説明

エアワッシャ

【課題】噴霧水と空気との接触効率を高めて飽和効率を向上させることができるエアワッシャを提供する。
【解決手段】ケーシング2の内部に処理対象空気Aを通風するエアワッシャにおいて、ケーシング2の流路断面に噴霧エリア2a、2b、2c、2dを設定し、各噴霧エリア2a、2b、2c、2dの中央から周辺に向けて噴霧水を噴霧する噴霧手段5を噴霧エリア2a、2b、2c、2dの中央位置に配設し、噴霧手段5が噴霧エリア2a、2b、2c、2dの全域に噴霧水を噴霧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアワッシャに関し、半導体工場等で使用する空気調和装置において、空気中の塵埃や有害ガスの除去、飽和効率の高い加湿を行なう技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば特許文献1に記載するものがある。これは図18に示すようなエアワッシャ51であり、矩形の流路断面を有する本体ケーシング52の内部に、所定長さの水噴霧室53を有している。水噴霧室53は、その一端に形成した空気入口53aにおいてダクト(図示せず)に接続しており、このダクトから流入する空気Aが水噴霧室53の流路を通って他端に形成した空気出口53bから流出する。
【0003】
水噴霧室53には、空気入口53aの位置に第1ワッシャメディア54aを配置し、空気出口53bの位置に第2ワッシャメディア54bを配置しており、各ワッシャメディア54a、54bは、空気流の流路断面とほぼ等しい形状を有し、ポリ塩化ビニルデン系繊維やステンレスの線材等からなり、たとえば25mm〜50mm程度の厚みを有するマット状のものである。
【0004】
水噴霧室53の内部には、第1ワッシャメディア54aの側に金網55を第1ワッシャメディア54aと平行に配置している。この金網55は線径0.5〜1.0mm、線間隔2〜5mm程度のものである。金網55の下流側には、後述する循環水供給系に連通する複数の第1段ノズル56を配置するとともに、補給水供給系(図示省略)に連通する複数の第2段ノズル57を第1段ノズル56とほぼ同じ位置に配置している。第1段ノズル56は、空気流とは逆方向に、金網55に向けて第1ワッシャメディア54aに達する噴霧水を噴霧するものであり、第2段ノズル57は、空気流と順方向に向けて第2ワッシャメディア54bに噴霧水を噴霧するものである。
【0005】
水噴霧室53の下部には、流下する噴霧水を受け止める貯水槽が設けてあり、貯水槽に滞留する循環水を第1段ノズル56に循環供給する循環水供給系59が水噴霧室53の下部に連通している。循環水供給系59は、貯水槽58の下部に開口する吸込管60と、吸込管60に接続した循環ポンプ61と、循環ポンプ61を駆動するモータ62と、循環ポンプ61の吐出口に接続して水噴霧室53の上方に配置した第1段吐出管63と、第1段吐出管63から分岐して水噴霧室53に垂直方向に配設した複数の第1段分岐管64とからなり、各第1段分岐管64に前述した複数の第1段ノズル56を設けている。
【0006】
水噴霧室53の下流側には、水噴霧室53を通過した空気に含まれる水滴等を除去するエリミネータ70が配置してあり、水噴霧室53の空気出口53bには、水噴霧室53と同様の流路断面形状を有する所定長さの冷却室71が接続してある。
【0007】
冷却室71の内部には冷却器として冷却コイル72が設けてあり、水噴霧室53の下流側には送風機(図示せず)が配置してあり、この送風機を作動することによって水噴霧室53の流路に空気を導く。
【0008】
上記した構成における作用を説明する。空気Aは空気入口53aから第1ワッシャメディア54aを通して水噴霧室53に流入する。この空気流に対し、その流れに対向するように貯水槽からの循環水を第1段ノズル56から噴霧する。噴霧水(特に粒子径の大きなもの)は、金網55に衝突して微粒子化し、空気中の塵埃や有害ガスに衝突する。
【0009】
空気中の塵埃や有害ガスに衝突した噴霧水の微粒子は、その一部が第1ワッシャメディア54aに達し、第1ワッシャメディア54aが塵埃や有害ガスを伴った噴霧水を捕捉する。第1ワッシャメディア54aでは、噴霧水が第1ワッシャメディア54aに付着した塵埃を洗い流して流下するとともに、有害ガスを取り込んで貯水槽へ流入する。噴霧水は流下する過程において蒸発して空気を加湿する。
