1マウス、または同種異系C3Hマウスにおいて試験される。典型的には、皮下(sc)移植には1群当たり6匹、または筋肉内(im)移植には10匹の動物を使用する。腫瘍は、2〜4 mmの断片として皮下に、または約0.5〜2×106個からなる懸濁細胞の接種材料として筋肉内もしくは皮下に移植することができる。処置は移植の24時間後に始めるか、もしくは指定の大きさ(通常約400mg)の腫瘍が触知できるまで遅らせる。被験化合物を11日間毎日腹腔内に投与する。動物はその後、体重を測り、触診し、腫瘍の大きさを測定する。接種後12日目の未処置対照レシピエントの典型的な腫瘍重量は500〜2500 mgである。典型的な生存期間の中央値は18〜28日である。陽性対照化合物は、たとえば、シクロホスファミドを1〜11日に、一日一回の注射で20mg/kgとして使用する。算出された結果は、動物の平均体重、腫瘍の大きさ、腫瘍重量、生存期間を含む。確実な治療活性のためには、被験化合物を2つの複数回投与アッセイで試験するべきである。
【0091】
5.4.15 3LL Lewis肺癌:原発腫瘍増殖および転移モデル
このアッセイは当技術分野でよく知られている(Gorelikら、J. Nat'l. Canc. Inst. 1980, 65: 1257-1264; Gorelikら、Rec. Results Canc. Res. 1980, 75: 20-28; Isakovら、Invasion Metas. 2: 12-32 (1982); Talmadgeら、J. Nat'l. Canc. Inst. 1982, 69: 975-980; Hilgard ら、Br. J. Cancer 1977, 35: 78-86)。被験マウスは雄C57BL/6マウス、2〜3月齢である。皮下、筋肉内、もしくは足蹠内に移植後、上記腫瘍は転移を生じるが、肺において優先的に生じる。一部の腫瘍系統については、原発腫瘍が抗転移効果を及ぼすため、転移フェーズの研究の前に最初に摘出しなくてはならない(米国特許第5,639,725号も参照されたい)。単個細胞懸濁液を、細かく刻んだ腫瘍組織を0.3%トリプシン溶液で処理することによって固形腫瘍から調製する。細胞をPBS(pH 7.4)で3回洗浄し、PBS中に懸濁する。このようにして調製された3LL細胞の生存率は、概して約95〜99%である(トリパンブルー色素排除法)。PBS 0.05mlに懸濁した生存腫瘍細胞(3 x 104〜5 x 106)を、C57BL/6マウスの背部に、もしくは一方の後ろ足蹠内に、皮下注射する。106細胞を背部に皮下注射して3〜4日後に目に見える腫瘍が現れる。腫瘍が出現する日、および定着した腫瘍の直径を2日ごとにカリパスで測定する。処置は、1週間当たり1回から5回のペプチドもしくは誘導体の投与として与えられる。別の実施形態では、ペプチドを浸透圧ミニポンプによって投与してもよい。
【0092】
背部腫瘍の腫瘍摘出を含む実験において、腫瘍が約1500mm3の大きさに達したら、マウスを無作為に2群に分ける:(1)原発腫瘍を完全に摘出する;または(2)偽手術を行って、腫瘍をそのままにする。500〜3000mm3までの腫瘍は転移増殖を抑制するが、1500mm3は、高い生存率で、しかも局所で再増殖することなく、安全に切除できる原発腫瘍の最大の大きさである。21日後、全マウスを屠殺して解剖する。
【0093】
肺を取り出して、重量を測定する。肺をBouin溶液中で固定し、目に見える転移の数を記録する。マイクロメーター付き接眼レンズを備えた両眼立体顕微鏡を用いて8倍の倍率で、転移の直径を測定する。記録された直径に基づいて、それぞれの転移の体積を計算することができる。肺ごとの転移の全体積を決定するために、目に見える転移の数の平均に転移の平均体積を掛ける。さらに転移増殖を判断するために、肺細胞への125IdUrdの取り込みを測定することができる(Thakurら、J. Lab. Clin. Med. 1977, 89: 217-228)。腫瘍切除の10日後、フルオロデオキシウリジン25μgを腫瘍担持マウス(および使用できれば腫瘍切除マウス)の腹腔内に入れる。30分後、マウスに、1μCiの125IdUrd(ヨードデオキシウリジン)を投与する。1日後、肺および脾臓を摘出して重量を測定し、125IdUrd取り込みの程度をガンマカウンターで測定する。
【0094】
足蹠に腫瘍を有するマウスにおいて、腫瘍が直径約8〜10 mmに達したら、マウスを無作為に2群に分ける:(1)膝関節の上で結紮した後、腫瘍のある下腿を切断する;または(2)マウスを非切断腫瘍担持対照としてそのままにしておく。(腫瘍担持マウスの腫瘍のない脚を切断することは、麻酔、ストレスもしくは手術について考えられる影響を除外して、その後の転移への影響は知られていない)。マウスを切断の10〜14日後に屠殺する。上記のように転移を評価する。
【0095】
統計:転移の発生率および腫瘍担持マウスの肺における転移の増殖を表す値は、正規分布しない。したがって、Mann-Whitney U検定のようなノンパラメトリック統計学を解析に使用することができる。Gorelikら(1980、上記)によるこのモデルの研究によって、腫瘍細胞接種物の大きさが転移増殖の程度を決定することが示された。手術したマウスの肺における転移の速度は、原発腫瘍を有するマウスとは異なっていた。こうして、大量の3LL細胞(1〜5 x 106)の接種によって原発腫瘍が誘導されて、その後外科的に除去されたマウスの肺では、転移の数は手術しない腫瘍担持マウスより少なかったが、ただし転移の体積は非手術対照より大きかった。肺転移の指標として125IdUrd取り込みを用いると、腫瘍切除マウスと、初めに106個の3LL細胞の接種を受けた腫瘍担持マウスとの間に有意差は認められなかった。105個の腫瘍細胞の接種によって生じた腫瘍の切除は、転移増殖を劇的に促進した。これらの結果は、局所腫瘍の切除後のマウスの生存率と一致する。局所腫瘍の切除後に転移増殖が促進される現象は、繰り返し、観察されてきた(たとえば、米国特許第5,639,725号)。こうした観察は、癌の外科手術を受ける患者の予後診断に意味をもってくる。
【0096】
5.4.16 ホールセルでのuPAへの抗体結合についてのアッセイ
ウロキナーゼアミノ末端断片を標的とする抗体および/または抗体コンジュゲートのuPAへの結合は、[125I]DFP-uPAのuPARへの結合の阻害を、競合リガンド結合アッセイにおいて測定することによって、容易に調べられる。このアッセイは、uPARを発現するホールセル、たとえば、RKOもしくはHeLaといった細胞株を使用することができる。好ましいアッセイは以下のように行う。細胞(約5 x 104/ウェル)を24ウェルプレートの培地(たとえば、Earle平衡塩/10% FBSおよび抗生物質を加えたMEM)中に播いた後、細胞が70%コンフルエントに達するまで加湿5%CO2雰囲気中でインキュベートする。触媒的に不活化された高分子量uPA(DFP-uPA)を、Iodo-gen(登録商標)(Pierce)を用いて、約250,000cpm/mgの比放射能となるまで放射性ヨード化する。次に、細胞含有プレートを氷上で冷却し、細胞を、冷PBS/0.05% Tween-80で2回(5分ずつ)洗浄する。被験抗体および/または抗体コンジュゲートを、冷PBS/0.1% BSA/0.01% Tween-80で連続希釈し、[125I]DFP-uPAを添加する10分前に、最終容量0.3mlとなるよう各ウェルに加える。その後、各ウェルに9500cpmの[125I]DFP-uPAを加えて最終濃度を0.2nMとする。次に、プレートを4℃にて2時間インキュベートし、その後、細胞を冷PBS/0.05% Tween-80で3回(5分ずつ)洗浄する。NaOH(1N)0.5mlを各ウェルに加えて細胞を溶解し、室温で5分間、または顕微鏡検査で判定して各ウェルの全細胞が溶解するまで、プレートをインキュベートする。その後、各ウェルの内容物を吸引し、各ウェルの全カウント数をガンマカウンターで測定する。それぞれの化合物を3回反復で検査し、結果を、[125I]DFP-uPAのみを含有するウェル(これは最大(100%)結合を表すために必要とされる)で測定された全放射能の百分率として表す。
【0097】
[125I]DFP-uPAのuPARへの結合の阻害は、通常、用量依存的であるので、結合の50%阻害を生じるのに必要な被験化合物の濃度(IC50値)は、相関曲線の直線部分にあると予想されるため容易に決定される。一般に、抗体および/または抗体コンジュゲートは約10-5Mより低いIC50値を有する。好ましくは、抗体および/または抗体コンジュゲートは約10-6Mより低いIC50値を有し、さらに好ましくは約10-7Mより低い値を有する。
【0098】
5.5 組換えDNA法
分子生物学の一般方法は、当技術分野においてこれまで十分に記述されている(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版(もしくはそれ以降)、Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989; Ausubeら、Current Protocols in Molecular Biology, 第2巻、Wiley-Interscience, New York, (現行版); Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990); Glover, DM編、DNA Cloning : A Practical Approach, 第IおよびII巻、IRL Press, 1985; Albertsら、Molecular Biology of the Cell, 第2版(もしくはそれ以降)、Garland Publishing, Inc. , New York, NY (1989); Watsonら、Recombinant DNA, 第2版(もしくはそれ以降)、Scientific American Books, New York, 1992; ならびにOldら、Principles of Gene Manipulation : An Introduction to Genetic Engineering, 第2版(もしくはそれ以降)、University of California Press, Berkeley, CA(1981))。
【0099】
特に指示しない限り、特定の核酸配列は、その保存的置換変異体(たとえば、縮重コドン置換)および相補的配列を包含するものとする。「核酸」という用語は、「ポリヌクレオチド」と同義であって、遺伝子、cDNA分子、mRNA分子、およびこれらいずれかの断片、たとえばオリゴヌクレオチド、ならびに、その均等物(下記にさらに十分に説明する)をも含むものとする。核酸の大きさはキロベース(kb)または塩基対(bp)のいずれかで示される。これは、使用者によって決定された、または公表された核酸配列に基づいて、アガロースもしくはポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)から導かれる概算である。タンパク質の大きさは、分子量キロダルトン(kDa)として、または長さ(アミノ酸残基の数)として示される。タンパク質の大きさは、PAGEから、配列決定から、核酸コード配列に基づく推定アミノ酸配列から、または公表されたアミノ酸配列から、概算される。
【0100】
具体的には、抗体、もしくはその活性変異体に該当するアミノ酸配列をコードするDNA分子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(たとえば、米国特許第4,683,202号を参照されたい)によって、本明細書で開示されるタンパク質の配列に由来するプライマーを用いて合成することができる。次に、これらのcDNA配列を真核生物もしくは原核生物発現ベクターに組み立てることが可能であって、その結果得られたベクターを用いて、適当な宿主細胞(たとえば、COSまたはCHO細胞)による融合ポリペプチドまたはその断片もしくは誘導体の合成を指示することができる。
【0101】
抗体および/またはその断片を発現するように形質転換された、またはトランスフェクトされた、原核もしくは真核宿主細胞は、本発明の範囲に含まれる。たとえば、大腸菌(E. coli)のような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス)、酵母、またはチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)もしくはヒト細胞(これは、トランスフェクトされた細胞をヒトの治療用に使用するために好ましい)のような哺乳類細胞において、抗体および/またはその断片を発現することができる。他の適当な宿主は当業者に公知である。真核細胞における発現は、部分的もしくは完全なグリコシル化、および/または、組換えポリペプチドに関連する鎖間もしくは鎖内ジスルフィド結合の形成をもたらす。酵母S. cerevisiaeにおける発現のためのベクターの例としては、pYepSecl (Baldariら、1987, EMBOJ. 6: 229-234)、pMFa (Kurjanら、1982 Cell 30: 933-943)、pJRY88 (Schultzら、1987, Gene 54: 113-123)、およびpYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, Calif.)がある。培養昆虫細胞(SF9細胞)においてタンパク質を発現するために利用できるバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smithら、1983, Mol. Cell Biol. 3: 2156-2165)およびpVLシリーズ(Lucklowら、(1989) Virology 170: 31-39)が含まれる。一般に、COS細胞(Gluzman 1981 Cell 23: 175-182)は、哺乳類細胞における一過性増幅/発現のためにpCDM 8(Aruffoら、上記)のようなベクターとともに用いられるが、これに対してCHO(dhfrネガティブCHO)細胞は、哺乳類細胞における安定した増幅/発現のためにpMT2PC(Kaufmanら、1987, EMBO J. 6: 187-195)といったベクターとともに使用される。NS0骨髄腫細胞株(グルタミン合成酵素発現系)はCelltech Ltd.から入手できる。
【0102】
所望のコード配列および制御配列を含有する適当なベクターの構築は、当技術分野でよく知られている標準的な核酸連結反応および制限酵素切断法を用いる。単離されたプラスミド、DNA配列、または合成オリゴヌクレオチドを、所望の形となるように切断し、改作し、そして再連結する。ベクターを形成するDNA配列は、多くの供給源から入手できる。骨格ベクターおよび制御系は、一般に、入手可能な「宿主」ベクターに見出され、かかるベクターが大半の配列のために構築に使用される。適切なコード配列のために、構築のはじめに、cDNAもしくはゲノムDNAライブラリーから適当な配列を検索してもよく、通常それが行われる。しかしながら、ひとたび配列が明らかになれば、in vitroで個々のヌクレオチド誘導体から始めて、全遺伝子配列を合成することができる。相当な長さ(たとえば500〜1000 bp)の遺伝子の全遺伝子配列は、部分的にオーバーラップする相補的なオリゴヌクレオチドを合成し、オーバーラップしない一本鎖部分を、デオキシリボヌクレオチド三リン酸の存在下でDNAポリメラーゼを用いてフィルインすることによって、調製することができる。この方法は、既知の配列を有するいくつかの遺伝子の作製に使用されて成功している。たとえば、Edge, Nature 1981, 292: 756; Nambairら、Science 1984, 223: 1299; およびJay, J.Biol. Chem. 1984, 259: 6311を参照されたい。
【0103】
合成オリゴヌクレオチドは、上記の文献に記載されたホスホトリエステル法またはBeaucageら、Tetrahedron Lett. 1981, 22: 1859; およびMatteucciら、J. Am. Chem. Soc. 1981, 103: 3185に記載のホスホルアミダイト法のいずれかによって調製されるが、市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置によって調製することもできる。アニーリング前の、または標識化のための、一本鎖のキナーゼ処理は周知の方法によって達成される。
【0104】
このようにして所望のベクターの成分が入手できれば、標準的な制限酵素切断および連結の手順によって、これらを切断し、結合することができる。部位特異的DNA切断は、適当な1つの制限酵素(もしくは複数の酵素)で処理することによって行われるが、その条件は、当技術分野で広く理解されるものであり、その条件の詳細は、上記の市販の制限酵素のメーカーにより指定される。たとえば、New England Biolabsの製品カタログを参照されたい。必要ならば、標準的な技法を用いて、ポリアクリルアミドゲルもしくはアガロースゲル電気泳動により、切断された断片のサイズ分離を行うことができる。サイズ分離の総合的な記述は、Meth. Enzymol. (1980) 65:499-560にある。いくつかの方法のいずれかを使用して、コード配列内に突然変異を導入し、もし組換えによって作製されるならば、変異体が得られる。これらの突然変異には、単純な欠失もしくは挿入、塩基のクラスターの計画的な欠失、挿入もしくは置換、または単一塩基の置換が含まれる。DNA配列の改変は、その手順および試薬が市販されている周知の技法である、部位特異的突然変異誘発によって行われる(Zollerら、Nucleic Acids Res. 1982, 10: 6487-6500およびAdelmanら、DNA 1983, 2: 183-193))。単離されたDNAを制限酵素切断によって解析し、かつ/またはMessingら、Nucleic Acids Res. 1981, 9: 309にさらに記載されるようなSangerのジデオキシヌクレオチド法(Sanger, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1977, 74: 5463)によって、もしくはMaxamら(Meth. Enzymol. 上記)の方法によって、配列決定する。
【0105】
従来の技法によってベクターDNAを哺乳類細胞に導入することができるが、その技法はたとえば、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションである。宿主細胞を形質転換する適当な方法は、Sambrookら、上記、および他の標準的な教科書に見出すことができる。融合発現ベクターでは、タンパク質分解切断部位をレポーター基と標的タンパク質の接合部に導入して、融合タンパク質の精製後に、レポーター基からの標的タンパク質の分離を可能にする。こうした切断のためのタンパク質分解酵素およびそれらの認識配列には、因子Xa、トロンビンおよびエンテロキナーゼがある。
【0106】
5.6 治療上の使用
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、細胞遊走、細胞浸潤もしくは細胞増殖、血管新生、または転移を特徴とする病気にかかっている患者、好ましくはヒト、に投与される。このような疾病もしくは病的状態には、固形腫瘍もしくは白血病およびリンパ腫の原発増殖、転移腫瘍の転移、浸潤および/または増殖、良性過形成、粥状動脈硬化、心筋血管新生、血管線維腫、動静脈奇形、バルーン血管形成後血管再狭窄、血管外傷後新生内膜形成、血管移植片再狭窄、冠動脈側枝形成、深部静脈血栓症、虚血肢血管新生、毛細血管拡張症、化膿性肉芽腫、角膜疾患、ルベオーシス、新生血管緑内障、糖尿病性およびその他の網膜症、水晶体後線維増殖症、糖尿病性血管新生、黄斑変性症、子宮内膜症、関節炎、乾癬・強皮症を含む慢性炎症性疾患関連線維症、血管腫、血友病性関節、肥厚性瘢痕、Osler-Weber症候群、乾癬、発熱性肉芽腫、水晶体後線維増殖症、強皮症、Von-Hippel-Landau症候群、トラコーマ、血管癒着、肺線維症、化学療法による線維症、瘢痕化および線維形成を伴う創傷治癒、消化性潰瘍、骨折、ケロイド、ならびに血管形成、造血、排卵、月経、妊娠および胎盤形成の障害、または細胞浸潤もしくは血管新生が病因となるかまたは望まれない他の疾病もしくは病的状態が含まれる。
【0107】
ごく最近、血管新生阻害剤が、炎症性血管新生および外傷性脊髄損傷後のグリオーシスを予防すること、それによってニューロン結合性の回復を促進することに、ある役割を果たす可能性のあることが明らかになった(Wamilら、Proc. Natl. Acad. Sci. 1998, 95: 13188-13193)。したがって、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/または医薬組成物を、外傷性脊髄損傷後できるだけ速やかに、そしてその後約2週間に至るまで数日間投与すると、ニューロン結合性の回復を立体的に妨げると思われる血管新生およびグリオーシスが抑制される。かかる治療は、脊髄損傷部位において損傷域を減らし、ニューロンの機能の再生を促し、それによって麻痺を予防する。抗体および/または抗体コンジュゲートは、ウォーラー変性から軸索を保護し、アミノ酪酸による脱分極(外傷を受けたニューロンにおいて生じる)を覆し、培養下の中枢神経系細胞および組織のニューロンの伝導率の回復を向上させることも期待される。
【0108】
さらに、ある実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、上記のさまざまな疾患もしくは障害の予防措置として、患者、好ましくはヒト、に投与される。したがって、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、細胞遊走、細胞浸潤もしくは細胞増殖、血管新生、または転移を特徴とする疾病素因を有する患者に、予防措置として、投与することができる。したがって、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、ある疾患もしくは障害の予防のために、さらに同時に別の疾患もしくは障害の治療のために、使用することができる。
【0109】
異常な血管新生を特徴とする、さまざまな疾患もしくは障害の治療または予防における、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物の適合性は、本明細書に記載される当技術分野において公知の方法によってアッセイすることができる。したがって、細胞遊走、細胞浸潤もしくは細胞増殖、血管新生、または転移を特徴とする疾患もしくは障害を治療または予防するために、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物をアッセイして使用することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0110】
5.7 診断上の使用および方法
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、上記セクション5.6に記載の疾患を検出もしくは画像化するために、診断上有効な量が、患者、好ましくはヒト、に投与される。さらに、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を使用して、診断上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を被験体に投与することにより、上記セクション5.6に記載のような、望ましくない細胞遊走、浸潤もしくは増殖に関連する疾患もしくは病的状態を、検出または画像化することができる。
【0111】
抗体を診断のために標識して使用し、たとえば、ペプチド結合性リガンドもしくは細胞結合部位/レセプター(例としては、uPAR)を、細胞の内部もしくは表面上のいずれかにおいて検出することができる。適当な方法で標識を検出することによって、結合中および結合後の抗体の体内動態をin vitroまたはin vivoで追跡することができる。診断用に標識された抗体をin vivoで診断および予後診断に利用して、たとえば、潜在的な転移病巣を画像化することができ、または他のタイプのin situ評価に利用することができる。診断上の用途のために、抗体は結合されたリンカー成分を包含してもよく、これは当業者に周知である。
【0112】
標識抗体のin situ検出は、被験体から組織標本を取り出し、それを適当な条件下で顕微鏡によって調べて標識を検出することにより達成することができる。このようなin situ検出を達成するために、当業者であれば、さまざまな組織学的方法(染色法など)を改変しうることに容易に気付くであろう。
【0113】
診断上のin vivo放射線イメージングの場合は、利用できる検出機器のタイプが放射性核種選択の重要な要因となる。選択される放射性核種は、特定の機器によって検出可能な、ある種の崩壊を生じなければならない。一般に、画像診断を可視化するための従来法はいずれも本発明にしたがって利用することができる。in vivo診断のための放射性核種の選択に関する別の要因は、その半減期が十分に長く、標識が標的組織による最大取り込みの時点でなおも検出可能であるが、宿主の有害な照射を最小限とするよう十分に短くもあるということである。ある好ましい実施形態では、in vivoイメージングに使用される放射性核種は、粒子を放射しないが、従来のガンマカウンターによって容易に検出できる140〜200 keVの範囲にある多数の光子を発生するものである。
【0114】
in vitroイメージングを用いて、他の方法で観察できない潜在性転移を検出することができる。uPARの発現は、癌患者における病気の進行と相関し、末期癌患者は、原発腫瘍および転移の両方に高レベルのuPARを有する。uPARを標的としたイメージングを用いて、非侵襲的に腫瘍を病期に分類し、または高レベルのuPARの存在に関連する他の病気(たとえば、血管形成後に起こる再狭窄)を検出することができる。
【0115】
抗体および/または抗体コンジュゲートは、所望の動物種の適当な細胞、組織、器官もしくは生体試料とともに、診断、予後診断もしくは研究の手段に使用することができる。「生体試料」という用語は、正常な、もしくは病気の被験体の身体に由来する何らかの液体もしくは他の物質、たとえば、血液、血清、血漿、リンパ液、尿、唾液、涙、脳脊髄液、乳、羊水、胆汁、腹水、膿などを意味する。この用語の意味には、器官もしくは組織抽出物、および被験体由来の細胞もしくは組織標品をインキュベートした培養液も含まれる。
【0116】
有用な投与量は、特定の診断法のための、抗体および/または抗体コンジュゲートの有効な量として定義される。したがって、有効な量は、適当な検出系、たとえば、磁気共鳴イメージング検出装置、ガンマカメラなどを用いて検出するのに十分な量を意味する。検出可能な最小量は、腫瘍に特異的に結合した標識抗体(シグナル)と、非特異的に結合したまたは血漿中もしくは細胞外液中に遊離状態で存在する標識抗体の量と、の比によって決まると思われる。
【0117】
投与される診断用組成物の量は、選択されたまさにその抗体、疾患もしくは病的状態、投与経路、および熟練したイメージング専門家の判断によって決まる。一般に、診断上の使用において検出可能であるために必要とされる抗体の量は、年齢、状態、性別、および患者における病気の程度、もしあれば禁忌、ならびに他の変動要因といった、考慮すべき事項に応じてさまざまであると考えられ、個々の主治医もしくは診断医によって調整されるべきである。投与量は0.01 mg/kgから100 mg/kgまでさまざまとすることができる。
【0118】
5.8 治療/予防上の投与
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、ヒトの医薬として、有効に使用することができる。上記セクション5.6にすでに記載のように、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、さまざまな疾患もしくは障害の治療または予防に有用である。
【0119】
上記疾患もしくは障害を治療または予防するために使用する場合、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、単独で、または他の薬剤と併用して、投与もしくは適用することができる。抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物はまた、単独で、または本明細書に記載の他の抗体を含めて、他の製薬上活性のある薬剤(たとえば、他の抗癌剤、他の血管新生阻害剤、たとえば亜鉛、ペニシラミン、チオモリブデン酸などのキレート剤)と併用して、投与もしくは適用することができる。
【0120】
治療上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を患者に投与することによる治療および予防方法が、本明細書において提供される。患者は動物とすることができるが、好ましくは哺乳類であり、もっとも好ましくはヒトである。
【0121】
