説明

エアバッグ用織物およびエアバッグ

【課題】縫い目の拡大が少なく、堅牢性に優れる縫合部を持つエアバッグ用織物およびエアバッグを提供する。
【解決手段】少なくとも片面にシリコーン樹脂からなる層を有するエアバッグ用織物であって、該織物のカバーファクターが750以上であり、該織物を構成する繊維糸条(A)と、それと交差している繊維糸条(B)との接触部表面積の70%以下が樹脂で覆われているエアバッグ用織物である。前記織物が、JIS L−1096−8.21.1A法に基づく織物の縫い目開き量が6mm以下であり、シリコーン樹脂加工前の縫い目開き量に対する増加率が30%以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の側部衝突時の乗員保護装置として実用されているエアバッグ用織物およびエアバッグに関するものであり、更に詳しくは、縫合部縫い目の拡大が少なく、堅牢性に優れる縫合部を持つエアバッグ用織物およびエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の乗員安全保護装置としてエアバッグの装着が急速に進み、自動車の前部衝突保護のため、運転者用および助手席者用のエアバッグについては、ほとんどの新型車に装着されている。さらに、側部衝突保護用として、座席シートに内蔵された胸部および大腿部用、または側部窓に沿って展開するよう天井内に装着された頭部用のエアバッグも増えてきている。
【0003】
最近におけるエアバッグ搭載車の事故で、乗員がエアバッグ装着部に近い位置に着座している状態でエアバッグが展開したことによって、障害を受ける例も出てきている。そのため、北米において、エアバッグ近接位置に着座している乗員を加害させない法規制が実施されるなど、衝突時における乗員の衝撃吸収性能に併せて、エアバッグ展開による衝撃の緩和を両立した乗員保護システムが求められている。
【0004】
さらに、前記のように、乗員がエアバッグ装着部に近接して着座している場合、エアバッグは装着部と乗員の胸部、腹部または頭部などとの狭い間隙内で展開することになる。そのため、エアバッグの初期展開時には、狭い間隙での急激な膨張により袋体(以下、本体と称する場合がある)の局部が不均一に引張され、袋体縫合部の縫い目が大きく拡大するため、インフレーターからの熱ガスが漏洩、噴出して、エアバッグの膨張を遅らせたり、場合によっては、縫合部が破損するおそれがある。
【0005】
そのため、シリコーンなどの耐熱性樹脂を被覆した基布を用いることにより、基布自体のみならず、縫合部の耐熱性を向上させることが実用されている。縫合部の耐熱性、ひいては堅牢性を高めることは、袋体自体の耐圧性を高め、より安全性の高いエアバッグシステムを提供することになる。
【0006】
そこで、縫合部の縫い目開きに注目した提案がなされている。たとえば、特許文献1には、500デニール以下の合成繊維フィラメントからなる織物の少なくとも片面に樹脂膜をコーティングしてあり、滑脱抵抗力が8〜20mmであるエアバッグ用基布が提案されている。滑脱抵抗力が8mmより小さいか、20mmより大きい場合は、バッグの破裂強度が低くなる。しかし、実際のエアバッグ展開では、インフレーターから高熱のガスが流入するため、縫合部縫い目の穴が8〜20mmにもなると熱ガスが漏洩してバッグ内圧が不足するばかりか、縫合部の縫い目穴がその熱ガスにより拡大し、場合によってはバッグ自体が破損する可能性があり、本発明は実用的には採用し難い提案である。
【0007】
また、特許文献2には、ミシン糸の縫い目滑り抵抗力が3〜8mmの範囲にある樹脂コートエアバッグ用基布が開示されている。特許文献2は、基布の製織において、経糸に加える張力を高めることにより経糸と緯糸の拘束力を大きくし、糸滑りを起こしにくくするものである。しかし、基布を構成する糸の滑り易さは、織物設計、すなわち、糸の太さ、糸断面の形状、織密度などの様々な要因から決定されるものであり、一義的には決まらない。たとえば、製織時に付与する加工油剤の残存程度、精練・セットなどの加工条件、基布に施される被覆材などの特性にも影響され、また、製織直後の特性がコーティング加工後も確保されるとは限らない。さらに、実施例において、縫い目滑りに大きく影響するものと思われる織物密度に関する数値が記載されておらず、縫い目滑り抵抗力3〜8mmを得ることができる材料設計が不明確である。
【0008】
【特許文献1】特開平7−164988号公報
【特許文献2】特開2006−63491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、縫合部の縫い目開きの少ないエアバッグ用基布およびエアバッグを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、少なくとも片面にシリコーン樹脂からなる層を有するエアバッグ用織物であって、該織物のカバーファクターが750以上であり、該織物を構成する繊維糸条(A)と、それと交差している繊維糸条(B)との接触部表面積の70%以下が樹脂で覆われているエアバッグ用織物に関する。