【0010】
第lワッシャメディア54aに衝突しなかった噴霧水は、一部が水噴霧室53の天井面、壁面または貯水面に衝突するが、それ以外は空気流に乗って移動し、その過程において蒸発して空気を加湿するとともに、空気中の塵埃や有害ガスを取り込んで第2ワッシャメディア54bに達し、第2ワッシャメディア54bが塵埃や有害ガスを伴った噴霧水を捕捉する。
【0011】
そして、水噴霧室53の空気流に対して、清浄水もしくは純水を第2段ノズル57から噴霧すると、清浄水もしくは純水の噴霧水が空気中に残存する塵埃や有害ガスとともに第2ワッシャメディア54bに達し、第2ワッシャメディア54bが塵埃や有害ガスを伴った噴霧水を捕捉する。第2ワッシャメディア54bでは、噴霧水が第2ワッシャメディア54bに付着した塵埃を洗い流して流下するとともに、有害ガスを取り込んで貯水槽へ流入する。噴霧水は流下する過程において蒸発して空気を加湿する。貯水槽へ流入した清浄水もしくは純水は、補給水として循環水に合流し、循環水供給系59を通って第1段ノズル56から循環水として噴霧する。
【0012】
第2ワッシャメディア54bを通過した空気は、浄化して十分に加湿した清浄な空気として空気出口からエリミネータ70に流入し、エリミネータ70において空気中の水滴を除去する。エリミネータ70から流出する空気は冷却室71に導き、冷却コイル72によって冷却する。
【0013】
他の先行技術としては特許文献2に記載するものがある。これは図19に示すようなエアワッシャで、基本的な構成において特許文献1のものと同様であり、相違する点は以下のものである。
【0014】
水噴霧室53の内部には、流路断面の各コーナーに空気流と平行に金網100を配置している。この金網100は線径0.5〜1.0mm、線間隔2〜5mm程度のものである。金網100の背面に循環水供給系に連通する複数のノズル56を配置しており、ノズル56は噴霧水を空気流Aと直交する方向に向けて噴霧する。各ノズル56は、空気流Aと直交する流路断面を複数に分割して設定する直方形(正方形もしくは長方形)をなす各噴霧エリアにおいて、外側の一方の角部から噴霧中心(流路断面の中心)の側の対角に向けて噴霧水を噴霧する。各ノズル56から噴霧する噴霧水は、流路断面と平行な扇形の噴霧水パターンで噴霧する。このとき噴霧水は粒子径の大きなものが金網との衝突により微粒子化する。このため、噴霧水と空気との接触効率が良くなり飽和効率が高まる。
【特許文献1】特開2001−96123号公報
【特許文献2】特開2001−235194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献1に記載するものでは、金網55が空気流の流路断面とほぼ等しい形状をなしており、空気流の流れを妨げる抵抗となる問題がある。
空気流の流れの上流側に向けて第1段ノズル56から噴霧水を噴霧し、粒子径の大きな噴霧水を金網55に衝突させて微粒子化しているが、噴霧水が空気流の流れに乗って下流側に移動すると、第1段ノズル56から噴霧される噴霧水と衝突し、噴霧水同士が重なって噴霧水滴が大きくなり、金網55との衝突による微粒子化の効果を弱めることになる。
【0016】
特許文献2に記載するものでは、空気流Aと直交する流路断面を複数に分割して噴霧エリアを設定し、各噴霧エリアにおいて外側の一方の角部から噴霧中心(流路断面の中心)の側の対角に向けて噴霧水を噴霧する。
【0017】
この構成において、噴霧水を拡散させるためにノズル56の拡散角度を大きな角度に設定すると、流路断面の各コーナー付近において噴霧水が十分な飛距離に達する前に本体ケーシング52の内壁面に接触し、結果として噴霧水が十分に広がらずに噴霧水滴が大きくなり、空気との接触効率が低下する。逆に、流路断面の各コーナー付近において噴霧水が本体ケーシング52の内壁面に接触しないように拡散角度を設定すると、コーナー付近において噴霧水と空気とが接触しない部分が生じる。
【0018】
