説明

エアフィルタユニットの製造方法

【課題】フィルタ濾材と射出成形による枠体とを備えたエアフィルタユニットのリーク発生を抑制する。
【解決手段】キャビティ21の直路22,23に少なくとも1つずつゲート32,33を配置するとともに、フィルタ濾材1の山谷線11に垂直な直路22に配置されるゲートの数が平行な直路23に配置されるゲートの数よりも多く、キャビティ21の周回路の隅角部24に最も近いゲート32eが直路22に位置するように、ゲート32,33を配置し、ゲート32eから射出されて隅角部24へと向かう樹脂42の流れが、直路23から隅角部24を経由して直路22へと回り込んできた別の樹脂43の流れと直路22において衝突するようにタイミングを定め、ゲート32,33から樹脂を射出する。この方法によれば、フィルタ濾材1の隅角部近傍における山谷形状の崩れを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ濾材と、樹脂の射出成形による枠体とを備えたエアフィルタユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム、空調設備、ガスタービン、蒸気タービン、掃除機等の用途においては、フィルタ濾材とその外周を支持する保持枠(枠体)とを備えたエアフィルタユニットが多く用いられている。
【0003】
特許文献1,2には、このようなエアフィルタユニットの製造方法として、樹脂の射出成形によって枠体を得るとともに、この枠体によってフィルタ濾材の外周を固定する方法が開示されている。この方法では、プリーツ加工されたフィルタ濾材を金型に組み込むに際し、フィルタ濾材の外周を構成する4つの辺が金型内のキャビティの周回路を構成する4つの直路にそれぞれ露出するように組み込み、金型内のゲートからキャビティへと樹脂が射出される。図6に示すように、特許文献1,2に開示されている製造方法では、樹脂を射出するためのゲート133は、金型120のキャビティ121を構成する4つの直路のうち、互いに対向する直路123a,123bにそれぞれ3つずつ配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−239121号公報(図4)
【特許文献2】特開2002−219320号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゲート133を直路123a,123bのみに配置すると、ゲートが配置されていない直路122a,122bには樹脂が行き渡りにくい。金型120のキャビティ121全体に樹脂が行き渡らないと、枠体の成形不良が生じやすくなる。これを防ぐためには、キャビティ121の周回路を構成する4つの直路122a,122b,123a,123bそれぞれに少なくとも1つのゲートを配置することが望ましい。
【0006】
また、キャビティ121の直路122a,122b,123a,123bにはその長さに応じた数のゲートを配置することが望ましい。したがって、例えば図7に示すように、相対的に長い直路122a,122bのそれぞれに配置するゲート132の数(図7では3)は、相対的に短い直路123a,123bのそれぞれに配置するゲート133の数(図7では2)よりも多いほうがよい。なお、図6および図7に示したように、通常、相対的に長い直路122a,122bは、プリーツ加工されたフィルタ濾材101の山谷線111に垂直となり、相対的に短い直路123a,123bは山谷線111に平行となる。言い換えれば、フィルタ濾材101は、枠体に固定された状態で気流が通過する方向(図6および図7における紙面垂直方向)に沿って見たときに、通常、山谷線111に垂直な辺112が山谷線111に平行な辺113よりも長くなるようにプリーツ加工される。これは、プリーツ加工後の濾材幅(辺113の長さに相当)が短いほうがプリーツ加工により付与された形状が変形しにくいためであり、一定の加工幅を有するプリーツ加工機を用いて通気面積が大きい濾材が得られるためである。
【0007】
図7のようにゲート132,133を配置すると、金型120内のキャビティ121全体に樹脂は行き渡りやすくなる。しかし、図7に示したように配置したゲート132,133から樹脂を射出したところ、フィルタ濾材101の隅角部114において、濾材のプリーツ形状の変形が生じやすくなった。フィルタ濾材のプリーツ形状の歪みは、エアフィルタユニットにおけるリーク発生の原因となることがある。
【0008】