【0011】
前記織物が、JIS L−1096−8.21.1A法に基づく織物の縫い目開き量が6mm以下であり、シリコーン樹脂加工前の縫い目開き量に対する増加率が30%以下であることが好ましい。
【0012】
前記繊維糸条(A)および(B)が、単糸繊度4dtex以下であることが好ましい。
【0013】
前記樹脂の付与量が、10〜50g/mであることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記のエアバッグ用織物からなるエアバッグに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、織物を構成する繊維糸条(A)と、それと交差している繊維糸条(B)との接触部表面の樹脂で覆われる面積を70%以下とすることにより、縫合部の縫い目開き量の小さいコーティングされたエアバッグ用織物、およびそれからなるエアバッグを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、少なくとも片面にシリコーン樹脂からなる層を有するエアバッグ用織物であって、該織物のカバーファクターが750以上、該織物を構成する繊維糸条(A)と、それと交差している繊維糸条(B)との接触部表面積の70%以下が樹脂で覆われている。
【0017】
本発明の織物のカバーファクターは、750以上であり、780以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましい。カバーファクターが750より小さいと、織物構造が粗く、縫い目開きが大きくなる。また、カバーファクターが大きくなるほど織物構造が緻密になり縫い目開きは小さくなるものの、織物が厚く、目付けも重くなり、さらには硬くなる傾向にあるため、軽量で収納性の良いエアバッグを得る上では好ましくない。したがって、カバーファクターは、950以下であることが好ましい。
【0018】
ここで、カバーファクター(CF)は、その織構造の緻密さを示す指数であり、下式に示すように織物の経糸および緯糸のそれぞれの織密度N(本/cm)と太さD(dtex)との積で求められる。織物の経糸および緯糸にそれぞれ繊度の異なる糸が用いる場合は、経糸および緯糸それぞれの繊度毎にカバーファクターを算出し、合計することで織物全体のカバーファクターが求められる。
CF=Nw×√Dw+Nf×√Df
ここで、Nw,Nfは、経糸および緯糸の織密度(本/cm)
Dw,Dfは、経糸および緯糸の太さ(dtex)
【0019】
また、本発明の織物は、該織物を構成する繊維糸条(A)と、それと交差している繊維糸条(B)との接触部表面積の70%以下が樹脂で覆われている。言い換えれば、接触部表面積の30%より多い部分が樹脂被覆されていないということである。経糸と緯糸が相互に上下に交差して形成される織物において、たとえば、繊維糸条(A)側から樹脂を付与した場合、樹脂はまず繊維糸条(A)内に浸透し、場合によっては該繊維糸条(A)を透過して、やがて該繊維糸条(A)と交差している繊維糸条(B)の表面にまで到達し、その表面に付着する。この時、繊維糸条(B)の表面に付着する樹脂が多いほど、繊維糸条(A)および(B)の交差点(接触部)で両者が滑りやすくなり、縫合された場合に縫い目の目開きが大きくなるのである。つまり、本発明は、付与された樹脂が出来るだけ織物内部に浸透しないようにすることが重要であり、とくに、前記接触部表面積の70%より多い部分が樹脂で覆われていると、縫い目開きが格段に大きくなることを見出してなされたものである。
【0020】
本発明においては、前記接触部表面積のうち、樹脂で被覆されている割合(以下、被覆率と称す)は70%以下であり、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。被覆率は少ないほどよいが、20%より小さくなっても交差点での拘束性にあまり影響がなく、そのため、下限は20%であることが好ましい。被覆率が70%より大きい、すなわち、繊維糸条の全幅の約2/3以上が樹脂被覆されていると、繊維糸条(A)および(B)の交差点において滑りやすくなって拘束性が低くなるため、縫合したときの縫い目開きが大きくなる。
【0021】
なお、ここでいう樹脂の被覆率は、以下のようにして求められる。
まず、樹脂層を付与した織物の経糸または緯糸(繊維糸条(A))を引き抜き、それと交差する糸条(繊維糸条(B))が露出した部分について、樹脂の塗布面からSEM写真(反射電子像)を撮影する。反射電子像では、樹脂付着面は輝度がより強く映るため、合成繊維面との識別が可能となる。これを利用して、繊維糸条(B)の糸条全幅(AW)と、樹脂の付着していない暗色部分の幅(FW)とを測定し、((AW−FW)/AW)×100%から求める。
【0022】