本体ケーシング52の内部では、各ノズル56から噴霧した噴霧水が噴霧エリアの噴霧中心に集まって噴霧水滴が大きくなり、空気との接触効率が低下する。本体ケーシング52の内部において気流を囲むようにノズル56を配置するので、ノズル数が増えると配管が複雑なものになる。また、配管は空気の流れを阻害する抵抗となり、噴霧水も通らないデッドスペースとなる。
【0019】
本発明は上記の課題を解決するものであり、噴霧水と空気との接触効率を高めて飽和効率を向上させることができるエアワッシャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明のエアワッシャは、ケーシング内に処理対象空気を通風するエアワッシャにおいて、ケーシングの流路断面に噴霧エリアを設定し、噴霧エリアの中央から周辺に向けて噴霧水を噴霧する噴霧手段を噴霧エリアの中央位置に配設し、噴霧手段が噴霧エリアの全域に噴霧水を噴霧することを特徴とする。
【0021】
また、ケーシングの流路断面に複数の噴霧エリアを設定し、各噴霧エリアの中央位置に噴霧手段を配設したことを特徴とする。
また、噴霧手段は、噴霧水を噴霧する噴霧ノズルと噴霧ノズルの前方に配置する金網を有し、噴霧ノズルから噴霧する噴霧水が実質的に等距離で金網に到達することを特徴とする。
【0022】
また、噴霧手段は、複数の噴霧ノズルを有し、各噴霧ノズルがそれぞれ噴霧エリアの異なる方面に向けて、かつ処理対象空気の気流方向と直交する方向に噴霧水を噴霧し、各噴霧ノズルから噴霧する噴霧水の噴霧パターンが扁平な扇状をなし、かつ扁平な面が処理対象空気の気流方向に対して所定角度に傾斜することを特徴とする。
【0023】
また、噴霧手段は、複数の噴霧ノズルを有し、各噴霧ノズルがそれぞれ噴霧エリアの異なる方面に向けて、かつ処理対象空気の気流方向と直交する方向に噴霧水を噴霧し、各噴霧ノズルから噴霧する噴霧水の噴霧パターンが扁平な扇状をなし、かつ少なくとも隣接する噴霧パターンの双方の扁平な面が処理対象空気の気流方向で異なる位置にあることを特徴とする。
【0024】
また、噴霧手段の金網は、処理対象空気の気流方向に向けて開口し、かつ気流方向に沿った面を有する形状をなすメッシュの網材と、このメッシュの網材を支持し、複数の噴霧ノズルに噴霧水を供給する給水管に装着するフレームとからなることを特徴とする。
【0025】
また、複数の噴霧ノズルは気流方向に沿って配置した給水管の軸心廻りに放射状に配置し、網材が給水管の軸心と同心の円筒面をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明によれば、噴霧エリアの中央から周辺に向けて噴霧水を噴霧し、噴霧エリアの全域に噴霧水を噴霧することにより、噴霧水は十分な飛距離に達する前に本体ケーシングの内壁面に接触することはなく、噴霧水が十分に広がって噴霧手段の位置する流路断面を覆い尽くすので空気との接触効率が向上する。噴霧エリアの中央からケーシングの流路断面の各コーナー向けて噴霧水が噴霧されることで、コーナー付近においても噴霧水と空気とが確実に接触する。
【0027】
また、噴霧手段において噴霧ノズルから噴出する噴霧水が実質的に等距離で金網に到達し、金網に衝突して粒子径の大きなものが微粒子化することにより、噴霧ノズルから噴霧する噴霧水が均一に拡散される。
【0028】
また、噴霧手段において各噴霧ノズルからそれぞれ噴霧エリアの異なる方面に扁平で扇状の噴霧パターンで噴霧水を噴霧し、各噴霧ノズルの噴霧パターンが処理対象空気の気流方向に対して所定角度に傾斜することにより、各噴霧ノズルから噴霧する噴霧水が干渉し合うことなく拡散し、噴霧水が十分に広がって空気との接触効率が向上する。
【0029】
各噴霧ノズルから噴霧する噴霧水を干渉し合うことなく拡散させることは、各噴霧ノズルの噴霧パターンを処理対象空気の気流方向で異なる位置に形成することでも実現可能である。
【0030】
噴霧手段の金網は、処理対象空気の気流方向に向けて開口し、かつ気流方向に沿った面を有する形状をなすメッシュの網材と、このメッシュの網材を支持し、複数の噴霧ノズルに噴霧水を供給する給水管に装着するフレームとからなることで、手間をかけずに強固に設置することができ、かつ空気の流速が最も速く影響が大きい中央部でも空気の流路抵抗がほとんどない噴霧手段である。
