説明

エアバッグ

【課題】様々な体格の乗員に対し、エアバッグによる乗員への加害性低減と乗員保護性能とを高次元で両立することができるエアバッグを提供する。
【解決手段】フロントガラス7の下方で前席乗員に対向して展開するエアバッグ本体21の衝撃吸収面21aの中央に、上下に延在する凹部21bを設ける。これにより、正規着座位置でシートベルトを着用した乗員50等に対して、首等にダメージを与えることなく的確な乗員保護を実現することができる。加えて、凹部21bの上部でフロントガラス7の直下に膨出する膨出部21cをエアバッグ本体21に設ける。これにより、シートベルトを着用していない乗員51等に対しても、頭部がフロントガラス7から直接的なダメージを受けることを的確に回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、前突時に前席の乗員保護に好適なエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エアバッグ装置においては、エアバッグの展開時における乗員への加害性を低減するための各種対策がなされている。例えば、特許文献1には、特に、小柄な乗員の頭部がエアバッグに衝突することによって発生する首への障害値等を緩和するため、上下方向に延在する凹部をエアバッグの中央に設けた助手席用エアバッグ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−176018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術のようにエアバッグに凹部を設けた構成を採用した場合、例えば、ソートベルトを着用していない比較的大柄な乗員が車両衝突時に水平方向に移動した際に、凹部を通じてフロントガラスに頭部を衝突させる等の虞がある。特に、この種の問題は、フロントガラスの傾斜が小さいスポーツカー等の車両において顕著となる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、様々な体格の乗員に対し、エアバッグによる乗員への加害性低減と乗員保護性能とを高次元で両立することができるエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、展開時にフロントガラスの下方で前席乗員に対向する衝撃吸収面と、前記衝撃吸収面の中央で上下方向に延在する凹部と、前記凹部の上部で前記フロントガラスの直下に膨出する膨出部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエアバッグによれば、様々な体格の乗員に対し、エアバッグによる乗員への加害性低減と乗員保護性能とを高次元で両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エアバッグ装置の概略構成図
【図2】エアバッグの構成部品を示す説明図
【図3】エアバッグの展開状態を示す斜視図
【図4】エアバッグ装置の変形例を示す概略構成図
【図5】エアバッグの展開状態の変形例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図1において、符号1はエアバッグ装置を示し、本実施形態においては、インストルメントパネル5内に配置される助手席用エアバッグ装置を示す。このエアバッグ装置1は、エアバッグ20と、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するインフレータ30とが、ケース10内に収容保持されて要部が構成されている。
【0010】
ケース10は、例えば、上端側に長方形状の開口部10aを有する板金製の中空部材で構成され、下部側がブラケット11を介してステアリングサポートビーム12に保持されている。このケース10内には、略円筒状のインフレータ収容室15が画成され、このインフレータ収容室15の上部にエアバッグ収容室16が形成されている。
【0011】
ここで、インストルメントパネル5には、エアバッグ収容室16(開口部10a)を車室側に連通する開口部5aが開口され、この開口部5aがリッド6によって閉塞されている。そして、インフレータ30の作動時には、エアバッグ20によってリッド6が車室内に押し開かれることにより、開口部5aは開放され、エアバッグ20が車室内で展開される。
【0012】
このエアバッグ20の主要部をなすエアバッグ本体21は、主布体22と、当該主布体22に縫合される左右一対の副布体25L,25Rと、これら副布体25L,25Rに連結する布体26とを有して構成されている。
【0013】
主布体22は、短冊状に形成された基部23を有し、この基部23にはインフレータ30からの膨張用ガスを導入するための吸気口23aは開口されている。また、基部23の両側には所定の丸みを帯びた略矩形の外形形状をなす一対の布部24L,24Rが一体形成され、これら左右布部24L,24Rには、帽章用ガスを排出するための排気口24La,24Raが開口されている。
【0014】
各副布体25L,25Rは、互いに対称な略曲玉形状の外形を有し、外縁部が左右布部24L,24Rの外縁部にそれぞれ縫合されている。さらに、左右各副布体25L,25Rは、互いの内縁部が縫合されている。
【0015】
そして、これら布体22,25L,25Rの縫合体において、展開時に基部23に対向する面部は、エアバッグ本体21の乗員保護部(衝撃吸収面)21aとして形成され、この乗員保護部21aは、フロントガラス7の下方で前席乗員に対向する。また、乗員保護部21aの中央には上下方向に延在する凹部21bが形成されている。この凹部21bは、主として副布体25L,25Rによって形成されるもので、特に、凹部21bの深さや形状等は、副布体25L,25Rの外形形状等に依存する。