本発明の織物は、JIS L−1096の8.21.1A法に基づく縫い目開きが6mm以下であることが好ましい。5mm以下であることがより好ましく、4mm以下であることがさらに好ましい。縫い目開き量の大きさは、そのまま縫合部から漏れるガス抜け量を左右するため、エアバッグ内圧の保持に影響する。また、拡大した縫い目穴から抜け漏れる熱ガスにより、縫い目周辺部の織物材料が昇温するため、熱ガスの温度および漏れる量によっては織物材料が溶融し、エアバッグが縫合部で破断する場合もある。したがって、縫い目開き量は可能な限り小さいほどよいが、経糸と緯糸から構成される織物を使用するため、縫い目開きがゼロになることはなく、下限値としては、たとえば0.5〜1mm程度が好ましい。
【0023】
また、本発明においては、シリコーン樹脂被覆の前および後での縫い目開き量の変化が少ないことが好ましい。樹脂として、耐熱性、耐久性に優れることから、一般的にシリコーン材料が用いられており、周知の如く、シリコーン材料には平滑性を付与する成分が含まれている。そのため、シリコーン材料により被覆加工された織物の被覆後の縫い目開き量は被覆前のそれより大きくなる傾向にあり、織物の設計仕様、被覆材の種類および塗工量などによっては、2倍程度に拡大することもあった。しかし、本発明では、被覆率を特定の範囲とすることにより、シリコーン樹脂を使用した場合であっても、被覆する前後の織物の縫い目開き量の変化が少ないものとなる。すなわち、被覆材の量にかかわらず、被覆率を特定のものとすることにより織物自体の特性を保持することができ、縫い目の拡大を安定して抑えることが可能となったのである。
【0024】
樹脂被覆前の縫い目開き量(OB)に対する被覆後の縫い目開き量(OA)の増加率は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。増加率が30%より大きいということは、樹脂の織物内部への浸透が多くなっているものと考えられる。樹脂の浸透度合いは、広い面積では一定していると言えるものの、縫製部位などのような狭い面積においては、必ずしもその浸透度合いが一定ではなく、結果として縫い目開き量のバラツキが大きくなる傾向にある。すなわち、縫い目開き量の増加率が30%より大きいと、織物の縫い目開きが一定になり難く、展開特性の安定したエアバッグが得られ難い傾向にある。これに対し、縫い目開き量が30%以下であると、樹脂の浸透自体が少ないため、浸透度合いのバラツキが少なく、被覆後の織物の縫い目開きも安定する傾向にあり、結果として展開特性の安定したエアバッグを提供することができる。縫い目開き量の増加率の下限値としてはゼロが好ましい。なお、ここで言う縫い目開き量の増加率は、(OA−OB)/OB×100(%)の計算式から求められる。
【0025】
ここで、前記被覆率を70%以下にする方法としては、1)樹脂が織物内部に浸透し難い織物構造にする方法、2)樹脂自体を浸透し難いものにする方法、3)樹脂が浸透し難い方法により被覆する方法などがあげられる。たとえば、1)織物構造としては、イ)カバーファクターの大きい(たとえば850以上)緻密な構造の織物とすること、ロ)単糸繊度の小さな繊維糸条を用いた織物を使用することなどがあげられる。2)樹脂としては、イ)高粘度樹脂(たとえば50Pa・s以上)を用いることなどがあげられる。3)被覆加工法としては、イ)コーティング加工工程で織物に高い張力を加える(例えば経糸方向)、ロ)転写法、グラビア法などの織物被覆面への押さえ力が低い塗布法を採用する、ハ)フィルム、シートなどをラミネート加工して被覆するなどの方法があげられる。なかでも、単糸繊度の小さな繊維糸条を用いること、加工時に織物に張力を加えること、転写法やグラビア法による塗布法を用いることが好ましい。とくには、被覆材の特性や被覆法に工夫を加えることなく、縫い目開きを少なくできる点で、単糸繊度の小さな繊維糸条を用いることが好ましい。
【0026】
前記の通り、繊維糸条の単糸繊度は小さい方が好ましい。4dtex以下であることがより好ましく、3.5dtex以下であることがさらに好ましく、3dtex以下であることがとくに好ましい。下限は0.5dtexであることが好ましい。単糸繊度が4dtex以下であると、織物表面に施された樹脂が織物内部にまで浸透しにくくなり、織物の経糸と緯糸の交差点での拘束性が保持され易い傾向にある。単糸繊度が0.5dtexより小さいと、繊度が細くなり過ぎて、製織、裁断、縫製などの製造工程でのトラブルが起こり易くなる傾向にある。
【0027】
前記繊維糸条の総繊度は、通常、エアバッグ使用されている繊維糸条の太さであればよく、求められる基布仕様および物理特性などに応じて選定すればよい。なかでも、200〜1000dtexであることが好ましく、300〜900dtexであることがより好ましい。総繊度が200dtexより小さいと、エアバッグに求められる強度が得られにくい傾向にあり、1000dtexをこえると、重量が大きくなりすぎると同時に、基布の厚みが増大し、バッグの収納性が悪くなる傾向にある。
