説明

エアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造

【課題】エアバッグドア展開時の内装品の変形に対し、相手方内装部材側を追従し易くして、エアバッグの展開圧力を効果的に吸収緩和するエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造を提供する。
【解決手段】エアバッグドア部付き車両用内装品1の裏面1bに、相手方内装部材7との連結用係合部6が一体に成形される一方、該係合部6に対向する部位に被係合部70を設けた該内装部材7が、その被係合部70周りの板状部71bに複数のスリット72或いは透孔73を形成するか、又は該被係合部70周りの板状部71bの厚みt1を該内装部材7の板状主部71aの厚みt2よりも薄く形成して、該被係合部70を前記係合部6に直接係止するかビス5で両者6,70を係止することにより、前記内装品1に該内装部材7が接続一体化し、且つ、その内装品1の変形に前記板状部71bが追従変形するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエアバッグを開放する開口部を有するパッセンジャーエアバッグリッド等のエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置82を備える車両には、例えば図12のように裏面9a側に形成した櫓体91にボス92を立設させる樹脂製パッセンジャーエアバッグリッド9が用いられることがある。該パッセンジャーエアバッグリッド9は、ボス92を介して、インストルメントパネルの板状部位71にビス5で接続固定される。パッセンジャーエアバッグリッド9を用いたエアバッグ装置82は、車両衝突時に、エアバッグドア部86が開いて、バッグ82aが飛び出すことにより乗員を保護する構造になっている(図13)。符号81はエアバッグガイド用枠体、符号81aは該枠体81に設けた通孔、符号83はエアバッグケース、符号83aはフック、符号84はブラケット、符号85はリンフォースを示す。
ところで、前記エアバッグドア部86の展開時に、バッグ82aが飛び出す力によって、パッセンジャーエアバッグリッド9が、図13の中黒矢印のように押し上げられ変形する。パッセンジャーエアバッグリッド本体90、板状部で構成された櫓体91、及びボス92によるインストルメントパネルの板状部位71へのビス接続構造は、パッセンジャーエアバッグリッド9の変形時の変位量を吸収するのが困難で、最悪の場合、強度的に一番弱い櫓体91の根元91aで剥離する虞があった。剥離対策として、櫓体91の板厚を厚肉化する方法も考えられる。しかし、そのようにすれば、櫓体91がパッセンジャーエアバッグリッド製品9の意匠裏面9aに着地するため、今度は意匠面側にヒケなどの外観不良を誘発した。
こうしたなか、ヒケ対策を講じながらその問題解決に取り組む発明や、エアバッグの展開圧力が過剰に作用しないようにする発明が提案されている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−237562号公報
【特許文献2】特開2007−87055号公報
【0004】
特許文献1は、電気回路部品を収容する樹脂成型筐体であるが、その請求項1に記載のごとく「樹脂成型筐体の裏面に、前記電気回路部品を支持するリブが、前記樹脂成型筐体に一体的に突出形成されており、且つ前記リブは、前記樹脂成型筐体に比べて肉薄に形成されたリブ部と、前記リブ部上に一体に形成されたボス部とを備え、前記リブ部が、前記樹脂成型筐体に接合」されている。さらに、その段落0126に、「リブ部3Bは、箱体形状、この例では、図7(c)に示すように、底面視した場合、概ねE字形状にされて、樹脂成型筐体(この例では、化粧カバー体1a)の裏面に接合することで、樹脂成型筐体への接合面積を、図5に示すリブ2Aより更に大きくし、樹脂成型筐体1に対するリブ2Bの機械的強度を増している」と発明開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1のリブ部の形状では、エアバッグドア展開時の衝撃を吸収するにまだ不十分であった。図13で説明すれば、エアバッグドア展開時において、櫓体根元91a(特許文献1ではリブ部根元)で剥離に耐え得る縦方向の引張り強さを向上させる必要があった。パッセンジャーエアバッグリッド9の変形時の変位量に抗する引張強度を高めるにも限界があった。
