説明

エアカーテン機能を有する自動ドア

【課題】自動ドアの重量増や円滑な開閉動作への悪影響を回避できる合理的な構成によって、スライド両開き方式の自動ドアが開いたとき、プッシュ・プル方式による横向きのエアカーテンを出入口の上端から下端まで安定良く形成できるようにする。
【解決手段】スライド両開き方式の自動ドアを有する出入口の両側に、ダクトとして利用できる密閉状の戸袋5A、5Bを設け、一方の戸袋にはプッシュ側送風機6Aを連通連設して、当該戸袋の開口端をエアの吹出口7に形成し、他方の戸袋にはプル側送風機6Bを
連通連設して、当該戸袋の開口端をエアの吸込口8に形成し、自動ドアの開閉と両送風機の発停とを所定のタイミングで連動させる制御装置を設けて、自動ドアが開いた際、一方の戸袋の開口端から他方の戸袋の開口端に至る横向きのエアカーテンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風除室を設置できない建物の出入口に設けられるスライド両開き方式の自動ドアに関し、詳しくは、自動ドアが開いた際、屋内の空調空気が外部に漏れ出たり、外気が屋内に流れ込むのをエアカーテンにより抑制して、温度変化による熱環境の悪化や隙間風による熱負荷増大を防ぐようにしたエアカーテン機能を有する自動ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
自動ドアは、一般に、人の接近を感知することによって開かれ、人が通過しても、そのまま一定時間だけ開放状態に維持される。そのため、風除室の無い建物の出入口に自動ドアを設けた場合、自動ドアが閉じるまでの間に、屋内の空調空気が外部に漏れ出たり、外気が屋内に流れ込むことになり、屋内の冷暖房効率が低下する。
【0003】
このような問題の解決策の一つとして、特許文献1に示すように、スライド両開き方式の自動ドアの開閉駆動機構を内蔵する出入口上部のケーシング部に、エアカーテン形成用の送風機を組み入れ、自動ドアが左右に開いた際、ケーシング部と自動ドアの隙間(鴨居部分の隙間)から下方に向けてエアを噴出させ、下向きのエアカーテンを形成するようにしたエアカーテン機能を有する自動ドアが提案されている。
【0004】
しかし、この従来技術では、上部からの噴出気流のみによるエアカーテンであるから、ビルのエントランスホールのように、階高に対応した上下に長い自動ドアを持つ出入口では、エアカーテンの機能を発揮させるために、大風量の送風機が必要とされ、エアカーテンによる発生騒音が問題になるばかりでなく、人の通過時に強い風が頭に当たり、不快感を与えることにもなる。
【0005】
これらの問題は、出入口上部のケーシング部にプッシュ側送風機を設ける一方、出入口の下部にはエアの吸込口を設けて、吸込口に連通連設されたプル側送風機によりエアを積極的に下方へ吸引し、エアカーテンを効率良く形成することによって、解決することが可能である。しかし、これによる場合、出入口の下部に吸込口を設けるため、雨仕舞いが困難であり、ゴミや砂などが吸込口に落ち込むといった新たな問題が発生することになる。
【0006】
また、スライド両開き方式の自動ドアにおける開閉する側の端部に縦長の吹出口を設けて、自動ドアが開く際、左右の自動ドアの開口端からエアを出入口の中央に向けて噴出させることにより、横向きのエアカーテンを形成する技術も、特許文献2、3によって提案されている。特許文献2、3に記載では、左右の自動ドアの開口端から出入口の中央に向けてエアを噴出させるように構成されているが、一方の自動ドアの開口端にプッシュ側送風機を連設し、他方の自動ドアの開口端にプル側送風機を連設して、プッシュ・プル方式のエアカーテンを形成するように改良することも可能であると思われる。
【0007】
しかし、何れにしても、これらの従来技術では、開閉動作する自動ドア自体に送風機を組み込むか、或いは、別の箇所に設置した送風機に連結された伸縮ダクトを自動ドアに連結することが必要であり、自動ドアが重くなり、自動ドアの円滑な開閉動作が阻害されることになる。殊に、一方の自動ドアの開口端にプッシュ側送風機を設け、他方の自動ドアの開口端にプル側送風機を設けて、プッシュ・プル方式による横向きのエアカーテンを形成した場合、左右の自動ドアの突合せ端部に、夫々、送風機を内蔵する不透明な縦框が位置することになるため、意匠性が非常に悪いばかりでなく、出入口正面に立ったとき、視界が遮られて不便であり、危険でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平6−35573号公報