【0028】
さらに単糸の断面形状は、円形、楕円、扁平、多角形、中空、その他の異型など、糸および織物の製造工程、得られる織物物性などに支障のない範囲で適宜選定すればよい。また、繊維糸条の強度が高いほど耐圧性の高いエアバッグが得られるが、8〜15cN/dtexであることが好ましく、9〜13cN/dtexであることがより好ましい。
【0029】
前記繊維糸条の破断伸度は、15〜30%であることが好ましい。
【0030】
本発明の織物は、平織、斜子織(バスケット織)、格子織(リップストップ織)、綾織、畝織、絡み織、模紗織、あるいはこれらの複合組織などいずれからなっていてもよい。なかでも、織物構造の緻密さ、物理特性や性能の均等性が確保できる点で、平織であることが好ましい。必要に応じて、経糸、緯糸の二軸以外に、斜め60度を含む多軸設計としてもよく、その場合の糸の配列は、経糸または緯糸と同じ配列に準じればよい。また、ジャカード装置を搭載した織機による多重織物を使用してもよい。
【0031】
前記織物の製造は、通常の工業用織物を製織するのに用いられる各種織機から適宜選定すればよい。たとえば、シャトル織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機などがあげられる。
【0032】
また、前記繊維糸条は、天然繊維、化学繊維、無機繊維など、とくに限定されない。なかでも、汎用性があり、織物の製造工程、織物物性などの点から、合成繊維フィラメントであることが好ましい。具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612などの単独、または、これらの共重合もしくは混合により得られる脂肪族ポリアミド繊維、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9Tに代表される脂肪族アミンと芳香族カルボン酸との共重合ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの単独、または、これらの共重合もしくは混合によって得られるポリエステル繊維、超高分子量ポリオレフィン系繊維、ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの含塩素系繊維、ポリテトラフルオロエチレンを含む含フッ素系繊維、ポリアセタール系繊維、ポリサルフォン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン系繊維(PEEK)、全芳香族ポリアミド系繊維、全芳香族ポリエステル系繊維、ポリイミド系繊維、ポリエーテルイミド系繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール系繊維(PBO)、ビニロン系繊維、アクリル系繊維、綿、麻、ケナフ繊維などのセルロース系繊維、ポリ乳酸、琥珀酸に代表される生分解性繊維、炭化珪素系繊維、アルミナ系繊維、ガラス系繊維、カーボン系繊維、スチール系繊維などがあげられる。これらから、適宜、1種または2種以上を選定すればよい。なかでも、物理特性、耐久性、耐熱性などの点で、ナイロン66繊維を用いることが好ましい。また、リサイクルの観点からは、ポリエステル系繊維、ナイロン6繊維が好ましい。
【0033】
これらの繊維糸条には、紡糸性、加工性、耐久性などを改善するために、通常使用されている各種の添加剤、たとえば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの1種または2種以上を配合することができる。
【0034】
前記織物には、エアバッグ用基布に使用されており、耐熱性、摩耗性、基布との密着性、難燃性、不粘着性などを満足するシリコーン系樹脂またはゴム(本発明では、これらをあわせてシリコーン樹脂と称している)が付与される。シリコーン材料には平滑性を付与する成分が含まれているが、本発明によれば、縫合部の縫い目開きが非常に小さくなる。
【0035】
シリコーン樹脂としては、付加反応による2液タイプの熱硬化型シリコーン系樹脂またはゴム、シリコーン類とポリウレタン系樹脂またはゴムとの変性体、シリコーン類とフッ素系樹脂またはゴムなどとの共重合体などがあげられる。さらに、シリコーン樹脂などに、これとの相溶性に富む他の樹脂を半分をこえない程度に混用してもよい。
【0036】
前記シリコーン樹脂は、具体的には、主剤成分として1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンなど、架橋剤成分として1分子中に少なくとも3個のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンなど、触媒として白金微粉末、塩化白金酸、白金とビニルシロキサンの錯体など、硬化遅延剤としてアルキンアルコール類、エンイン化合物類など、補強性充填剤としてシリカ微粉末など、織物との接着性向上剤として有機チタン化合物、エポキシ基含有有機ケイ素化合物など、その他の添加剤として石英粉、珪藻土、炭酸カルシウムなどの増量充填剤、酸化ニッケル、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化鉄などの耐熱性付与剤、ベンガラ、酸化チタン、カーボンブラックなどの顔料など、を混合した溶液からなる。