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、好ましくは全身的に投与される。抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物はまた、他のなんらかの適当な経路によって、たとえば、経口で、輸液もしくはボーラス注射によって、上皮内層もしくは粘膜皮膚内層(例としては、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)からの吸収によって、投与することができる。投与は局所的であってもよい。さまざまなデリバリーシステム(たとえば、リポソームカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、カプセルなど)を用いて、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を投与することができる。投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、経口、舌下、脳内、経皮、直腸、吸入、または局所的、特に耳、鼻、目もしくは皮膚への投与があるが、それらに限定されない。好ましい投与方法は、医師の裁量に委ねられ、ある程度、医学的症状の部位によって決まってくる。ほとんどの場合、投与は、結果として、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物の血流中への放出をもたらすことになる。
【0122】
特定の実施形態において、1つもしくは複数の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、治療の必要な部位に局所的に投与することが望ましい。例としてであって、限定する目的ではないが、外科手術時の局所注入、局所適用(たとえば、外科手術後の創傷用包帯と併用する)によって、注射によって、カテーテルを用いることによって、座剤によって、またはインプラントによって、上記を達成することができる。インプラントは多孔性、非多孔性、またはゼラチン状の物質からなり、膜(たとえば、シアラスティック(sialastic)膜)もしくは繊維である。ある実施形態において、投与は、癌もしくは関節炎の部位(またはその前の部位)での直接注入によることができる。
【0123】
ある実施形態において、1つもしくは複数の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、中枢神経系に、なんらかの適当な経路で導入することが望ましいと考えられるが、その経路には脳室内、クモ膜下、および硬膜外注射を含む。脳室内注射は、たとえば、Ommayaリザーバーといったリザーバーを付けた、脳室内カテーテルによって容易に行うことができる。
【0124】
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、吸入によって肺に直接投与することもできる。吸入による投与のために、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、多くのさまざまな装置によって、良好に送達することができる。たとえば、定量噴霧式吸入器(Metered Dose Inhaler: "MDI")、は、低沸点噴射剤(たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の何らかの適当な気体)を含有する容器を利用するものであるが、これを用いて、抗体および/または抗体コンジュゲートを直接、肺に送達することができる。
【0125】
あるいはまた、ドライパウダー吸入器(Dry Powder Inhaler: "DPI")を使用して、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を肺に投与することができる。DPI装置は、典型的には、ガス爆発のような仕組みを用いて、容器内部で乾燥粉末を煙状とし、その後それを患者が吸入することができる。DPI装置も、当技術分野において周知である。よく知られているのは複数回投与DPI(MDDPI)であって、これは、2回分以上の治療用量の送達を可能にする。たとえば、吸入器用のゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、抗体および/または抗体コンジュゲートと、この系に適した乳糖やデンプンのような粉末基剤とからなる粉末混合物を含有して製剤化される。
【0126】
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を肺に送達するために使用することができる別のタイプの装置は、たとえば、Aradigm Corporation (Hayward, CA)から提供される液体噴霧装置である。液体噴霧システムは、非常に小さいノズル孔を用いて、液体薬物製剤をエアロゾル化し、次にそれを肺に直接吸入することができる。
【0127】
ある実施形態において、ネブライザーを使用して、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を肺に送達する。ネブライザーは、たとえば、容易に吸入できる微粒子を形成する超音波エネルギーを用いることによって、液体薬物製剤からエアロゾルを生じさる(たとえば、Verschoyleら、British J. Cancer, 1999, 80, Suppl. 2, 96を参照されたい;これは参考として本明細書に含めるものとする)。ネブライザーの例には、Batelle Pulmonary Therapeutics (Columbus, OH)から提供される装置がある(Armerら、米国特許第5,954, 047号; van der Lindenら、米国特許第5,950, 619号; van der Lindenら、米国特許第5,970,974号を参照されたい)。
【0128】
別の実施形態において、電気流体力学(EHD)エアロゾル装置を用いて、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を肺に送達する。EHDエアロゾル装置は、液体医薬品溶液もしくは懸濁液をエアロゾル化するために電気的エネルギーを使用する(たとえば、Noakesら、米国特許第4,765, 539号を参照されたい)。EHDエアロゾル装置は、既存の肺デリバリー技術よりも効率的に薬物を肺に送達することができる。
【0129】
もう一つの実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、小胞、特にリポソームに入れて送達することができる(Langer, 1990, Science, 249: 1527-1533; Treatら、"Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer"、Lopez-BeresteinおよびFidler (編)、Liss, New York, pp. 353-365 (1989); 全般的には"Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer"、Lopez-BeresteinおよびFidler (編), Liss, New York, pp. 353-365(1989)を参照されたい)。
【0130】
5.9 医薬組成物
本発明の医薬組成物は、治療上、または診断上有効な量の、1つもしくは複数の抗体および/または抗体コンジュゲートを、できれば精製された形で、適当な量の製薬上許容されるビヒクルとともに含有し、患者に適切に投与するための剤形とする。患者に投与する場合、抗体および/または抗体コンジュゲート、ならびに製薬上許容されるビヒクルは、好ましくは無菌である。抗体および/または抗体コンジュゲートを静脈内に投与する場合、水が好ましいビヒクルである。生理食塩水およびブドウ糖水溶液およびグリセロール溶液も、特に注射剤用の液体ビヒクルとして使用することができる。適当な医薬用ビヒクルには、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどといったビヒクルも含まれる。本発明の医薬組成物は、必要ならば、小量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有することができる。さらに、助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤および着色剤も用いることが出来る。
【0131】
抗体および/または抗体コンジュゲートを含んでなる医薬組成物は、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、捕捉または凍結乾燥プロセスによって製造することができる。医薬組成物は、1つもしくは複数の生理的に許容される担体、希釈剤、賦形剤もしくはアジュバントを用いて従来の方法で製剤化することができるが、これらは抗体および/または抗体コンジュゲートを、医薬として使用できる製剤に加工することを容易にするものである。適切な製剤は選択される投与経路によって決まる。
【0132】
本発明の医薬組成物は、溶液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、散剤、徐放性製剤、座剤、乳剤、エアロゾル剤、スプレー剤、懸濁液剤、もしくは他の何らかの使用に適した剤形をとることができる。ある実施形態において、製薬上許容されるビヒクルはカプセルである(たとえば、Grosswaldら、米国特許第5,698,155号を参照されたい)。適当な医薬用ビヒクルの他の例は当技術分野で報告されている(Remington's Pharmaceutical Sciences, Philadelphia College of Pharmacy and Science、第19版、1995を参照されたい)。
【0133】
局所投与のために、抗体および/または抗体コンジュゲートを、当技術分野でよく知られているように、溶液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤などとして製剤化することができる。全身用製剤は、たとえば、皮下、静脈内、筋肉内、クモ膜下もしくは腹腔内注射といった注射による投与を目的とする製剤、ならびに経皮、経粘膜、経口もしくは肺投与を目的とする製剤を包含する。全身用製剤は、気道粘液の粘液繊毛クリアランスを改善するか、または粘液の粘性を低下させる、もう一つの活性物質と組み合わせて製造することができる。こうした活性物質には、ナトリウムチャネルブロッカー、抗生物質、N-アセチルシステイン、ホモシステインおよびリン脂質があるが、それらに限定されない。
【0134】
ある実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲートは、ヒトへの静脈内投与に適合する医薬組成物として、一定の手順にしたがって製剤化される。典型的には、静脈内投与用の抗体および/または抗体コンジュゲートは、無菌等張水性バッファー中の溶液である。注射用に、抗体および/または抗体コンジュゲートは、水溶液として、好ましくはHanks溶液、Ringer溶液もしくは生理的塩類バッファーのような、生理的に適合するバッファー中に製剤化される。溶液剤は、懸濁化剤、安定化剤および/または分散助剤といった処方用物質を含有することができる。必要ならば、医薬組成物は可溶化剤を含んでいてもよい。静脈内投与用の医薬組成物は、場合によっては、注射部位の痛みを和らげるためにリグノカインのような局所麻酔薬を包含することができる。一般に、諸成分は、たとえば活性物質の量を表示するアンプルもしくはサシェといった気密容器内に凍結乾燥粉末または水不含濃縮物としての単位剤形に一緒に混合して、または別々に供給される。抗体および/または抗体コンジュゲートを輸液によって投与する場合は、それらを、無菌の医薬品級の水もしくは生理食塩水の入った輸液ボトルとともに分配することができる。抗体および/または抗体コンジュゲートを注射によって投与する場合は、投与に先立って諸成分を混合することができるように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを供給する。
【0135】
経粘膜投与の場合は、透過すべきバリアに適した浸透剤が製剤中で使用される。こうした浸透剤は当技術分野において知られている。
【0136】
経口投与用の医薬組成物は、たとえば、錠剤、トローチ剤、水性もしくは油性懸濁液剤、顆粒剤、散剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の剤形をとることができる。経口投与される医薬組成物は、製薬上口当たりのよい製剤を提供するために、1つもしくは複数の任意に選択される物質、たとえば、果糖、アスパルテームもしくはサッカリンといった甘味料、ペパーミント、ウィンターグリーンオイルもしくはチェリーのような着香料、着色料および防腐剤を含有することができる。経口組成物は、標準的なビヒクル、たとえばマンニトール、乳糖,デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを包含することができる。こうしたビヒクルは医薬品級のものであることが好ましい。
【0137】
たとえば、懸濁液剤、エリキシル剤および溶液剤といった経口液体製剤に適した、担体、賦形剤もしくは希釈剤には、水、生理食塩水、アルキレングリコール(たとえば、プロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(たとえば、ポリエチレングリコール)、油、アルコール、pH4〜6の弱酸性バッファー(たとえば、約5.0mMから約50.0mMまでの酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩)などがある。さらに、着香料、防腐剤、着色料、胆汁酸塩、アシルカルニチンなどを添加することができる。
【0138】
舌下投与のために、医薬組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤、トローチ剤などの形をとることができる。
【0139】
ネブライザー、液体スプレー装置およびEHDエアロゾル装置で使用するのに適した液体薬物製剤は、典型的には、製薬上許容されるビヒクルとともに抗体および/または抗体コンジュゲートを包含することができる。好ましくは、製薬上許容されるビヒクルは、アルコール、水、ポリエチレングリコールもしくはパーフルオロカーボンといった液体である。状況に応じて、別の物質を添加して、抗体および/または抗体コンジュゲートの溶液もしくは懸濁液のエアロゾル特性を変更することができる。好ましくは、この物質は、アルコール、グリコール、ポリグリコールもしくは脂肪酸のような液体である。エアロゾル装置で使用するのに適した液体薬物溶液もしくは懸濁液を調製する他の方法は、当業者に周知である(たとえば、Biesalski、米国特許第5,112,598号; Biesalski、米国特許第5,556,611号を参照されたい)。
【0140】
抗体および/または抗体コンジュゲートは、たとえば、カカオバターもしくは他のグリセリドのような従来の座薬用基剤を含有する、座薬または停留浣腸剤といった直腸もしくは膣内医薬組成物として製剤化することもできる。
【0141】
5.10 投与量
抗体および/または抗体コンジュゲート、またはその医薬組成物は一般に、意図する目的を達成するのに有効な量で使用される。異常な血管新生を特徴とする疾患もしくは障害の治療または予防に使用するために、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、治療上有効な量で投与され、または適用される。異常な血管新生を特徴とする疾患もしくは障害の検出に使用するために、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、診断上有効な量で投与され、または適用される。
【0142】
本明細書に開示される特定の疾患もしくは病的状態の治療、予防または検出に有効であると考えられる抗体および/または抗体コンジュゲートの量は、その疾患もしくは病的状態の性質に左右され、既述のように当技術分野で既知の標準的な臨床検査によって決定することができる。さらに、in vitroまたはin vivoアッセイが、状況に応じて行われ、最適な投薬量範囲の特定を助けることができる。投与される抗体および/または抗体コンジュゲートの量は、当然他の要因もあるが、なかでも治療を受ける被験体、被験体の体重、苦痛の深刻さ、投与法、および医師の判断に左右される。
【0143】
たとえば、投与量は、単回投与によって、複数回適用もしくは制御放出によって、医薬組成物として送達することができる。ある実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲートは、経口持続放出投与によって送達される。好ましくは、この実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲートは1日2回投与される(さらに好ましくは、1日1回)。投薬は、間隔をおいて繰り返すことができ、単独でまたは他の薬物との併用で与えられ、疾病状態もしくは障害の有効な治療のために必要とされるかぎり継続することができる。
【0144】
経口投与に適した投薬量範囲は、薬物の効力しだいであるが、一般に、体重キログラム当たり抗体および/または抗体コンジュゲート0.001mgから200mg程度である。投薬量範囲は、当業者に公知の方法によって容易に決定することができる。
【0145】
静脈内(i.v.)投与に適した投薬量範囲は、体重キログラム当たり約0.01mgから約100mgである。鼻内投与に適した投薬量範囲は、概して体重キログラム当たり約0.01mgから約1mgである。座剤は一般に、体重キログラム当たり約0.01mgから約50mgの抗体および/または抗体コンジュゲートを含有し、重量基準で約0.5%から約10%までの範囲の活性成分を含んでなる。皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、硬膜外、舌下または脳内投与に推奨される投薬量は、体重キログラム当たり約0.001mgから約200mgの範囲である。有効用量は、in vitroもしくは動物モデル試験系から導かれる用量反応曲線から外挿することができる。こうした動物モデルおよび系は当技術分野でよく知られている。
【0146】
抗体および/または抗体コンジュゲートは、望ましい治療、予防または診断活性について、ヒトに使用する前に、上記のようにin vitroおよびin vivoでアッセイすることが好ましい。たとえば、in vitroアッセイを使用して、ある特定の抗体および/または抗体コンジュゲートの投与、または複数の抗体および/または抗体コンジュゲートを組み合わせての投与が、癌の治療、予防または診断に好ましいかどうかを判定することができる。動物モデル系を使用して、抗体および/または抗体コンジュゲートが有効で安全であることを示すこともできる。
【0147】
好ましくは、本明細書に記載の抗体および/または抗体コンジュゲートの治療上有効な用量は、実質的な毒性を生じることなく治療上の利益をもたらすものである。同様に、本明細書に記載の抗体および/または抗体コンジュゲートの診断上有効な用量は、実質的な毒性を生じることなく診断上の利益をもたらすものである。抗体および/または抗体コンジュゲートの毒性は、標準的な製薬上の手順によって判断することができ、当業者は容易にこれを確認することができる。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数である。抗体および/または抗体コンジュゲートは、疾患および障害の治療において、特に高い治療指数を示すことが好ましい。本明細書に記載の抗体および/または抗体コンジュゲートの投与量は、毒性をほとんどもしくはまったく示すことなしに、治療もしくは診断上有効な用量を含む血中濃度の範囲内にあることが好ましい。
【0148】
5.11 併用療法
ある実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、少なくとも1つの他の治療薬とともに併用療法に使用することができる。抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物、ならびに治療薬は、相加的に、またはより好ましくは相乗的に作用することが考えられる。一部の実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、もう一つの治療薬の投与と同時に投与され、この治療薬は同一の医薬組成物の一部、または異なる医薬組成物とすることができる。別の実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲートの医薬組成物は、もう一つの治療薬の投与の前、または後に投与される。
【0149】
詳細には、他の実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、他の化学療法薬(たとえば、アルキル化剤(たとえば、ナイトロジェンマスタード(たとえば、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、スルホン酸アルキル類(たとえば、ブスルファン)、ニトロソウレア類、トリアジン類)、代謝拮抗薬(たとえば、葉酸アナログ、ピリミジンアナログ(たとえば、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シトシンアラビノシドなど)、プリンアナログ(たとえば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンなど)、天然物(たとえば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テノポシド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、L-アスパラギナーゼ、αインターフェロン)、白金配位錯体(たとえば、シスプラチン、カルボプラチンなど)、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ホルモンおよびアンタゴニスト(たとえば、プレドニゾン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン、フルタミド、リュープロリド、など)、抗血管新生薬もしくは阻害剤(たとえば、アンギオスタチン、レチノイン酸およびパクリタキセル、エストラジオール誘導体、チアゾロピリミジン誘導体など)、アポトーシス誘導剤(たとえば、アポトーシスを抑制する癌遺伝子をブロックするアンチセンスヌクレオチド、腫瘍抑制因子、TRAIL、TRAILポリペプチド、Fas-関連因子1、インターロイキン1変換酵素、ホスホチロシン阻害剤、RXR レチノイドレセプターアゴニスト、カルボスチリル誘導体など)、ならびにキレート剤(ペニシラミン、亜鉛、トリエンチンなど))との併用療法で使用することができる。
【0150】
5.12 治療用キット
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を含んでなる治療用キットも提供される。治療用キットは、他の化合物(たとえば、化学療法薬、天然物、ホルモンもしくはアンタゴニスト、抗血管新生薬もしくは阻害剤、アポトーシス誘導剤、またはキレート剤)またはこうした他の化合物の医薬組成物も含有することができる。
【0151】
治療用キットは、他の化合物(たとえば、他の化合物またはこうした他の化合物の医薬組成物)とともに、または他の化合物なしで、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物の入った単一の容器を有してもよいが、各成分について別個の容器を有することもできる。治療用キットは、第2の化合物(好ましくは、化学療法薬、天然物、ホルモンもしくはアンタゴニスト、抗血管新生薬もしくは阻害剤、アポトーシス誘導剤、またはキレート剤)および/またはその医薬組成物の同時投与と組み合わせて使用するためにパッケージされた、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を包含する。キットの成分は、あらかじめ合わせてあってもよいが、患者に投与する前には各成分が別個の容器に入っていてもよい。
【0152】
キットの成分は、1つもしくは複数の溶液、好ましくは水溶液、さらに好ましくは滅菌水溶液の状態で与えられることがある。キットの成分は、適当な溶媒の添加によって液体に変換できる固体として提供されることもあり、この溶媒は好ましくは別の異なる容器に入れて供給される。
【0153】
治療用キットの容器は、バイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ、または固体もしくは液体を封入する他の何らかの手段とすることができる。通常、2つ以上の成分がある場合、キットは第2のバイアルもしくは他の容器を有し、これらは別々に投与することを可能にする。キットはまた、製薬上許容される液体用のもう一つの容器を含むことができる。
【0154】
好ましくは、治療用キットは、器具(たとえば、1つもしくは複数のニードル、シリンジ、目薬容器、ピペットなど)を含んでいてもよく、これはキットの構成成分の投与を可能にする。
【0155】
下記の実施例は、抗体および/または抗体コンジュゲートの調製、ならびに生物活性をアッセイする方法を詳細に説明する。当業者には明白なことであるが、材料および方法のいずれに対しても、本発明の範囲から逸脱することなく多くの変更を行うことができる。
【実施例】
【0156】
6.1 実施例1
ウロキナーゼのアミノ末端断片の発現および精製
ウロキナーゼのアミノ末端断片(アミノ酸1-143)をクローニングして、Drosophila Schneider S2細胞において発現させた。細胞を銅(0.5mM)で7日間誘導して、組換えタンパク質を発現させた。培養上清を集め、遠心および濾過によって清澄化した。プロテアーゼインヒビターを添加後、ウロキナーゼのアミノ末端断片をDEAE-Sepharose(pH7.5)によるイオン交換クロマトグラフィーによって精製し、逆相-HPLCを用いてさらに精製した。
【0157】
6.2 実施例2
免疫化およびモノクローナル抗体の調製
Balb/cマウスに、実施例1で調製したウロキナーゼのアミノ末端断片を注射し、免疫応答をELISAによってモニターした。ELISAデータに基づいて、脾細胞を骨髄腫細胞株P3x63Ag8.653と融合させることによってハイブリドーマを作製した。10個の親ハイブリドーマの凍結ストックを調製し、5個のハイブリドーマを限界希釈法に供した。次に、これらのモノクローナル抗体からの組織培養上清の活性をELISAアッセイで検定し、各抗体のアイソタイプをIsoStrips (Roche)を用いて決定した。動物実験および他の研究に十分な抗体が腹水から得られた。処理された腹水をプロテインA Sepharoseでさらに精製し、最終物質の純度 (>95%) をHPLCによって測定した。最後に、精製された抗体の正体を等電点電気泳動およびアイソタイプ決定によってさらに特徴づけた。ウロキナーゼのアミノ末端ドメインに特異的なモノクローナル抗体(いずれもIgG1、κ)の大規模なパネルを作製した(データは示してない)。
【0158】
6.3 実施例3
モノクローナル抗体の特性決定
実施例2で得られた抗体のうち2つ(ATN-291およびATN-292)の特徴を徹底的に明らかにし、これらの抗体をin vivo実験のために十分な量で生産した。最初のエピトープマッピング実験はウェスタンブロットによって行った。組換えタンパク質(すなわち、scu、クリングル、アミノ末端断片1-135およびアミノ末端断片1-143)をSDS-PAGEによって分離し、PVDF膜に移した。図3に示すように、ATN-292は組換えアミノ末端断片1-135、アミノ末端断片1-143と特異的に結合したが、ウロキナーゼのクリングルドメインとは結合せず、このことは、ATN-292がウロキナーゼの成長因子ドメインを認識したことを示している。これに対して、ATN-291は、図3に見られるとおり、uPAクリングルドメインを特異的に認識した。直接結合実験によって、抗体のKdを決定した。図4に示すように、ATN-291およびATN-292はいずれも、高い親和性を示してウロキナーゼと結合し、Kdはそれぞれ約0.3および約0.5nMであった。ATN-291およびATN-292は、ATFのHaLa細胞への結合を阻害するそれらの能力について試験した。図5に示すように、2つの抗体はいずれも、ATFの結合を阻害し、IC50は約2nMであった。これは、uPAのGFD(uPAR結合)ドメインに特異的であるATN-292については予想されることである。ATN-291はクリングルドメインに特異的であり、したがって阻害はおそらく立体障害による。
【0159】
6.4 実施例4
モノクローナル抗体による腫瘍増殖の阻害
MDA MB 231乳癌モデルにおいて、抗体が腫瘍増殖を阻害する能力について試験した。Balb/c nu/nuマウスに7 x 105個のMDA MB 231乳癌細胞を注射し、腫瘍を35 mm3に増殖させた。動物を無作為に10匹の処置群に分け、抗体 10mg/kg (200μg/マウス)を週3回、IP(腹腔内)処置した。図6に示すように、ATN-291およびATN-292はいずれも、このモデルにおいて、アイソタイプが一致する対照抗体と比較したとき、腫瘍増殖を顕著に阻害した。