また、特許文献2は、「ヒンジ部15を湾曲変形可能な板状に形成して」、「エアバッグ27の展開圧力を効果的に吸収する」が、板状として樹脂素材そのものの湾曲変形可能な特性のみに依存する発明であった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するもので、エアバッグドア展開時の内装品の変形に対し、相手方内装部材側を追従し易くして、エアバッグの展開圧力を効果的に吸収緩和するエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、
エアバッグドア部付き車両用内装品(1)の裏面(1b)に、相手方内装部材(7)との連結用係合部(6)が一体に成形される一方、該係合部(6)に対向する部位に被係合部(70)を設けた該内装部材(7)が、その被係合部(70)周りの板状部(71b)に、複数のスリット(72)を形成する構成、又は複数の透孔(73)を形成する構成、又は前記板状部(71b)の厚み(t1)を、該内装部材(7)の板状主部(71a)の厚み(t2)よりも薄く形成する構成のうち、一つ又はそれらの組み合わせから選択される構成を有し、該被係合部(70)を前記係合部(6)に直接係止するか又はビス(5)で両者(6,70)を係止することにより、前記内装品(1)に該内装部材(7)が接続一体化し、且つ、その内装品(1)の変形に前記板状部(71b)が追従変形するようにしたことを特徴とするエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造にある。
請求項2に係るエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造の発明は、請求項1で、係合部(6)をボス(6a)とすると共に前記被係合部(70)を通孔(70b)とし、該通孔(70b)に挿通したビス(5)がボス穴(62)に挿入,係止することにより、前記内装品(1)に前記内装部材(7)が接続一体化し、且つ、その内装品(1)の変形に前記板状部(71b)が追従変形するようにしたことを特徴とする。請求項3に係るエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造の発明は、請求項2で、通孔(70b)周りの板状部(71b)に細長帯状の前記スリット(72)を一対形成し、且つ一対の該スリット(72)が前記通孔(70b)を真ん中にして平行に配されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造は、内装品側に衝撃等で発生する変位量について、接続される相手方内装部材にその変位量を速やかに吸収させることができ、櫓体根元での剥離防止を確実にし、品質向上に貢献できるなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係るエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造の一部破断正面図である。
【図2】図1のII-II線矢視図である。
【図3】エアバッグドア部付き車両用内装品の概略斜視図である。
【図4】図3の部分拡大斜視図である。
【図5】櫓体に立設する係合部の平面図である。
【図6】図1のVI-VI線矢視図である。
【図7】図1の状態から、車両用内装品に白抜矢印方向に外力が加わり変形した際、内装部材が変形追従する様子を示す一部破断正面図である。
【図8】(イ),(ロ)は被係合部周りの板状部に複数のスリットが形成された部分平面図、(ハ)は被係合部周りの板状部に複数の透孔が形成された部分平面図である。
【図9】スリットに代えて、被係合部周りの板状部の厚みを内装部材の板状主部の厚みよりも薄く形成した他態様図で、図1に対応する説明図である。
【図10】図9の説明図に、さらにスリットを設けた別態様図である。
【図11】実施形態2に係るエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造の一部破断説明図である。
【図12】従来技術の説明断面図である。
【図13】従来技術の説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造について詳述する。
(1)実施形態1