【0037】
前記樹脂の調液後の粘度は、10Pa・s以上であることが好ましく、20Pa・s以上であることがより好ましい。樹脂液の粘度を高くすることにより、織物の繊維糸条内部への浸透を抑制することができるが、粘度が10Pa・sより小さいと、繊維糸条内部への浸透が多くなる傾向にあり、結果として縫い目の目開き量が多くなる。しかし、高粘度過ぎると被覆加工性が悪くなるため、粘度の上限は200Pa・s程度であることが好ましい。
【0038】
前記樹脂の付与量は、織物の不通気性が確保できる程度であればよい。不通気とは、JIS L1096「一般織物試験方法」における8.27.1 A法(フラジール形法)において、測定値0.0のことをいう。なかでも、10〜50g/mであることが好ましく、20〜40g/mであることがより好ましい。付与量が10g/mより少ないと、織物構造によっては不通気性や難燃性を得ることが難しくなる傾向にあり、50g/mをこえると、不通気性には優れるが、付与後の織物目付けが重くなり、折畳み性も低下する傾向にある。
【0039】
前記樹脂は、織物の少なくとも片面に施される。付与方法としては、1)コーティング法(ナイフ、キス、リバース、コンマ、スロットダイ、リップなど)、2)浸漬法、3)印捺法(スクリーン、ロール、ロータリー、グラビアなど)、4)転写法(トランスファー)、5)ラミネート法、6)噴霧・噴射法などがあげられる。なかでも、樹脂が繊維糸条内部に浸透しにくいという点で、グラビア法、転写法またはラミネート法が好ましい。
【0040】
前記樹脂の液体としての性状は、塗布量、塗布法、材料の加工性や安定性、被覆材として要求される特性などに応じて、無溶媒型、溶媒型、水分散型、水乳化型、水溶性型などから適宜選定することができる。なかでも、製造工程、被覆作業工程などでの環境の点から、無溶媒型であることが好ましい。
【0041】
前記樹脂には、加工性、接着性、表面特性あるいは耐久性などを改良するために通常使用される各種の添加剤、たとえば、架橋剤、接着付与剤、反応促進剤、反応遅延剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、粘着防止剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの1種または2種以上を混合してもよい。
【0042】
また、樹脂を繊維糸条内部に浸透しにくくすることができる点で、樹脂を被覆加工する際、織物の経糸方向および/または緯糸方向に張力を加えることが好ましい。とくに、調整が行い易く、効果を発現させ易いという点で、織物の経糸方向に張力を与えることが好ましい。織物に加える張力は、織物構造(糸の太さ、織密度、横幅)、樹脂の塗布量などに応じて選定すればよい。なかでも、織物幅当りの張力として、5〜30N/cmであることが好ましい。張力が5N/cmより小さいと、張力を加える効果が小さく、樹脂が織物内部に浸透し易くなり、30N/cmをこえると張力が高くなり過ぎ、織物の目付けなどの性量変化や塗工治具との摩擦による物性低下が起こり易くなる。
【0043】
前記樹脂は、織物の少なくとも片面の表面に存在すればよく、被覆率70%をこえない範囲で、基布を構成する糸束の間隙部、あるいは、繊維単糸の間隙部などに介在していてもよい。
【0044】
また、織物と樹脂との密着性を向上させるために、予め織物表面にプライマー処理などの前処理を施してもよい。さらに、樹脂に、たとえば、耐熱性、老化防止性、耐酸化性などの物理特性を付与し、または向上させるために、樹脂被覆後、乾燥、架橋、加硫などを熱風処理、加圧熱処理、高エネルギー処理(高周波、電子線、紫外線など)などにより行ってもよい。
【0045】
また、本発明は、前記織物からなるエアバッグに関する。本発明のエアバッグの仕様、すなわち形状、寸法、容量、構成する裁断片の枚数などは、搭載部位、収納スペース、乗員の衝撃吸収性能、インフレーターの出力および乗員への初期展開時の加害性などに応じて選定すればよい。
【0046】
本発明のエアバッグにおける縫合部の縫い仕様は、本縫い、二重環縫い、片伏せ縫い、かがり縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫いなどの通常のエアバッグに適用されている縫い目により行えばよい。なかでも、エアバッグ用の太い縫い糸対応のミシンが製造されており、かつ縫製作業も簡便であるという点で、本縫いまたは二重環縫いであることが好ましい。また、複数列の縫い目線が必要な場合は、縫い目線間の距離は2mm〜6mm程度として、多針型ミシンを用いればよいが、縫製部距離が長くない場合には、1本針ミシンで複数回縫合してもよい。また、運針数は2〜8針/cmであることが好ましく、3〜6針/cmであることがより好ましい。運針数が2針より少ないと、縫合部の強さが十分に得られない傾向にあり、8針をこえると、高い縫合部強力が得られ易いが、縫合部が盛り上がって硬くなり、エアバッグの折畳み容積が小さくなり難くい傾向にある。さらに、縫製工程でのタクト時間も長くなり、生産性が低下する傾向にある。