【0160】
6.5 実施例5
モノクローナル抗体のインターナリゼーション
ウロキナーゼのアミノ末端断片に対する抗体が細胞毒性薬を送達する可能性を、[125I]-標識抗体およびMDA-MB-231細胞を用いて行ったインターナリゼーション実験によって判定した。MDA-MB-231細胞はuPAとuPARの両方を発現する。酸-洗浄実験から、細胞表面上のすべてのuPARレセプターのうち相当な割合がuPAによって占有されていることが明らかになった(データは示してない)。24ウェルプレート中のMDA-MB-231細胞のコンフルエントな単層を、次第に増加する濃度の[125I]-ATN-291(黒丸)または[125I]-ATN-292(黒四角)と室温で1時間インキュベートした(図7)。細胞をPBS/Tween-20で十分に洗浄し、結合した物質を1M NaOHで可溶化した。20倍過剰の非標識抗体の存在下で非特異的結合を測定した。上記の実験から、ATN-291はMDA-MB-231細胞の表面上のレセプター結合uPAと、高い親和性で結合することができるが、ATN-292はそうではないことが明らかになった(図7)。これらの結果は、ATN-292がuPAの成長因子ドメインと結合することを示した実施例2のエピトープマッピング研究と一致する。このエピトープは、uPAのuPARへの結合に必須であり、したがって、リガンドがレセプターに結合している場合はマスクされる。これに対して、ATN-291はuPAのクリングルドメインを認識するが、このドメインは、uPA-uPAR相互作用の安定化に関与するものの、uPAの結合には必須でなく、リガンドがそのレセプターと結合している場合でも、一部露出している。
【0161】
[125I]-ATN-291のインターナリゼーションは、標準的な技法によって測定された。概略を述べると、MDA-MB-231細胞を、標識したATN-291とともに4℃にて2時間インキュベートした。細胞を十分に洗浄し、最後の洗浄液を、あらかじめ37℃に加温した結合バッファーに置き換えた。細胞を37℃にてインキュベートし、いろいろな時点で[125I]-ATN-291の細胞への分布を次のように測定した。すなわち、上清を集めてTCA沈澱によって分画し、膜に結合した抗体を酸洗浄によって除去し、細胞溶解物と結びついた抗体を、接着性の酸洗浄細胞の溶解によって回収した。ATN-291の分解は、細胞に結合した全比計数値の%として表される。細胞を37℃でインキュベートしたとき、非沈澱性(分解した)ATN-291の、顕著な時間依存的増加が認められた(図8)。これに対して、[125I]-ATN-291と結合した細胞を4℃に維持した場合には、分解は見られなかった。
【0162】
FITCコンジュゲート二次抗体(図9)またはATN-291-CypHer-5コンジュゲート(図10)のいずれかを用いて、抗体の細胞への分布の特徴を明らかにすることによって、MDA-MB-231細胞によるATN-291のインターナリゼーションを確認した。細胞を10μg/mlのATN-291とともに、4℃(パネルC)または37℃(パネルD)のいずれかで2時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、固定して、透過性とし、ヤギ抗マウスFITCコンジュゲート抗体でATN-291を検出した。対照細胞はmIgG(パネルA)、または二次抗体のみ(パネルB)とインキュベートした。細胞核をDAPIで対比染色した。ATN-291と4℃でインキュベートした細胞は、非常に拡散したパターンの蛍光を示した(図9C)。これに対して、ATN-291と37℃でインキュベートした細胞は核周囲の染色の所見が認められ、ゴルジ様コンパートメントへの抗体のインターナリゼーションと一致する(図9D)。
【0163】
CypHer 5は、新規の、赤色励起性でpH感受性のシアニン色素誘導体である。CypHer 5は、pH 7.4では非蛍光性であるが、pH 5.5では最大蛍光を発し、したがって、標識分子の、内部酸性エンドソームへのインターナリゼーションを測定するために有用な手段を提供する。ATN-291をメーカーの使用説明書にしたがってCypHer 5(Amersham Biosciences)で標識した。OD-480nmの吸光度は、平均して約1.6個のCypHer 5分子が各抗体分子にコンジュゲートしていることを示した。細胞を1μMのATN-291-CY5とともに37℃にて2時間(パネルA)または4時間(パネルB)インキュベートした。CypHer 5標識ATN-291とともにインキュベートした細胞は、時間に依存した赤色蛍光の増加を示した(図10Aおよび10B)。上記データは、ATN-291が高い親和性でレセプター結合uPAと結合したのち、MDA-MB-231細胞によってインターナライズされて、分解されることを強く示唆する。
【0164】
6.6 実施例6
ドキソルビシンコンジュゲートの合成
ヒューニッヒ塩基(Hunig's base)の存在下で、塩酸ドキソルビシン(1)を無水グルタル酸で処理して酸(2)を得、これをin situでDMF中0℃にて1時間、N-ヒドロキシスクシンイミドおよびEEDQによって、対応するN-ヒドロキシスクシニルエステル(3)に変換した(図11参照)。この溶液を、ATN-291を含むPBS(pH 8.1、3 mg/mlを2 ml)に添加し、その結果得られた赤色溶液を4℃にて19時間保存した。反応液量をPBS, pH 8.1で3 mlに調整し、コンジュゲートした抗体を遊離のドキソルビシンから、PD-10カラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。ATN-291にコンジュゲートされたドキソルビシン分子の数は、MALDI-TOFによって測定した。
【0165】
6.7 実施例7
ドキソルビシンコンジュゲートの特性決定
ATN-291-Doxコンジュゲートの抗体成分がなお機能を有し、依然として高い親和性でuPAと結合することを確認するために、ELISAアッセイを行った。図12に示すように、抗体あたり平均4分子のDoxを含有するATN-291-Doxコンジュゲートは、非コンジュゲート抗体と同様の親和性でuPAと結合した。
【0166】
ATN-291-DoxがMDA-MB-231細胞の増殖を抑制する能力をMTTアッセイで試験した。図13Aに示すように、ATN-291 (10μM)は細胞増殖に対して有意な効果を示さなかったが、10μMのATN-291-Dox、または10μMのDox単独では、MDA-MB-231細胞の増殖を顕著に抑制した。用量タイトレーションを、ATN-291-Doxコンジュゲートを用いて実施した。図10Bに示すように、このコンジュゲートは約1.6μMのIC50で増殖を抑制した。
【0167】
ATN-291-Doxコンジュゲートの特徴をさらに明らかにするために、Doxの分布を蛍光顕微鏡によってモニターした。スライドグラスチャンバーで増殖させたMDA-MB-231細胞を1.6μMのDoxまたは1.6μMのATN-291-Doxのいずれかとともに24時間、MTTアッセイに用いた同じ条件下でインキュベートした。インキュベーションの後、上清を除去し、細胞をPBSで十分に洗浄した。細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、スライドグラスに載せ、蛍光顕微鏡で観察した。図14Aに示すように、Doxは、主として、処理細胞の核に局在していた。これに対して、ATN-292-Dox処理細胞は、明確な核周囲の染色パターンを示した(図14B)。これらのデータは、ATN-291-Doxが細胞によってインターナライズされ、ゴルジ様コンパートメントを通って移動し、おそらくその後リソソームにおいて分解されることを示唆する。同様の結果が、抗CD22抗体LL2を含む、他のインターナライズされた抗体について、すでに報告されている。
【0168】
6.8 実施例8
ドキソルビシンジイミドコンジュゲートの合成
【化1】
【0169】
28μlの脱イオン水中の塩酸ドキソルビシン(0.5 mg、0.00086 mmol)を、室温にて、PBS pH8.1中のATN-291(2 ml、3 mg/ml、0.00004 mmol)に添加した。グルタルアルデヒド(0.1%水溶液、200μl、0.0002 mmol)をゆっくりと添加し、反応混合物を暗所で15分間撹拌した。PD-10カラムを用いて、コンジュゲートした抗体を未反応ドキソルビシンおよびグルタルアルデヒドから分離し、4 mlのPBS pH 8.1で溶出した。次に、コンジュゲート抗体について水によるバッファー交換を行い、負荷量をMALDI-TOFによって測定した。生成物はピンク色の溶液として得られた: MALDI-TOF m/z (M avg) 151178。
【0170】
6.9 実施例9
カンプトテシンコンジュゲートの合成
【化2】
【0171】
カンプトテシン-リンカー化合物(12 mg, 0.026 mmol)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(4.6 mg, 0.040 mmol)をDMF (2 ml)中に溶解し、氷浴中で冷却した。EEDQ (7.7 mg, 0.031 mmol)を添加し、その黄色溶液を1時間撹拌した。306μl (0.0040 mmol, 100 eq)の前記溶液をATN-291 (2 ml, PBS pH 8.1中3 mg/ml, 0.00004 mmol)に添加し、反応混合物を冷蔵庫内で21時間保存した。コンジュゲート抗体を未反応物1からPD-10カラムによって分離し、4 mlのPBS pH 8.1で溶出した。次に、コンジュゲート抗体について水によるバッファー交換を行い、負荷量をMALDI-TOFによって測定した。生成物は淡黄色溶液として得られた:MALDI-TOF m/z (M avg) 152845。
【0172】
6.10 実施例10
ドキソルビシンチオエーテルヒドラゾンコンジュゲートの合成
【化3】
【0173】
ATN-291(5 mg/ml PBS(pH 7.4)溶液2 ml、0.000067 mmol)を窒素ガスで脱気した後、脱気した34.4 mMのジチオスレイトール溶液(PBS pH 7.4中)(14μl、0.00048 mmol)を添加した。反応混合物を37℃にて3時間撹拌した。還元された抗体をPD-10カラムで精製し、4 mlのPBS pH 7.4で溶出した。チオール濃度はEllman試薬(溶液4.5 ml)によって75μMであると測定された。ドキソルビシン-ヒドラゾン化合物(0.33 mg, 0.00044 mmol)を水溶液として、0℃にて還元された抗体に添加し、反応混合物を30分間撹拌した。このコンジュゲート抗体をPD-10カラムで精製し、4 mlのPBS pH 7.4で溶出した。次に、コンジュゲート抗体について水によるバッファー交換を行い、負荷量をMALDI-TOFによって測定した。生成物はピンク色の溶液として得られた: MALDI-TOF(M avg) 151119。
【0174】
最後に、注意すべきは、本発明を実施する代替方法が存在することである。したがって、前記の実施形態は説明するものであって制限するものでないと考えるべきであり、本発明は、本明細書に記載された細部に限定されるべきでなく、添付の特許請求の範囲および均等物の範囲内で変更することができる。本明細書に引用されたすべての刊行物および特許は、その全体を参考として本明細書に含めるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】腫瘍細胞および血管新生内皮細胞による細胞外マトリックスの分解およびリモデリングを調節する際のuPARの役割を示す。
【図2】成熟ウロキナーゼの一次配列を示す。
【図3】モノクローナル抗体ATN-291およびATN-292のエピトープマッピングを示す。
【図4】ATN-291およびATN-292の、固定化ウロキナーゼへの結合を示す。
【図5】ウロキナーゼの125I標識アミノ末端断片の、HeLa細胞への結合の抑制を示す。
【図6】ATN-291およびATN-292による腫瘍増殖の抑制を示す。
【図7】レセプターと結合したウロキナーゼへの[125I]-ATN-291の結合を示す。
【図8】MDA-MB-231細胞による[125I]-ATN-291のインターナリゼーションを示す。
【図9】MDA-MB-231細胞によるATN-291のインターナリゼーションを示す。
【図10】ATN-291-CY5コンジュゲートのMDA-MB-231細胞によるインターナリゼーションを示す。
【図11】ドキソルビシンのATN-291へのコンジュゲーションを示す。
【図12】ATN-291-Doxコンジュゲートの固定化ウロキナーゼへの直接結合を示す。
【図13】ATN-291-DoxコンジュゲートがMDA-MB-231細胞の増殖を抑制することを示す。
【図14】ATN-291-DoxコンジュゲートのMDA-MB-231細胞によるインターナリゼーションを示す。
【技術分野】
【0001】
1. 分野
ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する抗体および/または抗体コンジュゲート、その組成物ならびに使用を提供する。さらに具体的には、ウロキナーゼのアミノ末端断片の、クリングル領域、成長因子ドメイン領域またはC末端領域と結合することができる抗体および/または抗体コンジュゲート、それらの組成物ならびに使用を提供する。抗体および抗体コンジュゲートは、治療薬もしくは診断薬を包含することができるが、これらを使用して、たとえば癌のような疾患を治療、予防、または検出することができる。
【背景技術】
【0002】
2. 背景
ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター系は、セリンプロテアーゼウロキナーゼ(uPA)、ウロキナーゼ細胞表面レセプター(uPAR)、およびプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)からなり、多くの固形腫瘍の血管新生、浸潤および転移に関与する因子のひとつである(Danら、Adv. Cancer Res., 1985, 44:139-266)。uPARは、腫瘍細胞および血管新生内皮細胞による細胞外マトリックスの制御された分解、および再構築に、不可欠な役割を担っている(図1)。uPA-uPAR依存性カスケードは、結果として、プロマトリックスメタロプロテイナーゼ-9の活性化、ならびにHGF、VEGFおよびTGFβなどの成長因子および血管新生因子の活性化および放出ももたらす。
【0003】
細胞は、不活性型のuPA、プロウロキナーゼ(pro-uPA)もしくは一本鎖uPA(scuPA)を411アミノ酸タンパク質として生成し、これが次にuPARと結合する。この結合事象は、細胞環境におけるscuPAの二本鎖uPA(tcuPA)への効率的な活性化のために、あらかじめ必要な条件である(Ellisら、j. Biol. Chem. 1989, 264:2185-88)。Pro-uPAは、プロ酵素を活性化するためにアミノ酸158(Lys)と159(Ile)の間での一回のタンパク質分解切断によって活性化される。切断の結果、二本鎖の活性uPA(tcuPA)が形成され、これは結果として、高次構造の変化をもたらし、また、天然および合成基質とのプラスミノーゲンアクチベーター活性の増加をもたらす。
【0004】
uPAは、N末端成長因子ドメイン、クリングルドメイン、および(3)C末端セリンプロテアーゼドメインを含んでなる3-ドメインタンパク質である。pro-uPAのレセプターであるuPARもマルチドメインタンパク質であって、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカーによって細胞膜の外葉に固定されている(Behrendtら、Biol. Chem. Hoppe-Seyler 1995, 376:269-279)。
【0005】
uPARは、通常、静止細胞では検出可能なレベルで発現されないため、uPA系の活性が生じる前に、アップレギュレートされるに違いない。uPARの発現は、in vitroではホルボールエステルのような試薬(Lundら、J. Biol. Chem. 1991, 266:5177-5181)、上皮細胞のトランスフォーメーション、ならびにさまざまな成長因子およびサイトカイン、たとえば、VEGF、bFGF、HGF、IL-1、TNFα(内皮細胞において)およびGM-CSF(マクロファージにおいて)によって促進される(Mignattiら、J. Cell Biol. 1991, 113: 1193-1201; Mandriotaら、J. Biol. Chem. 270:9709-9716; Yoshidaら、Inflammation 1996,20: 319-326)。uPARの発現は、細胞の運動性、浸潤および接着の増加という機能上の結果をもたらす(Mandriotaら、上記)。さらに重要なことには、uPARは、現在までに調べられた大部分のヒトの癌において、具体的には、腫瘍細胞それ自体において、血管新生を行う腫瘍関連内皮細胞において、ならびに、腫瘍血管新生の誘導に関与しうるマクロファージ(Pykeら、Cancer Res. 1993, 53:1911-15)において、in vivoでアップレギュレートされていると思われる(Lewisra,J. Leukoc. Biol. 1995, 57:747-751)。癌患者におけるuPAR発現は、進行した病変に存在し、多くのヒト癌において予後不良と関連づけられる(Hofmannら、Cancer 1996, 78:487-92; Heissら、Nature Med. 1995, 1:1035-39)。その上、uPARは腫瘍全体にわたって均等に発現されるのではなく、浸潤辺縁に付随する傾向があり、ヒト胃癌において転移の表現型マーカーとなると考えられる。したがって、uPARは、腫瘍細胞および血管新生内皮細胞による細胞外マトリックスの制御された分解、および再構築に、必須である(図1)。腫瘍増殖におけるuPA-uPARの重要な役割、ならびに(正常組織ではなく)腫瘍内でのその夥しい発現によって、この系は、魅力的な診断および治療ターゲットとなる。
【0006】
uPA、pro-uPA、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)またはストレプトキナーゼ(血栓塞栓症用)の治療上の使用が、癌のような病的状態を治療するために、研究されてきた。しかしながら、こうした治療薬は、一つには急速なクリアランスのために、非常に高用量を必要とする。これらのタンパク質の短い半減期について考えられる理由としては、特異的な血中インヒビターとの結合、レセプターとの結合、インヒビター結合および/またはレセプター結合PAのインターナリゼーションおよび分解がある。
【0007】
したがって、必要とされるのは、uPA-uPAR系に関わる疾病を治療および/または予防することができる新規治療薬および診断薬である。
【発明の開示】
【0008】
3. 概要
これらのおよび他の必要性は、ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する抗体および/または抗体コンジュゲート、その組成物、ならびにその使用を提供することによって満たされる。抗体および抗体コンジュゲートには治療薬もしくは診断薬を含めることができるが、これらを、たとえば、癌のような疾病を治療、予防または検出するために使用することができる。
【0009】
ある態様において、ウロキナーゼのアミノ末端断片に結合する抗体が提供される。ある実施形態において、抗体はウロキナーゼの成長因子ドメインに結合する。他の実施形態において、抗体は、ウロキナーゼのクリングルドメインに結合する。
【0010】
抗体は、好ましくは、モノクローナル抗体であって、ウロキナーゼと結合後、これを細胞内にインターナライズすることができる。ある実施形態において、抗体はタンパク質毒素と融合される。他の実施形態において、抗体は、治療薬と結合される。好ましくは、治療薬は、タキサン、カンプトテシンもしくはエポチロンといった細胞毒性抗癌剤である。ある実施形態において、治療薬はドキソルビシンである。他の実施形態において、治療薬は放射性核種である。さらに他の実施形態において、抗体は診断薬と結合されるが、この診断薬は放射性核種、陽電子放出断層撮影法による画像化を可能にする薬剤、磁気共鳴イメージング剤、蛍光剤、発蛍光団、発色団、色素原、燐光剤、化学発光剤、または生物発光剤とすることができる。
【0011】
もう一つの態様において、一般に、1つもしくは複数の抗体もしくは抗体コンジュゲート、ならびに製薬上許容される賦形剤、たとえば、希釈剤、担体、賦形剤、もしくはアジュバントを含んでなる、医薬組成物が提供される。希釈剤、担体、賦形剤およびアジュバントの選択は、他の要因もあるが、とりわけ望ましい投与方式によって決まる。
【0012】
また別の態様において、1つもしくは複数の抗体もしくは抗体コンジュゲート、および製薬上許容されるビヒクル、たとえば、希釈剤、担体、賦形剤、もしくはアジュバントを一般に含んでなる診断用組成物が提供される。希釈剤、担体、賦形剤およびアジュバントの選択は、他の要因もあるが、とりわけ望ましい投与方式によって左右される。
【0013】
さらに別の態様において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を抑制する方法が提供される。その方法は一般に、有効量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物と、細胞を接触させることを含んでなる。
【0014】
もう一つの態様において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を治療または予防する方法が提供される。その方法は一般に、そうした治療もしくは予防を必要とする患者に、治療上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を投与することを包含する。
【0015】
また別の態様において、アポトーシスを誘導する方法が提供される。その方法は一般に、有効量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物と細胞を接触させることを含んでなる。
【0016】
さらに別の態様において、アポトーシスを誘導する方法が提供される。その方法は一般に、そうした治療もしくは予防を必要とする患者に、治療上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を投与することを包含する。
【0017】
また別の態様において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生によって引き起こされる疾病を治療または予防する方法が提供される。その方法は一般に、そうした治療もしくは予防を必要とする患者に、治療上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を投与することを包含する。
【0018】
さらに別の態様において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を検知する方法が提供される。その方法は一般に、診断上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその診断用組成物と細胞を接触させることを含んでなる。
【0019】
もう一つの実施形態において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を検知する方法が提供される。その方法は一般に、そうした治療もしくは予防を必要とする患者に、診断上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその診断用組成物を投与することを包含する。
【0020】
また別の態様において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生によって引き起こされる疾病を検出する方法が提供される。その方法は一般に、そうした治療もしくは予防を必要とする患者に、診断上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその診断用組成物を投与することを包含する。
【0021】
さらに別の態様において、ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する抗体および/または抗体コンジュゲートが細胞内にインターナライズされるかどうかを検出する方法が提供される。ある実施形態において、細胞を、抗体および/または抗体コンジュゲートと接触させた後、洗浄、固定して細胞を透過性とする。次に、診断用に標識された二次抗体を添加し、診断用標識を検出する。別の実施形態においては、抗体および/または抗体コンジュゲートを診断用に標識する。細胞を、診断用に標識した抗体および/または抗体コンジュゲートと接触させて、診断用標識を検出する。
【0022】
4. 図面の簡単な説明
(本明細書の最後に記載する。)
5. 詳細な説明
5.1 定義
「アルキル」は単独で、または別の置換基の一部として、飽和もしくは不飽和で、分枝、直鎖、もしくは環状の一価炭化水素基を指し、こうした基は、親アルカン、アルケンまたはアルキンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる。典型的なアルキル基には、メチル;エチル類、たとえばエタニル、エテニル、エチニル;プロピル類、たとえばプロパン-1-イル、プロパン-2-イル、シクロプロパン-1-イル、プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル(アリル)、シクロプロパ-1-エン-1-イル、シクロプロパ-2-エン-1-イル、プロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イルなど;ブチル類、たとえば、ブタン-1-イル、ブタン-2-イル、2-メチル-プロパン-1-イル、2-メチル-プロパン-2-イル、シクロブタン-1-イル、ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブタ-1-エン-1-イル、シクロブタ-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-3-イン-1-イルなど;および同種のもがあるがそれらに限定されない。
【0023】
「アルキル」という用語は、具体的には、さまざまな飽和度を有する基、すなわち、炭素-炭素単結合のみを有する基、1つもしくは複数の炭素-炭素二重結合を有する基、1つもしくは複数の炭素-炭素三重結合を有する基、ならびに炭素-炭素一重、二重、および三重結合を混合して有する基を包含するものとする。特定の飽和度を意図する場合、「アルカニル」、「アルケニル」、および「アルキニル」という表現を使用する。好ましくは、アルキル基は、1から20個までの炭素原子、より好ましくは1から10個までの炭素原子、もっとも好ましくは1から6個までの炭素原子を含んでなる。
【0024】
「アルカニル」は、単独で、または別の置換基の一部として、飽和した、分枝、直鎖、もしくは環状のアルキル基を指し、この基は、親アルカンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる。典型的なアルカニル基には、メタニル;エタニル;プロパニル類、たとえばプロパン-1-イル、プロパン-2-イル(イソプロピル)、シクロプロパン-1-イルなど;ブタニル類、たとえばブタン-1-イル、ブタン-2-イル(sec-ブチル)、2-メチル-プロパン-1-イル(イソブチル)、2-メチル-プロパン-2-イル(t-ブチル)、シクロブタン-1-イルなど;および同種のものが含まれるがそれらに限定されない。
【0025】
「アルケニル」は、単独で、または別の置換基の一部として、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、不飽和の、分枝、直鎖、もしくは環状アルキル基を指し、これは、親アルケンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる。こうした基は、二重結合についてシスもしくはトランス立体配座のいずれかをとることができる。典型的なアルケニル基には、エテニル;プロペニル類、たとえばプロパ1-エン-1-イル、プロパ1-エン-2-イル、プロパ2-エン-1-イル(アリル)、プロパ2-エン-2-イル、シクロプロパ1-エン-1-イル、シクロプロパ2-エン-1-イル;ブテニル類、たとえば、ブト-1-エン-1-イル、ブト-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ1-エン-1-イル、ブト-2-エン-1-イル、ブト-2-エン-1-イル、ブト-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イルなど;および同種のものがあるが、それらに限定されない。