図1〜図10は本発明のエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造の一形態で、図1がエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造の一部破断正面図、図2が図1のII-II線矢視図、図3がエアバッグドア部付き車両用内装品の概略斜視図、図4が図3の部分拡大斜視図、図5が櫓体に立設する係合部の平面図、図6が図1のVI-VI線矢視図、図7が図1の状態から、車両用内装品に白抜矢印方向に外力が加わった時の一部破断正面図である。図8は(イ),(ロ)が被係合部周りの板状部に複数のスリットが形成された部分平面図、(ハ)が被係合部周りの板状部に複数の透孔が形成された部分平面図、図9はスリットに代えて、被係合部周りの板状部の厚みを内装部材の板状主部の厚みよりも薄く形成した他態様図、図10は図9の板状部にスリットを更に設けた別態様図である。尚、図1,図7、図9〜図11は櫓体を簡略図示する。
【0011】
本実施形態のエアバッグドア部付き車両用内装品1(以下、単に「内装品」という。)と内装部材7との接続構造は、内装品1としてのパッセンジャーエアバッグリッドと、内装部材7としてのインストルメントパネルとの接続構造に適用する。内装品1はエアバッグが開放する開口部12を有するエアバッグドア部付きパッセンジャーエアバッグリッドになっている。該内装品1は、熱可塑性樹脂からなる図1ごとくの板状射出成形品で、櫓体2と係合部6とを具備する。
この内装品1に係る板状部11の裏面11bには、略四角筒枠の形で、別成形されたエアバッグガイド用枠体81が接着固定される(図3,図4)。枠体81の外鍔811が板状部裏面11bに接着する。枠体内81cの底板810には、図4に見られるようなH字状の細隙86aが設けられて、二つのエアバッグドア部86を形成する。符号86bは両エアバッグドア部86をつなぐ括れ部分を示す。枠体内81cに配される内装品1の裏面11bには、例えば前記細隙86aに合わせて、溝底が意匠面11aの手前でおさまる断面略U字状の溝(図示せず)が設けられる。エアバッグドア部86の展開時に、内装品1の枠体内81cの板状部11を開口部12へと円滑移行させるためである。
【0012】
櫓体2は、前記枠体81近くの外側で、樹脂成形品1に係る板状部11の裏面11bに複数設けられる(図3,図4)。櫓体2は囲い壁部3と天板部4とからなる。各囲い壁部3は、板状部裏面11bに起立する平面視弧状の基壁31と、その両側から平面視ほぼ直線状に延設する側壁35とで、板状部裏面11bと平行の断面形状がU字状に設けられる。さらに、基壁31と両側壁35,35が、それらの上縁でU字状の囲い壁部3の内方へ屈曲後、水平に延び、図5,図6で、U字状囲い壁部3の上方に上蓋ごとくの天板部4を一体形成して櫓体2とする。囲い壁部3の肉厚は、該囲い壁部3の土台となる板状部11の肉厚の40%以下で成形される。板状部11の肉厚が40%を越えると、板状部11の意匠面11a側にヒケが出やすくなるからである。
【0013】
前記両側壁35,35は、接地面たる板状部11の裏面11bに対し、囲い壁部3及び天板部4で囲われた櫓空間2cの内側へ傾倒させて立設する。図6で説明すると、櫓体2は左右対称で、側壁35は板状部11に対し、正面視鋭角の角度θで櫓空間2cの内側へ向け上方傾斜させて起立する。
【0014】
そして、相手方内装部材7(インストルメントパネル)との連結に供する係合部6たるボス6aが、前記櫓体上に立設する。ボス6aが櫓体に係る天板部4の表面4aに起立する。該ボス6aは、櫓体2と同様、内装品1の成形時にこれと一体に成形される。符号61はボス本体たる円筒部、符号62はボス穴、符号63はボス6aの補強用リブを示す。
【0015】
一方、相手方内装部材7は、前記係合部6たるボス6aに対向する板状部位71に被係合部70たる通孔70bを設けた樹脂成形品である(図1,図6)。既述のごとくインストルメントパネルとする。係合部6をボス6aとすると共に被係合部70を通孔70bとして、該通孔70bに挿通したビス5の先端部51がボス穴62に挿入,係止することにより、内装部材7が内装品1に接続一体化する。内装品たるインストルメントパネル7は、ビス5で通孔70b,ボス6aを介してパッセンジャーエアバッグリッド1に接続固定される。
【0016】
該内装部材7には、通孔70b周りの板状部71bに複数のスリット72が形成される。本実施形態は、図1,図2のごとく通孔70b周りの板状部71bに細長帯状のスリット72が一対形成され、両スリット72が通孔70bを真ん中にして平行に配される。ビス5が通孔70bを通ってボス穴62に挿着固定されて、内装品1に接続一体化した内装部材7は、両スリット72の形成で、内装品1の変形に板状部71bが追従変形する構成になっている。図1,図2中、符号75は起立板状部位を示す。