本発明の目的は、フィルタ濾材の外周を構成する4つの辺に対応するキャビティの4つの直路それぞれに樹脂を射出するゲートを配置した金型を用いてフィルタ濾材を支持する枠体を成形するエアフィルタユニットの製造方法において、得られるエアフィルタユニットにおけるリークの発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プリーツ加工されたフィルタ濾材を、当該フィルタ濾材の外周を構成する4つの辺が金型内のキャビティの周回路を構成する4つの直路にそれぞれ露出するとともに、気流が通過する方向に沿って前記フィルタ濾材を見たときに山谷線に垂直な辺が山谷線に平行な辺よりも長い矩形となる状態で、当該金型内に配置する工程と、
前記キャビティに樹脂を射出し、前記フィルタ濾材の前記外周を支持する枠体を成形する工程と、を含む、エアフィルタユニットの製造方法であって、
前記樹脂を射出するゲートを、1)前記キャビティの4つの直路のそれぞれに少なくとも1つずつ、2)前記山谷線に垂直な直路に配置されるゲートの数が前記山谷線に平行な直路に配置されるゲートの数よりも多く、3)前記キャビティの周回路の隅角部に最も近いゲートが前記山谷線に垂直な直路に位置するように、配置し、
前記隅角部に最も近いゲートから射出されて当該隅角部へと向かう樹脂の流れが、前記山谷線に平行な直路から当該隅角部を経由して前記山谷線に垂直な直路へと回り込んでくる別の樹脂の流れと当該垂直な直路において衝突するようにタイミングを定めて、前記キャビティに配置されたゲートから樹脂を射出する、
エアフィルタユニットの製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、樹脂を射出するゲートを、1)キャビティの4つの直路のそれぞれに少なくとも1つずつ配置し、2)フィルタ濾材の山谷線に垂直で相対的に長い直路に配置されるゲートの数が同山谷線に平行で相対的に短い直路に配置されるゲートの数よりも多くなるように配置した。このような配置により、キャビティ全体に樹脂が行き渡りやすくなるため、枠体には欠陥が生じにくくなる。
【0011】
上記1),2)のようにゲートを配置すると、3)キャビティの周回路の隅角部に最も近いゲートがフィルタ濾材の山谷線に垂直な直路に位置することが多い。このように配置した各ゲートから樹脂を同時に射出すると、図7に示すように、射出された樹脂142が山谷線111に垂直な直路122aからキャビティ121の隅角部124を経由して山谷線111に平行な直路123bへと流れ込み、この直路123bにおいて対向して進んでくる樹脂143と衝突する。射出された樹脂142は、フィルタ濾材101の隅角部114においてフィルタ濾材101の端部を捲り上げるように作用するため、プリーツ形状を崩して不良を発生させることがある。これを考慮し、本発明では、キャビティの隅角部における樹脂の流れが、山谷線に平行な直路から当該隅角部を経由して山谷線に垂直な直路へと回り込むようにした。このような樹脂の流れは、フィルタ濾材の隅角部において、フィルタ濾材の端部を捲り上げるではなく金型に押し付けるように作用する。したがって、フィルタ濾材の隅角部におけるプリーツ形状の歪みは防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】エアフィルタユニットの一例を示す斜視図である。
【図2】プリーツ加工されたフィルタ濾材の一例を示す斜視図(a)と平面図(b)である。
【図3】金型内のゲートの配置の一例を示す図である。
【図4】図3に示した金型を用いて、各ゲートからの射出のタイミングを制御して樹脂を射出した状態を説明するための図である。
【図5】フィルタ濾材の隅角部における変形を説明するための図である。
【図6】特許文献1,2において用いられた金型におけるゲートの配置を示す図である。
【図7】図3と同様の金型を用いて、各ゲートから樹脂を同時に射出した状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明によるエアフィルタユニットの実施形態を説明する。以下の説明では、同じ部材等に同じ符号を付し、その部材等の説明の重複を避けることがある。
【0014】
図1に示したエアフィルタユニット10は、プリーツ加工されたフィルタ濾材1と樹脂製の枠体2とを備えている。フィルタ濾材1は、濾過面積を増加させて圧力損失を低下させるためにプリーツ加工(ひだ折り加工)されており、その外周を構成する4辺はいずれも枠体2の内周に埋め込まれて枠体2により固定されている。単体で取り扱うと、プリーツ加工されたフィルタ濾材1は、山谷線11の間隔が広くあるいは狭くなることによってその形状が安定しない。しかし、枠体2によりその四周が固定されているため、フィルタ濾材1は、その形状が一定に保たれており、その取り扱いが容易になっている。
【0015】
