説明

エアマット

【課題】床ずれの防止は勿論、長期間にわたる寝たきりの病人や老人等の身体や寝具等から発生する悪臭そのものを除去することができ、しかも寝たきりの病人や老人等の身体や寝具等の汚れや悪臭がエアマットに付着してしまった場合でも、エアマット自体に雑菌等が繁殖したり、悪臭が発生したりするのを防止することができるエアマットを提供する。
【解決手段】二酸化塩素ガス発生袋を着脱自在に装着した二酸化塩素ガス発生室1の上流側に送風手段2を連結し、前記二酸化塩素ガス発生室1の下流側にエアマット本体3を連結し、このエアマット本体3の表面に設けた多数の小孔Hから、前記二酸化塩素ガス発生袋から発生した二酸化塩素ガスを放出するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長期間にわたる寝たきりの病人や老人等の床ずれの予防または防止などに適したエアマットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエアマットとして、例えば図7に示したような床ずれ防止用エアマットが存在する。このエアマットは、非通気性のシートによって形成されたマット主体21の少なくとも上面側に、長さ方向または幅方向に延びる密閉可能な身体支持用の数列の空気室22、22が形成されている。さらに、前記空気室22、22間に、上面側に多数の細孔23、23を有し、空気室22、22よりも膨出高さの小さい副空気室24、24が設けられている。そして、前記副空気室24、24の送気開口部25に送気ファン26を接続し得るように構成している(特許文献1)。
【0003】
このように構成された従来の床ずれ防止用エアマットでは、副空気室24、24に送入された清浄空気が、空気室22、22間に位置した副空気室24、24の多数の細孔23、23から洩出して就寝者の身体とマットとの間を効果的に流動し、発汗による身体とマットとの間の湿気を取り除く。したがって、就床した療養者の身体周辺の空気が沈滞することなく絶えず交換され、常に新鮮にして清浄な空気が療養者の身体に接することになり、皮膚の湿潤を除いて床ずれ発生の余地をなくすとともに、床ずれ療養者の患部に対しては新鮮な空気の流動作用によってその傷口の乾燥と治療を促進させ、その結果、床ずれ症状を治療することができるとしている。
【0004】
さらに、この種のエアマットとして、例えば図8に示したような床ずれ防止用エアマットが存在する。このエアマットは、肩、背中、腰、臀部等の就寝体重が多く掛かり、床ずれの発生し易い個所には偏平な多角形のエアパット31を縦横に複数配置し、床ずれの発生の少ない大腿部以下の脚部には円柱袋状の空気室32を並列に複数配置し、負荷体重に対するエアマットのセルの配置パターンを変えたものとしている。そして、エアパット31並びに空気室32には体温程度に温められた圧送気体が送気され、細孔33より温風が吹き出すようにしたり、隣接するエアパット31並びに空気室32に、間隔を置いて切分けられた強弱の圧力気体が交互に送気される送風器34、34を備えたものとしている(特許文献2)。
【0005】
このように構成された従来の床ずれ防止用エアマットでは、セルの配置パターンを工夫したので、床ずれ防止並びに治療効果は非常に向上したとしている。また、患者の就寝に対して違和感が少なく、隣接するエアパッドが交互に膨張するので寝返りと同等の効果が期待でき、温風噴出と相まって患者患部の乾燥を促進して細菌の発生を抑え、汗等を発散させるので患者特有の臭気も少なく、患者の身体は常に乾燥状態が保て、衛生的である。さらに、体温程度の温風が噴出するので、患者の身体から体温を奪うことなく、正常な体温が保て、治療効果が向上するとしている。
【特許文献1】特開昭63−135164号公報(第3頁、第1図)
【特許文献2】特開平9−28740号公報(第3、4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の一般的な床ずれ防止用エアマットには、長期間にわたる寝たきりの病人や老人等の身体や寝具等の汚れや悪臭が付着する。そのため、エアマット自体に雑菌等が繁殖したり、悪臭が発生したりすることがある。
【0007】
また、従来の床ずれ防止用エアマットでは、長期間にわたる寝たきりの病人や老人等の身体や寝具等から発生する悪臭そのものを除去することができない。
【0008】
図7に示した上記従来の床ずれ防止用エアマットは、身体とマットとの間の湿気を取り除くことによって、ある程度の消臭効果があると言えるが、臭気を積極的に除くものではないので、上記のような悪臭の消臭効果には充分ではないという問題点を有する。また、この床ずれ防止用エアマットは、身体とマットとの間の湿気を取り除くだけであるので、殺菌効果があるとは言えず、前記したようなエアマットに雑菌等が繁殖するのを防止することができない。
【0009】
さらに、図8に示した上記従来の床ずれ防止用エアマットでは、細菌の発生を抑え、汗等を発散させるので患者特有の臭気も少なく、患者の身体は常に乾燥状態が保て、衛生的であるとしているが、エアマット自体に雑菌等が繁殖したりした場合の抗菌、殺菌効果に対しては充分であるとは言えない。また、長期間にわたる寝たきりの病人や老人等の身体や寝具等の悪臭がエアマット自体に付着してしまった場合の消臭効果には充分ではないという問題点を有する。