【0017】
内装部材7を形成する樹脂成形品は可撓性を有し、さらに通孔70b周りの板状部71bに、図2ごとく通孔70bを真ん中にして一対のスリット72が平行配設されると、その通孔70b周りの板状部71bで、樹脂の保有する可撓性,弾性変形の特性がより顕著になる。ビス5で、通孔70b,ボス6aを挿通,係止することにより、図1のごとく内装部材7が内装品1に接続固定され、車両に組み付けられる。しかるに、通孔70bを挟んで、該通孔70bの両サイド域にある板状部71bに一対のスリット72を形成するので、図7のような内装品1に加わる白抜矢印方向の外力に対して、内装品1の変形に伴って、内装部材7に係るスリット72周りの板状部71bが追従変形するようになる。
例えば、図7で、エアバッグドア部86の展開により衝撃を伴った白抜矢印方向の外力が働くと、板状部11の左側が紙面上方へ持ち上げられる。内装品1に内装部材7が接続一体化されており、そのままでは図13のごとく一番弱い櫓体の根元部分等が剥離する。一方、本発明のごとく通孔70b周りの板状部71bにスリット72が形成されると、エアバッグドア部86の展開で発生する変位量を内装部材7が吸収する。櫓体の根元で剥離する前に、内装部材7が中黒矢印の伝達外力を受けて、スリット72周りの板状部71bが図7のごとく弾性変形して、内装品1側で発生した変位量を吸収する。エアバッグドア部86の展開時に、パッセンジャーエアバッグリッド1が押し上げられ変形しても、その変形時の変位量を、図7のごとく相手方内装部材7のスリット72周りの板状部71bが撓み変形で上方へ引き上げられて円滑吸収する。従来、エアバッグドア部86の展開時に、ともすれば櫓体根元29(図13では符号91a)が剥離して強度不足に陥っていた問題に、その部分の強度を上げて直接対抗するのでなく、相手方内装部材7に係るスリット72周りの板状部71bが変形して変位量を吸収し解決する構造になっている。
【0018】
本実施形態のスリット72は、図1,図2のごとく、一対のスリット72が通孔70bの孔径に匹敵する溝幅にして、通孔70bを真ん中にして平行配設したが、図8(イ),(ロ)のような他態様図のようにもできる。図8(イ)は通孔70bを取り囲むようにして、一方向に向かう細幅スリット72が板状部71bに多数設けられる。図8(ロ)は通孔70bを取り囲むようにして、細幅スリット72が放射線状に複数配される構成である。
また、スリット72に代えて、図8(ハ)のような透孔73とすることもできる。図8(ハ)は、通孔70bを取り囲むようにして、通孔70b周りの板状部71bに小さな円孔からなる透孔73が多数配設される。図8(イ)〜(ハ)のいずれも、一対の前記スリット72と同様、エアバッグドア部86の展開時に、パッセンジャーエアバッグリッド1が押し上げられ変形しても、その変形変位量を、相手方内装部材7に係るスリット72又は透孔73周りの板状部71bが撓み変形で吸収する構成である。
【0019】
また、図9に内装品1と内装部材7との接続構造の他態様図を示す。被係合部70たる通孔70b周りの板状部71bの厚みを、内装部材7の板状主部71aの厚みよりも薄く形成する。スリット72,透孔73に代って、被係合部70周りの板状部71bの厚みtを内装部材7の板状主部71aの厚みtよりも薄く形成することで、その通孔70b周りの板状部71bが、樹脂の保有する可撓性,弾性変形の特性を一段と高める。通孔70b周りの板状部71bは、図9の紙面垂直方向に厚みtで薄板状に形成され、撓み変形し易くしている。符号74は板状部71bの薄くなった厚みt形成で、内装部材7の裏面7bにできる凹所を示す。
内装部材7が内装品1に接続固定されて、内装品1に図7のような白抜矢印方向の外力が加わった時、通孔70b周りの板状部71bの厚みtが薄く形成されているので、内装品1の変形に伴って、相手方内装部材7に係る通孔70b周りの薄肉の板状部71bが持ち上げられて追従変形する構成にある。
【0020】
また、図10は通孔70b周りの板状部71bの厚みtを内装部材7の板状主部71aの厚みtよりも薄く形成した図9の板状部71bに、さらに図1,図2で設けたスリット72を形成する内装部材7と、内装品1との接続構造の他態様図である。通孔70b周りの板状部71bの厚みtを薄く形成し、さらにスリット72を設けるので、両者の相乗効果で、通孔70b周りの板状部71bが一層撓み変形し易くなっている。エアバッグドア部86の展開時に、パッセンジャーエアバッグリッド1が押し上げられ変形しても、その変形時の変位量を、図7と同じように内装部材7側のスリット72周りの板状部71b、さらに薄肉の板状部71bそのものによる撓み変形で上方へ引き上げられて吸収する構造になっている。