【0031】
複数の噴霧ノズルは気流方向に沿って配置した給水管の軸心廻りに放射状に配置し、網材が給水管の軸心と同心の円筒面をなすことで、各噴霧ノズルの噴霧先端から等距離の位置に金網を容易に配置することができる。
【0032】
また、一つの給水管に複数の噴霧ノズルを取り付けることで、ノズル配管が単純になり、配管に阻害されて空気が通らなかったデッドスペースが減少して空気抵抗も減少する。さらに、1つの円筒形の金網の中に複数の噴霧ノズルを設けているので、円筒形の金網の内部が金網で反射、拡散された噴霧水で充満し、水と空気の接触効率をほぼ100%に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3において、エアワッシャ1は矩形の流路断面を有する本体ケーシング2の内部に、所定長さの水噴霧室3を有している。水噴霧室3は、その一端に形成した空気入口3aにおいてダクト(図示せず)に接続しており、このダクトから流入する処理対象空気Aが水噴霧室3の流路を通って他端に形成した空気出口3bから流出する。
【0034】
水噴霧室3には、空気出口3bの位置にワッシャメディア4を配置しており、ワッシャメディア4は、空気流の流路断面とほぼ等しい形状を有し、ポリ塩化ビニルデン系繊維やステンレスの線材等からなり、たとえば25mm〜50mm程度の厚みを有するマット状のものである。
【0035】
ワッシャメディア4の上流側には、後述する循環水供給系に連通する複数の噴霧手段5を配置している。図3に示すように、本体ケーシング2の流路断面には複数の噴霧エリア2a、2b、2c、2dを設定しており、本実施の形態では4つの噴霧エリア2a、2b、2c、2dを設定している。本体ケーシング2の流路断面に単一の噴霧エリアを形成することも可能であり、図9に他の構成として例示するように、6つの噴霧エリア2a、2b、2c、2d、2e、2fを設定することも可能であり、その数は風量や、本体ケーシング2の流路断面積に応じて任意に設定することができる。
【0036】
各噴霧エリア2a、2b、2c、2dのそれぞれの中央位置には噴霧手段5を配設しており、噴霧手段5は複数の噴霧ノズル5a、5b、5c、5dを有し、本実施の形態では4つのノズル5a、5b、5c、5dを設けているが、その数は任意に設定できる。噴霧手段5は噴霧エリア2a、2b、2c、2dの中央から周辺に向けて各ノズル5a、5b、5c、5dから噴霧水を噴霧し、噴霧エリア2a、2b、2c、2dの全域に噴霧水を噴霧する。
【0037】
噴霧手段5は円筒状の金網6を有している。図6〜図7に示すように、金網6はステンレス製からなり、本実施の形態では30メッシュの網材6aをフレーム6bで支持して円筒形に形成してなる。金網6は内部に同心状に挿通する給水管7にホースバンド6cで固定する。
【0038】
詳説すると、噴霧手段5は、噴霧水を供給する給水管7をその中核とし、前記に任意の数のノズル5a、5b、5c、5dを給水管7から分岐を取った分岐管直後に備え、給水管7の中心軸から放射状に設けることが望ましい。そして噴霧手段5は、円筒形状の金網6をその内部略中央に給水管7を同心状に挿通する形で備えている。図6〜図7に示すように、金網6は常時動圧を持った水に接しているので、耐食性に優れ、強度が大きい部材で形成されており、上述したステンレス製もしくは樹脂製であることが望ましく、網材6aとフレーム6bとで材質を替えても良い。本実施の形態において、網材6aは30メッシュのものが性能的に適しているが、噴霧ノズルの形態、噴霧量、噴霧エリアの大きさの組み合わせによって、10メッシュから100メッシュの間の網材6aを適宜に用いる。
【0039】
本実施の形態で、フレーム6bは強度を持った断面角材または丸棒からなり、フレーム6bは円筒形状に形作って枠組を構成し、略中央に配する給水管7に保持を取れる構造となす。この円筒形のフレーム6bに網材6aを取り付けて噴霧圧に耐えられる構造としている。図6において、円筒形状の両端部には網材6aを取り付けない。
【0040】