【0047】
前記縫製に用いられる縫い糸は、一般に化合繊縫い糸、工業用縫い糸として用いられているものの中から適宜選定すればよい。たとえば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46などのナイロン系、ポリエステル系、高分子ポリオレフィン系、ビニロン系などがある。なかでも、高強度である点で、ナイロン系およびポリエステル系が好ましく、引掛強力が高い点でナイロン系がより好ましい。また、糸条の形態は、紡績糸、フィラメント糸、嵩高加工糸のいずれでもよく、単一もしくは複数の繊維糸条を合撚、合糸、回捲、加撚してもよい。
【0048】
さらに、必要に応じて、縫い糸に平滑性、集束性、柔軟性などを付与するために、各種樹脂加工またはオイリング処理加工、たとえば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの平滑剤、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレア系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ変性樹脂などの集束剤を施してもよい。これらの樹脂付着量は、求められる性能と使用する樹脂特性から選定すればよい。たとえば、繊維重量に対して2〜20%であることが好ましい。さらに、耐熱性などの性能を付与するため、無機性フィラー、たとえば、シリカ、ベントナイト、カーボン、炭化珪素、金属類、金属酸化物などの微粒子(ナノサイズ径粒子を含む)、微少針状物(気相成長法による)などを上記樹脂液に混合して用いてもよい。これらの加工処理は、縫い糸を構成する繊維糸条に施してもよいし、繊維糸条から縫い糸を作成した後に施してもよいし、また両方の段階で施してもよく、縫い糸としての工程性、物理特性などから勘案して選定すればよい。
【0049】
また、必要に応じて、外周縫合部などからの縫い目からのガス抜けをさらに徹底して防ぐため、シール剤、接着剤、粘着剤などを、縫い目の上部および/または下部、縫い目の間、縫い代部などに塗布、散布または積層してもよい。
【0050】
本発明のエアバッグには、エアバッグに乗員が当接した際のエネルギー吸収のため、一個または複数の排気穴、たとえば直径10〜80mmの円形またはそれに相当する面積の穴、またはこれらの排気性能に相当するスリット、膜、弁などを設けてもよい。前記排気部の周囲には、補強布を、接合または積層してもよい。さらに、乗員の頭部、顔面部へのエアバッグ突出による衝撃を抑制したり、膨張時の厚みを制御するために、エアバッグ内側に固定紐を設けてもよい。また、乗員の一部が当接した際に、主膨張部の内圧が急激に上昇することを抑えるために、主膨張部の外側に副膨張部を連通、または破断部を介して隣接するように設けてもよい。
【0051】
本発明のエアバッグについて、使用するインフレーターの特性によっては、必要に応じてインフレーター噴出口周囲に熱ガスから保護するための耐熱保護布や力学的な補強布を設けてもよい。これらの保護布や補強布は、布自体が耐熱性の材料、例えば、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維、ポリイミド繊維、含フッ素系繊維などの耐熱性繊維材料を用いてもよいし、エアバッグ本体と同じか本体用基布より太い糸を用いて別途作製した織物などの布帛類を用いてもよいし、該織物などの布帛類に耐熱性被覆材を施したものを用いてもよい。
【0052】
エアバッグを収納する際の折畳み法も、運転席用バッグのような中心から左右、上下対称の屏風折り、あるいは中心に向かって多方位から押し縮める折り方、助手席バッグのようなロール折り、蛇腹折り、屏風状のつづら折り、あるいはこれらの併用や、シート内蔵型サイドバッグのようなアリゲーター折りなどにより折畳めばよい。
【0053】
本発明のエアバッグは、各種の乗員保護用バッグ、たとえば、運転席および助手席の前面衝突保護用、側面衝突保護用、後部座席保護用、追突保護用のヘッドレストバッグおよび着座者保護用、脚部・足部保護用のニーバッグおよびフットバッグ、乳幼児保護用(チャイルドシート)のミニバッグ、エアーベルト用袋体、カウルトップおよびバンパーに装着される歩行者保護用などの乗用車、商業車、バス、トラック、二輪車などの各用途の他、機能的に満足するものであれば、船舶、列車・電車などの鉄道輸送、飛行機・ヘリコプターなどの航空機、遊園地の遊具設備など多用途に適用することができる。