【0021】
(2)実施形態2
図11にエアバッグドア部付き車両用内装品1と内装部材7との接続構造の別形態図を示す。実施形態1の係合部6をクリップ6bとし、被係合部70が通孔70bに代わって図示のごとくの鉤部70aを有するフック柱体70aになっている。内装品1の裏面1bに相手方内装部材7との連結用クリップ6bが一体に成形される。クリップ6bが内装品裏面1bに起立し、そのクリップ本体65に係る先端部から、係止部66が水平外方へ張出す。一方、内装部材7にはクリップ6bに対向する部位に鉤部70aを有する被係合部70が立設する。被係合部70に係る柱状フック基体70aの先端部に屈曲形成した鉤部70aを、クリップ6bに直接係止させることにより、内装部材7が内装品1に接続一体化する。クリップ6bの係止部66と被係合部70の鉤部70aとが向き合うようして、内装品1と内装部材7とを相手側へ向けて押し付けると、フック柱体70aが図11の鎖線のごとく反り返った後、係止部66と鉤部70aとが直接係止し合って、内装品1に該内装部材7が接続一体化する。
そして、図10と同様、通孔70b周りの板状部71bの厚みを内装部材7の板状主部71aの厚みよりも薄く形成したその板状部71bに、さらに図1,図2で設けたスリット72を形成する内装部材7と、内装品1との接続構造になっている。他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0022】
(3)効果
このように構成した内装品1と内装部材7との接続構造は、実施形態1のごとく、被係合部70たる通孔70b周りの板状部71bに複数のスリット72又は透孔73を形成して、通孔70bを挿通したビス5が係合部6たるボス6aに挿入,係止することにより内装品1に内装部材7が接続一体化する。スリット72又は透孔73の形成で、板状部71bが撓み変形や弾性変形を起こし易い構造になり、内装品1の変形に対し、内装部材7が容易に追従変形する。エアバッグドア展開時の内装品1の衝撃変形に対し、相手方内装部材7に係る透孔73周りの板状部71bが、スリット72又は透孔73の形成で、単なる板状部に比べて撓み変形,弾性変形を起こし易くなって、内装品1の変形に追従変形し、エアバッグの展開圧力を効果的に吸収緩和する。
【0023】
従来、エアバッグドア部86の展開時に、ともすれば櫓体根元29(図13では符号91a)が剥離して強度不足に陥っていた問題に、その内装品1側の強度を上げて対抗するのでなく、相手方内装部材7の被係合部70周りを変形伸縮させて変位量をうまく吸収し解決する。
通常、パッセンジャーエアバッググリッド1にボス6aが複数設けられ、インストルメントパネル7には各ボス6aに対向する部位に通孔70bが設けられおり、各ボス6aに各通孔70bを合わせ、それぞれビス5で両者を係止固定することになるが、各通孔70b周りのスリット72によって通孔70b周りの各板状部71bが十分に撓み変形することで、一部の通孔70b周りの板状部71bに集中する応力を、複数の通孔70b周りの板状部71bに分散できる。また、板状部71bの樹脂変形によって、運動エネルギーを熱エネルギーに変換して、櫓体2の根元にかかる応力を低下させる。スリット72に代え、図8(ハ)の透孔73としても、同様の効果が得られる。
【0024】
さらに、図1,図2のごとく通孔70b周りの板状部71bに細長帯状のスリット72を一対形成し、両スリット72が通孔70bを真ん中にして平行に配されると、スリット72の形成が単純化されて製造も楽になり、内装部材7の低コスト化につながる。
【0025】
また、内装品1の裏面1bに相手方内装部材7との連結用ボス6aが一体に成形される一方、ボス6aに対向する部位に通孔70bを設けた内装部材7が、スリット72(又は透孔73)に代えて、その通孔70b周りの板状部71bの厚みtを該内装部材7の板状主部71aの厚みtよりも薄く形成する構成であっても、該板状部71bが単なる板状部に比べて撓み変形,弾性変形を起こし易くなって、内装品1の変形に追従し、エアバッグの展開圧力を効果的に吸収緩和する。
このように、スリット72(又は透孔73)の形成や、通孔70b周りの板状部71bの厚みtが内装部材7の板状主部71aの厚みtよりも薄く形成されると、内装品1側に衝撃等で発生する変位量を、接続される相手方内装部材7でもって吸収できる構造となり、設計の自由度が広がる。櫓体根元での剥離防止を確実にし、品質向上に貢献できるエアバッグドア部付き車両用内装品1と内装部材7との接続構造が出来上がる。