そして、金網6は、給水管7に対して両端部のフレーム脚部を当接させ、フレーム脚部の持ち出し部分に外側からホースバンド6cを被せて締め込むことで固着する。このように、金網6は給水管7に着脱可能であり、給水管7に分岐管を設けてノズル5a、5b、5c、5dを配してからでも金網6を設置できる。また、固定方法は、給水管7に固着させた螺子に固定するなど、その他の締結方法であってもよい。
【0041】
上述したように、ノズル5a、5b、5c、5dは給水管7に接続して金網6の内部に配置し、金網6の網材6aが各ノズル5a、5b、5c、5dの噴霧方向の前方に位置しており、各ノズル5a、5b、5c、5dにおいて噴霧口から噴霧する噴霧水は拡散しつつ実質的に等距離で金網6の網材6aに到達する。
【0042】
網材6aは空気流の流れ方向から見て隣接する各ノズル5a、5b、5c、5dの噴霧水が重なり合う部分近くの距離に配置し、金網6で拡散された噴霧水で流路断面が覆われるようにすることが望ましい。
【0043】
金網6は円筒形に限るものではなく、噴霧口から噴霧する噴霧水が拡散しつつ実質的に等距離で網材6aに到達することを確保できるのであれば、各ノズル5a、5b、5c、5d毎に半円状やその他の形状に形成することも可能である。
【0044】
図4(a)、(b)および図5に示すように、各噴霧エリア2a、2b、2c、2dにおいて、噴霧手段5の各ノズル5a、5b、5c、5dから異なる方面に噴霧水を噴霧する。各ノズル5a、5b、5c、5dから噴霧する噴霧水の噴霧パターンPは扁平な扇状をなし、扁平な面が処理対象空気Aの気流方向に対して所定角度に傾斜している。
【0045】
また、各ノズル5a、5b、5c、5dから噴霧する噴霧水の噴霧パターンPはその扁平な面の中心軸が処理対象空気Aの気流方向に対して直交するように形成し、かつ処理対象空気Aの気流方向で異なる位置に形成することも可能である。
【0046】
水噴霧室3の下部には、流下する噴霧水を受け止める貯水槽8が設けてある。貯水槽8に滞留する循環水を各噴霧手段5に循環供給する循環水供給系9は、貯水槽8の下部に開口する吸込管10と、吸込管10に接続した循環ポンプ11と、循環ポンプ11を駆動するモータ12と、循環ポンプ11の吐出口に接続して水噴霧室3に配置した吐出管13と、吐出管13から分岐した前述の給水管7とからなる。
【0047】
水噴霧室3の下流側には水噴霧室3と同様の流路断面形状を有する所定長さの冷却室14が接続しており、冷却室14の内部には冷却器として冷却コイル15が設けてある。冷却室14の下流側には送風機(図示せず)が配置してあり、この送風機を作動することによって水噴霧室3の流路に空気を導く。
【0048】
上記した構成における作用を説明する。処理対象空気Aは空気入口3aから水噴霧室3に流入する。この空気流中に噴霧手段5の各ノズル5a、5b、5c、5dから噴霧水を噴霧する。
【0049】
図8に示すように、噴霧手段5においてノズル5a、5b、5c、5dから噴出する噴霧水が実質的に等距離で金網6の網材6aに到達し、金網6に衝突して粒子径の大きなものが微粒子化し、噴霧水が均一に拡散される。ここで金網6に衝突して粒子径が小さくなった噴霧水は、ノズル5a、5b、5c、5dから放出された方向とは異なる方向へも飛散することがあるが、その速度を減じているので、噴霧水どうしが干渉するまでには至らない。金網6に衝突した噴霧水の飛散水は、ノズル5a、5b、5c、5dからの放出流が包含しない場所に対しても遅い流速の微細な噴霧水として飛散し、また金網6の内部にも飛散する。例えば、図3に示す気流の断面を見通した場合、噴霧水の飛散していない箇所が無く、気流は気水接触せず通過することがない。また、噴霧エリアの2a、2b、2c、2dの全域に噴霧水を噴霧するので、噴霧水は充分な飛距離に達する前に本体ケーシング2の内壁面に接触することはなく、噴霧水の持つ動圧を有効に利用して噴霧水域内に噴霧水が充分に広がって空気との接触効率が向上する。
【0050】
図3および図9に示すように、噴霧エリア2a、2b、2c、2dの中央から本体ケーシング2の流路断面の各コーナー向けて噴霧水が噴霧されることで、コーナー付近においても噴霧水と空気とが確実に接触する。
【0051】