【0026】
「アルキニル」は、単独で、または別の置換基の一部として、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する、不飽和の、分枝、直鎖、もしくは環状アルキル基を指し、これは、親アルキンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる。典型的なアルキニル基には、エチニル;プロピニル類、たとえば、プロパ1-イン-1-イル、プロパ2-イン-1-イルなど;ブチニル類、たとえば、ブト-1-イン-1-イル、ブト-1-イン-3-イル、ブト-3-イン-1-イルなど;および同種のもがあるがそれらに限定されない。
【0027】
「アリール」は、単独で、または別の置換基の一部として、親芳香環系の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる、一価芳香族炭化水素基を指す。典型的なアリール基は、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどから誘導される基を包含するがそれに限定されない。好ましくは、アリール基は、6から20個までの炭素原子、より好ましくは6から12個までの炭素原子を含んでなる。
【0028】
「アリールアルキル」は、単独で、または別の置換基の一部として、炭素原子、典型的には末端炭素原子もしくはsp3炭素原子、に結合した水素原子のうち1つがアリール基で置換された、非環式アルキル基を指す。典型的なアリールアルキル基には、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イルなどがあるがそれらに限定されない。具体的なアルキル部分が意図される場合には、アリールアルカニル、アリールアルケニル、および/またはアリールアルキニルという術語を使用する。好ましくは、アリールアルキル基は(C7-C30)アリールアルキルであって、たとえば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルもしくはアルキニル部分は(C1-C10)であり、アリール部分は(C6-C20)であるが、より好ましくは、アリールアルキル基は(C7-C20)アリールアルキルであって、たとえば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルもしくはアルキニル部分は(C1-C8)であり、アリール部分は(C6-C12)である。
【0029】
「ヘテロアルキル、ヘテロアルカニル、ヘテロアルケニル、およびヘテロアルキニル」は、単独で、または別の置換基の一部として、1つもしくは複数の炭素原子(および付随する水素原子)が互いに無関係に、同一もしくは異なるヘテロ原子団で置換された、それぞれ、アルキル、アルカニル、アルケニル、およびアルキニル基を指す。上記の基に含まれる典型的なヘテロ原子団には、-O-、-S-、-O-O-、-S-S-、-O-S-、-NR37R38-、=N-N=、-N=N-、-N=N-NR39R40、-PR41-、-P(O)2-、-POR42-、-O-P(O)2-、-SO-、-SO2-、-SnR43R44-などがあるがそれに限定されることはなく、前記においてR37、R38、R39、R40、R41、R42、R43およびR44は、互いに無関係に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたは置換ヘテロアリールアルキルである。
【0030】
「ヘテロアリール」は、単独で、または別の置換基の一部として、親ヘテロ芳香環系の1つの原子から1つの水素原子を除去することによって得られる、一価ヘテロ芳香族基を指す。典型的なヘテロアリール基には、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどから誘導された基があるがそれに限定されない。好ましくは、ヘテロアリール基は骨格原子数5〜20のヘテロアリール、さらに好ましくは骨格原子数5〜10のヘテロアリールである。好ましいヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾールおよびピラジンから導かれる基である。
【0031】
「ヘテロアリールアルキル」は、単独で、または別の置換基の一部として、炭素原子、典型的には末端炭素原子もしくはsp3炭素原子、に結合した水素原子のうち1つがヘテロアリール基で置換された、非環式アルキル基を指す。具体的なアルキル部分が意図される場合には、ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニル、および/またはヘテロアリールアルキニルという術語を使用する。好ましい実施形態において、ヘテロアリールアルキル基は、6〜30員のヘテロアリールアルキルであって、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニルもしくはアルキニル部分は1〜10の骨格原子からなり、ヘテロアリール部分は、骨格原子数5〜20のヘテロアリールであり、さらに好ましくは骨格原子数6〜20のヘテロアリールであって、たとえば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分は、1〜8の骨格原子からなり、ヘテロアリール部分は骨格原子数5〜12のヘテロアリールである。
【0032】
「親芳香環系」は、共役π電子系を有する不飽和単環系もしくは多環系を指す。具体的に「親芳香環系」の定義に含まれるのは、環の1つもしくは複数が芳香族であり、環のうち1つもしくは複数が、飽和もしくは不飽和である、縮合環系であって、たとえばフルオレン、インダン、インデン、フェナレンなどである。典型的な親芳香環系には、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどが含まれるがそれらに限定されない。
【0033】
「親ヘテロ芳香環系」は、1つもしくは複数の炭素原子(および付随する水素原子)が互いに無関係に、同一もしくは異なるヘテロ原子で置換された、親芳香環系を指す。炭素原子を置き換える典型的なヘテロ原子には、N、P、O、S、Siなどがあるがそれに限定されない。具体的に「親ヘテロ芳香環系」の定義に含まれるのは、環の1つもしくは複数が芳香族であり、環のうち1つもしくは複数が、飽和もしくは不飽和である縮合環系であって、たとえば、アルシンドール、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどである。典型的な親ヘテロ芳香環系には、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0034】
「診断上有効な量」は、ある疾患を検知するために投与したとき、その疾患を検知するのに十分な抗体の量を指す。「診断上有効な量」は、化合物、疾病およびその重症度、ならびに処置を受ける患者の年齢、体重などに応じてさまざまである。
【0035】
「有効な量」は、たとえばある特定の性質もしくは状態を検出、誘導または抑制するために投与したとき、その性質もしくは状態を検出、誘導または抑制するのに十分な抗体の量を指す。「有効な量」は、抗体および特定の性質もしくは状態に応じて変動するであろう。
【0036】
「患者」はヒトを包含する。「ヒト」および「患者」という用語は、本明細書では同義的に用いられる。
【0037】
「製薬上許容される塩」は、製薬上許容され、親化合物の望ましい薬理活性を保持する、抗体の塩を指す。こうした塩には、(1)酸付加塩であって、無機酸、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などによって形成される塩;もしくは有機酸、たとえば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などによって形成される塩;または(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、たとえば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、もしくはアルミニウムイオンによって置換されるとき、または有機塩基、たとえばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどに配位するときに形成される塩がある。
【0038】
「製薬上許容されるビヒクル」は、抗体および/または抗体コンジュゲートとともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤もしくは担体を指す。
【0039】
「予防すること」または「予防」は、疾病もしくは障害を獲得する(すなわち、疾病の臨床症状の少なくとも1つを引き起こす)リスクを減じることを意味し、疾病に曝され、または罹りやすい可能性はあるが、まだその疾病の症状を経験せず、または症状を示さない患者において、罹患しないようにする。
【0040】
疾病もしくは障害を「治療すること」もしくはその「治療」は、ある実施形態において、疾病もしくは障害を改善すること(すなわち、病気、または病気の臨床症状の少なくとも1つの進行を停止、または軽減すること)を指す。別の実施形態において、「治療すること」もしくは「治療」は、少なくとも1つの物理的パラメーターを改善することであって、それは患者にとって認識できないかもしれない。さらに別の実施形態では、「治療すること」もしくは「治療」は、疾病もしくは障害を抑制することであって、身体的に(認識可能な症状の安定化)、生理学的に(たとえば物理的パラメーターの安定化)、またはその両者で抑制される。また別の実施形態において、「治療すること」もしくは「治療」は、疾病もしくは障害の発症を遅らせることである。
【0041】
「治療上有効な量」は、疾病を治療するために患者に投与したとき、前記のような疾病の治療を達成するのに十分な抗体および/または抗体コンジュゲートの量を意味する。「治療上有効な量」は、化合物、疾病およびその重篤度、治療を受ける患者の年齢、体重などに応じてさまざまとなる。
【0042】
ここで、本発明の実施形態について詳細に言及することとする。本発明はこれらの実施形態と関連して説明されるが、当然のことながら、そうした実施形態に本発明を限定するつもりはない。その反対に、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の精神および範囲に包含することができる、代替物、変更、および均等物を本発明の対象とするものである。
【0043】
5.2 抗体
ウロキナーゼのアミノ末端断片に結合する抗体および/または抗体コンジュゲート。抗体および/または抗体コンジュゲートは、ウロキナーゼのアミノ末端断片の、クリングル領域、成長因子ドメイン領域、もしくはC末端領域、またはこれらの組み合わせと結合することができる。抗体および/または抗体コンジュゲートは、治療薬または診断薬を包含することができ、たとえば癌のような疾病を治療、予防、または検出するために使用することができる。
【0044】
抗体は、いかなるクラス(たとえば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEなど)、またはいかなるアイソタイプの免疫グロブリンでもよい。ある実施形態において、抗体はIgG1抗体である。他の実施形態において、抗体はκアイソタイプのIgG1抗体である。さらに他の実施形態において、抗体は、ポリクローナルであり、好ましくはヒトまたは適当な動物からアフィニティ精製される。また別の実施形態において、抗体はモノクローナルである。さらに他の実施形態において、抗体はモノクローナルIgG1抗体である。他の実施形態において、抗体は、κアイソタイプのモノクローナルIgG1抗体である。ウロキナーゼのアミノ末端断片に対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体は、当業者に知られている従来の方法によって調製することができる。
【0045】
抗体の機能的に活性なフラグメントを使用することも検討される。抗体の機能的に活性なフラグメントは、当業者に知られているいかなる方法によっても測定されるように、抗原と免疫特異的に結合する能力を保持している。機能的に活性なフラグメントの例には、当業者に知られている方法によって容易に調製することができるFab、F(ab)2、Fab'、F(ab')2およびFv断片といったフラグメントがあるがそれらに限定されない。
【0046】
一本鎖抗体を使用してもよく、当技術分野で知られている方法によって調製することができる(Ladnerら、米国特許第4,946,778号;Bird, Science 1988, 242, 423-426; Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. 1988, 85, 5879-5883; Wardら、Nature 1988, 334, 544-546)。重鎖および軽鎖ダイマーならびに二重特異性抗体(diabody)の使用も検討される。
【0047】
キメラ抗体(すなわち、この場合、抗体分子の別々の部分が異なる種に由来する)、たとえば、マウス抗体に由来する可変領域、およびヒト免疫グロブリンに由来する定常領域を有する抗体(すなわち、ヒト化抗体)を使用してもよい。キメラ抗体およびヒト化抗体を調製する方法は当技術分野で知られている(Neubergerら、国際特許出願番号PCT/GB85/00392)。
【0048】
抗体および/または抗体コンジュゲートは一般に、ウロキナーゼのアミノ末端断片に結合する(成熟ウロキナーゼの配列については配列番号1を参照されたい)。ある実施形態において、ウロキナーゼのアミノ末端断片は、配列番号1のアミノ酸1-143を含んでなる。成長因子ドメイン、クリングルドメイン、およびC末端ドメインといった、アミノ末端断片のさまざまな部分に特異的に結合する抗体は、やはり本発明の範囲に含まれる。ある実施形態において、成長因子ドメインは配列番号1のアミノ酸1-48を含んでなる。他の実施形態において、クリングルドメインは配列番号1のアミノ酸49-135を含んでなる。さらに他の実施形態において、C末端ドメインは配列番号1のアミノ酸136-143を含んでなる。
【0049】
5.3 抗体コンジュゲート
抗体修飾によって、ウロキナーゼのアミノ末端断片への免疫特異的な結合が妨げられたり阻害されたりしない限りは、どのようなタイプの分子でもそれを共有結合することによって抗体を修飾することができる。たとえば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、タンパク質分解切断、細胞リガンドもしくはタンパク質との結合などによって抗体を修飾することができる。ある実施形態において、抗体は、直接、または連結成分を介して、治療薬もしくは診断薬と結合される。
【0050】
ある実施形態において、まず診断薬もしくは治療薬に連結成分を付けて、連結成分中間体を形成し、次に、その中間体をさらに抗体に結合させる。他の実施形態においては、連結成分を、最初に抗体に結合させて連結成分抗体中間体を形成し、その後、その中間体を診断薬もしくは治療薬につなげることができる。
【0051】
典型的には、連結成分には、治療薬もしくは診断薬を抗体にコンジュゲートするリンカーおよび連結基が含まれる。リンカーは親水性または疎水性とすることができ、長くても短くてもよく、リジッド(固定)またはフレキシブル(可動性)とすることができるが、リンカーの種類は個別の用途、および望ましいコンジュゲーションの種類によって決まる。リンカーは、選択肢として、1つもしくは複数の連結基(同一でも異なっていてもよい)で置換されていてもよく、それによって、複数の治療薬もしくは診断薬を抗体にコンジュゲートすることができる多価連結成分が与えられる。
【0052】
連結基を抗体から隔てるのに適した安定な結合を含む、さまざまなリンカーが当技術分野において知られており、限定ではなく例証として、アルキル、ヘテロアルキル、非環式ヘテロ原子架橋、アリール、アリール-アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール-ヘテロアリール、置換ヘテロアリール-ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリール-ヘテロアルキルなど、およびそれらの置換類似体が挙げられる。このように、リンカーは、炭素-炭素単結合、二重結合、三重結合、もしくは芳香族性結合、窒素-窒素結合、炭素-窒素結合、炭素-酸素結合、および/または炭素-硫黄結合を包含することができる。したがって、カルボニル類、エーテル類、チオエーテル類、カルボキサミド類、スルホンアミド類、尿素類、ウレタン類、ヒドラジン類などといった官能基をリンカーに含めることができる。
【0053】
適当なリンカーを選択することは、当業者の能力の範囲内である。たとえば、リジッドなリンカーが望ましい場合には、リンカーは、リジッドな多価不飽和アルキル、またはアリール、ビアリール、ヘテロアリールなどとすることができる。フレキシブルリンカーが求められる場合には、リンカーは、Gly-Gly-Glyといったフレキシブルペプチド、またはフレキシブルな飽和アルカニルもしくはヘテロアルカニルとすることができる。親水性リンカーは、たとえば、ポリアルキレングリコール類のようなポリアルコール類もしくはポリエーテル類とすることができる。疎水性リンカーは、たとえば、アルキル類もしくはアリール類とすることができる。
【0054】
好ましくは、連結基は、たとえば抗体にコンジュゲートした治療薬もしくは診断薬を与えるために抗体の補足的な反応性官能価との、共有結合の形成を仲介することができる。したがって、連結基は、抗体において認められる一般的な化学基と反応する、当業者に公知のいかなる反応性官能基であってもよい(たとえば、アミノ、スルフヒドリル、ヒドロキシ、カルボキシル、イミダゾリル、グアニジウム、アミドなど)。連結基はたとえば、光化学的に活性化される基、電気化学的に活性化される基、フリーラジカルドナー、フリーラジカルアクセプター、求核基もしくは求電子基とすることができる。しかしながら、当業者は、ある反応条件下では通常非反応性である様々な官能基が、活性化されて反応性となりうることを認識することができる。反応性となるように活性化することができる基は、たとえば、アルコール類、カルボン酸類およびエステル類を包含し、その塩を含める。
【0055】
連結基は、たとえば、-NHR1、-NH2、-OH、-SH、ハロゲン、-CHO、-R1CO、-SO2H、-PO2H、-N3、-CN、-CO2H、-SO3H、-PO3H、-PO2(ORl)H、-CO2R1、-SO3R1または-PO(OR1)2とすることができるが、この場合、R1はアルキルである。好ましくは、連結基は、-NHR1、-NH2、-OH、-SH、-CHO、-CO2H、R1CO-、ハロゲン、および-CO2R1である。
【0056】
リンカーおよび連結基に関する、ある実施形態は、たとえば、リンカーが-(CH2)n-であり、nは1から8までの整数であって、連結基が、-NH2、-OH、-CO2H、および-CO2R1である化合物、ならびに適当な水素のいずれか1つが置換された、対応する類似体を包含する。連結成分の他の実施形態は、任意のアミノ酸を包含し、これはたとえば、DまたはLアミノ酸とすることができる。したがって、連結成分は、アミノ酸の任意の組み合わせからなるジペプチド、トリペプチド、またはテトラペプチドとすることができる。これらのペプチドにおけるペプチド結合の極性はC-NまたはN-Cのいずれかでありうる。
【0057】
治療薬および診断薬を、当業者に知られているさまざまな従来の反応を用いて、抗体に直接、結合することができる(Garnett, Adv. Drug Delivefy Rev. 2001,53, 171-216 ; Meyerら、Annual Reports in Medicinal Chemistry 2003, 38, 229-237, Trailら、Cancer immunol. Immunother. 2003, 52, 328-337)。たとえば、縮合反応(たとえば、カルボジイミド、カルボニルジイミダゾールなど)を用いて、治療薬もしくは診断薬のアミノ基と、グルタミン酸およびアスパラギン酸といった残基のカルボン酸基との間にアミド結合を形成することができる。あるいはまた、抗体の糖鎖残基を、シッフ塩基形成によって治療薬もしくは診断薬に直接、結合してもよく(たとえば、Sivanら、米国特許第5,521,290号; Shihら、米国特許第5,057,313号)、その後in situで還元する。
【0058】
同様の方法を用いて、リンカーおよび連結基を有する治療薬および診断薬を抗体に結合することができる。たとえば、リンカーおよび連結基を有する診断薬および治療薬を、リシンのアミノ基、グルタミン酸およびアスパラギン酸のカルボン酸基、システインのスルフヒドリル基、トレオニンおよびセリンのヒドロキシル基、ならびに芳香族アミノ酸のさまざまな部分に、当業者に知られている従来の方法によって、結合することができる。一般に、直接的に、またはリンカーおよび連結基を介して、診断薬もしくは治療薬を抗体に結合するのに適した方法の選択は、十分に当業者が行うことのできる範囲内である。
【0059】
抗体および抗体フラグメントに結合することができる治療薬には、放射性核種、タンパク質毒素(たとえば、リシン、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素、サポリン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、bouganinなど)、細胞毒性抗癌剤、カンプトテシン類(たとえば、9-ニトロカンプトテシン(9NC)、9-アミノカンプトテシン(9AC)、10-アミノカンプトテシン、9-クロロカンプトテシン、10,11-メチレンジオキシカンプトテシン、イリノテカン、芳香族カンプトテシンエステル類、アルキルカンプトテシンエステル類、トポテカン、(lS,9S)-l-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン メタンスルホネート二水和物(DX-8951f)、7-[(2-トリメチル-シリル)エチル]-20(S)カンプトテシン(BNP1350)、ルビテカン(Rubitecan)、エキサテカン(Exatecan)、ルートテカン(Lurtotecan)、ジフロモテカン(Diflomotecan)および他のホモカンプトテシン類など)、タキサン類(たとえばタキソール)、エポシロン類、カリケアマイシン類、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア類、シスプラチン、マイトマイシン類、マイタンシン類、カルボプラチン、ダカルバジン、プロカルバジン、エトポシド類、テノポシド、ブレオマイシン、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン、ダウノマイシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、サイトカラシン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、グラミシジンD、グルココルチコイド類、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、マスタード毒素類、アンスラマイシン、パクリタキセル、アルキル化剤(たとえば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メ
ルファラン、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾシンなど)、その相同体および類似体があるが、それらに限定されない。好ましくは、治療薬は、たとえば、タキサン、カンプトテシン、エポシロン、またはアンスラサイクリンといった細胞毒性抗癌剤である。ある実施形態において、治療薬はドキソルビシンである。他の実施形態において、治療薬は、放射性核種である。さらに他の実施形態において、治療薬はカンプトテシンである。
【0060】
「診断用に標識された」という用語は、抗体が診断上検出可能な標識を結合していることを意味する。当技術分野には、多くのさまざまな標識があり、標識化の方法は当業者によく知られている。本発明において使用できる標識の一般的な分類としては、放射性同位体、常磁性同位体、陽電子放出断層撮影法(PET)によって画像化することができる化合物、蛍光もしくは有色化合物、磁気共鳴によって画像化可能な化合物、化学発光化合物、生物発光化合物などがあるが、それらに限定されない。適当な検出可能な標識には、放射性標識、蛍光標識、蛍光発生標識または発色標識が挙げられるが、それらに限定されない。有用な放射性標識(放射性核種)は、ガンマカウンター、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーで簡単に検出され、3H、125I、131I、35S、および14Cを包含するがこれらに限定されない。
【0061】
抗体のような大きな分子に金属を結合するための方法および組成物は当技術分野でよく知られている。金属は、放射性核種のような検出可能な金属原子を包含するが、これを従来法によって抗体および抗体コンジュゲートに結合することができる(たとえば、米国特許第5,627,286号、第5,618,513号、第5,567,408号、第5,443,816号および第5,561,220号を参照されたい)。
【0062】
よく用いられる蛍光標識としては、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒドおよびフルオレスカミンがあるが、それらに限定されない(Haugland, Handbook of fluorescent Probes and Research Chemicals, Sixth Ed., Molecular Probes, Eugene, OR, 1996)。これらを用いて抗体および/または抗体コンジュゲートを標識することができる。フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、およびフルオレセイン様分子、たとえば、Oregon GreenTMならびにその誘導体、Rhodamine GreenTMおよびRhodal GreenTMを、たとえばイソチオシアネート、スクシンイミジルエステルもしくはジクロロトリアジニル-反応性基を用いて、アミノ基に結合することができる。同様に、フルオロフォアも、マレイミド、ヨードアセトアミド、およびアジリジン-反応性基を用いてチオール基に結合することができる。ある実施形態において、フルオロフォアは、窒素原子に置換基を有するRhodamine GreenTM誘導体のような長波長ローダミンである。このグループには、テトラメチルローダミン、X-ローダミンおよびTexas RedTM誘導体を含める。他の実施形態において、フルオロフォアは、紫外線によって励起される物質である。例としては、カスケードブルー(cascade blue)、クマリン誘導体、ナフタレン類(塩化ダンシルはこれに属する)、ピレン類およびピリジルオキサゾール誘導体があるが、それらに限定されない。
【0063】
半導体ナノ結晶(Bruchezら、1998, Science 281 : 2013-2016)、および量子ドット、たとえば、硫化亜鉛でキャッピングされたセレン化カドミウム(Chanら、Science 1998,281 :2016-2018)といった無機物も、診断用標識として使用することができる。
【0064】
抗体および/または抗体コンジュゲートはまた、152Euまたはランタニド系列の他の元素のような蛍光発光金属で標識することもできる。こうした金属は、抗体および/または抗体コンジュゲートに、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのようなアシルキレート基を介して結合させることができる。
【0065】
放射性核種は、in vivo診断のために、直接、またはDTPAおよびEDTAのようなアシルキレート基を用いて間接的に、抗体および/または抗体コンジュゲートに結合させることができる。キレート化の化学は、当技術分野でよく知られており、抗体に対するさまざまなキレート剤を用いて、標識抗体を得ることができる。当然、標識された抗体は、ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する活性を保持していなければならない。
【0066】
診断上または治療上の有用性を有するいかなる放射性核種も、本発明における放射性標識として使用することができる。ある実施形態において、放射性核種は、γ線放射性核種もしくはβ線放射性核種、たとえば、ランタニドもしくはアクチニド系列の元素から選択される核種である。陽電子放射性核種、たとえば、68Gaまたは64Cuを使用することもできる。適当なγ線放射性核種には、診断画像化の用途に有用な核種が含まれる。γ線放射性核種は、好ましくは1時間から40日の半減期を有するが、好ましくは12時間から3日までである。適当なγ線放射性核種の例としては、67Ga、111In、99mTc、169Yb、および186Reが挙げられる。ある実施形態において、放射性核種は99mTcである。有用な放射性核種の例としては、(原子番号順に)67Cu、67Ga、68Ga、72As、89Zr、90Y、97Ru、99Tc、111In、123I、125I、131I、169Yb、186Re、および201Tlがある。標識としての陽電子放射性金属についての研究は限られているが、トランスフェリンおよびヒト血清アルブミンのようなある種のタンパク質は68Gaで標識されている。