図2(a)(b)に示されているとおり、フィルタ濾材1は、枠体2に固定されるときの形状に保持したときに、山谷線11に垂直な辺12が山谷線11に平行な辺13よりも長くなるようにプリーツ加工されている(Lf>Wf)。このように加工すると、長短の関係が逆になるように、すなわち辺12が辺13よりも短くなるようにプリーツ加工するよりも、プリーツ加工により付与された形状の変形を抑制できる。また、一定の加工幅を有するプリーツ加工機を用いて通気面積が大きい濾材を得ることもできる。なお、フィルタ濾材1の各辺12,13の長さLf,Wfは、濾材1を気流が通過する方向(山谷線11を構成する峰部が並ぶ面(または谷部が並ぶ面)に垂直方向)に沿って見たときに矩形となる濾材1の外周を構成する辺の長さによって定める(図2(b)参照)。プリーツ加工は、従来から行われているとおり、フィルタ濾材1を所定の長さごとに連続したW字状に折り畳んでいくレシプロ式またはロータリー式の加工機を用いて実施するとよい。
【0016】
図3に、枠体を射出成形するために、金型20の内部にフィルタ濾材1を配置した状態を示す。金型20内のキャビティ21は、額縁状の周回路であって、4つの直路22a,22b,23a,23bから構成されており、これら直路にはフィルタ濾材1の外周を構成する4つの辺12a,12b,13a,13bがそれぞれ露出している。4つの直路22a,22b,23a,23bはフィルタ濾材1の4つの辺12a,12b,13a,13bの長さに対応する長さを有し、4つの辺の長さの相違を反映し、4つの直路のうち、フィルタ濾材1の山谷線11に垂直な直路22a,22bは、山谷線11に平行な直路23a,23bよりも長く伸びている。なお、隣接する直路が交差するキャビティ21内の領域を本明細書ではキャビティの「隅角部」と呼ぶ。
【0017】
キャビティ21内に樹脂を行き渡らせて隙間なく充填するために、樹脂を射出するためのゲートは、各直路22a,22b,23a,23bに少なくとも1つ配置される。また、各直路に配置するゲートの数は、基本的に、その直路の長さに応じて定められる。図3に示した形態では、フィルタ濾材1の山谷線11に垂直な直路22a,22bに各3つのゲート32(32e,32c)が配置され、山谷線11に平行な直路23a,23bには各2つのゲート33が配置されている。図3に示したゲートのうち、キャビティ21の隅角部24に最も近いゲート32eは、直路22a,22bに配置されている。言い換えれば、ゲート32eから隅角部24までの距離LGはゲート33から隅角部24までの距離WGよりも短い。
【0018】
上記で説明したように、各ゲート32e,32c,33から樹脂を同時に射出すると、山谷線11に垂直な直路22a,22bに配置されたゲート32eから射出された樹脂は、隅角部24を経由して山谷線11に平行な直路23a,23bへと流れ込み、リーク発生の原因となる。これを防止するためには、隅角部24に最も近いゲート32eからの樹脂の射出のタイミングを、キャビティ21において隅角部24を挟んで当該ゲート32eの反対側の位置にあるゲート33からの樹脂の射出のタイミングよりも遅らせ、ゲート33から射出された樹脂をゲート32eから射出された樹脂よりも先に隅角部24に侵入させるとよい。
【0019】
このように樹脂の射出のタイミングを制御すると、図4に示すように、ゲート33から射出された樹脂43は、キャビティ11の隅角部24を経由して、フィルタ濾材1の山谷線11に垂直な直路22へと侵入する。直路23から直路22への樹脂42の回り込みは、フィルタ濾材1の捲れ上がりを生じさせず、エアフィルタユニットのリーク発生の要因となることはない。
【0020】
図5を参照して、キャビティの隅角部における樹脂の流れとフィルタ濾材の変形との関係を説明する。図5は、キャビティの隅角部近傍における樹脂の流れを模式的に示した図である。直路22(122)から直路23(123)と進む樹脂142は、濾材1(101)の隅角部近傍19を巻き上げて金型(図示省略)から引き離すように作用する。この作用によって濾材1(101)の隅角部14(114)の近傍19が破線で示した位置にまで巻き上げられると、濾材1(101)のプリーツ形状が歪むため、リークが発生することがある。これに対し、直路23から直路22へと進む樹脂43は、濾材1の隅角部近傍19を金型へと押しつけるように作用し、プリーツ形状の歪みをもたらすことはない。
【0021】
ゲート32eから樹脂を射出する前にゲート33から射出された樹脂43がゲート32eに達すると、ゲート32eからの樹脂の射出に支障が生じる。したがって、ゲート32eからの樹脂の射出は、ゲート33からの樹脂の射出よりも遅らせながらも、ゲート33から射出された樹脂43がゲート32eに達する前に実施するべきである。樹脂43が隅角部24に達しつつゲート32eには達しないタイミングで樹脂42を射出すると、図4に示すように、ゲート33から射出された樹脂43とゲート32eから射出された樹脂42とは、フィルタ濾材1の山谷線11に垂直な直路22において、より詳しくは隅角部24とゲート32eとの間において、互いに衝突する。
【0022】