【特許文献2】特開昭62−33234号公報
【特許文献3】特表2005−507470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を踏まえてなされたものであって、その目的とするところは、自動ドアの重量増や円滑な開閉動作への悪影響を回避できる合理的な構成によって、スライド両開き方式の自動ドアが開いたとき、プッシュ・プル方式による横向きのエアカーテンを出入口の上端から下端まで安定良く形成できるようにしたエアカーテン機能を有する自動ドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明によるエアカーテン機能を有する自動ドアは、スライド両開き方式の自動ドアを有する出入口の両側に位置する固定壁部分を二重に設置して、ダクトとして利用できる密閉状の戸袋に形成し、一方の戸袋にはプッシュ側送風機を連通連設して、当該戸袋の開口端をエアの吹出口に形成し、他方の戸袋にはプル側送風機を連通連設して、当該戸袋の開口端をエアの吸込口に形成し、自動ドアの開閉と両送風機の発停とを所定のタイミングで連動させる制御装置を設けて、自動ドアが開いた際、一方の戸袋の開口端から他方の戸袋の開口端に至るプッシュ・プル方式による横向きのエアカーテンを形成するようにしたことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエアカーテン機能を有する自動ドアであって、両側の戸袋を形成する二重の固定壁部分が透明ガラスであることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のエアカーテン機能を有する自動ドアであって、室内側の透明ガラスが開閉可能に構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、スライド両開き方式の自動ドアを有する出入口の両側に、ダクトとして利用できる密閉状の戸袋を設け、一方の戸袋にプッシュ側送風機を連通連設し、他方の戸袋にはプル側送風機を連通連設して、自動ドアが開いた際、一方の戸袋の開口端から他方の戸袋の開口端に至るプッシュ・プル方式による横向きのエアカーテンを形成するようにしたので、エアカーテン機能を付加しているにもかかわらず、自動ドアの重量増や円滑な開閉動作への悪影響を回避できる。
【0014】
しかも、一方の戸袋の開口端をエアの吹出口に形成し、他方の戸袋の開口端をエアの吸込口に形成したプッシュ・プル方式による横向きのエアカーテンであるから、左右のドア本体が気流を案内するガイド板の役割を兼ねることになり、このガイド板の機能が、自動ドアの開き始めから開き終わりに至るまで、出入口の上端から下端まで均一に発揮されることになり、小風量によって横向きの気流を安定良く形成できる。
【0015】
因みに、スライド両開き方式の自動ドアが開くとき、出入口の上部から下部に向けてエアを噴流させる下向きのエアカーテンを形成する場合でも、左右のドア本体が、或る程度、ガイド板の役割を果たす。しかし、この場合、自動ドアが開いた範囲内には、ガイド板として機能するドア本体が存在しないので、自動ドアが開いた範囲(出入口の中央側)と、まだ自動ドアが開き切っていない範囲(出入口の両側部分)とでは、ドア本体によるガ
イド板の機能が不均一となる。この点、本発明の構成によれば、スライド両開き方式の自動ドアと、プッシュ・プル方式による横向きのエアカーテンとを組み合わせたので、左右のドア本体によるガイド板の機能を、自動ドアの開き始めから開き終わりに至る間、出入口の上端から下端まで均一に発揮させ得るのである。
【0016】
従って、小風量で効率よくエアカーテンを形成でき、エアカーテンによる発生騒音の問題や、人の通過時に強い風が頭に当たり、不快感を与えるといった不都合も回避できることになり、しかも、横向きのエアカーテンであるため、雨仕舞いが容易であり、ゴミや砂などが吸込口に落ち込むといった問題も発生しない。