【0067】
磁気共鳴イメージングに有用な金属(放射性同位体でない)には、ガドリニウム、マンガン、銅、鉄、金およびユーロピウムがある。ある実施形態において、金属はガドリニウムである。一般に、診断用途において検出可能であるために必要とされる標識抗体の量は、患者の年齢、状態、性別および病気の程度、禁忌(もしあれば)、ならびに他の可変要因に応じてさまざまに変化すると考えられ、個別の主治医または診断医によって調整されるべきである。投薬量は0.01 mg/kgから100 mg/kgまで、さまざまとすることができる。
【0068】
抗体および/または抗体コンジュゲートは、当業者に周知のように、燐光または化学発光化合物と結合させることによっても検出することができる。化学発光化合物には、ルミノール、イソルミノール、theromaticアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルが含まれるが、それらに限定されない。同様に、生物発光化合物を使用して抗体および/または抗体コンジュゲートを検出してもよく、これにはルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンが含まれるが、それらに限定されない。
【0069】
比色検出を用いて、吸光係数の高い発色団を有する、または結果としてそうなる発色化合物に基づいて、抗体を検出することができる。
【0070】
タンパク質毒素と遺伝的に融合された抗体の使用が、本明細書において検討される(Frankelら、Sem. Oncol. 2003, 30, 545-557; Kreitman, Curr. Opin. Molec. Therapeutics 2003, 5, 44-51; Kreitman, Curr. Opin. Invest. Drugs 2001, 2, 1282-1293)。タンパク質毒素には、リシン、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素、サポリン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ブーガニン(bouganin)、それらの類似体および相同体が含まれるが、それらに限定されない。好ましいタンパク質毒素はシュードモナス外毒素およびジフテリア毒素である。タンパク質毒素に融合させた抗体は、下記のセクション5.5に記載の組換えDNA法によって作製することができる(たとえば、Brinkmanら、Proc. Natl. Acad. Sci. 1991, 88, 8616-8620; Haggertyら、Toxicol. Pathol. 1999, 87-94; Damisら、J. Pharm. Pharmacol. 2000, 52, 671-678を参照されたい)。
【0071】
5.4 アッセイ
当業者には当然のことながら、本明細書に記載の抗体および抗体コンジュゲートの活性を測定するのに有用なin vitroおよびin vivoアッセイは、包括的というよりはむしろ例証的なものである。
【0072】
5.4.1 内皮細胞遊走についてのアッセイ
内皮細胞(EC)遊走のために、トランスウェル当たり200μlのI型コラーゲン溶液(50μg/ml)を添加した後37℃にて一晩インキュベートすることによって、トランスウェルをI型コラーゲンでコートする。このトランスウェルを24ウェルプレートに取り付け、化学誘引物質(たとえばFGF-2)を総量0.8mlとして下部チャンバーに加える。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)のようなECは、トリプシンによって単層培養から剥離しておき、最終濃度約106細胞/mlとなるように無血清培地で希釈して、この細胞懸濁液の0.2mlを各トランスウェルの上部チャンバーに加える。被験インヒビターを上部および下部チャンバーの両方に加え、37℃にて加湿環境において5時間、遊走を進行させる。トランスウェルをプレートから外し、DiffQuik(登録商標)を用いて染色する。遊走しなかった細胞を綿棒で掻き取って上部チャンバーから除去し、膜を取り外してスライドガラス上に載せ、高倍率視野(400x)でカウントし、遊走した細胞数を測定する。
【0073】
5.4.2 抗浸潤活性の生物学的アッセイ
マトリゲル(Matrigel(登録商標))浸潤アッセイ系として知られるアッセイにおいて、ECもしくは腫瘍細胞(たとえば、PC-3ヒト前立腺癌細胞)といった細胞が再構成基底膜(マトリゲル)を貫通して浸潤することができることは、当技術分野で詳細に記載されている(Kleinmanら、Biochemistry 1986, 25: 312-318 ; Parishら、1992, Int. J. Cancer 52: 378-383)。マトリゲルは以下の物質を含有する再構成基底膜である:IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、たとえばパールカン(bFGFと結合し、それを局在化させる)、ビトロネクチンおよびトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ならびにプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1型(PAI-1)として知られるセルピン(Chambersら、Canc. Res. 1995, 55: 1578-1585)。細胞外レセプターもしくは酵素を標的とする抗体および/または抗体コンジュゲートについて上記アッセイで得られた結果が、in vivoでの前記抗体および/または抗体コンジュゲートの有効性を予測するものであることは、当技術分野において認められている(Rabbaniら、Int. J. Cancer 1995, 63: 840-845)。
【0074】
上記アッセイは、トランスウェル組織培養インサートを使用する。浸潤細胞は、マトリゲルおよびポリカーボネート膜の上面を貫通して横切り、この膜の下側に付着することができる細胞として定義される。ポリカーボネート膜(孔径8.0μm)を有するトランスウェル(Costar)を、あらかじめ滅菌PBSで希釈して最終濃度75μg/mlとしたマトリゲル(Collaborative Research)でコートし(インサート当たり希釈マトリゲル60μl)、24ウェルプレートのウェル内においた。生物安全キャビネット内で、膜を乾燥した後、抗体含有DMEM 100μlの添加によって、振盪台上で1時間、再水和する。DMEMを各インサートから吸引によって除去し、0.8mlのDMEM/10%FBS/抗体を24ウェルプレートの各ウェルに添加して、それがトランスウェルの外側を包むようにする(「下部チャンバー」)。新しいDMEM/抗体(100μl)、ヒトGlu-プラスミノーゲン(5μl/ml)、および被験インヒビターを上部の、トランスウェルの内側に加える(「上部チャンバー」)。試験すべき細胞をトリプシン処理し、DMEM/抗体中に再懸濁した後、800,000細胞/mlの最終濃度でトランスウェルの上部チャンバーに加える。上部チャンバーの最終容量は200μlに調整する。つぎに、組み立てたプレートを5% CO2湿潤雰囲気中で72時間インキュベートする。インキュベーション後、細胞を固定し、DiffQuik(登録商標)を用いて染色し(ギムザ染色)、次に上部チャンバーを綿棒でこすってマトリゲルおよび膜を貫通して浸潤しなかった細胞を除去する。X-acto(登録商標)ブレードを用いて膜をトランスウェルから切り取り、Permount(登録商標)およびカバーガラスを用いてスライドガラス上に載せた後、高倍率視野(400x)でカウントする。カウントした5〜10視野から、浸潤した細胞の平均を求め、インヒビター濃度の関数としてプロットする。
【0075】
5.4.3 抗血管新生作用の管腔形成アッセイ
調製または購入することができる、内皮細胞、たとえば、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)またはヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)を2 x 105細胞/mlとして、フィブリノーゲン(リン酸緩衝食塩水(PBS)中5mg/ml)と1:1(v/v)の割合で混合する。トロンビンを添加し(終濃度5ユニット/ml)、その混合物をただちに24ウェルプレートに移す(ウェル当たり0.5 ml)。フィブリンゲルを形成させたのち、VEGFおよびbFGFを被験化合物とともにウェルに加える(それぞれ終濃度は5 ng/ml)。細胞を37℃にて5% CO2中で4日間インキュベートするが、その時点で各ウェル中の細胞を計数し、円形、枝分かれなく伸長、分枝1つを有して伸長、または2つ以上の分枝を有して伸長、のいずれかとして分類する。結果は、それぞれの濃度の化合物について5個の異なるウェルの平均として示される。典型的には、血管新生インヒビターの存在下では、細胞は円形のままであるか、未分化の管腔(たとえば、0または1分枝)を形成するかのいずれかである。このアッセイは、当技術分野において、in vivoでの血管新生(または抗血管新生)効果を予測するものとして認められている(Minら、Cancer Res. 1996, 56: 2428-2433)。
【0076】
もう一つのアッセイにおいて、内皮細胞をマトリゲル上で培養したとき、内皮細胞管腔形成が認められる(Schnaperら、J. Cell. Physiol. 1995, 165: 107-118)。内皮細胞(1 x 104細胞/ウェル)をマトリゲルコートの24ウェルプレート上に移し、48時間後に管腔形成を定量化する。内皮細胞と同時に、またはその後さまざまな時点でインヒビターを添加することによって、インヒビターを試験する。(a)bFGFもしくはVEGFといった血管新生増殖因子、(b)分化促進剤(たとえば、PMA)、または(c)これらを組み合わせたもの、を添加することによって管腔形成を刺激することもできる。
【0077】
理論に縛られたくはないが、このアッセイは、内皮細胞に、特殊なタイプの基底膜(すなわち、遊走して分化する内皮細胞が最初に遭遇すると予想されるマトリックスの層)を与えることによって、血管新生をモデル化するものである。結合された増殖因子に加えて、マトリゲル中(およびin situで基底膜中)に存在するマトリックス成分またはそのタンパク質分解産物も、内皮細胞管腔形成に対して刺激性であると考えられ、このような管腔形成によって、このモデルは、既述されたフィブリンゲル血管新生モデルを補完するものとなる(Bloodら、Biochim. Biophys. Acta 1990, 1032: 89-118; Odedraら、Pharmac. Ther. 1991, 49: 111-124)。
【0078】
5.4.4 増殖阻害アッセイ
抗体および/または抗体コンジュゲートがECの増殖を阻害する能力を、96ウェルフォーマットで測定することができる。I型コラーゲン(ゼラチン)を用いて、プレートのウェルをコートする(0.1〜1mg/ml PBS、ウェル当たり0.1 ml、室温30分)。プレートを洗浄(3x w/PBS)した後、ウェル当たり3〜6,000個の細胞を播き、内皮細胞増殖培地(EGM; Clonetics)または0.1〜2% FBS含有M199培地中で4時間付着させる(37℃/5% CO2)。培地および付着しない細胞を4時間終了した時点で除去し、bFGF(1〜10 ng/ml)またはVEGF(1〜10 ng/ml)を含有する新培地を各ウェルに添加する。被験抗体および/または抗体コンジュゲートを最後に加え、プレートを24〜48時間インキュベートする(37℃/5% CO2)。MTS(Promega)を各ウェルに加え、1〜4時間インキュベートする。490nmの吸光度は細胞数と比例するので、それを測定して、対照ウェルと被験抗体および/または抗体コンジュゲートを含むウェルとの間で増殖の相違を判断する。
【0079】
同様のアッセイ系を培養付着腫瘍細胞についても設定することができる。しかしながら、このフォーマットでは、コラーゲンを省いてもよい。腫瘍細胞(たとえば、3,000〜10,000個/ウェル)を播いて一晩付着させる。次に、無血清培地をウェルに添加し、24時間、細胞を同調させる。その後、10% FBS含有培地を各ウェルに加えて、増殖を刺激する。被験抗体および/または抗体コンジュゲートを、一部のウェルに入れる。24時間後、MTSをプレートに添加し、アッセイを発色させて、上記のように読み取る。
【0080】
5.4.5 細胞毒性アッセイ
抗体および/または抗体コンジュゲートの抗増殖性および細胞毒性効果を、腫瘍細胞、EC、線維芽細胞およびマクロファージなどのさまざまな細胞型について測定することができる。これは、放射線療法剤もしくは毒素といった治療用成分にコンジュゲートさせた抗体を試験する場合に特に有用である。たとえば、本発明の抗体の一つと、131Iでヨウ素化されたBolton-Hunter試薬とのコンジュゲートは、uPARを発現する細胞の増殖を(もっとも可能性が高いのはアポトーシスを誘導することによって)阻害することが予想される。腫瘍細胞および刺激された内皮細胞に対して抗増殖効果が予想されるが、ある状況下では、静止状態の内皮細胞に対しても正常なヒト皮膚線維芽細胞に対しても、抗増殖効果はないと思われる。正常細胞において観察されるいかなる抗増殖性もしくは細胞毒性効果も、コンジュゲートの非特異的毒性を意味する可能性がある。
【0081】
典型的なアッセイは、96ウェルプレートのウェル当たり5〜10,000細胞の密度で細胞を播くことが必要となる。被験化合物を、結合アッセイで測定されたIC50の10倍濃度で添加し(これはコンジュゲートに応じて変動しうる)、細胞とともに30分間インキュベートする。細胞を培地で3回洗浄し、次に[3H]チミジン(1μCi/ml)を含有する新培地を細胞に加えて、24時間および48時間、37℃にて5% CO2中でインキュベートする。さまざまな時点で1M NaOHによって細胞を溶解し、ウェルあたりの計数値を、βカウンターを用いて測定する。増殖は全細胞数を測定するためのMTS試薬、またはCyQuant(登録商標)を用いて、非放射性の方法で測定することができる。細胞毒性アッセイ(細胞溶解を測定する)のために、Promega 96ウェル細胞毒性キットを使用する。抗増殖活性の証拠があるならば、TumorTACS(Genzyme)を用いて、アポトーシスの誘導を測定することができる。
【0082】
5.4.6 カスパーゼ-3活性
抗体および/または抗体コンジュゲートがECのアポトーシスを促進する能力を、カスパーゼ-3の活性化を測定することによって判定することができる。I型コラーゲン(ゼラチン)を用いて、P100プレートをコートし、5 x 105個のECを10% FBS含有EGMに播く。(37℃、5% CO2中で)24時間後、培地を、2% FBS、10 ng/ml bFGF、および目的の被験化合物を含有するEGMに交換する。6時間後に細胞を集め、細胞溶解物を1% Triton中で調製し、EnzChek(登録商標)Caspase-3 Assay Kit #1 (Molecular Probes)を用いて、メーカーの使用説明書にしたがってアッセイする。
【0083】
5.4.7 角膜血管新生モデル
使用する方法は基本的に、Volpertら、J. Clin. Invest. 1996, 98: 671-679の記載と同じである。概略を述べると、雌のFischerラット(120〜140 g)を麻酔し、Hydron(登録商標)、bFGF(150 nM)、ならびに被験抗体および/または抗体コンジュゲートからなるペレット(5μl)を、角膜の縁から1.0〜1.5 mmに入れた小さな切り口に埋め込む。埋め込みの5日および7日後に新血管形成をアッセイする。7日目に動物を麻酔し、コロイド状カーボンのような色素を注入して血管を染色する。次に動物を安楽死させ、角膜をホルマリンで固定し、角膜を平らにして写真に撮り、新血管形成の程度を評価する。新血管は、全血管面積もしくは長さを画像化することによって、または単純に血管を数えることによって定量化することができる。
【0084】
5.4.8 マトリゲル(Matrigel(登録商標))プラグアッセイ
このアッセイは基本的に、Passanitiら、1992, Lab Invest. 67: 519-528に記載のように実施する。氷冷したマトリゲル(たとえば、500μl)(Collaborative Biomedical Products, Inc., Bedford, MA)を、ヘパリン(たとえば、50μg/ml)、FGF-2(たとえば、400 ng/ml)および被験化合物と混合する。アッセイによっては、血管新生を刺激するものとして、bFGFを腫瘍細胞と置き換えることができる。マトリゲル混合物を4〜8週齢の胸腺欠損ヌードマウスの腹部正中線に近い部位に、好ましくはマウスごとに3カ所、皮下注射する。注入されたマトリゲルは、触知できる固形ゲルを形成する。注射部位は、それぞれの動物が陽性対照プラグ(たとえば、FGF-2+ヘパリン)、陰性対照プラグ(たとえば、バッファー+ヘパリン)および血管新生に対する効果を調べる被験化合物を含むプラグ(FGF-2+ヘパリン+化合物)を受け取るように選択される。すべての処置は3回反復で行うことが好ましい。注射後約7日、または血管新生を観察するのに最適と思われる別の時点で、頸椎脱臼により動物を屠殺する。マウスの皮膚を、腹部正中線にそって剥がし、マトリゲルプラグを回収し、ただちに高解像度のスキャンにかける。その後、プラグを水中に分散させて、37℃にて一晩インキュベートする。Drabkin溶液(たとえば、Sigmaから購入)を用いて、メーカーの使用説明書にしたがってヘモグロビン(Hb)レベルを測定する。プラグ中のHb量は、サンプル中の血液量を反映するので、血管新生の間接的な指標となる。それに加えて、またはその代わりに、屠殺前に、フルオロフォアを結合させた高分子量デキストランを含有する0.1mlバッファー(好ましくはPBS)を動物に注射してもよい。分散させたプラグにおける蛍光の量は、蛍光測定法で測定されるが、これもプラグ中の血管新生の指標として役立つ。mAB抗CD31(CD31は「血小板-内皮細胞接着分子、つまりPECAM」である)を使用して、新血管形成およびプラグ中の微小血管密度を確認することができる。
【0085】
5.4.9 ニワトリ漿尿膜(CAM)血管新生アッセイ
このアッセイは、基本的にNguyenら、Microvascular Res. 1994, 47: 31-40に記載のように実施する。血管新生因子(bFGF)もしくは腫瘍細胞のほかにインヒビターを含有するメッシュを8日齢ニワトリ胚のCAM上に載せ、サンプルの移植後3〜9日の間CAMを観察する。メッシュ中の、血管を含む区画の割合を測定することによって、血管新生を定量化する。
【0086】
5.4.10 腫瘍細胞を用いたマトリゲルプラグアッセイによる血管新生阻害および抗腫瘍効果のin vivo評価
このアッセイにおいて、腫瘍細胞、たとえば1〜5 x 106個の3LL Lewis肺癌細胞もしくはラット前立腺細胞株MatLyLuをマトリゲルと混合した後、上記セクション5.4.8に記載の方法にしたがってマウスの側腹部に注射する。5〜7日後にプラグにおいて、腫瘍細胞集団および強い血管新生反応を観察することができる。実際の腫瘍環境における化合物の抗腫瘍作用および抗血管新生作用を、プラグ中にその化合物を含めることによって評価することができる。その後、腫瘍の重量、Hbレベルもしくは(屠殺前に注入されたデキストラン-フルオロフォアコンジュゲートの)蛍光レベルを測定する。Hbもしくは蛍光を測定するために、最初にプラグを組織破砕機でホモジナイズする。
【0087】
5.4.11 皮下(s.c.)腫瘍増殖の異種移植モデル
ヌードマウスの右側腹部の皮下にMDA-MB-231細胞(ヒト乳癌)およびマトリゲル(1 x 106細胞を0.2ml中に含む)を接種する。腫瘍が200 mm3に達したら、被験組成物による処置を開始する(100μg/動物/日、毎日腹腔内に与える)。腫瘍量は1日おきに求め、2週間処置した後、動物を屠殺する。腫瘍を摘出し、重量を測定し、パラフィン包埋する。腫瘍の組織切片を、H and E、抗CD31、Ki-67、TUNEL、およびCD68染色によって分析する。
【0088】
5.4.12 転移の異種移植モデル
抗体および/または抗体コンジュゲートの、遅発性転移の抑制を、実験転移モデルを用いて試験する(Crowleyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993, 90: 5021-5025)。遅発性転移は、腫瘍細胞の付着および血管外遊出、局所浸潤、播種、増殖、ならびに血管新生の段階を包含する。レポーター遺伝子(好ましくは緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子であるが、その代わりとしては、酵素、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼまたはLacZをコードする遺伝子)でトランスフェクトされたヒト前立腺癌細胞(PC-3)を、ヌードマウスに接種する。この方法は、上記細胞の運命を追跡するために上記マーカーのいずれかを利用することができる(GFPの蛍光検出、または酵素活性の組織化学的比色検出)。細胞は、好ましくは静脈内に注入され、約14日後に転移が識別される(詳細には肺においてであるが、局所リンパ節、大腿および脳においても)。これは、ヒト前立腺癌において自然発生する転移の臓器親和性を模倣している。たとえば、GFP発現PC-3細胞(マウス当たり1 x 106細胞)をヌード(nu/nu)マウスの尾静脈に静脈注射する。動物を被験組成物で処置し、100μg/動物/日で1日1回腹腔内に与える。蛍光顕微鏡法、もしくは光学顕微鏡組織化学によって、または組織の破砕、および検出可能な標識の定量的比色アッセイによって、個別の転移細胞および病巣を可視化し、定量する。
【0089】
5.4.13 in vivo自然転移の抑制
ラット同系乳癌系は、Mat BIIIラット乳癌細胞を使用する(Xingら、Int. J. Cancer 1996, 67: 423-429)。たとえば、約106個を0.1 ml PBSに懸濁した腫瘍細胞を雌Fischerラット乳房の脂肪体に接種する。接種の時点で、14日用アルザ(Alza)浸透圧ミニポンプを腹腔内に埋め込み、被験抗体および/または抗体コンジュゲートを投与できるようにする。抗体および/または抗体コンジュゲート(PBS中)を無菌濾過し、ミニポンプ内に入れて、約4mg/kg/日の速度で放出できるようにする。対照動物は、ビヒクル(PBS)のみ、またはビヒクル対照ペプチドをミニポンプで受け取る。動物を約14日目に屠殺する。抗体および/または抗体コンジュゲートで処置したラットにおいて、原発腫瘍の大きさ、ならびに脾臓、肺、肝臓、腎臓およびリンパ節における転移の数(別々の病巣として数える)の有意な減少を認めることができる。組織学的、および免疫組織化学的分析は、処置動物の腫瘍において壊死およびアポトーシスの徴候の増加を示す。新血管形成のない腫瘍領域において、大きな壊死部位が見られる。131Iを結合させた抗体および/または抗体コンジュゲート(抗体分子当たり1または2個のI原子)は有効な放射線療法であり、非結合抗体よりも少なくとも2倍以上強力であると考えられる。これに対して、対照抗体による処置は腫瘍の大きさ、または転移に有意な変化をもたらさない。
【0090】
5.4.14 3LL Lewis肺癌:原発腫瘍増殖
この腫瘍株は、C57BL/6マウスにおいて肺の悪性腫瘍として自然に発生したものである(Malaveら、J. Nat'l. Canc. Inst. 1979, 62: 83-88)。この株は、皮下(sc)接種によりC57BL/6マウスにおいて継代によって増殖し、セミ同種異系C57BL/6×DBA/2 F1マウス、または同種異系C3Hマウスにおいて試験される。典型的には、皮下(sc)移植には1群当たり6匹、または筋肉内(im)移植には10匹の動物を使用する。腫瘍は、2〜4 mmの断片として皮下に、または約0.5〜2×106個からなる懸濁細胞の接種材料として筋肉内もしくは皮下に移植することができる。処置は移植の24時間後に始めるか、もしくは指定の大きさ(通常約400mg)の腫瘍が触知できるまで遅らせる。被験化合物を11日間毎日腹腔内に投与する。動物はその後、体重を測り、触診し、腫瘍の大きさを測定する。接種後12日目の未処置対照レシピエントの典型的な腫瘍重量は500〜2500 mgである。典型的な生存期間の中央値は18〜28日である。陽性対照化合物は、たとえば、シクロホスファミドを1〜11日に、一日一回の注射で20mg/kgとして使用する。算出された結果は、動物の平均体重、腫瘍の大きさ、腫瘍重量、生存期間を含む。確実な治療活性のためには、被験化合物を2つの複数回投与アッセイで試験するべきである。
【0091】
5.4.15 3LL Lewis肺癌:原発腫瘍増殖および転移モデル
このアッセイは当技術分野でよく知られている(Gorelikら、J. Nat'l. Canc. Inst. 1980, 65: 1257-1264; Gorelikら、Rec. Results Canc. Res. 1980, 75: 20-28; Isakovら、Invasion Metas. 2: 12-32 (1982); Talmadgeら、J. Nat'l. Canc. Inst. 1982, 69: 975-980; Hilgard ら、Br. J. Cancer 1977, 35: 78-86)。被験マウスは雄C57BL/6マウス、2〜3月齢である。皮下、筋肉内、もしくは足蹠内に移植後、上記腫瘍は転移を生じるが、肺において優先的に生じる。一部の腫瘍系統については、原発腫瘍が抗転移効果を及ぼすため、転移フェーズの研究の前に最初に摘出しなくてはならない(米国特許第5,639,725号も参照されたい)。単個細胞懸濁液を、細かく刻んだ腫瘍組織を0.3%トリプシン溶液で処理することによって固形腫瘍から調製する。細胞をPBS(pH 7.4)で3回洗浄し、PBS中に懸濁する。このようにして調製された3LL細胞の生存率は、概して約95〜99%である(トリパンブルー色素排除法)。PBS 0.05mlに懸濁した生存腫瘍細胞(3 x 104〜5 x 106)を、C57BL/6マウスの背部に、もしくは一方の後ろ足蹠内に、皮下注射する。106細胞を背部に皮下注射して3〜4日後に目に見える腫瘍が現れる。腫瘍が出現する日、および定着した腫瘍の直径を2日ごとにカリパスで測定する。処置は、1週間当たり1回から5回のペプチドもしくは誘導体の投与として与えられる。別の実施形態では、ペプチドを浸透圧ミニポンプによって投与してもよい。
【0092】
背部腫瘍の腫瘍摘出を含む実験において、腫瘍が約1500mm3の大きさに達したら、マウスを無作為に2群に分ける:(1)原発腫瘍を完全に摘出する;または(2)偽手術を行って、腫瘍をそのままにする。500〜3000mm3までの腫瘍は転移増殖を抑制するが、1500mm3は、高い生存率で、しかも局所で再増殖することなく、安全に切除できる原発腫瘍の最大の大きさである。21日後、全マウスを屠殺して解剖する。
【0093】
肺を取り出して、重量を測定する。肺をBouin溶液中で固定し、目に見える転移の数を記録する。マイクロメーター付き接眼レンズを備えた両眼立体顕微鏡を用いて8倍の倍率で、転移の直径を測定する。記録された直径に基づいて、それぞれの転移の体積を計算することができる。肺ごとの転移の全体積を決定するために、目に見える転移の数の平均に転移の平均体積を掛ける。さらに転移増殖を判断するために、肺細胞への125IdUrdの取り込みを測定することができる(Thakurら、J. Lab. Clin. Med. 1977, 89: 217-228)。腫瘍切除の10日後、フルオロデオキシウリジン25μgを腫瘍担持マウス(および使用できれば腫瘍切除マウス)の腹腔内に入れる。30分後、マウスに、1μCiの125IdUrd(ヨードデオキシウリジン)を投与する。1日後、肺および脾臓を摘出して重量を測定し、125IdUrd取り込みの程度をガンマカウンターで測定する。
【0094】
足蹠に腫瘍を有するマウスにおいて、腫瘍が直径約8〜10 mmに達したら、マウスを無作為に2群に分ける:(1)膝関節の上で結紮した後、腫瘍のある下腿を切断する;または(2)マウスを非切断腫瘍担持対照としてそのままにしておく。(腫瘍担持マウスの腫瘍のない脚を切断することは、麻酔、ストレスもしくは手術について考えられる影響を除外して、その後の転移への影響は知られていない)。マウスを切断の10〜14日後に屠殺する。上記のように転移を評価する。
【0095】