【0054】
実施例
以下、実施例に基づき本願発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例の中で行った樹脂被覆率、織物の縫い目開き量および増加率、エアバッグ展開試験の評価方法を以下に示す。
【0055】
(1)樹脂の被覆率
シリコーン樹脂を被覆加工した織物の経糸あるいは緯糸である繊維糸条(A)の一部を引き抜いて除去し、その糸と交差する繊維糸条(B)の露出した部分について、樹脂の塗布面からSEM写真を撮影した。撮影には株式会社日立ハイテクノロジーズ製、走査電子顕微鏡S−3000Nを用いた。繊維糸条(A)の抜き跡として観察される繊維糸条(B)の全幅(AW)と、樹脂の付着していない中心部(図1に示すSEM写真で、中央部に見える暗色部)の幅(FW)とを測定し、(AW−FW)/AW)×100%から、被覆率を求めた。繊維糸条(A)を経糸とする場合と緯糸とする場合とについて、それぞれN=5で行い、その総平均値を被覆率とした。
【0056】
(2)縫い目開き量および増加率
JIS L−1096の8.21.1A法に規定された試料形状にて、引張荷重が588Nとなった時点における拡大した縫い目孔のうち、その最大のものについて、織物の経方向、緯方向それぞれN=3測定し、その総平均値を縫い目開き量とした。縫い仕様は、上糸、下糸いずれもナイロン66繊維の5番手糸を縫い糸として使用し、運針数3.5針/cm、本縫い1列とした。また、樹脂被覆前および被覆後の織物の縫い目開き量増加率は、前記評価法により被覆前(OB)、被覆後(OA)の縫い目開き量を測定し、(OA−OB)/OB×100(%)により求めた。
【0057】
(3)エアバッグの展開試験
展開試験は、ダイセル社製インフレーター(型式ZA、2ステージ型、出力160/220kpa)、固定金具、樹脂製ケースを用いてモジュールを組み立て、実施した。モジュールを100℃にて約5時間予熱した後、展開試験(N=3)を行い、エアバッグの展開状態、展開後の外周縫合部の状態を観察した。
【0058】
(4)運転席用エアバッグの作製法
評価に使用した運転席用エアバッグの作製法を以下に示す。
エアバッグ本体用基布として、各実施例に示す基布を用いた。この基布から、外径φ690mmの円形の本体パネルを2枚裁断した。一方の本体パネル中央部にφ67mmのインフレーター取付け口、および、該取付け口の中心から斜め上45度の線上120mmの位置にφ30mmの排気孔を2箇所(左右一対)開口した。また、補強布として、本体用基布と同じ仕様のノンコート基布、および、ナイロン66繊維の470dtexを用いた織密度18本/cmの基布にシリコーン樹脂35g/mを塗布して得られたコート基布を準備した。インフレーター取付け口の補強布として、外径210mm、内径67mmの環状布Aを、前記ノンコート基布から3枚、コート基布から1枚裁断した。さらに、排気孔補強布として、外径90mm、内径30mmの環状布Bを、前記コート基布から2枚裁断した。
【0059】
得られた3枚のノンコ−ト環状布Aをインフレーター取付け口に重ね合せ、内側からφ126mm、φ188mの位置で円形に縫製した。さらに、その上から同一形状のコート環状布A1枚を重ね合せ、φ75mmの位置で本体基布に円形に縫い合わせた。また、前記排気孔に、それぞれ環状布Bを1枚重ね合せて、本体パネルに縫い付けた。なお、環状布A、環状布Bの各補強布は、それぞれを縫い合わせる本体パネルの糸軸と平行になる位置に重ね合せた。また、環状布Aには、穴間距離68mmにてφ5.5mmのボルト穴を4ヵ所に設けている。環状補強布A、Bの本体パネルへの縫い付けには、上糸、下糸いずれも5番手糸(ナイロンの場合1400dtex、ナイロン以外の場合はナイロン1400dtex相当の太さ)として、運針数4針/cmで本縫いにより行った。また、2枚の本体パネルは、パネルの糸軸を45度ずらして環状補強布の縫い付け面同士を重ね合せ、その外周部を、ナイロン66繊維の5番手糸である縫い糸を用い(上糸、下糸は同じ太さ)、運針数3.5針/cm、縫い目線間2.4mm、縫い代20mmとして、二重環縫い2列にて縫合し、内径φ650mmの円形エアバッグを作製した。作製されたエアバッグをインフレーター取付け口から反転して、破裂試験に供試した。
【0060】
実施例1
太さ470dtex/136f(単糸繊度3.5dtex)、強度8.5cN/dtex、破断伸度23%であるナイロン66繊維(丸断面)を用い、平織により織物を作成し、精練・セットを行った。ついで、得られた織物の片面に、Rhodorsil TCS7534(ブルースターシリコーン社製、2液付加反応型無溶媒シリコーン樹脂、調液後の粘度45Pa・s)をナイフコート法によりコーティングし、180℃で1分間熱処理して、コーティング織物を得た。織物の織密度は、経、緯いずれも20本/cm、カバーファクターは867、塗工量は25g/mであった。このコーティング織物を用い、前記製法に準じてエアバッグを作成し、展開試験を行った。被覆率、縫い目開き量およびエアバッグの特性を表1に示す。表1からわかるように、樹脂の被覆率が低いため、縫い目開き量および増加率も低く、展開試験でエアバッグは問題なく膨張し、展開後の外周縫合部の目開きも発生しなかった。