【0026】
加えて、通孔70b周りの板状部71bに複数のスリット72(或いは透孔73)を形成し、且つ通孔70b周りの板状部71bの厚みtを該内装部材7の板状主部71aの厚みtよりも薄く形成すれば、両者の相乗効果で、一段と撓み変形,弾性変形を起こし易くなって、内装部材7が内装品1の変形に追従する。エアバッグの展開圧力がより効果的に吸収緩和される。
【0027】
また、実施形態2のごとく、ボス6aに代えクリップ6bの係合部6とし、通孔70bに代えて柱状フック基体70aの先端に鉤部70aを設けた被係合部70として、被係合部70を係合部6に直接係止することにより、内装品1に内装部材7が接続一体化する構成であっても、実施形態1と同様の効果が得られる。
実施形態2は、通孔70b周りの板状部71bに細長帯状のスリット72を一対形成し、両スリット72が通孔70bを真ん中にして平行配設し、且つ通孔70b周りの板状部71bの厚みtを該内装部材7の板状主部71aの厚みtよりも薄く形成するので、両者の相乗効果で、エアバッグの展開圧力がより有効に吸収緩和される。
【0028】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。内装品1、櫓体2、係合部6,内装部材7,被係合部70等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、実施形態2で、被係合部70周りの板状部71bの厚みtを内装部材7の板状主部71aの厚みtよりも薄く形成するのを止め、スリット72の形成だけにとどめることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 車両用内装品(内装品、パッセンジャーエアバッグリッド)
1b 裏面
5 ビス
6 係合部
6a ボス
7 内装部材(インストルメントパネル)
70 被係合部
70b 通孔
71a 板状主部
71b 被係合部周りの板状部(板状部)
t1 被係合部周りの板状部の厚み(厚み)
t2 内装部材の板状主部の厚み(厚み)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグドア部付き車両用内装品(1)の裏面(1b)に、相手方内装部材(7)との連結用係合部(6)が一体に成形される一方、該係合部(6)に対向する部位に被係合部(70)を設けた該内装部材(7)が、
その被係合部(70)周りの板状部(71b)に、複数のスリット(72)を形成する構成、
又は複数の透孔(73)を形成する構成、
又は前記板状部(71b)の厚み(t1)を、該内装部材(7)の板状主部(71a)の厚み(t2)よりも薄く形成する構成のうち、一つ又はそれらの組み合わせから選択される構成を有し、
該被係合部(70)を前記係合部(6)に直接係止するか又はビス(5)で両者(6,70)を係止することにより、前記内装品(1)に該内装部材(7)が接続一体化し、且つ、その内装品(1)の変形に前記板状部(71b)が追従変形するようにしたことを特徴とするエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造。
【請求項2】
前記係合部(6)をボス(6a)とすると共に前記被係合部(70)を通孔(70b)とし、該通孔(70b)に挿通したビス(5)がボス穴(62)に挿入,係止することにより、前記内装品(1)に前記内装部材(7)が接続一体化し、且つ、その内装品(1)の変形に前記板状部(71b)が追従変形するようにした請求項1記載のエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造。
【請求項3】
前記通孔(70b)周りの板状部(71b)に細長帯状の前記スリット(72)を一対形成し、且つ一対の該スリット(72)が前記通孔(70b)を真ん中にして平行に配される請求項2に記載のエアバッグドア部付き車両用内装品と内装部材との接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−225123(P2011−225123A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97354(P2010−97354)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】