【0010】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決するものであり、床ずれの防止は勿論、長期間にわたる寝たきりの病人や老人等の身体や寝具等から発生する悪臭そのものを除去することができ、しかも寝たきりの病人や老人等の身体や寝具等の汚れや悪臭がエアマットに付着してしまった場合でも、エアマット自体に雑菌等が繁殖したり、悪臭が発生したりするのを防止することができるエアマットを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのため、この発明のエアマットは、二酸化塩素ガス発生袋7を着脱自在に装着した二酸化塩素ガス発生室1の上流側に送風手段2を連結し、前記二酸化塩素ガス発生室1の下流側にエアマット本体3を連結し、このエアマット本体3の表面に設けた多数の小孔Hから、前記二酸化塩素ガス発生袋7から発生した二酸化塩素ガスを放出するようにしている。
【0012】
そして、この発明のエアマットは、前記二酸化塩素ガス発生室1の上流側の送風手段2との連結部に、逆止弁機構4を設けたものとしている。
【0013】
さらに、この発明のエアマットは、前記二酸化塩素ガス発生袋7を二酸化塩素ガス発生室1の周壁1aに沿うように丸め、二酸化塩素ガス発生室1の略中央に流通空間1bが形成されるようにしている。
【発明の効果】
【0014】
この発明のエアマットは、以上に述べたように構成されているので、床ずれの防止は勿論、長期間にわたる寝たきりの病人や老人等の身体や寝具等から発生する悪臭そのものを除去することができ、しかも寝たきりの病人や老人等の身体や寝具等の汚れや悪臭がエアマットに付着してしまった場合でも、エアマット自体に雑菌等が繁殖したり、悪臭が発生したりするのを防止することができるものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明のエアマットの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
この発明のエアマットは、図1に示したように、二酸化塩素ガス発生室1の上流側に送風手段2を連結し、この二酸化塩素ガス発生室1の下流側にエアマット本体3を連結したものとしている。
【0017】
前記二酸化塩素ガス発生室1は、略円筒形状または略角筒形状に形成されており、上流側の送風手段2との連結部に逆止弁機構4を設けたものとし、上流側のエアマット本体3との連結部にパッキン5を介して開閉蓋6を設けたものとしている。そして、この二酸化塩素ガス発生室1には、二酸化塩素ガス発生袋7を着脱自在に装着したものとしている。なお、前記二酸化塩素ガス発生室1と送風手段2、二酸化塩素ガス発生室1とエアマット本体3とは、それぞれ適宜長さのホース8を介して連結したものとしている。
【0018】
前記送風手段2は、図示したような送風ポンプであってもよいが、送風ファンであってもよい。この送風手段2は、前記二酸化塩素ガス発生室1に設けた逆止弁機構4によって、二酸化塩素ガス発生室1で発生した二酸化塩素ガスが逆流しないようにされ、二酸化塩素ガスによって錆びたりして作動状態が悪くならないようにしている。
【0019】
前記エアマット本体3は、非通気性のシート材料等によって形成されており、内部を中空としており、エアマット本体3の長さ方向に複数列の気体流通路9を形成すると共に、この気体流通路9に連通する気体連通路10をエアマット本体3の周囲に形成したものとしている。そして、気体流通路9の上方に位置するエアマット本体3の表面には、多数の小孔Hを設けたものとしている。さらに、気体連通路10には、前記二酸化塩素ガス発生室1がホース8を介して連結され、二酸化塩素ガス発生室1で発生した二酸化塩素ガスを気体連通路10から気体流通路9に行き渡るようにしている。そのため、この気体流通路9に行き渡った二酸化塩素ガスは、後述するように空気と一緒になって、エアマット本体3の表面に設けられた小孔Hから放出される。
【0020】
前記二酸化塩素ガス発生袋7は、図5、6に示したように、袋体11の内部を第一収容室12と第二収容室13に区画したものとしている。この袋体11は、第一収容室12側を気液不透過性とし、第二収容室13側を気体透過性で液体不透過性としている。さらに、この袋体11の周縁部11aおよび第一収容室12と第二収容室13の区画部11bはヒートシールなどによって密着しており、シールの形状や状態などによってその密着強度に差をつけ、周縁部11aの密着強度を区画部11bの密着強度より大きくしている。そして、二酸化塩素ガスを発生させるために、例えば袋体11の第一収容室12に亜塩素酸ナトリウム溶液を収容し、第二収容室13にサラシ粉を収容したものとしている。
【0021】
したがって、前記二酸化塩素ガス発生袋7は、袋体11を掌で叩いたり、指で押し付けるなどして、所定の圧力をかけると、袋体11の周縁部11aの密着は解除されず袋体11が開封しないが、区画部11bの密着は解除されて、第一収容室12と第二収容室13とが連通することになる。すると、第一収容室12に収容した亜塩素酸ナトリウム溶液が第二収容室13に流れ込み、この第二収容室13に収容したサラシ粉と反応して二酸化塩素ガスが発生することになる。そして、この袋体11内で発生した二酸化塩素ガスは、気体透過性とした第二収容室13側から袋体11外部に徐々に放出されることになる。
