説明

エアゾール容器用噴射装置

【課題】残留ガス排出機能を備えつつ、キャップ本体部とボタン部とが一体として形成され、製造コストを抑えたエアゾール容器用噴射装置を提供する。
【解決手段】エアゾール容器50に装着されるキャップ本体部10と、キャップ本体部10と一体として形成され、エアゾール容器50のステム51を押下して、ステム51から噴出された内容物を噴射口11へ案内するボタン部20と、ボタン部20と弱剛体部21を介して回動可能に接続された操作レバー部22と、キャップ本体部10に設けられ、ステム51が押下状態となる位置で、回動された操作レバー部22の後方先端部の両端30,30と係合する係合片12,12と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器用噴射装置に関し、特に、エアゾール容器に装着された状態でボタン部の押し下げを維持して残留ガス成分の除去を可能にする残留ガス排出機能を備えたエアゾール容器用噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭剤や殺虫剤等のように、エアゾール容器の内容物を噴射口から外部へ噴射させるエアゾール製品が知られている。一般に、消臭剤や殺虫剤等のエアゾール製品に使われているエアゾール容器の内部には液状、粉状の内容物と一緒に噴射剤として圧縮された可燃性ガスが充填されており、エアゾール容器に装着された噴射装置によってステムが押下されたときに、内容物が噴射されるように構成されている。
【0003】
例えば特許文献1には、エアゾール容器の頭頂部に突設されたステムに下端部で嵌着し、前方への噴射口に上端部で連通するノズルを備えて、押し下げ操作される噴射ヘッド本体と、エアゾール容器頭頂部に装着されている噴射ヘッド本体の上方は開放させて周囲をカバーし、かつ噴射口に対面する開口部を正面に形成されたカバーキャップとを備え、噴射ヘッド本体の前端下端部が開口部の下側部分に上下に可撓性を呈する連結片を介して一体成形されたエアゾール容器用噴射ヘッドが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、エアゾール容器は、液状、粉状の内容物を使い切った後でも内容物放出用の可燃性ガスが残っていることが多い。可燃性ガスは火気があれば引火して爆発燃焼する可能性のあるガスであるため、可燃性ガスが残ったままの状態でエアゾール容器を廃棄すると思わぬ事態が生じかねない。このため、残留ガスを全て排出させてからエアゾール容器を廃棄することができるように、残留ガス排出機能を備えた噴射装置が提案されている。
【0005】
従来のエアゾール容器に装着された状態で噴霧ヘッドの押し下げを維持して残留ガス成分の除去を可能にするエアゾール容器用残留ガス抜き装置は、エアゾール容器に装着した肩カバーを前記エアゾール容器の軸線を中心に旋回させて噴霧ヘッドを押し下げた状態に固定することによって残留ガス成分の除去を行っていた。(例えば、特許文献2参照)
【0006】
【特許文献1】特開2002−308360公報
【特許文献2】特開2003−165588公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2のエアゾール容器用残留ガス抜き装置は、噴霧ヘッドと肩カバーとが別部材になっており、一体として製造することができない。すなわち、構成部品点数が多く製造コストが嵩む傾向にある。一方、特許文献1に記載のエアゾール容器用噴射ヘッドでは、キャップと噴射ヘッドとが一体として形成されているのでより製造コストを抑えることができるような構成となっているが、残留ガス排出機能は備えていない。
【0008】
そこで、本発明は、残留ガス排出機能を備えつつ、キャップ本体部とボタン部とが一体として形成され、製造コストを抑えたエアゾール容器用噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することのできる本発明は、エアゾール容器に装着されるキャップ本体部と、前記キャップ本体部と一体として形成され、前記エアゾール容器のステムを押下して、該ステムから噴出された内容物を噴射口へ案内するボタン部と、前記ボタン部と弱剛体部を介して回動可能に接続された操作レバー部と、前記キャップ本体部に設けられ、前記ステムが押下状態となる位置で、回動された前記操作レバー部と係合する係合部と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、キャップ本体部とボタン部が一体として形成されている。さらに、キャップ本体部に備えられた係合部と、ボタン部と弱剛体部を介して回動可能に接続された操作レバー部とが係合すると、ステムの押下状態が維持されるようになっている。これにより、エアゾール容器の残留ガス排出機能を備え、かつキャップ本体部とボタン部が一体となったエアゾール容器用噴射装置を提供することができる。また、全ての構成要素が一体として形成されているので、部品点数を最小限に抑え、製造コストを抑えることが可能である。
【0011】
また、上記構成において、前記操作レバー部は、ボタン部上面と同一平面上に位置する状態から、操作レバー部表面がボタン部上面と接面する状態まで、前記弱剛体部を回転軸として正回転されることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、操作レバー部を、操作レバー部表面がボタン部上面と接面するまで回転させるだけで、ボタン部を押下させ、エアゾール容器のステムを押下させることができるので、煩雑な操作を必要とせずに残留ガスを排出させることが可能となる。
【0013】