【0061】
実施例2
太さ350dtex/136f(単糸繊度2.6dtex)、強度8.5cN/dtex、破断伸度25%であるナイロン66繊維(丸断面)を用い、平織により織物を作成し、精練・セットを行った。ついで、実施例1と同様にしてコーティング織物を得た。織物の織密度は、経、緯いずれも22.8本/cm、カバーファクターは853、塗工量は20g/mであった。前記製法に準じてエアバッグを作成し、展開試験を行った。被覆率、縫い目開き量およびエアバッグの特性を表1に示す。表1からわかるように、単糸繊度を細くすることにより、実施例1と比較してさらに樹脂の被覆率が低くなっている。樹脂の被覆率が低いため、縫い目開き量および増加率も十分に小さく、エアバッの展開試験も問題がなかった。
【0062】
実施例3
織密度が経、緯いずれも18.1本/cm、カバーファクターが785である織物を用いたこと、コーティング加工時の織物の経糸方向への張力を2450N(16N/cm)にしたことの他は、実施例1と同様にしてコーティング織物およびエアバッグを得た。表1からわかるように、張力を加えたため、織密度が低いにもかかわらず、樹脂の被覆率が低くなっている。樹脂の被覆率が低いため、縫い目開き量および増加率のいずれも小さく、エアバッグの展開も問題がなかった。
【0063】
実施例4
単糸繊度が6.5dtexであるナイロン66繊維(丸断面)を用いたこと、シリコーン樹脂としてDC3730(ダウ・コーニング社製、2液付加反応型無溶媒シリコ−ン樹脂、調液後の粘度180Pa・s)を用いたこと、該樹脂をロール式転写法により塗布したことの他は、実施例1と同様にしてコーティング織物およびエアバッグを得た。なお、樹脂の付与量は15g/mであった。表1からわかるように、繊維内部への浸透が少ない加工法により樹脂を付与したため、被覆率が非常に小さくなっている。樹脂の被覆率が低いため、縫い目開き量および増加率のいずれも小さく、エアバッグの展開も問題がなかった。
【0064】
比較例1
単糸繊度が6.5dtexであるナイロン66繊維(丸断面)を用いたこと、織密度が経、緯いずれも18.1本/cmで、カバーファクターが785である織物を用いたことの他は、実施例1と同様にしてコーティング織物およびエアバッグを得た。被覆率が70%をこえたため、縫い目開き量および増加率がともに非常に大きくなっている。エアバッグの展開試験でも外周縫合部が破損するものもあった。
【0065】
比較例2
単糸繊度が6.5dtexであるナイロン66繊維(丸断面)を用いたこと、織密度が経、緯いずれも16.9本/cmで、カバーファクターが733である織物を用いたことの他は、実施例1と同様にしてコーティング織物およびエアバッグを得た。織物のカバーファクターが小さく、樹脂の被覆率が大きいため、縫い目開き量および増加率が極めて大きくなっている。エアバッグの展開試験では、いずれのバッグも破損した。
【0066】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の織物のシリコーン樹脂被覆面における経糸を除去した後のSEM写真(倍率50)の一例である。
【図2】従来の織物のシリコーン樹脂被覆面における経糸を除去した後のSEM写真(倍率50)の一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面にシリコーン樹脂からなる層を有するエアバッグ用織物であって、該織物のカバーファクターが750以上であり、該織物を構成する繊維糸条(A)と、それと交差している繊維糸条(B)との接触部表面積の70%以下が樹脂で覆われているエアバッグ用織物。
【請求項2】
前記織物が、JIS L−1096−8.21.1A法に基づく織物の縫い目開き量が6mm以下であり、シリコーン樹脂加工前の縫い目開き量に対する増加率が30%以下である請求項1記載のエアバッグ用織物。
【請求項3】
前記繊維糸条(A)および(B)が、単糸繊度4dtex以下である請求項1または2記載のエアバッグ用織物。
【請求項4】
前記樹脂の付与量が、10〜50g/mである請求項1、2または3記載のエアバッグ用織物。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のエアバッグ用織物からなるエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−13770(P2010−13770A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175556(P2008−175556)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】