【0022】
前記二酸化塩素ガス発生袋7は、二酸化塩素ガス発生室1の周壁1aに沿うよう丸め、略中央に流通空間1bが形成されるようにして、二酸化塩素ガス発生室1に装着されている。そのため、前記送風手段2から送風される空気が、この流通空間1bを抵抗なく通過し、二酸化塩素ガス発生袋7から発生した二酸化塩素ガスと一緒になってエアマット本体3に送られることになる。
【0023】
なお、前記二酸化塩素ガス発生袋7は、図示した構造のもの以外にも、例えば気体透過性で液体不透過性とし、所定の圧力をかけても周縁部が開封しないようにした外袋体内に、液体不透過性とし、所定の圧力をかけたときに周縁部の少なくとも一部が開封する内袋体を収容してなるものとし、外袋体にはサラシ粉を収容し、内袋体には亜塩素酸ナトリウム溶液を収容したものとするなど、袋体内で発生した二酸化塩素ガスが袋体外部に徐々に放出されるようにしたものであれば、その構造は特に限定されることはない。
【0024】
以上のように構成したこの発明のエアマットは、病人や老人等がエアマット本体3に寝たままの状態で送風手段2を作動させると、この送風手段2から送風される空気が、二酸化塩素ガス発生室1に装着した二酸化塩素ガス発生袋7から発生した二酸化塩素ガスと一緒になってエアマット本体3に送られる。そして、エアマット本体3に送られた二酸化塩素ガスと一緒になった空気は、気体連通路10から気体流通路9に行き渡り、この気体流通路9に行き渡った二酸化塩素ガスと一緒になった空気は、エアマット本体3の表面に設けられた小孔Hから放出される。
【0025】
このとき、前記二酸化塩素ガスと一緒になった空気が、エアマット本体3に寝ている病人や老人等の身体や寝具等に直接吹きつけられ、この空気によって通気効果が促進され、乾燥状態が保たれ、その病人や老人等の床ずれが防止される。さらに、前記二酸化塩素ガスと一緒になった空気は、エアマット本体3に寝ている病人や老人等の身体や寝具等に直接吹きつけられることにより、二酸化塩素ガスによる消臭効果が促進され、その病人や老人等の身体や寝具等から発生する悪臭が効果的に除去される。また、前記二酸化塩素ガスと一緒になった空気は、病人や老人等の身体や寝具等に跳ね返されエアマット本体3にも吹きつけられることにより、二酸化塩素ガスによる殺菌効果が促進され、エアマット本体3に雑菌等が繁殖するのが効果的に防止され、また寝たきりの病人や老人等の悪臭がエアマット本体3に付着してしまった場合にも、このエアマット本体3に付着してしまった悪臭も効果的に除去されることになる。
【0026】
なお、二酸化塩素ガス発生室1に装着されている二酸化塩素ガス発生袋7から二酸化塩素ガスが発生しなくなれば、二酸化塩素ガス発生室1の開閉蓋6を開閉操作し、新しい二酸化塩素ガス発生袋7に取り替えればよいのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明のエアマットの概略図である。
【図2】この発明のエアマットの図1中のA−A線による断面図である。
【図3】この発明のエアマットの二酸化塩素ガス発生室の横断面図である。
【図4】この発明のエアマットの二酸化塩素ガス発生室の縦断面図である。
【図5】この発明のエアマットの二酸化塩素ガス発生室に装着する二酸化塩素ガス発生袋の平面図である。
【図6】この発明のエアマットの二酸化塩素ガス発生室に装着する二酸化塩素ガス発生袋の断面図である。
【図7】従来のエアマットの一例を示す斜視図である。
【図8】従来のエアマットの他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 二酸化塩素ガス発生室
1a 周壁
1b 流通空間
2 送風手段
3 エアマット本体
4 逆止弁機構
7 二酸化塩素ガス発生袋
H 小孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化塩素ガス発生袋(7)を着脱自在に装着した二酸化塩素ガス発生室(1)の上流側に送風手段(2)を連結し、前記二酸化塩素ガス発生室(1)の下流側にエアマット本体(3)を連結し、このエアマット本体(3)の表面に設けた多数の小孔(H)から、前記二酸化塩素ガス発生袋(7)から発生した二酸化塩素ガスを放出するようにしたことを特徴とするエアマット。
【請求項2】
前記二酸化塩素ガス発生室(1)の上流側の送風手段(2)との連結部に、逆止弁機構(4)を設けたことを特徴とする請求項1記載のエアマット。
【請求項3】
前記二酸化塩素ガス発生袋(7)を二酸化塩素ガス発生室(1)の周壁(1a)に沿うように丸め、二酸化塩素ガス発生室(1)の略中央に流通空間(1b)が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載のエアマット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−143907(P2007−143907A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343211(P2005−343211)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(391048500)大扇産業株式会社 (16)
【出願人】(391003392)大幸薬品株式会社 (20)
【Fターム(参考)】