また、図4および図5に示すように、噴霧手段5において各ノズル5a、5b、5c、5dからそれぞれ噴霧エリア2a、2b、2c、2dの異なる方面に噴霧する扇状の噴霧パターンPが、処理対象空気Aの気流方向に対して所定角度に傾斜することにより、各ノズル5a、5b、5c、5dから噴霧する噴霧水が干渉し合うことなく拡散し、噴霧水が十分に広がって空気との接触効率が向上する。各ノズル5a、5b、5c、5dから噴霧する噴霧水を干渉し合うことなく拡散させることは、各ノズル5a、5b、5c、5dの噴霧パターンPを処理対象空気Aの気流方向で異なる位置に形成することでも実現可能である。
【0052】
空気中の塵埃や有害ガスに衝突した噴霧水の微粒子はワッシャメディア4に達し、ワッシャメディア4が塵埃や有害ガスを伴った噴霧水を捕捉するとともに、メディアでの水膜効果によりさらに水と空気との接触効率を高め、上流側での噴霧による気液接触との相乗効果で高飽和効率加湿を実現するので、塵埃や有毒ガスの除去率も向上する。そして、ワッシャメディア4では、噴霧水がワッシャメディア4に付着した塵埃を洗い流して流下するとともに、有害ガスを取り込んで貯水槽8へ流入する。ワッシャメディア4を通過した空気は、浄化して十分に加湿した清浄な空気として空気出口3bから冷却室14に導き、冷却コイル15によって冷却する。
【0053】
上述した実施の形態では、円筒形の金網6はその両端が処理対象空気Aの気流方向に対向して開口している。しかし、図10および図11に示すように、金網6の上流側の端部に整流材6dを設け、給水管7を挿通するための部分を除いて整流材6dで金網6の開口を閉塞することも可能である。
【0054】
この構成により、上流側より流れ来る処理対象空気の気流は整流材6dによって周囲に振り分けられ、金網6の内部に流入しない。このため、ノズル5a、5b、5c、5dから噴霧した噴霧水と処理対象空気とが金網6内で気液接触することがない。つまり、処理対象空気は、金網6を通過することで微細化する前の噴霧水と接触せず、金網6を通過して微細流となった噴霧水とのみ接触することになり、空気の流速が最も速い噴霧エリアの中央部においても水と空気との気液接触効率が高まる。
【0055】
図12〜図16に示すように、噴霧手段5は、給水管7に軸心廻りで放射状に設けた任意の数のノズル5a、5b、5c、5dのノズル群に加えて、処理対象空気Aの気流方向、つまり給水管7の軸心方向で異なる位置に別途の任意の数のノズル5e、5f、5g、5hのノズル群を設けることも可能である。
【0056】
この場合に、気流方向の上流側に配置するノズル群のノズル5a、5b、5c、5dと、気流方向の下流側に配置するノズル群のノズル5e、5f、5g、5hとを給水管7の軸心廻りで異なる位置に配置し、上流側のノズル群が噴霧水を遠領域まで噴霧し、下流側のノズル群が噴霧水を近領域に噴霧する。このため、空気の流速が最も速い噴霧エリアの中央部においても、確実にノズル周辺を含めた流路断面を噴霧水で覆うことができ、水と空気との気液接触効率が高まる。
【0057】
図14に示すように、本実施の形態では本体ケーシング2の流路断面に4つの噴霧エリア2a、2b、2c、2dを設定しているが、図17に他の構成として例示するように、6つの噴霧エリア2a、2b、2c、2d、2e、2fを設定することも可能であり、その数は風量や、本体ケーシング2の流路断面積に応じて任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態におけるエアワッシャを示す平断面図
【図2】同実施の形態におけるエアワッシャを示す縦断面図
【図3】同実施の形態におけるエアワッシャの正面図
【図4】(a)同実施の形態における噴霧水の噴霧パターンを示す模式図、(b)同噴霧パターンの斜視図
【図5】同実施の形態における噴霧水の噴霧パターンを示す模式図
【図6】同実施の形態における金網を示す斜視図
【図7】同実施の形態における金網を示す拡大図
【図8】同実施の形態における噴霧状態を示す拡大図
【図9】本発明の他の実施の形態におけるエアワッシャの正面図
【図10】本発明の他の実施の形態における金網を示す斜視図
【図11】同実施の形態における金網を示す拡大図