【0016】
また、このような凹部21bを形成する左右の副布体25L,25Rには、凹部21b内の上部で互いに対向する位置に、連通孔25La,25Raが開口されている(図2参照)。そして、これら連通孔25La,25Raは、筒状に形成された布体26の両端部が縫合されることにより、互いに連通されている。そして、エアバッグ20の展開時において、布体26内には、インフレータ30からの膨張用ガスが連通孔25La,25Raを介して導入される。これにより、布体26は、凹部21bの上部でフロントガラス7の直下に膨出する膨出部21cを形成する(図1,3参照)。
【0017】
なお、エアバッグ本体21内には整流布27が配設され、この整流布27は、吸気口23aに対向された状態で基部23に縫合されている。
【0018】
次に、上述の構成によるエアバッグ20の用について説明する。
例えば、図1に示すように、正規着座位置でシートベルトを着用した乗員50の搭乗時に車両衝突が発生した場合において、エアバッグ20が展開されると、エアバッグ本体21は、先ず、衝突時の衝撃によって前方に移動する乗員50の両肩部を乗員保護部21aによって拘束する。次いで、エアバッグ本体21は、両肩部の拘束によって前方への勢いが弱められた乗員50の頭部を凹部21bによって拘束する。そして、このように、乗員保護部21aの中央に形成した凹部によって乗員50の頭部を二次的に拘束することにより、エアバッグ本体21が乗員50の拘束時に頭部に与える衝撃を緩和することができる。従って、特に、女性等の比較的小柄な乗員に対しても、首等へのダメージを軽減しつつ、的確な乗員保護を実現することができる。
【0019】
一方、例えば、シートベルトを着用していない乗員51の搭乗時に車両衝突が発生すると、乗員51の頭部はそのまま略水平後方に移動する。この乗員51が比較的大柄である場合、当該乗員51の頭部は、フロントガラス7との境界部の近傍において凹部21bの上部に衝突するが、この部位にはフロントガラス7の直下に膨出する膨出部21cが設けられているため、乗員51の頭部がフロントガラス7から直接的なダメージを受けることが回避される。
【0020】
このように、本実施形態によれば、フロントガラス7の下方で前席乗員に対向して展開するエアバッグ本体21の乗員保護部21aの中央に、上下に延在する凹部21bを設けることにより、正規着座位置でシートベルトを着用した乗員50等に対して、首等にダメージを与えることなく的確な乗員保護を実現することができる。加えて、凹部21bの上部でフロントガラス7の直下に膨出する膨出部21cをエアバッグ本体21に設けることにより、シートベルトを着用していない乗員51等に対しても、頭部がフロントガラス7から直接的なダメージを受けることを的確に回避することができる。
【0021】
ここで、本発明において、膨出部21cは、上述のように別部材(布体26)によって形成されることに限定されるものではなく、例えば、図4,5に示すように、左右の副布体25L,25Rの内縁部の形状や縫合等を一部変化させ、凹部21bの深さを調節することによって形成されるものであってもよい。このように構成すれば、エアバッグ本体21の構成を簡素化することができる。
【0022】
また、エアバッグ本体21においては、凹部21bによる頭部の拘束をより好適なものとするため、例えば、図5に示すように、凹部21bの上下方向中央寄りでの幅d1を、上方寄り或いは下方寄りでの各幅d2,d3よりも相対的に広く形成することも可能である。このような構成は、例えば、左右の布部24L,24R及び副布体25L,25Rの各外縁部の形状や縫合等を一部変化させることにより、容易に実現することが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 … エアバッグ装置
5 … インストルメントパネル
5a … 開口部
6 … リッド
7 … フロントガラス
10 … ケース
10a … 開口部
11 … ブラケット
12 … ステアリングサポートビーム
15 … インフレータ収容室
16 … エアバッグ収容室
20 … エアバッグ
21 … エアバッグ本体
21a … 乗員保護部(衝撃吸収面)
21b … 凹部
21c … 膨出部
22 … 主布体
23 … 基部
23a … 吸気口
24L,24R … 布部
24La,24Ra … 排気口
25L,25R … 副布体
25La,25Ra … 連通孔
26 … 布体
27 … 整流布
30 … インフレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開時にフロントガラスの下方で前席乗員に対向する衝撃吸収面と、
前記衝撃吸収面の中央で上下方向に延在する凹部と、
前記凹部の上部で前記フロントガラスの直下に膨出する膨出部と、を備えたことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記膨出部は、前記凹部の両側に架設する筒部で形成されたことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記膨出部は、前記凹部の凹量を減少させることによって形成したことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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