統計:転移の発生率および腫瘍担持マウスの肺における転移の増殖を表す値は、正規分布しない。したがって、Mann-Whitney U検定のようなノンパラメトリック統計学を解析に使用することができる。Gorelikら(1980、上記)によるこのモデルの研究によって、腫瘍細胞接種物の大きさが転移増殖の程度を決定することが示された。手術したマウスの肺における転移の速度は、原発腫瘍を有するマウスとは異なっていた。こうして、大量の3LL細胞(1〜5 x 106)の接種によって原発腫瘍が誘導されて、その後外科的に除去されたマウスの肺では、転移の数は手術しない腫瘍担持マウスより少なかったが、ただし転移の体積は非手術対照より大きかった。肺転移の指標として125IdUrd取り込みを用いると、腫瘍切除マウスと、初めに106個の3LL細胞の接種を受けた腫瘍担持マウスとの間に有意差は認められなかった。105個の腫瘍細胞の接種によって生じた腫瘍の切除は、転移増殖を劇的に促進した。これらの結果は、局所腫瘍の切除後のマウスの生存率と一致する。局所腫瘍の切除後に転移増殖が促進される現象は、繰り返し、観察されてきた(たとえば、米国特許第5,639,725号)。こうした観察は、癌の外科手術を受ける患者の予後診断に意味をもってくる。
【0096】
5.4.16 ホールセルでのuPAへの抗体結合についてのアッセイ
ウロキナーゼアミノ末端断片を標的とする抗体および/または抗体コンジュゲートのuPAへの結合は、[125I]DFP-uPAのuPARへの結合の阻害を、競合リガンド結合アッセイにおいて測定することによって、容易に調べられる。このアッセイは、uPARを発現するホールセル、たとえば、RKOもしくはHeLaといった細胞株を使用することができる。好ましいアッセイは以下のように行う。細胞(約5 x 104/ウェル)を24ウェルプレートの培地(たとえば、Earle平衡塩/10% FBSおよび抗生物質を加えたMEM)中に播いた後、細胞が70%コンフルエントに達するまで加湿5%CO2雰囲気中でインキュベートする。触媒的に不活化された高分子量uPA(DFP-uPA)を、Iodo-gen(登録商標)(Pierce)を用いて、約250,000cpm/mgの比放射能となるまで放射性ヨード化する。次に、細胞含有プレートを氷上で冷却し、細胞を、冷PBS/0.05% Tween-80で2回(5分ずつ)洗浄する。被験抗体および/または抗体コンジュゲートを、冷PBS/0.1% BSA/0.01% Tween-80で連続希釈し、[125I]DFP-uPAを添加する10分前に、最終容量0.3mlとなるよう各ウェルに加える。その後、各ウェルに9500cpmの[125I]DFP-uPAを加えて最終濃度を0.2nMとする。次に、プレートを4℃にて2時間インキュベートし、その後、細胞を冷PBS/0.05% Tween-80で3回(5分ずつ)洗浄する。NaOH(1N)0.5mlを各ウェルに加えて細胞を溶解し、室温で5分間、または顕微鏡検査で判定して各ウェルの全細胞が溶解するまで、プレートをインキュベートする。その後、各ウェルの内容物を吸引し、各ウェルの全カウント数をガンマカウンターで測定する。それぞれの化合物を3回反復で検査し、結果を、[125I]DFP-uPAのみを含有するウェル(これは最大(100%)結合を表すために必要とされる)で測定された全放射能の百分率として表す。
【0097】
[125I]DFP-uPAのuPARへの結合の阻害は、通常、用量依存的であるので、結合の50%阻害を生じるのに必要な被験化合物の濃度(IC50値)は、相関曲線の直線部分にあると予想されるため容易に決定される。一般に、抗体および/または抗体コンジュゲートは約10-5Mより低いIC50値を有する。好ましくは、抗体および/または抗体コンジュゲートは約10-6Mより低いIC50値を有し、さらに好ましくは約10-7Mより低い値を有する。
【0098】
5.5 組換えDNA法
分子生物学の一般方法は、当技術分野においてこれまで十分に記述されている(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版(もしくはそれ以降)、Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989; Ausubeら、Current Protocols in Molecular Biology, 第2巻、Wiley-Interscience, New York, (現行版); Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990); Glover, DM編、DNA Cloning : A Practical Approach, 第IおよびII巻、IRL Press, 1985; Albertsら、Molecular Biology of the Cell, 第2版(もしくはそれ以降)、Garland Publishing, Inc. , New York, NY (1989); Watsonら、Recombinant DNA, 第2版(もしくはそれ以降)、Scientific American Books, New York, 1992; ならびにOldら、Principles of Gene Manipulation : An Introduction to Genetic Engineering, 第2版(もしくはそれ以降)、University of California Press, Berkeley, CA(1981))。
【0099】
特に指示しない限り、特定の核酸配列は、その保存的置換変異体(たとえば、縮重コドン置換)および相補的配列を包含するものとする。「核酸」という用語は、「ポリヌクレオチド」と同義であって、遺伝子、cDNA分子、mRNA分子、およびこれらいずれかの断片、たとえばオリゴヌクレオチド、ならびに、その均等物(下記にさらに十分に説明する)をも含むものとする。核酸の大きさはキロベース(kb)または塩基対(bp)のいずれかで示される。これは、使用者によって決定された、または公表された核酸配列に基づいて、アガロースもしくはポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)から導かれる概算である。タンパク質の大きさは、分子量キロダルトン(kDa)として、または長さ(アミノ酸残基の数)として示される。タンパク質の大きさは、PAGEから、配列決定から、核酸コード配列に基づく推定アミノ酸配列から、または公表されたアミノ酸配列から、概算される。
【0100】
具体的には、抗体、もしくはその活性変異体に該当するアミノ酸配列をコードするDNA分子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(たとえば、米国特許第4,683,202号を参照されたい)によって、本明細書で開示されるタンパク質の配列に由来するプライマーを用いて合成することができる。次に、これらのcDNA配列を真核生物もしくは原核生物発現ベクターに組み立てることが可能であって、その結果得られたベクターを用いて、適当な宿主細胞(たとえば、COSまたはCHO細胞)による融合ポリペプチドまたはその断片もしくは誘導体の合成を指示することができる。
【0101】
抗体および/またはその断片を発現するように形質転換された、またはトランスフェクトされた、原核もしくは真核宿主細胞は、本発明の範囲に含まれる。たとえば、大腸菌(E. coli)のような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス)、酵母、またはチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)もしくはヒト細胞(これは、トランスフェクトされた細胞をヒトの治療用に使用するために好ましい)のような哺乳類細胞において、抗体および/またはその断片を発現することができる。他の適当な宿主は当業者に公知である。真核細胞における発現は、部分的もしくは完全なグリコシル化、および/または、組換えポリペプチドに関連する鎖間もしくは鎖内ジスルフィド結合の形成をもたらす。酵母S. cerevisiaeにおける発現のためのベクターの例としては、pYepSecl (Baldariら、1987, EMBOJ. 6: 229-234)、pMFa (Kurjanら、1982 Cell 30: 933-943)、pJRY88 (Schultzら、1987, Gene 54: 113-123)、およびpYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, Calif.)がある。培養昆虫細胞(SF9細胞)においてタンパク質を発現するために利用できるバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smithら、1983, Mol. Cell Biol. 3: 2156-2165)およびpVLシリーズ(Lucklowら、(1989) Virology 170: 31-39)が含まれる。一般に、COS細胞(Gluzman 1981 Cell 23: 175-182)は、哺乳類細胞における一過性増幅/発現のためにpCDM 8(Aruffoら、上記)のようなベクターとともに用いられるが、これに対してCHO(dhfrネガティブCHO)細胞は、哺乳類細胞における安定した増幅/発現のためにpMT2PC(Kaufmanら、1987, EMBO J. 6: 187-195)といったベクターとともに使用される。NS0骨髄腫細胞株(グルタミン合成酵素発現系)はCelltech Ltd.から入手できる。
【0102】
所望のコード配列および制御配列を含有する適当なベクターの構築は、当技術分野でよく知られている標準的な核酸連結反応および制限酵素切断法を用いる。単離されたプラスミド、DNA配列、または合成オリゴヌクレオチドを、所望の形となるように切断し、改作し、そして再連結する。ベクターを形成するDNA配列は、多くの供給源から入手できる。骨格ベクターおよび制御系は、一般に、入手可能な「宿主」ベクターに見出され、かかるベクターが大半の配列のために構築に使用される。適切なコード配列のために、構築のはじめに、cDNAもしくはゲノムDNAライブラリーから適当な配列を検索してもよく、通常それが行われる。しかしながら、ひとたび配列が明らかになれば、in vitroで個々のヌクレオチド誘導体から始めて、全遺伝子配列を合成することができる。相当な長さ(たとえば500〜1000 bp)の遺伝子の全遺伝子配列は、部分的にオーバーラップする相補的なオリゴヌクレオチドを合成し、オーバーラップしない一本鎖部分を、デオキシリボヌクレオチド三リン酸の存在下でDNAポリメラーゼを用いてフィルインすることによって、調製することができる。この方法は、既知の配列を有するいくつかの遺伝子の作製に使用されて成功している。たとえば、Edge, Nature 1981, 292: 756; Nambairら、Science 1984, 223: 1299; およびJay, J.Biol. Chem. 1984, 259: 6311を参照されたい。
【0103】
合成オリゴヌクレオチドは、上記の文献に記載されたホスホトリエステル法またはBeaucageら、Tetrahedron Lett. 1981, 22: 1859; およびMatteucciら、J. Am. Chem. Soc. 1981, 103: 3185に記載のホスホルアミダイト法のいずれかによって調製されるが、市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置によって調製することもできる。アニーリング前の、または標識化のための、一本鎖のキナーゼ処理は周知の方法によって達成される。
【0104】
このようにして所望のベクターの成分が入手できれば、標準的な制限酵素切断および連結の手順によって、これらを切断し、結合することができる。部位特異的DNA切断は、適当な1つの制限酵素(もしくは複数の酵素)で処理することによって行われるが、その条件は、当技術分野で広く理解されるものであり、その条件の詳細は、上記の市販の制限酵素のメーカーにより指定される。たとえば、New England Biolabsの製品カタログを参照されたい。必要ならば、標準的な技法を用いて、ポリアクリルアミドゲルもしくはアガロースゲル電気泳動により、切断された断片のサイズ分離を行うことができる。サイズ分離の総合的な記述は、Meth. Enzymol. (1980) 65:499-560にある。いくつかの方法のいずれかを使用して、コード配列内に突然変異を導入し、もし組換えによって作製されるならば、変異体が得られる。これらの突然変異には、単純な欠失もしくは挿入、塩基のクラスターの計画的な欠失、挿入もしくは置換、または単一塩基の置換が含まれる。DNA配列の改変は、その手順および試薬が市販されている周知の技法である、部位特異的突然変異誘発によって行われる(Zollerら、Nucleic Acids Res. 1982, 10: 6487-6500およびAdelmanら、DNA 1983, 2: 183-193))。単離されたDNAを制限酵素切断によって解析し、かつ/またはMessingら、Nucleic Acids Res. 1981, 9: 309にさらに記載されるようなSangerのジデオキシヌクレオチド法(Sanger, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1977, 74: 5463)によって、もしくはMaxamら(Meth. Enzymol. 上記)の方法によって、配列決定する。
【0105】
従来の技法によってベクターDNAを哺乳類細胞に導入することができるが、その技法はたとえば、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションである。宿主細胞を形質転換する適当な方法は、Sambrookら、上記、および他の標準的な教科書に見出すことができる。融合発現ベクターでは、タンパク質分解切断部位をレポーター基と標的タンパク質の接合部に導入して、融合タンパク質の精製後に、レポーター基からの標的タンパク質の分離を可能にする。こうした切断のためのタンパク質分解酵素およびそれらの認識配列には、因子Xa、トロンビンおよびエンテロキナーゼがある。
【0106】
5.6 治療上の使用
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、細胞遊走、細胞浸潤もしくは細胞増殖、血管新生、または転移を特徴とする病気にかかっている患者、好ましくはヒト、に投与される。このような疾病もしくは病的状態には、固形腫瘍もしくは白血病およびリンパ腫の原発増殖、転移腫瘍の転移、浸潤および/または増殖、良性過形成、粥状動脈硬化、心筋血管新生、血管線維腫、動静脈奇形、バルーン血管形成後血管再狭窄、血管外傷後新生内膜形成、血管移植片再狭窄、冠動脈側枝形成、深部静脈血栓症、虚血肢血管新生、毛細血管拡張症、化膿性肉芽腫、角膜疾患、ルベオーシス、新生血管緑内障、糖尿病性およびその他の網膜症、水晶体後線維増殖症、糖尿病性血管新生、黄斑変性症、子宮内膜症、関節炎、乾癬・強皮症を含む慢性炎症性疾患関連線維症、血管腫、血友病性関節、肥厚性瘢痕、Osler-Weber症候群、乾癬、発熱性肉芽腫、水晶体後線維増殖症、強皮症、Von-Hippel-Landau症候群、トラコーマ、血管癒着、肺線維症、化学療法による線維症、瘢痕化および線維形成を伴う創傷治癒、消化性潰瘍、骨折、ケロイド、ならびに血管形成、造血、排卵、月経、妊娠および胎盤形成の障害、または細胞浸潤もしくは血管新生が病因となるかまたは望まれない他の疾病もしくは病的状態が含まれる。
【0107】
ごく最近、血管新生阻害剤が、炎症性血管新生および外傷性脊髄損傷後のグリオーシスを予防すること、それによってニューロン結合性の回復を促進することに、ある役割を果たす可能性のあることが明らかになった(Wamilら、Proc. Natl. Acad. Sci. 1998, 95: 13188-13193)。したがって、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/または医薬組成物を、外傷性脊髄損傷後できるだけ速やかに、そしてその後約2週間に至るまで数日間投与すると、ニューロン結合性の回復を立体的に妨げると思われる血管新生およびグリオーシスが抑制される。かかる治療は、脊髄損傷部位において損傷域を減らし、ニューロンの機能の再生を促し、それによって麻痺を予防する。抗体および/または抗体コンジュゲートは、ウォーラー変性から軸索を保護し、アミノ酪酸による脱分極(外傷を受けたニューロンにおいて生じる)を覆し、培養下の中枢神経系細胞および組織のニューロンの伝導率の回復を向上させることも期待される。
【0108】
さらに、ある実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、上記のさまざまな疾患もしくは障害の予防措置として、患者、好ましくはヒト、に投与される。したがって、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、細胞遊走、細胞浸潤もしくは細胞増殖、血管新生、または転移を特徴とする疾病素因を有する患者に、予防措置として、投与することができる。したがって、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、ある疾患もしくは障害の予防のために、さらに同時に別の疾患もしくは障害の治療のために、使用することができる。
【0109】
異常な血管新生を特徴とする、さまざまな疾患もしくは障害の治療または予防における、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物の適合性は、本明細書に記載される当技術分野において公知の方法によってアッセイすることができる。したがって、細胞遊走、細胞浸潤もしくは細胞増殖、血管新生、または転移を特徴とする疾患もしくは障害を治療または予防するために、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物をアッセイして使用することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0110】
5.7 診断上の使用および方法
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、上記セクション5.6に記載の疾患を検出もしくは画像化するために、診断上有効な量が、患者、好ましくはヒト、に投与される。さらに、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を使用して、診断上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を被験体に投与することにより、上記セクション5.6に記載のような、望ましくない細胞遊走、浸潤もしくは増殖に関連する疾患もしくは病的状態を、検出または画像化することができる。
【0111】
抗体を診断のために標識して使用し、たとえば、ペプチド結合性リガンドもしくは細胞結合部位/レセプター(例としては、uPAR)を、細胞の内部もしくは表面上のいずれかにおいて検出することができる。適当な方法で標識を検出することによって、結合中および結合後の抗体の体内動態をin vitroまたはin vivoで追跡することができる。診断用に標識された抗体をin vivoで診断および予後診断に利用して、たとえば、潜在的な転移病巣を画像化することができ、または他のタイプのin situ評価に利用することができる。診断上の用途のために、抗体は結合されたリンカー成分を包含してもよく、これは当業者に周知である。
【0112】
標識抗体のin situ検出は、被験体から組織標本を取り出し、それを適当な条件下で顕微鏡によって調べて標識を検出することにより達成することができる。このようなin situ検出を達成するために、当業者であれば、さまざまな組織学的方法(染色法など)を改変しうることに容易に気付くであろう。
【0113】
診断上のin vivo放射線イメージングの場合は、利用できる検出機器のタイプが放射性核種選択の重要な要因となる。選択される放射性核種は、特定の機器によって検出可能な、ある種の崩壊を生じなければならない。一般に、画像診断を可視化するための従来法はいずれも本発明にしたがって利用することができる。in vivo診断のための放射性核種の選択に関する別の要因は、その半減期が十分に長く、標識が標的組織による最大取り込みの時点でなおも検出可能であるが、宿主の有害な照射を最小限とするよう十分に短くもあるということである。ある好ましい実施形態では、in vivoイメージングに使用される放射性核種は、粒子を放射しないが、従来のガンマカウンターによって容易に検出できる140〜200 keVの範囲にある多数の光子を発生するものである。
【0114】
in vitroイメージングを用いて、他の方法で観察できない潜在性転移を検出することができる。uPARの発現は、癌患者における病気の進行と相関し、末期癌患者は、原発腫瘍および転移の両方に高レベルのuPARを有する。uPARを標的としたイメージングを用いて、非侵襲的に腫瘍を病期に分類し、または高レベルのuPARの存在に関連する他の病気(たとえば、血管形成後に起こる再狭窄)を検出することができる。
【0115】
抗体および/または抗体コンジュゲートは、所望の動物種の適当な細胞、組織、器官もしくは生体試料とともに、診断、予後診断もしくは研究の手段に使用することができる。「生体試料」という用語は、正常な、もしくは病気の被験体の身体に由来する何らかの液体もしくは他の物質、たとえば、血液、血清、血漿、リンパ液、尿、唾液、涙、脳脊髄液、乳、羊水、胆汁、腹水、膿などを意味する。この用語の意味には、器官もしくは組織抽出物、および被験体由来の細胞もしくは組織標品をインキュベートした培養液も含まれる。
【0116】
有用な投与量は、特定の診断法のための、抗体および/または抗体コンジュゲートの有効な量として定義される。したがって、有効な量は、適当な検出系、たとえば、磁気共鳴イメージング検出装置、ガンマカメラなどを用いて検出するのに十分な量を意味する。検出可能な最小量は、腫瘍に特異的に結合した標識抗体(シグナル)と、非特異的に結合したまたは血漿中もしくは細胞外液中に遊離状態で存在する標識抗体の量と、の比によって決まると思われる。
【0117】
投与される診断用組成物の量は、選択されたまさにその抗体、疾患もしくは病的状態、投与経路、および熟練したイメージング専門家の判断によって決まる。一般に、診断上の使用において検出可能であるために必要とされる抗体の量は、年齢、状態、性別、および患者における病気の程度、もしあれば禁忌、ならびに他の変動要因といった、考慮すべき事項に応じてさまざまであると考えられ、個々の主治医もしくは診断医によって調整されるべきである。投与量は0.01 mg/kgから100 mg/kgまでさまざまとすることができる。
【0118】
5.8 治療/予防上の投与
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、ヒトの医薬として、有効に使用することができる。上記セクション5.6にすでに記載のように、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、さまざまな疾患もしくは障害の治療または予防に有用である。
【0119】
上記疾患もしくは障害を治療または予防するために使用する場合、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、単独で、または他の薬剤と併用して、投与もしくは適用することができる。抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物はまた、単独で、または本明細書に記載の他の抗体を含めて、他の製薬上活性のある薬剤(たとえば、他の抗癌剤、他の血管新生阻害剤、たとえば亜鉛、ペニシラミン、チオモリブデン酸などのキレート剤)と併用して、投与もしくは適用することができる。
【0120】
治療上有効な量の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を患者に投与することによる治療および予防方法が、本明細書において提供される。患者は動物とすることができるが、好ましくは哺乳類であり、もっとも好ましくはヒトである。
【0121】
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、好ましくは全身的に投与される。抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物はまた、他のなんらかの適当な経路によって、たとえば、経口で、輸液もしくはボーラス注射によって、上皮内層もしくは粘膜皮膚内層(例としては、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)からの吸収によって、投与することができる。投与は局所的であってもよい。さまざまなデリバリーシステム(たとえば、リポソームカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、カプセルなど)を用いて、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を投与することができる。投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、経口、舌下、脳内、経皮、直腸、吸入、または局所的、特に耳、鼻、目もしくは皮膚への投与があるが、それらに限定されない。好ましい投与方法は、医師の裁量に委ねられ、ある程度、医学的症状の部位によって決まってくる。ほとんどの場合、投与は、結果として、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物の血流中への放出をもたらすことになる。
【0122】
特定の実施形態において、1つもしくは複数の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、治療の必要な部位に局所的に投与することが望ましい。例としてであって、限定する目的ではないが、外科手術時の局所注入、局所適用(たとえば、外科手術後の創傷用包帯と併用する)によって、注射によって、カテーテルを用いることによって、座剤によって、またはインプラントによって、上記を達成することができる。インプラントは多孔性、非多孔性、またはゼラチン状の物質からなり、膜(たとえば、シアラスティック(sialastic)膜)もしくは繊維である。ある実施形態において、投与は、癌もしくは関節炎の部位(またはその前の部位)での直接注入によることができる。
【0123】
ある実施形態において、1つもしくは複数の抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、中枢神経系に、なんらかの適当な経路で導入することが望ましいと考えられるが、その経路には脳室内、クモ膜下、および硬膜外注射を含む。脳室内注射は、たとえば、Ommayaリザーバーといったリザーバーを付けた、脳室内カテーテルによって容易に行うことができる。
【0124】
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、吸入によって肺に直接投与することもできる。吸入による投与のために、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、多くのさまざまな装置によって、良好に送達することができる。たとえば、定量噴霧式吸入器(Metered Dose Inhaler: "MDI")、は、低沸点噴射剤(たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の何らかの適当な気体)を含有する容器を利用するものであるが、これを用いて、抗体および/または抗体コンジュゲートを直接、肺に送達することができる。
【0125】
あるいはまた、ドライパウダー吸入器(Dry Powder Inhaler: "DPI")を使用して、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を肺に投与することができる。DPI装置は、典型的には、ガス爆発のような仕組みを用いて、容器内部で乾燥粉末を煙状とし、その後それを患者が吸入することができる。DPI装置も、当技術分野において周知である。よく知られているのは複数回投与DPI(MDDPI)であって、これは、2回分以上の治療用量の送達を可能にする。たとえば、吸入器用のゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、抗体および/または抗体コンジュゲートと、この系に適した乳糖やデンプンのような粉末基剤とからなる粉末混合物を含有して製剤化される。
【0126】
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を肺に送達するために使用することができる別のタイプの装置は、たとえば、Aradigm Corporation (Hayward, CA)から提供される液体噴霧装置である。液体噴霧システムは、非常に小さいノズル孔を用いて、液体薬物製剤をエアロゾル化し、次にそれを肺に直接吸入することができる。
【0127】