なお、図4には、山谷線11に平行な直路23に配置された4つのゲート33から同時に樹脂43を射出した後、山谷線11に垂直な直路22に配置された6つのゲート32c,32eから同時に樹脂42を射出したときのキャビティ21における樹脂の流れを示した。この場合、同一の直路に射出された樹脂同士は、図示したように両ゲート32e,32c(33,33)から等距離の位置で衝突する。
【0023】
射出成形された樹脂の成形品の表面には、樹脂の流れの衝突した面が露出した部位にウェルドラインと呼ばれる線状の模様が現れることがある(ただし、ウェルドラインは、樹脂の射出条件等によっては明確に視認できないこともある)。図4に示したタイミングで樹脂を射出した場合には、図1に示すように、枠体2には、山谷線11に垂直な側面26それぞれに4本のウェルドライン9が、山谷線11に平行な側面27それぞれに1本のウェルドライン9が現れることがある。
【0024】
キャビティ21の各直路22,23に配置するゲートの数は、図3および図4に示した数に制限されるわけではない。ただし、後述するエアフィルタユニットの一般的な大きさ等を考慮すると、フィルタ濾材1の山谷線11に垂直な直路22に配置するゲートは1直路あたり3〜5個、特に3〜4個が好ましく、山谷線11に平行な直路23に配置するゲートは1直路あたり2〜3個が好ましい。
【0025】
図1に戻って枠体の大きさ(外形寸法)を説明する。枠体の外形寸法は、エアフィルタユニットの用途等に応じて適宜定めればよく、特に制限はないが、例えば、濾材1を気流が通過する方向と山谷線11との双方に垂直な方向についての枠体2の外形寸法である長さLuは15〜30cmの範囲が適当であり、山谷線11に平行な方向についての枠体2の外形寸法である幅Wuは10〜20cmの範囲が適当であり(ただし、Lu>Wu)、濾材1を通過する気流の方向についての枠体2の外形寸法である高さHuは10〜30cmの範囲が適当である。枠体2の厚み(上面、下面28の幅)Tuは、厚すぎると気体の透過面積を狭めることにより、薄すぎると強度を確保できなくなる。適切なTuは、例えば2〜5mmの範囲である。
【0026】
フィルタ濾材1および枠体2を構成する樹脂の材料は、従来から知られていたものを適宜用いることができる。フィルタ濾材1としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜と通気性繊維層との積層体を用いることができる。通気性繊維層は、フェルト、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)等を用いればよい。通気性繊維層を構成する材料も、特に制限はないが、ポリオレフィン(例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン)、ポリアミド(芳香族ポリアミドを含む)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET))等を用いればよい。好ましい通気性繊維層としては、芯部が鞘部よりも融点が高い材料からなる芯鞘構造を有する不織布が挙げられる。フィルタ濾材1の厚さは、プリーツ加工した後にその形状が保持される程度であることが望ましく、例えば0.05mm〜1mmが好ましい。
【0027】
枠体を構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミド系樹脂を含む)、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等)、ポリカーボネート(PC)系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の2種以上を混合して用いても構わない。枠体の変形防止の観点から、ガラス繊維を添加することによって、収縮率を10/1000以下、特に5/1000以下に制御した樹脂を用いることが推奨される。このように、射出される樹脂には、ガラス繊維などの補強剤に代表される添加剤を適宜配合してもよい。ここで、収縮率とは、JIS K7152−4に規定された流動方向に直角な成形収縮率(SMn)を意味する。
【0028】
以下、実施例および比較例に基づき、本発明をより詳細に説明する。実施例および比較例において測定した捕集効率、圧力損失、および走査漏れ試験は、いずれも、JIS B9927に準じて実施した。
【0029】
(比較例)
面積倍率が500倍となるように延伸したPTFE多孔質膜を、2枚の不織布で両側から挟み、180℃に加熱した一対のロールの間を通過させて熱ラミネートを行ってフィルタ濾材を得た。不織布としては、PETを芯部、PEを鞘部とする芯鞘構造を有する不織布(目付量40g/m2)を用いた。フィルタ濾材の厚さは0.32mm、圧力損失は170Pa、捕集効率は99.99%であった。
【0030】