また、上記構成において、前記操作レバー部の裏面には、該操作レバー部が前記正回転と逆回転されることを防止する逆回転防止片が形成されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、操作レバー部にどのような力が加わっても操作レバーが逆回転するのを防止することが可能である。すなわち、通常使用時において、ボタン部の押下に伴って、操作レバー部に逆回転方向に力が加わっても、逆回転防止片によって逆回転するのを防止することができる。これによって、回転軸となる弱剛体部に無理な力が加えられることがなく、操作レバー部が破損するのを防止することができる。
【0015】
また、上記構成において、前記係合部は、前記ボタン部を介して対向するよう配置された一対の係合片であって、前記操作レバー部は、先端部に向かうにしたがって幅広になるよう形成され、該先端部の両端が前記一対の係合片と係合することを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、先端部に向かうにしたがって幅広に形成された操作レバー部は、正回転されると、その先端部の両端が一対の係合片と係合する。すなわち、残留ガス排出時においてのみ幅広に形成された先端部の両端が一対の係合片と係合するので、通常使用時においては、幅広の先端部がボタン部の動きを邪魔することがない。つまり、操作レバー部の先端部を幅広に形成するという単純な構成をとるだけで、通常使用状態と残留ガス排出状態とを容易に切り替えることができ、しかも全ての構成要素が一体として形成され、製造コストを抑えたエアゾール容器用噴射装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、残留ガス排出機能を備えつつ、キャップ本体部とボタン部とが一体として形成され、製造コストを抑えたエアゾール容器用噴射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るエアゾール容器用噴射装置の実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
(エアゾール容器用噴射装置の構造について)
本実施形態のエアゾール容器用噴射装置は、主として、キャップ本体部とボタン部とから構成されている。まず、図1〜図6を用いて、本実施形態にかかるエアゾール容器用噴射装置1を構成するエアゾール容器用噴射装置1の構造について説明する。図1は本実施形態にかかるエアゾール容器用噴射装置の正面図、図2はエアゾール容器用噴射装置の背面図、図3は、エアゾール容器用噴射装置の上面図、図4はエアゾール容器用噴射装置の底面図、図5は、図3のA−A線断面図、図6は、図3のB−B線断面図である。
【0019】
エアゾール容器用噴射装置1は、図1〜図4に示すように略円筒形状の概観を有し、主として、エアゾール容器に装着されるキャップ本体部10と、キャップ本体部10と一体として形成され、エアゾール容器のステムを押下して、ステムから噴出された内容物を噴射口11へ案内するボタン部20と、を備えている。
【0020】
キャップ本体部10は、図1〜3に示すように上面視円形状を有し、前方指先案内凹部5aと後方指先案内凹部5bとからなる指先案内凹部5を介して上部左右に天板部6,6が形成されている。ユーザは、指先案内凹部5の中央部分より幅広に形成された後方指先案内凹部5bからボタン部20に指を添え、エアゾール装置60の操作を行うことができる。
【0021】
また、図5、6に示すように、キャップ本体部10の内部の下部周縁にはエアゾール容器50(図8参照)と嵌合する嵌合手段8が形成されている。
【0022】
さらに、キャップ本体部10には、高さh(図2、5参照)に相当する位置であって指先案内凹部5の略中央部分に、後述する操作レバー部22と係合する一対の係合片12,12(係合部)が形成されている。図2、5に示すように、係合片12,12は、背面視略三角形状を有し、その斜面がキャップ本体部10の天面方向を向くように、ボタン部20を介して互いに対向するように配置されている。
【0023】
ボタン部20には、図3、4、6に示すように、操作レバー部22が、弱剛体部21を介して回動可能に接続されている。操作レバー部22は、ボタン部上面23と同一平面上に形成され、キャップ本体部後方に向かうにしたがって幅広になるよう形成されている。操作レバー部表面24とボタン部上面23とが同じ方向を向いた状態から、操作レバー部表面24がボタン部上面23と接面する状態へ、弱剛体部21を回転軸として図6に示す矢印X方向へ回転(正回転)され、操作レバー部22の後方先端部の両端30,30が一対の係合片12,12と係合するよう構成されている。
【0024】
また、操作レバー部裏面25には、操作レバー部22がX方向回転と逆方向に回転(図6の矢印Y方向回転)されることを防止する逆回転防止片26が形成されている。逆回転防止片26を設けることによって、操作レバー部22を矢印Y方向へ回転させる力が加わった場合に、逆回転防止片26の先端部分がボタン部20の後方側壁27(図6参照)へ当接するため、操作レバー部22が逆回転するのを防止することができる。すなわち、通常使用時において、ボタン部20の押下に伴って、操作レバー部22に逆回転方向に力が加わっても、逆回転防止片26によって逆回転するのを防止することができる。これによって、回転軸となる弱剛体部21に無理な力が加えられることがなく、操作レバー部22が破損するのを防止することができる。
【0025】
図4〜6に示すように、ボタン部20の内部略中央部には、ステム51に装着されるステム装着部28が形成され、ステム装着部28と噴射口11とを、噴射案内経路29によって接続している。ボタン部20の押下に伴って、エアゾール容器のステムが押下され、ステムから噴出された内容物は、噴射案内経路29から噴射口11へ案内され、外部へ噴射される。
【0026】