【0017】
また、出入口の両側に位置する固定壁部分を戸袋に形成したので、閉じ動作するドア本体との衝突やドア本体と固定壁部分との間での挟み込みを防止して安全を確保するための自動ドア挟まれ防止柵を設置する必要がない。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、両側の戸袋を形成する二重の固定壁部分が透明ガラスであるため、戸袋が視界の妨げにならず、開放感のある意匠性に優れた建物の出入口を実現できる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、室内側の透明ガラスが開閉可能であるため、透明ガラスで形成された戸袋の内面側を容易に清掃することができ、戸袋内部を美麗に保って、優れた意匠性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態を示す自動ドアの斜視図である。
【図2】上記の自動ドアの正面図である。
【図3】上記の自動ドアの閉じ状態における横断平面図である。
【図4】上記の自動ドアの開き始めにおける横断平面図である。
【図5】上記の自動ドアの開き終わりにおける横断平面図である。
【図6】他の実施形態を示す自動ドアの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図5は、本発明に係るエアカーテン機能を有する自動ドアの一例を示す。この自動ドアは、スライド両開き方式(引分戸)とされ、出入口の上部ケーシング1に、2枚のドア本体2を吊下げ支持する既知構造の開閉駆動機構3が内蔵されている。出入口の下部にはドア本体2の下端部をガイドする溝状のガイドレール4が設けられている。ドア本体2は透明ガラスによって構成されている。
【0022】
出入口の両側には、透明ガラスによって構成された固定壁部分を二重に設置することにより、ダクトとして利用できる密閉状の戸袋5A、5Bを形成してある。一方の戸袋5Aにはプッシュ側送風機6Aを連通連設して、当該戸袋5Aの開口端をエアaの吹出口7に
形成し、他方の戸袋5Bにはプル側送風機6Bを連通連設して、当該戸袋5Bの開口端をエアaの吸込口8に形成してある。この実施形態においては、両送風機6A、6Bを、夫々、戸袋5A、5Bの両側に設けた中空構造の柱状部材9A、9Bに内蔵させてあり、一方の柱状部材9Aには室内側に開口する吸気口10が形成され、他方の柱状部材9Bには室内側に開口する排気口11が形成されている。両送風機6A、6Bとしては、例えば、クロスフローファン、シロッコファンなど、種々の形式のものを採用することが可能である。
【0023】
上部ケーシング1には、室外側と室内側に、夫々、人の接近を感知するセンサ12が設けられている。自動ドアの開閉駆動機構3と両送風機6A、6Bの電源回路には、センサ
12による検知信号に基づいて、自動ドアの開閉と両送風機6A、6Bの発停とを所定のタイミングで連動させる制御装置(図示せず)が設けられている。そして、自動ドアが開いた際、一方の戸袋5Aの開口端(吹出口7)から他方の戸袋5Bの開口端(吸込口8)
に至るプッシュ・プル方式による横向きのエアカーテンを形成するように構成してある。
【0024】
戸袋5A、5Bを形成する二重の透明ガラスのうち、室内側の透明ガラス5a、5bは、柱状部材9A、9Bによって縦軸芯周りで揺動可能な状態に支持されており、必要に応じて図外のロック機構を室内側から解除することにより、透明ガラス5a、5bを開閉できるように構成されている。
【0025】
上記の構成によれば、スライド両開き方式の自動ドアを有する出入口の両側に、ダクトとして利用できる密閉状の戸袋5A、5Bを設け、一方の戸袋5Aにプッシュ側送風機6Aを連通連設し、他方の戸袋5Bにはプル側送風機6Bを連通連設して、自動ドアが開いた際、一方の戸袋5Aの開口端(吹出口7)から他方の戸袋5Bの開口端(吸込口8)に
至るプッシュ・プル方式による横向きのエアカーテンを形成するようにしたので、エアカーテン機能を付加しているにもかかわらず、自動ドアの重量増や円滑な開閉動作への悪影響を回避できる。