上記で得たフィルタ濾材を、22mm間隔で93山となるようにプリーツ加工した。プリーツ加工したフィルタ濾材を、図3と同様にゲートを配置した金型内に配置した。この金型のキャビティ21には、山谷線に垂直な直路22a,22bに1直路あたり3つのゲート32e,32cが、山谷線に平行な直路23に1直路あたり2つのゲート33がそれぞれ配置され、キャビティの周回路の各隅角部24から最も近いゲート32eは、山谷線に垂直な直路22a,22bに位置している。
【0031】
続いて、各ゲートから射出のタイミングを一致させて、ガラス繊維を配合したABS樹脂(ダイセルポリマー社製「セビアンVGR30」;ガラス繊維配合率30重量%、収縮率0.1〜0.4%)をキャビティ21へと射出した。こうして、フィルタ濾材の外周に、長さ(Lu)295mm、幅(Wu)195mm、高さ(Hu)27mm、厚み(Tu)2mmの枠体を成形した。
【0032】
(実施例)
山谷線11に垂直な直路22に配置されたゲート32e,32cからの樹脂の射出を、山谷線11に平行な直路23に配置されたゲート33からの樹脂の射出よりも遅らせて、ゲート33から射出された樹脂がキャビティ21の隅角部24を回り込んで山谷線11に垂直な直路22に達し、直路22の隅角部に近い領域においてゲート32から射出された樹脂と衝突するように調整した以外は、比較例と同様にして、エアフィルタユニットを得た。
【0033】
実施例および比較例により得られた各エアフィルタユニットについて、圧力損失、捕集効率を測定し、走査漏れ試験を実施した。実施例のエアフィルタユニットについては、圧力損失150Pa、捕集効率99.99%、リークなしの結果が得られた。これに対し、比較例のエアフィルタユニットからは、圧力損失150Pa、捕集効率99.98%、リークありの結果が得られた。走査漏れ試験の結果によると、比較例のエアフィルタユニットのリークはフィルタ濾材の隅角近傍において生じていた。この領域において、比較例のエアフィルタユニットでは、フィルタ濾材の山谷形状が一部崩れていた。このプリーツ形状の乱れがリークの原因になったものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によるエアフィルタユニットは、クリーンルーム、空調設備、ガスタービン、蒸気タービン、掃除機等において有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 フィルタ濾材
2 枠体
10 エアフィルタユニット
11 山谷線
12 山谷線に垂直なフィルタ濾材の辺
13 山谷線に平行なフィルタ濾材の辺
20 金型
21 キャビティ
22 山谷線に垂直なキャビティの直路
23 山谷線に平行なキャビティの直路
24 キャビティの隅角部
26,27 枠体の側面
28 枠体の上面および下面
32c,32e,33 ゲート
42,43 樹脂


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリーツ加工されたフィルタ濾材を、当該フィルタ濾材の外周を構成する4つの辺が金型内のキャビティの周回路を構成する4つの直路にそれぞれ露出するとともに、気流が通過する方向に沿って前記フィルタ濾材を見たときに山谷線に垂直な辺が山谷線に平行な辺よりも長い矩形となる状態で、当該金型内に配置する工程と、
前記キャビティに樹脂を射出し、前記フィルタ濾材の前記外周を支持する枠体を成形する工程と、を含む、エアフィルタユニットの製造方法であって、
前記樹脂を射出するゲートを、1)前記キャビティの4つの直路のそれぞれに少なくとも1つずつ、2)前記山谷線に垂直な直路に配置されるゲートの数が前記山谷線に平行な直路に配置されるゲートの数よりも多く、3)前記キャビティの周回路の隅角部に最も近いゲートが前記山谷線に垂直な直路に位置するように、配置し、
前記隅角部に最も近いゲートから射出されて当該隅角部へと向かう樹脂の流れが、前記山谷線に平行な直路から当該隅角部を経由して前記山谷線に垂直な直路へと回り込んでくる別の樹脂の流れと当該垂直な直路において衝突するようにタイミングを定めて、前記キャビティに配置されたゲートから樹脂を射出する、
エアフィルタユニットの製造方法。
【請求項2】
前記山谷線に垂直な直路にそれぞれ3〜4個のゲートを配置し、
前記山谷線に平行な直路にそれぞれ2〜3個のゲートを配置する、請求項1に記載のエアフィルタユニットの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−30550(P2012−30550A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173725(P2010−173725)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】