【図12】同実施の形態における噴霧水の噴霧パターンを示す模式図
【図13】同実施の形態における噴霧状態を示す拡大図
【図14】同実施の形態におけるエアワッシャの正面図
【図15】同実施の形態におけるエアワッシャの縦断面図
【図16】同実施の形態におけるエアワッシャの平断面図
【図17】同実施の形態におけるエアワッシャの正面図
【図18】従来のエアワッシャを示す平断面図
【図19】他の従来のエアワッシャを示す平断面図
【符号の説明】
【0059】
A 処理対象空気
P 噴霧パターン
1 エアワッシャ
2 本体ケーシング
2a、2b、2c、2d、2e、2f 噴霧エリア
3 水噴霧室
3a 空気入口
3b 空気出口
4 ワッシャメディア
5 噴霧手段
5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h 噴霧ノズル
6 金網
6a 網材
6b フレーム
6c ホースバンド
6d 整流材
7 給水管
8 貯水槽
9 循環水供給系
10 吸込管
11 循環ポンプ
12 モータ
13 吐出管
14 冷却室
15 冷却コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に処理対象空気を通風するエアワッシャにおいて、ケーシングの流路断面に噴霧エリアを設定し、噴霧エリアの中央から周辺に向けて噴霧水を噴霧する噴霧手段を噴霧エリアの中央位置に配設し、噴霧手段が噴霧エリアの全域に噴霧水を噴霧することを特徴とするエアワッシャ。
【請求項2】
ケーシングの流路断面に複数の噴霧エリアを設定し、各噴霧エリアの中央位置に噴霧手段を配設したことを特徴とする請求項1に記載のエアワッシャ。
【請求項3】
噴霧手段は、噴霧水を噴霧する噴霧ノズルと噴霧ノズルの前方に配置する金網を有し、噴霧ノズルから噴霧する噴霧水が実質的に等距離で前記金網に到達することを特徴とする請求項1又は2に記載のエアワッシャ。
【請求項4】
噴霧手段は、複数の噴霧ノズルを有し、各噴霧ノズルがそれぞれ噴霧エリアの異なる方面に向けて、かつ処理対象空気の気流方向と直交する方向に噴霧水を噴霧し、各噴霧ノズルから噴霧する噴霧水の噴霧パターンが扁平な扇状をなし、かつ扁平な面が処理対象空気の気流方向に対して所定角度に傾斜することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のエアワッシャ。
【請求項5】
噴霧手段は、複数の噴霧ノズルを有し、各噴霧ノズルがそれぞれ噴霧エリアの異なる方面に向けて、かつ処理対象空気の気流方向と直交する方向に噴霧水を噴霧し、各噴霧ノズルから噴霧する噴霧水の噴霧パターンが扁平な扇状をなし、かつ少なくとも隣接する噴霧パターンの双方の扁平な面が処理対象空気の気流方向で異なる位置にあることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のエアワッシャ。
【請求項6】
噴霧手段の金網は、処理対象空気の気流方向に向けて開口し、かつ気流方向に沿った面を有する形状をなすメッシュの網材と、このメッシュの網材を支持し、複数の噴霧ノズルに噴霧水を供給する給水管に装着するフレームとからなることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載のエアワッシャ。
【請求項7】
複数の噴霧ノズルは気流方向に沿って配置した給水管の軸心廻りに放射状に配置し、網材が給水管の軸心と同心の円筒面をなすことを特徴とする請求項6に記載のエアワッシャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−32302(P2008−32302A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205459(P2006−205459)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【出願人】(000104836)クボタ空調株式会社 (31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】