ある実施形態において、ネブライザーを使用して、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を肺に送達する。ネブライザーは、たとえば、容易に吸入できる微粒子を形成する超音波エネルギーを用いることによって、液体薬物製剤からエアロゾルを生じさる(たとえば、Verschoyleら、British J. Cancer, 1999, 80, Suppl. 2, 96を参照されたい;これは参考として本明細書に含めるものとする)。ネブライザーの例には、Batelle Pulmonary Therapeutics (Columbus, OH)から提供される装置がある(Armerら、米国特許第5,954, 047号; van der Lindenら、米国特許第5,950, 619号; van der Lindenら、米国特許第5,970,974号を参照されたい)。
【0128】
別の実施形態において、電気流体力学(EHD)エアロゾル装置を用いて、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を肺に送達する。EHDエアロゾル装置は、液体医薬品溶液もしくは懸濁液をエアロゾル化するために電気的エネルギーを使用する(たとえば、Noakesら、米国特許第4,765, 539号を参照されたい)。EHDエアロゾル装置は、既存の肺デリバリー技術よりも効率的に薬物を肺に送達することができる。
【0129】
もう一つの実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、小胞、特にリポソームに入れて送達することができる(Langer, 1990, Science, 249: 1527-1533; Treatら、"Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer"、Lopez-BeresteinおよびFidler (編)、Liss, New York, pp. 353-365 (1989); 全般的には"Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer"、Lopez-BeresteinおよびFidler (編), Liss, New York, pp. 353-365(1989)を参照されたい)。
【0130】
5.9 医薬組成物
本発明の医薬組成物は、治療上、または診断上有効な量の、1つもしくは複数の抗体および/または抗体コンジュゲートを、できれば精製された形で、適当な量の製薬上許容されるビヒクルとともに含有し、患者に適切に投与するための剤形とする。患者に投与する場合、抗体および/または抗体コンジュゲート、ならびに製薬上許容されるビヒクルは、好ましくは無菌である。抗体および/または抗体コンジュゲートを静脈内に投与する場合、水が好ましいビヒクルである。生理食塩水およびブドウ糖水溶液およびグリセロール溶液も、特に注射剤用の液体ビヒクルとして使用することができる。適当な医薬用ビヒクルには、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどといったビヒクルも含まれる。本発明の医薬組成物は、必要ならば、小量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有することができる。さらに、助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤および着色剤も用いることが出来る。
【0131】
抗体および/または抗体コンジュゲートを含んでなる医薬組成物は、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、捕捉または凍結乾燥プロセスによって製造することができる。医薬組成物は、1つもしくは複数の生理的に許容される担体、希釈剤、賦形剤もしくはアジュバントを用いて従来の方法で製剤化することができるが、これらは抗体および/または抗体コンジュゲートを、医薬として使用できる製剤に加工することを容易にするものである。適切な製剤は選択される投与経路によって決まる。
【0132】
本発明の医薬組成物は、溶液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、散剤、徐放性製剤、座剤、乳剤、エアロゾル剤、スプレー剤、懸濁液剤、もしくは他の何らかの使用に適した剤形をとることができる。ある実施形態において、製薬上許容されるビヒクルはカプセルである(たとえば、Grosswaldら、米国特許第5,698,155号を参照されたい)。適当な医薬用ビヒクルの他の例は当技術分野で報告されている(Remington's Pharmaceutical Sciences, Philadelphia College of Pharmacy and Science、第19版、1995を参照されたい)。
【0133】
局所投与のために、抗体および/または抗体コンジュゲートを、当技術分野でよく知られているように、溶液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤などとして製剤化することができる。全身用製剤は、たとえば、皮下、静脈内、筋肉内、クモ膜下もしくは腹腔内注射といった注射による投与を目的とする製剤、ならびに経皮、経粘膜、経口もしくは肺投与を目的とする製剤を包含する。全身用製剤は、気道粘液の粘液繊毛クリアランスを改善するか、または粘液の粘性を低下させる、もう一つの活性物質と組み合わせて製造することができる。こうした活性物質には、ナトリウムチャネルブロッカー、抗生物質、N-アセチルシステイン、ホモシステインおよびリン脂質があるが、それらに限定されない。
【0134】
ある実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲートは、ヒトへの静脈内投与に適合する医薬組成物として、一定の手順にしたがって製剤化される。典型的には、静脈内投与用の抗体および/または抗体コンジュゲートは、無菌等張水性バッファー中の溶液である。注射用に、抗体および/または抗体コンジュゲートは、水溶液として、好ましくはHanks溶液、Ringer溶液もしくは生理的塩類バッファーのような、生理的に適合するバッファー中に製剤化される。溶液剤は、懸濁化剤、安定化剤および/または分散助剤といった処方用物質を含有することができる。必要ならば、医薬組成物は可溶化剤を含んでいてもよい。静脈内投与用の医薬組成物は、場合によっては、注射部位の痛みを和らげるためにリグノカインのような局所麻酔薬を包含することができる。一般に、諸成分は、たとえば活性物質の量を表示するアンプルもしくはサシェといった気密容器内に凍結乾燥粉末または水不含濃縮物としての単位剤形に一緒に混合して、または別々に供給される。抗体および/または抗体コンジュゲートを輸液によって投与する場合は、それらを、無菌の医薬品級の水もしくは生理食塩水の入った輸液ボトルとともに分配することができる。抗体および/または抗体コンジュゲートを注射によって投与する場合は、投与に先立って諸成分を混合することができるように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを供給する。
【0135】
経粘膜投与の場合は、透過すべきバリアに適した浸透剤が製剤中で使用される。こうした浸透剤は当技術分野において知られている。
【0136】
経口投与用の医薬組成物は、たとえば、錠剤、トローチ剤、水性もしくは油性懸濁液剤、顆粒剤、散剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の剤形をとることができる。経口投与される医薬組成物は、製薬上口当たりのよい製剤を提供するために、1つもしくは複数の任意に選択される物質、たとえば、果糖、アスパルテームもしくはサッカリンといった甘味料、ペパーミント、ウィンターグリーンオイルもしくはチェリーのような着香料、着色料および防腐剤を含有することができる。経口組成物は、標準的なビヒクル、たとえばマンニトール、乳糖,デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを包含することができる。こうしたビヒクルは医薬品級のものであることが好ましい。
【0137】
たとえば、懸濁液剤、エリキシル剤および溶液剤といった経口液体製剤に適した、担体、賦形剤もしくは希釈剤には、水、生理食塩水、アルキレングリコール(たとえば、プロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(たとえば、ポリエチレングリコール)、油、アルコール、pH4〜6の弱酸性バッファー(たとえば、約5.0mMから約50.0mMまでの酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩)などがある。さらに、着香料、防腐剤、着色料、胆汁酸塩、アシルカルニチンなどを添加することができる。
【0138】
舌下投与のために、医薬組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤、トローチ剤などの形をとることができる。
【0139】
ネブライザー、液体スプレー装置およびEHDエアロゾル装置で使用するのに適した液体薬物製剤は、典型的には、製薬上許容されるビヒクルとともに抗体および/または抗体コンジュゲートを包含することができる。好ましくは、製薬上許容されるビヒクルは、アルコール、水、ポリエチレングリコールもしくはパーフルオロカーボンといった液体である。状況に応じて、別の物質を添加して、抗体および/または抗体コンジュゲートの溶液もしくは懸濁液のエアロゾル特性を変更することができる。好ましくは、この物質は、アルコール、グリコール、ポリグリコールもしくは脂肪酸のような液体である。エアロゾル装置で使用するのに適した液体薬物溶液もしくは懸濁液を調製する他の方法は、当業者に周知である(たとえば、Biesalski、米国特許第5,112,598号; Biesalski、米国特許第5,556,611号を参照されたい)。
【0140】
抗体および/または抗体コンジュゲートは、たとえば、カカオバターもしくは他のグリセリドのような従来の座薬用基剤を含有する、座薬または停留浣腸剤といった直腸もしくは膣内医薬組成物として製剤化することもできる。
【0141】
5.10 投与量
抗体および/または抗体コンジュゲート、またはその医薬組成物は一般に、意図する目的を達成するのに有効な量で使用される。異常な血管新生を特徴とする疾患もしくは障害の治療または予防に使用するために、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、治療上有効な量で投与され、または適用される。異常な血管新生を特徴とする疾患もしくは障害の検出に使用するために、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、診断上有効な量で投与され、または適用される。
【0142】
本明細書に開示される特定の疾患もしくは病的状態の治療、予防または検出に有効であると考えられる抗体および/または抗体コンジュゲートの量は、その疾患もしくは病的状態の性質に左右され、既述のように当技術分野で既知の標準的な臨床検査によって決定することができる。さらに、in vitroまたはin vivoアッセイが、状況に応じて行われ、最適な投薬量範囲の特定を助けることができる。投与される抗体および/または抗体コンジュゲートの量は、当然他の要因もあるが、なかでも治療を受ける被験体、被験体の体重、苦痛の深刻さ、投与法、および医師の判断に左右される。
【0143】
たとえば、投与量は、単回投与によって、複数回適用もしくは制御放出によって、医薬組成物として送達することができる。ある実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲートは、経口持続放出投与によって送達される。好ましくは、この実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲートは1日2回投与される(さらに好ましくは、1日1回)。投薬は、間隔をおいて繰り返すことができ、単独でまたは他の薬物との併用で与えられ、疾病状態もしくは障害の有効な治療のために必要とされるかぎり継続することができる。
【0144】
経口投与に適した投薬量範囲は、薬物の効力しだいであるが、一般に、体重キログラム当たり抗体および/または抗体コンジュゲート0.001mgから200mg程度である。投薬量範囲は、当業者に公知の方法によって容易に決定することができる。
【0145】
静脈内(i.v.)投与に適した投薬量範囲は、体重キログラム当たり約0.01mgから約100mgである。鼻内投与に適した投薬量範囲は、概して体重キログラム当たり約0.01mgから約1mgである。座剤は一般に、体重キログラム当たり約0.01mgから約50mgの抗体および/または抗体コンジュゲートを含有し、重量基準で約0.5%から約10%までの範囲の活性成分を含んでなる。皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、硬膜外、舌下または脳内投与に推奨される投薬量は、体重キログラム当たり約0.001mgから約200mgの範囲である。有効用量は、in vitroもしくは動物モデル試験系から導かれる用量反応曲線から外挿することができる。こうした動物モデルおよび系は当技術分野でよく知られている。
【0146】
抗体および/または抗体コンジュゲートは、望ましい治療、予防または診断活性について、ヒトに使用する前に、上記のようにin vitroおよびin vivoでアッセイすることが好ましい。たとえば、in vitroアッセイを使用して、ある特定の抗体および/または抗体コンジュゲートの投与、または複数の抗体および/または抗体コンジュゲートを組み合わせての投与が、癌の治療、予防または診断に好ましいかどうかを判定することができる。動物モデル系を使用して、抗体および/または抗体コンジュゲートが有効で安全であることを示すこともできる。
【0147】
好ましくは、本明細書に記載の抗体および/または抗体コンジュゲートの治療上有効な用量は、実質的な毒性を生じることなく治療上の利益をもたらすものである。同様に、本明細書に記載の抗体および/または抗体コンジュゲートの診断上有効な用量は、実質的な毒性を生じることなく診断上の利益をもたらすものである。抗体および/または抗体コンジュゲートの毒性は、標準的な製薬上の手順によって判断することができ、当業者は容易にこれを確認することができる。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数である。抗体および/または抗体コンジュゲートは、疾患および障害の治療において、特に高い治療指数を示すことが好ましい。本明細書に記載の抗体および/または抗体コンジュゲートの投与量は、毒性をほとんどもしくはまったく示すことなしに、治療もしくは診断上有効な用量を含む血中濃度の範囲内にあることが好ましい。
【0148】
5.11 併用療法
ある実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、少なくとも1つの他の治療薬とともに併用療法に使用することができる。抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物、ならびに治療薬は、相加的に、またはより好ましくは相乗的に作用することが考えられる。一部の実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物は、もう一つの治療薬の投与と同時に投与され、この治療薬は同一の医薬組成物の一部、または異なる医薬組成物とすることができる。別の実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲートの医薬組成物は、もう一つの治療薬の投与の前、または後に投与される。
【0149】
詳細には、他の実施形態において、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を、他の化学療法薬(たとえば、アルキル化剤(たとえば、ナイトロジェンマスタード(たとえば、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、スルホン酸アルキル類(たとえば、ブスルファン)、ニトロソウレア類、トリアジン類)、代謝拮抗薬(たとえば、葉酸アナログ、ピリミジンアナログ(たとえば、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シトシンアラビノシドなど)、プリンアナログ(たとえば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンなど)、天然物(たとえば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テノポシド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、L-アスパラギナーゼ、αインターフェロン)、白金配位錯体(たとえば、シスプラチン、カルボプラチンなど)、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ホルモンおよびアンタゴニスト(たとえば、プレドニゾン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン、フルタミド、リュープロリド、など)、抗血管新生薬もしくは阻害剤(たとえば、アンギオスタチン、レチノイン酸およびパクリタキセル、エストラジオール誘導体、チアゾロピリミジン誘導体など)、アポトーシス誘導剤(たとえば、アポトーシスを抑制する癌遺伝子をブロックするアンチセンスヌクレオチド、腫瘍抑制因子、TRAIL、TRAILポリペプチド、Fas-関連因子1、インターロイキン1変換酵素、ホスホチロシン阻害剤、RXR レチノイドレセプターアゴニスト、カルボスチリル誘導体など)、ならびにキレート剤(ペニシラミン、亜鉛、トリエンチンなど))との併用療法で使用することができる。
【0150】
5.12 治療用キット
抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を含んでなる治療用キットも提供される。治療用キットは、他の化合物(たとえば、化学療法薬、天然物、ホルモンもしくはアンタゴニスト、抗血管新生薬もしくは阻害剤、アポトーシス誘導剤、またはキレート剤)またはこうした他の化合物の医薬組成物も含有することができる。
【0151】
治療用キットは、他の化合物(たとえば、他の化合物またはこうした他の化合物の医薬組成物)とともに、または他の化合物なしで、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物の入った単一の容器を有してもよいが、各成分について別個の容器を有することもできる。治療用キットは、第2の化合物(好ましくは、化学療法薬、天然物、ホルモンもしくはアンタゴニスト、抗血管新生薬もしくは阻害剤、アポトーシス誘導剤、またはキレート剤)および/またはその医薬組成物の同時投与と組み合わせて使用するためにパッケージされた、抗体および/または抗体コンジュゲート、および/またはその医薬組成物を包含する。キットの成分は、あらかじめ合わせてあってもよいが、患者に投与する前には各成分が別個の容器に入っていてもよい。
【0152】
キットの成分は、1つもしくは複数の溶液、好ましくは水溶液、さらに好ましくは滅菌水溶液の状態で与えられることがある。キットの成分は、適当な溶媒の添加によって液体に変換できる固体として提供されることもあり、この溶媒は好ましくは別の異なる容器に入れて供給される。
【0153】
治療用キットの容器は、バイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ、または固体もしくは液体を封入する他の何らかの手段とすることができる。通常、2つ以上の成分がある場合、キットは第2のバイアルもしくは他の容器を有し、これらは別々に投与することを可能にする。キットはまた、製薬上許容される液体用のもう一つの容器を含むことができる。
【0154】
好ましくは、治療用キットは、器具(たとえば、1つもしくは複数のニードル、シリンジ、目薬容器、ピペットなど)を含んでいてもよく、これはキットの構成成分の投与を可能にする。
【0155】
下記の実施例は、抗体および/または抗体コンジュゲートの調製、ならびに生物活性をアッセイする方法を詳細に説明する。当業者には明白なことであるが、材料および方法のいずれに対しても、本発明の範囲から逸脱することなく多くの変更を行うことができる。
【実施例】
【0156】
6.1 実施例1
ウロキナーゼのアミノ末端断片の発現および精製
ウロキナーゼのアミノ末端断片(アミノ酸1-143)をクローニングして、Drosophila Schneider S2細胞において発現させた。細胞を銅(0.5mM)で7日間誘導して、組換えタンパク質を発現させた。培養上清を集め、遠心および濾過によって清澄化した。プロテアーゼインヒビターを添加後、ウロキナーゼのアミノ末端断片をDEAE-Sepharose(pH7.5)によるイオン交換クロマトグラフィーによって精製し、逆相-HPLCを用いてさらに精製した。
【0157】
6.2 実施例2
免疫化およびモノクローナル抗体の調製
Balb/cマウスに、実施例1で調製したウロキナーゼのアミノ末端断片を注射し、免疫応答をELISAによってモニターした。ELISAデータに基づいて、脾細胞を骨髄腫細胞株P3x63Ag8.653と融合させることによってハイブリドーマを作製した。10個の親ハイブリドーマの凍結ストックを調製し、5個のハイブリドーマを限界希釈法に供した。次に、これらのモノクローナル抗体からの組織培養上清の活性をELISAアッセイで検定し、各抗体のアイソタイプをIsoStrips (Roche)を用いて決定した。動物実験および他の研究に十分な抗体が腹水から得られた。処理された腹水をプロテインA Sepharoseでさらに精製し、最終物質の純度 (>95%) をHPLCによって測定した。最後に、精製された抗体の正体を等電点電気泳動およびアイソタイプ決定によってさらに特徴づけた。ウロキナーゼのアミノ末端ドメインに特異的なモノクローナル抗体(いずれもIgG1、κ)の大規模なパネルを作製した(データは示してない)。
【0158】
6.3 実施例3
モノクローナル抗体の特性決定
実施例2で得られた抗体のうち2つ(ATN-291およびATN-292)の特徴を徹底的に明らかにし、これらの抗体をin vivo実験のために十分な量で生産した。最初のエピトープマッピング実験はウェスタンブロットによって行った。組換えタンパク質(すなわち、scu、クリングル、アミノ末端断片1-135およびアミノ末端断片1-143)をSDS-PAGEによって分離し、PVDF膜に移した。図3に示すように、ATN-292は組換えアミノ末端断片1-135、アミノ末端断片1-143と特異的に結合したが、ウロキナーゼのクリングルドメインとは結合せず、このことは、ATN-292がウロキナーゼの成長因子ドメインを認識したことを示している。これに対して、ATN-291は、図3に見られるとおり、uPAクリングルドメインを特異的に認識した。直接結合実験によって、抗体のKdを決定した。図4に示すように、ATN-291およびATN-292はいずれも、高い親和性を示してウロキナーゼと結合し、Kdはそれぞれ約0.3および約0.5nMであった。ATN-291およびATN-292は、ATFのHaLa細胞への結合を阻害するそれらの能力について試験した。図5に示すように、2つの抗体はいずれも、ATFの結合を阻害し、IC50は約2nMであった。これは、uPAのGFD(uPAR結合)ドメインに特異的であるATN-292については予想されることである。ATN-291はクリングルドメインに特異的であり、したがって阻害はおそらく立体障害による。
【0159】
6.4 実施例4
モノクローナル抗体による腫瘍増殖の阻害
MDA MB 231乳癌モデルにおいて、抗体が腫瘍増殖を阻害する能力について試験した。Balb/c nu/nuマウスに7 x 105個のMDA MB 231乳癌細胞を注射し、腫瘍を35 mm3に増殖させた。動物を無作為に10匹の処置群に分け、抗体 10mg/kg (200μg/マウス)を週3回、IP(腹腔内)処置した。図6に示すように、ATN-291およびATN-292はいずれも、このモデルにおいて、アイソタイプが一致する対照抗体と比較したとき、腫瘍増殖を顕著に阻害した。
【0160】
6.5 実施例5
モノクローナル抗体のインターナリゼーション
ウロキナーゼのアミノ末端断片に対する抗体が細胞毒性薬を送達する可能性を、[125I]-標識抗体およびMDA-MB-231細胞を用いて行ったインターナリゼーション実験によって判定した。MDA-MB-231細胞はuPAとuPARの両方を発現する。酸-洗浄実験から、細胞表面上のすべてのuPARレセプターのうち相当な割合がuPAによって占有されていることが明らかになった(データは示してない)。24ウェルプレート中のMDA-MB-231細胞のコンフルエントな単層を、次第に増加する濃度の[125I]-ATN-291(黒丸)または[125I]-ATN-292(黒四角)と室温で1時間インキュベートした(図7)。細胞をPBS/Tween-20で十分に洗浄し、結合した物質を1M NaOHで可溶化した。20倍過剰の非標識抗体の存在下で非特異的結合を測定した。上記の実験から、ATN-291はMDA-MB-231細胞の表面上のレセプター結合uPAと、高い親和性で結合することができるが、ATN-292はそうではないことが明らかになった(図7)。これらの結果は、ATN-292がuPAの成長因子ドメインと結合することを示した実施例2のエピトープマッピング研究と一致する。このエピトープは、uPAのuPARへの結合に必須であり、したがって、リガンドがレセプターに結合している場合はマスクされる。これに対して、ATN-291はuPAのクリングルドメインを認識するが、このドメインは、uPA-uPAR相互作用の安定化に関与するものの、uPAの結合には必須でなく、リガンドがそのレセプターと結合している場合でも、一部露出している。
【0161】
[125I]-ATN-291のインターナリゼーションは、標準的な技法によって測定された。概略を述べると、MDA-MB-231細胞を、標識したATN-291とともに4℃にて2時間インキュベートした。細胞を十分に洗浄し、最後の洗浄液を、あらかじめ37℃に加温した結合バッファーに置き換えた。細胞を37℃にてインキュベートし、いろいろな時点で[125I]-ATN-291の細胞への分布を次のように測定した。すなわち、上清を集めてTCA沈澱によって分画し、膜に結合した抗体を酸洗浄によって除去し、細胞溶解物と結びついた抗体を、接着性の酸洗浄細胞の溶解によって回収した。ATN-291の分解は、細胞に結合した全比計数値の%として表される。細胞を37℃でインキュベートしたとき、非沈澱性(分解した)ATN-291の、顕著な時間依存的増加が認められた(図8)。これに対して、[125I]-ATN-291と結合した細胞を4℃に維持した場合には、分解は見られなかった。
【0162】
FITCコンジュゲート二次抗体(図9)またはATN-291-CypHer-5コンジュゲート(図10)のいずれかを用いて、抗体の細胞への分布の特徴を明らかにすることによって、MDA-MB-231細胞によるATN-291のインターナリゼーションを確認した。細胞を10μg/mlのATN-291とともに、4℃(パネルC)または37℃(パネルD)のいずれかで2時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、固定して、透過性とし、ヤギ抗マウスFITCコンジュゲート抗体でATN-291を検出した。対照細胞はmIgG(パネルA)、または二次抗体のみ(パネルB)とインキュベートした。細胞核をDAPIで対比染色した。ATN-291と4℃でインキュベートした細胞は、非常に拡散したパターンの蛍光を示した(図9C)。これに対して、ATN-291と37℃でインキュベートした細胞は核周囲の染色の所見が認められ、ゴルジ様コンパートメントへの抗体のインターナリゼーションと一致する(図9D)。
【0163】
CypHer 5は、新規の、赤色励起性でpH感受性のシアニン色素誘導体である。CypHer 5は、pH 7.4では非蛍光性であるが、pH 5.5では最大蛍光を発し、したがって、標識分子の、内部酸性エンドソームへのインターナリゼーションを測定するために有用な手段を提供する。ATN-291をメーカーの使用説明書にしたがってCypHer 5(Amersham Biosciences)で標識した。OD-480nmの吸光度は、平均して約1.6個のCypHer 5分子が各抗体分子にコンジュゲートしていることを示した。細胞を1μMのATN-291-CY5とともに37℃にて2時間(パネルA)または4時間(パネルB)インキュベートした。CypHer 5標識ATN-291とともにインキュベートした細胞は、時間に依存した赤色蛍光の増加を示した(図10Aおよび10B)。上記データは、ATN-291が高い親和性でレセプター結合uPAと結合したのち、MDA-MB-231細胞によってインターナライズされて、分解されることを強く示唆する。
【0164】
6.6 実施例6
ドキソルビシンコンジュゲートの合成