【0026】
しかも、一方の戸袋5Aの開口端をエアの吹出口7に形成し、他方の戸袋5Bの開口端
をエアの吸込口8に形成したプッシュ・プル方式による横向きのエアカーテンであるから、左右のドア本体2が気流を案内するガイド板の役割を兼ねることになり、このガイド板の機能が、自動ドアの開き始めから開き終わりに至るまで、出入口の上端から下端まで均一に発揮され、小風量によって横向きの気流を安定良く形成できる。
【0027】
従って、小風量で効率よくエアカーテンを形成でき、エアカーテンによる発生騒音の問題や、人の通過時に強い風が頭に当たり、不快感を与えるといった不都合も回避できることになり、しかも、横向きのエアカーテンであるため、雨仕舞いが容易であり、ゴミや砂などが吸込口に落ち込むといった問題も発生しない。
【0028】
また、出入口の両側に位置する固定壁部分を戸袋5A、5Bに形成したので、閉じ動作するドア本体2との衝突やドア本体2と固定壁部分との間での挟み込みを防止して安全を確保するための自動ドア挟まれ防止柵を設置する必要がない。
【0029】
また、上記の構成によれば、両側の戸袋5A、5Bを形成する二重の固定壁部分が透明ガラスであるため、戸袋5A、5Bが視界の妨げにならず、開放感のある意匠性に優れた建物の出入口を実現できる。しかも、室内側の透明ガラス5a、5bが開閉可能であるため、透明ガラスで形成された戸袋5A、5Bの内面側を容易に清掃することができ、戸袋5A、5B内部を美麗に保って、優れた意匠性を維持することができる。
【0030】
図6は、本発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、戸袋5A、5Bに連通連設するプッシュ側送風機6A、プル側送風機6Bを、夫々、出入口から離れた室内側の適当な位置(例えば、天井空間など)に設け、戸袋5A、5Bと両送風機6A、6Bとを、夫々、配管13A、13B及び中空構造の柱状部材9A、9Bを介して接続した点に特徴がある。この場合、中空構造の柱状部材9A、9Bは、エアチャンバーとして機能することになる。その他の構成、作用は、先の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0031】
1 上部ケーシング
2 ドア本体
3 開閉駆動機構
4 ガイドレール
5A、5B 戸袋
5a、5b 室内側の透明ガラス
6A プッシュ側送風機
6B プル側送風機
7 吹出口
8 吸込口
9A、9B 柱状部材
10 吸気口
11 排気口
12 センサ
13A、13B 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド両開き方式の自動ドアを有する出入口の両側に位置する固定壁部分を二重に設置して、ダクトとして利用できる密閉状の戸袋に形成し、一方の戸袋にはプッシュ側送風機を連通連設して、当該戸袋の開口端をエアの吹出口に形成し、他方の戸袋にはプル側送風機を連通連設して、当該戸袋の開口端をエアの吸込口に形成し、自動ドアの開閉と両送風機の発停とを所定のタイミングで連動させる制御装置を設けて、自動ドアが開いた際、一方の戸袋の開口端から他方の戸袋の開口端に至るプッシュ・プル方式による横向きのエアカーテンを形成するようにしたことを特徴とするエアカーテン機能を有する自動ドア。
【請求項2】
戸袋を形成する二重の固定壁部分が透明ガラスであることを特徴とする請求項1に記載のエアカーテン機能を有する自動ドア。
【請求項3】
屋内側の透明ガラスが開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載のエアカーテン機能を有する自動ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−140812(P2012−140812A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−332(P2011−332)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】