(エアゾール容器用噴射装置の作用について)
次に、本実施形態のエアゾール容器用噴射装置1の作用について説明する。図7は、本実施形態のエアゾール容器用噴射装置における残留ガス排出中の上面図、図8は、図7のC−C線断面図である。
【0027】
図8に示すように本実施形態において、キャップ本体部10は嵌合手段8によってエアゾール容器50に嵌合されることによってエアゾール装置60が構成される。通常使用時は、ユーザが後方指先案内凹部5から、ボタン部上面23及び操作レバー部表面24に指を掛け、そのまま図6に示す矢印Y方向に押し下げることによって、ステム51が押下されて、エアゾール容器50の内容物が噴射案内経路29を経由して、噴射口11から噴射される。
【0028】
噴射状態を維持する(残留ガス排出する)場合は、操作レバー部22の先端部をつまみ、弱剛体部21を回転軸として図6に示す矢印X方向へ操作レバー部22を回転させる。すなわち、操作レバー部表面24がボタン部上面23と同一方向を向いた状態から、操作レバー部表面24がボタン部上面23と接面するよう操作レバー部22を正回転させる。
【0029】
操作レバー部22の後方先端部の両端30,30が一対の係合片12,12にぶつかると、ユーザはボタン部20をさらに押し下げる。すると、図8に示すように、係合片12,12の斜面を利用して、操作レバー部22が係合片12,12の下側に入り込むと、操作レバー部表面24がボタン部上面23と接面した状態で係合される。
【0030】
図8に示すような係合状態では、ボタン部20は、操作レバー部22のほぼ厚さ分だけ押下されるので、係合状態が解除されない限り、ステム51が押下された状態が維持され、エアゾール容器50の残留ガスを最後まで排出させることが可能となる。
【0031】
このように、本実施形態のエアゾール容器用噴射装置1は、残留ガス排出時においてのみ幅広に形成された後方先端部の両端30,30が一対の係合片12,12と係合するので、通常使用時においては、操作レバー部22がボタン部20の動きを邪魔することがない。つまり、操作レバー部22の先端部を幅広に形成するという単純な構成をとり、かつ操作レバー部22を回転させるという容易な動作だけで、通常使用状態と残留ガス排出状態とを容易に切り替えることができる。しかもキャップ本体部10、ボタン部20、操作レバー部22の全てが一体形成されているので、製造コストを抑えたエアゾール容器用噴射装置を提供することができる。
【0032】
また、本実施形態のエアゾール容器用噴射装置1は、操作レバー部22を操作レバー部表面24がボタン部上面23と接面する状態まで、すなわち操作レバー部22を180度、正回転(X方向回転)させれば、ステムの押下状態を維持することができるので、煩雑な操作を必要とせずに残留ガスを排出させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態にかかるエアゾール容器用噴射装置の正面図である。
【図2】本実施形態にかかるエアゾール容器用噴射装置の背面図である。
【図3】本実施形態にかかるエアゾール容器用噴射装置の上面図である。
【図4】本実施形態にかかるエアゾール容器用噴射装置の底面図である。
【図5】図3のA−A線断面図である。
【図6】図3のB−B線断面図である。
【図7】本実施形態のエアゾール容器用噴射装置における残留ガス排出中の上面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1:エアゾール容器用噴射装置、10:キャップ本体部、11:噴射口、12:係合片、20:ボタン部、21:弱剛体部、22:操作レバー部、23:ボタン部上面、24:操作レバー部表面、26:逆回転防止片、28:ステム装着部、50:エアゾール容器、51:ステム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器に装着されるキャップ本体部と、
前記キャップ本体部と一体として形成され、前記エアゾール容器のステムを押下して、該ステムから噴出された内容物を噴射口へ案内するボタン部と、
前記ボタン部と弱剛体部を介して回動可能に接続された操作レバー部と、
前記キャップ本体部に設けられ、前記ステムが押下状態となる位置で、回動された前記操作レバー部と係合する係合部と、を有することを特徴とするエアゾール容器用噴射装置。
【請求項2】
前記操作レバー部は、ボタン部上面と同一平面上に位置する状態から、操作レバー部表面がボタン部上面と接面する状態まで、前記弱剛体部を回転軸として正回転されることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用噴射装置。
【請求項3】
前記操作レバー部の裏面には、該操作レバー部が前記正回転と逆回転されることを防止する逆回転防止片が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエアゾール容器用噴射装置。
【請求項4】
前記係合部は、前記ボタン部を介して対向するよう配置された一対の係合片であって、前記操作レバー部は、先端部に向かうにしたがって幅広になるよう形成され、該先端部の両端が前記一対の係合片と係合することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のエアゾール容器用噴射装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−37455(P2008−37455A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213575(P2006−213575)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【Fターム(参考)】