ヒューニッヒ塩基(Hunig's base)の存在下で、塩酸ドキソルビシン(1)を無水グルタル酸で処理して酸(2)を得、これをin situでDMF中0℃にて1時間、N-ヒドロキシスクシンイミドおよびEEDQによって、対応するN-ヒドロキシスクシニルエステル(3)に変換した(図11参照)。この溶液を、ATN-291を含むPBS(pH 8.1、3 mg/mlを2 ml)に添加し、その結果得られた赤色溶液を4℃にて19時間保存した。反応液量をPBS, pH 8.1で3 mlに調整し、コンジュゲートした抗体を遊離のドキソルビシンから、PD-10カラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。ATN-291にコンジュゲートされたドキソルビシン分子の数は、MALDI-TOFによって測定した。
【0165】
6.7 実施例7
ドキソルビシンコンジュゲートの特性決定
ATN-291-Doxコンジュゲートの抗体成分がなお機能を有し、依然として高い親和性でuPAと結合することを確認するために、ELISAアッセイを行った。図12に示すように、抗体あたり平均4分子のDoxを含有するATN-291-Doxコンジュゲートは、非コンジュゲート抗体と同様の親和性でuPAと結合した。
【0166】
ATN-291-DoxがMDA-MB-231細胞の増殖を抑制する能力をMTTアッセイで試験した。図13Aに示すように、ATN-291 (10μM)は細胞増殖に対して有意な効果を示さなかったが、10μMのATN-291-Dox、または10μMのDox単独では、MDA-MB-231細胞の増殖を顕著に抑制した。用量タイトレーションを、ATN-291-Doxコンジュゲートを用いて実施した。図10Bに示すように、このコンジュゲートは約1.6μMのIC50で増殖を抑制した。
【0167】
ATN-291-Doxコンジュゲートの特徴をさらに明らかにするために、Doxの分布を蛍光顕微鏡によってモニターした。スライドグラスチャンバーで増殖させたMDA-MB-231細胞を1.6μMのDoxまたは1.6μMのATN-291-Doxのいずれかとともに24時間、MTTアッセイに用いた同じ条件下でインキュベートした。インキュベーションの後、上清を除去し、細胞をPBSで十分に洗浄した。細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、スライドグラスに載せ、蛍光顕微鏡で観察した。図14Aに示すように、Doxは、主として、処理細胞の核に局在していた。これに対して、ATN-292-Dox処理細胞は、明確な核周囲の染色パターンを示した(図14B)。これらのデータは、ATN-291-Doxが細胞によってインターナライズされ、ゴルジ様コンパートメントを通って移動し、おそらくその後リソソームにおいて分解されることを示唆する。同様の結果が、抗CD22抗体LL2を含む、他のインターナライズされた抗体について、すでに報告されている。
【0168】
6.8 実施例8
ドキソルビシンジイミドコンジュゲートの合成
【化1】
【0169】
28μlの脱イオン水中の塩酸ドキソルビシン(0.5 mg、0.00086 mmol)を、室温にて、PBS pH8.1中のATN-291(2 ml、3 mg/ml、0.00004 mmol)に添加した。グルタルアルデヒド(0.1%水溶液、200μl、0.0002 mmol)をゆっくりと添加し、反応混合物を暗所で15分間撹拌した。PD-10カラムを用いて、コンジュゲートした抗体を未反応ドキソルビシンおよびグルタルアルデヒドから分離し、4 mlのPBS pH 8.1で溶出した。次に、コンジュゲート抗体について水によるバッファー交換を行い、負荷量をMALDI-TOFによって測定した。生成物はピンク色の溶液として得られた: MALDI-TOF m/z (M avg) 151178。
【0170】
6.9 実施例9
カンプトテシンコンジュゲートの合成
【化2】
【0171】
カンプトテシン-リンカー化合物(12 mg, 0.026 mmol)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(4.6 mg, 0.040 mmol)をDMF (2 ml)中に溶解し、氷浴中で冷却した。EEDQ (7.7 mg, 0.031 mmol)を添加し、その黄色溶液を1時間撹拌した。306μl (0.0040 mmol, 100 eq)の前記溶液をATN-291 (2 ml, PBS pH 8.1中3 mg/ml, 0.00004 mmol)に添加し、反応混合物を冷蔵庫内で21時間保存した。コンジュゲート抗体を未反応物1からPD-10カラムによって分離し、4 mlのPBS pH 8.1で溶出した。次に、コンジュゲート抗体について水によるバッファー交換を行い、負荷量をMALDI-TOFによって測定した。生成物は淡黄色溶液として得られた:MALDI-TOF m/z (M avg) 152845。
【0172】
6.10 実施例10
ドキソルビシンチオエーテルヒドラゾンコンジュゲートの合成
【化3】
【0173】
ATN-291(5 mg/ml PBS(pH 7.4)溶液2 ml、0.000067 mmol)を窒素ガスで脱気した後、脱気した34.4 mMのジチオスレイトール溶液(PBS pH 7.4中)(14μl、0.00048 mmol)を添加した。反応混合物を37℃にて3時間撹拌した。還元された抗体をPD-10カラムで精製し、4 mlのPBS pH 7.4で溶出した。チオール濃度はEllman試薬(溶液4.5 ml)によって75μMであると測定された。ドキソルビシン-ヒドラゾン化合物(0.33 mg, 0.00044 mmol)を水溶液として、0℃にて還元された抗体に添加し、反応混合物を30分間撹拌した。このコンジュゲート抗体をPD-10カラムで精製し、4 mlのPBS pH 7.4で溶出した。次に、コンジュゲート抗体について水によるバッファー交換を行い、負荷量をMALDI-TOFによって測定した。生成物はピンク色の溶液として得られた: MALDI-TOF(M avg) 151119。
【0174】
最後に、注意すべきは、本発明を実施する代替方法が存在することである。したがって、前記の実施形態は説明するものであって制限するものでないと考えるべきであり、本発明は、本明細書に記載された細部に限定されるべきでなく、添付の特許請求の範囲および均等物の範囲内で変更することができる。本明細書に引用されたすべての刊行物および特許は、その全体を参考として本明細書に含めるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】腫瘍細胞および血管新生内皮細胞による細胞外マトリックスの分解およびリモデリングを調節する際のuPARの役割を示す。
【図2】成熟ウロキナーゼの一次配列を示す。
【図3】モノクローナル抗体ATN-291およびATN-292のエピトープマッピングを示す。
【図4】ATN-291およびATN-292の、固定化ウロキナーゼへの結合を示す。
【図5】ウロキナーゼの125I標識アミノ末端断片の、HeLa細胞への結合の抑制を示す。
【図6】ATN-291およびATN-292による腫瘍増殖の抑制を示す。
【図7】レセプターと結合したウロキナーゼへの[125I]-ATN-291の結合を示す。
【図8】MDA-MB-231細胞による[125I]-ATN-291のインターナリゼーションを示す。
【図9】MDA-MB-231細胞によるATN-291のインターナリゼーションを示す。
【図10】ATN-291-CY5コンジュゲートのMDA-MB-231細胞によるインターナリゼーションを示す。
【図11】ドキソルビシンのATN-291へのコンジュゲーションを示す。
【図12】ATN-291-Doxコンジュゲートの固定化ウロキナーゼへの直接結合を示す。
【図13】ATN-291-DoxコンジュゲートがMDA-MB-231細胞の増殖を抑制することを示す。
【図14】ATN-291-DoxコンジュゲートのMDA-MB-231細胞によるインターナリゼーションを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する抗体。
【請求項2】
前記アミノ末端断片が配列番号1のアミノ酸1-143である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ウロキナーゼの成長因子ドメインに結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記成長因子ドメインが配列番号1のアミノ酸1-48である、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
ウロキナーゼのクリングルドメインに結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
前記クリングルドメインが配列番号1のアミノ酸49-135である、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸136-143と結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体がタンパク質毒素に融合されている、請求項1に記載の抗体。
【請求項10】
前記毒素がシュードモナス(Pseudomonas)外毒素である、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体がIgG1抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体がκ抗体である、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
前記抗体が治療薬にコンジュゲートされている、請求項1に記載の抗体。
【請求項14】
前記治療薬が細胞毒性抗癌剤である、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
前記細胞毒性抗癌剤がタキサン、カンプトテシン、エポチロンまたはタキソールである、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
前記細胞毒性抗癌剤がドキソルビシンである、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
前記治療薬が放射性核種である、請求項13に記載の抗体。
【請求項18】
前記抗体が診断薬にコンジュゲートされている、請求項1に記載の抗体。
【請求項19】
前記診断薬が、放射性核種、陽電子放出断層撮影法による画像化を可能にする薬剤、磁気共鳴イメージング剤、蛍光剤、発蛍光団、発色団、色素原、燐光剤、化学発光剤、または生物発光剤である、請求項18に記載の抗体。
【請求項20】
前記抗体が、ウロキナーゼと結合した後、細胞内にインターナライズされる、請求項1、13、もしくは18のいずれか1つに記載の抗体。
【請求項21】
前記ウロキナーゼがウロキナーゼ細胞表面レセプターと結合する、請求項9に記載の抗体。
【請求項22】
請求項1または請求項13に記載の抗体、および製薬上許容されるビヒクルを含んでなる、医薬組成物。
【請求項23】
請求項1または請求項18に記載の抗体、および製薬上許容されるビヒクルを含んでなる、診断用組成物。
【請求項24】
細胞を、有効量の請求項1または請求項13に記載の抗体と接触させることを含んでなる、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を抑制する方法。
【請求項25】
細胞を、有効量の請求項22に記載の医薬組成物と接触させることを含んでなる、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を抑制する方法。
【請求項26】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の請求項1または請求項13に記載の抗体を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項27】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の請求項22に記載の医薬組成物を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項28】
細胞を、有効量の請求項1または請求項13に記載の抗体と接触させることを含んでなる、アポトーシスを誘導する方法。
【請求項29】
細胞を、有効量の請求項22に記載の医薬組成物と接触させることを含んでなる、アポトーシスを誘導する方法。
【請求項30】
治療上有効な量の請求項1または請求項13に記載の抗体を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、患者においてアポトーシスを誘導する方法。
【請求項31】
治療上有効な量の請求項22に記載の医薬組成物を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、患者においてアポトーシスを誘導する方法。
【請求項32】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生によって引き起こされる疾患を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の請求項1または請求項13に記載の抗体を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項33】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生によって引き起こされる疾患を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の請求項22に記載の医薬組成物を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項34】
前記疾患が、固形腫瘍、白血病もしくはリンパ腫の原発増殖;腫瘍浸潤、転移もしくは転移腫瘍の増殖;良性過形成;粥状動脈硬化;心筋血管新生;バルーン血管形成後血管再狭窄;血管外傷後新生内膜形成;血管移植片再狭窄;冠動脈側枝形成;深部静脈血栓症;虚血肢血管新生;毛細血管拡張症;化膿性肉芽腫;角膜疾患;ルベオーシス;新生血管緑内障;糖尿病性およびその他の網膜症;水晶体後線維増殖症;糖尿病性血管新生;黄斑変性症;子宮内膜症;関節炎;慢性炎症性疾患関連線維症;虚血、瘢痕化、または線維形成を含む外傷性脊髄損傷;肺線維症;化学療法による線維症;瘢痕化および線維形成を伴う創傷治癒;消化性潰瘍;骨折;ケロイド;または、病気の原因となる細胞浸潤もしくは血管新生と関連した、血管形成、造血、排卵、月経、妊娠もしくは胎盤形成の障害である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患が、固形腫瘍、白血病もしくはリンパ腫の原発増殖;腫瘍浸潤、転移もしくは転移腫瘍の増殖;良性過形成;粥状動脈硬化;心筋血管新生;バルーン血管形成後血管再狭窄;血管外傷後新生内膜形成;血管移植片再狭窄;冠動脈側枝形成;深部静脈血栓症;虚血肢血管新生;毛細血管拡張症;化膿性肉芽腫;角膜疾患;ルベオーシス;新生血管緑内障;糖尿病性およびその他の網膜症;水晶体後線維増殖症;糖尿病性血管新生;黄斑変性症;子宮内膜症;関節炎;慢性炎症性疾患関連線維症;虚血、瘢痕化、または線維形成を含む外傷性脊髄損傷;肺線維症;化学療法による線維症;瘢痕化および線維形成を伴う創傷治癒;消化性潰瘍;骨折;ケロイド;または、病気の原因となる細胞の浸潤もしくは血管新生と関連した、血管形成、造血、排卵、月経、妊娠もしくは胎盤形成の障害である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
細胞を、有効量の請求項1または請求項18に記載の抗体と接触させることを含んでなる、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を検出する方法。
【請求項37】
細胞を、有効量の請求項23に記載の診断用組成物と接触させることを含んでなる、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を検出する方法。
【請求項38】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生によって引き起こされる疾患を検出する方法であって、診断上有効な量の請求項1または請求項18に記載の抗体を、そうした処置が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項39】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生によって引き起こされる疾患を検出する方法であって、診断上有効な量の請求項23に記載の診断用組成物を、そうした処置が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項40】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生によって引き起こされる疾患を検出する方法であって、診断上有効な量の請求項1または請求項18に記載の抗体を、そうした処置が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項41】
請求項1、9もしくは13のいずれか1つに記載の抗体が細胞内にインターナライズされるかどうかを検出する方法であって、
細胞を抗体と接触させること、
細胞を洗浄し、固定し、透過性とすること、
診断用に標識された二次抗体を添加すること、ならびに、
診断用標識を検出すること、
を含んでなる前記方法。
【請求項42】
請求項1、9もしくは13のいずれか1つに記載の抗体が細胞内にインターナライズされるかどうかを検出する方法であって、
抗体を診断用に標識すること、
細胞を診断用に標識された抗体と接触させること、ならびに、
診断用標識を検出すること、
を含んでなる前記方法。
【請求項1】
ウロキナーゼのアミノ末端断片と結合する抗体。
【請求項2】
前記アミノ末端断片が配列番号1のアミノ酸1-143である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ウロキナーゼの成長因子ドメインに結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記成長因子ドメインが配列番号1のアミノ酸1-48である、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
ウロキナーゼのクリングルドメインに結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
前記クリングルドメインが配列番号1のアミノ酸49-135である、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸136-143と結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体がタンパク質毒素に融合されている、請求項1に記載の抗体。
【請求項10】
前記毒素がシュードモナス(Pseudomonas)外毒素である、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体がIgG1抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体がκ抗体である、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
前記抗体が治療薬にコンジュゲートされている、請求項1に記載の抗体。
【請求項14】
前記治療薬が細胞毒性抗癌剤である、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
前記細胞毒性抗癌剤がタキサン、カンプトテシン、エポチロンまたはタキソールである、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
前記細胞毒性抗癌剤がドキソルビシンである、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
前記治療薬が放射性核種である、請求項13に記載の抗体。
【請求項18】
前記抗体が診断薬にコンジュゲートされている、請求項1に記載の抗体。
【請求項19】
前記診断薬が、放射性核種、陽電子放出断層撮影法による画像化を可能にする薬剤、磁気共鳴イメージング剤、蛍光剤、発蛍光団、発色団、色素原、燐光剤、化学発光剤、または生物発光剤である、請求項18に記載の抗体。
【請求項20】
前記抗体が、ウロキナーゼと結合した後、細胞内にインターナライズされる、請求項1、13、もしくは18のいずれか1つに記載の抗体。
【請求項21】
前記ウロキナーゼがウロキナーゼ細胞表面レセプターと結合する、請求項9に記載の抗体。
【請求項22】
請求項1または請求項13に記載の抗体、および製薬上許容されるビヒクルを含んでなる、医薬組成物。
【請求項23】
請求項1または請求項18に記載の抗体、および製薬上許容されるビヒクルを含んでなる、診断用組成物。
【請求項24】
細胞を、有効量の請求項1または請求項13に記載の抗体と接触させることを含んでなる、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を抑制する方法。
【請求項25】
細胞を、有効量の請求項22に記載の医薬組成物と接触させることを含んでなる、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を抑制する方法。
【請求項26】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の請求項1または請求項13に記載の抗体を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項27】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の請求項22に記載の医薬組成物を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項28】
細胞を、有効量の請求項1または請求項13に記載の抗体と接触させることを含んでなる、アポトーシスを誘導する方法。
【請求項29】
細胞を、有効量の請求項22に記載の医薬組成物と接触させることを含んでなる、アポトーシスを誘導する方法。
【請求項30】
治療上有効な量の請求項1または請求項13に記載の抗体を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、患者においてアポトーシスを誘導する方法。
【請求項31】
治療上有効な量の請求項22に記載の医薬組成物を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、患者においてアポトーシスを誘導する方法。
【請求項32】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生によって引き起こされる疾患を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の請求項1または請求項13に記載の抗体を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項33】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生によって引き起こされる疾患を治療または予防する方法であって、治療上有効な量の請求項22に記載の医薬組成物を、そうした治療が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項34】
前記疾患が、固形腫瘍、白血病もしくはリンパ腫の原発増殖;腫瘍浸潤、転移もしくは転移腫瘍の増殖;良性過形成;粥状動脈硬化;心筋血管新生;バルーン血管形成後血管再狭窄;血管外傷後新生内膜形成;血管移植片再狭窄;冠動脈側枝形成;深部静脈血栓症;虚血肢血管新生;毛細血管拡張症;化膿性肉芽腫;角膜疾患;ルベオーシス;新生血管緑内障;糖尿病性およびその他の網膜症;水晶体後線維増殖症;糖尿病性血管新生;黄斑変性症;子宮内膜症;関節炎;慢性炎症性疾患関連線維症;虚血、瘢痕化、または線維形成を含む外傷性脊髄損傷;肺線維症;化学療法による線維症;瘢痕化および線維形成を伴う創傷治癒;消化性潰瘍;骨折;ケロイド;または、病気の原因となる細胞浸潤もしくは血管新生と関連した、血管形成、造血、排卵、月経、妊娠もしくは胎盤形成の障害である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患が、固形腫瘍、白血病もしくはリンパ腫の原発増殖;腫瘍浸潤、転移もしくは転移腫瘍の増殖;良性過形成;粥状動脈硬化;心筋血管新生;バルーン血管形成後血管再狭窄;血管外傷後新生内膜形成;血管移植片再狭窄;冠動脈側枝形成;深部静脈血栓症;虚血肢血管新生;毛細血管拡張症;化膿性肉芽腫;角膜疾患;ルベオーシス;新生血管緑内障;糖尿病性およびその他の網膜症;水晶体後線維増殖症;糖尿病性血管新生;黄斑変性症;子宮内膜症;関節炎;慢性炎症性疾患関連線維症;虚血、瘢痕化、または線維形成を含む外傷性脊髄損傷;肺線維症;化学療法による線維症;瘢痕化および線維形成を伴う創傷治癒;消化性潰瘍;骨折;ケロイド;または、病気の原因となる細胞の浸潤もしくは血管新生と関連した、血管形成、造血、排卵、月経、妊娠もしくは胎盤形成の障害である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
細胞を、有効量の請求項1または請求項18に記載の抗体と接触させることを含んでなる、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を検出する方法。
【請求項37】
細胞を、有効量の請求項23に記載の診断用組成物と接触させることを含んでなる、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖または血管新生を検出する方法。
【請求項38】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生によって引き起こされる疾患を検出する方法であって、診断上有効な量の請求項1または請求項18に記載の抗体を、そうした処置が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項39】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生によって引き起こされる疾患を検出する方法であって、診断上有効な量の請求項23に記載の診断用組成物を、そうした処置が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項40】
患者において、細胞遊走、細胞浸潤、細胞増殖もしくは血管新生によって引き起こされる疾患を検出する方法であって、診断上有効な量の請求項1または請求項18に記載の抗体を、そうした処置が必要な患者に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項41】
請求項1、9もしくは13のいずれか1つに記載の抗体が細胞内にインターナライズされるかどうかを検出する方法であって、
細胞を抗体と接触させること、
細胞を洗浄し、固定し、透過性とすること、
診断用に標識された二次抗体を添加すること、ならびに、
診断用標識を検出すること、
を含んでなる前記方法。
【請求項42】
請求項1、9もしくは13のいずれか1つに記載の抗体が細胞内にインターナライズされるかどうかを検出する方法であって、
抗体を診断用に標識すること、
細胞を診断用に標識された抗体と接触させること、ならびに、
診断用標識を検出すること、
を含んでなる前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−501624(P2008−501624A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540028(P2006−540028)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/038617
【国際公開番号】WO2005/048822
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(503033884)アテニュオン, エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/038617
【国際公開番号】WO2005/048822
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(503033884)アテニュオン, エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]